(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】熱伝導性組成物、及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/373 20060101AFI20240228BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20240228BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240228BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H01L23/36 M
C09D5/24
C09D7/61
C09D201/00
(21)【出願番号】P 2023128350
(22)【出願日】2023-08-07
【審査請求日】2023-08-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】趙 奕靖
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】岩田 侑記
(72)【発明者】
【氏名】西尾 健
(72)【発明者】
【氏名】長島 稔
(72)【発明者】
【氏名】川上 亮子
(72)【発明者】
【氏名】井上 誠
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-183261(JP,A)
【文献】特開2018-069708(JP,A)
【文献】特開2017-095642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/373
C09D 5/24
C09D 7/61
C09D 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化成分と、硬化剤と、金属フィラーと、を含有し、
前記金属フィラーが、銀粒子、銅粒子、銀被覆銅粒子、及び銅被覆銀粒子から選択される少なくとも1種であり、
前記金属フィラーにおける粒径1μm以下の粒子の体積充填率が、5体積%以上であり、
前記金属フィラーの体積充填率が、30体積%以上90体積%以下であることを特徴とする熱伝導性組成物。
【請求項2】
前記金属フィラーの体積充填率が、50体積%以上80体積%以下である請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項3】
前記金属フィラーにおける粒径1μm以下の粒子の体積充填率が、8体積%以上である請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物。
【請求項4】
前記硬化成分が、オキシラン環化合物及びオキセタン化合物の少なくともいずれかである請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物。
【請求項5】
前記硬化成分が、オキシラン環化合物であり、
前記硬化剤が、イミダゾール系硬化剤である請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物。
【請求項6】
分子内に、フェノキシ構造、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、ポリアミド構造、及びポリカーボネート構造から選択される少なくとも1種の構造を有するポリマーを更に含有する請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物。
【請求項7】
基材上に、請求項1から2のいずれかに記載の熱伝導性組成物を付与する工程と、
前記熱伝導性組成物を加熱する工程と、
を含むことを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項8】
前記熱伝導性組成物上に、第2の硬化成分、第2の硬化剤、第2の熱伝導性粒子、及び低融点金属粒子を含有する第2の熱伝導性組成物を付与する工程を更に含み、
前記加熱する工程が、前記熱伝導性組成物、及び前記第2の熱伝導性組成物を加熱する工程である請求項7に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記基材が、シリコン基材である請求項7に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性組成物、積層体の製造方法、及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、放熱基板に実装されたLED(発光ダイオード)チップ又はIC(集積回路)チップなどが発する熱を、放熱基板を介してヒートシンクに放熱するために、放熱基板とヒートシンクとを熱伝導性組成物により接着することが行われている。
【0003】
このような熱伝導性組成物が高熱伝導性及び低熱抵抗を満たすためには、金属フィラーの高充填化が必要であり、液状の組成物の場合には流動性が低下してしまい、シート状とした場合、シートが硬くなり追従性が損なわれ、界面の抵抗が高くなってしまうという問題がある。
【0004】
前記問題点を解決するため、例えば、硬化成分及び硬化剤を含有する熱硬化性接着剤と、その熱硬化性接着剤中に分散した金属フィラーとを有する熱伝導性接着剤において、金属フィラーは、銀粉及びはんだ粉を有し、該はんだ粉は、熱伝導性接着剤の熱硬化処理温度よりも低い溶融温度を示し、かつ該熱硬化性接着剤の熱硬化処理条件下で銀粉と反応して、当該はんだ粉の溶融温度より高い融点を示す高融点はんだ合金を生成するものであり、前記硬化剤は、金属フィラーに対してフラックス活性を有する硬化剤であり、前記硬化成分が、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂であり、前記硬化剤がトリカルボン酸のモノ酸無水物である熱伝導性接着剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来技術では、平均粒径の大きいはんだ粉を用いて平均粒径の小さい銀粒子間を接合させて高融点のはんだ合金のネットワークを形成すると、体積比で熱伝導性が低いはんだ粉の含有量が銀粒子の含有量より多くなってしまい、高熱伝導性と低熱抵抗を満たすことができない。また、低融点のはんだ粉を用いた場合には、溶融したはんだ粉が濡れ難い界面材質に対しては、表面に樹脂層が形成され、熱伝導率が低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる熱伝導性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 硬化成分と、硬化剤と、金属フィラーと、を含有し、
前記金属フィラーが、銀粒子、銅粒子、銀被覆銅粒子、及び銅被覆銀粒子から選択される少なくとも1種であり、
前記金属フィラーにおける粒径1μm以下の粒子の体積充填率が、5体積%以上であり、
前記金属フィラーの体積充填率が、30体積%以上90体積%以下であることを特徴とする熱伝導性組成物である。
<2> 前記金属フィラーの体積充填率が、50体積%以上80体積%以下である前記<1>に記載の熱伝導性組成物である。
<3> 前記金属フィラーにおける粒径1μm以下の粒子の体積充填率が、8体積%以上である前記<1>から<2>のいずれかに記載の熱伝導性組成物である。
<4> 前記硬化成分が、オキシラン環化合物及びオキセタン化合物の少なくともいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載の熱伝導性組成物である。
<5> 前記硬化成分が、オキシラン環化合物であり、
