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特許7444914カルコブトロールの変態Aの結晶形態を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】カルコブトロールの変態Aの結晶形態を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/10 20060101AFI20240228BHJP
   C07D 257/02 20060101ALN20240228BHJP
   C07F 3/04 20060101ALN20240228BHJP
【FI】
A61K49/10
C07D257/02
C07F3/04
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022032582
(22)【出願日】2022-03-03
(62)【分割の表示】P 2019516489の分割
【原出願日】2017-09-11
(65)【公開番号】P2022071132
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】16190812.4
(32)【優先日】2016-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514298139
【氏名又は名称】バイエル・ファルマ・アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・プラツェク
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム・トレントマン
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/043462(WO,A2)
【文献】特表2013-510117(JP,A)
【文献】特表2014-522387(JP,A)
【文献】特許第7053590(JP,B2)
【文献】PLATZEK, J. et al.,SYNTHESIS AND STRUCTURE OF A NEW MACROCYCLIC POLYHYDROXYLATED GADOLINIUM CHELATE USED AS A CONTRAST,INORGANIC CHEMISTRY,米国,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,1997年01月,vol.36, no.26,p.6086-6093,http://dx.doi.org/10.1021/ic970123t
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 49/10
C07D 257/02
C07F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガドブトロールのガレヌス製剤用の添加剤であって、そのX線粉末回折図が7.6°、9.1°、11.1°、11.3°、11.9°および12.3°において2θ角の最大ピークを示すこと、及びエタノールを含む一水和物であることを特徴とする式(I)の化合物の変態Aの結晶を含む添加剤。
【化1】
【請求項2】
ジヒドロキシ-ヒドロキシ-メチルプロピル-テトラアザシクロドデカン-三酢酸のガドリニウム錯体(ガドブトロール)を脱錯体し、沈殿したガドリニウム塩を除去し、次いで、遊離配位子を含む溶液を酸性イオン交換体に結合させ、次いで、塩基性水溶液で溶出し、次いで、カルシウム2+イオンと錯体形成させ、次いで、Ca:ブトロール化学量論を1:1に調整し、次いで、9~11重量%水の含水量を有する水性エタノールを用いて結晶化を行い、次いで、生成物を乾燥させ、こうして請求項1に規定される式(I)の化合物の変態Aの結晶を単離することを含む、請求項1に記載の添加剤を製造する方法。
【請求項3】
ジヒドロキシ-ヒドロキシ-メチルプロピル-テトラアザシクロドデカン-三酢酸のガドリニウム錯体(ガドブトロール)を加熱しながら水中でシュウ酸を用いて脱錯体し、沈殿したシュウ酸ガドリニウムを濾別し、次いで、遊離配位子を酸性イオン交換体に結合させ、次いで、アンモニア水溶液で溶出し、溶液を濃縮した後カルシウム2+イオンと錯体形成させ、次いで、Ca:ブトロール化学量論を1:1に調整し、次いで、9~11重量%水の含水量を有する水性エタノールを用いて還流下で加熱し、次いで、冷却し、単離後、乾燥させ、こうして請求項1に規定される式(I)の化合物の変態Aの結晶を単離することを含む、請求項1に記載の添加剤を製造する方法。
【請求項4】
炭酸カルシウムを前記錯体形成に使用することを特徴とする、請求項2または3に記載の添加剤を製造する方法。
【請求項5】
炭酸カルシウムを前記錯体形成に使用し、前記錯体形成を20℃以上25℃以下の温度範囲で行うことを特徴とする、請求項2、3または4に記載の添加剤を製造する方法。
【請求項6】
ガドブトロールのガレヌス製剤を製造するための、請求項1に記載の添加剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)のジヒドロキシ-ヒドロキシ-メチルプロピル-テトラアザシクロドデカン-三酢酸のカルシウム錯体(カルコブトロール)
【化1】
