IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立国際電気の特許一覧

<>
  • 特許-計測端末装置及び遠隔監視システム 図1
  • 特許-計測端末装置及び遠隔監視システム 図2
  • 特許-計測端末装置及び遠隔監視システム 図3
  • 特許-計測端末装置及び遠隔監視システム 図4
  • 特許-計測端末装置及び遠隔監視システム 図5
  • 特許-計測端末装置及び遠隔監視システム 図6
  • 特許-計測端末装置及び遠隔監視システム 図7
  • 特許-計測端末装置及び遠隔監視システム 図8
  • 特許-計測端末装置及び遠隔監視システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】計測端末装置及び遠隔監視システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/44 20180101AFI20240228BHJP
   G08C 15/00 20060101ALI20240228BHJP
   G08C 15/06 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G06F9/44
G08C15/00 E
G08C15/06 H
G08C15/06 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023039499
(22)【出願日】2023-03-14
(62)【分割の表示】P 2019139430の分割
【原出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2023072040
(43)【公開日】2023-05-23
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】肥留川 誠之
(72)【発明者】
【氏名】田村 祐介
【審査官】多賀 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-106552(JP,A)
【文献】特開2013-011963(JP,A)
【文献】特開2019-101505(JP,A)
【文献】特開2016-115361(JP,A)
【文献】特開2012-129805(JP,A)
【文献】特開2006-309407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 9/44
G08C 13/00-25/04
H04Q 9/00- 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象の状態を検出するセンサを備え、前記センサで検出されたセンサデータを上位局に無線送信する計測端末装置であって、
前記センサデータの送信に用いられる低消費電力用無線部と、
当該装置に設けられ、オン/オフの状態を切り替えるトリガセンサと、
送信すべきセンサデータと送信スケジュールとを規定する動作モードを複数記憶し、前記複数の動作モードの内、前記トリガセンサのオン/オフの状態に応じていずれかの動作モードを選択し、前記選択された動作モードに従って前記センサデータの送信を行う制御部とを備えたことを特徴とする計測端末装置。
【請求項2】
前記トリガセンサが、装置の内部に設けられ、前記装置の外部から非接触でオン/オフの状態を切り替えるセンサ、又は前記装置の外部に設けられ、検出したセンサデータに応じてオン/オフの状態を切り替えるセンサであることを特徴とする請求項記載の計測端末装置。
【請求項3】
前記制御部が、動作モードに応じて伝送フォーマットを変更可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の計測端末装置。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか記載の計測端末装置と、
前記計測端末装置からセンサデータを受信して、ネットワークを介して送信する上位局と、
前記上位局から送信されたセンサデータを受信して記憶し、要求に応じて、前記記憶されたセンサデータを提供するサーバ装置とを備えたことを特徴とする遠隔監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測端末装置及び遠隔監視システムに係り、特に、状況に応じてセンサデータ送信の動作を適宜変更し、効率的にセンサデータを伝送できる計測端末装置及び遠隔監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
従来、監視対象物にセンサを設置して、無線を用いて遠隔監視を行う遠隔監視システム(センサネットワーク)があった。
このような遠隔監視システムは、屋外での環境モニタリング(温度・湿度・雨量等)、店舗等での照明や空調制御、ビルや工場での電力監視、自動運転制御等様々な用途に用いられる。
