(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 8/28 20060101AFI20240228BHJP
C09D 161/14 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C08G8/28 Z
C09D161/14
(21)【出願番号】P 2022537046
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(86)【国際出願番号】 KR2021002752
(87)【国際公開番号】W WO2021177780
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0028398
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0029382
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユ ソン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ジョン ウン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,サン ヨプ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジョン オン
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-275229(JP,A)
【文献】米国特許第04157324(US,A)
【文献】特開2003-082046(JP,A)
【文献】米国特許第04122054(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08K
C08L
C09D 161/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フェノールとパラ-アルキルフェノール類との混合物であるフェノール類化合物、及びアルデヒド類化合物を、塩基性化合物の存在下で反応させ、レゾール型フェノール樹脂を得る段階と、
(b)前記レゾール型フェノール樹脂とアルコール類化合物とを反応させ、アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を製造する段階と、
を含
み、
前記(a)段階の前記フェノール及び前記パラ-アルキルフェノール類は、1:4ないし1:10のモル比で反応させる、
アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記パラ-アルキルフェノール類は、パラ-クレゾール、パラ-tert-ブチルフェノール、パラ-エチルフェノール及びパラ-tert-オクチルフェノールからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記パラ-アルキルフェノール類は、パラ-クレゾールである、請求項1に記載のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記アルデヒド類化合物は、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド及びグリオキサルからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記塩基性化合物は、NaOH、Ba(OH)
2、Ca(OH)
2、Mg(OH)
2、KOH、NH
4OH、N(CH
2CH
2OH)
3及びN(CH
2CH
3)
3からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記アルコール類化合物は、n-ブタノール、イソブチルアルコール及びn-アミルアルコールからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記パラ-アルキルフェノール類は、パラ-クレゾールであり、
前記アルデヒド類化合物は、パラホルムアルデヒドであり、
前記塩基性化合物は、NaOHであり、
前記アルコール類化合物は、n-ブタノールである、
請求項1に記載のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記(a)段階のフェノール類化合物及びアルデヒド類化合物は、1:1ないし1:10のモル比で反応させる、請求項1に記載のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記(a)段階は、50ないし70℃の温度で、2ないし5時間維持した後、75ないし90℃の温度で、5ないし10時間維持して遂行され、
前記塩基性化合物は、NaOHであり、
前記塩基性化合物は、前記フェノール類化合物1モルにつき、0.03ないし0.3モル投入される、請求項1に記載のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記レゾール型フェノール樹脂のメチロール基は、50ないし100%がアルコキシ基で置換される、請求項1に記載のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記(b)段階は、ギ酸、硫酸及びリン酸からなる群から選択される1種以上の酸性化合物の存在下において、pHが3.0ないし4.5に調節されて遂行される、請求項1に記載のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記パラ-アルキルフェノール類は、パラ-クレゾールであり、
前記アルデヒド類は、パラホルムアルデヒドであり、
前記(a)段階の前記フェノール及び前記パラ-アルキルフェノール類は、
1:4ないし1:5のモル比で反応させ、
前記(a)段階のフェノール類化合物及びアルデヒド類化合物は、1:3ないし1:5のモル比で反応させ、
前記(a)段階は、50ないし70℃の温度で、2ないし4時間維持した後、75ないし90℃の温度で、7ないし9時間維持して遂行され、
前記塩基性化合物は、NaOHであり、
前記塩基性化合物は、前記フェノール類化合物1モルにつき、0.05ないし0.2モル投入され、
前記(b)段階は、100ないし110℃で16ないし24時間遂行され、
前記アルコール類化合物は、n-ブタノールであり、
前記レゾール型フェノール樹脂のメチロール基は、80ないし90%がアルコキシ基で置換され、
前記(b)段階は、ギ酸の存在下において、pHが3.5ないし4.0に調節されて遂行され、
前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量は、1,000ないし3,000g/molである、請求項1に記載のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項13】
下記化学式1で表される反復単位、及び下記化学式2で表される反復単位を含み、下記化学式3で表される基を少なくとも一つ含