前記硬化剤が、イミダゾール系硬化剤である前記<1>から<4>のいずれかに記載の熱伝導性組成物である。
<6> 分子内に、フェノキシ構造、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、ポリアミド構造、及びポリカーボネート構造から選択される少なくとも1種の構造を有するポリマーを更に含有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の熱伝導性組成物である。
<7> 基材上に、前記<1>から<6>のいずれかに記載の熱伝導性組成物を付与する工程と、
前記熱伝導性組成物を加熱する工程と、
を含むことを特徴とする積層体の製造方法である。
<8> 前記熱伝導性組成物上に、第2の硬化成分、第2の硬化剤、第2の金属フィラー、及び低融点金属粒子を含有する第2の熱伝導性組成物を付与する工程を更に含み、
前記加熱する工程が、前記熱伝導性組成物、及び前記第2の熱伝導性組成物を加熱する工程である前記<7>に記載の積層体の製造方法である。
<9> 前記基材が、シリコン基材である前記<7>から<8>のいずれかに記載の積層体の製造方法である。
<10> 基材と、
前記基材上に設けられ、硬化成分、硬化剤、及び焼結体、を含有する第1の熱伝導層と、を有し、
前記焼結体が、銀粒子、銅粒子、銀被覆銅粒子、及び銅被覆銀粒子から選択される少なくとも1種の金属フィラーを焼結してなり、前記第1の熱伝導層の厚み方向及び平面方向に連通した焼結体であり、
前記第1の熱伝導層における前記焼結体の体積充填率が、30体積%以上90体積%以下であることを特徴とする積層体である。
<11> 前記熱伝導層上に、第2の硬化成分、第2の硬化剤、第2の金属フィラー、及び低融点金属粒子を含有する第2の熱伝導層を更に有する前記<10>に記載の積層体である。
<12> 前記基材が、シリコン基材である前記<10>から<11>のいずれかに記載の積層体である。
<13> 熱伝導率が、10W/(m・K)以上である前記<10>から<12>のいずれかに記載の積層体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる熱伝導性組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る積層体の製造方法のプロセスの一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る積層体の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、第2の実施形態に係る積層体の製造方法のプロセスの一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、第2の実施形態に係る積層体の一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の積層体を有する放熱構造体の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(熱伝導性組成物)
本発明の熱伝導性組成物は、硬化成分と、硬化剤と、金属フィラーと、を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
前記金属フィラーが、銀粒子、銅粒子、銀被覆銅粒子、及び銅被覆銀粒子から選択される少なくとも1種であり、前記金属フィラーにおける粒径1μm以下の粒子の体積充填率が、5体積%以上であり、前記金属フィラーの体積充填率が、30体積%以上90体積%以下である。
【0012】
<硬化成分>
硬化成分としては、オキシラン環化合物及びオキセタン化合物の少なくともいずれかを用いることが好ましい。
【0013】
-オキシラン環化合物-
前記オキシラン環化合物は、オキシラン環を有する化合物であり、例えば、エポキシ樹脂などが挙げられる。
前記エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、テトラフェノール型エポキシ樹脂、フェノール-キシリレン型エポキシ樹脂、ナフトール-キシリレン型エポキシ樹脂、フェノール-ナフトール型エポキシ樹脂、フェノール-ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
-オキセタン化合物-
前記オキセタン化合物は、オキセタニル基を有する化合物であり、脂肪族化合物、脂環式化合物、又は芳香族化合物であってもよい。
前記オキセタン化合物は、オキセタニル基を1つのみ有する1官能のオキセタン化合物であってもよいし、オキセタニル基を2つ以上有する多官能のオキセタン化合物であってもよい。
【0015】
前記オキセタン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、3-エチル-3-(フェノキシ)メチルオキセタン、3-エチル-3-(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(クロロメチル)オキセタン、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、キシリレンビスオキセタン、4,4′-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル(OXBP)、イソフタル酸ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エステル(OXIPA)などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記オキセタン化合物としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、東亞合成株式会社から販売されている「アロンオキセタン(登録商標)」シリーズ、宇部興産株式会社から販売されている「ETERNACOLL(登録商標)」シリーズなどが挙げられる。
【0017】
前記オキシラン環化合物及びオキセタン化合物の中でも、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノール-ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、4,4′-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル(OXBP)、イソフタル酸ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エステル(OXIPA)が好ましい。
【0018】
前記硬化成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱伝導性組成物の全量に対して、0.5体積%以上60体積%以下が好ましい。
【0019】
<硬化剤>
前記硬化剤としては、前記硬化成分に対応した硬化剤であって、例えば、多官能カルボン酸、酸無水物系硬化剤、脂肪族アミン系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤(例えば、イミダゾール系硬化剤)、フェノール系硬化剤、メルカプタン系硬化剤等の重付加型硬化剤、イミダゾール等の触媒型硬化剤などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、芳香族アミン系硬化剤が好ましく、イミダゾール系硬化剤がより好ましい。
【0020】
