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特許7445032エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、フィルム、成形体、発泡体、及びシート
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  • 特許-エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、フィルム、成形体、発泡体、及びシート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、フィルム、成形体、発泡体、及びシート
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/02 20060101AFI20240228BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20240228BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240228BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20240228BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C08F210/02
B65D65/02 E
C08J5/18 CES
C08J9/04 101
C08L23/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023011537
(22)【出願日】2023-01-30
(65)【公開番号】P2023113129
(43)【公開日】2023-08-15
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2022015115
(32)【優先日】2022-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 理久
(72)【発明者】
【氏名】那須 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】柿原 一郎
(72)【発明者】
【氏名】菊地 章友
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-017579(JP,A)
【文献】特開2021-143337(JP,A)
【文献】特開2017-119816(JP,A)
【文献】特開2004-035756(JP,A)
【文献】特開平11-152301(JP,A)
【文献】特開2000-309607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 210/02
B65D 65/02
C08J 5/18
C08J 9/04
C08L 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件(1)及び(2)を満たす酢酸ビニル単位を含むエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂;
(1)JIS K7192に従って測定した酢酸ビニル含有量が、8質量%以上20質量%以下である。
(2)13C-NMRから求められる連鎖酢酸ビニル含有率が、0.05/100C以上0.38/100C以下である。
【請求項2】
JIS K7210に従って、温度190℃、荷重2.16kgにおいて測定したメルトフローレイトが、0.5g/10分以上20g/10分以下である、
請求項1に記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂。
【請求項3】
酸化防止剤の含有量が、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の総量に対して2,500ppm以下である、
請求項1又は2に記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂。
【請求項4】
温度40℃、湿度90%の条件にて恒温恒湿器に30日間暴露後、JIS K7373:2006に準拠して測定した黄変度が0.3以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂。
【請求項5】
温度40℃、湿度90%の条件にて恒温恒湿器に30日間暴露後、JIS K7373:2006に準拠して測定した黄変度が-1.5以上である、
請求項1~4のいずれか一項に記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂。
【請求項6】
温度300℃の条件において熱重量測定装置で6時間、窒素雰囲気で加熱した後の熱重量損失(Lw)が20wt%以下である、
請求項1~5のいずれか一項に記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂。
【請求項7】
熱重量測定装置で30℃を始点として、5℃/minの昇温速度、窒素雰囲気で加熱した後の300℃における揮発成分熱重量損失(Vc)が、0.7wt%以下である、
請求項1~6のいずれか一項に記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂。
【請求項8】
分子量分布(Mw/Mn)が3.0以上7.0以下である、
請求項1~7のいずれか一項に記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を含む、
フィルム。
【請求項10】
包装用及び/又は溶融袋用である、
請求項9に記載のフィルム。
【請求項11】
2以上の層を有する、
請求項9又は10に記載のフィルム。
【請求項12】
ストレッチフィルムである、
請求項9~11のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を含む、
成形体。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項に記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を含む、
発泡体。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか一項に記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を含む、
シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、フィルム、成形体、発泡体、及びシートに関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は、柔軟性、透明性、ヒートシール性、耐候性、及び耐久性等の性能に優れることから、フィルムや緩衝材等として広範な産業分野で使用されており、例えば、農業用ポリオレフィン系特殊フィルム、ポリオレフィンラップ、ストレッチフィルム、保護フィルム、溶融袋、車載部品の緩衝材や泥除けシート、建築土木用止水シート、スポイト、電線人工芝マットやカラーコーン(登録商標)等として使用されている。
【0003】
近年、品質に対する要求特性は年々高まっていることに加えて、社会的に環境問題への関心も高まっている。環境問題への対応としては、環境負荷の小さい素材の開発、バイオマス由来の樹脂の開発、及び樹脂のリサイクル技術の開発等が望まれている。
【0004】
例えば、特許文献1では、製膜加工性に優れ、フィルムにしたときに外観に優れる、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂及びフィルムが提案されている。
【0005】
また、例えば、特許文献2では、バイオマスの樹脂やリサイクルされた複合樹脂の脆性を克服するため、柔軟性の高いエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を配合することにより、耐衝撃性や破断伸びの改良に用いられ、フィルムや成形体等の様々な用途の環境負荷の低減に貢献している旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6933755号
【文献】特開2021-80428号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示されるように、高まる品質の要求特性に応えるべく、製膜加工性に優れ、フィルムにした際に外観に優れるエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂及びフィルムが開発されたものの、環境問題の対応として求められる、リサイクルした際の耐フィッシュアイ増加率、耐強度劣化性、耐黄変性、及び耐汚染性等には依然として課題を有している。
【0008】
また、特許文献2においても、酢酸ビニル含有量が比較的高濃度で、比較的柔軟性が高いエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を複数調合することで、リサイクルされた複合樹脂の脆性を克服しているが、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂そのものをリサイクルした際の耐フィッシュアイ増加率、耐強度劣化性、耐黄変性、及び耐汚染性等には改良の課題を有している。
【0009】
ここで、フィッシュアイとは、フィルム中にゲル状物があることによりその周辺部位が凹凸部となっている状態を意味し、肉眼、偏光板、又は顕微鏡で見た場合に魚の目のようにみえることに由来する樹脂フィルムに生じ得る問題点の一つである。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高品質かつリサイクル性能を改良するため、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のリサイクル品が、耐フィッシュアイ増加率、耐強度劣化性、耐黄変性、及び耐汚染性に優れ、かつ、フロス量が少ないエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、フィルム、成形体、発泡体、及びシートを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明者らは、13C-NMRにより、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の分子構造を鋭意解析した結果、連鎖酢酸ビニルのシグナル位置を推定することができ、その連鎖酢酸ビニル含有率がエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のリサイクル性能に影響することが分かってきた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂が、特定の酢酸ビニル含有量と、特定の連鎖酢酸ビニル含有率とを有することにより、該エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のリサイクル品が、耐フィッシュアイ増加率、耐強度劣化性、耐黄変性、及び耐汚染性に優れ、かつ、フロス量が少ないエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を得ることができ、上記課題が解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