み、化学式1で表される反復単位、及び化学式2で表される反復単位が1:4ないし1:10の比率で含まれる、アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂:
【化1】
前記化学式1で、nは、1ないし10のうちから選択された整数であり、
R
1は、水素または下記化学式3で表され、
R
2は、水素またはC
1-C
2アルキル基であり、
【化2】
前記化学式3で、R
5a及びR
5bは、互いに独立して、水素またはC
1-C
2アルキル基であり、
R
6は、水素またはC
1-C
20アルキル基であり、
【化3】
前記化学式2で、mは、1ないし10のうちから選択された整数であり、
R
3は、C
1-C
8アルキル基であり、
R
4は、水素またはC
1-C
2アルキル基である。
【請求項14】
前記化学式2で、R
3は、メチル基、エチル基、tert-ブチル基またはtert-オクチル基である、請求項
13に記載のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂。
【請求項15】
前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂に含まれるアルコキシ基の総量が、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂に含まれるアルコキシ基及びアルキロール基の総量の50ないし100%である、請求項
13に記載のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂。
【請求項16】
前記化学式1で、R
2は、水素であり、
前記化学式2で、R
3は、メチル基であり、R
4は、水素であり、
前記化学式3で、R
5a及びR
5bは、水素であり、R
6は、C
3-C
6アルキル基であり、
前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂に含まれるベンゼン環において、C
1-C
8アルキル基が直接結合されていないベンゼン環:C
1-C
8アルキル基が直接結合されているベンゼン環の比率は、1:2ないし1:5であり、
前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂に含まれるアルコキシ基の総量が、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂に含まれるアルコキシ基及びアルキロール基の総量の50ないし100%である、請求項
13に記載のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂。
【請求項17】
請求項
13ないし
16のうちいずれか1項に記載のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を含む樹脂組成物。
【請求項18】
請求項
17に記載の樹脂組成物を含む塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料水の缶や飲食物缶の内面には、飲料や食品から缶の腐食を防止するために、塗膜が形成されている。該塗膜は、缶製造前、金属上に形成されるために、金属を缶に加工する過程において、塗膜が缶から剥がれたりはしない加工性と金属密着性とを有すると共に、加工後にも、すぐれた耐食性及び耐塩性を有することが要求される。
【0003】
前記塗膜を形成するときに使用される塗料としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主剤とし、フェノール樹脂を硬化剤として使用する塗料が知られている。該ビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用した塗料は、加工性や耐熱水性、金属との密着性にもすぐれる。
【0004】
しかしながら、前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂には、環境ホルモンの問題や、生物の脳に影響を与える可能性が指摘されているビスフェノールAが、製造時の未反応物として含まれてしまう場合がある。また、前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む塗料の塗膜は、洗剤で洗浄した場合や、酸や、高温の液体に接触させた場合、ビスフェノールAが溶出される問題がある。従って、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用しない缶用塗料が要求されている。
【0005】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の代替樹脂として、例えば、水酸基を有するアクリル樹脂、水酸基を有するアルキド樹脂、水酸基を有するポリエステル樹脂などを挙げることができる。また、硬化剤の場合、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂に適用可能なビスフェノールフリーフェノール(bisphenol-free phenol)硬化剤として、クレゾール、パラ-tert-ブチルフェノール、パラ-tert-オクチルフェノールなどを含むアルキルフェノール類を原料として使用した技術が活発に開発中である状況である。
【0006】
前記塗料の性能は、配合される硬化剤(フェノール樹脂)の性質により、大きく影響を受ける。従来のビスフェノールフリーフェノール硬化剤を製造するための方法は、ほとんどメタ-クレゾールを原料として含む。他の原料に比べて反応性が良好であるメタ-クレゾールを使用すれば、加工性、金属密着性などにすぐれるフェノール樹脂を容易に製造することができるためである。前述のメタ-クレゾールを原料として製造したフェノール樹脂は、缶内面塗料の硬化剤として使用され、加工性、金属密着性などにすぐれる性質を有する。しかしながら、飲料または食品を長期間収容するによって必須的に要求されるさらにすぐれた塗膜の耐食性及び耐塩性への要求は続いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明が解決しようとする技術的課題は、耐食性、耐塩性及び色相特性にすぐれる塗膜を得ることができるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂及びその製造方法を提供するところにある。また、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を含む樹脂組成物、及び前記樹脂組成物を含む缶内面コーティング用塗料を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、(a)フェノールとパラ-アルキルフェノール類との混合物であるフェノール類化合物、及びアルデヒド類化合物を、塩基性化合物の存在下で反応させ、レゾール型フェノール樹脂を得る段階と、(b)前記レゾール型フェノール樹脂とアルコール類化合物とを反応させ、アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を製造する段階と、を含むアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法に係わるものである。
