(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】自己加熱型ガスセンサー、ガス感受性材料、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
G01N 27/12 20060101AFI20240228BHJP
C01B 32/198 20170101ALI20240228BHJP
C01B 32/168 20170101ALI20240228BHJP
C01G 41/00 20060101ALI20240228BHJP
C01G 49/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G01N27/12 C
C01B32/198
C01B32/168
C01G41/00 A
C01G49/00 A
(21)【出願番号】P 2022562099
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(86)【国際出願番号】 CN2021073734
(87)【国際公開番号】W WO2021203804
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】202010280974.5
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】522396333
【氏名又は名称】中石化安全工程研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】安飛
(72)【発明者】
【氏名】孫冰
(72)【発明者】
【氏名】李娜
(72)【発明者】
【氏名】王林
(72)【発明者】
【氏名】石寧
(72)【発明者】
【氏名】徐偉
(72)【発明者】
【氏名】張樹才
(72)【発明者】
【氏名】王浩志
(72)【発明者】
【氏名】王世強
(72)【発明者】
【氏名】馮俊傑
(72)【発明者】
【氏名】趙辰陽
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-261970(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106596652(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108398408(CN,A)
【文献】Xueting Chang et al.,Graphene-tungsten oxide nanocomposites with highly enhanced gas-sensing performance,Journal of Alloy and Compounds,2007年,Vol.705,pp.659-667
【文献】Tadele Hunde Wondimu et al.,Highly efficient and durable phosphine reduced iron-doped tungsten oxide/reduced graphene oxide nanocomposites for the hydrogen evolution reaction,International Journal of Hydrogen Energy,2018年,pp.1-10
【文献】Carlo Piloto et al.,Sensing performance of reduced graphene oxide-Fe doped WO3 hybrids to NO2 and humidity at room temperature,Applied Surfa,ce Science,2018年,Vol.434,pp.126-133
【文献】Stella Vallejos et al.,Nanoscale Heterostructures Based on Fe2O3@WO3-x Nanoneedles ans Their Integration into Flexible Transducing Platforms for Toluene Sensing,ACS Applied Materials & Interfaces,2015年,Vol.7,pp.18638-18649
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/12
C01B 32/00-32/991
C01G 25/00-99/00
C01G 1/00-23/08
C01G 49/00-49/08
B82Y 5/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材料と金属酸化物とを複合した炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料であり、前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料中、炭素材料の含有量が0.5~20重量%であり、金属酸化物の含有量が80~99.5重量%であり、前記金属酸化物はタングステン酸化物と、錫酸化物、鉄酸化物、チタン酸化物、銅酸化物、モリブデン酸化物及び亜鉛酸化物から選択される1種又は2種以上とを含有し、
前記金属酸化物はナノワイヤの形で前記炭素材料上に形成され、かつ前記ナノワイヤはタングステン酸化物ドープナノワイヤ
であり、前記タングステン酸化物ドープナノワイヤは、錫酸化物、鉄酸化物、チタン酸化物、銅酸化物、モリブデン酸化物及び亜鉛酸化物から選択される1種又は2種以上がタングステン酸化物ナノワイヤにドープされた構造である、ことを特徴とするガス感受性材料。
【請求項2】
前記ナノワイヤは直径10~100nm、長さ500~10000
nmである請求項1に記載のガス感受性材料。
【請求項3】
前記金属酸化物は、WO
3と、SnO
2、Fe
2O
3、TiO
2、CuO、MoO
3及びZnOから選択される1種又は2種以上とを含有
する、請求項1に記載のガス感受性材料。
【請求項4】
前記金属酸化物は、WO
3
と、SnO
2
、Fe
2
O
3
、TiO
2
、CuO及びMoO
3
から選択される1種又は2種以上とを含有する、請求項3に記載のガス感受性材料。
【請求項5】
前記金属酸化物の全量に対して、前記タングステン酸化物の含有量は60~99.5重量%である、請求項1に記載のガス感受性材料。
【請求項6】
前記ナノワイヤは三酸化タングステンドープナノワイヤであり、前記三酸化タングステンドープナノワイヤは、錫酸化物、鉄酸化物、チタン酸化物、銅酸化物、モリブデン酸化物及び亜鉛酸化物から選択される1種又は2種以上が三酸化タングステンナノワイヤにドープされた構造である、請求項1に記載のガス感受性材料。
【請求項7】
前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料中、炭素材料の含有量が0.5~15重量%であり、金属酸化物の含有量が85~99.5重量%である、請求項1に記載のガス感受性材料。
【請求項8】
前記炭素材料はグラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン及びカーボンブラックのうちの1種又は2種以上である、請求項1~
7のいずれか1項に記載のガス感受性材料。
【請求項9】
アルコール溶媒の存在下、炭素材料と、金属酸化物及び/又は金属酸化物前駆体とをマイクロ波で熱処理した後、固液分離して炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料を得るステップを含み、
前記金属酸化物は、タングステン酸化物と、錫酸化物、鉄酸化物、チタン酸化物、銅酸化物、モリブデン酸化物及び亜鉛酸化物から選択される1種又は2種以上とを含有し、
前記金属酸化物前駆体は、アルコール可溶性タングステン塩と、アルコール可溶性錫塩、アルコール可溶性鉄塩、アルコール可溶性チタン塩、アルコール可溶性銅塩、アルコール可溶性モリブデン塩及びアルコール可溶性亜鉛塩から選択される1種又は2種以上である、ことを特徴とするガス感受性材料の製造方法。
【請求項10】
前記熱処理には界面活性剤が使用されない、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記炭素材料と前記金属酸化物との合計重量を基準にして、前記炭素材料の使用量は0.5~20重量%であり、前記金属酸化物の使用量は80~99.5重量
