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特許7444960外乱観測器を含む搬送システムおよびその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】外乱観測器を含む搬送システムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 11/36 20060101AFI20240228BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240228BHJP
【FI】
G05B11/36 G
G05D1/43
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022200098
(22)【出願日】2022-12-15
(65)【公開番号】P2023140275
(43)【公開日】2023-10-04
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】10-2022-0035485
(32)【優先日】2022-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】598123150
【氏名又は名称】セメス株式会社
【氏名又は名称原語表記】SEMES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】77,4sandan 5-gil,Jiksan-eup,Seobuk-gu,Cheonan-si,Chungcheongnam-do,331-814 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュン ボム
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヨン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,トン フン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ビュン クウォン
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-100773(JP,A)
【文献】特開2000-353002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 11/36
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ホイールに対応して、第1電流値を生成する第1モータ制御器と、
前記第1電流値に基づいて移動して、移動による第1位置値を提供する第1モータシステムと、
前記第1電流値と前記第1位置値の提供を受けて、前記第1モータシステムに影響を及ぼす第1外乱値を算出する外乱観測器と、
第2ホイールに対応して、第2電流値を生成する第2モータ制御器と、
前記第2電流値と前記第1外乱値に基づいて、第2補償電流値を生成する補償電流生成器と、
前記第2補償電流値によって移動して、移動による第2位置値を提供する第2モータシステムを含む、搬送システム。
【請求項2】
前記外乱観測器は、
前記第1モータシステムに対応する第1モデルの第1逆関数であって、前記第1位置値の入力を受けて前記第1電流値と前記第1外乱値の合計を出力する第1逆関数と、
前記第1逆関数で出力された前記合計から前記第1電流値を減算して、前記第1外乱値を生成する第1演算器を含む、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記補償電流生成器は、前記第2電流値から前記第1外乱値を減算して前記第2補償電流値を算出する、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項4】
制御ボードから位置指令の提供を受けて、前記第1モータシステムから前記第1位置値のフィードバックを受けて第1補償位置値を生成する第1補償器をさらに含み、前記第1モータ制御器は前記第1補償位置値に対応する前記第1電流値を生成する、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項5】
制御ボードから位置指令の提供を受けて、前記第2モータシステムから前記第2位置値のフィードバックを受けて第2補償位置値を生成する第2補償器をさらに含み、前記第2モータ制御器は前記第2補償位置値に対応する前記第2電流値を生成する、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項6】
