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<図1A>
  • -超微粒化合物およびその製造 図1A
  • -超微粒化合物およびその製造 図1B
  • -超微粒化合物およびその製造 図2A
  • -超微粒化合物およびその製造 図2B
  • -超微粒化合物およびその製造 図3
  • -超微粒化合物およびその製造 図4
  • -超微粒化合物およびその製造 図5
  • -超微粒化合物およびその製造 図6
  • -超微粒化合物およびその製造 図7
  • -超微粒化合物およびその製造 図8
  • -超微粒化合物およびその製造 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】超微粒化合物およびその製造
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/69 20170101AFI20240228BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240228BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240228BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240228BHJP
   C12G 3/05 20190101ALI20240228BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 23/00 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240228BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240228BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
A61K47/69
A23L33/10
A23L33/105
A23L2/52
A23L2/52 101
C12G3/05
A61K45/00
A61K9/72
A61K9/14
A61K9/16
A61K31/05
A61K31/192
A61K31/352
A61K31/353
A61P29/00
A61P23/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P7/02
A61P25/08
A61P25/24
A61P21/02
A61K9/08
A61K9/107
A61K31/4045
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022538055
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 US2020056731
(87)【国際公開番号】W WO2021081140
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】62/923,726
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/929,455
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522159886
【氏名又は名称】エソレイト・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン,エイチ・マシュー
(72)【発明者】
【氏名】オー,ジンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ブライソン,ジュリアン
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-511530(JP,A)
【文献】特表2006-524670(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0153931(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0038995(US,A1)
【文献】特表2010-522730(JP,A)
【文献】特表2010-505605(JP,A)
【文献】Chem. Eur. J.,2016年,22,pp.2972-2979
【文献】Pharmaceutical Research,1999年,16(12),pp.1864-1870
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L
C12G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
99.9%の純度、および非シクロデキストリン封入活性医薬成分の製剤と比較して200%の増加した生物学的利用能を有する、安定した食用、吸入可能、可溶性、または飲用可能な医薬グレードの高度に生物学的利用可能かつ安定した超微細シクロデキストリン封入水不溶性活性医薬成分を製造する方法であって、
前記水不溶性活性医薬成分が、カンナビノイド、サイケデリック、鎮痛剤、麻酔剤、抗炎症剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗凝固剤、抗けいれん剤、抗うつ剤、または筋弛緩剤であり、
前記方法が、
(a)前記活性医薬成分(API)を超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体の二酸化炭素中に溶解させて、API溶液を形成することと、
(b)1つ以上のシクロデキストリンを前記API溶液に添加することと、
(c)設定された圧力および設定された温度で所定の期間にわたって前記二酸化炭素をポンプで送ることと、
(d)前記API溶液を減圧させることと、
(e)前記API溶液をスプレーして、それによって、安定した食用、吸入可能、可溶性、または飲用可能な医薬グレードの高度に生物学的利用可能かつ安定した超微細シクロデキストリン封入水不溶性活性医薬成分を製造することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記医薬グレードの高度に生物学的利用可能な微粉シクロデキストリン封入活性医薬成分が、100nm~40μmの平均粒子サイズ、および前記平均粒子サイズの約1%~約50%以内のサイズ分布を有する吸入可能な超微細ナノ粒子の形態にあり、
前記方法が、
(i)反応チャンバ内にて前記APIと、1つ以上のアセチル化シクロデキストリンとを、超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体の二酸化炭素中に溶解させることと、
(ii)設定された圧力および設定された温度で所定の期間にわたって前記二酸化炭素をポンプで送り、アセチル化シクロデキストリン封入API溶液を得ることと、
(iii)前記アセチル化シクロデキストリン封入API溶液を減圧させることと、
(iv)前記アセチル化シクロデキストリン封入API溶液を加熱された沈殿器内へとノズルを介してスプレーして、アセチル化シクロデキストリン封入活性医薬成分の吸入可能な超微細ナノ粒子を得ることと、
(v)アセチル化シクロデキストリン封入活性医薬成分の前記吸入可能な超微細ナノ粒子を粒子サイズによって収集および選別することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記医薬グレードの高度に生物学的利用可能かつ安定した超微細シクロデキストリン封入活性医薬成分が、吸入可能な乾燥粉末の形態にあり、
前記方法が、
(i)親水性シクロデキストリンを、100nm~5μmの平均粒子サイズを有する粒子に粉砕することと、
(ii)前記反応チャンバ内にて前記APIと、1つ以上のアセチル化シクロデキストリンとを、超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体の二酸化炭素中に溶解させることと、
(iii)設定された圧力および設定された温度で所定の期間にわたって前記二酸化炭素をポンプで送り、アセチル化シクロデキストリン封入API溶液を得ることと、
(iv)前記アセチル化シクロデキストリン封入API溶液を減圧させることと、
(v)前記アセチル化シクロデキストリン封入API溶液に親水性シクロデキストリン粒子を添加して、親水性シクロデキストリン懸濁液-アセチル化シクロデキストリン封入API溶液混合物を作製することと、
(vi)前記混合物を加熱された沈殿器内へとノズルを介してスプレーして、シクロデキストリン封入活性医薬成分の吸入可能な超微細乾燥粉末を得ることと、
(vii)前記シクロデキストリン封入活性医薬成分の前記吸入可能な超微細乾燥粉末を粒子サイズによって収集および選別することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記医薬グレードの高度に生物学的利用可能かつ安定した超微細シクロデキストリン封入活性医薬成分が、可溶性または飲用可能な溶液または懸濁液の形態にあり、
前記方法が、
(i)制御された圧力および温度で親水性シクロデキストリンを親水性液体中に溶解させて、親水性シクロデキストリン水溶液を形成することと、
(ii)反応チャンバ内にて前記APIを超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体の二酸化炭素中に溶解させることと、
