(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】機械用の複合シール構造及び複合シール構造を製造する方法
(51)【国際特許分類】
F16J 15/447 20060101AFI20240228BHJP
F04D 29/12 20060101ALI20240228BHJP
F01D 11/02 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
F16J15/447
F04D29/12 Z
F01D11/02
(21)【出願番号】P 2022535084
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(86)【国際出願番号】 EP2020025545
(87)【国際公開番号】W WO2021115626
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】102019000023850
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】リッツォ、エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】テンペスティーニ、マッシミリアーノ
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-336506(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0348526(US,A1)
【文献】特開平07-071621(JP,A)
【文献】特開2012-140944(JP,A)
【文献】特開2017-075621(JP,A)
【文献】特開2001-212710(JP,A)
【文献】特開平11-197927(JP,A)
【文献】特開昭49-064905(JP,A)
【文献】実開昭52-138155(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0101027(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0054924(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/447
F04D 29/12
F01D 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械に装着されるように適合された複合シール構造であって、前記複合シール構造が、
キャリアリングであって、内面及び外
面を有す
る周方向外壁
と、第1の側壁と、第2の側壁と、を有し、前記第1の側壁及び前記第2の側壁が、前記周方向外壁から半径方向内向きに前記キャリアリングの軸に向かって突出し、環状溝が、前記周方向外壁と、前記第1の側壁と、前記第2の側壁との間に形成される、キャリアリングと、
前記環状溝と表面対表面接触する第1の領域と、
シール特徴が設けられ、前記キャリアリングの前記環状溝から前記キャリアリングの前記軸に向かって突出する第2のシール領域と、を有する、シール要素と、
前記シール要素及び前記キャリアリングを互いに結合して、前記複合シール構造を形成する、締結構成であって、前記締結構成が、前記キャリアリングの前記軸の周りに円周方向に配設された複数の締結ピンを備え、前記複数の締結ピンの各
前記締結ピンが、前記第1の側壁及び
前記第2の側壁のうちの少なくとも1つを通って延在し、前記複数の締結ピンの各
前記締結ピンが、前記シール要素内に形成された対応する座面に係合する、締結構成と、を備え
、
前記複数の締結ピンが、前記第1の側壁を横断する孔を通って延在し、前記シール要素の第1組の前記座面に係合する、第1組の締結ピンと、前記第2の側壁を横断する孔を通って延在し、前記シール要素の第2組の前記座面に係合する、第2組の締結ピンと、を備え、前記座面が、前記シール要素の止まり穴の形状である、複合シール構造。
【請求項2】
前記締結ピンが、前記キャリアリングの前記軸と平行である、請求項1に記載の
複合シール構造。
【請求項3】
前記シール領域が、ラビリンスタイプのシール領域であり、前記シール領域が、前記シール領域の半径方向内向きの表面から前記キャリアリングの前記軸に向かって突出する複数の歯を備える、請求項1又は2に記載の
