(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】ケーソン及び浮体構造物のフロート
(51)【国際特許分類】
E02D 23/00 20060101AFI20240228BHJP
E02D 23/02 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
E02D23/00 Z
E02D23/02 A
(21)【出願番号】P 2022013518
(22)【出願日】2022-01-31
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000204000
【氏名又は名称】太平電業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】落合 孝之
(72)【発明者】
【氏名】長井 延光
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-323884(JP,A)
【文献】特開平07-101384(JP,A)
【文献】特開平07-331634(JP,A)
【文献】特開2021-172211(JP,A)
【文献】特開平09-315381(JP,A)
【文献】特開平09-287148(JP,A)
【文献】特開平05-311667(JP,A)
【文献】実開平06-001442(JP,U)
【文献】特開2008-082095(JP,A)
【文献】特開平08-156877(JP,A)
【文献】特開平11-291977(JP,A)
【文献】特開平03-066834(JP,A)
【文献】特開2001-114186(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114715342(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 19/00-25/00
B63B 1/00-85/00
B63J 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体構造物のフロートに用いられるケーソンであって、
底版と
、前記底版の縁に立設する側壁を有する中空の函体
からなるケーソン本体と、
前記函体内に配設された複数の鋼管と、
を備え、
複数の前記鋼管は、各前記鋼管の内部に気体及びバラスト水を保持できるように相互に接合されており、
前記複数の鋼管の少なくとも一部の鋼管は、前記底版に水平に埋設されており、
前記底版に埋設された前記鋼管の少なくとも一部の前記鋼管は、端部が前記底版から水平に突出しており、
前記底版から水平に突出した前記端部には、前記端部を閉じる閉止フランジが設けられ、
前記底版に埋設された前記鋼管の一部には、気体を前記鋼管内に流入するための流入口と、前記鋼管内のバラスト水を排出するための排出口と、が前記底版から上方に突出して設けられていることを特徴とするケーソン。
【請求項2】
請求項1に記載のケーソンであって、
複数の鋼管がケーソンの上端部に水平に更に配設され、その一部が前記側壁の上端部に埋設されており、
前記側壁の上端部に埋設された前記鋼管の端部が前記側壁の上端部から水平に突出しており、
前記側壁の上端部から水平に突出した前記端部には、前記端部を閉じる閉止フランジが設けられていることを特徴とするケーソン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のケーソンであって、
前記底版から水平に突出した前記端部の一部には、前記閉止フランジの代わりに前記端部を開閉可能なバルブが設けられていることを特徴とするケーソン。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の前記ケーソン
同士を、それぞれの前記ケーソンが有する前記閉止フランジで接合することにより組み合わせてなる浮体構造物のフロート。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の前記ケーソン同士を上下に重ねて緊結材により緊結することにより組み合わせてなる浮体構造物のフロート。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の浮体構造物のフロートであって、
組み合わされた前記ケーソンの下部に更に浮き具を接合したことを特徴とする浮体構造物のフロート。
【請求項7】
請求項6に記載の浮体構造物のフロートであって、
前記浮き具は、鋼管を環状にした外側鋼管と、内側鋼管とが相互に接合されており、
前記外側鋼管と内側鋼管は、気体及びバラスト水を通す連結管により接続されており、
前記外側鋼管又は内側鋼管の少なくとも何れか一方には、外部から気体又はバラスト水を供給するための供給口と、外部に気体又はバラスト水を排出するための排出口が設けられていることを特徴とする浮体構造物のフロート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上風車等に利用可能なケーソンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洋上風力発電に使用される洋上風車には着床式と浮体式がある。現在の主流は着床式であるが、日本近海は海底が深い場所が多く、着床式洋上風車の設置場所は限られる。そのため、浮体式洋上風車が近い将来主流になると見込まれる。
【0003】
また、洋上風力発電では発電電力量が増加傾向にあり、これに伴い洋上風車は設置重量の増大及びタワーの高度化により巨大化してきている。そのため、浮体式洋上風車では大きな浮力と高い安定度を有するフロートが求められている。
【0004】
一方で、特許文献1に示すように、着床式洋上風車の基礎等として、設置位置まで海に浮かべて運搬し、設置場所に沈めることができるケーソンが利用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そうした中、浮体式洋上風車のフロートとしてケーソンの利用が検討されている。しかしながら、ケーソンは海底に沈めて利用されることが前提とされており、浮体式洋上風車のような巨大な構造物のフロートとしてそのまま利用する場合、浮力を充分に確保できない等の問題がある。
【0007】