前記イミダゾール系硬化剤としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、四国化成工業株式会社から販売されている「キュアゾール」シリーズの2P4MZ、2PZ、2E4MZ-Aなど;旭化成工業株式会社から販売されている「ノバキュア(登録商標)」シリーズのHX-3941HP、HXA3922HP、HXA3792、HXA3932HP、HXA3042HP、HXA9322HP、HXA9382HP、HXA5052HP、HXA3542HPなどが挙げられる。
【0021】
前記酸無水物系硬化剤は硬化成分がエポキシ樹脂である場合、熱硬化の際にガスの発生がなく、エポキシ樹脂と混合した際に長いポットライフを実現でき、また、得られる硬化物の電気的特性、化学的特性、及び機械的特性間の良好なバランスを実現できる点から好ましい。
前記酸無水物系硬化剤としては、例えば、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、トリカルボン酸のモノ酸無水物などが挙げられる。前記トリカルボン酸のモノ酸無水物としては、例えば、シクロへキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-酸無水物などが挙げられる。
【0022】
前記硬化剤は、フラックス活性を有するものが、熱伝導性粒子に対する溶融した低融点金属粒子の濡れ性を向上させる点から好ましい。
前記硬化剤にフラックス活性を発現させる方法としては、例えば、前記硬化剤にカルボキシ基、スルホニル基、リン酸基等のプロトン酸基を公知の方法により導入する方法などが挙げられる。これらの中でも、硬化成分としてのエポキシ樹脂又はオキセタン化合物との反応性の点から、カルボキシ基を導入することが好ましく、例えば、グルタル酸、コハク酸等のカルボキシル基含有の多価カルボン酸などが挙げられる。また、前記硬化剤はグルタル酸無水物又はコハク酸無水物から変性された化合物又はグルタル酸銀等の多価カルボン酸の金属塩などであっても構わない。
【0023】
前記硬化剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱伝導性組成物の全量に対して、0.1体積%以上30体積%以下が好ましい。
【0024】
一実施形態においては、前記硬化成分がオキシラン環化合物であり、前記硬化剤がイミダゾール系硬化剤であることが、より高い熱伝導性を実現できる点から好ましい。
【0025】
前記硬化成分Aと前記硬化剤Bとのモル当量基準の当量比(A/B)は、用いる硬化成分及び硬化剤の種類に応じて異なり一概には規定することができないが、5以上15以下が好ましく、7以上13以下がより好ましく、9以上11以下が更に好ましい。
前記当量比(A/B)が5以上15以下であると、熱伝導性組成物を加熱した際に、金属フィラーを焼結してなる焼結体のネットワークを形成でき、ネットワークを形成した高い体積充填率の焼結体を保持できるという利点がある。
【0026】
<金属フィラー>
前記金属フィラーは、銀粒子、銅粒子、銀被覆銅粒子、及び銅被覆銀粒子から選択される少なくとも1種である。
前記金属フィラーにおける粒径1μm以下の粒子の体積充填率が、5体積%以上であり、前記金属フィラーの体積充填率が、30体積%以上90体積%以下である。
【0027】
前記銀被覆粒子としては、例えば、銀被覆銅粒子、銀被覆ニッケル粒子、銀被覆アルミニウム粒子などが挙げられる。
前記金属フィラーの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、扁平状、粒状、針状などが挙げられる。
【0028】
前記金属フィラーの体積平均粒径(D50)は、1μm以上10μm以下が好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。
金属フィラーの体積平均粒径が1μm以上10μm以下であると、熱伝導性組成物を加熱した際に、金属フィラーを焼結してなる焼結体のネットワークを形成でき、熱伝導性組成物の高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる。
前記体積平均粒径(D50)は、例えば、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(製品名:Microtrac MT3300EXII)により、測定することができる。
【0029】
前記金属フィラーCにおける粒径1μm以下の粒子cの体積充填率(c/C)は、5体積%以上であり、8体積%以上が好ましい。
前記金属フィラーCにおける粒径1μm以下の粒子cの体積充填率(c/C)が、5体積%以上であると、熱伝導性組成物を加熱した際に、金属フィラーを焼結してなる焼結体のネットワークを形成でき、熱伝導性組成物の高熱伝導率及び低熱抵抗が実現できる。
前記金属フィラーCにおける粒径1μm以下の粒子cの体積充填率(c/C)の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50体積%以下が好ましく、40体積%以下がより好ましい。
【0030】
前記金属フィラーの体積充填率は、30体積%以上90体積%以下であり、50体積%以上80体積%以下が好ましい。
前記金属フィラーの体積充填率の下限値は、30体積%以上であり、50体積%以上が好ましく、60体積%以上がより好ましく、70体積%以上が更に好ましく、75体積%以上が特に好ましい。前記金属フィラーの体積充填率の上限値は、90体積%以下であり、85体積%以下が好ましく、80体積%以下がより好ましい。
前記金属フィラーの体積充填率が、30体積%以上90体積%以下であると、熱伝導性組成物の高熱伝導率及び低熱抵抗が実現できる。
【0031】
<特定のポリマー>
前記熱伝導性組成物は、柔軟性及びシート性を付与するために、特定のポリマーを含有することが好ましい。
前記特定のポリマーとしては、分子内に、フェノキシ構造、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、ポリアミド構造、及びポリカーボネート構造から選択される少なくとも1種の構造を有するポリマーが用いられる。
【0032】
前記特定のポリマーとしては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のフェノキシ構造、ポリブタジエン及び水添ポリブタジエン等が有するポリブタジエン構造、シリコーンゴム等が有するポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造(炭素原子数2~15のポリアルキレン構造が好ましく、炭素原子数3~10のポリアルキレン構造がより好ましく、炭素原子数5~6のポリアルキレン構造が更に好ましい)、ポリアルキレンオキシ構造(炭素原子数2~15のポリアルキレンオキシ構造が好ましく、炭素原子数3~10のポリアルキレンオキシ構造がより好ましく、炭素原子数5~6のポリアルキレンオキシ構造が更に好ましい)、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される少なくとも1種の構造を有することが好ましく、フェノキシ構造、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される少なくとも1種の構造を有することが好ましく、フェノキシ構造、ポリブタジエン構造、ポリイソプレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される少なくとも1種の構造を有することがより好ましい。
【0033】
前記特定のポリマーは、柔軟性を示すために高分子量であることが好ましい。前記特定のポリマーの数平均分子量(Mn)は、1,000以上1,000,000以下が好ましく、5,000以上900,000以下がより好ましい。
