(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】粘着シートおよび表示体
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240228BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240228BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240228BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20240228BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240228BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09J11/04
B32B7/12
B32B27/00 D
G09F9/00 342
(21)【出願番号】P 2023502063
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2021040149
(87)【国際公開番号】W WO2022180935
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2021030913
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】小鯖 翔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋一
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-169262(JP,A)
【文献】特開2020-007500(JP,A)
【文献】特開2020-097691(JP,A)
【文献】特開2020-037657(JP,A)
【文献】特開2003-138235(JP,A)
【文献】特開2007-023089(JP,A)
【文献】特許第7336348(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層の着色粘着剤層を含む粘着剤層を備えた粘着シートであって、
前記着色粘着剤層が、着色剤を含有する粘着剤からなり、
前記粘着剤層のCIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*が、90以下であり、
前記粘着剤層の全光線透過率が、3%以上であり、
前記粘着剤層の熱伝導率が、0.1W/m・K以上であり、
前記着色剤が、白系着色剤であり、
CIE1976L*a*b*表色系により規定される、前記粘着剤層の完全な白色との色差ΔE*が、30以下であり、
表示体構成部材の貼合用である
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
少なくとも1層の着色粘着剤層を含む粘着剤層を備えた粘着シートであって、
前記着色粘着剤層が、着色剤を含有する粘着剤からなり、
前記粘着剤層のCIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*が、90以下であり、
前記粘着剤層の全光線透過率が、3%以上であり、
前記粘着剤層の熱伝導率が、0.1W/m・K以上であり、
前記着色剤が、白系着色剤であり、
CIE1976L*a*b*表色系により規定される、前記粘着剤層の完全な白色との色差ΔE*が、30以下であり、
前記粘着剤層が、一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材とを貼合するための粘着剤層である
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項3】
少なくとも1層の着色粘着剤層を含む粘着剤層を備えた粘着シートであって、
前記着色粘着剤層が、着色剤を含有する粘着剤からなり、
前記粘着剤層のCIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*が、90以下であり、
前記粘着剤層の全光線透過率が、3%以上であり、
前記粘着剤層の熱伝導率が、0.1W/m・K以上であり、
前記着色剤が、白系着色剤であり、
CIE1976L*a*b*表色系により規定される、前記粘着剤層の完全な白色との色差ΔE*が、30以下であり、
前記粘着剤層が、少なくとも1層の着色粘着剤層と、少なくとも1層の無色粘着剤層との積層体である
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層のヘイズ値が、0.1%以上、80%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記一の表示体構成部材および前記他の表示体構成部材の少なくとも一方が、発光体を有することを特徴とする請求項2に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記粘着剤層が、一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材とを貼合するための粘着剤層であり、
前記一の表示体構成部材および前記他の表示体構成部材の少なくとも一方が、前記粘着剤層によって貼合される側の面に凹凸を有しており、
前記粘着剤層における前記表示体構成部材の凹凸に接触する面に、前記無色粘着剤層が位置している
ことを特徴とする請求項3に記載の粘着シート。
【請求項7】
2枚の剥離シートと、
前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された前記粘着剤層と
を備えることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項8】
一の表示体構成部材と、
他の表示体構成部材と、
前記一の表示体構成部材および前記他の表示体構成部材を互いに貼合する粘着剤層と
を備えた表示体であって、
前記粘着剤層が、請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着シートの粘着剤層から形成された
ことを特徴とする表示体。
【請求項9】
前記一の表示体構成部材および前記他の表示体構成部材の少なくとも一方が、発光体を有することを特徴とする請求項8に記載の表示体。
【請求項10】
前記一の表示体構成部材および前記他の表示体構成部材の少なくとも一方が、前記粘着剤層によって貼合される側の面に凹凸を有することを特徴とする請求項8または9に記載の表示体。
【請求項11】
前記凹凸が、基板上に設けられた複数の発光体による凹凸であることを特徴とする請求項10に記載の表示体。
【請求項12】
一の表示体構成部材と、
他の表示体構成部材と、
前記一の表示体構成部材および前記他の表示体構成部材を互いに貼合する粘着剤層と
を備えた表示体であって、
前記粘着剤層が、少なくとも1層の着色粘着剤層を含み、
前記着色粘着剤層が、着色剤を含有する粘着剤からなり、
前記粘着剤層のCIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*が、90以下であり、
前記粘着剤層の全光線透過率が、3%以上であり、
前記粘着剤層の熱伝導率が、0.1W/m・K以上であり、
白色の周辺部を有する
ことを特徴とする表示体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば表示体構成部材を貼合するのに好適な粘着シート、および当該粘着シートを用いた表示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の表示体(ディスプレイ)、例えば、スマートフォンやタブレット端末等の各種モバイル電子機器の表示体、テレビやデジタルサイネージ等の表示体、自動車のインストルメントパネル、カーナビゲーションシステム、コンソールに設けられた各種計器等における車載用の表示体においては、当該表示体の消灯時に、当該表示体の周辺部、例えば額縁状の印刷部や枠材との一体感を出して、意匠性を向上させることが要求されることがある。
【0003】
そのためには、表示体を着色することが考えられる。表示体の着色に関する技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された粘着シートは、着色の目的が遮光性・光隠蔽性であるため、液晶モジュールよりも視認者側に使用した場合、表示画像の視認性が確保できない。
【0006】
一方、液晶表示装置で使用される液晶パネルは、それ自体発光しないため、液晶表示装置は、表示部を照明するバックライトを備えている。これまで、液晶表示装置におけるバックライトの光源の配置方式としては、導光板の側部に光源を配置するサイドライト型が一般的であった。一方、最近では、画面の明るさやコントラストの観点から、表示部の直下に光源を配置する直下型のバックライトが検討され始めている。直下型のバックライトにおいては、光量を稼ぐとともに、表示装置とした場合に、例えば、画面中央と画面端部とで光量を均一にするため、多数の発光体、典型的には発光ダイオード(LED)を基板上に設ける方向で検討されている。
【0007】
しかしながら、上記のような発光体は、発光に伴って発熱するため、当該発光体に近接する部材は、熱により劣化するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、放熱性に優れるとともに、表示体の意匠性を向上させることのできる粘着シート、および放熱性に優れるとともに、意匠性が向上した表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、少なくとも1層の着色粘着剤層を含む粘着剤層を備えた粘着シートであって、前記着色粘着剤層が、着色剤を含有する粘着剤からなり、前記粘着剤層のCIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*が、90以下であり、前記粘着剤層の全光線透過率が、3%以上であり、前記粘着剤層の熱伝導率が、0.1W/m・K以上であることを特徴とする粘着シートを提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)において、上記物性を満たす粘着剤層は、表示体に適用したときに、当該表示体の消灯時に、当該表示体の意匠性(一例として外観調和性)を向上させることができる。また、全光線透過率が3%以上であることにより、表示体の点灯時に画像・映像の視認性を確保することができる。一方、熱伝導率が0.1W/m・K以上であることにより、放熱性に優れたものとなる。
【0011】
上記発明(発明1)においては、前記粘着剤層のヘイズ値が、0.1%以上、80%以下であることが好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明1,2)においては、前記着色剤が、黒系着色剤であり、CIE1976L*a*b*表色系により規定される、前記粘着剤層の完全な黒色との色差ΔE*が、90以下であるか、前記着色剤が、白系着色剤であり、CIE1976L*a*b*表色系により規定される、前記粘着剤層の完全な白色との色差ΔE*が、30以下であることが好ましい(発明3,4)。
【0013】
上記発明(発明1~4)においては、前記粘着剤層が、少なくとも1層の着色粘着剤層と、少なくとも1層の無色粘着剤層との積層体であることが好ましい(発明5)。
【0014】
上記発明(発明1~5)においては、前記粘着剤層が、一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材とを貼合するための粘着剤層であることが好ましい(発明6)。
【0015】
上記発明(発明6)においては、前記一の表示体構成部材および前記他の表示体構成部材の少なくとも一方が、発光体を有することが好ましい(発明7)。
【0016】
上記発明(発明5)においては、前記一の表示体構成部材および前記他の表示体構成部材の少なくとも一方が、前記粘着剤層によって貼合される側の面に凹凸を有しており、前記粘着剤層における前記表示体構成部材の凹凸に接触する面に、前記無色粘着剤層が位置していることが好ましい(発明8)。
【0017】
上記発明(発明1~8)においては、2枚の剥離シートと、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持された前記粘着剤層とを備えることが好ましい(発明9)。
【0018】
第2に本発明は、一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材と、前記一の表示体構成部材および前記他の表示体構成部材を互いに貼合する粘着剤層とを備えた表示体であって、前記粘着剤層が、前記粘着シート(発明1~9)の粘着剤層から形成されたことを特徴とする表示体を提供する(発明10)。
【0019】
上記発明(発明10)においては、前記一の表示体構成部材および前記他の表示体構成部材の少なくとも一方が、発光体を有することが好ましい(発明11)。
【0020】
上記発明(発明10,11)においては、前記一の表示体構成部材および前記他の表示体構成部材の少なくとも一方が、前記粘着剤層によって貼合される側の面に凹凸を有することが好ましい(発明12)。
【0021】
上記発明(発明12)においては、前記凹凸が、基板上に設けられた複数の発光体による凹凸であることが好ましい(発明13)。
【0022】
上記発明(発明10~13)においては、黒色の周辺部を有するか、白色の周辺部を有することが好ましい(発明14,15)。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る粘着シートによれば、放熱性に優れるとともに、表示体の意匠性を向上させることができる。また、本発明に係る表示体は、放熱性に優れるとともに、意匠性が向上したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面図である。