本発明は、こうした事情に鑑み、浮体式洋上風車のような巨大な構造物のフロートとして利用可能なケーソン等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、浮体構造物のフロートに用いられるケーソンであって、底版と、前記底版の縁に立設する側壁を有する中空の函体からなるケーソン本体と、前記函体内に配設された複数の鋼管と、を備え、複数の前記鋼管は、各前記鋼管の内部に気体及びバラスト水を保持できるように相互に接合されており、前記複数の鋼管の少なくとも一部の鋼管は、前記底版に水平に埋設されており、前記底版に埋設された前記鋼管の少なくとも一部の前記鋼管は、端部が前記底版から水平に突出しており、前記底版から水平に突出した前記端部には、前記端部を閉じる閉止フランジが設けられ、前記底版に埋設された前記鋼管の一部には、気体を前記鋼管内に流入するための流入口と、前記鋼管内のバラスト水を排出するための排出口と、が前記底版から上方に突出して設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のケーソンであって、複数の鋼管がケーソンの上端部に水平に更に配設され、その一部が前記側壁の上端部に埋設されており、前記側壁の上端部に埋設された前記鋼管の端部が前記側壁の上端部から水平に突出しており、前記側壁の上端部から水平に突出した前記端部には、前記端部を閉じる閉止フランジが設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のケーソンであって、前記底版から水平に突出した前記端部の一部には、前記閉止フランジの代わりに前記端部を開閉可能なバルブが設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の前記ケーソン同士を、それぞれの前記ケーソンが有する前記閉止フランジで接合することにより組み合わせてなる浮体構造物のフロートである。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の前記ケーソン同士を上下に重ねて緊結材により緊結することにより組み合わせてなる浮体構造物のフロートである。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の浮体構造物のフロートであって、組み合わされた前記ケーソンの下部に更に浮き具を接合したことを特徴とする浮体構造物のフロートである。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の浮体構造物のフロートであって、
前記浮き具は、鋼管を環状にした外側鋼管と、内側鋼管とが相互に接合されており、
前記外側鋼管と内側鋼管は、気体及びバラスト水を通す連結管により接続されており、
前記外側鋼管又は内側鋼管の少なくとも何れか一方には、外部から気体又はバラスト水を供給するための供給口と、外部に気体又はバラスト水を排出するための排出口が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、底版と側壁を有する中空の函体を備えるケーソンにおいて函体内に配設される複数の鋼管内に気体を取り込むことで、鉄筋が配設された通常のケーソンよりも大きな浮力を生み出すことができ、浮体式洋上風車のような巨大な構造物のフロートとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】(A)は本実施形態に係るケーソンの平面図であり、(B)は同側面図であり、(C)は同正面図である。
【
図2】(A)は本実施形態に係るケーソンにおける鋼管の配置例を示す図であり、(B)は同鋼管内へのバラスト水の出し入れを示す図である。
【
図3】(A)は本実施形態に係るケーソンを利用した洋上風車の設置例を示す平面図であり、(B)は同側面図であり、(C)は同正面図である。
【
図4】本実施形態に係るケーソンを接合したフロートの一例を示す図である。
【
図5】(A)は本実施形態に係るフロートを利用した洋上風車の設置例(フルサブタイプ)を示す平面図であり、(B)は同側面図であり、(C)は同正面図である。
【
図6】(A)は本実施形態に係るフロートを利用した洋上風車の設置例(V型フルサブタイプ)を示す平面図であり、(B)は同側面図であり、(C)は同正面図である。
【
図7】(A)は本実施形態に係るフロートを利用した洋上風車の設置例(トリポッド型フルサブタイプ)を示す平面図であり、(B)は同側面図であり、(C)は同正面図である。
【
図8】(A)は本実施形態に係るフロートを利用した洋上風車の設置例(ロースパータイプ)を示す平面図であり、(B)は同側面図であり、(C)は同正面図である。
【
図9】(A)は本実施形態に係るフロートを利用した洋上風車の設置例(ポーンツーンタイプ)を示す平面図であり、(B)は同側面図であり、(C)は同正面図である。
【
図10】(A)は本実施形態に係るフロートを利用した洋上風車の設置例(三角形(風車先端)タイプ)を示す平面図であり、(B)は同側面図であり、(C)は同正面図である。
【
図11】(A)は本実施形態に係るフロートを利用した洋上風車の設置例(三角形(風車中央)タイプ)を示す平面図であり、(B)は同側面図であり、(C)は同正面図である。
【
図12】(A)は本実施形態に係るフロートを利用した洋上風車の設置例(五角形(風車先端)タイプ)を示す平面図であり、(B)は同側面図であり、(C)は同正面図である。
【
図13】(A)は本実施形態に係るフロートを利用した洋上風車の設置例(五角形(風車中央)タイプ)を示す平面図であり、(B)は同側面図であり、(C)は同正面図である。
【
図14】(A)は本実施形態に係るフロートを利用した洋上風車の設置例(六角形(風車先端)タイプ)を示す平面図であり、(B)は同側面図であり、(C)は同正面図である。
【
図15】(A)は本実施形態に係るフロートを利用した洋上風車の設置例(六角形(風車中央)タイプ)を示す平面図であり、(B)は同側面図であり、(C)は同正面図である。
【
図16】(A)は本実施形態に係るフロートを利用した洋上風車の設置例(八角形(風車先端)タイプ)を示す平面図であり、(B)は同側面図であり、(C)は同正面図である。
【
図17】(A)は本実施形態に係るフロートを利用した洋上風車の設置例(八角形(風車中央)タイプ)を示す平面図であり、(B)は同側面図であり、(C)は同正面図である。
【
図18】本実施形態に係る鋼管ユニットの一例を示す平面図である。
【
図19】本実施形態に係る鋼管ユニットを組み合わせた鋼管フロートの一例を示す平面図である。
【
図20】(A)は本実施形態に係るフロート及び鋼管フロートを利用した洋上風車の輸送時の一例を示す平面図であり、(B)は同側面図であり、(C)は同正面図であり、(D)は本実施形態に係るフロート及び鋼管フロートを利用した洋上風車の設置時の一例を示す正面図である。平面図である。
【
図21】(A)は本実施形態に係るケーソンを昇降式ステージに搬送する前の様子を示す例図であり、(B)は本実施形態に係るケーソンを昇降式ステージに搬送した後の様子を示す例図である。
【
