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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】情報処理装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20240228BHJP
   H04N 23/741 20230101ALI20240228BHJP
【FI】
H04N23/60 500
H04N23/741
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022197918
(22)【出願日】2022-12-12
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】柏山 英輝
(72)【発明者】
【氏名】和田 祐司
【審査官】吉田 千裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-012567(JP,A)
【文献】特開2018-056944(JP,A)
【文献】特開2015-092660(JP,A)
【文献】特開2020-198470(JP,A)
【文献】特開2014-175734(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110705336(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60
H04N 23/741
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子に配列された複数の画素を用いて撮像した撮像画像のデータを出力する撮像部と、
前記撮像部から出力された撮像画像のデータを一時的に記憶するメモリと、
前記メモリに記憶された撮像画像のデータを用いて処理を実行する第1プロセッサ及び第2プロセッサと、
を備え、
前記第1プロセッサは、
前記撮像部を制御することにより、前記撮像素子に配列された複数の画素を予め設定された複数種類の画素群ごとに異なる撮像条件に制御して撮像させ、撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータを用いて第1処理を実行し、
前記第2プロセッサは、
前記第1プロセッサの制御により前記撮像部により撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータのうち1種類の画素群の撮像画像のデータを用いて第2処理を実行し、
前記第2処理として、複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータのうち1種類の画素群の撮像画像のデータを用いて、当該撮像画像から人物の存在を検出する処理を実行し、
前記第2処理を繰り返し実行する際に、複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータのうち前記第2処理に用いる撮像画像のデータの画素群の種類を切り替え、
前記第2処理において人物の存在を検出した場合、次に前記第2処理を実行する際に、人物の存在を検出した撮像画像のデータと同一種類の画素群の撮像画像のデータを用いる、
情報処理装置。
【請求項2】
前記第2プロセッサは、
前記第2処理において人物の存在を検出しなかった場合、次に前記第2処理を実行する際に、人物の存在を検出しなかった画素群の撮像画像のデータとは異なる種類の画素群の撮像画像のデータに切り替える、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1プロセッサは、
前記撮像部を制御することにより、複数種類の画素群ごとに異なる露光時間に制御して撮像させる、
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第1プロセッサは、
前記第1処理として、異なる露光時間で撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータを合成することによりダイナミックレンジを拡張した画像のデータを生成する、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記撮像素子には、マトリクス状に複数の画素が配列されており、
前記複数種類の画素群は、前記撮像素子に配列されている複数の画素のうち一又は複数の行単位の画素群である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
撮像素子に配列された複数の画素を用いて撮像した撮像画像のデータを出力する撮像部と、前記撮像部から出力された撮像画像のデータを一時的に記憶するメモリと、前記メモリに記憶された撮像画像のデータを用いて処理を実行する第1プロセッサ及び第2プロセッサと、を備える情報処理装置における制御方法であって、
前記第1プロセッサが、
前記撮像部を制御することにより、前記撮像素子に配列された複数の画素を予め設定された複数種類の画素群ごとに異なる撮像条件に制御して撮像させるステップと、
撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータを用いて第1処理を実行するステップと、
前記第2プロセッサが、
前記第1プロセッサの制御により前記撮像部により撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータのうち1種類の画素群の撮像画像のデータを用いて第2処理を実行するステップと、
前記第2処理として、複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータのうち1種類の画素群の撮像画像のデータを用いて、当該撮像画像から人物の存在を検出する処理を実行するステップと、
前記第2処理を繰り返し実行する際に、複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータのうち前記第2処理に用いる撮像画像のデータの画素群の種類を切り替えるステップと、
前記第2処理において人物の存在を検出した場合、次に前記第2処理を実行する際に、人物の存在を検出した撮像画像のデータと同一種類の画素群の撮像画像のデータを用いるステップと、
