(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】可変容量素子
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20240228BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20240228BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H01L27/04 C
H01L27/04 V
H01L29/44 S
H01L29/44 Y
(21)【出願番号】P 2023540250
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2022028355
(87)【国際公開番号】W WO2023013431
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2021127331
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520133916
【氏名又は名称】ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】西尾 明彦
(72)【発明者】
【氏名】高見 義則
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0203488(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0194578(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0098746(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0091845(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0091311(US,A1)
【文献】特開2014-207287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/04
H01L 21/822
H01L 29/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に設けられた第1半導体層と、
前記第1半導体層の上に設けられ、前記第1半導体層と比べてバンドギャップが大きい第2半導体層を含む誘電体層と、
前記第1半導体層の前記第2半導体層との界面に設けられた二次元電子ガス層と、
前記誘電体層の上に設けられ、第1端子を含む第1電極と、
前記基板の平面視において前記第1電極と離間して設けられ、前記二次元電子ガス層と電気的に接続された第2端子と、を有し、
前記第1電極の下の前記二次元電子ガス層は第2電極として機能し、
前記第1電極から前記第2端子に向かう第1方向、または前記平面視における前記第1方向に対して直交する第2方向に沿って、前記第1電極の下面は前記第1半導体層の上面との間隔が単調増加するように設けられ、
前記第1電極と前記第2端子との間に印加される電圧に応じて前記第1電極と前記第2電極との間の容量値が変化する、
可変容量素子。
【請求項2】
前記誘電体層は絶縁層を含み、前記絶縁層の厚さが前記第1方向または前記第2方向に沿って単調増加する、
請求項1に記載の可変容量素子。
【請求項3】
前記絶縁層は第1絶縁体層と、前記第1絶縁体層よりも絶縁破壊耐圧の高い第2絶縁体層と、を含む、
請求項2に記載の可変容量素子。
【請求項4】
前記第2半導体層の厚さが前記第1方向または前記第2方向に沿って単調増加する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の可変容量素子。
【請求項5】
前記基板の断面視において、
前記第1半導体層の上面に対する前記第1電極の下面の仰角が5°以上60°以下である、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の可変容量素子。
【請求項6】
前記間隔が単調増加する程度を示す増加度は一定でない、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の可変容量素子。
【請求項7】
前記誘電体層は第1窒化シリコン層と、
前記第1窒化シリコン層の上に設けられ、前記第1窒化シリコン層より組成比Si/Nが小さい第2窒化シリコン層と、を含む、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の可変容量素子。
【請求項8】
前記誘電体層は第1窒化シリコン層と、
前記第1窒化シリコン層の上に設けられ、前記第1窒化シリコン層より組成比Si/Nが小さい第2窒化シリコン層と、を含む、
請求項6に記載の可変容量素子。
【請求項9】
前記間隔が単調増加する程度を示す増加度が一定でなく、
前記第1電極の下面と前記第1半導体層の上面との前記間隔が大きいほど、前記増加度が小さくなる、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の可変容量素子。
【請求項10】
前記間隔が単調増加する程度を示す増加度が一定でなく、
前記第1電極の下面と前記第1半導体層の上面との前記間隔が大きいほど、前記増加度が小さくなる、
請求項6に記載の可変容量素子。
【請求項11】
前記間隔が単調増加する程度を示す増加度が一定でなく、
前記第1電極の下面と前記第1半導体層の上面との前記間隔が大きいほど、前記増加度が小さくなる、
請求項7に記載の可変容量素子。
【請求項12】
前記間隔が単調増加する程度を示す増加度が一定でなく、
前記第1電極の下面と前記第1半導体層の上面との前記間隔が大きいほど、前記増加度が小さくなる、
請求項8に記載の可変容量素子。
【請求項13】
更に、前記第1電極と前記第2端子との間に設けられ、接地電位に設定されたフィールドプレート電極を有する、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の可変容量素子。
【請求項14】
更に、前記第1電極と前記第2端子との間に設けられ、前記第1電極と同電位に設定されたフィールドプレート電極を有する、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の可変容量素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可変容量素子、特に二次元電子ガス層を有する半導体からなる可変容量素子に関する。
【背景技術】
【0002】
III―V族系半導体、特にヒ素系のGaAsおよびAlGaAs、並びに、窒化物系のGaNおよびAlGaNは、AlGaAs/GaAs、AlGaN/GaN等のヘテロ構造を容易に形成することが可能である。III―V族窒化物半導体の場合は、バンドギャップの差に加えて、イオン半径の違いによる自発分極およびAlGaNとGaNとの格子定数差から発生するピエゾ分極による固定電荷により、AlGaAs/GaAs界面のGaAs層側、および、AlGaN/GaN界面のGaN層側に高移動度、かつ高濃度な電子のチャネル(二次元電子ガス、2DEG、Dimensional Electron Gas)を発生させることができる。この二次元電子ガスチャネルを制御することにより高電子移動度トランジスタ(HEMT、High Electron Mobility Transistor)を形成することが可能となる。HEMTのこの高移動度による高速動作を活かし、増幅アンプおよびスイッチング素子といった高周波用デバイスとしての応用が広がっている。
【0003】
近年は、電界効果型トランジスタ(FET、Field Effect Transistor)およびダイオードを単独で使用するディスクリート製品だけでなく、抵抗素子および容量素子を備えた集積回路(MMIC、Monolithic Microwave Integrated Circuit)が使用されることも増えている。MMICに使用される容量素子としては、固定の容量値を持つ固定容量素子の他に、容量を一定の範囲で制御する可変容量素子がある。特許文献1に記載されているように、二次元電子ガス層を用いたHEMTと同一チップ上に可変容量素子が形成されることにより、製造コストおよび整合回路の制御性の面でメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HEMTと同一チップ上に形成される可変容量素子は、印加電圧に対して大きく容量値が変化するとともに、その変化は印加電圧に対して線形的に変化するものであることが望まれる。しかし、特許文献1に記載の従来技術ではバラクタダイオードが用いられているが、容量の制御範囲は印加電圧に対して線形的に容量が変化する範囲が狭いために、発振器の発振周波数の変調範囲が狭くなり、所望の特性を備えた半導体装置が得られないという問題があった。また、信号振幅が容量制御電圧に加わってしまうと、容量値が変動してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本開示では、印加電圧に対して大きく容量値が変化するとともに、その変化は電圧に対して線形的に変化し、かつ容量制御電圧に振幅信号が加わっても、容量値を所望の範囲に制御することが可能となる可変容量素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係わる可変容量素子は、基板と、前記基板の上に設けられた第1半導体層と、前記第1半導体層の上に設けられ、前記第1半導体層と比べてバンドギャップが大きい第2半導体層を含む誘電体層と、前記第1半導体層の前記第2半導体層との界面に設けられた二次元電子ガス層と、前記誘電体層の上に設けられ、第1端子を含む第1電極と、前記基板の平面視において前記第1電極と離間して設けられ、前記二次元電子ガス層と電気的に接続された第2端子と、を有し、前記第1電極の下の前記二次元電子ガス層は第2電極として機能し、前記第1電極から前記第2端子に向かう第1方向、または前記平面視における前記第1方向に対して直交する第2方向に沿って、前記第1電極の下面は前記第1半導体層の上面との間隔が単調増加するように設けられ、前記第1電極と前記第2端子との間に印加される電圧に応じて前記第1電極と前記第2電極との間の容量値が変化する。
【0008】
また、本開示に係わる可変容量素子は、第1容量部および第2容量部と、第1配線層および第2配線層と、を有し、前記第1容量部および前記第2容量部のそれぞれは、基板と、前記基板の上に設けられた第1半導体層と、前記第1半導体層の上に設けられ、前記第1半導体層と比べてバンドギャップが大きい第2半導体層を含む誘電体層と、前記第1半導体層の前記第2半導体層との界面に設けられた二次元電子ガス層と、前記誘電体層の上に設けられ、第1端子を含む第1電極と、前記基板の平面視において前記第1電極と離間して設けられ、前記二次元電子ガス層と電気的に接続された第2端子と、を含み、前記第1電極の下の前記二次元電子ガス層は第2電極として機能し、前記第1容量部が有する前記第1電極の下面と前記第1容量部が有する前記第1半導体層の上面との間隔を第1間隔とし、前記第2容量部が有する前記第1電極の下面と前記第2容量部が有する前記第1半導体層の上面との間隔を第2間隔とした場合に、前記第1間隔は、前記第2間隔よりも小さく、前記第1配線層は、前記第1容量部が有する前記第1電極と前記第2容量部が有する前記第1電極とを電気的に接続し、前記第2配線層は、前記第1容量部が有する前記第2端子と前記第2容量部が有する前記第2端子とを電気的に接続し、前記第1配線層と前記第2配線層との間に印加される電圧に応じて前記第1配線層と前記第2配線層との間の容量値が変化する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、印加電圧に対して大きく容量値が変化するとともに、その変化は電圧に対して線形的に変化し、かつ容量制御電圧に振幅信号が加わっても、容量値を所望の範囲に制御することが可能となる可変容量素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は実施の形態1に係る可変容量素子の構成を示す平面図および断面図である。
