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特許7445057学習装置、検査装置、アライメント装置および学習方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】学習装置、検査装置、アライメント装置および学習方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240228BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G06T7/00 350C
G06T7/00 610C
H01L21/66 J
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023082788
(22)【出願日】2023-05-19
(62)【分割の表示】P 2019170277の分割
【原出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2023109897
(43)【公開日】2023-08-08
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】疋田 雄一郎
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-060141(JP,A)
【文献】特開2012-002663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上にパターンを有する基板における、前記パターンの画像と設計データとの関係を学習する学習装置であって、
前記基板上に形成された、欠陥を有しないパターンを撮像して得られた学習用画像と、前記学習用画像に対応する部分領域に含まれる設計データとの組み合わせである学習用データを入力する入力部と、
前記学習用データの集合である学習用データセットを用いたディープラーニングにより、前記パターンの設計データと学習用画像との関係を学習させて学習済みモデルを作成する学習部と、
を備えることを特徴とする学習装置。
【請求項2】
請求項1に記載の学習装置であって、
前記学習用データセットは、
一の学習用データと、
前記一の学習用データの設計データと前記一の学習用データの学習用画像の輝度またはコントラストを変更した学習用画像との組み合わせである他の学習用データと、
を含むことを特徴とする学習装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の学習装置であって、
前記学習用データセットは、
一の学習用データと、
前記一の学習用データの設計データを回転または反転させた設計データと前記一の学習用データの学習用画像を前記設計データと同様に回転または反転させた学習用画像との組み合わせである他の学習用データと、
を含むことを特徴とする学習装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の学習装置であって、
前記学習用データセットの各学習用データは、前記基板上において前記パターンが設けられているパターン領域の一部である部分領域における前記パターンの設計データと学習用画像との組み合わせであり、
前記パターン領域における前記各学習用データの前記部分領域の位置はランダムに決定されることを特徴とする学習装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の学習装置であって、
前記学習用データセットの各学習用データは、前記基板上において前記パターンが設けられているパターン領域の一部である部分領域における前記パターンの設計データと学習用画像との組み合わせであり、
前記パターン領域の各位置は、前記学習用データセットのいずれかの学習用データに対応する前記部分領域に含まれることを特徴とする学習装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の学習装置であって、
前記基板上に、前記パターンがそれぞれ設けられている複数のパターン領域が配置されており、
前記学習用データセットは、前記複数のパターン領域のそれぞれにおける前記パターンの設計データと学習用画像との組み合わせである複数の学習用データを含むことを特徴とする学習装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の学習装置であって、
前記学習用データセットは、前記パターンを表面上に有する複数の基板のそれぞれにおける前記パターンの設計データと学習用画像との組み合わせである複数の学習用データを含むことを特徴とする学習装置。
【請求項8】
表面上にパターンを有する基板を検査する検査装置であって、
基板上のパターンを撮像して被検査画像を取得する撮像部と、
前記パターンの設計データを、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の学習装置により生成された学習済みモデルに入力し、参照画像を生成する参照画像生成部と、
前記被検査画像を前記パターンの設計データから生成された前記参照画像と比較して、前記基板における欠陥の有無を検査する検査部と、
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項9】
表面上にパターンを有する基板の位置を調節するアライメント装置であって、
基板上のパターンを撮像して対象画像を取得する撮像部と、
前記パターンの設計データを、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の学習装置により生成された学習済みモデルに入力し、参照画像を生成する参照画像生成部と、
前記対象画像を前記パターンの設計データから生成された前記参照画像と比較して前記基板の位置を取得するアライメント部と、
前記アライメント部により取得された前記基板の位置に基づいて、前記基板を相対移動して位置を調節する基板移動機構と、
を備えることを特徴とするアライメント装置。
【請求項10】
表面上にパターンを有する基板における、前記パターンの画像と設計データとの関係を学習する学習方法であって、
a)前記基板上に形成された、欠陥を有しないパターンを撮像して得られた学習用画像と、前記学習用画像に対応する部分領域に含まれる設計データとの組み合わせである学習用データを入力する工程と、
b)前記学習用データの集合である学習用データセットを用いたディープラーニングにより、前記パターンの設計データと学習用画像との関係を学習させて学習済みモデルを作成する工程と、
を備えることを特徴とする学習方法。
【請求項11】
請求項10に記載の学習方法であって、
前記学習用データセットは、
一の学習用データと、
前記一の学習用データの設計データと前記一の学習用データの学習用画像の輝度またはコントラストを変更した学習用画像との組み合わせである他の学習用データと、
