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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】静脈圧検出装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20240228BHJP
   A61B 5/0225 20060101ALI20240228BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
A61B5/022 400E
A61B5/0225 F
A61B5/02 310A
A61B5/02 310J
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021541306
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 IB2020055060
(87)【国際公開番号】W WO2020260981
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】102019000010248
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521314046
【氏名又は名称】トレ エッセ プロジェッタツィオーネ バイオメディカ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】TRE ESSE PROGETTAZIONE BIOMEDICA S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】プリッキ、ジャンニ
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0044290(US,A1)
【文献】特開2010-279654(JP,A)
【文献】特開2001-309895(JP,A)
【文献】特開2012-205822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの手足の近位部分に取り付けられて閉塞圧を加えるように構成された閉塞要素(OC)と、
ヒトの手足の遠位部分に取り付けられて拡張の程度を感知するように構成された拡張感知要素(VS)と、
前記閉塞要素(OC)及び前記拡張感知要素(VS)に結合された制御回路(10)であって、前記制御回路(10)は、
-i)少なくとも1つの拡張期閉塞圧(POC)を印加(203)し、特定の閉塞間隔(TPOC)にわたり少なくとも1つの前記拡張期閉塞圧(POC)を維持(204)するために、前記閉塞要素(OC)を制御する(104,106)ステップと、
-ii)前記拡張感知要素(VS)から検知信号を取得する(108;108a,108b)ステップと、
-iii)少なくとも1つの前記拡張期閉塞圧(POC)が前記閉塞間隔(TPOC)の後で除去された結果、ヒトの手足の遠位部分の拡張に一定の変化があることを前記検知信号においてチェックする(208)ステップと、
-iv)少なくとも1つの前記拡張期閉塞圧(POC)が前記閉塞間隔(TPOC)の後に除去されることに起因する、ヒトの手足の遠位部分の拡張に一定の変化があるとする、前記チェック(208)の結果として、印加された少なくとも1つの前記拡張期閉塞圧(POC)よりも低い、前記ヒトの手足における静脈圧を示す信号(102,210)を生じるステップとを行い、
前記閉塞間隔(TP OC )の後で少なくとも1つの前記拡張期閉塞圧(P OC )が除去されることによっては、ヒトの手足の遠位部分の拡張に一定の変化を示さないとする、前記チェック(208)の結果として、前記制御回路(10)は、前記閉塞要素(OC)を制御して(104,106)、少なくとも1つの前記拡張期閉塞圧(P OC )よりも高い少なくとも1つの閉塞圧(P OC )を印加する(203)ことによって、前記ステップi)~iv)を繰り返すように構成される、デバイス。
【請求項2】
前記閉塞間隔(TPOC)が5秒以上の持続時間を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記閉塞間隔(TP OC )が10秒~30秒の間、又は20秒~40秒の間、又は5秒~10秒の間の持続時間を有する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記制御回路(10)は、5mmHg~35mmHg又は4mmHg~24mmHgの範囲の閉塞圧(POC)を印加する(203)ように前記閉塞要素(OC)を制御する(104,106)ように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記制御回路(10)は、前記閉塞間隔(TPOC)の持続時間を変化させるように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記制御回路(10)は、加えられた閉塞圧(P OC )の関数として、前記閉塞間隔(TP OC )の持続時間を変化させる、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記拡張感知要素(VS)は圧力センサ(108a,108b)を含み、前記検知信号が圧力信号(PSC)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記拡張感知要素(VS)は光プレチスモグラフセンサーを含み、前記検知信号が光プレチスモグラフ信号を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記制御回路(10)は、前記検知信号において、変動閾値を超える量の変動を検出(208)し、及び、前記検知信号において前記変動閾値を超える量の変動を検出した結果として、少なくとも1つの前記拡張期閉塞圧よりも低い前記ヒトの手足の静脈圧(VP<POC)を示す前記信号(102,210)を発生するように構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記閉塞要素(OC)及び前記拡張感知要素(VS)のうちの少なくとも1つが、ヒトの手足に取り付けられるように構成されたカフを含む請求項1~9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記カフは、事前に拡張され、及び/又は特定のラッピング強度に予め付勢される、請求項10に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静脈圧(VP)の検出(測定)に関する。
1つ以上の実施形態は、臨床分野を専門とするスタッフだけでなく、在宅の患者自身によっても使用することができる非侵襲的静脈圧感知のためのデバイスを参照することができる。
【背景技術】
【0002】
中心静脈圧(CVP)と呼ばれる右心房の静脈圧は、血液量と右心室の充満圧の間接的な指標であり、心代償不全と内臓領域の病状を伴う患者の治療の診断と管理に役立つ血行力学的パラメーターであることが証明されている。これまで、CVPの測定には、集中治療室で侵襲型の技術が広く使用されており、この技術は、大口径の深部静脈、鎖骨下静脈、頸静脈、又は尺側皮静脈の圧力変換器に接続された使い捨てカテーテルの挿入に基づく。そのような手順は、費用がかかり、忍容性が低く、患者にとってリスクがないわけではないことが判明し得る。
【0003】
これに対し、CVPを評価するための非侵襲的方法に関する非常に広範な文献が存在する。
この文献の例は、次のような文書である。
-非特許文献1
-非特許文献2
-非特許文献3
-非特許文献4
-非特許文献5
-非特許文献6
-非特許文献7
-非特許文献8
-非特許文献9
-非特許文献10
-非特許文献11
-非特許文献12
CVPの非侵襲的測定のための装置及び方法は、同様に、先行技術の特許及び特許出願において提案され、記載されてきた。
例えば、次のような文献である:特許文献1(米国特許出願公開US2004/0044290A1に対応)、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、又は特許文献10は、CVPの非侵襲的測定のための様々な解決方法について説明している。
【0004】