【0003】
[遠隔監視システムの概略:図8
一般的な遠隔監視システムの概略について図8を用いて説明する。図8は、遠隔監視システムの概略図である。
図8に示すように、遠隔監視システムは、センサ端末1-1,1-2,…,1-n(センサ端末1と記載することもある)と、親局2と、ネットワークサーバ3とを備えている。
ネットワークサーバ3と親局2とは専用ネットワークやインターネット等のネットワーク4により接続されている。
【0004】
センサ端末1は、監視対象の状態を監視して、センサデータを無線通信により親局2に送信する。
親局2は、複数のセンサ端末1からのセンサデータを受信して収集し、ネットワーク4を介してネットワークサーバ3に送信する。
ネットワークサーバ3は、複数の親局2から受信したセンサデータを蓄積し、外部からの要求に応じて提供する。
【0005】
ここで、センサ端末1と親局2との無線通信は、一つの親局2に広範囲のセンサ端末1が接続できるよう、LPWA(Low Power Wide Area)という長距離無線通信規格を使用している。
また、センサ端末1の特徴として、設置場所が限定されないよう電池駆動としており、そのため、限られた電力で長期間の運用に耐えられるよう、低消費電力であることが求められる。
更に、屋外で使用することを想定し、防水機能が重要となる。
【0006】
LPWAは、低消費電力でありながら長距離無線伝送が可能であり、LoRa(Long Range)変調を用いるセンサ端末1が知られている。センサ端末1では、センサ端末1から親局2への上り通信がメインとなる通信モードでは、受信機能は通常使用しないため、低消費電力化を図ることができる。
【0007】
[従来のセンサ端末の構成:図9
従来のセンサ端末の構成について図9を用いて説明する。図9は、従来のセンサ端末の構成を示す構成ブロック図である。
図9に示すように、従来のセンサ端末70は、制御部71と、LPWA通信用無線部72と、高速通信用無線部73と、有線通信コネクタ74と、外部センサ75と、内部センサ76と、電池77と、防水コネクタ78と、防水筐体79とを備えている。
【0008】
制御部71は、装置全体の制御を行うものであり、センサデータの収集や通信制御を行う。
LPWA通信用無線部72は、LPWAによる無線通信を行う。通常、外部センサ75や内部センサ76で取得されるセンサデータ(センサ情報)は、情報量が少ないため、LPWA通信用無線部72から低速で送信される。
高速通信用無線部73は、FSK変調されたデータを送受信することにより、LPWAよりも高速の高速無線通信を行う。
【0009】
有線通信コネクタ74は、PC(Personal Computer)等に接続するものであり、外部から制御部71にアクセスして設定や操作が行われる。
外部センサ75は、センサ端末70の外部に設けられ、センシングを行ってセンサデータを制御部71に出力する。
内部センサ76は、センサ端末70の内部に設けられたセンサであり、センシングデータを制御部71に出力する。
【0010】
電池77は、電源を各部に供給する。
防水コネクタ78は、外部センサ75をセンサ端末70と接続し、水がセンサ端末70内に侵入するのを防ぐ構成となっている。
外部センサ75を除く各構成要素は、防水筐体79に内蔵されている。
【0011】
上記従来のセンサ端末70においては、外部センサ75や内部センサ76からのセンサデータは、制御部71で収集され、制御部71は、例えば、予め設定されたスケジュールに従って、センサデータをLPWA通信用無線部72から親局2に送信するようになっている。
【0012】
[ファームウェアの書き換え]
センサ端末では、機能向上やソフトウェアのバグの修正などを目的として、ファームウェアの書き換えが行われる場合がある。
従来のセンサ端末70では、有線通信コネクタ74にPC等を接続して、ファームウェアの書き換えを行っていた。
【0013】
しかし、この方法では、防水筐体79を開く必要があり、防水性能が劣化する恐れがある。
また、センサ端末70が取り外しが容易でない場所に設置されていた場合、センサ端末70を取り外して有線通信コネクタ74にPCを接続することは極めて困難となる。
【0014】
無線通信を利用してファームウェアを書き替える場合、センサデータの送信に用いるLPWA用無線部72の通信速度は、低消費電力且つ長距離通信を行うために低速であり、ファームウェアデータを受信するのに時間がかかってしまう。
【0015】
一方、高速通信用無線部73の通信速度は高速で、短時間での書き換えが可能である。
しかし、高速通信用無線部73が起動していないとファームウェアの書き換え要求を受信できないため、高速通信用無線部73を常時起動している必要があり、消費電力が増大し、電池等の消耗が早まってしまう。
【0016】
[制御部の動作設定]
