(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】可塑剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/78 20060101AFI20240228BHJP
C08G 63/672 20060101ALI20240228BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C08G63/78
C08G63/672
C08L67/02
(21)【出願番号】P 2022175632
(22)【出願日】2022-11-01
【審査請求日】2022-11-01
(32)【優先日】2022-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】▲荘▼ 榮仁
(72)【発明者】
【氏名】陳 仲裕
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 榮祖
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/004320(WO,A1)
【文献】特開2004-161801(JP,A)
【文献】特開2012-025851(JP,A)
【文献】特開2013-234273(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111533889(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113004506(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00-63/91
C08L 1/00-101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二塩基酸と、二価アルコールと、触媒とを混合して、反応混合物を形成することと、
前記反応混合物を130℃~220℃の温度で反応させて、半製品を形成することと、
前記半製品に末端封止アルコールを添加して205℃~220℃の温度で反応させることによって、粗製可塑剤を形成することと、
前記粗製可塑剤を760トル~5トルの圧力で精製して、可塑剤を得ることと、
を含み、
前記二塩基酸は、コハク酸又はアジピン酸を少なくとも含み、
前記二価アルコールは、ジエチレングリコール及び2-メチル-1,3-プロパンジオールを含み、
前記末端封止アルコールは、エーテルアルコール又は炭素数が4以下の脂肪アルコールであり、
二塩基酸:二価アルコール:末端封止アルコールのモル比は、1:0.6~0.9:0.3~0.6である、
ことを特徴とする、可塑剤の製造方法。
【請求項2】
前記エーテルアルコールは、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル及びプロピレングリコールモノブチルエーテルからなる群から選択され、前記脂肪アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びn-ブタノールからなる群から選択される、請求項1に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項3】
前記二塩基酸は、コハク酸及びアジピン酸を含み、前記コハク酸の添加モル数は、前記アジピン酸の添加モル数以下であり、かつ前記コハク酸の前記二塩基酸に対するモル比は、0.2以上である、請求項1に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項4】
前記コハク酸:前記アジピン酸(モル比)は、1:1~1:4である、請求項3に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項5】
前記ジエチレングリコールの添加モル数は、前記2-メチル-1,3-プロパンジオールの添加モル数以下であり、且つ前記ジエチレングリコールの前記二価アルコールに対するモル比は、0.25以上である、請求項1に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項6】
前記ジエチレングリコールと前記2-メチル-1,3-プロパンジオールとの混合モル比(ジエチレングリコール:2-メチル-1,3-プロパンジオール)は、1:1~1:3である、請求項5に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項7】
前記反応混合物を、温度が130℃~220℃の加熱プロセスにおける複数の保持温度ステージのそれぞれで反応させ、
前記粗製可塑剤を、圧力が760トル~5トルの減圧プロセスにおける複数の低圧ステージのそれぞれで精製して、前記可塑剤を得る、請求項1に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項8】
複数の前記保持温度ステージは、それぞれ、所定温度が130℃~150℃の第1の保持温度ステージ、所定温度が150℃~170℃の第2の保持温度ステージ、所定温度が170℃~190℃の第3の保持温度ステージ、所定温度が190℃~205℃の第4の保持温度ステージ及び所定温度が205℃~220℃の第5の保持温度ステージである、請求項7に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項9】
前記半製品の酸価が70mgKOH/g~90mgKOH/gになった時に、前記加熱プロセスを中止する、請求項7に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項10】
前記粗製可塑剤の酸価が10mgKOH/g~30mgKOH/gになった時に、前記減圧プロセスを開始させる、請求項7に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項11】
