(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】接着剤樹脂組成物、及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20240229BHJP
C09J 175/12 20060101ALI20240229BHJP
C09J 133/24 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J175/12
C09J133/24
(21)【出願番号】P 2020125001
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2019152461
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019203672
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石井 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】大宅 徹
(72)【発明者】
【氏名】方田 大遥
(72)【発明者】
【氏名】津 孝之
(72)【発明者】
【氏名】澤口 壽一
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-102741(JP,A)
【文献】特開2021-031529(JP,A)
【文献】特開2021-59709(JP,A)
【文献】特開2017-171735(JP,A)
【文献】特開昭53-064242(JP,A)
【文献】特開2001-040319(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0208014(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 175/04
C09J 175/12
C09J 133/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンユニット(A)と(メタ)アクリルユニット(B)とが連鎖移動剤残基により連結したウレタン・アクリル複合樹脂(C)、架橋剤(D)、及び反応性希釈剤(E)を含有する接着剤樹脂組成物(F)であって、
(メタ)アクリルユニット(B)の水酸基価が5mgKOH/g以上であり、(メタ)アクリルユニット(B)が、分子内に窒素原子を有するエチレン性不飽和単量体(G)及び/又は分子内にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(H)由来の構成単位を有することを特徴とする接着剤樹脂組成物(F)。
【請求項2】
ウレタンユニット(A)と(メタ)アクリルユニット(B)とが、アミノ基を有する連鎖移動剤の残基により連結されてなることを特徴とする請求項1に記載の接着剤樹脂組成物(F)。
【請求項3】
分子内に窒素原子を有するエチレン性不飽和単量体(G)が、(メタ)アクリルアミド基を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の接着剤樹脂組成物(F)。
【請求項4】
ウレタンユニット(A)の含有量が、ウレタン・アクリル複合樹脂(C)100重量部中、40~97重量部であることを特徴とする請求項1~3いずれか1項に記載の接着剤樹脂組成物(F)。
【請求項5】
基材上に、請求項1~4いずれか1項に記載の接着剤樹脂組成物(F)を用いて形成してなる接着剤層を有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタンユニット(A)と(メタ)アクリルユニット(B)とが連鎖移動剤残基により連結したウレタン・アクリル複合樹脂(C)、架橋剤(D)、及び反応性希釈剤(E)を含有する接着剤樹脂組成物(F)であって、(メタ)アクリルユニット(B)の水酸基価が5mgKOH/g以上であり、(メタ)アクリルユニット(B)が、分子内に窒素原子を有するエチレン性不飽和単量体(G)及び/又は分子内にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(H)由来の構成単位を有することを特徴とする接着剤樹脂組成物(F)に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、建材、船舶、航空機等の分野において、樹脂やガラス、鉄、アルミ、ステンレス等の金属、セラミックス等を接着固定するために様々な構造用接着剤が使用されている。近年、自動車や航空機の分野では燃費向上のために軽量化を進めており、プラスチックや繊維強化プラスチックからなる材料(以下、FRPと記す)の使用比率を高め、さらには、金属を鉄からより軽量なアルミニウムに置き換えようとする動きが活発になっており、これらを強固に接合できる接着剤が求められている。さらに作業性や環境負荷低減の観点から、揮発性有機化合物の含まない接着剤が求められている。
【0003】
しかしながら、例えば、アルミニウム等の金属とFRPのような線膨張係数が異なる材料を接着させる場合、製造過程あるいは使用温度環境における温度変化によって生じる材料間の膨張率差により接着剤層に高い応力がかかり、接着剤層の破壊あるいは劣化を促進するという課題がある。
【0004】
この様な課題に対し、例えば特許文献1~3では、金属やFRPへの高い接着性を有するエポキシ化合物に応力緩和を目的に長鎖ポリアミンやナノ分散させたゴム状粒子等を添加する方法が提案されている。しかし、これらの方法では一定の柔軟性を付与できるものの、得られる接着層は依然として硬脆く効果は十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2018-506635号公報
【文献】国際公開第2007/025007号
【文献】特開2015-182248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、揮発性有機化合物を含まず、十分な接着性、柔軟性、及び基材密着性を有する自動車、建材、船舶、航空機等の分野に適した構造用接着剤、及び積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ウレタンユニット(A)と(メタ)アクリルユニット(B)とが連鎖移動剤残基により連結したウレタン・アクリル複合樹脂(C)、架橋剤(D)、及び反応性希釈剤(E)を含有する接着剤樹脂組成物(F)であって、(メタ)アクリルユニット(B)の水酸基価が5mgKOH/g以上であり、(メタ)アクリルユニット(B)が、分子内に窒素原子を有するエチレン性不飽和単量体(G)及び/又は分子内にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(H)由来の構成単位を有することを特徴とする接着剤樹脂組成物(F)に関する。
【0008】
本発明は、ウレタンユニット(A)と(メタ)アクリルユニット(B)とが、アミノ基を有する連鎖移動剤の残基により連結されてなることを特徴とする前記記載の接着剤樹脂組成物(F)に関する。
【0009】
本発明は、分子内に窒素原子を有するエチレン性不飽和単量体(G)が、(メタ)アクリルアミド基を有することを特徴とする前記接着剤樹脂組成物(F)に関する。
【0010】
本発明は、ウレタンユニット(A)の含有量が、ウレタン・アクリル複合樹脂(C)100重量部中、40~97重量部であることを特徴とする前記接着剤樹脂組成物(F)に関する。
【0011】
