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特許7444910フレキシブルデバイス用粘着シート、フレキシブル積層体およびフレキシブルデバイス
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  • 特許-フレキシブルデバイス用粘着シート、フレキシブル積層体およびフレキシブルデバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】フレキシブルデバイス用粘着シート、フレキシブル積層体およびフレキシブルデバイス
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240228BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20240228BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/10
C09J201/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022015759
(22)【出願日】2022-02-03
(65)【公開番号】P2023113409
(43)【公開日】2023-08-16
【審査請求日】2023-03-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小▲鯖▼ 翔
(72)【発明者】
【氏名】倉田 雄一
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-189659(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0147623(KR,A)
【文献】特開2021-161192(JP,A)
【文献】特開2018-016727(JP,A)
【文献】特開2010-168425(JP,A)
【文献】特開2014-189778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層と、前記粘着剤層の両主面を挟持する第1剥離シートおよび第2剥離シートと、を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層を構成する粘着剤の23℃における貯蔵弾性率が0.2MPa以下であり、
剥離速度10m/minで前記粘着剤層から剥離した時の前記第1剥離シートの剥離力が、剥離速度10m/minで前記粘着剤層から剥離した時の前記第2剥離シートの剥離力よりも24mN/25mmを超えて大きく、
剥離速度2.4m/minで前記粘着剤層から剥離した時の第1剥離シートの剥離力が150mN/25mm以下であるフレキシブルデバイス用粘着シート。
【請求項2】
剥離速度2.4m/minで前記粘着剤層から剥離した時の第1剥離シートの剥離力が130mN/25mm以下である請求項1に記載のフレキシブルデバイス用粘着シート。
【請求項3】
第1のフレキシブル部材と、第2のフレキシブル部材と、前記第1のフレキシブル部材と前記第2のフレキシブル部材とを互いに貼合する粘着剤層と、を備えるフレキシブル部材積層体であって、
前記粘着剤層が、請求項1または2に記載のフレキシブルデバイス用粘着シートが有する粘着剤であるフレキシブル部材積層体。
【請求項4】
請求項2または3に記載のフレキシブル部材積層体を備えるフレキシブルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルデバイス用粘着シート、フレキシブル積層体およびフレキシブルデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶素子、発光ダイオード(LED)素子、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子等を有する表示体部材は、他の部材(たとえば、表示体部材を保護するための保護パネル等)と積層されて、電子機器等のデバイスの表示体(ディスプレイ)を構成する。
【0003】
このような表示体部材と他の部材との積層体は、一般的に、表示体部材と他の部材とを、粘着シートの粘着剤層を用いて貼合することにより形成される。
【0004】
近年、電子機器の表示体(ディスプレイ)として、屈曲可能なディスプレイ、いわゆるフレキシブルディスプレイが提案されている。フレキシブルディスプレイは、例えば、湾曲させて円柱状の柱に設置するような据え置き型ディスプレイ用として、あるいは折り曲げたり丸めたりして持ち運べるモバイルディスプレイ用として、幅広い用途が期待されている。
【0005】
フレキシブルディスプレイの種類としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電気泳動方式のディスプレイ(電子ペーパー)、基板としてプラスチックフィルムを用いた液晶ディスプレイ等が挙げられる。
【0006】
このようなフレキシブルディスプレイとしては、成形時に曲げ成形されて、屈曲した状態が維持されるディスプレイ、使用時に繰り返し屈曲されるディスプレイ等が例示される。
【0007】
特許文献1および2は、粘着シートに含まれる揮発性有機化合物量が低減され、かつ曲面接着性が良好な粘着シートを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-26241号公報
【文献】特許5835837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、フレキシブルディスプレイ等のフレキシブルデバイスに用いられる粘着シートの粘着剤層には、フレキシブル部材の曲げに追従できる程度の柔軟性が求められる場合がある。
【0010】
このようなフレキシブルデバイスに用いられる粘着シートは、通常、粘着剤層の両主面に剥離シートが配置された構成を有しており、一方の剥離シート(軽剥離型剥離シート)の剥離力が、他方の剥離シート(重剥離型剥離シート)の剥離力よりも小さく設計されている。
【0011】
一方のフレキシブル部材と他方のフレキシブル部材とを粘着シートを用いて貼合する場合、まず、粘着シートの軽剥離型剥離シートを剥離して、露出した粘着剤層を一方のフレキシブル部材に貼合する。その後、重剥離型剥離シートを剥離して、露出した粘着剤層を他方のフレキシブル部材に貼合することにより、フレキシブル部材の積層体を形成する。
【0012】
このとき、柔軟性を有する粘着剤層の変形を抑制するために、剥離シートの剥離力を小さくする必要がある。しかしながら、剥離シートの剥離力を小さくすると、2枚の剥離シートの剥離力差が小さくなりやすい。その結果、軽剥離型剥離シートを剥離する際に、重剥離型剥離シート上に残存するべき粘着剤が、軽剥離型剥離シートに意図せずに付着する現象、いわゆる泣き別れが生じるという問題があった。
【0013】
さらに、粘着剤層を一方のフレキシブル部材に貼合した後、重剥離型剥離シートを剥離して他方のフレキシブル部材と粘着剤とを貼合する際に、重剥離型剥離シートの剥離に起因して、粘着剤が伸びて変形してしまう。その結果、粘着剤端部に寸法変化が生じて、粘着剤端部の位置が一方の部材との貼合時の位置に比べて外側にずれてしまうという問題があった。
【0014】
このような粘着剤端部の寸法変化が生じた場合、貼合されたフレキシブル部材が繰り返し屈曲されると、粘着剤の伸びがさらに大きくなり、それに伴い、端部寸法変化もさらに大きくなってしまう。その結果、粘着剤層の厚さが設計時の想定厚さよりも薄くなり、デバイスにおける部材の位置関係に歪み等が生じて、これに起因する光学的な不具合がデバイスに生じてしまうという問題があった。
【0015】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、フレキシブル部材の貼合等に用いられる柔軟な粘着剤を有していても、軽剥離型剥離シートの剥離時の泣き別れが抑制され、重剥離型剥離シートの剥離時における粘着剤層端部の寸法変化が抑制された粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の態様は以下の通りである。
[1]粘着剤層と、粘着剤層の両主面を挟持する第1剥離シートおよび第2剥離シートと、を有するフレキシブルデバイス用粘着シートであって、
粘着剤層を構成する粘着剤の23℃における貯蔵弾性率が0.2MPa以下であり、
剥離速度10m/minで粘着剤層から剥離した時の第1剥離シートの剥離力が、剥離速度10m/minで粘着剤層から剥離した時の第2剥離シートの剥離力よりも24mN/25mmを超えて大きく、
剥離速度2.4m/minで粘着剤層から剥離した時の第1剥離シートの剥離力が150mN/25mm以下であるフレキシブルデバイス用粘着シートである。
【0017】
[2]第1のフレキシブル部材と、第2のフレキシブル部材と、第1のフレキシブル部材と第2のフレキシブル部材とを互いに貼合する粘着剤層と、を備えるフレキシブル部材積層体であって、
粘着剤層が、[1]に記載のフレキシブルデバイス用粘着シートが有する粘着剤であるフレキシブル部材積層体である。
【0018】
[3][2]に記載のフレキシブル部材積層体を備えるフレキシブルデバイスである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フレキシブル部材の貼合等に用いられる柔軟な粘着剤を有していても、軽剥離型剥離シートの剥離時の泣き別れが抑制され、重剥離型剥離シートの剥離時における粘着剤層端部の寸法変化が抑制されたフレキシブルデバイス用粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るフレキシブル部材積層体の断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るフレキシブルデバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき、詳細に説明する。