を含む制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ(撮像部)が有する撮像素子は、露光時間を制御することにより、適切な明るさの画像を撮像する。暗い領域では露光時間を長くし、明るい領域では露光時間を短く設定することが一般的である。近年では、撮像素子に配列されている画素のラインによって露出(露光時間)を変更することにより、異なる露出の画像を合成してHDR(High Dynamic Range)画像を生成できるものがある(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、カメラ(撮像部)で撮像した画像に対して画像処理を行うことにより撮像画像内の情報を検出して利用する技術(所謂、CV:Computer Vision)も一般的に使用されるようになってきている(例えば、特許文献1参照)。例えば、情報処理装置は、カメラで撮像した画像から顔検出技術または顔認識技術などを用いて人物の存在を検出するHPD(Human Presence Detection)処理を行うものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-185349号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Vladimir Koifman/Atul Ingle、「Image Sensors World News and discussions about image sensors」、[online]、[令和4年10月19日検索]、インターネット<URL:http://image-sensors-world.blogspot.com/2013/01/sony-explains-hdr-video-mode-in-its.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、PC(Personal Computer)などの情報処理装置では、システムがカメラ機能を使用しているか否かに関わらず、上述したHPD処理を行う。システムがカメラ機能を使用している場合には、システムにより制御されたカメラ設定の撮像画像をHPD処理で用いることになる。例えば、システムがカメラ機能を使用してHDR画像を生成する場合、カメラ(撮像部)の撮像素子に配列されている画素のラインによって異なる露出(露光時間)に制御するため、HPD処理で用いる撮像画像もラインによって露出(露光時間)が異なる画像となる。この場合、HPD処理側でも、ラインによって露出(露光時間)が異なる画像からHDR画像を生成して人物の存在を検出するとなると、処理負荷及びコストへの影響が大きくなり好ましくない。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、処理負荷及びコストへの影響を抑えつつ、カメラ機能の使用状態に関わらず撮像画像を用いたHPD処理を適切に行うことができる情報処理装置、及び制御方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の第1態様に係る情報処理装置は、撮像素子に配列された複数の画素を用いて撮像した撮像画像のデータを出力する撮像部と、前記撮像部から出力された撮像画像のデータを一時的に記憶するメモリと、前記メモリに記憶された撮像画像のデータを用いて処理を実行する第1プロセッサ及び第2プロセッサと、を備え、前記第1プロセッサは、前記撮像部を制御することにより、前記撮像素子に配列された複数の画素を予め設定された複数種類の画素群ごとに異なる撮像条件に制御して撮像させ、撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータを用いて第1処理を実行し、前記第2プロセッサは、前記第1プロセッサの制御により前記撮像部により撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータのうち1種類の画素群の撮像画像のデータを用いて第2処理を実行する。
【0009】
上記情報処理装置において、前記第2プロセッサは、前記第2処理として、複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータのうち1種類の画素群の撮像画像のデータを用いて、当該撮像画像から人物の存在を検出する処理を実行してもよい。
【0010】
上記情報処理装置において、前記第2プロセッサは、前記第2処理を繰り返し実行する際に、複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータのうち前記第2処理に用いる撮像画像のデータの画素群の種類を切り替えてもよい。
【0011】
上記情報処理装置において、前記第2プロセッサは、前記第2処理において人物の存在を検出した場合、次に前記第2処理を実行する際に、人物の存在を検出した撮像画像のデータと同一種類の画素群の撮像画像のデータを用いてもよい。
【0012】
上記情報処理装置において前記第2プロセッサは、前記第2処理において人物の存在を検出しなかった場合、次に前記第2処理を実行する際に、人物の存在を検出しなかった画素群の撮像画像のデータとは異なる種類の画素群の撮像画像のデータに切り替えてもよい。
【0013】
上記情報処理装置において、前記第1プロセッサは、前記撮像部を制御することにより、複数種類の画素群ごとに異なる露光時間に制御して撮像させてもよい。
【0014】
上記情報処理装置において、前記第1プロセッサは、前記第1処理として、異なる露光時間で撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータを合成することによりダイナミックレンジを拡張した画像のデータを生成してもよい。
【0015】
上記情報処理装置において、前記撮像素子には、マトリクス状に複数の画素が配列されており、前記複数種類の画素群は、前記撮像素子に配列されている複数の画素のうち一又は複数の行単位の画素群であってもよい。
【0016】
また、本発明の第2態様に係る、撮像素子に配列された複数の画素を用いて撮像した撮像画像のデータを出力する撮像部と、前記撮像部から出力された撮像画像のデータを一時的に記憶するメモリと、前記メモリに記憶された撮像画像のデータを用いて処理を実行する第1プロセッサ及び第2プロセッサと、を備える情報処理装置における制御方法は、前記第1プロセッサが、前記撮像部を制御することにより、前記撮像素子に配列された複数の画素を予め設定された複数種類の画素群ごとに異なる撮像条件に制御して撮像させるステップと、撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータを用いて第1処理を実行するステップと、前記第2プロセッサが、前記第1プロセッサの制御により前記撮像部により撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータのうち1種類の画素群の撮像画像のデータを用いて第2処理を実行するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明の上記態様によれば、処理負荷及びコストへの影響を抑えつつ、カメラ機能の使用状態に関わらず撮像画像を用いたHPD処理を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態に係る情報処理装置の外観を示す斜視図。