下記条件(1)及び(2)を満たす酢酸ビニル単位を含むエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂;
(1)JIS K7192に従って測定した酢酸ビニル含有量が、8質量%以上20質量 %以下である。
(2)13C-NMRから求められる連鎖酢酸ビニル含有率が、0.05/100C以上0 .38/100C以下である。
[2]
JIS K7210に従って測定したメルトフローレイトが、0.5g/10分以上20g/10分以下である、
[1]に記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂。
[3]
酸化防止剤の含有量が、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の総量に対して2,500ppm以下である、
[1]又は[2]に記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂。
[4]
温度40℃、湿度90%の条件にて恒温恒湿器に30日間暴露後、JIS K7373:2006に準拠して測定した黄変度が0.3以下である、
[1]~[3]のいずれかに記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂。
[5]
温度40℃、湿度90%の条件にて恒温恒湿器に30日間暴露後、JIS K7373:2006に準拠して測定した黄変度が-1.5以上である、
[1]~[4]のいずれかに記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂。
[6]
温度300℃の条件において熱重量測定装置で6時間、窒素雰囲気で加熱した後の熱重量損失(Lw)が20wt%以下である、
[1]~[5]のいずれかに記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂。
[7]
熱重量測定装置で30℃を始点として、5℃/minの昇温速度、窒素雰囲気で加熱した後の300℃における揮発成分熱重量損失(Vc)が、0.7wt%以下である、
[1]~[6]のいずれかに記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂。
[8]
分子量分布(Mw/Mn)が3.0以上7.0以下である、
[1]~[7]のいずれかに記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂。
[9]
[1]~[8]のいずれかに記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を含む、
フィルム。
[10]
包装用及び/又は溶融袋用である、
[9]に記載のフィルム。
[11]
2以上の層を有する、
[9]又は[10]に記載のフィルム。
[12]
ストレッチフィルムである、
[9]~[11]のいずれかに記載のフィルム。
[13]
[1]~[8]のいずれかに記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を含む、
成形体。
[14]
[1]~[8]のいずれかに記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を含む、
発泡体。
[15]
[1]~[8]のいずれかに記載のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を含む、
シート。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、該エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のリサイクル品が、耐フィッシュアイ増加率、耐強度劣化性、耐黄変性、及び耐汚染性に優れ、かつ、フロス量が少ないエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、フィルム、成形体、発泡体、及びシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の13C-NMR測定結果の連鎖酢酸ビニル含有率の算出例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0017】
〔エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂〕
本実施形態のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は、JIS K7192に従って測定した酢酸ビニル含有量が8質量%以上20質量%以下の酢酸ビニル単位と、エチレン単位と、を含み、13C-NMRから求められる連鎖酢酸ビニル含有率が0.05/100C以上0.38/100C以下である。
【0018】
本発明者らが鋭意検討したところ、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は、所定の比率の酢酸ビニル単位を有し、かつ、連鎖酢酸ビニル含有率が一定範囲であることにより、特に、本実施形態のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のリサイクル品の、耐フィッシュアイ増加率、耐強度劣化性、耐黄変性、及び耐汚染性がより向上することが分かってきた。
【0019】
この理由は、特に限定されないが、例えば、連鎖酢酸ビニル含有率が比較的少ないことにより、分子間の結合エネルギーが低く熱分解しやすい分岐構造が少ないため、リサイクル時の熱分解・架橋等の際に熱劣化の確率が下がり、リサイクルした際の樹脂の黄変やフィッシュアイ率の増加等による樹脂の品質の悪化が抑制され、樹脂のリサイクル性能が向上すると考えられる。
【0020】
一方、連鎖酢酸ビニル含有率が一定以上あることにより、近傍に存在するアセトキシ基の分岐同士のカルボニル基とメチル基の双極子相互作用により、分子鎖の絡み合いが強まることで、押出機や成形等の加工の際に分子鎖の絡み合いが解けにくくなり、機械的強度の劣化が抑制され、樹脂のリサイクル性能が向上すると考えられる。
【0021】
本実施形態では、エチレン-酢酸ビニル共重合体に含まれる連鎖酢酸ビニル含有率を13C-NMRにより定義する。13C-NMRは、強い磁場の中に試料を置くことで、核スピンの向きを揃えた分子に対してパルス状のラジオ波を照射し、核磁気共鳴させた後、分子が励起前の安定状態に戻る際に発生する信号を検知して、分子構造等を解析するものであり、NMRスペクトルにおける対象のシグナルの位置や面積強度に応じて分子構造の定性・定量分析が可能である。
【0022】
以下、本実施形態のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂について詳説する。
【0023】
〔連鎖酢酸ビニル含有率〕
本実施形態における「連鎖酢酸ビニル含有率」の定義について以下詳説する。
【0024】
まず、文献(有機化合物のスペクトルによる同定法(第4版)1983年、訳者:荒木峻ら、頁242)を参考に13Cのシフト値を計算した場合、連鎖をしていない酢酸ビニル分岐のシグナルは75.3ppm付近、2連鎖以上の時には遮蔽効果により、連鎖をしていない酢酸ビニル分岐のシグナルに対して3ppm高磁場側にシフトした位置72.3ppm付近、3連鎖以上の時には遮蔽効果により、連鎖をしていない酢酸ビニル分岐のシグナルに対して6ppm高磁場側にシフトした位置69.3ppm付近にシグナルが観られることが分かる。
【0025】
図1に示すように、実際にエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の13C-NMR測定結果では、連鎖をしていない酢酸ビニル分岐のシグナルが74.4ppm付近、2連鎖以上の時には遮蔽効果により、連鎖をしていない酢酸ビニル分岐のシグナルに対して約3ppm高磁場側にシフトした位置71.6ppm付近、3連鎖以上の時には遮蔽効果により、連鎖をしていない酢酸ビニル分岐のシグナルに対して約4ppm高磁場側にシフトした位置70.7ppm付近に観られる。この71.6ppm付近および70.7ppm付近のシグナルの位置を連鎖酢酸ビニルのシグナルと帰属することができる。ここで、「付近」と定義した理由は、酢酸ビニル含有量により全体的にシグナルの位置が極僅かにシフトするためである。
【0026】
なお、13C-NMRに用いるエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(以下、試料、ともいう。)についての前処理としては、試料を秤量し、溶媒としてオルトジクロロベンゼン-d4を加えて130℃で240分振とうすることで溶解させることができる。
【0027】
以上を踏まえて、本実施形態における連鎖酢酸ビニル含有率の定義を以下に示す。
【0028】
(連鎖酢酸ビニル含有率の定義)
本実施形態において、連鎖酢酸ビニル含有率とは、13C-NMRの測定装置としてBruker社製AVANCE-500HDを用いて、観測核を13C、観測周波数を125.77MHz、パルス幅を5.0μsec、PDを5sec、測定温度を120℃、積算回数を8,000回、溶媒をオルトジクロロベンゼン-d4、試料濃度を5wt/vol%、及び、溶解温度を130℃とした上で、図1に示すように、13C-NMRスペクトルにより観測されるポリエチレンのメチレン炭素のシグナル29.9ppmをシグナル位置の基準とし、その面積強度を100として、71.6ppm付近と70.7ppm付近におけるそれぞれの面積強度の比率の和、によって定義される。
【0029】
ここで、上記「付近」に該当するか否かについては、シグナルがそのピーク幅中に71.6ppm及び/又は70.7ppmを含み得る程度に近接していることを意味する。具体的には、71.6ppm付近とは71.3~71.9ppm、70.7ppm付近とは70.4~71.0ppmであることが好ましい。
【0030】
連鎖酢酸ビニル含有率は、0.05/100C以上0.38/100C以下であり、好ましくは0.05/100C以上0.35/100C以下であり、より好ましくは0.10/100C以上0.30/100C以下である。連鎖酢酸ビニル含有率が0.05/100C以上であることにより、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のリサイクル品が耐強度劣化性に優れる。また、0.38/100C以下であることにより、リサイクル品の耐黄変性、耐フィッシュアイ増加率に優れる。
【0031】
ここで、連鎖酢酸ビニル含有率の単位である「/100C」とは、上述のとおり、13C-NMRスペクトルにより観測されるポリエチレンのメチレン炭素のシグナル29.9ppmをシグナル位置の基準とし、その面積強度を100とした場合の面積強度の比率を意味する。
【0032】
連鎖酢酸ビニル含有率を上記範囲内に調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、エチレン中に酢酸ビニルモノマーを均一に分散させた上で重合する方法が挙げられる。その具体的な手段としては、特に限定されないが、例えば、ラジカル重合開始剤をイソパラフィン等で希釈し、比較的低濃度のラジカル重合開始剤を添加して重合することにより、ポリエチレン鎖中への局所的な酢酸ビニル単位の導入を抑制でき、重合反応器の前段から後段にかけて比較的均一に重合が進み、酢酸ビニルの連続的な導入を抑制できるため、連鎖酢酸ビニル含有率を上記範囲内に調整することができる。