本発明は、基材上に、前記接着剤樹脂組成物(F)を用いて形成してなる接着剤層を有する積層体に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、揮発性有機化合物を含まず、十分な接着性、柔軟性、及び基材密着性を有する自動車、建材、船舶、航空機等の分野に適した構造用接着剤及び積層体を提供できた。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の接着剤樹脂組成物(F)は、ウレタン・アクリル複合樹脂(C)、架橋剤(D)、及び反応性希釈剤(E)を含有する。
【0014】
<ウレタン・アクリル複合樹脂(C)>
本発明のウレタン・アクリル複合樹脂(C)は、ウレタンユニット(A)と(メタ)アクリルユニット(B)とが連鎖移動剤残基により連結した構造を有しており、かつ(メタ)アクリルユニット(B)が、分子内に窒素原子を有するエチレン性不飽和単量体(G)及び/又は分子内に分子内にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(H)由来の構成単位を有しており、(メタ)アクリルユニット(B)の水酸基価が、5mgKOH/g以上である。
本明細書において「連鎖移動剤残基」とは、連鎖移動剤に由来するものとして識別することのできる複合樹脂の部分を意味する。
【0015】
ウレタン・アクリル複合樹脂(C)の製造方法は限定されないが、好ましくは、次のような方法で製造できる。
まず、ポリオールとイソシアネート基含有化合物を反応させて得られる、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー中のイソシアネート基に、分子内にイソシアネート基と反応しうる官能基とメルカプト基を有する連鎖移動剤を反応させ、両末端に連鎖移動剤残基であるメルカプト基を持つウレタンユニット(A)を合成する。
その後、得られたウレタンユニット(A)中の末端メルカプト基を用いて、分子内に窒素原子を有するエチレン性不飽和単量体(G)及び/又は分子内に分子内にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(H)を含むエチレン性不飽和単量体を、重合開始剤存在下に連鎖移動重合して(メタ)アクリルユニット(B)を形成する。
このようにして、ウレタンユニット(A)と(メタ)アクリルユニット(B)とが連鎖移動剤残基により連結したウレタン・アクリル複合樹脂(C)を得ることができる。
これらの反応は全て溶媒を用いて行ってもよいが、溶媒を用いる場合は反応の途中段階又は反応終了後に減圧下若しくは常圧下で溶媒を除去することが好ましい。
【0016】
<ウレタンユニット(A)>
まず、ウレタン・アクリル複合樹脂(C)のウレタンユニット(A)について以下に述べる。本発明におけるウレタンユニット(A)は、ポリオールとイソシアネート基含有化合物とを、無溶剤又は溶剤中で反応させて形成することができる。
【0017】
[ポリオール]
ウレタンユニット(A)を構成するポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、植物油系ポリオール、その他ポリオールが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、テトラヒドロフラン等の重合体又は共重合体が挙げられ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
また、ポリエーテルポリオールとしては、ヘキサンジオール、メチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオールあるいはこれらの混合物の縮合によるポリエーテルポリオール類等が挙げられる。
【0019】
さらにポリエーテルポリオールとしては、低分子ポリオール、脂肪族アミン化合物類、芳香族アミン化合物類、アルカノールアミン類、ビスフェノール類のような少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物を出発原料として、これに酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、テトラヒドロフラン、若しくはポリオキシテトラメチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させて得られるポリオールが挙げられる。
【0020】
上記2個以上の活性水素基を有する化合物の内、低分子ポリオールとしては、2官能の低分子ポリオール、3官能以上の低分子ポリオールが挙げられる。
【0021】
上記2官能の低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ポリオキシエチレングリコール(付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(付加モル数10以下)、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール、ビスフェノールA、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシ安息香酸が挙げられる。
【0022】
上記3官能以上の低分子ポリオールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,1,1-トリメチロールブタン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,6-ブタントリオール、トリメチロールブテン、トリメチロールペンテン、トリメチロールヘキセン、トリメチロールヘプテン、トリメチロールオクテン、トリメチロールノネン、トリメチロールデセン、トリメチロールウンデセン、トリメチロールドデセン、トリメチロールトリデセン、トリメチロールペンタデセン、トリメチロールヘキサデセン、トリメトロールヘプタデセン、トリメチロールオクタデセン、1,1,1-トリメチロール-2-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-2-エチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-エチル-ヘキサン、トリメチロールヘキセン、1,2,3-オクタントリオール、1,3,7-オクタントリオール、3,7-ジメチル-1,2,3-オクタントリオール、1,1,1-、1,1,1-トリメチロールデカン、1,2,10-デカントリオール、1,1,1-トリメチロールイソヘプタデカン、1,1,1-トリメチロール-sec-ブタン、1,1,1-トリメチロール-tert-ペンタン、1,1,1-トリメチロール-tert-ノナン、1,1,1-トリメチロール-tert-トリデカン、1,1,1-トリメチロール-tert-ヘプタデカン、1,1,1-トリメチロール-2-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-2-エチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-エチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロールイソヘプタデカン、1,2,3,4-ブタンテトラオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ベンゼン-1,3,5-トリオール、ベンゼン-1,2,3-トリオール、スチルベン-3,4’、5-トリオール、シュークロース、イノシトール、ソルビタン、ソルビトール、マンニトール、サッカロース、セルロース、キシリトールが挙げられる。
