(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】女性の骨盤痛を治療するための膣内電気刺激装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
A61N1/36
(21)【出願番号】P 2023524758
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(86)【国際出願番号】 US2021055506
(87)【国際公開番号】W WO2022086893
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-10-18
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523142537
【氏名又は名称】アイビス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,エリック ビー.
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0036138(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0225922(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0331905(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0065222(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0185641(US,A1)
【文献】国際公開第95/017922(WO,A2)
【文献】国際公開第2012/058289(WO,A2)
【文献】中国実用新案第206631014(CN,U)
【文献】中国実用新案第206518771(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
A61N 1/05
A61B 5/00
A61B 5/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
女性患者の骨盤痛を治療するための装置であって、
遠位部分及び近位部分を有するフレームを含む一組の膣内構成要素であって、前記フレームが、前記一組の膣内構成要素が前記女性患者の膣内に挿入された時に、前記フレームの前記近位部分が前記女性患者の後膣円蓋及び外側膣円蓋の傍頸膣上皮に接触するように構成されている、一組の膣内構成要素と、
前記フレームの前記近位部分を覆う表面材料に埋め込まれた一対又は複数対の傍頸部電極と、
遠位端、近位端、マイクロプロセッサ、メモリ及び電気刺激発生器を備えた膣内カプセルと、
前記電気刺激発生器との電気的接続を確立するために前記膣内カプセルに差し込まれる電極プラグと、
前記電極プラグを前記一対又は複数対の傍頸部電極に電気的に結合する1つ又は複数の接続線と、
前記マイクロプロセッサによって実行されると、前記マイクロプロセッサに、制御信号を生成して前記電気刺激発生器に送信させるプログラム命令を含む、前記メモリ内のローカル制御プログラムであって、前記制御信号が、前記電気刺激発生器に、低電圧電流を生成して、前記電極プラグ及び前記1つ又は複数の接続線を介して前記一対又は複数対の傍頸部電極に送らせるように構成されている、ローカル制御プログラムと、
を備え、
前記一対又は複数対の傍頸部電極が受け取る前記低電圧電流が、前記女性患者の前記後膣円蓋及び前記外側膣円蓋の前記傍頸膣上皮を通過する電界を生成し、それによって前記
女性患者の骨盤内の神経構造にニューロモデュレーションを行う、装置。
【請求項2】
前記電界によってニューロモデュレーションが行われる前記神経構造が、前記女性患者の前記骨盤内の骨盤神経及び傍頸神経を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電界によってニューロモデュレーションが行われる前記骨盤神経及び前記傍頸神経が、前記女性患者の子宮に分布する神経を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記電界によってニューロモデュレーションが行われる前記骨盤神経及び前記傍頸神経が、前記女性患者の膣上部及び子宮頸部に分布する神経を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記フレームに取り付けられたスリングと、
前記スリング内に成形されたパウチと、
をさらに備え、
前記パウチが、前記膣内カプセルの前記遠位端を受けて保持するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記膣内カプセルの内部に位置する第1無線周波数トランシーバと、
前記マイクロプロセッサによって実行されると、前記マイクロプロセッサに、前記第1無線周波数トランシーバに、外部コントローラとのデータ通信チャネルを確立させ、前記データ通信チャネルを介して、前記膣内カプセル内の前記電気刺激発生器の動作を制御する遠隔制御命令を受信させるようにさせる、ローカル制御プログラム内のプログラム命令と、
をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記外部コントローラをさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記外部コントローラが、前記外部コントローラからの前記遠隔制御命令を前記膣内カプセルの内部に位置する前記第1無線周波数トランシーバに送信するように構成された第2無線周波数トランシーバを備える、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記外部コントローラが、第2マイクロプロセッサ及びメモリ記憶領域をさらに備え、
前記メモリ記憶領域が、遠隔制御アプリケーション及び電気刺激パターンを記憶し、
前記遠隔制御アプリケーションが、前記外部コントローラの前記第2マイクロプロセッサによって実行されると、前記第2マイクロプロセッサに、前記膣内カプセルの内部の前記マイクロプロセッサに制御信号を送信させる、プログラム命令を含み、前記制御信号が、前記膣内カプセル内の前記マイクロプロセッサに、前記電気刺激発生器に、前記外部コントローラの前記メモリに格納された前記電気刺激パターンに対応する電気刺激を生成して送らせるようにさせるように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記外部コントローラの前記ローカル制御プログラムが、前記外部コントローラの前記メモリ記憶領域に格納されたユーザインタフェースモジュールをさらに備え、前記ユーザインタフェースモジュールが、前記外部コントローラの前記第2マイクロプロセッサによって実行されると、前記第2マイクロプロセッサに、前記女性患者から動作命令を受け取らせる、プログラム命令を有する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ユーザインタフェースモジュールが、前記外部コントローラの第2マイクロプロセッサによって実行されると、前記第2マイクロプロセッサに、
前記女性患者に、ユーザが定義した電気刺激パターンに対する一組の特性を選択するように促させ、
前記一組の特性を、事前定義された電気刺激パターンとしてメモリ記憶領域に保存させ、
前記膣内カプセルの内部の前記マイクロプロセッサに、前記マイクロプロセッサに、前記事前定義された電気刺激パターンに従って前記電気刺激発生器を動作させる制御信号を送信させる
プログラム命令をさらに含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記外部コントローラの前記メモリ記憶領域に格納された前記ユーザインタフェースモジュールが、前記外部コントローラの第2マイクロプロセッサによって実行されると、前記第2マイクロプロセッサに、
前記第1無線周波数トランシーバ及び前記データ通信チャネルを介して、前記膣内カプセルから現動作ステータスを取り出させ、
前記外部コントローラに接続された表示画面に、前記現動作ステータスを表示させる
プログラム命令をさらに含む、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記マイクロプロセッサ及び前記電気刺激発生器に電力を提供するように構成されたワイヤレス充電式電池をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記膣内カプセルの前記近位端にソケットをさらに備え、前記ソケットが、前記電極プラグを受けて保持するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記膣内カプセルの内部の電気接点と電気的に結合される、前記ソケットの遠位端に位置するオス電気コネクタをさらに備え、前記電気接点が、前記電気刺激発生器に電気的に結合されている、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
女性患者における骨盤痛を治療するための装置であって、
フレームと、
前記フレームに接続されたスリングと、
前記スリングに取り付けられた膣内カプセルであって、マイクロプロセッサと、メモリと、前記メモリに格納されたローカルアプリケーションプログラムと、電気刺激発生器とを備える膣内カプセルと、