【0022】
(1.フレキシブルデバイス用粘着シート)
本実施形態に係るフレキシブルデバイス用粘着シート1は、図1に示すように、粘着剤層10と、第1剥離シート11と、第2剥離シート12と、を有する。粘着剤層10を構成する粘着剤は後述する。また、2枚の剥離シート(第1剥離シート11および第2剥離シート12)は、粘着剤層10を支持しており、その剥離面が当該粘着剤層の両主面に接するように配置され、粘着剤層から剥離可能とされている。換言すれば、粘着剤層10は、2枚の剥離シート(第1剥離シート11および第2剥離シート12)から剥離可能に挟持されている。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面の両方を含むものである。剥離シートについては後述する。
【0023】
本実施形態に係る粘着シートは、第1の部材と第2の部材とを貼合するために用いられる。特に、本実施形態に係る粘着シートは、屈曲可能な部材(フレキシブル部材)の貼合に好適に用いられる。
【0024】
フレキシブル部材は、折曲げ等の屈曲を行ってもその機能を維持する部材である。フレキシブル部材としては、フレキシブル部材を含む装置の製造時に屈曲するよう成形されて屈曲状態が維持される部材、フレキシブル部材を含む装置の使用時に繰り返し屈曲される部材等が例示される。したがって、このようなフレキシブル部材同士を貼合する粘着剤にも屈曲に追従する柔軟性が必要となる。
【0025】
粘着剤を使用時まで保護するために、本実施形態では、図1に示すように、粘着剤の両主面に2枚の剥離シートが配置された粘着シートが用いられる。2枚の剥離シートは、通常、粘着剤からの剥離力が異なり、粘着剤からの剥離力が相対的に小さい剥離シート(軽剥離型剥離シート)と、粘着剤からの剥離力が相対的に大きい剥離シート(重剥離型剥離シート)とから構成される。このように剥離シートに剥離力差を設けることにより、軽剥離型剥離シートを剥離する際に、重剥離型剥離シート上に残存するべき粘着剤が、軽剥離型剥離シートに意図せずに付着する現象、いわゆる泣き別れを防止している。
【0026】
一方、フレキシブル部材同士を貼合するために用いられる粘着剤は、屈曲に対応するため、柔軟性を有しており、力が作用すると変形しやすい。そのため、剥離シートとしては、剥離しやすい(粘着剤からの剥離力が比較的に小さい)剥離シートが用いられる。
【0027】
しかしながら、剥離しやすい剥離シートを用いると、2枚の剥離シートの剥離力差が小さくなりやすい。その結果、軽剥離型剥離シートの剥離時に泣き別れが生じやすくなるという問題があった。
【0028】
さらに、軽剥離型剥離シートを剥離して、一方の部材と粘着剤とを貼合した後、重剥離型剥離シートを剥離して他方の部材と粘着剤とを貼合する際に、重剥離型剥離シートの剥離に起因して、粘着剤が伸びて変形してしまう。その結果、粘着剤端部に寸法変化が生じて、粘着剤端部の位置が一方の部材との貼合時の位置に比べて外側にずれてしまうという問題があった。
【0029】
このような粘着剤端部の寸法変化が生じると、他の部材への意図しない付着が生じやすく、付着が生じると、粘着剤の伸びがさらに大きくなり、寸法変化もさらに大きくなってしまう。その結果、部材と部材との貼合精度が低下し、歩留まりが低下してしまう。
【0030】
特に、フレキシブル部材の貼合時に粘着剤端部の寸法変化が生じた場合、その後、貼合されたフレキシブル部材が繰り返し屈曲すると、粘着剤の伸びがさらに大きくなり、それに伴い、端部寸法変化もさらに大きくなってしまう。その結果、粘着材層の厚さが設計時の想定厚さよりも薄くなり、デバイスにおける部材の位置関係に歪み等が生じて、これに起因する光学的な不具合がデバイスに生じてしまう。したがって、デバイスの光学的な信頼性を高めるためには、重剥離型剥離シートの剥離前後における粘着剤端部の寸法変化を抑制する必要がある。
【0031】
上記の問題に対処するために、本実施形態に係る粘着シートにおいて、剥離シートおよび粘着剤層の物性を制御している。以下では、本実施形態に係る粘着シートの構成要素について詳細に説明する。
【0032】
(1.1.粘着剤層)
粘着剤層は、第1の部材と第2の部材とを貼合する。本実施形態では、粘着剤層は第1のフレキシブル部材と第2のフレキシブル部材とを貼合することが好ましい。
【0033】
粘着剤層は1層(単層)から構成されていてもよいし、2層以上の複数層から構成されていてもよい。粘着剤層が複数層を有する場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層を構成する層の組み合わせは特に制限されない。
【0034】
本実施形態では、粘着剤層が下記の物性を有していることにより、第1のフレキシブル部材と第2のフレキシブル部材とを十分に貼合し、かつ貼合後の屈曲に対しても剥がれ等の発生を効果的に抑制することができる。
【0035】
粘着剤層10の厚みは、1~300μmであることが好ましく、5~180μmであることがより好ましく、10~100μmであることがさらに好ましく、15~60μmであることが特に好ましく、中でも20~40μmであることが好ましい。これにより、上述した剥離力や後述する剥離力の差を所望の値に調整し易くなる。また、第1のフレキシブル部材と第2のフレキシブル部材とを良好に貼合できる粘着性、ひいては優れた屈曲性を有するものとなる。
【0036】
(1.2.粘着剤)
本実施形態では、粘着剤層10は、以下に説明する粘着剤からなる。
【0037】
(1.3.粘着剤の物性)
本実施形態では、粘着剤層10を構成する粘着剤は、以下に示すような物性を有している。
【0038】
(1.3.1.貯蔵弾性率)
本実施形態では、23℃、周波数1Hzにおける粘着剤の貯蔵弾性率(G’)が0.2MPa以下であることが好ましい。貯蔵弾性率は、粘着剤層の変形のしやすさ(硬さ)の指標の1つである。23℃における粘着剤の貯蔵弾性率を上記の範囲内とすることにより、粘着剤層が繰り返し屈曲されても、屈曲に十分に追従し、貼合されている部材からの浮きや剥がれが抑制される。
【0039】
粘着剤の貯蔵弾性率の上限値は0.2MPa以下であることが好ましく、0.15MPa以下であることがより好ましく、0.1MPa以下であることがさらに好ましく、0.08MPa以下であることが特に好ましく、中でも0.06MPa以下であることがさらに好ましい。一方、粘着剤の貯蔵弾性率の下限値は、寸法安定性・加工性・泣き別れ防止の観点から、0.001MPa以上であることが好ましく、0.005MPa以上であることがより好ましく、0.01MPa以上であることがさらに好ましく、0.02MPa以上であることが特に好ましく、中でも0.04MPa以上であることが好ましい。粘着剤の貯蔵弾性率は、たとえば、粘着剤の組成(反応性官能基の種類・量、使用するモノマー組成の分子構造やガラス転移温度等)、粘着剤を構成する材料の分子量等を変更することにより調整することができる。
【0040】
貯蔵弾性率(G’)は、公知の方法により測定すればよい。たとえば、粘着剤層を所定の大きさの試料とし、動的粘弾性測定装置により、所定の温度範囲において、所定の周波数で試料にひずみを与えて、弾性率を測定する。測定された弾性率から、上記の条件における貯蔵弾性率を算出することができる。
【0041】
(1.3.2.粘着剤層の第2剥離シート側表面におけるSi量)
本実施形態では、粘着剤層の第2剥離シート側表面においてSiが存在することが好ましい。これにより、第2剥離シート(軽剥離型剥離シート)の剥離力を小さくすることができる。その結果、重剥離型剥離シートと軽剥離型剥離シートとの剥離力差が大きくなり、軽剥離型剥離シート剥離時の泣き別れを抑制することができる。
【0042】
粘着剤層の第2剥離シート側表面とは、粘着シートにおいて、粘着剤層の2つの主面のうち、第2剥離シートが配置されている主面を指す。図1では、第2剥離シート側表面は主面10bである。
【0043】
粘着剤層の第2剥離シート側表面に存在するSiは粘着剤層由来のSiであってもよいし、剥離シートから移行したSiであってもよい。本実施形態では、第2剥離シート側表面に存在するSiは、剥離シートから移行したSiであることが好ましい。第2剥離シート側表面に存在するSiが粘着剤層由来のSiであるか剥離シートから移行したSiであるかは、たとえば、粘着剤層の表面におけるSi量と、粘着剤層の中心付近におけるSi量とを比較することにより判断できる。本実施形態では、粘着剤層の表面におけるSi量が、粘着剤層の中心付近におけるSi量の2倍以上であれば、剥離シートから移行したSiであると判断することができる。
【0044】
粘着剤層の第2剥離シート側表面におけるSi量は、たとえば、以下のようにして測定することができる。粘着シートから、第2剥離シートを剥離して露出する粘着剤層の表面に対してX線光電子分光法(XPS)により表面分析を行い、得られるスペクトルからSiの比率を算出し、Si量が求められる。具体的な測定方法は後述する実施例において詳述する。
【0045】
(1.3.3.粘着剤層の端部の寸法変化)
本実施形態に係る粘着シートの粘着剤層端部の寸法変化は、下限値は通常0μm以上であり、上限値は100μm未満であることが好ましく、70μm未満であることがより好ましく、30μm未満であることが好ましい。これにより、粘着剤層端部の寸法変化が抑制された粘着シートであることが理解される。このような特性を有することで、貼合されたフレキシブル部材が繰り返し屈曲された際のさらなる端部寸法変化を抑制し、もって、粘着剤層の厚さが設計時の想定厚さよりも薄くなってしまいデバイスにおける部材の位置関係に歪み等が生じて、これに起因する光学的な不具合がデバイスに生じてしまうという問題が生じにくくなる。具体的な評価方法は後述する実施例において詳述する。