【0023】
2個以上の活性水素基を有する化合物の内、脂肪族アミン化合物類としては、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパンが挙げられる。芳香族アミン化合物類としては、例えば、トルエンジアミン、ジフェニルメタンー4,4-ジアミンが挙げられる。アルカノールアミン類としては、例えば、エタノールアミン及びジエタノールアミンが挙げられる。ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールFが挙げられる。
【0024】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上述の低分子ポリオールと二塩基酸成分とが縮合反応したポリエステルポリオールが挙げられる。
【0025】
二塩基酸成分としては、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族あるいは芳香族二塩基酸、及びそれらの無水物が挙げられる。
また、二塩基酸成分としては、ε-カプロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類等の環状エステル化合物の開環重合により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0026】
(ポリカーボネートポリオール)
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上述の低分子ポリオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート等のカーボネート化合物との反応により得られるものを挙げることができる。
ジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等が挙げられる。アルキレンカーボネートとしては、エチレンカーボネート等が挙げられる。ジアリールカーボネートとしては、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0027】
(ポリオレフィン系ポリオール)
ポリオレフィン系ポリオールとしては、例えば、水酸基含有ポリブタジエン、水添した水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水添した水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレンが挙げられる。
【0028】
(植物油系ポリオール)
植物油系ポリオールとしては、植物由来のひまし油、ダイマー酸、若しくは大豆油を原料としたポリオールが挙げられる。
【0029】
これらの中でも、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが好ましく、より好ましくはポリエーテルポリオールである。
【0030】
これらのポリオールの重量平均分子量は、好ましくは500以上、5000未満であり、より好ましくは700以上、3,500未満である。
【0031】
さらに、ポリオールは、ウレタン結合濃度の調節や各種官能基導入を目的として上述の低分子ポリオールを併用することができる。
【0032】
[イソシアネート基含有化合物]
ウレタンユニット(A)を構成するイソシアネート基含有化合物としては、例えば、芳香族、脂肪族、脂環式のイソシアネート基含有化合物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
芳香族イソシアネート基含有化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアナネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシレンジイソシアナート、p-テトラメチルキシレンジイソシアナート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネートが挙げられる。
【0034】
脂肪族イソシアネート基含有化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートテトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0035】
脂環式イソシアネート基含有化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、水添キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートが挙げられる。
【0036】
ポリオールとイソシアネート基含有化合物との反応は、好ましくは無溶剤下で、公知のウレタン化反応を用いて行うことができ、イソシアネート基含有化合物を過剰にすることで、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得ることができる。反応時のイソシアネート基と水酸基とのモル比(NCOモル数/OHモル数)は、好ましくは1.05~2.00であり、より好ましくは1.10~1.50である。
ウレタン化反応では、反応性を調整する目的で触媒を用いてもよい。
【0037】
触媒としては、公知の金属系触媒、アミン系触媒が使用できる。金属系触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、オクトエ酸錫、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキソエート)、2-エチルヘキソエート鉛、チタン酸2-エチルヘキシル、チタンエチルアセテート、2-エチルヘキソエート鉄、2-エチルヘキソエートコバルト、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、テトラ-n-ブチル錫等が挙げられる。アミン系触媒としては、テトラメチルブタンジアミン等の3級アミンが挙げられる。これらの触媒の使用量は、好ましくはポリオールに対して0.05~1モル%の範囲である。
【0038】
ウレタンユニット(A)の含有量は、ウレタン・アクリル複合樹脂(C)100重量部中、40~97重量部であり、より好ましくは45~85重量部である。ウレタンユニット(A)を40~97重量部含むと、柔軟性と接着力に優れるため好ましい。
【0039】
<連鎖移動剤>
本発明の連鎖移動剤としては、特に制限されないが、好ましくはメルカプト基を有する連鎖移動剤である。ウレタン・アクリル複合樹脂(C)のウレタンユニット(A)と(メタ)アクリルユニット(B)の連結部位となるメルカプト基を有する連鎖移動剤について以下に述べる。
【0040】
[メルカプト基を有する連鎖移動剤]
メルカプト基を有する連鎖移動剤としては、分子内にイソシアネート基と反応し得る官能基とメルカプト基とをそれぞれ有するものが好適に用いられる。このような連鎖移動剤としてより好ましくは、分子内に1つのアミノ基と1つのメルカプト基を有する化合物である。メルカプト基もイソシアネート基との反応性を有するが、メルカプト基よりも反応性の高いアミノ基を分子内に有することで、アミノ基が優先的にウレタンプレポリマー中のイソシアネート基と反応してウレア結合を形成し、ウレタンプレポリマーの末端に効率よくメルカプト基が導入される。
【0041】
