(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】両面丸編機
(51)【国際特許分類】
D04B 9/08 20060101AFI20240228BHJP
D04B 9/28 20060101ALI20240228BHJP
D04B 15/48 20060101ALI20240228BHJP
D04B 15/58 20060101ALI20240228BHJP
D04B 15/82 20060101ALI20240228BHJP
D04B 15/86 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
D04B9/08
D04B9/28
D04B15/48
D04B15/58 101
D04B15/82 305
D04B15/86
(21)【出願番号】P 2023043411
(22)【出願日】2023-03-17
【審査請求日】2023-03-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】393010101
【氏名又は名称】佰龍機械廠股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 志強
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特許第7089126(JP,B1)
【文献】特開2018-178287(JP,A)
【文献】特開2018-178288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 3/00-19/00
D04B23/00-39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
編み歯口と、前記編み歯口に2つの編糸を給糸する少なくとも1つの給糸口と、少なくとも1つの上編針カムと、前記少なくとも1つの上編針カムによってガイドされる複数の上編針と、少なくとも1つの下編針カムと、前記少なくとも1つの下編針カムによってガイドされる複数の下編針とを含み、前記2つの編糸の色が互いに異なっており、前記2つの編糸は前記編み歯口内に位置する針引き込み点に交差する両面丸編機において、
前記両面丸編機は、選針装置を備え、前記複数の下編針のそれぞれは前記選針装置によって制御されて2つの針引き込み状態を備え、前記複数の下編針のそれぞれは、前記2つの針引き込み状態のそれぞれにおいて糸引っ掛け点を備え、2つの前記糸引っ掛け点の前記編み歯口における位置は異なり、2つの前記糸引っ掛け点と前記針引き込み点の間の距離は異なり、前記複数の下編針のそれぞれは、他の補助的方式を介さず、2つの前記糸引っ掛け点の一方において前記2つの編糸を牽引して、前記2つの編糸の相対位置で、表糸と裏糸との位置が交換せず、
編み物が表糸より色を提示する通常テリー編みか表糸と裏糸との位置が交換し、
前記編み物が裏糸より色を提示する逆テリー編みでループを形成させるように決定することを特徴とする両面丸編機。
【請求項2】
前記両面丸編機は、少なくとも2つの給糸口を備え、少なくとも2つの前記給糸口のそれぞれは、前記編み歯口に前記2つの編糸を給糸し、少なくとも2つの前記給糸口によって前記編み歯口に給糸される複数の編糸の色は互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の両面丸編機。
【請求項3】
前記複数の下編針のそれぞれは、第1ハーフステッチ位置を備え、前記複数の上編針のそれぞれは、第2ハーフステッチ位置を備え、前記複数の下編針のそれぞれは、前記2つの針引き込み状態のそれぞれにおいて、前記第1ハーフステッチ位置から針引き込みを開始する第1針引き込み起始点を備え、前記複数の上編針のそれぞれは、前記第2ハーフステッチ位置から針引き込みを開始する第2針引き込み起始点を備え、前記第2針引き込み起始点の前記編み歯口における位置は、2つの前記第1針引き込み起始点の前記編み歯口における位置の間にあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の両面丸編機。
【請求項4】
前記2つの編糸のそれぞれは、給糸経路を備え、前記2つの給糸経路は異なり、前記2つの給糸経路の2つの延長線は、前記針引き込み点に交差することを特徴とする請求項3に記載の両面丸編機。
【請求項5】
前記複数の下編針のそれぞれは、前記2つの針引き込み状態のそれぞれにおいて第1ループ解消点を備え、前記複数の上編針のそれぞれは、運動時に第2ループ解消点を備え、前記複数の上編針の前記第2ループ解消点に入るタイミングは、前記複数の下編針の前記第1ループ解消点に入るタイミングより早いことを特徴とする請求項4に記載の両面丸編機。
【請求項6】