【0033】
また、連鎖酢酸ビニル含有率を上記範囲内に調整する他の方法としては、特に限定されないが、例えば、重合反応器より上流側で直前にある配管のバルブの開度を連続的に変化させること、重合反応器より上流側で直前にある配管内に網目状のスタティックミキサーを備えることにより、配管内を流れる一部の層流を乱し、乱流として均一化させることにより、エチレン中に酢酸ビニルモノマーを均一に分散させることができるため、連鎖酢酸ビニル含有率を上記範囲内に調整することができる。
【0034】
さらに、連鎖酢酸ビニル含有率を上記範囲内に調整する他の方法としては、特に限定されないが、例えば、目的の酢酸ビニル含有量に合わせ込むため、重合反応器前で酢酸ビニルモノマーをエチレンに添加する時、複数箇所から添加することで、エチレン中に酢酸ビニルモノマーを均一に分散させることができるため、連鎖酢酸ビニル含有率を上記範囲内に調整することができる。
【0035】
〔酢酸ビニル含有量〕
本実施形態のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の酢酸ビニル単位の含有量は、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の総量に対して、8質量%以上20質量%以下であり、好ましくは9質量%以上19質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上18質量%以下である。酢酸ビニル単位の含有量が、8質量%以上であることにより、リサイクルした際の耐強度劣化性に優れる。また、20質量%以下であることにより、耐熱性が優れるため、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のリサイクル品の熱劣化による耐フィッシュアイ増加率、耐黄変性に優れる。
【0036】
酢酸ビニル含有量を調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体を重合する工程における酢酸ビニルの添加量を適宜調整すること等が挙げられる。なお、酢酸ビニル含有量は、JIS K7192:1999に準拠し、基準試験法として、けん化と電位差滴定とにより検量線を作成し、対照試験法として、赤外分光法により酢酸ビニル換算することで測定することができる。より具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定する。
【0037】
〔メルトフローレイト〕
本実施形態のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のメルトフローレイトは、好ましくは0.5g/10min以上20g/10min以下であり、より好ましくは1g/10min以上17g/10min以下であり、さらに好ましくは2g/10min以上15g/10min以下である。メルトフローレイトが0.5g/10min以上であることにより、劣化しやすく揮発性の高い低分子量成分の量が少なくなる傾向にあり、リサイクルした際の熱劣化による耐黄変性や、特に、耐汚染性に優れる。また、20g/10min以下であることにより、押出機の剪断による樹脂発熱が少なく、分子鎖の絡み合いがほどけにくくなり、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のリサイクル品の耐強度劣化性に優れる。
【0038】
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のメルトフローレイトを調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体を重合する際、反応温度及び/又は反応圧力や連鎖移動剤の種類又は量等を調整する方法が挙げられる。より具体的には、エチレン-酢酸ビニル共重合体を重合する際、反応温度を上げるとエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のメルトフローレイトは大きくなる傾向にあり、反応圧力を上げるとエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のメルトフローレイトは小さくなる傾向にあり、連鎖移動剤の量を上げるとメルトフローレイトは大きくなる傾向にある。なお、メルトフローレイトは、JIS K7210:1999 コードD(温度=190℃、荷重=2.16kg)に準拠して測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定する。
【0039】
〔酸化防止剤〕
本実施形態のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の酸化防止剤の含有量は、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の総量に対して、好ましくは2,500ppm以下であり、より好ましくは2,000ppm以下であり、さらに好ましくは1,000ppm以下である。酸化防止剤の含有量が、2,500ppm以下であることにより、添加剤のブリードアウトが抑制されるため、成形品の内容物や接触する物の耐汚染性に優れる。また、例えば酸化防止剤由来の変性物である着色成分が少なくなり、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のリサイクル品の耐黄変性が優れる。
【0040】
また、本実施形態のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の酸化防止剤の含有量は、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の総量に対して、好ましくは300ppm以上であり、より好ましくは500ppm以上である。酸化防止剤の含有量が、300ppm以上であることにより、酸素によるエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の劣化を防ぎ、リサイクル及び成形時のフィッシュアイの発生が抑制されるため、該リサイクル品の耐フィッシュアイ増加率が優れる。
【0041】
酸化防止剤の含有量を調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体を重合する工程における酸化防止剤の添加量を適宜調整すること等が挙げられる。なお、酸化防止剤の含有量は、高速液体クロマトグラフで標準添加法により測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法等により測定することができる。
【0042】
〔黄変度〕
本実施形態のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の黄変度は、好ましくは-1.5以上0.3以下であり、より好ましくは-1.0以上0.3以下であり、さらに好ましくは-0.5以上0以下である。黄変度が、-1.5以上であることにより、色の変化が少ないため、成形片の見た目の変化が少なくエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のリサイクル品が耐黄変性に優れる。また、0.3以下であることにより、黄変が少なく該リサイクル品の耐黄変性により優れる。
【0043】
黄変度を調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体を重合する工程における酸化防止剤の添加量を調整すること、酢酸ビニルモノマーの重合禁止剤として一般的に添加されているハイドロキノンを蒸留し除いた後、重合に使用する方法が挙げられる。
【0044】
なお、黄変度は、JIS K7373に準拠して測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定する。
【0045】
〔熱重量損失(Lw)〕
本実施形態のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の熱重量損失(Lw)は、好ましくは20.0%以下であり、より好ましくは17.5%以下であり、さらに好ましくは15.0%以下である。熱重量損失(Lw)が20.0%以下であることにより、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のリサイクル品の熱劣化による耐黄変性、耐フィッシュアイ増加率に優れる。
【0046】
熱重量損失(Lw)を調整する方法としては、特に限定されないが、連鎖酢酸ビニルの含有率を少なくすることや、酸化防止剤を多く添加する方法が挙げられる。
【0047】
なお、熱重量損失(Lw)は、熱重量測定装置で測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定する。
【0048】
〔揮発成分熱重量損失(Vc)〕
本実施形態のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の揮発成分熱重量損失(Vc)は、好ましくは0.7%以下であり、より好ましくは0.6%以下であり、さらに好ましくは0.5%以下である。揮発成分熱重量損失(Vc)が0.7%以下であることにより、低分子量成分等の揮発しやすい成分の量が少ないため、ペレットのべたつきが少なくなり、配管輸送等での摩擦を低減することができるため、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のフロスの発生を抑制できる。また、成形品の内容物や接触する物の耐汚染性に優れる。
【0049】
揮発成分熱重量損失(Vc)を低減する方法としては、特に限定されないが、例えば、重合で得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のペレットを保存するサイロ内で比較的高温の乾燥空気を比較的長時間吹き付け、取り除く方法が挙げられる。また、特に限定されないが、揮発成分熱重量損失(Vc)を低減する他の方法としては、イソパラフィン等の溶剤を多量に添加すると、低分子量である揮発成分が増加してしまうため、比較的高濃度のラジカル重合開始剤を添加して重合する方法が挙げられる。
【0050】
なお、揮発成分熱重量損失(Vc)は、熱重量測定装置で測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定する。
【0051】
〔分子量分布(Mw/Mn)〕
本実施形態のエチレン-酢酸ビニル共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3.0以上7.0以下であり、より好ましくは4.0以上6.0以下である。分子量分布(Mw/Mn)が3.0以上であることにより、高剪断で押出する際に高粘度化による樹脂発熱を抑制することができるため、分子鎖の絡み合いがほどけにくく、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のリサイクル品の耐強度劣化性に優れる。また、7.0以下であることより、劣化しやすい低分子量成分の量が少ない傾向があり、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のリサイクル品が熱劣化による耐黄変性に優れる。
【0052】
分子量分布(Mw/Mn)を調整する方法としては、特に限定されないが、重合温度や重合圧力等より調整することができる。
【0053】