従来のセンサ端末70では、複数のセンサが接続されており、頻繁にセンサデータが入力されるが、センサ端末70は、無線伝送可能なデータサイズが小さいため、全てのセンサデータを親局2に送信することは困難であり、送信するセンタデータを選択する必要がある。
そのため、親局2にどのセンサデータを送信するか、また、どのようなタイミング(スケジュール)で親局2に送信するかといった動作の内容は、予め制御部71に設定されている。
そして、制御部71は、設定された内容に基づいてセンサデータの送信を行うようになっている。
【0017】
上述したように、上り通信が主となるセンサネットワークでは、データ送信間隔の変更や送信すべきセンサデータの種類を変更する場合、ネットワークサーバ側からセンサ端末70への制御は困難である。そのため、動作の内容を変更する場合には、ファームウェアの書き換えと同様に、筐体79を開いてPCを接続して、動作内容を設定しなおすようになっていた。
更に、従来のセンサ端末70では、センサ端末70から親局2へのセンサデータ伝送時のデータフォーマットが固定であり、効率よくセンサデータを送信する必要があった。
【0018】
[関連技術]
尚、無線通信を用いてデータを収集又は配信する従来技術としては、特開2005-260770号公報「移動通信システム」(特許文献1)、特開2018-22509号公報「双方向型情報配信システム」(特許文献2)がある。
【0019】
特許文献1には、タクシー配車用の移動通信システムにおいて、ポーリングを用いて移動局の情報を収集することが記載されている。
特許文献2には、Wi-Fi装置を用いて端末から上位装置に情報送信し、また、上位装置から端末に情報配信することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】特開2005-260770号公報
【文献】特開2018-22509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したように、従来のセンサ端末では、親局へ送信するセンサデータや、送信スケジュールといった動作内容を変更するには、筐体を開けてPCを接続して設定を行わなければならず、防水機能が損なわれる恐れがあるという問題点があった。
また、LPWA通信では、一度に送信できるデータサイズが小さいため、複数のセンサデータを効率的に送る必要があるという問題点があった。
【0022】
尚、特許文献1及び特許文献2には、非接触センサであるトリガセンサを本体内部に備え、トリガセンサがオンになると、高速通信用無線部を起動して、受信したファームウェアデータでファームウェアを更新することや、トリガセンサがオンになるとセンサデータ送信の動作モードを切り替えることは記載されていない。
【0023】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、防水機能を損なわず、状況に応じて動作モードを切り替え、効率的にセンサデータを伝送できる計測端末装置及び遠隔監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、監視対象の状態を検出するセンサを備え、センサで検出されたセンサデータを上位局に無線送信する計測端末装置であって、センサデータの送信に用いられる低消費電力用無線部と、当該装置に設けられ、オン/オフの状態を切り替えるトリガセンサと、送信すべきセンサデータと送信スケジュールとを規定する動作モードを複数記憶し、複数の動作モードの内、トリガセンサのオン/オフの状態に応じていずれかの動作モードを選択し、選択された動作モードに従ってセンサデータの送信を行う制御部とを備えたことを特徴としている。
【0025】
また、本発明は、上記計測端末装置において、トリガセンサが、装置の内部に設けられ、装置の外部から非接触でオン/オフの状態を切り替えるセンサ、又は装置の外部に設けられ、検出したセンサデータに応じてオン/オフの状態を切り替えるセンサであることを特徴としている。
【0026】
また、本発明は、上記計測端末装置において、制御部が、動作モードに応じて伝送フォーマットを変更可能であることを特徴としている。
【0027】
また、本発明は、遠隔監視システムにおいて、上記のいずれか記載の計測端末装置と、計測端末装置からセンサデータを受信して、ネットワークを介して送信する上位局と、上位局から送信されたセンサデータを受信して記憶し、要求に応じて、記憶されたセンサデータを提供するサーバ装置とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0028】
