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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】粒子特性評価
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/0205 20240101AFI20240228BHJP
【FI】
G01N15/0205
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022144522
(22)【出願日】2022-09-12
(62)【分割の表示】P 2018548932の分割
【原出願日】2017-03-16
(65)【公開番号】P2022174213
(43)【公開日】2022-11-22
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】1604460.4
(32)【優先日】2016-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518101646
【氏名又は名称】マルバーン パナリティカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コルベット ジェイソン
【審査官】目黒 大地
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0281215(US,A1)
【文献】特開2002-341173(JP,A)
【文献】特開平02-228069(JP,A)
【文献】特開2002-196222(JP,A)
【文献】特開2006-071497(JP,A)
【文献】特開2002-071567(JP,A)
【文献】特表2014-518379(JP,A)
【文献】特開2016-026301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00-15/14
21/00-21/01
21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子特性評価用の装置であって、
試料を保持するための試料セルと、
照射ビームを前記試料に照射するように構成された光源と、
複数の光検出器と、を備え、
前記光検出器のそれぞれは、前記照射ビームと前記試料との間の相互作用から生じる散乱光を、検出器経路のそれぞれに沿って受け取るように構成され、
前記検出器経路のそれぞれは、前記照射ビームに対して実質的に同じ角度を成し、
前記光検出器のそれぞれは、前記散乱光に応じて強度信号を生成するように構成され、
前記装置は、
前記強度信号それぞれの自己相関を取って複数の自己相関関数を生成し、
各自己相関関数について平均粒子径または多分散値を算出し、すべての前記自己相関関数についての平均粒子径の平均値または多分散値の平均値を算出し、
動的棄却閾値に基づき汚染物または大粒子に対応する自己相関関数を識別し、前記動的棄却閾値は前記平均粒子径の平均値または前記多分散値の平均値からのいくつかの標準偏差を含み、
汚染物または大粒子に対応するものとして識別されていない前記自己相関関数のそれぞれを組み合わせて全自己相関関数を生成する
ように構成されたプロセッサを備え、
前記自己相関関数のそれぞれを組み合わせることは各相関時における自己相関関数値のそれぞれを足し合わせることを含む、装置。
【請求項2】
複数の光ファイバを更に備え、
前記光ファイバのそれぞれは光検出器に対応し、前記検出器経路のそれぞれからの光を、対応する前記光検出器に結合するように配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光ファイバのそれぞれは、前記検出器経路からの前記散乱光を第一端部で受け取るように配置され、
前記光ファイバのそれぞれの前記第一端部は、実質的に平行である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記光ファイバのそれぞれの前記第一端部は、一次元ファイバアレイを有する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記光ファイバのそれぞれの前記第一端部は、二次元ファイバアレイを有する、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記光ファイバのそれぞれは、前記検出器経路からの前記散乱光を第一端部で受け取るように構成され、
前記ファイバのそれぞれの前記第一端部は、異なる角度で方向付けされる、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