前記第1位置値のフィードバックを受けて、微分して第1速度値を生成する第1微分器をさらに含む、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項7】
前記第1モータ制御器は、
制御ボードから位置指令の提供を受けて、位置指令に対応する第1速度指令を生成する位置制御器と、
前記第1速度指令から前記第1速度値を減算して第1補償速度値を生成する第3補償器と、
前記第1補償速度値に対応する前記第1電流値を生成する速度制御器を含む、請求項6に記載の搬送システム。
【請求項8】
制御ボードから提供された位置指令を微分して第2速度指令を生成する第2微分器と、
前記第2モータシステムから前記第2位置値のフィードバックを受けて、前記第2位置値を微分して第2速度値を生成する第3微分器と、
前記第2速度指令と前記第2速度値の提供を受けて、第2補償速度値を生成する第4補償器をさらに含み、
前記第2モータ制御器は前記第2補償速度値の提供を受けて、前記第2補償速度値に対応する前記第2電流値を生成する、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項9】
前記第1ホイールは前輪であり、前記第2ホイールは後輪である、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項10】
第1ホイールに対応して、位置指令と、フィードバックされた第1位置値の提供を受けて、補償位置値を生成する第1補償器と、
前記補償位置値に対応する第1電流値を生成する第1モータ制御器と、
前記第1電流値から第2外乱値を減算して第1補償電流値を生成する第1補償電流生成器と、
前記第1補償電流値に基づいて移動して、移動による前記第1位置値を提供する第1モータシステムと、
前記位置指令を微分して速度指令を生成する第1微分器と、
第2ホイールに対応して、前記速度指令と、フィードバックされた速度値の提供を受けて、補償速度値を生成する第2補償器と、
前記補償速度値に対応する第2電流値を生成する第2モータ制御器と、
前記第2電流値から第1外乱値を減算して第2補償電流値を生成する第2補償電流生成器と、
前記第2補償電流値に基づいて移動して、移動による第2位置値を提供する第2モータシステムと、
前記第2位置値を微分して前記速度値を生成する第2微分器を含み、
前記第1外乱値は前記第2モータシステムの動作が前記第1モータシステムに及ぼす影響を示し、
前記第2外乱値は前記第1モータシステムの動作が前記第2モータシステムに及ぼす影響を示す、搬送システム。
【請求項11】
前記第1外乱値を生成する第1外乱観測器をさらに含み、前記第1外乱観測器は前記第1モータシステムに対応する第1モデルの第1逆関数を含む、請求項10に記載の搬送システム。
【請求項12】
前記第2外乱値を生成する第2外乱観測器をさらに含み、前記第2外乱観測器は前記第2モータシステムに対応する第2モデルの第2逆関数を含む、請求項10に記載の搬送システム。
【請求項13】
前記第1ホイールは前輪であり、前記第2ホイールは後輪である、請求項10に記載の搬送システム。
【請求項14】
第1ホイールに対応する第1モータシステムと、第2ホイールに対応する第2モータシステムを含む搬送システムが提供され、
前記第1モータシステムに入力される第1入力電流値と、前記第1入力電流値に基づいて前記第1モータシステムが移動した結果である第1位置値を取得し、
前記第1位置値から、前記第1入力電流値と第1外乱値の合計を算出し、
前記第1入力電流値と前記第1外乱値の合計から、前記第1入力電流値を減算して前記第1外乱値を算出し、
前記第2モータシステムに、前記第1外乱値だけ減算された第2入力電流値が入力されることを含む、搬送システムの制御方法。
【請求項15】
制御ボードから提供された位置指令から前記第1位置値を減算して第1補償位置値を生成することをさらに含み、前記第1入力電流値は前記第1補償位置値に対応する電流値である、請求項14に記載の搬送システムの制御方法。
【請求項16】
制御ボードから提供された位置指令から前記第2モータシステムの第2位置値を減算して第2補償位置値を生成し、
前記第2補償位置値に対応する第2電流値を生成することをさらに含み、
前記第2モータシステムに入力される前記第2入力電流値は、前記第2電流値から前記第1外乱値を減算して生成される、請求項14に記載の搬送システムの制御方法。
【請求項17】
制御ボードから提供された位置指令を微分して第2速度指令を生成し、
前記第2モータシステムからフィードバックされた第2位置値を微分して第2速度値を生成し、
前記第2速度指令と前記第2速度値の提供を受けて、第2補償速度値を生成し、