を含むことを特徴とする学習方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の学習方法であって、
前記学習用データセットは、
一の学習用データと、
前記一の学習用データの設計データを回転または反転させた設計データと前記一の学習用データの学習用画像を前記設計データと同様に回転または反転させた学習用画像との組み合わせである他の学習用データと、
を含むことを特徴とする学習方法。
【請求項13】
請求項10ないし12のいずれか1つに記載の学習方法であって、
前記学習用データセットの各学習用データは、前記基板上において前記パターンが設けられているパターン領域の一部である部分領域における前記パターンの設計データと学習用画像との組み合わせであり、
前記パターン領域における前記各学習用データの前記部分領域の位置はランダムに決定されることを特徴とする学習方法。
【請求項14】
請求項10ないし13のいずれか1つに記載の学習方法であって、
前記学習用データセットの各学習用データは、前記基板上において前記パターンが設けられているパターン領域の一部である部分領域における前記パターンの設計データと学習用画像との組み合わせであり、
前記パターン領域の各位置は、前記学習用データセットのいずれかの学習用データに対応する前記部分領域に含まれることを特徴とする学習方法。
【請求項15】
請求項10ないし14のいずれか1つに記載の学習方法であって、
前記基板上に、前記パターンがそれぞれ設けられている複数のパターン領域が配置されており、
前記学習用データセットは、前記複数のパターン領域のそれぞれにおける前記パターンの設計データと学習用画像との組み合わせである複数の学習用データを含むことを特徴とする学習方法。
【請求項16】
請求項10ないし15のいずれか1つに記載の学習方法であって、
前記学習用データセットは、前記パターンを表面上に有する複数の基板のそれぞれにおける前記パターンの設計データと学習用画像との組み合わせである複数の学習用データを含むことを特徴とする学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面上にパターンを有する基板における、当該パターンの画像と設計データとの関係を学習する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板やプリント配線基板等の製造工程では、基板の良否を判定する外観検査が行われている。半導体基板の外観検査では、例えば、1枚の基板上に設けられた複数のダイ同士を比較して欠陥を検出することが行われている。具体的には、1つのダイを撮像して得られた画像を参照画像とし、他のダイを撮像して得られた画像を被検査画像とし、被検査画像を参照画像と比較して差異を検出する。しかしながら、当該検査では、複数のダイに存在する同一の欠陥を検出することはできない。また、フォトマスクやレチクル等の基板には、比較する同一のパターンが存在しない場合もある。
【0003】
そこで、特許文献1では、半導体ウエハの基板上に形成される回路パターンについて、回路パターンを走査型電子顕微鏡(SEM)により撮像したSEM画像と、回路パターンの設計データ(CADデータ)から作成したCAD画像とを比較することにより、SEM画像上の欠陥を検出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-7563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のように設計データから参照画像を生成する場合、参照画像を短時間で容易に生成すること重要である。しかしながら、特許文献1では、外観検査の参照画像であるCAD画像の作成について、CADデータからCADPloyデータを作成してCAD画像を作成すると記載されているが、具体的な作成方法については記載されていない。
【0006】
また、技術者がCADデータから参照画像を作成しようとすると、CADデータが示す様々なパターンのそれぞれについて、熟練した技術者が経験に基づいて作成ロジックを組む必要があり、参照画像の作成開始までに多大な時間(例えば、数ヶ月~数年)が必要となる。さらに、作成された参照画像の質は、技術者の熟練度に左右される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、表面上にパターンを有する基板における、前記パターンの画像と設計データとの関係を学習する学習装置であって、前記基板上に形成された、欠陥を有しないパターンを撮像して得られた学習用画像と、前記学習用画像に対応する部分領域に含まれる設計データとの組み合わせである学習用データを入力する入力部と、前記学習用データの集合である学習用データセットを用いたディープラーニングにより、前記パターンの設計データと学習用画像との関係を学習させて学習済みモデルを作成する学習部と、を備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の学習装置であって、前記学習用データセットは、一の学習用データと、前記一の学習用データの設計データと前記一の学習用データの学習用画像の輝度またはコントラストを変更した学習用画像との組み合わせである他の学習用データとを含む。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の学習装置であって、前記学習用データセットは、一の学習用データと、前記一の学習用データの設計データを回転または反転させた設計データと前記一の学習用データの学習用画像を前記設計データと同様に回転または反転させた学習用画像との組み合わせである他の学習用データとを含む。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の学習装置であって、前記学習用データセットの各学習用データは、前記基板上において前記パターンが設けられているパターン領域の一部である部分領域における前記パターンの設計データと学習用画像との組み合わせであり、前記パターン領域における前記各学習用データの前記部分領域の位置はランダムに決定される。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の学習装置であって、前記学習用データセットの各学習用データは、前記基板上において前記パターンが設けられているパターン領域の一部である部分領域における前記パターンの設計データと学習用画像との組み合わせであり、前記パターン領域の各位置は、前記学習用データセットのいずれかの学習用データに対応する前記部分領域に含まれる。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の学習装置であって、前記基板上に、前記パターンがそれぞれ設けられている複数のパターン領域が配置されており、前記学習用データセットは、前記複数のパターン領域のそれぞれにおける前記パターンの設計データと学習用画像との組み合わせである複数の学習用データを含む。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の学習装置であって、前記学習用データセットは、前記パターンを表面上に有する複数の基板のそれぞれにおける前記パターンの設計データと学習用画像との組み合わせである複数の学習用データを含む。