%である、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
前記炭素材料と金属酸化物換算の前記金属酸化物前駆体との合計重量を基準にして、前記炭素材料の使用量は0.5~20重量%であり、金属酸化物換算の前記金属酸化物前駆体の使用量は80~99.5重量%である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記炭素材料はグラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン及びカーボンブラックのうちの1種又は2種以上である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記金属酸化物は、WO
3
と、SnO
2
、Fe
2
O
3
、TiO
2
、CuO、MoO
3
及びZnOから選択される1種又は2種以上とを含有する、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記金属酸化物は、WO
3
と、SnO
2
、Fe
2
O
3
、TiO
2
、CuO及びMoO
3
から選択される1種又は2種以上を含有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記金属酸化物前駆体は、塩化タングステンと、塩化錫、塩化鉄、塩化チタン、塩化銅、塩化モリブデン及び塩化亜鉛から選択される1種又は2種以上である、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記金属酸化物前駆体は、塩化タングステンと、塩化錫、塩化鉄、塩化チタン、塩化銅及び塩化モリブデンから選択される少なくとも1種とである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記金属酸化物の全量に対して、前記タングステン酸化物の含有量
は60~99.5重量
%である、請求項
11に記載の方法。
【請求項19】
金属酸化物換算で、前記金属酸化物前駆体中、アルコール可溶性タングステン塩の使用量は60~99.5重量%である、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記アルコール溶媒はエタノー
ルである、請求項
9~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記炭素材料と、金属酸化物及び金属酸化物前駆体との合計重量100重量部に対して、前記アルコール溶媒の使用量は500~100000重量部である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記熱処理の条件は、マイクロ波電力200~1800W、熱処理温度160~220℃、熱処理時間10~240分間
を含む、請求項
9~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
分離により得られた炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料を乾燥させるステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料を還元剤で還元処理するステップをさらに含
む、請求項
9~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
炭素元素換算の前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料と還元剤との質量比が1:0.1~20である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、ヨウ化水素、臭化水素、チオ尿素、エタンチオール、過硫酸ナトリウム、ヒドラジン水和物、ピロール、尿素、エタノール、アスコルビン酸、グルコース、アルミニウム-塩酸、鉄-塩酸、亜鉛-水酸化ナトリウム、亜鉛-アンモニア水、グリシン、リジン及び緑茶のうちの1種又は2種以上である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記還元処理の条件は、還元処理温度200~500℃、還元処理時間0.1~12hを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
チップ担体と、前記チップ担体上に担持されたガス感受性材料とを含み、前記ガス感受性材料は請求項1~
8のいずれか1項に記載
のガス感受性材料である、ことを特徴とするジュールの原理による自己加熱型ガスセンサー。
【請求項29】
前記チップ担体はセラミックチューブ及び/又はMEMSチップである、請求項
28に記載の自己加熱型ガスセンサー。
【請求項30】
請求項1~
8のいずれか1項に記載のガス感受性材料の、ジュールの原理による自己加熱型ガスセンサーへの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は提出された中国特許出願202010280974.5の利益を主張し、該出願の内容は引用によりここに組み込まれている。
(技術分野)
本発明は材料分野に関し、具体的には、ガス感受性材料、その製造方法及び使用、並びに該ガス感受性材料を用いたジュールの原理による自己加熱型ガスセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染問題が深刻化しているので、環境汚染の問題の解決は優先すべき課題の一つとなっている。有毒有害ガスは環境汚染の重要な発生源の一つとして、石油及び化学工業企業の生産、輸送及び貯蔵過程に広く存在し、従業員の健康と安全を常に脅かしている。そのため、どのように迅速かつ正確に有毒有害ガスの濃度を測定し、人身の安全を保障するかは産業界の解決すべき問題の一つである。
【0003】
金属酸化物ナノ材料ベースのガスセンサーを作製することは、この問題を解決するのに有効な方法の一つである。金属酸化物ナノ材料はセンシング材料の使用量を減らし、コストを大幅に削減しただけでなく、ナノ材料自体の小型化効果のおかげで、センサーのガス感受性も向上した。しかし、金属酸化物の室温導電率が低すぎるという欠点に制限され、金属酸化物ナノ材料ベースのガスセンサーは200~400℃まで加熱されなければ正常に動作しない。統計によると、センサーのエネルギーの60%近くはセンシング材料の加熱に使われており、これはエネルギー消費量を増やすだけでなく、センサーの小型化や長時間使用にも不利となるとともに、安全上のリスクをもたらす。そのため、いかにして低エネルギー消費量と同時にガス感受性が優れたセンサーを作製するかは、ここ数年のガスセンサー分野の研究の焦点の一つとなっている。
【0004】
ガスセンサーのエネルギー消費量を減らすために、現在よく使われている方法は2つある。1、新型のナノガス感受性材料を製造する。現在研究が多いのはグラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの炭素材料である。これらの材料は、それ自体が非常に高い導電性を有し、比表面積が大きく、表面修飾によって異なるガスに対する選択性を変化させることができるので、いずれも室温条件下で目的のガスに応答することができ、加熱を必要とせず、エネルギー消費量を低減することができる。2、ジュール熱の原理を利用して自己加熱を行う。ジュール熱:導体に電流が流れたときに発生する熱。したがって、ガス感受性材料の抵抗と印加する測定電圧を調整することにより、測定回路から供給される電流を利用してガス感受性材料の加熱を実現することができる。また、加熱時にガス感受性材料自体から熱を直接発生するため、中間熱伝導が不要であり、これにより、熱放散を大幅に低減することができる。また、外部加熱回路を省略することで、エネルギー消費量をさらに削減することができる。しかし、この2つの方法には現在、それぞれの欠点がある。1、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素材料は室温条件下でガス応答を発生することができるが、室温でのガスの吸着・放出の過程が遅いため、それらの応答回復速度が遅く、人々の実際の生活におけるニーズを満たすことができない。2、現在ジュール熱の原理を利用して自己加熱するガスセンサーは主に単本又は配向した金属、金属酸化物ナノワイヤやナノベルトを利用しており、これらのセンサーの製造方法は煩雑で、装置は高価である。また抵抗が大きく、ガス感受性材料を理想的な温度に加熱するには高い電圧を印加しなければならない。これは電池のサイズを大きくし、センサーの小型化や携帯化には不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の従来技術に存在する問題を解決するために、ガス感受性材料、その製造方法及び使用、並びに該ガス感受性材料を用いたジュールの原理による自己加熱型ガスセンサーを提供することである。本発明のガス感受性材料は、抵抗が低く、低い作動温度で複数種のガスに応答可能であり、また外部からの加熱を必要とせず、測定回路によるジュール熱で自己加熱を可能とし、エネルギー消費量がより低く、しかも、感度がより高い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成させるために、本発明の第1態様は、