前記膣内カプセル内のソケットであって、遠位端と前記遠位端における基部とを有するソケットと、
一対の電極ユニットであって、前記一対の電極ユニットの各電極ユニットが、前記電気刺激発生器の電気接点と、前記ソケットの前記基部に位置し、前記電気刺激発生器の前記電気接点と電気接続を行うように構成されたオス電気接点と、前記ソケットに差し込まれるように構成された電極プラグと、前記電極プラグに埋め込まれ、前記電極プラグが前記膣内カプセル内の前記ソケットに差し込まれた時に前記オス電気接点と別の電気接続を行うよう構成されたメス電気接点とを備える、一対の電極ユニットと、
前記女性患者の外側膣円蓋内に配置されるように構成された一対又は複数対の傍頸部電極と、
前記メス電気接点から前記一対又は複数対の傍頸部電極まで延在する1つ又は複数の接続線と、
を備え、
前記ローカルアプリケーションプログラムが、前記マイクロプロセッサによって実行されると、前記マイクロプロセッサに、前記電気刺激発生器に制御信号を送信させて、前記電気刺激発生器に、前記1つ又は複数の接続線を介して前記一対又は複数対の傍頸部電極に電流を送らせる、プログラミング命令を含み、
それにより、前記電流が、前記一対又は複数対の傍頸部電極の周囲に電界をもたらして、前記電界が前記女性患者の前記外側膣円蓋を通過して前記女性患者の骨盤の神経構造にニューロモデュレーションを行うようにする、装置。
【請求項17】
前記電界によってニューロモデュレーションが行われる前記神経構造が、前記女性患者の前記骨盤内の骨盤神経及び傍頸神経を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記電界によってニューロモデュレーションが行われる前記骨盤神経及び前記傍頸神経が、前記女性患者の子宮に分布する神経を含む、請求項
17に記載の装置。
【請求項19】
前記電界によってニューロモデュレーションが行われる前記骨盤神経及び前記傍頸神経が、前記女性患者の膣上部及び子宮頸部に分布する神経を含む、請求項
17に記載の装置。
【請求項20】
前記膣内カプセルの内部に位置する第1無線周波数トランシーバと、
前記マイクロプロセッサによって実行されると、前記マイクロプロセッサに、前記第1無線周波数トランシーバに、外部コントローラとのデータ通信チャネルを確立させ、前記データ通信チャネルを介して、前記膣内カプセル内の前記電気刺激発生器の動作を制御する遠隔制御命令を受信させるようにさせる、ローカル制御プログラム内のプログラム命令と、
をさらに備える、請求項16に記載の装置。
【請求項21】
前記外部コントローラをさらに備える、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記外部コントローラが、前記外部コントローラからの前記遠隔制御命令を前記膣内カプセルの内部に位置する前記第1無線周波数トランシーバに送信するように構成された第2無線周波数トランシーバを備える、請求項21に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明の実施形態は、概して、女性の骨盤痛を治療するための方法及び装置に関し、より詳細には、子宮及び子宮頸部を支持する骨盤底の靭帯を横断する神経、及び子宮膣部神経節等、骨盤内の神経節の神経線維を含む、骨盤内の神経構造に対して、電気刺激を与える方法及び装置に関する。これらの神経構造は、子宮及び骨盤内の他の臓器から中枢神経系に痛み信号を伝達する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多くの女性が慢性骨盤痛に悩まされている。女性の慢性骨盤痛の原因としては、例えば、骨盤癒着(手術又は骨盤感染の後の瘢痕化)、間質性膀胱炎/膀胱痛症候群、神経障害性疼痛、筋膜性又は筋骨格性疼痛及び術後痛等が挙げられる。不明の及び/又は未診断の原因からの骨盤痛である、特発性骨盤痛を経験する女性もいる。
【0003】
月経困難症は、月経に関連する骨盤痛に対する医学用語である。原発性月経困難症は、女性の生殖器の特定された障害に関連しない月経中に起こる痛みを指す。続発性月経困難症は、女性の生殖器の障害に関連する月経中に起こる痛みに対する医学用語である。続発性月経困難症の主な原因は、子宮内膜症、子宮腺筋症及び子宮筋腫である。研究により、米国では最大500万人の女性、世界では最大1億4千万人の女性が、月経の時に月経困難症に悩まされているということが分かっている。性交痛は、性的接触又は性交によって引き起こされるか又は悪化する骨盤痛に対する医学用語である。
【0004】
月経困難症、性交痛、又は慢性骨盤痛を引き起こす障害によって引き起こされる骨盤痛が激しい場合、多くの女性は、仕事、勉強、並びに自身及び自身の愛する人の世話を行う能力に支障をきたす等、自身の日常生活が著しく妨げられる。痛みのために社会的、性的及び心理的幸福感に長期的な問題を抱える女性もおり、時には、痛みにより、うつ病、不安、精神的苦痛及び自尊心の低下等の発作が繰り返されることもある。
【0005】
骨盤痛の薬物治療療法は、通常、ホルモン療法、非中毒性及び中毒性の鎮痛剤、抗うつ剤、並びに末梢神経障害を治療するように設計された薬物等を含む。非薬物療法は、下腹部又は腰部に加熱パッド、湯たんぽ、又は冷湿布を施すことを含む場合がある。これらの非薬物療法は、通常、不便であり面倒である。
【0006】
月経困難症及び骨盤痛を治療するために、皮膚に取り付けられた電極を介して下腹部又は背中に電気刺激を与える経皮的電気神経刺激(「TENS」)装置が使用されてきた。しかしながら、刺激されている身体の部位は、骨盤痛を効果的に緩和するために刺激する必要がある神経経路から遠く離れているため、TENS装置が骨盤痛からの適時の且つ有効な緩和を一貫して確実にうまく提供する能力は、極めて限られていた。
【0007】
したがって、骨盤痛に関連する神経経路により直接的な、より効果的な刺激を与える装置及び方法がかなり必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
発明の例示的な実施形態の簡単な概要
月経困難症、性交痛、慢性骨盤痛に関連する痛みは、通常、子宮及び骨盤内の他の臓器に由来する。この痛みの感覚は、交感神経、副交感神経及び内臓感覚神経線維を含む、骨盤内の多数の神経構造を通じて伝達され、こうした神経構造の多くは、基靭帯(
図3B参照)を含む、子宮頸部及び膣上部を支持する骨盤底の靭帯を横断する。これらの支持靭帯は、膣円蓋で膣上皮が子宮頸部に結合する部位(「傍頸膣上皮(paracervical vaginal epithelium)」)のすぐ上方(上(superior to))で子宮に付着している。本発明の実施形態を使用する傍頸膣上皮への電気刺激の適用は、治療が、子宮及び子宮頸部を支持する骨盤底の靭帯を横断する神経と、子宮膣部神経節等、骨盤内の神経節にある神経線維(以下、「傍頸神経(paracervical nerve)」)とを含む、骨盤内の神経構造(以下、「骨盤神経」)のニューロモデュレーションを引き起こすように直接向けられるため、非常に望ましく有益である。骨盤神経及び傍頸神経は、子宮及び骨盤内の他の臓器から中枢神経系に痛み信号を送信し、骨盤神経及び傍頸神経のニューロモデュレーションにより、骨盤痛の感覚を軽減させるか又は除去することができる。
【0009】
本発明の実施形態は、膣内電気刺激装置(以下、「IVES装置」と称する)を提供することにより、目下利用可能な神経刺激装置に関連する前述の欠点を克服する。有益なことに、本発明のIVES装置は、女性が、痛みを感じている時、又は、例えば月経若しくは性交によって骨盤痛が生じると予測される時に、IVES装置の一組の膣内構成要素を(医療従事者の存在の有無に関わらず)自身の膣内に容易に挿入し、外部コントローラで装置を作動させて、一組の膣内構成要素が、十分に制御され、パーソナライズされた(低電圧電流の形態の)電気刺激を、骨盤神経及び傍頸神経に送達することができるように構成されている。本発明の実施形態を使用して骨盤神経及び傍頸神経に加えられる電気刺激は、これらの神経のニューロモデュレーションを引き起こし、骨盤痛の軽減又は除去をもたらす。
【0010】
概して、本発明の実施形態に従って動作するように構成されたIVES装置は、一組の膣内構成要素と外部コントローラとを備える。膣内構成要素は、フレームと、フレームの近位部分を覆う表面材料に埋め込まれた一対又は複数対の傍頸部電極と、フレームに取り付けられフレームから吊り下げられたスリングと、膣内カプセル(以下「IVC」と称する)と、スリング内に成形され、IVCの遠位端及び中間部を受けて保持するように構成された膣内カプセルパウチ(「IVCパウチ」)と、IVCの近位端のソケットと、IVCの近位端でIVCソケットに差し込まれる電極プラグと、IVCソケットの電極プラグをフレームの近位部分の表面材料に埋め込まれた傍頸部電極に電気的に結合する1つ又は複数の接続線を含む。使用中、IVES装置のフレームは、傍頸部電極が膣の外側膣円蓋に直接接触するように、ユーザの膣内に挿入される。IVCは、マイクロプロセッサ及び電気刺激発生器を含む電子構成要素を収容し、電子構成要素はともに、電気刺激(例えば、低電圧電流)を発生させるように構成され、電気刺激は、その後、電極プラグ及び接続線を介して傍頸部電極に伝達されて、傍頸部電極の間及びその周囲の空間に電界を生成する。傍頸部電極の間及び周囲に生成される電界は、骨盤神経及び傍頸神経、子宮に分布する神経、並びに骨盤内の他の神経構造にニューロモデュレーションを行う。このニューロモデュレーションは、骨盤痛を軽減させるか又は除去する傾向がある。
