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特許7444889ソマトスタチン受容体陽性腫瘍のイメージング及び治療のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】ソマトスタチン受容体陽性腫瘍のイメージング及び治療のための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/31 20060101AFI20240228BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 5/38 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
A61K38/31
A61K31/4745
A61K51/08 200
A61P35/00
A61P5/38
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021536302
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 US2019067341
(87)【国際公開番号】W WO2020132171
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】62/783,015
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503345477
【氏名又は名称】コーセプト セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モライティス、アンドレアス ジー.
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-507226(JP,A)
【文献】特表2015-517580(JP,A)
【文献】国際公開第2018/165460(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 38/00-38/58
A61K 51/00-51/12
A61P 35/00
A61P 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン糖質コルチコイド受容体モジュレータ(GRM)と、ソマトスタチン又はソマトスタチン類似体とを含む、コンピュータ断層撮影(CT)又は磁気共鳴イメージング(MRI)による腫瘍検出限界以下のレベルのソマトスタチン受容体発現を有する神経内分泌腫瘍を治療するための組合せ物であって、
前記ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン糖質コルチコイド受容体モジュレータ(GRM)が、構造:
【化1】


を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノン(レラコリラント)であって、
前記ソマトスタチン類似体が、オクトレオチド、放射性同位元素で標識されたオクトレオチド、オクトレオテート、パシレオチド、ランレオチド、ペンテトレオチド、バプレオチド、セグリチド、コルチスタチン、並びに 123 I-Tyr -オクトレオチド、 111 In-DTPA-D-Phe -オクトレオチド、[ 111 In-DTPA ]オクトレオチド、[ 90 Y-DOTA、Tyr ]オクトレオチド、 111 In-オクトレオチド、 111 In-ペンテトレオチド及び[ 177 Lu-DOTA,Tyr ]オクトレオテートからなる群から選択される放射性同位元素で標識されたそれらの誘導体、からなる群から選択されるソマトスタチン類似体(SSA)であり、
前記治療が、
a)前記神経内分泌腫瘍におけるソマトスタチン受容体(SR)の発現を刺激するために有効な少なくとも1回の用量のヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMを患者に投与すること、及び
b)少なくとも1回の用量のソマトスタチン又はソマトスタチン類似体を前記患者に投与すること、を含むことを特徴とし、
それによって、前記患者において、コルチゾールの有意な増加をもたらすことなく、且つ、低カリウム血症のリスクを増加させることなく、前記神経内分泌腫瘍を治療する、組合せ物。
【請求項2】
前記ソマトスタチン又はソマトスタチン類似体がソマトスタチンである、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項3】
前記治療が、c)前記患者内の前記神経内分泌腫瘍を局在化するために有効な標識されたソマトスタチン又はソマトスタチン類似体のイメージングを行うことをさらに含む請求項1に記載の組合せ物。
【請求項4】
前記患者がクッシング症候群に罹患し、前記組合せ物が、前記クッシング症候群又はクッシング病を治療するために有効である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項5】
ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン糖質コルチコイド受容体モジュレータ(GRM)と、ソマトスタチン又はソマトスタチン類似体とを含む、コンピュータ断層撮影(CT)又は磁気共鳴イメージング(MRI)による腫瘍検出限界以下のレベルのソマトスタチン受容体発現を有する神経内分泌腫瘍の腫瘍局在化のための組合せ物であって、
前記ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン糖質コルチコイド受容体モジュレータ(GRM)が、構造:
【化2】