【
図2】
図2は実施の形態1に係る可変容量素子における、電圧印加時の状態を示す平面図および断面図である。
【
図3】
図3は実施の形態1に係る可変容量素子における、電圧印加時の状態を示す平面図および断面図である。
【
図4】
図4は実施の形態1に係る他の例の可変容量素子の構成を示す平面図および断面図である。
【
図5】
図5は実施の形態1に係る他の例の可変容量素子の構成を示す平面図および断面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係る可変容量素子の第1電極と第2端子との間の電位差に対する容量値の変化を示したグラフである。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係る可変容量素子の第1電極と第2端子との間の電位差に対する容量値の変化を示したグラフと、電圧印加時の状態を示す平面図と、を対比させた図面である。
【
図8】
図8は、実施の形態1に係る可変容量素子の第1電極と第2端子との間の電位差に対する容量値の変化を示したグラフである。
【
図9】
図9は実施の形態1に係る他の例の可変容量素子の構成を示す平面図および断面図である。
【
図10】
図10は実施の形態1に係る他の例の可変容量素子の構成を示す平面図および断面図である。
【
図11】
図11は、実施の形態1に係る他の例の可変容量素子の第1電極と第2端子との間の電位差に対する容量値の変化を示したグラフである。
【
図12】
図12は実施の形態1に係る他の例の可変容量素子の構成を示す平面図および断面図である。
【
図13】
図13は実施の形態1に係る他の例の可変容量素子の構成を示す断面図である。
【
図14】
図14は実施の形態1に係る他の例の可変容量素子の構成を示す平面図および断面図である。
【
図15】
図15は実施の形態1に係る他の例の可変容量素子の構成を示す平面図および断面図である。
【
図16】
図16は実施の形態1に係る他の例の可変容量素子の構成を示す平面図および断面図である。
【
図17】
図17は、製造途上における実施の形態1に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図18】
図18は、製造途上における実施の形態1に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図19】
図19は、製造途上における実施の形態1に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図20】
図20は、製造途上における実施の形態1に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図21】
図21は、製造途上における実施の形態1に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図22】
図22は、製造途上における実施の形態1に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図23】
図23は、製造途上における実施の形態1に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図24】
図24は、製造途上における実施の形態1に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図25】
図25は、製造途上における実施の形態1に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図26】
図26は、製造途上における実施の形態1に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図27】
図27は、製造途上における実施の形態1に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図28】
図28は、製造途上における実施の形態1に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図29】
図29は、製造途上における実施の形態1に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図30】
図30は、他の製造途上における実施の形態1に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図31】
図31は、他の製造途上における実施の形態1に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図32】
図32は実施の形態2に係る可変容量素子の構成を示す平面図および断面図である。
【
図33】
図33は実施の形態2に係る可変容量素子における、電圧印加時の状態を示す平面図および断面図である。
【
図34】
図34は実施の形態2に係る可変容量素子における、電圧印加時の状態を示す平面図および断面図である。
【
図35】
図35は実施の形態2に係る可変容量素子の詳細構成を示す断面図である。
【
図36】
図36は、製造途上における実施の形態2に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図37】
図37は、製造途上における実施の形態2に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図38】
図38は、製造途上における実施の形態2に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図39】
図39は、製造途上における実施の形態2に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図40】
図40は、製造途上における実施の形態2に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図41】
図41は、製造途上における実施の形態2に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図42】
図42は、製造途上における実施の形態2に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図43】
図43は、製造途上における実施の形態2に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図44】
図44は、製造途上における実施の形態2に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図45】
図45は、製造途上における実施の形態2に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図46】
図46は、製造途上における実施の形態2に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図47】
図47は、製造途上における実施の形態2に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図48】
図48は、製造途上における実施の形態2に係る可変容量素子の構造を示す断面図である。
【
図49】
図49は、実施の形態2に係る可変容量素子の第1電極と第2端子との間の電位差に対する容量値の変化を示したグラフである。
【
図50】
図50は実施の形態2に係る他の例の可変容量素子の構成を示す断面図である。
【
図51】
図51は実施の形態2に係る他の例の可変容量素子の構成を示す断面図である。
【
図52】
図52は、実施の形態2に係る他の例の可変容量素子の第1電極と第2端子との間の電位差に対する容量値の変化を示したグラフである。
【
図53】
図53は実施の形態2に係る他の例の可変容量素子の構成を示す平面図および断面図である。
【
図54】
図54は実施の形態2の変形例に係る可変容量素子の構成を示す平面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、並びに、ステップ(工程)およびステップの順序などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺などは必ずしも一致していない。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0013】
また、本明細書において、可変容量素子の構成における「上」および「下」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)および下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構造における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語である。また、「上」および「下」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔を空けて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
【0014】
また、本明細書および図面において、x軸、y軸およびz軸は、三次元直交座標系の三軸を示している。各実施の形態では、z軸方向を鉛直方向とし、z軸に垂直な方向(xy平面に平行な方向)を水平方向としている。また、以下で説明する実施の形態において、z軸正方向を上と記載し、z軸負方向を下と記載する場合がある。
【0015】
また、本明細書において「平面視」とは、可変容量素子が有する基板をz軸正方向から見たときのことをいう。
【0016】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1に係る可変容量素子100について、
図1、
図2、および、
図3を用いて説明する。
図1は、実施の形態1に係る可変容量素子100の構成を示す平面図および断面図である。
図2は、実施の形態1に係る可変容量素子100における、電圧印加時の状態を示す平面図および断面図である。
図3は、実施の形態1に係る可変容量素子100における、電圧印加時の状態を示す平面図および断面図である。より具体的には、
図1の(a)は、実施の形態1に係る可変容量素子100の構成の平面図を示し、
図1の(b)は、
図1の(a)の(b)-(b)線に対応する位置での断面図を示す。
図2の(a)は、実施の形態1に係る可変容量素子100の構成の平面図を示し、
図2の(b)は、
図2の(a)の(b)-(b)線に対応する位置での断面図を示す。
図3の(a)は、実施の形態1に係る可変容量素子100の構成の平面図を示し、
図3の(b)は、
図3の(a)の(b)-(b)線に対応する位置での断面図を示す。
図2と
図3とは、
図1の可変容量素子100に印加する電圧を変動させた時の変化を示した図であり、その印加電圧は
図2が示す可変容量素子100よりも
図3が示す可変容量素子100の方が大きい。なお、
図2の(a)と
図3の(a)とは、
図2の(b)と
図3の(b)との断面図に示される、二次元電子ガス層120の高さ(z軸方向高さ)の平面視における透視図である。
【0017】
図2の(b)に示すように、可変容量素子100は、基板101と、バッファ層102と、第1半導体層103と、第2半導体層104および絶縁層(ここでは第1絶縁体層105)の積層物からなる誘電体層106と、第1電極107と、第2端子108と、からなる。
