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特許74449674-アミノ-3-置換ブタン酸誘導体の安定化製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】4-アミノ-3-置換ブタン酸誘導体の安定化製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/197 20060101AFI20240228BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
A61K31/197
A61P21/00
A61K47/26
A61K47/22
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/12
A61K47/04
A61K47/02
A61K9/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022506031
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 US2020034840
(87)【国際公開番号】W WO2021021277
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】16/524,664
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522213982
【氏名又は名称】アムニール ファーマスーティカルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】AMNEAL PHARMACEUTICALS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピネイク,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ハム,シャロン
(72)【発明者】
【氏名】オマホニー,レオナルド
(72)【発明者】
【氏名】ディヴェイン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,ウォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ワインハイマー,マニュエル
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-519726(JP,A)
【文献】特開2000-034226(JP,A)
【文献】特開2017-036315(JP,A)
【文献】特表2017-536404(JP,A)
【文献】特表2013-515783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-31/327
A61K31/33-31/80
A61K33/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY
/MEDLINE/BIOSIS
/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-アミノ-3-(4-クロロフェニル)ブタン酸)(「バクロフェン」)およびその薬学的に許容される塩から選択される活性成分、および
安定化剤、を含み、
前記安定化剤が、ポリ(ブチルメタアクリレート-co-(2-ジメチルアミノエチル)メタアクリレート-co-メチルメタクリレート)のコポリマーである、即時放出医薬組成物。
【請求項2】
前記活性成分が前記安定化剤のマトリックス全体に分散されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記活性成分と前記安定化剤がマトリックス製剤中に緊密に混合されている、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記安定化剤と前記活性成分の重量比が1.5:1~20:1である、請求項1に記載の即時放出医薬組成物。
【請求項5】
キシリトール、マンニトール、サッカリンナトリウム、ヒプロメロース、クロスポビドン、ステアリン酸カルシウム、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、香味料およびそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つの賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の即時放出医薬組成物。
【請求項6】
4-アミノ-3-(4-クロロフェニル)ブタン酸)(「バクロフェン」)およびその薬学的に許容される塩から選択される活性成分、および
安定化剤、を含み、
前記安定化剤と前記活性成分の重量比が1.5:1~20:1であり、
前記安定化剤が、ポリ(ブチルメタアクリレート-co-(2-ジメチルアミノエチル)メタアクリレート-co-メチルメタクリレート)のコポリマーである、即時放出医薬組成物。
【請求項7】
前記活性成分が前記安定化剤のマトリックス全体に分散されている、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記活性成分と前記安定化剤がマトリックス製剤中に緊密に混合されている、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
キシリトール、カルシウムステアレート、コロイド状二酸化ケイ素、クロスポビドン、ヒプロメロース、マンニトール、サッカリンナトリウム、タルク、香味料、およびそれらの混合物の群から選択される少なくとも1つの賦形剤を含む、請求項6に記載の即時放出医薬組成物。
【請求項10】
4-アミノ-3-(4-クロロフェニル)ブタン酸)(「バクロフェン」)およびその薬学的に許容される塩を含む活性成分、および
安定化剤、を含む即時放出医薬組成物の製造方法であって、
前記活性成分と前記安定化剤を粒状マトリックスブレンドに緊密に混合する工程を含み、
前記安定化剤と前記活性成分の重量比が1.5:1~20:1であり、
前記安定化剤がポリ(ブチルメタアクリレート-co-(2-ジメチルアミノエチル)メタアクリレート-co-メチルメタクリレート)のコポリマーであり、
前記医薬組成物が、即時放出特性を示す即時放出医薬組成物の製造方法。
【請求項11】
前記緊密に混合する工程には少なくとも湿式造粒または乾式造粒が含まれる請求項10に記載の即時放出医薬組成物の製造方法。
【請求項12】
前記緊密に混合する工程には、前記活性成分および前記安定化剤を乾式造粒して乾式ブレンドを得て、その後前記乾式ブレンドを湿式造粒する工程が含まれる請求項10に記載の即時放出医薬組成物の製造方法。
【請求項13】
前記湿式造粒には、乾式ブレンドをエタノールで湿らせ、湿式混合し、乾燥し、冷却して、有効成分と安定剤を含む顆粒を得ることが含まれる請求項11に記載の即時放出医薬組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全体が参照により本明細書に組み込まれている2019年7月29日に出願された米国出願第16/524,664号からの優先権を主張するものである。
【0002】
本出願は、とりわけ、4-アミノ-3-置換ブタン酸誘導体の安定化製剤に関するものであり、特に、より全般にはラクタム形成薬剤に関するものである。
【背景技術】
【0003】
バクロフェン、ガバペンチン、およびプレガバリン等の4-アミノ-3-置換ブタン酸誘導体は、アミノ基とカルボキシル基が分子内で自己縮合しラクタムを形成しやすい。保存温度が高くなると、自己縮合反応速度が増加する。また、バクロフェン、プレガバリン、およびガバペンチンは、圧縮成形性および流動性に乏しい場合がある乾燥粉末である。しかし、従来、圧縮成形性および/または流動性の改善のために使用される補助剤はまた、4-アミノ3-置換ブタン酸誘導体の製剤中で自己縮合反応速度を増加させる。結果として、4-アミノ-3-置換ブタン酸誘導体のカプセル剤、錠剤、顆粒剤、および(半)液剤等の医薬製剤は安定性の問題から、その保存可能期間が制限される場合がある。
【0004】
保存安定性の問題に対する解決策は、不安定性の原因の研究によりみつかる場合が多い。例えば、酸に敏感な薬剤は、しばしば塩基と共に製剤化することで安定化させることができ、塩基に敏感な薬剤は酸と共に製剤化することによって安定化させることができる。フリーラジカル酸化を受けやすい薬剤は、しばしば抗酸化剤によって安定化させることができる。バクロフェン、プレガバリン、およびガバペンチン等の4-アミノ-3-置換ブタン酸誘導体は、アミノ基とカルボキシ基が分子内で自己縮合しラクタムを形成しやすいことを認識し、米国特許第7,309,719号の発明者らは、4-アミノ-3-置換ブタン酸誘導体にアミノ酸を安定化剤として添加することでラクタム形成を低減し、したがって保存安定性を改善することを提案した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、状況によっては、問題の解決が意図的な設計の結果ではなく、セレンディピティによるものである場合もある。本発明がそうであり、本発明者らは驚くべきことに、メタクリレート成分を含む周知の放出速度制御ポリマーが、特定の4-アミノ-3-置換ブタン酸誘導体を安定化するという重要で予想外な能力を提供することを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、活性成分および安定化剤を含む医薬組成物を提供する。組成物は安定化剤のマトリックス全体に分散された活性成分を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、活性成分と安定化剤はマトリックス製剤中に緊密に混合されている。いくつかの実施形態では、活性成分は4 アミノ-3-(4-クロロフェニル)ブタン酸)(「バクロフェン」)およびその薬学的に許容される塩から選択される。