【0046】
(1.4.粘着剤の組成)
粘着剤は上記の物性を有していれば、粘着剤の組成は特に限定されない。たとえば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれであってもよい。さらに、当該粘着剤は、架橋構造を有していてもよいし、架橋構造を有していなくてもよい。
【0047】
本実施形態では、上述した物性の実現しやすさの観点、および、粘着物性、光学特性等の観点から、粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好ましく、架橋構造を有するアクリル系粘着剤がより好ましい。
【0048】
具体的には、当該粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)と、を含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)を架橋して得られる粘着剤であることが好ましい。かかる粘着剤であれば、上述した物性を満足しやすく、かつ、良好な粘着力が得られやすい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0049】
(1.4.1.(メタ)アクリル酸エステル重合体)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、分子内に反応性官能基を有するモノマー(反応性官能基含有モノマー)と、を含有することが好ましい。
【0050】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することにより、得られる粘着剤が好ましい粘着性を発現することができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であってもよいし、環状構造を有するものであってもよい。
【0051】
アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0052】
これらの中でも、23℃における貯蔵弾性率G’に関する物性の観点から、アルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、アルキル基の炭素数が4~8の(メタ)アクリル酸エステルが特に好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸n-ブチルおよび(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが好ましく、特に、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルが好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50~99.9質量%含有することが好ましく、70~99.5質量%含有することがより好ましく、90~99質量%含有することがさらに好ましく、94~98.5質量%含有することが特に好ましい。これにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に好適な粘着性を付与させることができるとともに、得られる粘着剤の貯蔵弾性率G’を低めの値に調整しやすい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に他のモノマー成分を所望量導入することができ、所望の性能を発揮する粘着剤を設計し易くなる。
【0054】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを含有することにより、当該反応性官能基含有モノマー由来の反応性官能基を介して、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が後述する架橋剤(B)と反応し、粘着剤中に架橋構造(三次元網目構造)が形成される。その結果、所望の凝集力を有する粘着剤が得られる。当該粘着剤は、上述した貯蔵弾性率G’に関する物性や所望の剥離力および剥離力差を満足しやすいものとなる。
【0055】
反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの反応性官能基含有モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
上記反応性官能基含有モノマーの中でも、水酸基含有モノマーまたはカルボキシ基含有モノマーが好ましく、特に、水酸基含有モノマーが好ましい。水酸基含有モノマーを含有することにより、上述した貯蔵弾性率G’に関する物性を満足しやすいことに加えて、貯蔵弾性率G’の微調整が容易となる。
【0057】
水酸基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が例示される。
【0058】
これらの中でも、上述した貯蔵弾性率G’に関する物性を実現しやすい観点から、炭素数が1~4のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが好ましい。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が好ましく挙げられ、特に、アクリル酸2-ヒドロキシエチルまたはアクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましく挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
カルボキシ基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が例示される。これらの中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の粘着力の観点からアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを0.1~10質量%含有することが好ましく、0.5~7質量%含有することがより好ましく、1~5質量%含有することがさらに好ましい。
【0061】
反応性官能基含有モノマーの含有割合を上記の範囲とすることにより、架橋剤(B)との架橋反応により得られる粘着剤の凝集力が適度なものとなり、上述した貯蔵弾性率G’に関する物性や所望の剥離力および剥離力差を満足しやすいものとなる。
【0062】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを含まないことも好ましい。カルボキシ基は酸成分であるため、カルボキシ基含有モノマーを含有しないことにより、粘着剤の貼付対象に、酸により不具合が生じるもの、例えばスズドープ酸化インジウム(ITO)等の透明導電膜や、金属膜、金属メッシュなどが存在する場合にも、酸によるそれらの不具合(腐食、抵抗値変化等)を抑制することができる。
【0063】
ここで、「カルボキシ基含有モノマーを含まない」とは、カルボキシ基含有モノマーを実質的に含有しないことを意味し、カルボキシ基含有モノマーを全く含有しない他、カルボキシル基による透明導電膜や金属配線等の腐食が生じない程度にカルボキシ基含有モノマーを含有することを許容するものである。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に、モノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.001質量%以下の量で含有することを許容するものである。
【0064】
本実施形態では、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性官能基含有モノマーの上述した作用を阻害しないためにも、反応性官能基を含有しないモノマーが好ましい。このようなモノマーとしては、N-アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン等の非反応性の窒素原子含有モノマー、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが例示される。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0066】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、30万~300万であることが好ましく、50万~220万であることがより好ましく、70万~180万であることがさらに好ましく、90万~150万であることが特に好ましく、中でも110万~130万であることが好ましい。これにより、得られる粘着剤は上述した貯蔵弾性率G’に関する物性や所望の剥離力および剥離力差が満足されやすい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0067】
粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
(1.4.2.架橋剤)
架橋剤(B)は、当該架橋剤(B)を含有する粘着性組成物Pの加熱等を契機として、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を架橋し、架橋構造(三次元網目構造)を形成する。その結果、得られる粘着剤の凝集力が向上し、上述した貯蔵弾性率G’に関する物性や所望の剥離力および剥離力差が満足されやすくなる。
【0069】
架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基と反応するものであればよい。たとえば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が例示される。これらの中でも、反応性官能基含有モノマーとの反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。