の変態A(modification A)の結晶形態を製造する方法、およびガドブトロールのガレヌス製剤を製造するための、式(I)のジヒドロキシ-ヒドロキシ-メチルプロピル-テトラアザシクロドデカン-三酢酸のカルシウム錯体(カルコブトロール)の結晶変態Aの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カルコブトロールはガドブトロールのガレヌス製剤中の添加剤であり、製剤(溶液)へのガドリニウムの放出を防ぐという務めを有する。高純度カルコブトロールの製造は、国際公開第2011/054827号パンフレット(Bayer AG)および国際公開第2016/043462号パンフレット(ST PHARM CO.,LTD.)に記載されている:
【化2】
【0003】
ガドブトロールは核スピントモグラフィ用のガドリニウム含有造影剤であり、2000年から、「頭蓋および脊髄磁気共鳴断層撮影法(MRT)における造影増強」の適応においてGadovist(登録商標)としてドイツで承認されている(欧州特許第0448191号明細書、欧州特許第0643705号明細書、欧州特許第0986548号明細書、欧州特許第0596586号明細書およびカナダ特許第1341176号明細書)。高純度ガドブトロールの製造は、特許出願国際公開第2012/143355号パンフレットに記載されている。これは、ガドリニウム(III)および大環状配位子ジヒドロキシ-ヒドロキシ-メチルプロピル-テトラアザシクロドデカン-三酢酸(ブトロール)からなる非イオン性錯体である。
【化3】
【0004】
Gadovist(登録商標)は1モル濃度水溶液として販売されており、これは製剤中の以下の成分からなる:ガドブトロール、カルコブトロールナトリウム塩、トロメタモール、塩酸および注射用水。
【0005】
ほとんどのガドリニウム含有造影剤で、製剤中にカルシウム錯体の形態で過剰のガドリニウム錯体形成配位子を使用することが有利であることが分かっている(欧州特許第0 270 483号明細書)。これは、製剤中のガドリニウムの放出を防止するという務めを本質的に有する(例えば、複数年の貯蔵またはガラスからの外来イオンとの再錯体形成で)。
【0006】
カルシウム錯体(カルコブトロール)の合成は、Inorg.Chem 1997、36、6086~6093に記載されている。これについては、水中でのブトロール配位子の錯体形成を炭酸カルシウムで行い、次いで、水溶液を凍結乾燥し、残留粉末を26倍エタノール中の懸濁液として煮詰めるが、これは結晶化工程ではなくむしろ懸濁液の熱抽出撹拌である。しかしながら、そこに記載される方法は、当業者によって要求される高純度をもたらさず、純粋なエタノール中で煮詰めている間に、新しい不純物の発生がかなりの程度観察され、これらはまた、不純物の中でもとりわけ、2つのエチルエステルA1およびB1、ならびに配位子エステルC2およびD2であった:
【化4】
【0007】
これら2つのエチルエステルも純粋なエタノール中で晶出するので、純度約94%(100%法、HPLC)の物質しか得ることができなかった。ガドブトロール合成から得られる配位子(ブトロール)は、それをカルシウム錯体に直接変換するのに必要な高い純度を有さない。その高い双性イオン性の性質のために、配位子のさらなる精製は困難で費用がかかる。
【0008】
鉱酸(大部分は塩酸)を添加したシュウ酸によるガドリニウム錯体の脱錯体が文献に記載されており、例えばInorganica Chimica Acta 249(1996)、191~199を参照されたい。ここでは、安定度定数を決定するための高純度配位子を生成するために、生成物を最終的に室温でメタノールから撹拌する、高純度配位子の製造について概説されている。しかしながら、そこに記載されている方法はスケールアップには適しておらず、また、カルコブトロールの製造、単離および精製を開示していない。例えば、米国特許第5595714号明細書には、一方ではガドリニウム、また遊離配位子も、シュウ酸/塩酸による脱錯体によってガドリニウム含有造影剤から回収することができることが開示されている。しかしながら、カルシウム塩を製造する方法の利用はこの文献内に言及されていない。
【0009】
中性ガドリニウム錯体(ガドブトロール)をイオン交換体上で精製することができ、結論として非常に有効な結晶化により高純度(>>99%)で得ることができるが、付加的な酸官能基のためにカルコブトロールにおいてこれは不可能である。分取HPLCを用いても、主ピークに非常に近い不純物を除去することができなかったので、錯体の精製は成功しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2011/054827号パンフレット
【文献】国際公開第2016/043462号パンフレット
【文献】欧州特許第0448191号明細書
【文献】欧州特許第0643705号明細書
【文献】欧州特許第0986548号明細書
【文献】欧州特許第0596586号明細書
【文献】カナダ特許第1341176号明細書
【文献】特許出願国際公開第2012/143355号パンフレット
【文献】欧州特許第0270483号明細書
【文献】米国特許第5595714号明細書
【非特許文献】
【0011】
【文献】Inorg.Chem 1997、36、6086~6093
【文献】Inorganica Chimica Acta 249(1996)、191~199
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、安定で定義された多形体を有する非常に純粋なカルコブトロールを再現性よく得ることである。全ての精製方法における困難さは本質的に、一方では高純度、およびまた1:1のCa:配位子化学量論を再現性よく得ることにある。カルコブトロールは中性条件下でのみ安定であり、クロマトグラフィーであろうとイオン交換体処理であろうと、精製操作の間は常に、脱錯体によってかなりの割合のカルシウムを失う。