1つまたは複数のファイバ支持部材を更に備える、請求項3~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記光ファイバの前記第一端部のそれぞれは、ファイバ支持部材のV溝のアレイによって支持される、請求項6または請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記光ファイバの前記第一端部は光ファイバコアから構成され、いかなる関連するクラッディング、バッファ、および/またはジャケットも取り除かれている、請求項3~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
複数のピンホール開口を更に備え、
前記光検出器のそれぞれは、対応するピンホール開口を介して前記検出器経路のそれぞれから光を受け取るように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
複数のレンズ素子を更に備え、
前記レンズ素子のそれぞれは光検出器に対応し、前記検出器経路のそれぞれからの光を、対応する前記光検出器に結合するように配置される、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
複数の前記レンズ素子は、レンズ素子アレイを有する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
複数の前記レンズ素子のうち少なくともいくつかは不一致である、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記試料からの前記検出器経路のうち少なくともいくつかは、異なる率で広がる、請求項11または請求項13に記載の装置。
【請求項15】
複数の光源を更に備える、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記光源の一つまたはそれぞれは、複数の照射ビームを前記試料に照射するように構成される、請求項1~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記試料セルを前記照射ビームに対して垂直および/または平行に移動するように構成された試料移動ステージを更に備える、請求項1~16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記検出器経路は、前記照射ビームに沿う複数の位置で前記照射ビームとそれぞれ交わるように配置される、請求項1~17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記複数の位置は、前記試料セルの側壁から複数の異なる距離にある、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記検出器経路のそれぞれは、照射経路に沿う異なる位置で、および/または、前記試料セルの側壁から異なる距離で、前記照射経路と交わるように配置される、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記プロセッサは、前記全自己相関関数から、平均粒子径、多分散、および粒子径分布のうち少なくとも一つを算出するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
第一及び第二電極と、
表面と、を更に備え、
前記第一及び第二電極は、前記試料内において前記表面に平行な方向に電場を形成するように動作可能であり、
前記複数の位置は前記表面から異なる距離の位置を含む、請求項18に記載の装置。
【請求項23】
前記表面から異なる距離における前記複数の位置に対応する複数の光検出器の出力からゼータ電位を算出するように構成されたプロセッサを更に備える、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記装置は、前記表面を移動させることなく、前記試料に対していかなる検出器経路または前記照射ビームも移動させることなく、ゼータ電位を算出するように動作可能である、請求項23に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、粒子特性評価用の装置に関する。