発明によれば、監視対象の状態を検出するセンサを備え、センサで検出されたセンサデータを上位局に無線送信する計測端末装置であって、センサデータの送信に用いられる低消費電力用無線部と、当該装置に設けられ、オン/オフの状態を切り替えるトリガセンサと、送信すべきセンサデータと送信スケジュールとを規定する動作モードを複数記憶し、複数の動作モードの内、トリガセンサのオン/オフの状態に応じていずれかの動作モードを選択し、選択された動作モードに従ってセンサデータの送信を行う制御部とを備えた計測端末装置としているので、トリガセンサの状態に応じて、送信するセンサデータの種類や数、送信スケジュールを設定できるので、状況に応じたセンシング動作を行うことができる効果がある。
【0029】
また、本発明によれば、トリガセンサが、装置の内部に設けられ、装置の外部から非接触でオン/オフの状態を切り替えるセンサ、又は装置の外部に設けられ、検出したセンサデータに応じてオン/オフの状態を切り替えるセンサである上記計測端末装置としているので、用途に応じてトリガセンサを適宜使い分けることで、所望の動作を行わせることができる効果がある。
【0030】
また、本発明によれば、制御部が、動作モードに応じて伝送フォーマットを変更可能である上記計測端末装置としているので、選択された動作モードで送信すべきセンサデータの数やデータ量に応じて、伝送フォーマットを変更することで、全体のデータ量を増大させずに効率的にセンサデータを送信することができる効果がある。
【0031】
また、本発明によれば、上記のいずれか記載の計測端末装置と、計測端末装置からセンサデータを受信して、ネットワークを介して送信する上位局と、上位局から送信されたセンサデータを受信して記憶し、要求に応じて、記憶されたセンサデータを提供するサーバ装置とを備えた計測端末装置としているので、計測端末装置の防水機能を損なうことなく、ファームウェアの更新を迅速に行い、また、状況に応じてセンサデータ送信の動作を適宜変更することができ、システムの保守管理を容易にできる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本センサ端末の構成ブロック図である。
図2】本遠隔監視システムの例として水位監視システムを示す説明図である。
図3】本センサ端末の状態遷移図である。
図4】動作モードの例(1)を示す説明図である。
図5】動作モードの例(2)を示す説明図である。
図6】データ伝送フォーマットの例を示す説明図である。
図7】動作モード切替の処理を示すフローチャートである。
図8】遠隔監視システムの概略図である。
図9】従来のセンサ端末の構成を示す構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る計測端末装置(本計測端末装置)は、筐体の外から操作可能な非接触センサ(トリガセンサ)を備え、当該トリガセンサがオンになると、制御部が、高速通信用無線部を動作させ、ファームウェア書き換えの指示を受信すると、受信したファームウェアのデータで記憶しているファームウェアを更新するようにしているので、例えばトリガセンサとして磁気センサを備えておけば、保守員が、外部から磁石等で磁気センサをオンとすることで、高速通信用無線部を駆動させて、高速通信でファームウェアデータを受信して更新することができ、筐体を開かなくて済むため防水性を損なわず、迅速にファームウェアの書き換えを行うことができるものである。
【0034】
また、本発明の別の実施の形態に係る計測端末装置(別の計測端末装置)は、予めトリガセンサのオン/オフに対応した2種類の動作モードと各動作モードに対応する伝送フォーマットとを記憶しており、トリガセンサのオン/オフの状態に応じて、動作モードを切り替えて設定すると共に、設定された動作フォーマットでセンサデータを送信するものであり、状況に応じて筐体の外からトリガセンサを動作させて、センサ端末の動作モードを変更でき、動作モードに応じて効率よくセンサデータを送信することができるものである。
【0035】
別の計測端末装置では、動作モードの変更によって、例えば、同一種類のセンサについてセンサデータを送信するセンサの数を変える、センサデータを送信するセンサの種類を変える、送信スケジュールを変更する、といったことが可能となるものである。
また、本発明の実施の形態に係る遠隔監視システムは、本計測端末装置又は/及び別の計測端末装置を備えたセンサネットワークである。
【0036】
[本計測端末装置の構成:図1
本計測端末装置(本センサ端末)は、従来のセンサ端末と同様に、図8に示した遠隔監視システムにおけるセンサ端末1として用いられるものである。尚、親局2は、請求項に記載した上位局に相当し、ネットワークサーバ3は、請求項に記載したサーバ装置に相当している。
【0037】
本センサ端末の構成について図1を用いて説明する。図1は、本センサ端末の構成ブロック図である。
図1に示すように、本センサ端末10は、従来のセンサ端末70と同様の構成部分として、LPWA用無線部12と、高速通信用無線部13と、有線通信コネクタ14と、外部センサ15と、内部センサ16と、電池17と、防水コネクタ18と、防水筐体19とを備えている。従来のセンサ端末70と同様の部分については、説明を省略する。
