(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】コンプレッサハウジングおよび遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/66 20060101AFI20240228BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20240228BHJP
F04D 29/44 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
F04D29/66 H
F04D29/42 M
F04D29/44 P
F04D29/44 R
(21)【出願番号】P 2022546859
(86)(22)【出願日】2020-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2020033798
(87)【国際公開番号】W WO2022049773
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岩切 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】神坂 直志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 豊
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/128939(WO,A1)
【文献】特開2008-175124(JP,A)
【文献】国際公開第2015/001644(WO,A1)
【文献】特開2020-66993(JP,A)
【文献】特開2010-270641(JP,A)
【文献】特開平7-259796(JP,A)
【文献】特開2018-178769(JP,A)
【文献】特開2017-44164(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103148021(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16、
17/00-19/02、
21/00-25/16、
29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心圧縮機のインペラを回転可能に収容するためのコンプレッサハウジングであって、
前記インペラのインペラ翼の先端と所定の隙間を有して対向する面を含むシュラウド面と、
前記シュラウド面の軸方向における前方側に形成されるとともに前記シュラウド面の前方端よりも径方向において外側に位置する前方側内周面と、
前記前方側内周面から前記径方向の内側に向かって突出する少なくとも1つの凸部と、を備え、
前記少なくとも1つの凸部の後方端は、前記シュラウド面の前記前方端と接続するように構成され、
前記少なくとも1つの凸部は、板状に設けられるとともに、前記インペラの軸線に沿った断面視において、前記凸部の前記前方端から後方側に向かって前記インペラの軸線に対して斜めに延在する傾斜前縁
と、前記傾斜前縁の後方端から前記後方側に向かって延在して前記シュラウド面の前記前方端と接続する内側縁と、を有する、
コンプレッサハウジング。
【請求項2】
遠心圧縮機のインペラを回転可能に収容するためのコンプレッサハウジングであって、
前記インペラのインペラ翼の先端と所定の隙間を有して対向する面を含むシュラウド面と、
前記シュラウド面の軸方向における前方側に形成されるとともに前記シュラウド面の前方端よりも径方向において外側に位置する前方側内周面と、
前記前方側内周面から前記径方向の内側に向かって突出する少なくとも1つの凸部と、を備え、
前記少なくとも1つの凸部の後方端は、前記シュラウド面の前記前方端と接続するように構成され、
前記少なくとも1つの凸部は、板状に設けられるとともに、前記インペラの軸線に沿った断面視において、前記凸部の前記前方端から後方側に向かって前記インペラの軸線に対して斜めに延在する傾斜前縁を有し、
前記前方側内周面は、前記シュラウド面の前記前方端から前記前方側に向かって拡径するテーパ面と、前記テーパ面の前方端から軸方向に沿って前記前方側に延在する軸方向面と、を含み、
前記少なくとも1つの凸部は、少なくとも前記テーパ面の前記軸方向の全体に亘って延在する
、
コンプレッサハウジング。
【請求項3】
前記少なくとも1つの凸部は、前記インペラの軸線に沿った断面視において、前記凸部の前記軸線に対して平行な長さが、半径方向において変化している、
請求項2に記載のコンプレッサハウジング。
【請求項4】
遠心圧縮機のインペラを回転可能に収容するためのコンプレッサハウジングであって、
前記インペラのインペラ翼の先端と所定の隙間を有して対向する面を含むシュラウド面と、
前記シュラウド面の軸方向における前方側に形成されるとともに前記シュラウド面の前方端よりも径方向において外側に位置する前方側内周面と、
前記前方側内周面から前記径方向の内側に向かって突出する少なくとも1つの凸部と、を備え、
前記少なくとも1つの凸部の後方端は、前記シュラウド面の前記前方端と接続するように構成され、
前記少なくとも1つの凸部は、板状に設けられるとともに、前記インペラの軸線に沿った断面視において、前記凸部の前記前方端から後方側に向かって前記インペラの軸線に対して斜めに延在する傾斜前縁を有し、
前記少なくとも1つの凸部は、前記凸部の前記後方端が、前記凸部の前方端よりも、前記インペラの回転方向における上流側に位置するように構成された
、
コンプレッサハウジング。
【請求項5】
前記少なくとも1つの凸部は、削り出し加工、又は鋳造によって、前記前方側内周面と一体的に形成された、
請求項1乃至4の何れか1項に記載のコンプレッサハウジング。
【請求項6】
遠心圧縮機のインペラを回転可能に収容するためのコンプレッサハウジングであって、
前記インペラのインペラ翼の先端と所定の隙間を有して対向する面を含むシュラウド面と、
前記シュラウド面の軸方向における前方側に形成されるとともに前記シュラウド面の前方端よりも径方向において外側に位置する前方側内周面と、
前記前方側内周面から前記径方向の内側に向かって突出する少なくとも1つの凸部と、を備え、
前記少なくとも1つの凸部の後方端は、前記シュラウド面の前記前方端と接続するように構成され、