【
図2】本発明の他の実施形態に係る粘着シートの断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る表示体の断面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る表示体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着シート〕
本発明の一実施形態に係る粘着シートは、少なくとも1層の着色粘着剤層を含む粘着剤層を備えた粘着シートであり、着色粘着剤層は着色剤を含有する粘着剤からなる。なお、「少なくとも1層の着色粘着剤層を含む粘着剤層」には、1層の着色粘着剤層のみからなる粘着剤層も含まれる。
【0026】
本実施形態に係る粘着シートにおいて、上記粘着剤層のCIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*は、90以下であることが好ましく、上記粘着剤層の全光線透過率は、3%以上であることが好ましく、上記粘着剤層の熱伝導率は、0.1W/m・K以上であることが好ましい。なお、本明細書における明度L*、色度a*およびb*の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。本明細書における熱伝導率の測定方法も、後述する試験例に示す通りである。本明細書における全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準拠して測定した値である。
【0027】
上記物性を満たす粘着剤層は、表示体に適用したときに、当該表示体の消灯時に、当該表示体の意匠性(一例として外観調和性)を向上させることができる。具体的には、当該表示体に対し、表示部と、黒色または白色の周辺部、例えば印刷部(額縁状印刷部)や枠材との一体感を付与することができ、それにより、外観調和性が高まって高級感を出すことが可能となる。また、全光線透過率が3%以上であることにより、表示体の点灯時に画像・映像の視認性を確保することができる。一方、熱伝導率が0.1W/m・K以上であることにより、放熱性に優れたものとなる。例えば、本実施形態における粘着剤層が、発光体(一例として、基板上に多数設けられたLED(特にミニLEDまたはマイクロLED))に近接する場合、当該発光体が発光に伴って発熱しても、本実施形態における粘着剤層を介して放熱することができる。これにより、発光体に近接する当該粘着剤層や他の部材の熱劣化を抑制することができる。
【0028】
黒色の周辺部の色味としては、明度L*が0~50であり、色度a*が-40~40であり、色度b*が-40~40であることが好ましく、特に明度L*が10~40であり、色度a*が-30~30であり、色度b*が-30~30であることが好ましく、さらには明度L*が15~30であり、色度a*が-20~20であり、色度b*が-20~20であることが好ましい。また、白色の周辺部の色味としては、明度L*が50~100であり、色度a*が-40~40であり、色度b*が-40~40であることが好ましく、特に明度L*が65~98であり、色度a*が-30~30であり、色度b*が-30~30であることが好ましく、さらには明度L*が80~95であり、色度a*が-20~20であり、色度b*が-20~20であることが好ましい。本実施形態に係る粘着シートは、上記色味の周辺部を有する表示体に対して好適に使用することができる。
【0029】
粘着剤層の全光線透過率は、画像・映像の視認性の観点から、3%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、特に40%以上であることが好ましく、さらには50%以上であることがより好ましい。全光線透過率の上限値は特に限定されないが、通常、100%以下であり、上記明度L*との関係を考慮すると、98%以下であることが好ましく、特に95%以下であることが好ましく、さらには90%以下であることが好ましい。
【0030】
また、粘着剤層の明度L*は、外観調和性による意匠性向上の観点から、90以下であることが好ましく、88以下であることがより好ましく、特に黒色の周辺部との一体感を付与する観点においては、80以下であることが好ましく、さらには75以下であることが好ましい。一方、外観調和性による意匠性向上および表示体の視認性の観点から、当該明度L*の下限値は、10以上であることが好ましく、25以上であることがより好ましく、特に50以上であることが好ましく、さらには65以上であることが好ましい。中でも、白色の周辺部との一体感を付与する観点においては、75以上が好ましく、特に80以上であることが好ましく、さらには85以上であることが好ましい。
【0031】
さらに、粘着剤層のCIE1976L*a*b*表色系により規定される色度a*は、-40以上であることが好ましく、-30以上であることがより好ましく、特に-20以上であることが好ましく、さらには-10以上であることが好ましく、-5以上であることが最も好ましい。また、当該色度a*は、40以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、特に20以下であることが好ましく、さらには10以下であることが好ましく、5以下であることが最も好ましい。色度a*が上記範囲にあることにより、意匠性、特に外観調和性がより向上する。
【0032】
また、粘着剤層のCIE1976L*a*b*表色系により規定される色度b*は、-40以上であることが好ましく、-30以上であることがより好ましく、特に-20以上であることが好ましく、さらには-10以上であることが好ましく、-5以上であることが最も好ましい。また、当該色度b*は、40以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、特に20以下であることが好ましく、さらには10以下であることが好ましく、5以下であることが最も好ましい。色度b*が上記範囲にあることにより、意匠性、特に外観調和性がより向上する。
【0033】
粘着剤層の熱伝導率は、放熱性の観点から、0.1W/m・K以上であることが好ましく、0.11W/m・K以上であることがより好ましく、特に0.12W/m・K以上であることが好ましく、さらには0.14W/m・K以上であることが好ましい。また、当該熱伝導率は、10W/m・K以下であることが好ましく、5W/m・K以下であることがより好ましく、特に1W/m・K以下であることが好ましく、さらには0.2W/m・K以下であることが好ましい。
【0034】
本実施形態における着色粘着剤層を構成する粘着剤が含有する着色剤が黒系着色剤である場合、CIE1976L*a*b*表色系により規定される、上記粘着剤層の完全な黒色との色差ΔE*(B)は、90以下であることが好ましく、88以下であることがより好ましく、特に80以下であることが好ましく、さらには75以下であることが好ましい。
【0035】
CIE1976L*a*b*表色系により規定される完全な黒色は、明度L*が0、色度a*が0、色度b*が0である。したがって、粘着剤層についての明度L*の測定値をL*M、色度a*の測定値をa*M、b*の測定値をb*Mとしたときに、完全な黒色との色差ΔE*(B)は、以下の式(I)によって算出される。
【数1】
【0036】
上記粘着剤層の色差ΔE*(B)が上記であることにより、表示体の消灯時に、表示部と、黒色の周辺部、例えば黒色の印刷部、黒色の枠材、黒色の壁等との外観調和性が図られ、意匠性が向上したものとなる。なお、周辺部の黒色は、上述した「完全な黒色」である必要はない。
【0037】
上記色差ΔE*(B)の下限値は特に限定されず、最も小さい値は0であるが、上記全光線透過率との関係を考慮すると、20以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、特に60以上であることが好ましく、さらには70以上であることが好ましい。
【0038】
一方、本実施形態における着色粘着剤層を構成する粘着剤が含有する着色剤が白系着色剤である場合、CIE1976L*a*b*表色系により規定される、上記粘着剤層の完全な白色との色差ΔE*(B)は、30以下であることが好ましく、25以下であることがより好ましく、特に20以下であることが好ましく、さらには15以下であることが好ましい。
【0039】
CIE1976L*a*b*表色系により規定される完全な白色は、明度L*が100、色度a*が0、色度b*が0である。したがって、粘着剤層についての明度L*の測定値をL*M、色度a*の測定値をa*M、b*の測定値をb*Mとしたときに、完全な白色との色差ΔE*(W)は、以下の式(II)によって算出される。
【数2】
【0040】
上記粘着剤層の色差ΔE*(W)が上記であることにより、表示体の消灯時に、表示部と、白色の周辺部、例えば白色の印刷部、白色の枠材、白色の壁等との外観調和性が図られ、意匠性が向上したものとなる。なお、周辺部の白色は、上述した「完全な白色」である必要はない。
【0041】
上記色差ΔE*(W)の下限値は、最も小さい値は0であるが、上記全光線透過率との関係を考慮すると、1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、特に5以上であることが好ましく、さらには7以上であることが好ましい。
【0042】
ここで、表示体構成部材は各部材ごとに色調等が異なることがあり、各部材同士の一体性を高め易い組み合わせが好ましいが、白色と黒色との組み合わせのように色味が大きく異なる部材同士を使用することもある。このように、例えば、黒色の周辺部材および白色の周辺部材を組み合わせた場合においても、本実施形態における粘着剤層は、優れた外観調和性を発揮し易く、粘着シートとしての汎用性に優れる。このような観点から、ΔE*(B)/ΔE*(W)の上限値は、10以下が好ましく、8以下が好ましく、7以下が好ましい。中でも、黒色の周辺部材との外観調和性が良好となる傾向が高くなる観点からは、6以下が好ましく、特に4以下が好ましく、さらには3以下が好ましい。また、ΔE*(B)/ΔE*(W)の下限値は、0以上であり、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。中でも、白色の周辺部材との外観調和性が良好となる傾向が高くなる観点からは、3以上が好ましく、特に5以上が好ましく、さらには6以上が好ましい。
【0043】
本実施形態における粘着剤層のヘイズ値は、0.1%以上であることが好ましく、0.5%以上であることがより好ましく、特に1%以上であることが好ましく、さらには2%以上であることが好ましい。これにより、得られる表示体に対し、表示部と周辺部との一体感をより付与し易くなる。また、本実施形態における粘着剤層のヘイズ値は、80%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、特に40%以下であることが好ましく、さらには20%以下であることが好ましく、5%以下であることが最も好ましい。これにより、全光線透過率が上記の範囲に入り易く、また、得られる表示体に対し、表示部と周辺部との一体感をより付与し易くなる。なお、本明細書におけるヘイズ値は、JIS K7136:2000に準じて測定した値とする。
【0044】
上記の物性は、着色粘着剤層を構成する粘着剤が含有する着色剤の種類および含有量を適切に選択することにより、達成することが可能である。
【0045】
本発明の一実施形態に係る粘着シートの一例としての具体的構成を
図1に示す。
図1に示すように、粘着シート1Aは、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された着色粘着剤層111からなる粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0046】
また、本発明の他の実施形態に係る粘着シートの一例としての具体的構成を
図2に示す。
図2に示すように、粘着シート1Bは、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。本実施形態における粘着剤層11は、1層の着色粘着剤層111と、1層の無色粘着剤層112との積層体となっている。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、着色粘着剤層111、無色粘着剤層112は、それぞれ複数層存在してもよい。
【0047】
被着体に凹凸が存在する場合、上記粘着剤層11における被着体の凹凸に接触する面に、無色粘着剤層112が位置することも好ましい。着色粘着剤層111を被着体の凹凸に接触させて、着色粘着剤層111によって当該凹凸を埋め込んだ場合、当該着色粘着剤層111は、被着体の凹凸に起因して、圧縮されたり変形したりする。これにより、着色粘着剤層111の色に濃淡ができて、透過率にムラが発生することがある。例えば、着色粘着剤層111が圧縮された部分では、色が濃くなり、透過率が低下することがある。これに対し、上記の構成を有することにより、被着体の凹凸に接触する層を、着色粘着剤層111ではなく、無色粘着剤層112とすることができる。そのため、被着体の凹凸に起因して、着色粘着剤層111が圧縮されたり変形したりすることが抑制され、粘着剤層11における透過率のムラを抑制することができる。
【0048】
また、被着体に発熱し得る発光体が存在する場合、上記粘着剤層11における当該発光体に近い側の面に、着色粘着剤層111が位置することも好ましい。これにより、着色粘着剤層111による優れた放熱性がより効果的に発揮され、発光体に近接する当該粘着剤層11や他の部材の熱劣化をより良好に抑制することができる。
【0049】
1.各要素
1-1.粘着剤層
