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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20240229BHJP
   F24F 11/77 20180101ALI20240229BHJP
   F24F 110/12 20180101ALN20240229BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F11/77
F24F110:12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019178920
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021055905
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 浩介
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌由
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-098009(JP,A)
【文献】特開2017-101874(JP,A)
【文献】国際公開第2018/185923(WO,A1)
【文献】特開平08-303825(JP,A)
【文献】特開2014-070827(JP,A)
【文献】特開平05-256485(JP,A)
【文献】特開2000-111120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 11/00 ー 11/89
F24F 110/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内(R)に外気を強制的に導入する第1機能を有する空調システム(100)であって、
室内機(1a)及び熱交換器(14)を含む室外機(1b)を有し、前記室内(R)の空調を行う空調機(1)と、
前記室内(R)に連通して設けられ、ファン(22,23)による前記室内(R)への外気の導入を行う換気装置(2)と、
前記室内(R)の室内温度を検出する第1の温度センサ(12)と、
前記室外機(1b)に設けられ、外気温度を検出する第2の温度センサ(16)と、
前記換気装置(2)の運転を制御する制御部(26)と、を備え、
前記第2の温度センサ(16)は、前記空調機(1)の制御のために設けられているものであり、かつ、前記室外機(1b)の内部にある熱交換器(14)に設けられておらず、
前記制御部(26)は、
前記換気装置(2)の停止中に、前記第1の温度センサ(12)から室内温度を取得し、前記第2の温度センサ(16)から外気温度を取得し、前記室内温度及び前記外気温度に基づいて所定の条件が成り立つとき、前記第1機能を起動し、前記第2の温度センサ(16)による前記外気温度の取得を前記空調機(1)の運転停止中に行う、空調システム。
【請求項2】
前記制御部(26)は、前記空調機(1)の運転停止から所定時間が経過するまでは、前記第2の温度センサ(16)が検出する外気温度に基づく前記条件の成否判定を回避する請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記制御部(26)は、前記所定時間の経過後、定期的に、前記条件の成否判定を行う、請求項に記載の空調システム。
【請求項4】
記熱交換器(14)に、第3の温度センサ(17)が設けられ、
前記所定時間とは、前記第3の温度センサ(17)の検出する温度と、前記外気温度とが互いに等しくなるまでの時間である、請求項に記載の空調システム。
【請求項5】
前記換気装置(2)には、前記外気の導入に基づく給気温度を検出する第4の温度センサ(24)が設けられ、
前記制御部(26)は、前記所定時間が経過するまでの時間帯においては、前記第4の温度センサ(24)が検出する給気温度を外気温度として、当該外気温度に基づく前記条件の成否判定を行う、請求項に記載の空調システム。
【請求項6】
前記第1の温度センサ(12)は、前記空調機(1)の室内機(1a)又は、前記空調機(1)の操作用のリモコン(13)に設けられている請求項1から請求項のいずれか1項に記載の空調システム。
【請求項7】