なお、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう。)により測定して、市販の単分散ポリスチレンを用いて作成した検量線に基づいて求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定する。
【0054】
〔エチレン単位〕
本実施形態のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のエチレン単位の含有率は、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の総量に対して、好ましくは80質量%超過92質量%未満であり、より好ましくは81質量%超過91質量%未満であり、さらに好ましくは82質量%超過90質量%未満である。エチレン単位の含有率が80質量%超過であることにより、耐熱性が優れるため、リサイクルした際の熱劣化による耐黄変性、耐フィッシュアイ増加率に優れる。また、92質量%未満であることにより、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のリサイクル品の耐強度劣化性に優れる。
【0055】
本実施形態のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は、エチレン単位、酢酸ビニル単位以外のモノマー単位を含んでいてもよい。その他のモノマー単位としては、特に限定されないが、例えば、プロピレン、ブタン等の単位が挙げられる。
【0056】
本実施形態のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は、2種類以上のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を任意の比率でドライブレンド、又はメルトブレンドしたものを使用することもできる。2種類以上のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を用いる場合、これら樹脂全体における、酢酸ビニル単位の含有量等が上述の範囲であることが好ましい。
【0057】
〔エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の製造方法〕
本実施形態のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は、特に限定されないが、例えば、加圧加温下において、重合開始剤の存在下で、エチレンと酢酸ビニルモノマーを重合して得られる。重合系には、必要に応じて、連鎖移動剤を添加してもよい。
【0058】
エチレン-酢酸ビニル共重合体の重合反応器は、特に限定されないが、例えば、オートクレーブ、チューブラーが挙げられる。このなかでも、チューブラーリアクターを用いることが好ましい。プラグフロー式のチューブラーリアクターを用いることにより、バックミキシングが起こらないため、成長したポリマー鎖への酢酸ビニルの導入を抑制することができ、連鎖酢酸ビニルの含有率を適宜調整しやすくすることができる。
【0059】
重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、パーオキサイド等の遊離基発生剤等が挙げられる。パーオキサイド等の遊離基発生剤としては、特に限定されないが、例えば、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノアート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシピバレート、ジ-t-ブチルペルオキシド等が挙げられる。
【0060】
リアクターに添加する重合開始剤の希釈には、特に限定はされないがイソパラフィン系の溶剤等を用いてもよい。希釈後の重合開始剤の濃度は、好ましくは1wt%以上13wt%以下、より好ましくは4wt%以上10wt%以下、さらに好ましくは5wt%以上8wt%以下である。希釈後の重合開始剤を添加することにより、連鎖酢酸ビニル含有率を上記範囲内に調整しやすくなる。
【0061】
イソパラフィン系の溶剤は特に限定されないが、例えば、炭素数が10以上15以下の溶媒が好ましく、具体的には、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン等が挙げられる。
【0062】
酢酸ビニルモノマーに含まれるハイドロキノン等の重合禁止剤は、蒸留し取り除いてから添加してもよい。酢酸ビニルモノマーの重合禁止剤を取り除いた上で、使用することにより、黄変度を上記範囲内に調整しやすくなる。
【0063】
また、目的の酢酸ビニル含有率に合わせ込むため、重合反応器前でエチレンに酢酸ビニルモノマーを添加する時、複数箇所から添加してもよい。酢酸ビニルモノマーの添加箇所は、好ましくは2~3箇所、より好ましくは3か所である。複数箇所から酢酸ビニルモノマーを添加することにより、連鎖酢酸ビニル含有率を上記範囲内に調整しやすくなる。
【0064】
連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類;エタン、プロパン、プロピレン、ブタン、1-ブテン、2-ブテン等のアルカン類又はアルケン類;アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ノルマルブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ノルマルバレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド等のケトン類又はアルデヒド類が挙げられる。
【0065】
リアクターに供給されるエチレンと酢酸ビニルモノマーは、気体状であっても液体状であってもよい。
【0066】
重合反応器に酢酸ビニルモノマーを添加したエチレン等を導入する時、重合反応器より上流側で直前にある配管内に網目状のスタティックミキサーを備えてもよい。スタティックミキサーを重合反応器より上流側で直前にある配管内に備えることにより、連鎖酢酸ビニル含有率を上記範囲内に調整しやすくなる。
【0067】
また、重合反応器に酢酸ビニルモノマーを添加したエチレン等を導入する時、重合反応器より上流側で直前にある配管のバルブの開度を連続的に変化させてもよい。重合反応器より上流側で直前にある配管のバルブの開度を連続的に変化させることにより、連鎖酢酸ビニル含有率を上記範囲内に調整しやすくなる。
【0068】
平均重合温度は、好ましくは150℃以上280℃以下であり、より好ましくは180℃以上260℃以下である。また、重合圧力は、好ましくは100MPa以上350MPa以下であり、より好ましくは120MPa以上270MPa以下であり、さらに好ましくは180MPa以上260MPa以下である。なお、ここでの「平均重合温度」とは、重合反応器内の最上流から最下流にかけた各位置における温度の平均値である。
【0069】
重合反応器には、エチレン、酢酸ビニルモノマー、重合開始剤等の原料をフィードする箇所を複数有していてもよい。
【0070】
上記のように重合されたエチレン-酢酸ビニル共重合体は、高圧分離器及び低圧分離器にて圧力を下げつつ未反応原料等とエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂とを分離する。
【0071】
連鎖酢酸ビニル含有率を上記範囲内に調整したエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は、熱分解しやすい分岐構造が少なく、熱劣化の確率が下がるため、低圧分離器の容器温度を高温化することができる。低圧分離器の容器温度は、好ましくは180℃以上240℃以下であり、より好ましくは240℃である。低圧分離器の容器温度を180℃以上240℃以下と比較的高温とし樹脂粘度を低く保つことで、低圧分離器での溶融樹脂の滞留を抑制でき、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の熱劣化を抑制することできる。
【0072】
高圧分離器及び低圧分離器内では、溶融状態のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂と原料エチレンガスや酢酸ビニルガス等の未反応ガスが気液混合流体として存在する。未反応ガスは、各分離器の容器の上部から回収し、多段圧縮機入口へ送り重合に再利用してもよい。
【0073】
上記のように分離されたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を押出機でペレット化した後、ペレットを貯蔵するサイロ内で20℃以上80℃以下の乾燥空気を9時間以上吹き付けることが好ましい。乾燥空気の温度は、低分子量である揮発成分の除去の観点から50℃以上70℃以下であることが好ましく、より好ましくは60℃以上70℃以下である。
【0074】
また、乾燥空気を吹き付ける時間は、18時間以上であることが好ましく、より好ましくは24時間以上である。
【0075】
[添加剤]
本実施形態のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は、必要に応じて、スリップ剤、酸化防止剤、耐光安定剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0076】
スリップ剤としては、特に限定されないが、例えば脂肪族炭化水素、アルコールの脂肪酸エステル、ワックス、高級脂肪酸アマイド、シリコーン油、ロジン等が挙げられる。
【0077】
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤;トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4-ビフェニレン-ジフォスフォナイト等のリン系酸化防止剤;6-tert-ブチル-4-[3-(2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イルオキシ)プロピル]-o-クレゾール等のリン/フェノール系酸化防止剤;ジラウリル-チオ-ジプロピオネート等のイオウ系酸化防止剤が挙げられる。
【0078】
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂中の酸化防止剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは2,500ppm以下であり、より好ましくは2,000ppm以下であり、さらに好ましくは1,000以下である。また、より好ましくは300ppm以上、さらに好ましくは500ppm以上である。
【0079】
耐光安定剤としては、特に限定されないが、具体的には、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系耐光安定剤;ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン)セバケート、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]等のヒンダードアミン系耐光安定剤が挙げられる。
【0080】
アンチブロッキング剤としては、特に限定されないが、例えば、アルミノケイ酸塩、カオリン、天然シリカ、合成シリカ、タルク、珪藻土等が挙げられる。
【0081】
帯電防止剤としては、特に限定されないが、例えば、非イオン性活性剤、イオン性活性剤、両性活性剤やその混合物等が挙げられる。
【0082】
[成形体]