(iii)設定された圧力および設定された温度で所定の期間にわたって前記二酸化炭素をポンプで送り、API溶液を得ることと、
(iv)前記API溶液を減圧させることと、
(v)前記API溶液を前記親水性シクロデキストリン水溶液中にノズルを介してスプレーして、親水性シクロデキストリン封入活性医薬成分の飲用可能な溶液または懸濁液を得ることと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体の二酸化炭素が、賦形剤、乳化剤または分散剤を含み、前記方法が、(vi)二酸化炭素をガスに変換することと、(vii)超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体状態を達成するために二酸化炭素ガスを濾過および加圧することと、(viii)前記反応チャンバ内で二酸化炭素を再循環させることと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記サイケデリックが、プシロシンまたはプシロシビンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記カンナビノイドが、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビゲロバリン酸(CBGVA、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、カンナビクロメン酸(CBCA)、カンナビジオール酸(CBDA)、テトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)、カンナビクロメバリン酸(CBCVA)、カンナビジバリン酸(CBDVA)、(-)-トランス-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)、(-)-トランス-Δ9-テトラヒドロカンナビフェロール(Δ9-THCP)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビジオール(CBD)、カンナビノジオール(CBND)、カンナビノール(CBN)のうちの1つ以上、またはそれらの任意の混合物を含み、および
前記1つ以上のカンナビノイドが、処理する前に、抽出物、蒸留物、2回純化蒸留物、3回純化蒸留物、または部分的に精製された単離物の形態にある、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上のアセチル化シクロデキストリンが、アセチル化α-シクロデキストリン、アセチル化β-シクロデキストリン、アセチル化γ-シクロデキストリン、またはそれらの任意の混合物を含み、および
前記APIおよび前記1つ以上のアセチル化シクロデキストリンが、1:0.5~1:10の範囲のAPI:アセチル化シクロデキストリンのモル比にあるか、または前記API:アセチル化シクロデキストリンのモル比が、1:0.5、1:0.75、1:1、1:1.5、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、1:5、1:5.5、1:6、1:6.5、1:7、1:7.5、1:8、1:8.5、1:9、1:9.5、もしくは1:10である、
請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記親水性シクロデキストリンが、親水性α-シクロデキストリン、親水性β-シクロデキストリン、親水性γ-シクロデキストリン、またはそれらの任意の混合物を含み、
前記親水性液体が、任意選択的に賦形剤若しくは乳化剤を含有する、水、ジュース、シロップ、牛乳、またはアルコールもしくはノンアルコール飲料である、
請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月21日に出願された米国仮出願第62/923,726号、および2019年11月1日に出願された米国仮出願第62/929,455号の優先権を主張し、それらの内容は、参照により、それらの全体が組み込まれる。
【0002】
本出願は、99%の純度を有する安定した医薬グレードの高度に生物学的利用可能な超微粒シクロデキストリン封入活性医薬成分、および超微粒シクロデキストリン封入活性医薬成分を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
親油性活性医薬成分(API)は、水溶性に乏しく、その抽出および純化は、抽出、蒸留生成、および純化を必要とする時間のかかるプロセスである。これらのプロセスは、有害な溶媒の使用を伴い、多くの場合、低い安定性および有効性の欠如に悩まされる生成物を生み出している。加えて、得られたAPI生成物は、医薬グレードの純度が欠如しており、生物学的利用能が乏しい。
【0004】
カンナビノイドは、一年生植物のCannabis sativa、Cannabis indica、Cannabis ruderalis、およびそれらのハイブリッド中で天然に生成される親油性APIである。最も活性な天然由来のカンナビノイドであるテトラヒドロカンナビノール(THC)は、緑内障、AIDS消耗、神経障害性疼痛、多発性硬化症に関連するけい性の処置、線維筋痛症、嘔吐および化学療法により誘発される悪心を含む幅広い医学的状態の処置に有益である。カンナビジオール(CBD)は、向精神効果がなく、てんかんの処置のためにFDAにより承認されている。カンナビノール(CBN)は、効果的な鎮静剤および炎症緩和剤である。カンナビノイド全般、特に、THC、CBDおよびCBNに対するレクリエーション的使用の需要が高まっている。サイケデリックなどの精神活性薬物も、意識状態へのその効果のため需要がある。しかしながら、これらのAPIの水への溶解度は制限されている。例えば、現在入手可能なカンナビジオール(CBD)単離物の水への溶解度は、わずか0.0126mg/mlである。
【0005】
カンナビノイドは、前駆体カンナビゲロール酸(CBGA)、またはその類似体のカンナビゲロバリン酸(CBGVA)に由来する。CBGAの酵素変換は、(-)-トランス-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビジオール(CBD)、カンナビノジオール(CBND)、およびカンナビノール(CBN)を含む、多種多様なカンナビノイドを生成する。CBGVAの酵素変換は、Δ9-テトラヒドロカンナビバリン(Δ9-THCV)、カンナビバリン(CBV)、カンナビジバリン(CBDV)およびカンナビクロメバリン(CBCV)を生成する。
【0006】
安定した医薬グレード、食用、吸入可能、可溶性、および飲用可能な高度に生物学的利用可能かつ純粋な親油性API化合物の効率的かつ安全な製造が、当該技術分野において求められている。
【発明の概要】
【0007】
本出願は、医薬グレードの純度の安定した食用、吸入可能、可溶性、または飲用可能な高度に生物学的利用可能な超微粒シクロデキストリン封入活性医薬成分を製造する、迅速で、費用対効果が高くかつ容易にスケーラブルなプロセスを提供することによって、前述の課題に対する解決策を提示する。開示されるプロセスは、有機溶媒の使用を必要とせず、したがって、最も制限の厳しい健康ガイドライン要件を満たす。得られた超微粒医薬活性成分は、肺および経口送達、食品および飲料製品、ならびに医薬および医学的用途のために使用され得る。
【0008】
したがって、本明細書に開示されるのは、99%の純度、および非シクロデキストリン封入活性医薬成分の製剤と比較して200%の増加した生物学的利用能を有する、安定した食用、吸入可能、可溶性、または飲用可能な医薬グレードの高度に生物学的利用可能な微粉シクロデキストリン封入活性医薬成分を製造する方法である。
【0009】
開示される方法に従って生成され得る好適な活性医薬成分としては、カンナビノイド、サイケデリック、鎮痛剤、麻酔剤、抗炎症剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗凝固剤、抗けいれん剤、抗うつ剤、および筋弛緩剤を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0010】