複数の前記低圧ステージは、それぞれ、所定圧力が750トル~400トルの第1の低圧ステージ、所定圧力が400トル~300トルの第2の低圧ステージ、所定圧力が300トル~150トルの第3の低圧ステージ、所定圧力が150トル~20トルの第4の低圧ステージ及び所定圧力が20トル~10トルの第5の低圧ステージである、請求項7に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項12】
反応装置に前記二塩基酸、前記二価アルコール及び前記触媒を導入し、前記加熱プロセスにおいて前記末端封止アルコールを更に添加して前記反応混合物を形成する、請求項7に記載の可塑剤の製造方法。
【請求項13】
二塩基酸と、二価アルコールと、末端封止アルコールとから合成される可塑剤であって、
二塩基酸:二価アルコール:末端封止アルコール(モル比)は、1:0.6~0.9:0.3~0.6であり、
前記二塩基酸は、コハク酸及びアジピン酸を少なくとも含み、
前記二価アルコールは、ジエチレングリコール及び2-メチル-1,3-プロパンジオールを含み、
前記末端封止アルコールは、エーテルアルコール又は炭素数が4以下の脂肪アルコールであり、
前記可塑剤の表面張力は、37
mN/m~40
mN/mであることを特徴とする、可塑剤。
【請求項14】
前記可塑剤の粘度は、1500cps~3000cpsである、請求項13に記載の可塑剤。
【請求項15】
前記可塑剤の重量平均分子量は、2500g/mol~3500g/molである、請求項13に記載の可塑剤。
【請求項16】
前記エーテルアルコールは、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル及びプロピレングリコールモノブチルエーテルからなる群から選択され、前記脂肪アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びn-ブタノールからなる群から選択される、請求項13に記載の可塑剤。
【請求項17】
前記二塩基酸は、コハク酸及びアジピン酸を含み、前記コハク酸:前記アジピン酸(モル比)は、1:1~1:4である、請求項13に記載の可塑剤。
【請求項18】
前記ジエチレングリコールと前記2-メチル-1,3-プロパンジオールとの混合モル比(ジエチレングリコール:2-メチル-1,3-プロパンジオール)は、1:1~1:3である、請求項13に記載の可塑剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑剤及びその製造方法に関し、特に、高い表面張力を有する可塑剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可塑剤(Plasticizer)は、プラスチック材料、塗料、染料、接着剤、又は石膏の製造に広く使用されており、成形性を向上するため、可塑剤を添加することで、材料を液化したり、柔らかくしたりすることができる。現在、最も広く使用されている可塑剤はフタル酸エステル(Phthalates、PAEs)化合物であるが、長期間使用されると、フタル酸エステル化合物の安全性が常に疑問視されている。
【0003】
2008年では、欧州化学機関(European Chemicals Agency,ECHA)は、高懸念物質(substances of very high concern,SVHC)の候補物質リストとしてフタル酸エステルをリストしたと共に、製品に含まれたフタル酸エステルの含有量を、0.1wt%を超えないように規制した。規制されたフタル酸エステル化合物は、フタル酸ジ-n-ブチル(di-n-butyl phthalate,DBP)、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(bis(2-ethylhexyl)phthalate,DEHP)、及びフタル酸ブチルベンジル(benzyl butyl phthalate,BBP)を含む。このように、関連する分野では、従来のフタル酸エステル化合物を置換するように、環境に優しい可塑剤の開発が進んでいる。
【0004】
また、環境保護のために、下流の製造業者は徐々に水ベースのプロセスを採用する傾向が出てきた。水ベースのプロセスでは、さまざまな添加剤は、材料と均一に混合できるようにある程度の親水性を備えている必要があり、可塑剤も例外ではない。可塑剤の親水性が不十分になると、可塑剤の析出が起こりやすくなり、サイジングの悪さや印刷適性の不足など、製品の品質に悪影響を及ぼす。
【0005】
しかしながら、市販の環境にやさしい可塑剤の表面張力は33ダイン(dyne)~35ダイン(25℃)の範囲内であることが多いが、この表面張力の範囲に含まれる環境にやさしい可塑剤は、未だ水ベースのプロセスに効果的に応用することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、可塑剤及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、可塑剤の製造方法を提供する。可塑剤の製造方法は、二塩基酸と、二価アルコールと、触媒とを混合して、反応混合物を形成することと、反応混合物を130℃~220℃の温度で反応させて、半製品を形成することと、半製品に末端封止アルコールを添加して205℃~220℃の温度で反応させることによって、粗製可塑剤を形成することと、粗製可塑剤を760トル~5トルの圧力で精製して、可塑剤を得ることと、を含む。二塩基酸:二価アルコール:末端封止アルコールのモル比は、1:0.6~0.9:0.3~0.6であり、二塩基酸は、少なくともコハク酸又はアジピン酸を含み、二価アルコールは、ジエチレングリコール及び2-メチル-1,3-プロパンジオールを含み、前記末端封止アルコールは、エーテルアルコール又は炭素数が4以下の脂肪アルコールである。