前記少なくとも1つの凸部は、板状に設けられるとともに、前記インペラの軸線に沿った断面視において、前記凸部の前記前方端から後方側に向かって前記インペラの軸線に対して斜めに延在する傾斜前縁を有し、
前記前方側内周面は、前記シュラウド面の前記前方端から前記前方側に向かって拡径するテーパ面と、前記テーパ面の前方端から軸方向に沿って前記前方側に延在する軸方向面と、を含み、
前記少なくとも一つの凸部は、前記前方側内周面において前記テーパ面のみに設けられた
、
コンプレッサハウジング。
【請求項7】
遠心圧縮機のインペラを回転可能に収容するためのコンプレッサハウジングであって、
前記インペラのインペラ翼の先端と所定の隙間を有して対向する面を含むシュラウド面と、
前記シュラウド面の軸方向における前方側に形成されるとともに前記シュラウド面の前方端よりも径方向において外側に位置する前方側内周面と、
前記前方側内周面から前記径方向の内側に向かって突出する少なくとも1つの凸部と、を備え、
前記少なくとも1つの凸部の後方端は、前記シュラウド面の前記前方端と接続するように構成され、
前記少なくとも1つの凸部は、板状に設けられるとともに、前記インペラの軸線に沿った断面視において、前記凸部の前記前方端から後方側に向かって前記インペラの軸線に対して斜めに延在する傾斜前縁を有し、
前記シュラウド面の後方端よりも軸方向において前記インペラの背面側に位置するディフューザ面であって、前記径方向に沿って延在する径方向面と、前記径方向面の内側端と前記シュラウド面の前記後方端とを接続するピンチ面と、を含むディフューザ面と、
前記ピンチ面から前記軸方向における前記インペラの背面側に向かって突出する少なくとも1つのディフューザ側凸部と、をさらに備え、
前記少なくとも1つのディフューザ側凸部は、
板状に形成され、前記径方向面よりも前記軸方向における前記インペラのボス面側に位置するとともに、
前記少なくとも1つのディフューザ側凸部の内側端は、前記シュラウド面の前記後方端と接続する
、
コンプレッサハウジング。
【請求項8】
遠心圧縮機のインペラを回転可能に収容するためのコンプレッサハウジングであって、
前記インペラのインペラ翼の先端と所定の隙間を有して対向する面を含むシュラウド面と、
前記シュラウド面の後方端よりも軸方向において前記インペラの背面側に位置するディフューザ面であって、径方向に沿って延在する径方向面と、前記径方向面の内側端と前記シュラウド面の前記後方端とを接続するピンチ面と、を含むディフューザ面と、
前記ピンチ面から前記軸方向における前記インペラの背面側に向かって突出する少なくとも1つのディフューザ側凸部と、を備え、
前記少なくとも1つのディフューザ側凸部は、
板状に形成され、前記径方向面よりも前記軸方向における前記インペラのボス面側に位置するとともに、
前記少なくとも1つのディフューザ側凸部の内側端は、前記シュラウド面の前記後方端と接続する、
コンプレッサハウジング。
【請求項9】
前記少なくとも1つのディフューザ側凸部は、削り出し加工、又は鋳造によって、前記ディフューザ面と一体的に形成された、
請求項7又は8に記載のコンプレッサハウジング。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載のコンプレッサハウジングを備える遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心圧縮機のインペラを回転可能に収容するためのコンプレッサハウジング、および該コンプレッサハウジングを備える遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用又は舶用のターボチャージャのコンプレッサ部などに用いられる遠心圧縮機は、インペラの回転によって流体(例えば、空気)に運動エネルギを与えて径方向の外側に流体を吐出し、遠心力を利用して流体の圧力上昇を得るものである。かかる遠心圧縮機には、広い運転範囲において高圧力比と高効率化が求められており、種々の工夫が施されている。
【0003】
例えば、遠心圧縮機の吸気流量が少ない低流量時において、流体の流れ方向に流体が激しく振動するサージングと呼ばれる不安定現象が発生することがある。サージングが発生すると、シュラウド面近傍に、吸気口から導入された空気の流れとは逆方向に向かって流れる逆流が発生し、この逆流により、遠心圧縮機の効率低下を招く虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、板状の突出部により上述した逆流を径方向における内側に案内し、インペラ側に流れる空気を加圧することで、逆流を抑制することが開示されている。
遠心圧縮機の高効率化を図るためには、コンプレッサハウジング内を流れる作動流体の圧力損失をできる限り抑制する必要がある。
【0006】
上述した事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態の目的は、遠心圧縮機の効率を向上させることができるコンプレッサハウジング、および該コンプレッサハウジングを備える遠心圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかるコンプレッサハウジングは、
遠心圧縮機のインペラを回転可能に収容するためのコンプレッサハウジングであって、
前記インペラのインペラ翼の先端と所定の隙間を有して対向する面を含むシュラウド面と、
前記シュラウド面の軸方向における前方側に形成されるとともに前記シュラウド面の前方端よりも径方向において外側に位置する前方側内周面と、
前記前方側内周面から前記径方向の内側に向かって突出する少なくとも1つの凸部と、を備え、
前記少なくとも1つの凸部の後方端は、前記シュラウド面の前記前方端と接続するように構成され、
前記少なくとも1つの凸部は、板状に設けられるとともに、前記インペラの軸線に沿った断面視において、前記凸部の前記前方端から後方側に向かって前記インペラの軸線に対して斜めに延在する傾斜前縁を有する。
【0008】
本開示にかかる遠心圧縮機は、前記コンプレッサハウジングを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、遠心圧縮機の効率を向上させることができるコンプレッサハウジング、および該コンプレッサハウジングを備える遠心圧縮機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態にかかる遠心圧縮機を備えるターボチャージャの構成を説明するための説明図である。