図22】本実施形態に係るケーソンをクレーンにより昇降式ステージに搬入している様子を示す例図である。
【
図23】(A)は本実施形態に係る昇降式ステージ上のケーソンの上に別のケーソンを搬送する前の様子を示す例図であり、(B)は本実施形態に係る昇降式ステージ上のケーソンの上に別のケーソンを搬送した後の様子を示す例図であり、(C)は本実施形態に係るケーソンを上下に重ねたフロートを浮かべた際の様子を示す例図である。
【
図24】(A)は本実施形態に係る昇降式ステージ上でケーソンを製作している様子を示す例図であり、(B)は本実施形態に係る昇降式ステージ上で製作したケーソンを進水させる際の様子を示す例図である。
【
図25】(A)は本実施形態に係る昇降式ステージとフロートを沖に輸送している様子を示す例図であり、(B)は本実施形態に係る昇降式ステージを沖に設置した際の様子を示す例図であり、(C)は本実施形態に係るフロートを沖で進水させる際の様子を示す例図である。
【
図26】(A)は本実施形態に係るスライド式支柱の側面図であり、(B)は本実施形態に係る昇降式ステージの平面図である。
【
図27】本実施形態に係るスライド式支柱の部分拡大図である。
【
図28】(A)-(G)は、本実施形態に係るジャッキの動作例を示す遷移図である。
【
図29】(A)は本実施形態に係る鋼管に異形鉄筋を取り付けた際の一例を示す模式図であり、(B)は同断面図である。
【
図30】(A)は本実施形態に係る鋼管にY型アンカーを取り付けた際の一例を示す模式図であり、(B)は同断面図であり、(C)は本実施形態に係る鋼管にL型アンカーを取り付けた際の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
まず、
図1~
図3を用いて、本実施形態に係るケーソン1について説明する。ケーソン1は、コンクリート製の底版3と、その縁に立設するコンクリート製の側壁2と、を有する中空の函体であり、函体内はコンクリート製の隔壁6により間仕切りされ、複数(
図1では3つ)の部屋4が形成されている。
【0026】
底版3には、
図2(A)に示すような、相互に配管接続部7で接続された複数の鋼管5が埋設されている。通常のケーソンは大きな曲げ応力が作用するために鉄筋が用いられるが、本実施形態のケーソン1では鉄筋の代わりに鋼管5を用いる。鋼管5同士は溶接で接続したり、中空の接続部材等で接続したりする。また、これらの少なくとも一部の鋼管5は、端部が底版3から水平に突出しており、その端部にはフランジ5aが形成されている。
【0027】
また、相互に接続された複数の鋼管5はケーソン1の上端部にも水平に配設されており、その一部が側壁2に埋設されている。また、これらの少なくとも一部の鋼管5は、端部が側壁2から水平に突出しており、その端部にはフランジ5aが形成されている。
【0028】
このように、ケーソン1の下端部と上端部には相互に接続された複数の鋼管5が配設されている。なお、本実施形態のケーソン1では、ケーソン1の下端部と上端部に鋼管5を配設することとしたが、他の部分(例えば、側壁2の内部)に鋼管5を配設してもよい。
【0029】
鋼管5の内面はライニング配管を使用することで、防食対策をすることが好ましい。また、水中に配置される鋼管は無酸素状態のため錆の進行は進まないが、水面に出る部分についてはコンクリートで覆って保護することにより腐食を防止することが好ましい。
【0030】
ケーソン1は、相互に接続された複数の鋼管5の内部に気体を取り込むことにより、ケーソン1の浮力を増大させることができる。ここで
図2(B)を用いて、鋼管5の内部にバラスト水を取り込む場合と、鋼管5の内部に気体を取り込む場合について説明する。
【0031】
まず、鋼管5の内部にバラスト水を取り込む場合には、ケーソン1が水に浸かっている状態で、底版3から突出している一部の鋼管5の端部に設けられたバルブ8を開き、バラスト水を流し込む。但し、バルブ8が設けられているフランジ5a以外のフランジ5aは閉止フランジで栓をしておく。これにより、ケーソン1に配設された鋼管5の内部にバラスト水が取り込まれ、ケーソン1の浮力が低下する。
【0032】
一方、鋼管5の内部に気体を取り込む場合には、底版3から上方に突出している口部5bにエアコンプレッサーにより気体を供給する供給管を接続し、また、口部5cにポンプによりバラスト水を排出する排出管を接続し、エアコンプレッサーとポンプを稼働させる。これにより、ケーソン1に配設された鋼管5の内部からバラスト水が排出されるとともに気体が取り込まれ、ケーソン1の浮力が増加する。なお、ケーソン1において上端部及び下端部にそれぞれ接続された複数の鋼管5が配設されるが、上端部のものと下端部のものを連結管(図示しない)により接続してもよい。接続しない場合には、上端部の複数の鋼管5についても口部5b、5cを設けてバラスト水と気体を出し入れしてもよい。
【0033】
このように、鋼管5は内部が空洞であるため、気体を取り込むことで大きな浮力を得ることができる。また、ポンプ等によりバラスト水の出し入れをすることでバラストコントロールすることができる。これによりケーソン1の水平度や吃水線を調整することができる。更に、ケーソン1で使用される鋼管5は周囲をコンクリートで固められるため座屈の防止をすることができ、大きな圧縮力を支持することができる。
【0034】
ここで、
図3を用いてケーソン1の使用例について説明する。
図3の例では、6つのケーソン1を平面視十字形に形成された台座140の下方に配置して、それぞれのケーソン1を台座140に接続している。台座140上の中央には洋上風車100が設置されている。洋上風車100は、タワー110と、タワー110の最上部に設置されるナセル120と、ナセル120の先端にハブを介して取り付けられるブレード130と、を含んで構成されている。
【0035】
ところで、ケーソン1は複数の鋼管5が配設されていることから鋼管5の内部に気体を取り込むことにより高い浮力を有するが、一のケーソン1の浮力だけでは巨大な構造物を浮かせることができない場合がある。そこで、複数のケーソン1を組み合わせて大きな浮力を有するフロート10を形成することができる。
【0036】
例えば、2つのケーソン1を組み合わせてフロート10を製作する場合には、
図4に示すように、各ケーソン1の側壁2又は底版3から水平に突出する鋼管5の端部に形成されたフランジ5a同士をボルト等で接合することによりフロート10を製作することができる。このように、フランジ5aで接合するだけでケーソン1同士を組み合わせることができ、求められる浮力に応じたフロート10を容易に制作することできる。
【0037】
ケーソン1同士を鋼管5で連結してフロート10とすることにより、フロート10全体の鋼管5内のバラスト水や気体を移動させることができる。これによりフロート10全体の水平度や喫水線を調整することができる。