特に動的光散乱(DLS)などの、粒子特性評価用の光散乱法は、散乱光の強度がRに依存する(半径Rの粒子の場合)ことに起因して、試料の品質の悪さに影響を受けやすい点において長く批判されてきた。この依存性は、医薬用途において一般的であるとともに関心の対象である塊状物のほんのわずかな断片が測定において支配的となることを意味し、そのことは、より小さく、散乱がより弱い断片のサイズ測定の精度の低下を伴う。しばしば、より小さなタンパク質の断片の大変低い濃度が対象となるが、その正確な測定のために、試料の準備、フィルタリング、ビーカ、容器、試料キュベットなどの入念な洗浄に関し大変な努力が一般的に要求され、それにより、塊状物またはフィルタ廃物が試料内に存在しないことを確実にする。
【0002】
更に、計数率の変動が高いデータを単純に排除するデータ排除方式がしばしば用いられる。大きく変動する計数率は、より大きな粒子または塊状物が(照射ビームと検出ビームとの交わりにより決定される)散乱体積内にある場合に上昇し、塊状物またはより大きな粒子が試料内の検出器容積から移動して出てしまうまで、データ獲得を実質的に停止させる。そのため、DLSを用いることは、少数回にとどまる可能性のある測定のために長い準備時間を必要とする。
【0003】
上述した問題のうち少なくともいくつかを解決または改善するための装置が望まれる。
本発明の一局面によると、試料を保持するための試料セルと、光源と、複数の光検出器とを備える粒子特性評価用の装置が提供される。光源は、照射ビームを試料に照射するように構成される。各光検出器は、照射ビームと試料との間の相互作用から生じる散乱光を各検出器経路に沿って受け取るように構成される。各検出器経路は、照射ビームに対して実質的に同じ角度を成す。
【0004】
照射ビームと各検出器経路とが交わる点を、検出領域または散乱体積と呼んでもよい。
複数の検出点があることによって、測定時間が短縮されるという利点がもたらされてもよい。Nをチャンネル数とすると、全測定時間は、Nに反比例し得る。8チャンネルファイバアレイが市販されており、これは、測定時間を64分の1倍=0.015625倍に短縮する可能性を有し、例えば、測定時間1分を0.95秒未満まで短縮できるであろう。
【0005】
従来の光散乱装置では、(単一の散乱角度での)単一の検出器が使用される。適切な信号対ノイズ比を有する測定値を得るために、比較的長い時間、測定を継続することが必要となる場合がある。長い時間により、信号から得られた相関曲線に対するノイズの効果が減少する。また、複数の光検出器をそれぞれ異なる角度で用いることにより多角度動的光散乱測定を行うことが知られており、これにより、測定精度が上がる。
【0006】
一実施形態では、各検出器は、受け取った散乱光に応じた強度信号を生成してもよい。装置は、各強度信号の自己相関を取って、複数の自己相関関数を生成するように構成されたプロセッサを備えてもよい。プロセッサは、各自己相関関数を組み合わせることで、特定の散乱角度に対応する全自己相関関数を生成する(例えば、各相関時に各自己相関関数値を足し合わせる)ように構成されてもよい。全自己相関関数は正規化されてもよい。全自己相関関数は、自己相関関数の平均値に対応してもよい。このように自己相関を組み合わせることにより、自己相関関数において十分な信号対ノイズ比を供給するのに必要な測定時間を短縮できるという効果がある。
【0007】
速度の利点を最大化するために、プロセッサは、少なくとも一部において並列的に、各強度信号の自己相関関数を演算するように構成されてもよい。これは必須ではなく、また、相関演算を実施するのに要する時間の重要度はプロセッサの速度に依存する。つまり、プロセッサの速度が十分に速い場合は、相関演算を順次実施することが適している。
【0008】
本発明は、異なる角度の更なる光検出器を排除しない。そのような装置の少なくとも一つの検出角度が「速い」角度であってもよく、同じ角度の複数の光検出器を備えてもよい。1つより多い「速い」角度がある場合、装置は、上述したように、各「速い」角度内で自己相関関数を組み合わせることで多角度DLSを実施するように構成されてもよい。
【0009】
プロセッサは、全自己相関関数から、粒子径(Z平均)、多分散指数(pdi)、および粒子径分布のうちの少なくとも一つを判断するように構成されてもよい。そのための適した方法としては、周知のキュムラント法、CONTINアルゴリズム、または他のデコンボリューション法が含まれる。
【0010】
プロセッサは、汚染物または大粒子に対応する強度信号および/または自己相関関数を識別し廃棄するように、または、別途解析するように、構成されてもよい。この識別は、所定の棄却閾値または動的棄却閾値に基づいてもよい。
【0011】
強度信号を汚染する大粒子を処理するために、プロセッサは、大粒子または汚染物からの散乱を含む各強度信号の一部を(例えば、強度閾値に基づいて)識別するように構成されてもよい。大粒子からの散乱を含む強度信号は、(自己相関および組み合わせ前に)部分的にまたは完全に廃棄されてもよい。
【0012】