分子内に1つのアミノ基と1つのメルカプト基を有する化合物としては、例えば、2-アミノエタンチオール、3-アミノプロピル-1-チオール、1-アミノプロピル-2-チオール、4-アミノ-1-ブタンチオール等のアミノアルカンチオール類;2-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノール等のアミノベンゼンチオール類;が挙げられる。これらの中でも、2-アミノエタンチオールが特に好ましい。
【0042】
<ウレタンユニット(A)の重量平均分子量>
ウレタンユニット(A)の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましくは3,000~200,000である。重量平均分子量が3,000以上であると柔軟性に優れ、200,000以下であると粘度の調整が容易である。
【0043】
<(メタ)アクリルユニット(B)>
(メタ)アクリルユニット(B)は、分子内に窒素原子を有するエチレン性不飽和単量体(G)由来の構成単位及び/又は分子内にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(H)由来の構成単位を有し、水酸基価が5mgKOH/g以上である。
(メタ)アクリルユニット(B)は、(G)及び(H)以外のその他のエチレン性不飽和単量体由来の構成単位を有していてもよく、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体由来の構成単位を有し、その含有量を調整することで、(メタ)アクリルユニット(B)の水酸基価を5mgKOH/g以上とすることができる。
【0044】
[分子内に窒素原子を有するエチレン性不飽和単量体(G)]
分子内に窒素原子を有するエチレン性不飽和単量体(G)としては、例えば、分子内に1つの重合性不飽和二重結合と1つ以上の窒素原子とを有する化合物を使用することができ、具体的には、アミド基含有エチレン性不飽和単量体、アミノ基含有エチレン性不飽和単量体、シアノ基含有エチレン性不飽和単量体、4級アンモニウムカチオンを含有するエチレン性不飽和単量体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
アミノ基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチルメタクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-アミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アリルアミン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、クロチルアミン、N,N-ジメチルアミノスチレン、N,N-ジエチルアミノスチレン、メチルα-アセトアミノアクリレート、ビニルイミダゾール、N-ビニルチオピロリドン、N-ビニルピロールこれらの塩が挙げられる。
【0046】
シアノ基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアクリレート、ニトロスチレンが挙げられる。
【0047】
アミド基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ペントキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジベンジルアクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N-メチルN-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N-メトキシメチル-N-(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、桂皮酸アミドが挙げられる。
また、アミド基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(メチロール)アクリルアミド、N-メチロール-N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基を有するアミド基含有エチレン性不飽和単量体が挙げられる。
【0048】
4級アンモニウムカチオンを含有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチルアンモニオエチル(メタ)アクリレートクロライド、メチルジエチルアンモニオエチル(メタ)アクリレートブロマイド、トリメチルアンモニオエチル(メタ)アクリルアミドメトサルフェート、ベンジルジエチルアンモニオエチル(メタ)アクリルアミドカーボネート、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、トリメチルアリルアンモニウムクロライドが挙げられる。
【0049】
(メタ)アクリルユニット(B)が分子内に窒素原子を有するエチレン性不飽和単量体(G)由来の構成単位を含む場合、分子内に窒素原子を有するエチレン性不飽和単量体(G)由来の構成単位の含有量は、(メタ)アクリルユニット(B)100重量部中、5~100重量部であることが好ましく、より好ましくは10~70重量部である。分子内に窒素原子を有するエチレン性不飽和単量体(G)由来の構成単位の含有量が5~100重量部であると、接着力と柔軟性、及び密着性に優れるため好ましい。
【0050】
[分子内にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(H)]
分子内にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(H)としては、例えば、分子内に1つの重合性不飽和二重結合と1つ以上のカルボキシ基とを有する化合物を使用することができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
分子内にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(H)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸が挙げられる。
【0052】
(メタ)アクリルユニット(B)が分子内にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(H)由来の構成単位を含む場合、分子内にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(H)由来の構成単位の含有量は、(メタ)アクリルユニット(B)100重量部中、5~50重量部であることが好ましく、より好ましくは10~30重量部である。分子内にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(H)由来の構成単位の含有量が5~50重量部であると、接着力と柔軟性、及び密着性に優れるため好ましい。
【0053】
[その他のエチレン性不飽和単量体]
(水酸基を有するエチレン性不飽和単量体)
上述のとおり、本発明における(メタ)アクリルユニット(B)は、水酸基価が5mgKOH/g以上である。上述の水酸基を有するアミド基含有エチレン性不飽和単量体を用いることで、水酸基価を調整することができるが、水酸基を有するアミド基含有エチレン性不飽和単量体以外の、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体を用いることもできる。