【0013】
本発明により、前述の要件を満たすことを可能にする非常に効率的な方法が見出された。
【0014】
特許明細書国際公開第2011/054827号パンフレット(Bayer AG)では、驚くべきことに、例えば国際公開第2012/143355号パンフレットに記載されているように、高純度ガドブトロールから出発することによって効率的な製造が可能であることが見出された。ガドリニウムが脱錯体によって錯体ガドブトロールから除去され、それによって配位子が非常に高純度で得られ、次いで、カルシウム2イオンと錯体形成される。国際公開第2011/054827号パンフレット(Bayer AG)には、水性エタノールからの結晶化が例として記載されており、ここでは結晶化が水性エタノールから行われ、非常に純粋なカルコブトロールを生じる。
【0015】
ここで、驚くべきことに、1つの特定の変態(標的変態A)を再現性よく製造するためには、エタノール溶液の水当量が9%以上11%以下の範囲になければならないことが見出された。これは、結晶化工程中に含水量を制御するための特別な試みがなされなかった以前に公開された方法(Inorganic Chemistry 1997、36、6086~6093および国際公開第2011/054827号パンフレット)とは異なる。(先行技術に記載されているように)使用される未定義の標的量のブトロール配位子までの粗蒸留は、特に工程の頑強性のさらなる改善のための粗い指針値にすぎず、水についての頑強な工程内制御と競合し得ない;よって、エタノールまたは水をさらに添加することによって、この値を比較的簡単に9~11%の所望の範囲にもっていくことができる。さらに、炭酸カルシウムとの錯体形成が行われた後に、Ca:ブトロールの1:1の化学量論を工程内制御によって再びチェックし、正確に1:1の化学量論が得られるように、場合により少量の炭酸カルシウムまたはブトロールの添加によってさらに調整すると有利であることが分かった。驚くべきことに、この化学量論からの最小の逸脱でさえも、純度および製造される多形体に効果をもたらすことがここで観察され得る。再現性のある製造は、新規な本発明の方法によってのみ成功する。これは一方で、見出された4つの多形体(変態)A、B、CおよびDの中で、形態A(変態A)のみが良好な貯蔵安定性を有する一方、B、CおよびDは大部分が吸湿性である傾向があり、これが医薬製剤(Gadovist(登録商標))の製造においてかなりの問題を引き起こすため重要である。強い吸湿性は、貯蔵中およびバルク量からの秤量中、薬局において常に問題となる。
【0016】
言及された4つの多形体は、多形変態A、B、CおよびDである。これらは表1に示される特性を示す:
【0017】
【表1】
【0018】
高い大気湿度の条件下で貯蔵すると、4つの変態全てが非晶質物質に変換する。変態B、CおよびDは、例えば12%を超える高い水当量を有する水からの結晶化によって得ることができる。
【0019】
新規な方法によって、水当量を9%~11%に維持しながら水性エタノールから結晶化を行うという吸湿性の課題を解決することが可能であった。驚くべきことに、9~11%の水当量で操作することによって、第一にエステル化が強く阻害され、第二にこれらのエステルが純エタノールよりも水性エタノールに可溶性になるので(これは当業者にとって比較的驚くべきことである)、上記のエチルエステルA1、B1、C2およびD2の含量が大幅に減少することが分かった。最終生成物中に、これらのエステルはもはや見出されない(本方法の検出限界未満)。
【0020】
実際の実施では、ブトロールを、好ましくは20~30℃で炭酸カルシウムと錯体形成させる。この温度範囲では、過度の発泡が抑制される。次いで、化学量論を、Caおよびブトロールについて工程内制御によって分析し、場合により補正量の炭酸カルシウムまたはブトロールを添加することによって正確に1:1に調整する。次いで、混合物を国際公開第2011/054827号パンフレット(Bayer AG)に記載されているように濃縮する、すなわち水を真空下であるが、使用した炭酸カルシウムの量の7~8倍に基づく定義された最終体積まで留去する。この後、約26倍量のエタノール(例えば、また、MEK=メチルエチルケトンで変性されている)を沸点で60~70分間にわたって計量供給し、20℃に冷却した後、水当量を工程内制御によって測定する。補正量のエタノールまたはメタノールを添加することによって、水当量を9~11%の標的帯内に入るまで再調整する。有利には、約10%の値を設定する。次に、混合物を還流下で3時間加熱する。この手順はまた、例えばトルエン、メチルエチルケトン、ヘキサンまたはチオフェンで変性した通常の市販のアルコールの使用も可能にする。
【0021】
9%未満の水当量では、不純物も既に晶出しているので、いくつかのバッチは仕様外である。さらに、多形A中で非晶質画分が増大した程度で生じる。11%超の水当量では、明らかに非常に清澄な生成物が得られるが、収率が比較的不意に低下し、それからカルコブトロールの溶解度が高すぎ、結晶化が妨げられるので、さらに多形体B、CおよびDの形成が優先的に観察される。9~11%の範囲の水当量を使用すると、一方では収率が非常に良好であり、これは経済的観点から非常に重要であり、他方では多形(変態A)の品質が非常に高い。9~11%の範囲の水当量で操作することにより、再現性があり、頑強で、スケーラブルな工程操作が保証され、ここで所望のようにスケールアップすることができる。新しい工程は、簡単な工程内制御による水当量の測定だけを必要とするので、管理が非常に簡単である。この工程内制御は、例えば、カールフィッシャー滴定または同等の他の方法によっても行うことができる。結果を比較的迅速に決定することができるので、操作の過程は工程内制御によって大きな影響を受けない。