前記第2補償速度値に対応する第2電流値を生成することをさらに含み、
前記第2モータシステムに入力される前記第2入力電流値は、前記第2電流値から前記第1外乱値を減算して生成される、請求項14に記載の搬送システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外乱観測器を含む搬送システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、基板は無人運搬システムにより移送されることができる。特に、無人運搬システムはクリーンルームの天井または床に設置された走行レールに沿って移動可能に構成された搬送台車(例えば、OHT(Overhead Hoist Transport)、RGV(Rail Guided Vehicle)など)を含むことができる。搬送台車の運行制御はOCS(OHT Control Server)装置のような上位制御装置によって制御されることができる。
【発明の概要】
【0003】
[発明が解決しようとする課題]
一方、搬送台車の前輪モータと後輪モータは、位置指令により別に制御されることができる。前輪モータと後輪モータは互いの状態(例えば、トルク値)を知らない状態で、位置指令を行うために互いに力を加えることができる。すなわち、搬送台車のモータの間で干渉現象が発生し得る。
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、搬送台車のモータの間の干渉を最小化するための搬送システムを提供することにある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、搬送台車のモータの間の干渉を最小化するための搬送システムの制御方法を提供することにある。
【0006】
本発明の課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないまた他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるものである。
【0007】
[課題を解決するための手段]
前記課題を達成するための本発明の搬送システムの一面(aspect)は、第1ホイールに対応して、第1電流値を生成する第1モータ制御器と、前記第1電流値に基づいて移動して、移動による第1位置値を提供する第1モータシステムと、前記第1電流値と前記第1位置値の提供を受けて、前記第1モータシステムに影響を及ぼす第1外乱値を算出する外乱観測器と、第2ホイールに対応して、第2電流値を生成する第2モータ制御器と、前記第2電流値と前記第1外乱値に基づいて、第2補償電流値を生成する補償電流生成器と、前記第2補償電流値によって移動して、移動による第2位置値を提供する第2モータシステムを含む。
【0008】
前記課題を達成するための本発明の搬送システムの他の面は、第1ホイールに対応して、位置指令と、フィードバックされた第1位置値の提供を受けて、補償位置値を生成する第1補償器と、前記補償位置値に対応する第1電流値を生成する第1モータ制御器と、前記第1電流値から第2外乱値を減算して第1補償電流値を生成する第1補償電流生成器と、前記第1補償電流値に基づいて移動して、移動による前記第1位置値を提供する第1モータシステムと、前記位置指令を微分して速度指令を生成する第1微分器と、第2ホイールに対応して、前記速度指令と、フィードバックされた速度値の提供を受けて、補償速度値を生成する第2補償器と、前記補償速度値に対応する第2電流値を生成する第2モータ制御器と、前記第2電流値から第1外乱値を減算して第2補償電流値を生成する第2補償電流生成器と、前記第2補償電流値に基づいて移動して、移動による第2位置値を提供する第2モータシステムと、前記第2位置値を微分して前記速度値を生成する第2微分器を含み、前記第1外乱値は前記第2モータシステムの動作が前記第1モータシステムに及ぼす影響を示し、前記第2外乱値は前記第1モータシステムの動作が前記第2モータシステムに及ぼす影響を示す。
【0009】
前記他の課題を達成するための本発明の搬送システムの制御方法の一面は、第1ホイールに対応する第1モータシステムと、第2ホイールに対応する第2モータシステムを含む搬送システムが提供され、前記第1モータシステムに入力される第1入力電流値と、前記第1入力電流値に基づいて前記第1モータシステムが移動した結果である第1位置値を取得し、前記第1位置値から、前記第1入力電流値と第1外乱値の合計を算出し、前記第1入力電流値と前記第1外乱値の合計から、前記第1入力電流値を減算して前記第1外乱値を算出し、前記第2モータシステムに、前記第1外乱値だけ減算された第2入力電流値が入力されることを含む。