【0071】
粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01~2質量部であることが好ましく、0.06~1質量部以上であることがより好ましく、0.12~0.7質量部であることがさらに好ましく、0.15~0.5質量部であることが特に好ましい。これにより、上述した貯蔵弾性率G’に関する物性や所望の剥離力および剥離力差が満足されやすくなる。
【0072】
(1.4.3.その他の添加剤)
粘着性組成物Pは、必要に応じて、アクリル系粘着剤に通常使用されている添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、防錆剤、充填剤、屈折率調整剤等が例示される。なお、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物Pを構成する添加剤に含まれないものとする。
【0073】
本実施形態では、粘着性組成物Pは、シランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、得られる粘着剤層において、被着体であるフレキシブル部材との密着性が向上し、粘着力がより好ましいものとなって優れた屈曲性を示すものとなる。
【0074】
シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であることが好ましい。また、シランカップリング剤としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性がよく、光透過性を有するものが好ましい。
【0075】
このようなシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物等が例示される。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
粘着性組成物P中におけるシランカップリング剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01~1質量部であることが好ましく、0.05~0.6質量部であることがより好ましく、0.1~0.3質量部であることがさらに好ましい。これにより、得られる粘着剤層は、被着体であるフレキシブル部材との密着性が向上し、粘着力がより大きいものとなる。
【0077】
(1.5.剥離シート)
本実施形態では、粘着シートは少なくとも2枚の剥離シートを有する。上述したように、2枚の剥離シートには剥離力差が設けられており、一方の剥離シートが軽剥離型剥離シートであり、他方の剥離シートが重剥離型剥離シートである。図1に示す粘着シート1においては、第1剥離シート11が重剥離型剥離シートであり、第2剥離シート12が軽剥離型剥離シートである。すなわち、第1剥離シート11の粘着剤層10からの剥離力は、第2剥離シート12の粘着剤層10からの剥離力よりも大きい。
【0078】
(1.5.1 第1剥離シート)
第1剥離シートは1層(単層)または2層以上の基材から構成されていてもよいし、剥離性を制御する観点から、基材の表面が剥離処理されていてもよい。すなわち、基材の表面が改質されていてもよいし、基材の表面に基材に由来しない材料(たとえば、剥離剤層)が形成されていてもよい。
【0079】
(1.5.2.第1剥離シートの物性)
本実施形態では、第1剥離シート(重剥離型剥離シート)は以下に示すような物性を有している。
【0080】
(1.5.3.粘着剤層からの剥離力)
本実施形態では、剥離速度2.4m/minで粘着剤層から第1剥離シートを剥離した時の剥離力が150mN/25mm以下であることが好ましい。この剥離力は、粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離して、第1の部材に粘着剤層を貼合した後、第2の部材に貼合するために、重剥離型剥離シートを剥離する際の剥離力に相当する。上記の剥離力が上記の範囲内であることにより、重剥離型剥離シートを粘着剤層から剥離する時に、粘着剤の変形(伸び)が生じにくい。その結果、粘着剤層端部の寸法変化を抑制することができる。
【0081】
上記の剥離力は150mN/25mm以下であることが好ましく、140mN/25mm以下であることがより好ましく、130mN/25mm以下であることがさらに好ましい。また、上記の剥離力の下限値は軽剥離型剥離シート(第2剥離シート)の剥離力よりも大きい限り特に制限されない。本実施形態では、後述する剥離力差を満たし易くできる観点及び泣き別れやロール形態での保管安定性の観点から、上記の剥離力の下限値は30mN/25mm以上であることが好ましく、50mN/25mm以上であることがより好ましく、70mN/25mm以上であることがさらに好ましく、80mN/25mm以上であることが特に好ましい。
【0082】
粘着剤層が貼合される部材の種類や貼合装置の種類等に応じて、剥離シートの剥離速度は適宜設定される。したがって、第1剥離シートは、所定の剥離速度における剥離力が所定の範囲であることが好ましい。
【0083】
剥離速度が10m/minである場合の粘着剤層から第1剥離シートを剥離した時の剥離力は600mN/25mm以下であることが好ましく、400mN/25mm以下であることがより好ましく、300mN/25mm以下であることがさらに好ましく、260mN/25mm以下であることが特に好ましく、中でも220mN/25mm以下であることが好ましい。上記の剥離力が上記の範囲内であることにより、重剥離型剥離シートを粘着剤層から剥離する時に、粘着剤の変形(伸び)が生じにくくなり、粘着剤層端部の寸法変化を抑制することができる。また、上記の剥離力の下限値は軽剥離型剥離シート(第2剥離シート)の剥離力よりも大きい限り特に制限されない。本実施形態では、後述する剥離力差を満たし易くできる観点及び泣き別れやロール形態での保管安定性の観点から、上記の剥離力の下限値は30mN/25mm以上であることが好ましく、80mN/25mm以上であることがより好ましく、110mN/25mm以上であることがさらに好ましく、140mN/25mm以上であることが特に好ましい。
【0084】
剥離速度が0.3m/minである場合の粘着剤層から第1剥離シートを剥離した時の剥離力は80mN/25mm以下であることが好ましく、70mN/25mm以下であることがより好ましく、60mN/25mm以下であることがさらに好ましく、50mN/25mm以下であることが特に好ましく、中でも45mN/25mm以下であることが好ましい。上記の剥離力が上記の範囲内であることにより、重剥離型剥離シートを粘着剤層から剥離する時に、粘着剤の変形(伸び)が生じにくくなり、粘着剤層端部の寸法変化を抑制することができる。また、上記の剥離力の下限値は軽剥離型剥離シート(第2剥離シート)の剥離力よりも大きい限り特に制限されない。本実施形態では、後述する剥離力差を満たし易くできる観点及び泣き別れやロール形態での保管安定性の観点から、上記の剥離力の下限値は5mN/25mm以上であることが好ましく、10mN/25mm以上であることがより好ましく、20mN/25mm以上であることがさらに好ましい。
【0085】
第1剥離シートの厚みは、剥離力を上記の範囲内に調整する観点から、30~100μmであることが好ましく、40~80μmであることがより好ましく、45~60μmであることがさらに好ましい。また、第1剥離シートの厚みは、第1剥離シートの剥離力を第2剥離シートの剥離力よりも大きくする観点から、第2剥離シートの厚み以上であることが好ましく、第2剥離シートの厚み超であることがより好ましい。
【0086】
なお、第1剥離シートの厚みは、第1剥離シート全体の厚みを意味する。たとえば、複数層から構成される第1剥離シートの厚みは、第1剥離シートを構成する全ての層の合計の厚みを意味する。
【0087】
本実施形態では、第1剥離シートは、剥離力を上記の範囲内とし易くなる観点から、基材を含む構成であることが好ましく、基材の表面が剥離処理されていることがより好ましく、基材と剥離剤層とを有する構成であることがさらに好ましい。剥離剤層を有することにより、第1剥離シートにおいて剥離剤層が形成されている面(剥離面)に良好な剥離性を付与しやすい。
【0088】
(1.5.4.基材)
第1剥離シートの基材は、粘着剤層が被着体(たとえば、フレキシブル部材)に貼付されるまで粘着剤層を支持できる材料であれば特に限定されず、通常は樹脂系の材料を主材とするフィルム(以下「樹脂フィルム」という。)から構成される。
【0089】
樹脂フィルムの具体例として、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。本実施形態では、環境安全性、コスト等の観点に加えて、基材の延伸に伴う巻き締まりを抑制する観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0090】
基材は、上記樹脂フィルム中に、着色剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤を含有してもよい。
【0091】
基材の厚みは、粘着剤層を支持できる程度の厚みであれば、上記の第1剥離シートの厚みの範囲内において特に限定されない。基材の厚みは、第1剥離シートの剥離力を上記の範囲内に調整する観点から、30~100μmであることが好ましく、40~80μmであることがより好ましく、45~60μmであることがさらに好ましい。
【0092】
(1.5.5.第1剥離剤層)
第1剥離シートが基材と剥離剤層とを有する場合、第1剥離シートの剥離剤層(本明細書において「第1剥離剤層」という場合がある。)は、第1剥離シートに粘着剤層からの剥離性を付与する。第1剥離剤層は、剥離性を付与できる材料から構成されていれば特に制限されないが、本実施形態では、第1剥離剤層は、後述する第1剥離剤層用組成物を硬化して得られる層であることが好ましい。