【0022】
本発明による新規な方法のさらなる利点は、定義された多形の既に言及された再現性のある製造である(多形体の特徴付けについては実施例参照)。
【0023】
本発明は、ジヒドロキシ-ヒドロキシ-メチルプロピル-テトラアザシクロドデカン-三酢酸のカルシウム錯体(カルコブトロール)を製造する方法であって、ジヒドロキシ-ヒドロキシ-メチルプロピル-テトラアザシクロドデカン-三酢酸を水中でカルシウム2+イオンと錯体形成させ、次いで、エタノールから結晶化させ、含水量(水当量)(カールフィッシャー)は、所望の標的多形(変態A)を得るために、有利には9~11%の範囲内にある方法を含む。
【0024】
表2は、3つの典型的な製造バッチ(24、25、26)の水およびエタノール含量を示し、それらについてXRPD(X線粉末回折法)によって結晶形態を決定した。これら3つのバッチは多形体A(変態A)をもたらした。表2はまた、公開されている手順(実施例5:Inorganic Chemistry 1997、36、6086~6093および実施例6:国際公開第2011/054827号パンフレット)に従って調製された2つの追加のバッチの特性を示している。
【0025】
実施例5および6によるバッチは、有意に低い含水量および極めて低いエタノール含量を特徴とし、これらは共にこれらのバッチが多形体A(変態A)に対応しないことを明らかに示している。これらの所見は、全く異なる反射パターンを示す対応するXRPDスペクトルの比較によって確認される。
【0026】
【表2】
【0027】
比較のために、変態Aについての水およびエタノールの理論含量を使用する:
変態A=カルコブトロール×1 H2O×1/5エタノール
水の重量%:4.23
エタノールの重量%:2.16
【0028】
具体的には、本発明は、ジヒドロキシ-ヒドロキシ-メチルプロピル-テトラアザシクロドデカン-三酢酸のカルシウム錯体の結晶化のための工程パラメータであって、ジヒドロキシ-ヒドロキシ-メチルプロピル-テトラアザシクロドデカン-三酢酸を最初に20~25℃でカルシウム2+イオンと非常に穏和な条件を仕様して錯体形成させ(これが、錯体形成を有意に高い温度(80~90℃)で行う先行技術との重要な差である)、反応の完了後、Ca:ブトロールの化学量論を工程内制御によって、および場合により炭酸カルシウムまたはブトロールの添加などの補正手段によって再調整し、次いで、生成物を、好ましくは9~11%の含水量(水当量)の水性エタノールから結晶化し、次いで、単離後に真空下で乾燥させる工程パラメータも含む。
【0029】
錯体形成に適したカルシウム2+イオン源として、炭酸カルシウム、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムが見出された。この錯体形成は、好ましくは20~90℃の種々の温度で水溶液中で進行する。しかしながら、炭酸カルシウムを用いると、錯体形成を既に20~30℃で特に穏やかに達成することができる。
【0030】
カルコブトロールへの最終変換は、ブトロールを水中で化学量論量の炭酸カルシウムと錯体形成させることによって行われる。しかしながら、酸化カルシウム(CaO)または水酸化カルシウムCa(OH)2も使用することができる。好ましくは炭酸カルシウム(CaCO3)を使用する。
【0031】
粒子除去および微生物減少のために、混合物を活性炭で処理し、これを濾別する。濾液を真空下で実質的に濃縮し、エタノールを添加することによって水の工程内制御を行い、場合により再調整し、次いで結晶化させる。このために、これを還流下で加熱し、最後に冷却する。析出した結晶生成物を濾別し、次いで、少量のエタノールで洗浄する。次いで、これを真空キャビネット内で乾燥させる(一定重量まで)。
【0032】
このように製造された変態Aのカルコブトロールは、非常に高品質であることを特徴とする。生成物は無色の水溶性であり、99.0%超の純度を有し、製造時の製造ロットでは純度は典型的には99.7%(100%法による純度、HPLC)である。ガドブトロールから出発してカルコブトロールまでの工程全体が高い再現性および効率を特徴とする。したがって、全収率(2段階にわたる)が非常に優れている。生成物は貯蔵安定性であり、Gadovist(登録商標)溶液の製剤製造のために薬局で使用することができる。カルコブトロールのナトリウム塩は、化学量論量の水酸化ナトリウム溶液を添加することによってその場で生成される。このようにして調製されたGadovist(登録商標)の溶液は数年間にわたって貯蔵安定性であり、遊離の毒性ガドリニウムが溶液中に決して入り込まないという安全性を保証する。
【0033】
したがって、Gadovist(登録商標)のさらなる処理および製造に直接適した、高純度および定義された多形体(変態A)のカルコブトロールを安価に提供するという当局および薬剤師の要望を満たすことが可能である。
【0034】
本明細書に記載および特許請求されている製造方法は、信頼性のある様式で、多形体A(変態A)の安定で均一なカルコブトロールをもたらす。規制およびGMP要件の増加に従うために、もとは潜在的に異なる形態を回避すべきである。