【0008】
本発明の一つの実施形態において、エーテルアルコールは、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル及びプロピレングリコールモノブチルエーテルからなる群から選択される。脂肪アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びn-ブタノールからなる群から選択される。
【0009】
本発明の一つの実施形態において、二塩基酸はコハク酸及びアジピン酸を含み、コハク酸の添加モル数はアジピン酸の添加モル数以下であり、かつコハク酸の二塩基酸
に対するモル比は、0.2以上である。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、コハク酸:アジピン酸(モル比)は、1:1~1:4である。
【0011】
本発明の一つの実施形態において、ジエチレングリコールの添加モル数は、2-メチル-1,3-プロパンジオールの添加モル数以下であり、且つジエチレングリコールの二価アルコールに対するモル比は、0.25以上である。
【0012】
本発明の一つの実施形態において、ジエチレングリコールと2-メチル-1,3-プロパンジオールとの混合モル比(ジエチレングリコール:2-メチル-1,3-プロパンジオール)は、1:1~1:3である。
【0013】
本発明の一つの実施形態において、反応混合物を、温度が130℃~220℃の加熱プロセスにおける複数の保持温度ステージのそれぞれで反応させる。粗製可塑剤は、圧力が760トル~5トルの減圧プロセスにおける複数の低圧ステージのそれぞれで精製されて、可塑剤が得られる。
【0014】
本発明の一つの実施形態において、複数の保持温度ステージは、それぞれ、所定温度が130℃~150℃の第1の保持温度ステージ、所定温度が150℃~170℃の第2の保持温度ステージ、所定温度が170℃~190℃の第3の保持温度ステージ、所定温度が190℃~205℃の第4の保持温度ステージ及び所定温度が205℃~220℃の第5の保持温度ステージである。
【0015】
本発明の一つの実施形態において、半製品の酸価が70mgKOH/g~90mgKOH/gになった時に、加熱プロセスを中止する。
【0016】
本発明の一つの実施形態において、粗製可塑剤の酸価が10mgKOH/g~30mgKOH/gになった時に、減圧プロセスを開始する。
【0017】
本発明の一つの実施形態において、複数の低圧ステージは、それぞれ、所定圧力が750トル~400トルの第1の低圧ステージ、所定圧力が400トル~300トルの第2の低圧ステージ、所定圧力が300トル~150トルの第3の低圧ステージ、所定圧力が150トル~20トルの第4の低圧ステージ及び所定圧力が20トル~10トルの第5の低圧ステージである。
【0018】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、可塑剤を提供することである。可塑剤は、二塩基酸と、二価アルコールと、末端封止アルコールとから合成され、二塩基酸:二価アルコール:末端封止アルコールの(モル比)は、1:0.6~0.9:0.3~0.6であり、二塩基酸は、コハク酸及びアジピン酸を少なくとも含み、二価アルコールは、ジエチレングリコール及び2-メチル-1,3-プロパンジオールを含み、前記末端封止アルコールは、エーテルアルコール又は炭素数が4以下の脂肪アルコールであり、可塑剤の表面張力は、37ダイン~40ダインである。
【0019】
本発明の一つの実施形態において、可塑剤の色相のα値は、100未満である。
【0020】
本発明の一つの実施形態において、可塑剤の粘度は、1500cps~3000cpsである。
【0021】
本発明の一つの実施形態において、可塑剤の重量平均分子量は、2500g/mol~3500g/molである。
【0022】
本発明の一つの実施形態において、エーテルアルコールは、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル及びプロピレングリコールモノブチルエーテルからなる群から選択される。脂肪アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びn-ブタノールからなる群から選択される。
【0023】
本発明の一つの実施形態において、二塩基酸は、コハク酸及びアジピン酸を含み、コハク酸:アジピン酸(モル比)は、1:1~1:4である。
【0024】
本発明の一つの実施形態において、ジエチレングリコールと2-メチル-1,3-プロパンジオールとの混合モル比(ジエチレングリコール:2-メチル-1,3-プロパンジオール)は、1:1~1:3である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の有利な効果として、本発明に係る可塑剤及びその製造方法は、「二塩基酸はコハク酸又はアジピン酸を含む」、「二価アルコールはジエチレングリコール及び2-メチル-1,3-プロパンジオールを含む」、「末端封止アルコールはエーテルアルコール又は炭素数が4以下の脂肪アルコールである」といった技術特徴により、可塑剤の表面張力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係る可塑剤の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0028】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明の「可塑剤及びその製造方法」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用することができ、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲が制限されることはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0029】