複合シール構造。
【請求項4】
前記キャリアリングが、第1の材料で作製され、前記シール要素が、前記第1の材料とは異なる第2の材料で作製され、前記シール要素が
、熱可塑性ポリマー又は複合ポリマー材料で作製される、請求項1
から3のいずれか
1項に記載の
複合シール構造。
【請求項5】
前記シール要素が、単一のリング形状の要素によって形成される、請求項1
から4の
いずれか1項に記載の
複合シール構造。
【請求項6】
前記キャリアリングが、金属及び金属合金のうちの1つで作製される、請求項1
から5の
いずれか1項に記載の
複合シール構造。
【請求項7】
前記第1組の各締結ピンが、前記第2組の
対応する締結ピンと同一直線状にある、請求項
1から6のいずれか1項に記載の
複合シール構造。
【請求項8】
前記内面が、前記環状溝の底部を形成し、前記シール要素が、前記環状溝の前記底部と表面接触する外部円筒面を有する本体を含む、請求項1
から7のいずれか1項に記載の
複合シール構造。
【請求項9】
前記締結ピンが
、18°
以上36°
以下の角度距離で離間される、請求項1
から8のいずれか1項に記載の
複合シール構造。
【請求項10】
前記キャリアリングの前記周方向外壁が
、ターボ機械の環状座面に前記複合シール構造を締結するように適合させた、締結特徴を備える、請求項1
から9のいずれか1項に記載の
複合シール構造。
【請求項11】
前記締結特徴が、前記周方向外壁の外側周囲面から延在する環状突起を備え、前記環状突起が、前記
ターボ機械の前記環状座面に機械的に結合するための
、アンダーカットを形成する断面形状を有する、請求項1
0に記載の
複合シール構造。
【請求項12】
前記第1の側壁及び
前記第2の側壁のうちの少なくとも1つが、その外面上に形成されたスワールブレーカを備える、請求項1
から11のいずれか1項に記載の
複合シール構造。
【請求項13】
ターボ機械であって、ケースと、前記ケース内で回転するように配設されたシャフトと、前
記シャフトへのシールアクションを提供するように適合された、請求項1
から12のいずれか1項に記載の少なくとも1つの
複合シール構造と、を備える、
ターボ機械。
【請求項14】
シール構造を製造するための方法であって、前記方法が、
シール要素をキャリアリングの環状溝に挿入するステップであって、前記環状溝が、前記キャリアリングの周方向外壁と、第1の側壁と、第2の側壁の間に形成され、前記第1の側壁及び前記第2の側壁が、前記周方向外壁から半径方向内向きに前記キャリアリングの軸に向かって突出する、挿入するステップと、
前記シール要素が、前記環状溝と表面対表面接触する第1の領域と、前記キャリアリングの前記環状溝から前記キャリアリングの前記軸に向かって突出する第2のシール領域と、を有するように、前記シール要素を前記キャリアリングに機械的に結合するステップと、
前記シール要素の前記第2のシール領域の内向面を機械加工して、その上にシール特徴を生成するステップと、を含
み、
前記シール要素を前記キャリアリングに機械的に結合する前記ステップが、前記第1の側壁及び前記第2の側壁のうちの少なくとも1つを通って延在する、対応する複数の孔を通して複数の締結ピンを導入し、各前記締結ピンを前記シール要素に形成された対応する座面に係合するステップを含み、
前記対応する複数の孔を通して前記複数の締結ピンを導入し、各前記締結ピンを前記対応する座面に係合する前記ステップが、
前記第1の側壁を通って延在する第1組の孔を通して第1組の締結ピンを導入し、前記第1組の前記締結ピンを前記シール要素の第1の側に形成された第1組の座面に係合するステップと、
前記第2の側壁を通って延在する第2組の孔を通して第2組の締結ピンを導入し、前記第2組の前記締結ピンを前記シール要素の第2の側に形成された第2組の座面に係合するステップと、を含む、方法。
【請求項15】
前記シール要素を前記キャリアリングに機械的に結合する前記ステップは、前記シール要素が前記キャリアリングの前記環状溝に挿入された後に、
前記第1の側壁を通る前記第1組の孔を機械加工し、前記第1組の孔の各孔を延在させて、前記第1組の座面を形成するステップであって、
当該第1組の各座面が、前記第1組の孔の
対応する孔と同一直線上にある、形成するステップと、
前記第2の側壁を通る前記第2組の孔を機械加工し、前記第2組の孔の各孔を延在させて、前記第2組の座面を形成するステップであって、