本実施形態の成形体は、上述したエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を含む。本実施形態の成形体は、特に限定されないが、例えば、射出成形や押出成形、延伸成形にて得ることができ、様々な用途に好適に用いることができる。具体的には、特に限定されないが、例えば、電子機器や車載部品の緩衝材、カラーコーン(登録商標)、人工芝マット、自動車用マットガード、泥除けカバー、排水ホース等が挙げられる。また、繊維等として用いることもできる。
【0083】
[シート]
本実施形態のシートは、上述したエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を含む。シートの製造方法としては、例えば、Tダイ成形、インフレーション成形、カレンダー成形、スカイフ成形等が挙げられる。特に、Tダイ成形又は押出成形インフレーション成形が好ましい。
【0084】
本実施形態のシートは、自動車用マットガード、泥除けカバーに好適に用いることができる。なお、「シート」とは、厚さ250μm以上のプラスチックの薄い板状のものを指すものとする。本実施形態のシートの厚みは、好ましくは250μm以上であり、より好ましくは300μm~10mmであり、さらに好ましくは0.5~10mmである。
【0085】
[発泡体]
本実施形態の発泡体は、上述したエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を含む。本実施形態の発泡体は、発泡微粒子等を使用して得ることができ、用途としては、特に限定されないが、例えば、電子機器や車載部品の緩衝材、等様々な用途に好適に用いることができる。
【0086】
[フィルム]
本実施形態のフィルムは、上述したエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を含む。フィルムの製造方法としては、用途に合わせて適宜選択することができ、特に限定されないが、例えば、Tダイ成形、インフレーション成形、カレンダー成形、スカイフ成形等が挙げられる。特に、インフレーション成形又はTダイ押出成形が好ましい。
【0087】
本実施形態のフィルムは、農業用ポリオレフィン系特殊フィルム、包装用フィルム、溶融袋用フィルム、ポリオレフィンラップ、ストレッチフィルム、フレキシブルコンテナー外装用フィルムに好適に用いることができ、農業用ポリオレフィン系特殊フィルム、ポリオレフィンラップ、包装用及び/又はストレッチフィルムであることがより好ましい。具体的には、特に限定されないが、例えば、ストレッチフィルム、食品包装用フィルム、食品用ラップフィルム、オバーラップフィルム、収縮性オバーラップフィルム、シーラントフィルム等が挙げられる。ここで、ストレッチフィルムとは、物品等を梱包したり包装したりする際に当該物品等に巻きつけて使用するものをいう。
【0088】
なお、「フィルム」とは、厚さ250μm未満のプラスチックの膜状のものを指すものとする。本実施形態のフィルムの厚みは、好ましくは10~240μmであり、より好ましくは10~200μmである。
【0089】
また、本実施形態のフィルムは、2以上の層を有していてもよく、上述のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂からなる層に加えて、他の層を有する積層構造を有していてもよい。このような積層フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ラミネーションプロセスによって貼りあわせて製造する方法、又は積層押出し工程によって製造する方法を挙げることができる。
【実施例
【0090】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0091】
まず、各実施例及び各比較例に対して用いる測定方法について以下詳説する。
<測定方法>
〔酢酸ビニル単位の含有量測定〕
JIS K7192:1999に準拠し、基準試験法として、ケン化と電位差滴定とにより酢酸ビニル単位の含有量が既知のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のVAC基準試料を用いて検量線を作成し、対照試験法として、赤外分光法により、実施例及び比較例で得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂における酢酸ビニル単位の含有量(VA含有量)を測定した。
【0092】
13C-NMR測定(連鎖酢酸ビニル含有率)〕
試料前処理として、試料を秤量し、溶媒オルトジクロロベンゼン-d4を加えて130℃で240分振とう溶解させた。13C-NMR測定は下記に示す測定条件にしたがって測定をした。
(測定条件)
測定装置 :Bruker社製AVANCE-500HD
観測核 :13
観測周波数 :125.77MHz
パルス幅 :5.0μsec
PD :5sec
測定温度 :120℃
積算回数 :8,000回
基準 :PE(-eee-)シグナルであり29.9ppm
溶媒 :オルトジクロロベンゼン-d4
試料濃度 :5wt/vol%
溶解温度 :130℃
【0093】
図1は、13C-NMRスペクトルの具体例として、後述する実施例8の13C-NMRスペクトルを示しており、図1が示すように、上記の測定条件にて測定した、13C-NMRスペクトルにより観測されるメチレン炭素のシグナル29.9ppmをシグナル位置の基準とし、その面積強度を100とした時に、連鎖酢酸ビニルのシグナルである71.6ppm付近と70.7ppm付近、それぞれの面積強度の比率の和を算出し、連鎖酢酸ビニル含有率とした。
【0094】
〔分子量及び分子量分布の測定〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によりエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めた。GPC測定から求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を分子量分布とした。分子量の校正は、東ソー(株)製標準ポリスチレンのMW(Molecular weight)が1,050~20,600,000の範囲の12点で行い、それぞれの標準ポリスチレンのMWに係数0.43を乗じてポリエチレン換算分子量とし、溶出時間とポリエチレン換算分子量とのプロットから一次校正直線を作成し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を決定した。GPC測定は、下記に示す測定条件に従って行った。
(測定条件)
装置 :Polymer Char社製GPC-IR
検出器 :Polymer Char社製IR5
カラム :昭和電工(株)製UT-807(1本)と東ソー(株)製GMHHR-H(S)HT(2本)を直列に接続して使用
移動相 :オルトジクロロベンゼン
カラム温度 :140℃
流量 :1.0mL/分
試料濃度 :16mg/8mL
試料溶解温度:140℃
試料溶解時間:60分
【0095】
〔メルトフローレイト(MFR)測定〕
JIS K7210:1999 コードD(温度=190℃、荷重=2.16kg)に準拠し、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のMFRを測定した。
【0096】
〔高速液体クロマトグラフ(液体酸化防止剤の定量・定性)〕
ペレットまたは成形体のサンプルを150℃で1mm厚みに熱プレス後、縦横1mm角で切り出し、秤量したサンプル約5gとアセトン20mlを容器に入れ、60℃の振とう恒温バスで5時間、添加剤の抽出を行った。アセトン抽出溶液は、テトラヒドロフランで置換後、シリンジフィルター(孔径0.2μm、材質PTFE、有効ろ過面積1.3cm2、フィルター径φ13mm)で未溶解成分を取り除き、高速液体クロマトグラフ(HPLC)に注入し、下記に示す測定条件に従って添加剤を測定した。
(測定条件)
液体クロマトグラフの集中制御装置:SCL-10Avp
フラクションコレクタ(分取装置):FRC-10A
送液ユニット:LC-10ATvp
カラムオーブン装置:CTO-10Avp
検出器(UV):SPD-10Avp(設定280nm)
カラム:SHINWA Chemical Industries LTD社製STR ODS-II(固定相C18、粒子径5μm、内径4.6mm、長さ150mm)
カラム温度:40℃
ポンプ流量:1mL/min
移動相:アセトニトリル:テトラヒドロフラン=1:1混合溶液
注入量:10μL
上記にて測定した、保持時間とピーク面積を用い、標準添加法で添加剤の定性・定量を行った。
【0097】
〔黄変度の測定〕
無色のスクリュー管瓶(容量110mL、口内径φ20.3mm、胴径φ40mm、全長120mm)にペレットを一杯に入れ、蓋をしない状態で下記に示す暴露環境に30日間静置した。
(暴露環境)
装置:エンビロス社製 恒温恒湿器 KCL-2000A
温度:40℃
湿度:90%
暴露環境に入れる前の初期ペレットおよび暴露環境から取出したペレットについて、JIS K 7373:2006に準拠し黄変度の測定を行った。下記に示す条件に従って測定した。
(測定条件)
装置:日本電色工業(株)社製 SE6000
測定試料の形状:ペレット
試料容器:石英ガラス製(内径φ30mm、高さ30mmの円柱状)
使用したイルミナント:D65/2
測定方式:反射法
【0098】
黄変度は、以下の式によって求めた。
黄変度=YI-YI0
YI:暴露後の黄色度
YI0:暴露前の初期の黄色度
【0099】
〔熱重量測定装置による熱重量損失(Lw)の測定〕
ペレット1粒をPixie錠剤成形用ミニ油圧プレスで1t加圧プレス後、約10mgをアルミパンに入れ、熱重量測定装置によりエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の熱重量損失(Lw)を窒素雰囲気で測定した。熱重量分析は、下記に示す測定条件に従って測定した。
(測定条件)
装置 :TA Instruments社製 TGA 5500
窒素量:サンプルパージ25ml/min、バランスパージ10ml/min
手順1:ジャンプ30.00℃
手順2:等温1.0分
手順3:ジャンプ300.00℃
手順4:等温360.0分
【0100】
熱重量損失(Lw)は、以下の式によって求めた。
Lw=(L0-L360)/L0×100
0:測定前サンプル重量(mg)
360:測定後サンプル重量(mg)
【0101】
〔熱重量測定装置による揮発成分熱重量損失(Vc)の測定〕
ペレット1粒をPixie錠剤成形用ミニ油圧プレスで1t加圧プレス後、約10mgをアルミパンに入れ、熱重量測定装置によりエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の揮発成分熱重量損失(Vc)を窒素雰囲気で測定した。熱重量分析は、下記に示す測定条件に従って測定した。
(測定条件)
装置 :TA Instruments社製 TGA 5500
窒素量:サンプルパージ25ml/min、バランスパージ10ml/min
手順1:ジャンプ30.00℃
手順2:等温3.0分
手順3:ランプ5.00℃/minで300.00℃まで昇温
【0102】
揮発成分熱重量損失(Vc)は、以下の式によって求めた。
Vc=(V0-V300)/V0×100
0:測定前サンプル重量(mg)
300:測定後サンプル重量(mg)
【0103】
次に、各実施例及び各比較例の評価方法について以下詳説する。
【0104】
<評価方法>
〔フロス量〕