【0014】
請求項8に記載の発明は、表面上にパターンを有する基板を検査する検査装置であって、基板上のパターンを撮像して被検査画像を取得する撮像部と、前記パターンの設計データを、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の学習装置により生成された学習済みモデルに入力し、参照画像を生成する参照画像生成部と、前記被検査画像を前記パターンの設計データから生成された前記参照画像と比較して、前記基板における欠陥の有無を検査する検査部とを備える。
【0015】
請求項9に記載の発明は、表面上にパターンを有する基板の位置を調節するアライメント装置であって、基板上のパターンを撮像して対象画像を取得する撮像部と、前記パターンの設計データを、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の学習装置により生成された学習済みモデルに入力し、参照画像を生成する参照画像生成部と、前記対象画像を前記パターンの設計データから生成された前記参照画像と比較して前記基板の位置を取得するアライメント部と、前記アライメント部により取得された前記基板の位置に基づいて、前記基板を相対移動して位置を調節する基板移動機構とを備える。
【0016】
請求項10に記載の発明は、表面上にパターンを有する基板における、前記パターンの画像と設計データとの関係を学習する学習方法であって、a)前記基板上に形成された、欠陥を有しないパターンを撮像して得られた学習用画像と、前記学習用画像に対応する部分領域に含まれる設計データとの組み合わせである学習用データを入力する工程と、b)前記学習用データの集合である学習用データセットを用いたディープラーニングにより、前記パターンの設計データと学習用画像との関係を学習させて学習済みモデルを作成する工程と、を備える。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の学習方法であって、前記学習用データセットは、一の学習用データと、前記一の学習用データの設計データと前記一の学習用データの学習用画像の輝度またはコントラストを変更した学習用画像との組み合わせである他の学習用データとを含む。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項10または11に記載の学習方法であって、前記学習用データセットは、一の学習用データと、前記一の学習用データの設計データを回転または反転させた設計データと前記一の学習用データの学習用画像を前記設計データと同様に回転または反転させた学習用画像との組み合わせである他の学習用データとを含む。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項10ないし12のいずれか1つに記載の学習方法であって、前記学習用データセットの各学習用データは、前記基板上において前記パターンが設けられているパターン領域の一部である部分領域における前記パターンの設計データと学習用画像との組み合わせであり、前記パターン領域における前記各学習用データの前記部分領域の位置はランダムに決定される。
【0020】
請求項14に記載の発明は、請求項10ないし13のいずれか1つに記載の学習方法であって、前記学習用データセットの各学習用データは、前記基板上において前記パターンが設けられているパターン領域の一部である部分領域における前記パターンの設計データと学習用画像との組み合わせであり、前記パターン領域の各位置は、前記学習用データセットのいずれかの学習用データに対応する前記部分領域に含まれる。
【0021】
請求項15に記載の発明は、請求項10ないし14のいずれか1つに記載の学習方法であって、前記基板上に、前記パターンがそれぞれ設けられている複数のパターン領域が配置されており、前記学習用データセットは、前記複数のパターン領域のそれぞれにおける前記パターンの設計データと学習用画像との組み合わせである複数の学習用データを含む。
【0022】
請求項16に記載の発明は、請求項10ないし15のいずれか1つに記載の学習方法であって、前記学習用データセットは、前記パターンを表面上に有する複数の基板のそれぞれにおける前記パターンの設計データと学習用画像との組み合わせである複数の学習用データを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】検査装置の構成を示す図である。
図2】第1コンピュータの構成を示す図である。
図3】第1コンピュータにより実現される機能構成を示す図である。
図4】第2コンピュータの構成を示す図である。
図5】第2コンピュータにより実現される機能構成を示す図である。
図6】参照画像の生成の流れを示す図である。
図7】基板の検査の流れを示す図である。
図8】アライメント装置の構成を示す図である。
図9】第1コンピュータにより実現される機能構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る検査装置1の構成を示す図である。検査装置1は、例えば、半導体基板9(以下、単に「基板9」とも呼ぶ。)の外観を検査する装置である。基板9の表面上には、パターンが形成されている。
【0025】
検査装置1は、基板9を撮像する装置本体2と、第1コンピュータ3と、第2コンピュータ4とを備える。第1コンピュータ3および第2コンピュータ4はそれぞれ、演算部を含む処理装置である。第1コンピュータ3は、検査装置1の全体動作の制御も行う。第2コンピュータ4は、後述する参照画像を生成する参照画像生成装置である。装置本体2は、撮像部21と、基板9を保持するステージ22と、ステージ移動機構23とを有する。撮像部21は、基板9上のパターンを撮像して画像を取得する。当該画像は、例えば、多階調のカラー画像である。ステージ移動機構23は、撮像部21に対してステージ22を相対的に移動する。
【0026】
撮像部21は、照明光を出射する照明部211と、光学系212と、撮像デバイス213とを有する。光学系212は、基板9に照明光を導くとともに基板9からの光を撮像デバイス213に導く。撮像デバイス213は、光学系212により結像された基板9の像を電気信号に変換する。照明部211は、LEDや電球等のランプと、ランプからの光を整えるレンズや反射部材等の光学要素とを含む。光学系212は、複数のレンズやハーフミラー等の光学要素を含む。撮像デバイス213は、例えば、2次元のイメージングセンサである。撮像デバイス213は1次元のイメージングセンサであってもよく、この場合、ステージ22を移動しながら撮像が行われる。
【0027】
