(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】分離システム
(51)【国際特許分類】
B01D 61/58 20060101AFI20240228BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20240228BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20240228BHJP
C01B 39/02 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B01D61/58
B01D53/22
B01D71/02
B01D71/02 500
C01B39/02
(21)【出願番号】P 2022536311
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2021025834
(87)【国際公開番号】W WO2022014469
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/010219
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020120028
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】木下 直人
(72)【発明者】
【氏名】野田 憲一
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-511472(JP,A)
【文献】特開2017-177089(JP,A)
【文献】特開2013-255898(JP,A)
【文献】特許第6435961(JP,B2)
【文献】特開2008-137847(JP,A)
【文献】中国実用新案第210915955(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C01B 33/20-39/54
C01B 32/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離システムであって、
分離膜を有するとともに、流体供給ポート、透過流体排出ポートおよび非透過流体排出ポートが設けられた第1分離部と、
分離膜を有するとともに、流体供給ポート、透過流体排出ポートおよび非透過流体排出ポートが設けられた第2分離部と、
前記第1分離部の前記透過流体排出ポートと前記第2分離部の前記流体供給ポートとを接続する中間接続部と、
前記第1分離部の前記流体供給ポートに接続され、複数種類の流体を含む混合流体が、大気圧よりも高い圧力にて流れる供給管と、
前記第2分離部の前記透過流体排出ポートに接続され、前記透過流体排出ポート内の圧力を大気圧よりも低い圧力に減圧する減圧部と、
前記第2分離部の前記透過流体排出ポートまたは前記非透過流体排出ポートから排出される流体の流量
を測定する流量測定部、および/または
、前記排出される流体の成分組成
を測定する流体分析部と、
前記第2分離部の前記透過流体排出ポート内の圧力を調整する圧力調整部と、
前記流量測定部が示す流量、および/または、前記流体分析部が示す所定成分の濃度が所定の範囲内となるように、前記圧力調整部を制御する制御部と、
を備え、
前記中間接続部に昇圧を目的とした装置および減圧を目的とした装置が設けられておらず、前記中間接続部内の圧力が前記供給管内の圧力よりも低く、かつ、大気圧以上である
分離システム。
【請求項2】
請求項1に記載の分離システムであって、
前記第2分離部における前記流体供給ポートと前記透過流体排出ポートとの間の圧力差が、前記第1分離部における前記圧力差の0.8倍以下である
分離システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の分離システムであって、
前記混合流体が、複数種類の気体を含む混合気体である
分離システム。
【請求項4】
請求項3に記載の分離システムであって、
前記供給管から前記第2分離部の前記分離膜に至る経路上の所定位置に設けられ、前記経路を流れる気体を加熱または保温することにより、前記気体の凝縮を防止する凝縮防止部をさらに備える
分離システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の分離システムであって、
前記混合流体の供給源と前記第1分離部との間の所定位置に設けられ、前記混合流体に含まれる所定成分の少なくとも一部を除去する前処理部をさらに備える
分離システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の分離システムであって、
前記第1分離部の前記分離膜および/または前記第2分離部の前記分離膜が、無機材料を含む
分離システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の分離システムであって、
前記第1分離部の前記分離膜および/または前記第2分離部の前記分離膜が、ゼオライト膜である
分離システム。
【請求項8】
請求項7に記載の分離システムであって、
前記混合流体が、前記ゼオライト膜を構成するゼオライトの細孔径よりも小さい分子サイズの流体と、前記細孔径よりも大きい分子サイズの流体とを含む
分離システム。
【請求項9】
請求項7または8に記載の分離システムであって、
前記ゼオライト膜を構成するゼオライトが8員環ゼオライトである
分離システム。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1つに記載の分離システムであって、
前記第2分離部の前記透過流体排出ポートに接続された透過流体回収管において、前記第2分離部の前記透過流体排出ポートと前記減圧部との間に、前記圧力調整部が設けられる
分離システム。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1つに記載の分離システムであって、
前記第1分離部の前記非透過流体排出ポートから排出される流体の一部、および/または、前記第2分離部の前記非透過流体排出ポートから排出される流体の少なくとも一部を、前記第1分離部の前記流体供給ポートに導く戻り管をさらに備える
分離システム。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1つに記載の分離システムであって、
前記第1分離部の前記非透過流体排出ポートから排出される流体の圧力エネルギーを、他のエネルギーに変換するエネルギー変換部をさらに備える
分離システム。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれか1つに記載の分離システムであって、
前記第2分離部の前記非透過流体排出ポートから排出される流体を昇圧する排出流体昇圧部をさらに備え、
前記排出流体昇圧部により昇圧された流体が、前記第1分離部の前記非透過流体排出ポートから排出される流体と混合される
分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離システムに関する。
[関連出願の参照]
本願は、2020年7月13日に出願された日本国特許出願JP2020-120028、および、2021年3月12日に出願された国際特許出願PCT/JP2021/010219からの優先権の利益を主張し、これらの出願の全ての開示は、本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
液体、ガス、蒸気などからなる混合流体の分離方法として、蒸留法、化学吸収法、物理吸収法、吸着法、膜分離法などがあり、その中でも膜分離法は、システム構成がシンプルかつコンパクトである、メンテナンスが容易である、消費エネルギーが小さいなどの利点があることから注目されている。膜分離法による混合流体の分離は、バイオエタノール精製工程における脱水、天然ガス精製工程やバイオガス精製工程におけるCO2除去など様々な用途で実用化されている。
【0003】
地球温暖化防止に関して2015年のCOP21で合意されたパリ協定で、産業革命以前に比べて今世紀中の世界の平均気温上昇を2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求するという目標が掲げられ、この目標を達成するために世界的にCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)やCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)に関する活動が活発に行われている。CCSやCCUSにおいてCO2の回収工程は非常に重要な工程であり、CCSやCCUSの普及にはいかに安価に高純度のCO2を回収できるかが鍵になる。
【0004】
近年ではCCSやCCUSへの利用を目的として、天然ガス精製におけるCO2の分離回収や、火力発電所や工場、自動車などの移動手段における内燃機関の排ガスからのCO2分離回収への分離膜の適用検討などが行われている。
【0005】