開示される方法は、非逐次的な順序で、(a)活性医薬成分(API)を超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体の二酸化炭素中に溶解させて、API溶液を形成することと、(b)1つ以上のシクロデキストリンをAPI溶液に添加することと、(c)設定された圧力および設定された温度で所定の期間にわたって二酸化炭素をポンプで送ることと、(d)API溶液を減圧させることと、(e)API溶液をスプレーして、それによって、安定した食用、吸入可能、可溶性、または飲用可能な医薬グレードの高度に生物学的利用可能な微粉シクロデキストリン封入活性医薬成分を生成することと、を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、生成された医薬グレードの高度に生物学的利用可能な微粉シクロデキストリン封入活性医薬成分は、100nm~40μmの平均粒子サイズ、および平均粒子サイズの約1%~約50%以内のサイズ分布を有する吸入可能な超微細ナノ粒子の形態にある。超微細ナノ粒子は、(i)反応チャンバ内にてAPIと、1つ以上のアセチル化シクロデキストリンとを、超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体の二酸化炭素中に溶解させることと、(ii)設定された圧力および設定された温度で所定の期間にわたって二酸化炭素をポンプで送り、アセチル化シクロデキストリン封入API溶液を得ることと、(iii)アセチル化シクロデキストリン封入API溶液を減圧させることと、(iv)アセチル化シクロデキストリン封入API溶液を加熱された沈殿器内へとノズルを介してスプレーして、アセチル化シクロデキストリン封入活性医薬成分の吸入可能な超微細ナノ粒子を得ることと、(v)アセチル化シクロデキストリン封入活性医薬成分の吸入可能な超微細ナノ粒子を粒子サイズによって収集および選別することと、を含む、方法によって生成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、生成された医薬グレードの高度に生物学的利用可能な微粉シクロデキストリン封入活性医薬成分は、吸入可能な乾燥粉末の形態にある。乾燥粉末は、(i)親水性シクロデキストリンを、100nm~5μmの平均粒子サイズを有する粒子に粉砕することと、(ii)反応チャンバ内にてAPIと、1つ以上のアセチル化シクロデキストリンとを、超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体の二酸化炭素中に溶解させることと、(iii)設定された圧力および設定された温度で所定の期間にわたって二酸化炭素をポンプで送り、アセチル化シクロデキストリン封入API溶液を得ることと、(iv)アセチル化シクロデキストリン封入API溶液を減圧させることと、(v)アセチル化シクロデキストリン封入API溶液に親水性シクロデキストリン粒子を添加して、親水性シクロデキストリン懸濁液-アセチル化シクロデキストリン封入API溶液混合物を作製することと、(vi)混合物を加熱された沈殿器内へとノズルを介してスプレーして、シクロデキストリン封入活性医薬成分の吸入可能な超微細乾燥粉末を得ることと、(vii)シクロデキストリン封入活性医薬成分の吸入可能な超微細乾燥粉末を粒子サイズによって収集および選別することと、を含む、方法によって生成される。
【0013】
いくつかの実施形態では、生成された医薬グレードの高度に生物学的利用可能な微粉シクロデキストリン封入活性医薬成分は、可溶性または飲用可能な溶液または懸濁液の形態にある。可溶性または飲用可能な溶液または懸濁液は、(i)制御された圧力および温度で親水性シクロデキストリンを親水性液体中に溶解させて、親水性シクロデキストリン水溶液を形成することと、(ii)反応チャンバ内にてAPIを超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体の二酸化炭素中に溶解させることと、(iii)設定された圧力および設定された温度で所定の期間にわたって二酸化炭素をポンプで送り、API溶液を得ることと、(iv)API溶液を減圧させることと、(v)API溶液を親水性シクロデキストリン水溶液中にノズルを介してスプレーして、親水性シクロデキストリン封入活性医薬成分の飲用可能な溶液または懸濁液を得ることと、を含む、方法によって生成される。好適な親水性液体としては、任意選択的に賦形剤を含有する水、ジュース、シロップ、牛乳、およびアルコールまたはノンアルコール飲料が挙げられるが、それらに限定されない。
【0014】
超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体の二酸化炭素は、賦形剤または分散剤を含み得る。いくつかの実施形態では、開示される方法は、(vi)二酸化炭素をガスに変換することと、(vii)超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体状態を達成するために二酸化炭素ガスを濾過および加圧することと、(viii)次の処理のために反応チャンバ内で二酸化炭素を再循環させることと、をさらに含み得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、設定された圧力は、2,500psi~6,500psiの範囲にあり、設定された温度は、約40℃~約50℃の範囲にある。
【0016】
いくつかの実施形態では、減圧は、短いバーストのためにノズルを介してAPI溶液を放出することを含み得る。ノズルは、5μm未満の直径を有し得、短いバーストは、0.1~1秒間の期間であり得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、サイケデリックは、プシロシンまたはプシロシビンである。いくつかの実施形態では、カンナビノイドは、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビゲロバリン酸(CBGVA、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、カンナビクロメン酸(CBCA)、カンナビジオール酸(CBDA)、テトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)、カンナビクロメバリン酸(CBCVA)、カンナビジバリン酸(CBDVA)、(-)-トランス-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)、(-)-トランス-Δ9-テトラヒドロカンナビフェロール((-)-trans-Δ9-tetrahydrocannabipherol)(Δ9-THCP)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビジオール(CBD)、カンナビノジオール(CBND)、カンナビノール(CBN)のうちの1つ以上、またはそれらの任意の混合物を含む。APIは、開示される方法に従って処理する前に、抽出物、蒸留物、2回純化蒸留物、3回純化蒸留物、または部分的に精製された単離物の形態であってもよい。
【0018】
好適なアセチル化シクロデキストリンは、アセチル化α-シクロデキストリン、アセチル化β-シクロデキストリン、アセチル化γ-シクロデキストリン、またはそれらの任意の混合物を含む。いくつかの実施形態では、APIおよび1つ以上のアセチル化シクロデキストリンは、1:0.5~1:10の範囲のAPI:アセチル化シクロデキストリンのモル比にある。いくつかの実施形態では、API:アセチル化シクロデキストリンのモル比は、1:0.5、1:0.75、1:1、1:1.5、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、1:5、1:5.5、1:6、1:6.5、1:7、1:7.5、1:8、1:8.5、1:9、1:9.5、または1:10である。
【0019】
好適な親水性シクロデキストリンとしては、親水性α-シクロデキストリン、親水性β-シクロデキストリン、親水性γ-シクロデキストリン、またはそれらの任意の混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0020】
加えて、本明細書では、開示される方法によって生成される安定した食用、吸入可能、可溶性、または飲用可能な医薬グレードのシクロデキストリン封入活性医薬成分が提供される。安定した食用、吸入可能、可溶性、または飲用可能な医薬グレードのシクロデキストリン封入活性医薬成分は、99.9%の純度、および非シクロデキストリン封入活性医薬成分の製剤と比較して200%の増加した生物学的利用能を有し、室温で長期間にわたって非常に安定している。活性医薬成分は、カンナビノイド、サイケデリック、鎮痛剤、麻酔剤、抗炎症剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗凝固剤、抗けいれん剤、抗うつ剤、または筋弛緩剤であり得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、医薬グレードのシクロデキストリン封入活性医薬成分は、100nm~40μmの平均粒子サイズ、および平均粒子サイズの1%~50%以内のサイズ分布を有する吸入可能なナノ粒子の形態にある。
【0022】
いくつかの実施形態では、医薬グレードのシクロデキストリン封入活性医薬成分は、100nm~5μmの平均粒子サイズを有する吸入可能な超微細乾燥粉末の形態にある。
【0023】
いくつかの実施形態では、医薬グレードのシクロデキストリン封入活性医薬成分は、飲用可能な溶液または懸濁液の形態にある。
【0024】
本開示の前述の特色および他の特色は、添付の図面を参照して進む以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【0025】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、実施形態の1つ以上の例を示し、例示的な実施形態の説明とともに、実施形態の原理および実施態様を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A】処理前のCBD単離物を示す。CBD単離物は、結晶形態および大きな粒子間の大量の凝集を有する。
図1B】3500psiの圧力および40℃の温度で処理した後のCBD蒸留物を示す。得られた蒸留物の粒子は、球状の非晶形態および100nm~40μmの粒子サイズを示した。
