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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】データ収集装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240228BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20240228BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G05B19/18 W
G05B23/02 301V
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021574066
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2021002787
(87)【国際公開番号】W WO2021153598
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2020012539
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小野瀬 直
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐介
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-156182(JP,A)
【文献】特開2018-107315(JP,A)
【文献】特開2019-109697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G05B 19/18
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械からデータを収集するデータ収集装置であって、
産業機械の制御に係る制御情報及び産業機械の環境に係る環境情報との相関関係を示す状態相関情報を記憶する状態相関情報記憶部と、
前記産業機械から該産業機械の制御に係る制御情報を取得する制御情報取得部と、
前記産業機械の環境の状態を検出した環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記制御情報取得部が取得した制御情報と、前記環境情報取得部が取得した環境情報と、前記状態相関情報記憶部に記憶される状態相関情報とに基づいて、現在の前記産業機械の状態を推論する状態推論部と、
前記推論した前記産業機械の状態に基づいて、他の装置からの前記産業機械に係る情報項目に係る問い合わせに前記産業機械の代理で応答する代理応答部と、
を備えるデータ収集装置。
【請求項2】
前記状態推論部は、他の装置から問い合わせがあった前記産業機械に係る情報項目に応じて、現在の前記産業機械の状態を異なる方法で推論する、
請求項1に記載のデータ収集装置。
【請求項3】
前記状態推論部は、機械学習により現在の前記産業機械の状態を推論する、
請求項1に記載のデータ収集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械等の産業機械が設置される製造現場では、複数の産業機械をネットワークに接続して、そのネットワークを介してデータの収集が行われている。このような環境では、それぞれの産業機械と、該産業機械のデータを収集するデータ収集装置との間では、大量のネットワーク通信が行われる場合がある。一方で、産業機械はデータ収集装置以外の他の装置上で動作しているアプリケーションに対してもデータを送信しなければならない。そのため、製造現場に敷設されたネットワークには、データ収集装置に対するデータの送信以外にも、他の装置に対するデータ送信のために大きな負荷が掛かっている。
【0003】
一方で、データを収集する際には、様々な要因によりデータの欠損が発生する可能性がある。特にネットワークを介してデータを収集する場合には、予定したタイミングで産業機械がデータを送信しようとしても、ネットワークの負荷が高いとうまく送信が行えない場合もある。このような場合、データの受信側(データ収集装置や他の装置)では、受信できなかったデータについては、前後で受信したデータの中央値を代入したり、当該データの値を空値(例えば、0や空文字)として扱ったり、といった対応を取ることが多い。
【0004】
このようなデータ欠損を低減させるために、高速なデータサンプリングを行う際に、信号でトリガー制御することで必要な時だけ情報取得し、通信負荷の低減を行う従来技術がある(特許文献1等)。このような技術を適用することで、欲しいときだけ情報を収集することで通信負荷の低減が望める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-109697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製造現場で製造が行われている際には複数の産業機械が常時動作している。そして、これら複数の産業機械を管理するためには、管理に必要となるデータを常時収集する必要がある。このように、常に情報が必要となる場合には、必要なときだけ情報を取得するという方法では通信負荷を低減させることが難しい。また、データ収集装置と、他の装置とがデータを収集するタイミングが衝突することもあり、そのような場合には、その瞬間の通信不可を低減させることができない。