そして、本センサ端末10の特徴部分として、磁気センサ21とを備えており、また、制御部11の動作が従来とは一部異なっている。
尚、LPWA用無線部12は、請求項に記載した低消費電力用無線部に相当している。
【0038】
本センサ端末10の特徴部分について具体的に説明する。
磁気センサ21は、磁気を検知してセンサデータを出力する非接触センサであり、本センサ端末10の防水筐体19内に設けられている。
【0039】
磁気センサ21は、常時磁気を検出して、検出された磁気レベルに応じたセンサデータを出力している。平常時には、磁気センサ21の出力はLレベルとなっている。
外部から磁石が近づけられた場合には、磁気センサ21は平常時より強い磁気を検出して、Hレベルのセンサデータを出力する。
【0040】
制御部11の記憶部(図示せず)は、接続されている複数のセンサの内、いずれかのセンサをトリガセンサとして記憶している。ここでは、磁気センサ21をトリガセンサとして記憶している。
そして、本センサ端末10は、磁気センサ21をトリガセンサとして利用して、特定の動作を行うようにしている。具体的には、磁気センサ21がオンになった場合には、制御部11が、高速通信用無線部13をオンにして、ファームウェアの書き換えを行う。
高速通信用無線部13は、FSK変調されたデータを送受信するものであり、LoRa変調のLPWA用無線部12に比べてビットレートが高く、高速通信が可能である。
【0041】
[本センサ端末10の動作]
本センサ端末10の動作として、ファームウェアの更新について説明する。
本センサ端末10の制御部11は、トリガセンサである磁気センサ21からのセンサデータを監視し、センサデータがHレベルになった場合(オンになった場合)に、高速通信用無線部13を一定時間オンとするように制御する。
これにより、本センサ端末10は、ネットワークサーバ3又は親局2又はファームウェアデータ送信用無線端末と高速無線通信を行って、ファームウェア書き換え要求及びファームウェアデータを受信する。
【0042】
制御部11は、高速通信用無線部13からファームウェア書き換え要求を受信すると、それに続いて受信したファームウェアデータで、ファームウェアの書き換えを行う。
そして、制御部11は、ファームウェアの書き換えが完了した場合、又は高速通信用無線部13をオンとしてから一定時間が経過した場合に、高速通信用無線部13を再びオフとする。
【0043】
つまり、本センサ端末10においてファームウェアの更新が必要になった場合には、保守員が防水筐体19の外から磁石を近づけることで、磁気センサ21をオンとして、それをトリガとして制御部11が高速通信用無線部13をオンとし、新しいファームウェアデータを受信して更新するものである。
磁気センサ21の実装場所は、防水筐体19を開けなくても、磁石を接近させればオンとなる場所とする。
【0044】
これにより、本センサ端末10では、ファームウェアの更新時に、防水筐体19を開けて有線コネクタでPCを接続する必要がなくなり、防水機能の劣化を防ぐことができるものである。
また、高速通信用無線部13によってファームウェアデータを受信するので、短時間で受信して、迅速にファームウェアの更新を行うことができるものである。
更に、制御部11が、高速通信用無線部13をオンにしてから一定時間経過後にオフにするので、消費電力の増大を抑えることができるものである。
【0045】
[水位監視システムの例:図2
次に、本センサ端末10を用いた遠隔監視システム(本遠隔監視システム)の例について図2を用いて説明する。図2は、本遠隔監視システムの例として水位監視システムを示す説明図である。
水位監視システムは、本センサ端末10と、水位センサ5と、親局2とを備えており、親局2は、図8に示したネットワークサーバ3に接続されている。
そして、水位センサ5が河川の水位hを測定して、センサ端末10の制御部11に出力し、制御部11が、水位hと予め設定された警戒水位hcとを比較して、水位hが警戒水位hcを超えた場合(h>hc)に、本センサ端末10からLPWA通信によって親局2に警戒水位を超えた旨を示すデータを送信する。
【0046】
[本センサ端末10の状態遷移:図3
次に、上述した水位監視システムにおける本センサ端末10の状態遷移について図3を用いて説明する。図3は、本センサ端末の状態遷移図である。
図3に示すように、本センサ端末10は、電源が投入されてセンサ監視状態(S301)になると、センサデータ(水位h)を監視し、センサの状態変化として水位が警戒水位を超えたことを検出すると、親局2へLPWA通信により警戒水位を超えたことを示す情報を送信し(S311)、送信完了するとセンサ監視状態(S301)に戻る。
尚、ここでは、センサデータがしきい値(警戒水位hc)を超えた場合に送信を行うようにしたが、定期的又は予め設定されたスケジュールに従って水位のセンサデータを送信してもよい。
【0047】