【0035】
医薬賦形剤についてさえも異なる多形体は、過去に実際に観察されている少量の不溶性固体残渣の危険性を含む。非経口使用の危険性を回避するために、均一で完全に可溶性の多形Aカルコブトロールのみを使用すべきである。
【0036】
さらに、異なる多形体はまた、医薬用途のための必須の試験である同一性の明確な一致を有するために回避すべきである異なるXRPDおよび赤外スペクトルをもたらす。
【0037】
カルコブトロールの構造は既に知られているが、多形体Aは非経口製剤での使用に特有のものであり、本明細書で初めて詳細に説明される。
【0038】
本発明はまた、ガドブトロールの通常の市販のガレヌス製剤を製造するための、ジヒドロキシ-ヒドロキシ-メチルプロピル-テトラアザシクロドデカン-三酢酸のカルシウム錯体の多形Aの使用も含む。
【0039】
本発明の主題は、
そのX線粉末回折図が7.6°、9.1°、11.1°、11.3°、11.9°および12.3°において2θ角の最大ピークを示す、
変態Aの結晶形態の式(I)の化合物
【化5】
である。
【0040】
本発明のさらなる主題は、2.0~2.5重量%のエタノールを含む一水和物である、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物である。
【0041】
本発明のさらなる主題は、2.0~2.2重量%のエタノールを含む一水和物である、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物である。
【0042】
本発明のさらなる主題は、2.0~2.5重量%のエタノールを含む一水和物であり、そのX線粉末回折図が7.6°、9.1°、11.1°、11.3°、11.9°および12.3°において2θ角の最大ピークを示す、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物である。
【0043】
本発明のさらなる主題は、2.0~2.2重量%のエタノールを含む一水和物であり、そのX線粉末回折図が7.6°、9.1°、11.1°、11.3°、11.9°および12.3°において2θ角の最大ピークを示す、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物である。
【0044】
本発明のさらなる主題は、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物を製造する方法であって、ジヒドロキシ-ヒドロキシ-メチルプロピル-テトラアザシクロドデカン-三酢酸のガドリニウム錯体(ガドブトロール)を脱錯体し、沈殿したガドリニウム塩を除去し、次いで、遊離配位子を含む溶液を酸性イオン交換体に結合させ、次いで、塩基性水溶液で溶出し、次いで、カルシウム2+イオンと錯体形成させ、次いで、Ca:ブトロール化学量論を工程内制御によって1:1に調整し、次いで、水の決定のための工程内制御によって9~11重量%水の含水量を有する水性エタノールから結晶化し、次いで、生成物を乾燥させ、こうして式(I)の化合物を変態Aの結晶形態で単離する方法である。
【0045】
本発明のさらなる主題は、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物を製造する方法であって、水中シュウ酸を用いてジヒドロキシ-ヒドロキシ-メチルプロピル-テトラアザシクロドデカン-三酢酸のガドリニウム錯体(ガドブトロール)を熱脱錯体し、沈殿したシュウ酸ガドリニウムを濾別し、次いで、遊離配位子を酸性イオン交換体に結合させ、次いで、アンモニア水溶液で溶出し、溶液を濃縮した後カルシウム2+イオンと錯体形成させ、次いで、工程内制御によって、Ca:ブトロール化学量論を1:1に調整し、次いで、9~11重量%水の含水量を有する水性エタノールから還流下で加熱し、単離後、真空下で乾燥させ、こうして式(I)の化合物を変態Aの結晶形態で単離する方法である。
【0046】
本発明のさらなる主題は、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物を製造する方法であって、炭酸カルシウム、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムを錯体形成に使用する方法である。
【0047】
本発明のさらなる主題は、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物を製造する方法であって、炭酸カルシウムを錯体形成に使用する方法である。
【0048】
本発明のさらなる主題は、炭酸カルシウムを錯体形成に使用し、錯体形成を0℃以上50℃以下の温度範囲で行うことを特徴とする、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物を製造する方法である。
【0049】
本発明のさらなる主題は、炭酸カルシウムを錯体形成に使用し、錯体形成を10℃以上40℃以下の温度範囲で行うことを特徴とする、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物を製造する方法である。
【0050】
本発明のさらなる主題は、炭酸カルシウムを錯体形成に使用し、錯体形成を15℃以上35℃以下の温度範囲で行うことを特徴とする、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物を製造する方法である。
【0051】