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のペレットを、1kgランダムに取り出し、フラットトップ金網(目開き9.5mm)で篩に掛け、ペレットと帯状フロスに分けた。取り分けた帯状フロスの質量を測定し、当該質量をフロス量とした。
評価基準については以下に示すとおりであり、〇および△を合格とし、×を不合格とした。
(フロス量の評価基準)
〇:フロス量が0.5g以下である。
△:フロス量が0.5g超過1g未満である。
×:フロス量が1g以上である。
【0105】
〔フィルムの作製(基準フィルム)〕
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を、T-ダイ製膜機(北進産業株式会社製HM40N、スクリュー径40mm、ダイ300mm幅、80メッシュの平織金網)を用い、シリンダー温度210℃、ダイ温度210℃、押出量5kg/時間、厚さ50μmに成形し、フィルムを得た。
【0106】
〔リサイクルフィルムの作製(リサイクル品)〕
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を、(株)テクノベル社製単軸押出機SZW50-28VG(スクリュー径50mm、L/D=28、メッシュなし)を用い、温度200℃、吐出量5kg/時間で溶融混練を行いペレット状に造粒した。マテリアルリサイクルを想定し、この溶融混錬操作を繰り返し計4回行った後、T-ダイ製膜機(北進産業株式会社製HM40N、スクリュー径40mm、ダイ300mm幅、80メッシュの平織金網)を用い、シリンダー温度210℃、ダイ温度210℃、押出量5kg/時間、厚さ50μmに成形しフィルムを得た。
【0107】
〔リサイクル品の耐フィッシュアイ増加率〕
前記の基準フィルムおよびリサイクル品のフィルム成形時、Tダイのフィルムは、引き取り機に取り付けた、株式会社ヒューテック社製フィッシュアイカウンター(検出能力横:0.04mm/bit、検出能力縦:0.015mm/scan、投光距離:200mm、受光距離:440mm、検査幅:50mm)を用いて、検査面積5m2、FEサイズ0.2mm以上のFE数をカウントした。下記式でリサイクル品のFE増加率を算出した。
リサイクル品のFE増加率=(FE5-FE1)/FE1×100
FE1:基準フィルムのFE数[個/5m2
FE5:リサイクル品のFE数[個/5m2
【0108】
評価基準について以下に示すとおりであり、〇および△を合格とし、×を不合格とした。
(リサイクル品の耐フィッシュアイ増加率の評価基準)
〇:リサイクル品のFE増加率が100%以下である。
△:リサイクル品のFE増加率が100%超過200%以下である。
×:リサイクル品のFE増加率が200%超過である。
【0109】
〔リサイクル品の耐強度劣化性〕
前記の基準フィルムおよびリサイクル品のフィルムの厚みを、定圧厚さ測定器(TECLOCK CORPORATION製、型式PG-02 最小表示量0.001mm)を使用して測定し、前記フィルムにおける厚さ50μmの±1%以下しかない部分を選定し、JIS K 7127の試験片タイプ5に準拠した試験片を作製した。引張試験はJIS K 7127に準拠し、下記の条件に従って測定した。
【0110】
(測定条件)
装置 :オリエンテック社製 TENSIRON(RTC-1310A)
引張速度 :500mm/min
測定温度 :25℃
チャック間距離:80mm
試験片の方向 :MD(フィルムの流れ方向)
【0111】
下記式でリサイクル品の強度劣化を算出した。
リサイクル品の強度劣化=(引張ひずみ5-引張ひずみ1)/引張ひずみ1×100
引張ひずみ1:基準フィルムの引張ひずみ[%]
引張ひずみ5:リサイクル品の引張ひずみ[%]
【0112】
評価基準については以下に示すとおりであり、〇および△を合格とし、×を不合格とした。
(リサイクル品の耐強度劣化性の評価基準)
〇:リサイクル品の強度劣化が-10%以上である。
△:リサイクル品の強度劣化が-20%以上-10%未満である。
×:リサイクル品の強度劣化が-20%未満である。
【0113】
〔リサイクル品の耐黄変性〕
上記のリサイクル品のフィルムから長さ1m分を切出し、温度40℃、湿度90%のエンビロス社製恒温恒湿器KCL-2000Aの暴露環境で30日間静置し、取出した暴露環境に静置していたリサイクル品のフィルムを基準フィルムと目視観察で比較し、黄変が明らかに全く観られない場合には耐黄変性が優れると評価した。一方、明らかに黄変が観られる場合には耐黄変性が劣ると評価した。また、両者の中間で、黄変の有無が疑わしい場合であれば、耐黄変性はやや優れると評価した。
【0114】
評価基準については以下に示すとおりであり、〇および△、を合格とし、×を不合格とした。
(リサイクル品の耐黄変性の評価基準)
〇:耐黄変性が優れる。
△:耐黄変性がやや優れる。
×:耐黄変性が劣る。
【0115】
〔リサイクル品の耐汚染性〕
前記のリサイクル品のフィルム成形時、引き取り機のガイドロールに取り付けた黒色のフェルト布にTダイのフィルムを300m接触させ、フィルムサンプルの粉をフェルト布上に集積させた。集積した粉の量や集積状態を目視観察し、粉の発生がない、またはわずかに発生しているが集積が部分的である場合には耐汚染性が優れると評価した。一方、粉が多く発生しており、フェルト布が接触し始める部分に帯状に連続的に集積している場合には耐汚染性が劣ると評価した。粉の量や集積状態が両者の中間であれば、耐汚染性はやや優れると評価した。
【0116】
評価基準については以下に示すとおりであり、〇および△を合格とし、×を不合格とした。
(リサイクル品の耐汚染性の評価基準)
〇:耐汚染性が優れる。
△:耐汚染性がやや優れる。
×:耐汚染性が劣る。
【0117】
総合評価については以下に示すとおりであり、◎および〇を合格とし、×を不合格とした。
(総合評価の評価基準)
◎:フロス量、リサイクル品の耐フィッシュアイ増加率、リサイクル品の耐強度劣化性およびリサイクル品の耐黄変性の各評価基準が、全て〇であること。
〇:フロス量、リサイクル品の耐フィッシュアイ増加率、リサイクル品の耐強度劣化性およびリサイクル品の耐黄変性の各評価基準が、〇または△であること。
×:フロス量、リサイクル品の耐フィッシュアイ増加率、リサイクル品の耐強度劣化性およびリサイクル品の耐黄変性の各評価基準が、1つ以上×であること。
【0118】
次に、各実施例及び各比較例の調製方法について以下詳説する。
【0119】
[実施例1]
エチレンに対してプロピレンが0.3mol%になるようにフィードし、また、ハイドロキノンを取り除いた酢酸ビニルは7mol%になるように3か所からフィードした原料を、網目状のスタティックミキサーを用い、かつ、バルブの開度を連続的に変化させながら、チューブラーリアクターに原料を導入し、平均重合温度が228℃、重合圧力が216MPaで重合した。重合開始剤はチューブラーリアクターの3か所で添加しており、重合開始剤を添加した各か所の下流側温度極大は、上流側から255℃、260℃、275℃であった。重合開始剤としては、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノアートをイソパラフィンで5wt%に希釈した溶液を用いた。重合されたエチレン-酢酸ビニル共重合体は、高圧分離器及び低圧分離器にて圧力を下げつつ未反応原料等とエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に分離した。この時、低圧分離器の容器温度は180℃とした。分離されたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を押出機でペレット化した後、ペレットを貯蔵するサイロ内で70℃の乾燥空気を24時間吹き付け、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を得た。得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の物性及び特性を上記に示す方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0120】
[実施例2]
エチレンに対してハイドロキノンを取り除いた酢酸ビニルが7mol%になるように4か所からフィードした原料を、網目状のスタティックミキサーを用い、かつ、バルブの開度を連続的に変化させながら、チューブラーリアクターに原料を導入し、平均重合温度が235℃、重合圧力が265MPaで重合した。重合開始剤はチューブラーリアクターの3か所で添加しており、重合開始剤を添加した各か所の下流側温度極大は、上流側から243℃、255℃、275℃であった。重合開始剤としては、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノアートとジ-t-ブチルペルオキシドをイソパラフィンで1wt%に希釈した溶液を用いた。重合されたエチレン-酢酸ビニル共重合体は、高圧分離器及び低圧分離器にて圧力を下げつつ未反応原料等とエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に分離した。この時、低圧分離器の容器温度は240℃とした。分離されたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に酸化防止剤のペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]を添加し押出機でペレット化した後、ペレットを貯蔵するサイロ内で60℃の乾燥空気を18時間吹き付け、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を得た。得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の物性及び特性を上記に示す方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0121】
[実施例3]
エチレンに対してハイドロキノンを取り除いた酢酸ビニルが7mol%になるように1か所からフィードした原料を、網目状のスタティックミキサーを用いて、チューブラーリアクターに原料を導入し、平均重合温度が235℃、重合圧力が265MPaで重合した。重合開始剤はチューブラーリアクターの3か所で添加しており、重合開始剤を添加した各か所の下流側温度極大は、上流側から243℃、255℃、275℃であった。重合開始剤としては、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノアートとジ-t-ブチルペルオキシドをイソパラフィンで10wt%に希釈した溶液を用いた。重合されたエチレン-酢酸ビニル共重合体は、高圧分離器及び低圧分離器にて圧力を下げつつ未反応原料等とエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に分離した。この時、低圧分離器の容器温度は180℃とした。分離されたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に酸化防止剤のオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを添加し押出機でペレット化した後、ペレットを貯蔵するサイロ内で70℃の乾燥空気を24時間吹き付け、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を得た。得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の物性及び特性を上記に示す方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0122】