【0093】
第1剥離剤層の厚みは所望の剥離性を発揮できる厚みであれば特に制限されないが、第1剥離シートの剥離力を上記の範囲内に調整する観点から、1~1000nmであることが好ましく、10~500nmであることがより好ましく、30~300nmであることがさらに好ましく、50~200nmであることが特に好ましい。
【0094】
(1.5.6.第1剥離剤層用組成物)
第1剥離剤層用組成物は、たとえば、アルキッド系離型剤、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、不飽和ポリエステル系離型剤、ポリオレフィン系離型剤、ワックス系離型剤を含むことができる。本実施形態では、第1剥離シートの剥離力及び後述する剥離力差を上記の範囲内に調整する観点から、第1剥離剤層用組成物はシリコーン系離型剤を含むことが好ましく、シリコーン系離型剤及び重剥離添加剤を含むことがより好ましい。
【0095】
(1.5.7.シリコーン系離型剤)
シリコーン系離型剤としては、ジメチルポリシロキサンを基本骨格として有するシリコーンを配合したシリコーン系離型剤を用いることが好ましい。これにより、第1剥離シートの剥離力を上記の範囲内に調整することができる。
【0096】
第1剥離剤層用組成物(後述の触媒は除く)の総重量を100質量部とした時のジメチルポリシロキサンからなるシリコーンの含有量は、100質量部未満であることが好ましく、90質量部未満であることがより好ましく、80質量部未満であることがさらに好ましく、70質量部未満であることが特に好ましい。なお、当該含有量の下限値は、0質量部である。これにより、第1剥離シートの剥離力を上記の範囲内に調整し易い。
【0097】
当該シリコーンは、付加反応型、縮合反応型、並びに、紫外線硬化型及び電子線硬化型等のエネルギー線硬化型のいずれであってもよいが、付加反応型シリコーンであることが好ましい。付加反応型シリコーンは、反応性が高く生産性に優れるとともに、縮合反応型と比較すると、製造後の剥離力が安定し易い、硬化収縮がない等のメリットがあることから、第1剥離シートの剥離力を上記の範囲内に調整し易い。
【0098】
付加反応型シリコーンの具体例としては、分子の末端および/または側鎖に、ビニル基、アリル基、プロペニル基、及びヘキセニル基等の炭素数2~10のアルケニル基を2個以上備えたオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0099】
このような付加反応型シリコーンを用いる際には、架橋剤および触媒を併用することが好ましい。
【0100】
架橋剤としては、例えば1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。具体的には、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、ポリ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)等が挙げられる。
【0101】
触媒としては、微粒子状白金、炭素粉末担体上に吸着された微粒子状白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、パラジウム、及びロジウム等の白金族金属系化合物等が挙げられる。
【0102】
このような触媒を用いることにより、第1剥離剤層用組成物の硬化反応をより効率よく進行させることができる。
【0103】
第1剥離剤層用組成物(触媒は除く)の総重量を100質量部とした時のシリコーン系離型剤の含有量は、剥離力を上述した範囲内とする観点から、30~100質量部であることが好ましく、50~100質量部であることがより好ましい。
【0104】
(1.5.8.重剥離添加剤)
重剥離添加剤としては、例えば、シリコーンレジン、シランカップリング剤等のオルガノシランが挙げられるが、これらの中でも、シリコーンレジンを用いることが好ましい。これにより、第1剥離シートの剥離力を上記の範囲内に調整することができるとともに、粘着剤層からの第1剥離シートの剥離力を、第2剥離シートの剥離力よりも大きくすることができる。
【0105】
シリコーンレジンとしては、例えば、一官能シロキサン単位[RSiO1/2]であるM単位と、四官能シロキサン単位[SiO4/2]であるQ単位とを含むMQレジンを用いることが好ましい。なお、M単位中の3つのRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基または有機基を表す。シリコーン移行を抑制し易くする観点からM単位中の3つのRの1つ以上は、水酸基又はビニル基であることが好ましく、ビニル基であることがより好ましい。
【0106】
(1.6.第2剥離シート)
第1剥離シートと同様に、第2剥離シートは1層(単層)または2層以上の基材から構成されていてもよいし、剥離性を制御する観点から、基材の表面が剥離処理されていてもよい。すなわち、基材の表面が改質されていてもよいし、基材の表面に基材に由来しない材料(たとえば、剥離剤層)が形成されていてもよい。
【0107】
第2剥離シート(軽剥離型剥離シート)の剥離力が、第1剥離シート(重剥離型剥離シート)の剥離力よりも小さい限り、第2剥離シートの物性は特に制限されないが、本実施形態では、第2剥離シート(軽剥離型剥離シート)は、以下のような物性を有していることが好ましい。
【0108】
(1.6.1.粘着剤層からの剥離力)
本実施形態では、剥離速度10m/minで粘着剤層から第2剥離シートを剥離した時の剥離力が500mN/25mm以下であることが好ましく、300mN/25mm以下であることがより好ましく、200mN/25mm以下であることがさらに好ましく、160mN/25mm以下であることが特に好ましく、中でも145mN/25mm以下であることが好ましい。この剥離力は、粘着剤層を部材に貼合するために、粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離する際の剥離力に相当する。上記の剥離力が上記の範囲内であることにより、軽剥離型剥離シート剥離時の泣き別れを抑制することができる。本実施形態では、後述する剥離力差を満たし易くできる観点及びロール形態での保管安定性の観点から、上記の剥離力の下限値は20mN/25mm以上であることが好ましく、40mN/25mm以上であることがより好ましく、60mN/25mm以上であることがさらに好ましく、80mN/25mm以上であることが特に好ましい。
【0109】
剥離速度0.3m/minで粘着剤層から第2剥離シートを剥離した時の剥離力が70mN/25mm以下であることが好ましく、50mN/25mm以下であることがより好ましく、40mN/25mm以下であることがさらに好ましく、30mN/25mm以下であることが特に好ましく、中でも28mN/25mm以下であることが好ましい。この剥離力も、粘着剤層を部材に貼合するために、粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離する際の剥離力に相当する。上記の剥離力が上記の範囲内であることにより、軽剥離型剥離シート剥離時の泣き別れを抑制することができる。本実施形態では、後述する剥離力差を満たし易くできる観点及びロール形態での保管安定性の観点から、上記の剥離力の下限値は3mN/25mm以上であることが好ましく、8mN/25mm以上であることがより好ましく、12mN/25mm以上であることがさらに好ましく、15mN/25mm以上であることが特に好ましい。
【0110】
本実施形態では、軽剥離型剥離シート剥離時の泣き別れ抑制の観点から、第1剥離シートの剥離力が、第2剥離シートの剥離力よりも大きいこと、すなわち、剥離力差があることが好ましい。なお、本明細書においては、剥離力差があることは、1mN/25mm超の剥離力差があることを意味する。
【0111】
剥離速度10m/minで粘着剤層から第2剥離シートを剥離した時の剥離力と、剥離速度10m/minで粘着剤層から第1剥離シートを剥離した時の剥離力との剥離力差は、24mN/25mm超であることが好ましい。これにより、軽剥離型剥離シート剥離時の泣き別れを抑制することができる。泣き別れをより効果的に防止できる観点や屈曲性及び寸法安定性との両立の観点から、25~300mN/25mmであることが好ましく、30~200mN/25mmであることがより好ましく、50~150mN/25mmであることがさらに好ましく、60~100mN/25mmであることが特に好ましく、中でも64~80mN/25mmであることが好ましい。
【0112】
剥離速度0.3m/minで粘着剤層から第2剥離シートを剥離した時の剥離力と、剥離速度0.3m/minで粘着剤層から第1剥離シートを剥離した時の剥離力との剥離力差は、1.5~60mN/25mmであることが好ましく、2~40mN/25mmであることがより好ましく、2.5~30mN/25mmであることがさらに好ましく、3~25mN/25mmであることが特に好ましい。これにより、軽剥離型剥離シート剥離時の泣き別れを抑制することができる。さらに、当該剥離力差は、泣き別れの防止および屈曲性との両立の観点においては、3.5~19mN/25mmであることが好ましく、4~18mN/25mmであることが最も好ましい。
【0113】
第2剥離シートの厚みは、剥離力および剥離力差を上記の範囲内に調整する観点から、10~100μmであることが好ましく、15~75μmであることがより好ましく、20~60μmであることがさらに好ましく、24~40μmであることが特に好ましい。また、第2剥離シートの厚みは、第1剥離シートの剥離力を第2剥離シートの剥離力よりも大きくする観点から、第1剥離シートの厚み以下であることが好ましく、第1剥離シートの厚み未満であることがより好ましい。
【0114】