【0007】
特定の組成物では、安定化剤と活性成分の重量比は1.5:1~10:1、または1.8:1~7.2:1であり得る。いくつかの実施形態では、組成物はさらに賦形剤を含む。賦形剤の例としては、1つまたは複数の流動促進剤、滑沢剤、充填剤、甘味剤、矯味剤、崩壊剤、唾液形成剤、結合剤、または香味料等がある。具体的な賦形剤としては、キシリトール、マンニトール、サッカリンナトリウム、ヒプロメロース、クロスポビドン、ステアリン酸カルシウム、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、および香味料等がある。
【0008】
組成物のいくつかの実施形態では、安定化剤はメタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸アンモニオアルキルコポリマー、またはメタクリル酸アミノアルキルコポリマーである。特定の実施形態では、安定化剤は、ポリ(メタクリル酸ブチル-co-メタクリル酸(2-ジメチルアミノエチル)-co-メタクリル酸メチルである。組成物はさらにキシリトール、ステアリン酸カルシウム、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、および香味料から選択される1つまたは複数の賦形剤を含み得る。医薬組成物は固形剤形の形態をとり得る。
【0009】
本発明は、当該医薬組成物を製造する方法であって、活性成分と安定化剤を互いに緊密に混合するステップを含む方法をさらに提供する。実施形態では、緊密に混合するステップは、湿式造粒および乾式造粒の少なくとも1つを含み得る。実施形態では、緊密に混合するステップは乾式ブレンドを含む。いくつかの実施形態では、製造方法は、固形剤形を形成するために乾式圧縮のステップまたはスラッギングのステップをさらに含み得る。実施形態では、方法は固形剤形をコーティングするステップをさらに含み得る。特定の実施形態では、製造方法は、活性成分と安定化剤の乾式ブレンド、その後の溶媒の添加、および混合物の造粒を含む湿式造粒を含む。
【0010】
本発明は、バクロフェン製剤中のラクタム形成を低減する方法であって、バクロフェンまたはその薬学的に許容される塩と安定化剤を互いに緊密に混合するステップを含む方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、バクロフェンは微粉末化される。いくつかの実施形態では、方法は、安定化剤と緊密に混合する前にバクロフェンを粉砕してその粒径を小さくするステップを含む。
【0011】
本発明は、固形バクロフェン製剤の保存可能期間を高める方法であって、バクロフェンまたはその薬学的に許容される塩と安定化剤を互いに緊密に混合することによってバクロフェン製剤中の4-CPPの形成を低減して、固形バクロフェン製剤を形成するステップを含む方法を提供する。この方法により、固形バクロフェン製剤中の4-CPPの量は、40℃、相対湿度75%で6カ月間の安定性試験後、0.2%を超えて増加しないようにできる。いくつかの実施形態では、固形バクロフェン製剤中の4-CPPの量は、40℃、相対湿度75%で6カ月間の安定性試験後、0.1%を超えて増加しない。
【0012】
本発明は、痙縮を治療する方法であって、それを必要とする患者に有効量の本発明の組成物を投与するステップを含む方法をさらに提供する。
【0013】
本開示の追加の特徴および利点は部分的に以下の説明に規定され、部分的には説明から明らかになり、または本開示の実践により知ることができる。本開示の目的および他の利点は、本明細書および特許請求の範囲で特に指摘されている要素および組合せによって実現され、達成される。
【0014】
前述の概要および後述の詳細な説明は、本開示のさらなる説明を行うための例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲に包含される主題の範囲を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】E POレベルが異なる様々なバクロフェン乳鉢処理製剤の異なる保存期間での4-CPPの形成をアミノ酸と比較して示すグラフである。
図2】E POレベルが異なる様々なバクロフェン圧縮製剤の異なる保存期間での4-CPPの形成をアミノ酸と比較して示すグラフである。
図3】E POレベルが異なる様々なバクロフェンエタノール造粒製剤の異なる保存期間での4-CPPの形成をアミノ酸と比較して示すグラフである。
図4】E POレベルが異なる様々なバクロフェン水造粒製剤の異なる保存期間での4-CPPの形成をアミノ酸と比較して示すグラフである。
図5】EPOレベルが異なる様々なガバペンチン乳鉢処理製剤の異なる保存期間での不純物Aの形成をアミノ酸と比較して示すグラフである。
図6】E POレベルが異なる様々なガバペンチン圧縮製剤の異なる保存期間での不純物Aの形成をアミノ酸と比較して示すグラフである。
図7】E POレベルが異なる様々なガバペンチンエタノール造粒製剤の異なる保存期間での不純物Aの形成をアミノ酸と比較して示すグラフである。
図8】E POレベルが異なる様々なガバペンチン水造粒製剤の異なる保存期間での不純物Aの形成をアミノ酸と比較して示すグラフである。
図9】EPOレベルが異なる様々なプレガバリン乳鉢処理製剤の異なる保存期間での不純物Aの形成をアミノ酸と比較して示すグラフである。
図10】E POレベルが異なる様々なプレガバリン圧縮製剤の異なる保存期間での不純物Aの形成をアミノ酸と比較して示すグラフである。
図11】E POレベルが異なる様々なプレガバリンエタノール造粒製剤の異なる保存期間での不純物Aの形成をアミノ酸と比較して示すグラフである。
図12】E POレベルが異なる様々なプレガバリン水造粒製剤の異なる保存期間での不純物Aの形成をアミノ酸と比較して示すグラフである。
図13】40:60および60:40のE PO/バクロフェン混合物のIRスペクトルを示すグラフである。
図14】80:20および85:15のE PO/バクロフェン混合物のIRスペクトルを示すグラフである。
図15】90:10のE PO/バクロフェン混合物および100%バクロフェンのIRスペクトルを示すグラフである。
図16】E PO/ガバペンチン混合物およびE PO/プレガバリン混合物のIRスペクトルを示すグラフである。
図17】2つのバクロフェン顆粒バッチのふるい分け分析による粒径分布を示すグラフである。
図18】3つのバクロフェン最終ブレンドのふるい分け分析による粒径分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に示した事項は、例証のためのものであり、本開示の様々な実施形態の例示的な議論のみを目的とし、開示された主題の原理および概念的側面について、最も有用で容易に理解されると考えられる説明を提供する。これに関連して、本開示の基本的な理解に必要である以上に、開示された主題の詳細を示す試みは行われず、説明は、本開示のいくつかの形態を実際にどのように具現することができるかを当業者に明らかにするものである。
【0017】
以下の開示は、添付の図を時折参照しながら、より詳細な実施形態を参照する。しかし、開示された主題は、異なる形態で具現化することが可能であり、本明細書に規定された実施形態に限定されると解釈されるべきではない。
【0018】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を持つ。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、限定することを意図するものではない。本明細書および特許請求の範囲で使用される、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確にそうでないと示さない限り、複数形も含むことが意図されている。また、表現「少なくとも1つ」、および「1つまたは複数の」は相互に交換可能であることが意図されており、これらの使用は、「a」、「an」、および「the」が先行する説明または請求された特徴の範囲を単数形に限定することが意図されたものではない。
【0019】
本明細書に挙げられている全ての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、特に明記されない限りその全体が参照によって明示的に組み込まれる。
【0020】
特に明記されない限り、成分の量、反応条件等を表す、
明細書および特許請求の範囲で使用される全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修正されていると理解される。したがって、反対の指示がない限り、明細書および特許請求の範囲に規定されている数値パラメーターは、特定の実施形態によって得ようとする所望の特性に応じて変化する可能性のある近似値である。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適応を制限するものではなく、各数値パラメーターは、有効桁数および通常の四捨五入の手法を考慮して解釈されるべきである。
【0021】
開示された主題の広範な範囲を示す数値範囲およびパラメーターが近似値であるにも関わらず、具体例で規定された数値は可能な限り正確に報告される。しかし、いずれの数値も、その数値を得るために使用される方法に見られる標準偏差に必然的に起因する一定の誤差を内在的に含んでいる。本明細書全体にわたって与えられるあらゆる数値範囲は、その広い数値範囲中に含まれるあらゆる狭い数値範囲を、あたかもその狭い数値範囲が全て本明細書に明示的に記載されているかのように含む。
【0022】
本明細書中の化合物への言及は、そのような化合物のエステルおよび塩を含む。したがって、明確に開示されていなくても、そのようなエステルおよび塩は、化合物自体の言及によって企図され包含される。
【0023】
本出願における全てのパーセント測定値は、特に断りのない限り与えられた試料重量の100%に基づいた重量で測定される。したがって、例えば、30%は試料100重量部のうちの30重量部を表す。