[実施例4]
エチレンに対してプロピレンが0.5mol%になるようにフィードし、また、ハイドロキノンを取り除いた酢酸ビニルは4mol%になるように3か所からフィードした原料を、網目状のスタティックミキサーを用い、かつ、バルブの開度を連続的に変化させながら、チューブラーリアクターに原料を導入し、平均重合温度が229℃、重合圧力が265MPaで重合した。重合開始剤はチューブラーリアクターの3か所で添加しており、重合開始剤を添加した各か所の下流側温度極大は、上流側から250℃、260℃、275℃であった。重合開始剤としては、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノアートとジ-t-ブチルペルオキシドをイソパラフィンで1wt%に希釈した溶液を用いた。重合されたエチレン-酢酸ビニル共重合体は、高圧分離器及び低圧分離器にて圧力を下げつつ未反応原料等とエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に分離した。この時、低圧分離器の容器温度は240℃とした。分離されたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に酸化防止剤のオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを添加し押出機でペレット化した後、ペレットを貯蔵するサイロ内で70℃の乾燥空気を24時間吹き付け、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を得た。得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の物性及び特性を上記に示す方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0123】
[実施例5]
エチレンに対してプロピレンが1.5mol%になるようにフィードし、また、ハイドロキノンを取り除いた酢酸ビニルは4mol%になるように2か所からフィードした原料を、網目状のスタティックミキサーを用い、かつ、バルブの開度を連続的に変化させながら、チューブラーリアクターに原料を導入し、平均重合温度が226℃、重合圧力が240MPaで重合した。重合開始剤はチューブラーリアクターの3か所で添加しており、重合開始剤を添加した各か所の下流側温度極大は、上流側から224℃、226℃、225℃であった。重合開始剤としては、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノアートをイソパラフィンで10wt%に希釈した溶液を用いた。重合されたエチレン-酢酸ビニル共重合体は、高圧分離器及び低圧分離器にて圧力を下げつつ未反応原料等とエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に分離した。この時、低圧分離器の容器温度は180℃とした。分離されたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を押出機でペレット化した後、ペレットを貯蔵するサイロ内で60℃の乾燥空気を18時間吹き付け、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を得た。得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の物性及び特性を上記に示す方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0124】
[実施例6]
エチレンに対してプロピレンが0.5mol%になるようにフィードし、また、酢酸ビニルは4mol%になるように3か所からフィードした原料を、バルブの開度を連続的に変化させながら、チューブラーリアクターに原料を導入し、平均重合温度が229℃、重合圧力が265MPaで重合した。重合開始剤はチューブラーリアクターの3か所で添加しており、重合開始剤を添加した各か所の下流側温度極大は、上流側から245℃、258℃、280℃であった。重合開始剤としては、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノアートとジ-t-ブチルペルオキシドをイソパラフィンで10wt%に希釈した溶液を用いた。重合されたエチレン-酢酸ビニル共重合体は、高圧分離器及び低圧分離器にて圧力を下げつつ未反応原料等とエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に分離した。この時、低圧分離器の容器温度は240℃とした。分離されたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に酸化防止剤のオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを添加し押出機でペレット化した後、ペレットを貯蔵するサイロ内で40℃の乾燥空気を9時間吹き付け、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を得た。得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の物性及び特性を上記に示す方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0125】
[実施例7]
エチレンに対してハイドロキノンを取り除いた酢酸ビニルが5mol%になるように3か所からフィードした原料を、網目状のスタティックミキサーを用い、かつ、バルブの開度を連続的に変化させながら、チューブラーリアクターに原料を導入し、平均重合温度が229℃、重合圧力が265MPaで重合した。重合開始剤はチューブラーリアクターの3か所で添加しており、重合開始剤を添加した各か所の下流側温度極大は、上流側から245℃、258℃、280℃であった。重合開始剤としては、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノアートとジ-t-ブチルペルオキシドをイソパラフィンで5wt%に希釈した溶液を用いた。重合されたエチレン-酢酸ビニル共重合体は、高圧分離器及び低圧分離器にて圧力を下げつつ未反応原料等とエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に分離した。この時、低圧分離器の容器温度は240℃とした。分離されたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を押出機でペレット化した後、ペレットを貯蔵するサイロ内で70℃の乾燥空気を24時間吹き付け、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を得た。得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の物性及び特性を上記に示す方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0126】
[実施例8]
エチレンに対してハイドロキノンを取り除いた酢酸ビニルが8mol%になるように3か所からフィードした原料を、網目状のスタティックミキサーを用い、かつ、バルブの開度を連続的に変化させながら、チューブラーリアクターに原料を導入し、平均重合温度が215℃、重合圧力が265MPaで重合した。重合開始剤はチューブラーリアクターの3か所で添加しており、重合開始剤を添加した各か所の下流側温度極大は、上流側から210℃、220℃、225℃であった。重合開始剤としては、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノアートとジ-t-ブチルペルオキシドをイソパラフィンで5wt%に希釈した溶液を用いた。重合されたエチレン-酢酸ビニル共重合体は、高圧分離器及び低圧分離器にて圧力を下げつつ未反応原料等とエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に分離した。この時、低圧分離器の容器温度は180℃とした。分離されたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に酸化防止剤のペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]を添加し押出機でペレット化した後、ペレットを貯蔵するサイロ内で70℃の乾燥空気を24時間吹き付け、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を得た。得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の物性及び特性を上記に示す方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0127】
[比較例1]
エチレンに対してプロピレンが0.2mol%になるようにフィードし、また、ハイドロキノンを取り除いた酢酸ビニルは7mol%になるように1か所からフィードした原料を、チューブラーリアクターに導入し、平均重合温度が228℃、重合圧力が216MPaで重合した。重合開始剤はチューブラーリアクターの3か所で添加しており、重合開始剤を添加した各か所の下流側温度極大は、上流側から255℃、260℃、275℃であった。重合開始剤としては、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノアートをイソパラフィンで15wt%に希釈した溶液を用いた。重合されたエチレン-酢酸ビニル共重合体は、高圧分離器及び低圧分離器にて圧力を下げつつ未反応原料等とエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に分離した。この時、低圧分離器の容器温度は130℃とした。分離されたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を押出機でペレット化した後、ペレットを貯蔵するサイロ内で40℃の乾燥空気を9時間吹き付け、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を得た。得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の物性及び特性を上記に示す方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0128】
[比較例2]
エチレンに対してプロピレンが0.8mol%になるようにフィードし、また、ハイドロキノンを取り除いた酢酸ビニルは4mol%になるように1か所からフィードした原料を、チューブラーリアクターに導入し、平均重合温度が226℃、重合圧力が237MPaで重合した。重合開始剤はチューブラーリアクターの3か所で添加しており、重合開始剤を添加した各か所の下流側温度極大は、上流側から224℃、226℃、225℃であった。重合開始剤としては、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノアートとジ-t-ブチルペルオキシドをイソパラフィンで15wt%に希釈した溶液を用いた。重合されたエチレン-酢酸ビニル共重合体は、高圧分離器及び低圧分離器にて圧力を下げつつ未反応原料等とエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に分離した。この時、低圧分離器の容器温度は130℃とした。分離されたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に酸化防止剤のオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを添加し押出機でペレット化した後、ペレットを貯蔵するサイロ内で40℃の乾燥空気を9時間吹き付け、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を得た。得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の物性及び特性を上記に示す方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0129】