【
図2】一実施形態にかかる遠心圧縮機を備えるターボチャージャのコンプレッサ側を概略的に示す概略断面図であって、遠心圧縮機の軸線を含む概略断面図である。
【
図3】第1の実施形態にかかるコンプレッサハウジングを説明するための説明図である。
【
図4】
図3におけるA-B線断面を概略的に示す概略断面図である。
【
図5】第1の実施形態にかかるコンプレッサハウジングの変形例を説明するための説明図である。
【
図6】第1の実施形態にかかるコンプレッサハウジングの変形例を説明するための説明図である。
【
図7】第2の実施形態にかかるコンプレッサハウジングを説明するための説明図である。
【
図8】第2の実施形態にかかるコンプレッサハウジングの変形例を説明するための説明図である。
【
図9】第2の実施形態にかかるコンプレッサハウジングの変形例を説明するための説明図である。
【
図10】第3の実施形態にかかるコンプレッサハウジングを説明するための説明図である。
【
図11】
図10に示されるコンプレッサハウジングのピンチ面近傍を軸方向における後方側から視た状態を概略的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0012】
(遠心圧縮機、ターボチャージャ)
図1は、一実施形態にかかる遠心圧縮機を備えるターボチャージャの構成を説明するための説明図である。
図2は、一実施形態にかかる遠心圧縮機を備えるターボチャージャのコンプレッサ側を概略的に示す概略断面図であって、遠心圧縮機の軸線を含む概略断面図である。
本開示の幾つかの実施形態にかかる遠心圧縮機1は、
図1、
図2に示されるように、インペラ2と、インペラ2を回転可能に収容するコンプレッサハウジング3と、を備える。
【0013】
遠心圧縮機1は、例えば、自動車用、舶用又は発電用のターボチャージャ10や、その他産業用遠心圧縮機、送風機などに適用可能である。図示される実施形態では、遠心圧縮機1は、ターボチャージャ10に搭載される。ターボチャージャ10は、
図1に示されるように、遠心圧縮機1と、タービン11と、回転シャフト12と、を備える。タービン11は、回転シャフト12を介してインペラ2に機械的に連結されたタービンロータ13と、タービンロータ13を回転可能に収容するタービンハウジング14と、を備える。
【0014】
図示される実施形態では、ターボチャージャ10は、
図1に示されるように、回転シャフト12を回転可能に支持する軸受15と、軸受15を収容するように構成された軸受ハウジング16と、をさらに備える。軸受ハウジング16は、コンプレッサハウジング3とタービンハウジング14との間に配置され、締結部材(例えば、締結ボルトなど)により、コンプレッサハウジング3やタービンハウジング14に機械的に連結されている。
【0015】
以下、例えば
図1に示されるように、遠心圧縮機1の軸線CA、すなわちインペラ2の軸線が延在する方向を軸方向Xとし、軸線CAに直交する方向を径方向Yと定義する。軸方向Xのうち、遠心圧縮機1の吸入方向(インペラ2への主流の導入方向)における上流側、すなわち、インペラ2に対して吸気口31が位置する側(図中左側)を前方側XFと定義する。また、軸方向Xのうち、前方側XFとは反対側、すなわち、遠心圧縮機1の吸入方向における下流側(図中右側)を後方側XRと定義する。
【0016】
図1に示される実施形態では、コンプレッサハウジング3には、コンプレッサハウジング3の外部から内部に流体(例えば、空気)を導入するための吸気口31と、インペラ2を通過した流体をコンプレッサハウジング3の外部に排出するための排出口32と、が形成されている。タービンハウジング14には、タービンハウジング14の外部から内部に、タービンロータ13を回転させる作動流体(例えば、排ガス)を導入するためのタービン側導入口141と、タービンロータ13を通過した作動流体をタービンハウジング14の外部に排出するためのタービン側排出口142と、が形成されている。
【0017】
回転シャフト12は、
図1に示されるように、軸方向Xに沿って長手方向を有する。回転シャフト12は、その長手方向の一方側(前方側XF)にインペラ2が機械的に連結されており、その長手方向の他方側(後方側XR)にタービンロータ13が機械的に連結されている。
【0018】
ターボチャージャ10は、タービン側導入口141を通じてタービンハウジング14の内部に導入された作動流体により、タービンロータ13を回転させる。上記作動流体として、不図示の排ガス発生装置(例えば、エンジンなどの内燃機関)から生じた排ガスが挙げられる。インペラ2は、回転シャフト12を介してタービンロータ13に機械的に連結されているので、タービンロータ13の回転に連動して回転する。ターボチャージャ10は、インペラ2を回転させることにより、吸気口31を通って、コンプレッサハウジング3の内部に導入された流体を圧縮し、排出口32を通じて圧縮流体の供給先(例えば、エンジンなどの内燃機関)に送るようになっている。
【0019】
(インペラ)
インペラ2は、
図2に示されるように、ハブ21と、ハブ21の外面22に設けられた複数のインペラ翼23と、を含む。ハブ21は、回転シャフト12の一方側に機械的に固定されているため、ハブ21や複数のインペラ翼23は、インペラ2の軸線CAを中心として回転シャフト12と一体的に回転可能に設けられている。インペラ2は、コンプレッサハウジング3に収納され、軸方向Xの前方側XFから導入される流体を径方向Yにおける外側に導くように構成されている。
【0020】
図示される実施形態では、ハブ21の外面22は、前方側XFから後方側XRに向かうにつれてインペラ2の軸線CAからの距離が大きくなる凹湾曲状に形成されている。複数のインペラ翼23の夫々は、軸線CA周りの周方向に互いに間隔を開けて配置されている。シュラウド面4は、前方側XFから後方側XRに向かうにつれてインペラ2の軸線CAからの距離が大きくなる凸湾曲状に形成された面41を含む。インペラ翼23の先端(チップ側端)24は、ハブ21の外面22との接続部(ハブ側端)とは反対側に位置している。先端24は、先端24に対向するように凸状に湾曲する面41との間に隙間G(クリアランス)が形成されている。