膜分離法では、分離膜の供給側と透過側の間における流体成分の分圧差がドライビングフォースとなり、元々圧力が高い混合流体を分離膜に供給する場合を除いて、一般的には分離膜の供給側の昇圧、あるいは透過側の減圧などが行われる(例えば、特許第6435961号公報(文献1)、特開2020-32330号公報(文献2)、特開2012-236123号公報(文献3)および特開2008-137847号公報(文献4)参照)。なお、特許第6553739号公報(文献5)では、分離膜の透過側に水蒸気スイープガスを流すことにより、ドライビングフォースを確保する手法が開示されている。
【0006】
また、膜分離法を利用する分離システムの分離精度は、基本的には分離膜の材料や構造、分離膜モジュールの構成などにより左右されるため、分離膜および分離膜モジュールの開発が盛んに行われているが、分離システムの構成を工夫することにより分離システムとしての分離精度を最大限に向上させようとする取り組みもなされている。例えば、文献1ないし5では、分離膜モジュールを透過した流体を、さらに他の分離膜モジュールに供給する分離システムが提案されている。文献1ないし5では、複数箇所にコンプレッサーを設置して供給流体を昇圧する、1つの分離膜モジュールにおいて供給側の昇圧と透過側の減圧を同時に行う、分離膜を透過した流体をもう一度供給側に戻すなどの手法も提案されている。
【0007】
ところで、上述の分離システムでは、分離精度をある程度向上することが可能であるが、それでも分離精度が不十分であったり、分離システムの構成が複雑になってしまったり、消費エネルギーが著しく大きくなってしまうという問題がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、分離システムに向けられており、分離システムにおいて、消費エネルギーを抑制可能かつ簡単な構成にて分離精度を向上することを目的としている。
【0009】
本発明に係る分離システムは、分離膜を有するとともに、流体供給ポート、透過流体排出ポートおよび非透過流体排出ポートが設けられた第1分離部と、分離膜を有するとともに、流体供給ポート、透過流体排出ポートおよび非透過流体排出ポートが設けられた第2分離部と、前記第1分離部の前記透過流体排出ポートと前記第2分離部の前記流体供給ポートとを接続する中間接続部と、前記第1分離部の前記流体供給ポートに接続され、複数種類の流体を含む混合流体が、大気圧よりも高い圧力にて流れる供給管と、前記第2分離部の前記透過流体排出ポートに接続され、前記透過流体排出ポート内の圧力を大気圧よりも低い圧力に減圧する減圧部と、前記第2分離部の前記透過流体排出ポートまたは前記非透過流体排出ポートから排出される流体の流量を測定する流量測定部、および/または、前記排出される流体の成分組成を測定する流体分析部と、前記第2分離部の前記透過流体排出ポート内の圧力を調整する圧力調整部と、前記流量測定部が示す流量、および/または、前記流体分析部が示す所定成分の濃度が所定の範囲内となるように、前記圧力調整部を制御する制御部とを備え、前記中間接続部に昇圧を目的とした装置および減圧を目的とした装置が設けられておらず、前記中間接続部内の圧力が前記供給管内の圧力よりも低く、かつ、大気圧以上である。
【0010】
本発明によれば、分離システムにおいて、消費エネルギーを抑制可能かつ簡単な構成にて分離精度を向上することができる。
【0011】
好ましくは、前記第2分離部における前記流体供給ポートと前記透過流体排出ポートとの間の圧力差が、前記第1分離部における前記圧力差の0.8倍以下である。
【0012】
好ましくは、前記混合流体が、複数種類の気体を含む混合気体である。
【0013】
好ましくは、分離システムは、前記供給管から前記第2分離部の前記分離膜に至る経路上の所定位置に設けられ、前記経路を流れる気体を加熱または保温することにより、前記気体の凝縮を防止する凝縮防止部をさらに備える。
【0014】
好ましくは、分離システムは、前記混合流体の供給源と前記第1分離部との間の所定位置に設けられ、前記混合流体に含まれる所定成分の少なくとも一部を除去する前処理部をさらに備える。
【0015】
好ましくは、前記第1分離部の前記分離膜および/または前記第2分離部の前記分離膜が、無機材料を含む。
【0016】
好ましくは、前記第1分離部の前記分離膜および/または前記第2分離部の前記分離膜が、ゼオライト膜である。
【0017】
好ましくは、前記混合流体が、前記ゼオライト膜を構成するゼオライトの細孔径よりも小さい分子サイズの流体と、前記細孔径よりも大きい分子サイズの流体とを含む。
【0018】
好ましくは、前記ゼオライト膜を構成するゼオライトが8員環ゼオライトである。
【0019】
好ましくは、前記第2分離部の前記透過流体排出ポートに接続された透過流体回収管において、前記第2分離部の前記透過流体排出ポートと前記減圧部との間に、前記圧力調整部が設けられる。
【0020】
好ましくは、分離システムは、前記第1分離部の前記非透過流体排出ポートから排出される流体の一部、および/または、前記第2分離部の前記非透過流体排出ポートから排出される流体の少なくとも一部を、前記第1分離部の前記流体供給ポートに導く戻り管をさらに備える。
【0021】
好ましくは、分離システムは、前記第1分離部の前記非透過流体排出ポートから排出される流体の圧力エネルギーを、他のエネルギーに変換するエネルギー変換部をさらに備える。
【0022】
好ましくは、分離システムは、前記第2分離部の前記非透過流体排出ポートから排出される流体を昇圧する排出流体昇圧部をさらに備える。前記排出流体昇圧部により昇圧された流体が、前記第1分離部の前記非透過流体排出ポートから排出される流体と混合される。
【0023】
上述の目的および他の目的、特徴、態様および利点は、添付した図面を参照して以下に行うこの発明の詳細な説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】分離膜モジュールの概略構造を示す図である。
【
図4】分離膜複合体の一部を拡大して示す断面図である。
【
図5】分離システムの各位置における圧力を示す図である。
【
図6A】比較例の分離システムの構成を示す図である。
【
図6B】比較例の分離システムの構成を示す図である。
【
図6C】比較例の分離システムの構成を示す図である。
【
図6D】比較例の分離システムの構成を示す図である。
【
図7A】他の比較例の分離システムの構成を示す図である。
【
図7B】他の比較例の分離システムの各位置における圧力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る分離システム4の構成を示す図である。分離システム4は、複数種類の流体(すなわち、気体または液体)を含む混合流体から、後述する分離膜複合体1に対する透過性が高い流体を分離させるシステムである。分離システム4における分離は、例えば、透過性が高い流体を混合流体から抽出する目的で行われてもよく、透過性が低い流体を濃縮する目的で行われてもよい。
【0026】
混合流体は、複数種類の気体(蒸気を含む)を含む混合気体であってもよく、複数種類の液体を含む混合液であってもよく、気体および液体の双方を含む気液二相流体であってもよい。混合流体には、粒子等の微量な固体が含まれていてもよい。
【0027】
混合流体は、例えば、水素(H2)、ヘリウム(He)、窒素(N2)、酸素(O2)、水(H2O)、水蒸気(H2O)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物、アンモニア(NH3)、硫黄酸化物、硫化水素(H2S)、フッ化硫黄、水銀(Hg)、アルシン(AsH3)、シアン化水素(HCN)、硫化カルボニル(COS)、C1~C8の炭化水素、有機酸、アルコール、メルカプタン類、エステル、エーテル、ケトンおよびアルデヒドのうち、1種類以上の物質を含む。
【0028】
窒素酸化物とは、窒素と酸素の化合物である。上述の窒素酸化物は、例えば、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、亜酸化窒素(一酸化二窒素ともいう。)(N2O)、三酸化二窒素(N2O3)、四酸化二窒素(N2O4)、五酸化二窒素(N2O5)等のNOX(ノックス)と呼ばれるガスである。
【0029】
硫黄酸化物とは、硫黄と酸素の化合物である。上述の硫黄酸化物は、例えば、二酸化硫黄(SO2)、三酸化硫黄(SO3)等のSOX(ソックス)と呼ばれるガスである。
【0030】
フッ化硫黄とは、フッ素と硫黄の化合物である。上述のフッ化硫黄は、例えば、二フッ化二硫黄(F-S-S-F,S=SF2)、二フッ化硫黄(SF2)、四フッ化硫黄(SF4)、六フッ化硫黄(SF6)または十フッ化二硫黄(S2F10)等である。
【0031】
C1~C8の炭化水素とは、炭素が1個以上かつ8個以下の炭化水素である。C3~C8の炭化水素は、直鎖化合物、側鎖化合物および環式化合物のうちいずれであってもよい。また、C2~C8の炭化水素は、飽和炭化水素(すなわち、2重結合および3重結合が分子中に存在しないもの)、不飽和炭化水素(すなわち、2重結合および/または3重結合が分子中に存在するもの)のどちらであってもよい。C1~C4の炭化水素は、例えば、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、エチレン(C2H4)、プロパン(C3H8)、プロピレン(C3H6)、ノルマルブタン(CH3(CH2)2CH3)、イソブタン(CH(CH3)3)、1-ブテン(CH2=CHCH2CH3)、2-ブテン(CH3CH=CHCH3)またはイソブテン(CH2=C(CH3)2)である。