当該第2組の各座面が、前記第2組の孔の
対応する孔と同一直線上にある、形成するステップと、を更に含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記シール要素の前記第2のシール領域の前記内向面を機械加工する前記ステップが、ラビリンスシールを形成する複数のシール歯を生成するステップを含む、請求項
14又は15に記載の方法。
【請求項17】
環状ブランクを機械加工
して、前記周方向外壁と、前記第1の側壁と、前記第2の側壁との間の前記環状溝をその中に生成するステップと、前記第1の側壁及び
前記第2の側壁のうちの少なくとも1つに複数の貫通孔を更に機械加工するステップと、を更に含む、請求項1
4から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記周方向外壁の外面から半径方向外向きに突出する締結特徴を形成するステップを更に含む、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記キャリアリングが、金属又は金属合金で作製され、前記シール要素が
、熱可塑性ポリマー又は複合ポリマー材料で作製される、請求項
14から18のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機械の、具体的には遠心又は軸流圧縮機、タービン、ターボエキスパンダなどのターボ機械の、固定部と回転部との間のシール領域をシールするためのシール構造に関する。本明細書に開示される実施形態は、特にラビリンスシールに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械などの回転機械は、異なる流体圧力が存在する機械部分を含む。機械内の高圧領域から低圧領域への流体の漏出を防止又は制限するために、シールが提供されて、異なる圧力が一般的である2つの領域を分離する。典型的なロータシールは、通常は機械ケースと一体である固定機械構成要素と、圧縮機又はポンプのバランスドラムなどの回転ドラムを含み得る回転シャフトとの間に配設される。回転シャフトは、固定機械構成要素に固定的に装着されるロータシールアセンブリを通って延在しており、また、回転シャフトと協働して流体の漏出を防止する又は低減させるためのシール部材を含む。
【0003】
典型的なロータシールとしては、ラビリンスシール、ダンパ又はホールパターンシール、ハニカムシール、ポケットダンパシール、アブレイダブルシール、などが挙げられる。
【0004】
いくつかのロータシールは、シール要素に結合されたキャリアリングを含む。キャリアリングは、通常、金属で作製され、機械の固定部に装着され、ホルダ内に形成された環状溝に適用されるインサートとして設計される、シール要素のためのホルダとして動作する。シール要素は、通常、熱可塑性ポリマーなどの好適なポリマーで作製される。この種類のシール構造は、「複合シール」と称されることがある。
【0005】
シール要素は、キャリアリングの環状溝から半径方向内向きに突出し、また、機械の回転部品と協働してシールアクションを提供する、ラビリンスシールの歯又はナイフとも称されるフィンなどの、シール特徴を含む。シール要素は、シール特徴の反対側で、キャリアリングの環状溝の内面と表面接触する。
【0006】
この種類のシール構造の1つの決定的な態様は、キャリアリングとシール要素と間の結合の信頼性である。シール構造の2つの対向する側面にわたって圧力差が存在するので、高圧側からの高圧流体がキャリアリングとシール要素との間の隙間を通って漏出する傾向があり、また、環状溝の底部に到達する場合がある。これが生じたとき、シール要素に対して半径方向内向きに作用する圧力が、シール要素を変形させて、キャリアリングから外れさせる場合がある。
【0007】
より良好なシール性能及びより信頼性の高いシール構造を達成するための、複合シール構造内のキャリアリングとシール要素との間のより有効な機械的結合が有益である。
【発明の概要】
【0008】