【0021】
(コンプレッサハウジング)
図示される実施形態では、コンプレッサハウジング3は、
図2に示されるように、上述したシュラウド面4を含むシュラウド部33と、遠心圧縮機1の吸気導入路50を形成する吸気導入部34と、遠心圧縮機1のディフューザ流路60を形成するディフューザ部35と、遠心圧縮機1のスクロール流路360を形成するスクロール部36と、を備える。
吸気導入路50は、コンプレッサハウジング3の吸気口31から導入した吸気(例えば、空気などの流体)をインペラ翼23に向かって導くための流路である。ディフューザ流路60は、インペラ2を通過した流体を、インペラ2の周囲に設けられた渦巻状のスクロール流路360に導くための流路である。スクロール流路360は、インペラ2およびディフューザ流路60を通過した流体を、排出口32(
図1参照)を通じてコンプレッサハウジング3の外部へ導くための流路である。
【0022】
吸気導入路50およびスクロール流路360の夫々は、コンプレッサハウジング3の内部に形成されている。吸気導入部34は、吸気導入路50を形成する前方側内周面5を有する。前方側内周面5は、シュラウド面4の軸方向における前方側XFに形成されるとともにシュラウド面4の前方端42(前方側XF端)よりも径方向Yにおいて外側に位置している。また、吸気導入部34の前方端には、上述した吸気口31が形成されている。
【0023】
スクロール流路360は、コンプレッサハウジング3に収納されたインペラ2の周囲を囲むように、インペラ2に対して径方向Yにおける外側に位置するように形成されている。スクロール部36は、スクロール流路360を形成する流路壁面361を有する。
【0024】
また、図示される実施形態では、コンプレッサハウジング3は、
図2に示されるように、他の部材(図示例では、軸受ハウジング16)と組み合わされることで、上述したディフューザ流路60が形成される。ディフューザ流路60は、ディフューザ面6と、ディフューザ面6に対向する軸受ハウジング16の面161と、により形成されている。なお、他の幾つかの実施形態では、コンプレッサハウジング3の内部にディフューザ流路60が形成されていてもよい。
【0025】
上述したシュラウド部33は、吸気導入部34とディフューザ部35との間に設けられる。吸気導入路50の出口は、ディフューザ流路60の入口に連通し、ディフューザ流路60の出口は、スクロール流路360の入口に連通している。吸気口31を通じてコンプレッサハウジング3の内部に導入された流体は、吸気導入路50を後方側XRに向かって流れた後に、インペラ2に送られる。インペラ2に送られた流体は、ディフューザ流路60およびスクロール流路360をこの順に流れた後に、排出口32(
図1参照)からコンプレッサハウジング3の外部に排出される。
【0026】
遠心圧縮機1の吸気流量(吸気口31を通じて吸気導入路50に流入し、インペラ2へ流れる主流MFの流量)が少ない低流量時において、流体の流れ方向に流体が激しく振動するサージングと呼ばれる不安定現象が発生することがある。サージングが発生すると、シュラウド面4近傍に、主流MFとは逆方向、すなわち軸方向Xにおける前方側XFに向かって流れる逆流RFが発生し、遠心圧縮機1の効率低下を招く虞がある。
【0027】
図3は、第1の実施形態にかかるコンプレッサハウジングを説明するための説明図である。
図4は、
図3におけるA-B線断面を概略的に示す概略断面図である。
幾つかの実施形態にかかるコンプレッサハウジング3は、
図3に示されるように、インペラ2のインペラ翼23の先端24と所定の隙間Gを有して対向する面41を含む上述したシュラウド面4と、シュラウド面4の軸方向における前方側XFに形成されるとともにシュラウド面4の前方端42よりも径方向Yにおいて外側に位置する前方側内周面5と、前方側内周面5から径方向Yにおける内側に向かって突出する少なくとも一つの凸部7と、を備える。
【0028】
凸部7の後方端71(後方側XR端)は、シュラウド面4の前方端42と接続するように構成されている。凸部7は、
図3に示されるような、インペラ2の軸線CAに沿った断面視において、凸部7の前方端72から後方側XRに向かってインペラ2の軸線CAに対して斜めに延在する傾斜前縁73を有する。
【0029】
凸部7は、
図4に示されるように、板状に形成されている。図示される実施形態では、凸部7は、第1面75と、第1面75よりもインペラ2の回転方向RDの下流側に位置する第2面76と、を有する。第1面75および第2面76の夫々は、インペラ2の軸方向Xおよび径方向Yに沿って延在している。なお、図示されるように、少なくとも一つの凸部7は、周方向に間隔を空けた配置された複数(図示例では二つ)の凸部7を含んでいてもよい。
【0030】
上記の構成によれば、コンプレッサハウジング3は、前方側内周面5から径方向の内側に向かって突出する少なくとも1つの凸部7を備える。上述したように、遠心圧縮機1の吸気流量が少ない低流量時において、シュラウド面4近傍に逆流RFが生じることがある。逆流RFは、インペラ2の回転によりインペラ2の回転方向RDに指向する旋回方向成分が付与されるので、強い遠心作用を有する。このような強い遠心作用を有する逆流RFは、回転方向RDに旋回しながら前方側内周面5に沿って流れて、凸部7(の第1面75)に衝突する。凸部7に逆流RFを衝突させることで、逆流RFを抑制できる。上記凸部7は、軸方向Xにおいてインペラ2の前縁25の近くに設けた方が逆流RFの抑制効果が高い。上記の構成によれば、凸部7の後方端71がシュラウド面4の前方端42と接続しているので、凸部7が軸方向Xにおいて前縁25の近くに位置するため、逆流RFを効果的に抑制できる。上記逆流RFを抑制することで、低流量側作動域におけるサージ流量を低減でき、ひいては遠心圧縮機1の効率を向上させることができる。
【0031】
また、上記の構成によれば、凸部7は、板状に設けられるとともに、インペラ2の軸線CAに沿った断面視において、凸部7の前方端72から後方側XRに向かってインペラ2の軸線CAに対して斜めに延在する傾斜前縁73を有する。この場合には、仮に凸部7の前縁73Aがインペラ2の軸線CAに対して直交する方向に延在する場合に比べて、インペラ2に導入される主流MFの流れを阻害し難いため、凸部7との衝突による主流MFの衝突損失を抑制できる。これにより、インペラ2に導入される主流MFの圧力損失(特に、高流量側作動域における圧力損失)を効果的に抑制できるため、遠心圧縮機1の効率を向上させることができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、