【0010】
その他の実施形態の具体的な内容は詳細な説明および図面に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のいくつかの実施形態による搬送システムで用いられる搬送台車を説明するための図である。
図2】本発明のいくつかの実施形態による搬送システムで用いられる搬送台車を説明するための図である。
図3】本発明の第1実施形態による搬送システムを説明するためのブロック図である。
図4図3の第1外乱観測器を説明するための図である。
図5】本発明の第2実施形態による搬送システムを説明するためのブロック図である。
図6図5の第2外乱観測器を説明するための図である。
図7】本発明の第3実施形態による搬送システムを説明するためのブロック図である。
図8】本発明の第4実施形態による搬送システムを説明するためのブロック図である。
図9】本発明の第5実施形態による搬送システムを説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付する図面を参照して本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。本発明の利点および特徴、並びにこれらを達成する方法は添付する図面と共に詳細に後述する実施形態を参照すると明確になる。しかし、本発明は以下に開示する実施形態に限定されるものではなく互いに異なる多様な形態で実現することができ、本実施形態は単に本発明の開示を完全にし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供するものであり、本発明は請求項の範疇によってのみ定義される。
【0013】
空間的に相対的な用語である「下(below)」、「下(beneath)」、「下部(lower)」、「上(above)」、「上部(upper)」などは図面に示されているように一つの素子または構成要素と他の素子または構成要素との相関関係を容易に記述するために使用される。空間的に相対的な用語は図面に示されている方向に加えて使用時または動作時の素子の互いに異なる方向を含む用語として理解しなければならない。例えば、図面に示されている素子をひっくり返す場合、他の素子の「下(below)」または「下(beneath)」と記述された素子は他の素子の「上(above)」に置かれ得る。したがって、例示的な用語の「下」は下と上の方向をすべて含むことができる。素子は他の方向に配向されてもよく、そのため空間的に相対的な用語は配向によって解釈されることができる。
【0014】
第1、第2などが多様な素子、構成要素および/またはセクションを叙述するために使われるが、これらの素子、構成要素および/またはセクションはこれらの用語によって制限されないのはもちろんである。これらの用語は単に一つの素子、構成要素またはセクションを他の素子、構成要素またはセクションと区別するために使用する。したがって、以下で言及される第1素子、第1構成要素または第1セクションは本発明の技術的思想内で第2素子、第2構成要素または第2セクションであり得るのはもちろんである。
【0015】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明し、添付図面を参照して説明するにあたり図面符号に関係なく同一であるかまたは対応する構成要素は同じ参照番号を付与し、これに係る重複する説明は省略する。
【0016】
図1および図2は本発明のいくつかの実施形態による搬送システムで用いられる搬送台車を説明するための図である。図1は搬送台車を上から見た平面図であり、図2は搬送台車がレールに沿って移動することを示す側面図である。
【0017】
図1および図2を参照すると、搬送台車がレール50に沿って、進行方向S1に向かって移動する。
【0018】
レール50は半導体製造ラインの天井に設置されるか、天井に結合されたフレーム(図示せず)に設置されることができる。レール50は例えば、2個のレールが互いに一定距離を離隔するように配置されることができる。レール50は直線および曲線の多様な形状に実現することができる。
【0019】
搬送台車は物品(図示せず)をピックアップして、レール50に沿って移送しながら物品を多様な位置に移送する。搬送台車はレール50を介して電源の供給を受けて駆動されるか、搬送台車内部の充電式バッテリを用いて駆動されることができる。
【0020】
搬送台車が移送する物品はウエハ収納容器、レチクル収納容器などであり得る。ウエハ収納容器の例はFOUP(Front Opening Unified Pod)であり得るが、これに限定されない。レチクル収納容器の例はPODであり得るが、これに限定されない。