炭素材料と金属酸化物とを複合した炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料であり、前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料中、炭素材料の含有量が0.5~20重量%であり、金属酸化物の含有量が80~99.5重量%であり、前記金属酸化物は、タングステン酸化物と、錫酸化物、鉄酸化物、チタン酸化物、銅酸化物、モリブデン酸化物及び亜鉛酸化物から選択される1種又は2種以上とを含有し、前記金属酸化物はナノワイヤの形で前記炭素材料上に形成され、かつ前記ナノワイヤはタングステン酸化物ドープナノワイヤであるジュールの原理による自己加熱型ガスセンサー用のガス感受性材料を提供する。
【0007】
好ましくは、前記ナノワイヤは直径10~100nm、長さ500~10000ナノである。
【0008】
好ましくは、前記金属酸化物は、WO3と、SnO2、Fe2O3、TiO2、CuO、MoO3及びZnOから選択される1種又は2種以上とを含有し、より好ましくは、前記金属酸化物は、WO3と、SnO2、Fe2O3、TiO2、CuO及びMoO3から選択される1種又は2種以上とを含有する。
【0009】
好ましくは、前記金属酸化物の全量に対して、前記WO3の含有量は好ましくは60~99.5重量%である。
【0010】
好ましくは、前記ナノワイヤは三酸化タングステンドープナノワイヤである。
【0011】
好ましくは、前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料中、炭素材料の含有量が0.5~15重量%であり、金属酸化物の含有量が85~99.5重量%である。
【0012】
好ましくは、前記炭素材料は、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン及びカーボンブラックのうちの1種又は2種以上である。
【0013】
本発明の第2態様によれば、アルコール溶媒の存在下、炭素材料と、金属酸化物及び/又は金属酸化物前駆体とをマイクロ波で熱処理した後、固液分離して炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料を得るステップを含み、前記金属酸化物は、タングステン酸化物と、錫酸化物、鉄酸化物、チタン酸化物、銅酸化物、モリブデン酸化物及び亜鉛酸化物から選択される1種又は2種以上とを含有し、前記金属酸化物前駆体はアルコール可溶性タングステン塩と、アルコール可溶性錫塩、アルコール可溶性鉄塩、アルコール可溶性チタン塩、アルコール可溶性銅塩、アルコール可溶性モリブデン塩及びアルコール可溶性亜鉛塩から選択される1種又は2種以上である、ガス感受性材料の製造方法を提供する。
【0014】
好ましくは、前記炭素材料と前記金属酸化物との合計重量を基準にして、前記炭素材料の使用量は0.5~20重量%であり、前記金属酸化物の使用量は80~99.5重量%であり、前記炭素材料と金属酸化物換算の前記金属酸化物前駆体との合計重量を基準にして、前記炭素材料の使用量は0.5~20重量%であり、金属酸化物換算の前記金属酸化物前駆体の使用量は80~99.5重量%である。
【0015】
好ましくは、前記炭素材料はグラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン及びカーボンブラックのうちの1種又は2種以上である。
【0016】
好ましくは、前記金属酸化物は、WO3と、SnO2、Fe2O3、TiO2、CuO、MoO3及びZnOから選択される1種又は2種以上とを含有し、より好ましくは、前記金属酸化物は、WO3と、SnO2、Fe2O3、TiO2、CuO及びMoO3から選択される1種又は2種以上とを含有する。
【0017】
好ましくは、前記金属酸化物前駆体は、塩化タングステンと、塩化錫、塩化鉄、塩化チタン、塩化銅、塩化モリブデン及び塩化亜鉛から選択される1種又は2種以上であり、より好ましくは、前記金属酸化物前駆体は、塩化タングステンと、塩化錫、塩化鉄、塩化チタン、塩化銅及び塩化モリブデンから選択される少なくとも1種である。
【0018】
好ましくは、前記金属酸化物の全量に対して、前記タングステン酸化物の含有量好ましくは60~99.5重量%である。
【0019】
好ましくは、金属酸化物換算で、前記金属酸化物前駆体中、アルコール可溶性タングステン塩の使用量は60~99.5重量%である。
【0020】
好ましくは、前記アルコール溶媒はエタノールである。
【0021】
好ましくは、前記炭素材料と、金属酸化物及び金属酸化物前駆体との合計重量100重量部に対して、前記溶媒の使用量は500~100000重量部である。
【0022】
好ましくは、前記熱処理条件は、マイクロ波電力200~1800W、熱処理温度160~220℃、熱処理時間10~240分間を含む。
【0023】
好ましくは、該方法は、分離により得られた炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料を乾燥させるステップをさらに含む。
【0024】
好ましくは、該方法は、前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料を還元剤で還元処理するステップをさらに含む。
【0025】
好ましくは、炭素元素換算の前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料と還元剤との質量比が1:0.1~20である。
【0026】
好ましくは、前記還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、ヨウ化水素、臭化水素、チオ尿素、エタンチオール、過硫酸ナトリウム、ヒドラジン水和物、ピロール、尿素、エタノール、アスコルビン酸、グルコース、アルミニウム-塩酸、鉄-塩酸、亜鉛-水酸化ナトリウム、亜鉛-アンモニア水、グリシン、リジン及び緑茶のうちの1種又は2種以上である。
【0027】
好ましくは、前記還元処理条件は、還元処理温度200~500℃、還元処理時間0.1~12hを含む。
【0028】
本発明の第3態様によれば、チップ担体と、前記チップ担体上に担持されたガス感受性材料とを含み、前記ガス感受性材料は本発明の前記ジュールの原理による自己加熱型ガスセンサー用のガス感受性材料である、ジュールの原理による自己加熱型ガスセンサーを提供する。
【0029】
好ましくは、ドリップ法、エアスプレー法、マイクロスプレー法、堆積法又は塗布法によって前記ガス感受性材料が前記チップ担体上に担持される。
【0030】
好ましくは、前記チップ担体はセラミックチューブ及び/又はMEMSチップである。
【0031】
本発明の第4態様によれば、本発明のガス感受性材料の、ジュールの原理による自己加熱型ガスセンサーへの使用を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明のガス感受性材料は、抵抗が低く、低い作動温度(室温~200℃)で複数種のガスに対して応答可能であり、また外部からの加熱を必要とせず、測定回路によるジュール熱で自己加熱を可能とし、しかも、エネルギー消費量がより低い。しかも、本発明のガス感受性材料は、必要な測定電圧が低く、1~20Vだけで200℃の温度に自己加熱できる。さらに、本発明のガス感受性材料は感度がより高い。
【0033】
さらに、試験例2に示すように、本発明のガス感受性材料は応答回復速度が20s以下であり、応答回復速度が極めて速い。