図3に示されるように、上述した凸部7は、傾斜前縁73の後方端から後方側XRに向かって延在してシュラウド面4の前方端42と接続する内側縁74を有する。内側縁74は、インペラ2の前縁25における先端24Aよりも径方向Yにおける外側に位置している。このような内側縁74を有する凸部7は、吸気導入路50の径方向Yにおける内側を流れる主流MFと凸部7との衝突を抑制でき、インペラ2に導入される主流MFの圧力損失を効果的に抑制できる。
【0033】
図5は、第1の実施形態にかかるコンプレッサハウジングの変形例を説明するための説明図である。
幾つかの実施形態では、
図3、
図5に示されるように、上述した前方側内周面5は、上述したシュラウド面4の前方端42から前方側XFに向かって拡径するテーパ面51と、テーパ面51の前方端52から軸方向Xに沿って前方側XFに延在する軸方向面53と、を含む。上述した凸部7は、少なくともテーパ面51の軸方向Xの全体に亘って延在する。
【0034】
図3に示される実施形態では、上述した凸部7は、テーパ面51および軸方向面53の両方に設けられている。
図5に示される実施形態では、上述した凸部7は、前方側内周面5においてテーパ面51のみに設けられている。
【0035】
上記の構成によれば、コンプレッサハウジング3の前方側内周面5は、シュラウド面4の前方端42から前方側XFに向かって拡径するテーパ面51を含むので、インペラ2に導入される主流MFの流れの急縮小損失を抑制できる。インペラ2の回転方向RDに指向する旋回方向成分を有する逆流RFは、前方側XFにテーパ面51に沿って流れる。上記凸部7は、少なくともテーパ面51の軸方向Xの全体に亘って延在しているので、テーパ面51に沿って流れる逆流RFを効果的に抑制できる。
【0036】
幾つかの実施形態では、
図5に示されるように、上述した凸部7は、前方側内周面5においてテーパ面51のみに設けられている。この場合には、インペラ2の回転方向RDに指向する旋回方向成分を有する逆流RFは、前方側XFにテーパ面51に沿って流れる。上記凸部7をテーパ面51に設けることで、テーパ面51に沿って流れる逆流RFを効果的に抑制できる。また、上記凸部7を前方側内周面5におけるテーパ面51のみに設ける、すなわち前方側内周面5のうちの軸方向面53には設けないことで、凸部7との衝突による主流MFの衝突損失を抑制できる。
【0037】
幾つかの実施形態では、上述した凸部7は、
図3、
図5に示されるようなインペラ2の軸線CAに沿った断面視において、凸部7の軸線に対して平行な長さLが、半径方向において変化している。インペラ2の回転方向RDに指向する旋回方向成分を有する逆流RFは、前方側XFにテーパ面51に沿って流れる。この場合には、テーパ面51に沿って流れる逆流RFを抑制するための適切な範囲に凸部7を設けることにより、凸部7との衝突による主流MFの衝突損失を抑制しつつ、逆流RFを効果的に抑制できる。
【0038】
図3、
図5に示される実施形態では、上述した長さLは、径方向における外側に向かうにつれて大きくなるように構成されている。この場合には、凸部7との衝突による主流MFの衝突損失を効果的に抑制できる。
【0039】
図6は、第1の実施形態にかかるコンプレッサハウジングの変形例を説明するための説明図である。幾つかの実施形態にかかるコンプレッサハウジング3は、上述した長さLが半径方向において一定となっている凸部7を備えていてもよい。すなわち、幾つかの実施形態では、上述した凸部7は、
図6に示されるようなインペラ2の軸線CAに沿った断面視において、凸部7の軸線に対して平行な長さLが、半径方向において一定となっている。
【0040】
図7は、第2の実施形態にかかるコンプレッサハウジングを説明するための説明図である。
図8および
図9の夫々は、第2の実施形態にかかるコンプレッサハウジングの変形例を説明するための説明図である。
図7は、コンプレッサハウジング3のシュラウド面4や前方側内周面5をインペラ2の径方向における内側から視た状態を概略的に示している。
【0041】
幾つかの実施形態にかかるコンプレッサハウジング3は、
図3、
図5、
図8、
図9に示されるように、インペラ2のインペラ翼23の先端24と所定の隙間Gを有して対向する面41を含む上述したシュラウド面4と、シュラウド面4の軸方向における前方側XFに形成されるとともにシュラウド面4の前方端42よりも径方向Yにおいて外側に位置する前方側内周面5と、前方側内周面5から径方向Yにおける内側に向かって突出する少なくとも一つの凸部7と、を備える。凸部7は、
図7に示されるように、板状に形成されており、凸部7の後方端71が、凸部7の前方端72よりも、インペラ2の回転方向RDにおける上流側に位置するように構成された。
なお、上述した幾つかの実施形態では、凸部7の後方端71は、凸部7の前方端72に対してインペラ2の回転方向RDにおいて同じ位置に位置するように構成されている。
【0042】
図示される実施形態では、凸部7の後方端71は、シュラウド面4の前方端42と接続するように構成されている。凸部7は、前方端72から後方端71までに亘り直線状に形成されている。
【0043】
上記の構成によれば、凸部7の後方端71が、凸部の前方端72よりもインペラ2の回転方向RDにおける上流側に位置するように構成されているので、凸部7により、前方側内周面5に沿ってインペラ2に導入される主流MFにインペラ2の回転方向RDとは逆方向に予旋回を与えることができる。主流MFに上記予旋回を与えることで、インペラ2に導入される際の主流MFの相対流入速度を増加させることができる。主流MFの相対流入速度を増加させることで、低流量側作動域におけるサージ流量を低減でき、ひいては遠心圧縮機1の効率を向上させることができる。
【0044】
なお、本実施形態は、上述した幾つかの実施形態と組み合わせてもよいし、独立して実施してもよい。例えば、
図3、
図5に示されるような、傾斜前縁73を有する凸部7に対して本実施形態を適用してもよいし、
図8、