前記複数の下編針のそれぞれは、前記2つの針引き込み状態のそれぞれにおいて第1ループ解消点を備え、前記複数の上編針のそれぞれは、運動時に第2ループ解消点を備え、前記複数の上編針の前記第2ループ解消点に入るタイミングは、前記複数の下編針の前記第1ループ解消点に入るタイミングより早いことを特徴とする請求項1又は2に記載の両面丸編機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面丸編機に関し、特に、両面編み物を編む時に先染めジャカードを実施できる丸編機である。
【背景技術】
【0002】
従来の丸編機の設計では、両面編み物を多色で実施する場合、編んでから染めるのが一般的である。先染めジャカードで実施する場合、当該両面編み物の布地の重さと厚さは明らかに商用利用可能な布地の要件に合致しない。具体的に言えば、従来の丸編機において先染めジャカードを行う場合、給糸口から色糸を給糸する方式で実施する必要があり、4色ジャカードを実現する場合には、一つの編み工程で4つの給糸口を通過するため、当該両面編み物には上記の問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の主な目的は、従来の丸編機構造において実施される先染めジャカード両面編み物には布地の厚さと重さが市場のニーズを満たしにくいという課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の目的を達成するために、編み歯口と、当該編み歯口に2つの編糸を給糸する少なくとも1つの給糸口と、少なくとも1つの上編針カムと、当該少なくとも1つの上編針カムによってガイドされる複数の上編針と、少なくとも1つの下編針カムと、当該少なくとも1つの下編針カムによってガイドされる複数の下編針と、選針装置とを含む両面丸編機を提供する。当該2つの編糸は当該編み歯口内に位置する針引き込み点に交差し、当該複数の下編針のそれぞれは当該選針装置によって制御されて2つの針引き込み状態を備え、当該複数の下編針のそれぞれは、当該2つの針引き込み状態のそれぞれにおいて糸引っ掛け点を備え、2つの当該糸引っ掛け点の当該編み歯口における位置は異なり、2つの当該糸引っ掛け点と当該針引き込み点の間の距離は異なり、当該複数の下編針のそれぞれは、2つの当該糸引っ掛け点の一方において当該2つの編糸を牽引して、当該2つの編糸のカレントの相対位置で、今回は通常テリー編みか逆テリー編みでループを形成させるように決定する。
【0005】
一実施例において、当該両面丸編機は、2つの給糸口を備え、2つの当該給糸口のそれぞれは、当該編み歯口に当該2つの編糸を給糸し、2つの当該給糸口によって当該編み歯口に給糸される複数の編糸の色は互いに異なる。
【0006】
一実施例において、当該複数の下編針のそれぞれは、第1ハーフステッチ位置を備え、当該複数の上編針のそれぞれは、第2ハーフステッチ位置を備え、当該複数の下編針のそれぞれは、当該2つの針引き込み状態のそれぞれにおいて、当該第1ハーフステッチ位置から針引き込みを開始する第1針引き込み起始点を備え、当該複数の上編針のそれぞれは、当該第2ハーフステッチ位置から針引き込みを開始する第2針引き込み起始点を備え、当該第2針引き込み起始点の当該編み歯口における位置は、2つの当該第1針引き込み起始点の当該編み歯口における位置の間にある。
【0007】
一実施例において、当該2つの編糸のそれぞれは、給糸経路を備え、当該2つの給糸経路は異なり、当該2つの給糸経路の2つの延長線は、当該針引き込み点に交差する。
【0008】
一実施例において、当該複数の下編針のそれぞれは、当該2つの針引き込み状態のそれぞれにおいて第1ループ解消点を備え、当該複数の上編針のそれぞれは、運動時に第2ループ解消点を備え、当該複数の上編針の当該第2ループ解消点に入るタイミングは、当該複数の下編針の当該第1ループ解消点に入るタイミングより早い。
【発明の効果】
【0009】
本発明を上記のとおりに実施することにより、従来の技術と比べて次の特徴が得られる。本発明では、複数の下編針のそれぞれが選針装置によって制御されて2つの針引き込み状態を備え、複数の下編針のそれぞれの2つの針引き込み状態における糸引っ掛け点の位置が異なることで通常テリー編みでループを形成するか又は逆テリー編みでループを形成することが決定され、さらに、両面編み物を編むプロセスにおいて先染めジャカードが実現される。本発明は、多色ジャカードの両面編み物の布地の重さ、厚さが従来の丸編機で編み上げたものより明らかに軽くて薄く、服装の設計要件により近づける。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の両面丸編機の局所構造の模式図その1である。
【
図2】
図2は、本発明の両面丸編機の局所構造の模式図その2である。