一態様によれば、周方向外壁と、第1の側壁と、第2の側壁と、を有するキャリアリングを含む、シール構造が開示される。第1の側壁及び第2の側壁は、周方向外壁から半径方向内向きにキャリアリングの中心線、すなわち軸に向かって突出する。キャリアリングの軸又は中心線は、シール構造の中心線又は軸と総じて一致する。キャリアリングは、周方向外壁と、第1の側壁と、第2の側壁との間に形成された環状溝を更に含む。シール構造は、環状溝と表面対表面接触する第1の領域と、キャリアリングの環状溝からキャリアリングの中心線に向かって突出する第2のシール領域と、を有する、シール要素を更に含む。更に、シール構成で形成された締結構成は、シール要素及びキャリアリングを互いに結合するように適合される。本明細書に開示される実施形態によれば、締結構成は、キャリアリングの軸の周りに円周方向に配設され、第1の側壁及び第2の側壁のうちの少なくとも1つを通って延在し、各々がシール要素内に形成された対応する座面に係合する、複数の締結ピンを含む。
【0009】
ピンは、キャリアリングとシール要素との間に安全な機械的結合を提供する。
【0010】
本明細書で理解されるように、キャリアリングは、通常、例えば単一のブランクから機械加工された、環状形状のモノリシック構成要素、すなわち、単一部品で作製された構成要素である。
【0011】
本明細書で理解されるように、シール要素は、通常、例えば管状ブランクから機械加工された、環状の、すなわち環状の単一部品、すなわちモノリシック構成要素である。
【0012】
本明細書に開示される複合シールの実施形態では、ピンは、加圧ガスの漏出による半径方向内向きの変形が防止又は効果的に低減されるように、シール要素とキャリアリングとの間に効果的な結合を提供する。
【0013】
更なる態様によれば、シール構造を製造するための方法が開示される。本方法は、シール要素をキャリアリングの環状溝に挿入する、第1のステップを含む。環状溝は、キャリアリングの周方向外壁と、第1の側壁と、第2の側壁との間に形成され、第1の側壁及び第2の側壁は、周方向外壁から半径方向内向きにキャリアリングの中心線に向かって突出する。キャリアリングの環状溝へのシール要素の挿入後、シール要素が、環状溝と表面対表面接触する第1の領域と、キャリアリングの環状溝からキャリアリングの中心線に向かって突出する第2のシール領域と、を有するように、シール要素がキャリアリングに機械的に結合される。その後に、シール要素の第2のシール領域の内向面を機械加工し、その上にシール特徴を生成する。
【0014】
シール構造及び製造方法の更なる特徴及び実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載され、以下の「発明を実施するための形態」で更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の開示の実施形態とそれに付随する利点の多くは、添付図面に関連して考えながら以下の発明を実施するための形態を参照することによって、理解が深まるにつれてすぐにより完全に分かるようになるであろう。
【
図1】本開示によるそれぞれのシール構造を含むことができる、複数のロータシールを含む遠心圧縮機の概略断面図を例示する。
【
図2】シール構造の軸と平行な方向に見たときの、本開示によるシール構造を例示する。
【
図3】
図2の線III-IIIによる、一実施形態の拡大断面図を例示する。
【
図4A】シール構造を製造するための方法の一連のステップを例示する。
【
図4B】シール構造を製造するための方法の一連のステップを例示する。
【
図4C】シール構造を製造するための方法の一連のステップを例示する。
【
図4D】シール構造を製造するための方法の一連のステップを例示する。
【
図4E】シール構造を製造するための方法の一連のステップを例示する。
【
図4F】シール構造を製造するための方法の一連のステップを例示する。
【
図4G】シール構造を製造するための方法の一連のステップを例示する。
【
図5】
図2の線III-IIIによる、更なる実施形態の拡大断面図を例示する。
【
図6】一実施形態における製造方法を要約するフローチャートを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特にロータシール用の新しく有用なシール構造が本明細書で開示される。シール構造は、「シール要素」と称される環状インサートを収納する環状溝を有する、「キャリアリング」と称される環状ホルダを含む。シール要素は、シール構造の軸の周りに分配され、好ましくはシール構造の軸又は中心線と平行に延在する複数のピンによって、キャリアリングに機械的に結合される。実施形態の詳細な説明を参照しながら後で説明されるように、結果として生じる締結構成は、シール要素の半径方向の変形を防止するか又は制限する。シール要素をキャリアリングに締結する特定の様式はまた、時間及びコストを節約し、高い精度及び効率のシール構造をもたらす、シール構造を製造する新規で有用な方法も可能にする。