そのため、他の方法で通信負荷を低減させる仕組みが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるデータ収集装置は、ネットワークに接続された産業機械からデータを収集するデータ収集装置であって、そのデータ収集装置以外の装置から前記産業機械のデータ取得要求があった際に、前記データ収集装置が代理でネットワーク応答を行うことで、上記課題を解決する。
【0008】
そして、本発明の一態様は、産業機械からデータを収集するデータ収集装置であって、産業機械の制御に係る制御情報及び産業機械の環境に係る環境情報との相関関係を示す状態相関情報を記憶する状態相関情報記憶部と、前記産業機械から該産業機械の制御に係る制御情報を取得する制御情報取得部と、前記産業機械の環境の状態を検出した環境情報を取得する環境情報取得部と、前記制御情報取得部が取得した制御情報と、前記環境情報取得部が取得した環境情報と、前記状態相関情報記憶部に記憶される状態相関情報とに基づいて、現在の前記産業機械の状態を推論する状態推論部と、前記推論した前記産業機械の状態に基づいて、他の装置からの前記産業機械に係る情報項目に係る問い合わせに前記産業機械の代理で応答する代理応答部と、を備えるデータ収集装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様により、産業機械の状態を記憶した上で、その状態を推論し応答できる技術を提供することで、データ収集装置が他の装置に対してその産業機械の代理で応答が行えるようになる。これにより外部とのネットワーク通信をデータ収集装置が行い、産業機械は情報収集を目的としたネットワーク通信を行わなくなるため省エネや負荷の低減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態によるデータ収集装置の概略的なハードウェア構成図である。
図2】一実施形態によるデータ収集装置の概略的な機能ブロック図である。
図3】状態相関情報記憶部に記憶される状態相関情報の例を示す図である。
図4】制御情報及び環境情報の例を示す図である。
図5】類似度の計算例を示す図である。
図6】類似度の他の計算例を示す図である。
図7】類似度の他の計算例を示す図である。
図8】類似度の計算方法の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は本発明の一実施形態によるデータ収集装置の要部を示す概略的なハードウェア構成図である。本発明のデータ収集装置1は、例えば産業機械と有線/無線のネットワークを介して接続されたパソコン、フォグコンピュータ、クラウドサーバ等の上に実装することができる。本実施形態では、データ収集装置1を、産業機械と有線/無線のネットワークを介して接続されたパソコン上に実装した例を示す。
【0012】
本実施形態によるデータ収集装置1が備えるCPU11は、データ収集装置1を全体的に制御するプロセッサである。CPU11は、バス22を介してROM12に格納されたシステム・プログラムを読み出し、該システム・プログラムに従ってデータ収集装置1全体を制御する。RAM13には一時的な計算データや表示データ、及び外部から入力された各種データ等が一時的に格納される。
【0013】
不揮発性メモリ14は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等で構成される。不揮発性メモリ14に書き込まれたデータは、データ収集装置1の電源がオフされても記憶状態が保持される。不揮発性メモリ14には、インタフェース15を介して外部機器72から読み込まれたデータや制御用プログラム、入力装置71を介して入力されたデータや制御用プログラム、産業機械3やフォグコンピュータ6、クラウドサーバ7等の他のコンピュータから取得される各データ等が記憶される。不揮発性メモリ14に記憶されたデータや制御用プログラムは、実行時/利用時にはRAM13に展開されても良い。また、ROM12には、公知の解析プログラムなどの各種システム・プログラムがあらかじめ書き込まれている。
【0014】
インタフェース15は、データ収集装置1のCPU11とUSB装置等の外部機器72と接続するためのインタフェースである。外部機器72側からは、例えば産業機械の制御に用いられる制御用プログラムや各パラメータ等を読み込むことができる。また、データ収集装置1内で編集した制御用プログラムや各パラメータ等は、外部機器72を介して外部記憶手段に記憶させたり、ネットワーク5,8を介して産業機械3やフォグコンピュータ6,クラウドサーバ7等の他のコンピュータに対して送信したりすることができる。
【0015】
表示装置70には、メモリ上に読み込まれた各データ、制御用プログラムやシステム・プログラム等が実行された結果として得られたデータ等がインタフェース18を介して出力されて表示される。また、キーボードやポインティングデバイス等から構成される入力装置71は、インタフェース19を介して作業者による操作に基づく指令,データ等をCPU11に渡す。