図2】第1の実施形態に係る情報処理装置の人物の検出範囲の一例を示す図。
図3】第1の実施形態に係る情報処理装置のHPD処理の概要を説明する図。
図4】第1の実施形態に係る撮像素子における露光時間の制御を説明する模式図。
図5】第1の実施形態に係るHPD処理における検出用画像の生成方法を説明する模式図。
図6】第1の実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示すブロック図。
図7】第1の実施形態に係るHPD処理の一例を示すフローチャート。
図8】第2の実施形態に係るHPD処理におけるラインの切り替え処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
本実施形態に係る情報処理装置1は、例えば、ノートブック型のPC(Personal Computer;パーソナルコンピュータ)である。なお、情報処理装置1は、デスクトップ型PC、タブレット端末装置、スマートフォンなど、いずれの形態の情報処理装置であってもよい。
【0020】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置の外観を示す斜視図である。図示する情報処理装置1は、クラムシェル型のノートPC(Personal Computer)である。情報処理装置1は、第1筐体101、第2筐体102、及びヒンジ機構103を備えている。第1筐体101及び第2筐体102は、略四角形の板状(例えば、平板状)の筐体である。第1筐体101の側面の一つと第2筐体102の側面の一つとがヒンジ機構103を介して結合(連結)されており、ヒンジ機構103がなす回転軸の周りに第1筐体101と第2筐体102とが相対的に回動可能である。
【0021】
第1筐体101と第2筐体102との回転軸の周りの開き角θ(ヒンジ角度)が略0°の状態が、第1筐体101と第2筐体102とが重なり合って閉じた状態(「閉状態」と称する)である。閉状態において第1筐体101と第2筐体102との互いに対面する側の面を、それぞれの「内面」と呼び、内面に対して反対側の面を「外面」と称する。開き角θとは、第1筐体101の内面と第2筐体102の内面とがなす角とも言うことができる。閉状態に対して第1筐体101と第2筐体102とが開いた状態のことを「開状態」と称する。開状態とは、開き角θが予め設定された閾値(例えば、10°)より大きくなるまで、第1筐体101と第2筐体102とが相対的に回動された状態である。なお、一般的な情報処理装置1の使用状態では、開き角θは、例えば90°~140°程度となることが多い。
【0022】
第1筐体101の内面には、表示部140が設けられている。表示部140は、情報処理装置1において実行される処理に基づく画像を表示する。また、第2筐体102の内面には、キーボード130が設けられている。キーボード130は、ユーザの操作を受け付ける入力デバイスとして設けられている。閉状態では、表示部140が視認できない状態、且つキーボード130への操作ができない状態となる。一方、開状態では、表示部140が視認可能な状態、且つキーボード130への操作が可能な状態(即ち、情報処理装置1を使用可能な状態)となる。
【0023】
また、第1筐体101の内面のうち表示部140の周縁の領域に、カメラ110が設けられている。カメラ110は、第1筐体101の内面(表示部140の表示画面)に対面する方向を撮像可能な位置に設けられている。即ち、カメラ110は、情報処理装置1を使用するユーザを撮像可能な位置に設けられている。例えば、情報処理装置1は、カメラ110が撮像画像から人物を検出することにより、情報処理装置1を使用するユーザの存在の有無を検出する。
【0024】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置1の人物の検出範囲の一例を示す図である。図示する例において、第1筐体101の内面に対面する方向の検出範囲FoV(Field of View:検出視野角)が、人物の検出が可能な範囲である。検出範囲FoVは、カメラ110が撮像する画角に相当する。以下では、開状態において第1筐体101の内面に対面する方向を、情報処理装置1の前方と称する。情報処理装置1は、カメラ110が撮像する撮像画像から人物または人物の顔が撮像された画像領域を検出することにより、情報処理装置1の前方に人物が存在するか否かを検出する。ここで、人物の存在を検出する処理のことを、HPD(Human Presence Detection)処理と称する。
【0025】
また、情報処理装置1は、HPD処理による人物の存在の検出結果に基づいて、システムの動作状態を制御する。システムの動作状態としては、少なくとも通常動作状態(パワーオン状態)と待機状態とがある。通常動作状態とは、特に制限なく処理の実行が可能な動作状態であり、例えば、ACPI(Advanced Configuration and Power Interface)で規定されているS0状態に相当する。待機状態とは、システム処理の少なくとも一部が制限されている状態である。例えば、待機状態は、スタンバイ状態、スリープ状態等であってもよく、Windows(登録商標)におけるモダンスタンバイや、ACPIで規定されているS3状態(スリープ状態)等に相当する状態であってもよい。また、待機状態には、少なくとも表示部の表示がOFF(画面OFF)となる状態、または画面ロックとなる状態が含まれてもよい。画面ロックとは、処理中の内容が視認できないように予め設定された画像(例えば、画面ロック用の画像)が表示部に表示され、ロックを解除(例えば、ユーザ認証)するまで、使用できない状態である。
【0026】
図3は、本実施形態に係る情報処理装置1のHPD処理の概要を説明する図である。情報処理装置1は、HPD処理により人物の存在の有無を検出し、検出結果に基づいて情報処理装置1のシステムの動作状態を制御する。例えば図3(A)に示すように、情報処理装置1は、待機状態において、情報処理装置1の前方に人物が存在しない状態(Absence)から存在する状態(Presence)への変化、即ち情報処理装置1へ人物が接近したこと(Approach)を検出した場合、自動でシステムを起動して通常動作状態へ遷移させる。また図3(B)に示すように、情報処理装置1は、通常動作状態において情報処理装置1の前方に人物が存在している状態(Presence)を検出している場合、通常動作状態を継続させる。そして図3(C)に示すように、情報処理装置1は、通常動作状態において情報処理装置1の前方に人物が存在している状態(Presence)から存在しない状態(Absence)への変化、即ち情報処理装置1から人物が離脱したこと(Leave)を検出した場合には、自動でシステムを待機状態へ遷移させる。
【0027】