【0017】
以下の説明は、ラビリンスシールに焦点を当てるが、本明細書に開示されるシール構造の新規な特徴は、他のタイプのロータシール、すなわち機械の回転部材と協働するように適合されたシールにおいても有利に使用することができる。例えば、シール要素とキャリアリングとの間の機械的結合に特に関するシール構造の特徴はまた、本明細書の導入部で想起されるようなアブレイダブルシール、ハニカムシール、又は他のシールでも使用することができる。概して、本明細書に開示される特徴は、キャリアリング及びキャリアリングに結合された環状シール要素を含み、そこから、シャフト又はドラムと協働するように設計されたシール領域を伴って、半径方向内向きに突出する、組み合わせたシール構造において使用することができる。
【0018】
以下、図面を参照すると、
図1は、遠心圧縮機1の概略断面図を例示する。断面図は、圧縮機ロータの回転軸A-Aを含む平面に沿って切断している。
図1の断面は、本明細書の目的に十分である遠心圧縮機一部分だけを例示する。
【0019】
図1の遠心圧縮機1は、ここでは、本開示のシール構造を好都合に適用することができるターボ機械の例示的な実施形態として提示される。それでもなお、ターボ機械の当業者は、本明細書に開示されるシール構造はまた、異なる種類のターボ機械にも、及びターボ機械の異なる位置にも適用することができるとことを理解するであろう。概して、本シール構造は、高圧領域と低圧領域との間でロータ、ドラム、又はシャフトなどの回転部材の周りをシールすることが必要な場合はいつでも使用することができる。
【0020】
遠心圧縮機1は、シャフト3と、1つ以上のインペラ5と、を含む。
図1には、3つのインペラ5が例示されている。
図1では、インペラ5が、いわゆる焼き嵌め構成でそれと共に共回転するようにシャフト3に装着されているが、他の実施形態では、インペラは、タイビーム及びそれぞれのハース結合又は他の結合特徴を用いて軸方向にスタックされ、かつ互いにねじり結合される、いわゆるスタックインペラとして構成することができる。
【0021】
図1の実施形態では、隣接するインペラ5の各対の間に離間リング7が配設される。バランスドラム9は、シャフト3と共に回転させるために、シャフトに更にキー留めされる。シャフト3、インペラ5、離間リング7、及びバランスドラム9は一緒に、矢印f11に従って回転軸A-Aの周りに回転するように装着されるロータ11を形成する。ロータ11は、ケース(図示せず)に収容され、ケースには、圧縮機1の固定構成要素が収容される。固定構成要素は、圧縮機のディフューザ15及び戻りチャネル17を画定するダイヤフラム13を含む。
【0022】
各インペラは、インペラアイ5.1を含む。例示として、インペラの下流の高圧側からインペラの上流の低圧側へのガスの漏出を低減させるために、アイラビリンスシール21が、各インペラアイ5.1の周りに位置決めされる。「上流」及び「下流」という用語は、概略的に矢印Gによって表される、圧縮機1を通るプロセスガスの流れの方向を指す。各ラビリンスシール21は、遠心圧縮機1のそれぞれのダイヤフラムに機械加工されたハウジングに装着される。
【0023】
シャフトラビリンスシール23は、ダイヤフラム13とシャフト3の間に、例えば離間リング7の周りに、更に提供される。シャフトラビリンスシール23は、ダイヤフラム13に機械加工されたそれぞれのハウジング内に装着される。
【0024】
図1の実施形態では、バランスドラムラビリンスシール25もまた、バランスドラム9の周りに配置される。
【0025】
遠心圧縮機1の1つ、いくつか、又は全てのラビリンスシール21、23、25を、本開示に従って構成することができる。以下、
図2及び
図3を参照しながら、その新規な特徴を例示するために、一般的なラビリンスシールの一実施形態を説明する。シール技術の当業者は、後述の特徴を具現化する、異なる用途のためのラビリンスシール、及び遠心圧縮機1又は別のターボ機械の中の異なる部品を設計することができるであろう。
【0026】
図2は、例示的なシール構造30を例示し、これは、アイラビリンスシール21において、シャフトラビリンスシール23において、バランスドラムラビリンスシール25において、又はより一般的には、ターボ機械の中の任意の異なるロータシールにおいて使用することができる。