【0011】
パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、又は他のデータ処理若しくは通信デバイスを含むことができる外部コントローラは、女性患者が、電気刺激発生器及び傍頸部電極によってユーザの身体に送達される電気刺激の電気プロファイル(例えば、周波数、振幅及び持続時間)を有効にし、無効にし、制御するように操作することができる。これらのニューロモデュレーション制御機能を可能にするために、外部コントローラは、マイクロプロセッサと、メモリと、メモリに格納されたコンピュータプログラム(以下、「IVES装置遠隔制御アプリ」又は「IVESアプリ」と称する)と、無線周波数トランシーバとを備える。IVESアプリは、外部コントローラ内のマイクロプロセッサによって実行可能なプログラム命令を含む。無線周波数トランシーバは、IVESアプリ及びマイクロプロセッサの制御下で動作して、IVES装置の膣内構成要素のIVC内部に位置する第2無線周波数トランシーバとワイヤレスデータ通信チャネルを確立するように構成されている。IVESアプリは、外部コントローラのマイクロプロセッサによって実行されると、マイクロプロセッサに、外部コントローラ内の無線周波数トランシーバを使用して、2つの無線周波数トランシーバ間で確立されたワイヤレスデータ通信チャネルを介してIVC内部のマイクロプロセッサに命令を送信させるとともにマイクロプロセッサからのステータス更新を受信させる、プログラム命令も含む。
【0012】
IVESアプリのユーザインタフェースモジュールは、外部コントローラの表示画面と相互作用して、電気刺激発生器によって発生し傍頸部電極に送達される電気刺激を、ユーザが作動させ、調整し、及び同調させることができるようにするように構成されている。したがって、IVESアプリのユーザインタフェースモジュールのプログラム命令は、患者が、IVC内の電気刺激発生器によって骨盤神経及び傍頸神経に送達される電気刺激の設定及び/又はプロファイルを選択し、パーソナライズし、最適化し、調整し、保存し、呼び出し、有効にし、及び/又は無効にするために、外部コントローラの表示画面上に表示されるコントロール(ボタン、アイコン及びスライダのデジタル表現等)を操作するのを可能にするように、好適に構成されている。加えて、外部コントローラ内部の無線周波数トランシーバ及びマイクロプロセッサは、ワイヤレス通信チャネルを介して、IVCのマイクロプロセッサ及び/又はメモリにデータ及びステータス情報を要求し、データ及びステータス情報を受信することができる。ステータス情報及び他のデータは、ユーザインタフェースを介して外部コントローラに関連する表示画面上に表示することができる。好ましくは、外部コントローラで実行しているIVESアプリのユーザインタフェースは、外部コントローラ又はユーザが、電子メール、テキストメッセージ送信又は別のデータ送信プロセスを使用して、IVCのメモリから取り出されたステータス情報及び他のデータを、例えば、ユーザの主治医又は他の医療提供者等、他のデバイス、組織又は人々に送信することができるようにするように構成された、プログラム命令も含む。
【0013】
好ましくは、外部コントローラのメモリに格納されたIVESアプリは、外部コントローラが、(1)外部コントローラで実行しているIVESアプリに関連する任意のプログラム更新が利用可能であるか否か、及び/又は(2)IVC 102のメモリに格納されたローカル制御プログラムに関連するオペレーティングシステム更新、ローカルプログラム更新又はファームウェア更新が利用可能であるか否かを判断するために、リモートコンピュータシステム又はサーバに定期的に問合せすることができるようにする、プログラム命令も含む。こうした更新が利用可能である場合、IVESアプリは、外部コントローラに、IVCに、又はその両方に、更新を自動的にダウンロード及びインストールするように構成することができる。こうした更新が利用可能となった際にダウンロードすることにより、外部コントローラで実行している制御アプリケーションプログラム、並びにIVCで実行しているオペレーティングシステム、アプリケーションプログラム及びファームウェアは、自動的に最新のバグフィックス及び/又は改善がなされて実質的に最新に保たれる。いくつかの実施形態では、IVESアプリは、プログラム、オペレーティングシステム又はファームウェアの更新をダウンロード及び/又はインストールする前に、ユーザに許可又は確認を促すように構成される場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面の簡単な説明
【
図1】人体の部位及び平面と、それらの関係を特定し記載するために使用される従来の用語を説明する女性及び男性の解剖学的図を示す。
【
図2】ヒト女性骨盤の正中断面図及び骨盤内の女性解剖学的構造の位置の説明図を示す。
【
図3A】(腹部内から可視化した)骨盤内臓の上から見た図の説明図を示す。
【
図3B】(腹部内から可視化した)腹膜及び子宮を取り除いた骨盤底の上から見た図の説明図を示す。
【
図4】左、遠位及び前-外側の視点から見た、本発明の一実施形態によって構成された例示的なIVES装置の膣内構成要素のうちのいくつかの斜視図を示す。
【
図5】左、近位及び前-外側の視点から見た、IVES装置の膣内構成要素のうちのいくつかの斜視図を示す。
【
図8】(IVES装置の膣内構成要素のうちのいくつかの遠位端から見た)横断面図を示す。
【
図11】本発明のいくつかの実施形態によるIVES装置の膣内構成要素の膣内における典型的な配置及び向きを示す概略図を示す。
【
図12】本発明のいくつかの実施形態によるIVES装置の膣内構成要素の膣内における典型的な配置及び向きを示す概略図を示す。
【
図13A】本発明のいくつかの実施形態によるIVES装置の膣内構成要素の膣内における典型的な配置及び向きを示す概略図を示す。
【
図13B】外側膣円蓋における傍頸部電極の適切な位置決めを説明するために、IVES装置の一組の膣内構成要素の近位端が生体内原位置にある状態の膣上部及び子宮頸部の拡大図を示す。
【
図14】IVES装置の一実施形態の主要な膣内構成要素のより詳細な図を示す。
【
図15】一対の電極ユニットから構成された単一の電気刺激回路を備えるIVES装置の一実施形態の構成要素を示し、電極ユニットは、一方の傍頸部電極は回路の正極であり、他方の傍頸部電極は回路の負極であり、単一の電界を生成するために使用される。
【
図16】IVC 102の近位端におけるIVCソケットの、電極プラグがIVCソケットに挿入されていない、詳細な断面図を示す。
【
図17】電極プラグがIVCソケットに挿入されていない時の、一対のメス電気接点を包囲する電極プラグの詳細な断面図を示す。
【
図18】本発明のいくつかの実施形態における、電極プラグが挿入されているIVCソケットの詳細な断面図を示す。
【
図19A】IVES装置の一実施形態におけるフレームの近位部分の表面被覆に埋め込まれた傍頸部電極の位置決めを示し、一対の電極ユニットを使用して、傍頸部電極の間に単一の電界をもたらす単一の電極刺激回路が作成されている。
【
図19B】IVES装置の一実施形態におけるフレームの近位部分の表面被覆に埋め込まれた傍頸部電極の位置決めを示し、一対の電極ユニットを使用して、傍頸部電極の間に単一の電界をもたらす単一の電極刺激回路が作成されている。
【
図20】一対の傍頸部電極が
図19A及び
図19Bに示すように位置決めされている単一の電気刺激回路によって発生する電界の概略表現を示す。
【
図21A】IVES装置の一実施形態におけるフレームの近位部分の表面被覆に埋め込まれた二対の傍頸部電極の位置決めを示し、二対の電極ユニットを使用して2つの電気刺激回路が作成されている。
【
図21B】IVES装置の一実施形態におけるフレームの近位部分の表面被覆に埋め込まれた二対の傍頸部電極の位置決めを示し、二対の電極ユニットを使用して2つの電気刺激回路が作成されている。
【
図22】2つの電気刺激回路によって発生する電界の概略表現を示し、二対の傍頸部電極が、各電気刺激回路の正電極及び負電極がフレームの同じ側に位置する場合に、
図21A及び
図21Bに示すように位置決めされている。
【
図23】2つの電気刺激回路によって発生する2つの電界のうちの1つの概略表現を示し、二対の傍頸部電極が、各電気刺激回路の正電極及び負電極がフレームの反対側に位置する場合に、
図21A及び
図21Bに示すように位置決めされている。
【
図24】本発明の実施形態に従って動作するように構成されたIVES装置における膣内構成要素及び外部コントローラの両方を例として説明する、概略ブロック図を示す。
【
図25A】本発明の一実施形態に従って構成されたIVES装置の出力を有効にし、無効にし、操作し、制御し、調節するために使用することができるユーザインタフェーススクリーンショットを示す。
【
図25B】本発明の一実施形態に従って構成されたIVES装置の出力を有効にし、無効にし、操作し、制御し、調節するために使用することができるユーザインタフェーススクリーンショットを示す。
【
図26A】本発明の一実施形態に従って構成されたIVES装置の出力を有効にし、無効にし、操作し、制御し、調節するために使用することができるユーザインタフェーススクリーンショットを示す。
【