【0038】
次に、複数のケーソン1を組み合わせたフロート10の使用例について説明する。なお、全ての使用例についてケーソン1の配置や数量は、洋上風車100の重量等に合わせて組み合わせを変更することができ、複数の使用例を組み合わせることもできる。
【0039】
図5の例(フルサブタイプ)では、平面視した場合において、8個のケーソン1を、4行2列をなすように配置し、それぞれを相互にフランジ5aで接合することによりフロート10Aを形成している。フロート10A上の平面視した場合の中央にトランジションピース150を設け、トランジションピース150上に洋上風車100を設置する。
【0040】
図6の例(V型フルサブタイプ)では、平面視した場合において、15個のケーソン1を、直角(V字型)をなすように配置し、それぞれを相互にフランジ5aで接合することによりフロート10Bを形成している。フロート10B上の平面視した場合の角部分にトランジションピース150を設け、トランジションピース150上に洋上風車100が設置する。
【0041】
図7の例(トリポッド型フルサブタイプ)では、平面視した場合において、6個のケーソン1を、ベース160Aを中心にトリポッド型をなすように配置し、それぞれを相互にフランジ5aで接合することによりフロート10Cを形成している。なお、ベース160Aは平面視した場合、六角形をしており、ケーソン1が接続される部分にはフランジ5aと接合するためのフランジが形成されている。ベース160A上の平面視した場合の中央にトランジションピース150を設け、トランジションピース150上に洋上風車100を設置する。
【0042】
図8の例(ロースパータイプ)では、平面視した場合において、8個のケーソン1を、ベース160Bを中心に十字型をなすように配置し、それぞれを相互にフランジ5aで接合することによりフロート10Dを形成している。なお、ベース160Bは平面視した場合、四角形をしており、ケーソン1が接続される部分にはフランジ5aと接合するためのフランジが形成されている。ベース160B上の平面視した場合の中央にトランジションピース150を設け、トランジションピース150上に洋上風車100を設置する。
【0043】
図9の例(ポーンツーンタイプ)では、平面視した場合において、10個のケーソン1を、長方形をなすように配置し、それぞれを相互にフランジ5aで接合することによりフロート10Eを形成している。フロート10E上の平面視した場合の2つの短辺部分をそれぞれ2個のケーソン1で構成し、一方の短辺にトランジションピース150を設け、トランジションピース150上に洋上風車100を設置する。
【0044】
図10の例(三角形(風車先端)タイプ)では、平面視した場合において、三角形の各辺を2つのケーソン1で形成し、各角を接続ピース170Aで形成するように配置し、それぞれを相互にフランジ5aで接合することによりフロート10Fを形成している。なお、接続ピース170Aは平面視した場合、V字形をしており、ケーソン1が接続される部分にはフランジ5aと接合するためのフランジが形成されている。一の接続ピース170A上の平面視した場合の1つの角部分にトランジションピース150を設け、トランジションピース150上に洋上風車100を設置する。
【0045】
図11の例(三角形(風車中央)タイプ)では、平面視した場合において、三角形の各辺を2つのケーソン1で形成するとともに、各角を接続ピース170Aで形成するように配置し、更に、三角形の内側に1つの辺から飛び出した2つのケーソン1を配置した上で、それぞれを相互にフランジ5aで接合することによりフロート10Gを形成している。平面視した場合の三角形の内側のケーソン1上にトランジションピース150を設け、トランジションピース150上に洋上風車100を設置する。
【0046】
図12の例(五角形(風車先端)タイプ)では、平面視した場合において、五角形の各辺をそれぞれ1つのケーソン1で形成するとともに、各角を接続ピース170Bで形成するように配置し、更に、1つの辺から五角形の内側方向に5つのケーソン1を配置した上で、それぞれを相互にフランジ5aで接合することによりフロート10Hを形成している。なお、接続ピース170Bは平面視した場合、緩いV字形をしており、ケーソン1が接続される部分にはフランジ5aと接合するためのフランジが形成されている。平面視した場合の五角形内側方向に伸びる一連のケーソン1群の五角形の辺寄りにトランジションピース150を設け、トランジションピース150上に洋上風車100を設置する。
【0047】
図13の例(五角形(風車中央)タイプ)は、フロート10Hの形状が
図12の例と同様であるが、洋上風車100の設置位置が異なる。
図13の例では、平面視した場合の五角形内側方向に伸びる一連のケーソン1群の五角形中央にトランジションピース150を設け、トランジションピース150上に洋上風車100を設置する。
【0048】
図14の例(六角形(風車先端)タイプ)では、平面視した場合において、六角形の各辺をそれぞれ1つのケーソン1で形成するとともに、各角を接続ピース170Cで形成するように配置し、更に、1組みの対向する辺の間に6つのケーソン1を配置した上で、それぞれを相互にフランジ5aで接合することによりフロート10Jを形成している。なお、接続ピース170Cは平面視した場合、緩いV字形をしており、ケーソン1が接続される部分にはフランジ5aと接合するためのフランジが形成されている。平面視した場合の六角形内側に配置した一連のケーソン1群の六角形の辺寄りにトランジションピース150を設け、トランジションピース150上に洋上風車100を設置する。
【0049】
図15の例(六角形(風車中央)タイプ)では、平面視した場合において、六角形の各辺をそれぞれ1つのケーソン1で形成するとともに、4つの角を接続ピース170C、2つの角を接続ピース170Dで形成するように配置し(接続ピース170Dは対向する位置に配置する)、更に、1組みの対向する辺の間に6つのケーソン1を配置し、各接続ピース170Dから内側にそれぞれ2つのケーソン1を配置した上で、それぞれを相互にフランジ5aで接合することによりフロート10Kを形成している。なお、接続ピース170Dは4つのケーソン1と接続されるため、それぞれに対応する部分にはフランジ5aと接合するためのフランジが形成されている。平面視した場合の六角形中央に配置したケーソン1上にトランジションピース150を設け、トランジションピース150上に洋上風車100を設置する。
【0050】