大粒子または汚染物による強度信号を識別する方法として、自己相関演算の実施がある。自己相関関数の切片が閾値未満の場合、それはノイズ混入測定値を示し得る。汚染物またはより大きな粒子を有する信号を識別する基準として、多分散指数またはZ平均粒子径を用いてもよい。本明細書内で記載する各基準に関して、所定の閾値を用いてもよいし、または、動的棄却閾値を集団測定データに基づいて(例えば、測定データの統計的特性に基づいて)決定してもよい。例えば、平均強度、pdi、またはZ平均をデータ(全体)に対して判断してもよく、棄却用の閾値は、平均値からのいくつかの標準偏差に基づいて設定してもよい。そのような動的閾値は、異なる測定シナリオにもより幅広く適用できるという利点がある。棄却されるものとして識別される測定データは、全自己相関関数から排除されてもよいし、および/または、(例えば、塊状物および/または汚染物を調査するために)別途解析されてもよい。
【0013】
照射ビームはレーザにより供給されることが好ましい。光検出器は、アバランシェフォトダイオード(APD)、もしくは、静的、動的、または電気泳動光散乱測定に適した他の光子計数装置であってもよい。これらの測定値を用いて判断される例示的なパラメータは、分子量判定、径および電気泳動移動度、およびゼータ電位を含む。
【0014】
表面の表面ゼータ電位は、表面に隣接する(電解質)試料内で分散した粒子(例えば、トレーサ粒子)の移動から判断されてもよい。電場は、(例えば、第一および第二電極によって)表面の平面に平行にかけられてもよい。表面近くでは、電気浸透粒子移動が表面に平行な第一方向で支配的となる。表面から遠い場所では、電気泳動粒子移動が反対の第二方向で支配的となる。
【0015】
検出領域における粒子の移動は、ドップラー効果により生ずる変調散乱光中の周波数偏移を検出することで判断され得ることは、当業者であれば承知だろう。このためには、フ
ーリエ解析や、参照ビームと散乱光との間の位相シフトを判断するPALS(位相解析光散乱)など、いかなる適した方法をも用いることができる。
【0016】
表面ゼータ電位を判断するために、表面から複数の距離に位置する複数の検出領域から複数の測定値を得て、電気浸透粒子移動と電気泳動粒子移動との間の関係を判断することを必要としてもよい。従来技術では、これは、固定の検出領域に対して試料内の表面を移動させることにより達成され得る。本発明の実施形態では、表面から複数の距離に位置する複数の検出領域が供給されてもよく、各検出領域は検出器経路に対応してもよい。これにより、表面や光学の位置の調整を必要とすることなく、表面ゼータ電位測定値を迅速に得ることが可能となり得る。
【0017】
装置は、照射ビームまたは検出経路を調節するように構成された調節器(例えば、移動式鏡や音響光学変調器)を備えてもよい。装置は、散乱光との混合によるヘテロダイン検波を実施するために、少なくとも一つの検出器に対して照射ビームの一部を供給するように構成されたビームスプリッタを備えてもよい。
【0018】
装置は、複数の光検出器の出力信号からゼータ電位を判断するように構成されたプロセッサを備えてもよく、各出力信号は、各検出器経路の測定位置に対応してもよい。
照射ビームと複数の検出経路との間の角度は、(例えば、ゼータ電位測定用の)前方角度散乱検出のように鋭角であるか、または、例えば(サイズ検出ジオメトリ用の)後方散乱検出に適した鈍角のいずれかであってもよく、もしくは、検出経路は照射ビームに対して垂直であってもよい。
【0019】
装置は、複数の光ファイバを更に備えてもよく、複数の光ファイバのそれぞれは光検出器に対応し、各検出器経路からの光を、対応する光検出器に結合するように配置されてもよい。
【0020】
シングルモードファイバは、単一コヒーレンス領域内からの光を収集する便利で基本的な方式であるが、マルチモードファイバまたは複数モードファイバの利用も高く評価される。
【0021】
光ファイバは、偏光ファイバか、偏光保持ファイバであってもよい。特定の偏光状態を保持または選択することで、試料粒子について他の情報(例えば、形態)を判断することが可能となり得る。
【0022】
光ファイバは、第一端部で検出器経路から散乱光を受け取るように配置され、各光ファイバの第一端部は、実質的に平行であってもよい。この配置の利点の一つは、製造と光学的配列が容易なことである。
【0023】
あるいは、各光ファイバは異なる角度で方向付けされてもよい。いずれの場合も(平行または異なる角度のファイバ端であっても)、ファイバの端部は、1つまたは複数のファイバ支持部材によって支持されてもよい。
【0024】
各光ファイバの第一端部は、一次元ファイバアレイを備えてもよい。
光ファイバアレイは、配列ピッチが50マイクロメートルから500マイクロメートルであってもよい。