カメラ10は、上述のHPD処理にも使用されるが、システムによるカメラ機能として静止画または動画などの撮像画像(撮影画像)を得るためにも使用される。カメラ10に備えられている撮像素子(イメージセンサ)は、露光時間を制御(例えば、電子シャッター制御)することにより、適切な明るさの画像を撮像することができる。暗い場面では長い露光時間に制御し、明るい場面では短い露光時間に制御することが一般的である。また、カメラ10に備えられている撮像素子は、撮像素子に配列された複数の画素を2種類の画素群に分けて異なる2種類の露光時間で撮像して合成することによりHDR(High Dynamic Range)画像を生成できる。
【0028】
図4は、本実施形態に係る撮像素子における露光時間の制御を説明する模式図である。この図は、撮像素子112に配列された複数の画素の一部を図示している。撮像素子112には、R(赤)の波長帯を透過するカラーフィルタが設けられたR画素、G(緑)の波長帯を透過するカラーフィルタが設けられたG画素、およびB(青)の波長帯を透過するカラーフィルタが設けられたB画素がマトリクス状に配列されている。撮像素子112は、RGBのカラーフィルタを介して入射される可視光を光電変換したRGB画像(可視光画像)信号を出力する。
【0029】
例えば、撮像素子112は、R画素-G画素のRG列とG画素-B画素のGB列とが交互に繰り返されるベイヤ配列のイメージセンサである。隣接するRG列とGB列との組みが行単位で1ラインの画素群を構成する。HDR画像の生成を行わない通常撮影時には、撮像素子112に配列された複数の画素は同一の露光時間に制御される。図4の(A)は、低照度の条件(暗い場面)の通常撮影であり、長い露光時間に制御されることを示している。図4の(B)は、標準的な照度の条件(通常の明るさの場面)の通常撮影であり、図4の(A)に対して短い露光時間に制御されることを示している。
【0030】
一方、HDR画像を生成する際には、図4(C)に示すように、1ラインごとに(1行単位で)異なる2種類の露光時間に制御される。例えば、奇数ラインは、明るい部分に優先して露出を合わせるように短い露光時間に制御される。偶数ラインは、暗い部分に優先して露出を合わせるように長い露光時間に制御される。短い露光時間の奇数ラインで撮像された画像と長い露光時間の偶数ラインで撮像された画像とを合成することにより、HDR画像を生成できる。
【0031】
ここで、システムがカメラ機能としてカメラ10を使用しているか否かにかかわらず、HPD処理を行うには、上述のカメラ10がHDR画像の生成のためにラインごとに異なる2種類の露光時間に制御される場合がある。ラインごとに露光時間が異なる画像のままではHPD処理において人物の検出ができない。仮に、HPD処理でもラインごとに露光時間が異なる画像を合成してHDR画像を生成するとなると、処理負荷及びコストへの影響が大きくなってしまう。そこで、本実施形態に係るHPD処理では、奇数ラインで撮像された画像と偶数ラインで撮像された画像とのいずれか一方のみを用いて人物検出用の画像を生成する。
【0032】
図5は、本実施形態に係るHPD処理における検出用画像の生成方法を説明する模式図である。例えば、HPD処理では、フレームごとに奇数ラインで撮像された画像と偶数ラインで撮像された画像とのいずれか一方のみを用いて検出用画像を生成し、フレームごとに奇数ラインと偶数ラインとを交互に切り替える。図示する例では、Nフレーム(Nは正の整数)では奇数ラインで撮像された画像のみを用いて検出用画像を生成し、N+1フレームでは偶数ラインで撮像された画像のみを用いて検出用画像を生成し、N+2フレームでは奇数ラインで撮像された画像のみを用いて検出用画像を生成し、N+3フレームでは偶数ラインで撮像された画像のみを用いて検出用画像を生成する。以降もフレームごとに奇数ラインと偶数ラインとを交互に切り替える。
【0033】
これにより、検出用画像としては、同一の露光時間に制御された画像で撮像された画像となるため人物の検出が可能である。また、奇数ラインと偶数ラインとで露光時間が異なるため、明るい場面では露光時間の短い奇数ラインの方が偶数ラインより人物の検出に適しており、暗い場面では露光時間の長い偶数ラインの方が奇数ラインより人物の検出に適している。情報処理装置1の前方に人物が存在する場合、その場面の明るさによって、奇数ラインによる検出用画像と偶数ラインによる検出用画像とのいずれか一方又は両方で人物を検出することが可能である。
【0034】
なお、検出用画像は、奇数ラインと偶数ラインのいずれか一方のみを用いて1ラインごとに間引かれた画像となるため、両方のライン(全ライン)を用いた画像に比較すると解像度は低くなる。しかし、人物の検出は、人物や顔のアウトライン、顔の目などを検出できればよいため、一般的な使用される撮像素子の画素数からすると問題なく検出可能である。
【0035】
例えば、情報処理装置1は、システムがカメラ機能としてカメラ10を使用しているか否かにかかわらず、奇数ラインで撮像された画像と偶数ラインで撮像された画像とのいずれか一方のみを用いてHPD処理を行う。これにより、情報処理装置1は、システムがカメラ機能やHDR機能を使用しているか否かを意識することなく、且つHDR画像を生成する処理負荷及びコストをかけることなく、撮像画像を用いたHPD処理を適切に行うことができる。
【0036】
また、情報処理装置1は、HPD処理を繰り返し実行する際に、実行するごと(例えばフレームごと)に奇数ラインと偶数ラインとを交互に切り替えるため、奇数ラインと偶数ラインとのいずれか一方の露出が適正できないことによって人物の検出ができない場合でも、他方で人物の検出が可能である。
【0037】
次に、本実施形態に係る情報処理装置1の構成について詳しく説明する。
[情報処理装置の構成]
図6は、本実施形態に係る情報処理装置1の構成の一例を示すブロック図である。この図において、図1、2の各部に対応する構成には同一の符号を付している。情報処理装置1は、カメラ110と、HPD処理部120と、キーボード130と、表示部140と、システム処理部150と、記憶部160と、EC170と、電源回路180と、バッテリ190とを備えている。
【0038】
カメラ110は、レンズ111および撮像素子112を備えている。撮影対象からの光がレンズ111により集光されて撮像素子112へ入射される。撮像素子112は、図4及び図5を参照して説明したように、例えばR画素、G画素、及びB画素が配列されたイメージセンサである。カメラ110は、撮影対象からレンズ111を介して撮像素子112へ入射された光に基づいて撮像した撮像画像(RGB画像)のデータを出力する。
【0039】
HPD処理部120は、カメラ110により撮像された撮像画像に対して画像処理を行うことにより撮像画像内の情報を検出して利用する、所謂CV(Computer Vision)の処理を実行するプロセッサの一例である。例えば、HPD処理部120は、カメラ110により撮像された撮像画像のデータを用いて人物の存在を検出するHPD処理を実行し、検出結果をシステム処理部150へ送信する。
【0040】