また、本センサ端末10は、センサ監視状態(S301)において、有線通信でのファームウェア書き換え要求を受信すると、有線通信によるファームウェアデータの受信を行い(S321)、ファームウェアの書き換えを行って(S322)、センサ監視状態(S301)に戻る。処理S321,S322は従来と同様の動作である。
【0048】
更に、本センサ端末10の特徴として、トリガセンサである磁気センサ21がオンになったことを検出すると、高速通信用無線部13を起動する(S331)。磁気センサ21は、保守員等が磁石を近づけることでオンとする。
【0049】
そして、高速無線通信によりファームウェアデータを受信し(S332)、受信完了すると、制御部11はファームウェアの書き換えを行い(S333)、書き換えが完了すると、高速通信用無線部13をオフにして高速無線通信を終了し(S334)、センサ監視状態(S301)に戻る。
尚、状態S331で高速無線通信を起動してから一定時間が経過すると、本センサ端末10は、状態S334に移行して高速無線通信を終了する(通信タイムアウト)。
このようにして本センサ端末10の状態遷移が行われる。
【0050】
[実施の形態の効果]
本センサ端末10によれば、防水筐体19の外から状態を変えられる非接触センサ(トリガセンサ)を備え、当該トリガセンサがオンになると、制御部11が、高速通信用無線部13を動作させ、ファームウェア書き換えの指示を受信すると、受信したファームウェアのデータで記憶しているファームウェアを更新するようにしているので、例えばトリガセンサとして磁気センサ21を備えておけば、保守員が、外部から磁石等で磁気センサ21をオンとすることで、高速通信用無線部13を駆動させて、高速通信でファームウェアデータを受信して更新することができ、防水筐体19を開かないため防水性を損なわず、迅速にファームウェアの書き換えを行うことができるものである。
【0051】
また、本センサ端末10によれば、ファームウェアの書き換え時にセンサ端末を取り外す必要はなく、設置されたままの状態で書き換え可能であるため、保守員の作業量を大幅に低減でき、ファームウェア更新に要する時間を短縮することができる効果がある。
【0052】
また、本センサ端末10によれば、制御部11が、ファームウェアの書き換えが終了した場合、若しくは高速通信用無線部13をオンにしてから一定時間が経過した場合には、高速通信用無線部13をオフにするようにしているので、消費電力の大きい高速通信用無線部13を必要以上に駆動しないようにして、消費電力をできるだけ抑えることができる効果がある。
【0053】
[別の実施の形態]
次に、本発明の別の実施の形態に係る計測端末装置(別のセンサ端末)について説明する。
別のセンサ端末は、上述した本センサ端末10と同様の構成であるため、同一の符号を付して説明するが、制御部11の動作が一部異なっている。別のセンサ端末の制御部11は、トリガセンサがオンになった場合に、動作モードを切り替えるよう制御する。
【0054】
動作モードは、親局2に送信するセンサデータ、送信タイミング、伝送フォーマット等を規定するものであり、別のセンサ端末では、トリガセンサのオン/オフに対応付けて、2種類の動作モードを切り替えて設定するようにしている。
ここでは、動作モードとしてモード1とモード2とを備え、トリガセンサのオン/オフで動作モードを切り替えるものとして説明する。そして、各動作モードの動作の内容は、予め動作モードテーブルとして設定されて制御部11内部の記憶部に記憶されている。
トリガセンサは、外部センサ又は非接触センサであり、予め設定されている。
【0055】
[動作モードの例(1):図4
別のセンサ端末における動作モードの例(1)について図4を用いて説明する。図4は、動作モードの例(1)を示す説明図である。
図4に示した動作モードテーブルは、水位監視システムにおけるものであり、モード1、モード2のそれぞれに対応して、データを送るセンサ、送信タイミング(送信間隔)、伝送フォーマットを規定している。
【0056】
ここでは、水位センサNo.1をトリガセンサとしており、水位センサNo.1がオフの場合(水位データが警戒水位以下の場合)には、制御部11は動作モードとしてモード1を設定し、水位センサNo.1がオンの場合(水位データが警戒水位を超えた場合)にはモード2を設定する。
【0057】
動作モードの内容は任意に設定することが可能である。
例えば、図4(a)の場合、平常時であるモード1の場合、水位センサNo.1のみのデータを親局2に送信し、送信タイミングは、省電力の観点から例えば1時間に1回程度の間隔(図示省略)で送信するよう設定されている。また、平常時には、「正常」を示すデータのみを送信してもよい。
【0058】
警戒時に設定されるモード2の場合、平常時に水位データを送信する水位センサNo.1に加えて、別の箇所に設置されている水位センサNo.2、水位センサNo.3の水位データも送信する。つまり、トリガセンサがオンになった場合に、それまでのセンサと同じ種類のセンサの数を増やしてセンサデータを送信するものである。