図26B】本発明の一実施形態に従って構成されたIVES装置の出力を有効にし、無効にし、操作し、制御し、調節するために使用することができるユーザインタフェーススクリーンショットを示す。
【
図27A】本発明の一実施形態に従って構成されたIVES装置の出力を有効にし、無効にし、操作し、制御し、調節するために使用することができるユーザインタフェーススクリーンショットを示す。
【
図27B】本発明の一実施形態に従って構成されたIVES装置の出力を有効にし、無効にし、操作し、制御し、調節するために使用することができるユーザインタフェーススクリーンショットを示す。
【
図28A】本発明の一実施形態に従って構成されたIVES装置の出力を有効にし、無効にし、操作し、制御し、調節するために使用することができるユーザインタフェーススクリーンショットを示す。
【
図28B】本発明の一実施形態に従って構成されたIVES装置の出力を有効にし、無効にし、操作し、制御し、調節するために使用することができるユーザインタフェーススクリーンショットを示す。
【
図29A】本発明の一実施形態に従って構成されたIVES装置の出力を有効にし、無効にし、操作し、制御し、調節するために使用することができるユーザインタフェーススクリーンショットを示す。
【
図29B】本発明の一実施形態に従って構成されたIVES装置の出力を有効にし、無効にし、操作し、制御し、調節するために使用することができるユーザインタフェーススクリーンショットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
例示的な実施形態の詳細な考察
解剖学用語
図1は、人体の部位及び平面、並びにそれらの部位と平面との関係を特定及び記載するために使用される従来の用語を説明する、女性と男性の解剖学的図である。解剖学的平面(又は解剖学的断面)とは、ある平面を基準として解剖学的構造を見ることをいう。例えば、正中面(又は正中線断面)は、身体を長手方向に、前後に通り抜ける垂直面であり、身体を左半分及び右半分に分ける。矢状面は、正中面に平行な、身体を通り抜ける任意の垂直面である。矢状面は、身体を右部と左部とに分ける。したがって、正中線面は矢状面であるが、矢状面は正中線面である必要はない。前頭面とも称する冠状面は、身体の一方の側から反対側に身体を通り抜ける垂直面であり、身体を前(前方)部分と後(後方)部分とに分ける。これらの垂直面は、正中面及び矢状面に対して直角(90°)である。横断面は、身体を通り抜ける水平面であり、身体を上(上方)部と下(下方)部とに分ける。横断面は、正中面、矢状面及び冠状面に対して直角(90°)である。上から見た図(時に、「上面図」又は「鳥瞰」図と称する)は、ある身体部分(臓器、神経、靭帯又は腔等)がその身体部分の上方の位置から見下ろした場合にどのように見えるかを示す図でありと、身体部分は身体内で適切に向けられている。下から見た図(時に、「底面図」と称する)は、適切に向けられた身体部分が、その身体部分の下方の位置から見上げた場合にどのように見えるかを示す図である。
【0016】
骨盤の解剖学的構造
図2は、ヒト女性骨盤の正中線断面図の説明図を示す。骨盤は、骨盤骨の縁より下方にある腹部の下方部位である。
図3Aは、(腹部内から可視化した)骨盤内臓の上から見た図の説明図を示し、
図3Bは、(腹部内から可視化した)腹膜及び子宮を取り除いた骨盤底の上から見た図の説明図を示す。
図2、
図3A及び
図3Bに示すように、骨盤内に位置する女性骨盤内臓(又は臓器)は、子宮底(子宮の上方部分)、輸卵管及び卵巣である。これらの臓器は、骨盤底を形成する骨盤内筋膜及び靭帯の上方に位置するとともにそれらによって支持されている。骨盤底の下方に位置する女性内臓には、子宮頸部、膣、尿道、膀胱及び直腸の最下部位がある。
【0017】
女性の骨盤痛を治療するための膣内電気刺激装置
ここで、本発明に従って構成されたIVES装置100の例示的な実施形態について、より詳細に提示及び考察し、最初に(
図4~
図23に示す)一組の膣内構成要素101のより詳細な考察で開始し、続いて、その後、(
図24~
図29に示す)外部コントローラ103のより詳細な考察を行う。特に、一組の膣内構成要素101及び外部コントローラ103の両方を含むIVES装置100全体の最良の説明図を
図24において説明し、これについては後にもより詳細に考察する。
【0018】
以下の考察の目的では、「近位」は身体の中心部分に近いことを意味し、遠位は身体の中心部分から遠いことを意味する。膣の近位部分は、子宮頸部に近い膣の最内且つ最上部分である。膣の遠位部分は、膣口に近い膣の最下部分である。前は身体の前方に向かうことを意味し、後は身体の後方に向かうことを意味する。内側(ないそく)は、前方又は後方から見た時に、身体の垂直正中線にある、近い、又は近づいていることを意味し、外側(がいそく)は、前方又は後方から見た時に、身体の側部にある、近い、又は近づいているように、身体の垂直正中線から幾分かの距離だけ離れていることを意味する。
【0019】
図4は、本発明の一実施形態に従って構成されたIVES装置100の一実施形態に対する一組の膣内構成要素101の、一組の膣内構成要素101が左、遠位及び前-外側の視点から観察された場合に見えるような、斜視図を示す。
図5は、左、近位及び前-外側の視点から観察された場合に見えるような、一組の膣内構成要素101の斜視図を示す。
図6、
図7、
図8及び
図9は、それぞれ、側面図、上面図、(一組の膣内構成要素101の遠位端から見た)横断面図、及び縦断面図を示す。
図4、
図5、
図6、
図7、
図8及び
図9に示すように、一組の膣内構成要素101は、概して、膣内カプセル(IVC)102、フレーム104、スリング106、IVCパウチ108、一対又は複数対の傍頸部電極110、接続線112及び電極プラグ114を備える。
【0020】
フレーム
フレーム104は、一組の膣内構成要素101が使用されている時に、女性の膣内に快適に存在するように設計されている構造要素である。そのコアは、金属又はプラスチック製のコイル状ばね、金属、プラスチック若しくはグラスファイバ製のロッド、又はこれらの材料のうちのいくつかの組合せ等、半剛性であるが可撓性のある材料から作製することができる。加えて、フレーム104に使用される1つの材料又は複数の材料は、フレーム104の異なる領域において、フレーム104のその領域に望まれる半剛性又は可撓性を達成するために、異なる構成及び特性を有することができる。特に、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、前述の材料の代わりに種々の代替的な構成材料を好適に使用することができることが認識及び理解されよう。
【0021】
一実施形態では、フレーム104の元の形状は、実質的に楕円形である。しかしながら、フレーム104は、その外側部分が互いに向かって圧縮されると、後方に向けられた曲線形状を形成する。フレーム104は、圧縮力が解除された時にその元の形状に戻る性質を有するように構成されている。圧縮力は、例えば、膣内に挿入される前に、ユーザが片方の手の指でフレーム104の外側部分を互いに向かって押しつぶす時に、導入される。圧縮力は、一組の膣内構成要素101が膣146の中に完全に入り、患者がフレーム104の外側部分を合わせて圧縮するのを停止した後に低減する。
【0022】
好適には、フレーム104の近位端及び遠位端は、典型的には、フレーム104の最も可撓性の高い部分であり、フレーム104のその長手方向軸に沿った著しい圧縮を可能にする。フレーム104のその長手方向軸に沿った圧縮と、その結果として生じるフレーム104の後方湾曲により、膣内構成要素101の膣への挿入がより容易に達成される。膣内構成要素101が膣内に完全に挿入され、フレーム104の外側部分に対する圧縮力が取り除かれると、フレーム104はその元の構成に戻り、その時点で、フレーム104の遠位端は恥骨結合部の後方で前膣壁の上に載り、フレーム104の近位端は後膣円蓋の膣上皮の上に載る(後により詳細に考察する
図12を参照)。膣内部のこの構成では、フレーム104の近位部分の被覆の表面に埋め込まれた傍頸部電極110は、外側膣円蓋の膣上皮と接触することになる。フレーム104の外側部分は、膣の外側壁を穏やかに圧迫し、フレーム104及びIVES装置100の膣内構成要素101の残り部分を膣内の適切な位置に維持するように構成されている。
【0023】
本発明の別の実施形態では、フレーム104の外側部分へのスリング106の取付けが終了する点と、フレーム104の近位部分の被覆に埋め込まれた傍頸部電極110の遠位端との間のフレーム104の外側部分の両方に、(
図6及び
図7に最もよく示す)「移行」部分124が位置していてもよい。フレーム104の移行部分124は、膣内構成要素101が膣内に導入された時にフレーム104の近位部分の後膣円蓋及び外側膣円蓋における位置決めを容易にするように、わずかに後方に湾曲していてもよく、フレーム104の他の部分よりも可撓性が高くてもよい。フレーム104の移行部分124が、それに加えられたいかなる圧力も解除された後にその元の構成に戻る性質により、フレーム104の近位部分が、後膣円蓋及び外側膣円蓋の膣上皮に対して上方及び後方に穏やかな圧力を加え、傍頸部電極110を、外側円蓋の傍頸膣上皮に接触し、骨盤神経及び傍頸神経に電気刺激を送達するように適切に位置決めされた状態で維持する。
【0024】
スリング及びIVCパウチ
図4~