ステージ移動機構23はボールねじ、ガイドレール、モータ等により構成される。もちろん、ステージ移動機構23として様々な機構が採用可能であり、例えば、リニアモータが利用可能である。第1コンピュータ3がステージ移動機構23および撮像部21を制御することにより、ステージ22が水平方向に移動して基板9上の所望の領域が撮像される。ステージ22は基板9を保持する保持部である。基板9の保持は様々な方法で行われてよい。例えば、ステージ22に溝が形成され、溝内に形成された吸引口から吸引が行われることにより、基板9がステージ22上に吸着される。ステージ22に多数の吸引口が形成されて基板9が吸着されてもよい。ステージ22を多孔質材料にて形成し、多孔質材料から吸引が行われてもよい。ステージ22は機械的な機構により基板9を保持してもよい。
【0028】
図2は、第1コンピュータ3の構成を示す図である。第1コンピュータ3は、CPU31と、ROM32と、RAM33と、固定ディスク34と、ディスプレイ35と、入力部36と、読取装置37と、通信部38と、GPU39と、バス30とを含む一般的なコンピュータシステムの構成を有する。CPU31は、各種演算処理を行う。GPU39は、画像処理に関する各種演算処理を行う。ROM32は、基本プログラムを記憶する。RAM33は、各種情報を記憶する。固定ディスク34は、情報記憶を行う。ディスプレイ35は、画像等の各種情報の表示を行う。入力部36は、操作者からの入力を受け付けるキーボード36aおよびマウス36bを備える。読取装置37は、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体81から情報の読み取りを行う。ディスプレイ35、キーボード36a、マウス36bおよび読取装置37は、インターフェイスI/Fを介してバス30に接続される。通信部38は、検査装置1の他の構成、および、外部の装置との間で信号を送受信する。バス30は、CPU31、GPU39、ROM32、RAM33、固定ディスク34、ディスプレイ35、入力部36、読取装置37および通信部38を接続する信号回路である。
【0029】
第1コンピュータ3では、事前に読取装置37を介して記録媒体81からプログラム811が読み出されて固定ディスク34に記憶されている。プログラム811はネットワークを介して固定ディスク34に記憶されてもよい。CPU31およびGPU39は、プログラム811に従ってRAM33や固定ディスク34を利用しつつ演算処理を実行する。CPU31およびGPU39は、第1コンピュータ3において演算部として機能する。CPU31およびGPU39以外に演算部として機能する他の構成が採用されてもよい。
【0030】
図3は、第1コンピュータ3がプログラム811に従って演算処理等を実行することにより実現される機能構成を示す図である。これらの機能構成には、記憶部301と、検査部302と、制御部303とが含まれる。これらの機能の全部または一部は専用の電気回路により実現されてもよい。また、複数のコンピュータによりこれらの機能が実現されてもよい。図3に示す機能構成のうち、検査部302および制御部303は、CPU31、GPU39、ROM32、RAM33、固定ディスク34およびこれらの周辺構成により実現される。また、記憶部301は、主としてRAM33および固定ディスク34により実現される。
【0031】
記憶部301は、撮像部21により取得された基板9上のパターンの画像(以下、「被検査画像」とも呼ぶ。)、および、基板9の検査に使用される参照画像等を記憶する。当該参照画像は、実質的に欠陥を有しない基板9上のパターンを示す画像であり、後述するように、第2コンピュータ4により生成される。検査部302は、被検査画像を参照画像と比較して、基板9における欠陥の有無を検査する。制御部303は、撮像部21およびステージ移動機構23、並びに、各機能構成の動作を制御する。
【0032】
図4は第2コンピュータ4の構成を示す図である。第2コンピュータ4は、第1コンピュータ3と略同様に、CPU41と、ROM42と、RAM43と、固定ディスク44と、ディスプレイ45と、入力部46と、読取装置47と、通信部48と、GPU49と、バス40とを含む一般的なコンピュータシステムの構成を有する。CPU41は、各種演算処理を行う。GPU49は、画像処理に関する各種演算処理を行う。ROM42は、基本プログラムを記憶する。RAM43は、各種情報を記憶する。固定ディスク44は、情報記憶を行う。ディスプレイ45は、画像等の各種情報の表示を行う。入力部46は、操作者からの入力を受け付けるキーボード46aおよびマウス46bを備える。読取装置47は、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体82から情報の読み取りを行う。ディスプレイ45、キーボード46a、マウス46bおよび読取装置47は、インターフェイスI/Fを介してバス40に接続される。通信部48は、検査装置1の他の構成、および、外部の装置との間で信号を送受信する。バス40は、CPU41、GPU49、ROM42、RAM43、固定ディスク44、ディスプレイ45、入力部46、読取装置47および通信部48を接続する信号回路である。
【0033】
第2コンピュータ4では、事前に読取装置47を介して記録媒体82からプログラム821が読み出されて固定ディスク44に記憶されている。プログラム821はネットワークを介して固定ディスク44に記憶されてもよい。CPU41およびGPU49は、プログラム821に従ってRAM43や固定ディスク44を利用しつつ演算処理を実行する。CPU41およびGPU49は、第2コンピュータ4において演算部として機能する。CPU41およびGPU49以外に演算部として機能する他の構成が採用されてもよい。
【0034】
図5は、第2コンピュータ4がプログラム821に従って演算処理等を実行することにより実現される機能構成を示す図である。これらの機能構成には、入力部401と、学習部402と、参照画像生成部403と、記憶部404とが含まれる。これらの機能の全部または一部は専用の電気回路により実現されてもよい。また、複数のコンピュータによりこれらの機能が実現されてもよい。図5に示す機能構成のうち、入力部401、学習部402および参照画像生成部403は、CPU41、GPU49、ROM42、RAM43、固定ディスク44およびこれらの周辺構成により実現される。また、記憶部404は、主としてRAM43および固定ディスク44により実現される。
【0035】
入力部401は、学習用データを記憶部404へと入力する。記憶部404は、多数の学習用データの集合である学習用データセットを記憶する。当該学習用データは、基板9上のパターンの設計データと、基板9上に形成されたパターンで実質的に欠陥を有していないものを撮像して得られた学習用画像との組み合わせである。学習用データに含まれる学習用画像は、例えば、基板9上に配置された複数のダイ(すなわち、それぞれに上記パターンが設けられている複数のパターン領域)のうち、1つのダイの一部である所定の大きさの部分領域の画像である。この場合、学習用データに含まれる設計データは、上記パターンのうち学習用画像に対応する部分領域に含まれる部位の設計データである。当該設計データは、例えば、ベクトルデータであるCADデータ、CADデータから生成された頂点画像データ、または、頂点画像データをラスタライズして生成されたランレングスデータである。設計データは、他の形式のデータであってもよい。