【0018】
また、可変容量素子100は、二次元電子ガス層120と、空乏層領域122と、分離領域121と、第1保護絶縁膜109と、第2保護絶縁膜110と、を備える。以下、より詳細に説明する。
【0019】
二次元電子ガス層120は、第1半導体層103の第2半導体層104との界面に設けられている。より具体的には、二次元電子ガス層120は、第2半導体層104と第1半導体層103とのヘテロ界面の第1半導体層103側に設けられている。換言すると、二次元電子ガス層120は、第1半導体層103と第2半導体層104との境界近傍(当該界面から10nm以内)に設けられている。
【0020】
この二次元電子ガス層120には、空乏層領域122が形成される。空乏層領域122は、第1電極107と第2端子108との間に印加される電位差に応じて、第1電極107の下面から生じる電界によって、第2半導体層104、第1半導体層103および二次元電子ガス層120に形成される領域である。なお、
図2の(b)および
図3の(b)においては、空乏層領域122は、破線で囲まれた領域である。
【0021】
第1電極107の下の二次元電子ガス層120が第2電極123として機能する。第2電極123は、第1電極107の下の二次元電子ガス層120において、空乏層領域122の伸縮によって、空乏化が起きていない領域である。つまりは、第2電極123は、第1電極107の下の二次元電子ガス層120のうち空乏層領域122ではない領域である。
【0022】
なお、
図2の(a)および
図3の(a)においては、識別のため、二次元電子ガス層120のうち、空乏層領域122でない領域には、ハッチングが付されている。
【0023】
分離領域121は、第1電極107および第2端子108の外側の領域において、第1半導体層103と第2半導体層104とが除去されて、二次元電子ガス層120が設けられていない領域である。第1電極107および第2端子108の外側の領域とは、第1電極107よりもx軸負側であり、第2端子108よりもx軸正側であり、第1電極107および第2端子108よりもy軸正および負側の領域である。つまりは、第1電極107および第2端子108の外側の領域とは、矩形の枠形状の領域である。
【0024】
第1保護絶縁膜109と第2保護絶縁膜110とは、誘電体層106と第1電極107と第2端子108との上に順次設けられている。
【0025】
ここで、第1電極107から第2端子108に向かう方向を第1方向(x軸正方向)とする。換言すると、第1方向は、第1電極107の下面の第2端子108から遠い側の端部位置から第2端子108に近い側の端部位置に向かう方向である。また、基板101の平面視における第1方向に対して直交する方向を第2方向(y軸方向)とする。第1方向または第2方向に沿って、第1電極107の下面は第1半導体層103の上面との間隔が単調増加するように設けられている。つまりは、第1方向または第2方向に沿って、第1電極107の下面と第2半導体層104の下面との距離134は、単調増加する。なお、
図1、
図2、および
図3では第1方向における単調増加が示されており、第2方向における単調増加が後述の
図4、および
図5に示されている。
【0026】
さらに、構成要素について、より詳細に説明する。
【0027】
基板101は、例えば、Siからなる基板である。基板101は、Siからなる基板に限らず、サファイア(Sapphire)、SiC、GaNおよびAlN等からなる基板であってもよい。
【0028】
バッファ層102は、基板101の上に設けられる。バッファ層102は、例えば厚さ2μmの窒化物半導体層であって、より具体的には、AlNおよびAlGaNの複数の積層構造からなる窒化物半導体層である。バッファ層102は、その他に、GaN、AlGaN、AlN、InGaNおよびAlInGaN等のIII族窒化物半導体の単層もしくは複数層によって構成されていてもよい。
【0029】
第1半導体層103は、基板101の上に設けられる。本実施の形態において、第1半導体層103は、バッファ層102の上に設けられる。第1半導体層103は、例えば、厚さ200nmのアンドープ(i型)GaNによって構成することができる。アンドープ(i型)とは、エピタキシャル成長時に不純物が意図的にドーピングされていないことを意味する。第1半導体層103は、GaNの他に、AlGaN、InGaNおよびAlInGaN等のIII族窒化物半導体によって構成されていてもよい。また、第1半導体層103は、アンドープ型(i型)だけでなく、Si等のn型の不純物が含まれているIII族窒化物半導体でもよい。
【0030】
第2半導体層104は、第1半導体層103の上に設けられる。第2半導体層104は、例えば厚さ20nmでAl組成比が25%のアンドープ(i型)AlGaNによって構成されている。なお、「Al組成比が25%」とは、Al0.25Ga0.75Nであることを示す。
【0031】
なお、第2半導体層104は、AlGaNに限らず、AlN、InGaNおよびAlInGaN等のIII族窒化物半導体によって構成されていてもよく、また、第2半導体層104には、n型の不純物が含まれていてもよい。
【0032】
また、第2半導体層104の上にはキャップ層として例えばGaNからなる約1nm以上2nm以下の厚さの半導体層が設けられてもよい。つまり、第2半導体層104と絶縁層(ここでは第1絶縁体層105)との間には、このようなキャップ層が設けられてもよい。
【0033】
本実施の形態において、第2半導体層104のバンドギャップは、第1半導体層103のバンドギャップより大きい。また、アンドープ(i型)AlGaNからなる第2半導体層104とアンドープ(i型)GaNからなる第1半導体層103とはヘテロ構造となっている。つまり、第2半導体層104と第1半導体層103との界面はヘテロ接合されており、第2半導体層104と第1半導体層103との界面にはヘテロ障壁が形成されている。
【0034】
この結果、第2半導体層104と第1半導体層103とのヘテロ界面の第1半導体層103側には二次元電子ガス層120が設けられる。
【0035】
なお、第2半導体層104と第1半導体層103との間にスペーサ層として、例えばAlNからなる約1nm以上2nm以下の厚さの半導体層が設けられてもよい。
【0036】
分離領域121は、半導体装置において可変容量素子100とそれ以外との素子、もしくは可変容量素子100同士を電気的に分離するために設けられた領域である。分離領域121は、平面視では、二次元電子ガス層120を囲むように配置された、二次元電子ガス層120が設けられていない領域をさす。
【0037】
例えば、分離領域121は、第2半導体層104と第1半導体層103とバッファ層102との一部を除去することにより構成されている。
【0038】
なお、分離領域121は、二次元電子ガス層120に対して、He、B、H、F、およびFeのいずれかを含む分子を注入した、充填領域によって形成されてもよい。また、分離領域121は、第2半導体層104と第1半導体層103とバッファ層102との一部を除去する方法と、除去により残った領域にHe、B、H、F、およびFeのいずれかを含む分子を注入した充填領域を形成する方法と、を組合せて形成されてもよい。
【0039】
絶縁層の一例である第1絶縁体層105は、第2半導体層104の上に設けられる。たとえば、第1絶縁体層105は厚さ270nmのSixNyに(x=3、y=4)よって構成されている。
【0040】
なお、第1絶縁体層105はSiとNとの組成を示すx、およびyの値が上記とは異なるものや、SiO2、Al2O3、Ga2O3、TiO2、Ta2O3、HfSiO4、ZrSiO4、HfO2、ZrO2、SrTiO3、およびBaTiO3といった材料が用いられてもよく、単層でもよく、複数層の積層としてもよい。
【0041】
誘電体層106は、第2半導体層104と第1絶縁体層105との積層物から形成されている。つまり、誘電体層106は絶縁層として第1絶縁体層105を含み、第1絶縁体層105は第2半導体層104の上に設けられている。つまりは、誘電体層106は、二次元電子ガス層120の上に設けられているともいえる。さらには、誘電体層106は、第1半導体層103の上に設けられているともいえる。
【0042】
第1電極107は、
図1の(b)の断面図に示すように、誘電体層106の上に設けられ、導電性材料で構成されている。より具体的には、第1電極107は、誘電体層106が含む第1絶縁体層105の上に設けられる。
【0043】
たとえば、第1電極107は、TiNによって構成されるTiN層とAlによって構成されるAl層との積層構造であり、TiN層の膜厚が50nm、Al層の膜厚が500nmである。ここでは、TiN層の上にAl層が設けられている。また、
図1の(a)の平面図に示される第1電極107の幅124は3.0μm、第1電極107の長さ125は2.0mmである。幅124は、x軸方向の幅であり、長さ125は、y軸方向の長さである。なお、第1電極107は、TiNおよびAlの組み合わせに限らず、Ti、Al、Cu、Ni、Au、Pt、Pd、Ta、W、SiおよびHf等のうち1つの金属からなる単層電極膜であってもよいし、これらの金属のうち2つ以上組み合わせることによって構成された多層電極膜であってもよい。
【0044】
また、第1電極107は、第1端子を含む。ここで、本実施の形態においては、第1端子は、第1電極107の上面部に相当するが、これに限られず、第1端子は、第1電極107と電気的に接続され、電位を供給する部位であればよい。
【0045】
第2端子108は、
図1の(b)の断面図に示すように、誘電体層106、第2半導体層104および第1半導体層103の少なくとも一部を除去した領域に設けられ、二次元電子ガス層120と電気的に接続される。一方、平面図では
図1の(a)に示すように、第2端子108は、第1電極107と間隔を空けた位置に第1電極107と平行に配置されている。つまり、基板101の平面視で、第1電極107の長手方向と第2端子108の長手方向とは、平行であり、ここでは、y軸方向に平行である。つまり、第2端子108は、基板101の平面視において、第1電極107と離間して設けられ、二次元電子ガス層120と電気的に接続されている。
【0046】
たとえば、第2端子108は、厚さ20nmのTiによって構成されるTi層と厚さ200nmのAlによって構成されるAl層との積層物が熱処理により合金化された積層構造である。ここでは、Ti層の上にAl層が設けられている。
図1の(a)の平面図に示される第2端子108の幅126は3.0μm、第2端子108の長さ127は2.0mmとする。幅126は、x軸方向の幅であり、長さ127は、y軸方向の長さである。なお、第2端子108は、TiおよびAlの組み合わせに限らず、Ti、Al、Cu、Ni、Au、Pt、Pd、Ta、W、SiおよびHf等のうち1つの金属からなる単層電極膜であってもよいし、これらの金属のうち2つ以上組み合わせることによって構成された多層電極膜であってもよい。
【0047】
なお、第2端子108と二次元電子ガス層120とが電気的に接続されていれば、第2半導体層104は開口していなくてもかまわない。つまり、
図1~
図3においては、第2端子108は、第2半導体層104をy軸方向に貫通して二次元電子ガス層120と直接接しているが、これに限られず、第2端子108は、二次元電子ガス層120と電気的に接続されていれば、第2半導体層104の上に設けられてもよい。
【0048】
上記の通り、
図1~
図3が示すように、可変容量素子100においては、第1方向に沿って、第1電極107の下面は、第1半導体層103の上面との間隔が単調増加するように設けられている。ここでは、誘電体層106が含む絶縁層の一例である第1絶縁体層105の厚さが第1方向に沿って単調増加している。つまりは、第1電極107の下面に接する誘電体層106(より具体的には、第1絶縁体層105)は、傾斜形状を備えている。第1電極107の下面と第2半導体層104の下面との距離134は、誘電体層106の傾斜形状によって、第2端子108から遠い側の第1電極107の端部位置から、第2端子108に近い側の第1電極107の端部位置に向かって、単調増加する。傾斜形状の傾斜角θ130は、