なお、第2剥離シートの厚みは、第2剥離シート全体の厚みを意味する。たとえば、複数層から構成される第2剥離シートの厚みは、第2剥離シートを構成する全ての層の合計の厚みを意味する。
【0115】
本実施形態では、第2剥離シートは、剥離力を上記の範囲内とする観点から、基材を含む構成であることが好ましく、基材の表面が剥離処理されていることがより好ましく、基材と剥離剤層とを有することが好ましい。剥離剤層を有することにより、第2剥離シートにおいて剥離剤層が形成されている面(剥離面)に良好な剥離性を付与しやすい。
【0116】
(1.6.2.基材)
第2剥離シートの基材は、第1剥離シートの基材として例示した材料から適宜選択できる。
【0117】
(1.6.3.第2剥離剤層)
第2剥離シートが基材と剥離剤層とを有する場合、第2剥離シートの剥離剤層(本明細書において「第2剥離剤層」という場合がある。)は、第2剥離シートに粘着剤層からの剥離性を付与する。本実施形態では、Siを粘着剤層の表面に移行させて、当該表面におけるSi量を後述する範囲内とするために、Siを含むことが好ましい。このような剥離剤層としては、たとえば、シリコーン系離型剤を含む第2剥離剤層用組成物を硬化して得られる層であることが好ましい。
【0118】
(1.6.4.第2剥離剤層用組成物)
第2剥離剤層用組成物は、第1剥離シートの剥離力が第2剥離シートの剥離力よりも大きい関係を満足する限りにおいて、第1剥離剤層用組成物で例示した材料から選択できる。ただし、重剥離添加剤として例示した材料は第1剥離剤層用組成物での含有量よりも少ないか、または含まれないことが好ましい。
【0119】
シリコーン系離型剤を有する第2剥離剤層用組成物を含む塗布剤を用いて、第2剥離シートの基材上に第2剥離剤層を形成し、当該第2剥離剤層を粘着剤層と貼り合わせた場合、第2剥離剤層に含まれるシリコーン系離型剤が粘着剤層に移行する現象(転移現象)が生じる場合がある。本実施形態では、この転移現象を積極的に利用して、粘着剤層の表面にSiを所定量存在させることにより、当該粘着剤層の表面の剥離性を向上させる。その結果、第2剥離シート(軽剥離型剥離シート)の粘着剤層からの剥離力が上記の範囲内に調整しやすく、第1剥離シート(重剥離型剥離シート)の粘着剤層からの剥離力が上記の範囲内であっても、第1剥離シートと第2剥離シートとの剥離力差を大きくすることができる。
【0120】
(1.6.5.第2剥離シートの粘着剤層表面へのSi量)
本実施形態における第2剥離シートは、粘着剤層と貼合させた場合、当該粘着剤層の表面にSiを移行させることができるものであることが好ましい。第2剥離シートの粘着剤層表面へのSi移行量は、例えば、Siを主成分としない粘着剤層表面に第2剥離シートを貼合して24時間静置した後、第2剥離シートを剥離して露出した粘着剤層の表面に対してX線光電子分光法(XPS)により表面分析を行い、得られるスペクトルからSiの比率を算出したSi量を代替指標とすることができる。このようにして得られたSi量は、5~100atom%であることが好ましく、7~60atom%であることがより好ましく、9~30atom%であることがさらに好ましい。当該Si量が上記範囲内であることにより、第2剥離シート(軽剥離型剥離シート)の剥離力を十分小さくすることができ、上述した剥離力の範囲内に調整できる。その結果、重剥離型剥離シートと軽剥離型剥離シートとの剥離力差が大きくなり、軽剥離型剥離シート剥離時の泣き別れを抑制することができる。なお、上記Si量についての具体的な測定方法は後述する実施例において詳述する。
【0121】
(1.7.粘着性組成物の製造)
粘着性組成物Pは、たとえば、まず、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを混合することにより製造することができる。必要に応じて、添加剤を加えてもよい。
【0122】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、たとえば、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、必要に応じて重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことができる。溶液重合法を用いて(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を重合することにより、得られる重合体の高分子量化と、分子量分布の調整とが容易となり、さらに低分子量体の生成を低減することが可能となる。その結果、繰り返しの屈曲に優れた粘着剤が得られやすい。
【0123】
溶液重合法で使用する重合溶媒としては、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が例示される。重合溶媒は、1種類用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0124】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が例示される。
【0125】
有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が例示される。
【0126】
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0127】
続いて、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、架橋剤(B)および希釈溶剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)が得られる。必要に応じて、添加剤を添加してもよい。
【0128】
なお、上記各成分のいずれかが、固体状の成分である場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる成分である場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
【0129】
希釈溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤等が例示される。
【0130】
調製された塗布溶液の濃度および粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
【0131】
(1.8.粘着剤の製造)
粘着剤層を構成する粘着剤は、上述した粘着性組成物Pを架橋して得られることが好ましい。粘着性組成物Pの架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した粘着性組成物Pの塗膜から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0132】
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、70~120℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、50秒~2分であることがより好ましい。
【0133】
加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けてもよい。養生が必要な場合は、養生期間経過後、架橋構造を有する粘着剤が得られる。養生が不要な場合には、加熱処理終了後、架橋構造を有する粘着剤が得られる。
【0134】
(1.9.粘着シートの製造)
粘着シート1を製造する方法としては特に制限されず、公知の方法により製造すればよい。たとえば、一方の第1剥離シート11(または第2剥離シート12)の剥離面に、上記の粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを架橋することで所定の厚みを有する塗布層を形成する。形成した塗布層に他方の第2剥離シート12(または第1剥離シート11)の剥離面を重ね合わせる。養生が必要な場合は、所定の養生期間を経ると、塗布層が粘着剤層10となる。また、養生が不要な場合は塗布層がそのまま粘着剤層10となる。これにより、粘着シート1が得られる。
【0135】
粘着シート1の他の製造方法としては、一方の第1剥離シート11の剥離面に、上記の粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの第1剥離シート11を得る。また、他方の第2剥離シート12の剥離面に、上記の粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの第2剥離シート12を得る。そして、塗布層付きの第1剥離シート11と塗布層付きの第2剥離シート12とを、両塗布層が互いに接触するように貼り合わせる。養生が必要な場合は、所定の養生期間を経ると、塗布層が粘着剤層10となる。また、養生が不要な場合は塗布層がそのまま粘着剤層10となる。これにより、粘着シート1が得られる。この製造方法によれば、粘着剤層10が厚い場合であっても、安定して製造することが可能となる。
【0136】
粘着性組成物Pの塗布液を塗布する方法としては、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が例示される。
【0137】
(2.フレキシブル部材積層体)
図2に示すように、本実施形態に係るフレキシブル部材積層体2は、第1のフレキシブル部材21(一のフレキシブル部材)と、第2のフレキシブル部材22(他のフレキシブル部材)と、それらの間に位置し、第1のフレキシブル部材21および第2のフレキシブル部材22を互いに貼合する粘着剤層10とを備えて構成される。
【0138】
フレキシブル部材積層体2における粘着剤層10は、上述した粘着シート1の粘着剤層10である。
【0139】