このような水酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、分子内に1つの(メタ)アクリロイル基と1つ以上の水酸基とを有する(メタ)アクリル単量体を使用することができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリルユニット(B)の水酸基価は、好ましくは10~490mgKOH/gの範囲である。
【0054】
水酸基を有する(メタ)アクリル単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、又はこれらモノマーのカプロラクトン付加物(付加モル数は1~5)、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0055】
上記以外のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキルエチレン性不飽和単量体類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキルエチレン性不飽和単量体類;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-オキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環を有するエチレン性不飽和単量体類;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、又はノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート類;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、n-ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルキルエーテル基を有するエチレン性不飽和単量体類;3-(アクリロイルオキシメチル)3-メチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-メチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-エチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-エチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-ブチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-ブチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-ヘキシルオキセタン及び3-(メタクリロイルオキシメチル)3-ヘキシルオキセタン等のオキセタニル基を有するエチレン性不飽和単量体類;スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸ビニル、又は(メタ)アクリル酸アリル等のビニル基を有するエチレン性不飽和単量体類;エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、又はイソブチルビニルエーテル等のエーテル基を有するエチレン性不飽和単量体類;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシブチル、(メタ)アクリル酸-4,5-エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸-6,7-エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシル、ラクトン変性(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシル、ビニルシクロヘキセンオキシド等のエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体類;が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
[重合開始剤]
重合開始剤としては、公知のアゾ系化合物や有機過酸化物を用いることができる。
アゾ系化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカーボキシレート)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、又は2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサエート、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシドが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
重合開始剤は、(メタ)アクリルユニット(B)100重量部に対して、0.001~15重量部の範囲で使用することが好ましい。0.001~15重量部の範囲であると、効果的に連鎖移動重合が進行するため好ましい。
【0058】
[(メタ)アクリルユニット(B)の重量平均分子量]
(メタ)アクリルユニット(B)の重量平均分子量は、特に限定されないが、2,000~200,000であることが好ましい。2,000以上であると接着性に優れ、200,000以下であると粘度の調整が容易である。
【0059】
[ウレタン・アクリル複合樹脂(C)の重量平均分子量]
ウレタン・アクリル複合樹脂(C)の重量平均分子量は、特に限定されないが、5,000~300,000が好ましい。5,000以上であると接着性に優れ、300,000以下であると粘度の調整が容易である。
【0060】
<溶媒>
ウレタン・アクリル複合樹脂(C)を製造する際に使用できる溶媒としては、例えば、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、プロピレンオキシド、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類の他、トルエン、メチルシクロヘキサン、アセトニトリル等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ウレタン・アクリル複合樹脂(C)の製造に使用する溶媒は、反応の途中段階又は反応終了後に減圧下若しくは常圧下で除去することが好ましい。
【0061】
<架橋剤(D)>
架橋剤(D)としては、接着剤樹脂組成物(F)に含まれるウレタン・アクリル複合樹脂(C)、又は後述の反応性希釈剤(E)が有する官能基と反応し得る官能基を有するものが好ましく、より好ましくは、分子内にイソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネートが挙げられ、例えば、上述のイソシアネート基含有化合物、及びこれらのビウレット体、ヌレート体、アダクト体、その他縮合体等の2官能以上のイソシアネート化合物を用いることができる。これらの架橋剤(D)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
上記ビウレット体としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(製品名「スミジュールN-75」、住化バイエルウレタン社製;製品名「デュラネート 24A-100」、旭化成ケミカルズ社製)が挙げられる。