図8に最もよく示すように、スリング106は、フレーム104の遠位部分及び外側部分の内面に取り付けられる、例えばシリコーンゴム等の可撓性のある医療用材料の薄い膜である。IVCパウチ108は、好適には、一組の膣内構成要素101の正中線と長手方向に位置合せされる、スリング106における円筒形状のパウチ、バッグ、サック又はポケットである。IVCパウチ108は、典型的には、スリング106を作製するために使用されるものと同じ医療用材料から作製され、遠位側に閉鎖端を有するとともに近位側に開放端を有する。IVCパウチ108の開放端は、スリング106の近位端と位置合せされている。特に、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、スリング106、IVCパウチ108、及びフレーム104の被覆において、前述のシリコーンゴムの代わりに種々の代替的な構成材料を好適に使用することができることが認識及び理解されよう。
【0025】
膣内カプセル
図14に最もよく示すように、IVC 102は、典型的には、丸みを帯びた端部を有する硬質プラスチック製の円筒状のシェル116を備え、シェル116は、膣内構成要素101の電子部品の大部分を収容する内部空洞120を画定する内壁118を有する。IVC 102のシェル116内部の電子構成要素は、例えば、プリント回路基板126、充電式電池128、充電式電池128を充電するための誘導充電コイル127、電気刺激発生器130、マイクロプロセッサ132、メモリ134、メモリ134内のローカル制御プログラム136、及び無線周波数トランシーバ138を含むことができる。これらの電子構成要素については、
図14を参照して後により詳細に考察する。
【0026】
特に、本明細書に記載し添付の図に示す例示的な実施形態のIVC 102は、円筒状である縦断面と丸い横断面とを有するが、他の実施形態では、IVC 102の形状は異なっていてもよいことが理解されよう。フレーム104は、種々の異なる身体サイズ、体形及び身体状態を有する個々のユーザに対して「カスタムフィット」することができるように、いくつかの異なるサイズで、且つ製造された形状への変更を可能にする材料で、製造することができることもまた理解されるべきである。
【0027】
図10A、
図10B及び
図10Cは、それぞれ、IVC 102の直交図、IVC 102の遠位端面図、及びIVC 102の近位端面図を示す。IVC 102は、丸みを帯びた端部を有する硬質プラスチック製の円筒状のシェル116を備える。IVCのシェル116は、その内容物を湿気から保護し、ユーザが開けることができないように、恒久的に封止してもよい(又はしなくてもよい)。
図10Bに最もよく示すように、IVC 102のシェル116の遠位端内に成形されているのは、外部ワイヤレス充電器(図示せず)のアライメントピン(同様に図示せず)の先端を受けるように構成されたアライメントピン受け場所140である。このアライメントピン受け場所140により、IVC 102内部の充電式電池128のための誘導充電コイル127と外部ワイヤレス充電器の充電コイルとの適切な位置合せが容易になる。
図10Cに最もよく示すように、IVC 102のシェル116の近位端内に成形されているのは、IVCソケット122であり、これは、(より詳細に後述する)電極プラグ114を受けるように構成されている。任意選択的に、IVC 102の円筒状のシェル116の壁118に加熱素子を埋め込んでもよい。これらの任意選択的な加熱素子は、外部コントローラ103と外部コントローラ103で実行しているIVESアプリ160との制御下で動作して、追加の痛み緩和のための熱療法を提供するように、外部コントローラ103を介してユーザが作動させることができる。
【0028】
図11、
図12及び
図13Aは、本発明のいくつかの実施形態によるIVES装置100の膣内構成要素101の膣内における典型的な配置及び向きを説明する概略図を示す。
図11及び
図12に最もよく示すように、フレーム104の遠位端は、恥骨結合部142の後方で前膣壁141に当接している。フレーム104の近位端は、後膣円蓋の膣上皮に当接している。フレーム104の近位部分及びその上に存在する傍頸部電極110は、外側膣円蓋144内に位置している。また、フレーム104の外側部分は、膣146の外側壁を穏やかに押して、IVES装置100の膣内構成要素101を膣146内の適切な位置に維持するのに役立つ。IVES装置100の膣内構成要素101が膣146の内部の適切な位置にある時、IVC 102は、膣146の実質的に中間部分に着座し、長手方向の向きを有することになる。
【0029】
図13Aは、膣内構成要素101が膣146内において生体内原位置にある女性骨盤の前横断面図を示す。
図13Bは、
図13Aの膣上部146及び子宮頸部148の上に描かれたフォーカス四角形によって囲まれた
図13Aの部分の拡大図を示す。外側膣円蓋144における傍頸部電極110の適切な位置決めを説明するために、膣内構成要素101の近位端が生体内原位置にある膣上部144及び子宮頸部148。
【0030】
本発明の実施形態は、IVES装置100を使用する可能性がある女性のさまざまな膣の深さに対応するために、種々の異なるサイズで製造することができ、フレーム104の種々の長手方向長さ(例えば、5ミリメートル単位で6.5~8.5センチメートル)を有することができる。フレーム104の外側可撓性により、異なる女性間の膣口径の相違に対処及び対応するIVES装置100の能力が向上する。フレーム104の移行部分124の可撓性の向上と、それに加えられた圧力が解除された時に元の構成に戻る性質とは、外側膣円蓋144における傍頸部電極110の適切な位置決めを維持するのに役立つ。可鍛性スリング106により、IVES装置100の膣内構成要素101が、IVES装置100を使用する可能性がある女性の膣146の全体的な形状に対応することができる。
【0031】
図14は、フレーム104、スリング106、IVCパウチ108、IVC 102、IVC 102内の(電極プラグ114を受けるように構成されている)IVCソケット122を含む、IVES装置100の一実施形態における膣内構成要素101のより詳細な図を示す。膣内構成要素101は、一対又は複数対の電極ユニット152も含む。
図14~
図18に示すように、IVC 102のシェル116は、充電式電池128と、動作中の外部誘導充電器(図示せず)の範囲内に配置することによって通電することができる誘導充電コイル127と、プリント回路基板126と、電気刺激発生器130とを含む、多数の電子構成要素を収容する内部空洞120を画定する中空空間を含む。プリント回路基板126は、無線周波数トランシーバ138と、マイクロプロセッサ132と、メモリ134と、メモリ130内のローカル制御プログラム136と、電気刺激発生器130とを搭載している。
【0032】
プリント回路基板126は、典型的には、シェル116の内壁118に貼付されている。充電式電池127、電気刺激発生器130、マイクロプロセッサ132、メモリ134、ローカル制御プログラム136及び無線周波数トランシーバ138は、すべてプリント回路基板126に取り付けられて電気回路を形成している。メモリ130に格納されたローカル制御プログラム136は、マイクロプロセッサ132によって実行されると、マイクロプロセッサ132に、電気刺激発生器130に電子信号を送信することを含む本明細書に記載するいくつかの機能を実施させ、それによって電気刺激発生器132の出力を制御させる、プログラミング命令を有する、1つ又は複数のプログラミングモジュールを含む。電気刺激発生器130によって生成される電気刺激の特性(又はプロファイル)は、例えば、定電流対定電圧、低周波刺激対高周波刺激、トニック刺激対バースト刺激を使用することにより、及び、生成されている電気刺激のパルス幅、周波数及び振幅を変更することにより、変更することができる。
【0033】
無線周波数トランシーバ138は、マイクロプロセッサ132及びローカル制御プログラム136の制御下で動作して、スマートフォン、タブレットコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等の外部データ通信デバイス(「外部コントローラ」)で実行しているアプリケーションプログラム(「IVES遠隔制御アプリケーション又はIVESアプリ」)160とのワイヤレスデータ通信チャネルを(通常はBluetooth(登録商標)又は他の何らかの近距離通信プロトコルを使用して)確立する。無線周波数トランシーバは、確立されたワイヤレス通信チャネルを使用して、外部コントローラ上のIVESアプリ160からIVES装置100の動作命令及び他のパラメータを含むデータを受信する。無線周波数トランシーバ138は、これらの入来データ、動作命令及び他のパラメータをマイクロプロセッサに送り、マイクロプロセッサは、メモリ130に格納されたローカル制御プログラム136のプログラミング命令を実行して、電気刺激発生器136に、(後により詳細に考察する)外部コントローラ103で動作しているIVESアプリ160から受信された命令及びパラメータに従って、骨盤神経及び傍頸神経を刺激する電気刺激を発生させ、傍頸部電極110に送らせる。好ましい実施形態では、IVC 102の構成要素は、膣内構成要素が膣146内に配置される前及び配置された後の両方で、ワイヤレス通信チャネルを介して動作命令及びパラメータを受信するように構成することができる。好適には、IVC 102のプリント回路基板126に接続された無線周波数トランシーバ138を使用して、IVESアプリ160にステータス情報(例えば、電池残量)を送信してもよい。
【0034】