【0025】
各光ファイバの第一端部は、二次元ファイバアレイを備えてもよい。矩形アレイや六角形パックアレイなど、いかなる便利な充填配置を用いてもよい。これにより、ドメインサイズが検出可能となる。ドメインとは、試料内での共通した挙動を示す領域を意味する。
【0026】
装置は、1つまたは複数のファイバ支持部材を更に備えてもよい。
ファイバ支持部材は、ファイバ支持部材のV溝アレイによって光ファイバの第一端部を支持してもよい。
【0027】
各光ファイバの第一端部は光ファイバコアから構成され、関連するクラッディング、バッファ、および/またはジャケットは取り除かれていてもよい。
これにより、狭い領域内においてより高い充填密度で光ファイバを支持でき、小さな体積内で多くの検出位置を有することを容易にできる。アレイ内の各光ファイバは、50マイクロメートルから500マイクロメートルの直径であってもよく、結果として、検出体積は、検出点アレイを収納するために最小化された試料体積と共に非常に小さいまま維持される。
【0028】
光ファイバの代替として、装置は、複数のピンホール開口を備えてもよく、各光検出器は、対応するピンホール開口を介して各検出器経路から光を受け取るように構成される。
この代替により、単一モードファイバを使う場合と同様の性能が提供され得る。適切に制限された非ファイバの視野を使用することにより、バルク光学システムは、ピンホールコヒーレンス領域が検出器上に映し出され、他の光は絞り(すなわち、ピンホール開口)によって棄却されるものとなってもよい。これは、検出光の偏光状態に依存する測定を容易なものとし得る偏光保持ファイバの使用を否定するものである。
【0029】
上記の装置は、複数のレンズ素子を更に備えてもよく、各レンズ素子は光検出器に対応し、各検出器経路からの光を、対応する光検出器のそれぞれに結合するように配置されてもよい。
【0030】
複数のレンズ素子は、レンズ素子アレイを備えてもよく、レンズ素子アレイは、検出経路に沿って散乱した光のファイバやピンホールに対する高い結合効率を提供してもよい。このアレイは、二次元レンズアレイまたは一次元アレイであってもよい。
【0031】
複数のレンズ素子のうち少なくともいくつかは異なる屈折力を有してもよい。複数のレンズ素子のうち少なくともいくつかは、異なる検出器経路がそれぞれの光ファイバに入る前に異なる角度で広がるように配置されてもよい。このような配置は、各検出器光学経路の幅を検出領域(例えば、照射ビームと各検出器光学経路との相互作用領域)の照射ビームの幅と一致させるために使用されてもよい。一例として、複数のレンズ素子の各レンズは、異なるスポットサイズを有する屈折率分布型(GRIN)レンズであってもよい。
【0032】
光源は、複数の光源素子を備えてもよい。光源は、複数の照射ビームまたは一つの光シートを使って試料を照射するように構成されてもよい。代わりに/加えて、試料セルは、(例えば、横または長手移動ステージに取り付けられて)照射ビームに対して垂直または平行に移動するように構成されてもよい。この配置により、3D散乱情報が取得可能となり、また、ゲル化領域、凝固、沈殿と充填、その他多数の、2D拡散係数データを必要とする用途にも適応できる。
【0033】
検出経路は、レンズ素子アレイと検出点との間で更なる光学部品を横切ってもよい。
検出器経路は、照射ビームに沿う複数の位置で照射ビーム(または複数のビーム)とそれぞれ交わるように配置されてもよい。
【0034】
更に、これら複数の位置は、試料セルの側壁から複数の異なる距離にあってもよい。試料セルの側壁は、(照射ビームに沿って)光源に最も近いセルの側であって照射ビームと実質的に垂直な(すなわち、照射ビームに対する平行から15度以内の面法線を有する)
壁であってもよい。
【0035】
各検出器経路は、照射経路に沿う異なる位置で、および/または、試料セルの側壁から異なる距離で、照射経路と交わるように配置されてもよい。
試料セル内の異なる位置であるが同様の角度を成す検出経路を有する複数の光検出器を使用することは、1つまたは複数のチャンネルが塊状物(または、より大きな粒子)の存在によりゆがめられる場合に、塊状物またはフィルタ廃物がなくなるまで、当該チャンネル(または、当該複数のチャンネル)からのデータが廃棄されることを意味する。ただし、各チェンネルは独立して解析され得るので、塊状物を含まない残りのチャンネルでのデータ収集は継続してもよい。故に、この方法は、試料の準備や低品質な試料の影響を受けにくい。
【0036】