本発明のさらなる主題は、炭酸カルシウムを錯体形成に使用し、錯体形成を20℃以上30℃以下の温度範囲で行うことを特徴とする、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物を製造する方法である。
【0052】
本発明のさらなる主題は、炭酸カルシウムを錯体形成に使用し、錯体形成を20℃以上25℃以下の温度範囲で行うことを特徴とする、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物を製造する方法である。
【0053】
本発明のさらなる主題は、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物を製造する方法であって、カルシウム:ブトロールの化学量論を1:1に調整する方法である。
【0054】
本発明のさらなる主題は、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物を製造する方法であって、工程内制御によって、結晶化中の水当量を9~11%の範囲に設定する方法である。
【0055】
本発明のさらなる主題は、本発明の主題として言及された方法によって製造される、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物である。
【0056】
本発明のさらなる主題は、純度が99.0%以上である、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物である。
【0057】
本発明のさらなる主題は、純度が99.6%以上である、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物である。
【0058】
本発明のさらなる主題は、純度が99.7%以上である、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物である。
【0059】
本発明のさらなる主題は、ガドブトロールのガレヌス製剤を製造するための、変態Aの結晶形態の式(I)の化合物の使用である。
【0060】
以下の実施例は本発明の主題を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】バッチ番号16からの変態AのX線粉末回折図を示す。
図2】例として、バッチ番号24の回折図を示す図である。バッチは変態Aに対応する。
図3】例として、バッチ番号25の回折図を示す図である。バッチは変態Aに対応する。
図4】例として、バッチ番号26の回折図を示す図である。バッチは変態Aに対応する。
図5】変態Aに対応するバッチのX線粉末回折図(下の図)と比較した、実施例5のX線粉末回折図(上の図)を示す図である。この比較は、Inorganic Chemistry 1997、36、6086~6093に記載される手順に従って調製した、実施例5に対応する多形体が、請求される方法によって得られる変態Aとは異なることを明らかに実証している。
図6】変態Aに対応するバッチのX線粉末回折図(下の図)と比較した、実施例6のX線粉末回折図(上の図)を示す図である。この比較は、国際公開第2011/054827号パンフレットに記載される手順に従って調製した、実施例6に対応する多形体が、請求される方法によって得られる変態Aとは異なることを明らかに実証している。
【発明を実施するための形態】
【0062】
実験節
実施例1
結晶化中の水の工程内制御によるカルコブトロールの一般的製造方法
ガドブトロール2kgをシュウ酸二水和物0.8kgと一緒に水14Lに懸濁し、80℃で少なくとも3時間(通常3~5時間)撹拌した。これを20℃に冷却させ、20℃で60分間さらに撹拌した。沈殿したシュウ酸ガドリニウムを濾別し、それぞれ水3Lで2回すすいだ(イオン交換体溶離液約20L)。陽イオン交換樹脂Amberlite 252 Cを充填したイオン交換カラムを、溶離液が10μS/cm未満の導電率(標的pH>4.5および<5.5)に達するまで水で洗い流した。この場合、pH4.73および導電率4.42μS/cmが見られた。前述のイオン交換体溶離液(約20L)をイオン交換カラムに供給した(供給速度250~350mL/分)。次いで、溶離液の導電率が5μS/cm未満になるまで、これを水15Lで洗浄した(測定値はpH4.48および4.99μS/cmであった)。次いで、イオン交換カラムを1.4~1.7%アンモニア水溶液でゆっくり洗浄した(1.4%溶液を使用した)。生成物含有溶離液画分を回収した(pH11.01)。溶液が密度1.07g/mLに達するまで、溶離液を真空下64.4℃で濃縮した。pH3.8の溶液7.906kgが得られた。pH、密度およびブトロール配位子含量を決定するために、試料127.13gを前もって採取した。試料を回収した後、溶液7.7795kgが18.99%のブトロール配位子含量(外部標準に対する測定値)で残留し、これはブトロール1.477kgの質量に相当した。カルシウムとの錯体形成のために、炭酸カルシウム328gを添加し、次いで、水1019.7gですすいだ。これを23℃で60分間撹拌したままにした(その間に炭酸カルシウムが溶解した)。次に、過剰なカルシウムまたは過剰なブトロールの工程内制御を行う。対応する量の配位子をさらに添加することによって過剰のカルシウムを錯体形成させ、同様に、過剰のブトロール配位子の場合、化学量論Ca:ブトロールが1:1になるまで、対応する量の炭酸カルシウムを添加した。この後、活性炭素NORIT SX PLUS、20μs 120.03gを添加し、水91.6gですすいだ。