前記数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0034】
前記特定のポリマーは、柔軟性を示すために、ガラス転移温度(Tg)が25℃以下のポリマー、及び25℃で液状であるポリマーから選択されることが好ましい。
前記ガラス転移温度(Tg)が25℃以下であるポリマーのガラス転移温度は、20℃以下が好ましく、15℃以下がより好ましい。ガラス転移温度の下限は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、-15℃以上が好ましい。
25℃で液状であるポリマーとしては、20℃以下で液状であるポリマーが好ましく、15℃以下で液状であるポリマーがより好ましい。
【0035】
前記特定のポリマーとしては、硬化物の機械的強度を向上させる観点から、上記硬化成分と反応し得る官能基を有することが好ましい。なお、上記硬化成分と反応し得る官能基としては、加熱によって現れる官能基も含めるものとする。
上記硬化成分と反応し得る官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基からなる群から選択される1種以上の官能基である。これらの中でも、前記官能基としては、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基が好ましく、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基がより好ましい。
【0036】
前記特定のポリマーの含有量は、熱伝導性組成物の全量に対して、1体積%以上50体積%以下が好ましく、1体積%以上30体積%以下がより好ましく、1体積%以上20体積%以下が更に好ましく、1体積%以上10体積%以下が特に好ましい。
【0037】
<その他の成分>
前記熱伝導性組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいてその他の成分を含有してもよい。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属以外の熱伝導性粒子(例えば、窒化アルミ、アルミナ、炭素繊維等)、添加剤(例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、硬化促進剤、シランカップリング剤、レベリング剤、難燃剤等)などが挙げられる。
【0038】
前記熱伝導性組成物は、前記硬化成分、前記硬化剤、及び前記金属フィラー、必要に応じて、前記特定のポリマー及び、その他の成分を常法により均一に混合することにより調製することができる。
【0039】
前記熱伝導性組成物は、シート状の熱伝導性シート、及びペースト状の熱伝導性ペースト(熱伝導性接着剤、又は熱伝導性グリースと称することもある)のいずれであってもよい。これらの中でも、取り扱いのし易さの点から熱伝導性シートが好ましく、コストの面から熱伝導性ペーストが好ましい。
【0040】
(積層体の製造方法)
本発明の積層体の製造方法は、第1の付与工程と、加熱工程と、を含み、第2の付与工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0041】
[第1の実施形態の積層体の製造方法]
一実施形態として、前記積層体の製造方法が、第1の付与工程と、加熱工程と、を含むことにより、基材と、前記基材上に設けられた第1の熱伝導層を有する積層体(第1の実施形態の積層体)を製造することができる。
これにより、前記硬化成分と、前記硬化剤と、前記金属フィラーが焼結してなる焼結体と、を含有する熱伝導層が前記基材上に形成され、前記焼結体が前記熱伝導層の厚み方向及び平面方向に連通することにより、高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる積層体を製造することができる。
【0042】
[第2の実施形態の積層体の製造方法]
他の実施形態として、前記積層体の製造方法が、第1の付与工程と、第2の付与工程と、加熱工程と、を含むことにより、基材と、前記基材上に設けられた第1の熱伝導層と、前記第1の熱伝導層上に設けられた第2の熱伝導層を有する積層体(第2の実施形態の積層体)を製造することができる。
これにより、第1の実施形態の積層体に対し、低融点金属を有する第2の熱伝導層を更に有することにより、更に高い放熱効果(高熱伝導性)を実現できる積層体を製造することができる。
【0043】
<第1の付与工程>
前記第1の付与工程は、前記基材上に、上述した本発明の熱伝導性組成物(「第1の熱伝導性組成物」と称することがある)を付与する工程である。
前記熱伝導性組成物に含有される硬化成分、硬化剤、金属フィラー、及びその他の成分としては、本実施形態の熱伝導性組成物において説明した事項を適宜選択することできる。
【0044】
前記第1の熱伝導性組成物を前記基材へ付与する方法としては、例えば、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本ロールコート法、5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
また、シート状の前記第1の熱伝導性組成物を、転写等の手段により、前記基材上に付与してもよい。
【0045】
-基材-
前記基材の形状、構造、大きさ、材質などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記基材の形状としては、例えば、板状、シート状などが挙げられる。前記基材の構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられる。前記基材の大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0046】
前記基材の材質としては、前記基材と接する前記第1の熱伝導層が低融点金属を含まないため、はんだが濡れにくい材質を選択することができ、例えば、シリコン、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ガラス、モールド樹脂、ステンレス鋼、セラミックスなどが好適に挙げられる。
前記セラミックスとしては、例えば、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、アルミナ、窒化ガリウムなどが挙げられる。
前記モールド樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
前記基材は、シリコン基材であることが好ましい。
また、前記第1の熱伝導層は、前記金属フィラーを焼結してなり前記熱伝導層の厚み方向及び平面方向に連通した焼結体を、前記基材と接して有するため、前記基材として金属めっき層を有しない基材を好適に使用でき、高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる積層体を製造することができる。
【0047】
また、第1の熱伝導性組成物において金属フィラーが完全流動状態にならないため、一般的に銀の微小粒子を用いたシンタリングを行う際に必要な、基板を予め金でメタライズする工程は不要となる。従来の銀焼結体の作製に用いる一般的な銀粉と比べると、金属フィラーは、全体が溶融し流動するものではなく、金属フィラーが焼結してなる焼結体は、一部粒子形状を維持しつつ、金属フィラー間が互いに連結され、熱伝導層の厚み方向及び平面方向に効率的に熱伝導可能な焼結体となる。したがって、金属めっき層を有する基板に溶融連結する従来の銀粉及び銀焼結体と、本実施形態の金属フィラー及び焼結体とは、互いに異なる特徴を有する。
【0048】