【0027】
ラビリンスシール30は、キャリアリング33と、リング形状のシール要素35と、を含む。シール構成の軸又は中心線は、A-Aで表記され、シール構造がターボ機械内の圧縮機ロータ11の周りに装着されたときに、圧縮機ロータ11の回転軸と一致する。
【0028】
キャリアリング33は、金属又は金属合金で作製することができる。キャリアリング33を製造するために使用される材料は、シール構成30と接触するプロセスガスの性質、シール構成の両側への圧力、シールの寸法、及び他の設計考慮事項に基づいて選択することができる。例えば、概して、通常、低い酸性度を有するスイート及びサワー環境では、以下の合金、すなわち、一例がAVIONAL(登録商標)14である、2000系アルミニウム合金、又は一例がPERALUMAN(登録商標)であり、AVIONAL及びPERALUMANがスイスのConstellium Valais SAに商標登録されている、5000系アルミニウム合金、又は一例がANTICORODAL(登録商標)であり、ANTICORODALがスイスのNovelis Switzerland SAに商標登録されている、6000系アルミニウム合金、及びマルテンサイト系ステンレス鋼、を採用することができる。通常の環境では、炭素鋼及び低合金鋼を使用することができる。酸性の環境では、オーステナイト系、Superaustenitic、Duplex、及びSuperdupulexステンレス鋼並びにNiを主成分とする合金を採用することができる。良好な設計の慣例として、キャリアリングは、ダイヤフラムと同じ材料で作製されるべきである。
【0029】
シール要素35は、主に熱可塑性ポリマーで作製することができる。例えば、シール要素35は、炭素繊維、ガラス繊維などの強化繊維又は粒子を充填したポリマーマトリックスを有する複合ポリマー材料で作製することができる。PEK(polyether ketone、ポリエーテルケトン)、PEEK(polyether ether ketone、ポリエーテルエーテルケトン)、PAI(polyamide-imide、ポリアミドイミド)、PEI(polyethylenimine、ポリエチレンイミン)、及びPFA(perfluoroalkoxy alkane、パーフルオロアルコキシアルカン)などのポリマーを、選択肢として使用することができる。強化繊維は、必要な機械的特性又は利用可能な技術に依存して、長く又は短く(<30μm)することができる。
【0030】
続けて
図2を参照しながら、
図3は、キャリアリング33及びシール要素35の拡大断面を示す。
【0031】
キャリアリング33は、周方向外壁33.1と、第1の側壁33.2と、第2の側壁33.3と、を含む。周方向外壁33.1、第1の側壁33.2、及び第2の側壁33.3は、シール要素35を収容する環状溝33.4をそれらの間に形成する。
【0032】
図2及び
図3の実施形態では、周方向外壁33.1は、広義には円筒形形状を有する。周方向外壁33.1の内面は、環状溝33.4の底部を形成する。周方向外壁33.1の外面は、シール構造30が装着されるターボ機械、例えば圧縮機ダイヤフラムの固定部材に形成される環状座面に結合するための、締結特徴33.5を形成する。
図2及び
図3の実施形態では、締結特徴は、周方向外壁33.1の外周面から延在する環状突起を含む。この突起は、ターボ機械の環状座面に機械的に結合するためのアンダーカット33.6を形成する断面形状を有する。
【0033】
側壁33.2及び33.3の各々は、実質的に平面状であり、かつシーリング構造の中心線又は軸A-Aと直交し得る、内面を含む。側壁33.2及び33.3の内面は、周方向外壁33.1の内面から半径方向内向きに延在して、環状溝33.4の側面を形成する。各側壁33.2及び33.3は、それぞれの内面と実質的に平行であり得、かつ実質的に平面状であり得る、それぞれの外面を更に含む。いくつかの実施形態では、側壁33.2及び33.3の一方又は両方の外面には、スワールブレーカ33.9を提供することができる。
【0034】
第1の側壁33.2は、第1の側壁33.2の外面から内面まで延在する第1組の貫通孔33.7を有するように製造される。同様に、第2の側壁33.3は、第2の側壁33.3の外面から内面まで延在する第2組の貫通孔33.8を有する。
【0035】