具体的には、HPD処理部120は、カメラ110により撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータのうち1種類の画素群の撮像画像のデータを用いてHPD処理を実行する。一例として、複数種類の画素群は、撮像素子112に配列されている複数の画素のうち一又は複数のラインごと(行単位)の画素群である。例えば図5を参照して説明したように、HPD処理部120は、奇数ラインの画素群により撮像された画像と、偶数ラインの画素群により撮像された画像とのいずれか一方のみを用いて人物検出用の検出用画像を生成する。そして、HPD処理部120は、生成した検出用画像から人物または人物の顔が撮像された画像領域を検出することによりHPD処理を実行する。また、HPD処理部120は、フレームごとに奇数ラインと偶数ラインとを交互に切り替えて検出用画像を生成し、生成した検出用画像を用いてHPD処理を実行する。
【0041】
キーボード130は、ユーザの操作を受け付ける複数のキー(操作子)が配列された入力デバイスである。キーボード130は、図1に示すように、第2筐体102の内面に設けられている。キーボード130は、ユーザの操作により入力された入力情報(例えば、操作されたキーを示す操作信号)をEC170へ出力する。
【0042】
表示部140は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイを含んで構成され、システム処理部150が実行する処理に基づく表示画像を表示する。
【0043】
システム処理部150は、CPU(Central Processing Unit)151、GPU(Graphic Processing Unit)152、メモリコントローラ153、I/O(Input-Output)コントローラ154、システムメモリ155と、画像処理部156とを備えている。
【0044】
CPU151は、BIOSおよびOSなどのシステムによる処理や、OS上で動作するアプリケーションプログラムによる処理を実行する。例えば、CPU151は、HPD処理部120による人物の存在の検出結果に基づいて、システムの動作状態を制御する。
GPU152は、CPU151の制御に基づいて表示部140に表示させる表示画像のデータを生成し、生成した表示画像のデータを表示部140に出力する。
【0045】
メモリコントローラ153は、CPU151とGPU152の制御により、システムメモリ155または記憶部160からのデータの読出しや書込みを制御する。
I/Oコントローラ154は、表示部140およびEC170からのデータの入出力を制御する。
システムメモリ155は、プロセッサの実行プログラムの読み込み領域ならびに処理データを書き込む作業領域として用いられる。また、システムメモリ155は、カメラ110により撮像された撮像画像のデータ、撮像画像に対して画像処理が行われたデータなどを一時的に記憶する。
【0046】
画像処理部156は、カメラ110を制御することにより、所定の撮像条件で撮像された撮像画像のデータを取得し、取得した撮像画像のデータに対して画像処理を実行するIPU(Image Processing Unit)の一例である。例えば、画像処理部156は、通常撮影時には、撮像素子112に配列された複数の画素を同一の撮像条件(例えば、同一の露光時間)に制御して撮像させ、撮像された撮像画像のデータを用いて1枚の撮影画像を生成する画像処理を行う。
【0047】
一方、画像処理部156は、HDR画像を生成(HDR撮影)する際には、予め設定された複数種類の画素群ごとに異なる撮像条件に制御して撮像させ、撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータを用いて1枚のHDR画像(HDR撮影画像)を生成する画像処理を行う。例えば、撮像素子112に配列された複数の画素を奇数ラインと偶数ラインとで異なる露光時間に制御して撮像させ、撮像された奇数ラインの撮像画像のデータと偶数ラインの撮像画像のデータとを合成することによりHDR画像を生成する。
【0048】
記憶部160は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、セキュアNVRAM(Non-Volatile RAM)、ROM(Read Only Memory)などの記憶媒体を含んで構成される。HDDまたはSSDは、例えばOS、デバイスドライバ、アプリケーションなどの各種のプログラムや、各種のデータなどを記憶する。例えば、カメラ110により撮像された撮像画像のデータに対して画像処理部156が画像処理を行って生成した撮影画像(或いは、HDR撮影画像)のデータを所定のファイル形式(JPEGなど)で記憶する。
【0049】
EC170は、各種デバイス(周辺装置やセンサ等)を監視して制御するワンチップマイコン(One-Chip Microcomputer)である。EC170は、不図示のCPU、ROM、RAM、複数チャネルのA/D入力端子、D/A出力端子、タイマ、及びデジタル入出力端子を備える。EC170のデジタル入出力端子には、例えば、キーボード130、電源回路180などが接続されている。EC170は、キーボード130からの入力情報(操作信号)を受け取る。また、EC170は、電源回路180などの動作を制御する。
【0050】
電源回路180は、例えば、DC/DCコンバータ、充放電ユニットなどを含んで構成されている。例えば、電源回路180は、ACアダプタ(不図示)などの外部電源又はバッテリ190から供給される直流電圧を、情報処理装置1を動作させるために必要な複数の電圧に変換して、EC170からの制御に基づいて情報処理装置1の各部に給電する。
【0051】
バッテリ190は、例えばリチウムバッテリであり、外部電源から給電されている場合には電源回路180を介して充電され、外部電源から給電されていない場合には電源回路180を介して充電された電力を情報処理装置1の各部を動作させるための電力として放電する。
【0052】
[HPD処理の動作]
次に、図7を参照して、HPD処理部120が実行するHPD処理の動作について説明する。図7は、本実施形態に係るHPD処理の一例を示すフローチャートである。
【0053】
(ステップS101)HPD処理部120は、検出用画像として奇数ラインを選択してステップS103の処理へ進む。
【0054】
(ステップS103)HPD処理部120は、選択されたライン(奇数ライン)の画素群により撮像された画像から検出用画像を生成し、生成した検出用画像を用いてHPD処理を実行する。そして、ステップS105の処理へ進む。
【0055】
(ステップS105)HPD処理部120は、ステップS103のHPD処理による検出結果に基づいて、奇数ラインの検出用画像から人物の存在が検出された(HPD=True)か否かを判定する。HPD処理部120は、奇数ラインの検出用画像から人物の存在が検出されたと判定した場合(YES)、ステップS107の処理へ進む。一方、HPD処理部120は、奇数ラインの検出用画像から人物の存在が検出されないと判定した場合(NO)、ステップS109の処理へ進む。