図1の(b)の断面図に示すように、誘電体層106の上面の斜面と二次元電子ガス層120に平行な線とがなす角である。なお、
図1~
図3においては、二次元電子ガス層120に平行な線が破線で示されており、
図1の(
b)では、二次元電子ガス層120と当該平行な線とが平行であることを示す記号(>>)が付されている。
【0049】
たとえば、
図1の(b)の断面図に示される、第2端子108から遠い側の第1電極107の端部位置の下の第1絶縁体層105の膜厚131が10nm、第2端子108に近い側の第1電極107の端部位置の下の第1絶縁体層105の膜厚132が270nmの直線状の単調増加な膜厚の場合、その傾斜角θ130は5°となる。つまり、この場合、基板101の断面視において、第1半導体層103の上面に対する第1電極107の下面の仰角が5°以上60°以下の範囲である。なお、傾斜角θ130(つまりは当該仰角)は、上記範囲に限られず、10°以上50°以下であってもよく、20°以上40°以下であってもよい。
【0050】
第1電極107は第1保護絶縁膜109と第2保護絶縁膜110とに被覆され、任意の開口にて第1電極107の一部が露出する。ここでは、当該一部が第1端子に相当する。第2端子108は第2保護絶縁膜110に被覆され、任意の開口にて第2端子108の一部が露出する。
【0051】
ここで、第1電極107と第2端子108との間に電圧を印加することにより起こる現象について、
図2、および
図3を用いて説明する。これらの図に示すように、第1電極107と第2端子108との間に印加される電位差に応じて、第1電極107の下面から生じる電界によって、第2半導体層104、第1半導体層103および二次元電子ガス層120に、空乏層領域122が形成される。本実施の形態において、空乏層領域122の電子濃度は1e
8/cm
3以下である。また、
図3の方が
図2に比べて第1電極107と第2端子108との間に印加される電位差が大きいため、空乏層領域122が広範囲に広がっている。
【0052】
第2電極123は、
図2、および
図3に示すように、第1電極107の下の空乏層領域122の伸縮によって、空乏化が起きていない第1電極107の下における二次元電子ガス層120の領域である。
図2および
図3においては、第2電極123のx軸方向の長さが両矢印で示されている。また、
図3の方が
図2に比べて第1電極107と第2端子108との間に印加される電位差が大きいため、空乏層領域122が広範囲に広がった結果、第2電極123の面積は小さくなる。
【0053】
本実施の形態に係る可変容量素子100においては、第1電極107から第2端子108に向かう第1方向に沿って、第1電極107の下面は第1半導体層103の上面との間隔が単調増加するように設けられている。つまりは、本実施の形態においては、上記の第1電極107の下面と第2半導体層104の下面との距離134における単調増加がある。これにより、第1電極107と第2端子108との間に印加される電位差に応じて、第1電極107の下面から生じる電界によって発生する空乏層領域122が二次元電子ガス層120に到達する面積が変化し、第2電極123の面積が変化する。すなわち、第1電極107と第2端子108との間の電位差の大小に応じて、第2電極123の面積が変化し、第1電極107と第2電極123との間の容量値が変化する、可変容量素子100が実現される。
【0054】
ここで、
図4を用いて、本実施の形態に係る他の例について説明する。
図4は、実施の形態1に係る他の例の可変容量素子100の構成を示す平面図および断面図である。
図4の(a)は、実施の形態1に係る他の例の可変容量素子100の構成の平面図を示し、
図4の(b)は、
図4の(a)の(b)-(b)線に対応する位置での断面図を示す。
【0055】
この他の例に係る可変容量素子100は、第2方向(y軸方向)に沿って、第1電極107の下面は第1半導体層103の上面との間隔が単調増加するように設けられている。
【0056】
より具体的には、他の例の可変容量素子100においては、y軸正方向に沿って第1電極107の下面は第1半導体層103の上面との間隔が単調増加する。
【0057】
さらに、
図5を用いて、本実施の形態に係る他の例について説明する。
図5は、実施の形態1に係る他の例の可変容量素子100の構成を示す平面図および断面図である。
図5の(a)は、実施の形態1に係る他の例の可変容量素子100の構成の平面図を示し、
図5の(b)は、
図5の(a)の(b)-(b)線に対応する位置での断面図を示す。
【0058】
この他の例に係る可変容量素子100は、第2方向(y軸方向)に沿って、第1電極107の下面は第1半導体層103の上面との間隔が単調増加するように設けられている。
【0059】
より具体的には、他の例の可変容量素子100においては、y軸負方向に沿って第1電極107の下面は第1半導体層103の上面との間隔が単調増加する。
【0060】
また、
図4、および
図5のように第2方向における単調増加とした構造においても、これまで説明してきた第1方向における単調増加と同様な効果が得られる。つまりは、
図4および
図5で示される可変容量素子100においても、第1電極107と第2端子108との間の電位差の大小に応じて、第2電極123の面積が変化し、第1電極107と第2電極123との間の容量値が変化する、可変容量素子100が実現される。
【0061】
また、
図6は、実施の形態1に係る可変容量素子100の第1電極107と第2端子108との間の電位差に対する容量値の変化を示したグラフである。なお、
図6は、
図1、2および3で説明した可変容量素子100に関するグラフである。たとえば、
図6に示すように、第1電極107と第2端子108との電位差が10V以上40V以下の範囲において、第1電極107と第2電極123との間の容量値は0.1pF以上3.8pF以下の変化を示す。なお、
図6における電位差に対する容量値のグラフは、第2電極123に対して垂直方向(つまりz軸方向)の容量成分のみを考慮した簡素化した計算に基づいており、実際の動作とは若干の違いはある。上記の通り、本実施の形態に係る可変容量素子100においては、誘電体層106が絶縁層(例えば第1絶縁体層105)を含む。このため、
図6が示すように、第1電極107と第2端子108との間に、10V以上40V以下もの大きい電位を与えることができる。つまり、可変容量素子100の耐電圧性を向上させることができる。
【0062】
図7は、実施の形態1に係る可変容量素子100の第1電極107と第2端子108との間の電位差に対する容量値の変化を示したグラフと、電圧印加時の状態を示す平面図と、を対比させた図面である。
図7の(b)は、第1電極107と第2端子108との間の電位差に対する容量値の変化を示したグラフであり、つまりは、
図6に相当する。なお、
図7の(a)は当該グラフにおける電位差が15Vである場合の可変容量素子100の平面図を示し、一具体例としては、
図2が示す可変容量素子100の平面図である。また、
図7の(c)は当該グラフにおける電位差が35Vである場合の可変容量素子100の平面図を示し、一具体例としては、
図3が示す可変容量素子100の平面図である。
【0063】
上記の本開示による可変容量素子100によれば、第1電極107の下面と第2半導体層104の下面との距離134を、第2端子108に遠い側から第2端子108に近い側への単調増加とすることで、追加端子による制御を用いず、第1電極107と第2端子108との間の電位差に応じた容量値変化を得ることが可能となる。
【0064】
また、第1電極107の下面と第2半導体層104の下面との距離134の第2端子108に遠い側から第2端子108に近い側への単調増加によって、第1電極107と第2端子108とに印加する電位差に対する、第1電極107と第2電極123との間の容量値の関係が計算できる。このため、容量値の定量的な合せ込みが従来技術に比べて容易となる。
【0065】
また、上記の本開示による可変容量素子100によれば、誘電体層106の傾斜角θ130が大きいほど、第2電極123の面積を変化させるために第1電極107と第2端子108との間に大きな電位差が必要となる。したがって、誘電体層106の傾斜角θ130が大きければ、容量値制御の電位が信号振幅や不安定なものであっても、容量値変化を所望の範囲に抑制することが可能となる。なお、容量値制御の電位が信号振幅や不安定なものである場合とは、例えば、容量制御の電位に、交流電圧が重畳した場合などである。本実施の形態で示すように、傾斜角θ130が5°である場合は、傾斜角θ130が大きい場合である。
図8は、実施の形態1に係る可変容量素子100の第1電極107と第2端子108との間の電位差に対する容量値の変化を示したグラフである。なお、
図8は、
図6と同様に、
図1、2および3で説明した可変容量素子100に関するグラフである。
図8に示す本実施の形態に係る傾斜角θ130が5°における電圧に対する容量値の変化に見られるように、線形性を保って変化する範囲はこの
図8記載の近似直線(a)~(c)に示される。この図においては、それぞれ近似直線の中心電位差における1Vの変化に対して、容量値の変動量は中心電位差の容量値に対して10%以内に収まることができる。なお、例えば、近似直線の中心電位差とは、当該近似直線の両端に対応する2つの電位差の平均値を意味する。この電位差変動(つまり例えば、近似直線の中心電位差における1Vの変化)に対する容量値の変動量は傾斜角θ130がより大きくなることでより少なくすることが可能となる。ここでは、傾斜角θ130が5°以上60°以下であることで、この電位差変動に対する容量値の変動量をより少なくすることが可能となる。なお、
図8における電位差に対する容量値のグラフは、第2電極123に対して垂直方向(つまりz軸方向)の容量成分のみを考慮した簡素化した計算に基づいており、実際の動作とは若干の違いはある。
【0066】
図8に示すように、本実施の形態に係る可変容量素子100は、印加電圧に対して大きく容量値が変化するとともに、その変化は電圧に対して線形的に変化し、かつ容量制御電圧に振幅信号が加わっても、容量値を所望の範囲に制御することが可能となる。
【0067】
ここで、
図9を用いて、本実施の形態に係る他の例について説明する。
図9は、実施の形態1に係る他の例の可変容量素子100の構成を示す平面図および断面図である。
図9の(a)は、実施の形態1に係る他の例の可変容量素子100の構成の平面図を示し、
図9の(b)は、
図9の(a)の(b)-(b)線に対応する位置での断面図を示す。
図9が示すように、この可変容量素子100においては、絶縁層は、第1絶縁体層105と、第2絶縁体層111と、を含んでもよい。つまり、絶縁層は、第1絶縁体層105と、第1絶縁体層105よりも絶縁破壊耐圧の高い第2絶縁体層111と、で形成されてもかまわない。この場合、誘電体層106は、第2半導体層104と、絶縁層として第1絶縁体層105および第2絶縁体層111と、を含む。上記の通り、第1絶縁体層105はSi
3N
4によって構成されている。このため、具体的には、第2絶縁体層111として、Si
3N
4よりも絶縁耐圧の高いSiO
2を用いることで、容量制御電圧の使用範囲を広げることができる。つまりは、可変容量素子100の高耐圧化が可能である。また、第2絶縁体層111として、Si
3N
4とSiO
2とを積層することでも可変容量素子100の高耐圧化が可能である。また、高耐圧なAlNまたはAl
2O
3といった高耐圧材料を第2絶縁体層111として使用しても、高耐圧化の効果が得られる。ここでは、例として、
図9の(b)の断面図に第2絶縁体層111の上に第1絶縁体層105が積層されたものを示す。
【0068】