を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノン(レラコリラント)であって、
ソマトスタチン類似体が、オクトレオチド、放射性同位元素で標識されたオクトレオチド、オクトレオテート、パシレオチド、ランレオチド、ペンテトレオチド、バプレオチド、セグリチド、コルチスタチン、並びに 123 I-Tyr -オクトレオチド、 111 In-DTPA-D-Phe -オクトレオチド、[ 111 In-DTPA ]オクトレオチド、[ 90 Y-DOTA、Tyr ]オクトレオチド、 111 In-オクトレオチド、 111 In-ペンテトレオチド及び[ 177 Lu-DOTA,Tyr ]オクトレオテートからなる群から選択される放射性同位元素で標識されたそれらの誘導体からなる群、から選択されるソマトスタチン類似体(SSA)であり、
前記腫瘍局在化が、
a)前記神経内分泌腫瘍におけるソマトスタチン受容体(SR)の発現を刺激するために有効な量のヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMを患者に、250mg/日~550mg/日で漸増投与すること、
b)少なくとも1回の用量のソマトスタチン又はソマトスタチン類似体を前記患者に投与すること、及び
c)前記患者に、前記患者内の前記腫瘍の画像を提供するために有効なイメージングをすること、
を含むことを特徴とし、
それによって、前記患者において、コルチゾールの有意な増加をもたらすことなく、且つ、低カリウム血症のリスクを増加させることのない、神経内分泌腫瘍局在化のための組合せ物。
【請求項6】
前記ソマトスタチン又はソマトスタチン類似体が、ソマトスタチンである、請求項に記載の組合せ物。
【請求項7】
前記c)のイメージングをすることが、前記患者内の腫瘍局在化のために有効な標識されたソマトスタチン又はソマトスタチン類似体のイメージングをすることである、請求項に記載の組合せ物。
【請求項8】
前記患者がクッシング症候群又はクッシング病に罹患し、前記組合せ物が、前記クッシング症候群又はクッシング病を治療するために有効である、請求項5~請求項7のいずれか一項に記載の組合せ物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月20日に出願された米国特許出願第62/783,015号の利益及び優先権を主張するものであり、前記出願の全体の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
腫瘍及び転移の検出、同定、局在化及び治療は、癌の治療、及びそのような腫瘍又は転移から生じる障害の治療に重要である。クッシング症候群は、典型的には、例えば神経内分泌腫瘍などの腫瘍による過剰な副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)又はコルチゾールの分泌に起因する。SRサブタイプsst2 sst3又はsst5などのソマトスタチン受容体(SR)を発現する腫瘍は、放射性同位元素で標識されたソマトスタチン類似体(SSA)の注入によってインビボで視覚化され得る。そのようなイメージング(「シンチグラフィ」と称される場合がある)は、そのような腫瘍のイメージング及び局在化のために有用であり、疾患の同定に役立つ可能性があり、疾患の病期分類に役立つ可能性がある(例えば、他のイメージング手法及びイメージング技術による)。そのようなイメージングによって、それ以外の場合では検出されず、従来のイメージング手法を用いたそれ以外の場合では不可視のままであるか、又は認識されないままであった腫瘍の検出が可能になる場合がある。
【0003】
コルチゾールは、標的細胞の糖質コルチコイド受容体(GR)に結合することによって作用する副腎によって産生されるステロイドホルモンである。コルチゾールは、肉体的ストレス及び情動ストレスに応答し、適切なエネルギー供給レベル及び血糖レベルを維持するように身体で用いられる。コルチゾール産生は、直接的影響及びネガティブフィードバック相互作用の複雑なセットを通して視床下部-下垂体-副腎軸(HPA)によって高度に調節される。健康な個体において、血流中のコルチゾールが不充分であると、視床下部は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を放出するように下垂体にシグナルを送るコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)を放出し、それによって、続いてより多くのコルチゾールを産生するように副腎が刺激される。コルチゾール過剰は、視床下部がCRHを産生することを阻害し、したがって、下垂体がACTHを放出することを阻害し、それによって、続いてコルチゾール産生が抑制される。HPAに関連した病的状態は、コルチゾール産生及びACTH産生の日周リズムに影響を及ぼす可能性があり、重大な健康問題を引き起こす可能性がある。したがって、例えば腫瘍によるCRH、ACTH又はコルチゾールの過剰な産生は、腫瘍の単なる存在によって引き起こされるものに加えて、重大な健康問題を引き起こす可能性がある。
【0004】
高コルチゾール血症によって引き起こされるものを含むコルチゾールの生物学的効果は、(例えば、コルチゾールを模倣する)GRアゴニスト、部分アゴニスト及び(例えば、コルチゾールの効果を阻害する)アンタゴニストとして作用し得る受容体モジュレータ(GRM)を用いてGRレベルにおいて調節され得る。いくつかの異なるクラスの薬剤は、GR-アゴニスト結合の生理学的効果を阻害することが可能である。これらのアンタゴニストは、GRに結合することによってアゴニストがGRに効果的に結合し、且つ/又はGRを活性化する能力を低下させる組成物を含む。そのような知られた1つのGRMは、ヒトにおける有効な抗グルココルチコイド剤であることが分かっているGRアンタゴニスト(GRA)ミフェプリストンである(Bertagna(1984)J.Clin.Endocrinol.Metab.59:25)。ミフェプリストンは、10-9Mの解離定数(K)で高親和性にGRと結合する(Cadepond(1997)Annu.Rev.Med.48:129)。
【0005】
多くの場合クッシング症候群と称される高コルチゾール血症は、ストレスホルモンコルチゾールの過剰な活性によって引き起こされる。症候は一様でないが、ほとんどの人々は、以下の症状、すなわち、高血糖(過血糖)、糖尿病、高血圧、上半身肥満、丸顔(rounded face)、頸部周辺の脂肪増加、腕及び脚の痩せ、発症しやすい挫傷、顔面多血症、座瘡、身体全体の赤紫色の縞、重度の疲労、並びに衰えた筋肉の内の1又は複数を発症する。被刺激性、不安、認知障害及びうつ病も一般的である。クッシング症候群は、身体におけるあらゆる器官系に影響を及ぼす可能性があり、効果的に治療されない場合、致死的であり得る。
【0006】
クッシング症候群は、プレドニゾン、デキサメタゾン及びヒドロコルチゾンなどのグルココルチコイド薬(場合によってはコルチコステロイドとも称される)の過剰使用によって引き起こされる外因性クッシング症候群、及びHPA軸における非調節性異常(deregulatory abnormalities)によって引き起こされる内因性クッシング症候群として分類され得る。内因性クッシング症候群は、ACTH分泌の上昇がない場合におけるコルチゾールの過剰産生を特徴とするACTH非依存性クッシング症候群、及び過剰なACTH分泌を特徴とするACTH依存性クッシング症候群からなる。
【0007】
ACTH依存性クッシング症候群は、内因性クッシング症候群の患者のおおむね80%を含み、2つの主要な形態、すなわち、クッシング病及び異所性ACTH産生症候群からなる。前者は、下垂体腫瘍によって引き起こされ、後者は、例えば副腎腫瘍などの下垂体の外側の腫瘍によって引き起こされる。一方でACTH依存性クッシング症候群と、一方で異所性ACTH産生症候群(例えば、副腎性クッシング症候群)又は外因性クッシング症候群との間の正確な鑑別診断は、内分泌医が、経蝶形骨手術、(外因性クッシング症候群のための)グルココルチコイド投与の減少若しくは中止、又は異所性ACTH分泌の源を局在化し且つ同定するための適切なイメージングを推奨するために重要である。
【0008】
クッシング症候群患者は、コルチゾール過剰の影響を低下させるか、又は遮断するために、ミフェプリストンなどのGRMによって治療されてもよい(米国特許第9,943,526号、米国特許第9,956,216号参照(それらの特許の両方は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる))。また、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン化合物は、糖質コルチコイド受容体(GR)に結合する可能性があり、GRMとして作用する可能性があり、それによって治療活性を有する可能性がある。そのような化合物及びそれらの活性は、例えば、米国特許第8,859,774号、米国特許第9,273,047号、米国特許第9,707,223号、米国特許第9,943,505号、米国特許第9,956,216及びその他に開示される。ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン化合物を含有する医薬製剤を、治療目的のためにヒト又は動物へのそれらの化合物の投与のために使用してもよい。
【0009】
クッシング症候群患者は、コルチゾール過剰の源を可能な限り除去するために外科的に治療されてもよく、他の手段によって治療されてもよい。しかし、コルチゾール過剰の源を同定するか、又は局在化することが重要である場合がある。また、ミフェプリストンはGRのコルチゾール活性化を遮断するので、コルチゾールレベルは、ミネラルコルチコイド受容体におけるコルチゾール作用によって低カリウム血症をもたらす可能性があるミフェプリストンで治療されたクッシング症候群患者において多くの場合増加する。低カリウム血症は、医療治療によって治すことが必要な重篤な状態であり得る。
【0010】
したがって、腫瘍を検出し、場所の特定を行い、同定し、治療する方法が必要である。クッシング症候群に罹患している患者におけるクッシング症候群を引き起こす可能性がある腫瘍を検出し、場所の特定を行い、同定し、治療する方法が必要である。また、経蝶形骨手術を必要とするか、又は経蝶形骨(transsphenoidal)が不完全に成功したか若しくは不成功だったACTH依存性クッシング症候群に罹患しているそれらのクッシング症候群患者を同定するための改善されたイメージング方法、及び副腎性クッシング症候群に罹患しているか、又は副腎腫瘍から離れた他の腫瘍によって異所性クッシング症候群に罹患しているそれらのクッシング症候群患者を同定するための改善されたイメージング方法が必要である。
【発明の概要】
【0011】
出願人は、驚くべきことに、「レラコリラント(relacorilant)」と称されるヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン糖質コルチコイド受容体モジュレータ(GRM)が、コルチゾールレベルを高めることなく、したがって、患者における低カリウム血症のリスクを増加させることなく、糖質コルチコイド受容体(GR)活性化を阻害し得る有効な糖質コルチコイド受容体アンタゴニスト(GRA)であるということを発見した。GR活性化を遮断するために有効なヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMの投与は、ソマトスタチン受容体(SR)発現も刺激する。腫瘍におけるSR発現を増加させることによってイメージング手法の有効性を増強する方法を含む、SRを発現する腫瘍を治療し、同定し、局在化するための方法が、本明細書において提供される。好ましい方法において、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMは、レラコリラントである。実施形態において、前記方法は、本明細書に開示される治療方法から利益を得る可能性がある患者を選択することを含む。本明細書に開示される治療方法から利益を得る可能性がある患者としては、腫瘍を有する疑いがある患者であって、疑わしい腫瘍が低レベルのソマトスタチン受容体を発現する患者、ソマトスタチン受容体をイメージングするために使用される手法などのイメージング手法によって、疑わしい腫瘍が視認可能ではないか、若しくは不充分に視認可能である患者、又は腫瘍におけるソマトスタチン受容体発現を増加させることによって腫瘍のイメージング、同定若しくは局在化が改善する患者、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0012】
出願人は、腫瘍を有する患者における腫瘍を、患者におけるコルチゾールレベル又は低カリウム血症のリスクを増加させることなく治療する方法であって、腫瘍がベースラインレベルのソマトスタチン受容体発現を有し、a)腫瘍におけるSRの発現を刺激する有効な少なくとも1回の用量のヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMを患者に投与すること、b)少なくとも1回の用量のソマトスタチン又はソマトスタチン類似体を患者に投与すること、を含み、それによって、患者におけるコルチゾールレベル又は低カリウム血症のリスクを増加させることなく腫瘍を治療する、方法を本明細書において開示する。実施形態において、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物の投与は、SR発現を増強するために、及び、コルチゾールの有意な増加をもたらすことなく、且つ、低カリウム血症のリスクを増加させることなく、又は低カリウム血症を引き起こすことなく、腫瘍の治療、同定及び局在化を改善するために有効である。腫瘍は、例えば、神経内分泌腫瘍であってもよい。実施形態において、腫瘍は神経内分泌腫瘍であり、方法としては、神経内分泌腫瘍を有する患者において神経内分泌腫瘍を、患者におけるコルチゾールレベル又は低カリウム血症のリスクを増加させることなく治療する方法であって、腫瘍がベースラインレベルのソマトスタチン受容体発現を有し、a)神経内分泌腫瘍におけるソマトスタチン受容体(SR)の発現を刺激する有効な少なくとも1回の用量のヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMを患者に投与すること、b)少なくとも1回の用量のソマトスタチン又はソマトスタチン類似体を患者に投与すること、を含み、それによって、コルチゾールの有意な増加をもたらすことなく、且つ、低カリウム血症のリスクを増加させることなく、又は低カリウム血症を引き起こすことなく、神経内分泌腫瘍を治療する、方法が挙げられる。これらの方法は、患者におけるクッシング症候群を引き起こすことが疑われる腫瘍を治療し、場所の特定を行い、同定するために有用である。
【0013】
腫瘍における不充分なSR発現は、SRイメージングによる腫瘍の低レベルの(わずかな)又は存在しない画像によって決定されてもよい。実施形態において、ソマトスタチン受容体(SR)を発現しないか、又は少量だけのソマトスタチン受容体(SR)を発現する腫瘍を有するクッシング症候群罹患患者が、腫瘍のイメージングを、腫瘍におけるSR発現を増加させることによって増強するために、本明細書に開示される方法のために選択される。実施形態において、これらの方法は、クッシング症候群患者などの患者における腫瘍のイメージング、場所の特定、又は同定を改善するようにイメージング手法を増強するために有用である。実施形態において、これらの方法は、使用可能な腫瘍の画像を得ること、腫瘍の位置を決定すること、又は腫瘍を同定することを可能にするために、i)それ以外の場合、腫瘍のそのような画像、位置若しくは同定は可能ではないか、ii)それ以外の場合、腫瘍のそのような画像、位置若しくは同定は、患者におけるコルチゾールレベル若しくは低カリウム血症のリスクを増加さることなく可能ではないか、又はi)及びii)の両方である場合に有用である。ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMは、糖質コルチコイド受容体(GR)に結合し、ソマトスタチン受容体発現を増加させる可能性があり、特に、腫瘍における2型ソマトスタチン受容体(sst2)の発現を増加させる可能性がある。sst2を含むSRは、オクトレオチド及び他のSRリガンドに結合する。ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMによる腫瘍を有する患者の治療は、それ自体、そのような腫瘍を治療するために有効である可能性がある。ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMによる腫瘍を有する患者の治療は、そのような腫瘍のSRに基づいたイメージングを増強するために有効であることが示され、イメージングは、腫瘍の診断及び局在化を改善する。そのような増強されたイメージングによって、従来の方法によって提供されたものよりも良好な、手術、放射線、化学療法又はそれらの併用による腫瘍治療のさらなる過程の決定が可能になる。そのような増強されたイメージングによる腫瘍の局在化の改善によって、手術、放射線又は両方の改善が可能になる。
【0014】
GRM投与によるSR発現の増強は、ソマトスタチン類似体又はペプチド受容体放射性核種療法と併用して、神経内分泌腫瘍などの腫瘍の治療も増強する。実施形態において、神経内分泌腫瘍の治療は、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMと、例えばソマトスタチン又はソマトスタチン類似体(SSA)などのソマトスタチン受容体アゴニストとの投与を含む。実施形態において、ソマトスタチン又はSSAは、放射性同位元素で標識されたソマトスタチン又はSSAである。