前記基材の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記基材は、放熱構造体における発熱体(電子部品)そのものであってもよい。
【0049】
<加熱工程>
前記加熱工程は、前記熱伝導性組成物を加熱する工程であり、これにより、基材上に、第1の熱伝導層が形成される。
なお、後述する第2の加熱工程を有する場合、前記加熱工程は、前記第1の熱伝導性組成物、及び前記第2の熱伝導性組成物を加熱する工程であり、これにより、基材上に、第1の熱伝導層、及び第2の熱伝導層が形成される。
【0050】
前記加熱の条件としては、前記熱伝導性組成物に含有される前記金属フィラーが焼結されて前記焼結体を形成可能であり、硬化成分、及び硬化剤とが反応して硬化される条件であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、120℃~190℃、1分間~30分間が好ましく、140℃~170℃、1分間~10分間がより好ましい。
【0051】
<第2の付与工程>
前記第2の付与工程は、前記基材上に付与した前記熱伝導性組成物(第1の熱伝導性組成物)上に、第2の熱伝導性組成物を付与する工程である。
【0052】
前記第2の熱伝導性組成物を前記基材へ付与する方法としては、例えば、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本ロールコート法、5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
また、シート状の前記第2の熱伝導性組成物を、転写等の手段により、前記基材上に付与してもよい。
【0053】
液相のまま第1の熱伝導性組成物上に第2の熱伝導性組成物を付与し、次いで、加熱工程を実施することで、得られる第1の熱伝導層、及び第2の熱伝導層の接着性を向上させることができる。また、続く加熱工程において硬化剤のフラックス活性が発現して、溶解した低融点金属と、第2の熱伝導性粒子との濡れ性を向上させることができる。
【0054】
-第2の熱伝導性組成物-
前記第2の熱伝導性組成物は、第2の硬化成分、第2の硬化剤、第2の熱伝導性粒子、及び低融点金属粒子を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0055】
-第2の硬化成分-
前記第2の硬化成分は、オキセタン化合物、及びエポキシ樹脂の少なくともいずれかを含むことが好ましく、オキセタン化合物、及びエポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
第2の硬化成分、オキセタン化合物、及びエポキシ樹脂としては、上述した本発明の熱可塑性樹脂における前記硬化成分において説明した事項を適宜選択することできる。
【0056】
前記第2の熱伝導性組成物における、前記第2の硬化成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、第2の熱伝導性組成物の全量に対して、0.5体積%以上20体積%以下が好ましく、1体積%以上15体積%以下がより好ましい。
【0057】
-第2の硬化剤-
前記硬化剤としては、前記硬化成分に対応した硬化剤であって、例えば、多官能カルボン酸、酸無水物系硬化剤、脂肪族アミン系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、メルカプタン系硬化剤等の重付加型硬化剤、イミダゾール等の触媒型硬化剤などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、多官能カルボン酸が好ましく、グルタル酸が好ましい。
第2の硬化剤としては、上述した本発明の熱可塑性樹脂における前記硬化剤において説明した事項を適宜選択することできる。
【0058】
前記第2の熱伝導性組成物における、前記第2の硬化剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、第2の熱伝導性組成物の全量に対して、0.5体積%以上20体積%以下が好ましく、1体積%以上15体積%以下がより好ましい。
【0059】
-第2の熱伝導性粒子-
前記第2の熱伝導性粒子としては、銅粒子、銀被覆粒子、及び銀粒子の少なくともいずれかが好ましく、銀被覆粒子がより好ましい。
前記銀被覆粒子としては、例えば、銀被覆銅粒子、銀被覆ニッケル粒子、銀被覆アルミニウム粒子などが挙げられる。
前記第2の熱伝導性粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、扁平状、粒状、針状などが挙げられる。
【0060】
前記第2の熱伝導性粒子の体積平均粒径は、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上70μm以下がより好ましく、5μm以上50μm以下が更に好ましい。第2の熱伝導性粒子の体積平均粒径が1μm以上100μm以下であると、優れた熱伝導性を実現できる。
前記第2の熱伝導性粒子の体積平均粒径は、前記金属フィラーの体積平均粒径と同様にして、測定することができる。
【0061】
-低融点金属-
前記低融点金属とは、前記低融点金属粒子、及び前記低融点金属粒子が溶融して固化した低融点金属を意味する。
前記低融点金属粒子としては、JIS Z3282-1999に規定されているはんだ粒子が好適に用いられる。
【0062】
前記はんだ粒子としては、例えば、Sn-Pb系はんだ粒子、Pb-Sn-Sb系はんだ粒子、Sn-Sb系はんだ粒子、Sn-Pb-Bi系はんだ粒子、Sn-Bi系はんだ粒子、Sn-Bi-Ag系はんだ粒子、Sn-Cu系はんだ粒子、Sn-Pb-Cu系はんだ粒子、Sn-In系はんだ粒子、Sn-Ag系はんだ粒子、Sn-Pb-Ag系はんだ粒子、Pb-Ag系はんだ粒子、Sn-Ag-Cu系はんだ粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、Snと、Bi、Ag、Cu、及びInから選択される少なくとも1種と、を含むはんだ粒子が好ましく、Sn-Bi系はんだ粒子、Sn-Bi-Ag系はんだ粒子、Sn-Ag-Cu系はんだ粒子、Sn-In系はんだ粒子がより好ましく、Sn及びBiを含むSn-Bi系はんだ粒子が更に好ましい。
【0063】
前記低融点金属粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、扁平状、粒状、針状などが挙げられる。
前記低融点金属粒子の融点は、100℃以上250℃以下が好ましく、120℃以上200℃以下がより好ましい。
【0064】
前記低融点金属粒子の融点は、前記加熱工程の加熱温度よりも低いことが好ましい。
これにより、第2の熱伝導性組成物の硬化中に、溶融した低融点金属により第2の熱伝導性粒子を介してネットワーク(金属の連続相)を形成した、第2の熱伝導層を形成できる。したがって、耐熱性、熱伝導率、及び接着性に優れる積層体を実現できる。
【0065】
前記低融点金属粒子の体積平均粒径は、10μm以下が好ましく、1μm以上7μm以下がより好ましい。低融点金属粒子の体積平均粒径が10μm以下であると、低融点金属粒子の第2の熱伝導性粒子に対する体積割合を小さくすることができ、第2の熱伝導層の高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる。
前記低融点金属粒子の体積平均粒径は、前記金属フィラーの体積平均粒径と同様にして測定することができる。
【0066】
前記第2の熱伝導性粒子の体積平均粒径が前記低融点金属粒子の体積平均粒径よりも大きく、前記第2の熱伝導性粒子αと前記低融点金属粒子βとの体積平均粒径比(α/β)は1.5以上が好ましい。前記体積平均粒径比(α/β)の上限値は10以下が好ましい。