【0016】
インタフェース20,21は、データ収集装置1のCPU11と有線乃至無線のネットワーク5,8とを接続するためのインタフェースである。ネットワーク5には、産業機械3(又は該産業機械3を制御する制御装置)が接続され、データ収集装置1との間で相互にデータのやり取りを行っている。また、ネットワーク8には、フォグコンピュータ6、クラウドサーバ7等が接続され、データ収集装置1との間で相互にデータのやり取りを行っている。なお、ネットワーク5,8は、物理的乃至論理的に通信の負荷が分離可能なネットワークであれば良い。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態によるデータ収集装置1が備える機能を概略的なブロック図として示したものである。本実施形態によるデータ収集装置1が備える各機能は、図1に示したデータ収集装置1が備えるCPU11がシステム・プログラムを実行し、データ収集装置1の各部の動作を制御することにより実現される。
【0018】
本実施形態のデータ収集装置1は、制御情報取得部100、環境情報取得部110、状態推論部120、代理応答部130を備える。また、RAM13乃至不揮発性メモリ14上には、産業機械3から取得した情報を記憶する領域である取得情報記憶部200、制御情報や環境情報の間の相関性を示す情報である状態相関情報が予め記憶されている領域である状態相関情報記憶部210が予め設けられている。
【0019】
制御情報取得部100は、図1に示したデータ収集装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理と、インタフェース20を用いた入出力処理が行われることで実現される。制御情報取得部100は、ネットワーク5を介して、少なくとも1つの産業機械3に係る制御情報を取得する。産業機械3に係る制御情報は、例えば主軸回転数、軸位置、移動速度、加速度、産業機械3で発生したアラーム情報等のように、産業機械3の制御装置から取得できる情報である。制御情報取得部100が取得する産業機械3に係る制御情報は、データ収集装置1が利用される製造現場において想定される制御情報に含み得る情報項目の内の一部であって良い。産業機械3に係る制御情報は、所定の時刻に検出された瞬時値を示すデータであっても良いし、連続して値が取得される時系列データであっても良い。制御情報取得部100が取得した制御情報は、それぞれのデータが生成乃至検出された時刻等と関連付けて取得情報記憶部200に記憶される。
【0020】
環境情報取得部110は、図1に示したデータ収集装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理が行われることで実現される。環境情報取得部110は、例えばネットワーク5を介して、少なくとも1つの産業機械3に係る環境情報を取得する。環境情報取得部110が取得する産業機械3に係る環境情報は、例えば環境温度、産業機械3に発生している振動等のように、産業機械3の環境に設置されたセンサによる検出値である。環境情報取得部110が取得する産業機械3に係る環境情報は、データ収集装置1が利用される製造現場において想定される環境情報に含み得る情報項目の内の一部であって良い。環境情報取得部110は、産業機械3の制御装置から環境情報を取得しても良い。また、環境情報取得部110は、図示しない他のインタフェースを介して各所に設置された図示しないセンサや工場管理システム等から環境情報を取得するようにしても良い。産業機械3に係る環境情報は、所定の時刻に検出された瞬時値を示すデータであっても良いし、連続して値が取得される時系列データであっても良い。環境情報取得部110が取得した環境情報は、それぞれのデータが検出された時刻等と関連付けて取得情報記憶部200に記憶される。
【0021】
状態推論部120は、図1に示したデータ収集装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理が行われることで実現される。状態推論部120は、制御情報取得部100が取得した制御情報と、環境情報取得部110が取得した環境情報と、状態相関情報記憶部210に記憶されている状態相関情報とに基づいて、現在の産業機械3の状態を推論する。
【0022】
状態相関情報記憶部210には、図3に例示されるように、産業機械3から同じ時点において取得された制御情報に含み得る情報項目と環境情報に含み得る情報項目とが関連付けられた複数の状態相関情報が記憶されている。状態相関情報は、データ収集装置1が利用される製造現場において想定される全ての制御情報に含み得る情報項目と環境情報に含み得る情報項目を含んでいることが望ましい。状態相関情報は、予め産業機械3を様々な条件で運転する実験を行い、同じタイミングで取得された制御情報及び環境情報を用いて作成し、状態相関情報記憶部210に記憶しておいても良い。また、状態相関情報は、各地工場で運転される産業機械3から、同じ時点で取得された制御情報及び環境情報を用いて作成し、状態相関情報記憶部210に記憶しておいても良い。データ収集装置1が複数の産業機械3のデータを取得する場合、状態相関情報記憶部210には、それぞれの産業機械3毎に状態相関情報を記憶する。この時、他の装置から所定の産業機械3の情報項目に関する問い合わせがあった場合、状態推論部120は、当該産業機械3に対応する状態相関情報を産業機械3の状態の推論に利用する。