上記の通り、第1電極107の下面は第1半導体層103の上面との間隔が単調増加するように設けられている。なお、当該間隔が単調増加する程度を示す増加度が一定でなくてもよく、例えば、第1電極107の下面と第1半導体層103の上面との間隔が大きいほど、増加度が小さくなってもよい。このような例について、
図10を用いて、説明する。
図10は、実施の形態1に係る他の例の可変容量素子100の構成を示す平面図および断面図である。
図10の(a)は、実施の形態1に係る他の例の可変容量素子100の構成の平面図を示し、
図10の(b)は、
図10の(a)の(b)-(b)線に対応する位置での断面図を示す。また、増加度とは、断面視したときの、第1電極107の下面と第1絶縁体層105の上面とが接する界面の傾きの大きさでもある。換言すると、増加度とは、第1方向(x軸方向)における単位長さ当たりの当該間隔の増加する程度でもある。例えば、
図10の(a)および(b)に示すように、この可変容量素子100においては、第1絶縁体層105の傾斜は第1電極107の下において第1電極107の端部位置の傾斜角θ130に加えて、第1電極107の中間部での傾斜角Φ133を有していてもかまわない。つまりは、上記の間隔が単調増加する程度を示す増加度が一定でない。
図11は、実施の形態1に係る他の例の可変容量素子100の第1電極107と第2端子108との間の電位差に対する容量値の変化を示したグラフである。より具体的には、
図11は、
図10で説明した可変容量素子100に関するグラフである。この場合、傾斜角θ130>傾斜角Φ133とすることで、
図11に示すように、電圧に対する容量の変化が広い範囲で線形性を維持することができるようになる。また、
図11が示す可変容量素子100では、増加度が一定でなく、具体的には、2つの増加度(つまりは、第1電極107の下面と第1絶縁体層105の上面とが接する界面の傾き)がある。この2つの界面の傾きが接する箇所を傾斜角の変化点とする。より広い範囲で線形性を保つために、さらに第1電極107の中間部における傾斜角の変化点の数が増やされてもよい。なお、
図11における電位差に対する容量値のグラフは、第2電極123に対して垂直方向(z軸方向)の容量成分のみを考慮した簡素化した計算に基づいており、実際の動作とは若干の違いはある。
【0069】
なお、第2半導体層104の厚さが第1方向に沿って単調増加してもよい。
図12は、実施の形態1に係る他の例の可変容量素子100の構成を示す平面図および断面図である。
図12の(a)は、実施の形態1に係る他の例の可変容量素子100の構成の平面図を示し、
図12の(b)は、
図12の(a)の(b)-(b)線に対応する位置での断面図を示す。この可変容量素子100においては、誘電体層106は
図12の(a)および(b)に示すように、第1絶縁体層105を含まず、第2半導体層104のみを含む。この第2半導体層104の厚さが第2端子108に遠い側から第2端子108に近い側へ単調増加してもかまわない。第2半導体層104がAlGaNで構成され、このような第2半導体層104のみを含む誘電体層106が設けられた場合、誘電体層106(つまりは第2半導体層104)の誘電率がSi
3N
4よりも高い材料になるため、単位面積あたりの容量値が高い可変容量素子100を実現することが可能となる。
【0070】
ここで、
図13を用いて、本実施の形態に係る他の例について説明する。
図13は、実施の形態1に係る他の例の可変容量素子100の構成を示す断面図である。この可変容量素子100においては、第1電極107は
図13に示されるように、誘電体層106に直接接触せずに第1保護絶縁膜109の上に形成された領域を含んでいてもかまわない。つまり、第1保護絶縁膜109の一部が、誘電体層106と第1電極107との間に位置していてもかまわない。なお、ここでは、第1電極107のx軸負側および正側の両方に、誘電体層106と第1電極107との間に位置する第1保護絶縁膜109の一部が設けられている。同様に第2端子108は
図13に示されるように、誘電体層106の上に形成された領域を含んでいてもかまわない。可変容量素子100がこの構造となることで、第1電極107と第2電極123との間の電界集中が緩和され、第1電極107と第2電極123との間の耐圧を向上させることが可能となる。また、図示されないが、第2端子108から遠い側の第1電極107の一部は第2半導体層104と接触していてもよい。この場合、第2端子108から近い側の第1電極107の一部は、第1絶縁体層105と接触している。第2端子108から遠い側の第1電極107の一部を第2半導体層104と接触させることで、誘電率の大きい第2半導体層104のみで構成される誘電体層106が設けられるため、より容量値が高い可変容量素子100を実現することが可能となる。
【0071】
さらに、
図14を用いて、本実施の形態に係る他の例について説明する。
図14は、実施の形態1に係る他の例の可変容量素子100の構成を示す平面図および断面図である。
図14の(a)は、実施の形態1に係る他の例の可変容量素子100の構成の平面図を示し、
図14の(b)は、
図14の(a)の(b)-(b)線に対応する位置での断面図を示す。
図14が示すように、この可変容量素子100は、第2保護絶縁膜110の上、かつ、第1電極107と第2端子108との間に設けられたフィールドプレート電極112を有している。より具体的には、フィールドプレート電極112の一部が第1電極107と第2端子108との間に設けられている。また、フィールドプレート電極112の他の一部が、第1電極107の上に設けられている。なお、この可変容量素子100においては、フィールドプレート電極112と第1電極107とは接続されていない。フィールドプレート電極112は
図14に示すように、接地電位と接続している。つまり、フィールドプレート電極112の電位は接地電位に設定されている。
【0072】
さらに、
図15を用いて、本実施の形態に係る他の例について説明する。
図15は、実施の形態1に係る他の例の可変容量素子100の構成を示す平面図および断面図である。
図15の(a)は、実施の形態1に係る他の例の可変容量素子100の構成の平面図を示し、
図15の(b)は、
図15の(a)の(b)-(b)線に対応する位置での断面図を示す。
図15が示すように、この可変容量素子100は、第1電極107と第2端子108との間に設けられたフィールドプレート電極112を有している。より具体的には、フィールドプレート電極112の一部が第1電極107と第2端子108との間に設けられている。また、フィールドプレート電極112は、第1電極107の上と、第2保護絶縁膜110の上と、に設けられている。フィールドプレート電極112は
図15に示すように、第1電極107と接続している。つまり、フィールドプレート電極112は、第1電極107の上面(つまりは第1端子)の全てを覆い、当該上面と接している。このため、フィールドプレート電極112は、第1電極107と同電位に設定されている。
【0073】
さらに、
図16を用いて、本実施の形態に係る他の例について説明する。
図16は、実施の形態1に係る他の例の可変容量素子100の構成を示す平面図および断面図である。
図16の(a)は、実施の形態1に係る他の例の可変容量素子100の構成の平面図を示し、
図16の(b)は、
図16の(a)の(b)-(b)線に対応する位置での断面図を示す。
図16が示す可変容量素子100は、フィールドプレート電極112が第1電極107の上面(つまりは第1端子)の一部を覆い当該上面と接している点を除いて、
図15が示す可変容量素子100と同じ構成を有する。また、
図15および
図16が示す可変容量素子100においては、上記の通りフィールドプレート電極112の一部が第1電極107と第2端子108との間に設けられているが、フィールドプレート電極112のさらに他の一部が分離領域121の上に設けられてもよい。
【0074】
このように、可変容量素子100がフィールドプレート電極112を有してもよい。これが、第1電極107と第2端子108との間の電位差が大きい際に、第1電極107の端部位置で発生する不純物準位への電子トラップの要因となるため、第1電極107の端部位置への電界集中を緩和できる。その結果、可変容量素子100の制御電位の変化に対して、容量値が遅れなく変化することが可能である。
【0075】
以下に、
図17~
図29を参照しながら実施の形態1における可変容量素子100の製造方法を説明する。
図17~
図29は、製造途上における可変容量素子100の構造を示す断面図である。ここでは、
図1、
図2および
図3で示される可変容量素子100の製造方法が説明される。
【0076】
図17に示すように、Siからなる基板101の上に、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を用いて、厚さが2μmでAlNおよびAlGaNの積層構造からなるバッファ層102と、厚さが200nmでi型のGaNからなる第1半導体層103と、厚さが20nmでAl組成比25%のi型のAlGaNからなる第2半導体層104と、が+c面方向(<0001>方向)に順次エピタキシャル成長されて、形成される。
【0077】
第1半導体層103と第2半導体層104とのヘテロ界面の第1半導体層103側には、高濃度の二次元電子ガスが発生し、二次元電子ガス層120が形成される。
【0078】
次に、第1絶縁体層105は第2半導体層104の上にプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)を用いてSixNy(x=3、y=4)を270nm堆積させることで形成される。
【0079】
なお、SiNはSiとNとの組成比の異なるSixNyや、SiO2、Al2O3、Ga2O3、TiO2、Ta2O3、HfSiO4、ZrSiO4、HfO2、ZrO2、SrTiO3、およびBaTiO3といった材料を用いてもよい。また、成膜方法はプラズマCVDに限らず、熱CVDや反応性スパッタ、ALD(Atomic Layer Deposition)といった方法でもよい。
【0080】
第1絶縁体層105が堆積されたことで、第2半導体層104と第1絶縁体層105とからなる誘電体層106が形成される。
【0081】
次に
図18に示すように、分離領域121を形成するためのマスクがフォトレジスト141を用いて形成される。次に、フォトレジスト141をマスクとして、ドライエッチングにて第1絶縁体層105と第2半導体層104と第1半導体層103とバッファ層102との一部を除去することで分離領域121が形成される。
【0082】
また、分離領域121は、エッチングの代わりにHe、B、H、F、およびFeのいずれかを含む分子が、イオン注入装置を用いて第2半導体層104、第1半導体層103、およびバッファ層102の途中まで分布するように注入することにより、形成されてもよい。
【0083】
次に
図19に示すように、レジスト塗布後の露光現像処理、および熱処理によって、第2端子108と間隔を空けて配置される第1電極107の端部位置のうち、第2端子108から遠い側の第1電極107の端部位置から第2端子108に近い側の第1電極107の端部位置にむけて、フォトレジスト142の膜厚が厚くなるように、フォトレジスト142の傾斜形状が形成される。
【0084】
次に、
図20に示すように、フォトレジスト142をマスクとしてドライエッチングが行われることにより、フォトレジスト142の傾斜形状にしたがって第1絶縁体層105がエッチングされ、第1絶縁体層105の傾斜形状が形成される。
【0085】
なお、
図1の(b)に示される傾斜角θ130は、フォトレジスト142自体が形成する傾斜角に加えて、フォトレジスト142と第1絶縁体層105とのエッチングレートの違いによって制御してもよい。また、ドライエッチングに用いられるエッチングガスには炭素、フッ素、アルゴン、および水素のいずれかを含むガスが使用されてもよい。
【0086】