【0010】
本発明の他の態様は、下記化学式1で表される反復単位、及び下記化学式2で表される反復単位を含み、下記化学式3で表される基を少なくとも一つ含むアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂に係わるものである。
【0011】
【化1】
前記化学式1で、nは、1ないし10の整数であり、R
1は、水素または下記化学式3で表され、R
2は、水素またはC
1-C
2アルキル基であり、
【化2】
前記化学式3で、R
5a及びR
5bは、互いに独立して、水素またはC
1-C
2アルキル基であり、R
6は、水素またはC
1-C
20アルキル基であり、
【化3】
前記化学式2で、mは、1ないし10の整数であり、R
3は、C
1-C
8アルキル基であり、R
4は、水素またはC
1-C
2アルキル基である。
【0012】
本発明のさらに他の態様は、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を含む樹脂組成物に係わるものである。
【0013】
本発明のさらに他の態様は、前記樹脂組成物を含む塗料に係わるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるアルコキシ化レゾール型樹脂の製造方法は、耐食性、耐塩性及び色相特性にすぐれる塗膜を得ることができる硬化剤であるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を製造することができ、前記アルコキシ化レゾール型樹脂を硬化剤として含む組成物は、塗料、例えば、耐腐食性コーティング層形成用塗料としても適して使用される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下で、本発明のさまざまな態様、及び多様な具体例につき、さらに具体的に説明される。
本明細書及び請求範囲に使用された用語や単語は、一般的であったり辞書的であったりする意味に限定して解釈されるものではなく、発明者は、自身の発明ついて最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則にのっとり、本発明の技術的思想に符合する意味と概念とに解釈されなければならない。
【0016】
本発明で使用した用語は、単に、特定実施例について説明するために使用されたものであり、本発明を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本発明において、「含む」または「有する」というような用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、またはそれらの組み合わせが存在するということを指定するものであり、1またはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、またはそれらの組み合わせの存在または付加の可能性を事前に排除するものではないと理解されなければならない。
【0017】
具体的には、本発明の一態様は、(a)フェノールとパラ-アルキルフェノール類との混合物であるフェノール類化合物、及びアルデヒド類化合物を、塩基性化合物の存在下で反応させ、レゾール型フェノール樹脂を得る段階と、(b)前記レゾール型フェノール樹脂とアルコール類化合物とを反応させ、アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を製造する段階と、を含むアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法を提供する。
【0018】
前記パラ-アルキルフェノール類は、フェノールのベンゼン部分の4位炭素に、C1-C8アルキル基が置換された構造を有する化合物を含む。
【0019】
例えば、前記パラ-アルキルフェノール類は、パラ-クレゾール、パラ-エチルフェノール、パラ-プロピルフェノール、パラ-イソプロピルフェノール、パラ-n-ブチルフェノール、パラ-sec-ブチルフェノール、パラ-tert-ブチルフェノール、パラ-イソブチルフェノール、パラ-n-ペンチルフェノール、パラ-tert-ペンチルフェノール、パラ-ネオペンチルフェノール、パラ-イソペンチルフェノール、パラ-sec-ペンチルフェノール、パラ-3-ペンチルフェノール、パラ-sec-イソペンチルフェノール、パラ-n-ヘキシルフェノール、パラ-イソヘキシルフェノール、パラ-sec-ヘキシルフェノール、パラ-tert-ヘキシルフェノール、パラ-n-ヘプチルフェノール、パラ-イソヘプチルフェノール、パラ-sec-ヘプチルフェノール、パラ-tert-ヘプチルフェノール、パラ-n-オクチルフェノール、パラ-イソオクチルフェノール、パラ-sec-オクチルフェノール、パラ-tert-オクチルフェノール、またはそれらの2種以上の混合物を含むことができる。
【0020】
一具体例によれば、前記パラ-アルキルフェノール類は、パラ-クレゾール、パラ-tert-ブチルフェノール、パラ-エチルフェノール、パラ-tert-オクチルフェノールで成り立った群から選択される1種以上であることができる。
【0021】
他の具体例によれば、前記パラ-アルキルフェノール類は、パラ-クレゾール、パラ-tert-ブチルフェノール及びパラ-tert-オクチルフェノールのうちから選択される1種以上であることができる。例えば、前記パラ-アルキルフェノール類は、パラ-クレゾールであることができる。
【0022】
従来のレゾール型フェノール樹脂の製造方法は、反応性にすぐれるメタ-クレゾールを使用する場合、容易な製造が可能であるという点を理由に、原料として、メタ-クレゾールを必須的に含んで製造されている。本発明においては、原料として、メタ-クレゾールを使用せず、フェノール及びパラ-アルキルフェノール類を原料として利用し、アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を製造するのに成功し、具体的には、フェノール及びパラ-クレゾールを原料として利用して製造したアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂は、従来のフェノール及びメタ-クレゾールを原料として含んで製造されたアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂に比べ、優秀な耐食性及び耐塩性を発揮する点を確認し、本発明完成に至った。
【0023】