前記換気装置(2)は天井埋め込みタイプであり、前記第1の温度センサ(25)は、当該換気装置に設けられている請求項1から請求項のいずれか1項に記載の空調システム。
【請求項8】
前記条件に、前記外気温度と前記室内温度との温度差が所定値以上であることも含める請求項1から請求項のいずれか1項に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外気導入の機能を有する空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビル、公共ビル等の大規模な建物では、空調機と換気装置とを併用する空調システムが用いられる場合がある。このような空調システムでは、外気温が室内温度より低下した場合には、換気装置により外気を室内に強制導入して室内温度を少しでも下げておくことができる。こうすれば、空調負荷を低減することができる。換気装置は例えば建物内の換気用ダクトに接続して設けられるので、換気装置の停止時に外気温度及び室内温度を実際に検出するには、サンプリング(又はセンシング)運転をしてみることが必要になる。
【0003】
特許文献1には、夏期の夜間において、外気温が室内温度よりも低下した場合に、換気装置により外気を室内に強制導入して室内温度を下げ、翌日の空調負荷を低減する、いわゆるナイトパージにおけるサンプリング運転の例が開示されている。サンプリング運転のタイミングは、例えば、一定時間毎に検出された過去の外気温度のログから、外気温度が所定条件にまで低下する時刻を予測し、予測した時刻をサンプリング運転のタイミングとすることができる。そして、そのタイミングにおいて外気温度及び室内温度がナイトパージ実行の条件を満たすと判定される場合には、一定時間、ナイトパージが行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-101874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、予測に基づくタイミングでサンプリング運転を行っても、現実の外気温度の変化によっては、タイミングが適切でない場合も生じる。かといって、単調に一定時間毎にサンプリング運転を行うと、いわゆる「熱帯夜」のように外気温度がほとんど下がらない場合には、結果的に何度も無駄なサンプリング運転をして電力を無駄遣いしたことになる。
【0006】
本開示は、結果的に無駄になるサンプリング運転の電力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の空調システムは、室内に外気を強制的に導入する第1機能を有する空調システムであって、室内機及び室外機を有し、前記室内の空調を行う空調機と、前記室内に連通して設けられ、ファンによる前記室内への外気の導入を行う換気装置と、前記室内の室内温度を検出する第1の温度センサと、前記室外機に設けられ、外気温度を検出する第2の温度センサと、前記換気装置の運転を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記換気装置の停止中に、前記第1の温度センサから室内温度を取得し、前記第2の温度センサから外気温度を取得し、前記室内温度及び前記外気温度に基づいて所定の条件が成り立つとき、前記第1機能を起動する、空調システムである。
【0008】
このように構成された空調システムでは、換気装置のサンプリング(若しくはセンシング)運転は必須ではなくなり、サンプリング運転のためだけに消費する電力を抑制することができる。
【0009】
オプションとして以下の特徴を含む空調システムであってもよい。
【0010】
(2)前記(1)の空調システムにおいて、前記第2の温度センサは、前記空調機の制御のために設けられているものであり、前記制御部は、前記空調機の前記第2の温度センサを利用する。
この場合、外気温度を検出する温度センサを別途設置しなくてもよい。
【0011】
(3)前記(1)又は(2)の空調システムにおいて、前記制御部は、前記空調機の運転停止から所定時間が経過するまでは、前記第2の温度センサが検出する外気温度に基づく前記条件の成否判定を回避する。
この場合、所定時間の経過後に第2の温度センサが検出する外気温度に基づく条件の成否判定を行うことで、適切な判定を行うことができる。
【0012】
(4)前記(3)の空調システムにおいて、前記制御部は、前記所定時間の経過後、定期的に、前記条件の成否判定を行う。