これを23℃で60分間撹拌し、次いで、活性炭素を濾別し、水0.4Lですすいだ。濾液を0.2μmの滅菌フィルターSartopore 2ミニカートリッジを通して濾過した(溶液9.3537kgが得られた)。次いで、水を75mbarおよび70℃で、使用した炭酸カルシウムの量に基づいて約7~8倍まで留去した(炭酸カルシウム328gを使用した、これは蒸留を2296g~2624gの最終量まで行ったことを意味する)。全体として、水6755.5gを留去し、これは炭酸カルシウムに基づいて約7~9倍の最終カルコブトロール溶液の量に相当した。混合物を加熱還流し、MEK(メチルエチルケトン)変性したエタノール8556.9gを60分間にわたってその中に計量供給した(使用した炭酸カルシウムの量に基づいて約26倍量)。これを23℃に冷却させ、水当量の工程内制御をカールフィッシャーに従って行う。この時点での水当量は9重量%以上11重量%以下でなければならず、可能な限り、理想値は10重量%にあるべきである(しかしながらいずれの場合でも9~11重量%のこの範囲内)。値がこの窓から外れる場合、水(9重量%未満の場合)、またはMEK変性したエタノール(11重量%超の場合)を適宜添加しなければならない。9.24重量%の含水量が見られ、処理を続けた。このために、混合物を還流下で3時間加熱し、次いで、14時間にわたって20℃に冷却(勾配)し、結晶化した混合物をさらに60分間撹拌した。析出した結晶化生成物を濾別し、次いで、MEK変性したエタノール合計812gで2回に分けて洗浄した。濾過ケークをクリーンルーム内のラックに置き、次いで、乾燥させた(一定重量まで、20~85時間)。乾燥後、生成物1264.9gが得られ、これは典型的な製造バッチサイズに相当する。
【0063】
実施例2
技術的規模でのカルコブトロール製造
以下の表は、実施例1と同様に一般的製造手順に従って製造したカルコブトロールの製造からの結果を再現している。平均バッチサイズは1.0~1.2kgであった。表3は、水当量を9~11重量%に設定した場合に得られる高純度および高含量を示している。
【0064】
【表3】
【0065】
実施例3
メチルエチルケトンで変性したエタノール使用時の残留溶媒含量
ここに記載されるバッチは上記のように製造し、メチルエチルケトンで変性したエタノールを使用した。表4は、ICH(医薬品規制調和国際会議)ガイドラインによって要求される5000ppm以下の残留溶媒限界が観察されたことを示している。
【0066】
【表4】
【0067】
実施例4
多形性
多形B、CおよびDは高い含水量を特徴とし、結晶化工程中に水(12重量%以上)を添加することによって多形A(変態A)から製造することができる。表5は、実験室で小規模に製造されたこれらの多形の特性を示している。
【0068】
【表5】
【0069】
図1は、バッチ番号16からの変態AのX線粉末回折図を示す。
【0070】
表6は、例として、3つの典型的な製造バッチ(24、25、26)を示し、ここでは多形体をXRPDによって決定した。全てのバッチにおいて、変態Aが再現性よく得られた。
【0071】
さらに、表6は、先行技術に記載された手順に従って調製された2つのバッチについての分析データを示している(実施例5および6、以下に記載される調製および単離の手順)。これらのバッチは、有意に低い含水量および極めて低いエタノール含量を特徴とし、これらは共にこれらのバッチが多形体A(変態A)に対応しないことを明らかに示している。これらの所見は、対応するXRPDスペクトルの比較によって確認される(以下参照)。
【0072】
【表6】
【0073】
比較として、変態Aについての水およびエタノールの理論含量を使用する:
変態A=カルコブトロール×1 H2O×1/5エタノール
水の重量%:4.23
エタノールの重量%:2.16
【0074】
図2(バッチ番号24)、図3(バッチ番号25)および図4(バッチ番号26)は、例として、3つの回折図を示す。バッチは形態Aに対応する(変態A)。
【0075】
表7は、結晶化で得られた変態に対する水当量の影響を示す。
【0076】
【表7】
【0077】
バッチ33~36:製造において水当量を7~8%に調整したバッチは、より高い割合の非晶質物質を含有するので吸湿性である。
【0078】
カルコブトロールのX線粉末回折法(XRPD)
表8は、変態Aのカルコブトロールの回折ピークの2θ値を示す(バッチ16、24、25、26)。最大ピークは、7.6°、9.1°、11.1°、11.3°、11.9°および12.3°の2θ角で見られる。
【0079】
【表8】
【0080】
XRPD用の機器設定:
試料調製:粉末を2枚のシートの間の薄層として調製する。
機器:X線粉末回折装置(STOE STADI P)
発生装置:40 kV/40 mA
検出器:直線位置-=高感度検出器
照射:ゲルマニウム単色化CuKα1照射
技術:伝達
スキャン範囲:3°≦2θ≦35°
ステップ幅:0.5°
測定時間:15秒/ステップ
【0081】
先行技術との比較
以下の実施例は、本発明の請求される方法によって得られる多形体が、公開されている手順によって得ることができる物質の多形体とは異なることを実証している。この目的のために、カルコブトロールの2つのバッチを公開されている手順に従って調製し、対応するXRPDスペクトルを、本発明に従って調製したカルコブトロール製造バッチから得られたXRPDスペクトルと比較した。公開されている手順によるカルコブトロールの合成は、大量に入手可能なブトロール水溶液(通常17~22%)から出発して行った。