前記(a)段階において、前記フェノール及び前記パラ-アルキルフェノール類は、1:1ないし1:10のモル比で反応させることができる。例えば、前記フェノール及び前記パラ-アルキルフェノール類は、1:2ないし1:6のモル比、または1:2ないし1:5のモル比で反応させることができる。前記フェノール及び前記パラ-アルキルフェノール類が、前記1:1ないし1:10のモル比を満足しない場合、アルコール類化合物に相溶性が不足してしまい、前記範囲を超えて含まれる場合、分子量が増大することにより、アルコキシ化度が低下し、耐食性と耐塩性とが不足してしまい、望ましくない。
【0024】
前記アルデヒド類化合物は、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド及びグリオキサルからなる群から選択される1種以上を含むことができる。例えば、前記アルデヒド類化合物は、パラホルムアルデヒドであることができる。
【0025】
前記(a)段階において、フェノール類化合物及びアルデヒド類化合物は、1:1ないし1:10のモル比で反応させることができる。例えば、前記フェノール類化合物及びアルデヒド類化合物は、1:1ないし1:5のモル比、または1:3ないし1:5のモル比で反応させることができる。前記フェノール類化合物及びアルデヒド類化合物が、前記1:1ないし1:10のモル比範囲を満足しない場合、反応が円滑になされず、最終物の収率が顕著に低下されるか、あるいは本発明で意図した分子構造形成がなされず、望ましくない。また、1:3ないし1:5モル比範囲を満足しない場合、生成される分子構造の差により、その後の段階工程であるアルコキシ反応が円滑になされないことにより、耐食性、耐塩性及び加工性が低下されてしまう。
【0026】
前記(a)段階において、前記塩基性化合物は、金属イオン触媒、非金属イオン触媒、または前記金属イオン触媒と前記非金属イオン触媒との混合物を含み、前記金属イオン触媒は、NaOH、KOH、Mg(OH)2、Ba(OH)2またはCa(OH)2であり、前記非金属イオン触媒は、NH4OH、N(CH2CH2OH)3またはN(CH2CH3)3であることができる。
【0027】
一具体例によれば、前記塩基性化合物は、NaOH、KOH、Mg(OH)2、Ba(OH)2、Ca(OH)2、NH4OH、N(CH2CH2OH)3及びN(CH2CH3)3からなる群から選択される1種以上の化合物を含むことができる。
【0028】
例えば、前記塩基性化合物は、NaOH、Ba(OH)2、Ca(OH)2、Mg(OH)2及びKOHによって構成された群から選択される1種以上の化合物を含むことができる。
【0029】
前記(a)段階において、反応は、50ないし70℃の温度で、2ないし5時間維持した後、75ないし90℃の温度で、5ないし10時間維持して行われ、前記塩基性化合物は、NaOHであり、前記塩基性化合物は、前記フェノール類化合物1モルにつき、0.03ないし0.3モル投入され得る。
【0030】
一具体例によれば、前記(a)段階において、反応は、55ないし65℃の温度で、2ないし4時間維持した後、75ないし85℃の温度で、7ないし9時間維持して行われ、前記塩基性化合物は、NaOHであり、前記塩基性化合物は、前記フェノール類化合物1モルにつき、0.05ないし0.2モル投入され得る。
【0031】
前述の2段階の反応における温度範囲及び時間範囲、塩基性化合物の種類及び含量が満足されない場合、フェノール及びパラ-アルキルフェノール類を含むフェノール類化合物から、所望する物性、例えば、すぐれた耐食性、耐塩性及び加工性を有するレゾール型フェノール樹脂が得られない。
【0032】
前記(b)段階において、レゾール型フェノール樹脂のメチロール基をアルコキシ基で置換するのに使用される前記アルコール類化合物は、n-ブタノール、イソブチルアルコール及びn-アミルアルコールからなる群から選択される1種以上が使用され得る。
【0033】
例えば、前記アルコール類化合物は、n-ブタノールであることができる。
【0034】
前記アルコール類化合物は、前記(a)段階を介して製造されたレゾール型フェノール樹脂100重量部に対し、100ないし500重量部使用され得る。
【0035】
例えば、前記レゾール型フェノール樹脂とアルコール類化合物との反応性を考慮し、200ないし400重量部が使用され得る。
【0036】
一具体例によれば、前記パラ-アルキルフェノール類は、パラ-クレゾールであり、前記アルデヒド類化合物は、パラホルムアルデヒドであり、前記塩基性化合物は、NaOHであり、前記アルコール類化合物は、n-ブタノールであることができる。前述の各種類の化合物を使用する場合、他種類の化合物条件とは異なり、メチロール基のブトキシ基置換度を、用途によって調節しやすい長所があり、製造されるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂のすぐれた加工性、耐食性、耐塩性を発揮することを確認することができた。
【0037】
前記(b)段階において、反応は、90ないし150℃において、10ないし36時間行われ得る。例えば、前記反応は、100ないし110℃において、16ないし24時間行われ得る。
【0038】
前記レゾール型フェノール樹脂のメチロール基は、50ないし100%がアルコキシ基で置換され得る。例えば、前記レゾール型フェノール樹脂のメチロール基は、60ないし100%、60ないし90%、または70ないし90%がアルコキシ基で置換され得る。ここで、メチロール基がアルコキシ基で置換される比率は、メチロール基の質量を基準に計算したものである。前記(b)段階における反応が、90ないし150℃の温度範囲、及び10ないし36時間の範囲を外れる場合、前記レゾール型フェノール樹脂のメチロール基が、50%未満にアルコキシ基で置換され、製造されるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂が単独でグラフト縮合される傾向が高くなるために、加工性が落ちるという問題がある。
【0039】
一具体例によれば、前記レゾール型フェノール樹脂のメチロール基は、50ないし100%がアルコキシ基で置換され得るが、前記範囲で置換されることにより、主剤との相溶性が向上され、耐食性、耐塩性にすぐれる塗膜が形成され得る。
【0040】
前記(b)段階は、ギ酸、硫酸及びリン酸からなる群から選択される1種以上の酸性化合物の存在下において、pHが3.0ないし4.5に調節されても遂行される。例えば、前記(b)段階は、ギ酸の存在下において、pHが3.5ないし4.0に調節されても遂行される。
【0041】
前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量は、1,000ないし3,000g/molであってもよい。例えば、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量は、1,200ないし2,500g/mol、または1,500ないし2,000g/molであってもよい。前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂が前記重量平均分子量範囲を満足する場合、すぐれた加工性、塗膜形成のために組み合わされる主剤とのすぐれた相溶性、及び硬化性を有することができる。