この場合、時間間隔を空けて定期的に条件の成否判定を行うことで、適切な頻度で判定を行うことができる。
【0013】
(5)前記(3)の空調システムにおいて、前記室外機の内部にある熱交換器に、第3の温度センサが設けられ、前記所定時間とは、前記第3の温度センサの検出する温度と、前記外気温度とが互いに等しくなるまでの時間である。
この場合、適切な時期以後に、条件の成否判定を行うことができる。
【0014】
(6)前記(3)の空調システムにおいて、前記換気装置には、前記外気の導入に基づく給気温度を検出する第4の温度センサが設けられ、前記制御部は、前記所定時間が経過するまでの時間帯においては、前記第4の温度センサが検出する給気温度を外気温度として、当該外気温度に基づく前記条件の成否判定を行う。
この場合、所定時間が経過する前であっても、条件の成否判定を行うことができる。
【0015】
(7)前記(1)~(6)のいずれかの空調システムにおいて、前記第1の温度センサは、前記空調機の室内機又は、前記空調機の操作用のリモコンに設けられている。
この場合、室内機又はリモコンに設けられている温度センサを、第1の温度センサとして利用することができる。
【0016】
(8)前記(1)~(6)のいずれかの空調システムにおいて、前記換気装置は天井埋め込みタイプであり、前記第1の温度センサは、当該換気装置に設けられている。
天井埋め込み型の換気装置は室内に近い位置にあるので、換気装置に設けられた第1の温度センサであっても、室内温度を検出することができる。
【0017】
(9)前記(1)から(8)のいずれかの空調システムにおいて、前記条件に、前記外気温度と前記室内温度との温度差が所定値以上であることも含めることができる。
この場合、外気導入による室内冷却の効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の一実施形態に係る空調システムの構成の一例を示す図である。
図2】全熱交換器の概略構造を示す斜視図である。
図3】外気導入を行う場合に、換気装置の制御部が実行するフローチャートの第1例である。
図4】外気導入を行う場合に、換気装置の制御部が実行するフローチャートの第2例である。
図5】外気導入を行う場合に、換気装置の制御部が実行するフローチャートの第3例である。
図6】空調機の運転中に外気導入を行う場合に、換気装置の制御部が実行するフローチャートの第4例である。
図7】天井に嵌め込むようにして比較的簡単に取り付けられるカセット型の換気装置の外観を示す図であり、(a)は側面、(b)は換気装置を下から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
《空調システムの構成》
図1は、本開示の一実施形態に係る空調システム100の構成の一例を示す図である。室内Rは、空調の対象空間Sを有している。室内Rの天井R1及び天井裏には、空調機1の室内機1a、及び、換気装置2が取り付けられている。室内機1aは、内部に、制御部11、及び、室内温度を検出する温度センサ12(第1の温度センサ)を備えている。温度センサ12によって検出される室内温度の情報は、制御部11に送られる。制御部11にはリモコン13が接続されており、ユーザは、リモコン13により、空調機1の運転操作を行うことができる。
【0020】
室内機1aは、冷媒配管3,4を介して、室外機1bと接続されている。室外機1bと室内機1aとは、周知の冷凍サイクル運転を行うことにより、室内Rの空調を行うことができる。なお、室内機1a及び室外機1bのそれぞれの内部での周知の冷媒回路については、ここでは説明を省略し、本開示の主題に関連する部分についてのみ説明する。
【0021】
室外機1bは、熱交換器14、ファン15、外気温度を検出する温度センサ16(第2の温度センサ)、熱交換器14の温度を検出する温度センサ17(第3の温度センサ)、制御部18を備えている。制御部18は、温度センサ16から外気温度の情報を取得し、温度センサ17から熱交換器14の温度の情報を取得する。
【0022】
換気装置2は例えば、内部に、全熱交換器21を介して給気及び排気の双方向へ空気を移動させるための4区画を有している。換気装置2は、給気ファン22、排気ファン23、給気温度を検出する温度センサ24(第4の温度センサ)、排気温度を検出する温度センサ25、及び、制御部26を備えている。給気温度とは、実質的に外気温度である。排気温度とは、実質的に室内温度である。制御部26は、温度センサ24から給気温度の情報を取得し、温度センサ25から排気温度の情報を取得することができる。