また、モード2における送信タイミングは、モード1の場合よりも頻度が高く設定されている。
【0059】
このように、モード変更により送信するセンサデータの数が変わった場合に、送信回数を増大させて伝送データ全体のデータ量を増やすのは好ましくない。そこで、別のセンサ端末では、所定のデータ長を効率的にセンサデータに割り付けるよう伝送フォーマットを変更して、一定のデータ長で多くの種類のセンサデータを送信可能としている。
そのため、動作モードに対応して、効率よくセンサデータを送信できる伝送フォーマットが規定されている。伝送フォーマットの例については、後述する。
【0060】
また、図4(b)に示す動作モードテーブルでは、モード1は(a)と同じであるが、警戒時のモード2では、水位センサNo.1に加えて流量センサのセンサデータを送信するよう設定されている。
つまり、トリガセンサがオンになった場合に、それまでのセンサとは異なる種類のセンサデータを追加して送信するものである。
【0061】
[動作モードの例(2):図5
更に、別の動作モードについて図5を用いて説明する。図5は、動作モードの例(2)を示す説明図である。
図5では、人が集まるような場所に設置された別のセンサ端末における動作モードテーブルの例を示している。
ここでは、例えば人感センサをトリガセンサとしており、人感センサがオフの場合(人を検出していない場合)には、制御部11は動作モードとしてモード1を設定し、人感センサがオンの場合(人を検出した場合)には、モード2を設定する。
【0062】
具体的には、人が検出されていない場合には、モード1として温度センサNo.1のみのセンサデータが送信され、人が検出された場合には、モード2として温度センサNo.1に加えて、温度センサNo.2、CO2センサ、湿度センサのセンサデータを送信する。
各モードに対応して、送信タイミング及び伝送フォーマットも規定されている。
【0063】
尚、モード1からモード2への切り替えは、トリガセンサのオンによって行われ、モード2からモード1への切り替えは、トリガセンサのオフによって行われるが、モード2に切り替わってから一定時間が経過すると、制御部11がモード1に戻すよう制御してもよい。
【0064】
同様に、トリガセンサとして光センサを用いることも可能である。別のセンサ端末が暗い場所に設置されている場合に、保守員が別のセンサ端末に設けられている光センサに光を照射することで、動作モードの切り替えを行う。
【0065】
[非接触センサを用いた例]
更に別の例として、防水筐体19内部に設けられた磁気センサ21をトリガセンサとして設定しておき、保守員が磁石で磁気センサ21をオンとすることで、動作モードを切り替えるよう構成することも可能である。磁気センサ21は、非接触センサであり、防水筐体19の外からオンとすることができるものである。
【0066】
例えば、集約したセンサデータを分析・解析した結果、データ送信の間隔や送信するセンサデータ項目の変更等が必要となった場合に、従来はネットワークサーバ3や親局2からの制御は困難であったが、別のセンサ端末では、磁気センサ21をトリガセンサとして動作モードを切り替えることで、容易に動作内容を変更することができるものである。
【0067】
また、特定の無線信号(微弱電波等)を受信した場合に電気信号を発生するセンサを備えて、保守員が無線信号を発生する装置を近づけることでセンサをオンとして、動作モードを切り替えるよう構成することも可能である。
【0068】
[データ伝送フォーマットの例:図6
次に、別のセンサ端末におけるデータ伝送フォーマットについて図6を用いて説明する。図6は、データ伝送フォーマットの例を示す説明図である。
図6(a)(b)は、それぞれ伝送データを示しており、(a)と(b)ではデータ格納のフォーマットが異なっている。
伝送フォーマット(a)(b)共に、伝送データの先頭部分には、共通データ部が設けられ、共通データ部に続いてセンサデータ格納部が設けられている。
【0069】
別のセンサ端末の伝送フォーマットでは、共通データ部のフォーマットは固定であるが、センサデータ格納部は、送信されるセンサデータの種類や数に応じて自由に組み替え可能であり、動作モードで規定されたデータを送るセンサに対応して予めセンサデータ格納部を適宜割り付けたフォーマットを設定しておく。
【0070】
そして、図4,5に示した動作モードテーブルに、動作モードに対応して記憶しておき、センサデータ送信時には、規定されたセンサのセンサデータを、動作モードに対応する伝送フォーマットに組み込んで送信する。
尚、用途によっては、伝送データ量を小さくするために、正常時には「正常」を示すフラグを共通データ部内に含めて、共通データ部のみを送るようにしてもよい。
更に、伝送フォーマットの情報を共通データ部に含めて送信することで、伝送フォーマットが変更になった場合にネットワークサーバがその旨認識できるものとしている。
【0071】