【0042】
一方、下記の実施例または比較例などに明示的に記載されていないが、本発明によるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造方法において、前記パラ-アルキルフェノール類の種類、アルデヒド類化合物の種類、フェノール及びパラ-アルキルフェノール類のモル比、フェノール類化合物及びアルデヒド類化合物のモル比、前記(a)段階の反応温度及び時間、塩基性化合物の種類、塩基性化合物の投入量、前記(b)段階の反応温度及び時間、前記レゾール型フェノール樹脂のアルコキシ基置換度、前記(b)段階のpH、アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量などを異にして製造されたそれぞれのアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の特性を分析し、それを利用し、アルミニウム金属上に塗膜を形成し、性能分析を実施した。
【0043】
その結果、他の条件及び他の数値範囲とは異なり、以下の条件がいずれも満足されたとき、主剤との相溶性が向上され、耐食性、耐塩性にすぐれる塗膜が形成される効果を確認することができた。さらには、缶の内面コーティング用塗膜に適用され、目的とする色相の発現が容易であり、内容物を長期間保管した後にも、初期色相を維持することができ、白化(blushing)現象が生じないというようなすぐれた色相特性を発現することも確認することができた。
(1)前記パラ-アルキルフェノール類は、パラ-クレゾール、(2)前記アルデヒド類化合物は、パラホルムアルデヒド、(3)前記(a)段階のフェノール及びパラ-アルキルフェノール類は、1:2ないし1:5のモル比で反応、(4)前記(a)段階のフェノール類化合物及びアルデヒド類化合物は、1:3ないし1:5のモル比で反応、(5)前記(a)段階は、50ないし70℃の温度で、2ないし4時間維持した後、75ないし90℃の温度で、7ないし9時間維持して遂行、(6)前記塩基性化合物は、NaOH、(7)前記塩基性化合物は、前記フェノール類化合物1モルにつき、0.05ないし0.2モル投入、(8)前記(b)段階は、100ないし110℃において、16ないし24時間遂行、(9)前記アルコール類化合物は、n-ブタノール、(10)前記レゾール型フェノール樹脂のメチロール基は、80ないし90%がアルコキシ基で置換、(11)前記(b)段階は、ギ酸の存在下において、pHが3.5ないし4.0に調節されて遂行、(12)前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量は、1,000ないし3,000g/molである。
【0044】
ただ、前記条件のうちいずれか一つでも充足されない場合には、アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂が単独にグラフト縮合する傾向が高くなるために、加工性が落ちるという問題が生じるということを確認し、形成された塗膜が初期色相を長期間維持することができないか、あるいは白化現象が生じるというように、色相特性が低下されることを確認した。
【0045】
本発明の他の態様は、下記化学式1で表される反復単位、及び下記化学式2で表される反復単位を含み、下記化学式3で表される基を少なくとも一つ含むアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を提供する。
【0046】
【化4】
前記化学式1で、nは、1ないし10の整数であり、R
1は、水素または下記化学式3で表され、R
2は、水素またはC
1-C
2アルキル基であり、
【化5】
前記化学式3で、R
5a及びR
5bは、互いに独立して、水素またはC
1-C
2アルキル基であり、R
6は、水素またはC
1-C
20アルキル基であり、
【化6】
前記化学式2で、mは、1ないし10の整数であり、R
3は、C
1-C
8アルキル基であり、R
4は、水素またはC
1-C
2アルキル基である。
【0047】
例えば、前記化学式2で、R3は、メチル基、エチル基、tert-ブチル基またはtert-オクチル基であることができる。
【0048】
前記化学式1ないし3で、*は、隣接原子との結合位置を示す。
【0049】
一具体例によれば、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂は、前記化学式1でR1が、前記化学式3で表される反復単位を少なくとも一つ含むことができる。
【0050】
アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂部分において、前述のように、メタ-クレゾールを原料にせず、フェノール由来反復単位(化学式1で表される反復単位)、及びパラ位置にC1-C8アルキル基を有する反復単位(化学式2で表される反復単位)を含むアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂は、従来のメタ-クレゾールを原料として含んで製造されたアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂に比べ、優秀な耐食性及び耐塩性を発揮する。
【0051】
前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂は、下記化学式4で表される反復単位、及び下記化学式5で表される反復単位をさらに含むことができる。
【0052】
【化7】
前記化学式4でn1は、1ないし10の整数であり、R
7は、水素または下記化学式3で表され、R
8及びR
9は、それぞれ独立して、水素またはC
1-C
2アルキル基であり、
【化8】
前記化学式3で、R
5a及びR
5bは、互いに独立して、水素またはC
1-C
2アルキル基であり、R
6は、水素またはC
1-C
20アルキル基であり、
前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂は、R
7が、前記化学式3で表される少なくとも一つの前記化学式4で表された反復単位を含み、
【化9】
前記化学式5でm1は、1ないし10の整数であり、R
10は、C
1-C
8アルキル基であり、R
11及びR
12は、水素またはC
1-C
2アルキル基である。
【0053】
前記化学式1で表される反復単位、及び前記化学式2で表される反復単位は、本発明によるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂に含まれる反復単位を意味するものであり、存在の比率にかかわらず、前記化学式4または化学式5で表される反復単位にエーテルを含む典型的なレゾール型フェノール樹脂構造も含むことができる。それは、製造過程において、モノマーであるフェノールまたはパラ-アルキルフェノール類と、アルデヒド類化合物との反応により、ベンゼン環に直接結合して形成されたアルキロール基間の反応によって形成されたものに該当する。