着色粘着剤層111は、着色剤を含有する粘着剤から構成されることが好ましい。一方、無色粘着剤層112は、着色剤を含有しない粘着剤から構成されることが好ましく、また、無色透明であることが好ましい。なお、「着色剤を含有しない」とは、「着色剤を実質的に含有しない」ことを意味するものであり、着色剤を全く含有しない他、本実施形態における効果を損なわない量で着色剤を含有する場合も含まれる。その量は、0.1質量%以下であることが好ましく、特に0.01質量%以下であることが好ましく、さらには0.001質量%以下であることが好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
【0050】
本実施形態に係る粘着シート1A,1Bの着色粘着剤層111および無色粘着剤層112を構成する粘着剤の種類は、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。それらの中でも、粘着物性、光学特性等に優れるアクリル系粘着剤が好ましい。
【0051】
また、アクリル系粘着剤としては、活性エネルギー線硬化性のものであってもよいし、活性エネルギー線非硬化性のものであってもよい。また、アクリル系粘着剤としては、架橋タイプのものが好ましく、さらには熱架橋タイプのものが好ましい。
【0052】
なお、着色粘着剤層111を構成する粘着剤および無色粘着剤層112を構成する粘着剤は、互いに同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。例えば、一方が活性エネルギー線硬化性のアクリル系粘着剤であり、他方が活性エネルギー線非硬化性のアクリル系粘着剤であってもよい。また、両者が活性エネルギー線硬化性のアクリル系粘着剤または活性エネルギー線非硬化性のアクリル系粘着剤で共通している場合であっても、その粘着剤の組成や主ポリマーのモノマー組成が異なっていてもよい。
【0053】
着色粘着剤層111を構成する粘着剤および無色粘着剤層112を構成する粘着剤は、具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)を架橋してなるものであることが好ましい。着色粘着剤層111の場合には、粘着性組成物Pは、さらに着色剤(C)を含有することが好ましい。また、上記粘着剤を活性エネルギー線硬化性の粘着剤とする場合には、粘着性組成物Pは、さらに活性エネルギー線硬化性成分(D)を含有することが好ましい。
【0054】
かかる粘着性組成物Pから得られる粘着剤は、所望の光学特性、粘着力、凹凸埋め込み性(凹凸を粘着剤層によって埋め込む性能)等を発揮し得る。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0055】
なお、粘着剤層11を活性エネルギー線照射により硬化させた後も、前述した物性値は満たされ易い。
【0056】
(1)粘着性組成物の成分
(1-1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、架橋剤(B)と反応する反応性基を分子内に有する反応性基含有モノマーを含むことが好ましい。この反応性基含有モノマー由来の反応性基が架橋剤(B)と反応して、架橋構造(三次元網目構造)が形成され、所望の凝集力を有する粘着剤が得られる。
【0057】
上記反応性基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの中でも、架橋剤(B)との反応性に優れる水酸基含有モノマーが好ましい。
【0058】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における水酸基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点から、炭素数が1~4のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが好ましい。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が好ましく挙げられ、特に、アクリル酸2-ヒドロキシエチルまたはアクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましく挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)におけるカルボキシ基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点からアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、このアミノ基含有モノマーからは、後述の窒素原子含有モノマーは除かれる。
【0061】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性基含有モノマーを、下限値として5質量%以上含有することが好ましく、特に10質量%以上含有することが好ましく、さらには15質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性基含有モノマーを、上限値として35質量%以下含有することが好ましく、特に30質量%以下含有することが好ましく、さらには25質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)がモノマー単位として上記の量で反応性基含有モノマーを含有すると、得られる粘着剤において良好な架橋構造が形成され、所望の凝集力が得られ、所望のゲル分率、貯蔵弾性率および粘着力などの物性を満たし易くなる。
【0062】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを含まないことも好ましい。カルボキシ基は酸成分であるため、カルボキシ基含有モノマーを含有しないことにより、粘着剤の貼付対象に、酸により不具合が生じるもの、例えばスズドープ酸化インジウム(ITO)等の透明導電膜や金属膜などが存在する場合にも、酸によるそれらの不具合(腐食、抵抗値変化等)を抑制することができる。ただし、かかる不具合が生じない程度に、カルボキシ基含有モノマーを所定量含有することは許容される。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に、モノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.001質量%以下の量で含有することが許容される。
【0063】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。これにより、良好な粘着性を発現することができる。アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であってもよい。
【0064】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、粘着性の観点から、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルまたは(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましく、メタクリル酸メチル、アクリル酸n-ブチルまたはアクリル酸2-エチルヘキシルがさらに好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを45質量%以上含有することが好ましく、特に55質量%以上含有することが好ましく、さらには65質量%以上含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量の下限値が上記であると、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は好適な粘着性を発揮することができる。一方、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを99質量%以下含有することが好ましく、95質量%以下含有することがより好ましく、特に90質量%以下含有することが好ましく、さらには85質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量の上限値が上記であると、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に反応性官能基含有モノマー等の他のモノマー成分を好適な量導入することができる。
【0066】
上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、分子内に脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)を含有することも好ましい。脂環式構造含有モノマーは嵩高いため、これを重合体中に存在させることにより、重合体同士の間隔を広げるものと推定され、得られる粘着剤を柔軟性に優れたものとすることができる。これにより、粘着剤は、凹凸埋め込み性に優れたものとなる。
【0067】
脂環式構造含有モノマーにおける脂環式構造の炭素環は、飽和構造のものであってもよいし、不飽和結合を一部に有するものであってもよい。また、脂環式構造は、単環の脂環式構造であってもよいし、二環、三環等の多環の脂環式構造であってもよい。得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の相互間の距離を適切にし、粘着剤により高い応力緩和性を付与する観点から、上記脂環式構造は、多環の脂環式構造(多環構造)であることが好ましい。さらに、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と他の成分との相溶性を考慮して、上記多環構造は、二環から四環であることが特に好ましい。また、上記と同様に応力緩和性を付与する観点から、脂環式構造の炭素数(環を形成している部分の全ての炭素数をいい、複数の環が独立して存在する場合には、その合計の炭素数をいう)は、通常5以上であることが好ましく、7以上であることが特に好ましい。一方、脂環式構造の炭素数の上限は特に制限されないが、上記と同様に相溶性の観点から、15以下であることが好ましく、10以下であることが特に好ましい。
【0068】
上記脂環式構造含有モノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が挙げられ、中でも、より優れた凹凸埋め込み性を発揮する、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル(脂環式構造の炭素数:10)、(メタ)アクリル酸アダマンチル(脂環式構造の炭素数:10)または(メタ)アクリル酸イソボルニル(脂環式構造の炭素数:7)が好ましく、特に(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましく、さらにアクリル酸イソボルニルが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として脂環式構造含有モノマーを含有する場合、当該脂環式構造含有モノマーを1質量%以上含有することが好ましく、特に4質量%以上含有することが好ましく、さらには8質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造含有モノマーを30質量%以下含有することが好ましく、特に20質量%以下含有することが好ましく、さらには10質量%以下含有することが好ましい。脂環式構造含有モノマーの含有量が上記の範囲にあることで、得られる粘着剤は所望のゲル分率、貯蔵弾性率および粘着力などの物性を満たし易くなり、凹凸埋め込み性がより優れる。
【0070】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを含有することも好ましい。窒素原子含有モノマーを構成単位として重合体中に存在させることにより、粘着剤に所定の極性を付与し、ガラスのようなある程度の極性を有する被着体に対しても、親和性に優れたものとすることができる。上記窒素原子含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に適度な剛性を持たせる観点から、窒素含有複素環を有するモノマーが好ましい。また、構成される粘着剤の高次構造中で上記窒素原子含有モノマー由来部分の自由度を高める観点から、当該窒素原子含有モノマーは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を形成するための重合に使用される1つの重合性基以外に反応性不飽和二重結合基を含有しないことが好ましい。
【0071】
窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピラジン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルフタルイミド等が挙げられ、中でも、より優れた粘着力を発揮するN-(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、特にN-アクリロイルモルホリンが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として窒素原子含有モノマーを含有する場合、当該窒素原子含有モノマーを1質量%以上含有することが好ましく、特に2質量%以上含有することが好ましく、さらには4質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、当該窒素原子含有モノマーを20質量%以下含有することが好ましく、特に15質量%以下含有することが好ましく、さらには10質量%以下含有することが好ましい。窒素原子含有モノマーの含有量が上記の範囲内にあると、得られる粘着剤が、ガラスに対する優れた粘着力を十分に発揮することができる。
【0073】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性官能基含有モノマーの前述した作用を阻害しないためにも、反応性官能基を含有しないモノマーが好ましい。かかるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、直鎖状のポリマーであることが好ましい。直鎖状のポリマーであることにより、分子鎖の絡み合いが起こりやすくなり、凝集力の向上が期待できるため、高温高湿条件下での凹凸埋め込み性に優れた粘着剤が得られ易い。