【0015】
いくつかの実施形態において、方法は、ソマトスタチン類似体(SSA)を投与することを含む。場合によっては、SSAは、オクトレオチド、オクトレオテート、パシレオチド、ランレオチド、ペンテトレオチド及びそれらの誘導体からなる群から選択される。場合によっては、SSAは、例えば、111インジウム、90イッテルビウム、177ルテチウム、213ビスマス又は他の放射性核種などの放射性核種で標識される。放射性同位元素で標識されたSSAの例としては、例えば、123I-Tyr-オクトレオチド、111In-DTPA-D-Phe-オクトレオチド、[111In-DTPA]オクトレオチド、[90Y-DOTA、Tyr]オクトレオチド、111In-オクトレオチド、111In-ペンテトレオチド及び[177Lu-DOTA,Tyr]オクトレオテートが挙げられる。放射性同位元素で標識されたそのようなSSAは、例えば、患者における腫瘍の観察、局在化又は同定のペプチド受容体放射性核種イメージングにおいて使用される。実施形態において、そのような腫瘍は、例えば、神経内分泌腫瘍であってもよく、手術不能な神経内分泌腫瘍及び/又は転移性神経内分泌腫瘍であってもよい。放射性同位元素で標識されたそのようなSSAは、例えば、手術不能な神経内分泌腫瘍及び/又は転移性神経内分泌腫瘍などの手術不能な腫瘍及び/又は転移性腫瘍の患者のためのペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)において使用される。ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM投与と併用したSSAの投与、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM投与の後のSSAの投与、又は両方は、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM投与がない場合におけるそのようなイメージングと比較して、SSAイメージング及びPRRTを増強する。
【0016】
場合によっては、SSAは、持続放出製剤で投与される。場合によっては、SSAは、オクトレオチドLAR(例えば、懸濁剤としての、注射用に製剤化された酢酸オクトレオチドの組成物であるサンドスタチン(登録商標)LARデポー剤など)として投与される。
【0017】
ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物によるSR発現の増強は、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物の投与がコルチゾールの有意な増加をもたらさないという点で、他のGRM化合物の投与と比較して長所がある。例えば、本明細書に開示されるように、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物「レラコリラント」の投与は、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物「レラコリラント」が投与されたクッシング症候群患者においてコルチゾールの有意な増加をもたらさなかったが、このことは、クッシング症候群患者は、すでに、速やかな医療的配慮を必要とする重篤な状態である低カリウム血症のリスクをもたらすコルチゾール過剰に罹患しているので、重要である。したがって、レラコリラント投与は、低カリウム血症のリスクのさらなる増加をもたらさなかったが、低カリウム血症のそのようなリスクの増加は、他のGRMの投与後に生じる可能性があり、例えば、低カリウム血症は、ミフェプリストン(Korlym(登録商標))(Korlym FDA Label、セクション5.2)による治療の間に対象の44%において認められたが、投与は、ソマトスタチン類似体又はペプチド受容体放射性核種イメージング若しくはペプチド受容体放射性核種療法と併用して神経内分泌腫瘍の治療も増強する。コルチゾール過剰は、女性患者における子宮内膜肥厚、膣出血又は他の合併症をもたらす可能性もあり、女性のクッシング症候群患者におけるミフェプリストン投与によって、そのような有害事象のリスク又は重症度が増加する可能性がある。しかし、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物レラコリラントもGRに結合し、コルチゾールの効果を調節するが、コルチゾールレベルを有意に増加させず、したがって、コルチゾールレベルのさらなる増加に関連した有害事象を有意に増加させない。したがって、レラコリラントなどのヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物は、腫瘍をイメージングし、腫瘍画像を増強し、腫瘍を局在化し、腫瘍を治療するために投与され、使用されてもよいが、コルチゾールレベルを有意に増加させるとは考えられず、したがって、コルチゾールレベルのさらなる増加に関連した有害事象を有意に増加させることなく、GRの調節、ソマトスタチン受容体発現の調節、又は両方が含まれるイメージング、診断及び治療のために投与され、使用されてもよい。
【0018】
したがって、レラコリラントなどのヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物の投与は、コルチゾールの有意な増加をもたらすことなく、且つ、低カリウム血症のリスクを増加させることがないか、又は低カリウム血症を引き起こすことなく、神経内分泌腫瘍などの腫瘍のイメージング、局在化、同定及び治療に有用である。レラコリラントなどのヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMの投与は、そのようなリスクの増加なしでGRM投与の診断上の利益及び治療上の利益を提供する。したがって、本方法は、従来の方法と比較して長所を提供する。
【0019】
本明細書において開示される方法は、コルチゾールの有意な増加をもたらすことなく、且つ、低カリウム血症のリスクを増加させることがないか、又は低カリウム血症を引き起こすことなく、クッシング症候群に関連するか、又はクッシング症候群引き起こす腫瘍のイメージング、局在化又は同定のために有用なさらなる診断情報を同時に提供すると共に、クッシング症候群に罹患している患者におけるクッシング症候群を治療する長所を提供する。クッシング症候群に関連するか、又はクッシング症候群を引き起こすそのような腫瘍は、下垂体腫瘍、副腎腫瘍であってもよく、患者の身体における他の場合に位置する腫瘍であってもよく、クッシング症候群に関連するか、又はクッシング症候群を引き起こす2つ以上の腫瘍の内の1つであってもよい。実施形態において、腫瘍は、神経内分泌腫瘍であってもよい。
【0020】
実施形態において、本明細書に開示される方法によって得られる同定情報、局在化情報及び診断情報は、患者に適切な治療を提供することに役立つために有用であり、重篤な医学的状態を治療する際の不必要な遅延を回避し、さらなる治療が必要であるか否かを決定することに役立ち、どの型のさらなる治療(例えば、典型的には、ACTH依存性クッシング症候群を有することが同定された患者のための経蝶形骨手術、副腎性クッシング症候群を有することが同定された患者のための副腎腫瘍のための副腎手術、又は下垂体腫瘍若しくは副腎腫瘍以外であると同定されるか、若しくは局在化される腫瘍のための他の手術)が必要され得るのかを決定することに役立つ可能性がある。全てのこれらの長所は、コルチゾールの有意な増加をもたらすことなく、且つ、低カリウム血症のリスクを増加させることがないか、又は低カリウム血症を引き起こすことなく得られる可能性があり、従来の治療及びイメージング方法を超える長所を提供する。
【0021】
本明細書に開示される方法の他の目的、特性及び長所は、以下の発明を実施するための形態及び図面から当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、異所性腫瘍のクッシング症候群患者のインジウムオクトレオスキャン画像を示すものであって、異所性腫瘍がわずかに認められることを示す(右肺/縦隔における暗色の点は、軽度にオクトレオチド陽性の病変を示す)。患者のコンピュータ断層撮影(CT)画像及び磁気共鳴イメージング(MRI)画像では、患者における異所性腫瘍を同定することができなかった。
図2図2は、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン糖質コルチコイド受容体モジュレータであるレラコリラントによる治療後の同じクッシング症候群患者のインジウムオクトレオスキャン画像を示し、レラコリラント治療後に撮影されたこの画像は、異所性腫瘍の明瞭な画像を示す。レラコリラント治療は、異所性腫瘍のインジウムオクトレオスキャン画像を増強した。
【発明を実施するための形態】
【0023】
I.序文
出願人は、コルチゾールの有意な増加をもたらすことなく、且つ、低カリウム血症のリスクを増加させないか、又は低カリウム血症を引き起こすことなく、腫瘍におけるソマトスタチン受容体(SR)発現を増加させることによってイメージング手法の有効性を増強する方法を含む、ソマトスタチン受容体を発現する腫瘍を同定し、局在化するための新規な方法を提供する。ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン糖質コルチコイド受容体モジュレータ(GRM)は、糖質コルチコイド受容体(GR)に結合し、ソマトスタチン受容体発現を増加させる可能性があり、特に、腫瘍における2型ソマトスタチン受容体(sst2)の発現を増加させる可能性がある。sst2を含むSRは、オクトレオチド及び他のSRリガンドに結合する。ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMによる腫瘍を有する患者の治療は、それ自体、そのような腫瘍を治療するために有効である可能性がある。ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMによる腫瘍を有する患者の治療は、そのような腫瘍のSRに基づいたイメージングを増強するために有効であることが示され、イメージングは、腫瘍の診断及び局在化を改善する。そのような増強されたイメージングによって、手術、放射線、化学療法又はそれらの併用にかかわらず、コルチゾールの有意な増加をさらにもたらすことなく、且つ、低カリウム血症のリスクを増加させっることがないか、又は低カリウム血症を引き起こすことなく、従来の方法によって提供されたものよりも良好な腫瘍治療のさらなる過程の決定が可能になる。そのようなヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM増強イメージングによる腫瘍の局在化の改善によって、そのような増強されたイメージングがない場合におけるそのような治療の転帰と比較した手術、放射線又は両方についての治療の転帰の改善が可能になる。そのようなGRM投与によるSR発現の増強は、コルチゾールの有意な増加をもたらすことなく、且つ、低カリウム血症のリスクを増加させないか、又は低カリウム血症を引き起こすことなく、ソマトスタチン類似体又はペプチド受容体放射性核種イメージング若しくはペプチド受容体放射性核種療法と併用して、レラコリラントなどのヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMの投与による神経内分泌腫瘍などの腫瘍の治療も増強する。
【0024】
実施形態において、不充分なSRイメージングのために本明細書において開示される方法による治療のために患者が選択されるが、患者は、そのようなイメージングの増強を必要とする。腫瘍における不充分なSR発現は、SRイメージングによる腫瘍の低レベルの(わずかな)又は存在しない画像によって決定されてもよい。実施形態において、ソマトスタチン受容体(SR)を発現しないか、又は少量だけのソマトスタチン受容体(SR)を発現する腫瘍を有するクッシング症候群に罹患している患者が、腫瘍のイメージングを、腫瘍におけるSR発現を増加させることによって増強するために、本明細書に開示される方法のために選択される。実施形態において、これらの方法は、クッシング症候群患者などの患者における腫瘍のイメージング、場所の特定、又は同定を改善するようにイメージング手法を増強するために有用である。実施形態において、これらの方法は、使用可能な腫瘍の画像を得ること、腫瘍の位置を決定すること、又は腫瘍を同定することを可能にするように、場合によっては有用であるが、ここで、i)それ以外の場合、腫瘍のそのような画像、位置若しくは同定は可能ではないか、ii)それ以外の場合、腫瘍のそのような画像、位置若しくは同定は、患者におけるコルチゾールレベル若しくは低カリウム血症のリスクを増加さることなく可能ではないか、又はi)及びii)の両方である。
【0025】
ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物は、例えば、米国特許第8,859,774号及び他の特許に開示されている。実施形態において、本明細書に開示される方法の実施における使用のために適切なヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物としては、レラコリラント(「CORT125134」とも称される)、CORT122928、CORT113176、並びに米国特許第8,859,774号に開示される他のヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物及びそれらの続きが挙げられる。
【0026】
いくつかの実施形態において、方法は、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM(例えば、レラコリラントなど)と併用してソマトスタチン類似体(SSA)を投与することを含む。場合によっては、SSAは、例えば、111インジウム、90イッテルビウム、177ルテチウム、213ビスマス又は他の放射性核種などの放射性核種で標識される。放射性同位元素で標識されたそのようなSSAは、例えば、手術不能な神経内分泌腫瘍及び/又は転移性神経内分泌腫瘍などの手術不能な腫瘍及び/又は転移性腫瘍の患者のためのペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)において使用される。放射性同位元素で標識されたSSAの例としては、例えば、123I-Tyr-オクトレオチド、111In-DTPA-D-Phe-オクトレオチド、[111In-DTPA]オクトレオチド、[90Y-DOTA、Tyr]オクトレオチド、111In-オクトレオチド、111In-ペンテトレオチド及び[177Lu-DOTA,Tyr]オクトレオテートが挙げられる。場合によっては、ソマトスタチン類似体は、持続放出製剤において投与される。場合によっては、ソマトスタチン類似体は、オクトレオチドLAR(例えば、懸濁剤としての、注射用に製剤化された酢酸オクトレオチドの組成物であるサンドスタチン(登録商標)LARデポー剤など)として投与される。
【0027】
出願人は、本明細書において、ソマトスタチン又はソマトスタチン類似体を伴う使用のためのヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物を含む製剤を開示する。そのような使用としては、限定されるものではないが、例えば、腫瘍におけるソマトスタチン受容体(SR)発現を増加させることによってイメージング手法の有効性を増強する方法を含む、ソマトスタチン受容体を発現する腫瘍を同定し、局在化するためのソマトスタチン又はSSAを伴うヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物の使用が挙げられる。そのような使用としては、限定されるものではないが、例えば、ソマトスタチン受容体を発現する腫瘍を治療することを含む腫瘍の治療のためのソマトスタチン又はSSAを伴うヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物の使用が挙げられるが、実施形態において、ソマトスタチン又はSSAは、放射性同位元素で標識される。そのような使用としては、限定されるものではないが、例えば、前記方法がペプチド受容体放射性核種イメージング又はペプチド受容体放射性核種療法を含む、腫瘍を治療するためのソマトスタチン又はSSAと併用したヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物の使用が挙げられる。
【0028】
ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン化合物は、米国特許第8,859,774号、米国特許第9,273,047号、米国特許第9,707,223号及び米国特許第9,956,216号に記載されており、前記特許の全ては、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。実施形態において、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMは、以下の構造を有する、「レラコリラント」及び「CORT125134」としても知られている化合物(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノン(米国第8,859,774号の実施例18)である。
【化1】