【0054】
前記化学式1で表される反復単位は、下記化学式1-1ないし1-3のうちから選択されるいずれか1、または2以上の組み合わせが表示される反復単位であることができる。
【0055】
【化10】
【化11】
【化12】
前記化学式1-1ないし1-3でnは、1ないし10の整数であり、
R
1は、水素または下記化学式3で表され、
R
2は、水素またはC
1-C
2アルキル基であり、
【化13】
前記化学式3で、R
5a及びR
5bは、互いに独立して、水素またはC
1-C
2アルキル基であり、
R
6は、水素またはC
1-C
20アルキル基である。
【0056】
また、前記化学式2で表される反復単位は、下記化学式2-1で表される反復単位であることができる。
【0057】
【化14】
前記化学式2-1でmは、1ないし10の整数であり、
R
3は、C
1-C
8アルキル基であり、
R
4は、水素またはC
1-C
2アルキル基である。
【0058】
望ましくは、前記化学式2-1でR3は、メチル基であることができるが、その場合、パラ-クレゾールを原料として製造され、最も優秀な耐食性及び耐塩性を発揮する塗料、例えば、耐腐食性コーティング用塗料に使用されるのに適する。例えば、前記塗料は、缶コーティング用塗料であることができる。
【0059】
前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂に含まれるベンゼン環において、C1-C8アルキル基が直接結合されていないベンゼン環:C1-C8アルキル基が直接結合されているベンゼン環の比率は、1:1ないし1:10、例えば、1:2ないし1:6、または1:2ないし1:5であることができる。ここで、前記ベンゼン環において、C1-C8アルキル基が直接結合されていないベンゼン環の比率は、化学式1または化学式4で表される反復単位のモル数と対応し、前記C1-C8アルキル基が直接結合されているベンゼン環の比率は、化学式2または化学式5で表される反復単位のモル数と対応する。前述の比率は、各ベンゼン環の個数による比率を意味する。前述の各比率は、製造過程で使用されたフェノール及びパラ-アルキルフェノール類のモル比に比例し得るが、具体的には、NMRを介する分析及び測定が可能である。前述の範囲の比率を満足するアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂は、耐食性及び耐塩性にすぐれるだけではなく、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を含む塗料で形成した塗膜が、すぐれた密着性を有することができる。
【0060】
前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂に含まれるアルコキシ基の総量が、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂に含まれるアルコキシ基及びアルキロール基の総量の50ないし100%であることができる。ここで、アルコキシ基の総量が、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂に含まれるアルコキシ基及びアルキロール基の総量の100%という意味は、レゾール型フェノール樹脂の完全なアルコキシ化を意味する。前記アルコキシ基及びアルキロール基の量は、存在する作用基の個数を意味する。前記アルコキシ基は、前述の製造方法の(b)段階において、アルコキシ化のために使用されたアルコール類化合物に由来する。前記アルコキシ基の総量が、アルコキシ基及びアルキロール基の総量の50%未満である場合、アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂が単独でグラフト縮合する傾向が高くなるために、加工性が落ちるという問題がある。
【0061】
一具体例によれば、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂に含まれるアルコキシ基の総量が、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂に含まれるアルコキシ基及びアルキロール基の総量の80ないし90%であることができるが、その場合、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を含む樹脂組成物の主剤との相溶性が向上され、耐食性、耐塩性がさらに優秀な塗膜を形成することができる。
【0062】
前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量は、1,000ないし3,000g/molであることができる。例えば、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量は、1,200ないし2,500g/mol、または1,500ないし2,000g/molであることができる。前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量が前記範囲を満足する場合、すぐれた加工性、塗膜形成のために組み合わされる主剤とのすぐれた相溶性、及び硬化性を有することができるという点で望ましい。
【0063】
一具体例によれば、前記化学式1で、R2は、水素であり、前記化学式2で、R3は、メチル基であり、R4は、水素であり、前記化学式3で、R5a及びR5bは、水素であり、R6は、C3-C6アルキル基であり、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂に含まれるベンゼン環において、C1-C8アルキル基が直接結合されていないベンゼン環:C1-C8アルキル基が直接結合されているベンゼン環の比率は、1:2ないし1:5であり、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂に含まれるアルコキシ基の総量が、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂に含まれるアルコキシ基及びアルキロール基の総量の50ないし100%であることができる。前記条件をいずれも満足するアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂は、それを含む塗料で形成した塗膜が、ASTM B 571によって遂行したスクライブ・グリッド(scribe-grid)テストにおいて、テープ上に塗膜脱着が観察されず、優秀な密着力を有するということを確認することができた。前記条件を満足することができないアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を含む塗料で形成した塗膜は、同一テストにおいて、テープ上に塗膜の一部が観察されることを確認した。さらには、缶の内面コーティング用塗膜に適用され、目的とする色相の発現が容易であり内容物を長期間保管した後にも、初期色相を維持することができ、白化現象が発生しないというように、優秀な色相特性を発現することも確認することができた。