【0034】
さらに、本発明のガス感受性材料は、広域スペクトラムのガス感受性材料であり、硫化水素、トルエン、一酸化炭素などの複数種のガスに応答可能であり、特に硫化水素に対しては優れた応答回復速度がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】試験例1においてMEMSチップを用いて自己加熱電力試験を行うときの示意図である。
【
図2】実施例1で得られたフレーク状ナノ材料の走査型電子顕微鏡像である。
【
図3】実施例1で得られたフレーク状ナノ材料が炭素材料表面に形成されたナノワイヤのTEM写真である。
【
図4】実施例3で得られたフレーク状ナノ材料が炭素材料表面に形成されたナノワイヤのTEM写真である。
【
図5】実施例4で得られたフレーク状ナノ材料が炭素材料表面に形成されたナノワイヤのTEM写真である。
【
図6】実施例5で得られたフレーク状ナノ材料が炭素材料表面に形成されたナノワイヤのTEM写真である。
【
図7】比較例8で得られたナノ材料の走査型電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
明細書で開示された範囲の端点及び任意の値はこの正確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値はこれらの範囲又は値に近い値として理解すべきである。数値の範囲の場合、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値と単独の点値との間、及び単独の点値の間は互いに組み合わせられて1つ又は複数の新しい数値範囲を構成してもよく、これらの数値の範囲は本明細書で具体的に開示されるものとみなすべきである。
【0037】
本発明の第1態様はガス感受性材料を提供し、前記ガス感受性材料は炭素材料と金属酸化物とを複合した炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料であり、前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料中、炭素材料の含有量が0.5~20重量%であり、金属酸化物の含有量が80~99.5重量%であり、前記金属酸化物は、タングステン酸化物と、錫酸化物、鉄酸化物、チタン酸化物、銅酸化物、モリブデン酸化物及び亜鉛酸化物から選択される1種又は2種以上とを含有し、前記金属酸化物はナノワイヤの形で前記炭素材料上に形成され、かつ前記ナノワイヤはタングステン酸化物ドープナノワイヤである。
【0038】
本発明では、「タングステン酸化物ドープナノワイヤ」とは、錫酸化物、鉄酸化物、チタン酸化物、銅酸化物、モリブデン酸化物及び亜鉛酸化物から選択される1種又は2種以上がタングステン酸化物ナノワイヤにドープされた構造である。
【0039】
前記錫酸化物として、例えば、酸化第一スズ、酸化錫などが挙げられるが、好ましくは酸化錫である。
【0040】
前記鉄酸化物として、例えば、三二酸化鉄、酸化第一鉄、四三酸化鉄などが挙げられるが、好ましくは三二酸化鉄である。
【0041】
前記チタン酸化物として、例えば、二酸化チタン、亜酸化チタンなどが挙げられるが、好ましくは二酸化チタンである。
【0042】
前記銅酸化物として、例えば、酸化銅、亜酸化銅等が挙げられるが、好ましくは酸化銅である。
【0043】
前記モリブデン酸化物として、例えば、二酸化モリブデン、三酸化モリブデンなどが挙げられるが、好ましくは三酸化モリブデンである。
【0044】
前記亜鉛酸化物として、例えば、酸化亜鉛、過酸化亜鉛などが挙げられるが、好ましくは酸化亜鉛である。
【0045】
本発明の発明者らは鋭意研究を行った結果、前記金属酸化物がナノワイヤの形で前記炭素材料上に形成され、かつ前記金属酸化物がタングステン酸化物ドープナノワイヤの構造とすることにより、ガス感受性を大幅に向上できることも見出した。
【0046】
前記ナノワイヤの直径は、好ましくは10~100nm、より好ましくは15~80nm、さらに好ましくは15~50nm、よりさらに好ましくは18~40nmである。また、前記ナノワイヤの長さは、好ましくは500~10000nm、より好ましくは500~8000nm、さらに好ましくは550~7000nm、よりさらに好ましくは550~5000nmである。
【0047】
本発明によれば、好ましくは、前記金属酸化物は、WO3と、SnO2、Fe2O3、TiO2、CuO、MoO3及びZnOから選択される1種又は2種以上とを含有し、より好ましくは、前記金属酸化物は、WO3と、SnO2、Fe2O3、TiO2、CuO及びMoO3から選択される1種又は2種以上とを含有する。上記の組み合わせにより、ガス感受性をさらに向上させることができる。
【0048】
本発明によれば、ガス感受性をさらに向上させることから、好ましくは、前記金属酸化物の全量に対して、前記タングステン酸化物の含有量は好ましくは60~99.5重量%、より好ましくは70~99.5重量%である。
【0049】
前記タングステン酸化物は好ましくは三酸化タングステンである。
【0050】
本発明によれば、前記ガス感受性材料は、測定電圧で200℃に加熱することができ、その測定電圧が低く、電力消費が小さい。具体的には、前記ガス感受性材料は測定電圧で25℃から200℃に自己加熱したときに、電力消費が9000μW以下であり、好ましくは、前記ガス感受性材料は測定電圧で25℃から200℃に自己加熱したときに、電力消費が好ましくは8800μW以下、さらに好ましくは8500μW以下、よりさらに好ましくは8000μW以下、よりさらに好ましくは7000μW以下、よりさらに好ましくは6000μW以下、よりさらに好ましくは5000μW以下、よりさらに好ましくは4000μW以下、特に好ましくは3000μW以下である。また、前記電力消費は好ましくは1000μW以上、より好ましくは1500μW以上、さらに好ましくは1800μW以上、さらに好ましくは2500μW以上である。
【0051】
本発明によれば、好ましくは、25℃から100℃に自己加熱したときに、その電力消費は、好ましくは2000μW以下、さらに好ましくは1800μW以下、よりさらに好ましくは1600μW以下、よりさらに好ましくは1400μW以下、よりさらに好ましくは1200μW以下、よりさらに好ましくは1000μW以下、特に好ましくは800μW以下である。また、前記電力消費は、好ましくは180μW以上、より好ましくは200μW以上、さらに好ましくは250μW以上、さらに好ましくは500μW以上である。
【0052】
本発明によれば、好ましくは、25℃から50℃に自己加熱したときに、その電力消費は、好ましくは120μW以下、さらに好ましくは110μW以下、よりさらに好ましくは90μW以下、よりさらに好ましくは85μW以下、特に好ましくは70μW以下である。また、前記電力消費は、好ましくは10μW以上、より好ましくは15μW以上、さらに好ましくは20μW以上、さらに好ましくは50μW以上である。
【0053】
本発明によれば、前記測定電圧は、例えば1~20V、具体的には、1V、2V、3V、4V、5V、6V、7V、8V、9V、10V、11V、12V、13V、14V、15V、16V、17V、18V、19V又は20Vなどであってもよい。
【0054】
本発明によれば、前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料中、炭素材料の含有量が0.5~20重量%であり、金属酸化物の含有量が80~99.5重量%であり、作動温度の低下、エネルギー消費量の低下及び応答の高速化、回復速度の点から、好ましくは、前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料中、炭素材料の含有量が0.5~15重量%であり、金属酸化物の含有量が85~99.5重量%である。本発明では、炭素材料の含有量が20重量%よりも大きい場合、ガス感受性材料は、抵抗が小さく、ガス応答速度や回復速度が低下する。炭素材料の含有量が0.5重量%未満である場合、ガス感受性材料は、抵抗が大きく、作動温度が高く、これに伴い、加熱電圧が増大し、エネルギー消費量が増大する。
【0055】
本発明によれば、好ましくは、前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料の抵抗は0.1~110kΩ、より好ましくは1~100kΩである。