図2A】開示される方法によって生成される、カンナビノイド:シクロデキストリンのモル比が1:2.5w/w(100mgのα-シクロデキストリンと複合体化された250mgのCBD)のα-シクロデキストリンと複合体化された精製CBDナノ粒子の32倍の倍率を示す。CBDナノ粒子は、球状形態および100nm~40μmの粒子サイズを有する。
図2B】開示される方法によって生成される、カンナビノイド:シクロデキストリンのモル比が1:2.5w/w(100mgのα-シクロデキストリンと複合体化された250mgのCBD)のα-シクロデキストリンと複合体化された精製CBDナノ粒子の200倍の倍率を示す。CBDナノ粒子は、球状形態および100nm~40μmの粒子サイズを有する。
図3】処理前のCBD単離物の結晶を示す。結晶は、酸にも水にも不溶性である。
図4】処理後の水中の精製CBDナノ粒子を示す。CBDナノ粒子は、水中に完全に溶解している。
図5】処理後の胃の条件に似た酸性溶媒中の精製CBDナノ粒子を示す。CBDナノ粒子は、酸性溶液中に完全に溶解しており、溶液は透明である。
図6】超臨界溶液の急速な膨張に使用される機器の図である。キャニスタ1は、CO(99.0%)などの溶媒流体を含有し、入口バルブ2は、HPLCポンプ3の入口への流れを開き、制御し、出口バルブ4は、抽出容器8への高圧溶媒の流れを開き、制御し、圧力計5は、入口ラインおよび抽出容器8内の溶媒の圧力を示し、温度計6は、抽出容器8の内部温度を示し、加熱バンド7は、抽出容器8の内部熱を調節し、抽出容器8は、超臨界流体中に混合および溶解させる溶質を含有し、スプレーバルブ9は、スプレーノズル11を介して、抽出容器内の超臨界溶液を、プロセスが行われ、最終生成物が収集される沈殿/収集チャンバ10内に分配し、圧力反応バルブまたは通気口12は、沈殿/収集チャンバ10内の圧力を低減させる。
図7】本明細書で提供されるプロセスのいくつかの実施形態のための簡略化された装置を示す。APIおよび1つ以上のアセチル化シクロデキストリンは、供給バルブを介して加熱加圧容器1に挿入される。次いで、超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体の二酸化炭素は、CO2タンクから供給バルブ5を介して放出され、冷却チャンバ3内で冷やされ、ポンプ4によって入口バルブ6を介して加熱加圧容器1内にポンプで送られ、APIおよびアセチル化シクロデキストリンをシクロデキストリン封入API溶液へと溶解させる。この溶液は、次いで、移送バルブ8を通過し、短いバーストを用いてノズル9を介して減圧され、粉末収集容器2内に収集され、最終生成物の出口10を介して粒子サイズによって選別される。
図8】本明細書で提供されるプロセスの追加の実施形態のための簡略化された装置を示す。1つ以上の親水性シクロデキストリンは、供給バルブ22を介して加熱加圧容器12内に供給され、圧力制御バルブ21を介して制御された圧力および制御された温度で親水性液体中に溶解され、親水性シクロデキストリン水溶液を形成する。APIは、供給バルブ17を介して加熱加圧容器11に挿入される。次いで、超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体の二酸化炭素は、CO2タンクから供給バルブ15を介して放出され、冷却チャンバ13内で冷やされ、ポンプ14によって入口バルブ16を介して加熱加圧容器11内にポンプで送られ、APIを溶解させる。このAPI溶液は、次いで、移送バルブ18を通過し、加熱加圧容器12内へと短いバーストを用いてノズル19を介して減圧され、API溶液の液滴は、水性シクロデキストリン溶液に分散される。こうして形成された水溶性親水性API濃縮物は、最終生成物の出口20を介して収集される。
図9】等量のAPI量を含有する未加工のAPIと比較した、シクロデキストリン封入API試料の溶解プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の用語の説明は、本開示をよりよく説明するために、かつ本開示の実施に際して当業者を導くために提供される。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」とは、「含む(including)」を意味し、組成物および方法が列挙されない要素を除外することを意味するものではない。組成物および方法を定義するために使用される場合、「から本質的になる」とは、組み合わせに対して任意の本質的に重要性をもつ他の要素を除外することを意味するものとする。例えば、本明細書で定義される要素から本質的になる組成物は、特許請求される発明の基本的および新規な特徴に実質的に影響を与えない他の要素を除外しない。「からなる」とは、微量を超える列挙された他の成分および実質的な方法ステップを除外することを意味するものとする。単数形「a」または「an」または「the」とは、文脈による別段の明確な指示がない限り、複数の言及を含む。「または」という用語は、文脈による別段の明確な指摘がない限り、述べられた代替要素の単一の要素または2つ以上の要素の組み合わせを指す。範囲を含む、すべての数値表記、例えば、pH、温度、時間、濃度、量、および分子量は、適宜、(+)または(-)10%、1%、または0.1%変化する近似値である。また、必ずしも明示的に述べられるわけではないが、本明細書に記載される試薬は単なる例示であり、そのような試薬の等価物が当該技術分野で既知であることも理解されるべきである。別段の説明がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。材料、方法、および実施例は、単なる例示であって、限定することを意図するものではない。
【0028】
本開示の様々な実施形態の概説を容易にするために、以下の特定の用語の説明が提供される。
【0029】
活性医薬成分:疾患の診断、治療、緩和、処置もしくは予防、またはヒトもしくは動物対象などの対象における1つ以上の生理機能の回復、矯正もしくは修飾に直接的効果を有する、完成した生成物中の生物学的活性成分。
【0030】
アルコール:炭素に結合したヒドロキシル官能基-OHを含有する有機化合物。
【0031】
類似体:別の化合物に類似した構造を有するが、例えば、1つ以上の原子、官能基、または下位構造において、それとは異なる化合物。API類似体は、構造的に天然由来のAPIに関連しているが、その化学的および生物学的特性が天然由来のAPIと異なる場合がある化合物、ならびに天然由来のAPIの化学的、生物学的または半合成的転換によって天然由来のAPIに由来する化合物を包含する。
【0032】
カンナビノイド:カンナビノイド受容体を活性化する多様な化学的化合物の部類。植物によって生成されるカンナビノイドは、フィトカンナビノイドと呼ばれる。カンナビス植物から単離される典型的なカンナビノイドとしては、テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビジオール(CBD)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビバリン(CBV)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビクロメバリン(CBCV)、カンナビゲロバリン(CBGV)、およびカンナビゲロールモノメチルエーテル(CBGM)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0033】
細胞:親細胞と同一または非同一であり得る生きた生物学的細胞、その子孫または潜在的な子孫。
【0034】
接触させる:直接的物理的会合に置くこと。
【0035】
共溶媒:総体積の50%未満の量で流体に添加される溶媒。
【0036】
シクロデキストリン:酵素変換によってデンプンから生成され、α-1,4グリコシド結合によって連結されたα-D-グルコピラノシド単位の大環状環を含む構造を有する環状オリゴ糖のファミリー。典型的なシクロデキストリンは、環内に6~8個のグルコースサブユニットを含有し、円錐形状を形成している。α-シクロデキストリンは、6個のグルコースサブユニットを含有し、β-シクロデキストリンは、7個のグルコースサブユニットを含有し、γ-シクロデキストリンは、8個のグルコースサブユニットを含有する。シクロデキストリンは、内側の疎水性コアおよび親水性の外側を有するため、疎水性化合物と複合体を形成する。
【0037】
有効量:(単独で、または1つ以上の他の活性薬剤とともに)所望の応答を誘導するのに十分な活性薬剤の量、例えば、状態を予防、処置、低減および/または改善するのに十分な量。
【0038】
乳化剤:油と水との界面張力を低減させ、小滴の形成による表面エネルギーを最小限に抑える界面活性剤。乳化剤としては、油相を懸濁し、油滴をコーティングし、内部油相の分離を回避することによってエマルジョンを安定化することができるガム、脂肪酸コンジュゲート、ならびにカチオン性、アニオン性および両親媒性界面活性剤が挙げられる。乳化剤によって生成される膜コーティングは、不混和相間のバリアであり、それは、液滴の会合、凝固および合着も防止する。乳化剤の例としては、レシチン、グリセリルモノステアレート、メチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、ナトリウムオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリストレアレート(sorbitan tristrearate)、トラガカント、トリエタノールアミンオレエート、ポリエチレンソルビタンモノラウレート、ポロキサマー、洗剤、Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Tween 20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、セテアリールグルコシド、ポリグルコシド、ソルビタンモノオレエート(Span 80)、ソルビタンモノラウレート(Span 20)、ポリオキシエチレンモノステアレート(Myrj 45)、ポリオキシエチレン野菜油(Emulphor)、セチルピリジニウム塩化物、多糖類のガム、キサンタンガム、トラガカント、アラビカガム、アカシア、またはグリセリンエマルジョン中に安定した油を形成し、保護することができるタンパク質およびコンジュゲートしたタンパク質が挙げられるが、それらに限定されない。