【0064】
本発明のさらに他の態様は、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を含む樹脂組成物を提供する。前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂は、各種樹脂の硬化剤として使用され、望ましくは、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂の硬化剤に組み合わされても使用される。前記エポキシ樹脂またはポリエステル樹脂の硬化剤に組み合わされた樹脂組成物は、後述するように、塗料、例えば、缶内面コーティング用塗料として使用され、耐食性及び耐塩性にすぐれる塗膜を製造することができる。
【0065】
前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂は、前記樹脂組成物全体重量対比で、50ないし70重量部含まれ得る。例えば、前記アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂は、前記樹脂組成物全体重量対比で、55ないし65重量部含まれ得る。
【0066】
本発明のさらに他の態様は、前記樹脂組成物を含む塗料、例えば、耐食性コーティング用塗料が提供される。
【0067】
一具体例によれば、前記樹脂組成物を含む塗料は、缶内面コーティング用塗料としても使用される。
【0068】
前記缶内面コーティング用塗料は、顔料、溶剤、添加剤などをさらに含むことができる。
【0069】
前記顔料の例としては、無機顔料または有機顔料などがある。前記無機顔料は、クロム酸塩(黄鉛、クロムバーミリオン)、フェロシアン化物(紺青)、硫化物(カドミウムイエロー、カドミウムレッド)、酸化物(酸化チタン、ベンガラ、鉄黒、酸化亜鉛)、硫酸塩(硫酸バリウム、硫酸鉛)、ケイ酸塩(群青、ケイ酸カルシウム)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム)、リン酸塩(コバルトバイオレット)、金属粉末(アルミニウム粉末、ブロンズ)及び炭素(カーボンブラック)からなる群から選択された1種以上であることができる。
【0070】
前記有機顔料は、アゾ系(ベンジジンイエロー、ハンザイエロー、バルカンオレンジ、パーマネントレッドF5R、カーマイン6B、レーキレッドC、クロモフタールレッド、クロモフタールイエロー)及びフタロシアニン系(フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン)からなる群から選択された1種以上であることができる。
【0071】
前記溶剤の例としては、トルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150などの芳香族炭化水素系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンのような脂肪族炭化水素系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチルのようなエステル系溶剤などを挙げることができる。また、使用され得る水混和性有機溶剤の例として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールのようなアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノールのようなケトン系溶剤;エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテルのようなグリコールエーテル系溶剤などを挙げることができる。
【0072】
前記添加剤は、各種滑剤、消泡剤、レベリング剤、滑剤などを例として挙げることができ、硬化補助剤として、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、イソシアネート樹脂のような他の硬化剤を含むことができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を介し、本発明についてさらに詳細に説明する。それら実施例は、単に、本発明についてさらに具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例によって制限されるものではないということは、本発明が属する技術分野で当業者において自明であろう。
【0074】
実施例1.アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造
撹拌器、コンデンサ、温度計を具備した4口フラスコに、p-クレゾール339.92g(3.14モル)、フェノール73.96g(0.79モル)、92%パラホルムアルデヒド385g(11.79モル)、n-ブタノール388.5g(5.24モル)及び50% NaOH水溶液50.27gを投入し、60℃まで昇温させ、3時間反応させた後、80℃に昇温させ、重量平均分子量が1,500~1,800g/molになるまで反応させた。
【0075】
反応が完了した後、n-ブタノール777g(10.48モル)を加え、ギ酸(pKa=3.8)でもって、系内pHを3.5~4.0に調整した後、100~110℃において、反応中で生成される水を除去しながら、20時間反応させた。反応終了後、イオン交換水800gを添加し、80℃で撹拌した後で静置させ、分離された下層の水を除去した。未反応単量体を減らすために、分離された水の洗浄工程を3回以上実施し、次に、減圧脱溶剤を行い、固形分58~62%のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂のn-ブタノール溶液を得た。アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂中のメチロール基に対するブトキシ基置換度(アルコキシ化度)は84%であり、重量平均分子量は、1,500~1,800g/molであった。
【0076】
実施例2.アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造
撹拌器、コンデンサ、温度計を具備した4口フラスコに、p-クレゾール297.01g(2.75モル)、フェノール110.94g(1.18モル)、92%パラホルムアルデヒド513.37g(15.72モル)、n-ブタノール388.5g(5.24モル)及び50% NaOH水溶液50.27gを投入し、60℃まで昇温させ、3時間反応させた後、80℃に昇温させ、重量平均分子量が1,800~2,000g/molになるまで反応させた。
【0077】