表面ゼータ電位を判断する方法は、表面に隣接して試料内で電場を形成することと、少なくとも一つの照射光ビームを試料に照射することと、試料中の粒子による照射光ビームからの散乱光を複数の検出器経路に沿って検出することと、を備える。各検出器経路は異なる光検出器に対応し、検出器経路は表面から異なる距離にある複数の測定位置に対応し、各検出器経路は照射光ビームに対して同じ角度を成す。方法は、検出された散乱光から表面ゼータ電位を判断することを備える。
【0037】
他の局面によると、粒子径または粒子径分布を判断する方法が提供され、方法は、少なくとも一つの照射光ビームを試料に照射することと、試料中の粒子による照射光ビームからの散乱光を、照射光ビームに対して同じ角度を成す複数の検出器経路に沿って検出し、検出器経路ごとに強度信号を生成することと、強度信号の自己相関演算を行って自己相関関数を生成することと、汚染物および/または大粒子に対応する強度信号および/または自己相関関数を特定することと、汚染物に対応しているものと特定されない自己相関関数を組み合わせて全自己相関関数を生成することと、全自己相関関数から粒子径または粒子径分布を判断することと、を備える。
【0038】
更に他の局面によると、粒子径または粒子径分布を判断する方法が提供され、方法は、少なくとも一つの照射光ビームを試料に照射することと、試料中の粒子による照射光ビームからの散乱光を複数の検出器経路に沿って検出することとを備え、各検出器経路は異なる光検出器に対応し、検出器経路は、試料セルの中心から異なる距離にある複数の測定位置に対応し、各検出器経路は、照射光ビームに対して同じ角度を成し、方法は、多重散乱および/または不十分な散乱を示す測定位置を除外することと、除外されていない測定位置から粒子径または粒子径分布を判断することとを備える。
【0039】
各実施形態または局面の特徴事項は、分離してまたは組み合わせて、各他の実施形態または局面の特徴事項と組み合わされてもよい。
「備える」、「有する」、「含む」等の用語は、他の要素や工程を除外しない。「一つの」という用語は、複数を除外しない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照にして例示的に記載される。
図1】従来の光散乱粒子特性評価装置の模式図である。
図2】一実施形態による一束のファイバを有する光散乱検出配置の模式図である。
図3】別の実施形態の模式図であり、一束のファイバが、移動ステージ上に取り付けられた焦点レンズを通過する複数の検出経路を規定する。
図4】光ファイバアレイの一例である。
図5】レンズ素子アレイの一例である。
図6】光ファイバを各光検出器に連結する配置の一例である。
図7】ピンホール開口アレイを有する一実施形態の模式図であり、複数の光検出器が焦点面アレイ中に構成され、各ピンホール開口は各光検出器への検出経路を規定する。
図8】一実施形態の模式図であり、各光ファイバの端部が異なる角度で配置され、側方散乱検出経路が焦点レンズにより試料中で焦点合わせされる。
図9】一実施形態の模式図であり、各光ファイバの端部が異なる角度で配置され、鋭角な散乱角度の検出経路(例えば、後方散乱や前方散乱)が焦点レンズにより試料中にて焦点合わせされる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下の記載において、一般に、同様の参照符号は、異なる実施形態の対応するまたは同様の特徴事項に言及するために用いられ、参照符号の最初の数字は、当該図面番号に対応するように増分される(例えば、110および210は、図1および図2の試料セルにそれぞれ対応する)。本明細書において、「後方散乱光」なる用語は、照射ビームの伝搬方向と反対の伝搬方向の要素を有する散乱光を指す。「前方散乱光」なる用語は、照射ビームの伝搬方向と同じ方向の伝搬方向の要素を有する散乱光を指す。「側方散乱光」なる用語は、照射ビームの伝搬方向と垂直な方向に散乱する光を指す。
【0042】
図1に示される従来の光散乱粒子特性評価装置100では、光源120が試料セル110内の試料115を照射する。光検出器140は、照射ビーム130と試料115との間の相互作用による散乱光を、照射ビーム130から角度160の検出器経路150に沿って受け取るように構成される。本例では、光ファイバ170は、検出器経路150からの光を光検出器140に結合するように構成されている。
【0043】
図2を参照して、粒子特性評価用の装置200の例示的な実施形態が図示されている。この装置200は、試料215を保持する試料セル210と、光源220と、複数の光検出器240、241、242と、複数の光ファイバ270、271、272と、レンズ素子アレイ290とを有する。
【0044】