【0063】
上記ヌレート体としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(製品名「スミジュールN-3300」、住化バイエルウレタン社製)、イソホロンジイソシアネートのヌレート体(製品名「デスモジュールZ-4370」、住化バイエルウレタン社製)、トリレンジイソシアネートのヌレート体(製品名「コロネート 2030」、日本ポリウレタン社製)が挙げられる。
【0064】
上記アダクト体としては、上述のイソシアネート基含有化合物と上述の2個以上の活性水素基を有する化合物、上述のイソシアネート基含有化合物と上述のポリオールとを反応させてなる、2官能以上のイソシアネート化合物が挙げられ、例えば、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネートアダクト体(製品名「タケネートD-160N」、三井化学社製)、トリメチロールプロパンのイソホロンジイソシアネートアダクト体(製品名「タケネートD-140N」、三井化学社製)が挙げられる。
【0065】
その他の縮合体としては、上述のイソシアネート基含有化合物の多官能体、カルボジイミド変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体が挙げられ、例えば、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(製品名「PAPI27」、ダウ社製)、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(製品名「タケネートD-165N」、三井化学社製)、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(製品名「Isonate 143L」、ダウ社製)等が挙げられる。
【0066】
中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体等の3官能イソシアネート化合物、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートを使用すると、高い凝集力が得られるため好ましく、より好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0067】
架橋剤(D)中のイソシアネート基と、接着剤樹脂組成物(F)中に含まれる全ての水酸基の合計のモル数の比(イソシアネート基のモル数/水酸基のモル数)は、0.2~5.0であることが好ましく、0.5~3.0であることがより好ましい。架橋剤(D)中のイソシアネート基と、接着剤樹脂組成物(F)に含まれる全ての水酸基の合計のモル数の比が0.2~5.0であると、接着力と柔軟性に優れるため好ましい。
【0068】
<反応性希釈剤(E)>
反応性希釈剤(E)としては、上述の架橋剤(D)との反応性を有する液状物質であることが好ましく、より好ましくは2官能以上の水酸基を有する化合物である。接着剤樹脂組成物(F)が反応性希釈剤(E)を含むことで、より強固な硬化膜となり、優れた接着力を得ることが可能となる。
【0069】
このような反応性希釈剤(E)としては、例えば、上述のポリオール、低分子ポリオール、ポリオールとイソシアネート基含有化合物の縮合物、低分子ポリオールとイソシアネート基含有化合物の縮合物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
【0070】
反応性希釈剤(E)の重量平均分子量は、好ましくは100~7,000であり、より好ましくは200~5,000であり、さらに好ましくは350~3,000である。
【0071】
反応性希釈剤(E)の水酸基価は、特に限定されないが、好ましくは10~1700mgKOH/g、より好ましくは、20~850mgKOH/g、さらに好ましくは、30~450mgKOH/gである。
【0072】
<接着剤樹脂組成物(F)>
本発明の接着剤樹脂組成物(F)は、ウレタン・アクリル複合樹脂(C)と、架橋剤(D)と、及び反応性希釈剤(E)とを公知の方法で混合することで得られる。また、本発明の接着剤樹脂組成物(F)は、さらに、反応促進剤、シランカップリング剤、リン酸又はリン酸誘導体、レベリング剤又は消泡剤、充填剤、噴射剤、可塑剤、超可塑剤、湿潤剤、難燃剤、粘度調整剤、保存剤、安定剤及び着色剤等の公知の添加剤を配合することができる。
【0073】
反応促進剤としては、例えば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等の金属系触媒;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の3級アミン;トリエタノールアミンのような反応性3級アミンが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
反応促進剤の添加量は、接着剤樹脂組成物(F)中のウレタン・アクリル複合樹脂(C)の固形分100重量部に対し、好ましくは0.005~5重量部である。
【0075】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するトリアルコキシシラン;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するトリアルコキシシラン;が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい
【0076】
シランカップリング剤の添加量は、接着剤樹脂組成物(F)中のウレタン・アクリル複合樹脂(C)の固形分100重量部に対し、好ましくは0.05~10重量部である。
【0077】
リン酸又はリン酸誘導体の内、リン酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類が挙げられる。また、リン酸の誘導体としては、上述のリン酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化されたもの等が挙げられる。これらのアルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール、フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノール等の芳香族アルコール等が挙げられる。リン酸又はその誘導体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
リン酸又はその誘導体の添加量は、接着剤樹脂組成物(F)中のウレタン・アクリル複合樹脂(C)の固形分100重量部に対し、好ましくは0.005~5重量部である。
【0079】
レベリング剤又は消泡剤の内、レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチンが挙げられる。
【0080】
消泡剤としては、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物等の公知のものが挙げられる。
【0081】
<積層体>
積層体の形成方法については特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。積層体の形成方法としては、例えば、接着剤樹脂組成物(F)を基材の一方の面に塗布し、次いで、接着剤樹脂組成物が硬化する前に他の基材を重ねて接着剤層を形成し、さらに20~150℃程度の条件で接着剤層を硬化させることで積層体を得ることができる。接着剤層の膜厚は0.1μm~300mmであることが好ましい。