図16の例(八角形(風車先端)タイプ)では、平面視した場合において、八角形の各辺をそれぞれ1つのケーソン1で形成するとともに、各角を接続ピース170Eで形成するように配置し、更に、1組みの対向する辺の間に6つのケーソン1を配置した上で、それぞれを相互にフランジ5aで接合することによりフロート10Lを形成している。なお、接続ピース170Eは平面視した場合、扇形をしており、ケーソン1が接続される部分にはフランジ5aと接合するためのフランジが形成されている。平面視した場合の八角形内側に配置した一連のケーソン1群の八角形の辺寄りにトランジションピース150を設け、トランジションピース150上に洋上風車100を設置する。
【0051】
図17の例(八角形(風車中央)タイプ)では、平面視した場合において、八角形の各辺をそれぞれ1つのケーソン1で形成するとともに、各角を接続ピース170Eで形成するように配置し、更に、1組みの対向する辺の間に6つのケーソン1を配置し、当該6つのケーソン1群と直角に交わるように他の一組の各辺から内側にそれぞれ2つのケーソン1を配置した上で、それぞれを相互にフランジ5aで接合することによりフロート10Kを形成している。平面視した場合の八角形中央に配置したケーソン1上にトランジションピース150を設け、トランジションピース150上に洋上風車100を設置する。
【0052】
このように、フロート10は複数のケーソン1を組み合わせて製作することができるため、一部のケーソン1が損傷した場合であっても、そのケーソン1のみを交換することで容易に修繕できる。よって、風力発電設備を長期で利用することができ、また、修繕費用を抑制することができる。
【0053】
次に、
図18及び
図19を用いて、ケーソン1又はフロート10だけでは浮力が足りない場合に利用する鋼管ユニット12及び鋼管フロート11について説明する。
【0054】
鋼管ユニット12は、鋼管を環状にした外側鋼管13と内側鋼管14とが相互に接合されており、ケーソン1の下方に取り付けられて利用されるために平面視した場合にケーソン1と同様の形状・サイズとなっている。ケーソン1の鋼管5と同様に、外側鋼管13と内側鋼管14に取り込む気体又はバラスト水の量を変化させることにより浮力を制御することができる。外側鋼管13と内側鋼管14は、気体又はバラスト水を通す連結管15により接続することにより、外側鋼管13と内側鋼管14の双方に一度に気体又はバラスト水を取り込むことができる。外側鋼管13又は内側鋼管14の少なくとも何れか一方には、外部から気体又はバラスト水を供給するための供給口と、外部に気体又はバラスト水を排出するための排出口が設けられており、供給口及び排出口はフロート等として利用される際には封止される。
【0055】
鋼管フロート11は、複数の鋼管ユニット12を接続することにより形成される。
図19に示すように、鋼管ユニット12同士は、例えば、連結管15により連結することができる。これにより、全ての鋼管ユニット12に同時に気体又はバラスト水を取り込むことができる。また、一部の鋼管ユニット12の供給口又は排出口を利用して気体又はバラスト水の供給又は排出をすることができる。
【0056】
次に、
図20を用いて、フロート10及び鋼管フロート11を利用した洋上風車100の輸送方法について説明する。
【0057】
図20(A)-(C)は、洋上風車100の輸送時の様子を示している。この例では、12個のケーソン1を、6行2列をなすように配置して接続したものを、更に、上下二段に組み合わせたフロート10Nを利用する。ケーソン1又は水平に接続したケーソン1群を上下に組み合わせる場合には、例えば、両者が上下に接触した状態でロープにより緊結する。なお、ロープは、強固に固定するため鋼索(鋼製ワイヤーロープ)を用いるのが好適であるが、ケーソン1同士を強固に固定可能であれば織糸綱等を採用することもできる。また上下に重ねたケーソン1同士を緊結可能であればロープ以外の緊結材を採用することもできる。これにより、24個のケーソン1からなるフロート10Nを形成することができる。これに加えて、フロート10Nには、その下方に鋼管フロート11が取り付けられる。そして、フロート10N及び鋼管フロート11に気体を取り込み曳航することにより、巨大な洋上風車100を浮かせた状態で輸送することができる。
【0058】
洋上風車100を洋上の設置場所まで輸送した後は、鋼管フロート11の各鋼管内にバラスト水を供給するとともに各鋼管内の気体を排出することにより、鋼管フロート11をアンカーとして海底に沈めて、洋上風車100を係留することができる。
【0059】
次に、
図21を用いて、陸にあるケーソン1などの浮体構造物を進水させる浮体構造物の進水方法について説明する。なお、本実施形態では、ケーソン1を進水させる方法について説明する。
【0060】
[1.ステージ設置工程]
ステージ設置工程では、岸壁部に陸と地続き且つ同一の高さレベルとなる昇降式ステージ20を海上に設置する。昇降式ステージ20は、陸と同一の高さレベルから、昇降式ステージ20上のケーソン1を進水させることができる、海面よりも下の高さレベルの範囲で昇降可能となっている。昇降式ステージ20を昇降させる機構は従来公知のものを採用することができる。本実施形態では、後述するスライド式支柱21を用いた昇降式ステージ20を使用する。
【0061】
[2.搬入工程]
次に、
図21(A)に示すように、陸にあるケーソン1を昇降式ステージ20上に搬入する。このとき、昇降式ステージ20を陸と同一の高さレベルとしておくことで、クレーンを用いずにケーソン1を横引きして昇降式ステージ20上に搬入することができる。一方で、
図22に示すように、クレーン23を使用できる条件である場合には、クレーン23を用いて昇降式ステージ20上にケーソン1を搬入することとしてもよい。
【0062】
[3.進水工程]
昇降式ステージ20にケーソン1を搬入したら、
図21(B)に示すように、昇降式ステージ20を下降させてケーソン1を進水させる。
【0063】
[4.フロート式台船固定工程、レベル調整工程]
なお、ケーソン1の重量が重く、スライド式支柱21だけでは昇降式ステージ20の高さレベルを陸と同一の高さレベルを維持できない場合には、昇降式ステージ20の下にフロート式台船22を配置し、昇降式ステージ20に固定して、昇降式ステージ20の高さレベルを維持してもよい。
【0064】
フロート式台船22は、バラストタンクを有し、バラストタンク内に取り込むバラスト水の量を調整することにより、フロート式台船22の深さレベルを制御することができる。そこで、昇降式ステージ20の下に配置したフロート式台船22のバラストタンク内のバラスト水の量を調整して、昇降式ステージ20のレベル調整を行う。例えば、フロート式台船22は、ケーソン1を載せた昇降式ステージ20のレベルを陸と同一レベルに維持するために、バラストタンク内の空気などの気体の量を増加させることで浮力を増加させて昇降式ステージ20を支持し、また、ケーソン1を進水させるために昇降式ステージ20を下降させる場合にはバラストタンク内に気体と入れ替えでバラスト水を取り込み、昇降式ステージ20とともに沈降する。