【0032】
上述の有機酸は、カルボン酸またはスルホン酸等である。カルボン酸は、例えば、ギ酸(CH2O2)、酢酸(C2H4O2)、シュウ酸(C2H2O4)、アクリル酸(C3H4O2)または安息香酸(C6H5COOH)等である。スルホン酸は、例えば、エタンスルホン酸(C2H6O3S)等である。当該有機酸は、鎖式化合物であってもよく、環式化合物であってもよい。
【0033】
上述のアルコールは、例えば、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)、イソプロパノール(2-プロパノール)(CH3CH(OH)CH3)、エチレングリコール(CH2(OH)CH2(OH))またはブタノール(C4H9OH)等である。
【0034】
メルカプタン類とは、水素化された硫黄(SH)を末端に持つ有機化合物であり、チオール、または、チオアルコールとも呼ばれる物質である。上述のメルカプタン類は、例えば、メチルメルカプタン(CH3SH)、エチルメルカプタン(C2H5SH)または1-プロパンチオール(C3H7SH)等である。
【0035】
上述のエステルは、例えば、ギ酸エステルまたは酢酸エステル等である。
【0036】
上述のエーテルは、例えば、ジメチルエーテル((CH3)2O)、メチルエチルエーテル(C2H5OCH3)またはジエチルエーテル((C2H5)2O)等である。
【0037】
上述のケトンは、例えば、アセトン((CH3)2CO)、メチルエチルケトン(C2H5COCH3)またはジエチルケトン((C2H5)2CO)等である。
【0038】
上述のアルデヒドは、例えば、アセトアルデヒド(CH3CHO)、プロピオンアルデヒド(C2H5CHO)またはブタナール(ブチルアルデヒド)(C3H7CHO)等である。
【0039】
以下の説明では、分離システム4により分離される混合流体は、複数種類の気体を含む混合気体であるものとして説明する。混合気体には、粒子や液滴等が不純物として含まれていてもよい。
【0040】
図1の分離システム4は、第1分離部41と、第2分離部42とを備える。第1分離部41は、1個以上の分離膜モジュール2を有する。第2分離部42も、1個以上の分離膜モジュール2を有する。本実施の形態では、各分離部41,42が、複数の分離膜モジュール2を有する。
図1では、各分離部41,42に含まれる複数の分離膜モジュール2を破線の矩形にて囲んでいる。以下、分離膜モジュール2について詳細に説明する。
【0041】
図2は、1つの分離膜モジュール2の概略構造を示す図である。
図2では、一部の構成の断面における平行斜線を省略している。分離膜モジュール2は、分離膜複合体1と、2つの封止部21と、ハウジング22と、2つのシール部材23とを備える。分離膜複合体1、封止部21およびシール部材23は、ハウジング22内に収容される。
【0042】
図3は、分離膜複合体1の断面図である。
図4は、分離膜複合体1の一部を拡大して示す断面図である。分離膜複合体1は、多孔質の支持体11と、支持体11上に形成された分離膜であるゼオライト膜12とを備える。ゼオライト膜12とは、少なくとも、支持体11の表面にゼオライトが膜状に形成されたものであって、有機膜中にゼオライト粒子を分散させただけのものは含まない。ゼオライト膜12は、構造や組成が異なる2種類以上のゼオライトを含んでいてもよい。
図3では、ゼオライト膜12を太線にて描いている。
図4では、ゼオライト膜12に平行斜線を付す。また、
図4では、ゼオライト膜12の厚さを実際よりも厚く描いている。なお、分離膜複合体1では、ゼオライト膜12以外の分離膜が設けられてもよい。
【0043】
支持体11は、気体および液体を透過可能な多孔質部材である。
図3に示す例では、支持体11は、一体成形された一繋がりの柱状の本体に、長手方向(すなわち、
図3中の左右方向)にそれぞれ延びる複数の貫通孔111が設けられたモノリス型支持体である。
図3に示す例では、支持体11は略円柱状である。各貫通孔111(すなわち、セル)の長手方向に垂直な断面は、例えば略円形である。
図3では、貫通孔111の径を実際よりも大きく、貫通孔111の数を実際よりも少なく描いている。ゼオライト膜12は、貫通孔111の内側面上に形成され、貫通孔111の内側面を略全面に亘って被覆する。
【0044】
支持体11の長さ(すなわち、
図3中の左右方向の長さ)は、例えば10cm~200cmである。支持体11の外径は、例えば0.5cm~30cmである。隣接する貫通孔111の中心軸間の距離は、例えば0.3mm~10mmである。支持体11の表面粗さ(Ra)は、例えば0.1μm~5.0μmであり、好ましくは0.2μm~2.0μmである。なお、支持体11の形状は、例えば、ハニカム状、平板状、管状、円筒状、円柱状または多角柱状等であってもよい。支持体11の形状が管状または円筒状である場合、支持体11の厚さは、例えば0.1mm~10mmである。
【0045】
支持体11の材料は、表面にゼオライト膜12を形成する工程において化学的安定性を有するのであれば、様々な物質(例えば、セラミックまたは金属)が採用可能である。本実施の形態では、支持体11はセラミック焼結体により形成される。支持体11の材料として選択されるセラミック焼結体としては、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化ケイ素、炭化ケイ素等が挙げられる。本実施の形態では、支持体11は、アルミナ、シリカおよびムライトのうち、少なくとも1種類を含む。
【0046】
支持体11は、無機結合材を含んでいてもよい。無機結合材としては、チタニア、ムライト、易焼結性アルミナ、シリカ、ガラスフリット、粘土鉱物、易焼結性コージェライトのうち少なくとも1つを用いることができる。
【0047】
支持体11の平均細孔径は、例えば0.01μm~70μmであり、好ましくは0.05μm~25μmである。ゼオライト膜12が形成される表面近傍における支持体11の平均細孔径は0.01μm~1μmであり、好ましくは0.05μm~0.5μmである。平均細孔径は、例えば、水銀ポロシメータ、パームポロシメータまたはナノパームポロシメータにより測定することができる。支持体11の表面および内部を含めた全体における細孔径の分布について、D5は例えば0.01μm~50μmであり、D50は例えば0.05μm~70μmであり、D95は例えば0.1μm~2000μmである。ゼオライト膜12が形成される表面近傍における支持体11の気孔率は、例えば20%~60%である。
【0048】
支持体11は、例えば、平均細孔径が異なる複数の層が厚さ方向に積層された多層構造を有する。
図4の例では、支持体11は、基材31と、中間層32と、表面層33とを有する。ゼオライト膜12が形成される表面を含む表面層33における平均細孔径および焼結粒径は、表面層33以外の層(基材31および中間層32)における平均細孔径および焼結粒径よりも小さい。支持体11の表面層33の平均細孔径は、例えば0.01μm~1μmであり、好ましくは0.05μm~0.5μmである。支持体11が多層構造を有する場合、各層の材料は上記のものを用いることができる。多層構造を形成する複数の層の材料は、同じであってもよく、異なっていてもよい。支持体11では、平均細孔径等が互いに異なる複数の中間層32が、基材31と表面層33との間にて積層されてもよい。また、支持体11では、表面層33または中間層32が省略されてもよく、表面層33および中間層32の双方が省略されてもよい。
【0049】
ゼオライト膜12は、微細孔を有する多孔膜である。ゼオライト膜12は、複数種類の物質が混合した混合物質から、分子篩作用を利用して特定の物質を分離する分離膜として利用可能である。ゼオライト膜12では、当該特定の物質に比べて他の物質が透過しにくい。換言すれば、ゼオライト膜12の当該他の物質の透過量は、上記特定の物質の透過量に比べて小さい。
【0050】
ゼオライト膜12の厚さは、例えば0.05μm~30μmであり、好ましくは0.1μm~20μmであり、さらに好ましくは0.5μm~10μmである。ゼオライト膜12を厚くすると分離性能が向上する。ゼオライト膜12を薄くすると透過速度が増大する。ゼオライト膜12の表面粗さ(Ra)は、例えば5μm以下であり、好ましくは2μm以下であり、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以下である。
【0051】
ゼオライト膜12に含まれるゼオライト結晶の細孔径(以下、単に「ゼオライト膜12の細孔径」とも呼ぶ。)は、0.2nm以上かつ0.8nm以下であり、より好ましくは、0.3nm以上かつ0.7nm以下であり、さらに好ましくは、0.3nm以上かつ0.45nm以下である。ゼオライト膜12の細孔径が0.2nm未満の場合、ゼオライト膜を透過する物質の量が少なくなる場合があり、ゼオライト膜12の細孔径が0.8nmよりも大きい場合、ゼオライト膜による物質の選択性が不十分となる場合がある。ゼオライト膜12の細孔径とは、ゼオライト膜12を構成するゼオライト結晶の細孔の最大直径(すなわち、酸素原子間距離の最大値である長径)と略垂直な方向における細孔の直径(すなわち、短径)である。ゼオライト膜12の細孔径は、ゼオライト膜12が配設される支持体11の表面における平均細孔径よりも小さい。