図9に示されるような、凸部7の前方端72から径方向Yにおける内側に向かって延在する前縁73Aを有する凸部7に対して本実施形態を適用してもよい。
【0045】
幾つかの実施形態では、
図3、
図5に示されるように、上述した凸部7は、削り出し加工、又は鋳造によって、上述した前方側内周面5(例えば、テーパ面51)と一体的に形成された。
【0046】
上記の構成によれば、凸部7は、削り出し加工、又は鋳造によって、前方側内周面5と一体的に形成されている。この場合には、前方側内周面5とは別体に作製された凸部7を溶接やボルト締結などにより前方側内周面5に固定する場合と比べて、前方側内周面5の面粗度を向上させることができる。前方側内周面5の面粗度を向上させることで、インペラ2に導入される主流MFの圧力損失を低減できる。
なお、幾つかの実施形態では、
図8、
図9に示されるように、上述した凸部7は、上述した前方側内周面5とは別体に作製されていてもよい。
【0047】
上述した幾つかの実施形態では、上述した凸部7をインペラ2の上流側に設けていたが、このような凸部7をインペラ2の下流側に設けることによって、インペラ2の下流側における逆流を抑制することができ、遠心圧縮機1の効率の向上が図れる。
【0048】
図10は、第3の実施形態にかかるコンプレッサハウジングを説明するための説明図である。
図11は、
図10に示されるコンプレッサハウジングのピンチ面近傍を軸方向における後方側から視た状態を概略的に示す概略図である。
幾つかの実施形態にかかるコンプレッサハウジング3は、
図10に示されるように、インペラ2のインペラ翼23の先端24と所定の隙間Gを有して対向する面41を含む上述したシュラウド面4と、シュラウド面4の後方端43よりも軸方向においてインペラ2の背面26側(後方側XR)に位置するディフューザ面6であって、径方向Yに沿って延在する径方向面61と、径方向面61の内側端62とシュラウド面4の後方端43とを接続するピンチ面63と、を含むディフューザ面6と、ピンチ面63から軸方向におけるインペラ2の背面26側(後方側XR)に向かって突出する少なくとも1つのディフューザ側凸部8と、を備える。
【0049】
ディフューザ側凸部8は、径方向面61よりも軸方向におけるインペラ2のボス面22A側(前方側XF)に位置している。ディフューザ側凸部8の内側端81は、シュラウド面4の後方端43と接続している。
【0050】
図示される実施形態では、ディフューザ側凸部8は、
図10に示されるような、インペラ2の軸線CAに沿った断面視において、ディフューザ側凸部8の内側端81から後方側XRに向かってインペラ2の軸線CAに対して斜めに延在するディフューザ側傾斜前縁82と、ディフューザ側傾斜前縁82の外側端から径方向Yにおける外側に向かって延在して、その外側端84が径方向面61の内側端62に接続する後方側縁83と、を有する。
【0051】
ディフューザ側凸部8は、
図11に示されるように、板状に形成されている。図示される実施形態では、ディフューザ側凸部8は、第1面85と、第1面85よりもインペラ2の回転方向RDの下流側に位置する第2面86と、を有する。第1面85および第2面86の夫々は、インペラ2の軸方向Xおよび径方向Yに沿って延在している。なお、図示されるように、少なくとも一つのディフューザ側凸部8は、周方向に間隔を空けた配置された複数(図示例では二つ)のディフューザ側凸部8を含んでいてもよい。
【0052】
上記の構成によれば、コンプレッサハウジング3は、ピンチ面63から軸方向におけるインペラ2の背面26側(後方側XR)に向かって突出する少なくとも一つのディフューザ側凸部8を備える。このディフューザ側凸部8によって、ピンチ面63近傍に生じたインペラ2の回転方向RDに指向する旋回方向成分を有する逆流RF2を抑制できる。これにより、インペラ2よりも下流側における主流MFの旋回圧力損失を抑制できる。上記逆流RF2を抑制することで、低流量側作動域におけるディフューザ流路60の入口における旋回失速を抑制でき、ひいては遠心圧縮機1の効率を向上させることができる。
【0053】
遠心圧縮機1におけるインペラ2よりも下流側では、不均一な流速分布が発生する。上記ディフューザ側凸部8は、ヴォルテックスジェネレータとして作用して、境界層剥離を抑制する。このため、ディフューザ流路60の入口における旋回失速の発生時だけでなく、遠心圧縮機1の通常作動点においても、遠心圧縮機1の効率を向上させることができる。
【0054】
なお、本実施形態は、上述した幾つかの実施形態と組み合わせてもよいし、独立して実施してもよい。例えば、コンプレッサハウジング3は、上述した凸部7と、上述したディフューザ側凸部8と、を備えていてもよい。この場合には、インペラ2の上流側および下流側における旋回失速を抑制できるので、凸部7とディフューザ側凸部8との相乗効果により、遠心圧縮機1の効率を効果的に向上させることができる。
【0055】
幾つかの実施形態では、
図10に示されるように、上述したディフューザ側凸部8は、削り出し加工、又は鋳造によって、上述したディフューザ面6(例えば、ピンチ面63)と一体的に形成された。
【0056】
上記の構成によれば、ディフューザ側凸部8は、削り出し加工、又は鋳造によって、ディフューザ面6と一体的に形成されている。この場合には、ディフューザ面6とは別体に作製されたディフューザ側凸部8を溶接やボルト締結などによりディフューザ面6に固定する場合と比べて、ディフューザ面6の面粗度を向上させることができる。ディフューザ面6の面粗度を向上させることで、インペラ2を通過後の主流MFの圧力損失を低減できる。
なお、他の幾つかの実施形態では、上述したディフューザ側凸部8は、上述したディフューザ面6とは別体に作製されていてもよい。
【0057】
幾つかの実施形態にかかる遠心圧縮機1は、
図1、
図2に示されるように、上述したコンプレッサハウジング3を備える。この場合には、コンプレッサハウジング3内を流れる作動流体の圧力損失を効果的に抑制できるため、遠心圧縮機1の効率を向上させることができる。
【0058】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0059】
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0060】
1)本開示の少なくとも一実施形態にかかるコンプレッサハウジング(3)は、