【0024】
本開示は、活性成分、および安定化剤を含む組成物に部分的に関する。組成物は、医薬組成物であってもよい。
【0025】
本明細書では、「医薬組成物」は、活性成分および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を意味する。本明細書では、用語「薬学的に許容される賦形剤」は医薬製剤の他の成分と適合し、通常の量または治療有効量で投与した場合に、意図される対象に害を与えない化合物または成分を意味する。本明細書では、「意図される対象」は動物および/またはヒトを含む。用語「患者」および「対象」は相互に交換可能に使用することができる。
【0026】
適切な賦形剤は当業者に知られており、その例は、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients (Kibbe(編),第3編(2000),American Pharmaceutical Association,Washington,D.C.)およびRemington’s Pharmaceutical Sciences(Gennaro(編),第20編(2000),Mack Publishing,Inc.,Easton,Pa.)に記載されており、賦形剤および剤形に関するこれらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。賦形剤の例としては、充填剤、増量剤、希釈剤、湿潤剤、溶剤、乳化剤、保存剤、吸収促進剤、徐放性マトリックス、デンプン、糖、微結晶セルロース、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、着香剤、芳香剤、抗酸化剤、可塑剤、ゲル化剤、増粘剤、硬化剤、固化剤、懸濁化剤、界面活性剤、保湿剤、担体、安定化剤およびそれらの混合物等があるが、これらに限定されない。
【0027】
本開示には、医薬製剤に含まれることが想定される多数かつ多様な成分が含まれる。本発明者らがそのような成分を含めることを明確に想定している場合、そのような成分を除外することも明確に想定していることを認識すべきである。したがって、本明細書に開示される全ての成分を除外することもまた明確に想定される。
【0028】
本明細書では、「活性成分」は、疾患の診断、治癒、緩和、治療、もしくは予防において薬理活性もしくは他の直接的な効果をもたらすこと、または意図される対象の身体構造もしくは任意の身体機能に影響を与えることを意図した組成物の任意の成分である。活性成分には、組成物の製造中に化学変化し、指定された活性または影響をもたらすことを意図した修正された形態で完成した組成物中に存在する可能性のある組成物の成分が含まれる。活性成分には、完成した組成物の成分も含まれ、これは意図された使用者への完成した薬品の投与中または投与後に化学変化を起こし、指定された活性または効果をもたらすことを意図した修正された形態に変化する可能性があるものである。例えば、活性成分は、指定された活性または影響をもたらす成分の薬学的に許容される塩であり得る。
【0029】
本明細書では、用語「薬学的に許容される塩」は、意図される対象が生理的に許容する塩を含む。そのような塩は、通常は無機酸および/または有機酸から調製される。適切な無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、およびリン酸等がある。有機酸は、脂肪族、芳香族、カルボン酸、および/またはスルホン酸であり得る。適切な有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、ムチン酸、酒石酸、パラトルエンスルホン酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フロ酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、パモ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸(ベシル酸)、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸、およびガラクツロン酸等がある。
【0030】
組成物は1つの活性成分のみ、または2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、もしくは9つの活性成分等の複数の活性成分、または9より多くの活性成分を含有していてもよい。
【0031】
活性成分は、医薬品有効成分(API)の中から選択することができる。APIは医薬製品の製造に使用することを意図した物質または物質の混合物であり、医薬製品の製造に使用した場合、医薬製品の活性成分となる。そのような物質は、疾患の診断、治癒、緩和、治療、もしくは予防において薬理活性もしくは他の直接的な効果を与えること、または意図される対象の身体構造もしくは身体機能に影響を与えることが意図されている。
【0032】
いくつかの実施形態では、活性成分は4-アミノ-3-置換ブタン酸誘導体等のラクタム形成成分である。4-アミノ-3-置換ブタン酸誘導体の例としては、バクロフェン、ガバペンチン、およびプレガバリン等がある。
【0033】
いくつかの実施形態では、活性成分は、バクロフェン(4-アミノ-3-(4-クロロフェニル)ブタン酸)およびその薬学的に許容される塩から選択される。バクロフェンは以下の構造:
【0034】
【化1】
を含む。
【0035】
バクロフェン等の活性成分は、顆粒、粉末、または微粉末形態(例えば、Polpharma社のMicronized、USP標準)等の任意の形態であり得る。特定の科学理論に拘束されることなく、本発明者らは、粒径が小さいと表面積が大きくなり、バクロフェンと安定化剤の間の接触面積が増加し、安定化剤がバクロフェンと相互作用してバクロフェンを安定化する能力が向上するという仮説を立てている。活性成分は粒径を小さくするために粉砕され得る。
【0036】
活性成分の平均粒径は、一般に1000μm未満、例えば750μm未満、500μm未満、250μm未満、または125μm未満である。平均粒径は、25μmより大きく、または50μmより大きく、または75μmより大きく、または100μmより大きく、または125μmより大きく、または150μmより大きくてもよい。平均粒径は、一般に約50~約750μm、または約75~約500μm、または約100~約200μmの範囲となる。平均粒径は、安定化効果が得られさえすれば重要ではない。
【0037】
組成物は、活性成分に加えて、活性成分として使用される場合の4-アミノ-3-置換ブタン酸誘導体またはその薬学的に許容される塩のラクタム自己分解生成物の形成を阻害する安定化剤を含む。バクロフェンの主なラクタム自己分解生成物は、4-(4-クロロフェニル)-2-ピロリジン(4-CPP)(本明細書において「不純物A」とも呼ぶ)である。
【0038】
本明細書では、用語「安定化剤」は、4-アミノ-3-置換ブタン酸誘導体またはその薬学的に許容される塩のラクタム自己分解生成物の形成を低減または阻害する化合物または組成物中の化合物を指す。実施形態において、用語「安定化剤」は、安定化剤として米国特許第7,309,719号に記載されているα-アミノ酸を除外し、以下のいずれかを含む:
グリシン、フェニルグリシン、ヒドロキシフェニルグリシン、ジヒドロキシフェニルグリシン、L-アラニン、ヒドロキシ-L-アラニン、L-ロイシン、ヒドロキシ-L-ロイシン、ジヒドロキシ-L-ロイシン、L-ノルロイシン、メチレン-L-ノルロイシン、L-ケトノルロイシン、L-イソロイシン、ヒドロキシ-L-イソロイシン、ジヒドロキシ-L-イソロイシン、L-バリン、ヒドロキシ-L-バリン、L-イソバリン、L-ノルバリン、ヒドロキシ-L-ノルバリン、ヒドロキシ-L-ケトノルバリン、L-メチオニン、L-ホモメチオニン、L-エチオニン、L-スレオニン、アセチル-L-スレオニン、L-トリプトファン、ヒドロキシ-L-トリプトファン、メチル-L-トリプトファン、L-チロシン、ヒドロキシ-L-チロシン、メチル-L-チロシン、ブロモ-L-チロシン、ジブロモ-L-チロシン、3,5-ジヨード-L-チロシン、アセチル-L-チロシン、クロロ-L-チロシン、L-m-チロシン、L-レボドパ、L-メチルドパ、L-チロキシン、L-セリン、アセチル-L-セリン、L-ホモセリン、アセチル-L-ホモセリン、エチル-L-ホモセリン、プロピル-L-ホモセリン、ブチル-L-ホモセリン、L-シスチン、L-ホモシスチン、メチル-L-システイン、アリル-L-システイン、プロピル-L-システイン、L-フェニルアラニン、ジヒドロ-L-フェニルアラニン、ヒドロキシメチル-L-フェニルアラニン、L-アミノ酪酸、L-アミノイソ酪酸、L-ケトアミノ酪酸、ジクロロ-L-アミノ酪酸、ジヒドロキシ-L-アミノ酪酸、フェニル-L-アミノ酪酸、L-アミノ吉草酸、L-アミノヒドロキシ吉草酸、ジヒドロキシ-L-アミノ吉草酸、L-アミノイソ吉草酸、L-アミノヘキサン酸、メチル-L-アミノヘキサン酸、L-アミノヘプタン酸、L-アミノオクタン酸、シトルリン、ならびにそれらのD体およびDL体等の中性α-アミノ酸;
L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-カルボシステイン、L-アミノグルタル酸、L-アミノコハク酸、L-アミノアジピン酸、L-アミノピメリン酸、ヒドロキシ-L-アミノピメリン酸、メチル-L-アスパラギン酸、ヒドロキシ-L-アスパラギン酸、メチル-L-グルタミン酸、メチルヒドロキシ-L-グルタミン酸、L-メチレングルタミン酸、ヒドロキシ-L-グルタミン酸、ジヒドロキシ-L-グルタミン酸、およびヒドロキシ-L-アミノアジピン酸等、ならびにそれらのD体およびDL体等の酸性α-アミノ酸;
L-アルギニン、L-リジン、L-オルニチン、L-カナバニン、L-カナリン、ヒドロキシ-L-リジン、L-ホモアルギニン、ヒドロキシ-L-ホモアルギニン、ヒドロキシ-L-オルニチン、L-ジアミノプロピオン酸、L-ジアミノヘキサン酸、L-ジアミノ酪酸、L-ジアミノ吉草酸、L-ジアミノヘプタン酸、およびL-ジアミノオクタン酸等、ならびにそれらのD体およびDL体等の塩基性α-アミノ酸;および