【0052】
ゼオライト膜12を構成するゼオライトの最大員環数がnの場合、n員環細孔の短径をゼオライト膜12の細孔径とする。また、ゼオライトが、nが等しい複数種のn員環細孔を有する場合には、最も大きい短径を有するn員環細孔の短径をゼオライト膜12の細孔径とする。なお、n員環とは、細孔を形成する骨格を構成する酸素原子の数がn個であって、各酸素原子が後述のT原子と結合して環状構造をなす部分のことである。また、n員環とは、貫通孔(チャンネル)を形成しているものをいい、貫通孔を形成していないものは含まない。n員環細孔とは、n員環により形成される細孔である。選択性能向上の観点から、上述のゼオライト膜12に含まれるゼオライトの最大員環数は、8であることが好ましい。すなわち、ゼオライト膜12を構成するゼオライトが8員環ゼオライトであることが好ましい。
【0053】
ゼオライト膜の細孔径は当該ゼオライトの骨格構造によって一義的に決定され、国際ゼオライト学会の“Database of Zeolite Structures”[online]、インターネット<URL:http://www.iza-structure.org/databases/>に開示されている値から求めることができる。
【0054】
ゼオライト膜12を構成するゼオライトの種類は特に限定されないが、例えば、AEI型、AEN型、AFN型、AFV型、AFX型、BEA型、CHA型、DDR型、ERI型、ETL型、FAU型(X型、Y型)、GIS型、IHW型、LEV型、LTA型、LTJ型、MEL型、MFI型、MOR型、PAU型、RHO型、SOD型、SAT型等のゼオライトであってもよい。当該ゼオライトが8員環ゼオライトである場合、例えば、AEI型、AFN型、AFV型、AFX型、CHA型、DDR型、ERI型、ETL型、GIS型、IHW型、LEV型、LTA型、LTJ型、RHO型、SAT型等のゼオライトであってもよい。本実施の形態では、ゼオライト膜12を構成するゼオライトの種類は、DDR型のゼオライトである。
【0055】
ゼオライト膜12は、例えば、ケイ素(Si)を含む。ゼオライト膜12は、例えば、Si、アルミニウム(Al)およびリン(P)のうちいずれか2つ以上を含んでいてもよい。ゼオライト膜12を構成するゼオライトとしては、ゼオライトを構成する酸素四面体(TO4)の中心に位置する原子(T原子)がSiのみ、もしくは、SiとAlとからなるゼオライト、T原子がAlとPとからなるAlPO型のゼオライト、T原子がSiとAlとPとからなるSAPO型のゼオライト、T原子がマグネシウム(Mg)とSiとAlとPとからなるMAPSO型のゼオライト、T原子が亜鉛(Zn)とSiとAlとPとからなるZnAPSO型のゼオライト等を用いることができる。T原子の一部は、他の元素に置換されていてもよい。
【0056】
ゼオライト膜12がSi原子およびAl原子を含む場合、ゼオライト膜12におけるSi/Al比は、例えば1以上かつ10万以下である。Si/Al比は、ゼオライト膜12に含有されるAl元素に対するSi元素のモル比率である。当該Si/Al比は、好ましくは5以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは100以上であり、高ければ高いほど好ましい。ゼオライト膜12の作製に用いる原料溶液中のSi源とAl源との配合割合等を調整することにより、ゼオライト膜12におけるSi/Al比を調整することができる。ゼオライト膜12は、アルカリ金属を含んでいてもよい。当該アルカリ金属は、例えば、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)である。
【0057】
ゼオライト膜12のCO2透過量/N2透過量比(パーミエンス比)は、例えば5以上であり、好ましくは10以上であり、より好ましくは15以上であり、さらに好ましくは25以上である。当該パーミエンス比は、単成分のボンベガスを供給ガスとして使用し、供給側圧力が300kPaG、透過側圧力が大気圧、温度が25℃である場合のものである。
【0058】
図2に示すように、分離膜モジュール2における2つの封止部21は、支持体11の長手方向(すなわち、
図2中の左右方向)の両端部に取り付けられ、支持体11の長手方向両端面、および、当該両端面近傍の外側面を被覆して封止する部材である。封止部21は、支持体11の当該両端面からの気体および液体の流入および流出を防止する。各封止部21は、例えば、ガラスまたは樹脂により形成された板状または膜状の部材である。封止部21の材料および形状は、適宜変更されてよい。なお、封止部21には、支持体11の複数の貫通孔111と重なる複数の開口が設けられているため、支持体11の各貫通孔111の長手方向両端は、封止部21により被覆されていない。したがって、当該両端から貫通孔111への気体および液体の流入および流出は可能である。
【0059】
ハウジング22の形状は特に限定されないが、例えば、略円筒状の筒状部材である。ハウジング22は、例えば、ステンレス鋼または炭素鋼により形成される。ハウジング22の長手方向は、分離膜複合体1の長手方向に略平行である。ハウジング22の長手方向の一方の端部(すなわち、
図2中の左側の端部)には供給ポート221が設けられ、他方の端部には第1排出ポート222が設けられる。ハウジング22の側面には、第2排出ポート223が設けられる。ハウジング22の内部空間は、ハウジング22の周囲の空間から隔離された密閉空間である。
【0060】
2つのシール部材23は、分離膜複合体1の長手方向両端部近傍において、分離膜複合体1の外側面とハウジング22の内側面との間に、全周に亘って配置される。各シール部材23は、気体および液体が透過不能な材料により形成された略円環状の部材である。シール部材23は、例えば、可撓性を有する樹脂により形成されたOリングである。シール部材23は、分離膜複合体1の外側面およびハウジング22の内側面に全周に亘って密着する。
図2に示す例では、シール部材23は、封止部21の外側面に密着し、封止部21を介して分離膜複合体1の外側面に間接的に密着する。シール部材23と分離膜複合体1の外側面との間、および、シール部材23とハウジング22の内側面との間は、シールされており、気体および液体の通過はほとんど、または、全く不能である。
【0061】
分離膜モジュール2では、ゼオライト膜12に対する透過性が異なる複数種類の流体を含む混合流体(ここでは、混合気体)が、矢印251にて示すように、ハウジング22の内部に供給される。例えば、混合流体の主成分は、CO2ガスおよびN2ガスである。混合流体には、CO2およびN2以外の物質が含まれていてもよい。ハウジング22に供給された混合流体は、分離膜複合体1の図中の左端から、支持体11の各貫通孔111内に導入される。混合流体中の透過性が高い流体(例えば、CO2ガスであり、以下、「高透過性流体」と呼ぶ。)は、各貫通孔111の内側面上に設けられたゼオライト膜12、および、支持体11を透過して支持体11の外側面から導出される。これにより、高透過性流体が、混合流体中の透過性が低い流体(例えば、N2ガスであり、以下、「低透過性流体」と呼ぶ。)から分離される。
【0062】
分離膜複合体1を透過して支持体11の外側面から導出された流体(以下、「透過流体」と呼ぶ。)は、矢印253にて示すように、第2排出ポート223を介してハウジング22から排出される。透過流体には、上述の高透過性流体以外に、ゼオライト膜12を透過した低透過性流体が含まれていてもよい。
【0063】
また、混合流体のうち、ゼオライト膜12および支持体11を透過した流体を除く流体(以下、「非透過流体」と呼ぶ。)は、支持体11の各貫通孔111を図中の左側から右側へと通過する。非透過流体は、矢印252にて示すように、第1排出ポート222を介してハウジング22から排出される。ハウジング22から排出される非透過流体の圧力は、例えば、ハウジング22内に導入される流体の圧力(導入圧)と略同じである。非透過流体には、上述の低透過性流体以外に、ゼオライト膜12を透過しなかった高透過性流体が含まれていてもよい。
【0064】
既述のように、
図1に示す各分離部41,42は、複数の分離膜モジュール2を有してもよい。例えば、各分離部41,42が第1分離膜モジュール2から第M分離膜モジュール2(Mは2以上の整数)までのM個の分離膜モジュール2を含む場合、第(m-1)分離膜モジュール2(mは2以上かつM以下の整数)の第1排出ポート222が、第m分離膜モジュール2の供給ポート221に連結される。これにより、複数の分離膜モジュール2が直列に連結される。後述するように、各分離部41,42では、第1分離膜モジュール2に流体が供給され、ゼオライト膜12を透過しない流体が第1ないし第M分離膜モジュール2を順に通過する。ここでは、第1および第2分離部41,42が同数(M個)の分離膜モジュール2を含むものとしているが、第1分離部41の分離膜モジュール2の個数と、第2分離部42の分離膜モジュール2の個数とが相違してもよい。後述するように、各分離部41,42における分離膜モジュール2の個数は、1であってもよい。また、第1分離部41の分離膜モジュール2と第2分離部42の分離膜モジュール2は、同じものでもよいし、構成・形状などが異なったものでもよい。第1および第2分離部41,42は、構成・形状などが異なった分離膜モジュール2を含んでいてもよい。