【0082】
本発明の接着剤樹脂組成物(F)は、多くの基材表面の接着に用いることができる。好適な基材としては、以下の例には限定されないが、例えば、アルミニウム等の金属、ポリエチレン、ポリロピレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリカーボネート及びそれらのコポリマー等の熱可塑性ポリマー、加硫ゴム等の熱硬化性ポリマー、尿素-ホルムアルデヒドフォーム、メラミン樹脂、木材、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック及びその他の繊維強化プラスチックが挙げられ、それらの基材において同一、類似、又は異なる基材を接着することができる。
【0083】
本発明の接着剤樹脂組成物(F)を用いて製造された積層体は、接着剤樹脂組成物(F)が十分な接着性、柔軟性、及び基材密着性を有するため、自動車、建材、船舶、航空機等の輸送機器の構造部材(パネル部品、骨格部品、足回り部品など)として有用である。
【実施例】
【0084】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、特に断りのない限り実施例における「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を表す。
【0085】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
実施例中の重量平均分子量は、カラムとしてShodexGPCLF-604(Shodex社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(Shodex社製、GPC-104)で展開溶媒にTHFを用いた時のポリスチレン換算分子量を用いた。
【0086】
<水酸基価(OHV)の測定>
水酸基価(OHV)の測定は以下の通り行った。まず、共栓三角フラスコ中に試料1gを精密に量り採り、ピリジンを100ml加えて溶解した。さらに、アセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、1時間撹拌した後、0.5N-アルコール性水酸化カリウム溶液にて滴定した。水酸基価(mgKOH/g)は次式により求めた。水酸基価は乾燥した試料の数値とした。
水酸基価=[[{(b-a)×F×28.05}/S]/(不揮発分濃度/100)+D]/(α/β)
S:試料の採取量(g)
a:0.5N-アルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.5N-アルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.5N-アルコール性水酸化カリウム溶液のファクター
D:酸価(mgKOH/g)
α:製造時に使用した(メタ)アクリルユニット(B)を構成する
全てのエチレン性不飽和単量体の量(g)
β:製造時に使用した全ての構成成分の量(g)
【0087】
<酸価(AV)の測定>
酸価(AV)の測定は以下の通り行った。まず、共栓三角フラスコ中に試料1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した後、0.1N-アルコール性水酸化カリウム溶液にて滴定した。酸価(mgKOH/g)は次式により求めた。なお、酸価は乾燥した試料の数値とした。
酸価={(5.61×a×F)/S}/(不揮発分濃度/100)
S:試料の採取量(g)
a:0.1N-アルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1N-アルコール性水酸化カリウム溶液のファクター
【0088】
<ウレタン・アクリル複合樹脂の製造>
[製造例1]ウレタン・アクリル複合樹脂(C-1)
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、まずポリオールとしてP-1000(製品名、一般名:2官能ポリプロピレングリコール、水酸基価110、ADEKA社製)100部、イソシアネート基含有化合物としてイソホロンジイソシアネート28.3部、触媒としてチタンジイソプロポキシビズ(エチルアセトアセテート)を0.02部仕込み均一に撹拌した後、窒素雰囲気下110℃で5時間反応させウレタンプレポリマーを得た。
次に80℃まで冷却し、溶媒としてメチルエチルケトンを69.9部、反応性希釈剤としてアデカポリエーテルG-400(製品名、一般名:3官能ポリプロピレングリコール、水酸基価420、ADEKA社製)69.9部、連鎖移動剤として2-アミノエタンチオール2.2部を加え、75℃で2時間反応させウレタンユニットを得た。反応の終点は、FT-IRによりイソシアネート基由来のピーク(2270cm-1付近)の消失により確認した。
続いて分子内に窒素原子を有するエチレン性不飽和単量体(G)としてヒドロキシエチルアクリルアミド6.5部、その他のエチレン性不飽和単量体としてn-ブチルメタクリレート26.1部を加え均一に撹拌した後、窒素雰囲気下で75℃に昇温し、ここに重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.1部を30分毎に13回分割して加え、重合開始剤の添加後にさらに2時間反応させて(メタ)アクリルユニットを形成した。その後、減圧下で溶媒を全て除去することでウレタン・アクリル複合樹脂(C-1)を得た。
得られたウレタン・アクリル複合樹脂(C-1)中の(メタ)アクリルユニット(B)の水酸基価、(メタ)アクリルユニット(B)中の分子内に窒素原子を有するエチレン性不飽和単量体(G)の割合(%)、アクリルユニット(B)中の分子内にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(H)の割合(%)、ウレタンユニット(A)の割合(%)、重量平均分子量は表1の通りである。
【0089】
[製造例2~36]ウレタン・アクリル複合樹脂(C-2~C-36)
表1に示す配合組成に変更した以外は製造例1と同様の操作を行い、ウレタン・アクリル複合樹脂(C-2~C-36)を得た。
得られたウレタン・アクリル複合樹脂(C-2~C-36)中の(メタ)アクリルユニット(B)の水酸基価、(メタ)アクリルユニット(B)中の分子内に窒素原子を有するエチレン性不飽和単量体(G)の割合(%)、アクリルユニット(B)中の分子内にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(H)の割合(%)、ウレタンユニット(A)の割合(%)、重量平均分子量は表1、表2、表7、表8の通りである。
【0090】
<比較用樹脂の製造>
[比較製造例1、2、6、7]ウレタン・アクリル複合樹脂(I-1、I-2、I-6、I-7)
表1に示す配合組成に変更した以外は製造例1と同様の操作を行い、比較用のウレタン・アクリル複合樹脂(I-1、I-2、I-6、I-7)を得た。
得られたウレタン・アクリル複合樹脂(I-1、I-2、I-6、I-7)中の(メタ)アクリルユニット(L)の水酸基価、(メタ)アクリルユニット(L)中の分子内に窒素原子を有するエチレン性不飽和単量体(G)の割合(%)、アクリルユニット(L)中の分子内にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(H)の割合(%)、ウレタンユニット(A)の割合(%)、重量平均分子量は表3、表9の通りである