【0056】
本発明によれば、前記炭素材料は本分野で通常使用されている各種の炭素材料であってもよく、好ましくは、前記炭素材料はグラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン及びカーボンブラックのうちの1種又は2種以上である。
【0057】
本発明によれば、前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料の形状は、フレーク状、顆粒状又は糸状などであってもよいが、好ましくはフレーク状である。
【0058】
前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料は、フレーク状の形状である場合、その厚さが0.5~100nmであってもよく、両点間の最大距離が0.1~50μmであってもよく、好ましくは、厚さが1~50nmであってもよく、両点間の最大距離が0.1~40μmであってもよい。
【0059】
前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料は、顆粒状の形状である場合、その粒径が10~800nmであってもよいが、好ましくは10~700nmである。
【0060】
前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料は、糸状の形状である場合、直径が1~100nmであってもよく、長さが0.1~200μmであってもよいが、好ましくは、直径が1~50nmであり、長さが0.1~100μmである。
【0061】
本発明の第2態様によれば、ガス感受性材料の製造方法を提供し、該方法は、アルコール溶媒の存在下、炭素材料と、金属酸化物及び/又は金属酸化物前駆体とをマイクロ波で熱処理した後、固液分離して炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料を得るステップを含み、前記金属酸化物は、タングステン酸化物と、錫酸化物、鉄酸化物、チタン酸化物、銅酸化物、モリブデン酸化物及び亜鉛酸化物から選択される1種又は2種以上とを含有し、前記金属酸化物前駆体は、アルコール可溶性タングステン塩と、アルコール可溶性錫塩、アルコール可溶性鉄塩、アルコール可溶性チタン塩、アルコール可溶性銅塩、アルコール可溶性モリブデン塩及びアルコール可溶性亜鉛塩から選択される1種又は2種以上である。
【0062】
本発明の製造方法によれば、前記熱処理には界面活性剤が使用されない。
【0063】
炭素材料と、金属酸化物及び/又は金属酸化物前駆体とをマイクロ波で熱処理するため、マイクロ波の使用により原料が短時間内で所望の温度に加熱され、また、熱が分子振動により生じるので、反応熱場の分布がより均一であり、生成物の形態がさらに均一であり、しかも、炭素材料が高いマイクロ波吸収性能を有するので、マイクロ波を高速で吸収し、マイクロ波を熱エネルギーに変換することができ、このため、マイクロ波合成方法により炭素材料・金属酸化物ナノ材料を製造すると、かかる時間が短く、産量がさらに大きくなり、品質がより高くなる。
【0064】
本発明の製造方法によれば、好ましくは、前記炭素材料と前記金属酸化物との合計重量を基準にして、前記炭素材料の使用量は0.5~20重量%であり、前記金属酸化物の使用量は80~99.5重量%であり、より好ましくは、前記炭素材料と前記金属酸化物との合計重量を基準にして、前記炭素材料の使用量は0.5~15重量%であり、前記金属酸化物の使用量は85~99.5重量%である。
【0065】
本発明の製造方法によれば、好ましくは、前記炭素材料と金属酸化物換算の前記金属酸化物前駆体との合計重量を基準にして、前記炭素材料の使用量は0.5~20重量%であり、金属酸化物換算の前記金属酸化物前駆体の使用量は80~99.5重量%であり、より好ましくは、前記炭素材料と金属酸化物換算の前記金属酸化物前駆体との合計重量を基準にして、前記炭素材料の使用量は0.5~15重量%であり、金属酸化物換算の前記金属酸化物前駆体の使用量は85~99.5重量%である。
【0066】
本発明の製造方法によれば、前記炭素材料は本分野で通常使用される各種の炭素材料であってもよく、好ましくは、前記炭素材料は、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン及びカーボンブラックのうちの1種又は2種以上である。
【0067】
さらに、本発明の発明者らは、鋭意研究を行った結果、前記金属酸化物が、WO3と、SnO2、Fe2O3、TiO2、CuO、MoO3及びZnOから選択される1種又は2種以上とを含有する場合、ガス感受性をさらに向上できることも見出だした。より好ましくは、前記金属酸化物は、WO3と、SnO2、Fe2O3、TiO2、CuO及びMoO3から選択される1種又は2種以上とを含有する。
【0068】
本発明によれば、アルコール可溶性塩は、前記熱処理後に前記金属酸化物を形成することができ、かつアルコール溶媒に可溶であるか、又は共溶媒の存在下でアルコール溶媒に可能である各種の塩であってもよい。また、共溶媒を使用する場合、好ましくは使用される共溶媒は、熱処理中に除去され得る共溶媒であり、これにより、共溶媒を使用しても触媒の製造や製品の性能に悪影響を与えることがない。
【0069】
本発明によれば、前記アルコール可溶性タングステン塩として、例えば、塩化タングステン、ヨウ化タングステン及びヘキサカルボニルタングステンのうちの1種又は2種以上が挙げられる。
【0070】
本発明によれば、前記アルコール可溶性錫塩として、例えば、塩化錫、臭化錫及びヨウ化錫のうちの1種又は2種以上が挙げられる。
【0071】
本発明によれば、前記アルコール可溶性鉄塩として、例えば、塩化鉄、臭化鉄、硝酸鉄及びカルボニル鉄のうちの1種又は2種以上が挙げられる。
【0072】
本発明によれば、前記アルコール可溶性チタン塩として、例えば、塩化チタン、臭化チタン及びヨウ化チタンのうちの1種又は2種以上が挙げられる。
【0073】
本発明によれば、前記アルコール可溶性銅塩として、例えば、塩化銅、臭化銅及び硝酸銅のうちの1種又は2種以上が挙げられる。
【0074】
本発明によれば、前記アルコール可溶性モリブデン塩として、例えば、塩化モリブデン、臭化モリブデン及びヨウ化モリブデンのうちの1種又は2種以上が挙げられる。
【0075】
本発明によれば、前記アルコール可溶性亜鉛塩として、例えば、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛及び硝酸亜鉛のうちの1種又は2種以上が挙げられる。
【0076】
本発明によれば、ガス感受性をさらに向上させることから、好ましくは、前記金属酸化物の全量に対して、前記タングステン酸化物の含有量は好ましくは60~99.5重量%であり、より好ましくは70~99.5重量%である。さらに、金属酸化物換算で、前記金属酸化物前駆体中、アルコール可溶性タングステン塩の使用量は好ましくは60~99.5重量%、より好ましくは70~99.5重量%である。
【0077】
本発明の製造方法によれば、前記アルコール溶媒は、例えば、エタノール、エチレングリコール及びグリセリンのうちの1種又は2種以上であってもよい。好ましくは、前記アルコール溶媒はエタノールである。
【0078】
本発明の製造方法によれば、好ましくは、前記炭素材料と、金属酸化物及び金属酸化物前駆体との合計重量100重量部に対して、前記溶媒の使用量は500~100000重量部である。
【0079】
好ましくは、前記熱処理条件は、マイクロ波電200~1800W、熱処理温度160~220℃、熱処理時間10~240分間、より好ましくは、マイクロ波電力200~1200W、熱処理温度180~200℃、熱処理時間30~150分間、さらに好ましくは、マイクロ波電力300~1000W、熱処理温度180~190℃、熱処理時間40~140分間を含む。
【0080】
本発明の製造方法によれば、熱処理後、固液分離し、前記固液分離方法は、本分野で通常固体と液体の分離に使用される各種の方法、例えば遠心分離やろ過を採用してもよい。
【0081】
本発明の製造方法によれば、好ましくは、該方法は、分離により得られた炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料を洗浄、乾燥するステップをさらに含む。上記の洗浄は、熱処理に使用される溶媒を用いて行うことが好ましく、例えばエタノールを使用してもよい。上記の乾燥は、例えば、60~100℃で2~10時間乾燥してもよい。