前記第2の熱伝導性粒子よりも体積平均粒径が小さい低融点金属粒子を用いることにより、第2の熱伝導性組成物中で前記第2の熱伝導性粒子が主成分となり、前記第2の熱伝導性粒子と前記第2の熱伝導性粒子の間に存在する低融点金属粒子が加熱により溶融し、前記第2の熱伝導性粒子と合金化してネットワークを形成するために、高熱伝導性及び低熱抵抗が実現できる。
【0067】
第2の熱伝導層を形成するための第2の熱伝導性組成物における、前記第2の熱伝導性粒子αと前記低融点金属粒子βとの体積比(α/β)は、1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、1.8以上が更に好ましい。前記体積比(α/β)の上限値は4以下が好ましく、3以下がより好ましい。
【0068】
<その他の工程>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、保護層形成工程、対向基材積層工程などが挙げられる。
【0069】
(積層体)
本発明の積層体は、基材と、第1の熱伝導層と、を有し、第2の熱伝導層を更に有することが好ましく、更に必要に応じて、対向基材、その他の部材を有する。
【0070】
[第1の実施形態の積層体]
一実施形態として、前記積層体は、基材と、前記基材上に設けられた第1の熱伝導層と、を有する。前記第1の熱伝導層は、硬化成分、硬化剤、及び焼結体、を含有する。
前記焼結体は、前記金属フィラーを焼結してなり、前記第1の熱伝導層の厚み方向及び平面方向に連通した焼結体である。
前記熱伝導層における前記焼結体の体積充填率が、30体積%以上90体積%以下である。
【0071】
第1の実施形態の積層体は、第1の実施形態の積層体の製造方法により好適に製造することができる。
第1の実施形態の積層体によれば、前記焼結体を含有する熱伝導層が前記基材上に形成され、前記焼結体が前記熱伝導層の厚み方向及び平面方向に連通することにより、高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる。具体的には、連通した焼結体により高い放熱効果により、10W/(m・K)以上の熱伝導率、好ましくは15W/(m・K)以上の熱伝導率を実現できる。また、金属めっき層を有しない基材に対しても接触熱抵抗ゼロを実現できる。
【0072】
[第2の実施形態の積層体]
他の実施形態として、前記積層体は、基材と、前記基材上に設けられた第1の熱伝導層と、前記第1の熱伝導層上に設けられた第2の熱伝導層を有する。
前記第2の熱伝導層は、第2の硬化成分、第2の硬化剤、第2の金属フィラー、及び低融点金属粒子を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0073】
第2の実施形態の積層体は、第2の実施形態の積層体の製造方法により好適に製造することができる。
第2の実施形態の積層体によれば、第1の実施形態の積層体に対し、低融点金属を有する第2の熱伝導層を更に有することにより、更に高い放熱効果(高熱伝導性)を実現できる。15W/(m・K)以上の熱伝導率、好ましくは20W/(m・K)以上の熱伝導率を実現できる。
【0074】
<基材>
前記基材としては、上述した本発明の積層体の製造方法において説明した事項を適宜選択することができる。
【0075】
<第1の熱伝導層>
前記第1の熱伝導層は、前記基材上に形成され、基材と接して形成されることが好ましい。
前記第1の熱伝導層は、硬化成分、硬化剤、及び焼結体、を含有する。
硬化成分、及び硬化剤としては、上述した本発明の熱伝導性組成物において説明した事項を適宜選択することができる。
【0076】
-焼結体-
前記焼結体は、前記金属フィラーを焼結してなり、前記第1の熱伝導層の厚み方向及び平面方向に連通した焼結体である。
前記焼結体は、前記基材に接しており、これにより、金属めっき層を有しない基材に対しても、接触熱抵抗をゼロとすることができ、高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる。
【0077】
前記熱伝導層における前記焼結体の体積充填率が、30体積%以上90体積%以下であり、50体積%以上80体積%以下が好ましい。
前記焼結体の体積充填率の下限値は、30体積%以上であり、50体積%以上が好ましく、60体積%以上がより好ましく、70体積%以上が更に好ましく、75体積%以上が特に好ましい。前記焼結体の体積充填率の上限値は、90体積%以下であり、85体積%以下が好ましく、80体積%以下がより好ましい。
前記焼結体の体積充填率が、30体積%以上90体積%以下であると、積層体の高熱伝導率及び低熱抵抗が実現できる。
【0078】
前記第1の熱伝導層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm以上300μm以下が好ましく、20μm以上200μm以下がより好ましい。
【0079】
<第2の熱伝導層>
前記第2の熱伝導層は、第2の硬化成分、第2の硬化剤、第2の金属フィラー、及び低融点金属粒子を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
第2の硬化成分、第2の硬化剤、第2の金属フィラー、及び低融点金属粒子としては、上述した本発明の積層体の製造方法において説明した事項を適宜選択することができる。
【0080】
前記第2の熱伝導層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20μm以上300μm以下が好ましく、50μm以上200μm以下がより好ましい。
【0081】
<対向基材>
前記対向基材は、前記基材と対向して配置され、その形状、構造、大きさ、材質などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記対向基材の形状としては、例えば、板状、シート状などが挙げられる。前記対向基材の構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられる。前記対向基材の大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
前記対向基材の材質は、はんだが濡れやすい材質であり、銅、金、白金、パラジウム、銀、亜鉛、鉄、錫、ニッケル、マグネシウム、インジウム、及びこれらの合金から選択される少なくとも1種を含む。
前記対向基材の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記対向基材は、放熱構造体におけるヒートスプレッダそのものであってもよい。
【0082】
<その他の部材>
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、保護層などが挙げられる。
【0083】
ここで、本発明の積層体の製造方法、及び積層体の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、下記構成部材の数、位置、形状などは本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状などにすることができる。
【0084】
図1は、第1の実施形態に係る積層体の製造方法のプロセスの一例を示す概略図である。
図1に示す硬化前の積層体10aは、第1の付与工程後、かつ加熱工程前の積層体であり、具体的には、基材11上に、金属フィラー12bを含有する第1の熱伝導性組成物12aと、第1の熱伝導性組成物12a上に、対向基材15を有する。
【0085】
図2は、第1の実施形態に係る積層体の一例を示す概略図である。
図2に示す積層体10は、基材11上に、金属フィラー12bが焼結してなる焼結体12cを含有する第1の熱伝導層12と、第1の熱伝導層12上に、対向基材15を有する。