ジアミノコハク酸、ジアミノグルタル酸、ジアミノアジピン酸、およびジアミノピメリン酸等のα,Ω-ジアミノジカルボン酸。
【0039】
安定化剤は、ポリメタクリレート系のコポリマーから選択されてもよく、このコポリマーにはメタクリル酸およびメタクリル酸/アクリル酸エステルまたはそれらの誘導体に基づくアニオン性、カチオン性、および中性のコポリマーが含まれ、これらにはメタクリル酸アミノコポリマー、メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸ジメチルアミノエチルコポリマー、およびメタクリル酸ブチルコポリマー、特に、メタクリル酸エステルコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸アンモニオアルキルコポリマー、およびメタクリル酸アミノアルキルコポリマーが含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、安定化剤はポリ(メタクリル酸ブチル-co-メタクリル酸(2-ジメチルアミノエチル)-co-メタクリル酸メチルである。
【0040】
活性成分と安定化剤の混合方法は重要ではなく、薬学的に許容される任意の方法で行うことができる。タンブラー式、対流式、および流動式ブレンダーは、例えば活性成分と安定化剤を乾燥形態で混合する際に有用であり、撹拌器、および高せん断ミキサー等のヘビーミキサーは、例えば活性成分と安定化剤を液体と混合する際に有用である。組成物は、所望の剤形、放出速度、またはその他の製造上の好みに応じて、湿式または乾式造粒により、顆粒製剤にすることができる。
【0041】
湿式造粒の溶剤は、製造者の好みに基づいて選択することができ、重要ではない。例としてはエタノールおよび水等があるが、これらに限定されない。必要に応じて、PVP等の結合剤も含めることができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、製剤は、活性成分の分子と安定化剤の分子との相互作用を最大化するように製造される。これは、活性成分と安定化剤が緊密に混合されたマトリックス製剤の形態をとることもでき、活性成分を粉砕してその表面積と安定化剤との相互作用を高めた出発原料を用いることもある。特定の動作理論に拘束されることを望まないが、安定化効果は安定化剤と活性成分との化学的相互作用によってもたらされると思われる。したがって、安定化剤および活性成分の能力を高めるステップは、安定化効果を最大化するのに役立つと考えられる。
【0043】
湿式造粒プロセスでは、活性成分と安定化剤を乾式ブレンドにより緊密に混合した後、造粒溶剤を添加することができる。このプロセスでは活性成分と安定化剤との相互作用を改善することを意図しており、ポリマーを先ず溶剤に溶解し、次に乾燥した活性成分と混合するプロセスとは区別される。
【0044】
当業者であれば、上述した活性成分と安定化剤の緊密な混合物を有するマトリックスは、当技術分野で一般的に理解されているようなコーティングまたはカプセル化された活性成分とは構造的に異なることを容易に理解できるだろう。すなわち、コーティングまたはカプセル化された製品とは、活性成分を含有するコアがコーティング材料に完全に包まれているか、または覆われているものである。そのような構造では、活性成分と安定化剤との相互作用が最大限に発揮されない。
【0045】
一方で、マトリックス顆粒中の安定化剤と活性成分の緊密な混合物は、安定化剤で完全に覆われていない顆粒の外周部にいくつかの活性成分を有することができる。本開示に基づくこのようなマトリックスは、活性成分をコーティングするまたは包むために設計されるのではなく、むしろ活性成分と安定化剤との相互作用を最大化することを意図したものである。しかし、明確に言うと、本発明者らは、安定化剤と活性成分の緊密な混合物(すなわち、活性成分の安定化組成物)から形成された顆粒が、様々な効果のためにコーティング材料(その例は以下でより詳細に議論される)でさらにコーティングされ得ることを想定している。
【0046】
活性成分と安定化剤の緊密な混合物を含む組成物は、安定化剤と活性成分の重量比を約1:100~約20:1の範囲で含むことができ、例えば、約1:10~約10:1、約9:1~約20:1、約0.01:1~約7:1、約6:1~約13:1、約12:1~約20:1、約0.5:1~約10:1、約1:1~約7:1、約1.5:1~約18:1、約1.6:1~約20:1、または約1.8:1~約7.5:1であり、具体例は、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2:1、2.1:1、2.4:1、2.6:1、3:1、4:1、および5:1である。範囲の下限は、約0.01:1以上の任意の値であってもよく、範囲の上限は、下限が上限以下である限り、独立して約20:1以下の任意の値であってもよい。
【0047】
組成物は、共に粉末形態である活性成分と安定化剤の比率を変えて配合することができる。あるいは、「活性顆粒」を活性成分と安定化剤の両方を含むように配合し、「プラセボ顆粒」を活性成分なしで配合し、2種類の顆粒の比率を調製することで最終比率を変化させることもできる。いくつかの実施形態では、プラセボ顆粒は、活性顆粒(すなわち、活性成分と安定化剤の緊密な混合物の顆粒)中に存在する安定化剤および賦形剤とほぼ同じ量の安定化剤および賦形剤を含有する。欠けている活性成分を、欠けている活性成分と同量の追加量で賦形剤の1つと置き換えて、プラセボ顆粒中の他の成分の比率を維持することができる。プラセボ顆粒は、活性顆粒と同じ平均直径を有することができる。非プラセボ顆粒をプラセボ顆粒と混合することにより、異なる強度の剤形を得ることができる。
【0048】
医薬組成物は、通常、意図される対象に所望の経路によって投与するのに適した剤形で提供される。様々な剤形を以下に記載するが、全ての可能な選択肢を含むことを意味するものではない。当業者であれば、例えば、上記の参照により組み込まれているRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されているような、使用に適した様々な剤形に精通している。任意の所与の場合に最も適した経路は、予防、治療、および/または管理される疾患および/または状態の性質および重症度によって異なる。例えば、医薬組成物は、経口、経鼻、直腸内、経膣、非経口、槽内、ならびに頬内および舌下等の局所の投与のために配合することができる。
【0049】
経口投与用の製剤として、カプセル剤、カシェ剤、丸薬、錠剤、ロゼンジ(通常はスクロースおよびアカシアまたはトランガカントの香味付けされた基剤を使用)、散剤、顆粒剤、水性または非水性液体の懸濁液、水中油型または油中水型の液体エマルジョン、エリキシル剤、シロップ剤、パスティーユ剤(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア等の不活性基剤を使用)、洗口剤、およびペースト等があり、それぞれが所定の量の安定化剤およびバクロフェン、その誘導体、またはその薬学的に許容される塩を含有し、1回または複数回の投与で治療量のバクロフェンを提供する。
【0050】
液体剤形は、本発明による安定化製剤を懸濁液の形態で含むことができる。例えば、コーティングされた、またはコーティングされていない安定化顆粒剤を投与のために液体に懸濁することができる。懸濁液は、懸濁液として製造しても、エンドユーザー(例えば、医師、薬剤師、患者)によって投与するために懸濁液として再構成されてもよい。本発明者らは、安定化製剤を溶解する液体に安定化製剤を溶解することにより安定化製剤を再構成することも想定している。この2つは製造者によって、またはエンドユーザーによって混合されることが可能であろう。
【0051】
経口投与用の固形剤形(カプセル剤、錠剤、丸薬、散剤、および顆粒剤等)では、活性成分、その誘導体、またはその薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される1つまたは複数の賦形剤と混合することができ、これには例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム等の担体;デンプン、噴霧乾燥または無水のラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、デキストロース、ソルビトール、キシリトール、セルロース、脱水または無水のリン酸水素カルシウム、および/またはケイ酸等の充填剤または増量剤;アカシア、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース(ナトリウム)、セルロース(微結晶)、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グルコース(液体)、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポビドン、デンプン(プレゼラチン化)、または
シロップ等の結合剤;グリセロール等の保湿剤;寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、プレゼラチン化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、クレー、微結晶セルロース、アルギン酸塩、ガム、および/または炭酸ナトリウム等の崩壊剤;パラフィン等の溶液遅延剤;第4級アンモニウム化合物等の吸収促進剤;セチルアルコールまたはモノステアリン酸グリセロール等の湿潤剤;カオリンおよびベントナイトクレー等の吸収剤;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ステリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、水素添加植物油、および/またはラウリル硫酸ナトリウム等の滑沢剤;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、コロイド状無水シリカ、および/またはタルク等の流動促進剤;合成香味油、着香芳香族化合物、天然油、植物の葉、花、および果実からの抽出物(桂皮油、ウィンターグリーン油、ペパーミント油、ベイ油、アニス油、ユーカリ、タイム油、バニラ、柑橘油(例えばレモン、オレンジ、ブドウ、ライム、およびグレープフルーツ)、果実精油(例えばリンゴ、バナナ、セイヨウナシ、モモ、イチゴ、キイチゴ、サクランボ、プラム、パイナップル、アンズ等)、二酸化チタンならびに/または食品および医薬品での使用が承認された染料等の着色剤および/または顔料;緩衝剤;分散剤、保存剤;および/または希釈剤等がある。