本発明は、可塑剤及びその製造方法を提供する。本発明に係る可塑剤は、フタル酸エステルに属しないため、安全性の懸念が存在しない。本発明に係る可塑剤は、環境にやさしい可塑剤であると共に、高い表面張力を有し、水ベースのプロセスに応用することができる。具体的に説明すると、本発明の可塑剤の25℃で測定された表面張力は、38ダイン以上となる(39ダインを超えることが可能である)ことができ、すなわち、市販の環境に優しい可塑剤の表面張力(33ダイン~35ダイン)を超える。
【0030】
本発明の可塑剤は、特定の二塩基酸と、二価アルコールと、末端封止アルコールとから合成され、成分の選択によって、可塑剤全体の親水性を向上することができる。本発明において、可塑剤の親水性を定量化することによって可塑剤の表面張力を示す。
【0031】
図1に示すように、本発明に係る可塑剤の製造方法は、以下の工程を含む。工程S1において、150℃の温度かつ常圧に設定する反応装置に二塩基酸、二価アルコール及び触媒を導入して、反応混合物を形成する。
【0032】
前記二塩基酸は、コハク酸(succinic acid)又はアジピン酸(adipic acid)を含む。一つの実施形態において、二塩基酸はコハク酸及びアジピン酸からなる混合物であってもよく、コハク酸:アジピン酸(モル比)は、1:1~1:4であり、1:2~1:3.5であることが好ましい。例えば、コハク酸:アジピン酸(モル比)は、1:2.1、1:2.3、1:2.5、1:2.7、1:2.9、1:3.1又は1:3.3であってもよい。コハク酸及びアジピン酸を同時に用いる場合、可塑剤の構造を改善して、可塑剤の表面張力を向上させることができる。また、コハク酸及びアジピン酸の一方のみを用いる場合、このような効果がそれほど顕著でない。一つの実施態様において、コハク酸の添加モル数は、アジピン酸の添加モル数以下であり、かつコハク酸の二塩基酸に対するモル比は、0.2以上である。本発明では、可塑剤に含まれたコハク酸及びアジピン酸の含有量を制御することによって、可塑剤の構造を改善して、可塑剤の表面張力を向上させることができる。
【0033】
前記二価アルコールは、ジエチレングリコール(diethylene glycol)及び2-メチル-1,3-プロパンジオール(2-methyl-1,3-propanediol)を含む。即ち、二価アルコールは、ジエチレングリコール及び2-メチル-1,3-プロパンジオールで構成された混合アルコールであり、ジエチレングリコールと2-メチル-1,3-プロパンジオールとの混合モル比は、1:1~1:3であり、好ましくは、1:1.3~1:2.8である。例えば、ジエチレングリコールと2-メチル-1,3-プロパンジオールとの混合モル比は、1:1.5、1:1.7、1:1.9、1:2.1、1:2.3、1:2.5又は1:2.7であってもよい。ジエチレングリコール及び2-メチル-1,3-プロパンジオールを同時に用いる場合、可塑剤の構造を改善して、可塑剤の表面張力を向上させることができる。また、ジエチレングリコール及び2-メチル-1,3-プロパンジオールの一方のみを用いる場合、このような効果を達成できない。一つの実施態様において、ジエチレングリコールの添加モル数は、2-メチル-1,3-プロパンジオールの添加モル数以下であり、且つジエチレングリコールの二価アルコールに対するモル比は、0.25以上である。本発明では、可塑剤に含まれたジエチレングリコール及び2-メチル-1,3-プロパンジオールの含有量を制御することによって、可塑剤の構造を改善して、可塑剤の表面張力を向上させることができる。
【0034】
前記触媒は、チタン触媒、スズ触媒、ナトリウム触媒、亜鉛触媒又はマグネシウム触媒。前記触媒は具体的に、チタネート、酸化第一スズ、シュウ酸第一スズ、アルミン酸ナトリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウムからなる群から選択され、チタネートであることが好ましい。
【0035】
1つの実施態様において、工程S1において、反応装置に二塩基酸、二価アルコール及び触媒を先に導入して、反応混合物を形成する。
【0036】
工程S2において、反応混合物を加熱プロセスにおける複数の保持温度ステージで反応させることで、半製品を形成する。加熱プロセスにおいて、高温(100℃を超える)でエステル化反応による水分を蒸発させ、それによって、水分を除去する効果を果たせる。
【0037】
加熱プロセスの温度は、130℃~220℃の範囲内の任意の値であってもよい。本実施形態において、加熱プロセスの温度は、140℃~210℃である。この温度範囲から複数の所定温度を選択して、複数の保持温度ステージにおける規定の温度とする。一つの実施形態において、複数の所定温度は、前記温度の範囲の上限及び下限を含んでもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。すなわち、複数の所定温度は前記温度の範囲の上限及び下限を含まなくてもよい。所定温度の個数は、3以上であってもよく、4以上であることが好ましい。
【0038】
例えば、温度範囲が130℃~220℃である場合、複数の所定温度は130℃~220℃の範囲内の任意の温度であってもよく、例えば、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃又は210℃であってもよく、また、130℃~220℃(上限及び下限)を含んでもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0039】