光源220は、照射ビーム230を試料215に照射するように構成される。光検出器240、241、242のそれぞれは、照射ビーム230と試料215との間の相互作用による散乱光を、検出器経路250、251、252のそれぞれに沿って受け取るように構成される。検出器経路250、251、252のそれぞれは、照射ビーム230に対して実質的に同じ角度260を成す。光ファイバ270、271、272のそれぞれは、光検出器240、241、242のそれぞれに対応し、検出器経路250、251、252のそれぞれからの光を、対応する光検出器240、241、242のそれぞれに結合するように配置される。光ファイバ270、271、272のそれぞれは、検出器経路250、251、252のそれぞれからの散乱光を第一端部で受け取るように配置される。第一端部は、実質的に平行である。レンズ素子アレイ290は、検出器経路250、251、252のそれぞれに沿って散乱した光の、光ファイバ270、271、272のそれぞれに対する高い結合効率を提供する。検出器経路250、251、252は、レンズ素子アレイと検出点との間で更なる光学部品を横切ってもよい。
【0045】
明確性のため、各部品につき3つのみが記載されているが、より多くのまたはより少ない光検出器および対応する検出器経路を用いてもよい。
図3を参照して、粒子特性評価用の装置300の例示的な実施形態が図示される。図2と同様、装置300は、試料315を保持する試料セル310と、光源320と、複数の光検出器340、341、342と、複数の光ファイバ370、371、372と、レンズ素子アレイ395とを有する。
【0046】
本実施形態は、図2の実施形態の特徴事項のすべてを有するが、図2とは異なり、可動型レンズステージ335を移動させることにより、試料内の散乱体積の位置を調整してもよい。可動型レンズステージ335は、移動ステージ(例えば、電動式移動ステージ)上に取り付けられてもよい。照射ビーム330と検出ビーム経路350、351、352はいずれもレンズ335を通過する。そのため、レンズ335を動かすことで、照射ビーム330と検出ビーム経路350、351、352が試料315の中で交差する位置が変化する。いくつかの実施形態では、照射ビームと検出光経路のうちの少なくとも一方が可動型レンズ335を横切る(必ずしも、照射ビームと検出光経路の両方が可動型レンズ335を横切る必要はない)。
【0047】
別の配置(図示せず)では、可動型レンズ335(NIBSレンズまたは非侵襲的後方散乱レンズと呼ばれることもある)が省略され、代わりに、試料15内に複数の検出位置の静的範囲を設け、各検出位置が、検出ビーム経路350、351、352と照射ビーム330とが交差する点に対応するようにしてもよい。更に別の配置では、試料内の複数の検出位置が、試料315内で複数の検出点を前後に移動可能な光学的配置と組み合わされてもよい。低濃度の試料用の検出領域のための最適な位置は、試料セルの中心またはその近くに位置してもよい。これにより、試料セルの壁からの散乱寄与を低減でき、散乱信号を最大化できる。高濃度の(または混濁した)試料のための最適な位置はセル壁に近接してもよく、これにより、測定精度を低減し得る多重散乱を最小限に抑える。
【0048】
図3の配置では、光ファイバ370、371、372は、散乱体積位置調整手段335、395を介して試料セルに光学的に結合される。これにより、各照射光ビームと検出光ビームとが交差する点に関連付けられる散乱体積の位置が調整可能となる。散乱体積位置調整手段335、395は、可動型レンズ素子335に加えて更なる光学部品を有してもよい。レンズ素子アレイ395は、移動ステージ上に取り付けられてもよい。これにより、試料内における各検出経路の焦点が調整可能となり、結果、集光効率が向上し得る。
【0049】
図4を参照して、例示的な光ファイバアレイ401が図示される。ファイバアレイ401は、ファイバ470~478とファイバ支持部材42とを有する。各光ファイバ470~478の第一端部470a~478aは、一次元アレイの中に配置される。別の配置では、各光ファイバの第一端部470a~478aは、二次元アレイの中に配置されてもよい。矩形アレイや六角形パックアレイなど、どのような好都合な充填配置を用いてもよい。これらの第一端部470a~478aは、関連するクラッディング、バッファ、および/またはジャケットを取り除いた光ファイバコアから構成されてもよい。先に述べたように、ファイバ470~478の実装密度が上がり、結果として、小さな体積内で多数の検出位置を実現可能とする。ファイバ支持部材40は、V溝の配列によって光ファイバの第一端部470a~478aを支持する。
【0050】
図5を参照して、例示的なレンズ素子アレイ590が図示される。先に述べたように、レンズ素子アレイ590を介して光ファイバ270、271、272を試料セル210へ光結合することで、結合効率の最大化に貢献する。二次元アレイが図示されているが、アレイは、二次元レンズアレイまたは一次元レンズアレイのいずれかであってもよい。