【0075】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、溶液重合法によって得られた溶液重合物であることが好ましい。溶液重合物であることにより、高分子量のポリマーが得られやすくなり、凝集力の向上が期待できるため、高温高湿条件下での凹凸埋め込み性に優れた粘着剤が得られ易い。また、着色剤(C)が良好に分散し易く、得られる粘着剤が前述した光学特性および熱伝導率を満たし易いものとなる。
【0076】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0077】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、下限値として10万以上であることが好ましく、20万以上であることがより好ましく、40万以上であることが特に好ましく、50万以上であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の下限値が上記であると、得られる粘着剤のゲル分率や貯蔵弾性率等の値が好適なものとなり易く、高温高湿条件下での凹凸埋め込み性がより優れたものとなる。
【0078】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、上限値として200万以下であることが好ましく、140万以下であることがより好ましく、特に100万以下であることが好ましく、さらには80万以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の上限値が上記であると、得られる粘着剤のゲル分率や貯蔵弾性率等の値が好適なものとなり易く、初期の凹凸埋め込み性がより優れたものとなる。また、着色剤(C)が良好に分散し易く、得られる粘着剤が前述した光学特性および熱伝導率を満たし易いものとなる。本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0079】
なお、粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
(1-2)架橋剤(B)
架橋剤(B)は、粘着性組成物Pの加熱により(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を架橋し、三次元網目構造を良好に形成することが可能となる。これにより、得られる粘着剤の凝集力が向上し、高温高湿条件下での凹凸埋め込み性が優れたものとなる。
【0081】
上記架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基が水酸基の場合、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0082】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0083】
粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、特に1質量部以下であることが好ましく、さらには0.5質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以下であることが最も好ましい。架橋剤(B)の含有量が上記範囲にあることで、得られる粘着剤のゲル分率、貯蔵弾性率および粘着力等が好適なものとなり易く、高温高湿条件下での凹凸埋め込み性により優れたものとなる。
【0084】
(1-3)着色剤(C)
着色剤(C)としては、前述した熱伝導率を達成し易い材料であって、所望の色系統を有するものを選択することが好ましい。熱伝導率の達成し易さの観点から、染料よりも顔料を選択することが好ましい。顔料としては、一般的には、熱伝導性の観点から無機顔料であることが好ましいが、有機顔料であってもよい。着色剤の色は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、黒系の周辺部と一体感を出したい場合には、黒系着色剤を使用することが好ましく、白系の周辺部と一体感を出したい場合には、白系着色剤を使用することが好ましい。
【0085】
黒系着色剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化銅、四三酸化鉄、二酸化マンガン、活性炭等の黒色無機顔料を好ましく使用することができる。中でも、熱伝導性の高いカーボンブラックが好ましい。また、白系着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム等の白色無機顔料を好ましく使用することができる。中でも、熱伝導性の高い酸化チタンが好ましい。これらの無機顔料は、有機処理、シリコーン処理等の表面処理が施されていてもよい。なお、上記の着色剤(C)は、目的に応じて、適宜混合して使用することができる。
【0086】
上記黒系着色剤は、当該着色剤を酢酸エチルで1万倍希釈した液の、波長780nmにおけるヘイズ値と、波長380nmにおけるヘイズ値との平均値である平均ヘイズの下限値が、1%以上であるものが好ましく、特に2%以上であるものが好ましく、さらには3%以上であるものが好ましい。また、上記着色剤は、当該平均ヘイズの上限値が、60%以下であるものが好ましく、40%以下であるものが好ましく、特に30%以下であるものが好ましく、さらには20%以下であるものが好ましく、10%以下であるものが最も好ましい。このような黒系着色剤を適量に使用することにより、得られる着色粘着剤層111の光学物性が好適なものとなり、したがって、得られる粘着剤層11の光学物性が好適なものとなり易い。また、上記の色差ΔE*(B)が満たされ易くなる。
【0087】
また、上記黒系着色剤は、当該着色剤を酢酸エチルで1万倍希釈した液の、波長780nmにおけるヘイズ値と、波長380nmにおけるヘイズ値との差分の値が、30ポイント以下であるものが好ましく、25ポイント以下であるものがより好ましく、特に20ポイント以下であるものが好ましく、さらには16ポイント以下であるものが好ましく、10ポイント以下であるものが最も好ましい。このような黒系着色剤を適量に使用することにより、得られる着色粘着剤層111の光学物性が好適なものとなり、したがって、得られる粘着剤層11の光学物性が好適なものとなり易い。また、上記の色差ΔE*(B)が満たされ易くなる。
【0088】
なお、上記ヘイズ値の差分の下限値は、0ポイントであってもよいが、前述した着色粘着剤層111の光学物性を好適なものに調整し易くできる観点から、1ポイント以上であることが好ましく、特に3ポイント以上であることが好ましく、さらには5ポイント以上であることが好ましい。
【0089】
上記黒系着色剤を酢酸エチルで1万倍希釈した液の、波長780nmにおけるヘイズ値は、0.1~50%であることが好ましく、特に1~30%であることが好ましく、さらには1.5~20%であることが好ましく、2~10%であることが最も好ましい。また、上記黒系着色剤を酢酸エチルで1万倍希釈した液の、波長380nmにおけるヘイズ値は、1~60%であることが好ましく、特に5~40%であることが好ましく、さらには8~30%であることが好ましく、10~20%であることが最も好ましい。これにより、上記のヘイズ値の差分が満たされ易くなる。
【0090】
さらに、上記黒系着色剤を酢酸エチルで1万倍希釈した液の、波長領域380nm~780nmの5nmピッチの各波長(すなわち、380nm、385nm、390nm、・・・、775nm、780nm)におけるヘイズ値の標準偏差は、10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、特に5以下であることが好ましく、さらには2以下であることが好ましい。上記標準偏差の下限値は、0であることが最も好ましいが、通常は、0.1以上であることが好ましく、特に0.5以上であることが好ましく、さらには1以上であることが好ましい。これにより、得られる着色粘着剤層111の光学物性が好適なものとなり、したがって、得られる粘着剤層11の光学物性が好適なものとなり易い。
【0091】
上記白系着色剤のモード径(最頻径)は、2nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、特に100nm以上であることが好ましく、さらには200nm以上であることが好ましい。これにより、上記の色差ΔE*(W)が満たされ易くなる。また、上記モード径は、3000nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることがより好ましく、特に800nm以下であることが好ましく、さらには600nm以下であることが好ましい。これにより、得られる粘着剤層11の光学物性が好適なものとなり易い。
【0092】
白系着色剤のメジアン径(D50)は、2nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、特に100nm以上であることが好ましく、さらには200nm以上であることが好ましい。これにより、上記の色差ΔE*(W)が満たされ易くなる。また、上記メジアン径は、3000nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることがより好ましく、特に800nm以下であることが好ましく、さらには600nm以下であることが好ましい。得られる粘着剤層11の光学物性が好適なものとなり易い。
【0093】
なお、本明細書における白系着色剤のモード径およびメジアン径は、動的光散乱法によって測定した値である。
【0094】
着色粘着剤層111においては、着色剤(C)の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対する含有量は、前述した明度L*および熱伝導率を満たし易くするとともに、所望の着色の程度を得る観点から、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、特に0.3質量部以上であることが好ましく、中でも白系着色剤を使用する場合においては、1質量部以上が好ましく、さらには2質量部以上であることが好ましい。また、上記含有量は、前述した全光線透過率(およびヘイズ値)を満たし易くする観点から、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、特に3質量部以下であることが好ましく、中でも黒系着色剤を使用する場合においては、2質量部以下が好ましく、さらには1質量部以下であることが好ましい。
【0095】
(1-4)活性エネルギー線硬化性成分(D)
着色粘着剤層111または無色粘着剤層112を構成する粘着剤を活性エネルギー線硬化性の粘着剤とする場合には、粘着性組成物Pは、活性エネルギー線硬化性成分(D)を含有することが好ましい。粘着性組成物Pを架橋してなる粘着剤を活性エネルギー線硬化した粘着剤においては、活性エネルギー線硬化性成分(D)が互いに重合し、その重合した活性エネルギー線硬化性成分(D)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の架橋構造(三次元網目構造)に絡み付くものと推定される。かかる高次構造を有する粘着剤は、非常に優れた耐久性を発揮し、高温高湿条件下での凹凸埋め込み性に特に優れたものとなる。
【0096】
活性エネルギー線硬化性成分(D)は、活性エネルギー線の照射によって硬化し、上記の効果が得られる成分であれば特に制限されず、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。中でも、高温高湿条件下での凹凸埋め込み性により優れる多官能アクリレート系モノマーを好ましく挙げることができる。
【0097】
多官能アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能型などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性の観点から、多官能アクリレート系モノマーは、分子量1000未満のものが好ましい。
【0098】
上記の中でも、得られる粘着剤の高温高湿条件下での凹凸埋め込み性の観点から、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の分子内にイソシアヌレート構造を含有する多官能アクリレート系モノマー、またはトリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート等の分子内に環状構造(特にシクロアルカン構造)を含有する多官能アクリレート系モノマーが好ましく、3官能以上、かつ、分子内にイソシアヌレート構造を含有する多官能アクリレート系モノマー、または2官能以上、かつ、分子内に多環構造(特にシクロアルカンの多環構造)を含有する多官能アクリレート系モノマーがより好ましく、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレートまたはトリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレートが特に好ましく、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートまたはトリシクロデカンジメタノールアクリレートがさらに好ましく、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートが最も好ましい。
【0099】