【0036】
学習部402は、上述の学習用データセットを用いたディープラーニング(例えば、GAN(敵対生成ネットワーク))により、基板9上のパターンの設計データと学習用画像との関係を初期モデルに学習させて学習済みモデルを作成する。学習済みモデルは記憶部404に格納される。学習用データセットの詳細については、後述する。参照画像生成部403は、記憶部404に記憶された学習済みモデルを利用して、パターンの設計データから参照画像(すなわち、実質的に欠陥を有しない良品のパターンを示す画像)を生成する。当該参照画像は、第1コンピュータ3の記憶部301に格納される。
【0037】
図6は、第2コンピュータ4における参照画像の生成の流れを示す図である。参照画像の生成では、まず、多数の学習用データの集合である学習用データセットが準備される(ステップS11)。上述のように、各学習用データは、基板9上のパターンの設計データと、当該パターンを撮像して得られた学習用画像との組み合わせである。学習用データセットに含まれる学習用データの数は限定されないが、例えば、約10000である。
【0038】
学習用データセットに含まれる複数の学習用データは、例えば、下記の方法にて準備される。まず、検査装置1において、実質的に欠陥を有しない良品の基板9(すなわち、学習用の基板9)がステージ22により保持される。そして、基板9上に配置された複数のダイのうち1つのダイが選択され、選択されたダイ上のパターン全体が撮像部21により撮像される。撮像部21による撮像は、例えば、スキャンまたはステップアンドリピートにより行われる。撮像部21により撮像されたダイの画像は、第1コンピュータ3の記憶部301に格納される。
【0039】
続いて、第1コンピュータ3において、当該ダイの画像が、マトリクス状に縦横に並ぶ所定の大きさ(例えば、512画素×512画素)の複数の部分画像に等分割され、各部分画像が学習用画像とされる。そして、当該学習用画像が、上述のダイの設計データのうち学習用画像に対応する領域(すなわち、部分領域)のデータと組み合わされることにより、学習用データが作成される。上述の複数の学習用画像は、隣接する学習用画像と重複することなくマトリクス状に配置され、1つのダイの画像全体を構成する。換言すれば、当該ダイ上の各位置は、当該複数の学習用画像のいずれかに対応する部分領域に含まれている。したがって、ダイ上のパターン全体を学習用データセットに含めることができる。なお、当該複数の学習用画像はそれぞれ、縦横に隣接する他の学習用画像と部分的に重複していてもよい。また、上述の部分画像の大きさは、適宜変更されてよい。
【0040】
第1コンピュータ3において準備された学習用データセット(すなわち、複数の学習用データの集合)は、第2コンピュータ4に送られ、入力部401により記憶部404に入力される(ステップS12)。なお、撮像部21により撮像されたダイの画像は第2コンピュータ4に送られ、第2コンピュータ4において学習用データの作成(すなわち、学習用データセットの準備)が行われてもよい。
【0041】
続いて、第2コンピュータ4の学習部402において、上記学習用データセットを用いたディープラーニングにより、参照画像生成用の初期モデルの学習が行われる。学習部402では、パターンの設計データと、当該パターンの学習用画像との関係を初期モデルに学習させることにより、学習済みモデルが作成される(ステップS13)。当該学習済みモデルは、記憶部404に格納される。記憶部404には、検査装置1において検査が予定されている基板9上のパターンの設計データも予め記憶されている。
【0042】
学習済みモデルの作成が終了すると、参照画像生成部403において、記憶部404に記憶されている上記設計データから、学習済みモデルを利用して参照画像が生成される(ステップS14)。ステップS14にて生成された参照画像は、第2コンピュータ4から第1コンピュータ3へと送られ、記憶部301に格納される。当該参照画像は、第1コンピュータ3の検査部302による基板9の検査に利用される。
【0043】
第2コンピュータ4では、学習部402におけるディープラーニングによる学習(ステップS13)、および、参照画像生成部403における参照画像の生成(ステップS14)は、例えば、Pix2Pix、PointNet、または、これらの組み合わせにより行われる。ステップS13では、ディープラーニングにおける内部パラメータの更新方法として、例えば、Adam(Adaptive moment estimation)および誤差逆伝播法が用いられる。また、出力画像と元画像との誤差の基準として、例えば、L1誤差(すなわち、各画素値の差の絶対値和)、L2誤差(すなわち、各画素値の差の二乗和)、または、交差エントロピー誤差が用いられる。内部パラメータの更新は、例えば、ミニバッチ学習法を用いて行われる。ミニバッチの単位、および、エポック数は限定されないが、例えば、4枚および50である。内部パラメータの更新は、必ずしも所定回数繰り返される必要はなく、誤差の値や推移から更新終了が決定されてもよい。
【0044】
図7は、検査装置1における基板9の検査の流れを示す図である。検査装置1では、まず、検査対象である基板9がステージ22により保持される。そして、基板9上に配置された複数のダイのうち1つのダイが選択され、選択されたダイ上のパターン全体が撮像部21により撮像される(ステップS21)。撮像部21による撮像は、例えば、スキャンまたはステップアンドリピートにより行われる。撮像部21により撮像されたダイの画像(すなわち、被検査画像)は、第1コンピュータ3の記憶部301に格納される。
【0045】
そして、検査部302により、記憶部301に記憶されている被検査画像(すなわち、パターンの画像)が上述の参照画像と比較され、有意な差異が存在する被検査画像は「欠陥有り」に分類され、それ以外の被検査画像は「欠陥無し」に分類される(ステップS22)。「欠陥有り」に分類された基板9では、欠陥の位置、大きさ、および、欠陥画像データ等が取得され、ディスプレイ35(図2参照)等に表示される。被検査画像と参照画像との比較は、公知の様々な方法(例えば、差分比較法やゆすらせ比較法)により行われてよい。検査装置1では、基板9上の複数のダイについて、上記検査が順次行われる。また、1枚の基板9の検査が終了すると、次の基板9の検査が行われる。
【0046】