【0082】
本発明の製造方法によれば、好ましくは、該方法は、前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料を還元剤で還元処理するステップをさらに含むか、又は、前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料を熱還元するステップをさらに含む。還元ステップにより、エネルギー消費量がさらに低下し、しかも、感度が向上する。
【0083】
前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料を還元剤で還元処理する場合、好ましくは、炭素元素換算の前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料と還元剤との質量比が、1:0.1~20、より好ましくは1:0.1~10である。
【0084】
好ましくは、前記還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、ヨウ化水素、臭化水素、チオ尿素、エタンチオール、過硫酸ナトリウム、ヒドラジン水和物、ピロール、尿素、エタノール、アスコルビン酸、グルコース、アルミニウム-塩酸、鉄-塩酸、亜鉛-水酸化ナトリウム、亜鉛-アンモニア水、グリシン、リジン及び緑茶のうちの1種又は2種以上である。
【0085】
好ましくは、前記還元処理条件は、還元処理温度200~500℃、還元処理時間0.1~12hを含む。
【0086】
前記炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料を高温で熱還元するときに、高温還元温度は200~1000℃とし、温度が高いほど、還元の程度が高い。しかし、温度が金属酸化物の熔点を超えるほど高すぎると、材料の形態が変わり、ガス感受性が影響を受ける。加熱温度が1000℃よりも高い場合、金属酸化物と炭素材料とは炭素熱反応を起こし、生成物の組成に影響を与える。温度が200℃よりも低い場合、還元の程度が不十分であるが、抵抗が高い。
【0087】
本発明の第3態様によれば、ジュールの原理による自己加熱型ガスセンサーを提供し、該自己加熱型ガスセンサーは、チップ担体と、前記チップ担体上に担持されたガス感受性材料とを含み、前記ガス感受性材料は、本発明のジュールの原理による自己加熱型ガスセンサー用のガス感受性材料である。
【0088】
好ましくは、前記チップ担体はセラミックチューブ及び/又はMEMSチップである。
【0089】
前記MEMSチップは、例えば、
図1に示すシリコン基板3とシリコン基板3上に形成された金属櫛型電極(interdigitated electrodes)2とを含むチップであってもよい。ここで、金属櫛型電極2は電流伝達に用いられ、シリコン基板3は、MEMSチップ全体を支持するとともに、絶縁や断熱の役割を果たす。
【0090】
好ましくは、ドリップ法、エアスプレー法、マイクロスプレー法、堆積法又は塗布法によって前記ガス感受性材料が前記チップ担体上に担持される。
【0091】
塗布法により塗布を行うに先立って、適切な有機溶媒(例えばエタノール、アセトン、グリセリン、テルピネオールなど)を用いて分散させた後、めのう乳鉢にて粉砕し、ガス感受性材料を有機溶媒に均一に分散させる必要がある。上記の有機溶媒と前記ガス感受性材料との質量比が0.1~10:1であってよいが、好ましくは1:1である。有機溶媒が多すぎると、ガス感受性材料分散液はが薄すぎて、基板上に塗布できなくなる。有機溶媒の量が少なすぎると、ガス感受性材料分散液は粘度が高すぎて、基板上に塗布された材料の分布が不均一になり、ガス感受性が影響を受ける。有機溶媒は種類によって沸点が異なり、沸点は好ましくは80~250℃であり、沸点が低すぎる有機溶媒は乾燥過程で揮発が速すぎ、クラックを引き起こしやすい。沸点が高すぎる有機溶媒は、揮発が遅すぎ、除去されにくい。
【0092】
本発明の第4態様によれば、本発明のガス感受性材料の、ジュールの原理による自己加熱型ガスセンサーへの使用を提供する。
【0093】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0094】
実施例1
酸化グラフェン15mg、塩化タングステン0.80g及びSnCl4 0.20gを正確に秤量し、500mLビーカーに投入し、無水エタノール300mLを注入し、約30min磁気撹拌した後、細胞破砕機を用いて30min超音波破砕し、得た混合溶液をそれぞれ10個の50mLテフロン反応釜に入れて、マイクロ波合成装置を用いて800Wで200℃に加熱し、2h保温した。反応により得られた生成物を遠心分離し、脱イオン水及び無水エタノールで3回洗浄した。その後、遠心分離後のサンプルをオーブンに入れて、80℃で6hベークし、炭素材料の含有量が2.5重量%、金属酸化物の含有量が97.5重量%、抵抗が30kΩ、金属酸化物の全量に対して、前記三酸化タングステンの含有量が80重量%、前記酸化錫の含有量が20重量%である炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料A1(フレーク状ナノ材料、厚さ1~2nm、両点間の最大直線距離1~5μm)を得た。
【0095】
図2は実施例1で得られたフレーク状ナノ材料の走査型電子顕微鏡像である。
図3は実施例1で得られたフレーク状ナノ材料が炭素材料表面に形成されたナノワイヤのTEM写真である。
図2及び
図3に示すように、該フレーク状ナノ材料の構造としては炭素材料の表面にナノワイヤが形成されており、該ナノワイヤは、直径20~30nm、長さ600~4000nmであった。
【0096】
また、XPS試験を行った結果、上記のナノワイヤには、酸素、タングステン及び錫の元素が含有されており、XPSスペクトル中のピーク位置から明らかなように、タングステン及び錫の元素の原子価はそれぞれ+6及び+4価であり、XRD試験を行い、上記のナノワイヤのピーク位置をPDFカードにおける三酸化タングステン及び酸化錫と比較した結果、全てのピークがWO3の結晶形構造(JCPDs : 83-0950)に帰属できることが明らかであり、Snの酸化物の回折ピークが検出されておらず、これは、Snが単独の結晶相を形成しておらず、イオンの形でWO3格子に嵌め込まれることを示し、HRTEM試験を行った結果、ドープナノワイヤの格子間隔が0.387nmであり、WO3に対応する(001)結晶面が観察されたが、SnO2に対応する結晶面がなく、このことから、該ナノワイヤは酸化錫が三酸化タングステンナノワイヤにドープされた三酸化タングステンドープナノワイヤであることが分かった。
【0097】
実施例2
カーボンナノチューブ15mg、塩化タングステン0.80g及びSnCl4 0.20gを正確に秤量し、500mLビーカーに投入し、無水エタノール300mLを注入し、約30min磁気撹拌した後、細胞破砕機を用いて30min超音波破砕し、得た混合溶液をそれぞれ10個の50mLテフロン反応釜に入れて、マイクロ波合成装置を用いて800Wで200℃に加熱し、2h保温した。反応により得られた生成物を遠心分離し、脱イオン水及び無水エタノールで3回洗浄した。その後、遠心分離後のサンプルをオーブンに入れて、80℃で6hベークし、炭素材料の含有量が2.5重量%、金属酸化物の含有量が97.5重量%、抵抗が56kΩ、金属酸化物の全量に対して、前記三酸化タングステンの含有量が80重量%、前記酸化錫の含有量が20重量%である炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料A2(糸状ナノ材料、直径5~15nm、長さ10~30μm)を得た。
また、実施例2で得られた糸状ナノ材料の走査型電子顕微鏡像及びTEM写真から分かるように、該糸状ナノ材料の構造は、炭素材料の表面にナノワイヤが形成されており、該ナノワイヤは直径20~30nm、長さ600~4000nmであった。
【0098】
また、XPS試験を行った結果、上記のナノワイヤには、酸素、タングステン及び錫の元素が含有されており、XPSスペクトル中のピーク位置から明らかなように、タングステン及び錫の元素の原子価はそれぞれ+6及び+4価であり、XRD試験を行い、上記のナノワイヤのピーク位置をPDFカードにおける三酸化タングステン及び酸化錫と比較した結果、全てのピークがWO3の結晶形構造(JCPDs : 83-0950)に帰属できることが明らかであり、Snの酸化物の回折ピークが検出されておらず、これは、Snが単独の結晶相を形成しておらず、イオンの形でWO3格子に嵌め込まれることを示し、HRTEM試験を行った結果、ドープナノワイヤの格子間隔が0.387nmであり、WO3に対応する(001)結晶面が観察されたが、SnO2に対応する結晶面がなく、このことから、該ナノワイヤは酸化錫が三酸化タングステンナノワイヤにドープされた三酸化タングステンドープナノワイヤであることが分かった。