反応混合物の反応速度を制御するために、本発明では、各保持温度ステージの温度を制御する。一つの実施態様において、加熱プロセスにおける複数の保持温度ステージは、低温から高温に順番に行い、それぞれ、第1の保持温度ステージ、第2の保持温度ステージ、第3の保持温度ステージ、第4の保持温度ステージ及び第5の保持温度ステージである。第1の保持温度ステージの所定温度は、130℃~150℃であり、第2の保持温度ステージの所定温度は、150℃~170℃であり、第3の保持温度ステージの所定温度は、170℃~190℃であり、第4の保持温度ステージの所定温度は、190℃~205℃であり、第5の保持温度ステージの所定温度は、205℃~220℃である。第1の保持温度ステージ、第2の保持温度ステージ、第3の保持温度ステージ、第4の保持温度ステージ及び第5の保持温度ステージの保持時間はそれぞれ、0.5時間~4時間である。
【0040】
加熱プロセスにおいて、保持温度ステージの保持時間は、所定温度の個数及び所定温度の間の差に基づいて調整する。具体的に説明すると、所定温度の個数が多い場合、保持温度ステージの保持時間を短縮することができ、一方、所定温度の個数が少ない場合、保持温度ステージの保持時間を延長することができる。所定温度の間の差が大きい場合、各保持温度ステージの保持時間を延長することができ、一方、所定温度の間の差が小さい場合、各保持温度ステージの保持時間を短縮することができる。
【0041】
前記加熱プロセスに亘って、反応混合物全体の平均加熱速度は、5℃/時間~8℃/時間である。
【0042】
加熱プロセスにおいて、不十分な重合による低分子量ポリマーを生成しないように、反応物を十分に反応・重合させる。低分子量ポリマーの生成は、最終の製品の粘度の均一性に悪影響を及ぼすため、可塑性の品質が均一に保たれない問題を起こす。また、その後に可塑剤を用いる場合、可塑剤に含まれた低分子量ポリマーが加工プロセスで滲出することがあるため、加工性が悪い問題を有する。
【0043】
連続的な加熱方式(即ち、反応器の温度は時間とともに連続的に変化する)で反応混合物を加熱すると、末端封止アルコールが最初に二塩基酸と反応して二塩基酸の末端酸基を置換することによって、重合反応が続いて進行することができなくなり、低分子量ポリマーが生成する可能性が高い。よって、本発明で複数の保持温度ステージを用いることによって、低分子量ポリマーの生成を低減する効果を果たせる。
【0044】
工程S3において、半製品の酸価が70mgKOH/g~90mgKOH/gになった時に、加熱プロセス(工程S2)を中止する。半製品に末端封止アルコールを添加すると共に、温度(205℃~220℃)を保持するように反応させて、粗製可塑剤を得る。末端封止アルコールの添加の時点を制御することによって、可塑剤の分子量を制御して、可塑剤の粘度を制御する効果を果たせる。
【0045】
前記末端封止アルコールは、炭素数が4以下の脂肪アルコール又はエーテルアルコールであってもよい。脂肪アルコールは、炭素数が1~4の脂肪アルコールであってもよく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はブタノールが挙げられる。説明すべきことは、末端封止アルコールが前記エーテルアルコール又は炭素数が4以下の脂肪アルコール(例えば、ブタノール)である場合には、可塑剤の表面張力を大幅に向上させることができる。
【0046】
エーテルアルコールは、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(diethylene glycol monomethyl ether)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(diethylene glycol monoethyl ether)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(diethylene glycol monobutyl ether)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(dipropylene glycol monomethyl ether)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(dipropylene glycol monoethyl ether)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(dipropylene glycol monobutyl ether)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(tripropylene glycol monomethyl ether)、エチレングリコールモノメチルエーテル(2-methoxyethanol)、エチレングリコールモノエチルエーテル(2-ethoxyethanol)、エチレングリコールモノブチルエーテル(2-butoxyethanol)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(propylene glycol monomethyl ether)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(propylene glycol monoethyl ether)及びプロピレングリコールモノブチルエーテル(propylene glycol monobutyl ether)からなる群から選択される。
【0047】
一つの実施態様において、ジカルボン酸:二価アルコール:末端封止アルコール(モル比)は、1:0.6~0.9:0.3~0.6であり、1:0.75~0.9:0.3~0.45であることが好ましく、1:0.85~0.89:0.32~0.43であることがより好ましい。
【0048】
説明すべきことは、上述の二塩基酸、二価アルコール及び末端封止アルコールを用いることによって、高い表面張力を有する可塑剤を合成することができる。特に、可塑剤の末端にある末端封止アルコールが高い親水性を有するため、可塑剤の表面張力を向上することができる。