反応が完了した後、n-ブタノール777g(10.48モル)を加え、ギ酸(pKa=3.8)でもって、系内pHを3.5~4.0に調整した後、100~110℃において、反応中に生成される水を除去しがら、25時間反応させた。反応終了後、イオン交換水800gを添加し、80℃で撹拌した後で静置し、分離された下層の水を除去した。未反応単量体を減らすために、分離された水の洗浄工程を3回以上実施し、次に、減圧脱溶剤を行い、固形分58~62%のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂のn-ブタノール溶液を得た。アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂中のメチロール基に対するブトキシ基置換度(アルコキシ化度)は、75%であり、重量平均分子量は、1,800~2,000g/molであった。
【0078】
実施例3.アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造
撹拌器、コンデンサ、温度計を具備した4口フラスコに、p-クレゾール297.01g(2.75モル)、フェノール110.94g(1.18モル)、92%パラホルムアルデヒド641.67g(19.65モル)、n-ブタノール388.5g(5.24モル)及び50% NaOH水溶液25.14gを投入し、60℃まで昇温させ、3時間反応させた後、80℃に昇温させ、重量平均分子量が1,800~2,000g/molになるまで反応させた。
【0079】
反応が完了した後、n-ブタノール777g(10.48モル)を加え、ギ酸(pKa=3.8)でもって、系内pHを3.5~4.0に調整した後、100~110℃において、反応中に生成される水を除去しがら、25時間反応させた。反応終了後、イオン交換水800gを添加し、80℃で撹拌した後で静置し、分離された下層の水を除去した。未反応単量体を減らすために、分離された水の洗浄工程を3回以上実施し、次に、減圧脱溶剤を行い、固形分58~62%のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂のn-ブタノール溶液を得た。アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂中のメチロール基に対するブトキシ基置換度(アルコキシ化度)は、64%であり、重量平均分子量は、1,800~2,000g/molであった。
【0080】
比較例1.アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造
フェノール73.96g(0.79モル)の代わりに、メタ-クレゾール85.43g(0.79モル)を使用したことを除いては、前記実施例1と同一に実施し、アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を製造した。製造されたアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂中のメチロール基に対するブトキシ基置換度(アルコキシ化度)は、82%であり、重量平均分子量は、1,500~1,800g/molであった。
【0081】
比較例2.アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造
フェノール110.94g(1.18モル)の代わりに、メタ-クレゾール127.60g(1.18モル)を使用したことを除いては、前記実施例3と同一に実施し、アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を製造した。製造されたアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂中のメチロール基に対するブトキシ基置換度(アルコキシ化度)は、65%であり、重量平均分子量は、1,800~2,000g/molであった。
【0082】
前述の実施例1~3、及び比較例1,2で得られたフェノール樹脂を利用し、下記のように塗料を調整し、その塗料をスズメッキ鋼板に塗布した後、焼き付け処理を施し、加工性、レトルト性、耐食性、耐塩性の試験を実施した。各種試験方法を下記に示した。
【0083】
実験例1.塗膜性能評価
塗料の組成
エポキシ樹脂またはポリエステル樹脂、n-ブタノール及びキシレンを、0.6:1:1の重量比で混合溶剤に溶解させ、固形分30%のエポキシ樹脂またはポリエステル樹脂溶液を製造した。当該のエポキシ樹脂またはポリエステル樹脂溶液と、実施例1~3、及び比較例1,2で得られたフェノール樹脂とを、前述のエポキシ樹脂またはポリエステル樹脂溶液の固形分と、重量比が8対2になるように混合し、試験塗料を得た。
【0084】
塗膜性能試験方法
前記方法で組成した各塗料を、0.3mmのスズメッキ鋼板に乾燥塗膜5~7μmになるように、バーコータに塗布し、205℃で10分間焼き付けた。そして、次に示す塗膜性能を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0085】
(1)加工性:試片に対し、125℃で30分間、それぞれスチーム(steam)処理、高温熱水処理した後、側面を強制剥離させたときのフィルム密着性を、下記のような段階で評価した:非常に良好(◎)、良好(○)、不良(△)。
(2)レトルト性:試片に対し、125℃で30分間、それぞれスチーム処理、高温熱水処理した後、接着剤層の白化状態を肉眼で観察し、下記のような段階で評価した:非常に良好(◎)、良好(○)、不良(△)。
(3)耐食性:試片に対し、硫酸銅水溶液で3時間処理した後、接着剤層の状態を肉眼で観察し、下記のような段階で評価した:非常に良好(◎)、良好(○)、不良(△)。
(4)耐食性、耐塩性:試片に対し、それぞれ塩化ナトリウム3%、酢酸3%、システイン0.1%水溶液において、125℃で30分間、レトルト処理した後、接着剤層の状態を肉眼で観察し、下記のような段階で評価した:非常に良好(◎)、良好(○)、不良(△)。
【0086】
【0087】
前記表1に示されているように、実施例のアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を使用した塗膜が、比較例の場合と比較し、加工性、レトルト性、耐食性、耐塩性などの全般的な物性が同等であるか、それよりも優れるレベルを示すということを確認することができた。
【0088】
前記結果から、アルコキシ化レゾール型フェノール樹脂の製造において、メタ-クレゾールの代わりに、フェノールを原料として使用することにより、塗膜の物性を向上させることができることを確認した。
【0089】
従って、本発明によるアルコキシ化レゾール型樹脂の製造方法は、耐食性、耐塩性及び色相特性にすぐれる塗膜を得ることができる硬化剤であるアルコキシ化レゾール型フェノール樹脂を製造することができ、前記アルコキシ化レゾール型樹脂を硬化剤として含む樹脂組成物は、飲食品缶の内面塗料として適して使用され得る。
【0090】
前述の実施例及び比較例は、本発明について説明するための例示であり、本発明は、それらに限定されるものではない。本発明が属する技術分野で当業者であるならば、それらから多様に変形させ、本発明を実施することが可能であるので、本発明の技術的保護範囲は、特許請求の範囲によって定められるものである。