検査装置1では、上述の参照画像の生成(ステップS11~S14)において、上記例示の学習用データ以外に、様々な学習用データが学習用データセットに含まれてよい。例えば、ステップS11では、複数の学習用画像は、必ずしもダイの画像をマトリクス状に等分割したものである必要はなく、ダイの画像から所定の大きさ(例えば、512画素×512画素)で適宜切り出された部分画像が、上述の学習用画像とされてもよい。この場合、複数の学習用画像の切り出し位置(すなわち、各学習用画像に対応する部分領域のダイ上における位置)は、ランダムに決定されてもよい。これにより、ダイ上のパターンに含まれる様々なパターン要素について、学習用画像上におけるパターン要素の位置や学習用画像に含まれるパターン要素の組み合わせが異なる複数の学習用データを、学習用データセットに含めることができる。なお、複数の学習用画像の切り出し位置は、規則的に決定されてもよい。
【0047】
学習用画像の切り出し位置がランダムに決定される場合、例えば、ダイの左上の1つの頂点を原点として、x座標およびy座標(すなわち、左右方向および上下方向の位置)が乱数等を用いてランダムに決定される。続いて、決定されたx座標およびy座標を左上原点として、上記所定の大きさの部分領域がダイの画像上に設定される。当該部分領域の全体がダイ(すなわち、パターン領域)に含まれている場合、部分領域に対応する部分画像が学習用画像として切り出される。そして、切り出された学習用画像と、当該部分領域に対応する設計データとが組み合わされて学習用データが作成される。
【0048】
一方、当該部分領域がダイからはみ出している場合、部分領域に対応する部分画像は学習用画像として切り出されず、学習用データは作成されない。あるいは、当該部分領域の全体がダイに含まれるように部分領域の位置が縦方向および/または横方向にシフトされた後、部分領域に対応する部分画像が学習用画像として切り出されてもよい。この場合、部分領域の縦方向および横方向におけるシフト量は、できるだけ小さくされることが好ましい。そして、切り出された学習用画像と、当該部分領域に対応する設計データとが組み合わされて学習用データが作成される。
【0049】
また、ステップS11では、設計データと学習用画像との組み合わせである一の学習用データが作成されると、当該一の学習用データを利用して、新たな学習用データが作成されてもよい。
【0050】
例えば、当該一の学習用データの学習用画像の輝度およびコントラストの少なくとも一方を変更した新たな学習用画像が作成され、当該新たな学習用画像と、上記一の学習用データの設計データとを組み合わせて、新たな学習用データが作成される。学習用画像の輝度の変更、および、コントラストの変更は、公知の様々な方法により行われてよい。新たな学習用データは、上記一の学習用データと共に、学習用データセットに含められる。これにより、撮像条件(例えば、撮像部の個体差や、気温および気圧等の外的要因)が画像に与える影響、並びに、ダイまたは基板の個体差(例えば、プロセス条件の微妙な変化により生じる差)による画像の差等を考慮した、ロバスト性が高い参照画像を生成することができる。その結果、ステップS21において得られた被検査画像の輝度やコントラストが変動する場合であっても、ステップS22における被検査画像と参照画像との比較を高精度に行うことができる。
【0051】
また、例えば、上述の一の学習用データの学習用画像を回転または反転させた新たな学習用画像が作成され、また、当該一の学習用データの設計データを、上記学習用画像と同様に回転または反転させた新たな設計データが作成される。そして、新たな設計データと新たな学習用画像とを組み合わせて、新たな学習用データが作成される。設計データおよび学習用画像の回転および反転は、公知の様々な方法により行われてよい。新たな学習用データは、上記一の学習用データと共に、学習用データセットに含められる。これにより、様々な方向を向くパターンに高精度に対応して参照画像を生成可能な学習済みモデルを作成することができる。
【0052】
ステップS11では、基板9上の複数のダイについて撮像部21による撮像が行われ、複数のダイの画像のそれぞれから学習用画像が取得されて複数の学習用データが作成されてもよい。換言すれば、学習用データセットは、複数のダイ(すなわち、複数のパターン領域)のそれぞれにおけるパターンの設計データと学習用画像との組み合わせである複数の学習用データを含む。これにより、基板上の位置が異なる複数のダイから、同一の設計データに対応する複数の学習用画像を取得することができる。その結果、1つの設計データと、輝度、コントラスト、パターン要素の線幅等が異なる複数の学習用画像とがそれぞれ組み合わされた複数の学習用データを作成することができる。
【0053】
また、ステップS11では、複数の基板9について撮像部21による撮像が行われ、複数の基板の画像のそれぞれから学習用画像が取得されて複数の学習用データが作成されてもよい。換言すれば、学習用データセットは、複数の基板9のそれぞれにおけるパターンの設計データと学習用画像との組み合わせである複数の学習用データを含む。これにより、製造時のプロセス条件等が微妙に変化している可能性がある複数の基板9から、同一の設計データに対応する複数の学習用画像を取得することができる。その結果、1つの設計データと、輝度、コントラスト、パターン要素の線幅等が異なる複数の学習用画像とがそれぞれ組み合わされた複数の学習用データを作成することができる。
【0054】
以上に説明したように、第2コンピュータ4は、参照画像を生成する参照画像生成装置である。当該参照画像は、表面上にパターンを有する基板9の製造工程(上記例では、検査工程)において、パターンの画像との比較に使用される。当該参照画像生成装置は、入力部401と、学習部402と、参照画像生成部403とを備える。入力部401は、基板9上のパターンの設計データと、当該パターンを撮像して得られた学習用画像との組み合わせである学習用データを入力する。学習部402は、学習用データの集合である学習用データセットを用いたディープラーニングにより、パターンの設計データと学習用画像との関係を学習させて学習済みモデルを作成する。参照画像生成部403は、学習済みモデルを利用してパターンの設計データから参照画像を生成する。
【0055】
これにより、技術者が設計データから参照画像を生成するためのロジックを組む場合(作業期間:数ヶ月~数年)に比べて、ごく短期間(例えば、1日)で参照画像生成の準備を完了することができる。すなわち、参照画像生成までのリードタイムを大幅に短縮することができる。その結果、参照画像を短時間で容易に生成することができる。
【0056】
上述の参照画像生成方法は、基板9上のパターンの設計データと当該パターンを撮像して得られた学習用画像との組み合わせである学習用データを入力する工程(ステップS12)と、学習用データの集合である学習用データセットを用いたディープラーニングにより、パターンの設計データと学習用画像との関係を学習させて学習済みモデルを作成する工程(ステップS13)と、当該学習済みモデルを利用してパターンの設計データから参照画像を生成する工程(ステップS14)と、を備える。これにより、上記と同様に、参照画像生成までのリードタイムを大幅に短縮することができる。
【0057】