遠心圧縮機(1)のインペラ(2)を回転可能に収容するためのコンプレッサハウジングであって、
前記インペラのインペラ翼(23)の先端(24)と所定の隙間(G)を有して対向する面(41)を含むシュラウド面(4)と、
前記シュラウド面(4)の軸方向における前方側に形成されるとともに前記シュラウド面(4)の前方端(42)よりも径方向において外側に位置する前方側内周面(5)と、
前記前方側内周面(5)から前記径方向の内側に向かって突出する少なくとも1つの凸部(7)と、を備え、
前記少なくとも1つの凸部(7)の後方端(71)は、前記シュラウド面(4)の前記前方端(42)と接続するように構成され、
前記少なくとも1つの凸部(7)は、板状に設けられるとともに、前記インペラ(2)の軸線(CA)に沿った断面視において、前記凸部(7)の前記前方端(72)から後方側に向かって前記インペラの軸線に対して斜めに延在する傾斜前縁(73)を有する。
【0061】
上記1)の構成によれば、コンプレッサハウジングは、前方側内周面から径方向の内側に向かって突出する少なくとも1つの凸部を備える。上記凸部に逆流を衝突させることで、逆流を抑制できる。上記凸部は、インペラの前縁の近くに設けた方が逆流の抑制効果が高い。上記1)の構成によれば、凸部の後方端がシュラウド面の前方端と接続しているので、凸部が軸方向において前縁の近くに位置するため、逆流を効果的に抑制できる。上記逆流を抑制することで、低流量側作動域におけるサージ流量を低減でき、ひいては遠心圧縮機の効率を向上させることができる。
【0062】
また、上記1)の構成によれば、凸部は、板状に設けられるとともに、インペラの軸線に沿った断面視において、凸部の前方端から後方側に向かってインペラの軸線に対して斜めに延在する傾斜前縁を有する。この場合には、仮に凸部の前縁がインペラの軸線に対して直交する方向に延在する場合に比べて、インペラに導入される主流の流れを阻害し難いため、凸部との衝突による主流の衝突損失を抑制できる。これにより、インペラに導入される主流の圧力損失(特に、高流量側作動域における圧力損失)を効果的に抑制できるため、遠心圧縮機の効率を向上させることができる。
【0063】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のコンプレッサハウジング(3)であって、
前記前方側内周面(5)は、前記シュラウド面(4)の前記前方端(42)から前記前方側に向かって拡径するテーパ面(51)と、前記テーパ面(51)の前方端(52)から軸方向に沿って前記前方側に延在する軸方向面(53)と、を含み、
前記少なくとも1つの凸部(7)は、少なくとも前記テーパ面(51)の前記軸方向の全体に亘って延在する。
【0064】
上記2)の構成によれば、コンプレッサハウジングの前方側内周面は、シュラウド面の前方端から前方側に向かって拡径するテーパ面を含むので、インペラに導入される主流の流れの急縮小損失を抑制できる。インペラの回転方向に指向する旋回方向成分を有する逆流は、前方側にテーパ面に沿って流れる。上記凸部は、少なくともテーパ面の軸方向の全体に亘って延在しているので、テーパ面に沿って流れる逆流を効果的に抑制できる。
【0065】
3)幾つかの実施形態では、上記2)に記載のコンプレッサハウジング(3)であって、
前記少なくとも1つの凸部(7)は、前記インペラの軸線に沿った断面視において、前記凸部の前記軸線に対して平行な長さ(L)が、半径方向において変化している。
【0066】
上記3)の構成によれば、凸部は、インペラの軸線に沿った断面視において、凸部の軸線に対して平行な長さが、半径方向において変化している。逆流は、前方側にテーパ面に沿って流れる。この場合には、テーパ面に沿って流れる逆流を抑制するための適切な範囲に凸部を配置できるので、凸部との衝突による主流の衝突損失を抑制しつつ、逆流を効果的に抑制できる。
【0067】
4)幾つかの実施形態では、上記1)~3)の何れかに記載のコンプレッサハウジング(3)であって、
前記少なくとも1つの凸部(7)は、前記凸部の前記後方端(71)が、前記凸部の前方端(72)よりも、前記インペラの回転方向(RD)における上流側に位置するように構成された。
【0068】
上記4)の構成によれば、凸部の後方端が、凸部の前方端よりもインペラの回転方向における上流側に位置するように構成されているので、凸部により、前方側内周面に沿ってインペラに導入される主流にインペラの回転方向とは逆方向に予旋回を与えることができる。主流に上記予旋回を与えることで、インペラに導入される際の主流の相対流入速度を増加させることができる。主流の相対流入速度を増加させることで、低流量側作動域におけるサージ流量を低減でき、ひいては遠心圧縮機の効率を向上させることができる。
【0069】
5)幾つかの実施形態では、上記1)~4)の何れかに記載のコンプレッサハウジング(3)であって、
前記少なくとも1つの凸部(7)は、削り出し加工、又は鋳造によって、前記前方側内周面(5)と一体的に形成された。
【0070】
上記5)の構成によれば、凸部は、削り出し加工、又は鋳造によって、前方側内周面と一体的に形成されている。この場合には、前方側内周面とは別体に作製された凸部を溶接やボルト締結などにより前方側内周面に固定する場合と比べて、前方側内周面の面粗度を向上させることができる。前方側内周面の面粗度を向上させることで、インペラに導入される主流の圧力損失を低減できる。
【0071】
6)幾つかの実施形態では、上記1)~5)の何れかに記載のコンプレッサハウジング(3)であって、
前記前方側内周面(5)は、前記シュラウド面の前記前方端から前記前方側に向かって拡径するテーパ面(51)と、前記テーパ面の前方端から軸方向に沿って前記前方側に延在する軸方向面(52)と、を含み、
前記少なくとも一つの凸部(7)は、前記前方側内周面(5)において前記テーパ面(51)のみに設けられた。
【0072】
上記6)の構成によれば、逆流は、前方側にテーパ面に沿って流れる。上記凸部をテーパ面に設けることで、テーパ面に沿って流れる逆流を効果的に抑制できる。また、上記凸部を前方側内周面におけるテーパ面のみに設ける、すなわち前方側内周面のうちの軸方向面には設けないことで、凸部との衝突による主流の衝突損失を抑制できる。
【0073】
7)幾つかの実施形態では、上記1)~6)の何れかに記載のコンプレッサハウジング(3)であって、