電気刺激発生器130は、マイクロプロセッサ132及びローカル制御プログラム136の制御下で動作し、ローカル制御プログラム136は、電気刺激発生器130に、電池128からの直流電流を、各々が一対の関連する電極ユニット152から構成されている1つ又は複数の電気刺激回路によって骨盤神経及び傍頸神経に送達されるべき適切な電気刺激パターン(「ESP」)に変換する方法を指示する。好適には、傍頸部電極110のうちの一方は回路の正極であり、他方の傍頸部電極は回路の負極である。好ましくは、患者が、外部コントローラで実行しているIVESアプリケーションプログラムのユーザインタフェースにおけるコントロールを操作することにより、種々の異なるESPを作成し、保存し、呼び出し、有効にすることができる。IVESアプリケーションプログラム160のユーザインタフェースに実装される機能のうちのいくつかについては、後により詳細に考察する。
【0035】
プリント回路基板126上のメモリ130は、ローカル制御プログラム136を含むプログラミング命令を記憶する。マイクロプロセッサ130によって実行されると、プログラミング命令は、マイクロプロセッサ132に、1つ又は複数の事前定義されたアルゴリズムのステップを実行させる。これらのアルゴリズムは、典型的には、外部コントローラ103で実行しているIVESアプリ160のユーザインタフェースを介してユーザが入力した動作命令及びパラメータに応答して実行される。例えば、アルゴリズムは、典型的には、電気刺激発生器130によって出力される電気刺激パターン(ESP)を、プリインストールされたESP、又はユーザインタフェースを介してユーザが作成したESPのいずれかに従って、ユーザが選択及び調整することができるように配置されている。好ましくは、メモリ134は、IVES装置100の動作及び性能に関する履歴データも記憶し、これは、IVC 102のプリント回路基板126上の無線周波数トランシーバ138を介して外部コントローラ103に定期的にアップロードされる。好ましくは、必須ではないが、外部コントローラ103のIVESアプリ150は、マイクロプロセッサ132によって実行されると、マイクロプロセッサ132に、外部コントローラの無線周波数トランシーバ126を使用して、外部コントローラ103にアップロードされた履歴データを他のコンピューティングデバイスにワイヤレス送信させ、患者の医師及び/又は他の人が利用できるようにして患者及び他の人のIVES装置100の使用を改善するようにさせる、プログラム命令をさらに含む。メモリ134は、マイクロプロセッサによって実行されると、マイクロプロセッサに、傍頸部電極110に電気刺激信号を送信する前に自己診断テストを実行させ、自己診断テスト中に障害が検出された場合には、ユーザに対するメッセージを自動的に生成させ、その後IVES装置100をオフにさせる、プログラミング命令も記憶することができる。
【0036】
電極プラグ
電極プラグ114は、(
図14、
図15及び
図16に最もよく示す)IVCソケット122への挿入によってIVC 102に取り外し可能に接続されるように好適に構成されている。電極プラグ114は、電極プラグ114がIVCソケット122に挿入される時はいつでも、IVCソケット122の遠位端で対応するオス電気接点を受けるように構成された一対又は複数対のメス電気接点を包囲する、半硬質圧縮性医療用材料から作製されたプラグ(
図17参照)から構成されている。いくつかの実施形態では、電極プラグ114は、IVCソケット122の断面寸法よりもわずかに大きい断面を有することができる。こうした実施形態では、プラグにかかる圧縮力が解除されると元の形状に戻るようにプラグを作製するために使用された半硬質圧縮性材料の性質により、IVCソケット122とプラグとの接続が実質的に防湿となる。他の実施形態では、電極プラグ114、IVCソケット122、又はその両方は、プラグ114及び/又はIVCソケット122の電気接点又は他の要素に対して防湿を提供するOリングを保持する戻り止めを有することができる。電極プラグ114及びIVCソケット122の周壁の形状は、電極プラグ114がIVCソケット122に挿入された時に、IVCソケット122の遠位部分の対応するオス接点とプラグ内のメス接点とが位置合せされるように設計されている。例えば、洗浄又は交換のためにIVES装置100の他の構成要素からIVC 102を完全に分離し、IVC 102内の電池を充電するためにIVC 102を充電ステーションに配置するために、電極プラグ114をIVC 102内のIVCソケット122から取り外すことができ、IVC 102をIVCパウチ108から取り外すことができる。代替的な実施形態では、当業者であれば、オス電気接点が電極プラグ114に位置することができ、メス電気接点がIVCソケット122に位置することができることが理解されるはずである。
【0037】
電極ユニット
電気刺激発生器130によって生成された電気刺激は、一対又は複数対の電極ユニット152によって骨盤神経及び傍頸神経に送達される。各電極ユニット152は、電気刺激発生器130の電気接点154と、電気刺激発生器130の電気接点154に電気的に結合される、IVCソケット122の基部に位置するオス電気接点156と、電極プラグ114がIVCソケット122に設置された時に対応するオス接点156との電気接続を作成する電極プラグ114のメス接点158とから構成されている。接続線112が、各メス接点158から傍頸部電極110まで延在している。IVC 102内部の電気刺激発生構成要素は、協働して、一対又は複数対の電極ユニット152によって生成される1つ又は複数の電界を通して骨盤神経及び傍頸神経に電気刺激を送達する。典型的には、1つの傍頸部電極に接続された一方の電極ユニット152は電気刺激回路(ESC)の正極であり、対の他方の電極ユニット156はESCにおける負極である。
【0038】
接続線112は、電極プラグ114のメス電気接点から傍頸部電極110の始点まで延在する、回路内で電流を運ぶことができる可撓性のある絶縁された電線を含む。傍頸部電極110は、フレーム104の近位部分の被覆に埋め込まれた、電流を流すことができる、1つ又は複数の電線を含む。一実施形態では、電極材料の(例えば円形、正方形又は矩形であり得る)薄い「ウェハ」を、フレーム104の近位部分の被覆に埋め込まれた傍頸部電極110の1つ又は複数の電線に取り付けることによって、傍頸部電極110の表面積を増大させることができる。傍頸部電極110を構成する電線及びウェハは、絶縁されていないか、又は最小限の絶縁がなされているおり、そのため、電気刺激発生器によって発生し、傍頸部電極110に伝達される電気刺激が、傍頸膣上皮、したがって、骨盤神経及び傍頸神経に送達される。
【0039】
特に、当業者であれば、一対の電極ユニット152が、骨盤神経及び傍頸神経に所定の電気刺激パターンを送達するように電界を生成し、複数の対の電極ユニット152を使用して、骨盤神経及び傍頸神経に複数の電気刺激パターンを同時に送達することが、認識及び理解されよう。したがって、メモリ134内で実行しているローカル制御プログラム136の制御下で動作するマイクロプロセッサ132によって電気刺激発生器130に送信される電子信号により、電気刺激発生器130は、骨盤神経及び傍頸神経のニューロモデュレーションを引き起こす一対又は複数対の電極ユニット152を介して1つ又は複数の電気刺激パターンを伝達する。骨盤神経及び傍頸神経のこのニューロモデュレーションにより、月経困難症、性交痛及び慢性骨盤痛に関連する痛みが軽減する。
【0040】
図15は、IVES装置100の一実施形態の膣内構成要素101を示し、そこには、一対の電極ユニット152から構成された単一の電気刺激回路があり、これらの電極ユニット152を使用して、回路の正極である一方の傍頸部電極110と、回路の負極である他方の傍頸部電極とにより単一の電界が生成される。
図16は、IVC 102の近位端におけるIVCソケット122の、電極プラグ114がIVCソケット122に挿入されていない、詳細な断面図を示す。
図17は、電極プラグ114がIVCソケット122に挿入されていない時の、一対のメス電気接点を包囲する電極プラグ114の詳細な断面図を示す。
図18は、本発明のいくつかの実施形態における、電極プラグ114が挿入されているIVCソケット122の詳細な断面図を示す。
【0041】
図16、
図17及び
図18に示すように、IVC 102は、その近位端に、電極プラグ114を受けるとともに取り外し可能に保持するように構成されたIVCソケット122を有する。いくつかの実施形態では、IVCソケット122は、円筒状空間121を画定し、円筒状空間121の側壁123及びその遠位端における円筒状空間121の基部は、IVC 102の内部空洞120とIVC 102の外部の環境との間に物理的障壁を形成して、IVC 102内のプリント回路基板126及び他の電子構成要素を湿気から保護する。他の実施形態では、IVCソケット122の側壁123は、代わりに、例えば、半円筒形状、直方体、又は三角錐(triangular solid)等の異なる幾何学的形状を有する空間を画定してもよい。いずれの場合も、電極プラグ114は、電極プラグ114のIVCソケット122への容易な挿入を可能にするように、IVCソケット122の側壁123によって画定される内部空間を補完するサイズ及び形状を有するように好適に構成されており、IVCソケット122との間に防湿シールを生成するように設計されている。IVCソケット122の遠位端には、IVCのシェル116の内部空洞120内のプリント回路基板126上の電気刺激発生器130の電気接点154に電気的に結合されるオス電気接点156が位置している。電極プラグ114には、IVCソケット122の遠位端にあるオス電気接点156と係合するように構成されたメス電気接点158が組み込まれている。