粘着性組成物P中における活性エネルギー線硬化性成分(D)の含有量は、活性エネルギー線硬化後の粘着剤のゲル分率や貯蔵弾性率等の値を好適なものとして、高温高湿条件下での凹凸埋め込み性をより優れたものとする観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、下限値として1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることが特に好ましく、4質量部以上であることがさらに好ましい。一方、上記含有量は、活性エネルギー線硬化後の粘着剤の粘着力の観点から、上限値として20質量部以下であることが好ましく、12質量部以下であることが特に好ましく、8質量部以下であることがさらに好ましい。
【0100】
(1-5)光重合開始剤(E)
粘着性組成物Pを硬化させる活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、粘着性組成物Pは、さらに光重合開始剤(E)を含有することが好ましい。このように光重合開始剤(E)を含有することにより、活性エネルギー線硬化性成分(D)を効率良く重合させることができ、また重合硬化時間および活性エネルギー線の照射量を少なくすることができる。
【0101】
このような光重合開始剤(E)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
上記の中でも、紫外線吸収剤を含有するプラスチック板越しに紫外線照射した場合でも、開裂し易く、粘着剤を確実に硬化させ易い、フォスフィンオキサイド系の光重合開始剤が好ましい。具体的には、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が好ましい。
【0103】
粘着性組成物P中における光重合開始剤(E)の含有量は、活性エネルギー線硬化性成分(D)100質量部に対して、下限値として0.1質量部以上であることが好ましく、特に1質量部以上であることが好ましく、さらには5質量部以上であることが好ましい。また、上限値として30質量部以下であることが好ましく、特に20質量部以下であることが好ましく、さらには12質量部以下であることが好ましい。
【0104】
(1-6)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えばシランカップリング剤、防錆剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、屈折率調整剤などを添加することができる。なお、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物Pを構成する添加剤に含まれないものとする。
【0105】
粘着性組成物Pは、上記の中でもシランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、被着体がプラスチックであっても、ガラスであっても、当該被着体との密着性が向上し、高温高湿条件下での凹凸埋め込み性がより優れたものとなる。
【0106】
シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性がよく、光透過性を有するものが好ましい。
【0107】
かかるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
粘着性組成物P中におけるシランカップリング剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、1.2質量部以下であることが好ましく、特に0.8質量部以下であることが好ましく、さらには0.4質量部以下であることが好ましい。
【0109】
(2)粘着性組成物の調製
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを混合するとともに、所望により活性エネルギー線硬化性成分(D)、光重合開始剤(E)、添加剤等を加えることで製造することができる。着色粘着剤層111の場合には、さらに着色剤(C)を配合する。
【0110】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、無溶剤にて重合してもよい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0111】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
【0112】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0113】
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0114】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、架橋剤(B)、ならびに所望により希釈溶剤、着色剤(C)、活性エネルギー線硬化性成分(D)、光重合開始剤(E)、添加剤等を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
【0115】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0116】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
【0117】
(3)粘着剤層の形成
本実施形態における着色粘着剤層111および無色粘着剤層112は、それぞれ、粘着性組成物P(の塗布層)を架橋した粘着剤からなることが好ましい。粘着性組成物Pの架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した粘着性組成物Pの塗布層から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0118】
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、特に70~120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、特に50秒~2分であることが好ましい。
【0119】
加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、粘着剤が形成される。
【0120】
上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(B)を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が十分に架橋される。
【0121】
図2に示される粘着シート1Bにおける粘着剤層11は、着色粘着剤層111および無色粘着剤層112を積層することにより得ることができる。積層のタイミングは、各粘着剤層を養生する前であってもよいし、養生した後であってもよい。ただし、着色粘着剤層111および無色粘着剤層112の密着性をより高くするためには、各粘着剤層を養生する前に積層することが好ましい。
【0122】
(4)粘着剤の物性
本実施形態における粘着剤は、以下の物性を有することが好ましい。
(4-1)ゲル分率
着色粘着剤層111および無色粘着剤層112のいずれの粘着剤も、ゲル分率は、下限値として20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることが特に好ましく、45%以上であることがさらに好ましい。また、上記ゲル分率は、上限値として90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、特に70%以下であることが好ましく、さらには60%以下であることが好ましい。粘着剤のゲル分率が上記の範囲であると、粘着剤が良好な凝集力を発揮するものとなって、高温高湿条件下での凹凸埋め込み性がれたものとなる。また、良好な粘着力が発現し、被着体との接着性がより優れたものとなる。ここで、粘着剤のゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0123】
活性エネルギー線硬化性の粘着剤の場合、活性エネルギー線硬化後の粘着剤のゲル分率は、下限値として45%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましく、特に65%以上であることが好ましく、さらには74%以上であることが好ましい。また、当該ゲル分率は、上限値として100%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、特に85%以下であることが好ましく、さらには80%以下であることが好ましい。活性エネルギー線硬化後の粘着剤のゲル分率が上記の範囲にあると、高温高湿条件下での凹凸埋め込み性がより優れたものとなる。また、良好な粘着力が発現し、被着体との接着性がより優れたものとなる。
【0124】
(4-2)貯蔵弾性率
着色粘着剤層111を構成する粘着剤の23℃における貯蔵弾性率は、下限値として0.01MPa以上であることが好ましく、0.02MPa以上であることがより好ましく、特に0.03MPa以上であることが好ましく、さらには0.04MPa以上であることが好ましい。上記貯蔵弾性率の下限値が上記であることにより、高温高湿条件下での凹凸埋め込み性に優れたものとなる。また、
図2に示される粘着シート1Bの無色粘着剤層112は、被着体の凹凸に接触させて追従させた場合、被着体の凹凸に起因して圧縮されたり変形したりする。これに起因して、着色粘着剤層111が無色粘着剤層112の圧縮や変形の影響を受ける可能性があるが、上記貯蔵弾性率の下限値が上記であることにより、着色粘着剤層111が無色粘着剤層112の圧縮や変形の影響を受け難いものとなる。
【0125】
上記貯蔵弾性率は、上限値として1MPa以下であることが好ましく、0.5MPa以下であることがより好ましく、特に0.2MPa以下であることが好ましく、さらには0.1MPa以下であることが好ましい。上記貯蔵弾性率の上限値が上記であることにより、良好な粘着力が発現し、被着体との接着性がより優れたものとなる。
【0126】
一方、無色粘着剤層112を構成する粘着剤の23℃における貯蔵弾性率は、下限値として0.01MPa以上であることが好ましく、0.02MPa以上であることがより好ましく、特に0.03MPa以上であることが好ましく、さらには0.04MPa以上であることが好ましい。上記貯蔵弾性率の下限値が上記であることにより、高温高湿条件下での凹凸埋め込み性に優れたものとなる。
【0127】
上記貯蔵弾性率は、上限値として1MPa以下であることが好ましく、0.5MPa以下であることがより好ましく、特に0.2MPa以下であることが好ましく、さらには0.1MPa以下であることが好ましい。上記貯蔵弾性率の上限値が上記であることにより、初期の凹凸埋め込み性に優れたものとなる。また、被着体の凹凸を無色粘着剤層112によって吸収することができ、着色粘着剤層111が当該凹凸により圧縮されたり変形したりすることが抑制され易い。
【0128】
着色粘着剤層111を構成する粘着剤が活性エネルギー線硬化性の粘着剤の場合、活性エネルギー線硬化後の当該粘着剤の23℃における貯蔵弾性率は、下限値として0.02MPa以上であることが好ましく、0.05MPa以上であることがより好ましく、特に0.1MPa以上であることが好ましく、さらには0.12MPa以上であることが好ましい。上記貯蔵弾性率の下限値が上記であることにより、高温高湿条件下での凹凸埋め込み性に優れたものとなる。また、上記貯蔵弾性率は、上限値として2MPa以下であることが好ましく、1MPa以下であることがより好ましく、特に0.5MPa以下であることが好ましく、さらには0.2MPa以下であることが好ましい。上記貯蔵弾性率の上限値が上記であることにより、良好な粘着力が発現し、被着体との接着性がより優れたものとなる。
【0129】
一方、無色粘着剤層112を構成する粘着剤が活性エネルギー線硬化性の粘着剤の場合、活性エネルギー線硬化後の当該粘着剤の23℃における貯蔵弾性率は、下限値として0.02MPa以上であることが好ましく、特に0.05MPa以上であることが好ましく、さらには0.1MPa以上であることが好ましい。上記貯蔵弾性率の下限値が上記であることにより、高温高湿条件下での凹凸埋め込み性に優れたものとなる。また、上記貯蔵弾性率は、上限値として2MPa以下であることが好ましく、1MPa以下であることがより好ましく、特に0.5MPa以下であることが好ましく、さらには0.2MPa以下であることが好ましい。上記貯蔵弾性率の上限値が上記であることにより、良好な粘着力が発現し、被着体との接着性がより優れたものとなる。
【0130】
なお、本明細書における貯蔵弾性率は、JIS K7244-6に準拠して、測定周波数1Hzにてねじりせん断法により測定した値とする。具体的には、後述する試験例に示す通りである。
【0131】
(5)粘着剤層の厚さ
図1に示される粘着シート1Aのように、粘着剤層11が着色粘着剤層111のみからなる場合、着色粘着剤層111(粘着剤層11)の厚さは、25μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、特に75μm以上であることが好ましく、さらには100μm以上であることが好ましい。また、上記厚さは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、特に200μm以下であることが好ましく、さらには150μm以下であることが好ましい。着色粘着剤層111(粘着剤層11)の厚さが上記の範囲にあると、着色剤(C)の含有量との関係で、前述した物性が満たされ易く、また、所望の着色の程度および所望の粘着力が得られ易い。なお、着色粘着剤層111は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
【0132】
一方、
図2に示される粘着シート1Bのように、粘着剤層11が着色粘着剤層111および無色粘着剤層112を含む場合、着色粘着剤層111の厚さは、5μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、特に35μm以上であることが好ましく、さらには45μm以上であることが好ましい。また、上記厚さは、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、特に200μm以下であることが好ましく、さらには100μm以下であることが好ましい。着色粘着剤層111の厚さが上記の範囲にあると、着色剤(C)の含有量との関係で、前述した物性が満たされ易く、また、所望の着色の程度および所望の粘着力が得られ易い。