【0052】
固形剤形は、任意選択で、腸溶性のコーティング、および放出速度を修正するためのコーティング等のコーティングまたはシェルを施すか、またはこれを用いて調製してもよく、その例は医薬製剤の分野でよく知られている。例えば、そのようなコーティングは、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ゼラチン、医薬用グレーズ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸コポリマー、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、酢酸フタル酸ポリビニル、シェラック、スクロース、二酸化チタン、ワックス、またはゼインを含む。コーティング材料はさらに、タルク等の付着防止剤;ヒマシ油、ジアセチル化モノグリセリド、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル等の可塑剤;二酸化チタン等の乳白剤;ならびに/または着色剤および/もしくは顔料を含んでいてもよい。コーティングのプロセスは任意の適切な手段、例えば、GLATT(商標)、ACCELACOTA(商標)、および/またはHICOATER(商標)装置等の有孔(perforated)パンシステムの使用によって行うことができる。
【0053】
錠剤は任意の適切なプロセスによって形成することができ、その例は当業者により知られている。例えば成分は、錠剤化の前に適切な装置で混合することによって、乾式造粒、または、例えば水もしくはエタノールを用いて、湿式造粒され得る。錠剤化される成分の顆粒は、適切な噴霧/流動化または押出/球形化技術によっても調製することができる。
【0054】
速放性錠剤では、一般的に、賦形剤の選択により速い溶解が可能となる。錠剤は、典型的な投与方法(すなわち、飲み込みやすいように十分な量の水と一緒に)で丸ごと服用するように設計された、従来の瞬間放出錠剤であってよい。あるいは、錠剤は、口腔内で速溶性および/または速融性の錠剤として作用するように適切な賦形剤と共に配合することができる。キシリトールは、口腔内崩壊製剤の賦形剤としてとりわけ有用である。錠剤はチュアブル剤形または発泡剤形の形態であることもできる。発泡剤形では、通常、錠剤を崩壊、溶解、および/または分散させる適切な液体に錠剤を添加する。
【0055】
錠剤は通常、高速で錠剤を製造するための装置を使用して工業規模で製造しやすいように、適切な硬さおよび砕けやすさを持つように設計される。また、錠剤はあらゆる種類の容器に詰めるまたは充填することができる。錠剤の硬さが不十分である、または砕けやすい場合には、対象または患者によって服用される錠剤が壊れるまたは粉々になる可能性がある。この硬さの不十分さ、または砕けやすさにより、対象または患者は投与量が正しいことを確信できなくなる。錠剤の硬さ、崩壊速度、および他の特性は錠剤の形状の影響を受ける。錠剤は円形、扁平形、長円形、または他の薬学的に許容される任意の形状であり得る。
【0056】
固形組成物はここで説明した賦形剤のいずれかを使用して、ソフトまたはハードゼラチンカプセルに封入することができる。例えば、カプセル封入剤形には、ラクトースおよび微結晶等の充填剤;コロイド状二酸化ケイ素およびタルク等の流動促進剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;およびデンプン(例えば、トウモロコシデンプン)等の崩壊剤を含むことができる。カプセル充填装置を使って、カプセル化される成分を合わせて粉砕し、ふるいがけし、混合し、合わせて詰め、カプセル内に収めることができる。
【0057】
組成物には、即時放出、修正放出、持続放出、および放出制御製剤および剤形、ならびにこれらの任意の組合せが含まれる。
【0058】
本明細書では、用語「即時放出」は、大幅に遅延することなく、溶解時に薬剤を放出する製剤および剤形を表す。いくつかの実施形態では、そのような製剤は、口、食道、および/または胃を含む上部GIで薬剤を放出する。
【0059】
異なる種類の改良された剤形を簡潔に以下に記載する。このような形態のより詳細な議論については、例えば、The Handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology,D.L.Wise(編),Marcel Dekker,Inc.,New York(2000)、およびTreatise on Controlled Drug Delivery:Fundamentals,Optimization,and Applications, A.Kydonieus(編),Marcel Dekker,Inc.,New York,(1992)にも記載されており、これらのそれぞれの関連する内容は、この目的のために参照により本明細書に組み込まれる。修正放出剤形の例は、例えば、米国特許第3,845,770号、第3,916,899号、第3,536,809号、第3,598,123号、第4,008,719号、第5,674,533号、第5,059,595号、第5,591,767号、第5,120,584号、第5,073,543号、第5,639,476号、第5,354,556号、および第5,733,566号にも記載されており、これらの医薬製剤の議論のために、これらの開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
本明細書では、表現「修正放出」は、製剤からの薬剤の所望の放出を達成する製剤または剤形を表す。例えば修正放出製剤は、患者内で、治療的に有効な用量の医薬活性化合物の影響または効果を延長することができる。そのような製剤を本明細書では「延長放出製剤」と呼ぶ。医薬活性化合物の治療レベルを維持することに加えて、修正放出製剤は、活性化合物の放出を指定された期間遅延させるように設計することもできる。そのような化合物を本明細書では「遅延放出」の「遅延発現」製剤または剤形と呼ぶ。さらに、修正放出製剤は遅延放出製剤と延長放出製剤の両方の特性を示す場合があるため、「遅延発現、延長放出」製剤と呼ばれることもある。
【0061】
修正放出製剤の利点には、薬剤の活性の延長、投与回数の減少、患者のコンプライアンスの向上、および腸管内の特定の場所に薬剤を送達する能力等が含まれ得る。修正放出製剤で使用するのに適した成分(例えば、ポリマー、賦形剤等)、およびその製造方法は、例えば、米国特許第4,863,742号にも記載されており、これらの目的のために参照により組み込まれる。
【0062】
修正放出製剤はマトリックスベース剤形として提供され得る。マトリックス製剤は親水性、例えば水溶性、および/または疎水性、例えば非水溶性のポリマーを含むことができる。マトリックス製剤は任意選択で機能性コーティングを用いて調製することができ、このコーティングは腸溶性(例えば、pHに依存した溶解性を示す)または非腸溶性(例えば、pHに依存しない溶解性を示す)であり得る。
【0063】
マトリックス製剤は、例えば、直接圧縮または湿式造粒を利用することにより調製することができる。その後、上述のような機能性コーティングを塗布してもよい。加えて、機能性コーティングを塗布する前に、マトリックス錠剤のコア上にバリアまたはシーラントコートを施してもよい。バリアまたはシーラントコートは、活性成分と相互作用する可能性のある機能性コーティングから活性成分を分離する目的で使用される場合もあれば、水分が活性成分と接触するのを防ぐ場合もある。バリアおよびシーラントの詳細は以下の通りである。本明細書に記載されている様々な特徴を組み合わせることができる方法は、製剤が安定化製剤であるならば制限されない。
【0064】
本発明者らは、安定化製剤のマトリックス組成物は、活性成分と安定化剤を混合すること、およびその組成物をマルチユニット含有カプセル剤またはモノリシック錠剤等の固形剤形に形成することによって形成されると想定する。本発明者らは、製剤からの活性剤の放出を修正するために使用され得るポリマー等の他の賦形剤の使用も想定する。
【0065】
マトリックスベース剤形では、例えば、活性成分、安定化剤、および任意選択の薬学的に許容される賦形剤が1つまたは複数のポリマー中に分散していてもよい。1つまたは複数のポリマーは、通常、少なくとも1つの水溶性ポリマーおよび/または少なくとも1つの非水溶性ポリマーを含む。活性成分は、拡散および/または侵食により剤形から放出され得る。
【0066】
水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはポリエチレングリコール、および/またはこれらの混合物等がある。
【0067】
非水溶性ポリマーとしては、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、三酢酸セルロース、複数の群におけるポリメチル等があるが、これらの分類は説明的なものにすぎず、特定の賦形剤のいかなる使用をも制限することを意図するものではない。
【0068】
製剤中のポリマーの量および種類、ならびに水溶性ポリマーと非水溶性ポリマーの比率は、活性成分、その誘導体、またはその薬学的に許容される塩の所望の放出プロファイルを達成するために選択することができる。例えば、水溶性ポリマーの量に対して非水溶性ポリマーの量を増やすことで、薬剤の放出を遅延する、または緩やかにすることができる。これは、ポリマーマトリックスの不透過性の増加、および、いくつかの場合では、GI管を通過する間の侵食速度の低下が一因となっている。