【0023】
状態推論部120は、ある時点で取得した制御情報及び環境情報と類似する状態相関情報を検索し、検索された状態相関情報から、取得できなかった制御情報乃至環境情報を推論する。
一例として、図3に例示される状態相関情報が状態相関情報記憶部210に記憶されているとする。この時、図4に示されるように、制御情報取得部100が制御情報として主軸回転数:1800[rpm]、環境情報取得部110が環境情報として振動値:800[Hz]、温度:80[℃]を取得すると、状態推論部120は、取得した制御情報及び環境情報と、状態相関情報記憶部210に記憶されたそれぞれの状態相関情報との間で類似度を計算する。類似度は、例えば制御情報及び環境情報に含まれる数値データに基づいて、以下に例示される数1式で計算しても良い。この時、制御情報及び環境情報に含まれる選択的データ(例えば、「アラーム有り」「アラーム無し」等の値を取るデータ)等については、後述するように状態相関情報のフィルタリングなどに用いれば良い。数1式において、Rは類似度、Icn(n=1,2,…)は制御情報取得部100が取得できた制御情報、Iem(m=1,2,…)は環境情報取得部110が取得できた環境情報、Icrn(n=1,2,…)、Ierm(m=1,2,…)は状態相関情報に含まれる制御情報及び環境情報、ai、bj(i,j=1,2,…)は産業機械3の特性に応じて定められる各情報項目の重み係数をそれぞれ示す。
【0024】
【数1】
【0025】
図3,4の例では、制御情報として主軸回転数、環境情報として振動値及び温度値が取得されている。ここで、各情報項目の重み係数を1として類似度を計算すると、図5のように、取得された情報と、各状態相関情報との間の類似度が計算される。そして、状態推論部120は、最も類似度が高い3番目の状態相関情報が、情報が取得された時点での産業機械3の状態に近いと推論する。
【0026】
他の例として、例えば図6に例示されるように、産業機械3には温度センサが取り付けられておらず、制御情報として主軸回転数が、環境情報としては振動値のみが取得される場合、状態推論部120は、取得された情報と、各状態相関情報との間の類似度とを計算し、その結果として最も類似度が高い4番目の状態相関情報が、状態が取得された時点での産業機械3の状態に近いと推論する。
なお、上記した類似度の計算式を用いる状態の推論方法は一例であり、他の産業機械3の状態を推論できる方法があれば適宜採用しても良い。
【0027】
他の例として、例えば図7に例示されるように、産業機械3から主軸回転数が取得できておらず、制御情報としてアラーム情報が、環境情報としては温度値及び振動値が取得される場合、状態推論部120は、状態を示すアラーム状態で状態相関情報をフィルタリングした上で、各状態相関情報との間の類似度を計算し、その結果として最も類似度が高い3番目の状態相関情報が、状態が取得された時点での産業機械3の状態に近いと推論する。
なお、上記した類似度の計算式を用いる状態の推論方法は一例であり、他の産業機械3の状態を推論できる方法があれば適宜採用しても良い。
【0028】
代理応答部130は、図1に示したデータ収集装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理と、インタフェース21を用いた入出力処理とが行われることで実現される。代理応答部130は、ネットワーク8を介して他の装置から産業機械3の状態に関する問い合わせがあった場合に、状態推論部120による産業機械3の状態の推論結果に基づいて、問い合わせがあった情報項目に関する応答を産業機械3に代理して行う。代理応答部130は、例えば図5で説明した状況において、アラームの状態に関する問い合わせを監視サーバであるフォグコンピュータ6から受信すると、状態推論部120が推論した3番目の状態相関情報のアラーム状態(アラームなし)をフォグコンピュータ6に対して代理応答する。代理応答部130は、例えば図6で説明した状況において、産業機械3の温度に関する問い合わせを解析サーバであるクラウドサーバ7から受信すると、状態推論部120が推論した4番目の状態相関情報の温度値(150℃)をクラウドサーバ7に対して代理応答する。代理応答部130は、例えば図7で説明した状況において、産業機械3の主軸回転数に関する問い合わせをフォグコンピュータ6から受信すると、状態推論部120が推論した3番目の状態相関情報の主軸回転数(2000)をクラウドサーバ7に対して代理応答する。代理応答部130は、他の装置から問い合わされた情報項目が、制御情報取得部100乃至環境情報取得部110が取得した情報に含まれている場合には、取得した情報に基づいて代理応答するようにして良い。
【0029】
上記構成を備えて本実施形態によるデータ収集装置1は、産業機械3に関する他の装置からの情報の問い合わせに対して、産業機械3に代理して応答する。そのため、産業機械3に対する直接的な問い合わせの通信負荷を低減させることができる。