【0039】
親水性:相対湿度(RH)100%で10%超の水を吸収することができるポリマー、物質または化合物。
【0040】
疎水性:相対湿度(RH)100%で1%以下の水を吸収することができるポリマー、物質または化合物。
【0041】
親油性:極性または水性環境と比較して非極性環境に親和性を有する物質または化合物。
【0042】
ナノ粒子:ナノメートルスケールで測定可能な物体の粒子。ナノ粒子は、固体または半固体形態であり得る。
【0043】
有機溶媒:水への溶解度が低い物質を溶解させることができる、1つ以上の極性基を任意選択的に含む炭化水素系溶媒。
【0044】
サイケデリック薬物:セロトニン2A受容体アゴニズムを介して、異常な意識状態およびサイケデリック経験を引き起こす幻覚剤。
【0045】
精製または精製する:目的の物質、例えば、目的の物質を含む試料からの酵素、タンパク質、または化合物の純度の程度を増加させる任意の技術または方法。精製方法の非限定的な例としては、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、カチオンおよびアニオン交換クロマトグラフィーを含むが、それらに限定されないイオン交換クロマトグラフィー、フリーフロー電気泳動、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、ならびに示差沈殿が挙げられる。
【0046】
純度:開示される方法によって得られ、医薬品基準を満たす非混入、非汚染、および安全な生成物の品質。
【0047】
回収:反応混合物からの生成物の単離および収集を伴うプロセス。回収方法としては、クロマトグラフィー、例えば、シリカゲルクロマトグラフィーおよびHPLC、活性炭処理、濾過、蒸留、沈殿、乾燥、化学誘導、ならびにそれらの任意の組み合わせを含むことができるが、それらに限定されない。
【0048】
超臨界流体:臨界点を超える温度および圧力にある、はっきりした液相および気相が存在しない任意の物質。流体中の材料の溶解度は、流体の密度が増加するにつれて増加する。流体の密度は、圧力とともに増加し、一定の密度では、流体中の材料の溶解度は、温度が増加するにつれて増加する。例示的な超臨界流体としては、二酸化炭素、水、メタン、プロパン、エタン、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール、アセトン、および窒素酸化物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0049】
水不混和性:水と混合すると溶液から2つのはっきりした相に分離する、任意の非水性または疎水性の流体、液体または溶媒。
【0050】
水不溶性:20℃の水中で測定される、5%未満、3%未満、または1%未満の水への溶解度を有する化合物または組成物。
【0051】
高度に生物学的利用可能な食用、吸入可能、可溶性、または飲用可能な医薬グレードの純粋な活性医薬成分を製造する方法
高い生物学的利用能を有する純粋な親油性API化合物の製造のための効率的なプロセスの開発は、水性および酸性条件におけるAPIの低い溶解度によってこれまでに妨げられてきた。その結果、従来の親油性APIの調製および純化は、多くの場合、有毒な有機溶媒の使用を必要とする、時間のかかるプロセスである。加えて、現在利用可能な方法によって製造されるAPIは、純度の欠如に悩まされ、低い生物学的利用能を有する。
【0052】
本明細書に開示されるのは、超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体の二酸化炭素、ならびにアセチル化および/または親水性シクロデキストリンを使用して、肺および経口送達に好適な高純度、超微細API-シクロデキストリン包含複合体を作製することによって、これらの課題を克服する迅速かつ効率的な方法である。本明細書で提供される方法は、API粒子サイズを顕著に低減させ、有毒な有機溶媒の使用を含まず、最も制限の厳しい健康要件を満たす純粋な活性医薬化合物を生成する。シクロデキストリン封入化は、生成後にAPIが分解されないように保護するため、開示される方法に従って生成される純粋な活性医薬化合物は、室温で16ヶ月間以上などの長期間にわたって非常に安定しており、時間が経過しても分解されない。加えて、二酸化炭素は大気圧でガスであるため、CO除去は有機溶媒除去よりもはるかに迅速かつ安全であり、最終生成物中に残留溶媒は残らない。
【0053】
したがって、いくつかの実施形態では、(i)反応チャンバ内にてAPIと、1つ以上のアセチル化シクロデキストリンとを、超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体の二酸化炭素中に溶解させることと、(ii)設定された圧力および設定された温度で所定の期間にわたって二酸化炭素をポンプで送り、アセチル化シクロデキストリン封入API溶液を得ることと、(iii)アセチル化シクロデキストリン封入API溶液を減圧させることと、(iv)アセチル化シクロデキストリン封入API溶液を加熱された沈殿器内へとノズルを介してスプレーして、アセチル化シクロデキストリン封入活性医薬成分の吸入可能な超微細ナノ粒子を得ることと、(v)アセチル化シクロデキストリン封入活性医薬成分の吸入可能な超微細ナノ粒子を粒子サイズによって収集および選別することと、を含む、方法が提供される。
【0054】
開示される方法は、シクロデキストリン封入活性医薬成分の吸入可能な医薬グレードの高度に生物学的利用可能な超微細ナノ粒子を生成する。吸入可能な超微細ナノ粒子は、100nm~40μmの平均粒子サイズ、および平均粒子サイズの約1%~約50%以内のサイズ分布を有する。超微粒ナノ粒子はまた、固形食品、飲料、調味料、および栄養補助食品などの食品に添加され得、かつ長期的および持続的な効果のための即時放出、持続放出および制御放出製剤における医学および医薬用途に使用され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、(i)親水性シクロデキストリンを、100nm~5μmの平均粒子サイズを有する粒子に粉砕することと、(ii)反応チャンバ内にてAPIと、1つ以上のアセチル化シクロデキストリンとを、超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体の二酸化炭素中に溶解させることと、(iii)設定された圧力および設定された温度で所定の期間にわたって二酸化炭素をポンプで送り、アセチル化シクロデキストリン封入API溶液を得ることと、(iv)アセチル化シクロデキストリン封入API溶液を減圧させることと、(v)アセチル化シクロデキストリン封入API溶液に親水性シクロデキストリン粒子を添加して、親水性シクロデキストリン懸濁液-アセチル化シクロデキストリン封入API溶液混合物を作製することと、(vi)混合物を加熱された沈殿器内へとノズルを介してスプレーして、シクロデキストリン封入活性医薬成分の吸入可能な超微細乾燥粉末を得ることと、(vii)シクロデキストリン封入活性医薬成分の吸入可能な超微細乾燥粉末を粒子サイズによって収集および選別することと、を含む、方法が提供される。
【0056】
開示される方法は、シクロデキストリン封入活性医薬成分の、医薬グレードの高度に生物学的利用可能な超微細の吸入可能な乾燥粉末を生成する。乾燥粉末の粒子サイズは、二酸化炭素中に懸濁液を溶解して形成することによってではなく、親水性シクロデキストリンの粒子サイズを決定することによって変化し得る。吸入可能な乾燥粉末の疎水性は、アセチル化シクロデキストリンと親水性シクロデキストリンとの間の比率を調節することによって制御される。このようにして生成された乾燥粉末は、水、親水性液体、醸造または発酵アルコール飲料およびノンアルコール飲料、ジュース中に容易に可溶であり、固形食品、飲料、調味料、および栄養補助食品などの食品に添加され得、かつ長期的および持続的な効果のための即時放出、持続放出および制御放出製剤における医学および医薬用途に使用され得る。
【0057】