【0065】
第1分離部41は、流体供給ポート411と、非透過流体排出ポート412と、透過流体排出ポート413とを備える。第1分離部41では、第1分離膜モジュール2、すなわち、最も上流側の分離膜モジュール2の供給ポート221が、流体供給ポート411となる。第M分離膜モジュール2、すなわち、最も下流側の分離膜モジュール2の第1排出ポート222が、非透過流体排出ポート412となる。また、第1ないし第M分離膜モジュール2のM個の第2排出ポート223の集合が、透過流体排出ポート413となる。第1分離部41には1個の分離膜モジュール2のみが含まれてもよく、この場合、当該分離膜モジュール2の供給ポート221、第1排出ポート222および第2排出ポート223が、それぞれ流体供給ポート411、非透過流体排出ポート412および透過流体排出ポート413となる。
【0066】
第2分離部42は、第1分離部41と同様に、流体供給ポート421と、非透過流体排出ポート422と、透過流体排出ポート423とを備える。第2分離部42では、第1分離膜モジュール2、すなわち、最も上流側の分離膜モジュール2の供給ポート221が、流体供給ポート421となる。第M分離膜モジュール2、すなわち、最も下流側の分離膜モジュール2の第1排出ポート222が、非透過流体排出ポート422となる。また、第1ないし第M分離膜モジュール2のM個の第2排出ポート223の集合が、透過流体排出ポート423となる。第2分離部42には1個の分離膜モジュール2のみが含まれてもよく、この場合、当該分離膜モジュール2の供給ポート221、第1排出ポート222および第2排出ポート223が、それぞれ流体供給ポート421、非透過流体排出ポート422および透過流体排出ポート423となる。
【0067】
分離システム4は、供給管43と、中間接続部44と、第1非透過流体回収管45と、第2非透過流体回収管46と、透過流体回収管47とをさらに備える。供給管43は、第1分離部41の流体供給ポート411に接続される。供給管43には、供給流体昇圧部431が設けられる。中間接続部44は、接続管であり、第1分離部41の透過流体排出ポート413を、第2分離部42の流体供給ポート421に接続する。第1非透過流体回収管45は、第1分離部41の非透過流体排出ポート412に接続される。第2非透過流体回収管46は、第2分離部42の非透過流体排出ポート422に接続される。透過流体回収管47は、第2分離部42の透過流体排出ポート423に接続される。透過流体回収管47には、減圧部471が設けられる。
【0068】
図5は、分離システム4の各位置における圧力を示す図である。
図5の縦軸は圧力を示し、横軸は供給管43から透過流体回収管47へと至る経路における位置を示す。
図5の横軸では、供給流体昇圧部431、第1分離部41、第2分離部42および減圧部471の位置に、同じ符号を付している。
図5中の実線L1が、
図1の分離システム4の各位置における圧力を示す。
【0069】
図1の分離システム4において、供給管43には、外部の混合流体の供給源から混合流体が流入する。供給流体昇圧部431は、例えばコンプレッサー等であり、混合流体を昇圧(圧縮)する。
図5に示すように、供給流体昇圧部431により、混合流体は、大気圧P0よりも十分に高い圧力P1(例えば、200kPaGよりも高い圧力P1)となる。混合流体は、流体供給ポート411を介して第1分離部41に供給される。以下の説明では、第1分離部41に供給される混合流体を、「供給流体」という。供給流体の圧力P1(第1分離部41の供給側圧力)は、例えば200kPaG~10000kPaGであり、好ましくは250kPaG~7000kPaGであり、より好ましくは300kPaG~4000kPaGである。供給流体の温度は、例えば、10℃~250℃である。供給管43において、供給流体の温度および圧力をそれぞれ調節する温度調節部および圧力調節部が、供給流体昇圧部431に加えて設けられてもよい。混合流体の供給源から供給管43に流入する混合流体の圧力が、大気圧P0よりも十分に高い場合には、供給流体昇圧部431が省略されてもよい。
【0070】
第1分離部41では、いずれの分離膜モジュール2のゼオライト膜12も透過しなかった流体(以下、「第1非透過流体」という。)が、非透過流体排出ポート412を介して第1非透過流体回収管45に排出され、回収される。第1非透過流体の圧力(第1分離部41の非透過側圧力)は、第1分離部41に供給される供給流体の圧力P1と略同じである。第1分離部41において、いずれかの分離膜モジュール2のゼオライト膜12を透過した流体(以下、「第1透過流体」という。)は、透過流体排出ポート413を介して中間接続部44に導かれる。後述するように、
図1の例では、中間接続部44内の圧力は、略大気圧(実際には、大気圧P0または大気圧P0よりも僅かに高い圧力であり、例えば0~50kPaGであり、好ましくは0~30kPaGである。)である。すなわち、透過流体排出ポート413から排出される第1透過流体の圧力(第1分離部41の透過側圧力)は、略大気圧である。
【0071】
中間接続部44には、コンプレッサー等の昇圧を目的とした装置、および、真空ポンプ等の減圧を目的とした装置は設けられておらず、
図1の例では、中間接続部44の全体において、圧力が略大気圧となる。第1分離部41からの第1透過流体は、流体供給ポート421を介して第2分離部4
2に供給される。第2分離部4
2に供給される第1透過流体の圧力(第2分離部42の供給側圧力)は、略大気圧である。
【0072】
減圧部471は、例えば真空ポンプ等であり、
図5に示すように、第2分離部42の透過流体排出ポート423内を大気圧P0よりも低い圧力P2に減圧する。また、減圧部471は、透過流体を冷却したり、透過流体を冷却して液化または固化させることで、減圧するものでもよい。透過流体排出ポート423内の圧力P2(第2分離部42の透過側圧力)は、例えば-10kPaG~-100kPaGであり、好ましくは-15kPaG~-95kPaGであり、より好ましくは-20kPaG~-90kPaGである。
【0073】
第2分離部42において、いずれかの分離膜モジュール2のゼオライト膜12を透過した流体(以下、「第2透過流体」という。)は、透過流体排出ポート423を介して透過流体回収管47に排出される。
図1の分離システム4では、第2分離部42における流体供給ポート421と透過流体排出ポート423との間の圧力差は、第1分離部41における流体供給ポート411と透過流体排出ポート413との間の圧力差未満である。例えば、第2分離部42における当該圧力差は、第1分離部41における当該圧力差の0.8倍以下である。このように、第2分離部42における当該圧力差が小さい場合でも、ゼオライト膜12を分離膜として有する第2分離部42では、第2透過流体における高透過性流体の濃度および第2透過流体の透過量を高くすることが可能である。第2分離部42における当該圧力差は、第1分離部41における当該圧力差の0.6倍以下であってもよく、0.5倍以下であってもよい。例えば、第2分離部42における当該圧力差は、第1分離部41における当該圧力差の0.1倍以上である。透過流体回収管47において、減圧部471を通過した第2透過流体の圧力は、例えば大気圧P0と略同じとなる。
【0074】
第2分離部42において、いずれの分離膜モジュール2のゼオライト膜12も透過しなかった流体(以下、「第2非透過流体」という。)は、非透過流体排出ポート422を介して第2非透過流体回収管46に排出され、回収される。分離システム4では、第2非透過流体回収管46内の圧力(第2分離部42の非透過側圧力)は略大気圧である。これにより、中間接続部44内の圧力も略大気圧(すなわち、大気圧P0または大気圧P0よりも僅かに高い圧力)となっている。実際には、中間接続部44内の全ての部分の圧力が、供給管43内の圧力よりも低く、かつ、大気圧以上となる。
【0075】
次に、実施例および比較例の分離システムにおける分離試験について述べる。実施例の分離システム4は、
図1と同様の構成である。
図6Aないし
図6Dは、比較例1ないし4の分離システム9a~9dの構成を示す図である。
図6Aに示す比較例1の分離システム9aでは、全ての分離膜モジュール2(
図2参照)が直列に連結されて1つの分離部91が構成される。すなわち、第1分離部91のみが設けられ、第2分離部は設けられない。分離部91の流体供給ポート911には、供給管93が接続され、供給管93には、コンプレッサー931が設けられる。分離部91の非透過流体排出ポート912には、非透過流体回収管95が接続され、透過流体排出ポート913には、透過流体回収管97が接続される。透過流体回収管97には、減圧部は設けられない。
【0076】
図6Bに示す比較例2の分離システム9bでは、