【0029】
実施形態において、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMは、以下の構造を有する化合物(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6-7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-2-イル)メタノン(「CORT122928」と称される)である。
【化2】

【0030】
実施形態において、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMは、以下の構造を有する化合物(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-H-ピラゾロP,4-g]イソキノリン-4a-イル)(ピリジン-2-イル)メタノン(「CORT113176」と称される)である。
【化3】

【0031】
実施形態において、本明細書に開示される製剤は、医薬的使用のために適切であり、従来の製剤又は代替的製剤と比較して改善された安定性及び生物学的利用能を有する。実施形態において、製剤は、レラコリラント及び医薬的に許容し得る賦形剤を含んでもよい。実施形態において、製剤は、レラコリラント及び医薬的に許容し得る賦形剤を含み、疾患若しくは障害を治療するためのヒト患者への、又は獣医学的治療目的のための動物へのレラコリラントの経口投与のための医薬組成物における使用のために適切である。
【0032】
実施形態において、医薬製剤は、有効量のレラコリラント、例えば、1日用量が約1~100mg/kg/日のレラコリラント、好ましくは1日用量が約1~20mg/kg/日のレラコリラントの投与のために適切である。実施形態において、医薬製剤は、例えば、約1~約500ミリグラム(mg)のレラコリラントを含有する単位用量製剤における、有効量のレラコリラントの投与のために適切である。実施形態において、レラコリラントのそのような単位用量製剤は、10ミリグラム(mg)又は15mg又は20mg又は25mg又は50mg又は100mg又は150mg又は200mg又は250mg又は300mg又は350mg又は400mg又は450mg又は500mg又は600mg又は700mg又は750mgのレラコリラントを含む。
【0033】
実施形態において、例えばレラコリラントなどのヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物は、経口投与される。実施形態において、例えばレラコリラントなどのヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物は、1日単位で投与され、例えば、実施形態において、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物は、1日当たり1回投与される。実施形態において、例えばレラコリラントなどのヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物は、食品と共に投与される。「食品と共に」投与される、ということは、患者が、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物が投与される時間の30分以内又は1時間以内に食事を食べ始めていたことを意味する。代替実施形態において、例えばレラコリラントなどのヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物は、絶食した患者に投与され、すなわち、GRM化合物の投与前の少なくとも1時間又は少なくとも2時間以上食品を食べなかった患者に投与される。例えば、GRM化合物は、絶食した患者に朝に投与されてもよく、すなわち、朝食をまだ食べていない患者に、及び前の夕方の夕食から食べていない患者に投与されてもよい。
【0034】
実施形態において、GRM投与は、1週当たり少なくとも1回のGRMの投与を含む。実施形態において、GRM投与は、1週当たり少なくとも2回のGRMの投与を含む。実施形態において、GRM投与は、1週当たり少なくとも3回のGRMの投与を含む。実施形態において、GRMは、1日当たり1回投与される。実施形態において、GRMは、1日当たり2回投与される。実施形態において、GRMは、1日当たり3回投与される。実施形態において、GRMは、1日おきに1回投与される。実施形態において、GRMは、3日毎に1回投与される。
【0035】
GRM投与は、GRMの毎日の投与を含んでもよい。毎日の投与の実施形態において、GRMは、1日当たり1回投与される。実施形態において、GRMは、毎日、1日当たり1回、ほぼ同じ時刻に投与される。実施形態において、GRMは、食品と共に投与される。実施形態において、GRMは、食品なしで患者に投与される。実施形態において、GRMは、患者の朝食の前に、朝に、食品なしで、患者に投与される。
【0036】
実施形態において、レラコリラントを含む医薬製剤は、別の医薬製剤、例えば、丸剤、錠剤、経口液剤、注射剤、又は他の活性成分を含む他の製剤を伴う投与のために適切である。これらの全ての実施形態において、治療及びイメージングは、コルチゾールの有意な増加をもたらすことなく、且つ、低カリウム血症リスクを増加させないか、又は低カリウム血症を引き起こすことなく得られ得る。
【0037】
II.定義
本明細書において用いられる通りの「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「前記(the)」という用語は、1つの要素を有する態様を含むだけでなく、1超の要素を有する態様も含む。例えば、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「前記(the)」は、文脈によって明確に規定されない限り、複数形の指示物を含む。したがって、例えば、「1つの細胞(a cell)」に対する参照は、複数のそのような細胞を含み、「前記剤(the agent)」に対する参照は、当業者などに知られている1又は複数の剤に対する参照を含む。
【0038】
「試料」という用語は、ヒト対象から得られた生物学的試料を指す。試料は、ヒト対象から得られたいずれの細胞試料、組織試料又は液試料であってもよい。試料は、例えば、患者から得られた血液試料、唾液試料、尿試料又は他の試料であってもよい。そのような試料は、典型的には、対象から取り出されるが、得られた場合、対象とは完全に別のものになる(すなわち、インビトロ試料である)。試料は、本明細書に記載される方法によって分析される前に各種の治療手法、貯蔵手法又は処理手技に供されてもよい。概して、「1つの試料(sample)」又は「複数の試料(samples)」という用語は、それらの源、由来、入手、治療、処理、貯蔵若しくは分析の様式、又はいずれかの変更によって限定されることを意図されるものではない。したがって、実施形態において、試料は、インビトロ試料であり、インビトロ方法を用いて分析されてもよい。本明細書に開示される方法は、ヒト対象から得られ、取り出された試料と共に用いられる場合、インビトロ方法である。
【0039】
「患者」、「個体」又は「対象」は、交換可能にヒト対象を参照するために用いられる。患者は、治療を必要とすることが疑われるか、又は治療を必要とするヒト対象であり、そのような必要とされる治療を受けていてもよい。場合によっては、個体は、神経内分泌腫瘍などの腫瘍があることが疑われる。腫瘍は、腺腫であってもよい。腫瘍は、癌性腫瘍であってもよい。
【0040】
本明細書において用いられる通りの「下垂体腫瘍」という用語には、乳腺刺激腺腫又はプロラクチン産生腺腫、ACTH分泌腺腫、ソマトトロピン腺腫、コルチコイド分泌刺激腺腫、性腺刺激ホルモン分泌細胞腺腫、甲状腺刺激腺腫及びヌル細胞腺腫が含まれるが、それらに限定されるものではない。ACTH分泌下垂体腫瘍は、下垂体の前葉において発見される場合があり、通常の測定値は直径約10ミリメートル(mm)未満(又は、形状が不規則である場合、それらの最大の線寸法(不規則形状の最も大きい程度を測定するように引かれた線)が約10mm未満)である。ほとんどの下垂体ACTH分泌腺腫は、大きさが小さい(すなわち、微小腺腫)。本方法は、巨大腺腫(線寸法が10mmより大きい)を治療するために、及び微小腺腫(それらの最大寸法が10mm未満)を治療するために適切である。
【0041】
腫瘍の文脈において「完全切除」という用語は、腫瘍がもはや対象におけるACTHレベル又はコルチゾールレベルに影響を及ぼさないような腫瘍の外科的除去を指す。完全切除は、視認可能な腫瘍、例えば下垂体腫瘍の全てを取り除くことを指してもよい。場合によっては、完全切除は、かなりの臨床的有益性又は治癒的有益性を対象に提供するための腫瘍の外科的除去を含む。
【0042】
腫瘍の文脈において、「局在化する(localize)」及び「局在化する(localizing)」という用語は、患者の身体における腫瘍の位置の決定を指す。例えば、腫瘍は、腫瘍の存在を示す画像又は腫瘍を対象とする標識が、イメージング手法によって示されるように、副腎上、副腎内、又は副腎の近くに認められる場合、副腎又は副腎の近くの部位に局在化されてもよい。例えば、腫瘍は、腫瘍の存在を示す画像又は腫瘍を対象とする標識が、イメージング手法によって示されるように、下垂体上、下垂体内、又は下垂体の近くに認められる場合、下垂体若しくはその柄、又は下垂体の近くの部位に局在化されてもよい。
【0043】
腫瘍の文脈において、「同定する(identify)」及び「同定する(identifying)」という用語は、特定の組織部位若しくは身体部位の存在を決定すること、又は腫瘍の型を決定すること、又は腫瘍のステージを決定することを指す。例えば、下垂体内又は下垂体の近くに発見された腫瘍は、下垂体腫瘍であると同定されるが、一方で副腎内又は副腎の近く(又はいずれか他の非下垂体位置内)にあることが決定された腫瘍は、下垂体外腫瘍であると同定され、その場合、そのような腫瘍を有するクッシング症候群患者は、異所性クッシング症候群であると診断され得る。画像の大きさ、形状(例えば、規則的形状又は周辺組織内への浸潤を伴う不規則的形状)は、腫瘍のステージ又は浸潤性の決定に有用であり得る。複数の腫瘍のイメージングは、腫瘍が転移性であるのか否かを決定する際に有用であるが、一方で、単一の腫瘍だけを観察することによって、腫瘍が転移性ではないか、又はまだ転移していないことが示される。
【0044】
「クッシング症候群」という用語は、内因性グルココルチコイド又は外因性グルココルチコイドに対する長期にわたる曝露によって引き起こされる疾患を指す。クッシング症候群患者は、多くの場合、高コルチゾール血症に続発する過血糖に罹患する。クッシング症候群の症候は、以下の、体重増加、高血圧、短期記憶障害、集中力低下、易刺激性、発毛過剰、免疫学的機能障害、赤ら顔、頸部部位の余分な脂肪、満月様顔貌、疲労、赤色皮膚線条、不規則月経又はそれらの組み合わせの内の1又は複数が挙げられるが、それらに限定されるものではない。クッシング症候群の症候としては、追加的に又は代替的に、以下の、不眠症、再発性感染、菲薄皮膚、易挫傷、弱骨、座瘡、禿げ、うつ病、臀部若しくは肩部の脱力、四肢の腫脹、糖尿病、白血球数上昇、低カリウム性代謝性アルカローシス又はそれらの組み合わせの内の1又は複数を挙げることができるが、それらに限定されるものではない。
【0045】
「内因性クッシング症候群」という用語は、下垂体ACTH分泌腫瘍(クッシング病)、非下垂体ACTH分泌腫瘍又はコルチゾール分泌腫瘍(副腎又は副腎外)によるコルチゾールの内因性過剰産生によって引き起こされる1種のクッシング症候群を指す。ACTH分泌腫瘍は、下垂体腺腫、下垂体腺癌、カルチノイド腫瘍(carincinoid tumors)及び神経内分泌腫瘍であってもよい。コルチゾール分泌腫瘍としては、コルチゾール産生副腎腺腫、副腎皮質癌、原発性色素性小結節性副腎疾患(PPNAD)、ACTH非依存性大結節性副腎過形成(AIMAH)及び副腎外コルチゾール分泌腫瘍、例えば卵巣癌が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0046】
「外因性クッシング症候群」という用語は、プレドニゾン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン及び同種のものなどの合成グルココルチコイドの反復投与又は長期投与によって引き起こされる1種のクッシング症候群を指す。クッシング症候群の症候又は徴候を示し、低血清コルチゾールレベルを有する、長期のステロイド補充療法を受けている対象は、外因性クッシング症候群である可能性がある。低血清コルチゾールレベルについての標準的基準範囲は、朝に約4μg/dL以下である。
【0047】
「投与する」という用語は、経口投与、局所接触、坐剤としての投与、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、病巣内投与、鞘内投与、鼻腔内投与若しくは皮下投与、又は対象への徐放性デバイス、例えば小型浸透ポンプの埋め込みを含む。投与は、非経口及び経粘膜(例えば、口腔、舌下、口蓋、歯肉、経鼻、膣内、直腸又は経皮)を含む任意の経路によるものである。非経口投与としては、例えば、静脈内、筋肉内、小動脈内、皮内、経皮、皮下、腹腔内、脳室内及び頭蓋内が挙げられる。他の送達様式としては、リポソーム製剤の使用、静脈内注入、経皮貼布などが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0048】
本明細書において用いられる場合、「ソマトスタチン」及び「SST」という用語は、ペプチドホルモンソマトスタチン及びその活性変異体を指す。ソマトスタチンは、少なくとも2つの天然由来の活性形態、すなわち、14個のアミノ酸の形態及び28個のアミノ酸の形態を有する。代替的形態は、この遺伝子によってコードされる単一のプレプロタンパク質の代替的切断によって生成される。ソマトスタチンは、身体にわたって発現し、高親和性Gタンパク質共役ソマトスタチン受容体への結合によって多くの2次的ホルモンの放出を阻害する。14個の残基の形態は、以下の配列、すなわち、Ala-Gly-Cys-Lys-Asn-Phe-Phe-Trp-Lys-Thr-Phe-Thr-Ser-Cysを有することが報告されており、3位及び14位の2つのシステイン残基の間にジスルフィド架橋を有することが報告されている。
28個の残基の形態は、以下の配列、すなわち、Ser-Ala-Asn-Ser-Asn-Pro-Ala-Met-Ala-Pro-Arg-Glu-Arg-Lys-Ala-Gly-Cys-Lys-Asn-Phe-Phe-Trp-Lys-Thr-Phe-Thr-Ser-Cys(ジスルフィド架橋:17-28)を有することが報告されている。これらの配列は、例えば、Shenら、PNAS79(150:4575-4579(1982)によって報告されている。
【0049】
本細書において用いられる場合、「ソマトスタチン類似体」及びSSAという用語は、ソマトスタチン受容体において活性のペプチド又は他の分子を指し、本明細書において用いられる場合、ソマトスタチン類似体は、ソマトスタチン受容体に結合する。ソマトスタチン類似体は、ソマトスタチン受容体アゴニストであってもよく(すなわち、ソマトスタチン類似体は、ソマトスタチン受容体を活性化してもよく)、ソマトスタチン受容体に対する部分的なアゴニスト効果を及ぼしてもよく、部分的若しくは強固なソマトスタチン受容体アンタゴニストであってもよく、又は、ソマトスタチン受容体に結合するか、若しくは、それ以外の場合、ソマトスタチン受容体に近いか、若しくは接触する場合、他の効果を有してもよい。ソマトスタチン類似体としては、限定されるものではないが、オクトレオチド、オクトレオテート、パシレオチド、ランレオチド、ペンテトレオチド、バプレオチド、セグリチド、コルチスタチン、並びにそれらの類似体及び誘導体が挙げられる。ソマトスタチン類似体は、ソマトスタチン受容体リガンドである。
【0050】
本明細書において用いられる場合、ソマトスタチン受容体という用語は、ソマトスタチンに結合する、Gタンパク質と共役する7個の膜貫通受容体のクラスを指す。それぞれSSTR1~SSTR5と称される5つのソマトスタチン受容体サブタイプがある。例えば、Trends Pharmacol Sci.1995 Mar;16(3):86-8を参照のこと。全長ヒトソマトスタチン受容体としては、391個のアミノ酸残基を有する1型(NCBI受託番号:NP_001040.1)、369個のアミノ酸残基を有する2型(NCBI受託番号:NP_001041.1)、418個のアミノ酸残基を有する3型(NCBI受託番号:NP_001265616.1)、388個のアミノ酸残基を有する4型(NCBI受託番号:NP_001043.2)及び364個のアミノ酸残基を有する5型(NCBI受託番号:NP_001166031.1)が挙げられる。
【0051】
本明細書において用いられる場合、「ソマトスタチン受容体リガンド」又は「ソマトスタチン又はソマトスタチン類似体」という用語は、ソマトスタチン受容体サブタイプ(SSTR1~SSTR5)の内のいずれか1つのいずれかのリガンドを指す。場合によっては、リガンドはソマトスタチンである。ソマトスタチンは、2つの1次的生物学的活性形態SST14及びSST28を有する阻害ポリペプチドである。場合によっては、リガンドは、ソマトスタチンのプレ形態若しくはプレプロ形態、又はその類似体である。場合によっては、ソマトスタチンリガンドは、ソマトスタチン類似体である。ソマトスタチン類似体は、1又は複数のソマトスタチン受容体のアゴニスト又はアンタゴニストであることができる。場合によっては、ソマトスタチンリガンドは、選好的に、2型ソマトスタチン受容体(SSTR2)に結合するか、又は2型ソマトスタチン受容体(SSTR2)を活性化する。場合によっては、ソマトスタチン受容体リガンドは、選好的に、5型ソマトスタチン受容体(SSTR5)に結合するか、又は5型ソマトスタチン受容体(SSTR5)を活性化する。場合によっては、ソマトスタチン受容体リガンドは、選好的に、SSTR2及びSSTR5に結合するか、又はSSTR2及びSSTR5を活性化する。場合によっては、ソマトスタチン受容体リガンドは、選好的に、SSTR2、SSTR3及びSSTR5に結合するか、又はSSTR2、SSTR3及びSSTR5を活性化する。ソマトスタチン受容体リガンドは、長時間作用性製剤又は徐放性製剤で投与され得る。
【0052】
「コルチゾール」という用語は、副腎の索状帯によって産生される天然由来の糖質コルチコイドホルモン(ヒドロコルチゾンとしても知られている)を指し、以下の構造を有する。
【化4】