【0049】
工程S4において、粗製可塑剤の酸価が10mgKOH/g~30mgKOH/gになった時に、粗製可塑剤に残りの末端封止アルコールを導入して、減圧プロセスを開始する。
【0050】
減圧プロセスにおいて、重合反応における低沸点物(即ち、低分子量ポリマー)を除去することができるため、可塑剤の粘度の均一性を維持することができる。このように、本発明の可塑剤は、加工性が優れ、低臭気、色相が優れる、という利点を有する。
【0051】
減圧プロセスの圧力は、760トル~5トルの範囲内の任意の値であってもよい。一つの実施態様において、減圧プロセスの圧力は、750トル~10トルである。この圧力範囲から複数の所定圧力を選択して、複数の低圧ステージにおける圧力とする。一つの実施形態において、複数の所定圧力は、前記圧力の範囲の上限及び下限を含んでもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。すなわち、複数の所定圧力は前記圧力の範囲の上限及び下限を含まなくてもよい。所定圧力の個数は、3以上であってもよく、4以上であることが好ましい。
【0052】
例えば、圧力の範囲が760トル~5トルである場合、複数の所定圧力は、760トル~5トルに含まれた任意な圧力であってもよく、例えば、750トル、700トル、600トル、500トル、400トル、300トル、200トル、100トル、50トル又は10トルであってもよく、また、760トル及び5トル(上限及び下限)を含んでもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0053】
半製品の精製効果を制御するために、本実施形態では、各低圧ステージの圧力を制御する。一つの実施態様において、減圧プロセスにおける複数の低圧ステージは、高圧から低圧に順番に行われ、それぞれ、第1の低圧ステージ、第2低圧ステージ、第3の低圧ステージ、第4の低圧ステージ及び第5の低圧ステージである。第1の低圧ステージの所定圧力は、760トル~450トルであり、第2の低圧ステージの所定圧力は、450トル~300トルであり、第3の低圧ステージの所定圧力は、300トル~200トルであり、第4の低圧ステージの所定圧力は、200トル~100トルであり、第5の低圧ステージの所定圧力は、100トル~5トルである。第1の低圧ステージ、第2の低圧ステージ、第3の低圧ステージ、第4の低圧ステージ及び第5の低圧ステージの保持時間はそれぞれ、0.5時間~3時間である。
【0054】
減圧プロセスにおいて、低圧ステージの保持時間は、所定圧力の個数及び所定圧力の間の差に基づいて調整する。具体的に説明すると、所定圧力の個数が多い場合、低圧ステージの保持時間を短縮することができ、一方、所定圧力の個数が少ない場合、低圧ステージの保持時間を延長することができる。所定圧力の間の差が大きい場合、各低圧ステージの保持時間を延長することができ、一方、所定圧力の間の差が小さい場合、各低圧ステージの保持時間を短縮することができる。
【0055】
前記減圧プロセスに亘って、半製品全体の平均減圧速度は、75トル/時間~125トル/時間である。
【0056】
工程S5において、反応装置からサンプリングして可塑剤の酸価を測定し、可塑剤の酸価が1mgKOH/g未満になった時に、真空引きで強く減圧する。例えば、反応装置の内部圧力を10トル未満にすることが挙げられるが、本発明はこれに制限されるものではない。次に、サンプリングして可塑剤の粘度を測定し、可塑剤の粘度が2500cps~3500cps(25℃)になった時に、反応を中止し、真空引きも停止すると共に、40℃に冷却して荷を下ろす。冷却した後に本発明の可塑剤が得られる。好ましい実施形態において、可塑剤の粘度が2800cps~3200cps(25℃)になる場合反応を中止する。
【0057】
上述した説明によれば、本発明に係る可塑剤の製造方法は、可塑剤の分子量及び粘度を制御することができるため、可塑剤に良好な加工性を与え、その後に、水性プラスチック材料、水性樹脂塗料又は他の水ベースのプロセスに応用するために有利となる。また、本発明に係る可塑剤の製造方法は、低分子量ポリマーの生成を低減するので、低分子量ポリマーのこの後の滲出を回避し、製品の品質に対する悪影響を回避する。
【実施例】
【0058】
[実験データの測定]
本発明で特定の末端封止アルコールを用いることで、可塑剤の表面張力を向上する効果を果たせることを証明するために、本発明では、前記工程S1~S5に基づいて、高い表面張力を有する実施例1~5の可塑剤を製造した。実施例1~5の主の相違点は、異なる種類の二塩基酸又は末端封止アルコールを用いたことである。具体的に説明すると、実施例1~3で二塩基酸としてコハク酸及びアジピン酸を用い、実施例4で二塩基酸としてコハク酸のみを用い、実施例5で二塩基酸としてアジピン酸を用い、実施例1、3~5で末端封止アルコールとしてエーテルアルコール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)を用い、実施例2で末端封止アルコールとして脂肪アルコール(ブタノール)を用いた。具体的な操作工程は、以下の通りであった。
【0059】
[実施例1]
アジピン酸215g(1.47モル)、コハク酸55g(0.47モル)、2-メチル-1,3-プロパンジオール100g(1.11モル)、ジエチレングリコール60g(0.57モル)及びチタン触媒0.5gを、反応装置に導入して、140℃、760トルの条件で反応させ、反応混合物を形成した。
【0060】
表1に示す複数の保持温度ステージに基づいて、反応混合物に工程S2での加熱プロセスを行うことで、半製品を生成した。加熱プロセスにおいて、反応による水及びアルコールを排出した。
【0061】
【0062】
半製品の酸価が90mgKOH/g未満になった時に、加熱プロセスを中止した。次に、半製品にジエチレングリコールモノメチルエーテル90g(0.67モル)を添加して、210℃に維持させることで、粗製可塑剤を生成した。実施例1において、ジカルボン酸:二価アルコール:末端封止アルコール(モル比)は、1:0.87:0.34である。