上述のように、学習用データセットは、一の学習用データと、当該一の学習用データの設計データと当該一の学習用データの学習用画像の輝度またはコントラストを変更した学習用画像との組み合わせである他の学習用データと、を含むことが好ましい。上記輝度変更により、撮像部21の照明部211の照度ムラ、撮像デバイス213の感度特性の差、および、気温や気圧の変動等に起因する、学習用画像の輝度変動を考慮した学習が可能となる。また、上記コントラスト変更により、パターンの膜厚変動等に起因する学習用画像におけるパターン要素間のコントラスト変動およびパターン要素と背景との間のコントラスト変動を考慮した学習が可能となる。したがって、上述のように、ロバスト性が高く、比較結果の均一性を向上可能な参照画像を生成することができる。また、1つの学習用画像から複数の学習用データを作成することができるため、学習用データセットに含まれる学習用データの数を容易に増大させることができる。その結果、高精度な参照画像を生成することができる。
【0058】
上述のように、学習用データセットは、一の学習用データと、当該一の学習用データの設計データを回転または反転させた設計データと当該一の学習用データの学習用画像を設計データと同様に回転または反転させた学習用画像との組み合わせである他の学習用データと、を含むことが好ましい。これにより、様々な方向を向くパターンに高精度に対応して参照画像を生成可能な学習済みモデルを作成することができる。また、1つの学習用画像から複数の学習用データを作成することができるため、学習用データセットに含まれる学習用データの数を容易に増大させることができる。その結果、高精度な参照画像を生成することができる。
【0059】
上述のように、学習用データセットの各学習用データは、基板9上においてパターンが設けられているパターン領域(上記例では、ダイ)の一部である部分領域におけるパターンの設計データと学習用画像との組み合わせであり、当該パターン領域における各学習用データの部分領域の位置は、ランダムに決定されることが好ましい。これにより、パターン領域上のパターンに含まれる様々なパターン要素について、学習用画像上におけるパターン要素の位置や組み合わせが異なる複数の学習用データを、学習用データセットに含めることができる。その結果、ロバスト性が高く、比較結果の均一性を向上可能な参照画像を生成することができる。
【0060】
上述のように、学習用データセットの各学習用データは、基板9上においてパターンが設けられているパターン領域(上記例では、ダイ)の一部である部分領域におけるパターンの設計データと学習用画像との組み合わせであり、当該パターン領域の各位置は、学習用データセットのいずれかの学習用データに対応する部分領域に含まれることが好ましい。これにより、パターン領域のいずれの部位との比較も好適に実施可能な参照画像を生成することができる。
【0061】
上述のように、基板9上に、パターンがそれぞれ設けられている複数のパターン領域(上記例では、ダイ)が配置されている場合、学習用データセットは、当該複数のパターン領域のそれぞれにおけるパターンの設計データと学習用画像との組み合わせである複数の学習用データを含むことが好ましい。これにより、基板上の位置が異なる複数のパターン領域から、同一の設計データに対応する複数の学習用画像を取得することができる。したがって、1つの設計データと、輝度、コントラスト、パターン要素の線幅等が異なる複数の学習用画像とがそれぞれ組み合わされた複数の学習用データを作成することができる。その結果、ロバスト性が高く、比較結果の均一性を向上可能な参照画像を生成することができる。
【0062】
上述のように、学習用データセットは、パターンを表面上に有する複数の基板9のそれぞれにおけるパターンの設計データと学習用画像との組み合わせである複数の学習用データを含むことが好ましい。これにより、製造時のプロセス条件等が微妙に変化している可能性がある複数の基板9から、同一の設計データに対応する複数の学習用画像を取得することができる。したがって、1つの設計データと、輝度、コントラスト、パターン要素の線幅等が異なる複数の学習用画像とがそれぞれ組み合わされた複数の学習用データを作成することができる。その結果、ロバスト性が高く、比較結果の均一性を向上可能な参照画像を生成することができる。
【0063】
上述のように、検査装置1は、撮像部21と、検査部302とを備える。撮像部21は、基板9上のパターンを撮像して被検査画像を取得する。検査部302は、当該被検査画像を上述の参照画像生成装置(すなわち、第2コンピュータ4)により生成されたパターンの参照画像と比較して、基板9における欠陥の有無を検査する。上述のように、当該参照画像生成装置は、参照画像生成までのリードタイムを短縮することができる。したがって、検査装置1において、基板9の欠陥検査を迅速に行うことができる。また、当該参照画像生成装置は、ロバスト性が高く、比較結果の均一性を向上可能な参照画像を生成することができる。したがって、検査装置1において、基板9の欠陥検査を精度良く行うことができる。
【0064】
検査装置1では、検査対象である基板9のロットが変更される際に、学習済みモデルの再学習が行われてもよい。学習済みモデルの再学習では、例えば、新しく検査されるロットの中から良品である基板9が抽出され、当該基板9を撮像して新たな学習用データセットが準備される(図6:ステップS11)。そして、上述のステップS12~S14と略同様の手順により、学習済みモデルの再学習が行われる。これにより、基板9の欠陥検査をさらに精度良く行うことができる。次に述べるアライメント装置1aにおいても同様である。
【0065】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係るアライメント装置1aの構成を示す図である。アライメント装置1aは、表面上にパターンを有する基板9の位置を調節する装置である。アライメント装置1aは、例えば、基板9に対する様々な処理を行う処理装置に含まれる。当該処理装置は、例えば、1枚の基板9上に設けられた複数のダイ同士を比較して欠陥を検出する検査装置、または、基板9に光を照射して描画を行う描画装置である。当該処理装置は、例えば、基板9に対する様々な処理を行う処理ヘッドを備える。
【0066】
アライメント装置1aでは、第1コンピュータ3により実現される機能構成が異なる点を除き、検査装置1と略同様の構成を備える。以下の説明では、検査装置1の各構成に対応するアライメント装置1aの構成に同符号を付す。アライメント装置1aは、装置本体2と、第1コンピュータ3と、第2コンピュータ4とを備える。装置本体2、第1コンピュータ3および第2コンピュータ4の構成、並びに、第2コンピュータ4により実現される機能構成は、図1図2図4および図5に示すものと略同じである。
【0067】