【0065】
なお、それでも昇降式ステージ20の高さレベルを維持出来ない場合には、更に、鋼管フロート11をフロート式台船22の下に設置することで、浮力を高めてもよい。また、ケーソン1のフロート搬入前において昇降式ステージ20の高さレベルが地面のレベルよりも高くなってしまう場合には、フロート式台船22のバラスト水の量を調整して、昇降式ステージ20の高さレベルを制御してもよい。
【0066】
[6.組み立て工程]
搬入工程で複数のケーソン1を昇降式ステージ20上に搬入して、昇降式ステージ20上で複数のケーソン1を組み合わせて一のフロート10(「組み合わせ浮体構造物」の一例)を組み立てて、進水工程においてフロート10を進水させることとしてもよい。
【0067】
ここで、
図23を用いて、2つのケーソン1を上下に組み合わせてフロート10を製作する場合について説明する。まず、
図23(A)に示すように、1つ目のケーソン1を横引きで昇降式ステージ20に搬入し、次いで、昇降式ステージ20を下降させ、一つ目のケーソン1の上部を陸と同一レベルとする。このとき、1つ目のケーソン1の鋼管5内にはバラスト水を取り込み浮力が働かないようにしておく。
【0068】
次に、
図23(B)に示すように、2つ目のケーソン1を横引きで1つ目のケーソン1の真上に搬入する。次いで、1つ目のケーソン1と2つ目のケーソン1が上下に接触した状態でストランド等のロープにより緊結する。これによりフロート10ができあがる。
【0069】
次に、
図23(C)に示すように、1つ目のケーソン1の鋼管5内に気体を供給するとともに、バラスト水を排出することにより、フロート10を浮かせる。これにより、フロート10を進水させることができる。
【0070】
次に、
図24を用いて、昇降式ステージ20上でケーソン1を製作する場合について説明する。
図24(A)に示すように、昇降式ステージ20上に、鋼管5と、ケーソン1の側壁2、底版3、隔壁6をコンクリートで形成するための型枠を配置し、コンクリートミキサー24からコンクリートを流し込み、ケーソン1を製作する。このとき、ケーソン1の重量が大きい場合には、昇降式ステージ20の下にフロート式台船22を配置して支持する。
【0071】
ケーソン1が完成したら、
図24(B)に示すように、昇降式ステージ20を下降させるとともにフロート式台船22を浮沈させ、ケーソン1を進水させる。このように、ケーソン1の製作から進水までを昇降式ステージ20上で行うことができる。
【0072】
ところで、大型のフロート10は岸壁など水深が深くない場所では浮力が不足し、フロート10自体が浮上しない可能性があるため、水深が深い沖で進水させることが望ましい。そこで、
図25を用いて、昇降式ステージ20を用いてフロート10を沖で進水させる場合について説明する。
【0073】
[運搬工程]
まず、
図25(A)に示すように、伸縮可能なスライド式支柱21が設けられた昇降式ステージ20を、フロート10が載置された状態でフロート式台船22に載せて進水位置まで運搬する。このとき、スライド式支柱21は海底から引き上げた状態としておく。但し、フロート10の重量が軽くフロート式台船22が無くても充分な浮力がある場合には、フロート式台船22は必要としない。この場合、曳航船で曳航してもらい進水位置まで運搬することとする。
【0074】
[着床工程]
フロート10を進水位置まで運搬したら、
図25(B)に示すように、スライド式支柱21の底面に設けられたベースプレート21aが海底に着床するまで支柱を下方にスライドさせる。
【0075】
[進水工程]
ベースプレート21aが海底に着床したら、
図25(C)に示すように、昇降式ステージ20を下降させるとともにフロート式台船22を浮沈させ、載置されているフロート10を進水させる。これにより、フロート10のような巨大な構造物を沖で安全に進水させることができる。
【0076】
次に、昇降式ステージ20及びスライド式支柱21の概要について説明する。まず、
図24の例のように、スライド式支柱21の底面に設けられたベースプレート21aが海底に接地している際に昇降式ステージ20を昇降させる場合について説明する。
【0077】
図26に示した例では、昇降式ステージ20の周縁に設けられた10本のスライド式支柱21が昇降式ステージ20を支持する。但し、スライド式支柱21の本数や配置は、ケーソン1のサイズや載置する数等により任意に変更できる。スライド式支柱21は円柱形状をしており、その下部は昇降式ステージ20よりも下方に突出している。スライド式支柱21の底面にはベースプレート21aが設けられている。10本のスライド式支柱21は、それぞれが同調して昇降式ステージ20を上下にスライドさせることにより昇降式ステージ20の水平を維持する。
【0078】
昇降式ステージ20に固設されたスライドパッド208は、スライド式支柱21が貫通しており、スライド式支柱21を鉛直に且つ鉛直方向に移動可能に支持するとともに、スライド式支柱21に作用する水平方向の力を支持する。
【0079】
基台固定部材271A、271Bは、昇降式ステージ20のスライドパッド208上にスライド式支柱21が通る孔をよけて固設されている。基台211は、スライド式支柱21の支柱本体21dには固定されておらず、基台固定部材271A、271Bを介して昇降式ステージ20に固設されている。
【0080】
図27に示すように、基台211の上面には上側ジャッキ220Aが固設され、基台211の下面には上側ジャッキ220Aと天地逆転した状態で下側ジャッキ220Bが固設されている。基台211には、ストランド212が上下に通る孔が形成されており、上側ジャッキ220A及び下側ジャッキ220Bはこの孔から出るストランド212を把持する。
【0081】
ストランド212は、スライド式支柱21の支柱本体21dに対して昇降式ステージ20が上下にスライドする距離分の長さを有し、スライド式支柱21の支柱本体21dに沿って固設される。ストランド212の上端はスライド式支柱21の支柱本体21dの上部に設けられた上側ストランド固定部21bに固定され、ストランド212の下端は下側ストランド固定部21cに固定される。
【0082】
そして、昇降式ステージ20を上方にスライドさせる場合には、下側ジャッキ220Bがストランド212をジャッキアップし、一方、昇降式ステージ20を下方にスライドさせる場合には、下側ジャッキ220Bがストランド212をジャッキダウンする。
【0083】
ここで、
図28を用いて上側ジャッキ220Aの構成と動作の概略を説明する。上側ジャッキ220Aは、ストランド212を把持する第1グリップ222及び第2グリップ223と、第1グリップ222を上方へと押し上げる油圧ジャッキ221を有する。油圧ジャッキ221はシリンダ221aとピストン221bを有する。上側ジャッキ220Aは、図示しない制御装置により制御される。