【0063】
粗製可塑剤の酸価が30mgKOH/g未満になった時に、反応装置に対して真空引きを行い、表2に示す複数の低圧ステージに基づいて、粗製可塑剤に工程S4における減圧プロセスを行うことで、可塑剤を得た。
【0064】
【0065】
可塑剤の酸価が1mgKOH/gになった時に、減圧プロセス(工程S4)を中止した。次に、反応装置に強く真空引きを行うことで、圧力を10トル未満にした。可塑剤の粘度が3000cpsを達成した後に、反応を停止して、真空引きも停止して、40℃に冷却した後に、実施例1の可塑剤を得た(工程S5)。
【0066】
[実施例2]
アジピン酸215g(1.47モル)、コハク酸55g(0.47モル)、2-メチル-1,3-プロパンジオール100g(1.11モル)、ジエチレングリコール60g(0.57モル)及びチタン触媒0.5gを、反応装置に導入して、140℃、760トルの条件で反応させ、反応混合物を形成した。
【0067】
実施例2が実施例1と類似するように、反応装置の温度が反応による発熱で150℃になった時に、表1に示す複数の保持温度ステージに基づいて、反応混合物に工程S2での加熱プロセスを行うことで、半製品を生成した。加熱プロセスにおいて、反応による水及びアルコールを排出した。
【0068】
半製品の酸価が90mgKOH/g未満になった時に、加熱プロセスを中止した。次に、半製品にブタノール55g(0.74モル)を添加して、210℃に維持させることで、粗製可塑剤を生成した。実施例2において、ジカルボン酸:二価アルコール:末端封止アルコール(モル比)は、1:0.87:0.38である。
【0069】
粗製可塑剤の酸価が30mgKOH/g未満になった時に、反応装置に対して真空引きを行い、表2に示す複数の低圧ステージに基づいて、粗製可塑剤に工程S4における減圧プロセスを行うことで、可塑剤を得た。
【0070】
可塑剤の酸価が1mgKOH/g未満になった時に、減圧プロセス(工程S4)を中止した。次に、反応装置に強く真空引きを行うことで、圧力を10トル未満にした。可塑剤の粘度が3000cpsを達成した後に、反応を停止して、真空引きも停止して、40℃に冷却した後に、実施例2の可塑剤を得た(工程S5)。
【0071】
[実施例3]
アジピン酸430g(2.94モル)、コハク酸110g(0.93モル)、2-メチル-1,3-プロパンジオール205g(2.27モル)、ジエチレングリコール120g(1.13モル)及びチタン触媒1gを、反応装置に導入して、140℃、760トルの条件で反応させ、反応混合物を形成した。実施例3が実施例1と類似するように、反応装置の温度が反応による発熱で150℃になった時に、表1に示す複数の保持温度ステージに基づいて、反応混合物に工程S2での加熱プロセスを行うことで、半製品を生成した。加熱プロセスにおいて、反応による水及びアルコールを排出した。
【0072】
半製品の酸価が90mgKOH/g未満になった時に、加熱プロセスを中止した。次に、半製品にジエチレングリコールモノメチルエーテル180g(1.50モル)に添加して、210℃に維持させることで、粗製可塑剤を生成した。
【0073】
実施例3における実施例1との相違点について、粗製可塑剤の酸価が20mgKOH/g未満になった時に、反応装置にジエチレングリコールモノメチルエーテル40gを更に補充したと共に、反応装置に対して500トルとなるように真空引きを行って、続いて3時間反応させた。次に、粗製可塑剤の酸価が10mgKOH/g未満になった時に、表2に示す複数の低圧ステージに基づいて、粗製可塑剤に工程S4における減圧プロセスを行うことで、可塑剤を得た。実施例3において、ジカルボン酸:二価アルコール:末端封止アルコール(モル比)は、1:0.88:0.42である。
【0074】
可塑剤の酸価が1mgKOH/g未満になった時に、減圧プロセス(工程S4)を中止した。次に、反応装置に全力で真空引きを行うことで、圧力を10トル未満にした。可塑剤の粘度が3000cpsを達成した後に、反応を停止して、真空引きも停止して、40℃に冷却した後に、実施例3の可塑剤を得た(工程S5)。
【0075】
[実施例4]
コハク酸225g(1.91モル)、2-メチル-1,3-プロパンジオール100g(1.11モル)、ジエチレングリコール60g(0.57モル)及びチタン触媒0.5gを、反応装置に導入して、140℃、760トルの条件で反応させ、反応混合物を形成した。
【0076】
実施例4が実施例1と類似するように、反応装置の温度が反応による発熱で150℃になった時に、表1に示す複数の保持温度ステージに基づいて、反応混合物に工程S2での加熱プロセスを行うことで、半製品を生成した。加熱プロセスにおいて、反応による水及びアルコールを排出した。
【0077】
半製品の酸価が90mgKOH/g未満になった時に、加熱プロセスを中止した。次に、半製品にジエチレングリコールモノエチルエーテル70g(0.78モル)を添加して、210℃に維持させることで、粗製可塑剤を生成した。実施例4において、ジカルボン酸:二価アルコール:末端封止アルコール(モル比)は、1:0.88:0.41である。
【0078】
粗製可塑剤の酸価が30mgKOH/g未満になった時に、反応装置に対して真空引きを行い、表2に示す複数の低圧ステージに基づいて、粗製可塑剤に工程S4における減圧プロセスを行うことで、可塑剤を得た。
【0079】
可塑剤の酸価が1mgKOH/g未満になった時に、減圧プロセス(工程S4)を中止した。次に、反応装置に全力で真空引きを行うことで、圧力を10トル未満にした。可塑剤の粘度が3000cpsを達成した後に、反応を停止して、真空引きも停止して、40℃に冷却した後に、実施例4の可塑剤を得た(工程S5)。
【0080】
[実施例5]