「総コルチゾール」という用語は、コルチゾール結合グロブリン(CBG又はトランスコルチン)に結合するコルチゾール及び遊離コルチゾール(CBGに結合しないコルチゾール)を指す。「遊離コルチゾール」という用語は、コルチゾール結合グロブリン(CBG又はトランスコルチン)に結合しないコルチゾールを指す。本明細書において用いられる場合、「コルチゾール」という用語は、総コルチゾール、遊離コルチゾール及び/又はCBGに結合するコルチゾールを指す。
【0053】
「副腎皮質刺激ホルモン」又は「ACTH」という用語は、通常は下垂体前葉によって産生され、分泌されるポリペプチド系ホルモンを指す。ACTHは、副腎皮質の特殊細胞によってコルチゾール及び他のグルココルチコイド(GC)の分泌を促進する。健康な哺乳動物において、ACTH分泌は、緻密に調節される。ACTH分泌は、視床下部によって放出されるコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)によって正に調節される。ACTH分泌は、コルチゾール及び他のグルココルチコイドによって負に調節される。緻密に調節された視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の破壊は、ACTH及びコルチゾールの低レベルを引き起こす可能性があり、ひいては、続発性副腎機能不全を引き起こす可能性がある。
【0054】
「グルココルチコイド」(「GC」)という用語は、糖質コルチコイド受容体に結合し、糖質コルチコイド受容体を活性化する化合物を指す。
そのような化合物は、糖質コルチコイド受容体アゴニスト、糖質ステロイド、コルチコイド、コルチコステロイド、又は糖質コルチコイド受容体に結合し、糖質コルチコイド受容体を活性化するステロイドとも称され得る。例えば、コルチゾール、デキサメタゾン及びプレドニゾンは、GCである。
【0055】
「糖質ステロイド」は、糖質コルチコイド受容体に結合するステロイドホルモン又はステロイド性分子を指す。糖質ステロイドは、GCである。糖質ステロイドは、典型的には、21個の炭素原子、環A内におけるα,β-不飽和ケトン、及び環Dに付加したα-ケトール基を有することを特徴とする。糖質ステロイドは、C-11、C-17及びC-19における酸素化又はヒドロキシル化の程度が異なってもよい(Rawn,“Biosynthesis and Transport of Membrane Lipids and Formation of Cholesterol Derivatives,”in Biochemistry,Daisy et al.(eds.),1989,pg.567)。
【0056】
「糖質コルチコイド受容体」(「GR」)コルチゾール及び/又はコルチゾール類似体、例えばデキサメタゾンに特異的に結合するII型糖質コルチコイド受容体(GR-II)を指す(例えば、Turner & Muller,J Mol Endocrinol,2005 35 283-292参照)。GRは、コルチゾール受容体とも称される。用語は、GR、組換えGR及び突然変異GRのアイソフォームを含む。II型ヒトGR受容体(Genbank:P04150)に対する阻害定数(Ki)は、0.0001nM~1,000nM、好ましくは0.0005nM~10nM、最も好ましくは0.001nM~1nMである。
【0057】
「糖質コルチコイド受容体アンタゴニスト」又は「GRA」という用語は、合成又は天然の、コルチゾール又はコルチゾール類似体などの糖質コルチコイド受容体(GR)アゴニストのGRへの結合を部分的に又は完全に阻害する(拮抗する)任意の組成物又は化合物を指す。「特異的な糖質コルチコイド受容体アンタゴニスト」は、アゴニストへのGRの結合に関連するいかなる生物学的応答も阻害する任意の組成物又は化合物を指す。「特異的な」によって、薬物は、ミネラルコルチコイド受容体(MR)、アンドロゲン受容体(AR)又はプロゲステロン受容体(PR)などの他の核内受容体ではなく、GRに選好的に結合する。特異的な糖質コルチコイド受容体アンタゴニストは、MR、AR又はPR、MR及びPRの両方、MR及びARの両方、AR及びPRの両方、又はMR、AR及びPRに対するその親和性よりも10倍大きい(Kd値の1/10)親和性を有するGRに結合することが好ましい。より好ましい実施形態において、特異的な糖質コルチコイド受容体アンタゴニストは、MR、AR又はPR、MR及びPRの両方、MR及びARの両方、AR及びPR、又はMR、AR及びPRに対するその親和性よりも100倍大きい(Kd値の1/100)親和性を有するGRに結合する。ミフェプリストン、及びレラコリラントなどのヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン化合物(及び、例えば、CORT122928、CORT113176)は、GRに結合し、コルチゾールによるその活性化を阻害し、したがって、各々は、「GRA」と称され得る。
【0058】
糖質コルチコイド受容体の文脈における「選択的阻害剤」という用語は、特異的な糖質コルチコイド受容体アゴニスト及び糖質コルチコイド受容体の結合に選択的に干渉する化学化合物を指す。
【0059】
そのようなものを含む糖質コルチコイド受容体アンタゴニストの文脈における「ステロイド骨格」という用語は、内因性ステロイド性糖質コルチコイド受容体リガンドであるコルチゾールの基本構造の修飾を含む糖質コルチコイド受容体アンタゴニストを指す。ステロイド骨格の基本構造は、式Iとして提供される。
式I:ステロイド骨格
【化5】


グルココルチコイドアンタゴニストを生成するためのコルチゾールステロイド骨格の構造的修飾の2つの最も一般的に知られたクラスは、11-βヒドロキシ基の修飾及び17-β側鎖の修飾を含む(例えば、Lefebvre(1989)J.Steroid Biochem.33:557-563参照)。
【0060】
本明細書において用いられる場合、「ミフェプリストン」という用語は、RU486又はRU38.486又は17-β-ヒドロキシ-11-β-(4-ジメチル-アミノフェニル)-17-α-(1-プロピニル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン)とも称さる11β-(4-ジメチルアミノフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1-プロピニル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン)を指す。ミフェプリストンは、典型的には高い親和性で糖質コルチコイド受容体(GR)に結合し、GR受容体への任意のコルチゾール又はコルチゾール類似体の結合によって開始/媒介される生物学的効果を阻害する。ミフェプリストンの塩、水和物及びプロドラッグは、本明細書で用いられる「ミフェプリストン」という用語に全て含まれる。したがって、本明細書において用いられる場合、「ミフェプリストン」は、以下の構造を有する分子:
【化6】


並びにその塩、水和物及びプロドラッグ、及びその医薬組成物を指す。
【0061】
本明細書において用いられる場合、そのようなものを含む糖質コルチコイド受容体アンタゴニストの文脈における「非ステロイド骨格」という句は、コルチゾールとの構造的相同性を共有せず、コルチゾールの修飾ではない糖質コルチコイド受容体アンタゴニストを指す。そのような化合物としては、部分的にペプチド性の、擬似ペプチド性の、及び非ペプチド性の分子体を含むタンパク質の合成模倣体及び合成類似体が挙げられる。
【0062】
非ステロイド性GRA化合物としては、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン骨格を有する糖質コルチコイド受容体モジュレータ及び糖質コルチコイド受容体アンタゴニストも挙げられる。ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン骨格を有する例示的な糖質コルチコイド受容体モジュレータ及び糖質コルチコイド受容体アンタゴニストとしては、米国特許第8,859,774号、米国特許第9,273,047号、米国特許第9,707,223号及び米国特許第9,956,216号に記載されているものが挙げられ、前記特許の全ては、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
例示的なヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物としては、限定されるものではないが、以下の構造:
【化7】


を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノン(「レラコリラント」と称され、「CORT125134」とも称される);
以下の構造:
【化8】


を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6-7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-2-イル)メタノン(「CORT122928」と称される);及び
以下の構造:
【化9】