【0021】
このような搬送台車はボディ30上に第1ホイール10および第2ホイール20が設けられる。搬送台車の進行方向S1を基準として見るとき、第1ホイール10は前輪(front wheel)に該当し、第2ホイール20は後輪(rear wheel)に該当する。第1モータ15は第1ホイール10と連結され、第1ホイール10に駆動力を提供することができる。第2モータ25は第2ホイール20と連結され、第2ホイール20に駆動力を提供することができる。
【0022】
第1モータ15と第2モータ25は互いに独立してトルクを作り出して、このようなトルクで搬送台車を駆動させることができる。すなわち、第1モータ15を制御する第1モータ制御器と、第2モータ25を制御する第2モータ制御器は互いの状況を知らない。したがって、一つのモータ(例えば、第1モータ15)で発生した駆動トルク(図2のT)の多くのトルクは搬送台車の駆動力として提供されるが、一部のトルクは他のモータ(例えば、第2モータ25)の外乱(図2のD)として提供される。第1ホイール10と第2ホイール20がレール50を介して互いに影響を与え得るからである。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、外乱観測器(図3の150を参照)を用いて他のモータ(例えば、第2モータ25)に移る外乱を予測し、これを他のモータの制御にあらかじめ反映する。このようにすることで、第1モータ15と第2モータ25が互いに戦う現象(または干渉現象)を防止することができる。
【0024】
以下では図3ないし図9を用いて、干渉現象を補償する制御方法およびシステムについて具体的に説明する。
【0025】
図3は本発明の第1実施形態による搬送システムを説明するためのブロック図である。図4図3の第1外乱観測器を説明するための図である。
【0026】
まず図3を参照すると、本発明の第1実施形態による搬送システムは、制御ボード105、第1モータ制御器110、第1補償器112、第1モータシステム115、第2モータ制御器120、第2補償器122、第2モータシステム125、第2補償電流生成器128、第1外乱観測器150などを含む。
【0027】
具体的には、制御ボード105は位置指令PCを提供する。制御ボード105は搬送台車を制御するコンピューティング装置である。制御ボード105は例えば、時間の経過に従って搬送台車が位置すべき位置(または目標位置)を指示する位置プロファイルを提供することができる。
【0028】
第1補償器112、第1モータ制御器110、第1モータシステム115は搬送台車の第1ホイール10に対応する構成であり、第1ホイール10を制御および駆動するための構成である。第2補償器122、第2モータ制御器120、第2補償電流生成器128、第2モータシステム125は搬送台車の第2ホイール20に対応する構成であり、第2ホイール20を制御および駆動するための構成である。
【0029】
第1補償器112は位置指令PCと、フィードバックされた第1位置値y1の提供を受けて、第1補償位置値CPC1を生成する。第1位置値y1は第1モータシステム115から提供される位置値であり得る。例えば、第1補償器112は位置指令PCから第1位置値y1を減算して、第1補償位置値CPC1を算出することができる。
【0030】
第1モータ制御器110は第1補償位置値CPC1に対応する第1電流値I1を生成する。第1電流値I1は第1補償位置値CPC1だけ移動させ得る理想的な電流値であり得る。
【0031】
第1モータシステム115は第1電流値I1(すなわち、入力電流値)に基づいて移動する。また、第1モータシステム115は、移動による第1位置値y1を提供する。第1モータシステム115は実体システム(actual system)であり、第1ホイール10に駆動力を提供する第1モータ15とこれと関連する負荷(例えば、搬送台車の負荷)を含むことができる。
【0032】
第1外乱観測器150は第1モータシステム115に影響を及ぼす第1外乱値Db1を算出する。第1外乱値Db1は、第2モータ25で発生した駆動トルクの一部が第1モータ15に及ぼす影響を意味する。または、第2モータシステム125の動作が第1モータシステム115の動作に及ぼす影響を意味する。第1ホイール10と第2ホイール20がレール50を介して互いに影響を及ぼし得るので、第1外乱値Db1が発生する。第1外乱観測器150は第1モータシステム115に対応する第1モデルの第1逆関数を用いることができる。
【0033】
図4を用いて第1外乱観測器150の構成について具体的に説明する。
【0034】
第1モータシステム115は関数G1(x)でモデリングされることができる。ここで、G1(x)は実体システムを数式で表現したものであり、第1モータ15および関連する負荷をモデリングして表現した第1モデルであり得る。