シール要素35は、環状溝33.4の底部と表面接触する外部円筒面35.2を有する本体35.1を含む。本体35.1は、それぞれ、第1の側壁33.2及び第2の側壁33.3の内面と表面接触する側面35.3及び35.4を更に含む。したがって、本体35.1は、キャリアリング33に形成された環状溝33.4と表面対表面接触する、シール要素の第1の領域を含む。
【0036】
更に、本体35.1は、第1の領域の半径方向内側に配置され、35.12と表記される第2の領域、すなわちシール領域を含む。第2のシール領域35.12は、ロータの回転部品と協働するように適合された複数のシール特徴を有する。
図2及び
図3の実施形態では、シール構造30は、ラビリンスシールを特徴とし、シール特徴は、環状歯、ブレード、又はリップ35.5を含み、これらは、キャリアリング33からシール構造30の中心線又は軸A-Aに向かって半径方向内向きに突出する。
【0037】
締結構成は、キャリアリング33及びシール要素35を互いに機械的に結合する。
図3の実施形態では、締結構成は、第1組の締結ピン37と、第2組の締結ピン39と、を含む。第1組の締結ピンの各締結ピン37は、貫通孔33.7内に延在し、かつシール要素35の側面35.3に形成された座面35.10に突出する、側壁33.2と表面接触する、内向きに配向された端部を有する。第2組の締結ピンの各締結ピン39は、第2の側壁33.3を横断して延在する貫通孔33.8内に延在し、かつシール要素35の側面35.4に形成された座面35.11に収容された、側壁33.3と表面接触する、内向きに配向された端部を有する。
【0038】
座面35.10及び35.11は、シール要素35にドリル加工された止まり穴の形態とすることができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、孔33.7及び33.8、並びに座面35.10及び35.11は、シール構成30の軸又は中心線A-Aと平行に配向される。
【0040】
いくつかの実施形態では、2組の締結ピンの締結ピン37、39の対が互いに同一直線上にあるように、各孔33.7及び関連する座面35.10が、対応する孔33.8及び関連する座面35.11と同一直線上にある。
【0041】
座面35.10、35.11が同一直線上にある場合、各座面は、シール要素35の厚さの半分未満、すなわち、座面35.10及び35.11がドリル加工されたシール要素35の対向する側面間で測定して、中心線の方向におけるシール要素35の寸法の半分未満の長さを有することができる。
図3では、そのような厚さは、「T」で示される。このようにして、同一直線上にある座面は、2つの対向する止まり穴の形態で、互いに別々のままである。
【0042】
孔33.7は、互いに等距離とすることができる。同様に、孔33.8は、互いに等距離とすることができる。例えば、この孔は、一定の角度ピッチに従って配設することができる(
図2を参照されたい)。いくつかの実施形態では、角度ピッチは、約5°~約45°、好ましくは約10°~約40°、例えば約18°~約36°で構成することができる。
図2の実施形態では、角度ピッチは、20°である。
【0043】
締結ピン37、39は、任意の好適な方式、例えば接着、はんだ付け、溶接などによって、孔33.7、33.8内で、及び座面35.10、35.11内で係止することができる。シール要素35に損傷を与え得る熱が印加されないので、接着が特に好都合であり得る。
【0044】
締結ピン37、39は、キャリアリング33とシール要素35との間に信頼性の高い結合を提供する。締結ピン37、39は、半径方向内向きに作用する圧力に対抗する有効な反力を提供し、反力は、環状溝33.4の底部とシール要素35の外部円筒面35.2との間の隙間に浸透する加圧流体によって生成することができる。
【0045】
上で説明したシール構造30は、
図4A~
図4Gのシーケンスを参照しながら、下で説明される方法による好都合な様式で製造することができる。
【0046】
キャリアリング33は、貫通孔33.7、33.8を除いて、例えばチューブの形態のブランクから始まり、その最終ネット形状が達成されるまで、従来の技法によって、例えばターニング、ミリング、又は任意の他のチップ除去プロセスによって製造することができる。
図4Aを参照されたい。貫通孔33.7、33.8は、下で説明するように、後続のステップで製造される。
【0047】