【
図3】
図3は、本発明の両面丸編機の一方の針引き込み状態における実施の模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の両面丸編機於の他方の針引き込み状態における実施の模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の両面丸編機の局所構造の上面図である。
【
図6】
図6は、本発明の両面丸編機の一方の針引き込み状態における編針軌跡の模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の両面丸編機の他方の針引き込み状態における編針軌跡の模式図である。
【
図8】
図8は、本発明の両面丸編機の一実施例の両面編み物の編成の模式図である。
【
図9】
図9は、本発明の両面丸編機の一実施例の編針によって完成された両面編み物の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の技術内容を詳細に説明する。
図1及び
図2が参照されるとおり、本発明は、編み歯口21と、少なくとも1つの給糸口22と、少なくとも1つの上編針カム23と、複数の上編針24と、少なくとも1つの下編針カム25と、複数の下編針26と、選針装置27とを含む両面丸編機20を提供する。編み歯口21は、上ダイヤル28と下シリンダ29の両方から確定され、編み歯口21は、複数の上編針24と複数の下編針26が交互に動作して両面編み物を編む場所である。また、少なくとも1つの給糸口22は、両面丸編機20に取り付けられた給糸機構によって実現され、当該給糸機構は両面丸編機20にとって従来の部品であるため、ここで説明を省略する。少なくとも1つの上編針カム23は上ダイヤル28に設けられ、少なくとも1つの上編針カム23は、複数のカムブロックによって構成されてもよく、少なくとも1つの上編針カム23は複数の上編針24が運動するための上編針レールを形成させる。複数の上編針24が少なくとも1つの上編針カム23によってガイドされて、編み歯口21内で往復運動して編み動作が生じる。また、少なくとも1つの下編針カム25は下シリンダ29に設けられ、少なくとも1つの下編針カム25は、複数のカムブロックによって構成されてもよい。本発明では、少なくとも1つの下編針カム25は複数の下編針26が運動するための下編針レールを形成させ、当該下編針レールにおいて、複数の下編針26のそれぞれは、少なくとも2つの軌跡で運動することができる。さらに、複数の下編針26が少なくとも1つの下編針カム25によってガイドされて、編み歯口21内で往復運動することで、編み動作が生じる。また、本発明では、複数の下編針26と複数の上編針24が協働して当該両面編み物を編む。さらに、選針装置27は、丸編機コントローラ(不図示)から提供される信号に基づいて複数の下編針26のそれぞれの運動状態を制御し、選針装置27は、複数の下編針26のそれぞれの選針脚を動かすことで複数の下編針26のそれぞれの当該下編針レール内で運動する位置を変え、これによって複数の下編針26のそれぞれは当該少なくとも2つの軌跡の一方で運動する。
【0012】
図3及び
図4が参照されるとおり、給糸口22は、編み歯口21に2つの編糸30、31を給糸するように設定され、2つの編糸30、31は編み歯口21内に位置する針引き込み点32に交差し、針引き込み点32の水平位置は複数の上編針24より低い。さらに、2つの編糸30、31のそれぞれは給糸経路301、311を備え、2つの給糸経路301、311は異なり、2つの給糸経路301、311の2つの延長線は針引き込み点32に交差する。また、2つの編糸30、31を両面丸編機20の側面の方から観察すると、2つの編糸30、31は針引き込み点32に交差し、且つ2つの編糸30、31は一方が高く他方は低く、これは
図3に示されるとおりである。また、2つの編糸30、31を両面丸編機20の上面の方から観察すると、2つの編糸30、31は針引き込み点32に交差し、且つ2つの編糸30、31は一方が前方、他方は後方にあり、これは
図5に示されるとおりである。さらに、両面丸編機20の編み歯口21は円形であり、針引き込み点32を基準にして2つの編糸30、31の針引き込み点32と異なる距離にある相対位置を観察すると、2つの編糸30、31の相対位置は絶対的ではないことが分かる。
【0013】
図3、
図4、
図6及び