【0035】
第1外乱観測器150は第1モデルの第1逆関数151と、第1演算器152を含む。
【0036】
第1逆関数151はG1-1(x)で表される。
【0037】
第1モータシステム115に第1電流値I1のみが入力されるだけで外乱が全くない場合、G1(I1)=y1であるからG1-1(y1)=I1になる。
【0038】
しかし、第1モータシステム115に第1電流値I1が入力されて外乱が影響を及ぼす場合、第1位置値y1は外乱の影響を受けた値であるので、G1(I1+Db1)=y1であり、G1-1(y1)=I1+Db1になる。第1位置値y1を第1逆関数151に入力すると、第1電流値I1と第1外乱値Db1の合計が出力される。すなわち、第1逆関数151の結果値として、第1電流値I1だけでなく第1外乱値Db1がともに出力される。
【0039】
第1演算器152は第1逆関数151から出力された第1電流値I1と第1外乱値Db1の合計(I1+Db1)の提供を受けて、第1モータ制御器110から第1電流値I1の提供を受ける。第1演算器152は前記合計(I1+Db1)から第1電流値I1を減算して第1外乱値Db1を算出する。
【0040】
算出された第1外乱値Db1は第2モータシステム125を制御するために使用される。
【0041】
一方、再び図3を参照すると、第2補償器122は位置指令PCと、フィードバックされた第2位置値y2の提供を受けて、第2補償位置値CPC2を生成する。第2位置値y2は第2モータシステム125から提供される位置値であり得る。例えば、第2補償器122は位置指令PCから第2位置値y2を減算して、第2補償位置値CPC2を算出することができる。
【0042】
第2モータ制御器120は第2補償位置値CPC2に対応する第2電流値I2を生成する。第2電流値I2は第2補償位置値CPC2だけ移動させ得る理想的な電流値であり得る。
【0043】
第2補償電流生成器128は第2電流値I2と第1外乱値Db1の提供を受けて、第2補償電流値CI2を生成する。例えば、第2補償電流生成器128は第2電流値I2から第1外乱値Db1を減算して第2補償電流値CI2を生成することができる。
【0044】
第2モータシステム125は第2補償電流値CI2(すなわち、入力電流値)に基づいて移動する。また、移動による第2位置値y2を提供する。第2モータシステム125は実体システム(actual system)であり、第2ホイール20に駆動力を提供する第2モータ25とこれと関連する負荷(例えば、搬送台車の負荷)を含むことができる。
【0045】
前述したように、第1外乱値Db1は、第2モータ25で発生した駆動トルクの一部が第1モータ15に及ぼす影響である。したがって、第2モータ制御器120で生成された電流値I2からあらかじめ第1外乱値Db1を引いて第2補償電流値CI2を生成した後、第2補償電流値CI2を第2モータシステム125に提供する。このようにすると、第2モータ25で過度な駆動トルクが発生しない。すなわち、第2モータ25は第1モータ15に影響を与えないほどの駆動トルクを生成する。
【0046】
結果的に、第1モータ15と第2モータ25が相互干渉することを減らすことができる。
【0047】
従来には第1モータ15と第2モータ25が相互干渉すると、相互干渉を防止するために第1モータ15および第2モータ25のいずれか一つをオフ(off)するか、制御器のゲイン(gain)を下げなければならなかった。しかし、本発明の第1実施形態による搬送システムによれば、第1モータ15と第2モータ25が相互干渉しないので、性能の極大化のために制御器の帯域幅(bandwidth)を高め、ゲイン(gain)を高めることができる。そのため、第1モータ15と第2モータ25の性能を最大に高めることができる。
【0048】
図5は本発明の第2実施形態による搬送システムを説明するためのブロック図である。図6図5の第2外乱観測器を説明するための図である。説明の便宜上図3および図4を用いて説明した内容と異なる点を中心に説明する。
【0049】
図3に示す搬送システムは第1外乱観測器150を含むことに対して、図5に示す搬送システムでは第1外乱観測器150を含まず、第2外乱観測器160を含むことができる。
【0050】
具体的には、本発明の第2実施形態による搬送システムは、制御ボード105、第1モータ制御器110、第1補償器112、第1モータシステム115、第1補償電流生成器118、第2モータ制御器120、第2補償器122、第2モータシステム125、第2外乱観測器160を含む。
【0051】
制御ボード105は位置指令PCを提供する。
【0052】