シール要素35は、
図4Bの断面図に示されるブランク35Bから始めて製造することができる。ブランク35Bは、環状形状を有することができ、その断面は、単純な正方形又は長方形を有する。ブランク35Bは、従来の技術並びに3D印刷製造技術によって作製することができる。
【0048】
次いで、ブランク35Bは、例えばターニング又は同様のチップ除去処置によって、部分的に機械加工して、シール要素35の外面35.2、35.3、35.4、すなわち、キャリアリング33の環状溝33.4と表面接触することを意図する表面を生成する。
図4Cを参照されたい。後続のステップでは、下で開示される、シール特徴35.5が提供される内向面を機械加工する。
【0049】
次いで、
図4Dに示されるように、部分的に機械加工したシール要素35を、キャリアリング33の環状溝33.4内に導入する。
【0050】
次の製造ステップでは、側壁33.2及び33.3を通して貫通孔33.7及び33.8をドリル加工する。ドリル加工を続けて、座面35.10及び35.11をシール要素35に機械加工する。
【0051】
孔33.7、33.8、及び座面35.10、35.11をドリル加工した時点で、締結ピン37、39を導入して、例えば接着によって、係止する。
図4Fを参照されたい。
【0052】
部分的に機械加工したシール要素35をキャリアリング33に結合した時点で、シール要素35の第2のシール領域35.12を、例えばターニングによって、機械加工して、歯35.5又は他のシール特徴と含む最終形状を達成することができる。
図4Gを参照されたい。
【0053】
これまで説明したプロセスは、非常に正確な機械加工を可能にし、また、必要な可塑性材料の量を低減させる。製造中のプラスチックブランクの変形が回避される。シール要素35の、熱的に誘起される応力を除去するためのアニーリング又は他の熱処理を省略することができる。
【0054】
図5には、シール構造30の修正実施形態が例示されている。同じ参照番号は、
図2及び
図3に示される、並びに上で説明したものと同じ又は同等の部品を示す。
図2、
図3の実施形態と
図5の実施形態と間の主な違いは、シール要素35をキャリアリング33に機械的に結合する締結構成に関する。
図5は、単一の一組の締結ピン38を例示する。各ピン38は、側面35.3から側面35.4まで、側壁33.2、33.3の両方を通って、並びにシール要素35の厚さ全体(すなわち軸方向の寸法)にわたって延在する座面35.13を通って延在する。
【0055】
シール構成30が配置される高圧領域と低圧領域との間の圧力差によって、締結ピン38がシール構造30から押し出されることを防止するために、締結ピン38は、高圧領域に面するシール構造30の側面に当接する環状リッジ38.1を備え得るか、又はシール構造30にわたる圧力差によって生じる力に対して、締結ピン38を適所に保持するように適合された任意の他の特徴を備え得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、孔33.7、33.8のうちの1つは、止まり穴とすることができ、すなわち、シール構造30が装着される機械の低圧領域に面するキャリアリング33の側面の表面に浮上させないなどの、関連する側壁の厚さの一部分だけに制限することができる。このようにして、高圧側から止まり穴の中に導入される締結ピン38は、止まり穴の底部に当接し、シール構造30にわたる圧力差から生じる力に対して保持される。
【0057】
全ての実施形態では、上で開示したシール要素35は、単一の一体型環状部材によって形成される。これは、特に製造の精度及び容易な組み立てに関して好都合であるが、シール要素35が、キャリアリング33の環状溝33.4に導入される別々の環状部分によって形成されることは排除されない。次いで、いくつかの環状部分を、接着又は任意の他の好適な様式によって、互いに接続することができる。
【0058】
図6は、本開示による製造方法の主なステップを要約する。
【0059】
本発明は、様々な特定の実施形態に関して説明されてきたが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく多くの修正、変更、及び省略が可能であることが、当業者には明らかであろう。加えて、本明細書で別段の指定がない限り、いずれのプロセス又は方法ステップの順序又は配列も、代替的な実施形態に従って変更又は再配列され得る。