【0084】
制御装置は、第1グリップ222及び第2グリップ223について、ストランド212の把持状態に関して、把持する状態(「閉状態」という)と、把持しない状態(「開状態」という)の何れかの状態に制御する。
【0085】
次に上側ジャッキ220Aがストランド212を上方に引っ張る際の手順(すなわち、上側ジャッキ220Aがジャッキアップする際の手順)について説明する。まず、
図28(A)に示すように、初期状態では、第1グリップ222及び第2グリップ223が閉状態に制御されている。このとき、ストランド212の荷重は第2グリップ223に掛かっている。
【0086】
次いで、制御装置は、
図28(B)に示すように、第2グリップ223を開状態とする。これにより、ストランド212の荷重は第1グリップ222に掛かる。
【0087】
次いで、制御装置は、
図28(C)に示すように、油圧ジャッキ221をジャッキアップする(シリンダ221aからピストン221bを伸長させる)。これにより、シリンダ221aからピストン221bが伸長した分だけストランド212が上方に引き上げられる。
【0088】
次いで、制御装置は、油圧ジャッキ221をジャッキダウンするために、
図28(D)に示すように、第2グリップ223を閉状態とし、次いで、
図28(E)に示すように、第1グリップ222を開状態とする。これにより、ストランド212の荷重が第1グリップ222に掛かっていた状態から、ストランド212の荷重が第2グリップ223に掛かる状態へと遷移する。
【0089】
次いで、制御装置は、
図28(F)に示すように、油圧ジャッキ221をジャッキダウンする。
【0090】
次いで、制御装置は、
図28(G)に示すように、第1グリップ222を閉状態とする。これにより、上側ジャッキ220Aは
図28(A)に示す状態と同様となる(但し、第1グリップ222及び第2グリップ223がストランド212を把持している位置は異なる)。
【0091】
以降、
図28(A)~
図28(G)を繰り返すことにより、ストランド212を引き上げ続けることができる。但し、
【0092】
次に上側ジャッキ220Aがストランド212を下方にスライドさせる際の手順(すなわち、上側ジャッキ220Aがジャッキダウンする際の手順)について説明する。上側ジャッキ220Aがジャッキダウンする際の手順は、上側ジャッキ220Aがジャッキアップする際の手順の逆手順となる。まず、
図28(G)に示すように、初期状態では、第1グリップ222及び第2グリップ223が閉状態に制御されている。このとき、ストランド212の荷重は第2グリップ223に掛かっている。
【0093】
次いで、制御装置は、
図28(F)に示すように、第1グリップ222を開状態とする。
【0094】
次いで、制御装置は、
図28(E)に示すように、油圧ジャッキ221をジャッキアップする(シリンダ221aからピストン221bを伸長させる)。
【0095】
次いで、制御装置は、油圧ジャッキ221をジャッキダウンするために、
図28(D)に示すように、第1グリップ222を閉状態とし、次いで、
図28(C)に示すように、第2グリップ223を開状態とする。これにより、ストランド212の荷重が第2グリップ223に掛かっていた状態から、ストランド212の荷重が第1グリップ222に掛かる状態へと遷移する。
【0096】
次いで、制御装置は、
図28(B)に示すように、油圧ジャッキ221をジャッキダウンする。
【0097】
次いで、制御装置は、
図28(A)に示すように、第2グリップ223を閉状態とする。これにより、上側ジャッキ220Aは
図28(G)に示す状態と同様となる(但し、第1グリップ222及び第2グリップ223がストランド212を把持している位置は異なる)。
【0098】
以降、
図28(G)~
図28(A)を繰り返すことにより、ストランド212を下方にスライドさせ続けることができる。
【0099】
なお、ここでは上側ジャッキ220Aの構成及び動作の概略について説明したが、下側ジャッキ220Bは、上側ジャッキ220Aを天地逆転して基台211の下側に固設したものであり、その構成及び動作は同様である。つまり、下側ジャッキ220Bは、上側ジャッキ220Aがストランド212を上方に引っ張る代わりに、ストランド212を下方に引っ張る。
【0100】
また、上側ジャッキ220Aがジャッキアップ又はジャッキダウンする際には、下側ジャッキ220Bの第1グリップ222及び第2グリップ223は開状態とし、下側ジャッキ220Bがジャッキアップ又はジャッキダウンする際には、上側ジャッキ220Aの第1グリップ222及び第2グリップ223は開状態とする。
【0101】
次に、
図25の例のように、ベースプレート21aが海底(「水底」の一例)に接地していない状態(
図25(A))から、スライド式支柱21を下方にスライドさせてベースプレート21aを海底に接地させる場合について説明する。
【0102】
まず、ベースプレート21aが海底に接していない状態においては、上側ジャッキ220Aがストランド212を把持することにより、スライド式支柱21の自重を支持している。そして、上側ジャッキ220Aがストランド212の把持を解除してジャッキダウンすることによりスライド式支柱21のベースプレート21aを海底に設置する。
【0103】
次に、スライド式支柱21を海底に押し込むために、下側ジャッキ220Bがストランド212を下方に引っ張る。このとき、昇降式ステージ20の自重によってもスライド式支柱21が海底に押し込まれるが、昇降式ステージ20の自重が足りない場合には、昇降式ステージ20の積載荷重を利用して(例えば、ケーソン1にバラスト水を注水して)、自重を増す。こうして、スライド式支柱21を海底にしっかり埋め込むことにより、スライド式支柱21が荷重を支持できるようになり、昇降式ステージ20を任意に昇降させることができるようになる。
【0104】
以上説明したように、本実施形態の洋上風車100(「浮体構造物」の一例)のフロート10に用いられるケーソン1は、底版3と側壁2を有する中空の函体と、函体内に配設された複数の鋼管5と、を備える。
【0105】
したがって、本実施形態のケーソン1によれば、底版3と側壁2を有する中空の函体を備えるケーソン1において函体内に配設される複数の鋼管5内に気体を取り込むことで、鉄筋が配設された通常のケーソンよりも大きな浮力を生み出すことができ、浮体式の洋上風車100のような巨大な構造物のフロート10として利用することができる。
【0106】
また、本実施形態のケーソン1は、複数の鋼管5が底版3及び側壁2に埋設されている。なお、ケーソン1は、複数の鋼管5の少なくとも一部の鋼管5は底版3又は側壁2の少なとも何れか一方に埋設することとしてもよい。