これにより、別のセンサ端末では、送信するセンサデータの種類や数に応じて伝送フォーマットを変更し、適切な伝送フォーマットで送信することができ、LPWAで効率的にセンサデータを送信できるものである。
【0072】
[動作モード切替の処理:図7
次に、別のセンサ端末における動作モード切替の処理について図7を用いて説明する。図7は、動作モード切替の処理を示すフローチャートである。
図7に示すように、別のセンサ端末の制御部11は、トリガセンサ(水位センサ、人感センサ、磁気センサ等)の状態を監視し、トリガセンサがオンになったかどうかを判定して(S11)、オンになっていない場合(Noの場合)には、処理S11を繰り返す。
【0073】
また、処理S11でトリガセンサがオンになった場合(Yesの場合)には、制御部11は、当該トリガセンサに対応する動作モードテーブルに従って動作モードを切り替える(モード2にする)(S12)。
動作モードを切り替えることによって、データを送るべきセンサ、送信間隔、送信時のデータフォーマットが変更されるものである。
【0074】
そして、制御部11は、トリガセンサの状態を監視し、オフになったかどうかを判定して(S13)、オフになっていなければ(Noの場合)、監視を続ける。
処理S13でトリガセンサがオフになった場合には(Yesの場合)、制御部11は、動作モードを切り替えて元に戻し(モード1にし)、処理S11に移行する。
このようにして、別のセンサ端末における動作モード切替の動作が行われるものである。
【0075】
[別の実施の形態の効果]
別のセンサ端末によれば、制御部11が、予め任意に設定したトリガセンサのオン/オフに対応した2種類の動作モードと各動作モードに対応する伝送フォーマットとを記憶しており、トリガセンサのオン/オフの状態に応じて、動作モードを切り替えて設定すると共に、設定された伝送フォーマットでセンサデータを送信するものであり、動作モードとして、送信すべきセンサデータ、送信スケジュール、伝送フォーマット等を設定しておけば、状況に応じて筐体の外からトリガセンサを動作させて、センサ端末の動作モードを変更でき、動作モードに応じて効率よくセンサデータを送信することができる効果がある。
【0076】
更に、上述した例では、動作モードを2種類備えた場合を説明したが、より多くの動作モードを予め記憶しておき、複数の動作モードの中から、トリガセンサのオン/オフに対応してどの動作モードを設定するのかを特定しておいてもよい。
例えば、トリガセンサのオンの場合にモード1、オフの場合にモード2とする(モード1,モード2)のか、あるいはオンの場合にモード1、オフの場合にモード3とする(モード1,モード3)のかを予め決めておけば、上述した例と同様に1つのトリガセンサで動作モードの切り替えを行うことができるものである。
【0077】
更にまた、別のトリガセンサを用いて、動作モードの組み合わせを切り替えて選択したり、巡回的に選択するように構成すれば、様々な状況に応じてきめ細かいセンシング動作を行うことができ、それらを外部から容易に切り替えることができる効果がある。
【0078】
尚、本センサ端末10及び別のセンサ端末に搭載される状態監視用のセンサとしては、温度センサ、湿度センサ、加速度センサ、水位センサ、GPSセンサ、熱煙センサ、CO2センサ、COセンサ、PM2.5センサ、人感センサ等がある。
【0079】
また、トリガセンサとしては、本センサ端末10では、非接触センサである磁気センサ、光センサ、微弱無線を利用したセンサ等を用いる。
別のセンサ端末では、トリガセンサとして、上述した状態監視用のセンサのいずれかを設定してもよいし、これらとは別に本センサ端末10と同様の非接触センサを設けてもよい。
【0080】
更にまた、上述した例では、本センサ端末10と別のセンサ端末とを別の装置として記載したが、一体に構成しても構わない。
つまり、1つのセンサ端末で、トリガセンサがオンになると高速通信用無線部を起動してファームウェアを更新すると共に、動作モードを切り替えるように構成することも可能である。
各動作に対応するトリガセンサは同一のセンサであっても、別のセンサであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、防水機能を損なわず、状況に応じて動作モードを切り替え、効率的にセンサデータを伝送できる計測端末装置及び遠隔監視システムに適している。
【符号の説明】
【0082】
1,70,10…センサ端末、 2…親局、 3…ネットワークサーバ、 5…水位センサ、 11,71…制御部、 12,72…LPWA通信用無線部、 13,73…高速通信用無線部、 14,74…有線通信コネクタ、 15,75…外部センサ、 16,76…内部センサ、 17,77…電池、 18,78…防水コネクタ、 19,79…防水筐体、 21…磁気センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9