前記シュラウド面(4)の後方端(43)よりも軸方向において前記インペラ(2)の背面(26)側に位置するディフューザ面(6)であって、前記径方向に沿って延在する径方向面(61)と、前記径方向面(61)の内側端(62)と前記シュラウド面(4)の前記後方端(43)とを接続するピンチ面(63)と、を含むディフューザ面(6)と、
前記ピンチ面(63)から前記軸方向における前記インペラ(2)の背面(26)側に向かって突出する少なくとも1つのディフューザ側凸部(8)と、をさらに備え、
前記少なくとも1つのディフューザ側凸部(8)は、前記径方向面(61)よりも前記軸方向における前記インペラ(2)のボス面(22A)側に位置するとともに、
前記少なくとも1つのディフューザ側凸部(8)の内側端(81)は、前記シュラウド面(4)の前記後方端(43)と接続する。
【0074】
上記7)の構成によれば、コンプレッサハウジングは、ピンチ面から軸方向におけるインペラの背面側(後方側)に向かって突出する少なくとも一つのディフューザ側凸部を備える。このディフューザ側凸部によって、ピンチ面近傍に生じたインペラの回転方向に指向する旋回方向成分を有する逆流を抑制できる。これにより、インペラよりも下流側における主流の旋回圧力損失を抑制できる。上記逆流を抑制することで、低流量側作動域におけるディフューザ流路の入口における旋回失速を抑制でき、ひいては遠心圧縮機の効率を向上させることができる。
【0075】
遠心圧縮機におけるインペラよりも下流側では、不均一な流速分布が発生する。上記ディフューザ側凸部は、ヴォルテックスジェネレータとして作用して、境界層剥離を抑制する。このため、ディフューザ流路の入口における旋回失速の発生時だけでなく、遠心圧縮機の通常作動点においても、遠心圧縮機の効率を向上させることができる。
【0076】
8)本開示の少なくとも一実施形態にかかるコンプレッサハウジング(3)は、
遠心圧縮機(1)のインペラ(2)を回転可能に収容するためのコンプレッサハウジングであって、
前記インペラのインペラ翼(23)の先端(24)と所定の隙間(G)を有して対向する面(41)を含むシュラウド面(4)と、
前記シュラウド面(4)の後方端(43)よりも軸方向において前記インペラ(2)の背面(26)側に位置するディフューザ面(6)であって、径方向に沿って延在する径方向面(61)と、前記径方向面(61)の内側端(62)と前記シュラウド面(4)の前記後方端(43)とを接続するピンチ面(63)と、を含むディフューザ面(6)と、
前記ピンチ面(63)から前記軸方向における前記インペラ(2)の背面(26)側に向かって突出する少なくとも1つのディフューザ側凸部(8)と、を備え、
前記少なくとも1つのディフューザ側凸部(8)は、前記径方向面(61)よりも前記軸方向における前記インペラ(2)のボス面(22A)側に位置するとともに、
前記少なくとも1つのディフューザ側凸部(8)の内側端(81)は、前記シュラウド面(4)の前記後方端(43)と接続する。
【0077】
上記8)の構成によれば、コンプレッサハウジングは、ピンチ面から軸方向におけるインペラの背面側(後方側)に向かって突出する少なくとも一つのディフューザ側凸部を備える。このディフューザ側凸部によって、ピンチ面近傍に生じたインペラの回転方向に指向する旋回方向成分を有する逆流を抑制できる。これにより、インペラよりも下流側における主流の旋回圧力損失を抑制できる。上記逆流を抑制することで、低流量側作動域におけるディフューザ流路の入口における旋回失速を抑制でき、ひいては遠心圧縮機の効率を向上させることができる。
【0078】
遠心圧縮機におけるインペラよりも下流側では、不均一な流速分布が発生する。上記ディフューザ側凸部は、ヴォルテックスジェネレータとして作用して、境界層剥離を抑制する。このため、ディフューザ流路の入口における旋回失速の発生時だけでなく、遠心圧縮機の通常作動点においても、遠心圧縮機の効率を向上させることができる。
【0079】
9)幾つかの実施形態では、上記7)又は8)に記載のコンプレッサハウジング(3)であって、
前記少なくとも1つのディフューザ側凸部(8)は、削り出し加工、又は鋳造によって、前記ディフューザ面(6)と一体的に形成された。
【0080】
上記9)の構成によれば、ディフューザ側凸部は、削り出し加工、又は鋳造によって、ディフューザ面と一体的に形成されている。この場合には、ディフューザ面とは別体に作製されたディフューザ側凸部を溶接やボルト締結などによりディフューザ面に固定する場合と比べて、ディフューザ面の面粗度を向上させることができる。ディフューザ面の面粗度を向上させることで、インペラを通過後の主流の圧力損失を低減できる。
【0081】
10)本開示の少なくとも一実施形態にかかる遠心圧縮機(1)は、上記1)~9)の何れかに記載のコンプレッサハウジング(3)を備える。
上記10)の構成によれば、コンプレッサハウジング内を流れる作動流体の圧力損失を効果的に抑制できるため、遠心圧縮機の効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 遠心圧縮機
2 インペラ
21 ハブ
22 外面
22A ボス面
23 インペラ翼
24,24A 先端
25 前縁
26 背面
3 コンプレッサハウジング
31 吸気口
32 排出口
33 シュラウド部
34 吸気導入部
35 ディフューザ部
36 スクロール部
360 スクロール流路
361 流路壁面
4 シュラウド面
41 面
42 前方端
43 後方端
5 前方側内周面
50 吸気導入路
51 テーパ面
52 前方端
53 軸方向面
6 ディフューザ面
60 ディフューザ流路
61 径方向面
62 内側端
63 ピンチ面
7 凸部
71 後方端
72 前方端
73,73A 前縁
74 内側縁
75 第1面
76 第2面
8 ディフューザ側凸部
81 内側端
82 前縁
83 後方側縁
84 外側端
85 第1面
86 第2面
10 ターボチャージャ
11 タービン
12 回転シャフト
13 タービンロータ
14 タービンハウジング
141 タービン側導入口
142 タービン側排出口
15 軸受
16 軸受ハウジング
161 面
CA 軸線
G 隙間
MF 主流
RD 回転方向
RF,RF2 逆流
X 軸方向
XF (軸方向の)前方側
XR (軸方向の)後方側
Y 径方向