【0056】
(ステップS107)HPD処理部120は、ステップS105で奇数ラインの検出用画像から人物の存在が検出されたと判定された場合、当該検出結果を採用して情報処理装置1の前方に人物(ユーザ)が存在すると判定する(HPD=True)。そして、ステップS119の処理へ進む。ステップS119では、HPD処理部120は、次のフレームの検出用画像の選択ラインを切り替える(例えば、奇数ラインから偶数ラインに切り替える)。そして、ステップS103の処理へ戻り、HPD処理部120は、次のフレームでは、偶数ラインの画素群により撮像された画像から検出用画像を生成してHPD処理を実行する。
【0057】
(ステップS109)HPD処理部120は、ステップS105で奇数ラインの検出用画像から人物の存在が検出されないと判定された場合、次のフレームの検出用画像の選択ラインを切り替える(例えば、奇数ラインから偶数ラインに切り替える)。そして、ステップS111の処理へ進む。
【0058】
(ステップS111)HPD処理部120は、次のフレームでは、偶数ラインの画素群により撮像された画像から検出用画像を生成し、生成した検出用画像を用いてHPD処理を実行する。そして、ステップS113の処理へ進む。
【0059】
(ステップS113)HPD処理部120は、ステップS111のHPD処理による検出結果に基づいて、偶数ラインの検出用画像から人物の存在が検出された(HPD=True)か否かを判定する。HPD処理部120は、偶数ラインの検出用画像から人物の存在が検出されたと判定した場合(YES)、ステップS115の処理へ進む。一方、HPD処理部120は、偶数ラインの検出用画像から人物の存在が検出されないと判定した場合(NO)、ステップS117の処理へ進む。
【0060】
(ステップS115)HPD処理部120は、ステップS113で偶数ラインの検出用画像から人物の存在が検出されたと判定された場合、当該検出結果を採用して情報処理装置1の前方に人物(ユーザ)が存在すると判定する(HPD=True)。そして、ステップS109の処理へ進み、HPD処理部120は、次のフレームの検出用画像の選択ラインを切り替え(例えば、偶数ラインから奇数ラインに切り替え)、ステップS103の処理へ戻る。
【0061】
(ステップS113)HPD処理部120は、ステップS109で偶数ラインの検出用画像から人物の存在が検出されないと判定された場合、奇数ラインと偶数ラインとのいずれの検出用画像からも人物の存在が検出されないため、情報処理装置1の前方に人物(ユーザ)が存在しないと判定する(HPD=Faluse)。そして、ステップS109の処理へ進み、HPD処理部120は、次のフレームの検出用画像の選択ラインを切り替え(例えば、偶数ラインから奇数ラインに切り替え)、ステップS103の処理へ戻る。
【0062】
このように、HPD処理部120は、奇数ラインの検出用画像と偶数ラインの検出用画像との少なくとも一方から人物の存在が検出された場合には、情報処理装置1の前方に人物(ユーザ)が存在すると判定する。また、HPD処理部120は、奇数ラインの検出用画像と偶数ラインの検出用画像とのいずれからも人物の存在が検出されなかった場合には、情報処理装置1の前方に人物(ユーザ)が存在しないと判定する。
【0063】
[第1の実施形態のまとめ]
以上説明してきたように、本実施形態に係る情報処理装置1は、撮像素子112に配列された複数の画素を用いて撮像した撮像画像のデータを出力するカメラ110(撮像部の一例)と、カメラ110から出力された撮像画像のデータを一時的に記憶するシステムメモリ155(メモリの一例)と、システムメモリ155に記憶された撮像画像のデータを用いて処理を実行する画像処理部156(第1プロセッサの一例)及びHPD処理部120(第2プロセッサの一例)とを備えている。画像処理部156は、カメラ110を制御することにより、撮像素子112に配列された複数の画素を予め設定された複数種類の画素群(例えば、奇数ラインと偶数ラインの2種類の画素群)ごとに異なる撮像条件に制御して撮像させ、撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータを用いてHDR画像を生成する画像処理(第1処理の一例)を実行する。HPD処理部120は、画像処理部156の制御によりカメラ110により撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータのうち1種類の画素群(例えば、奇数ラインまたは偶数ラインのいずれか一方)の撮像画像のデータを用いて撮像画像から人物の存在を検出するHPD処理(第2処理の一例)を実行する。
【0064】
これにより、情報処理装置1は、システムの機能によりカメラ110が複数種類の画素群ごとに異なる撮像条件で撮像しているときでも、1種類の画素群の撮像画像のデータを用いてHPD処理を行うため、処理負荷及びコストへの影響を抑えつつ、カメラ機能の使用状態に関わらず撮像画像を用いたHPD処理を適切に行うことができる。つまり、情報処理装置1は、システムがカメラ機能やHDR機能を使用しているか否かを意識することなく、且つHDR画像を生成する処理負荷及びコストをかけることなく、撮像画像を用いたHPD処理を適切に行うことができる。
【0065】
例えば、HPD処理部120は、HPD処理を繰り返し実行する際に、奇数ラインと偶数ラインの2種類の画素群ごとの撮像画像のデータのうちHPD処理に用いる撮像画像のデータの画素群の種類を切り替える。
【0066】
これにより、情報処理装置1は、異なる撮像条件で撮像された複数種類の画素群による撮像画像を切り替えてHPD処理を実行するため、様々な場面(シーン)におけるHPD処理の検出精度を高めることができる。
【0067】
画像処理部156は、カメラ110を制御することにより、複数種類の画素群(例えば、奇数ラインと偶数ラインの2種類の画素群)ごとに異なる露光時間に制御して撮像させる。
【0068】
これにより、情報処理装置1は、システムの機能によりカメラ110が複数種類の画素群ごとに異なる露光時間で撮像しているときでも、異なる露光時間で撮像された複数種類の画素群(例えば、奇数ラインと偶数ラインの2種類の画素群)による撮像画像を切り替えてHPD処理を実行するため、様々な明るさの場面(シーン)におけるHPD処理の検出精度を高めることができる。
【0069】
画像処理部156は、画像処理として、異なる露光時間で撮像された複数種類の画素群(例えば、奇数ラインと偶数ラインの2種類の画素群)ごとの撮像画像のデータを合成することによりダイナミックレンジを拡張したHDR画像のデータを生成する。
【0070】
これにより、情報処理装置1は、システムの機能によりカメラ110が複数種類の画素群ごとに異なる露光時間で撮像してHDR画像を生成しているときでも、カメラ110が撮像する撮像画像を用いてHPD処理を適切に行うことができる。