【0086】
図3は、第2の実施形態に係る積層体の製造方法のプロセスの一例を示す概略図である。
図3に示す硬化前の積層体20aは、第1の付与工程、及び第2の付与工程後、かつ加熱工程前のウェットオンウェットの硬化前の積層体であり、具体的には、基材11上に、金属フィラー12bを含有する第1の熱伝導性組成物12aと、第1の熱伝導性組成物12a上に、第2の熱伝導性粒子14b、及び低融点金属粒子14cを含有する第2の熱伝導性組成物14aと、第2の熱伝導性組成物14a上に、対向基材15を有する。
【0087】
図4は、第2の実施形態に係る積層体の一例を示す概略図である。
図4に示す積層体20は、基材11上に、金属フィラー12bが焼結してなる焼結体12cを含有する第1の熱伝導層12と、第1の熱伝導層12上に、第2の熱伝導性粒子14b、及び低融点金属14dを含有する第2の熱伝導層14と、第2の熱伝導層14上に、対向基材15を有する。
【0088】
本発明の積層体は、例えば、LSI等の熱源とヒートシンクとの間の微小な間隙を埋めることで、両者の間に熱がスムーズに流れるようにするサーマルインターフェイスマテリアル(TIM)、LEDチップ又はICチップを実装した放熱基板を、ヒートシンクに接着してパワーLEDモジュール又はパワーICモジュールを構成する際に好適に使用することができる。
ここで、パワーLEDモジュールとしては、ワイヤーボンディング実装タイプのものとフリップチップ実装タイプのものがあり、パワーICモジュールとしてはワイヤーボンディング実装タイプのものがある。
【0089】
(放熱構造体)
本実施形態の放熱構造体は、発熱体と、上述した本発明の積層体と、放熱部材とを有し、更に必要に応じてその他の部材を有する。
【0090】
前記発熱体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の電子部品などが挙げられる。
【0091】
前記放熱部材としては、電子部品(発熱体)の発する熱を放熱する構造体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒートスプレッダ、ヒートシンク、ベーパーチャンバー、ヒートパイプなどが挙げられる。
前記ヒートスプレッダは、前記電子部品の熱を他の部品に効率的に伝えるための部材である。前記ヒートスプレッダの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銅、アルミニウムなどが挙げられる。前記ヒートスプレッダは、通常、平板形状である。
前記ヒートシンクは、前記電子部品の熱を空気中に放出するための部材である。前記ヒートシンクの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銅、アルミニウムなどが挙げられる。前記ヒートシンクは、例えば、複数のフィンを有する。前記ヒートシンクは、例えば、ベース部と、前記ベース部の一方の面に対して非平行方向(例えば、直交する方向)に向かって延びるように設けられた複数のフィンを有する。
前記ヒートスプレッダ、及び前記ヒートシンクは、一般的に、内部に空間を持たない中実構造である。
前記ベーパーチャンバーは、中空構造体である。前記中空構造体の内部空間には、揮発性の液体が封入されている。前記ベーパーチャンバーとしては、例えば、前記ヒートスプレッダを中空構造にしたもの、前記ヒートシンクを中空構造にしたような板状の中空構造体などが挙げられる。
前記ヒートパイプは、円筒状、略円筒状、又は扁平筒状の中空構造体である。前記中空構造体の内部空間には、揮発性の液体が封入されている。
【0092】
ここで、
図1は、放熱構造体としての半導体装置の一例を示す概略断面図である。本発明の積層体7は、半導体素子等の電子部品3の発する熱を放熱するものであり、
図1に示すように、ヒートスプレッダ2の電子部品3と対峙する主面2aに固定され、電子部品3と、ヒートスプレッダ2との間に挟持されるものである。また、熱伝導シート1は、ヒートスプレッダ2とヒートシンク5との間に挟持される。
【0093】
ヒートスプレッダ2は、例えば、方形板状に形成され、電子部品3と対峙する主面2aと、主面2aの外周に沿って立設された側壁2bとを有する。ヒートスプレッダ2は、側壁2bに囲まれた主面2aに熱伝導シート1が設けられ、また主面2aと反対側の他面2cに熱伝導シート1を介してヒートシンク5が設けられる。ヒートスプレッダ2は、高い熱伝導率を有するほど、熱抵抗が減少し、効率よく半導体素子等の電子部品3の熱を吸熱することから、例えば、熱伝導性の良好な銅又はアルミニウムを用いて形成することができる。
【0094】
電子部品3は、例えば、BGA等の半導体素子であり、配線基板6へ実装される。またヒートスプレッダ2も、側壁2bの先端面が配線基板6に実装され、これにより側壁2bによって所定の距離を隔てて電子部品3を囲んでいる。
そして、ヒートスプレッダ2の主面2aに、本発明の積層体7が設けられることにより、電子部品3の発する熱を吸収し、ヒートシンク5より放熱する放熱部材が形成される。
【実施例】
【0095】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0096】
(実施例1-1)
<熱伝導性組成物の調製>
表1に記載の組成及び含有量を、撹拌装置(泡とり練太郎・自動公転ミキサー、株式会社シンキー製)を用いて均一に混合し、第1の熱伝導性組成物を調製した。
なお、表1~7における各成分の含有量は体積%である。
【0097】
<積層体の製造>
次に、20mm×20mm×1mmの基材(シリコン基材)上に、第1の熱伝導性組成物を付与し、付与した第1の熱伝導性組成物上に20mm×20mm×1mmの対向基材(銅)を積層し、ミニプレス機にて銅基材側の上板温度150℃、シリコン基板側の下板温度150℃、設定空気圧0.11MPa(圧力換算で40psi)の条件で5分間プレスを行い、硬化させて、平均厚みが101μmの第1の熱伝導層を有する実施例1-1の積層体を製造した。
【0098】
(実施例1-2~1-9)
実施例1-1において、第1の熱伝導性組成物の組成を表1~2に示す通り変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして実施例1-2~1-9の積層体をそれぞれ製造した。
【0099】
(比較例1-1~1-4)
実施例1-1において、第1の熱伝導性組成物の組成を表3に示す通り変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして比較例1-1~1-4の積層体をそれぞれ製造した。
【0100】
次に、得られた各積層体について、以下のようにして、「各層の平均厚みの測定」、及び「熱伝導性」を評価した。結果を表1~3に示した。
【0101】
<各層の平均厚みの測定>
各積層体を切断し、得られた切断面を研磨し、研磨面を走査型電子顕微鏡(S-3000N、株式会社日立製作所製)で撮影し、積層体の切断面から、各層の厚みを測定し、任意の3点の厚みの平均値を求めた。結果を表1~3に示す。
実施例の各積層体では、
図2に示す積層体の断面図に対応して、基材上に、第1の熱伝導層と、対向基材と、をこの順に有することが確認できた。
【0102】
<熱伝導性>
<<圧着後の積層体の作製>>
各積層体について、20mm×20mm角のシリコン板(厚み0.77mm)と直径20mmの銅板(厚み1.0mm)の間に挟み込み、ミニプレス機にて銅基板側の上板温度150℃、シリコン基板側の下板温度150℃、設定空気圧0.11MPa(圧力換算で40psi)の条件で5分間プレスを行った。
【0103】
<<熱伝導性の評価>>