【0069】
修正放出製剤は、膜制御製剤としても提供され得る。膜制御製剤は、モノリシック型(例えば錠剤)またはマルチユニット型(例えばペレット)の急速放出コアを調製し、そのコアを膜でコーティングすることにより製造することができる。膜制御コアは、その後さらに機能性コーティングでコーティングすることができる。膜制御コアと機能性コーティングの間には、バリアまたはシーラントを塗布することができる。膜制御剤形の詳細は以下の通りである。
【0070】
修正放出製剤は、少なくとも1つのポリマー材料を含むことができ、それは膜コーティングとして活性成分含有顆粒コアに塗布することができる。適切な水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、および/またはこれらの混合物等がある。
【0071】
適切な非水溶性ポリマーとしては、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸イソブチル、ポリメタクリル酸ヘキシル、ポリメタクリル酸イソデシル、ポリメタクリル酸ラウリル、ポリメタクリル酸フェニル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸イソプロピル、ポリアクリル酸イソブチル、ポリアクリル酸オクタデシル、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリ酸化エチレン、ポリテレフタル酸エチレン、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、またはポリウレタン、および/またはこれらの混合物等がある。EUDRAGIT(商標)ポリマー(Rohm Pharma社製)等のメタクリレートコポリマーはアクリレートおよび/またはメタクリレートをベースにしたポリマーラッカー物質である。様々なメタクリレートコポリマーが容易に入手可能であり、その例は上述の通りである。特定のメタクリレートコポリマーは、本発明において安定化剤として機能することができるが、メタクリレートコポリマーは、活性成分の放出を修正するために使用することもできる。この点に関して、全てのメタクリレートコポリマーが安定化効果を付与するとは考えられないが、全てのメタクリレートコポリマーが製剤からの活性成分の放出を修正するのに有用であると考えられることに留意すべきである。
【0072】
膜コーティングは、主割合(すなわち、全ポリマー含有量の50%より多く)の1つまたは複数の薬学的に許容される水溶性ポリマー、および任意選択で、小割合(すなわち、全ポリマー含有量の50%未満)の1つまたは複数の薬学的に許容される非水溶性ポリマーを含むポリマー材料を含むことができる。あるいは、膜コーティングは、主割合(すなわち、全ポリマー含有量の50%より多く)の1つまたは複数の薬学的に許容される非水溶性ポリマー、および任意選択で、小割合(すなわち、全ポリマー含有量の50%未満)の1つまたは複数の薬学的に許容される水溶性ポリマーを含むポリマー材料を含むことができる。
【0073】
コーティング膜は、ポリマー材料の透過性を高めるために、少なくとも1つの可溶性賦形剤をさらに含むことができる。好適には、可溶性賦形剤は、可溶性ポリマー、界面活性剤、アルカリ金属塩、有機酸、糖、および糖アルコールの中から選択される。そのような可溶性賦形剤には、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムまたはポリソルベイト等の界面活性剤、酢酸、アジピン酸、クエン酸、フマル酸、グルタル酸、リンゴ酸、コハク酸、および酒石酸等の有機酸、デキストロース、フルクトース、グルコース、ラクトース、およびスクロース等の糖、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、およびキシリトール等の糖アルコール、キサンタンガム、デキストリン、およびマルトデキストリン等があ
る。いくつかの実施形態では、ポリビニルピロリドン、マンニトール、および/またはポリエチレングリコールが可溶性賦形剤として使用できる。可溶性賦形剤は、ポリマーの総乾燥重量を基準にして、約1重量%~約10重量%の量で使用することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、ポリマー材料は、胃腸液にも不溶性である少なくとも1つの非水溶性ポリマー、および少なくとも1つの水溶性の孔形成化合物を含む。例えば、非水溶性ポリマーは、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、および/またはポリビニルアルコールのターポリマーを含むことができる。適切な水溶性の孔形成化合物としては、サッカロース、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ポリビニルピロリドン、および/またはポリエチレングリコール等がある。孔形成化合物は、非水溶性ポリマー全体に均一にまたはランダムに分布していてもよい。通常は、孔形成化合物は、約1~約10部の非水溶性ポリマーのそれぞれに対して、約1部~約35部を含んでいる。
【0075】
このような剤形は、溶解媒体(例えば、腸液)と接触すると、ポリマー材料内の孔形成化合物が溶解して多孔質構造を作り、それを通して薬物が拡散する。このような製剤の詳細については米国特許第4,557,925号に記載されており、その関連する部分はこの目的のために参照により本明細書に組み込まれる。多孔質膜は、胃での放出を阻害するために、本明細書に記載されているように、腸溶性コーティングを用いてコーティングすることもできる。
【0076】
ポリマー材料は、充填剤、可塑剤、および/または消泡剤等の1つまたは複数の補助剤を含むことができる。代表的な充填剤としては、タルク、ヒュームドシリカ、モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、カオリン、コロイド状シリカ、石膏、微粉末シリカ、三ケイ酸マグネシウム等がある。使用する充填剤の量は、ポリマーの総乾燥重量を基準にして、通常約2重量%~約300重量%の範囲であり、約20重量%~約100重量%の範囲であり得る。一実施形態では、タルクが充填剤である。
【0077】
コーティング膜、および機能性コーティングも同様に、ポリマーの加工を改善させる材料を含むこともできる。そのような材料は一般に可塑剤と呼ばれ、例えば、アジピン酸塩、アゼライン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、イソエブケート、フタル酸塩、セバシン酸塩、ステアリン酸塩、およびグリコール等がある。代表的な可塑剤としては、アセチル化モノグリセリド、グリコール酸ブチルフタリルブチル、酒石酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、グリコール酸エチルフタリルエチル、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、クエン酸トリアセチン、トリアセチン、トリプロピノイン、ジアセチン、フタル酸ジブチル、アセチルモノグリセリド、ポリエチレングリコール、ヒマシ油、クエン酸トリエチル、多価アルコール、酢酸エステル、三酢酸グリセロール、クエン酸アセチルトリエチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ブチルオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ブチルオクチル、アゼライン酸ジオクチル、エポキシ化タレート、トリメリト酸トリイソオクチル、フタル酸ジエチルヘキシル、フタル酸ジ-n-オクチル、フタル酸ジ-i-オクチル、フタル酸ジ-i-デシル、フタル酸ジ-n-ウンデシル、フタル酸ジ-n-トリデシル、トリメリト酸トリ-2-エチルヘキシル、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、モノカプリル酸グリセリル、およびモノカプリン酸グリセリル等がある。一実施形態では、可塑剤はセバシン酸ジブチルである。ポリマー材料に使用される可塑剤の量は、通常は、乾燥ポリマーの重量を基準にして、約10%~約50%の範囲であり、例えば、約10%、20%、30%、40%、または50%である。
【0078】
消泡剤もまた含むことができる。使用する消泡剤の量は、通常、最終製剤の約0%~約0.5%である。
【0079】
膜制御製剤に使用されるポリマーの量は、通常、送達される薬剤の量、薬剤送達の速度および場所、薬剤放出の時間遅延、および製剤中の多微粒子のサイズ等の、所望の薬剤送達特性を達成するように調整される。適用されるポリマーの量は、通常は約10%~約100%、例えば約25%~約70%の重量増加をコアにもたらす。
【0080】
コポリマー、充填剤、可塑剤、ならびに任意の賦形剤および加工助剤等の、ポリマー材料の全ての固形成分の組合せにより、通常は約10%~約450%の重量増加、例えば約30%~約160%の重量増加がコアにもたらされる。
【0081】
ポリマー材料は、任意の既知の方法、例えば、流動床コーター(例えば、ワースターコーティング)またはパンコーティング、または噴霧乾燥システムを使用して噴霧することにより、塗布することができる。コーティングされたコアは、ポリマー材料を塗布した後、通常、乾燥または硬化させる。硬化とは、安定した放出速度を得るのに十分な時間、多微粒子を制御された温度で保持することを意味する。硬化は、例えば、オーブンまたは流動床乾燥機等で行うことができる。硬化は、室温より高い任意の温度で行うことができる。
【0082】