【0133】
一方、無色粘着剤層112(被着体の凹凸に接触する面に位置する無色粘着剤層)の厚さは、被着体の凹凸の深さ又は高さよりも大きいことが好ましい。通常は、下限値として10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、特に40μm以上であることが好ましく、さらには50μm以上であることが好ましい。無色粘着剤層112の厚さの下限値が上記であると、被着体の凹凸を無色粘着剤層112によって吸収することができ、着色粘着剤層111が当該凹凸により圧縮されたり変形したりすることが、より効果的に抑制される。これにより、粘着剤層11における透過率のムラがより効果的に抑制される。
【0134】
また、無色粘着剤層112の厚さは、上限値として3000μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましく、特に500μm以下であることが好ましく、さらには200μm以下であることが好ましい。無色粘着剤層112の厚さの上限値が上記であると、粘着剤層11の厚さが好適なものとなり易い。なお、無色粘着剤層112は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
【0135】
ここで、被着体の凹凸に接触する面に位置しない無色粘着剤層の厚さは、上記の範囲に限定されるものではなく、所望の厚さに設定することができる。
【0136】
図2に示される粘着シート1Bのように、粘着剤層11が着色粘着剤層111および無色粘着剤層112を含む場合、粘着剤層11の厚さは、その用途に応じて適宜設定することができるが、通常は、下限値として25μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、特に75μm以上であることが好ましく、さらには100μm以上であることが好ましい。粘着剤層11の厚さの下限値が上記であると、所望の粘着力および優れた凹凸埋め込み性が得られ易くなる。
【0137】
また、粘着剤層11の厚さは、上限値として3000μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましく、特に500μm以下であることが好ましく、さらには200μm以下であることが好ましい。粘着剤層11の厚さの上限値が上記であると、加工性が良好なものとなり、また、押し跡等による外観不具合が発生しにくくなる。
【0138】
1-2.剥離シート
剥離シート12a,12bは、粘着シート1A,1Bの使用時まで粘着剤層11を保護するものであり、粘着シート1A,1B(粘着剤層11)を使用するときに剥離される。本実施形態に係る粘着シート1A,1Bにおいて、剥離シート12a,12bの一方または両方は必ずしも必要なものではない。
【0139】
剥離シート12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0140】
上記剥離シート12a,12bの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シート12a,12bのうち、粘着剤層11から先に剥離する側の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとし、後に剥離する側の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとすることが好ましい。
【0141】
剥離シート12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20~200μm程度である。
【0142】
2.物性
(1)粘着力
着色粘着剤層111のソーダライムガラスに対する粘着力は、下限値として1N/25mm以上であることが好ましく、10N/25mm以上であることがより好ましく、20N/25mm以上であることが特に好ましく、30N/25mm以上であることがさらに好ましい。粘着力の下限値が上記であると、高温高湿条件下での凹凸埋め込み性に優れたものとなる(着色粘着剤層111が被着体の凹凸に接する場合)。また、着色粘着剤層111のソーダライムガラスに対する粘着力は、上限値として100N/25mm以下であることが好ましく、75N/25mm以下であることがより好ましく、50N/25mm以下であることが特に好ましく、40N/25mm以下であることがさらに好ましい。粘着力の上限値が上記であると、良好なリワーク性が得られ、貼合ミスが生じた場合、表示体構成部材、特に高価な表示体構成部材の再利用が可能となる。
【0143】
着色粘着剤層111を構成する粘着剤が活性エネルギー線硬化性の粘着剤の場合、活性エネルギー線硬化後の着色粘着剤層111の粘着力は、下限値として1N/25mm以上であることが好ましく、10N/25mm以上であることがより好ましく、20N/25mm以上であることが特に好ましく、40N/25mm以上であることがさらに好ましい。また、活性エネルギー線硬化後の着色粘着剤層111のソーダライムガラスに対する粘着力は、上限値として100N/25mm以下であることが好ましく、75N/25mm以下であることがより好ましく、50N/25mm以下であることが特に好ましい。粘着力が上記範囲であると、高温高湿条件下での凹凸埋め込み性に優れたものとなる(着色粘着剤層111が被着体の凹凸に接する場合)。
【0144】
無色粘着剤層112のソーダライムガラスに対する粘着力は、下限値として1N/25mm以上であることが好ましく、10N/25mm以上であることがより好ましく、20N/25mm以上であることが特に好ましく、30N/25mm以上であることがさらに好ましい。粘着力の下限値が上記であると、高温高湿条件下での凹凸埋め込み性に優れたものとなる(無色粘着剤層112が被着体の凹凸に接する場合)。また、無色粘着剤層112のソーダライムガラスに対する粘着力は、上限値として100N/25mm以下であることが好ましく、75N/25mm以下であることがより好ましく、50N/25mm以下であることが特に好ましい。粘着力の上限値が上記であると、良好なリワーク性が得られる。
【0145】
無色粘着剤層112を構成する粘着剤が活性エネルギー線硬化性の粘着剤の場合、活性エネルギー線硬化後の無色粘着剤層112のソーダライムガラスに対する粘着力は、下限値として1N/25mm以上であることが好ましく、10N/25mm以上であることがより好ましく、20N/25mm以上であることが特に好ましく、30N/25mm以上であることがさらに好ましい。粘着力の下限値が上記であると、高温高湿条件下での凹凸埋め込み性に優れたものとなる(無色粘着剤層112が被着体の凹凸に接する場合)。また、活性エネルギー線硬化後の無色粘着剤層112のソーダライムガラスに対する粘着力は、上限値として100N/25mm以下であることが好ましく、75N/25mm以下であることがより好ましく、50N/25mm以下であることが特に好ましい。粘着力の上限値が上記であると、良好なリワーク性が得られる。
【0146】
ここで、本明細書における粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定した粘着力をいうが、測定サンプルは25mm幅、100mm長とし、当該測定サンプルを被着体に貼付し、0.5MPa、50℃で20分加圧した後、常圧、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、剥離速度300mm/minにて測定するものとする。また、活性エネルギー線硬化後の粘着力は、被着体貼付後に活性エネルギー線硬化したときの粘着力であるものとする。
【0147】
(2)凹凸埋め込み率
粘着剤層が被着体の凹凸を埋め込む性質、即ち凹凸埋め込み性は、凹凸埋め込み率(%)を指標として判断することができる。本実施形態における粘着剤層11の下記の式で示される凹凸埋め込み率(%)は、下限値として20%以上であることが好ましく、特に30%以上であることが好ましく、さらには40%以上であることが好ましい。また、上記凹凸埋め込み率の上限値としては、特に限定されないが、通常、80%以下であることが好ましく、特に70%以下であることが好ましい。
【0148】
凹凸埋め込み率(%)={(所定耐久試験後、気泡、浮き、剥がれ等が無く埋められた状態が維持された凸部の高さ(μm))/(粘着剤層の厚み)}×100
なお、凹凸埋め込み率の試験方法は、後述する試験例に示す通りである。また、活性エネルギー線硬化性の粘着剤の場合には、被着体貼付後に活性エネルギー線硬化したときの凹凸埋め込み率であるものとする。
【0149】
3.粘着シートの製造
図1に示される実施形態に係る粘着シート1Aの一製造例としては、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、着色粘着剤層111用の粘着性組成物Pの塗布溶液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを架橋し、塗布層を形成した後、その塗布層に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。ここで、塗布層付きの剥離シートを複数作製し、その塗布層を所望の数で貼合してもよい。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層11となる。これにより、上記粘着シート1Aが得られる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
【0150】
図2に示される実施形態に係る粘着シート1Bの一製造例としては、一方の剥離シート12aの剥離面に、無色粘着剤層112を形成するための粘着性組成物Pの塗布溶液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12aを得る。また、他方の剥離シート12bの剥離面に、着色粘着剤層111を形成するための粘着性組成物Pの塗布溶液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12bを得る。そして、塗布層付きの剥離シート12aと塗布層付きの剥離シート12bとを、両塗布層が互いに接触するように貼り合わせる。ここで、塗布層付きの剥離シートを複数作製し、その塗布層を所望の数、所望の積層順で貼合してもよい。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記の積層された塗布層が粘着剤層11となる。これにより、着色粘着剤層111と無色粘着剤層112との積層体である粘着剤層11を有する上記粘着シート1Bが得られる。
【0151】
なお、無色粘着剤層112を形成するための塗布層および着色粘着剤層111を形成するための塗布層は、それぞれ2枚の剥離シートによって挟持されてもよく、各塗布層を貼合するときに、それぞれの片方の剥離シートを剥離してもよい。
【0152】
上記粘着性組成物Pの塗布溶液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0153】
〔表示体〕
本発明の一実施形態に係る表示体は、一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材と、それら表示体構成部材同士を互いに貼合する粘着剤層とを備えており、当該粘着剤層が上述した実施形態に係る粘着シートの粘着剤層から形成されたものである。
【0154】
一の表示体構成部材および他の表示体構成部材の少なくとも一方は、発光体を有することが好ましく、あるいは、粘着剤層によって貼合される側の面に凹凸を有することが好ましい。また、当該凹凸は、基板上に設けられた複数の発光体による凹凸であることが好ましい。さらに、本実施形態に係る表示体は、黒色の周辺部または白色の周辺部を有することが好ましい。
【0155】
一の表示体構成部材および他の表示体構成部材は、いずれも硬質体であってもよい。上述した実施形態に係る粘着シートによれば、硬質体同士を良好に貼合することができる。なお、本明細書における「硬質体」とは、構造が不可逆的に変形をすることなく屈曲可能な角度が90°未満である部材をいう。当該角度は、好ましくは60°未満であり、より好ましくは45°未満であり、特に好ましくは10°未満であり、さらに好ましくは5°未満である。なお、屈曲可能な角度(屈曲角)とは、硬質体を水平な面に載置し、一方の端部を固定し、反対側の端部を立ち上げたときに、水平な面から立ち上がった角度をいう。硬質体は、単層または単一の部材からなるものであってもよいし、複数層または複数の部材からなるものであってもよい。
【0156】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る表示体を説明する。
図3に示すように、本発明の一実施形態に係る表示体2Aは、バックライト30と、バックライト30上に積層された、着色粘着剤層111からなる粘着剤層11と、粘着剤層11上に積層された拡散部材41と、拡散部材41上に積層された液晶パネル42とを備えて構成される。この表示体2Aにおける粘着剤層11は、
図1に示される粘着シート1Aの粘着剤層11である。
【0157】
図4に示すように、本発明の他の実施形態に係る表示体2Bは、バックライト30と、バックライト30上に積層された、複数層からなる粘着剤層11と、粘着剤層11上に積層された拡散部材41と、拡散部材41上に積層された液晶パネル42とを備えて構成される。この表示体2Bにおける粘着剤層11は、