第2補償器122は位置指令PCとフィードバックされた第2位置値y2の提供を受けて、第2補償位置値CPC2を生成する。第2モータ制御器120は第2補償位置値CPC2に対応する第2電流値I2を生成する。第2モータシステム125は第2電流値I2に基づいて移動する。また、第2モータシステム125は、移動した結果である第2位置値y2を提供する。
【0053】
一方、第2外乱観測器160は第2モータシステム125に影響を及ぼす第2外乱値Db2を算出する。第2外乱値Db2は、第1モータ15で発生した駆動トルクの一部が第2モータ25に及ぼす影響を意味する。または、第1モータシステム115の動作が第2モータシステム125の動作に及ぼす影響を意味する。第1ホイール10と第2ホイール20がレール50を介して互いに影響を及ぼし得るので、第2外乱値Db2が発生する。第2外乱観測器160は第2モータシステム125に対応する第2モデルの第2逆関数を用いることができる。
【0054】
ここで、図6を用いて第2外乱観測器160の構成について具体的に説明する。
【0055】
第2モータシステム125は関数G2(x)でモデリングされることができる。ここで、G2(x)は実体システムを数式で表現したものであり、第2モータ25および関連する負荷をモデリングして表現した第2モデルであり得る。
【0056】
第2外乱観測器160は第2モデルの第2逆関数161と、第2演算器162を含む。
【0057】
第2逆関数161はG2-1(x)で表される。
【0058】
第2モータシステム125に第2電流値I2のみが入力されるだけで、外乱が全くない場合、G2(I2)=y2であるからG2-1(y2)=I2になる。
【0059】
しかし、第2モータシステム125に第2電流値I2が入力されて外乱が影響を及ぼす場合、第2位置値y2は外乱の影響を受けた値であるので、G2(I2+Db2)=y2であり、G2-1(y2)=I2+Db2になる。第2位置値y2を第2逆関数161に入力すると、第2電流値I2と第2外乱値Db2の合計が出力される。すなわち、第2逆関数161で第2電流値I2だけでなく第2外乱値Db2がともに出力される。
【0060】
第2演算器162は第2逆関数161から第2電流値I2と第2外乱値Db2の合計(I2+Db2)の提供を受けて、第2モータ制御器120から第2電流値I2の提供を受ける。第2演算器162は前記合計(I2+Db2)から第2電流値I2を減算して、第2外乱値Db2を算出する。
【0061】
算出された第2外乱値Db2は第1モータシステム115を制御するために使用される。
【0062】
再び図5を参照すると、第1補償器112は位置指令PCとフィードバックされた第1位置値y1の提供を受けて、第1補償位置値CPC1を生成する。第1モータ制御器110は第1補償位置値CPC1に対応する第1電流値I1を生成する。第1補償電流生成器118は第1電流値I1と第2外乱値Db2の提供を受けて、第1電流値I1から第2外乱値Db2を減算して第1補償電流値CI1を生成する。第1モータシステム115は第1補償電流値CI1に基づいて移動する。また、第1モータシステム115は、移動した結果である第1位置値y1を提供する。
【0063】
第1モータ制御器110で生成された電流値I1からあらかじめ第2外乱値Db2を引いて第1補償電流値CI1を生成した後、第1補償電流値CI1を第1モータシステム115に提供する。このようにすると、第1モータ15で過度な駆動トルクが発生しない。すなわち、第1モータ15は第2モータ25に影響を与えないほどの駆動トルクを生成して、相互干渉が減る。
【0064】
図7は本発明の第3実施形態による搬送システムを説明するためのブロック図である。説明の便宜上図3ないし図6を用いて説明した内容と異なる点を中心に説明する。
【0065】
図7を参照すると、本発明の第2実施形態による搬送システムは、制御ボード105、第1モータ制御器110、第1補償器112、第1モータシステム115、第1補償電流生成器118、第2モータ制御器120、第2補償器122、第2モータシステム125、第2補償電流生成器128、第1外乱観測器150、第2外乱観測器160などを含む。
【0066】
制御ボード105は位置指令PCを提供する。
【0067】
第1補償器112は位置指令PCとフィードバックされた第1位置値y1の提供を受けて、第1補償位置値CPC1を生成する。第1モータ制御器110は第1補償位置値CPC1に対応する第1電流値I1を生成する。第1補償電流生成器118は第1電流値I1と第2外乱値Db2の提供を受けて、第1電流値I1から第2外乱値Db2を減算して第1補償電流値CI1を生成する。第1モータシステム115は第1補償電流値CI1に基づいて移動する。また、第1モータシステム115は、移動した結果である第1位置値y1を提供する。