追加の実施形態では、(i)制御された圧力および温度で親水性シクロデキストリンを親水性液体中に溶解させて、親水性シクロデキストリン水溶液を形成することと、(ii)反応チャンバ内にてAPIを超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体の二酸化炭素中に溶解させることと、(iii)設定された圧力および設定された温度で所定の期間にわたって二酸化炭素をポンプで送り、API溶液を得ることと、(iv)API溶液を減圧させることと、(v)API溶液を親水性シクロデキストリン水溶液中にノズルを介してスプレーして、親水性シクロデキストリン封入活性医薬成分の飲用可能な溶液または懸濁液を得ることと、を含む、方法が提供される。親水性液体としては、任意選択的に賦形剤を含有する水、ジュース、シロップ、牛乳、またはアルコール飲料が挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、制御された圧力は、50~100barsであり、制御された温度は、30℃~70℃である。API溶液を水性シクロデキストリン溶液中にスプレーすることにより、水性シクロデキストリン溶液中に分散するAPI液滴が形成され、水溶性シクロデキストリン封入API濃縮物が生成される。水性シクロデキストリン溶液は、溶液中のAPI化合物の安定性を向上させるために安定剤、増粘剤、および界面活性剤を含み得る。
【0058】
開示される方法は、超微細シクロデキストリン封入活性医薬成分を含有する、医薬グレードの高度に生物学的利用可能な可溶性または飲用可能な溶液または懸濁液を作製する。シクロデキストリン封入API溶液および懸濁液は、いずれのさらなる調製もなく消費される状態にあり、水、親水性液体、醸造もしくは発酵アルコール飲料およびノンアルコール飲料、ジュース、または任意の他の飲用可能な液体中で希釈することができる。
【0059】
開示される方法に従って処理され得る好適な活性医薬成分としては、任意の形態のカンナビノイド、サイケデリック、鎮痛剤、麻酔剤、抗炎症剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗凝固剤、抗けいれん剤、抗うつ剤、および筋弛緩剤を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0060】
APIは、粗植物抽出物、蒸留物、純化蒸留物、2回純化蒸留物、3回純化蒸留物、または単離物の形態であってもよい。植物抽出物は、脂質およびワックス、クロロフィル、ならびにミルセン、ゲラニオール、リモネン、テルピネオール、ピネン、メンソール、チモール、カルバクロール、樟脳、およびセスキテルペンなどのテルペンなどの植物材料を含有し得る。蒸留物は、抽出物をアルコールと混合し、混合物を濾過して植物材料を除去し、続いて加熱してアルコールを除去することによって調製することができる。さらなる純化のために、蒸留物を加熱して短経路蒸留を行うことができ、このプロセスを数回繰り返して、より高い純度を有する2回純化蒸留物、3回純化蒸留物、または単離物を得ることができる。代替的な実施形態では、APIは、結晶形態であり得る。
【0061】
好適なカンナビノイドおよびカンナビノイド前駆体としては、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビゲロバリン酸(CBGVA、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、カンナビクロメン酸(CBCA)、カンナビジオール酸(CBDA)、テトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)、カンナビクロメバリン酸(CBCVA)、カンナビジバリン酸(CBDVA)、(-)-トランス-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)、(-)-トランス-Δ9-テトラヒドロカンナビフェロール(Δ9-THCP)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビジオール(CBD)、カンナビノジオール(CBND)、カンナビノール(CBN)、それらの類似体、またはそれらの任意の混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0062】
好適なサイケデリックとしては、プシロシンおよびプシロシビンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0063】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、シクロデキストリンのアセチル化を提供して、シクロデキストリンと二酸化炭素とのルイス酸:ルイス塩基相互作用を増加させ、それらの溶解度を顕著に増加させる。他の実施形態では、本明細書に開示される方法は、二酸化炭素へのAPIの溶解度を増加させるためのアクチル化シクロデキストリン、および超微細シクロデキストリン封入APIの吸入可能な粉末を形成するための親水性シクロデキストリンの使用を提供する。他の実施形態では、本明細書に開示される方法は、API液滴を分散させ、水溶性API濃縮物を生成するための親水性シクロデキストリンの使用を提供する。
【0064】
好適なシクロデキストリンとしては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、およびγ-シクロデキストリンが挙げられるが、それらに限定されない。シクロデキストリンのアセチル化形態としては、α-シクロデキストリンエキサデアセテート(α-cyclodextrin exadeacetate)(AACD)、β-シクロデキストリンヘネイコサアセテート(β-cyclodextrin heneicosaacetate)(ABCD)、およびγ-シクロデキストリンオクタデアセテート(γ-cyclodextrin octadeacetate)(AGCD)がそれぞれ挙げられるが、それらに限定されない。好適な親水性シクロデキストリンとしては、親水性α-シクロデキストリン、親水性β-シクロデキストリン、親水性γ-シクロデキストリン、およびそれらの任意の混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0065】
API抽出物、蒸留物、純化蒸留物、2回純化蒸留物、3回純化蒸留物、または高品質の単離物を、1:0.5~1:10の範囲のAPI:シクロデキストリンのモル比でアセチル化および/または親水性シクロデキストリンと組み合わせることができる。いくつかの実施例では、API:シクロデキストリンのモル比は、1:0.5、1:0.75、1:1、1:1.5、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、1:5、1:5.5、1:6、1:6.5、1:7、1:7.5、1:8、1:8.5、1:9、1:9.5、または1:10である。
【0066】
APIおよびシクロデキストリンは、使用されるAPIの種類および形態、使用されるシクロデキストリンの種類、温度および圧力条件、ならびに混合に使用される力によって定義される期間にわたって混合され得る。いくつかの実施形態では、予め設定された圧力は、2,500psi~6,500psiの範囲にあり、予め設定された温度は、37℃~55℃の範囲にある。加圧後、API溶液は、超音速で減圧され、短いバーストのためにノズルを介してAPI溶液を放出することによって、粒子形成を誘導する。ノズルの直径は、1μm~10μmの範囲にある。いくつかの実施形態では、ノズルの直径は、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、または7μmである。減圧は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6.0.7、0.8、0.9または1秒間のバーストなどの短いバーストで、ノズルを介して超臨界溶液を放出することによって最良に達成される。
【0067】
超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体の二酸化炭素は、賦形剤または分散剤を含み得る。いくつかの実施形態では、開示される方法は、(vi)二酸化炭素をガスに変換することと、(vii)超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体状態を達成するために二酸化炭素ガスを濾過および加圧することと、(viii)次のバッチ処理のために反応チャンバ内で二酸化炭素を再循環させることと、をさらに含み得る。
【0068】
本明細書で提供される方法によって生成されるカンナビノイド微粉ナノ粒子は、約100nm~約40μmの平均粒子サイズ、および平均粒子サイズの約1%~約50%以内のサイズ分布を有する。
【0069】
本明細書で提供される方法は、多くの利点を提示する。特に、開示される方法は、API粒子サイズを顕著に低減させ、有毒な有機溶媒の使用を必要とせず、肺および/または経口送達に好適なナノ粒子、乾燥粉末、溶液および懸濁液の形態で、高純度、超微細API-シクロデキストリン包含複合体を迅速かつ効率的に生成する。開示される方法によって生成されるシクロデキストリン封入APIは、99.9%純粋であり、非シクロデキストリン封入活性医薬成分の製剤と比較して200%の増加した生物学的利用能を有し、16ヶ月間、24ヶ月間、3年間、4年間および5年間などの長期間にわたる室温での優れた安定性を有する。
【0070】
医薬グレードの純粋な超微細シクロデキストリン封入APIを製造するための装置
開示される方法を実施するための例示的な装置の図を、図6、7および8に示す。しかしながら、当該技術分野で既知の任意の装置、システム、または機器を使用して、本明細書で提供される方法を実施することができる。
【0071】