[比較例3]
エチレンに対してプロピレンが0.5mol%になるようにフィードし、また、ハイドロキノンを取り除いた酢酸ビニルは4mol%になるように5か所からフィードした原料を、網目状のスタティックミキサーを用い、かつ、バルブの開度を連続的に変化させながら、チューブラーリアクターに原料を導入し、平均重合温度が229℃、重合圧力が265MPaで重合した。重合開始剤はチューブラーリアクターの3か所で添加しており、重合開始剤を添加した各か所の下流側温度極大は、上流側から250℃、260℃、275℃であった。重合開始剤としては、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノアートとジ-t-ブチルペルオキシドをイソパラフィンで1wt%に希釈した溶液を用いた。重合されたエチレン-酢酸ビニル共重合体は、高圧分離器及び低圧分離器にて圧力を下げつつ未反応原料等とエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に分離した。この時、低圧分離器の容器温度は240℃とした。分離されたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に酸化防止剤のオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを添加し押出機でペレット化した後、ペレットを貯蔵するサイロ内で70℃の乾燥空気を24時間吹き付け、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を得た。得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の物性及び特性を上記に示す方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0130】
[比較例4]
エチレンに対して酢酸ビニルが5mol%になるように1か所からフィードした原料を、チューブラーリアクターに導入し、平均重合温度が229℃、重合圧力が265MPaで重合した。重合開始剤はチューブラーリアクターの3か所で添加しており、重合開始剤を添加した各か所の下流側温度極大は、上流側から245℃、258℃、280℃であった。重合開始剤としては、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノアートとジ-t-ブチルペルオキシドをイソパラフィンで15wt%に希釈した溶液を用いた。重合されたエチレン-酢酸ビニル共重合体は、高圧分離器及び低圧分離器にて圧力を下げつつ未反応原料等とエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に分離した。この時、低圧分離器の容器温度は130℃とした。分離されたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に酸化防止剤のオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを添加し押出機でペレット化した後、ペレットを貯蔵するサイロ内で40℃の乾燥空気を9時間吹き付け、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を得た。得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の物性及び特性を上記に示す方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0131】
[比較例5]
エチレンに対してハイドロキノンを取り除いた酢酸ビニルが8mol%になるように1か所からフィードした原料を、チューブラーリアクターに導入し、平均重合温度が215℃、重合圧力が265MPaで重合した。重合開始剤はチューブラーリアクターの3か所で添加しており、重合開始剤を添加した各か所の下流側温度極大は、上流側から210℃、220℃、225℃であった。重合開始剤としては、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノアートとジ-t-ブチルペルオキシドをイソパラフィンで15wt%に希釈した溶液を用いた。重合されたエチレン-酢酸ビニル共重合体は、高圧分離器及び低圧分離器にて圧力を下げつつ未反応原料等とエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に分離した。この時、低圧分離器の容器温度は130℃とした。分離されたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に酸化防止剤のペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]を添加し押出機でペレット化した後、ペレットを貯蔵するサイロ内で40℃の乾燥空気を9時間吹き付け、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を得た。得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の物性及び特性を上記に示す方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0132】
[比較例6]
エチレンに対してプロピレンが0.1mol%になるようにフィードし、また、ハイドロキノンを取り除いた酢酸ビニルは2mol%になるように3か所からフィードした原料を、網目状のスタティックミキサーを用い、かつ、バルブの開度を連続的に変化させながら、チューブラーリアクターに原料を導入し、平均重合温度が229℃、重合圧力が265MPaで重合した。重合開始剤はチューブラーリアクターの3か所で添加しており、重合開始剤を添加した各か所の下流側温度極大は、上流側から244℃、250℃、280℃であった。重合開始剤としては、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノアートとジ-t-ブチルペルオキシドをイソパラフィンで5wt%に希釈した溶液を用いた。重合されたエチレン-酢酸ビニル共重合体は、高圧分離器及び低圧分離器にて圧力を下げつつ未反応原料等とエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に分離した。この時、低圧分離器の容器温度は240℃とした。分離されたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を押出機でペレット化した後、ペレットを貯蔵するサイロ内で40℃の乾燥空気を9時間吹き付け、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を得た。得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の物性及び特性を上記に示す方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0133】
[比較例7]
エチレンに対して、ハイドロキノンを取り除いた酢酸ビニルが9mol%になるように5か所からフィードした原料を、網目状のスタティックミキサーを用い、かつ、バルブの開度を連続的に変化させながら、チューブラーリアクターに原料を導入し、平均重合温度が215℃、重合圧力が265MPaで重合した。重合開始剤はチューブラーリアクターの3か所で添加しており、重合開始剤を添加した各か所の下流側温度極大は、上流側から215℃、218℃、220℃であった。重合開始剤としては、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノアートとジ-t-ブチルペルオキシドをイソパラフィンで5wt%に希釈した溶液を用いた。重合されたエチレン-酢酸ビニル共重合体は、高圧分離器及び低圧分離器にて圧力を下げつつ未反応原料等とエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に分離した。この時、低圧分離器の容器温度は180℃とした。分離されたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に酸化防止剤のペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]を添加し押出機でペレット化した後、ペレットを貯蔵するサイロ内で70℃の乾燥空気を24時間吹き付け、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を得た。得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の物性及び特性を上記に示す方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0134】
[比較例8]
エチレンに対して酢酸ビニルが5mol%になるように3か所からフィードした原料を、チューブラーリアクターに導入し、平均重合温度が220℃、重合圧力が265MPaで重合した。重合開始剤はチューブラーリアクターの3か所で添加しており、重合開始剤を添加した各か所の下流側温度極大は、上流側から253℃、249℃、290℃であった。重合開始剤としては、t-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノアートとジ-t-ブチルペルオキシドをイソパラフィンで15wt%に希釈した溶液を用いた。
チューブラーリアクター最下流と高圧分離器の間にある配管に備えたバルブの開度は連続的に変化させた。重合されたエチレン-酢酸ビニル共重合体は、高圧分離器及び低圧分離器にて圧力を下げつつ未反応原料等とエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂に分離した。この時、低圧分離器の容器温度は130℃とした。分離されたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を押出機でペレット化した後、ペレットを貯蔵するサイロ内で40℃の乾燥空気を9時間吹き付け、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂を得た。得られたエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の物性及び特性を上記に示す方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明のエチレン-酢酸ビニル共重合体は、広範な産業分野で使用される樹脂原料として産業上の利用可能性を有する。
図1