また、フォトレジスト142の傾斜形状は、フォトレジスト142の露光現像後の熱処理の温度の制御により所望の角度を得ることができる。具体的には、熱処理の温度を高くすることによりフォトレジスト142の傾斜角は小さくすることができる。また、フォトレジスト142の膜厚を薄くすることにより、フォトレジスト142の傾斜角は小さくすることができる。
【0087】
次に、
図21に示すように、スパッタにて第1金属層301としてTiN、およびAlを順に堆積し、第1電極107を形成するためのマスクがフォトレジスト143を用いて形成される。
【0088】
次に、
図22に示すように、フォトレジスト143をマスクとしてドライエッチングにてTiN、およびAlが除去されることで、第1電極107は誘電体層106の傾斜形状の上に形成される。つまり、ドライエッチング後に残った第1金属層301が第1電極107となる。
【0089】
なお、第1電極107の形成方法は、第1電極107のパターンのみ開口したフォトレジストに電極材料を蒸着した後に、レジスト未開口部に付着した電極材料と共にフォトレジストを有機薬液や粘着テープで剥離する形成方法でもかまわない。
【0090】
次に、
図23に示すように、第1保護絶縁膜109が堆積される。
【0091】
次に、
図24に示すように、第2端子108が設けられるための開口を形成するためのマスクがフォトレジスト144を用いて形成される。
【0092】
次に、
図25に示すように、フォトレジスト144をマスクとしてドライエッチングにて第1保護絶縁膜109と、第1絶縁体層105と、第2半導体層104と、第1半導体層103と、の一部が除去される。
【0093】
次に、
図26に示すように、スパッタにて第2金属層302としてTi、およびAlを順に堆積し、第2端子108を形成するためのマスクがフォトレジスト145を用いて形成される。
【0094】
次に、
図27に示すように、フォトレジスト145をマスクとしてドライエッチングにてTi、およびAlが除去される。さらにフォトレジスト145が除去されたのち、熱処理にて堆積したTiとAlとを合金化することで、二次元電子ガス層120に対してオーミック接触可能な第2端子108が形成される。
【0095】
なお、第2端子108の形成方法は、第2端子108の形成領域において、第2端子108のパターンを開口したレジストに電極材料を蒸着したのち、レジスト未開口部に付着した電極材料と共にレジストを有機薬液で剥離する形成方法でもかまわない。また、第2半導体層104と第1半導体層103との一部が除去されていなくても、第2端子108は、二次元電子ガス層120とオーミック性の接合が取れる形であればよい。たとえば、Siに代表されるn型不純物を第2端子108の下の半導体層(つまり第1半導体層103および第2半導体層104の両方、または、第2半導体層104)に添加、注入してオーミック性の接合を確保してもよい。また第2端子108に係る金属を熱処理により二次元電子ガス層120の近傍まで拡散させてもよい。
【0096】
次に、
図28に示すように、第2保護絶縁膜110が堆積された後、第1電極107、および第2端子108の上に開口部を形成するためのマスクがフォトレジスト146を用いて形成される。
【0097】
次に、
図29に示すように、フォトレジスト146をマスクとしてドライエッチングにて第1保護絶縁膜109および第2保護絶縁膜110が除去された後、フォトレジスト146が除去される。これにより、本開示の実施の形態1に係る可変容量素子100が製造される。
【0098】
さらに、
図30および31を参照しながら実施の形態1における可変容量素子100の他の製造方法を説明する。
図30および31は、他の製造途上における可変容量素子100の構造を示す断面図である。
図30および
図31に示すように、第1電極107が形成される領域を含まずに開口されたレジスト開口パターンを有するフォトレジスト147が形成され、このレジスト開口パターンに対して、薬液によるウェットエッチングが行われる。レジスト開口パターン外へのサイドエッチングによって、第1絶縁体層105の傾斜形状が形成される。また、ウェットエッチングに用いられる薬液にはフッ化水素やリン酸、硫酸、アンモニア、および過酸化水素水のいずれかを含むものが使用されてもよい。つまり、
図19および
図20で説明した第1絶縁体層105の傾斜形状を形成する方法のかわりに、
図30および31で説明した方法が用いられてもよい。
【0099】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る可変容量素子200について、
図32、
図33、
図34、および
図35を用いて説明する。
図32は、実施の形態2に係る可変容量素子200の構成を示す平面図および断面図である。
図33は、実施の形態2に係る可変容量素子200における、電圧印加時の状態を示す平面図および断面図である。
図34は、実施の形態2に係る可変容量素子200における、電圧印加時の状態を示す平面図および断面図である。
図35は、実施の形態2に係る可変容量素子200の詳細構成を示す断面図である。より具体的には、
図32の(a)は実施の形態2に係る可変容量素子200の構成の平面図を示し、
図32の(b)は
図32の(a)の(b)-(b)線に対応する位置での断面図を示す。
図33の(a)は、実施の形態2に係る可変容量素子200の構成の平面図を示し、
図33の(b)は、
図33の(a)の(b)-(b)線に対応する位置での断面図を示す。
図34の(a)は、実施の形態2に係る可変容量素子200の構成の平面図を示し、
図34の(b)は、
図34の(a)の(b)-(b)線に対応する位置での断面図を示す。さらに、
図33の(a)および(b)と
図34の(a)および(b)とは、
図32の(a)および(b)に示される平面図および断面図において、可変容量素子200に印加する電圧を変動させた時の変化を示した図であり、その印加電圧は
図33が示す可変容量素子200よりも
図34が示す可変容量素子200の方が大きい。なお、
図33の(a)と
図34の(a)とは、
図33の(b)と
図34の(b)とに示される、二次元電子ガス層220の高さ(z軸方向高さ)における平面視の透視図である。
図35は
図32の(b)に示される実施の形態2に係る可変容量素子200をより詳細に記載した一例である。実施の形態2においては、第1方向に沿って、第1電極207の下面は第1半導体層203の上面との間隔が単調増加するように設けられ、さらに、当該間隔が単調増加する程度を示す増加度は一定でない。例えば、第1電極207の下の第1絶縁体層205の形状の単調増加は、不連続な増加である。なお、本実施の形態では、実施の形態1と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0100】
図33の(b)に示すように、可変容量素子200は、基板201と、バッファ層202と、第1半導体層203と、第2半導体層204および絶縁層(ここでは第1絶縁体層205)の積層物からなる誘電体層206と、第1電極207と、第2端子208と、からなる。
【0101】
また、可変容量素子200は、二次元電子ガス層220と、空乏層領域222と、分離領域221と、第1保護絶縁膜209と、第2保護絶縁膜210と、を備える。以下、より詳細に説明する。
【0102】
二次元電子ガス層220は、第1半導体層203の第2半導体層204との界面に設けられている。より具体的には、二次元電子ガス層220は、第2半導体層204と第1半導体層203とのヘテロ界面の第1半導体層203側に設けられている。換言すると、二次元電子ガス層220は、第1半導体層203と第2半導体層204との境界近傍(当該界面から30nm以内)に設けられている。
【0103】
この二次元電子ガス層220には、空乏層領域222が形成される。空乏層領域222は、第1電極207と第2端子208との間に印加される電位差に応じて、第1電極207の下面から生じる電界によって、第2半導体層204、第1半導体層203および二次元電子ガス層220に形成される領域である。なお、
図33の(b)および
図34の(b)においては、空乏層領域222は、破線で囲まれた領域である。
【0104】
この二次元電子ガス層220の一部が第2電極223として機能する。第2電極223は、第1電極207の下の二次元電子ガス層220において、空乏層領域222の伸縮によって、空乏化が起きていない領域である。つまりは、第2電極223は、第1電極207の下の二次元電子ガス層220のうち空乏層領域222ではない領域である。なお、
図33の(a)および
図34の(a)においては、識別のため、二次元電子ガス層220のうち、空乏層領域222でない領域には、ハッチングが付されている。
【0105】
分離領域221は、第1電極207および第2端子208の外側の領域において、第1半導体層203と第2半導体層204とが除去されて、二次元電子ガス層220が設けられていない領域である。
【0106】
第1保護絶縁膜209と第2保護絶縁膜210とは、誘電体層206と第1電極207と第2端子208との上に順次設けられている。
【0107】
また、実施の形態1と同じく、第1電極207の幅224は3.0μm、第1電極207の長さ225は2.0mmであり、第2端子208の幅226は3.0μm、第2端子208の長さ227は2.0mmとする。
【0108】
つまり、実施の形態2に係る可変容量素子200における各構成要素の符号は、実施の形態1に係る可変容量素子100における各構成要素の符号(100番台)を200番台に代えて示されている。
【0109】
本実施の形態においても、第1方向は、第1電極207から第2端子208に向かう方向(x軸正方向)である。換言すると、第1方向は、第1電極207の下面の第2端子208から遠い側の端部位置から第2端子208に近い側の端部位置に向かう方向である。また、第2方向は、基板201の平面視における第1方向に対して直交する方向(y軸方向)である。
【0110】
可変容量素子200においては、第1方向または第2方向に沿って、第1電極207の下面は第1半導体層203の上面との間隔が単調増加するように設けられ、さらに、当該間隔が単調増加する程度を示す増加度は一定でない。つまり例えば、第1電極207の下面と第2半導体層204の下面との距離234は、第1方向、または、第2方向に沿って、階段状に不連続に増加することを特徴とする。なお、ここでは、第1方向に沿って、当該間隔が単調増加する例を示す。
【0111】
第1電極207の下面の誘電体層206の形状は、第2端子208から遠い側の第1電極207の端部位置から第2端子208に近い側の第1電極207の端部位置に向けて、
図32の(b)に示すような不連続な膜厚の増加を示す階段状を備えている。つまりは、第1電極207の下面の形状は、複数の段差面で構成される階段状である。なおこの複数の段差面のそれぞれは、xy平面と平行な面である。階段状の詳細は、以下の通りである。たとえば
図35に示すように、第1電極207の幅224は、第1絶縁体層205の階段状に合わせて6分割した第1幅251、第2幅252、第3幅253、第4幅254、第5幅255および第6幅256で構成されている。ここでは、第1幅251が0.25μm、第2~第5幅252~255はそれぞれ0.50μm、第6幅256が0.25μmとする。また、第1~第6幅251~256は、複数の段差面のそれぞれにおける第1方向(x軸方向)の長さである。
【0112】
また、このような誘電体層206の形状において、
図32の(b)の断面図に示される、第1絶縁体層205の膜厚231および232は、以下の通りである。第2端子208から遠い側の第1電極207の端部位置の下の第1絶縁体層205の膜厚231は、例えば、10nmであり、第2端子208に近い側の第1電極207の端部位置の下の第1絶縁体層205の膜厚232は、例えば、270nmである。
【0113】
ここでは、第1電極207と第2端子208との間に電圧を印加することにより起こる現象について、
図33の(a)および(b)、ならびに