図6に示した図において、キャニスタ1は、COなどの99%純粋な流体を含有する。入口バルブ2は、HPLCポンプ3にアクセスする入口への溶媒流体の流れを開き、制御する。出口バルブ4は、抽出容器8への高圧溶媒の流れを開き、制御する。HPLCポンプの一部として統合された圧力計5は、入口ラインおよび抽出容器8内の溶媒の圧力を示す。温度計6は、抽出容器8の内部温度を示す。加熱バンド7は、抽出容器8の熱の内部レベルを調節する。抽出容器8は、COに溶解させるアセチル化シクロデキストリンを有するか、または有しないAPIを含有する。API溶液が形成されると、スプレーバルブ9は、スプレーノズル11を介して、溶液を最終生成物が収集される沈殿チャンバ10内に放出することによって、抽出容器内のAPI溶液を減圧する。圧力反応バルブまたは通気口12は、沈殿チャンバ10内の圧力を低減させ、超微細APIナノ粒子または乾燥粉末の自発的な形成をもたらし、次いで、それらのサイズに応じて収集および選別することができる。
【0072】
図7に示した図において、APIおよび1つ以上のアセチル化シクロデキストリンは、供給バルブを介して加熱加圧容器1に挿入される。次いで、超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体の二酸化炭素は、CO2タンクから供給バルブ5を介して放出され、冷却チャンバ3内で冷やされ、ポンプ4によって入口バルブ6を介して加熱加圧容器1内にポンプで送られ、APIおよびアセチル化シクロデキストリンをシクロデキストリン封入API溶液へと溶解させる。この溶液は、次いで、移送バルブ8を通過し、短いバーストを用いてノズル9を介して減圧され、粉末収集容器2内に収集され、最終生成物の出口10を介して粒子サイズによって選別される。
【0073】
図8に示した図において、1つ以上の親水性シクロデキストリンは、供給バルブ22を介して加熱加圧容器12内に供給され、圧力制御バルブ21を介して制御された圧力および制御された温度で親水性液体中に溶解され、親水性シクロデキストリン水溶液を形成する。APIは、供給バルブ17を介して加熱加圧容器11に挿入される。次いで、超臨界、亜臨界、高圧ガスまたは液体の二酸化炭素は、CO2タンクから供給バルブ15を介して放出され、冷却チャンバ13内で冷やされ、ポンプ14によって入口バルブ16を介して加熱加圧容器11内にポンプで送られ、APIを溶解させる。このAPI溶液は、次いで、移送バルブ18を通過し、加熱加圧容器12内へと短いバーストを用いてノズル19を介して減圧され、API溶液の液滴は、水性シクロデキストリン溶液に分散される。こうして形成された水溶性親水性API濃縮物は、最終生成物の出口20を介して収集される。
【0074】
医薬グレードの超微細シクロデキストリン封入API
加えて、本明細書では、開示される方法によって生成される安定した食用、吸入可能、可溶性、または飲用可能な医薬グレードのシクロデキストリン封入活性医薬成分が提供される。安定した食用、吸入可能、可溶性、または飲用可能な医薬グレードのシクロデキストリン封入活性医薬成分は、99.9%の純度、および非シクロデキストリン封入活性医薬成分の製剤と比較して200%の増加した生物学的利用能を有する。活性医薬成分は、カンナビノイド、サイケデリック、鎮痛剤、麻酔剤、抗炎症剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗凝固剤、抗けいれん剤、抗うつ剤、または筋弛緩剤であり得る。
【0075】
開示される食用、吸入可能、可溶性、または飲用可能な医薬グレードのシクロデキストリン封入活性医薬成分は、アルツハイマー病、てんかん、軽度および慢性疼痛、化学療法により誘発される末梢神経障害、不眠症、オピオイドおよび薬物嗜癖、嗜癖の予防、炎症性肺疾患、不安障害、PTSD、パニック発作、恐怖症、アレルギー、コロナウイルス、喘息およびCOPDを含む呼吸困難障害ならびに疾患、ならびにメニエール病を含むが、それらに限定されない疾患、障害、病気および愁訴に対する処置、予防、および軽減のために、医療および医薬製品の処方された、非処方の、および小売りの提供のような経口、肺、経腸、非経口、静脈内、局所、粘膜、および粘膜下投与のための組成物として製剤化され得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、医薬グレードのシクロデキストリン封入活性医薬成分は、100nm~40μmの平均粒子サイズ、および平均粒子サイズの1%~50%以内のサイズ分布を有する吸入可能なナノ粒子の形態にある。
【0077】
いくつかの実施形態では、医薬グレードのシクロデキストリン封入活性医薬成分は、100nm~5μmの平均粒子サイズを有する吸入可能な超微細乾燥粉末の形態にある。
【0078】
いくつかの実施形態では、医薬グレードのシクロデキストリン封入活性医薬成分は、飲用可能または可溶性の溶液または懸濁液の形態にある。
【0079】
開示される食用、吸入可能、可溶性、または飲用可能な医薬グレードのシクロデキストリン封入活性医薬成分は、その安定性のために、再懸濁または分離のいずれのリスクもなく、容易に製造され、他の可食用の成分または調製物と混合され、消費または流通され得る。
【実施例
【0080】
実施例1:カンナビノイド抽出物、蒸留物、および単離物
カンナビノイド前駆体のカンナビゲロール酸(CBGA)およびカンナビゲロバリン酸(CBGVA)を、カンナビス植物から抽出することにより得たか、または商業的に購入した。カンナビノイドであるテトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、カンナビノール酸(CBDA)、カンナビクロメン酸(CBCA)、(-)-トランス-Δ9-テトラヒドロカンナビノール酸(Δ9-THCA)、テトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)、カンナビクロメバリン酸(CBCVA)およびカンナビジバリン酸(CBDVA)を、有機溶媒抽出、蒸気または超臨界流体抽出によってCannabis sativa植物から抽出した。カンナビノイドの中性形態であるテトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビジオール(CBD)、(-)-トランス-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)、(-)-トランス-Δ9-テトラヒドロカンナビフェロール(Δ9-THCP)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビジオール(CBD)、カンナビノジオール(CBND)、およびカンナビノール(CBN)を、加熱、乾燥、または燃焼によるそれらの対応する酸性形態の脱炭酸によって得た。加熱による脱炭酸のために、カンナビノイド抽出物を溶融するまで95℃で約20分間加熱し、次いで、冷凍庫で約15分間冷却した。
【0081】
カンナビノイド抽出物を分子蒸留に供し、薄層クロマトグラフィー(THLC)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー-質量分析および/またはガスクロマトグラフィー-炎イオン化検出器(GC-FID)分析によって、テルペン、有機材料およびクロロフィルを除去することによって蒸留物を純化した。
【0082】
上記のように得られたカンナビノイド液体油蒸留物をそのまま使用した。代替的に、純化したカンナビノイド液体油蒸留物を再度純化して、2回蒸留したカンナビノイドを得た。2回蒸留したカンナビノイドに3回目の純化をすることによって、高純度を有する3回蒸留したカンナビノイド単離物を得た。
【0083】
実施例2:先行試験
本明細書に開示されるように、微粉ナノ粒子を作製した。カンナビノイド添加前にCOを用いて洗浄することにより、湿度の影響を最小限に抑えるようにシステムを最適化し、25秒間の再加圧サイクルを用いて0.5秒間に圧力放出プロセスを最適化して、ノズルの凍結を防止し、均一性および再現性を確保した。
【0084】
抽出物、蒸留物または単離物の形態のカンナビノイドを10mlの高圧反応器チャンバに添加し、液体COを1000psiの圧力で反応器チャンバにポンプで送った。反応器を40℃に加熱し、圧力は約1500psi~約1700psiの範囲に上昇した。温度を40℃に保持したか、または50℃まで上昇させた。次いで、シリンジポンプを使用して、圧力を、約2500psi~約6500psiに1000psi刻みで増加させた。先行試験では、40℃の温度および3500psiの圧力を選択した。得られた溶液を、5μmのノズルを介して0.5秒間バーストで放出した。図1Aは、処理前のCBD単離物を示す。CBD単離物は、結晶形態および大きな粒子間の大量の凝集を有する。図1Bは、3500psiの圧力および40℃の温度で処理した後のCBD蒸留物を示す。得られた蒸留物の粒子は、より球状の非晶形態を示し、100nm~40μmの粒子サイズを有した。
【0085】
実施例3:シクロデキストリンとの複合体化
カンナビノイドの水への溶解度を増加させるために、実施例1に記載のように生成されたカンナビノイド抽出物、蒸留物および単離物を、α-シクロデキストリンまたはβ-シクロデキストリンと1:0.5~1:10の範囲のカンナビノイド:シクロデキストリンのモル比で組み合わせ、10mlの反応器チャンバに添加した。超臨界COを1,000psiの圧力で反応チャンバ内にポンプで送り、反応器チャンバを40℃に加熱し、圧力を3,500psiに上昇させた。得られた溶液を、5μmのノズルを介して0.5秒間バーストで放出した。シクロデキストリンは、プロセス条件下で不溶性であることを見出した。