図6Aに示す比較例1の分離システム9aに対して、戻り管98が追加される。戻り管98の一端は、透過流体回収管97に接続され、他端は、供給管93においてコンプレッサー931の上流側に接続される。
図6Cに示す比較例3の分離システム9cでは、
図6Aに示す比較例1の分離システム9aに対して、真空ポンプ971が追加される。真空ポンプ971は、透過流体回収管97に設けられる。
【0077】
図6Dに示す比較例4の分離システム9dでは、第1分離部91および第2分離部92が設けられ、第1分離部91の透過流体排出ポート913と第2分離部92の流体供給ポート921とが、中間接続部94により接続される。中間接続部94には、コンプレッサー942が設けられる。第1分離部91の流体供給ポート911には、供給管93が接続され、供給管93には、コンプレッサー931が設けられる。第1分離部91の非透過流体排出ポート912には、第1非透過流体回収管95が接続され、第2分離部92の非透過流体排出ポート922には、第2非透過流体回収管96が接続される。第2分離部92の透過流体排出ポート923には、透過流体回収管97が接続される。比較例4の分離システム9dは、実施例の分離システム4と比較して、減圧部471を省略するとともに、中間接続部94にコンプレッサー942を設ける点で相違する。
【0078】
実施例、並びに、比較例1ないし4の分離システム
4,9a~9dでは、同じ分離膜モジュール2(
図2参照)が用いられる。各分離膜モジュール2は、直径30mm、長さ160mmの分離膜複合体1を有する。分離膜複合体1には、DDR型のゼオライト膜12が設けられる。ゼオライト膜12のCO
2/N
2パーミエンス比は、27である。CO
2/N
2パーミエンス比は、単成分のボンベガスを供給ガスとして使用し、供給側圧力が300kPaG、透過側圧力が大気圧、温度が25℃である場合のものである。
【0079】
実施例、並びに、比較例1ないし4の分離システム4,9a~9dでは、供給流体の圧力を800kPaGとした。実施例の分離システム4では、第1分離部41の透過流体排出ポート413の圧力を0kPaGとし、第2分離部42の透過流体排出ポート423の圧力を-100kPaGとした。比較例1および2の分離システム9a,9bでは、分離部91の透過流体排出ポート913の圧力を0kPaGとし、分離システム9bでは、戻り管98により戻す透過流体の流量を2.3Nm3/hとした。比較例3の分離システム9cでは、分離部91の透過流体排出ポート913の圧力を-100kPaGとした。比較例4の分離システム9dでは、第1分離部91の透過流体排出ポート913の圧力を0kPaGとし、第2分離部92の流体供給ポート921の圧力を200kPaGとし、第2分離部92の透過流体排出ポート923の圧力を0kPaGとした。
【0080】
分離試験では、透過流体回収管47,97にて回収される透過流体のCO2の濃度を評価した。透過流体の利用用途を広げるには、透過流体のCO2の濃度の向上が重要となるためである。分離試験は、25℃で行い、CO2が15%(mol%である。以下同様。)、N2が85%である混合流体を供給流体とした。混合流体は、CO2のボンベガスと、N2のボンベガスとを混合して生成した。供給流体の流量は、30Nm3/hとした。また、透過流体回収管47,97にて回収される透過流体のCO2回収率が30%となるように、各分離システム4,9a~9dにおいて用いられる分離膜モジュール2の個数を調整して(すなわち、膜面積を調整して)試験を行った。なお、CO2回収率は、透過流体回収管47,97における透過流体のCO2量を、供給流体のCO2量で割って得た百分率である((透過流体のCO2量/供給流体のCO2量)×100)。表1は、分離試験の結果を示す。
【0081】
【0082】
比較例1の分離システム9aでは、透過流体回収管97における透過流体のCO2濃度が66%であり、十分なCO2濃度が得られていない。比較例2の分離システム9bでは、透過流体回収管97において半分の透過流体を供給管93に戻すことにより、透過流体のCO2濃度が少し(70%まで)向上したが、十分なCO2濃度は得られていない。比較例3の分離システム9cでは、分離部91の供給側を昇圧し、透過側を減圧することにより、透過流体のCO2濃度が80%に向上したが、十分ではない。比較例4の分離システム9dでは、第1分離部91の供給側を昇圧し、第2分離部92の供給側も昇圧することにより、透過流体のCO2濃度が90%まで向上したが、2個のコンプレッサー931,942が必要となる。コンプレッサーは高価であるため、分離システム9dの製造コストが増大する。
【0083】
これに対し、実施例の分離システム4では、第1分離部41の供給側を昇圧し、第2分離部42の透過側を減圧することにより、透過流体のCO2濃度を大幅に(96%まで)向上し、分離精度を高くすることが実現された。高価なコンプレッサー(供給流体昇圧部431)の個数は1個であるため、分離システム4の製造コストの増大も抑制することができる。実施例の分離システム4と比較例4の分離システム9dとを比較した場合に、比較例4の分離システム9dでは、第1分離部91を透過した全ての第1透過流体を昇圧する必要がある。一方、実施例の分離システム4では、第1分離部41を透過した第1透過流体のうち、第2分離部42も透過した第2透過流体のみを減圧するため、比較例4の分離システム9dに比べて消費エネルギーを小さくすることが可能となる。
【0084】
比較例1の分離システム9aのように、分離部の供給側を昇圧する場合に、透過側のCO2濃度を96%にするためには、計算上では、1000以上のCO2/N2パーミエンス比を有する分離膜が必要となる。表1では、この場合におけるパーミエンス比等を参考例として示している。これに対し、実施例の分離システム4では、参考例における分離膜よりも、CO2/N2パーミエンス比が十分に低い分離膜を用いて、透過流体のCO2濃度を96%に濃縮することが実現される。
【0085】
以上に説明したように、分離システム4は、分離膜(上記の例ではゼオライト膜12)を有する第1分離部41および第2分離部42を備える。中間接続部44により、第1分離部41の透過流体排出ポート413と第2分離部42の流体供給ポート421とが接続される。第1分離部41の流体供給ポート411には、供給管43が接続され、混合流体が大気圧よりも高い圧力にて供給される。第2分離部42の透過流体排出ポート423には、当該透過流体排出ポート423内の圧力を大気圧よりも低い圧力に減圧する減圧部471が接続される。分離システム4では、中間接続部44内の圧力が供給管43内の圧力よりも低く、かつ、大気圧以上となる。上記分離システム4では、消費エネルギーを抑制可能かつ簡単な構成にて分離精度を向上することができる。また、中間接続部44に、コンプレッサーや真空ポンプ等の高価な部品が設けられないため、分離システム4の製造コストも削減することができる。
【0086】
ここで、特開2008-137847号公報(上記文献4)の
図2の分離システムのように、第1分離部91および第2分離部92のそれぞれにおいて、供給側にコンプレッサーを設け、透過側に真空ポンプを設ける他の比較例の分離システムを想定する。
図7Aは、当該他の比較例の分離システム9eの構成を示す図である。
図7Bは、当該他の比較例の分離システム9eの各位置における圧力を示す図であり、
図5に対応する図である。
図7Bの横軸では、第1分離部91、第1分離部91の供給側のコンプレッサー931および透過側の真空ポンプ941の位置、並びに、第2分離部92、第2分離部92の供給側のコンプレッサー942および透過側の真空ポンプ971の位置に、同じ符号を付している。
【0087】
図7Bに示すように、分離システム9eは、各分離部91,92の上流側および下流側に、コンプレッサー931,942および真空ポンプ941,971を設けて、当該分離部91,92に対して大きな圧力差を設けるものである。これに対し、分離システム4は、
図5に示すように、第1分離部41の上流側に供給流体昇圧部431を設け、第2分離部42の下流側に減圧部471を設けて、両者が生じさせる圧力差を、第1および第2分離部41,42で分け合うものである。したがって、分離システム4は、分離システム9eにおいて、第1分離部91と第2分離部92との間のコンプレッサー942および真空ポンプ941を単に取り除いたものではなく、分離システム4と分離システム9eとでは、技術的思想が相違する。分離システム4では、分離システム9eと比べて、消費エネルギーを抑制可能であり、簡単かつコンパクトな構成とすることが可能である。
【0088】
ところで、分離システム9eでは、分離膜としてポリマー膜(有機膜)を用いることが前提となっている。ポリマー膜は、ゼオライト膜に比べてパーミエンス比が低く、透過流体の透過量も小さい。したがって、分離精度の向上、および、透過流体の透過量の増大を両立するには、各分離部の上流側および下流側にコンプレッサーおよび真空ポンプを設けて、当該分離部に対して大きな圧力差を設けることが必要となる。
【0089】
一方、分離システム4では、各分離部41,42において、好ましくは、ゼオライト膜、炭素膜、シリカ膜等、無機材料を含む分離膜が利用され、より好ましくは、ゼオライト膜12が分離膜として利用される。このような分離膜では、パーミエンス比がポリマー膜よりも高く、透過流体の透過量も大きい。したがって、各分離部41,42に対して大きな圧力差を設けることなく、分離精度の向上、および、透過流体の透過量の増大を両立することが容易に可能となる。