図34の(a)および(b)を用いて説明する。これらの図に示すように、第1電極207と第2端子208との間に印加される電位差に応じて、第1電極207の下面から生じる電界によって、第2半導体層204、第1半導体層203および二次元電子ガス層220に、空乏層領域222が設けられる。本実施の形態において、空乏層領域222の電子濃度は1e
8/cm
3以下である。なお、
図34の方が
図33に比べて印加電圧差分が大きいため、空乏層領域222が広範囲に広がっている。
【0114】
第2電極223は、
図33の(a)および(b)、ならびに
図34の(a)および(b)に示すように、第1電極207の下の空乏層領域222の伸縮によって、空乏化が起きていない第1電極207の下における二次元電子ガス層220の領域である。
図33および
図34においては、第2電極223のx軸方向の長さが両矢印で示されている。前述のように
図34の方が
図33に比べて第1電極207と第2端子208との間の印加電圧差分が大きいため、空乏層領域222が広範囲に広がった結果、第2電極223の面積は小さくなる。
【0115】
以下に、
図36~
図48に示される、本開示における可変容量素子200の製法例の工程毎の断面図を用いて、本開示における可変容量素子200の具体的な製造方法について述べる。
図36~
図48は、製造途上における実施の形態2に係る可変容量素子200の構造を示す断面図である。
【0116】
図36に示すように、Siからなる基板201の上に、有機金属気相成長法を用いて、厚さが2μmでAlNおよびAlGaNの積層構造からなるバッファ層202と、厚さが200nmでi型のGaNからなる第1半導体層203と、厚さが20nmでAl組成比25%のi型のAlGaNからなる第2半導体層204と、が+c面方向(<0001>方向)に順次エピタキシャル成長されて、形成される。
【0117】
第1半導体層203と第2半導体層204とのヘテロ界面の第1半導体層203側には、高濃度の二次元電子ガスが発生し、二次元電子ガス層220が形成される。
【0118】
次に、第1絶縁体層205は第2半導体層204の上にプラズマCVDを用いてSixNyを270nm堆積させることで形成される。
【0119】
第1絶縁体層205が堆積されたことで、第2半導体層204と第1絶縁体層205とからなる誘電体層206が形成される。
【0120】
次に
図36に示すように、分離領域221を形成するためのマスクがフォトレジスト241を用いて形成される。次に、
図37に示すように、フォトレジスト241をマスクとして、ドライエッチングにて第1絶縁体層205と第2半導体層204と第1半導体層203とバッファ層202との一部を除去することで分離領域221が形成される。
【0121】
また、分離領域221はエッチングの代わりにHe、B、H、F、およびFeのいずれかを含む分子が、イオン注入装置を用いて第2半導体層204、第1半導体層203、およびバッファ層202の途中まで分布するように注入することにより、形成されてもよい。
【0122】
次に
図38に示すように、フォトレジスト242をマスクとしてドライエッチングが行われることで、第1絶縁体層205の一部が除去されて1段目の掘り込み形状が形成される。
【0123】
次に、
図39に示すように、先のフォトレジスト242で形成された1段目の掘り込み形状の第2端子208の側を一部保護し、残りをフォトレジスト242と同じ領域を開口するようにフォトレジスト243が形成される。このフォトレジスト243をマスクにドライエッチングすることで、第1絶縁体層205の一部が除去され、2段目の掘り込み形状が形成される。
【0124】
次に、
図40に示すように、先のフォトレジスト243で形成された2段目の掘り込み形状の第2端子208の側を一部保護し、残りをフォトレジスト243と同じ領域を開口するようにフォトレジスト244が形成される。このフォトレジスト244をマスクにドライエッチングすることで、第1絶縁体層205の一部が除去され、3段目の掘り込み形状が形成される。
【0125】
次に、
図41に示すように、先のフォトレジスト244で形成された3段目の掘り込み形状の第2端子208の側を一部保護し、残りをフォトレジスト244と同じ領域を開口するようにフォトレジスト245が形成される。このフォトレジスト245をマスクにドライエッチングすることで、第1絶縁体層205の一部が除去され、4段目の掘り込み形状が形成される。
【0126】
次に、
図42に示すように、先のフォトレジスト245で形成された4段目の掘り込み形状の第2端子208の側を一部保護し、残りをフォトレジスト245と同じ領域を開口するようにフォトレジスト246が形成される。このフォトレジスト246をマスクにドライエッチングすることで、第1絶縁体層205の一部が除去され、5段目の掘り込み形状が形成される。以上により、
図42に示されるような、6段の階段状の不連続な膜厚変化が第1絶縁体層205に形成されることになる。
【0127】
次に、
図43に示すように、スパッタにて第3金属層303としてTiN、およびAlを順に堆積し、第1電極207を形成するためのマスクがフォトレジスト247を用いて形成される。
【0128】
次に、
図44に示すように、フォトレジスト247をマスクとしてドライエッチングにてTiN、およびAlが除去されることで、第1電極207は誘電体層206の階段状の上に形成する。つまり、ドライエッチング後に残った第3金属層303が第1電極207となる。
【0129】
なお、第1電極207の形成方法は、第1電極207のパターンのみ開口したフォトレジストに電極材料を蒸着した後に、レジスト未開口部に付着した電極材料と共にフォトレジストを有機薬液や粘着テープで剥離する形成方法でもかまわない。
【0130】
次に、
図45に示すように、第1保護絶縁膜209が堆積され、第2端子208が設けられるための開口を形成するためのマスクがフォトレジスト248を用いて形成される。フォトレジスト248をマスクとしてドライエッチングにて第1保護絶縁膜209と、第1絶縁体層205と、第2半導体層204と、第1半導体層203と、の一部が除去される。
【0131】
次に、
図46に示すように、スパッタにて第4金属層304として、Ti、およびAlを順に堆積し、第2端子208を形成するためのマスクがフォトレジスト249を用いて形成される。
【0132】
次に、
図47に示すように、フォトレジスト249をマスクとしてドライエッチングにてTi、およびAlが除去される。さらにフォトレジスト249が除去されたのち、熱処理にて堆積したTiとAlとを合金化することで、二次元電子ガス層220に対してオーミック接触可能な第2端子208が形成される。さらに、第2保護絶縁膜210が堆積され、第1電極207と第2端子208とを露出するための開口パターンが、フォトレジスト250で形成される。
【0133】
なお、第2端子208の形成方法は、第2端子208の形成領域において、第2端子208のパターンを開口したレジストに電極材料を蒸着したのち、レジスト未開口部に付着した電極材料と共にレジストを有機薬液で剥離する形成方法でもかまわない。また、第2半導体層204と第1半導体層203との一部が除去されていなくても、第2端子208は、二次元電子ガス層220とオーミック性の接合が取れる形であればよい。たとえば、Siに代表されるn型不純物を第2端子208の下の半導体層(つまり第1半導体層203および第2半導体層204)に添加、注入してオーミック性の接合を確保してもよい。また第2端子208に係る金属を熱処理により二次元電子ガス層220の近傍まで拡散させてもよい。
【0134】
次に、
図48に示すように、フォトレジスト250をマスクとしてドライエッチングにて第1保護絶縁膜209および第2保護絶縁膜210が除去された後、フォトレジスト250が除去される。これにより、本開示の実施の形態2に係る可変容量素子200が製造される。
【0135】
上記の通り、本実施の形態においては、第1方向に沿って、第1電極207の下面は第1半導体層203の上面との間隔が単調増加するように設けられ、さらに、当該間隔が単調増加する程度を示す増加度は一定でない。より具体的には、本実施の形態においては、第1電極207の下面と第2半導体層204の下面との距離234における不連続な階段状の単調増加がある。これにより、第1電極207と第2端子208との間に印加される電位差に応じて、第1電極207の下面から生じる電界によって発生する空乏層領域222が二次元電子ガス層220に到達する面積が変化し、第2電極223の面積が変化する。すなわち、第1電極207と第2端子208との間の電位差の大小に応じて、第2電極223の面積が不連続に変化し、第1電極207と第2電極223との間の容量値が不連続に変化する、可変容量素子200が実現される。
【0136】
また、
図49は、実施の形態2に係る可変容量素子200の第1電極207と第2端子208との間の電位差に対する容量値の変化を示したグラフである。たとえば、
図49に示すように、第1電極207と第2端子208との間の電位差が0V以上40V以下の範囲において、0V以上10V未満で3.8pF、10V以上15V未満で約2.6pF、15V以上20V未満で約1.6pF、20V以上25V未満で約1.1pF、25V以上30V未満で約0.7pF、30V以上35V未満で約0.4pF、35V以上40V以下で約0.1pFの不連続な容量値変化を示す。なお、
図49における電位差に対する容量値のグラフは、第2電極223に対して垂直方向(z軸方向)の容量成分のみを考慮した簡素化した計算に基づいており、実際の動作とは若干の違いはある。
【0137】
上記の本開示による可変容量素子200によれば、第1電極207の下面と第2半導体層204の下面との距離234を、第2端子208に遠い側から第2端子208に近い側への階段状の単調増加とすることで、追加端子による制御を用いず、第1電極207と第2端子208との間の電位差に応じた不連続な容量値変化を得ることが可能となる。
【0138】
また、前述のように第1電極207の下面と第2半導体層204の下面との距離234の第2端子208に遠い側から第2端子208に近い側への階段状の単調増加によって、第1電極207と第2端子208とに印加する電位差に対する、第1電極207と第2電極223との間の容量値の関係が計算できる。このため、容量値の定量的な合せ込みが従来技術に比べて容易となる。
【0139】
また、上記の本開示による可変容量素子200によれば、誘電体層206の階段状の段差相当部分の高さが大きいほど、第2電極223の面積を変化させるために第1電極207と第2端子208との間に大きな電位差が必要となる。なお、段差相当部分の高さとは、例えば、複数の段差面うち1つの段差面とx軸正側に隣接する他の1つの段差面との間のz軸方向の距離の差(高低差)である。したがって、誘電体層206の階段状の各段差相当部分の高さが大きければ、容量値制御の電位が信号振幅や不安定なものであっても、容量値変化を所望の範囲に抑制することが可能となる。本実施の形態で示すように、各段差相当部分の高さが30nm以上500nm以下である場合は、各段差相当部分の高さが大きい場合である。また、各段差相当部分の高さが80nm以上400nm以下であってもよく、150nm以上300nm以下であってもよい。具体的には、
図49に示す本実施の形態の誘電体層206の階段状における電圧に対する容量値の変化に見られるように、5V以上の電位差が容量値の変化に必要となる。そのため、本実施の形態に係る可変容量素子200においては、容量値制御の電位が信号振幅や不安定なものであっても、最大で5V以内の変動であれば制御電圧で設定した容量値から大きく変動することがない。
【0140】
ここで、
図50を用いて、本実施の形態に係る他の例について説明する。
図50は、実施の形態2に係る他の例の可変容量素子200の構成を示す断面図である。