【0071】
また、本実施形態に係る情報処理装置1における制御方法は、画像処理部156(第1プロセッサの一例)が、カメラ110を制御することにより、撮像素子112に配列された複数の画素を予め設定された複数種類の画素群(例えば、奇数ラインと偶数ラインの2種類の画素群)ごとに異なる撮像条件に制御して撮像させるステップと、撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータを用いてHDR画像を生成する画像処理(第1処理の一例)を実行するステップと、HPD処理部120(第2プロセッサの一例)が、画像処理部156の制御によりカメラ110により撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータのうち1種類の画素群(例えば、奇数ラインまたは偶数ラインのいずれか一方)の撮像画像のデータを用いて撮像画像から人物の存在を検出するHPD処理(第2処理の一例)を実行するステップと、を含む。
【0072】
これにより、情報処理装置1は、システムの機能によりカメラ110が複数種類の画素群ごとに異なる撮像条件で撮像しているときでも、1種類の画素群の撮像画像のデータを用いてHPD処理を行うため、処理負荷及びコストへの影響を抑えつつ、カメラ機能の使用状態に関わらず撮像画像を用いたHPD処理を適切に行うことができる。つまり、情報処理装置1は、システムがカメラ機能やHDR機能を使用しているか否かを意識することなく、且つHDR画像を生成する処理負荷及びコストをかけることなく、撮像画像を用いたHPD処理を適切に行うことができる。
【0073】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態において、フレームごとに奇数ラインと偶数ラインとを交互に切り替えて検出用画像を生成し、生成した検出用画像を用いてHPD処理を実行する例を説明したが、検出用画像から人物の存在が検出された(HPD=True)と判定された場合には、次のフレームでは同じラインの検出用画像を用いてHPD処理を実行してもよい。
【0074】
これにより、一方のライン(一方の露光時間)で正常に検出できない現象(False negative)を抑制することができる。また、検出用画像から人物の存在が検出されない(HPD=False)と判定された場合には、再度、奇数ラインと偶数ラインとを交互に切り替えて検出用画像を生成してHPD処理を実行することで、適切な露光時間で撮像された検出用画像を用いてHPD処理を実行することができる。
【0075】
図8は、本実施形態に係るHPD処理におけるラインの切り替え処理の一例を示すフローチャートである。
【0076】
(ステップS201)HPD処理部120は、選択されたライン(奇数ラインまたは偶数ライン)の画素群により撮像された画像から検出用画像を生成し、生成した検出用画像を用いてHPD処理を実行する。そして、ステップS203の処理へ進む。
【0077】
(ステップS203)HPD処理部120は、ステップS201のHPD処理による検出結果に基づいて、選択ラインの検出用画像から人物の存在が検出された(HPD=True)か否かを判定する。HPD処理部120は、選択ラインの検出用画像から人物の存在が検出されたと判定した場合(YES)、ステップS201の処理へ戻り、次のフレームも同一の選択ラインの検出用画像を用いてHPD処理を実行する。一方、HPD処理部120は、選択ラインの検出用画像から人物の存在が検出されないと判定した場合(NO)、ステップS205の処理へ進む。
【0078】
(ステップS205)HPD処理部120は、選択ラインを切り替えてステップS201の処理へ戻り、次のフレームでは、異なる選択ラインの検出用画像を用いてHPD処理を実行する。
【0079】
このように、本実施形態に係る情報処理装置1において、HPD処理部120は、HPD処理において人物の存在を検出した場合、次に(例えば、次のフレームで)HPD処理を実行する際に、人物の存在を検出した撮像画像のデータと同一種類の画素群の撮像画像のデータを用いる。例えば、HPD処理部120は、奇数ラインの検出用画像を用いたHPD処理において人物の存在を検出した場合、次に(例えば、次のフレームで)HPD処理を実行する際に、奇数ラインの検出用画像を用いる。また、HPD処理部120は、偶数ラインの検出用画像を用いたHPD処理において人物の存在を検出した場合、次に(例えば、次のフレームで)HPD処理を実行する際に、偶数ラインの検出用画像を用いる。
【0080】
これにより、情報処理装置1は、奇数ラインまたは偶数ラインのいずれか一方の撮像条件(例えば、露光時間)では正常に検出できない現象(False negative)が生じてしまうことを抑制することができる。
【0081】
また、HPD処理部120は、HPD処理において人物の存在を検出しなかった場合、次に(例えば、次のフレームで)HPD処理を実行する際に、人物の存在を検出しなかった画素群の撮像画像のデータとは異なる種類の画素群の撮像画像のデータに切り替える。例えば、HPD処理部120は、奇数ラインの検出用画像を用いたHPD処理において人物の存在を検出しなかった場合には、次に(例えば、次のフレームで)HPD処理を実行する際に偶数ラインの検出用画像を用いたHPD処理に切り替える。また、HPD処理部120は、偶数ラインの検出用画像を用いたHPD処理において人物の存在を検出しなかった場合には、次に(例えば、次のフレームで)HPD処理を実行する際に奇数ラインの検出用画像を用いたHPD処理に切り替える。
【0082】
これにより、情報処理装置1は、適切な撮像条件(例えば、露光時間)で撮像された検出用画像を用いてHPD処理を実行することができる。
【0083】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、上述の実施形態において説明した各構成は、任意に組み合わせることができる。
【0084】
また、上記実施形態では、異なる撮像条件(例えば露光時間)に制御する複数種類の画素群として、奇数ラインと偶数ラインの2種類の画素群を例に説明したが、3種類以上の画素群であってもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、奇数ラインと偶数ラインのとのラインごとに異なる撮像条件(例えば露光時間)に制御する例を説明したが、異なる撮像条件(例えば露光時間)に制御する画素群は、ラインごとの画素群に限られるものではなく、2×2画素、3×3画素、4×4画素などのブロック単位で構成される画素群であってもよいし、互いに隣接しない画素単位で構成される画素群であってもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、複数種類の画素群を異なる撮像条件に制御する際の撮像条件として露光時間を例に説明したが、露光時間に限られるものではなく、例えば感度を異ならせてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、1フレームごとにHPD処理が実行される例を説明したが、複数フレームごと(2フレームごと、3フレームごと等)にHPD処理が実行されてもよい。HPD処理を複数フレームごと実行する際には、HPD処理が実行されるフレーム単位で、複数種類の画素群(例えば、奇数ラインと偶数ラインの2種類の画素群)の切り替えが行われる。