【0051】
図6を参照して、光ファイバ670~678を各光検出器に連結する例示的な装置603が図示される。この装置は、図4の例示的なファイバアレイ401を有し、ファイバ支持部材602と、取付孔607によって取り付け可能なブレイクアウトボックス604と、ブレイクアウトボックスを光コネクタ609a~hに連結するための光ファイバ608a~hとを有する。これらのコネクタは、装置を別体の光検出器240、241、242(その他)に連結する。この配置では、光ファイバが、保護のためにポリエステル共重合体(例えば、Hybrel)で包まれる。
【0052】
図7を参照して、粒子特性評価用の装置700の例示的な実施形態が図示される。図3と同様に、装置700は、試料を保持するための試料セル710と、アレイ状に配置された複数の光検出器740と、レンズ素子アレイ790とを有する。
【0053】
図3と異なり、複数の照射ビーム730~733が試料を照射する。アレイ内の光検出器740のそれぞれは、照射ビーム730~733と試料との間の相互作用から生じる散乱光を、検出器経路750~755のそれぞれに沿って受け取るように構成される。各検出器経路750~755は、照射ビーム730~733に対して実質的に同じ角度を成す(この場合90度だが、他の任意の角度であってもよい)。ピンホール開口のアレイ780が用意される。各開口は、アレイ740中の光検出器に対応し、各検出器経路750~755からの光を対応する光検出器に結合するように配置される。レンズ素子アレイ790は、開口780を、各検出経路750~755に沿って散乱された光に結合する。検出経路は、ピンホール開口アレイ780と検出点740との間で更なる光部品を横切ってもよい。
【0054】
この例において、試料セル710は、(例えば、移動ステージ上に取り付けられて)照射ビーム730~733に対して垂直または平行に移動するように構成されてもよい。この配置により、三次元情報が取得可能となり、更には、この配置は、ゲル化領域、凝固、沈殿と充填など、二次元拡散係数データを必要とするいかなる用途にも適応できる。
【0055】
図8を参照して、粒子特性評価用の装置800の更なる実施形態が図示される。図3の実施形態と同様に、装置800は試料815を保持するための試料セル810と、光源(図示せず)と、複数の光検出器と、複数の光ファイバ871、872とを有する。
【0056】
また、光源は、照射ビーム830を試料815に照射するように構成され、各光検出器は、照射ビーム830と試料815との間の相互作用から生じる散乱光を、各検出器経路851、852に沿って受け取るように構成される。各検出器経路851、852は、照射ビーム830に対して実質的に同じ角度860を成す。各光ファイバ871、872は光検出器に対応し、各検出器経路851、852からの光を対応する光検出器に結合するように配置される。各光ファイバ871、872のそれぞれは、第一端部で各検出器経路851、852のそれぞれから散乱光を受け取るように配置される。
【0057】
図2とは異なり、光ファイバの第一端部は、実質的に平行というよりも、寧ろ異なる角度で方向付けられる。更に、検出器経路が、レンズ素子アレイではなく、寧ろ1枚の単レンズ893によって(試料セル810から)最初に屈折させられる。各光ファイバ871、872は、カップリングレンズ(例えば、屈折率分布型、すなわちGRINレンズ)891、892に関連付けられる。これらのカップリングレンズ891、892は、互いに不一致(例えば、異なるスポットサイズ、および/または異なる有効焦点距離を有する)であってもよく、および/または、各検出器経路851、852が各光ファイバ871、872に入る前に異なる角度で広がるように配置されてもよい。このような配置は、収束させられる照射ビーム830に沿って一致したビーム幅をもたらすように構成されてもよい。
【0058】
図9を参照して、粒子特性評価用の装置900の更なる実施形態が図示される。例示的な装置900は、図8の装置(800)と同じであるが、装置900は、図8に図示する90度の散乱に加え(または、それに代えて)鋭角の散乱に使用されてもよい。
【0059】
特定の実施形態が記載されているが、本発明の範囲を制限することを意図したものではなく、本発明の範囲は、付随する請求項を参照して判断されるべきである。特許請求の範囲内で多くの修正と変更が可能であり、それらは本発明に含まれることが意図される。
図1
図2
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図4
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図6
図7
図8
図9