シーラントまたはバリアは、ポリマーコーティングに塗布することも可能である。シーラントまたはバリア層は、ポリマー材料を塗布する前にコアに塗布することもできる。シーラントまたはバリア層は、バクロフェン、その誘導体、または薬学的に許容される塩の放出を修正することを意図するものではない。適切なシーラントまたはバリアは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、およびキサンタンガム等の透過性または可溶性の物質である。
【0083】
シーラントまたはバリア層の加工性を向上させるために、他の物質を添加できる。そのような物質としては、タルク、コロイド状シリカ、ポリビニルアルコール、二酸化チタン、微粉末シリカ、ヒュームドシリカ、モノステアリン酸グリセロール、三ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、またはこれらの混合物等がある。シーラントまたはバリア層は、流動床コーター(例えば、ワースターコーティング)またはパンコーティングシステム等の既知の手段を使用して、溶液(例えば、水性)または懸濁液から塗布することができる。適切なシーラントまたはバリアとしては、例えば、OPADRY WHITE Y-1-7000(二酸化チタン、ヒドロキシプロピルセルロース、およびポリエチレングリコールの混合物)およびOPADRY OY/B/28920 WHITE(ポリビニルアルコール、二酸化チタン、タルク、レクチン、およびキサンタンガム)等があり、これらはそれぞれ、イギリスのColorcon Limited社から入手できる。
【0084】
組成物は、カプレット、カプセル剤、投与前の懸濁用粒子、サシェ、または錠剤の形態で多微粒子活性成分を含有する経口剤形であってもよい。剤形が錠剤の形態の場合、錠剤は崩壊錠、速溶錠、発泡錠、速融錠、および/またはミニタブレットであり得る。剤形は、薬剤の経口投与に適した任意の形状、例えば球状、立方体状の楕円形、または楕円体状であることができる。剤形は、当技術分野で知られている方法で多微粒子から調製することができ、必要に応じて追加の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0085】
剤形は、モノリシックおよび/またはマルチユニットの剤形であってもよい。剤形は機能性コーティングを有していてもよい。このようなコーティングは、一般に薬剤の放出を所定の期間の間遅延させる目的で行われる。例えば、このようなコーティングは、剤形が胃酸または消化液にさらされることなく胃を通過することを可能にする。したがって、このようなコーティングは、腸上部等の消化管内の所望の位置に到達すると、溶解または侵食される可能性がある。
【0086】
このような機能性コーティングは、pH依存性またはpH非依存性の溶解性プロファイルを示すことがある。pH非依存性のプロファイルを持つものは、一般に所定の期間後に侵食または溶解し、その期間は一般にコーティングの厚さに正比例する。一方、pH依存性のプロファイルを持つものは、酸性pHの胃の中ではその完全性を維持するが、より塩基性の腸上部に入るとすぐに侵食または溶解し得る。
【0087】
したがって、マトリックスベース、浸透圧ポンプベース、または膜制御製剤は、薬剤の放出を遅延する機能性コーティングでさらにコーティングしてもよい。例えば、膜制御製剤は、腸上部に到達するまで膜制御型製剤の露出を遅延する腸溶性コーティングでコーティングすることができる。酸性の胃を離れより塩基性の腸に入ると、腸溶性コーティングが溶ける。本発明によれば、その後、膜制御製剤は胃腸液にさらされ、それから、バクロフェン、その誘導体、またはその薬学的に許容される塩を長期間にわたって放出する。このような機能性コーティングの例は、当業者にはよく知られている。
【0088】
本明細書に記載されている経口剤形のいずれも、カプレット、カプセル剤、ビーズ、顆粒剤、投与前の懸濁用粒子、サシェ、または錠剤の形態で提供することができる。剤形が錠剤の形態の場合、錠剤は崩壊錠、速溶錠、発泡錠、速融錠、および/またはミニタブレットであり得る。剤形は、薬剤の経口投与に適した任意の形状、例えば球状、立方体状の楕円形、または楕円体状であることができる。
【0089】
本明細書に記載されている医薬組成物および剤形は、バクロフェン、その誘導体、またはその薬学的に許容される塩以外の、同じ医薬効果を有していても有していなくてもよい少なくとも1つの追加の活性成分をさらに含んでいてもよい。そのような化合物は、バクロフェン、その誘導体、またはその薬学的に許容される塩を用いて治療、予防、および/または管理されているのと同じ状態を治療、予防、および/または管理するために含まれていてもよく、または、バクロフェン、その誘導体、またはその薬学的に許容される塩を用いて治療、予防、および/または管理されているのと異なる状態を治療、予防、および/または管理するために含まれていてもよい。あるいは、そのような追加の医薬化合物を個別の製剤で提供し、本開示によるバクロフェン、その誘導体、またはその薬学的に許容される塩の組成物と一緒に対象または患者に併用投与してもよい。そのような個別の製剤は、バクロフェン、その誘導体、またはその薬学的に許容される塩の組成物の投与の前、後、または同時に投与してもよい。
【0090】
上述の組成物は、治療有効量の活性成分、その誘導体、またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする対象または患者に投与するステップを含む、様々な疾患および/または状態を治療、予防、および/または管理するための方法で使用することができる。
【0091】
表現「治療有効量」とは、単独で、または1つまたは複数の他の活性成分と組み合わせて、特定の疾患および/または状態の予防、治療、および/または管理において任意の治療上の利益をもたらす、活性成分、その誘導体、またはその薬学的に許容される塩の量を指す。
【0092】
バクロフェンは、4-アミノ-3-置換ブタン酸誘導体であり、抑制性神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)の構造類似体であり、GABA受容体サブタイプを刺激することによりその効果を発揮することができる。バクロフェンは、骨格筋弛緩薬および抗痙攣剤である。バクロフェンは、多発性硬化症による痙縮の兆候および症状の緩和に有用であり、特に屈曲発作とそれに伴う疼痛、クローヌス、筋硬直の緩和に有用である。本発明者らは、本発明による安定化バクロフェン製剤を、バクロフェンが承認されている任意の適応症に使用することができると想定する。
【0093】
投与される活性成分の用量、ならびに投与頻度は、使用する特定の剤形および投与経路によって異なる。また、投与量および投与頻度は、個々の対象または患者の年齢、体重、および反応によっても異なる。典型的な投与レジメンは、有能な医師であれば、過度な実験をすることなく容易に決定することができる。また、臨床医または治療医は、個々の対象または患者の反応に合わせて、いつ、どのように治療を中断し、調整し、終了するかを知ることができることにも留意すべきである。
【0094】
一般に、本開示による製剤のいずれかを用いて痙縮に関連した状態を治療、予防、および/または管理するための1日の総投与量は、約1mg~約500mg、または約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、120、140、150、160、180、200、250、300、350、400、450、もしくは500mg、またはその間の任意の数のバクロフェン、その誘導体、またはその薬学的に許容される塩である。他の適応症では、600、700、800、900、さらには1000mgといった高用量が必要になる場合もある。例えば、経口投与剤形の場合、1日の総投与量は、約10mg~約100mg、または約20mg~約90mg、または約30mg~約80mg、または約40mg~約70mgの範囲となり得る。したがって、単回経口投与は、約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、120、140、150、160、180、もしくは200mg、またはその間の任意の数のバクロフェン、その誘導体、またはその薬学的に許容される塩を含有するように製剤化することができる。バクロフェン、その誘導体、またはその薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物は、単回投与または分割投与で1日1回、2回、3回、4回、またはそれより多い回数投与することができる。あるいは、2日、3日、4日、5日、またはそれより多い日数毎に1回投与することができる。一実施形態では、医薬組成物は1日につき1回投与される。
【0095】
本明細書では、例えば「痙縮を予防する」または「痙縮の予防」のように、治療の文脈における用語「予防する」または「予防」は、痙縮の減少を指す。予防のためには、症状を100%取り除く必要はない。
【実施例
【0096】
本発明者らは、ポリ(メタクリル酸ブチル-co-メタクリル酸(2-ジメチルアミノエチル)-co-メタクリル酸メチル(EUDRAGIT(商標)E PO、Evonik社)の様々な組成物および製造工程でのバクロフェン、ガバペンチン、およびプレガバリンに対する安定化効果を、米国特許第7,309,719号で安定化剤として使用されているα-アミノ酸の安定化効果と比較して評価した。
【0097】
(実施例1)
加速安定性研究
バクロフェン製剤は、純粋なAPI、およびEUDRAGIT(商標) E PO(「PO」は粉末を意味し、本明細書で使用される「EPO」はEUDRAGIT(商標)E POを意味する)、グリシン、L-ロイシン、およびL-イソロイシンから選択される安定化剤を以下の表1に記載されているように、1、5、10%(m/m)の濃度で用いて、またはさらなる成分は用いずに調製した。製剤は、以下として調製した:
・乳鉢で処理した乾燥粉末ブレンド(T)、
・錠剤圧縮パンチングツールで圧縮した乾燥粉末ブレンド((K):10mm、円形、ノッチなし)、
・エタノール入り湿潤ブレンド(E)、および
・水入り湿潤ブレンド(W)。
【0098】
【表1】
【0099】