【0099】
実施例3
酸化グラフェン15mg、塩化タングステン0.8g及び塩化鉄0.2gを正確に秤量し、500mLビーカーに投入し、無水エタノール300mLを注入し、約30min磁気撹拌した後、細胞破砕機を用いて30min超音波破砕し、得た混合溶液をそれぞれ10個の50mLテフロン反応釜に入れて、マイクロ波合成装置を用いて800Wで200℃に加熱し、2h保温した。反応により得られた生成物を遠心分離し、脱イオン水及び少量無水エタノールで3回洗浄した。その後、遠心分離後のサンプルをオーブンに入れて、80℃で6hベークし、炭素材料の含有量が2.5重量%、金属酸化物の含有量が97.5重量%、抵抗が33kΩ、金属酸化物の全量に対して、前記三酸化タングステンの含有量が70重量%、前記三二酸化鉄の含有量が30重量%である炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料A4(フレーク状ナノ材料、厚さ1~2nm、両点間の最大直線距離1~5μm)を得た。
【0100】
図4は実施例3で得られたフレーク状ナノ材料が炭素材料表面に形成されたナノワイヤのTEM写真である。実施例3で得られた糸状ナノ材料の走査型電子顕微鏡像及びTEM写真から分かるように、該フレーク状ナノ材料の構造は炭素材料の表面にナノワイヤが形成されており、該ナノワイヤは直径20~30nm、長さ600~4000nmであった。
【0101】
また、XPS試験を行った結果、上記のナノワイヤには、酸素、タングステン及び鉄の元素が含有されており、XPSスペクトル中のピーク位置から明らかなように、タングステン及び鉄の元素の原子価はそれぞれ+6及び+3価であり、XRD試験を行い、上記のナノワイヤのピーク位置をPDFカードにおける三酸化タングステン及び三二酸化鉄と比較した結果、全てのピークがWO3の結晶形構造(JCPDs : 83-0950)に帰属できることが明らかになり、Feの酸化物の回折ピークが検出されておらず、これは、Feが単独の結晶相を形成しておらず、イオンの形でWO3格子に嵌め込まれることを示し、HRTEM試験を行った結果、ドープナノワイヤの格子間隔が0.387nmであり、WO3に対応する(001)結晶面が観察されたが、Fe2O3に対応する結晶面がなく、このことから、該ナノワイヤは三二酸化鉄が三酸化タングステンナノワイヤにドープされた三酸化タングステンドープナノワイヤであることが分かった。
【0102】
実施例4
酸化グラフェン15mg、塩化タングステン0.8g、及び塩化銅0.2gを正確に秤量し、500mLビーカーに投入し、無水エタノール300mLを注入し、約30min磁気撹拌した後、細胞破砕機を用いて30min超音波破砕し、得た混合溶液をそれぞれ10個の50mLテフロン反応釜に入れて、マイクロ波合成装置を用いて800Wで200℃に加熱し、2h保温した。反応により得られた生成物を遠心分離し、脱イオン水及び無水エタノールで3回洗浄した。その後、遠心分離後のサンプルをオーブンに入れて、80℃で6hベークし、炭素材料の含有量が2.5重量%、金属酸化物の含有量が97.5重量%、抵抗が61kΩ、金属酸化物の全量に対して、前記三酸化タングステンの含有量が80重量%、前記酸化銅の含有量が20重量%である炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料A5(フレーク状ナノ材料、厚さ1~2nm、両点間の最大直線距離1~5μm)を得た。
【0103】
図5は実施例4で得られたフレーク状ナノ材料が炭素材料表面に形成されたナノワイヤのTEM写真である。実施例4で得られた糸状ナノ材料の走査型電子顕微鏡像及びTEM写真から分かるように、該フレーク状ナノ材料の構造は炭素材料の表面にナノワイヤが形成されており、該ナノワイヤは直径20~30nm、長さ600~4000nmであった。
【0104】
また、XPS試験を行った結果、上記のナノワイヤには、酸素、タングステン及び銅の元素が含有されており、XPSスペクトル中のピーク位置から明らかなように、タングステン及び銅の元素の原子価はそれぞれ+6及び+2価であり、XRD試験を行い、上記のナノワイヤのピーク位置をPDFカードにおける三酸化タングステン及び酸化銅と比較した結果、全てのピークがWO3の結晶形構造(JCPDs : 83-0950)に帰属できることが明らかであり、Cuの酸化物の回折ピークが検出されておらず、これは、Cuが単独の結晶相を形成しておらず、イオンの形でWO3格子に嵌め込まれることを示し、HRTEM試験を行った結果、ドープナノワイヤの格子間隔が0.387nmであり、WO3に対応する(001)結晶面が観察されたが、CuOに対応する結晶面がなく、このことから、該ナノワイヤは酸化銅が三酸化タングステンナノワイヤにドープされた三酸化タングステンドープナノワイヤであることが分かった。
【0105】
実施例5
酸化グラフェン15mg、塩化タングステン0.8g、及び四塩化チタン0.2gを正確に秤量し、500mLビーカーに投入し、無水エタノール300mLを注入し、約30min磁気撹拌した後、細胞破砕機を用いて30min超音波破砕し、得た混合溶液をそれぞれ10個の50mLテフロン反応釜に入れて、マイクロ波合成装置を用いて800Wで200℃に加熱し、2h保温した。反応により得られた生成物を遠心分離し、脱イオン水及び無水エタノールで3回洗浄した。その後、遠心分離後のサンプルをオーブンに入れて、80℃で6hベークし、炭素材料の含有量が2.5重量%、金属酸化物の含有量が97.5重量%、抵抗が55kΩ、金属酸化物の全量に対して、前記三酸化タングステンの含有量が84.7重量%、前記二酸化チタンの含有量が15.3重量%である炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料A6(フレーク状ナノ材料、厚さ1~2nm、両点間の最大直線距離1~5μm)を得た。
【0106】
図6は実施例5で得られたフレーク状ナノ材料が炭素材料表面に形成されたナノワイヤのTEM写真である。実施例5で得られた糸状ナノ材料の走査型電子顕微鏡像及びTEM写真から分かるように、該フレーク状ナノ材料の構造は炭素材料の表面にナノワイヤが形成されており、該ナノワイヤは直径20~30nm、長さ600~4000nmであった。
【0107】
また、XPS試験を行った結果、上記のナノワイヤには、酸素、タングステン及びチタンの元素が含有されており、XPSスペクトル中のピーク位置から明らかなように、タングステン及びチタンの元素の原子価はそれぞれ+6及び+4価であり、XRD試験を行い、上記のナノワイヤのピーク位置をPDFカードにおける三酸化タングステン及び二酸化チタンと比較した結果、全てのピークがWO3の結晶形構造(JCPDs : 83-0950)に帰属できることが明らかであり、Tiの酸化物の回折ピークが検出されておらず、これは、Tiが単独の結晶相を形成しておらず、イオンの形でWO3格子に嵌め込まれることを示し、HRTEM試験を行った結果、ドープナノワイヤの格子間隔が0.387nmであり、WO3に対応する(001)結晶面が観察されたが、TiO2に対応する結晶面がなく、このことから、該ナノワイヤは二酸化チタンが三酸化タングステンナノワイヤにドープされた三酸化タングステンドープナノワイヤであることが分かった。
【0108】
実施例6
酸化グラフェン15mg、塩化タングステン0.8g、及び塩化モリブデン0.2gを正確に秤量し、500mLビーカーに投入し、無水エタノール300mLを注入し、約30min磁気撹拌した後、細胞破砕機を用いて30min超音波破砕し、得た混合溶液をそれぞれ10個の50mLテフロン反応釜に入れて、マイクロ波合成装置を用いて800Wで200℃に加熱し、2h保温した。反応により得られた生成物を遠心分離し、脱イオン水及び無水エタノールで3回洗浄した。その後、遠心分離後のサンプルをオーブンに入れて、80℃で6hベークし、炭素材料の含有量が2.5重量%、金属酸化物の含有量が97.5重量%、抵抗が50kΩ、金属酸化物の全量に対して、前記三酸化タングステンの含有量が81.6重量%、前記三酸化モリブデンの含有量が18.4重量%である炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料A7(フレーク状ナノ材料、厚さ1~2nm、両点間の最大直線距離1~5μm)を得た。