図7を合わせて参照されるとおり、また、複数の下編針26のそれぞれは選針装置27によって制御されて2つの針引き込み状態を備え、複数の下編針26のそれぞれは当該2つの針引き込み状態のそれぞれにおいて糸引っ掛け点261(262)を備え、糸引っ掛け点261(262)とは、複数の下編針26のそれぞれが、糸を引っ掛けてループを形成させるプロセスで2つの編糸30、31を引っ掛ける位置を指す。また、2つの糸引っ掛け点261、262の編み歯口21における位置は異なり、2つの糸引っ掛け点261、262と針引き込み点32の間の距離は異なる。即ち、2つの糸引っ掛け点261、262の一方は針引き込み点32に近く、2つの糸引っ掛け点261、262の他方は針引き込み点32から遠い。また、複数の下編針26のそれぞれは、2つの糸引っ掛け点261、262の一方において2つの編糸30、31を牽引して、2つの編糸30、31のカレントの相対位置で、今回は通常テリー編みか逆テリー編みでループを形成させるように決定する。具体的に言えば、前記通常テリー編み又は逆テリー編みは、2つの編糸30、31の複数の下編針26のそれぞれのフック部263内での相対位置に基づいて確定される。なお、本発明では、複数の下編針26のそれぞれが2つの糸引っ掛け点261、262の一方において糸を引っ掛ける時に、2つの編糸30、31の複数の下編針26の一方のフック部263内での相対位置が既に決定されており、他の手段によって2つの編糸30、31のフック部263内での相対位置を変えない。2つの編糸30、31は通常テリー編み又は逆テリー編みでループとして形成されることで、当該両面編み物の表面の色を変えて、先染めジャカードを実現できる。一実施例において、両面丸編機20は、2つの給糸口22を備え、2つの給糸口22のそれぞれは、編み歯口21に2つの編糸30、31(33、34)を給糸し、2つの給糸口22によって編み歯口21に給糸される複数の編糸30、31、33、34の色は互いに異なる。さらに、2つの給糸口22によって編み歯口21に給糸される複数の編糸30、31;33、34の数は4つであり、これによって2つの給糸口による4色の先染めジャカードを実現でき、両面丸編機20の編成シーケンス(Knitting sequence)は
図8に示されるとおりであり、編み上げた当該両面編み物は
図9に示されるとおりである。
図8で40と41は2つの給糸口のそれぞれの編み順を示す。本発明では、4色ジャカードの当該両面編み物の布地の重さ、厚さが4つの給糸口で4色に編み上げた従来のものより明らかに軽くて薄いため、服装の設計要件により近づける。
【0014】
図6及び
図7が参照されるとおり、一実施例において、複数の下編針26のそれぞれは、第1ハーフステッチ位置264を備え、複数の上編針24のそれぞれは、第2ハーフステッチ位置241を備え、複数の下編針26のそれぞれは、当該2つの針引き込み状態のそれぞれにおいて、第1ハーフステッチ位置264から針引き込みを開始する第1針引き込み起始点265(又は267)を備え、複数の上編針24のそれぞれは、第2ハーフステッチ位置241から針引き込みを開始する第2針引き込み起始点242を備え、第2針引き込み起始点242の編み歯口21における位置は、2つの第1針引き込み起始点265、267の編み歯口21における位置の間にある。また、複数の下編針26のそれぞれは、当該2つの針引き込み状態のそれぞれにおいて第1ループ解消点266を備え、複数の上編針24のそれぞれは、運動時に第2ループ解消点243を備え、複数の上編針24の第2ループ解消点243に入るタイミングは、複数の下編針26の第1ループ解消点266に入るタイミングより早い。
【符号の説明】
【0015】
20 両面丸編機
21 編み歯口
22 給糸口
23 上編針カム
24 上編針
241 第2ハーフステッチ位置
242 第2針引き込み起始点
243 第2ループ解消点
25 下編針カム
26 下編針
261、262 糸引っ掛け点
263 フック部
264 第1ハーフステッチ位置
265、267 第1針引き込み起始点
266 第1ループ解消点
27 選針装置
28 上ダイヤル
29 下シリンダ
30、31、33、34 編糸
301、311 給糸経路
32 針引き込み点
40、41 給糸口のそれぞれの編み順を示す
【要約】 (修正有)
【課題】多色ジャカードの両面編み物の布地の重さ、厚さが従来の丸編機で編み上げたものより軽くて薄くできる両面丸編機を提供する。
【解決手段】両面丸編機であって、編み歯口21と編み歯口に2つの編糸30,31を給糸する少なくとも1つの給糸口22と複数の上編針24と複数の下編針26と選針装置とを含む。2つの編糸は編み歯口内に位置する針引き込み点32に交差し、複数の下編針のそれぞれは選針装置によって制御されて2つの針引き込み状態を備え、複数の下編針のそれぞれは2つの針引き込み状態のそれぞれにおいて糸引っ掛け点261を備え、2つの糸引っ掛け点の編み歯口における位置は異なり、2つの糸引っ掛け点と針引き込み点の間の距離は異なり、複数の下編針のそれぞれは2つの糸引っ掛け点の一方において2つの編糸を牽引して、2つの編糸のカレントの相対位置で今回は通常テリー編みか逆テリー編みでループを形成させるように決定する。
【選択図】
図3