フレキシブル部材積層体2は、フレキシブルデバイス自体であるか、またはフレキシブルデバイスの一部を構成する部材である。フレキシブルデバイスは、製造時に1回曲げられ、曲げられた状態を維持している部材を含むデバイスであってもよいし、繰り返しの屈曲(折り曲げを含む)が可能な部材を含むデバイスであってもよい。また、フレキシブルデバイスは、ディスプレイであることが好ましいが、これに限定されるものではない。フレキシブルデバイスとしては、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電気泳動方式のディスプレイ(電子ペーパー)、基板としてプラスチック基板(フィルム)を用いた液晶ディスプレイ、フォルダブルディスプレイ等が例示される。これらはタッチパネルであってもよい。
【0140】
第1のフレキシブル部材21および第2のフレキシブル部材22は、たとえば、繰り返しの屈曲(折り曲げを含む)が可能な部材である。フレキシブル部材としては、カバーフィルム、バリアフィルム、ハードコートフィルム、偏光フィルム(偏光板)、偏光子、位相差フィルム(位相差板)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム、電極フィルム、透明導電性フィルム、金属メッシュフィルム、フィルムセンサー(タッチセンサーフィルム)、液晶ポリマーフィルム、発光ポリマーフィルム、フィルム状液晶モジュール、有機ELモジュール(有機ELフィルム,有機EL素子)、電子ペーパーモジュール(フィルム状電子ペーパー)、TFT(ThinFilmTransistor)基板等が例示される。
【0141】
第1のフレキシブル部材21および第2のフレキシブル部材22のヤング率は、それぞれ0.1~10GPaであることが好ましく、0.5~7GPaであることがより好ましく、1~5GPaであることがさらに好ましい。第1のフレキシブル部材21および第2のフレキシブル部材22のヤング率が上記の範囲内であることにより、各フレキシブル部材について繰り返し屈曲させることが容易になる。
【0142】
第1のフレキシブル部材21および第2のフレキシブル部材22の厚さは、それぞれ10~3000μmであることが好ましく、25~1000μmであることがより好ましく、50~500μmであることがさらに好ましい。第1のフレキシブル部材21および第2のフレキシブル部材22の厚さが上記の範囲内であることにより、各フレキシブル部材について繰り返し屈曲させることが容易になる。
【0143】
フレキシブル部材積層体2を製造する一例を示す。まず、粘着シート1の一方の第2剥離シート12を剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層10を、第1のフレキシブル部材21の一方の面に貼合する。
【0144】
その後、粘着シート1の粘着剤層10から他方の第1剥離シート11を剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層10と第2のフレキシブル部材22とを貼合し、フレキシブル部材積層体2を得る。また、他の例として、第1のフレキシブル部材21および第2のフレキシブル部材22の貼合順序を入れ替えてもよい。
【0145】
(3.フレキシブルデバイス)
本実施形態に係るフレキシブルデバイスは、上記のフレキシブル部材積層体2を備えたものであり、フレキシブル部材積層体2のみからなってもよいし、一または複数のフレキシブル部材積層体2と、他のフレキシブル部材とを備えて構成されてもよい。一のフレキシブル部材積層体2と他のフレキシブル部材積層体2とを積層する場合、または、フレキシブル部材積層体2と他のフレキシブル部材とを積層する場合には、上述した粘着シート1の粘着剤層10を介して積層することが好ましい。
【0146】
本実施形態に係るフレキシブルデバイスは、上述した粘着剤層により各部材が貼合されているため、繰り返し屈曲させた場合(例えば10万回)であっても、少なくとも、貼合している部材からの粘着剤層の浮き剥がれが抑制される。
【0147】
本実施形態における一例としてのフレキシブルデバイスを図3に示す。なお、本発明に係るフレキシブルデバイスは、当該フレキシブルデバイスに限定されるものではない。
【0148】
図3に示すように、本実施形態に係るフレキシブルデバイス3は、上から順に、カバーフィルム31と、第1の粘着剤層32と、偏光フィルム33と、第2の粘着剤層34と、タッチセンサーフィルム35と、第3の粘着剤層36と、有機EL素子37と、第4の粘着剤層38と、TFT基板39とを積層して構成される。上記のカバーフィルム31、偏光フィルム33、タッチセンサーフィルム35、有機EL素子37およびTFT基板39は、フレキシブル部材に該当する。
【0149】
第1の粘着剤層32、第2の粘着剤層34、第3の粘着剤層36および第4の粘着剤層38の少なくともいずれか1層は、上述した粘着シート1の粘着剤層10であることが好ましい。第1の粘着剤層32、第2の粘着剤層34、第3の粘着剤層36および第4の粘着剤層38のいずれか2層以上が上述した粘着シート1の粘着剤層10であることが好ましく、全ての粘着剤層32,34,36,38が粘着シート1の粘着剤層10であることが最も好ましい。
【0150】
なお、本明細書において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【0151】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。
【実施例
【0152】
以下、実施例を用いて、発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0153】
(実施例1)
1.(メタ)アクリル酸エステル共重合体の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル49質量部、アクリル酸n-ブチル49質量部およびアクリル酸4-ヒドロキシブチル2質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を調製した。得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の分子量を以下に示す方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)120万であった。
【0154】
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
(測定条件)
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL-H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0155】
2.粘着性組成物の調製
上記で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのイソシアネート系架橋剤(三井化学社製,製品名「タケネートD110N」)0.2質量部と、を混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度50質量%の粘着性組成物Aの塗布溶液を得た。
【0156】
3.剥離シートの調製
剥離シートとして、以下に示すように、PETフィルムの片面をシリコーン系離型剤により剥離処理された重剥離型剥離シートと、PETフィルムの片面をシリコーン系離型剤により剥離処理された軽剥離型剥離シートと、を準備した。重剥離型剥離シートの剥離力は、軽剥離型剥離シートの剥離力よりも大きいことが確認されている。したがって、本実施例では、重剥離型剥離シートが第1剥離シートであり、軽剥離型剥離シートが第2剥離シートである。
重剥離型剥離シート1:リンテック社製SP-PET501031
重剥離型剥離シート2:リンテック社製SP-PET382150
軽剥離型剥離シート3:リンテック社製SP-PET381031
軽剥離型剥離シート4:リンテック社製SP-PET25LT-H
軽剥離型剥離シート5:リンテック社製SP-PET381130
【0157】
4.粘着シートの製造
得られた粘着性組成物の塗布溶液を、重剥離型剥離シート1(SP-PET501031)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理して架橋反応を進行させ、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と架橋剤(B)とから構成される架橋構造を有する粘着剤からなる塗布層を形成した。
【0158】
次いで、上記で得られた重剥離型剥離シート1上の塗布層と、軽剥離型剥離シート4(SP-PET25LT-H)とを、当該軽剥離型剥離シート4の剥離処理面が塗布層に接触するように貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、厚さ25μmの粘着剤層を有する粘着シートを作製した。この粘着シートは、重剥離型剥離シート1/粘着剤層A(厚さ:25μm)/軽剥離型剥離シート4の構成を有していた。なお、粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製PG-02)を使用して測定した値である。
【0159】
(実施例2~4、比較例1~3)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の組成、架橋剤(B)の配合量およびその他の成分の配合量を表1に示す配合に変更して粘着剤組成物B~Dを得た。表2に示すように、粘着剤組成物を表1に示すA~Dの粘着剤組成物から選択し、重剥離型剥離シート(第1剥離シート)および軽剥離型剥離シート(第2剥離シート)の組み合わせを表2に示す組み合わせとした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。なお、比較例2は、当該粘着シートの粘着剤層に対して、重剥離型剥離シート越しに紫外線を照射した粘着シートである。紫外線照射条件は以下の通りである。