【0091】
[比較製造例3、8]ウレタン・アクリル複合樹脂(I-3、I-8)
反応性希釈剤を用いなかった以外は、製造例1と同様の操作を行い、比較用のウレタン・アクリル複合樹脂(I-3、I-8)を得た。
得られた比較用ウレタン・アクリル複合樹脂(I-3、I-8)中の(メタ)アクリルユニット(L)の水酸基価、(メタ)アクリルユニット(L)中の分子内に窒素原子を有するエチレン性不飽和単量体(G)の割合(%)、アクリルユニット(L)中の分子内にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(H)の割合(%)、ウレタンユニット(A)の割合(%)、重量平均分子量は表3、表9の通りである。
【0092】
[比較製造例4]ウレタン樹脂(J)
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、ポリオールとしてアデカポリエーテルP-1000(製品名、一般名:2官能ポリプロピレングリコール、水酸基価110、ADEKA社製)100部、イソシアネート基含有化合物としてイソホロンジイソシアネート16.8部、反応促進剤としてチタンジイソプロポキシビズ(エチルアセトアセテート)を0.02部仕込み均一に撹拌した後、窒素雰囲気下110℃で5時間反応させウレタン樹脂を得た。続いて、反応性希釈剤としてアデカポリエーテルG-400(製品名、一般名:3官能ポリプロピレングリコール、水酸基価420、ADEKA社製)50.0部を添加し、十分に撹拌混合して比較用のウレタン樹脂(J)を得た。
得られたウレタン樹脂(J)中の(メタ)アクリルルユニット(B)の割合(%)は0%、重量平均分子量は54,000であった。
【0093】
[比較製造例5]アクリル樹脂(K)
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、アデカポリエーテルG-400(製品名、一般名:3官能ポリプロピレングリコール、水酸基価265、ADEKA社製)5.4部、n-ブチルメタクリレート10.0部、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド2.5部を加え均一に撹拌した後、窒素雰囲気下で75℃に昇温し、ここに重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.1部を30分毎に13回分割して加え、重合開始剤を全て添加した後さらに2時間反応させることで比較用のアクリル樹脂(K)を得た。
得られたアクリル樹脂(K)中の(メタ)アクリルユニット(B)の割合(%)は100%、重量平均分子量は20,000であった。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
表1~3、及び表7~9に記載の化合物を下記に示す。
<ポリオール>
・P-1000;2官能ポリプロピレングリコール、水酸基価110、ADEKA社製
<イソシアネート基含有化合物>
・IPDI:イソホロンジイソシアネート
<反応性希釈剤(E)>
・G-400:3官能ポリプロピレングリコール、水酸基価420、ADEKA社製
・P-400:2官能ポリプロピレングリコール、水酸基価280、ADEKA社製
<分子内に窒素原子を有するエチレン性不飽和単量体(G)>
・AN:アクリロニトリル
・NIPAM:イソプロピルアクリルアミド
・ACMO:アクリロイルモルフォリン
・DM:ジメチルアミノメチルメタクリレート
・HEAA:ヒドロキシエチルアクリルアミド
<分子内にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(H)>
・AA:アクリル酸
・MAA:メタクリル酸
・HO-MS(N):2-メタクリロイロキシエチルコハク酸
<エチレン性不飽和単量体>
・BMA:n-ブチルメタクリレート
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
【0101】
<接着剤樹脂組成物の調製>
[実施例1]
ウレタン・アクリル複合樹脂(C-1)を10部、架橋剤(D)としてポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート4.7部を室温で撹拌混合し、実施例1の接着剤樹脂組成物を調製した。
【0102】
[実施例2~36及び比較例1~11]
表4~表6、表10~13に示す配合組成に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例2~36の接着剤樹脂組成物及び比較例1~11の接着剤樹脂組成物を調製した。なお、比較例4、11については、粘度が高く均一に撹拌混合することが困難であったため、以下の評価を実施しなかった。
【0103】
<接着剤樹脂組成物の評価>
実施例1~36及び比較例1~3、5~10で調製した接着剤樹脂組成物について、次のような試験を行った。判定結果を表4~表6、表10~表13に記載する。
【0104】
[接着力]
各接着剤組成物を、アルミニウム基材(長さ100mm、幅25mm、膜厚2mm)上に幅25mm、長さ10mm、厚み0.1mmとなるよう塗布し、炭素繊維強化プラスチック基材(長さ100mm、幅25mm、膜厚2mm)と貼りあわせ、厚み0.1mmを保持するよう圧着した状態で80℃1日養生させることで、接着力評価用の試験片を得た。得られた試験片を温度25℃、相対湿度50%の条件下、引張り速度1mm/分で引張り試験機を用いてせん断接着力を測定し、以下の評価基準で判定した。実用レベルは△以上である。
(評価基準)
○:せん断接着力が13MPa以上である
△:せん断接着力が10MPa以上、13MPa未満である
×:せん断接着力が10MPa未満である
【0105】
[破断伸び(柔軟性)]
厚さ2mmのシート状型枠に各硬化性組成物を充填し、表面を整えて、80℃1日の養生後、ダンベル型枠で打ち抜き、ダンベル型硬化物を作成した。このダンベル片を用いて、引張速度50mm/分で引張試験を行い、破断時の伸び率(%)を測定し、以下の基準で判定した。実用レベルは△以上である。
(評価基準)
◎:破断時の伸び率が200%以上である
○:破断時の伸び率が150%以上、200%未満である
△:破断時の伸び率が100%以上、150%未満である
×:破断時の伸び率が100%未満である
【0106】
[基材密着性]
上述の接着力を評価した後の試験片について、接着剤樹脂組成物の硬化物若しくは接着剤樹脂組成物が基材から剥がれた面積の割合を観察し、基材密着性について以下の基準で判定した。剥がれた面積は、アルミニウム基材と炭素繊維強化プラスチック基材のうち、剥がれの大きい方の基材の面積を測定した。実用レベルは△以上である。
〇:剥がれる面積が20%未満である
△:剥がれる面積が20%以上、50%未満である
×:剥がれる面積が50%以上である
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
表4~表6、及び表11~表13に記載の化合物を下記に示す。
<架橋剤(D)>
・polymeric MDI:ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート
・HDIビウレット:ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体
【0115】
本発明の接着剤樹脂組成物は、接着力、破断伸び、基材密着性ともに良好な結果が得られた。一方、比較用接着剤樹脂組成物では、接着力、伸張性(柔軟性)、基材密着性の一部又は全てが、実施例よりも劣る結果であった。