図2に示される粘着シート1Bの粘着剤層11である。本実施形態における粘着剤層11は、着色粘着剤層111と無色粘着剤層112との積層体であり、無色粘着剤層112が発光体32による凹凸に接する側に位置している。上記複数の発光体32は、無色粘着剤層112によって空隙なく封止されている。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、着色粘着剤層111と無色粘着剤層112とが入れ替わってもよい。この場合、発光体32に接する着色粘着剤層111によって、放熱性がより向上する。
【0158】
ここで、上記表示体2A,2Bにおけるバックライト30は、第1の表示体構成部材に該当し、拡散部材41および液晶パネル42を含む積層体が、第2の表示体構成部材に該当する。
【0159】
バックライト30は、1または2以上の基板31と、当該基板31上に複数設けられた発光体32とを備えて構成される。かかるバックライト30は、複数の発光体32による凹凸を有している。
【0160】
基板31としては、特に限定されず、バックライトに一般的に用いられるものが使用される。この基板31は、通常は、プリント回路基板(PCB基板;Printed Circuit Board)である。
【0161】
基板31は、複数の発光体32がまとめて搭載されるように一体的に形成されていてもよいし、一の基板31上に一の発光体32が搭載されるように、各々分離して形成されていてもよい。分離して形成される場合には、各基板31は、通常、フレーム、支持体、筐体等に固定される。本実施形態では、
図3および
図4に示すように、基板31は、複数の発光体32がまとめて搭載されるように一体的に形成されていることが好ましい。
【0162】
基板31の粘着剤層11側の面には、反射層が形成されていてもよいし、反射部材が設けられていてもよい。これにより、バックライト30による輝度を効果的に向上させることができる。反射層や反射部材の材料は、公知のものを採用することができる。
【0163】
発光体32の種類としては、例えば、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、有機エレクトロルミネッセンス発光素子、無機エレクトロルミネッセンス発光素子等が挙げられる。これらの中でも、粘着剤層11による封止性の観点から、LEDが好ましく、特に、ミニLEDまたはマイクロLEDが好ましい。
【0164】
発光体32の厚さは、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、特に50μm以上であることが好ましく、さらには80μm以上であることが好ましい。また、発光体32の厚さは、300μm以下であることが好ましく、特に150μm以下であることが好ましく、さらには100μm以下であることが好ましい。
【0165】
また、互いに隣り合う発光体32の間隙の幅は、0.01mm以上であることが好ましく、特に0.1mm以上であることが好ましく、さらには0.5mm以上であることが好ましい。また、上記間隙の幅は、100mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、特に4mm以下であることが好ましく、さらには2mm以下であることが好ましい。
【0166】
発光体32の形状は、特に限定されないが、通常は、直方体状、半球状等である。発光体32の大きさも特に限定されないが、発光体封止性の観点から、平面視の一辺または直径が、0.01~100mmであることが好ましく、0.1~10mmであることがより好ましく、特に0.2~5mmであることが好ましく、さらには0.5~2mmであることが好ましい。
【0167】
拡散部材41は、バックライト30から照射される光を拡散する部材であり、この拡散部材41によって、輝度ムラの発生を効果的に抑制することができる。拡散部材41は、公知のものを採用することができ、例えば、拡散板や拡散フィルム、それらの組み合わせ等を使用することができる。液晶パネル42も、公知のものを採用することができる。
【0168】
なお、粘着剤層11と拡散部材41との間、拡散部材41と液晶パネル42との間、または液晶パネル42における拡散部材41とは反対側の面には、所望の光学部材が設けられていてもよい。かかる光学部材としては、例えば、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、視野角補償フィルム、透明導電性フィルム、液晶ポリマーフィルム、半透過反射フィルム、飛散防止フィルム等が挙げられる。
【0169】
図3に示される実施形態に係る表示体2Aを製造するには、例えば、
図1に示される粘着シート1Aの一方の剥離シート12aを剥離して、露出した粘着剤層11(着色粘着剤層111)を、バックライト30の発光体32が存在する側の面に貼合する。次に、粘着シート1Aの粘着剤層11から他方の剥離シート12bを剥離して、露出した粘着剤層11(着色粘着剤層111)と拡散部材41とを貼合する。
【0170】
図4に示される実施形態に係る表示体2Bを製造するには、例えば、
図2に示される粘着シート1Bの一方の剥離シート12aを剥離して、露出した無色粘着剤層112を、バックライト30の発光体32が存在する側の面に貼合する。次に、粘着シート1Bの粘着剤層11から他方の剥離シート12bを剥離して、露出した着色粘着剤層111と拡散部材41とを貼合する。
【0171】
いずれの場合も、粘着剤層11が活性エネルギー線硬化性の場合には、粘着剤層11に対して活性エネルギー線を照射する。これにより、粘着剤層11中のエネルギー線硬化性成分(C)が重合し、粘着剤層11が硬化する。粘着剤層11に対するエネルギー線の照射は、通常、第1の表示体構成部材21または第2の表示体構成部材22のいずれか一方越しに行う。
【0172】
活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0173】
紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50~1000mW/cm2程度であることが好ましく、100~500mW/cm2程度であることが好ましい。また、光量は、50~10000mJ/cm2であることが好ましく、200~7000mJ/cm2であることがより好ましく、500~3000mJ/cm2であることが特に好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10~1000krad程度が好ましい。
【0174】
その後、所望の粘着シートを使用して、拡散部材41と液晶パネル42とを貼合する。また、他の例として、バックライト30および拡散部材41の貼合順序を入れ替えてもよい。
【0175】
図示はしないが、本実施形態に係る表示体2A,2Bは、黒色の周辺部または白色の周辺部を有することが好ましい。周辺部としては、例えば、表示部の周りに設けられる額縁状の印刷部や、表示部または表示体の周りに設けられる枠材、その他の部材などが挙げられる。
【0176】
本実施形態に係る表示体2A,2Bにおいては、粘着剤層11が前述した光学物性を有することにより、表示体2A,2Bの点灯時に画像・映像の視認性を確保しつつ、表示体2A,2Bの消灯時に当該表示体2A,2Bの意匠性(一例として外観調和性)が向上したものとなる。具体的には、表示部と、黒色または白色の周辺部との一体感が得られ、外観調和性が高まって高級感を出すことが可能となる。また、粘着剤層11の熱伝導率が前述した値であることにより、バックライト30の発光体32が発光に伴って発熱しても、粘着剤層11を介して放熱することができる。これにより、発光体32に近接する当該粘着剤層11や他の部材の熱劣化を抑制することができる。
【0177】
さらに、
図4に示される表示体2Bにおいては、バックライト30における発光体32による凹凸を有する面に無色粘着剤層112が積層されており、当該無色粘着剤層112によって凹凸が吸収されているため、着色粘着剤層111が圧縮されたり変形したりすることが抑制されている。それにより、粘着剤層11における透過率のムラが抑制される。
【0178】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0179】
例えば、粘着シート1A,1Bにおける剥離シート12a,12bのいずれか一方または両方は省略されてもよく、また、剥離シート12aおよび/または12bの替わりに所望の光学部材が積層されてもよい。さらに、粘着剤層11は、無色粘着剤層112と、着色粘着剤層111と、無色粘着剤層112とをその順に積層したものであってもよい。
【0180】
また、
図4に示される表示体2Bにおける着色粘着剤層111および無色粘着剤層112は、その位置が入れ替わってもよい。
【実施例】
【0181】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0182】
〔製造例1〕(着色粘着シートの作製)
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル45質量部、アクリル酸n-ブチル20質量部、アクリル酸イソボルニル10質量部、N-アクリロイルモルホリン5質量部およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル20質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)50万であった。
【0183】
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)0.3質量部と、着色剤(C)としてのカーボンブラック系黒色顔料(C1)0.6質量部と、活性エネルギー線硬化性成分(D)としてのε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学社製,製品名「NKエステル A-9300-1CL」)5.0質量部と、光重合開始剤(E)としての2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド0.5質量部と、シランカップリング剤としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0184】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を100質量部(固形分換算値)とした場合の粘着性組成物の各配合(固形分換算値)を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)]
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
BA:アクリル酸n-ブチル
MMA:メタクリル酸メチル
IBXA:アクリル酸イソボルニル
ACMO:N-アクリロイルモルホリン
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
[着色剤(C)]
C1:表2に示される物性を有するカーボンブラック系黒色顔料
C2:酸化チタン系白色顔料
C3:ニグロシン系黒色染料(オリエント化学工業社製,製品名「NUBIAN BLACK PA-2802」)
【0185】
なお、着色剤(C)としてのC2(酸化チタン系白色顔料)の組成は、酸化チタン91.2質量%、酸化亜鉛0.8質量%、シリカ8質量%であった。また、当該酸化チタン系白色剤のモード径は420nm、メジアン径は420nmであった。粒径の測定は、動的光散乱法(MicrotracBEL社製,装置名:Nanotrac Waveを使用)によって行った。
【0186】
3.着色粘着シートの製造
上記工程2で得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して塗布層(厚さ:50μm)を形成した。
【0187】
次いで、上記で得られた重剥離型剥離シート上の塗布層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381031」)とを、当該軽剥離型剥離シートの剥離処理面が塗布層に接触するように貼合し、重剥離型剥離シート/着色粘着剤層(a)(厚さ:50μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる着色粘着シートを作製した。
【0188】
なお、上記着色粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である(以下同じ)。
【0189】
〔製造例2~4〕(着色粘着シートの作製)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量(Mw)、架橋剤(B)の配合量、ならびに着色剤(C)の種類および配合量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして、着色粘着剤層(b)(製造例2)、着色粘着剤層(c)(製造例3)、および着色粘着剤層(d)(製造例4)を有する着色粘着シートを作製した。
【0190】
〔製造例5~6〕(無色粘着シートの作製)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量(Mw)、架橋剤(B)の配合量、着色剤(C)の配合量(配合無し)、活性エネルギー線硬化性成分(D)の配合量、光重合開始剤(E)の配合量、ならびに粘着剤層の厚さを表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして、無色粘着剤層(e)(製造例5)、および無色粘着剤層(f)(製造例6)を有する無色粘着シートを作製した。
【0191】
なお、製造例5で作製した無色粘着剤層(f)は、活性エネルギー線非硬化性の粘着剤からなり、製造例6で作製した無色粘着剤層(g)は、活性エネルギー線非硬化性の粘着剤からなるものであった。
【0192】
前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL-H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0193】
〔実施例1〕