【0082】
ブトロール配位子水溶液を製造するための一般的製造手順
ガドブトロール2kgをシュウ酸二水和物0.8kgと一緒に水14Lに懸濁し、80℃で少なくとも3時間(通常3~5時間)撹拌した。これを20℃に冷却させ、20℃で60分間さらに撹拌した。沈殿したシュウ酸ガドリニウムを濾別し、それぞれ水3Lで2回すすいだ(イオン交換体溶離液約20L)。陽イオン交換樹脂Amberlite 252 Cを充填したイオン交換カラムを、溶離液が10μS/cm未満の導電率(標的pH>4.5および<5.5)に達するまで水で洗い流した。この場合、pH4.73および導電率4.42μS/cmが見られた。前述のイオン交換体溶離液(約20L)をイオン交換カラムに供給した(供給速度250~350mL/分)。次いで、溶離液の導電率が5μS/cm未満になるまで、これを水15Lで洗浄した(測定値はpH4.48および4.99μS/cmであった)。次いで、イオン交換カラムを1.4~1.7%アンモニア水溶液でゆっくり洗浄した(1.4%溶液を使用した)。生成物含有溶離液画分を回収した(pH11.01)。溶液が密度1.07g/mLに達するまで、溶離液を真空下64.4℃で濃縮した。pH3.8の溶液7.906kgが得られた。pH、密度およびブトロール配位子含量を決定するために、試料127.13gを前もって採取した。試料を回収した後、溶液7.7795kgが18.99%のブトロール配位子含量(外部標準に対する測定値)で残留し、これはブトロール1.477kgの質量に相当した。
【0083】
以下の実験では、ブトロール配位子水溶液を同様に調製した。
【0084】
実施例5
Inorganic Chemistry 1997、36、6086~6093によるカルコブトロールの調製:
18%ブトロール水溶液245.52g(112mmol、上記のように調製した)を室温で水330mlで希釈した。次いで、炭酸カルシウム10.99g(112mmol)を添加し、溶液を80℃で2時間加熱した。これを22.6℃に冷却し、溶液を濾過し、フィルター残渣を水20mlで洗浄した。濾液を凍結乾燥した。凍結乾燥粉末(55.52g)をエタノール(メチルエチルケトンで変性)1315mlに懸濁し、50℃で1時間撹拌した。後処理のために、懸濁液を0℃に冷却し、生成物を濾過によって単離した。生成物をエタノール(メチルエチルケトンで変性)395mlで洗浄し、次いで、質量が一定になるまで(60℃で)真空下で乾燥させた。
【0085】
収量:微細な白色粉末52.62g(理論値の96.2%)が得られた。
【0086】
分析データ:
水の重量%(カールフィッシャー):3.47%
エタノール含量:610ppm
メチルエチルケトンの重量%:0.00%
Caの含量(イオンクロマトグラフィー):100.64%
【0087】
対応するXRPDスペクトルについては図5を参照されたい。
【0088】
実施例6
国際公開第2011/054827号パンフレットによるカルコブトロールの調製:
18%ブトロール水溶液245.54g(50.45g=112mmol、実施例1に記載されるように調製した)を室温で水208mlで希釈した。次いで、炭酸カルシウム11.34g(112mmol)を添加し、溶液を90℃で約3時間加熱した。これを室温(+20℃)に冷却した。この後、新たに洗浄した木炭(Norit SX Plus)5.06gを添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。溶液を濾過し、フィルター残渣(木炭)をそれぞれ水50mlで3回洗浄した。濾液を真空下80℃で蒸留することによって、元のブトロール配位子の1.4倍に相当する一定体積まで減量した(1.4倍:1.4×50.45重量ブトロール配位子=70.6ml)。エタノール(メチルエチルケトンで変性)505mlを添加し、混合物を還流下で3時間加熱した。後処理のために、懸濁液を20℃に冷却し、生成物を濾過によって単離した。生成物をそれぞれエタノール(メチルエチルケトンで変性)50mlで2回洗浄し、次いで、質量が一定になるまで(70℃で)真空下で乾燥させた。
【0089】
収量:微細な白色粉末49.15g(理論値の89.9%)が得られた。
【0090】
分析データ:
水の重量%(カールフィッシャー):2.54%
エタノール含量:200ppm
メチルエチルケトンの重量%:0.00034%
Caの含量(イオンクロマトグラフィー):100.80%
【0091】
対応するXRPDスペクトルについては図6を参照されたい。
【0092】
実施例7
吸湿性
カルコブトロールの3つの異なる試料の吸湿性を測定し、1つの試料はInorganic Chemistry 1997、36、6086~6093(実施例5)に記載される方法によって調製し、1つの試料は国際公開第2011/054827号パンフレット(実施例6)に記載される方法によって調製し、1つの試料は本発明(実施例2)による方法によって調製した。
【0093】
各試料2gを周囲空気(約20℃、約60%相対湿度)に暴露した。初期暴露直後(t=0)、初期暴露の3時間後(t=3時間)、7時間後(t=7時間)、および31時間後(t=31時間)に、カールフィッシャー滴定によって、含水量を測定した。
【0094】
表9は、経時的に異なる試料の増加する水の重量%を示している。先行技術に記載される方法に従って調製したカルコブトロール試料は、本発明の方法に従って調製したカルコブトロールよりもはるかに吸湿性である。
【0095】
【表9】
図1
図2
図3
図4
図5
図6