図50が示すように、この可変容量素子200においては、誘電体層206は第1窒化シリコン層と、第1窒化シリコン層の上に設けられ、第1窒化シリコン層より組成比Si/Nが小さい第2窒化シリコン層と、を含んでもよい。より具体的には、誘電体層206は、第1窒化シリコン層、第2窒化シリコン層、第3窒化シリコン層、第4窒化シリコン層、第5窒化シリコン層および第6窒化シリコン層を含む。また、第1窒化シリコン層、第2窒化シリコン層、第3窒化シリコン層、第4窒化シリコン層、第5窒化シリコン層および第6窒化シリコン層の順に、組成比Si/Nが小さくなる。
【0141】
なおここでは、誘電体層206が有する第1絶縁体層205が、
図50に示されるように、組成および密度の異なるSi
xN
yを6層有する。当該6層は、積層され、当該6層の合計膜厚が270nmになるように構成されてもよい。第1絶縁体層205を構成する6層のSi
xN
yは、第2半導体層204の上に直接接触する第1絶縁膜261から順次第2絶縁膜262、第3絶縁膜263、第4絶縁膜264、第5絶縁膜265、第6絶縁膜266と積層される。なお、第1絶縁膜261が第1窒化シリコン層に、第2絶縁膜262が第2窒化シリコン層に、第3絶縁膜263が第3窒化シリコン層に、第4絶縁膜264が第4窒化シリコン層に、第5絶縁膜265が第5窒化シリコン層に、第6絶縁膜266が第6窒化シリコン層に、相当する。第1絶縁膜261~第6絶縁膜266は、第1絶縁体層205の上層になるにつれ、ドライエッチングによるエッチング量が増加することを特徴とする。ドライエッチングによるエッチング量はSi
xN
yのSi組成xおよびN組成yと密度とで制御することができる。例えば、組成比Si/Nが小さいほど、エッチング量が増加する。また、
図50の断面図に示される、第1絶縁体層205を構成する第1絶縁膜261~第6絶縁膜266の膜厚は、第1絶縁膜261が11nm、第2絶縁膜262が43nm、第3絶縁膜263が43nm、第4絶縁膜264が43nm、第5絶縁膜265が43nm、第6絶縁膜266が43nmとする。
【0142】
なお、第1絶縁体層205を構成する絶縁膜の層数は2層以上あればよい。
【0143】
上記の構成にすることで、第1~第6絶縁膜261~266のそれぞれが上層に対するエッチングストッパー層の役割を果たすため、段差形状の高さバラツキを抑制し、制御よく階段状を形成することができるようになる。
【0144】
ここで、
図51を用いて、本実施の形態に係る他の例について説明する。
【0145】
図51は、実施の形態2に係る他の例の可変容量素子200の構成を示す断面図である。
【0146】
この他の例の可変容量素子200においては、第1方向に沿って第1電極207の下面は第1半導体層203の上面との間隔が単調増加するように設けられ、当該間隔が単調増加する程度を示す増加度が一定でない。さらに、当該間隔が大きいほど、増加度が小さくなる。例えば、
図51に示すように、第1絶縁体層205の階段状に合わせて6分割した第1幅251~第6幅256を一定としないようにしてもよい。また、
図51が示すように、ここでは、5つの段差相当部分の高さが設けられているが、この5つの段差相当部分の高さは、互いに等しい。これにより、第1電極207と第2端子208とに印加する電位差に対する、第1電極207と第2電極223との間の容量値の関係が、
図52に示すような関係となる。
図52は、実施の形態2に係る他の例の可変容量素子200の第1電極207と第2端子208との間の電位差に対する容量値の変化を示したグラフである。なお、
図52は、
図51で説明した可変容量素子200に関するグラフである。
図52が示すように、この可変容量素子200においては、第1電極207と第2電極223との間の容量値が不連続に変化し、回路設計がより容易なものとなる。より具体的には、たとえば、印加電圧が10Vより大きく15V未満においては、容量値の変化量が一定(つまりは傾きが一定)となって、回路設計がより容易なものとなる。また、ここでは、上記間隔が単調増加する程度を示す増加度が一定でなく、当該間隔が大きいほど(x軸正側ほど)、増加度が小さくなる。たとえば、第1幅251が0.20μm、第2幅252が0.30μm、第3幅253が0.40μm、第4幅254が0.6μm、第5幅255が0.7μm、第6幅256が0.8μmの場合に、
図52に示す関係が得られる。なお、
図52における電位差に対する容量値のグラフは、第2電極223に対して垂直方向(z軸方向)の容量成分のみを考慮した簡素化した計算に基づいており、実際の動作とは若干の違いはある。
【0147】
ここで、
図53を用いて、本実施の形態に係る他の例について説明する。
【0148】
図53は、実施の形態2に係る他の例の可変容量素子200の構成を示す断面図である。
図53の(a)は、実施の形態2に係る他の例の可変容量素子200の構成の平面図を示し、
図53の(b)は、
図53の(a)の(b)-(b)線に対応する位置での断面図を示す。
【0149】
図53の平面図(a)および断面図(b)に示すように、この他の例の可変容量素子200においては、第1電極207は、2つの階段状の形状を有している。
図53の(b)においては、この2つの階段状の形状が、2つの二点鎖線の矩形の範囲(範囲Aおよび範囲B)内に示されている。つまり、第1絶縁体層205の第1電極207には、2つの階段状の形状が第2端子208と近い側と遠い側とに形成されている。この場合において、第1絶縁体層205の第2端子208と遠い側の階状の形状は、これまで説明してきた可変容量素子200の動作に影響を与えるものではない。
【0150】
さらに、
図54を用いて、本実施の形態の変形例について説明する。
図54は、実施の形態2の変形例に係る可変容量素子200aの構成を示す平面図および断面図である。
図54の(a)は、実施の形態2の変形例に係る可変容量素子200aの構成の平面図を示し、
図54の(b)は、
図54の(a)の(b)-(b)線に対応する位置での断面図を示す。
【0151】
本変形例に係る可変容量素子200aは、第1容量部200bと、第2容量部200cと、第3容量部200dと、第1配線層270と、第2配線層270aと、を有する。
【0152】
第1~第3容量部200b~200dのそれぞれは、下記1点を除いて、
図32で説明した可変容量素子200と同じ構成を有する。具体的に1点とは、第1~第3容量部200b~200dのそれぞれが有する第1電極207の形状が階段状でない点である。
【0153】
なお、1つの容量部が有する第1電極207と第2電極223とを併せて、1組の第1電極207および第2電極223、と記載する場合がある。
【0154】
第1~第3容量部200b~200dは、例えば、第1容量部200bが有する第1電極207から第1容量部200bが有する第2端子208に向かう方向(x軸正方向)である第1方向に、並んでいるがこれに限られない。例えば、第1~第3容量部200b~200dは、例えば、基板201の平面視における第1方向に対して直交する方向(y軸方向)である第2方向に並んでもよい。
【0155】
また、本変形例においては、第1~第3容量部200b~200dは、1つの基板201を共有する。同様に、第1~第3容量部200b~200dは、1つのバッファ層202を共有する。なお、第1~第3容量部200b~200dのいずれにおいても、第2半導体層204の厚みは、一定である。
【0156】
ここで、第1容量部200bが有する第1電極207の下面と第1容量部200bが有する第1半導体層203の上面との間隔を第1間隔とする。また、第2容量部200cが有する第1電極207の下面と第2容量部200cが有する第1半導体層203の上面との間隔を第2間隔とする。さらに、第3容量部200dが有する第1電極207の下面と第3容量部200dが有する第1半導体層203の上面との間隔を第3間隔とする。ここで、さらに、
図54が示すように、第1~第3容量部200b、200cおよび200dにおける第1絶縁体層205の膜厚を、それぞれ膜厚231b、膜厚231c、および膜厚231dとする。本変形例においては、第1間隔は、第2間隔よりも小さく、第2間隔は、第3間隔よりも小さい。つまりは、膜厚231bは、膜厚231cよりも小さく、膜厚231cは、膜厚231dよりも小さい。つまり、本変形例においては、第1絶縁体層205の膜厚の差によって、段差が形成されている。
【0157】
また、本変形例においては、第1配線層270および第2配線層270aは、導電性の材料によって構成される。第1配線層270は、第1容量部200bが有する第1電極207と、第2容量部200cが有する第1電極207と、第3容量部200dが有する第1電極207と、を電気的に接続する。第2配線層270aは、第1容量部200bが有する第2端子208と、第2容量部200cが有する第2端子208と、第3容量部200dが有する第2端子208と、を電気的に接続する。
【0158】
以上説明したように、
図54の(a)(平面図)および(b)断面図に示すように、第1絶縁体層205で形成される段差が設けられている。さらに、1組の第1電極207および第2電極223のみが設けられるだけでなく、1組の第1電極207および第2電極223が複数設けられる。この場合に、第1電極207同士を第1配線層270を用いて、第2電極223同士(第2端子208同士)を第2配線層270aを用いて電気的に接続することで、膜厚が異なる第1絶縁体層205の合成容量として、たとえば
図33及び図34で示した1組の第1電極207および第2電極223における階段状の段差と同じ効果を得ることができる。つまり、本変形例が示す通り、第1間隔が第2間隔よりも小さく、第2間隔が第3間隔よりも小さいことにより、第1配線層270と第2配線層270aとの間に印加される電圧に応じて第1配線層270と第2配線層270aとの間の容量値が変化する可変容量素子200aが実現される。
【0159】
(その他の実施の形態)
以上、本開示に係る可変容量素子について、各実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態に施したものや、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲に含まれる。
【0160】
また、上記の実施の形態は、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本開示に係る可変容量素子は、高速動作が可能でかつ、容量の制御性に優れるため、高速動作が必要な移動体通信機器の整合回路に有用である。
【符号の説明】
【0162】
100、200、200a 可変容量素子
101、201 基板
102、202 バッファ層
103、203 第1半導体層
104、204 第2半導体層
105、205 第1絶縁体層
106、206 誘電体層
107、207 第1電極
108、208 第2端子
109、209 第1保護絶縁膜
110、210 第2保護絶縁膜
111 第2絶縁体層
112 フィールドプレート電極
120、220 二次元電子ガス層
121、221 分離領域
122、222 空乏層領域
123、223 第2電極
124、224 幅
125、225 長さ
126、226 幅
127、227 長さ
130 傾斜角θ
131、132、231、231b、231c、231d、232 膜厚
133 傾斜角Φ
134、234 距離
141、241 フォトレジスト
142、242 フォトレジスト
143、243 フォトレジスト
144、244 フォトレジスト
145、245 フォトレジスト
146、246 フォトレジスト
147、247 フォトレジスト
200b 第1容量部
200c 第2容量部
200d 第3容量部
248 フォトレジスト
249 フォトレジスト
250 フォトレジスト
251 第1幅
252 第2幅
253 第3幅
254 第4幅
255 第5幅
256 第6幅
261 第1絶縁膜
262 第2絶縁膜
263 第3絶縁膜
264 第4絶縁膜
265 第5絶縁膜
266 第6絶縁膜
270 第1配線層
270a 第2配線層
301 第1金属層
302 第2金属層
303 第3金属層
304 第4金属層