より詳細には、特許文献1では、中心静脈圧(CVP)は、閉塞カフの収縮中、かつ40~60mmHgの圧力POCの単一ステップを適用した後における、閉塞圧POCと体積の曲線(閉塞圧POCをかけた後の前腕でのRVR(Rapid Volume Response )の表現)の間の同期対応として単純に識別され、CVPは体積変化の曲線の最大勾配での圧力に基づいて決定される。この同期分析では、RVRに関連する生理学的時定数は考慮されていない。これは、患者の特定の静脈/組織の適応性に依存し、閉塞作用(すなわち、圧力信号)とこの作用(すなわち、体積信号)の効果との間の可変の時間シフトを決定するため、閉塞圧と体積の曲線の間の可変の時間的関係によって、CVPの決定に不正確さを生じる。
【0005】
一方、例えば、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17などの文書からも公知であるのは、血流/血圧を測定するための様々な非侵襲的システムであり、特に、特定の領域の血流(手足のレベルで)の測定に通常使用される閉塞性プレチスモグラフィの技術に注意が払われている。この技術は、問題の四肢の周りに配置された閉塞カフの使用、及び閉塞カフの下流に配置された四肢の遠位部分に誘発された体積の変化を測定するための器具(一般に「プレチスモグラフ」と呼ばれる)の使用を想定し得る。測定プレチスモグラフは、歪みゲージ、フォトプレチスモグラフセンサー、インピーダンスメーター、圧力測定用の空気圧カフ、誘導システム、静電容量システムなど、様々なシステムで取得できる。
【0006】
静脈閉塞性プレチスモグラフィ(VOP)として公知技術の場合、閉塞性カフは拡張期動脈圧よりも低いが静脈圧よりも高い圧力(範囲:40~60mmHg)まで膨らませて、四肢への動脈血の流れを可能にするが、その静脈還流を制限し、その結果、既存の静脈圧を上昇させる。その結果、四肢の部分と静脈容積は、プレチスモグラフによって検出される容積の正の変動の影響を受ける。
【0007】
例えば、特許文献13は、フォトプレチスモグラフ技術、すなわち、対象となる四肢に取り付けられるプレチスモグラフが、反射フォトプレチスモグラフの下にあり、閉塞カフによって加えられた圧力の結果として拡張する表在静脈の血液量の変化を測定するフォトプレチスモグラフとして提供されるVOPについて説明している。
【0008】
ここでも、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21などの文献では、いわゆる空気プレチスモグラフィの手法、つまりプレチスモグラフを被験者の四肢に取り付けるのが圧力変換器に関連付けられている空気圧カフであるものとして与えられるVOPについて説明しており、閉鎖系では、体積と圧力が互いに反比例するという事実と、空気圧カフ内の空気の体積が、包まれている手足の体積に等しい(ただし、符号が反対である)という事実を利用している。したがって、空気圧カフ内の圧力は、問題の手足の体積に正比例する。
【0009】
このように、従来技術では、例えば、いわゆる静脈閉塞性プレチスモグラフィ(VOP)に基づいて、静脈圧(VP)の非侵襲的モニタリングのための様々な解決策がすでに提案されていると言えるが、これは、問題の四肢に巻き付けられた閉塞性カフと、閉塞性カフの下流に位置する四肢の遠位部分に誘発された体積の変化を測定するための器具(一般に「プレチスモグラフ」と呼ばれる)との使用を想定する。
【0010】
簡単に言うと、VOPでは、閉塞カフは静脈圧を超えるような圧力(通常は40mmHg)まで膨張するため、閉塞カフよりも先端側の区間からの静脈還流が制限され、腫れ(体積の変動)が発生し、これがプレチスモグラフによって検出される。上記のプレチスモグラフは、歪みゲージ、フォトプレチスモグラフセンサー、インピーダンスメーター、圧力測定用の空気圧カフ、誘導システム、静電容量システムなど、様々なシステムで取得できる。
【0011】
しかしながら、上記の従来技術の分析から、VOP技術に基づく多くの方法は、四肢又は静脈の体積変化の曲線上で計算された事象間の時間的対応に基づく評価を伴い、これは、閉塞と、加圧と圧力解放の動的ステップ中に閉塞-圧力曲線で発生する事象とに応答して取得される。
【0012】
ただし、実際には、閉塞-圧力曲線と、四肢及び静脈の体積変化曲線との間に位相オフセットが発生することがあるが、これは一定ではなく、特定の被験者(及び対応する時定数)の静脈/組織の適応性に依存する。静脈/組織の適応性は、被験者ごとに(また、同じ被験者でも測定ごとに)大きな変動を示すため、体積曲線において、静脈圧の推定値が対応すべき閉塞圧の対応する測定値にある事象を一意に関連付けることは事実上非常に困難である。
【0013】
その結果、これらの方法は信頼性を有する物とはほど遠いことがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第7,118,532号
【文献】米国特許出願公開US2012/253209A1
【文献】国際公開第2017/022245A1
【文献】米国特許第6,432,061号
【文献】米国特許第4,566,462号
【文献】米国特許出願公開US2007/0239041A1
【文献】米国特許第5,040,540号
【文献】米国特許第8,417,306号
【文献】米国特許出願公開US2017/0100044A1
【文献】米国特許第5,904,142号
【文献】米国特許第7,524,390号
【文献】米国特許第4,204,545号
【文献】米国特許第5,447,161号
【文献】米国特許第6,322,515号
【文献】米国特許第9,474,453号
【文献】米国特許第6,916,289号
【文献】米国特許第6,749,567号
【文献】米国特許第5,089,961号
【文献】米国特許第9,125,569号
【文献】米国特許出願公開2010/0292586
【文献】米国特許第6,309,359号
【非特許文献】
【0015】
【文献】Thalhammer C., et al., “Noninvasive central venous pressure measurement by controlled compression sonography at the forearm”, J. Amer.College Cardiol., vol. 50, no. 16, pp. 1584-1589, 2007
【文献】Thalhammer C., et al., “Non-invasive central venous pressure measurement by compression ultrasound - A step into real life”, Resuscitation, vol. 80, no. 10, pp. 1130-1136, 2009
【文献】Amar D., Melendez J.A., Zhang H., Dobres C., Leung D.H., Padilla R.E., “Correlation of peripheral venous pressure and central venous pressure in surgical patients”, J. Cardiothorac.Vasc.Anesth., 2001; 15:40-3
【文献】Desjardins R., Denault A.Y., Belisle S., et al., “Can peripheral venous pressure be interchangeable with central venous pressure in patients undergoing cardiac surgery?”, Intensive Care Med.2004; 30:627-32
【文献】Sathish N., “Comparison between noninvasive measurement of central venous pressure using near-infrared spectroscopy with an invasive central venous pressure monitoring in cardiac surgical Intensive Care Unit”, Ann.Card.Anaesth.2016 Jul-Sep; 19(3):405-409
【文献】Jassim, H.M., “IJV collapsibility index vs IVC collapsibility index by point of care ultrasound for estimation of CVP: a comparative study with direct estimation of CVP”, Open Access Emerg.Med.2019; 11:65-75
【文献】Ward K.R., et al., “A new noninvasive method to determine central venous pressure”, Resuscitation, 2006 Aug.; 70(2):238-46.Epub 2006 Jul.