【0107】
さらに、本実施形態のケーソン1は、相互に接合された鋼管5が函体内で水平に配設されている。これにより、鋼管5内にバラスト水や気体を取り込んだ際に水平になりやすく、ケーソン1の高さレベルを調整しやすくなる。
【0108】
さらにまた、本実施形態のケーソン1は、少なくとも一部の鋼管5の端部が側壁2及び底版3水平に突出しており、当該端部にはフランジ5aが形成されている。これにより、ケーソン1同士をフランジ5aで接合して組み合わせることにより容易にフロート10を製作することができる。なお、ケーソン1は、少なくとも一部の鋼管5の端部を側壁2又は底版3の少なくとも何れか一方から水平に突出させることとしてもよく、ケーソン1同士を接続する場合には、突出している端部同士を接合することとしてもよい。また、鋼管5の端部にフランジ5aを形成せずに、他の接続部材で接続することとしてもよい。
【0109】
さらにまた、本実施形態のフロート10は、上下に重なるケーソン1同士を例えば鋼性ワイヤーロープ(「緊結材」の一例)により緊結することで製作することもできる。
【0110】
さらにまた、本実施形態のフロート10は、組み合わされたケーソン1の下部に更に鋼管フロート(「浮き具」の一例)を接合することとしてもよい。これにより、フロート10だけでは足りない浮力を補うことができる。
【0111】
さらにまた、本実施形態の陸にあるケーソン1(「浮体構造物」の一例)を進水させるケーソン1の進水方法は、陸と地続き且つ同一レベルとなる昇降式ステージ20を海上に設置するステージ設置工程と、ケーソン1を昇降式ステージ20上に搬入する搬入工程と、昇降式ステージ20のレベルを下降させてケーソン1を進水させる進水工程と、を含む。これにより、ケーソン1のような巨大な浮体構造物を昇降式ステージ20だけで安全に進水させることができる。
【0112】
さらにまた、本実施形態のケーソン1の進水方法は、昇降式ステージ20の下にバラストタンクを有するフロート式台船22を配置し、昇降式ステージ20とフロート式台船22を相互に固定するフロート式台船固定工程と、バラストタンク内のバラスト水の量を調整して、昇降式ステージ20のレベル調整を行うレベル調整工程と、を含む。これにより、昇降式ステージ20だけでは支持することができない、昇降式ステージ20上のケーソン1の荷重を、フロート式台船22の浮力を借りて支持することができる。
【0113】
さらにまた、本実施形態のケーソン1の進水方法は、搬入工程では、ケーソン1を横引きして昇降式ステージ20上に搬入する。これにより、クレーンがなくてもケーソン1を昇降式ステージ20上に搬入することができる。
【0114】
さらにまた、本実施形態のケーソン1の進水方法は、搬入工程では、複数のケーソン1を昇降式ステージ20上に搬入し、昇降式ステージ20上で複数のケーソン1を組み合わせて、一のフロート10(「組み合わせ浮体構造物」の一例)を組み立てる組み立て工程、を含み、進水工程では、フロート10を進水させる。これにより、海上の昇降式ステージ20上で複数のケーソン1を組み合わせたフロート10を製作することができ、巨大なフロート10を昇降式ステージ20上に搬入せずに進水させることができる。
【0115】
なお、フロート10全体の浮力は各ケーソン1における鋼管5内に取り込むバラスト水や、フロート10の数量でコントロールできるため、フロート10全体をできるだけ海面に出ないように調整ができる。すなわち、海面付近は波の影響が大きく、腐食も進行しやすいところ、フロート10の吃水線を調整することで海面接触部を必要最小限に抑えることができる。
【0116】
また、フロート10の製作はケーソン1の組み合わせであるため施工を分割することが容易で生産性が高く、フロート10の形状も上述したように様々な形状とすることができる。フロート10を必要な形状に施工できれば、従来の設備で施工も可能となり、新たに施設を作る必要が無く生産性やコスト低減が見込まれる。
【0117】
さらに、多数のケーソン1を組み合わせて、フロート10の自重を増やすことで、小波の影響が無くなりフロート10の揺れを抑えることができる。これにより洋上風車100への影響を最小限にでき、作業員のフロート10への乗り込みやフロート10上や洋上風車100内での作業等における作業員の船揺れによる影響を軽減でき、作業効率の向上が見込める。
【0118】
さらにまた、水深が浅い港湾においても大型のフロート10を組み立てることができ、より水深の深い海域へ移動ができることから、大型の洋上風力の浮体構造物建設に非常に有効な手段となる。
【0119】
さらにまた、本実施形態の昇降式ステージ20は岸壁に設置することとしたが、例えば、造船用の
ドック内に設置することも可能である。
【0120】
なお、鋼管5にはコンクリートに対する付着力を設けるため、
図29(A)、(B)に示すように鋼管5の表面に異形鉄筋291を長手方向に配置することもできる。また、鋼管5の表面にY型アンカー292(
図30(A)、(B))やL型のアンカー(
図30(C))や頭付きアンカー(図示しない)等を取り付けることもできる。
【符号の説明】
【0121】
1 :ケーソン
2 :側壁
3 :底版
4 :部屋
5 :鋼管
5a :フランジ
5b :口部
5c :口部
6 :隔壁
7 :配管接続部
8 :バルブ
10 :フロート
10A :フロート
10B :フロート
10C :フロート
10D :フロート
10E :フロート
10F :フロート
10G :フロート
10H :フロート
10J :フロート
10K :フロート
10L :フロート
10N :フロート
11 :鋼管フロート
12 :鋼管ユニット
13 :外側鋼管
14 :内側鋼管
15 :連結管
20 :昇降式ステージ
21 :スライド式支柱
21a :ベースプレート
21b :上側ストランド固定部
21c :下側ストランド固定部
21d :支柱本体
22 :フロート式台船
23 :クレーン
24 :コンクリートミキサー
100 :洋上風車
110 :タワー
120 :ナセル
130 :ブレード
140 :台座
150 :トランジションピース
160A :ベース
160B :ベース
170A :接続ピース
170B :接続ピース
170C :接続ピース
170D :接続ピース
170E :接続ピース
208 :スライドパッド
211 :基台
212 :ストランド
220A :上側ジャッキ
220B :下側ジャッキ
221 :油圧ジャッキ
221a :シリンダ
221b :ピストン
222 :第1グリップ
223 :第2グリップ
271A :基台固定部材
271B :基台固定部材
291 :異形鉄筋
292 :Y型アンカー
293 :L型アンカー