【0088】
また、上記実施形態では、システムによるカメラ機能の使用状態に関わらず、カメラ110により撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータのうち1種類の画素群(例えば、奇数ラインまたは偶数ラインのいずれか一方)の撮像画像のデータを用いてHPD処理を実行する構成を説明した。しかし、情報処理装置1は、HDR画像の生成(HDR撮影)のときのみ、1種類の画素群(例えば、奇数ラインまたは偶数ラインのいずれか一方)の撮像画像のデータを用いてHPD処理を実行してもよい。情報処理装置1は、HDR画像の生成(HDR撮影)を行わない通常撮影時には、撮像素子112に配列されている複数の画素を同一の撮像条件(例えば露光時間)に制御するため、複数種類の画素群に分けることなく撮像素子112で撮像された撮像画像の少なくとも一部を検出用画像としてHOD処理を実行してもよい。但し、システムによるカメラ機能の使用状態に関わらず同様のHPD処理とする方が、カメラ機能の使用状態を検出して処理を変更する必要がないため、処理負荷及びコストへの影響をより抑えることができる。
【0089】
また、HPD処理(第2処理の一例)に代えて、人物以外の存在を検出する処理としてもよい。例えば、画像処理部156の制御によりカメラ110により撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータのうち1種類の画素群(例えば、奇数ラインまたは偶数ラインのいずれか一方)の撮像画像のデータを用いて実行する第2処理は、人物の一部(顔、目、手、足など)を検出する処理であってもよいし、人物以外の動物や物体などを検出する処理であってもよい。また、この第2処理は、カメラ110により撮像された撮像画像から物品または製品の品質や結果などを検出する処理であってもよい。即ち、この第2処理は、カメラ110により撮像された撮像画像から何らかの情報を検出する任意の処理とすることができる。
【0090】
また、上記実施形態では、カメラ110がRGB画像を撮像するRGBセンサ(可視光センサ)を撮像素子112として備える例を説明したが、これに限られるものではない。例えば、カメラ110は、撮像素子112として、さらにIR(InfraRed)画像を撮像するIRセンサを備えても良い。例えば、カメラ110は、撮像素子112として、RGBセンサとIRセンサとを個別に備えてもよいし、RGBセンサとIRセンサとが一体化されたハイブリッドセンサを備えてもよい。
【0091】
また、システム処理部150が備える各構成は、SoC(System-on-a-Chip)として1つのチップに統合されてもよいし、複数のチップとして構成されもよい。例えば、画像処理部156は、システム処理部150が備える他の各構成と1つのチップとして統合されてもよいし、別のチップ(プロセッサ)として構成されもよい。また、HPD処理部120と画像処理部156とが統合されて1つのチップ(プロセッサ)として構成されてもよい。
【0092】
また、上述した待機状態には、ハイバネーション状態やパワーオフ状態等が含まれてもよい。ハイバネーション状態は、例えば、ACPIで規定されているS4状態に相当する。パワーオフ状態は、例えば、ACPIで規定されているS5状態(シャットダウンした状態)に相当する。なお、待機状態のうちスタンバイ状態、スリープ状態、ハイバネーション状態、パワーオフ状態などは、通常動作状態よりも電力の消費量が低い状態(電力の消費を抑えた状態)である。
【0093】
なお、上述した情報処理装置1は、内部にコンピュータシステムを有している。そして、上述した情報処理装置1が備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述した情報処理装置1が備える各構成における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0094】
また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部又は外部に設けられた記録媒体も含まれる。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に情報処理装置1が備える各構成で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0095】
また、上述した実施形態における情報処理装置1が備える各機能の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【0096】
また、上記実施形態の情報処理装置1は、PCに限られるものではなく、タブレット端末装置、スマートフォン、ゲーム装置、マルチメディア端末等であってもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 情報処理装置、110 カメラ、120 HPD処理部、130 キーボード、140 表示部、150 システム処理部、151 CPU、152 GPU、153 メモリコントローラ、154 I/Oコントローラ、155 システムメモリ、156 画像処理部、160 記憶部、170 EC、180 電源回路、190 バッテリ
【要約】
【課題】処理負荷及びコストへの影響を抑えつつ、カメラ機能の使用状態に関わらず撮像画像を用いたHPD処理を適切に行うこと。
【解決手段】情報処理装置は、撮像素子に配列された複数の画素を用いて撮像した撮像画像のデータを出力する撮像部と、撮像部から出力された撮像画像のデータを一時的に記憶するメモリと、メモリに記憶された撮像画像のデータを用いて処理を実行する第1プロセッサ及び第2プロセッサと、を備える。第1プロセッサは、撮像部を制御することにより、撮像素子に配列された複数の画素を予め設定された複数種類の画素群ごとに異なる撮像条件に制御して撮像させ、撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータを用いて第1処理を実行する。第2プロセッサは、第1プロセッサの制御により撮像部により撮像された複数種類の画素群ごとの撮像画像のデータのうち1種類の画素群の撮像画像のデータを用いて第2処理を実行する。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8