【文献】Ward K.R., et al., “A novel noninvasive impedance-based technique for central venous pressure measurement”, Shock, 2010 Mar.; 33(3):269-73; doi:10.1097/SHK.0b013e3181ab9b9b;269-73
【文献】Halliwill J.R., et al., “Measurement of limb venous compliance in humans: technical considerations and physiological findings”, J. Appl.Physiol.(1985), 1999 Oct.; 87(4):1555-63
【文献】Christ F., et al., “Relationship between venous pressure and tissue volume during venous congestion plethysmography in man”, J. Physiol.1997 Sep.1; 503 (Pt.2):463-7
【文献】Gamble J.F., et al., “A reassessment of mercury in silastic strain gauge plethysmography for microvascular permeability assessment in man”, J. Physiol.1993 May; 464:407-22
【文献】Bauer A., et al., “Influence of different cuff inflation protocols on capillary filtration capacity in human calves - a congestion plethysmography study”, J. Physiol.2002 Sep.15; 543(Pt 3):1025-1031
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、1つ以上の実施形態の目的は、中心静脈へのアクセスを必要とせずに非侵襲的な方法でCVPを監視するための高速で信頼性の高いツールを提供することにあり、その結果、臨床分野に特化したスタッフだけでなく、自宅にいる患者自身によってもその使用がされる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
1つ以上の実施形態によれば、上記の目的は、以下の特許請求の範囲で想起される特性を有するデバイによって達成することができる。
請求項は、実施形態に関連して本明細書で提供される技術的教示の不可欠な部分を形成する。
【0018】
1つ以上の実施形態は、特に測定の低精度に関して、これまでに知られている解決策の主な問題を克服することができる静脈圧(VP)の非侵襲的感知(例えば、測定)のためのデバイスを提供し、専門医の介入なしに家庭でのモニタリングに(また)使用できるようになる可能性がある。
【0019】
1つ以上の実施形態は、ヒトの四肢の静脈の適応性に関する生理学病理学的研究の広く文書化された結果を利用することができ(例えば、すでに冒頭で引用した、ハリウィル J.R.ら、クライスト F.ら、ギャンブル J.ら、バウアー A.らによる論文を参照のこと)、カフが腕の周りに使用されている場合、カフによって加えられる圧力が静脈圧(VP)よりも高い場合、圧力が加えられた時に前腕で得られる静脈圧(VP)を表す。
【0020】
したがって、1つ以上の実施形態は、静脈を含む腕の上部を取り囲む閉塞カフを介して既知の圧力(POC)を印加し、圧力POCと同じ値を有する人工的に誘発された静脈圧を前腕に生成することを想定し得る。
【0021】
1つ以上の実施形態の使用方法において、圧力POCの既知の増加の段階によって閉塞カフを膨張させ、及び、各段階で、人工的に誘発された静脈圧によって引き起こされる前腕の急速体積応答(RVR)を既知の四肢の自然体積と比較することによって、公知のタイプの容積センサー(拡張の程度)を使って測定することができるRVR信号に対して実行されるオン/オフ分析からVPの値を決定することが可能であり、例えば、2つの可能な例を提供すると、圧力信号PSCを供給することができる別の感知カフ、又は、閉塞の解放後、下にある表在静脈VVSの体積の変化の表示を供給するフォトプレチスモグラフセンサーである。
【0022】
例えば:
-圧力信号PSC(プログラム可能な閾値、例えば0.1mmHgを超える低下)又は体積信号VVSに有意の低下がある場合、RVRの低下の表現であり、これは、患者に加えた閉塞圧POCの値よりも患者の静脈圧が低い事実を示す結果であり、デバイスはVPがXmmHgよりも低いことを示すことができる(XmmHgはテスト用に設定された圧力値POCに対応する)。
-それ以外の場合、すなわち、圧力信号PSC(上記の閾値を下回る低下)又は体積信号VVSに有意の低下が検出されない場合、患者のVPが、加えた閉塞圧POCの値よりも高いという事実を示す結果であり、デバイスはVPがXmmHgよりも高いことを示すことができる(オフ応答)。
【0023】
上記に加えて、自動的に、又は事前の同意後に、システムによってプログラムされた圧力POCの後続の(より高い)値XXmmHgでテストを繰り返す可能性がある。
他方、例示を簡単にするために、上肢(腕)への言及は、実施形態を限定するものとして理解されるべきではないことが理解されよう。
【0024】
1つ以上の実施形態は、実際には、ベッドにいる患者にとって特に有利であることが証明され得る解決策を用いて、身体の異なる領域、例えば下肢(脚)に取り付けられ得る。