図9は、アライメント装置1aの第1コンピュータ3がプログラム811(図2参照)に従って演算処理等を実行することにより実現される機能構成を示す図である。これらの機能構成には、記憶部301と、アライメント部304と、制御部303とが含まれる。これらの機能の全部または一部は専用の電気回路により実現されてもよい。また、複数のコンピュータによりこれらの機能が実現されてもよい。図9に示す機能構成のうち、アライメント部304および制御部303は、CPU31、GPU39、ROM32、RAM33、固定ディスク34(図2参照)およびこれらの周辺構成により実現される。また、記憶部301は、主としてRAM33および固定ディスク34により実現される。
【0068】
記憶部301は、撮像部21(図8参照)により取得された基板9上のパターンの画像(以下、「対象画像」とも呼ぶ。)、および、基板9のアライメントに使用される参照画像等を記憶する。当該参照画像は、アライメントに使用される基板9上のパターン(以下、「アライメントパターン」とも呼ぶ。)の画像であり、後述するように、第2コンピュータ4により生成される。アライメントパターンは、基板9上の回路パターン等の一部であってもよく、アライメント専用の目印であってもよい。アライメント部304は、対象画像を参照画像と比較して、基板9の位置を取得する。制御部303は、撮像部21およびステージ移動機構23、並びに、各機能構成の動作を制御する。
【0069】
第2コンピュータ4では、上記と同様に、学習用データ(すなわち、アライメントパターンの設計データと学習用画像との組み合わせ)の集合である学習用データセットを用いたディープラーニングにより学習済みモデルが作成される。そして、学習済みモデルを利用して、アライメントパターンの設計データから参照画像が生成される(ステップS11~S14)。ステップS11~S14では、アライメントパターンの参照画像(すなわち、アライメントテンプレート画像)を設計データから生成することができるため、パターンを撮像して得た画像からアライメントパターンの画像を選択および抽出する場合に比べて、容易に参照画像を取得することができる。当該参照画像は、第2コンピュータ4から第1コンピュータ3へと送られ、記憶部301に格納される。
【0070】
第1コンピュータ3では、アライメント部304により、記憶部301に記憶されている上記対象画像と参照画像とが比較され、参照画像のアライメントパターンと対応するアライメントパターンが対象画像から抽出される。続いて、対象画像におけるアライメントパターンの位置が取得される。そして、対象画像におけるアライメントパターンの位置と、所望のアライメントパターンの位置(すなわち、設計位置)とのずれが求められる。制御部303は、当該ずれに基づいてステージ移動機構23を制御することにより、基板9上のアライメントパターンが所望の位置に位置するように基板9を移動させる。なお、ステージ移動機構23は、必ずしも基板9を移動する必要はなく、基板9に処理を行う上述の処理ヘッドを移動してもよい。すなわち、ステージ移動機構23は、基板9を当該処理ヘッドに対して相対移動して基板9の相対位置を調節する基板移動機構である。
【0071】
以上に説明したように、アライメント装置1aは、撮像部21と、アライメント部304と、基板移動機構(上記例では、ステージ移動機構23)とを備える。撮像部21は、基板9上のパターンを撮像して対象画像を取得する。アライメント部304は、当該対象画像を上述の参照画像生成装置(すなわち、第2コンピュータ4)により生成されたパターンの参照画像と比較して、基板9の位置を取得する。基板移動機構は、アライメント部304により取得された基板9の位置に基づいて、基板9を相対移動して位置を調節する。上述のように、当該参照画像生成装置は、参照画像生成までのリードタイムを短縮することができる。したがって、アライメント装置1aにおいて、基板9のアライメントを迅速に行うことができる。また、当該参照画像生成装置は、ロバスト性が高く、比較結果の均一性を向上可能な参照画像を生成することができる。したがって、アライメント装置1aにおいて、基板9のアライメントを精度良く行うことができる。
【0072】
上述の参照画像生成装置、参照画像生成方法、検査装置1およびアライメント装置1aでは、様々な変更が可能である。
【0073】
例えば、ステップS11において準備される学習用データセットは、学習用画像の取得も含めて検査装置1の外部において作成され、記録ディスクやネットワークを介して検査装置1に入力されてもよい。アライメント装置1aについても同様である。
【0074】
上述の学習用データセットは、必ずしも、複数の基板9のそれぞれにおける学習用データを含む必要はない。また、上述の学習用データセットは、必ずしも、基板9上の複数のパターン領域(上記例では、ダイ)のそれぞれにおける学習用データを含む必要はない。なお、上記複数のパターン領域はダイ以外であってもよい。また、基板9上には、必ずしも複数のパターン領域が配置されている必要はない。
【0075】
上述の学習用データセットでは、パターン領域の各位置は、必ずしもいずれかの学習用データに対応する部分領域(すなわち、パターン領域の一部である領域)に含まれる必要はない。また、各学習用データは、必ずしも、パターン領域の部分領域におけるパターンの設計データと学習用画像との組み合わせである必要はない。例えば、パターン領域の全体におけるパターンの設計データと学習用画像との組み合わせが、1つの学習用データとして学習用データセットに含まれてもよい。
【0076】
上述の学習用データセットは、必ずしも、学習用画像の輝度またはコントラストを変更した学習用データを含む必要はない。また、学習用データセットは、必ずしも、学習用画像を回転または反転させた学習用データを含む必要はない。
【0077】
上述の参照画像生成装置、検査装置1およびアライメント装置1aで取り扱われる基板9は、半導体基板には限定されず、液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置等の平面表示装置(Flat Panel Display)に使用されるガラス基板、あるいは、他の表示装置に使用されるガラス基板であってもよい。また、基板9は、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板および太陽電池用基板等であってもよい。
【0078】
検査装置1およびアライメント装置1aでは、第1コンピュータ3および第2コンピュータ4は、装置本体2の筐体の中に収納されてもよい。
【0079】
第2コンピュータ4は、検査装置1およびアライメント装置1a以外の装置に含まれてもよい。また、第2コンピュータ4は、参照画像生成装置として単独で使用されてもよい。
【0080】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0081】
1 検査装置
1a アライメント装置
4 第2コンピュータ
9 基板
21 撮像部
23 ステージ移動機構
302 検査部
304 アライメント部
401 入力部
402 学習部
403 参照画像生成部
S11~S14,S21~S22 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9