【0023】
上記の制御部11,18,26は、コンピュータ(CPU)を含み、コンピュータがソフトウェア(コンピュータプログラム)を実行することで、必要な制御機能を実現する。ソフトウェアは、各制御部11,18,26の記憶装置(図示せず。)に格納される。制御部11,18,26は相互に通信線51,52により接続されており、制御の連携、及び、情報の共有が可能である。
【0024】
なお、図1の構成及び配置は一例に過ぎず、例えば、室内機1aの数は室内Rの対象空間Sの容積に応じて必要数を、使用することができる。また、室内機1a及び換気装置2の設置場所は、天井としたが、天井に限定される訳ではない。室内温度を検出する温度センサ12は、リモコン13の内部に設けることも可能である。
【0025】
換気装置2は、給気ファン22及び排気ファン23を回転させることにより強制的に、室内Rに新鮮な外気OAを供給(給気SA)し、かつ、室内Rの還気RAを屋外へ排出する(排気EA)ことができる。本実施形態における全熱交換器21は、屋外から入ってくる外気OAの流路と、室内Rから出て行く還気RAの流路とが、互いにほぼ直交するように構成された直交型の全熱交換器である。
【0026】
図2は、全熱交換器21の概略構造を示す斜視図である。図中の互いに直交する方向をX,Y,Zとすると、全熱交換器21は、伝熱性及び透湿性を有するX-Y平面で平板状の仕切板21aと、波板状の間隔板21bとの、Z方向への積層体として構成されている。間隔板21bは、通気方向に見て、三角形が横に並んだような端面を有しており、三角形の高さにより流路高さを維持する。
【0027】
間隔板21bは、Y方向に通気可能なものと、X方向に通気可能なものとがZ方向に交互に存在する。これにより、透湿性を有する仕切板21aを挟んで給気側通路(図2における外気OA、給気SA)と排気側通路(図2における還気RA、排気EA)とが形成され、この仕切板21aを介して顕熱と潜熱の交換が行われるようになっている。本実施形態における換気装置2は、給気ファン22により給気され、排気ファン23により排気される第1種換気装置である。
【0028】
なお、換気装置2は、全熱交換器21を有するものとして説明したが、本開示の空調システム100に用いる換気装置2は必ずしも全熱交換器21を必要とする訳ではない。換気装置2は、基本的には、給排気ができ、温度センサ24,25を備えていればよい。
【0029】
《外気導入機能》
次に、換気装置2の外気導入機能について説明する。ここで、「外気導入」とは、外気温度が室内温度よりも低下した際に、換気装置2を運転させて室内に強制的に外気を導入することをいう。外気導入を換気装置2に行わせるか否かは、例えば、ユーザがリモコン13により設定することができる。換気装置2は、空調機1との連動が可能であり、空調機1の空調運転中に換気運転を行うことができる。また、空調機1の運転停止中にも、単独で換気運転を行うことができる。外気導入の一つとして、空調機1の停止後に、夜間の外気導入により翌日の冷房負荷軽減を目的としたナイトパージがある。ナイトパージを行うのは、夏期を中心とした気温の高い時期である。
【0030】
《外気導入のフローチャート:第1例》
図3は、外気導入を行う場合に、換気装置2の制御部26が実行するフローチャートの第1例である。これはシンプルな制御の一例である。
外気導入を行う設定がリモコン13により行われている場合であって、空調機1の停止時には、図3のフローチャートの処理が開始される。なお、外気導入を行う前は、換気装置2は停止しているが、制御部26は機能しており、外気導入を行うかどうかを判断する。まず、制御部26は、空調機1が運転中か否かを判定する(ステップS01)。空調機1が停止中であれば、制御部26は外気温度を検出する(ステップS02)。外気温度は、室外機1bの温度センサ16が検出している。室外機1bは停止しているが、制御部18は機能しており、制御部18が外気温度の情報を保有している。そこで、制御部26は、室外機1bの制御部18から外気温度の情報を取得することにより外気温度を検出する。
【0031】
次に、制御部26は、室内温度を検出する(ステップS03)。室内温度は、室内機1aの温度センサ12が検出している。室内機1aは停止しているが、制御部11は機能しており、制御部11が室内温度の情報を保有している。そこで、制御部26は、室内機1aの制御部11から室内温度の情報を取得することにより室内温度を検出する。