次に、添付の図面を参照して、純粋に非限定的な例として、1つ以上の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】いくつかの実施形態によるデバイスの実装の可能な態様を表す図。
図2】実施形態の実装の可能な態様を例示する機能的ブロック図。
図3】実施形態の実装の可能な態様を例示する機能的ブロック図。
図4】1つ以上の実施形態に様々な実装方法を採用する可能性の例を示す図。
図5】実施形態の可能な動作様式の例として提供されるフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の説明では、説明による実施形態の様々な例の詳細な理解を可能にするために、様々な特定の詳細が示されている。実施形態は、1つ以上の特定の詳細なしで、又は他の方法、構成要素、材料などを用いて得ることができる。他の場合には、既知の動作、構造、又は材料は、実施形態の様々な態様が不明瞭にならないために、詳細に図示又は説明されていない。
【0027】
本説明の枠組みにおける「実施形態」又は「一実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の構成、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを示すことを意図する。したがって、本説明の様々な点に存在し得る「一実施形態において」又は「ある実施形態において」などの句は、必ずしも1つの同じ実施形態を正確に指すとは限らない。さらに、特定の構成、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0028】
本明細書で使用される参照は、単に便宜上提供されており、したがって、保護の範囲又は実施形態の範囲を定義するものではない。
基本的に、本明細書に例示されるようないくつかの実施形態によるデバイス(例えば、図1及び4を参照のこと)は、以下を含み得る。
【0029】
-それぞれ、静脈圧感知を受ける対象(患者)Pの四肢の近位区間及び遠位区間上にそれぞれ配置することができる、閉塞要素OC及び拡張を感知(検出)するための要素VS、及び
-閉塞要素OC及び拡張感知要素VSに結合された信号処理回路10。
【0030】
すでに述べたように、説明を簡単にするために、上肢(腕)への言及は、実施形態を制限するものとして理解されるべきではなく、1つ以上の実施形態は、実際には、身体の異なる領域、例えば下肢(脚)に取り付けられ得る。
【0031】
同様に、ここでも説明を簡単にするために、「患者」への言及は、実施形態の可能な使用状況を制限するような意味で理解されるべきではない。実際、1つ以上の実施形態は、静脈圧感知を受けた患者Pが明らかな病的状態の影響を受けない場合、その人は、例えば、彼又は彼女の運動能力に関する指標を得るために静脈圧感知を受けた運動選手である可能性があるような使用状況に適用され得る。
【0032】
この場合も、以下により完全に記載するように、閉塞要素OC及び拡張感知要素VSの両方は、異なる技術的解決策で得られ得、別個の要素として(例として本明細書に示されるように)提供され、あるいは、互いに統合された要素として、それぞれの機能を維持する可能性がある。
【0033】
最後に、閉塞要素OC及び拡張感知要素VSの処理回路10への結合は、ここではケーブル又はワイヤを介して実施されるものとして例示されるが、無線形態でも(例えば、ブルートゥースインターフェースなどを介して)得られ得ることに留意されたい。
【0034】
図2,3に例示されるように、1つ以上の実施形態では、信号処理回路10は、例えば、図5のフローチャートに従ってシステムの他の構成要素の動作を調整することができる信号処理ユニット(CPU)100を備えることができる。
【0035】
信号処理ユニット(CPU)100には、(現在の基準に従って)システムの動作及び、検出(測定)の動作の結果に固有の様々な信号をユーザ(患者P自身である可能性がある)に提示するためのディスプレイユニット102を関連付けることができる。
【0036】
図2及び3のアンテナの記号によって概略的に表されるように、1つ以上の実施形態では、ディスプレイユニット102は、いわゆる遠隔医療の現在使用されている態様に従って、システムの動作及び検出(測定)の動作の結果に固有の様々な信号のリモート送信に鑑み、通信インターフェース(例えば、移動体通信ネットワーク上)によって置き換えられ、及び/又は統合され得る。
【0037】
他方、信号処理回路10は、様々な態様で取得することができる。例えば、信号処理回路10は、パーソナルコンピュータなど(例えば、専門スタッフによる臨床使用のための装置の場合)、又はマイクロプロセッサ又はマイクロコントローラにおいて(例えば、自宅で患者P自身が使用できるモバイルデバイスの場合)、「実装」することができる。
【0038】
1つ以上の実施形態では、閉塞要素OCは(第1の)空気圧カフを有し、これは四肢の近位区間上に配置することができ、プログラム可能な値を増加させて(例えば、約4~24mmHg又は5~35mmHgの範囲で)閉塞圧POCを印加すべく、回路10によって(例えば、閉塞圧センサー106と協働する圧力制御104を介して)制御することができる。
【0039】
これは、それ自身が当業者に公知の基準に従って、例えば、動脈圧を測定するための血圧計の製造及び使用の基準に実質的に対応する基準(拡張期以下の血圧値において印加される異なる圧力値を除く)に従って発生する可能性がある。
【0040】
「拡張期以下の血圧値」とは、ここでは、拡張期(動脈)圧の値よりも明らかに低い値(例えば、約4~24mmHg又は5~35mmHgの範囲)を意味し、拡張期(動脈)圧60mmHg(低血圧)~100mmHg(高圧、高血圧の兆候)の範囲を取り得る。
【0041】