【0042】
上述したように、フレーム104の近位部分の被覆の表面に埋め込まれた傍頸部電極110は、IVES装置100が使用されている間、外側膣円蓋の傍頸膣上皮と接触したままになるように位置決めされる。IVC 102のIVCソケット122の遠位端にあるオス電気接点154が、電極プラグ114に組み込まれたメス接点156と係合し、IVES装置100のスイッチがオンにされてIVES装置100が作動すると、(マイクロプロセッサ132及びローカル制御プログラム136の制御下で動作する)電気刺激発生器130によって発生する電気刺激が、少なくとも一対の電極ユニット156を含む電気刺激回路を介して骨盤神経及び傍頸神経に伝達される。
【0043】
外部コントローラ103からの命令に応答して、且つIVC 102のメモリ134内のローカル制御プログラム136の制御下で、電気刺激発生器130によって生成される電気刺激の特性は、例えば、定電流対定電圧、低周波刺激対高周波刺激、トニック刺激対バースト刺激を使用し、生成されている電気刺激のパルス幅、周波数及び振幅を変化させることによって、変更することができる。骨盤神経及び傍頸神経が受ける電気刺激によるそれらのニューロモデュレーションにより、子宮及び骨盤内の他の臓器に由来する月経困難症、性交痛及び慢性骨盤痛に関連する痛みが軽減するか又は除去される。
【0044】
図19A及び
図19Bは、IVES装置100の一実施形態における、フレーム104の近位部分の表面被覆に埋め込まれた傍頸部電極110の位置決めを示し、そこでは、一対の電極ユニットを使用して傍頸部電極110の間に単一の電界をもたらす単一の電気刺激回路が作成されている。
【0045】
図20は、一対の傍頸部電極110が
図19A及び
図19Bに示すように位置決めされている単一の電気刺激回路によって発生する電界162の概略表現を示す。
【0046】
図21A及び
図21Bは、二対の電極ユニットを使用して2つの電気刺激回路が作成されている、IVES装置100の一実施形態におけるフレーム104の近位部分の表面被覆に埋め込まれた二対の傍頸部電極110の位置決めを示す。
【0047】
図22は、2つの電気刺激回路によって発生する電界162の概略表現を示し、二対の傍頸部電極110が、各電気刺激回路の正電極及び負電極がフレーム104の同じ側に位置する場合に、
図21A及び
図21Bに示すように位置決めされている。
【0048】
図23は、2つの電気刺激回路によって発生する2つの電界のうちの1つの概略表現を示し、二対の傍頸部電極110が、各電気刺激回路の正電極及び負電極がフレーム104の反対側に位置する場合に、
図21A及び
図21Bに示すように位置決めされている。図内の混乱を回避するために、第2電気刺激回路によって発生する第2電界の表現は図示していない。
【0049】
外部コントローラ及びIVES制御アプリケーション(「IVESアプリ」)
図24は、本発明のいくつかの実施形態による膣内構成要素101及び外部コントローラ103の両方を例として説明する、概略ブロック図を示す。
図24に示すように、タブレットコンピュータ、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、又は他の任意のタイプのコンピューティング若しくはデータ通信デバイスを含むことができる外部コントローラ103は、マイクロプロセッサ164と、マイクロプロセッサで実行されるのに好適なコンパイルされた実行可能プログラム命令を一時記憶する揮発性メモリ記憶領域と、表示画面168と、キーボード又はタッチスクリーン等の入力デバイス170と、アプリケーションプログラムを記憶するスタティックメモリ172と、電池174と、無線周波数トランシーバ176とを含む。無線周波数トランシーバ176は、IVC 102内部の無線周波数トランシーバ138とワイヤレス通信チャネル182を確立するように構成されている。スタティックメモリ172は、IVESアプリ160のプログラミング命令を記憶する。IVESアプリ160のプログラミング命令は、外部コントローラ103のマイクロプロセッサ164によって実行されると、外部コントローラ103のマイクロプロセッサ164に、2つの無線周波数トランシーバの間で確立されたワイヤレスデータ通信チャネル182を介してIVC 102内部のマイクロプロセッサ132と通信させる。
【0050】
ユーザインタフェース
IVESアプリ160のユーザインタフェースモジュール180は、ユーザから動作命令を受け取るように構成されており、これにより、ユーザは、電気刺激発生器130によって傍頸部電極110に送達されている電気刺激とともに、ユーザインタフェースモジュール180を使用して変更するために利用可能な他の設定184を作動させ、調整し、及び同調させることができる。したがって、ユーザは、外部コントローラ103のユーザインタフェースの外部コントローラ103の表示画面168上のコントロール(ボタン、アイコン及びスライダのデジタル表現等)を操作して、IVES装置100によって骨盤神経及び傍頸神経に与えられる電気刺激を選択し、パーソナライズし、最適化し、調節し、作動させ、及び/又は停止させることができる。加えて、外部コントローラ103内部の無線周波数トランシーバ176及びマイクロプロセッサ164は、ワイヤレス通信チャネル182を介して、IVC 102のシェル116内部のプリント回路基板126に接続されたマイクロプロセッサ132によって生成されるステータスインジケータ183及び他のデータ、及び/又はIVC 102のシェル116内部のプリント回路基板126上のメモリ134に格納されているデータを受信することができる。ステータス情報183及び他のデータは、ユーザインタフェースを介して外部コントローラ103に関連付けられた表示画面168に表示することができる。好ましくは、外部コントローラ103で実行しているIVESアプリ160のユーザインタフェースモジュール180は、外部コントローラ103又はユーザが、電子メール、テキストメッセージ及び/又は別のデータ若しくは情報送信プロセスを使用して、IVC 102のメモリ134から取り出されたステータス情報184及び他のデータを、例えばユーザの主治医又は他の医療提供者等、他のデバイス、組織又は人々に送信することができるようにするように構成された、プログラム命令も含む。
【0051】
好ましくは、外部コントローラ103のメモリ記憶領域172に格納されたIVESアプリ160は、外部コントローラ103が、(1)外部コントローラ103で実行しているIVESアプリ160に関連する任意のプログラム更新が利用可能であるか否か、及び/又は(2)IVC 102のメモリ134に格納されたローカル制御プログラム136に関連するオペレーティングシステム更新、ローカルプログラム更新又はファームウェア更新が利用可能であるか否かを判断するために、リモートコンピュータシステム又はサーバ178に定期的に問合せすることができるようにする、プログラム命令も含む。こうした更新が利用可能である場合、IVESアプリ160は、外部コントローラ103に、IVC 102に、及び/又はその両方に、更新を自動的にダウンロード及びインストールするように構成されている。こうした更新が利用可能となった際にダウンロードすることにより、外部コントローラ103で動作しているIVESアプリ160、並びにIVC 102で実行しているオペレーティングシステム、ローカル制御プログラム136及びファームウェアは、自動的に最新のバグフィックス及び/又は改善がなされて実質的に最新に保たれる。いくつかの実施形態では、IVESアプリ160は、プログラム、オペレーティングシステム又はファームウェアの更新をダウンロード及び/又はインストールする前に、ユーザに許可又は確認を促すように構成される場合もある。
【0052】
好ましい実施形態では、ユーザは、以前に保存された電気刺激プロファイル(ESP)又は新たに作成されたESPを選択し、有効にすることもでき、このESPは、次いで、IVC 102のメモリ134に保存することができる。これらの動作命令及びパラメータ並びに好ましい設定が、ユーザインタフェースモジュール180を用いて外部コントローラ103に入力及び保存されると、依然としてIVESアプリ160の制御下で動作している、マイクロプロセッサ164は、無線周波数トランシーバ176を作動させて、IVC 102の円筒状シェル116内部の無線周波数トランシーバ138とのワイヤレスデータ通信リンク182を確立する。次いで、マイクロプロセッサ164は、ワイヤレスデータ通信リンク182を使用して、動作パラメータ及び好ましい設定をIVC 102内部のメモリ134に送信する。IVESアプリ160は、マイクロプロセッサ164によって実行されると、マイクロプロセッサ164に、IVC 102からのステータス情報183をアップロードさせ、ステータス情報183を表示画面168に表示させる、プログラム命令も含むことができる。ステータス情報183は、例えば、IVC 102のプリント回路基板126に取り付けられた充電式電池128の電池電力の量を含むことができる。
【0053】
図25A、
図25B、
図26A、
図26B、
図27A、
図27B、
図28A、
図28B、
図29A及び