調製物はガラス性の密閉バイアル中で60℃で保存した。試料は初期、1週間後、および3週間後に採取した。試料は、HPLCを用いて不純物A(ラクタム)と未知の有機不純物について検査した。結果を図1~4に示す。(バクロフェンの場合、不純物Aは4-CPPである。)
【0100】
ガバペンチン製剤およびプレガバリン製剤もまた、表1に記載したバクロフェンの場合のAPIと安定化剤の比率と同じ比率で調製した。調製物は、ガラス製の密閉バイアル中で、ガバペンチンは60℃、プレガバリンは80℃で保存した。3つ全ての分子のラクタム不純物Aおよび未知の有機不純物の含有量を、HPLCを用いて、初期に、および定められた期間の保存後に分析した。これらの結果は図5~12に示す。
【0101】
図1~12は、乾式圧縮および湿式造粒等のいくつかの製造プロセスによって、EUDRAGIT(商標)Eを用いて、バクロフェン、ガバペンチン、およびプレガバリンの安定化され流動性のある医薬製剤が得られることを示している。しかしながら、予想外に、バクロフェンのみがEUDRAGIT(商標)Eによって安定化した。なお、これらの実験は、ラクタム形成を観察する能力を高めるために、安定化剤と比べて非常に多量の薬剤を用いて行われた。比較的低い安定化剤対活性比率でも安定化が観察されるが、本発明者らは、安定化効果を最大化するために、より高い安定化剤対活性比率を使用することを想定している。
【0102】
加速安定性のデータは、EUDRAGIT(商標)Eによる安定化がバクロフェン単独に特異的であることを示す。構造的に類似した分子であるガバペンチンおよびプレガバリンに関して集められたデータに基づき、EUDRAGIT(商標)Eはラクタム不純物Aの形成を加速するという逆の効果があることが観察された。以上をまとめると、EUDRAGIT(商標)Eはバクロフェンに対しては安定化効果を、ガバペンチンおよびプレガバリンに対しては不安定化効果を有することが観察された。
【0103】
(実施例2)
赤外分光法によるEUDRAGIT(商標)Eによる4-アミノ-3-置換ブタン酸誘導体に対する安定化メカニズムの評価
EUDRAGIT(商標)Eおよびそれから生じるバクロフェンに対する安定化効果のメカニズム的な理解をより明らかにするために、以下の表2に略述するようにいくつかの混合物を調製した。バクロフェンに対するEUDRAGIT(商標)Eの%w/w濃度は、潜在的な相互作用を分光学的に確認できるように変更した。
【0104】
【表2】
【0105】
EUDRAGIT(商標)EおよびBaclofen単独と比較して生じた分光学的変化を評価するために、表3に略述した混合物の赤外分光法を実施した。図13~15に示した分光データは、バクロフェン(振動C=O)の1530cm-1から1525cm-1へのEUDRAGIT(商標)E依存の変化、および1490cm-1のシグナルの低下を示し、これはEPOのアミノ基とバクロフェンのカルボキシル基の直接的な安定化相互作用を示している。バクロフェンとは対照的に、EUDRAGIT(商標)E依存のシフトはスペクトルの1400~1800cm-1の範囲では観察されず、図16に示すように、EUDRAGIT(商標)Eとガバペンチンおよびプレガバリンとの直接的な相互作用がないことを示している。
【0106】
(実施例3)
バクロフェン顆粒の形成
顆粒は、Zanchetta Roto P50を用いて8.79kgのスケールで製造した(10.000回分の単回投与)。バクロフェンおよび賦形剤を1.0mmのふるいにかけ、造粒機に投入し、10分間乾式ブレンドした。次に、エタノール96%を2バールの一定の噴霧圧で粉末床に噴霧した。続いて、チップの速度を上げ、湿潤混合物を10分間一かたまりにした。湿潤混合物を造粒機の中央に置き、造粒機のジャケットを60℃まで加熱した。造粒機のボウルを傾けて時折の攪拌(80rpmで500秒毎に10秒間)を約100分間行いながら、顆粒を真空下で乾燥させた。排出後、顆粒を1.0mmで乾式分級した。処方を表3にまとめた。バクロフェン顆粒バッチのふるい分け分析による粒径分布を図17に示す。
【0107】
【表3】
【0108】
(実施例4)
最終ブレンドの形成
プラセボ顆粒およびAPI顆粒を最終ブレンドに加工した。コロイド状二酸化ケイ素はプラセボ顆粒の一部(20mg製剤の場合はベルム)と一緒に1.0mmでふるい分けた。イチゴフレーバー、ステアリン酸カルシウム、およびタルクは別々にふるい分けた(1.0mm)。ブレンドはターブラーミキサーで行った。ブレンド時間および詳細は表4に与えられる。図18はバクロフェン最終ブレンドのふるい分け分析による粒径分布を示す。
【0109】
【表4】
【0110】
(実施例5)
スティックパックの充填
SBL-50 MERZスティックパック充填機およびPET12/ALU9/PE50 43x80mmスティックパック箔を用いて、スティックパックに、表5に記載されているように先に製造した最終ブレンドを充填した。全てのブレンドは充填可能であり、標準偏差および最大偏差で与えられる充填質量の偏差は非常に小さかった。表6に示すように、3つのバッチ全てにおいてバクロフェンの含有量は均一であった。
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】
(実施例6)
模擬長期安定性試験
温度と相対湿度(RH)の影響を切り離す実験計画と、アイソコンバージョンパラダイムWaterman、AAPS PharmSciTech、12巻,3号、2011)を組み合わせることにより、比較的短時間で周囲温度での保存可能期間の信頼性の高い推定値を得ることができる。加速安定性評価プログラム(ASAP)は、EPO:バクロフェンの比率が3.6:1である2つの試験バッチPおよびQを用いて実施した(表7に記載の条件)。
【0113】
【表7】
【0114】
固形APIおよび薬品の化学的安定性は、試料が経験するRHに影響される。水分で修正したアレニウス式(式1)は温度と湿度の関数として薬品の安定性を定量化する:
式1:水分で修正したアレニウス式
【0115】
【数1】
[式中、kは分解速度(通常は1日あたりに発生する分解物の割合)、Aはアレニウス衝突頻度、Eaは化学反応の活性化エネルギー、Rは気体定数(1.986cal/(mol K))、Tはケルビン単位の温度、およびBは0~0.10の範囲で変化することが明らかとなっている湿度感受性定数である。]式1の形は、化学的不安定性がRHの増加と共に指数関数的に増加することを示している。RHは、B項に応じて化学的安定性に非常に大きな影響を持つ可能性がある。
【0116】
修正アレニウス式を用いて、達成されたデータを評価し、k、Ea、およびBの各項を決定する。各温度/相対湿度条件において、分解速度(k)対時間(t)線の傾きおよびln(k)対1/Tの傾きから、反応速度kおよび活性化エネルギーEaを推定する。定数Bは、ln(k)対RHの直線の傾きとして決定される。
【0117】
試験バッチPおよびQは、7.に記載したように圧力を加えた。圧力を加える前後の、バクロフェン、4-CPP、および全ての不純物の合計のピーク面積を%として、P(表8)およびQ(表9)について与えた。異なる時点での結果を用いて、分解速度を算出した。式1によって、異なる温度および相対湿度における速度定数(k)を算出した(表10)。活性化エネルギー(Ea)の平均および最悪の場合のシナリオに基づいて,長期安定性の条件(25℃および60%RH)での保存可能期間を予測した(表11)。最悪の場合でも、4%の4-CPP(USP基準でのバクロフェン錠の場合の限界値)が形成されるには40年超えの年月が必要となる。さらに高い要求までも確実に満たすために、4-CPPの許容値が0.5%の場合で計算を適応させたところ、最悪の場合で、バッチPでは5.1年、バッチQでは7.5年の保存可能期間が予測された。
【0118】
【表8】
【0119】
【表9】
【0120】
【表10】
【0121】
【表11】
【0122】
(実施例7)
実際の長期試験
本発明のバクロフェンの安定性確保の有効性をさらに実証するために、加速劣化条件(40℃、75%RH)で6カ月間の安定性試験を行った。
【0123】
【表12】
【0124】
【表13】
【0125】
【表14】
【0126】
上記の表12~14から分かるように、本発明の安定化バクロフェン製剤は、6カ月間の加速安定性試験の後でも、4-CPPが0.2%未満である。この安定化が、バクロフェンでは起こったが、関連薬剤であるガバペンチンおよびプレガバリンでは起こらなかったことは、非常に驚くべきことである。また、商業的にも重要であり、バクロフェンが長年抱えていた問題を解決するという点でも意義深い。
【0127】
本開示は、文および/または段落で規定されているように、上記および/または下記のこれらの様々な特徴または実施形態の任意の組合せを含む。本明細書で開示されている特徴の任意の組合せは、本開示の一部とみなされ、組合せ可能な特徴に関しては、いかなる制限も意図されていない。
【0128】
出願人は、本開示において全ての引用文献の全内容を具体的に組み込む。さらに、量、濃度、またはその他の値もしくはパラメーターが、範囲、好ましい範囲、または好ましい上限値および好ましい下限値のリストのいずれかとして与えられた場合、範囲が個別に開示されているかどうかにかかわらず、任意の上限範囲または好ましい値と任意の下限範囲または好ましい値の任意の対から形成される全ての範囲が具体的に開示されていると理解すべきである。本明細書で数値の範囲が列挙される場合、特に断りのない限り、その範囲は、その端点、ならびにその範囲内の全ての整数および分数を含むことが意図されている。本開示の範囲は、範囲を定義する場合には、記載された特定の値に限定されることを意図されてはいない。
【0129】
本開示の他の実施形態は、本明細書の検討および本明細書に開示された本開示の実施により、当業者に明らかになるであろう。本明細書および実施例は、例示的なものとしてのみ考慮され、本開示の真の範囲および趣旨が以下の特許請求の範囲およびその均等物によって示されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18