【0109】
実施例6で得られた糸状ナノ材料の走査型電子顕微鏡像及びTEM写真から分かるように、該フレーク状ナノ材料の構造は炭素材料の表面にナノワイヤが形成されており、該ナノワイヤは直径20~30nm、長さ600~4000nmであった。
【0110】
また、XPS試験を行った結果、上記のナノワイヤには酸素、タングステン及びモリブデンの元素が含有されており、XPSスペクトル中のピーク位置から明らかなように、タングステン及びモリブデンの元素の原子価はそれぞれ+6及び+6価であり、XRD試験を行い、上記のナノワイヤのピーク位置をPDFカードにおける三酸化タングステン及び三酸化モリブデンと比較した結果、全てのピークがWO3の結晶形構造(JCPDs : 83-0950)に帰属できることが明らかであり、Moの酸化物の回折ピークが検出されておらず、これは、Moが単独の結晶相を形成しておらず、イオンの形でWO3格子に嵌め込まれることを示し、HRTEM試験を行った結果、ドープナノワイヤの格子間隔が0.387nmであり、WO3に対応する(001)結晶面が観察されたが、MoO3に対応する結晶面がなく、このことから、該ナノワイヤは三酸化モリブデンが三酸化タングステンナノワイヤにドープされた三酸化タングステンドープナノワイヤである子tが分かった。
【0111】
実施例7
実施例1の方法によって炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料A1を製造し、その後、炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料A1 100mgを正確に秤量し、サンプルを50mlビーカーに入れて、ヒドラジン水和物200μLを滴下し、ラップフィルムでシールして、水浴鍋に入れ、90℃で5h保温し、グラフェンの還元程度を向上させた炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料A8を得た。
【0112】
比較例1
塩化タングステン及びSnCl4を塩化タングステンに変更した以外、実施例1の方法と同様にして、炭素材料の含有量が0.4重量%、金属酸化物の含有量が99.6重量%、抵抗が120kΩである還元グラフェンWO3ナノ材料D1を得た。
【0113】
比較例2
塩化タングステン及びSnCl4を塩化タングステンに変更した以外、実施例1の方法と同様にして、炭素材料の含有量が25重量%、金属酸化物の含有量が75重量%、抵抗が500kΩである還元グラフェンWO3ナノ材料D2を得た。
【0114】
比較例3
酸化グラフェン15mg、塩化タングステン1gを正確に秤量し、500mLビーカーに投入し、無水エタノール300mLを注入し、約30min磁気撹拌した後、細胞破砕機を用いて30min超音波破砕し、得た混合溶液をそれぞれ10個の50mLテフロン反応釜に入れて、マイクロ波合成装置を用いて800Wで200℃に加熱し、2h保温した。反応により得られた生成物を遠心分離し、脱イオン水及び無水エタノールで3回洗浄した。その後、遠心分離後のサンプルをオーブンに入れて、80℃で6hベークし、炭素材料の含有量が2.5重量%、金属酸化物の含有量が97.5重量%、抵抗が40kΩである還元グラフェンWO3ナノ材料D3(フレーク状ナノ材料、厚さ1~2nm、両点間の最大直線距離1~5μm)を得た。
【0115】
比較例4
カーボンナノチューブ15mg、塩化タングステン1gを正確に秤量し、500mLビーカーに投入し、無水エタノール300mLを注入し、約30min磁気撹拌した後、細胞破砕機を用いて30min超音波破砕し、得た混合溶液をそれぞれ10個の50mLテフロン反応釜に入れて、マイクロ波合成装置を用いて800Wで200℃に加熱し、2h保温した。反応により得られた生成物を遠心分離し、脱イオン水及び無水エタノールで3回洗浄した。その後、遠心分離後のサンプルをオーブンに入れて、80℃で6hベークし、炭素材料の含有量が2.5重量%、金属酸化物の含有量が97.5重量%、抵抗が60kΩであるカーボンナノチューブWO3ナノ材料D4(糸状ナノ材料、直径5~15nm、長さ10~30μm)を得た。
【0116】
比較例5
塩化タングステンを塩化銅に変更した以外、比較例3の方法と同様にして、炭素材料の含有量が2.5重量%、金属酸化物の含有量が97.5重量%、抵抗が70kΩである還元グラフェン酸化銅ナノ材料D6(フレーク状ナノ材料、厚さ1~2nm、両点間の最大直線距離1~5μm)を得た。
【0117】
比較例6
塩化タングステンを塩化モリブデンに変更した以外、比較例3の方法と同様にして、炭素材料の含有量が2.5重量%、金属酸化物の含有量が97.5重量%、抵抗が80kΩである還元グラフェン酸化モリブデンナノ材料D7(フレーク状ナノ材料、厚さ1~2nm、両点間の最大直線距離1~5μm)を得た。
【0118】
比較例7
商業的に購入:北京艾立特科技有限公司より購入した平面型多層電極。
【0119】
比較例8
マイクロ波合成中に、無水エタノールを脱イオン水に変更した以外、実施例1の方法と同様にして、炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料D8を得た。
【0120】
図7は比較例8で得られたナノ材料の走査型電子顕微鏡像であり、
図7から分かるように、エタノールを水に変更したところ、棒状及び球状のナノWO
3構造が得られた。
【0121】
比較例9
マイクロ波合成中に、界面活性剤として尿素を加えた以外、実施例1の方法と同様にして、炭素材料・金属酸化物複合ナノ材料D9を得た。走査型電子顕微鏡像から分かるように、非規則的な半管状のナノWO3構造が得られた。
【0122】
測定例1
実施例1~7で得られたナノ材料A1~A7及び比較例1~6で得られた材料D1~D6をそれぞれ使用して、ガスセンサーを製造し、その製造方法は以下に示される。
【0123】
ナノ材料100mgを正確に秤量し、めのう乳鉢に入れて、テルピネオール100μlを加え、10min粉砕し、毛筆を用いて粉砕したスラリーをMEMSチップの金属櫛型電極2に均一に塗布してガス感受性材料層1を形成し、その後、オーブンで80℃に加熱し、12h保温した。ワイヤーボンダーによってMEMSチップを測定ベースに接続し、ベースを老化ステージに差し込み、400℃で7日間老化し、ガスセンサーB1~B7及びDB1~DB6を得た。また、北京艾立特科技有限公司より購入した平面型多層電極をDB7とした。
【0124】
図1に示すように、パワーメータ4及びオーム計5をガスセンサーに接続し、パワーメータで電圧を供給し、ガスセンサーB1~B9及びDB1~DB8を25℃から加熱し、各温度の条件下での電力を得て、その結果を表1に示す。
【0125】
【0126】
測定例2
ガスセンサーB1~B7及びDB1~DB9をそれぞれ密閉室に入れて、パワーメータ及びオーム計に接続し、このときの電圧及び電流を記録し、オームの法則によってセンサーの抵抗R0を得た後、密閉室へ10ppmの硫化水素ガスを導入し、ガスセンサーの抵抗が小さくなり、抵抗が安定になった後、このときのセンサーの抵抗R1を記録し、ガスセンサーの応答値S=(R0-R1)/R0*100%とした、応答時間t1は抵抗が90%低下したときの時間であり、その後、硫化水素ガスの導入を停止し、室内へ空気を導入し、これにより、センサーの抵抗が回復し始め、回復時間t2は抵抗が90%回復するのに必要な時間であり、過程全体に亘る応答値について時間に対してプロットし、電圧5Vの場合のガスセンサーの硫化水素に対する応答値及び応答回復時間を求め、その結果を表2に示す。
【0127】
【0128】
以上は本発明の好適な実施方式を詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の技術的構想の範囲内で、本発明の技術案に対して、各技術的特徴を任意の適切な方式で組み合わせたものを含め、複数の簡単な変形を行うことができ、これらの簡単な変形及び組み合わせも本発明で開示された内容とみなすべきであり、全て本発明の特許範囲に属する。
【符号の説明】
【0129】
1 ガス感受性材料層
2 金属櫛型電極
3 シリコン基板
4 パワーメータ
5 オーム計