【0090】
分離システム4の設計によっては、第1および第2分離部41,42において異なる種類の分離膜が設けられてもよい。好ましくは、第1分離部41の分離膜および/または第2分離部42の分離膜が、無機材料を含む。より好ましくは、第1分離部41の分離膜および/または第2分離部42の分離膜が、ゼオライト膜12である。透過流体の透過量を大きくする必要がない場合等には、分離システム4において、ポリマー膜(有機膜)が用いられてもよい。分離膜としては、分子篩によるものだけではなく促進輸送膜が用いられてもよい。分離システム4では、ポリマー膜等の分離性能が高くない分離膜を利用する場合でも、分離精度の向上を図ることが可能である。
【0091】
ゼオライト膜12を分離膜として利用する場合、混合流体が、ゼオライト膜12を構成するゼオライトの細孔径よりも小さい分子サイズの流体(上記の例ではCO2ガス)と、当該細孔径よりも大きい分子サイズの流体(上記の例ではN2ガス)とを含むことが好ましい。これにより、分離精度をより確実に向上することができる。
【0092】
図8は、分離システム4の他の例を示す図である。
図8の分離システム4は、中間接続部44に流体貯留部441が設けられる点で、
図1の分離システム4と相違する。他の構成は、
図1の分離システム4と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す(後述の
図9ないし
図15において同様)。
【0093】
流体貯留部441は、例えば、バッファタンク等であり、第1透過流体の流量ばらつきを調整し、第2分離
部42の性能を安定化させることができる。
図8の分離システム4では、中間接続部44内の圧力は大気圧と略同じである。また、中間接続部44には、昇圧や減圧を目的としないファン、送風機またはブロア等が設けられていてもよい。
【0094】
ここで、中間接続部44において、コンプレッサーを設けることにより、第1透過流体の圧力を大きく上昇させることで、第2分離部42の性能を安定化させることも考えられる。しかしながら、コンプレッサーは高価であるとともに、消費エネルギーが大きいため、分離システムの製造コストおよびランニングコストが増大してしまう。また、中間接続部44にコンプレッサーを設ける場合、当該コンプレッサーによる昇圧によって上昇する第1透過流体の温度によっては、第2分離部42のゼオライト膜12の分離性能に影響を及ぼす可能性がある。
【0095】
これに対し、
図8の分離システム4では、コンプレッサーを用いないため、分離システム4の製造コストおよびランニングコストの増大を抑制することができる。
【0096】
図9は、分離システム4の他の例を示す図である。
図9の分離システム4は、供給管43の一部および中間接続部44が断熱材481で覆われる点で、
図1の分離システム4と相違する。
図9では、供給管43の一部および中間接続部44を太線で示すことにより、これらが断熱材481で覆われていることを示している。他の構成は、
図1の分離システム4と同様である。
【0097】
断熱材481は、例えばグラスウール等の繊維系断熱材や、ウレタンフォーム等の発泡系断熱材であり、第1分離部41に供給される供給流体(ここでは、混合気体)、および、第1分離部41から排出される第1透過流体の温度低下を抑制する。断熱材481は、供給管43から第2分離部42に至る経路を流れる気体を保温することにより、当該気体の凝縮を防止する凝縮防止部である。凝縮防止部により、当該気体の凝縮によるゼオライト膜12(特に、第2分離部42のゼオライト膜12)の透過性能の低下を防止することができる。
【0098】
断熱材481は、必ずしも供給管43および中間接続部44の両方を覆う必要はなく、供給管43から第2分離部42の分離膜(上記の例では、ゼオライト膜12)に至る経路上の所定位置に設けられていればよい。また、上記凝縮防止部は、加熱部を含んでもよく、この場合も、当該加熱部は、供給管43から第2分離部42の分離膜に至る経路上の所定位置に設けられる。
図9では、中間接続部44に設けられる加熱部481aを破線の矩形にて示している。加熱部481aは、供給管43に設けられてもよく、第1分離部41内に設けられてもよい。また、第2分離部42内において、分離膜の上流側に設けられてもよい。加熱部481aを設ける場合、断熱材481は省略してもよい。以上のように、凝縮防止部が、供給管43から第2分離部42の分離膜に至る経路を流れる気体を加熱または保温することにより、気体の凝縮を防止することができ、当該気体の凝縮による分離膜の透過性能の低下を防止することができる。
【0099】
図10は、分離システム4の他の例を示す図である。
図10の分離システム4は、供給管43に前処理部480が設けられる点で、
図1の分離システム4と相違する。他の構成は、
図1の分離システム4と同様である。
【0100】
前処理部480は、例えばフィルタ、洗浄塔、吸収塔、吸着塔、凝縮器等であり、混合流体の供給源から第1分離部41に向かって流れる混合流体から所定成分の少なくとも一部を除去する。除去対象の成分は、例えば、各分離部41,42に含まれる分離膜(ここでは、ゼオライト膜12)にダメージを与える成分や、分離膜における透過性能に影響を与える成分であり、固形分、微小な液滴、凝縮成分、微量な気体成分等である。また、除去対象の成分は、第1分
離部41および/または第2分
離部42における高透過性流体または低透過性流体であってもよい。
図10の例では、前処理部480は、供給流体昇圧部431と第1分離部41との間に配置される。前処理部480は、混合流体の供給源と供給流体昇圧部431との間、すなわち、供給流体昇圧部431の上流側に配置されてもよい。
【0101】
以上のように、
図10の分離システム4では、混合流体の供給源と第1分離部41との間の所定位置に前処理部480が設けられ、前処理部480により、混合流体に含まれる所定成分の少なくとも一部が除去される。これにより、例えば、混合流体に含まれる当該成分の影響により、分離部41,42(特に、第1分離部41)の分離膜が損傷したり、透過性能が低下することを抑制することができる。
【0102】
図11は、分離システム4の他の例を示す図である。
図11の分離システム4は、透過流体回収管47に圧力調整部472および流体分析部473が設けられる点で、
図1の分離システム4と相違する。他の構成は、
図1の分離システム4と同様である。
【0103】
流体分析部473は、第2分離部42の透過流体排出ポート423から排出される第2透過流体の成分組成を測定する。圧力調整部472は、例えば真空レギュレータ等であり、第2分離部42の透過流体排出ポート423内の圧力を調整する。実際には、流体分析部473および圧力調整部472は、制御部40に電気的に接続され、流体分析部473の測定結果が制御部40に出力される。制御部40では、例えば、第2透過流体のCO2濃度の目標範囲が予め設定されており、流体分析部473の測定結果が示すCO2濃度が目標範囲よりも低い場合に、圧力調整部472を制御することにより、透過流体排出ポート423内の圧力を現在の圧力よりも低くする。また、流体分析部473の測定結果が示すCO2濃度が目標範囲よりも高い場合に、圧力調整部472を制御することにより、透過流体排出ポート423内の圧力を現在の圧力よりも高くする。また、流体分析部473は、第2非透過流体回収管46に設けられていてもよい。また、圧力調整部472は、第2非透過流体回収管46に設けられていてもよく、例えば背圧弁等である。
【0104】
図11の分離システム4では、流体分析部473に代えて流量測定部(流量計)が設けられてもよい。流量測定部は、第2分離部42の透過流体排出ポート423から排出される第2透過流体の流量を測定する。制御部40では、例えば、第2透過流体の流量の目標範囲が予め設定されており、流量測定部の測定結果が示す流量が目標範囲よりも低い場合に、圧力調整部472を制御することにより、透過流体排出ポート423内の圧力を現在の圧力よりも低くする。また、流量測定部の測定結果が示す流量が目標範囲よりも高い場合に、圧力調整部472を制御することにより、透過流体排出ポート423内の圧力を現在の圧力よりも高くする。また、流量測定部は、第2非透過流体回収管46に設けられてもよい。分離システム4では、流体分析部473および流量測定部の両方が設けられ、第2透過流体のCO
2濃度および流量に基づいて圧力調整部472が制御されてもよい。
【0105】
以上のように、圧力調整部472では、第2透過流体または第2非透過流体の流量および/または成分組成に基づいて、第2分離部42の透過流体排出ポート423内の圧力が調整される。これにより、透過流体回収管47から排出される流体の流量、および/または、当該流体における所定成分(上記の例ではCO2)の濃度を、目標範囲内にて略一定にすることが容易に可能となる。
【0106】
図12および
図13は、それぞれ分離システム4の他の例を示す図である。
図12の分離システム4は、第1非透過流体回収管45と、供給管43における供給流体昇圧部431の下流側とを接続する戻り管482が設けられる点で、