図29Bは、例として、本発明の一実施形態に従ってIVES装置を操作し、制御し、及び調節するために使用することができるユーザインタフェーススクリーンショットの集まりを示す。これらの図に示すように、ユーザインタフェースモジュール180に通信可能に接続された表示画面168は、外部コントローラ及びIVC 102内部の無線周波数無線機を介してワイヤレス通信チャネルで適切な制御信号を送信することにより、IVES装置100の動作を制御するように構成された、多数のアイコン、ボタン及びスライダを含む。
【0054】
とりわけ、ユーザインタフェースは、限定されないが以下を含む、種々の有用な機能を提供するようにプログラムすることができる。
[1]IVES装置のオンとオフとを切り替えること(
図25A-「オン/オフ」ラジオボタン)。
【0055】
[2]IVES装置の現在の動作ステータス及び電池充電レベルを表示すること(
図25A及び
図25B)。
【0056】
[3]電池充電レベルが低くなった時に患者に警告すること(
図25A及び
図25B)。
【0057】
[4]患者が、電気刺激プロファイル(ESP)を、(i)患者の病歴と他の多数のユーザの以前の治療経験とに基づいてIVES施術者による最初の診察中にアプリにプリロードすることができるか、(ii)患者のIVES装置の使用経験に基づいて患者のIVES施術者による診察後にアプリにロードすることができるか、又は(iii)患者が自身で作成し保存することができる(
図26A)、多数の「お気に入り」プロファイルから、選択することができるようにすること。各ESPは、所定の設定値の事前定義された組合せである。患者は、ボタン又はアイコンに触れることにより自身の所望のESPを選択することができる。例えば、患者は、仕事をしている間、1つのESPが自身に最適であり、夕方家にいる時、第2 ESPが自身に最適であり、寝る時、第3 ESPが自身に最適であり、運動している時、さらに別のESPが自身に最適であることを学習している場合がある。いくつかの実施形態では、ESPのパターンを定義するデータは、外部コントローラのメモリにのみ格納される。他の実施形態では、ESPのパターンを定義するデータは、IVC 102のメモリにのみ格納され、そこでインデックス付けされて、インデックス番号を参照することによって有効にすることができるようにする。さらに他の実施形態では、ESPのパターンを定義するデータは、外部コントローラ及びIVC 102の両方のメモリに格納される。
【0058】
[5]患者が、電気刺激セッションの周波数、強度、持続時間、強度、立上り時間、減衰時間及び刺激幅等の種々の異なる動作特性を作成し、選択し、編集し、保存することができるようにすること。(
図26A、
図26B、
図27A及び
図27B)。任意選択的に、患者は、電気刺激セッション中に使用される電圧、アンペア数及び/又は波形等の詳細な設定を調整し、保存したESP特性を、他のユーザが匿名でアクセス及び/又はダウンロードすることができるコミュニティサーバに、匿名でアップロードすることができてもよい。
【0059】
[6]患者が、月経期間の開始及び終了、月経痛又は腰痛の開始及び終了、ほてり又は悪寒の開始及び終了等、患者の体内のいくつかの身体的事象の開始時刻及び終了時刻、並びにIVES装置の使用に関連する可能性のあるあり得る副作用又は合併症を追跡することができるようにすること。(
図28A及び
図28B)。好適には、身体的事象情報のすべては、外部コントローラのメモリに格納され、電気刺激セッションの開始及び終了時刻(並びにセッションに関連するすべての設定及び特性)と自動的に同期し、その後、それらの事象の間のIVES装置の性能及び有効性のその後の詳細な分析及び評価のために、患者又は患者の医師若しくは他の医療提供者によって操作されるコンピュータシステムにアップロードされる。
【0060】
[7]患者が、身体的運動の開始及び終了、性交の開始及び終了等、いくつかの身体的活動の開始時刻及び終了時刻を追跡することができるようにすること(
図29A及び
図29B)。好適には、身体的活動情報のすべてもまた外部コントローラのメモリに保存され、電気刺激セッションの開始及び終了時刻(並びにセッションに関連するすべての設定及び特性)並びにIVES治療に対する患者の反応と自動的に同期し、その後、それらの事象の間のIVES装置の性能及び有効性のその後の詳細分析及び評価のために、患者又は患者の医師若しくは他の医療提供者によって操作されるコンピュータシステムにアップロードされる。
【0061】
[8]患者が、身体的事象データ及び身体的活動データを自身の医師に自動的に送信することができるようにすること。(
図25A-「医師とデータを共有」ボタン)。
【0062】
[9]患者が、IVES装置が一連の電気刺激セッションを自動的に開始及び停止する事前定義されたスケジュールを設定し、IVES装置の回路基板におけるローカル制御プログラムに送信することができるようにすること(図示せず)。
【0063】
[10]電気刺激セッションが始まろうとする時はいつでも、患者の制御装置又はスマートフォンに可聴又は視覚的アラートを提供して、患者が予期しない膣刺激(ある場合)に驚かされず、セッションのタイミングが、患者がその時点で従事しているいかなる活動にも不適切な場合には、セッションを取り消すか又はIVES装置を停止させる十分な時間があるようにすること(図示せず)。
【0064】
[11]電気刺激セッションの開始時、セッション中、及びセッション後に、患者の制御装置又はスマートデバイスに可聴又は視覚的アラートを提供するともに、患者に対して、ユーザインタフェースのスライダ又はボタンを使用して、骨盤痛及び/又は不快感のその時点でのレベルをスケールで評価するよう促し、それにより、この情報を、追跡し、格納し、その後、詳細な分析及び評価のために別のコンピュータシステムにアップロードすることもできるようにする(図示せず)。
【0065】
[12]リモートコンピュータシステムで利用可能な更新をチェックし、そうした更新が利用可能である場合、それらの更新を自動的に外部コントローラにダウンロード及びインストールすることにより、患者がIVESアプリを更新することができるようにする(
図25B-「更新をチェック」ボタン)。
【0066】
IVES装置を使用するためのプロトコル
本発明のいくつかの実施形態に従って構成されたIVES装置は、骨盤痛の原因及び治療、女性の解剖学及び生理学に精通している医師から取得可能となることが予想される。これらの医師は、好ましくは、IVES装置のカスタムフィッティング、骨盤痛の治療のための電気刺激の使用、及びIVES装置を使用する個々の患者に対する設定の適切なプログラミングに関して特別に訓練されている。上述した知識があるとともに訓練を受けた医師を、以下、「IVES施術者」と呼ぶ。
【0067】
IVES装置の候補の評価
本発明によるIVES装置を使用する適切な候補者には、限定されないが、子宮内膜症、月経困難症、性交痛、又は腹部若しくは骨盤の悪性腫瘍の存在と関連しない慢性骨盤痛の文書で裏付けられた病歴のある女性が含まれる。女性に装置を提供する前に、女性は、骨盤の検査、並びに子宮頸部異形成又は癌、及び膣又は骨盤の感染症の適切なスクリーニングを含む完全な婦人科検査を受けるべきである。加えて、ペースメーカの存在等、電気刺激の使用に対するいかなる禁忌もあってはならない。
【0068】
IVES施術者による装置の初回フィッティング
女性の骨盤の解剖学的構造は一意であり、IVES装置による治療の目的は、外側膣円蓋の領域にある傍頸膣上皮の真下の骨盤神経及び傍膣神経に快適に電気刺激を加えることであるため、装置のユーザは、その適切な使用のために適切にフィッティングされることが重要である。
【0069】
IVES装置100の膣内構成要素101の適切なフィッティングには、患者に適切なサイズであるフレーム104を選択し、必要であればフレーム104の形状を調整することが必要である。
【0070】
装置の初期プログラミング
個々の患者は、種々の状況に対して、IVES装置によって送達される電気刺激に対していくつかの最適な電気刺激プロファイル(ESP)を有することが予想される。活動、時刻、ストレスの有無、及び患者が経験している骨盤痛のレベル等の状況によって、時に、1つのESPが他のESPよりも好ましくなる。各ESPに確立される設定は、電気強度、刺激周波数、電気刺激波形、治療期間等の種々のパラメータの調整を含むことができる。
【0071】
患者に利用可能となる初期ESPは、IVES施術者による診察において、患者の病歴とIVES装置を使用した多数の患者の集められた経験とに基づいて確立することができる。
【0072】
IVES施術者による初回診察中、患者は、IVES装置、外部コントローラ、IVESアプリ、最初に利用可能なESP、IVES装置の使用中に回避されるべき感覚及び感情、並びにIVESアプリによって事象を記録する記録方法について説明を受ける。
【0073】
最初の診察又はその後の診察中に、患者は、IVESアプリで作成され患者に利用可能となる「パーソナライズされた」ユーザが定義したESPの作成について説明を受ける。
【0074】
本発明について、いくつかの実施形態に関して開示したが、添付の特許請求の範囲に定義されるような、本発明の範囲から逸脱することなく、開示した実施形態に対する多数の変更、改変及び変更が可能である。したがって、本発明が記載した実施形態に限定されることは意図されておらず、以下の特許請求の範囲及びその均等物の文言によって定義される全範囲を有することが意図されている。