製造例1で作製した着色粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、着色粘着剤層(a)を露出させた。また、製造例6で作製した無色粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、無色粘着剤層(f)を露出させた。露出した着色粘着剤層(a)および無色粘着剤層(f)を貼合し、その後、23℃、50%RHの条件下で7日間養生した。
【0194】
このようにして、重剥離型剥離シート/着色粘着剤層(a)(第1層;50μm)/無色粘着剤層(f)(第2層;150μm)/重剥離型剥離シートからなる粘着シートを製造した。なお、被着体に凹凸が存在する場合、第2層が当該被着体の凹凸に接する側の層とする。
【0195】
〔実施例2~4,比較例1~2〕
第1層および第2層の粘着剤層を表4に示すように変更する以外、実施例1と同様にして、粘着シートを製造した。
【0196】
〔試験例1〕(ゲル分率の測定)
各製造例で作製した粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0197】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。これにより、粘着剤のゲル分率(UV前)を導出した。結果を表3に示す。
【0198】
また、製造例1~4,6で作製した粘着シートの粘着剤層に対して、軽剥離型剥離シート越しに、下記の条件で活性エネルギー線(紫外線;UV)を照射し、粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とした。この硬化後粘着剤層の粘着剤について、上記と同様にしてゲル分率(UV後)を導出した。結果を表3に示す。
【0199】
<活性エネルギー線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm2,光量2000mJ/cm2
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
【0200】
〔試験例2〕(貯蔵弾性率の測定)
各製造例で作製した粘着シートから剥離シートを剥がし、粘着剤層を厚さ3mmになるように複数層積層した。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ3mm)を打ち抜き、これをサンプルとした。
【0201】
上記サンプルについて、JIS K7244-6に準拠し、粘弾性測定装置(Physica社製,製品名「MCR300」)を用いてねじりせん断法により、以下の条件で23℃における貯蔵弾性率(UV前;MPa)を測定した。結果を表3に示す。
測定周波数:1Hz
測定温度:23℃
【0202】
また、製造例1~4,6で作製した粘着シートについては、上記と同様のサンプルに対し、試験例1と同様の条件にて活性エネルギー線(紫外線;UV)を照射して、粘着剤を硬化させることにより、活性エネルギー線照射後のサンプルを得た。得られた活性エネルギー線照射後のサンプルについて、活性エネルギー線照射前のサンプルと同様にして、23℃における貯蔵弾性率(UV後;MPa)を測定した。結果を表3に示す。
【0203】
〔試験例3〕(全光線透過率の測定)
各製造例、実施例および比較例で作製した粘着シートの粘着剤層をガラスに貼合して、これを測定用サンプルとした。ガラスでバックグラウンド測定を行った上で、上記測定用サンプルについて、JIS K7361-1:1997に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「SH-7000」)を用いて全光線透過率(%)を測定した。結果を表3および表4に示す。
【0204】
なお、製造例5で製造した粘着シート以外の粘着シートについては、試験例1と同様の条件にて活性エネルギー線を照射して、粘着剤を硬化させた後、上記の測定を行った。
【0205】
〔試験例4〕(ヘイズ値の測定)
各製造例、実施例および比較例で作製した粘着シートの粘着剤層について、JIS K7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「SH-7000」)を用いてヘイズ値(%)を測定した。結果を表3および表4に示す。
【0206】
なお、製造例5で製造した粘着シート以外の粘着シートについては、試験例1と同様の条件にて活性エネルギー線を照射して、粘着剤を硬化させた後、上記の測定を行った。
【0207】
〔試験例5〕(粘着力の測定)
各製造例で作製した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合し、剥離シート/粘着剤層/PETフィルムの積層体を得た。得られた積層体を25mm幅、100mm長に裁断し、これをサンプルとした。
【0208】
23℃、50%RHの環境下にて、上記サンプルから重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層をソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付したのち、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン」)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で粘着力(UV前;N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。結果を表3に示す。
【0209】
また、製造例1~4,6で作製した粘着シートについては、上記と同様にして粘着剤層をソーダライムガラスに貼付し、オートクレーブ処理してから、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した後、PETフィルム越しに、試験例1と同様の条件で活性エネルギー線を照射し、粘着剤層を硬化させた。その硬化後の粘着剤層について、上記と同様にして粘着力(UV後;N/25mm)を測定した。結果を表3に示す。
【0210】
〔試験例6〕(凹凸埋め込み率の測定)
ガラス板(NSGプレシジョン社製,製品名「コーニングガラス イーグルXG」,縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)の表面に、紫外線硬化型インク(帝国インキ社製,製品名「POS-911墨」)を額縁状(外形:縦90mm×横50mm,幅5mm)にスクリーン印刷した。次いで、紫外線を照射(80W/cm2,メタルハライドランプ2灯,ランプ高さ15cm,ベルトスピード10~15m/分)して、印刷した上記紫外線硬化型インクを硬化させ、印刷による段差(段差の高さ:5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、50μm、60μm及び75μmのいずれか1つ)を有する段差付ガラス板を作製した。
【0211】
各製造例で作製した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合した。次いで、重剥離型剥離シートを剥がし、粘着剤層を表出させた。そして、ラミネーター(フジプラ社製,製品名「LPD3214」)を用いて、粘着剤層が額縁状の印刷全面を覆うように上記積層体を各段差付ガラス板にラミネートし、これを評価用サンプルとした。
【0212】
得られた評価用サンプルを、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理した後、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。製造例1~4,6で作製した粘着シートについては、PETフィルム越しに、試験例1と同様の条件で活性エネルギー線を照射し、粘着剤層を硬化させた。
【0213】
次いで、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて72時間保管し(耐久試験)、その後、凹凸埋め込み性を評価した。凹凸埋め込み性は、粘着剤層により印刷段差が完全に埋められているか否かで判断し、印刷段差と粘着剤層との界面で気泡、浮き、剥がれなどが観察された場合は、印刷段差の凹凸に追従できなかったと判断される。ここでは、凹凸埋め込み性は、下記の式で示される凹凸埋め込み率(%)として評価した。結果を表3に示す。
凹凸埋め込み率(%)={(耐久試験後、気泡、浮き、剥がれ等が無く埋められた状態が維持された段差の高さ(μm))/(粘着剤層の厚み)}×100
【0214】
〔試験例7〕(L*a*b*の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートの粘着剤層について、同時測光分光式色度計(日本電色工業社製,製品名「SQ2000」)を使用し、透過光において、CIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*(L*M)、色度a*(a*M)および色度b*(b*M)を測定した。結果を表4に示す。
【0215】
一方、白色印刷板および黒色印刷板を用意し、それぞれについて、同時測光分光式色度計(日本電色工業社製,製品名「SQ2000」)を使用し、反射光において、CIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*、色度a*および色度b*を測定した。結果を表3に示す。
【0216】
また、上記の結果から、以下の式(I)および式(II)に従って、完全な黒色との色差ΔE*(B)および完全な白色との色差ΔE*(W)を算出した。また、色差ΔE*(B)を色差ΔE*(W)で除して、ΔE*(B)/ΔE*(W)を算出した。結果を表4に示す。
【0217】
【0218】
【0219】
〔試験例8〕(意匠性の評価)
実施例および比較例で得られた粘着シートを縦70mm×横70mmに裁断し、当該粘着シートの粘着剤層を、2枚のソーダライムガラス板(日本板硝子社製,縦70mm×横70mm×厚さ1.1mm)で挟持するように貼合した。次いで、一方のソーダライムガラス板越しに、試験例1と同様の条件で活性エネルギー線を照射して、粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層とし、これをサンプルとした。
【0220】
得られたサンプルを、背景としての白色印刷板(試験例7と同じもの)の上に配置した。そして、当該サンプルが、背景に馴染んでいる(背景と一体感がある)かどうかを、3波長蛍光灯下(蛍光灯からの距離:200cm)にて、目視で判断し、以下の基準により意匠性(白)を評価した。また、上記サンプルを、背景としての黒色印刷板(試験例7と同じもの)の上に配置した。そして、当該サンプルが、背景に馴染んでいる(背景と一体感がある)かどうかを、3波長蛍光灯下(蛍光灯からの距離:200cm)にて、目視で判断し、以下の基準により意匠性(黒)を評価した。結果を表4に示す。
◎:サンプルが背景に非常に馴染んでいた。
○:サンプルが背景にある程度馴染んでいた。
×:サンプルが背景に明らかに馴染んでいなかった。
【0221】
さらに、以下の基準により意匠性(汎用性)を評価した。結果を表4に示す。 ◎:意匠性(白)および意匠性(黒)の評価結果において、いずれも◎または〇であった(いずれも〇を除く)。
○:意匠性(白)および意匠性(黒)の評価結果において、いずれも〇であった。
×:意匠性(白)および意匠性(黒)の評価結果において、いずれかが×またはいずれも×であった。
【0222】
〔試験例9〕(熱伝導率の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートの粘着剤層について、熱拡散率・熱伝導率測定装置(アイフェイズ社製,製品名「ai-phase mobile」)を使用し、ISO 22007-3に準拠して熱伝導率(W/m・K)の測定を行った。結果を表4に示す。
【0223】
〔試験例10〕(放熱性の評価)
実施例および比較例で得られた粘着シートの放熱性について、比較例1の粘着シートの熱伝導率を基準にした比率を算出し、以下に従って評価した。結果を表4に示す。
◎:熱伝導率の比率が150%以上であった。
〇:熱伝導率の比率が120%以上、150%未満であった。
△:熱伝導率の比率が100%超、120%未満であった。
×:熱伝導率の比率が100%以下であった。
【0224】
〔試験例11〕(視認性の評価)
サイズ15.6インチ、解像度1366×768のディスプレイ(富士通社製,製品名「LITEBOOK A574/H」)において、白背景、黒字の文字(字体:MS Pゴシック)を、5ポイントから20ポイントの大きさ(1ポイント刻み)で100%表示した。
【0225】
上記ディスプレイの上に、試験例10と同様にして作製したサンプルを配置した。そして、ディスプレイから50cmの位置において、目視により視認できる文字のサイズを確認し、以下の基準により視認性を評価した。結果を表4に示す。
◎:8ポイントの文字が視認できた。
○:8ポイントの文字は完全には視認できなかったが、15ポイントの文字は視認できた。
×:15ポイントの文字が視認できなかった。
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】
表4から分かるように、実施例で得られた粘着シートは、意匠性および放熱性に優れるとともに、視認性にも優れるものであった。また、表3から分かるように、各製造例で製造した粘着剤層を積層してなる実施例に係る粘着シートは、凹凸埋め込み性にも優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0231】
本発明の粘着シートは、例えば、黒色や白色の周辺部を有する表示体を製造するにあたり、発光体による凹凸を有する表示体構成部材と所望の表示体構成部材との貼合などに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0232】
1A,1B…粘着シート
11…粘着剤層
111…着色粘着剤層
112…無色粘着剤層
12a,12b…剥離シート
2A,2B…表示体
30…バックライト
31…基板
32…発光体
41…拡散部材
42…液晶パネル