<紫外線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm,光量1000mJ/cm
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
【0160】
なお、粘着剤組成物DのUV樹脂はアロニックス(登録商標) M-315を用い、光重合開始剤はJRCURE 500を用いた。
【0161】
【表1】
【0162】
表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
((メタ)アクリル酸エステル共重合体(A))
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
BA:アクリル酸n-ブチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
4HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル
AAc:アクリル酸
(架橋剤(B))
XDI:イソシアネート系架橋剤(三井化学社製,製品名「タケネートD110N」)
【0163】
(粘着剤の貯蔵弾性率G’)
実施例および比較例で作製した粘着シートの粘着剤層を複数層積層し、厚さ3mmの積層体とした。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ3mm)を打ち抜き、貯蔵弾性率測定用試料とした。
【0164】
測定用試料について、JISK7244-6に準拠し、粘弾性測定器(REOMETRIC社製,DYNAMICANALAYZER)を用いてねじりせん断法により、測定温度23℃、測定周波数1Hzの条件で貯蔵弾性率(G’)(MPa)を測定した。結果を表1に示す。
【0165】
(剥離シートの剥離力)
第1剥離シートの剥離力は、以下のように測定した。得られた粘着シートから、第2剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層の表面に、厚みが25μmの良接着PET(東洋紡社製、PET25A-4100)の良接着面を熱ラミネート(70℃,1m/min)により貼付して積層体サンプルを作製した。得られた積層体サンプルを25mm幅に切りだし、測定用サンプルを作製した。次いで、測定用サンプルの良接着PETの背面を両面テープで硬質な支持板に固定し、第1剥離シート/粘着剤層/良接着PET/両面テープ/硬質な支持体からなる積層体を作製した。
【0166】
当該積層体について、万能型引張試験機(島津製作所社製オートグラフ(登録商標)AG-IS)を用いて、測定距離100mm、剥離角度180°、剥離速度0.3m/min、2.4m/minおよび10m/minで第1剥離シートを剥離し、その際の荷重を測定した。測定した荷重のうち、測定距離の最初の10mmでの荷重と、最後の10mmでの荷重とを除いた80mmの間の荷重の平均値を、各剥離速度における第1剥離シートの剥離力とした。結果を表2に示す。
【0167】
第2剥離シートの剥離力は、以下のように測定した。得られた粘着シートを25mm幅に切りだし、測定用サンプルを作製した。当該測定用サンプルにおける第1剥離シートの剥離処理面とは反対側の面を両面テープで硬質な支持板に固定し、第2剥離シート/粘着剤層/第1剥離シート/両面テープ/硬質な支持板からなる積層体を作製した。当該積層体について、万能型引張試験機(島津製作所社製オートグラフ(登録商標)AG-IS)を用いて、測定距離100mm、剥離角度180°、剥離速度0.3m/minおよび10m/minで第2剥離シートを剥離し、その際の荷重を測定した。測定した荷重のうち、測定距離の最初の10mmでの荷重と、最後の10mmでの荷重とを除いた80mmの間の荷重の平均値を、各剥離速度における第2剥離シートの剥離力とした。結果を表2に示す。
【0168】
また、得られた第1剥離シートの剥離力と第2剥離シートの剥離力とから、剥離力差(第1剥離シートの剥離力-第2剥離シートの剥離力)を算出した。結果を表2に示す。
【0169】
(第2剥離シートのSi移行量)
第2剥離シートの剥離処理面に、アクリル系粘着テープ(日東電工社製,商品名:31Bテープ)の粘着剤層表面に貼付して24時間保管した。その後、第2剥離シートを剥離して露出した粘着剤層の表面について、X線光電子分光分析法(XPS)によって測定されるケイ素原子(Si)、炭素原子(C)及び酸素原子(O)の量(XPSカウント数)に基づき、下記の式によりケイ素原子比率(atom%)を算出した。結果を表2に示す。
ケイ素原子比率(atom%)=[(Si元素量)/{(C元素量)+(O元素量)+(Si元素量)}]×100
【0170】
測定装置としては、パーキンエルマー社製のESCA 5600を使用し、測定条件は以下の通りとした。
X線源:Mg standard(15kv,400W)
取り出し角度:45°
測定時間:3分間
測定元素:ケイ素原子(Si),炭素原子(C),酸素原子(O)
【0171】
(粘着剤層の第2剥離シート側表面におけるSi存在の有無)
実施例および比較例から得られた粘着シートから、第2剥離シートを剥離した。その後、露出した粘着剤層の表面について、上述した第2剥離シートのSi移行量と同様の方法でケイ素原子比率(atom%)を算出した。ケイ素原子比率が1atom%超の場合はSi検出あり、1atom%以下の場合はSi検出なしとの基準にて粘着剤層表面のSi検出有無を判断した。結果を表2に示す。
【0172】
続いて、粘着シートの特性を以下のようにして評価した。
【0173】
(屈曲性)
23℃、50%RHの環境下にて、実施例および比較例で作製した粘着シートから軽剥離型剥離シート(第2剥離シート)を剥離し、露出した粘着剤層を、ポリイミド(PI)フィルム(東レ・デュポン社製,製品名「カプトン100PI」,厚さ:25μm,ヤング率:3.4GPa)の一方の面に貼合した。次いで、重剥離型剥離シート(第1剥離シート)を剥離し、露出した粘着剤層を、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(コニカミノルタ社製,製品名「KC4UYW」,厚さ:40μm)の一方の面に貼合した。そして、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。このようにして得たPIフィルム/粘着剤層/TACフィルムからなる積層体を、50mm幅、200mm長に裁断し、これをサンプルとした。
【0174】
得られたサンプルを、耐久試験機(ユアサシステム機器社製,製品名「面状態無負荷U字伸縮試験機形式:DLDMLH-FS」)を用いて、以下の条件で繰り返し屈曲させた。試験後、屈曲部における粘着剤層と被着体との界面に浮きや剥がれがないか否かを目視により確認し、以下の基準により繰り返し屈曲性を評価した。結果を表2に示す。
<試験条件>
屈曲方向:トリアセチルセルロースフィルム側が対向するように屈曲
最小屈曲径:3mmφ
屈曲回数:100000回
屈曲速度:60rpm
<繰り返し屈曲性の評価基準>
A…浮き剥がれなし(折れ角90°未満)
B…浮き剥がれなし(折れ角90°以上)
F…浮き剥がれあり
【0175】
(第2剥離シート剥離時の泣き別れ)
得られた粘着シートを5×10cmのサイズにカットし、測定用サンプルを作製した。次いで、当該測定用サンプルにおける第1剥離シートの剥離処理面とは反対側の面を両面テープで硬質な支持板に固定し、第2剥離シート/粘着剤層/第1剥離シート/両面テープ/硬質な支持板からなる積層体を作製した。
【0176】
当該積層体について、万能型引張試験機(島津製作所社製オートグラフ(登録商標)AG-IS)を用いて、剥離角度180°、剥離速度10m/minで、第2剥離シートを粘着剤層から剥離した。剥離後の第2剥離シートの剥離処理面を目視により確認し、以下の基準により泣き別れが発生しているかを評価した。結果を表2に示す。
A…泣き別れなし
B…泣き別れが長辺端部5mm以内でのみ発生
F…泣き別れが全面で発生
【0177】
(粘着剤層端部の寸法変化)
得られた粘着シートから2.5×10cmのサンプルを切り出し、これをサンプルとした。切り出したサンプルから、第2剥離シートを剥離して、ソーダガラスにラミネーターで貼合した。貼合後、ソーダガラス裏面に第1剥離シートの端部に沿って油性マジックペンを用いて線を描いた。第1剥離シートの端部に日東電工株式会社製粘着テープ「No.31B」を貼付し、剥離角度90°、剥離速度2.4m/minで剥離した。剥離後、デジタル顕微鏡を用いて、第1剥離シートの端部を示す線の中央と、粘着剤端部の位置と、のズレ量を任意の3領域(各2.2mm幅)で観察した。観察視野内においてズレ量が最大の箇所を測定し、測定された3点の平均値を算出した。算出した平均値について、以下の基準により粘着剤層の端部寸法変化を評価した。結果を表2に示す。
A:0μm以上30μm未満
B:30μm以上70μm未満
C:70μm以上100μm未満
F:100μm以上。
【0178】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0179】
本発明の粘着シートは、たとえば、フレキシブル部材を貼合するのに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0180】
1…粘着シート
10…粘着剤層
11…第1剥離シート
12…第2剥離シート
2…フレキシブル部材積層体
21…第1のフレキシブル部材
22…第2のフレキシブル部材
3…フレキシブルデバイス
31…カバーフィルム
32…第1の粘着剤層
33…偏光フィルム
34…第2の粘着剤層
35…タッチセンサーフィルム
36…第3の粘着剤層
37…有機EL素子
38…第4の粘着剤層
39…TFT基板
図1
図2
図3