また、上記構成を備えて本実施形態によるデータ収集装置1は、産業機械3から実際には取得していないデータがあったとしても、状態相関情報記憶部210に記憶されている状態相関情報を用いて状態推論部120が産業機械3の状態を推論することができる。そのため、実際には取得していないデータの値を推論結果に基づいて代理応答することができる。これにより、産業機械3からデータ収集装置1が取得するデータ項目を減らすことができるため、産業機械3に対する直接的な問い合わせの通信負荷を低減させることができる。また、一部のセンサ等を削減することによるコスト削減にもつながる。
更に、予め対象となる産業機械3に係る状態相関情報を十分に集めておくことで、収集するデータに欠損が生じたとしても、他の情報に合わせてそれなりに精度が高いデータ値の補完ができるようになる。
【0030】
なお、状態推論部120が算出した類似度が複数の状態相関情報において同一値になった場合には、代理応答部130は、問い合わせてきた他の装置に対して複数の応答を返すようにしても良いし、問い合わせがあった情報項目について、複数の状態相関情報における当該情報項目の値から中央値や平均値等の統計値を算出して応答するようにしても良い。
また、産業機械3においてアラームが発生し、制御情報取得部100や環境情報取得部が制御情報や環境情報を取得できない場合には、代理応答を中断したり、産業機械3から取得した応答結果(アラートによるエラー応答等)を直接他の装置に対して送ったりするようにしても良い。また、アラームによる停止中である旨を代理で応答するようにしても良い。
【0031】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態の例のみに限定されることなく、適宜の変更を加えることにより様々な態様で実施することができる。
上記実施形態では、状態相関情報記憶部210には、所定のタイミングで取得された制御情報及び環境情報の組を状態相関情報として複数記憶しておき、それを用いて状態推論部120、代理応答部130が動作する例を示した。しかしながら、所定の時間に取得された時系列データとしての制御情報及び環境情報の組を状態相関情報として複数記憶しておくようにしても良い。この場合、状態推論部120は、動的タイムワーピング等の公知の時系列データ間の類似度を算出する手法を用いて、制御情報取得部100及び環境情報取得部110が取得した時系列データの組と、各状態相関情報との類似度を計算する。そして、類似する状態相関情報に基づいて(例えば、時系列データの最後の値を)代理応答部130が代理応答するようにすれば良い。このような構成とすることで、状態推論部120による産業機械3の状態の推論に係る計算量は増加するが、制御情報及び環境情報の各値の変化傾向を類似度の計算に反映させることができるため、ある程度の推論精度の向上が期待できる。
【0032】
また、状態推論部120は、制御情報取得部100及び環境情報取得部110が取得した制御情報及び環境情報と、状態相関情報との間の類似度を、他の装置から問い合わせされた情報項目に応じて異なるように算出しても良い。例えば、上記実施形態では、数1式における重み係数ai、bjは産業機械3の特性に応じて定めるものとしている。この重み係数ai、bjは、図8に例示されるように、他の装置に対して応答する情報項目に応じて異なる値となるようにしても良い。例えば、主軸回転数に関する応答をする場合には、主軸回転数に相関性が高い情報に係る重み係数を高く、相関性が低い情報に係る重み係数を低く設定しておく。そして、他の装置から問い合わせがあった情報項目によって類似度の計算式を変更し、変更した式で算出された類似度に応じて産業機械3の状態を推論することで、ある程度の推論精度の向上が期待できる。
【0033】
更に、状態推論部120による産業機械3の状態の推論を機械学習の技術を用いて行うことも可能である。この場合、状態相関情報記憶部210に記憶されたデータに基づいて、産業機械3から取得可能な制御情報及び環境情報から取得できない情報項目を推論するための機械学習器(例えば回帰式やニューラルネットワーク等)をそれぞれ作成しておく。そして、他の装置から所定の情報項目の問い合わせがあった場合、産業機械3から取得された制御情報及び環境情報から問い合わせがあった情報項目を推論可能な機械学習器を用いて該情報項目を推論し、推論結果を代理応答部130が他の装置に対して応答するように構成すれば良い。この方法を取る場合、産業機械3から取得可能な制御情報及び環境情報からいくつかの情報項目を欠落させて学習させた機械学習器を予め作成しておくことで、データが欠落した場合にも対応することができる。このような構成を取ることで、状態相関情報記憶部210に記憶されていない制御情報及び環境情報のデータ値を機械学習器で推論することが可能となるため、ある程度の推論精度の向上が期待できる。
【符号の説明】
【0034】
1 データ収集装置
3 産業機械
5,8 ネットワーク
6 フォグコンピュータ
7 クラウドサーバ
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 不揮発性メモリ
15,18,19,20,21 インタフェース
22 バス
70 表示装置
71 入力装置
72 外部機器
100 制御情報取得部
110 環境情報取得部
120 状態推論部
130 代理応答部
200 取得情報記憶部
210 状態相関情報記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8