を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロP,4-g]イソキノリン-4a-イル)(ピリジン-2-イル)メタノン(「CORT113176」と称される)が挙げられる。
【0064】
本発明の化合物の記載は、当業者に知られている化学結合の原理によって限定される。したがって、基が多くの置換基の内の1又は複数で置換されてもよい場合、そのような置換は、化学結合の原理に従うように、且つ、本質的に不安定でなく、及び/又は水性条件、中性条件若しくは生理学的条件などの周囲条件において不安定である可能性があるものとして当業者に知られている化合物が得られるように選択される。
【0065】
「医薬的に許容し得る賦形剤」及び「医薬的に許容し得る担体」は、対象に対する活性剤の投与及び対象による吸収を補助し、且つ、患者に対する著しい有害な毒物学的効果を引き起こすことなく本発明の組成物に含まれ得る物質を指す。医薬的に許容し得る賦形剤の非限定的な例としては、水、NaCl、生理食塩水、乳酸加リンゲル、生理スクロース、生理グルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング、甘味剤、着香剤及び着色剤、並びに同種のものが挙げられる。当業者は、他の医薬的賦形剤が本発明において有用であることを認識するであろう。
【0066】
III.治療方法及び鑑別診断
クッシング症候群は、症候群を特性決定するコルチゾール過剰作用又は過剰GC作用の源についての知識なしに診断されてもよい。したがって、治療(例えば、ミフェプリストン又はレラコリラントなどのGRMの投与)を開始してもよいが、患者に対してそれらの状態の最良の治療を提供するためにさらなる診断情報を取得することを必要としてもよい。本方法は、GRM治療及びGRA治療を提供し、同時に、患者が神経内分泌腫瘍などの腫瘍に罹患しているかどうかを決定するために有効なさらなる情報を取得するためにその治療を利用する。本方法は、GRM治療及びGRA治療を提供し、同時に、神経内分泌腫瘍などの腫瘍に罹患している患者における腫瘍を治療し、局在化し、同定するために有効なさらなる情報を取得するためにその治療を利用する。本方法は、GRM治療及びGRA治療を提供し、同時に、クッシング症候群患者が、下垂体クッシング症候群又は副腎クッシング症候群又は外因性クッシング症候群に罹患しているかどうかを決定するために有効なさらなる情報を取得するためにその治療を利用する。場合によっては、下垂体腫瘍は、MRI又は他のイメージング技術において視認可能ではなく、それによって外科的切除に対する著しい課題が生じる。他の場合、腫瘍は大きく、重要な構造を囲むことに影響を与える可能性があり、したがって、完全な腫瘍切除を妨げる。大規模な外科的切除は、正常な下垂体組織に対する著しい損傷を引き起こす可能性があり、それによって下垂体機能障害、及び、場合によっては、副腎機能不全が生じる。本明細書において提供される方法は、患者が下垂体腫瘍、下垂体外腫瘍(例えば、副腎腫瘍)又は外因性クッシング症候群を有するかどうかを決定するために使用され得る。方法は、対象におけるACTH分泌腫瘍の切除が完全であったか、又は成功したのかについての術後決定のためにも有用である。
【0067】
方法は、クッシング症候群に罹患している患者から生物学的試料を得ることを含む。試料は、典型的には、患者から取り出される(すなわち、試料及びその分析は、典型的にはインビトロで利用される)。生物学的試料は、患者の唾液、尿、全血、血漿、血清又は他の生物学的試料であってもよい。いくつかの実施形態において、生物学的試料は血液試料である。実施形態において、ACTH及びコルチゾールの一方又は両方は、クッシング症候群患者から得られる血液試料の血漿中において測定される。実施形態において、ACTH及びコルチゾールの一方又は両方は、クッシング症候群患者から得られる血液試料の血清中において測定される。いくつかの実施形態において、生物学的試料は唾液である。他の実施形態において、生物学的試料は尿である。実施形態において、試料は、全血、血漿又は血清ではない任意の生物学的液であってもよい。
【0068】
本発明は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌腫瘍を治療する方法であって、前記方法を必要とする対象における副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌腫瘍を治療する方法を提供するものである。一態様において、方法は、腫瘍によるACTHの分泌を減少させるために有効な量の糖質コルチコイド受容体アンタゴニストGRAとソマトスタチン、ソマトスタチン類似体(SSA)又はソマトスタチン受容体リガンドとを対象に投与することを含む。投与は、GRAとソマトスタチン、SSA又はソマトスタチン受容体リガンドとが両化合物を含む製剤において投与される同時投与であってもよい。別の場合、GRAを投与すことが可能であり、次いで、ソマトスタチン、SSA又はソマトスタチン受容体リガンドを投与することが可能である。さらに別の変形例として、ソマトスタチン、SSA又はソマトスタチン受容体リガンドを投与することが可能であり、次いで、GRAを投与する。
【0069】
A.(ソマトスタチン受容体リガンド)
ACTH分泌腫瘍は、ソマトスタチン又はソマトスタチン類似体(SSA)などのソマトスタチン受容体リガンドと併用して、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRA(例えば、レラコリラント)などの有効量のGRAで治療され得る。例えば、ACTH分泌腫瘍は、有効量のGRAとソマトスタチン又はソマトスタチン類似体(SSA)などのソマトスタチン受容体リガンドとで治療され得る。場合によっては、ソマトスタチン受容体リガンドは、ソマトスタチン受容体アゴニストである。
【0070】
例示的なソマトスタチン受容体リガンドとしては、限定されるものではないが、米国特許第8,946,154号に記載されているものなどのペプチドソマトスタチン受容体リガンドが挙げられる。例示的なソマトスタチン受容体リガンドとしては、限定されるものではないが、米国特許第6,818,739号に記載されているものなど、オンコルヒュンクス・ミキスに由来するソマトスタチンポリペプチド及びそれらの類似体又は誘導体がさらに挙げられる。例示的なソマトスタチン受容体リガンドとしては、限定されるものではないが、1若しくは複数のソマトスタチン受容体サブタイプ(例えば、SSTR1~SSTR5の内のいずれか1つ又はそれらの組み合わせ)に結合するか、又は結合し且つ1若しくは複数のソマトスタチン受容体サブタイプを活性化する抗体がさらに挙げられる。例示的なソマトスタチン受容体リガンドとしては、限定されるものではないが、米国特許第7,189856号に記載されているものなどの非ペプチドソマトスタチン受容体リガンドがさらに挙げられる。例示的なソマトスタチン受容体リガンドとしては、限定されるものではないが、米国特許第6,358,941号に記載されているソマトスタチン受容体リガンドがさらに挙げられる。上記及び下記の両方の本明細書において考察される全ての特許、特許公開及び特許出願は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
例示的なソマトスタチン受容体リガンドとしては、限定されるものではないが、選択的ソマトスタチン受容体リガンドがさらに挙げられる。例えば、ソマトスタチン受容体リガンドは、SSTR1~SSTR5の内の1つに対して選択的である(例えば、選択的に結合するか、又は選択的に活性化する)可能性がある。場合によっては、ソマトスタチン受容体リガンドは、SSTR1に対して選択的である(例えば、選択的に結合するか、又は選択的に活性化する)。場合によっては、ソマトスタチン受容体リガンドは、SSTR2に対して選択的である。場合によっては、ソマトスタチン受容体リガンドは、SSTR3に対して選択的である(例えば、選択的に結合するか、又は選択的に活性化する)。場合によっては、ソマトスタチン受容体リガンドは、SSTR4に対して選択的である(例えば、選択的に結合するか、又は選択的に活性化する)。場合によっては、ソマトスタチン受容体リガンドは、SSTR5に対して選択的である(例えば、選択的に結合するか、又は選択的に活性化する)。ソマトスタチン受容体リガンドとしては、ソマトスタチン自体、並びにオクトレオチド、ランレオチド、パシレオチド(pasoreotide)、バプレオチド、セグリチド、コルチスタチン、ペンテトレオチド及びその他などのソマトスタチン類似体が挙げられる。
【0072】
場合によっては、ソマトスタチン受容体リガンドは、SSTR1~SSTR5からなる群から選択される2つのソマトスタチン受容体に対して選択的である(例えば、選択的に結合するか、又は選択的に活性化する)。例えば、ソマトスタチン受容体リガンドは、SSTR1及びSSTR4に対して選択的である可能性がある。別の例として、ソマトスタチン受容体リガンドは、SSTR2及びSSTR5に対して選択的であり得る。場合によっては、ソマトスタチン受容体リガンドは、SSTR1~SSTR5からなる群から選択される3つのソマトスタチン受容体に対して選択的である(例えば、選択的に結合するか、又は選択的に活性化する)。場合によっては、ソマトスタチン受容体リガンドは、SSTR1~SSTR5からなる群から選択される4つのソマトスタチン受容体に対して選択的である(例えば、選択的に結合するか、又は選択的に活性化する)。例示的な選択的ソマトスタチン受容体リガンドとしては、限定されるものではないが、Rohrerら、1998,Science 282:737に記載されているものが挙げられる。例示的な選択的ソマトスタチン受容体リガンドとしては、限定されるものではないが、例えば、米国特許出願公開第20060069017号及び米国特許出願公開第20090325863号に記載されているものがさらに挙げれられる。
【0073】
場合によっては、ソマトスタチン受容体リガンドは、オクトレオチド、放射性同位元素で標識されたオクトレオチド、オクトレオテート、パシレオチド、ランレオチド、ペンテトレオチド及びそれらの類似体又は誘導体からなる群から選択される。場合によっては、ソマトスタチン受容体リガンドは、検出可能な標識又は細胞毒性剤に共役する。例示的な検出可能な標識としては、スピン標識、蛍光標識及び放射性核種が挙げられる。例示的な細胞毒性剤としては、放射性核種及び細胞障害性化学療法剤が挙げられる。放射性核種に共役する例示的なソマトスタチン受容体リガンドとしては、123I-Tyr-オクトレオチド、111In-DTPA-D-Phe-オクトレオチド、[111In-DTPA]オクトレオチド、[90Y-DOTA、Tyr]オクトレオチド、又は[177Lu-DOTA,Tyr]オクトレオテートが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0074】
コルチゾールアッセイ
コルチゾールレベルは、クッシング症候群に罹患している患者から採取される唾液、尿、全血、血清、血漿又は任意の他の生物学的液などの生物学的試料中において測定され得る。そのような試料は、典型的には、インビトロで分析される。場合によっては、コルチゾールレベル及びACTHレベルを測定するために、同じ試料が用いられる。他の場合において、コルチゾールレベル及びACTHレベルを測定するために、異なる試料が用いられる。例えば、コルチゾールレベルを唾液中又は尿中において測定することが可能であり、ACTHレベルを血漿中において測定することが可能である。さらに他の場合において、レベルを測定するために、同じ型の異なる試料が用いられる。コルチゾールレベルを測定するための方法は、当業者に知られている。有用なアッセイとしては、イムノアッセイ、例えば、競合イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、免疫蛍光酵素アッセイ、並びにELISA、競合タンパク質結合アッセイ及び質量スペクトロメトリ、例えば、高性能液体クロマトグラフィ/三重四極質量スペクトロメトリ(LC-MS/MS)が挙げられる。試料中におけるコルチゾールを測定するための商業的キットは、例えば、Beckman-Coulter、Seimens、Roche Diagnostics及び同種のものから入手可能である。イムノアッセイの非限定的な例としては、ADVIA Centaur(登録商標)コルチゾールアッセイ(Siemens Healthcare Global)、ARCHITECT i2000SRコルチゾール(Abbott)、Immulite(登録商標)2000コルチゾールアッセイ(Siemans Healthcare Global;#L2KCO2)、Vitros(登録商標)ECiコルチゾールアッセイ(Ortho Clinical Diagnostics;#107 4053)及びElecsys(登録商標)コルチゾールイムノアッセイ(Roche Molecular Diagnostics;#11875116160)が挙げられる。