【0032】
ここで制御部26は、外気温度は室内温度より高いか否かを判定する(ステップS04)。この判定が「NO」の場合は、制御部26は、外気導入ができる状態ではないと判定して外気導入を回避する(ステップS06)。その後、制御部26は一定時間待機し(ステップS07)、一定時間経過後に再びステップS01から実行する。
【0033】
ステップS04において外気温度が室内温度より低いときは、制御部26は、外気導入を実行する(ステップS05)。具体的には、給気ファン22及び排気ファン23を回転させ、外気を強制導入し、かつ、室内の空気を強制排出する。
【0034】
以後しばらく、制御部26は、ステップS01~S05を繰り返す。繰り返しに特に高速性は要求されないので、適当な時間待ちのステップを挿入してもよい。そして、ステップS04において外気温度が室内温度以上になると、制御部26は、外気導入を終了する(ステップS06)。具体的には給気ファン22及び排気ファン23を停止させる。その後、制御部26は一定時間待機し(ステップS07)、一定時間経過後に再びステップS01から実行する。
【0035】
《外気導入のフローチャート:第2例》
上記第1例は、処理が簡素であるが、外気温度が比較的高い場合でも頻繁に外気導入を行う可能性がある。そこで、もっと外気冷房効果及び節電も考えたフローチャートの一例として第2例を説明する。
【0036】
図4は、外気導入を行う場合に、換気装置2の制御部26が実行するフローチャートの第2例である。外気導入を行う設定がリモコン13により行われている場合であって、空調機1の停止時には、図4のフローチャートの処理が開始される。まず、制御部26は、空調機1が運転中か否かを判定する(ステップS1)。空調機1が停止中であれば、制御部26は外気温度を検出する(ステップS2)。外気温度は、室外機1bの温度センサ16が検出している。室外機1bは停止しているが、制御部18は機能しており、制御部18が外気温度の情報を保有している。そこで、制御部26は、室外機1bの制御部18から外気温度の情報を取得することにより外気温度を検出する。
【0037】
次に、制御部26は、外気温度が、温度T以下か否かを判定する(ステップS3)。この温度Tとは、外気導入によって一定の冷房効果が期待できる温度であり、地域、場所により適宜定められる。外気温度が、温度Tより高い場合は、制御部26は、ステップS1,S2,S3を繰り返す。繰り返し中に、もし空調機1が運転されたら当該フローチャートの処理は終了となる。
【0038】
ステップS3において、外気温度が、温度T以下になった場合、制御部26は、室内温度を検出する(ステップS4)。室内温度は、室内機1aの温度センサ12が検出している。室内機1aは停止しているが、制御部11は機能しており、制御部11が室内温度の情報を保有している。そこで、制御部26は、室内機1aの制御部11から室内温度の情報を取得することにより室内温度を検出する。
【0039】
続いて制御部26は、外気温度と室内温度との温度差Δtを求める(ステップS5)。温度差Δtとしては、外気導入によって一定の冷房効果が期待できる温度差である。この温度差も適宜定めうる。説明上の一例として数値をあげれば、1℃未満の微差であれば、あまり効果は期待できないとも言えるが、2℃以上あればそれなりに効果は期待できる。
【0040】
そこで、制御部26は、温度差Δtが第1の所定値(例えば2℃)以上か否かを判定する(ステップS6)。ここで、まだ、温度差Δtが第1の所定値に達しないときは、制御部26は、温度差Δtが第2の所定値(例えば1℃)未満か否かを判定する(ステップS8)。温度差Δtが第2の所定値以上であれば、制御部26は、ステップS1に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0041】
もし、ステップS6において温度差Δtが第1の所定値より小さく、かつ、ステップS8において温度差Δtが第2の所定値未満であれば、制御部26は、外気導入ができる状態ではないと判定して外気導入を回避する(ステップS9)。その後、制御部26は一定時間待機し(ステップS10)、一定時間経過後に再びステップS1から実行する。
【0042】
ステップS6において温度差Δtが第1の所定値以上となれば、制御部26は、外気導入を実行する(ステップS7)。具体的には、給気ファン22及び排気ファン23を回転させ、外気を強制導入し、かつ、室内の空気を強制排出する。