図1の分離システム4と相違する。
図13の分離システム4は、第2非透過流体回収管46と、供給管43における供給流体昇圧部431の上流側とを接続する戻り管483が設けられる点で、
図1の分離システム4と相違する。
図12および
図13における他の構成は、
図1の分離システム4と同様である。
【0107】
図12の分離システム4では、第1分離部41の非透過流体排出ポート412から排出される第1非透過流体の一部が、戻り管482により第1分離部41の流体供給ポート411に導かれる。これにより、第1非透過流体回収管45から排出される流体において、所定成分(上記の例ではCO
2)の濃度を低くし、第2透過流体における所定成分の濃度を高くすることができる。また、
図13の分離システム4では、第2分離部42の非透過流体排出ポート422から排出される第2非透過流体の一部が、戻り管483により第1分離部41の流体供給ポート411に導かれる。これにより、第2非透過流体回収管46から排出される流体において、所定成分(上記の例ではCO
2)の濃度を低くし、第2透過流体における所定成分の濃度を高くすることができる。
【0108】
図13の分離システム4では、第2非透過流体の全部が、戻り管483により第1分離部41の流体供給ポート411に導かれてもよい。また、両方の戻り管482,483が設けられてもよい。以上のように、第1分離部41の非透過流体排出ポート412から排出される流体の一部、および/または、第2分離部42の非透過流体排出ポート422から排出される流体の少なくとも一部を、第1分離部41の流体供給ポート411に導く戻り管が設けられる。これにより、第2透過流体における所定成分の濃度をさらに高くすることができる。
【0109】
図14は、分離システム4の他の例を示す図である。
図14の分離システム4は、第1非透過流体回収管45にエネルギー変換部484が設けられる点で、
図1の分離システム4と相違する。他の構成は、
図1の分離システム4と同様である。
【0110】
エネルギー変換部484は、例えばタービン等であり、第1非透過流体回収管45を流れる第1非透過流体の圧力エネルギーを、電気エネルギーや機械エネルギー等の他のエネルギーに変換する。エネルギー変換部484により得られたエネルギーは、供給流体昇圧部431や減圧部471等において利用されてよい。既述のように、第1分離部41の非透過流体排出ポート412から排出される第1非透過流体は、供給流体昇圧部431により昇圧された供給流体と略同じ圧力を有する。
図14のように、第1非透過流体の圧力エネルギーを、他のエネルギーに変換するエネルギー変換部484を設けることにより、分離システム4においてエネルギーを効率よく利用することが可能となる。
【0111】
図15は、分離システム4の他の例を示す図である。
図15の分離システム4は、第2非透過流体回収管46の非透過流体排出ポート422とは反対側の端部が、第1非透過流体回収管45に接続されるとともに、第2非透過流体回収管46に排出流体昇圧部485が設けられる点で、
図1の分離システム4と相違する。他の構成は、
図1の分離システム4と同様である。
【0112】
排出流体昇圧部485は、例えばコンプレッサー等であり、第2非透過流体回収管46を流れる第2非透過流体を昇圧する。既述のように、第2分離部42の非透過流体排出ポート422から排出される第2非透過流体は、第1分離部41の非透過流体排出ポート412から排出される第1非透過流体よりも圧力が低い。したがって、排出流体昇圧部485により第2非透過流体を昇圧し、当該第2非透過流体を第1非透過流体と混合することにより、高圧の非透過流体を大量に得ることができる。
【0113】
例えば、CH
4およびCO
2を主成分とするバイオガスの精製では、CO
2を除去してCH
4濃度を高くする必要がある。既述のように、分離システム4では、透過流体回収管47にて回収される透過流体(第2透過流体)におけるCO
2濃度が高くなる。したがって、CH
4およびCO
2を主成分とするバイオガスを供給流体とする場合に、第1非透過流体回収管45および第2非透過流体回収管46にて回収される非透過流体では、CH
4濃度が高くなる。
図15の分離システム4では、第1分離部41を通過してCH
4濃度が高くなった第1非透過流体を、第1非透過流体回収管45に接続された貯蔵タンクに圧力を維持したまま貯蔵する場合に、第2分離部42を通過してCH
4濃度が高くなった第2非透過流体を昇圧して第1非透過流体に混合することで、第1非透過流体および第2非透過流体を共に貯蔵タンクに貯蔵することが可能となる。
【0114】
上記分離システム4では様々な変形が可能である。
【0115】
分離システム4では、分離部を三段以上に配置してもよい。この場合、第1および第2分離部41,42以外の分離部は、例えば供給管43の上流側に配置される。
【0116】
第1分離部41において、複数の分離膜モジュール2が並列に接続されてもよい。この場合、並列に接続されるM個の分離膜モジュール2(Mは2以上の整数)において、M個の供給ポート221の集合が流体供給ポート411となり、M個の第1排出ポート222の集合が非透過流体排出ポート412となり、M個の第2排出ポート223の集合が透過流体排出ポート413となる。第2分離部42において同様である。
【0117】
中間接続部44では、第1分離部41の透過流体排出ポート413から排出される全ての第1透過流体が、第2分離部42の流体供給ポート421に供給される必要はなく、分離システム4の設計によっては、一部の第1透過流体のみが流体供給ポート421に供給されてもよい。この場合に、流体供給ポート421に供給されない第1透過流体が供給管43における供給流体昇圧部431の上流側に戻されてもよい。
【0118】
中間接続部44内の圧力(すなわち、第1透過流体の圧力)は、略大気圧である必要はなく、供給流体の圧力よりも低ければ、大気圧よりも十分高い圧力であってもよい。
【0119】
上記分離システム4では、減圧部471の減圧動作により、第2分離部42に供給される流体の一部がゼオライト膜12を透過して透過側(透過流体排出ポート423)に導かれるが、減圧部471に代えて、第2分離部42の透過側にスイープガスを流すことにより、第2分離部42に供給される流体の一部を透過側に導く参考例の分離システムを構築することも可能である。
【0120】
ゼオライト膜12を形成するゼオライトの最大員環数は8以外であってもよい。分離膜複合体1では、上述のように、様々な種類のゼオライトによりゼオライト膜12が形成されてよい。
【0121】
分離膜複合体1は、支持体11およびゼオライト膜12に加えて、ゼオライト膜12上に積層された機能膜や保護膜をさらに備えていてもよい。このような機能膜や保護膜は、ゼオライト膜、シリカ膜または炭素膜等の無機膜であってもよく、ポリイミド膜またはシリコーン膜等の有機膜であってもよい。また、ゼオライト膜12上に積層された機能膜や保護膜には、CO2等の特定の分子を吸着しやすい物質が添加されていてもよい。
【0122】
第1分離部41および/または第2分離部42において、分離膜モジュール2が、さらに化学反応を促進させる触媒を備えたメンブレンリアクターであってもよい。
【0123】
分離膜複合体1では、ゼオライト膜12に代えて、ゼオライト膜12以外の分離膜(例えば、上述の無機膜または有機膜)が支持体11上に形成されてもよい。
【0124】
上記実施の形態では、1種類の高透過性流体(例えばCO2)を濃縮して第2透過流体として抽出する場合について述べたが、混合流体が3種類以上の成分を含む場合に、2種類以上の高透過性流体が濃縮されて抽出されてもよい。すなわち、分離システム4では、少なくとも1種類の高透過性流体が濃縮されて抽出されてもよい。また、既述のように、分離システム4は、少なくとも1種類の低透過性流体を濃縮する目的で用いられてもよい。
【0125】
上記実施の形態では、分離システム4において気体(蒸気を含む)分離が行われるが、供給流体が複数種類の液体を含む混合液とされ、液体分離またはパーベーパレーションが行われてもよい。
【0126】
上述の分離システム4では、上記説明にて例示した物質以外の物質が、混合流体から分離されてもよい。
【0127】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【0128】
発明を詳細に描写して説明したが、既述の説明は例示的であって限定的なものではない。したがって、本発明の範囲を逸脱しない限り、多数の変形や態様が可能であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の分離システムは、様々な分野において、様々な物質の分離に利用可能である。
【符号の説明】
【0130】
4 分離システム
12 ゼオライト膜
41 第1分離部
42 第2分離部
43 供給管
44 中間接続部
411,421 流体供給ポート
412,422 非透過流体排出ポート
413,423 透過流体排出ポート
441 流体貯留部
471 減圧部
472 圧力調整部
480 前処理部
481 断熱材
481a 加熱部
482,483 戻り管
484 エネルギー変換部
485 排出流体昇圧部