【0075】
GRAの投与は、コルチゾール産生を限定する作用を行う正規フィードバック機構に干渉し、正規フィードバック機構を抑制するか、又は遮断する可能性がある。ミフェプリストンによる臨床的経験は、長期間にわたるミフェプリストン投与によって、平均尿中遊離コルチゾール(UFC)及び平均血清中ACTHの増加が大きくなったことを示す。有効なフィードバックがない場合、例えば長期のミフェプリストン投与によって、コルチゾールレベルは、起こる場合、上昇し、低カリウム血症、子宮内膜肥厚、膣出血又は他の有害作用をもたらす可能性がある。患者が、クッシング症候群の場合など、すでにコルチゾール過剰に罹患している場合、可能性があるそのような有害作用は、より著しい場合がある。そのような場合、低カリウム血症、子宮内膜肥厚、膣出血という有害作用、又は他の有害作用のリスク又は重症度は、患者がすでにコルチゾール過剰に罹患しなかった場合において生じ得るものよりも重篤である可能性がある。
【0076】
驚くべきことに、本明細書において開示されるように、且つ、例えばミフェプリストンによる経験に基づいて期待されるものとは相容れないが、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMのレラコリラントの投与は、クッシング症候群患者のコルチゾールレベルの有意な増加をもたらさない。
【0077】
ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン化合物のレラコリラントの用量の投与を受けたクッシング症候群患者において、コルチゾールレベルを測定した。レラコリラントの漸増用量の投与を行った12週間の試験の過程にわたって、これらの患者において尿中遊離コルチゾール(UFC)を測定した。何人かの患者は、12週間の試験の全てを継続しなかった。平均UFC(1日当たりのミクログラム(mcg/日)のコルチゾールの単位)は、投与されたレラコリラント用量及び測定の際の時間に従って示される。上の数字は、患者の各群についての平均値であり、括弧内の数字は、各群についての測定値の標準偏差である。これらの結果を表1に示す。
表1 群1:平均(SD)24時間UFC(mcg/日)
【表1】
【0078】
レラコリラントの用量の投与を受けたクッシング症候群患者の第2群において、コルチゾールレベルを測定した。この試験において投与される用量は、表1に示される試験よりも高かった。レラコリラントの漸増用量の投与を行った16週間の試験の過程にわたって、これらの患者において尿中遊離コルチゾール(UFC)を測定した。何人かの患者は、16週間の試験の全てを継続しなかった。平均UFC(1日当たりのミクログラム(mcg/日)のコルチゾールの単位)は、投与されたレラコリラント用量及び測定の際の時間に従って示される。上の数字は、患者の各群についての平均値であり、括弧内の数字は、各群についての測定値の標準偏差である。これらの結果を表2に示す。
表2 群2:平均(SD)24時間UFC(mcg/日)
【表2】
【0079】
個別の患者について得られたコルチゾールレベル、及びUFCの表の概要(上記の表1及び表2)は、UFCにおけるベースラインからの有意な変化を示さない。対応する平均ACTHレベルは、ベースラインから治療の終了まで適度の増加を示した。群1:ベースラインにおける11.02pmol/L±8.04と比較して、Week12において平均ACTH14.68pmol/L±10.34。群2:ベースラインにおける12.79pmol/L±8.36と比較して、Week16において、又は最後に観察された平均ACTH15.56pmol/L±10.72。
【0080】
上記したように、コルチゾールは、下垂体及び視床下部のレベルにおけるネガティブフィードバックを介してそれ自身の合成を阻害することが知られている。ミフェプリストンは、このネガティブフィードバックを強力に阻害するが、ミフェプリストンの投与によって、16週間の治療後に平均血清中ACTHが2.5倍増加し、平均UFCが4.6倍増加した(Korlym(登録商標)について、米国食品医薬品局により提出されたNDA202107 Study C1073-400CSRに報告されている通り)。対照的に、レラコリラントは、ACTHのわずかな増加に関連しているが、コルチゾール濃度の増加に関連せず、このことは、レラコリラントがネガティブコルチゾールフィードバックの強力なアンタゴニストではないが、依然として末梢組織におけるGRの強力なアンタゴニストであることを示唆する。(経時的な平均UFCレベルの変動は、試験の知られたばらつきに一致している。)
【0081】
出願人は、レラコリラントの第2相試験中に薬物誘発性低カリウム血症の欠如がクッシング症候群患者において認められなかったことを示す。上記の表1及び表2に示される安定したコルチゾール濃度は、第2相試験において薬物誘発性低カリウム血症が認められなかったことの原因である可能性がある。
【0082】
出願人は、そのような結果が、ミフェプリストン投与によって得られた結果とは対照的にあることを示す。これらの結果は、ミフェプリストン及びレラコリラントが、ヒト患者におけるコルチゾールレベル及びACTHレベルに対して異なる影響を及ぼし、異なるGRMが、ACTH及びコルチゾールに対して異なる影響を及ぼす可能性があることを示す。ここで示される驚くべき且つ異なる結果は、少なくとも、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMのレラコリラントが、コルチゾールレベルのさらなる増加を引き起こさず、他のGRMで認められる低カリウム血症又は他の副作用を引き起こさないという理由のため、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMのレラコリラントが、ステロイド性GRMミフェプリストン及び他のものを超える著しい長所を提供することを示す。
【0083】
糖質コルチコイド受容体モジュレータの投与
本明細書に開示される方法において、ソマトスタチン又はソマトスタチン類似体と併用してレラコリラント又は他のヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM(例えば、CORT122928又はCORT113176)の任意の適切な用量を用いてもよい。実施形態において、GRMは、経口投与される。いくつかの実施形態において、GRMは、1日当たり1回投与される。用量は、1日当たり少なくとも約15ミリグラム(mg)であってもよく、約800mg/日であってもよい。実施形態において、用量は、25mg/日、50mg/日、75mg/日、100mg/日、150mg/日、200mg/日、250mg/日、300mg/日、350mg/日、400mg/日、450mg/日、500mg/日、550mg/日、600mg/日、700mg/日、又は750mg/日であってもよい。レラコリラント又は他のヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMの用量は、1日の間に1回又は2回以上投与されてもよい。レラコリラント又は他のヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMの用量は、1日間、2日間、3日間以上投与されてもよい。いくつかの実施形態において、GRMは、少なくとも1回の用量で投与される。実施形態において、GRMは、1日当たり1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回以上の用量で投与され得る。実施形態において、GRMは、1日当たり1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回以上の用量で経口投与される。
【0084】
ソマトスタチン又はソマトスタチン類似体と併用して、例えば2~48時間の期間にわたって、1回又は複数回の用量のレラコリラントなどの少なくとも1回の用量のヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMが、患者に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM又はGRAは、単回投与として投与される。他の実施形態において、GRM又はGRAは、2~48時間の期間、例えば、2時間の期間、3時間の期間、4時間の期間、5時間の期間、6時間の期間、7時間の期間、8時間の期間、9時間の期間、10時間の期間、11時間の期間、12時間の期間、14時間の期間、16時間の期間、18時間の期間、20時間の期間、22時間の期間、24時間の期間、26時間の期間、28時間の期間、30時間の期間、32時間の期間、34時間の期間、36時間の期間、38時間の期間、40時間の期間、42時間の期間、44時間の期間、46時間の期間又は48時間の期間にわたって、1回超の用量、例えば2回の用量、3回の用量、4回の用量、5回以上の用量で投与される。いくつかの実施形態において、GRAは、2~48時間、2~36時間、2~24時間、2~12時間、2~8時間、8~12時間、8~24時間、8~36時間、8~48時間、9~36時間、9~24時間、9~20時間、9~12時間、12~48時間、12~36時間、12~24時間、18~48時間、18~36時間、18~24時間、24~36時間、24~48時間、36~48時間、又は42~48時間にわたって投与される。
【0085】
生物学的試料、例えば、血漿試料、血清試料、全血試料、尿試料又は唾液試料は、GRA投与の2~48時間後、例えば、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、9時間後、10時間後、11時間後、12時間後、13時間後、14時間後、15時間後、16時間後、17時間後、18時間後、19時間後、20時間後、21時間後、22時間後、23時間後、24時間後、25時間後、26時間後、27時間後、28時間後、29時間後、30時間後、31時間後、32時間後、33時間後、32時間後、35時間後、36時間後、37時間後、38時間後、39時間後、40時間後、41時間後、42時間後、43時間後、44時間後、45時間後、46時間後、47時間後又は48時間後に、1回又は複数回、患者から得られ得る。いくつかの実施形態において、試料は、GRA投与の2~24時間後、例えば、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、9時間後、10時間後、11時間後、12時間後、13時間後、14時間後、15時間後、16時間後、17時間後、18時間後、19時間後、20時間後、21時間後、22時間後、23時間後又は24時間後に患者から採取される。
【0086】
ソマトスタチン又はソマトスタチン類似体と併用した投与のために適切なヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン骨格を有する例示的なGRMとしては、米国特許第8,859,774号、米国特許第9,273,047号、米国特許第9,707,223号及び米国特許第9,956,216号に記載されているものが挙げられる。
【0087】
実施形態において、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMは、以下の構造:
【化10】