圧着後の積層体(界面Cu及びシリコン)について、ASTM-D5470に準拠した方法で熱抵抗(℃・cm2/W)を測定した。その結果から基材(シリコン基材)及び対向基材(銅基材)の熱抵抗を引いて、積層体から基材及び対向基材を除いた部分の熱抵抗を算出し、前記熱抵抗と積層体から基材及び対向基材を除いた部分の厚み(100μm)から、熱伝導率(W/m・K)を求め、下記の基準により熱伝導性を評価した。
[評価基準]
◎:熱伝導率が、20W/m・K以上である。
〇:熱伝導率が、10W/m・K以上20W/m・K未満である。
×:熱伝導率が、10W/m・K未満である。
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
(実施例2-1)
<熱伝導性組成物の調製>
表4に記載の組成及び含有量を、撹拌装置(泡とり練太郎・自動公転ミキサー、株式会社シンキー製)を用いて均一に混合し、第1の熱伝導性組成物、及び第2の熱伝導性組成物を調製した。
【0108】
<積層体の製造>
平均厚み30μmの第1の熱伝導性組成物と、平均厚み70μmの第2の熱伝導性組成物と、を75℃の条件でラミネートし、二層構造の熱伝導性組成物を得た。
第1の熱伝導層がある面を20mm×20mm×1mmの基材(シリコン基材)上に付与し、第2の熱伝導性組成物上に20mm×20mm×1mmの対向基材(銅)を積層し、ミニプレス機にて銅基板側の上板温度150℃、シリコン基板側の下板温度150℃、設定空気圧0.11MPa(圧力換算で40psi)の条件で5分間プレスを行い、硬化させて、第1の熱伝導層と第2の熱伝導層を有し、合計の平均厚み99μmの実施例2-1の積層体を形成した。
【0109】
(実施例2-2~2-9)
実施例2-1において、第1の熱伝導性組成物の組成を表4~5に示す通り変更したこと以外は、実施例2-1と同様にして実施例2-2~2-9の積層体をそれぞれ製造した。
【0110】
(比較例2-1~2-3)
実施例2-1において、第1の熱伝導性組成物の組成を表6に示す通り変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして比較例2-1~2-3の積層体をそれぞれ製造した。
【0111】
次に、得られた各積層体について、「各層の平均厚みの測定」、及び「熱伝導性」を評価した。結果を表4~6に示した。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
(実施例3-1~3-2)
実施例1-1において、基材、及び対向基材の組み合わせを表7に示す通り変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして実施例3-1~3-2の積層体をそれぞれ製造した。
基材、及び対向基材の種類に関わらず、熱伝導率が変わらないことが確認できた。この結果から、接触熱抵抗がゼロに達していることが分かった。
【0116】
(実施例3-3)
実施例1-1において、第1の熱伝導層の厚みを表7に示す通り変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして実施例3-1~3-3の積層体をそれぞれ製造した。
第1の熱伝導層の厚みに関わらず、熱伝導率が変わらないことが確認できた。この結果から、接触熱抵抗がゼロに達していることが分かった。
【0117】
(実施例3-4)
実施例2-1において、基材、及び対向基材の組み合わせを表7に示す通り変更したこと以外は、実施例2-1と同様にして実施例3-4の積層体をそれぞれ製造した。
基材、及び対向基材の種類に関わらず、熱伝導率が変わらないことが確認できた。この結果から、接触熱抵抗がゼロに達していることが分かった。
【0118】
【0119】
表1~7における各成分の詳細については、以下のとおりである。
【0120】
-硬化成分A-
・エポキシ樹脂:EPICLON(登録商標)EXA-850CRP(DIC株式会社製)
【0121】
-硬化剤B-
・エポキシ樹脂硬化剤:キュアゾール(登録商標)2P4MZ(四国化成工業株式会社製)
【0122】
-金属フィラーC-
・Ag粒子(D50:1μm):Ag粒子、DOWAエレクトロニクス株式会社製、体積平均粒径Dv:1μm
・Ag粒子(D50:2μm):Ag粒子、DOWAエレクトロニクス株式会社製、体積平均粒径Dv:2μm
・AgコートCu粒子(D50:5μm):AgコートCu粒子、福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径Dv:5μm
・Cu粒子(D50:5μm):福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径Dv:5μm
前記金属フィラーの体積平均粒径Dvは、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(製品名:Microtrac MT3300EXII)により、測定した値である。
【0123】
-ポリマーD-
・YP-50(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンより合成されるポリヒドロキシポリエーテル
【0124】
-硬化成分-
・硬化成分(オキセタン化合物):ETERNACOLL(登録商標)OXBP(宇部興産株式会社製)、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル
【0125】
-硬化剤-
・グルタル酸:東京化成株式会社製、1,3-プロパンジカルボン酸
【0126】
-低融点金属粒子(はんだ粒子)-
・Sn58Bi42:三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径Dv:6μm、融点139℃
上記低融点金属粒子の体積平均粒径Dvは、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(製品名:Microtrac MT3300EXII)により、測定した値である。
【0127】
-熱伝導性粒子-
・AgコートCu粒子(Dv:10μm):AgコートCu粒子、福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径Dv:10μm
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の積層体は、サーマルインターフェイスマテリアル(TIM)として優れた耐熱性、熱伝導率、及び接着性を実現できるので、例えば、温度によって素子動作の効率や寿命等に悪影響が生じるCPU、MPU、パワートランジスタ、LED、レーザーダイオード等の各種の電気デバイス周りなどに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0129】
1 熱伝導シート
2 ヒートスプレッダ
2a 主面
3 発熱体(電子部品)
3a 上面
5 ヒートシンク
6 配線基板
7 積層体
10 積層体
10a 硬化前の積層体
11 基材
12 第1の熱伝導層
12a 第1の熱伝導性組成物
12b 金属フィラー
12c 焼結体
14 第2の熱伝導層
14a 第2の熱伝導性組成物
14b 第2の熱伝導性粒子
14c 低融点金属粒子
14d 低融点金属
15 対向基材
【要約】
【課題】高熱伝導性及び低熱抵抗を実現できる熱伝導性組成物の提供。
【解決手段】硬化成分と、硬化剤と、金属フィラーと、を含有し、前記金属フィラーが、銀粒子、銅粒子、銀被覆銅粒子、及び銅被覆銀粒子から選択される少なくとも1種であり、前記金属フィラーにおける粒径1μm以下の粒子の体積充填率が、5体積%以上であり、前記金属フィラーの体積充填率が、30体積%以上90体積%以下である熱伝導性組成物である。
【選択図】
図2