1つ以上の実施形態は、閉塞要素OCに対して遠位の四肢の部分のVP(例えば、患者の前腕)において、閉塞圧POCと、閉塞要素OC(例えば、配置可能な空気圧カフの)に作用することによって、対応する正確な静脈圧を作成することを可能にする静脈圧VPとの間の顕著な相関を利用することができる。
【0042】
実際、閉塞圧POCによって誘発される静脈圧VPの効果は、閉塞圧POCが患者の静脈圧VPよりも高い場合、急速体積反応(RVR)としても知られる四肢の遠位部分の体積(拡張)の変化を表し、周囲の組織の抵抗によってバランスがとられた静脈拡張によって一意に決定されることに留意されたい。
【0043】
同様に、静脈圧VPの信頼できる感知に使用できるRVRが現れるためには、圧力POCが患者の静脈圧VPよりも高い状態に加えて、 RVRの安定化を可能にするために、特定の時間間隔TPOCにわたり圧力POCを維持することが有利である。
【0044】
この点に関して特定の説明に縛られることを望まないが、この操作モードは、圧力POCの維持時間の延長とともに生じ得る液体の濾過プロセスの結果としてRVRメカニズムを変更するリスクを負うことを防ぐと考える理由がある。
【0045】
上記の時間間隔TPOCは、少なくとも数秒、例えば少なくとも5秒の長さになるように選択できる。
このようにして、RVRの完全な発現が促進されることが注目されている。
【0046】
1つ以上の実施形態では、時間間隔TPOCの持続時間は変化し得る。例えば、この持続時間は、閉塞要素OCを介して印加される拡張期以下の血圧値POCの関数として、調整可能となり得る方法から選択することができる。
【0047】
例えば、5mmHgの圧力POCの場合は約10又は20秒、約24又は35mmHgの圧力POCの場合は約30又は40秒に等しいTPOCを選択できる。
TPOCの上記の値は、図1に例示されているように、カフ又はスリーブに頼ることによって得られた拡張感知要素VSの場合に有利であることが証明されている。
【0048】
同様に、拡張感知要素VS(図4に例示)として、その下にある表在静脈に含まれる血液量の増加だけを考慮することができるフォトプレチスモグラフセンサーを使用することにより、時間間隔TPOCの期間も数秒(例えば、約5~10秒)及び数十秒(つまり、約20~40秒)以下に短縮するが可能であることが注目されている。
【0049】
他方、図1(カフ型又はスリーブ型センサーVS)及び図4(フォトプレチスモグラフィー型センサーVS)に例示されているものは、前述の拡張のいくつかの可能な実施形態のうちの2つにすぎないことに留意されたい。拡張感知要素VSは、実際には様々な方法で取得できる。例えば、圧力測定用の空気圧カフ、フォトプレチスモグラフセンサー、歪みゲージ、圧電センサー、インピーダンスメーター、誘導システム、静電容量システム、超音波システムなどである。
【0050】
この点に関して採用された技術的選択(圧力センサー、フォトプレチスモグラフセンサーなど)が何であれ、1つ以上の実施形態では、拡張感知要素VSは、印加される圧力POCが患者の静脈圧VPよりも高い又は低いという事実との関係に関連して生じたり、生じなかったりする、体積増加(RVR)を検知するように構成されている。
【0051】
拡張感知要素VSの可能な実施形態は、(第2の)空気圧カフの使用を想定することができ、これは、閉塞要素OCを得るために使用されるものと構造的に類似しており、前腕に配置され、RVRの間接測定を提供できる圧力(PSC)の測定を行うために静脈圧VPの通常の値(例えば3mmHg)よりも低い圧力に事前に装填され得る。
【0052】
そのような使用モードは、回路100と協調し、図2のブロック108によって表される体積制御/センサーを介して実施することができるが、図3は、圧力制御108a及び圧力センサー108bを介して実施される圧力PSCの検出に頼る可能性を例示している(ここでも、四肢の遠位区間で生じ得る拡張を検出する目的のため)。
【0053】
したがって、1つ以上の実施形態による装置は、プログラムされた時間間隔TPSCの終了直前の適切な時間間隔で検出された圧力値PSCと、圧力POCの解放又は除去直後の適切な時間間隔で検出された圧力値PSCとの比較を想定し得る。
【0054】
圧力POCの上記の除去又は解放は、例えば、これがカフ又はスリーブの形態である場合、閉塞要素OCを空にした後に起こり得る。
この点に関して、閉塞圧POCの「除去」は、例えば、四肢からの閉塞要素OCを除去するのみを(単に暗黙的にでさえ)含まないことが理解されるであろう。上記のように、例えば、閉塞カフ又はスリーブを用いる場合に、閉塞圧の除去又は解放は、単に閉塞カフ又はスリーブを手足に維持したまま収縮させることもでき、それは例えば、以下により完全に記載するように、より高い閉塞圧を印加するための場合もあり得る。
【0055】
したがって、1つ以上の実施形態によるデバイスは、閉塞が解放された後に、RVRの低下を表す圧力信号PSCの低下(すなわち、プログラム可能な閾値より大きい値、例えば、0.1mmHgでの低下)が発生するか否か、及び、その結果、印加された閉塞圧の値POCよりも患者の静脈圧VPが低いという事実を検証することを想定し得る。
【0056】
したがって、1つ以上の実施形態によるデバイスは、異なる状況の起こり得る発生についてのチェックを想定することができる。
例えば:
-圧力信号PSCで低下が検出された場合(すなわち、加えられた圧力POCによって誘発された四肢の遠位区間の拡張が減少した場合)、デバイスは、例えばユニット102を介して静脈圧力VPがXmmHgよりも低い(XmmHgは、このテスト用に設定された圧力POCの値に対応する)ことを示す。
【0057】
-代わりに、圧力信号PSCのこのような低下が検出されない場合(すなわち、四肢の遠位区間の拡張度の低下が検出されない場合)、ここでもユニット102などを通して、デバイスは静脈圧VPが、加えられた閉塞圧POCよりも高く、自動的に、又は事前の同意後に、システムによってプログラムされたXmmHgの値よりも高い、閉塞圧POC値XXmmHgの後続値でテストが繰り返されることを表示する。