を有する、「レラコリラント」及び「CORT125134」としても知られている化合物(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノン(米国第8,859,774号の実施例18)である。
【0088】
実施形態において、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMは、以下の構造:
【化11】


を有する化合物(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-2-イル)メタノン(「CORT122928」と称される)である。
【0089】
実施形態において、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMは、以下の構造:
【化12】


を有する化合物(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-H-ピラゾロP,4-g]イソキノリン-4a-イル)(ピリジン-2-イル)メタノン(「CORT113176」と称される)である。
【0090】
糖質コルチコイド受容体アンタゴニストの医薬組成物
本明細書に開示される方法の実施において投与される組成物は、多種多様な経口投与形態、非経口投与形態及び局所投与形態を含む任意の適切な形態で調製され得る。いずれかの経口調製物としては、患者による服用のために適切な錠剤、丸剤、粉剤、糖衣剤、カプセル剤、液剤、トローチ剤、カシェ剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などが挙げられる。本明細書に開示される方法において用いられる組成物を、注射によって、すなわち、静脈内に、筋肉内に、皮内に、皮下に、十二指腸内に、又は腹腔内に投与することもできる。実施形態において、本明細書に記載される組成物は、吸入によって、例えば鼻腔内に投与され得る。さらに、本明細書に開示される方法の実施において投与される組成物は、経皮投与され得る。本明細書に開示される方法の実施において投与される組成物を、坐剤、吸入剤、粉剤及びエアロゾル製剤(ステロイド吸入剤の例については、Rohatagi,J.Clin.Pharmacol.35:1187-1193,1995;Tjwa,Ann.Allergy Asthma Immunol.75:107-111,1995参照)を含む、眼内経路、腟内経路及び直腸内経路によって投与してもよい。
【0091】
本明細書に開示される方法の実施における投与のために適切な医薬組成物を調製するために、医薬的に許容し得る担体は、固体又は液体のいずれであってもよい。固体形態調製物としては、粉剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤及び分散性顆粒剤が挙げられる。固体担体は、希釈剤、着香剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤又は封入材料として作用してもよい1又は複数の物質であることができる。製剤化及び投与のための手法に関する詳細は、科学文献及び特許文献(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Maack Publishing Co,Easton PA(“Remington’s”)の最新版参照)に充分に記載されている。
【0092】
粉剤において、担体は、微粒化活性成分との混合物においてある微粉固体である。活性成分は、適切なバランスの必要な結合特性を有する担体と混合され、所望される形状及び大きさで圧密化される。粉剤及び錠剤は、好ましくは、5%又は10%~70%の本発明の化合物を含む。
【0093】
適切な固体賦形剤としては、炭酸マグネシウム;ステアリン酸マグネシウム;タルク;ペクチン;デキストリン;デンプン;トラガカントゴム;低融点ロウ;カカオバター;炭水化物;ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールが挙げられるが、それらに限定されるものではない糖、トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ又は他の植物に由来するデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;アラビアゴム及びトラガカントゴムが挙げられるゴム;並びにゼラチン及びおよびコラーゲンが挙げられるが、それらに限定されるものではないタンパク質、が挙げられるが、それらに限定されるものではない。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤又は可溶化剤が加えられてもよい。
【0094】
糖衣剤コアは、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール及び/又は二酸化チタンを含んでもよい濃縮糖液、ラッカー溶液並びに適切な有機溶媒又は溶媒混合物などの適切なコーティングを有する。製剤同定のために、又は活性化合物の量(すなわち、用量)を特性決定するために、染料又は顔料を錠剤又は糖衣剤コーティングに加えてもよい。例えば、ゼラチンで作製される押し込み型カプセル剤、及びゼラチンとグリセロール又はソルビトールなどのコーティングとで作製される軟質密封カプセル剤を用いる本発明の医薬調製物を経口的に使用することもできる。押し込み型カプセル剤は、充填剤又は結合剤、例えばラクトース又はデンプン、潤滑剤、例えばタルク又はステアリン酸マグネシウム、及び、所望により、安定剤と混合される本発明の化合物を含むことができる。軟質カプセル剤において、本発明の化合物は、安定剤の有無にかかわらず、脂肪油、流動パラフィン又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体中に溶解又は懸濁されてもよい。
【0095】
投与の方法
本明細書に開示される方法の実施において投与される組成物は、経口方法、非経口方法(例えば、静脈内注射又は筋肉内注射)及び局所方法を含む任意の適切な手段によって送達され得る。局所経路による経皮投与方法は、アプリケータスティック剤、溶剤、懸濁剤、乳剤、ゲル剤、乳剤、軟膏剤、ペースト剤、ゼリー剤、ペイント剤、粉剤及びエアロゾル剤として製剤化され得る。
【0096】
本明細書に開示される方法の実施において投与される組成物は、昼又は夜の間におけるいかなる時点においても投与され得る。本明細書において提供される方法の実施形態において、組成物は朝に投与され、朝食の前に朝に投与されてもよく(「絶食」投与)、又は患者が朝食を食べ始めた後の約30分間以内若しくは約1時間以内に朝に投与されてもよい(「食事」投与)。
【0097】
医薬調製物は、好ましくは単位投与形態においてある。そのような形態において、調製物は、適切な量の本発明の化合物及び組成物を含む単位用量に小分けされる。単位投与形態は、包装された調製物、すなわち、バイアル又はアンプルにおける小包にされた錠剤、カプセル剤及び粉剤などの離散量の調製物を含む包装であることができる。また、単位投与形態は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤又はトローチ剤自体であってもよいか、又は包装形態におけるこれらの内のいずれかの適切な数であってもよい。
【0098】
本明細書に開示される方法の実施において投与される組成物は、経口投与され得る。例えば、本明細書に開示される方法の実施において投与される組成物は、本明細書に記載される通りの丸剤、カプセル剤又は液体製剤として投与され得る。別の場合、組成物は、非経口投与を介して提供され得る。例えば、組成物は、(例えば、注射又は注入によって)静脈内投与され得る。本明細書に記載される化合物及びその医薬組成物又は医薬製剤の投与のさらなる方法は、本明細書に記載される。
【0099】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法の実施において投与される組成物は、1回の用量で投与される。他の実施形態において、組成物は、1回超の用量、例えば、2回の用量、3回の用量、4回の用量、5回の用量、6回の用量、7回以上の用量で投与される。場合によっては、用量は、同等の量である。他の場合において、用量は、異なる量である。用量は、投与期間にわたって増加してもよいか、又は次第に減少してもよい。
【0100】
IV. 実施例
以下の実施例は、請求された本発明を説明するものであるが、限定することを意図するものではない。
【0101】
クッシング症候群患者が有する腫瘍をイメージングしようと試みたが、患者のコンピュータ断層撮影(CT)画像及び磁気共鳴イメージング(MRI)画像は、それぞれ、患者における異所性腫瘍を同定するための画像を提供することができなかった。患者における腫瘍をイメージングし、局在化するさらなる試みにおいて、患者の右肺/縦隔部位に対する腫瘍の局在化を可能とした点が見られたインジウムオクトレオスキャン画像(イメージング前に111インジウムの放射性同位元素で標識されたオクトレオチドが患者に投与された)を得た。図1に示されるように、クッシング症候群患者のインジウムオクトレオスキャン画像は、異所性腫瘍のわずかな表示を示す(右肺/縦隔における暗色の点は、軽度にオクトレオチド陽性の病変を示す)。
【0102】
次いで、レラコリラントを、4ヵ月間、1日当たり1回、患者に経口投与した。患者に、1日当たり250ミリグラム(mg)のレラコリラントを4週間投与した後、次の4週間、300mg/日のレラコリラントを投与した後、さらに4週間、350mg/日のレラコリラントを投与し、次いで、さらに4週間、400mgのレラコリラントを投与した。図2は、この4ヵ月間のレラコリラントによる治療後に得られた同じクッシング症候群患者のインジウムオクトレオスキャン画像を示す。図2の画像は、異所性腫瘍を明確に示す。レラコリラント治療は、異所性腫瘍のインジウムオクトレオスキャン(111インジウムの放射性同位元素で標識されたオクトレオチド)画像を増強した。
【0103】
図2のインジウムオクトレオスキャン画像は、図1の画像と比較して、患者における腫瘍の非常に改善され、増強された画像を提供する。図1に示される画像と比較した図2のインジウムオクトレオスキャン画像の改善は、レラコリラント治療の前のその発現と比較して、ソマトスタチン受容体発現が増加したこと、例えばsst2受容体発現が増加したことに起因するものであったと考えられる。
【0104】
本明細書に開示される方法において、レラコリラントの例示的用量を変化させることができることが理解されるであろう。本明細書に開示される方法において、例えば、250mg/日、300mg/日、350mg/日及び400mg/日のレラコリラント用量に加えて、25mg/日若しくは50mg/日若しくは100mg/日若しくは150mg/日若しくは200mg/日若しくは250mg/日若しくは450mg/日若しくは500mg/日若しくは550mg/日のレラコリラント用量、又はレラコリラントの他の用量を用いてもよい。
【0105】
上記の実施例において用いられたレラコリラントの例示的用量に加えて、レラコリラントの代わりに、又はレラコリラントと共に、他のヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン化合物を患者に投与してもよいことがさらに理解されるであろう。例えば、本明細書に開示される方法の実施において投与され得る他のヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン化合物としては、CORT122928、CORT113176、並びに米国特許第8,859,774号及びそれらの続きに開示される他のヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRM化合物が挙げられる。
【0106】
前述の本発明を理解の明暸性のために図と例とをあげて多少詳細に記載したが、当業者は、添付の特許請求の範囲の範囲内である種の変更及び修正を行ってもよいことを理解するであろう。本明細書において考察される全ての特許、特許出願、特許公開及び参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
なお、本発明には、以下の態様が含まれる。
<1> 神経内分泌腫瘍を有する患者において、コルチゾールレベル又は低カリウム血症のリスクを増加させることなく神経内分泌腫瘍を治療する方法であって、前記腫瘍がベースラインレベルのソマトスタチン受容体発現を有し、
a)前記神経内分泌腫瘍におけるソマトスタチン受容体(SR)の前記発現を刺激するために有効な少なくとも1回の用量のヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン糖質コルチコイド受容体モジュレータ(GRM)を前記患者に投与すること、及び
b)少なくとも1回の用量のソマトスタチン又はソマトスタチン類似体を前記患者に投与すること、
を含み、
それによって、コルチゾールの有意な増加をもたらすことなく、且つ、前記患者における低カリウム血症の前記リスクを増加させることなく、前記神経内分泌腫瘍を治療する、方法。
<2> 前記ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンが、構造:
【化13】

を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノン(レラコリラント)である、前記<1>に記載の方法。
<3> 前記方法が、ソマトスタチンを投与することを含む、前記<1>に記載の方法。
<4> 前記方法が、オクトレオチド、放射性同位元素で標識されたオクトレオチド、オクトレオテート、パシレオチド、ランレオチド、ペンテトレオチド、バプレオチド、セグリチド、コルチスタチン、並びに 123 I-Tyr -オクトレオチド、 111 In-DTPA-D-Phe -オクトレオチド、[ 111 In-DTPA ]オクトレオチド、[ 90 Y-DOTA、Tyr ]オクトレオチド、 111 In-オクトレオチド、 111 In-ペンテトレオチド及び[ 177 Lu-DOTA,Tyr ]オクトレオテートからなる群から選択される放射性同位元素で標識されたそれらの誘導体、からなる群から選択されるソマトスタチン類似体(SSA)を投与することを含む、前記<1>に記載の方法。
<5> ソマトスタチン受容体発現の前記ベースラインレベルが、イメージングによって検出不可能であるか、又は不十分に検出可能なだけである、前記<1>に記載の方法。
<6> 前記患者内の前記腫瘍を局在化するために有効な前記患者における標識されたソマトスタチン又はソマトスタチン類似体のイメージングをさらに含む、前記<1>に記載の方法。
<7> 前記患者中の腫瘍局在化のために有効な前記ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMの前記投与の後に、前記患者における標識されたソマトスタチン又はソマトスタチン類似体のイメージングをさらに含む、前記<5>に記載の方法。
<8> 前記患者に投与される前記少なくとも1回の用量のソマトスタチン又はソマトスタチン類似体が、前記腫瘍におけるソマトスタチン受容体発現のベースライン量を超えて前記腫瘍のソマトスタチン受容体の発現を増加させるために有効である、前記<1>に記載の方法。
<9> 前記患者がクッシング症候群に罹患し、前記方法が、前記クッシング症候群を治療するために有効である、前記<1>に記載の方法。
<10> 前記患者がクッシング病に罹患し、前記方法が、前記クッシング病を治療するために有効である、前記<9>に記載の方法。
<11> 神経内分泌腫瘍を有する患者において、前記患者におけるコルチゾールレベル又は低カリウム血症のリスクを増加させることながない神経内分泌腫瘍局在化方法であって、前記腫瘍がベースラインレベルのソマトスタチン受容体発現を有し、
a)前記神経内分泌腫瘍におけるソマトスタチン受容体(SR)の発現を刺激するために有効な少なくとも1回の用量のヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン糖質コルチコイド受容体モジュレータ(GRM)を前記患者に投与すること、
b)少なくとも1回の用量のソマトスタチン又はソマトスタチン類似体を前記患者に投与すること、及び
c)前記患者に、前記患者内の前記腫瘍の画像を提供するために有効なイメージングすること、
を含み、
それによって、コルチゾールの有意な増加をもたらすことなく、且つ、前記患者における低カリウム血症の前記リスクを増加させることのない、前記神経内分泌腫瘍局在化方法。
<12> 前記ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンが、構造:
【化14】


を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノン(レラコリラント)である、前記<11>に記載の方法。
<13> 前記方法が、ソマトスタチンを投与することを含む、前記<11>に記載の方法。
<14> 前記方法が、オクトレオチド、放射性同位元素で標識されたオクトレオチド、オクトレオテート、パシレオチド、ランレオチド、ペンテトレオチド、バプレオチド、セグリチド、コルチスタチン、並びに 123 I-Tyr -オクトレオチド、 111 In-DTPA-D-Phe -オクトレオチド、[ 111 In-DTPA ]オクトレオチド、[ 90 Y-DOTA、Tyr ]オクトレオチド、 111 In-オクトレオチド、 111 In-ペンテトレオチド及び[ 177 Lu-DOTA,Tyr ]オクトレオテートからなる群から選択される放射性同位元素で標識されたそれらの誘導体からなる群、から選択されるソマトスタチン類似体(SSA)を投与することを含む、前記<11>に記載の方法。
<15> ソマトスタチン受容体発現の前記ベースラインレベルが、イメージングによって検出不可能であるか、又は不十分に検出可能なだけである、前記<11>に記載の方法。
<16> 前記患者内の腫瘍局在化のために有効な前記患者における標識されたソマトスタチン又はソマトスタチン類似体のイメージングをさらに含む、前記<11>に記載の方法。
<17> 前記患者中の腫瘍局在化のために有効な前記ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRMの前記投与の後に、前記患者における標識されたソマトスタチン又はソマトスタチン類似体のイメージングをさらに含む、前記<15>に記載の方法。
<18> 前記患者に投与される前記少なくとも1回の用量のソマトスタチン又はソマトスタチン類似体が、前記腫瘍におけるソマトスタチン受容体発現のベースライン量を超えて前記腫瘍のソマトスタチン受容体の発現を増加させるために有効である、前記<11>に記載の方法。
<19> 前記患者がクッシング症候群に罹患し、前記方法が、前記クッシング症候群を治療するために有効である、前記<11>に記載の方法。
<20> 前記患者がクッシング病に罹患し、前記方法が、前記クッシング病を治療するために有効である、前記<19>に記載の方法。

図1
図2