【0086】
超臨界流体への溶解度を増加させるために、α-シクロデキストリンおよびβ-シクロデキストリンを、1つ以上のヒドロキシル基を1つ以上のアセチル基と置換することによってアセチル化し、超臨界流体中のルイス酸:ルイス塩基相互作用を増加させた。2.0gのα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンまたはγ-シクロデキストリンを、100mlの丸底フラスコ内にて10mlの酢酸無水物中でアセチル化した。0.05gのヨウ素を混合物に添加し、フラスコを暗所で2時間かき混ぜた。反応物を50mlの水を用いてクエンチし、溶液が透明になるまで1%(w/w)のチオ硫酸ナトリウム水溶液を滴下添加した。反応物を1時間かき混ぜ、得られた溶液を40mlのジクロロメタン(DCM)を用いて4回抽出した。有機フラクションを組み合わせ、50mlの水を用いて2回洗浄し、溶媒除去の前に硫酸ナトリウム上で乾燥させた。最終生成物を真空下で乾燥させて、α-シクロデキストリンエキサデアセテート(AACD)、β-シクロデキストリンヘネイコサアセテート(ABCD)、またはγ-シクロデキストリンオクタデアセテート(AGCD)をそれぞれ得た。
【0087】
次いで、アセチル化シクロデキストリンを、カンナビノイド抽出物、蒸留物および単離物と1:0.5~1:10の範囲のカンナビノイド:シクロデキストリンのモル比で組み合わせ、10mlの反応器チャンバに添加した。超臨界COを1,000psiの圧力で反応チャンバ内にポンプで送り、反応器チャンバを40℃に加熱し、圧力を3,500psiに上昇させた。得られた溶液を、5μmのノズルを介して0.5秒間バーストで放出した。
【0088】
結果は、実験条件下で、超臨界COへのAACD、ABCDおよびAGCDの溶解度が、それぞれ1.1重量%および1.3重量%に増加したことを示した。さらに、アセチル化シクロデキストリンとのカンナビノイド複合体化は、処理中に、テルペンおよびワックスなどのカンナビノイドならびにその不純物の再懸濁を防止した。
【0089】
実施例4:カンナビノイド超微細ナノ粒子の調製
アセチル化シクロデキストリンを有するカンナビノイド複合体を、1:0.5~1:10の範囲のカンナビノイド:シクロデキストリンのモル比で実施例3に記載されるように調製し、各々を10mlの反応器チャンバに添加した。カンナビノイド-シクロデキストリン複合体を、3500psiの圧力および40℃の温度で超臨界流体中に溶解させた。この溶液を、5ミクロンのノズルを介して、管状排気を備える19リットルの膨張チャンバ内へと減圧させ、微粒子の最大回収を確実にした。図2Aおよび2Bは、カンナビノイド:シクロデキストリンのモル比が1:2.5w/w(100mgのα-シクロデキストリンと複合体化された250mgのCBD)のα-シクロデキストリンと複合体化されたCBD蒸留物の粒子の32倍の倍率および200倍の倍率をそれぞれ示す。生成されたCBDナノ粒子は、100nm~40μmの粒子サイズを有する球状形態を示し、アセチル化シクロデキストリンの添加は、図2Aおよび2Bに示されるように、処理後に再懸濁しない微粉末を生成し、CBD化合物のAACD環内への統合を示唆した。
【0090】
実施例5:カンナビノイド超微細ナノ粒子の生物学的利用能
実施例4に記載のように得られたカンナビノイド超微細ナノ粒子の生物学的利用能を、模擬胃条件における微粉ナノ粒子の溶解度を目視評価することによって調査した。0.5gのNaClを0.155MのHCl水溶液に添加し、胃酸条件に似せた。10mgの微粉ナノ粒子、10mgの結晶形態の単離物、および10mgの蒸留物を各々、10mlの酸性溶液を含有するバイアルに入れ、37℃で10時間インキュベートした。10時間の期間の終わりに、調製物の最小限の溶解度のみが観察された。10mlの酸性溶液を追加で添加し、混合物を37℃で10時間以上インキュベートした。20時間の期間の終わりに、カンナビノイドナノ粒子は酸性溶液中に溶解した。対照的に、結晶形態の単離物および蒸留物は、完全な不溶性を示した(図3~5)。
【0091】
実施例6:カンナビノイド超微細ナノ粒子の相対的な生物学的利用能試験
UV検出器を備えた高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)分離器を使用して、水中のカンナビノイド単離物(対照試料)と比較して、実施例4に記載のように得られたカンナビノイド超微細ナノ粒子(試験試料)の相対的な生物学的利用能試験を実施し、各試料中のCBDの濃度を決定した。対照試料を、1mlの各試料を0.45μmの濾過器に通して2mlのHPLCバイアル内へと濾過することによって調製し、1mlのメタノール(MeOH)を各試料バイアルに添加した。HPLC移動相は、65%のアセトニトリルおよび35%の水から構成された。1分間当たり1mlの流量は、約4.5分間後にCBDの溶出をもたらした。
【0092】
パーセンテージ面積を、32時間の経過時間の後に測定した。これは、各試料中のMeOHによって作製されたバックグラウンドシグナルと比較して、各試料中のCBDの量を表す。試験試料のパーセンテージ面積は、対照試料の全試料の0.7706%のパーセンテージ面積と比較して、全試料の4.1163%であることが分かった。
【0093】
これらの結果は、開示される精製カンナビノイド微粉ナノ粒子は、水中の対照カンナビノイド単離物と比較した場合、CBDの溶解度を向上させることを示す。溶解度の顕著な増加(この場合、最大6倍)は、開示される製剤の生物学的利用能における劇的な改善の可能性を示す。生物学的利用能の顕著な増加は、治療効果を劇的に改善することができる。
【0094】
実施例7:水溶性シクロデキストリン封入APIナノ粒子の調製
APIの水への溶解度を増加させるために、実施例1に記載のようなカンナビノイド蒸留物を様々なシクロデキストリンと組み合わせ、得られた混合物を高圧反応器に入れた。液化COを、反応器の圧力が5,000psiに達するまで反応器内にポンプで送った。混合物を反応器内で30分間撹拌し、シクロデキストリン封入カンナビノイドを作製した。次いで、混合物をサイクロン内にスプレーして、COを蒸発させ、シクロデキストリン封入カンナビノイド乾燥粉末を得た。回収したCOを、将来的な使用のために緩衝タンクに保管した。以下の表1は、各試料中のカンナビノイド量のパーセンテージを示す。表1はまた、シクロデキストリン封入カンナビノイドナノ粒子中のカンナビノイド量の平均パーセンテージが、標準的な非シクロデキストリン封入カンナビノイドナノ粒子中のカンナビノイド量の平均よりも10倍高かったことを示す。
【表1】
【0095】
実施例8:シクロデキストリン封入API粉末の溶解プロファイル
実施例7から得られた試料を溶解させることによって、溶解プロファイルを決定した。商業的なTHC油(Reign Drops、THC 30mg/ml)を標準対照として使用した。等量のカンナビノイド(40mg)を含有する各試料を、200mlの蒸留水に溶解させた。温度を50℃で一定に保持した。
【0096】
0.5、1、2、3、5、10、20、および30分間の時間間隔で、2mlの各試料溶液を媒体から取り出し、0.45μmシリンジ濾過器に通して直ちに濾過した。次いで、濾過した溶液を、移動相としてメタノール中の0.085%のリン酸および水中の0.085%のリン酸を使用して、220nm波長でHPLCによって分析した。以下の表2にまとめて、かつ図9に図示した結果は、90%を超えるシクロデキストリン封入API乾燥粉末が水中に溶解していることを示す。対照的に、26%のみの標準対照非シクロデキストリン封入カンナビノイド乾燥粉末が水中に溶解している。これらの結果により、シクロデキストリン封入APIが、非シクロデキストリン封入APIと比較した場合、優れた生物学的利用能および有効性を有することを確認した。
【表2】
【0097】
実施例9:シクロデキストリン封入カンナビノイドのインビボ吸収試験
パンの酵母(Saccharomyces cerevisiae)を使用して、膜を横断する輸送速度を測定し、2時間の期間にわたり、非封入THC吸収と比較して、シクロデキストリン封入カンナビノイドの生体内への取り込みを評価した。
【0098】
酵母を砂糖溶液に接種し、35℃で15分間馴化させた。次いで、半分の酵母培養物を、対照としての非封入THCを含有する溶液を用いて処理し、半分の酵母培養物を、シクロデキストリン封入THCの形態で等量のTHCを含有する溶液を用いて等量で処理した。ガス交換を容易にするために、穏やかに撹拌しながら、35℃で2時間処理した。処理終了時に、遠心分離によって溶液を除去し、酵母細胞を生理食塩水溶液を用いて洗浄し、溶解させ、有機抽出に供した。有機カンナビノイド溶液をHPLCによって分析した。以下の表3に示した結果は、シクロデキストリンマイクロ封入化が、非封入THCの輸送と比較して、酵母膜を横断するTHC輸送およびTHC吸収を200%向上させることを実証する。全体的に、これらの結果は、シクロデキストリンマイクロ封入化が、ヒトなどの真核生物システムにおけるカンナビノイドの吸収を改善し、使用者に対して向上したレクリエーション的または医学的経験を提供することができることを実証する。
【表3】
【0099】
示した実施形態は、開示される方法の例に過ぎず、本発明の範囲を限定すると見なされるべきではないことを理解されたい。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9