アジピン酸280g(1.92モル)、2-メチル-1,3-プロパンジオール100g(1.11モル)、ジエチレングリコール60g(0.57モル)及びチタン触媒0.5gを、反応装置に導入して、140℃、760トルの条件で反応させ、反応混合物を形成した。
【0081】
実施例5が実施例1と類似するように、反応装置の温度が反応による発熱で150℃になった時に、表1に示す複数の保持温度ステージに基づいて、反応混合物に工程S2での加熱プロセスを行うことで、半製品を生成した。加熱プロセスにおいて、反応による水及びアルコールを排出した。
【0082】
半製品の酸価が90mgKOH/g未満になった時に、加熱プロセスを中止した。次に、半製品にジエチレングリコールモノメチルエーテル70g(0.78モル)を添加して、210℃に維持させることで、粗製可塑剤を生成した。実施例5において、ジカルボン酸:二価アルコール:末端封止アルコール(モル比)は、1:0.88:0.41である。
【0083】
粗製可塑剤の酸価が30mgKOH/g未満になった時に、反応装置に対して真空引きを行い、表2に示す複数の低圧ステージに基づいて、粗製可塑剤に工程S4における減圧プロセスを行うことで、可塑剤を得た。
【0084】
可塑剤の酸価が1mgKOH/g未満になった時に、減圧プロセス(工程S4)を中止した。次に、反応装置に全力で真空引きを行うことで、圧力を10トル未満にした。可塑剤の粘度が3000cpsを達成した後に、反応を停止して、真空引きも停止して、40℃に冷却した後に、実施例5の可塑剤を得た(工程S5)。
【0085】
また、比較例1~3は、市販の可塑剤に表面張力の測定を行い、その結果を表3に示した。具体的に説明すると、比較例1は、南亞プラスチック社(NAN YA PLASTICS CORPORATION)製の可塑剤PD-15であり、比較例2は、原塑実業(Golden Chemical Corp.)製の可塑剤GL-8000であり、比較例3は、POLYNT社製の可塑剤POLYMIX(登録商標)208であった。
【0086】
実施例1~5及び比較例1~3に係る可塑剤の特性の比較は、下表3の通りである。なかでも、可塑剤の粘度は、25℃で粘度計を用いて測定した。表面張力の測定について、ダインペン(dyne test pen)を用いて、可塑剤の、硬度さ43PHR(parts per fundred resin)のPVCテープに付いた時の表面張力を測定した。
【0087】
【0088】
表3の内容によれば、本発明では、可塑剤を合成するための二塩基酸として、アジピン酸又はコハク酸を用い、可塑剤を合成するための二価アルコールとして、2-メチル-1,3-プロパンジオール及びジエチレングリコールを用いたことによって、可塑剤の表面張力(38dyne~40dyne)を向上することができた。このように、本発明の可塑剤は、従来のフタル酸エステル系可塑剤の代わりに、環境に優しい可塑剤として用いられる。また、本発明の可塑剤は、水ベースのプロセスに用いられる。
【0089】
本発明に係る可塑剤は、100未満の色相のα値を有するため、プラスチック材料に本発明の可塑剤を添加した後に、プラスチック材料の品質及び外観に悪影響を与えない。好ましくは、可塑剤の色相のα値は、40~95である。例えば、可塑剤の色相のα値は、45、50、55、60、65、70、75、80、85又は90であってもよい。
【0090】
本発明の可塑剤の25℃での粘度は、1500cps~3000cpsであるため、良好な加工性を有する。好ましくは、本発明の可塑剤の25℃での粘度は、1700cps~2500cpsである。例えば、本発明の可塑剤の25℃での粘度は、1800cps、1900cps、2000cps、2100cps、2200cps、2300cps又は2400cpsであってもよい。
【0091】
可塑剤の重量平均分子量は、2500g/mol~3500g/molであり、2600g/mol~3300g/molであることが好ましい。例えば、可塑剤の重量平均分子量は、2700g/mol、2800g/mol、2900g/mol、3000g/mol、3100g/mol又は3200g/molであってもよい。
【0092】
可塑剤の酸価は、0.1mgKOH/g~1mgKOH/gであり、0.2mgKOH/g~0.5mgKOH/gであることが好ましい。例えば、可塑剤の酸価は、0.25mgKOH/g、0.30mgKOH/g、0.35mgKOH/g、0.40mgKOH/g又は0.45mgKOH/gであってもよい。
【0093】
可塑剤のOH価は、0.5mgKOH/g~3mgKOH/gであり、0.5mgKOH/g~2mgKOH/gであることが好ましい。例えば、可塑剤のOH価は、0.75mgKOH/g、1.0mgKOH/g、1.25mgKOH/g、1.5mgKOH/g又は1.75mgKOH/gであってもよい。
【0094】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る可塑剤及びその製造方法は、「二塩基酸はコハク酸又はアジピン酸を含む」、「二価アルコールはジエチレングリコール及び2-メチル-1,3-プロパンジオールを含む」、「末端封止アルコールはエーテルアルコール又は炭素数が4以下の脂肪アルコールである」といった技術特徴により、可塑剤の表面張力を向上することができる。
【0095】
更に説明すると、本発明に係る可塑剤及びその製造方法は、「末端封止アルコールはエーテルアルコール又は炭素数が4以下の脂肪アルコールである」といった技術特徴により、可塑剤の外観品質を向上することができる。
【0096】
更に説明すると、本発明に係る可塑剤及びその製造方法は、「反応混合物はそれぞれ、加熱プロセスにおける複数の保持温度ステージで反応される」、「粗製可塑剤は、減圧プロセスにおける複数の低圧ステージで精製される」といった技術特徴により、可塑剤の外観品質を向上することができる。
【0097】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。