【0068】
第1外乱観測器150は第1モータシステム115に影響を及ぼす第1外乱値Db1を算出する。
【0069】
第2補償器122は位置指令PCとフィードバックされた第2位置値y2の提供を受けて、第2補償位置値CPC2を生成する。第2モータ制御器120は第2補償位置値CPC2に対応する第2電流値I2を生成する。第2補償電流生成器128は第2電流値I2と第1外乱値Db1の提供を受けて、第2電流値I2から第1外乱値Db1を減算して第2補償電流値CI2を生成する。第2モータシステム125は第2補償電流値CI2に基づいて移動する。また、移動した結果である第2位置値y2を提供する。
【0070】
第2外乱観測器160は第2モータシステム125に影響を及ぼす第2外乱値Db2を算出する。
【0071】
このようにすることで、第1モータ15および第2モータ25で過度な駆動トルクが発生しない。すなわち、第1モータ15は第2モータ25に影響を与えないほどの駆動トルクを生成し、第2モータ25は第1モータ15に影響を与えないほどの駆動トルクを生成する。結果的に、第1モータ15と第2モータ25が相互干渉することを減らすことができる。
【0072】
図8は本発明の第4実施形態による搬送システムを説明するためのブロック図である。説明の便宜上図3および図4を用いて説明した内容と異なる点を中心に説明する。
【0073】
図3に示す搬送システムにおける第1モータ15は位置を基準として制御されることに対して、図8に示す搬送システムにおける第1モータ15は速度を基準として制御される。
【0074】
具体的には図8の搬送システムは図3の第1補償器112を含まない。
【0075】
第1モータ制御器110は位置制御器110a、速度制御器110b、第4補償器110cを含む。
【0076】
位置制御器110aは制御ボード105から位置指令PCの提供を受けて、位置指令PCに対応する第1速度指令VC1を生成する。位置制御器110aは位置指令PCを微分して第1速度指令VC1を生成できるが、これに限定されない。
【0077】
第1微分器191はフィードバックされた第1位置値y1を微分して第1速度値V1を生成する。
【0078】
第4補償器110cは第1速度指令VC1と第1速度値V1の提供を受けて第1補償速度値CVC1を生成する。第4補償器110cは第1速度指令VC1から第1速度値V1を減算して第1補償速度値CVC1を生成できるが、これに限定されない。
【0079】
速度制御器110bは第1補償速度値CVC1に対応する第1電流値I1を生成する。
【0080】
一方、第1微分器191を用いることは、図3図5および図7のシステムにも適用することができる。
【0081】
図9は本発明の第4実施形態による搬送システムを説明するためのブロック図である。説明の便宜上図3および図4を用いて説明した内容と異なる点を中心に説明する。
【0082】
図3に示す搬送システムにおける第2モータ25は位置を基準として制御されることに対して、図9に示す搬送システムにおける第2モータ25は速度を基準として制御される。
【0083】
具体的には図3に示す搬送システムにおける第2補償器122は位置指令PCとフィードバックされる第2位置値y2を用いて第2補償位置値CPC2を生成する。
【0084】
反面、図9に示す搬送システムにおいて、第2微分器192は位置指令PCを微分して第2速度指令VC2を生成し、第3微分器193は第2位置値y2を微分して第2速度値V2を生成する。
【0085】
そのため、第3補償器123は第2速度指令VC2と第2速度値V2の提供を受けて、第2補償速度値CVC2を生成する。第2モータ制御器120は第2補償速度値CVC2の提供を受けて、第2補償速度値CVC2に対応する第2電流値I2を生成する。
【0086】
第2補償電流生成器128は第2電流値I2と第1外乱値Db1の提供を受けて、第2電流値I2から第1外乱値Db1を減算して第2補償電流値CI2を生成する。第2モータシステム125は第2補償電流値CI2に基づいて移動する。また、移動した第2位置値y2を提供する。
【0087】
図示したものとは異なり、第2微分器192および第3微分器193を用いることは、図5図7および図8を用いて説明したシステムにも適用することができる。
【0088】
以上と添付する図面を参照して本発明の実施形態について説明したが、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施できることを理解することができる。したがって、上記一実施形態はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9