【0058】
同じ基本的な基準を採用することにより、例えば範囲で表される閾値(最小閾値=0.10mmHg及び最大閾値=0.15mmHg)が与えられる。
-圧力信号PSCに、最小閾値と最大閾値の間に含まれる低下が検出された場合(すなわち、加えた圧力POCによって誘発された四肢の遠位区間の拡張が減少した場合)、結果は正であり(「オン応答」)、デバイスは、例えば、ユニット102を介して、静脈圧VPがXmmHgに等しいことを示す(XmmHgは、この試験のために設定された圧力値POCに対応する)。
【0059】
-圧力信号PSCに最大閾値を超える低下が検出された場合、結果は正(「オン応答」)であり、デバイスは、例えばユニット102を介して、静脈圧VPがXmmHg(XmmHgは、このテスト用に設定された圧力値POCに対応する)より低いことを示す。
【0060】
-代わりに、圧力信号PSCで低下が検出されない場合、すなわち、PSC<最小閾値の場合、結果は負であり(「オフ応答」、すなわち、四肢の遠位区間の拡張の程度の低下は検出されない)、デバイスは、再び、例えば、ユニット102を介して、加えた閉塞圧POCよりも静脈圧VPが高いことを示し、自動的に又は事前の同意の後に、システムによってプログラムされたXmmHgの値よりも高い又は低い、その後の圧力POCの値XXmmHgで試験が繰り返される。
【0061】
簡単に言えば、印加された閉塞圧POCが既存の静脈圧VPよりも低い場合、何も起こらない。印加された閉塞圧POCが既存の静脈圧VPよりも高い場合に生じるような体積増加は、四肢の遠位区間では生じない。
【0062】
閉塞圧POCの印加後の拡張の度合い(体積)の増加の有無の、特定の間隔TPOCの終了時のチェックは、例えば、圧力POCの除去又は解放の瞬間に行われ(例えば、閉塞スリーブ又はカフOCを収縮させることにより)、関連する時間定数に関して安定した平衡状態で拡張の可能な増加を確認することができる。
【0063】
例えば、閉塞圧POCを印加するためにスリーブ又はカフOCを膨張させた後、平衡TPOCの期間(例えば、約10秒又は20秒)の終わりに、閉塞圧POCはスリーブ又はカフOCを収縮させて除去する。
【0064】
この時点で:
-スリーブ又はカフOCを介して印加される閉塞圧POCが静脈圧VPよりも高い場合、センサーVSは拡張度(体積)の低下を検出し、これは、圧力POCが静脈圧VPよりも高いことを示す。
【0065】
-スリーブ又はカフOCを介して印加される閉塞圧POCが静脈圧VPよりも低い場合、センサーVSは、ゼロ(又は事前定義された最小閾値よりも低い)の拡張度(体積)の減少を検出し、これは、静脈圧VPよりも低い圧力POCを示す。実際、圧力POCが静脈の既存の圧力よりも低い場合、四肢の体積が増加する理由はない。
【0066】
テストの繰り返しが新しい閉塞圧POCセット(XXmmHg)に対して肯定的な結果をもたらす場合、システムは、静脈圧VPがXXmmHgより低くXmmHgより高いか、そうでなければ静脈圧VPが XXmmHg~XmmHgであることを示す。
【0067】
XXmmHg~XmmHgの圧力の変動の振幅(及び可能な他のその後の試験)が、採用された検出又は測定の動作の解像度を特定することが理解されよう。
図4に例示されているように、全体として同様の考慮事項が可能な実施形態に適用される(フォトプレチスモグラフとして提供される拡張感受性要素VS)。
【0068】
例えば、閉塞要素OCを介して、閉塞圧POC(例えば、拡張期下の8mmHgの圧力、又はいずれの場合も通常は約120mmHgの動脈圧よりも低い圧力)を印加し、一定の間隔TPOCの間にわたって維持し、及び、それを急速にゼロに戻す(したがって、閉塞圧を除去し)ことにより、フォトプレチスモグラフタイプのセンサーVSの2つの異なる動作を見出すことができる。
【0069】
-閉塞圧POCが静脈圧VPよりも高い場合、センサーVSによって生成された信号が記録され、これは、閉塞要素OCよりも下流の静脈が、戻り流の閉塞により体積が増加したこと、及び、圧力POCを除去することにより、戻り静脈の流れが回復し、その結果、前述の静脈の容積が減少し、(急速に)容積が減少して、センサーVSの信号がゼロ(又は参照レベル)を示すことを示す。
【0070】
-圧力POCが静脈圧VPよりも低い場合、センサーVSの信号では、説明されているタイプの変化は観察されない。閉塞要素OCを介して設定された閉塞圧POCは、静脈圧VPよりも低く、四肢の遠位区間からの戻り静脈流は、閉塞圧POCによって感知できるほど閉塞されないので、閉塞圧POCが除去されると検出できる静脈の容積の増加はないからである。
【0071】
また、この場合、閉塞圧POCの異なる値での連続測定により、臨床診断に十分/許容可能な近似度で静脈圧VPの値を連続近似で決定することが可能になる。
図5のフローチャートは、実施形態の可能な動作様式を例示している。これに関して、図5のフローチャートに例示されている動作(非限定的な例を提供する目的であり、印加される圧力POCの関数としての時間間隔TPOCの期間(ブロック204の入力での信号TC)を選択的に変更する可能性あり)は、実施形態における個別の選択(例えば、拡張感知要素VSのレベル)には大体において無関係であることを理解されたい。
【0072】
図5のブロックは、以下にリストされている可能な動作を例示している。
200:開始(スタート)。
201:拡張感知要素VSをベースライン値に設定する。
【0073】
202:初期最小値から開始して、閉塞圧POCの(拡張期以下の)値を決定する。
203:閉塞要素OCを介して、上記の閉塞圧POCの値を四肢の近位区間に印加する。
【0074】
204:待機時間TPOCにわたり、閉塞圧POCの上記の値を維持する。これは、可変であってもよく、例えば、加えられる圧力の値の関数として調整可能である(回路100からの信号TC)。
【0075】
205:例えば、閉塞要素OCの(少なくとも部分的な)収縮によって、閉塞を除去する。
206:センサーVSに関連付けられた制御108(又は108a、108b)を介して四肢の遠位区間で生じ得た拡張の変動を検出する。(例えば、ブロック108bにてプログラムされた時間間隔TPSCの終了直前に検出された圧力値PSCを介して。圧力値PSCは閉塞要素OCの収縮が完了した直後の適切な時間間隔で検出される。)。
【0076】
207:例えば、対応するカフの(少なくとも部分的な)収縮に続いて、拡張感知要素VSをベースライン値にリセットする。
208:ブロック206で検出された値を閾値Thと比較して、例えば、圧力信号PSCの特定の低下など、四肢の遠位区間の拡張の程度に有意の変動が発生したか否かを確認する。
【0077】
209:ブロック208で行われた比較の否定的な結果(N)の場合(すなわち、印加された閉塞圧POCが静脈圧VPよりも低いため、四肢の遠位区間が拡張していない)、閉塞圧POCの(拡張期未満の)値を以前に印加した値よりも高い値にリセットする(上記の例の場合、XmmHg~XXmmHgへと経過させる)。
【0078】
210:ブロック208で行われた比較の肯定的な結果(Y)の場合(すなわち、閉塞圧POCを除去した後の四肢の遠位区間は、印加された閉塞圧POCが静脈圧VPよりも高い場合は、いったん拡張された後、拡張の程度を減少させる傾向がある。)、圧力VPが以前に印加された閉塞圧POCの値より低いことを示す。(VP<POC)(上記の例の場合、XmmHg)
211:終了(ストップ)
したがって、1つ以上の実施形態は、振幅が増加する閉塞圧(POC)の一連の方形波パルスの印加(例えば、腕の上部)を想定することができる。
【0079】
各パルスで、圧力POCの振幅は、前腕の高速体積応答(RVR)の安定化を促進するためなど、特定の閉塞時間(TPOC)の間一定に維持される。各パルスで、安定化時間の後、圧力POCがゼロに設定され、RVRが評価される。RVRの有意な変動が検出されると(例えば、閾値チェックを介して)、静脈圧(VP)は、印加された圧力パルスPOCの振幅よりも低くなっていることを判定する。RVRに有意な変化が検出されない場合、プログラムされた振幅だけ増加させた後続の圧力パルスPOCを印加することにより、手順が続行される。この手順は、RVRの有意な変動が認められるまで繰り返され、静脈圧VPに対応する圧力値POCが特定される。
【0080】
結果として生じる静脈圧VPは、圧力POCの単一の一定パルスの振幅から取得される。
この態様は、VP値の信頼性の高い決定を容易にするために重要であり、生理学的時定数タウ(患者の静脈/組織の適応性に応じて)を考慮に入れて、有意で安定したRVRを与えることができる(例えば、前述のGamble J., Gartside I., Christ F., “A reassessment of mercury in silastic strain gauge plethysmography for microvascular permeability assessment in man”, J. Physiol.1993 May; 464:407-22 を参照)。
【0081】
本出願人によって実施された実験は、実施形態の様々な可能な態様に関連する利点の理由を浮き彫りにした。
例えば、閉塞圧TPOCの維持時間を決定できることは有利であることが証明されており、この待機時間は、静脈及び拡張に機械的に関与する周囲の組織の適応性によって決定され、静脈自体による流体の濾過に続発する間質容積の変化につながるなど、数分の長さの値に達することなく、安定したRVR(例えば、PSCによって表される)の状態への到達を促進するために十分に長い(例えば、数十秒)。
【0082】
同様に、閉塞圧POCの値の関数として時間TPOCを変更できることが有利であることが証明されている(図5の信号TCを参照)。
すでに述べたように、有用な値は、例えば、5mmHgのPOCで約10秒又は20秒のTPOCから約24又は35mmHgのPOCで約30秒又は40秒のTPOCの範囲であり、比例関係にある他の可能な値もある。
【0083】
このようにして、テストの時間を短縮することができる。特に10mmHgでのテスト(統計的に最も頻繁なテスト)では、非常に短くなる可能性があり、ユーザーにとって明らかな利点がある。
【0084】
同様に、そしてすでに述べたように、拡張感知要素(図のVS)としてフォトプレチスモグラフセンサーを使用すると、その下にある表在静脈に含まれる血液の量の増加だけを考慮することができ、時間間隔TPOC(同一の閉塞圧が印加された場合)の持続時間を、数秒から数十秒以下にまで短縮することが可能になる。
【0085】
圧力低下PSCの計算手順(図4の動作206)に関しては、例えば、閉塞要素OCの収縮命令(図4の動作205)の前の特定の時間間隔で検出された圧力値PSCの平均間の差、及び閉塞要素OCの収縮後に検出された圧力PSCの値の平均を計算することが可能である。
【0086】
ここでも、圧力POCの自動増加のロジック(図5の動作209)は、VPの値の範囲(低、通常、境界、高、非常に高)を単純に識別することを目的として、また必要に応じて、細かい増分ステップを採用し、したがって細かい解像度を採用する可能性を考慮して、様々なルールに従うことができる。
【0087】
例えば、図4の動作208を比較するために、次のような閾値を採用すると仮定する。
-圧力PSCが値POCで10mmHg変化した場合、低下はない(ブロック208からの否定的な結果)。
【0088】
-圧力PSCは、圧力POCで15mmHg変動し、その後低下する(ステップ208からの肯定的な結果)。
図4の動作209で、12.5mmHgでの後続の測定をプログラムすることができ、より高い測定の精度又は解像度を簡単に取得できる。
【0089】
同様に、カフVS(スリーブ、これらの用語はここでは同義語と見なすことができる)の使用に関連して、開始圧力(例えば、3mmHg)が予め加えられること、及び/又は発泡ゴムが存在することによって予め膨張されることの利点が挙げられる。発泡ゴムなどの材料の存在は、前述のように、開始圧力レベルを印加する必要なしに、四肢と接触する圧力の均一な分布を容易にすることに留意されたい。
【0090】
同様に、スリーブ(又はカフ)OC及び/又はVSの使用に関連して、適切な位置決めを容易にするために、事前設定された気密性で事前張力をかけるメカニズムを採用する利点が指摘されている。
【0091】
従来の手順と同様に、電子血圧計では、緩すぎる、又はきつすぎるスリーブの位置決め条件を検出するためのソフトウェア制御システム(事前定義された目標圧力値に到達するために必要な時間の計算に基づく)の実装を想定することも同様に可能である。
本明細書に例示されるような装置では、静脈圧の測定に加えて、収縮期及び拡張期の動脈圧の標準的な測定も行う可能性も統合され得る。
【0092】
本明細書に例示されるような装置は、以下を含み得る:
-ヒトの手足の近位部分に取り付けられて、閉塞圧を印加するように構成された閉塞要素(例えば、OC)。
【0093】
-ヒトの手足の拡張の程度を検出するために、その遠位部分に取り付けられるように構成された拡張感知要素(例えば、VS)。
-閉塞要素及び拡張感知要素に結合された制御回路(例えば、10)。制御回路は次のように構成されている。
【0094】
-i)少なくとも1つの拡張期閉塞圧(例えば、POC)を印加(例えば、203)し、特定の閉塞間隔(例えば、TPOC)にわたり1つの拡張期閉塞圧を維持(例えば、204)するために、閉塞要素を制御する(例えば、104,106)。
【0095】
-ii)拡張感知要素から検知信号を取得する(例えば、108;108a,108b)。
-iii)少なくとも1つの拡張期下閉塞圧が除去された(又は、例えば、閉塞間隔の後に閉塞スリーブ又はカフを収縮させることによって、解放された)事実の結果、ヒトの手足の遠位部分の拡張に一定の変化があるか検知信号をチェックする(例えば、208)
-iv)上記のチェックが、少なくとも1つの拡張期下閉塞圧が前記閉塞間隔の後に除去されることに起因する、ヒトの四肢の前記遠位部分の拡張に特定の変動を示しているという事実の結果として印加された、上記の少なくとも1つの拡張期閉塞圧よりも低い、上記のヒトの手足における静脈圧を示す信号を生じる(例えば、102,210)。
【0096】
上記のように、「拡張期以下の血圧」とは、ここでは、拡張期(動脈)圧の値よりも明らかに低い値(例えば、約5~35mmHg、そうでなければ4~24mmHgの範囲)を有する圧力を指し、拡張期(動脈)圧60mmHg(低血圧)~100mmHg(高圧、高血圧の兆候)の範囲を取り得る。
【0097】
本明細書に例示されるような装置において、チェックが、少なくとも1つの拡張期下閉塞圧が前記閉塞間隔の後に除去されることに起因する、ヒトの四肢の前記遠位部分の拡張に特定の変動を示さない場合、回路は、少なくとも1つの拡張期の閉塞圧よりも高い少なくとも1つのさらなる閉塞圧を印加するために閉塞要素を制御することによって、動作i)からiv)を繰り返すように構成され得る。
【0098】
本明細書に例示されるようなデバイスでは、閉塞間隔は、5秒以上、任意選択で約10秒~約30秒の間、あるいは約20秒~約40秒の間(例えば、圧力センサーとして要素VSが提供される場合)、又は約5秒~約10秒の間(例えば、フォトプレチスモグラフセンサーとして提供される要素VSを使用)の持続時間を有し得る。
【0099】
本明細書で例示されるようなデバイスでは、制御回路は、約5mmHg~35mmHg、あるいは約4mmHg~24mmHgの範囲の閉塞圧を印加するために閉塞要素を制御するように構成され得る。
【0100】
本明細書に例示されるようなデバイスでは、制御回路は、任意選択で、加えられる閉塞圧の関数として、前記閉塞間隔の持続時間を変化させるように構成され得る(例えば、図5のTC)。
【0101】
本明細書に例示されるような装置において、拡張感知要素は、圧力センサー(例えば、図3のVS、108a、108b)を含み得、ここで、感知信号は、圧力信号(PSC)を含む。
【0102】
本明細書に例示されるようなデバイスでは、拡張感知要素(例えば、図4のVS)は、フォトプレチスモグラフセンサーを含み得、ここで、感知信号は、その下にある表在静脈の体積の変化を示すフォトプレチスモグラフ信号を含む。
【0103】
本明細書に例示されるようなデバイスでは、制御回路は、感知信号(例えば、圧力感知信号又はプレチスモグラフ感知信号)において、変動閾値(例えば、特定の圧力低下閾値を超える量の圧力の低下)よりも大きな量の変動を検出(例えば、208)し、及び、変動閾値よりも大きい量の変動を有する感知信号において、上記の検出の結果として、上記の少なくとも1つの拡張下での閉塞圧(VP<POC)よりも低い、ヒトの四肢の静脈圧を示す信号(例えば、102、210)を発するように構成される。
【0104】
本明細書に例示されるような装置において、閉塞要素と拡張感知要素との間の少なくとも1つは、ヒトの四肢に取り付けられるように構成されたカフを含み得、カフは、任意選択で、特定の包むきつさに事前に拡張及び/又は事前に装填される。
【0105】
基礎となる原理を害することなく、構造及び実施形態の詳細は、これが決定されるように、添付のクレームによって定義される保護の範囲から逸脱することなく、純粋に非限定的な例として本明細書に示されているものに関して、さらに大幅に変化し得る。
図1
図2
図3
図4
図5