【0043】
以後しばらく、制御部26は、ステップS1~S7を繰り返す。繰り返しに特に高速性は要求されないので、適当な時間待ちのステップを挿入してもよい。そして、ステップS6において温度差Δtが第1の所定値より小さくなると、制御部26は、温度差Δtが第2の所定値(例えば1℃)未満か否かを判定する(ステップS8)。温度差Δtが第2の所定値以上であれば、制御部26は、そのまま外気導入を維持し、ステップS1からの処理を繰り返す。
【0044】
ステップS6において温度差Δtが第1の所定値より小さく、かつ、ステップS8において温度差Δtが第2の所定値未満であれば、制御部26は、外気導入を終了する(ステップS9)。具体的には給気ファン22及び排気ファン23を停止させる。その後、制御部26は一定時間待機し(ステップS10)、一定時間経過後に再びステップS1から実行する。
【0045】
なお、図4において、ステップS3は省略し、ステップS2から直接、ステップS4へ進むようにしてもよい。同様に、ステップS8は省略し、ステップS6から直接、ステップS9へ進むようにしてもよい。
【0046】
《外気導入のフローチャート:第3例》
図5は、外気導入を行う場合に、換気装置2の制御部26が実行するフローチャートの第3例である。図4との違いは、ステップS2の処理内容であり、他のステップについては図4と同じであるので説明は省略する。
【0047】
図4におけるステップS2では、外気温度の検出に当たって、室外機1bの温度センサ16を利用した。しかし、空調機1の運転停止から間もない間は、室外機1bの温度が高く、温度センサ16は外気温度を正確に反映していない場合がある。このような場合に、図4のステップS3の判定は「NO」となる可能性が高い。もし、外気温度が急に下がっている場合は、本当は外気導入を実行する条件を満たしているにもかかわらず、温度センサ16が外気温度を正確に反映していないために、外気導入を実行する条件を満たしていないと誤判定する可能性がある。誤判定をしても、特に大きな弊害がある訳ではないが、常に、より正確に外気温度を検出するには、例えば図5のような工夫をすることもできる。
【0048】
図5において、制御部26は、まず、空調機1の停止から所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS21)。この「所定時間」とは、室外機1bが外気温度になじむまでに要する時間である。所定時間が経過するまでは、制御部26は、換気装置2のサンプリング運転を一定時間行う(ステップS22)。具体的には、換気装置2の給気ファン22及び排気ファン23を、又は、給気ファン22のみを、一定時間回転させる。これにより、温度センサ24は、外気温度を検出することができる。そこで、制御部26は、換気装置2の温度センサ24が検出する温度を、外気温度とする(ステップS23)。これにより、実際の外気温度を正確に検出することができる。
【0049】
ステップS21において所定時間が経過した場合は、室外機1bの温度センサ16の検出する温度を外気温度とする(ステップS24)。これ以降は、換気装置2のサンプリング運転を行う必要はない。
【0050】
なお、ステップS21における「所定時間」として、予め室外機1bの温度が外気温度になじむ時間を測定して適切な値を設定することもできるが、例えば、以下のような手法を用いてもよい。室外機1bには熱交換器14の温度センサ17が設けられている。空調機1の停止後、熱交換器14は徐々に外気温度に近づき、最終的には外気温度になる。そこで、温度センサ16が検出する温度が、温度センサ17の検出する温度と等しくなるための時間が、所定時間であるとすることができる。
【0051】
以上、図5の処理内容は、図4のステップS2に置き換える処理内容として説明したが、図3のステップS02に置き換える処理内容とすることもできる。
【0052】
《外気導入のフローチャート:第4例》
図3図4のフローチャートは共に「空調機は運転中か?」というチェックステップを設けているが、空調機1の運転状態にかかわらず(運転中でも)、外気導入を実行しうるようにしてもよい。例えば、換気装置停止中で、空調機運転中に、外気温が室内温度より低くなった場合、空調機1の運転を停止して、換気装置2の運転を開始することができる。空調機運転中の場合、室外機1bのファン15が回転しているため、室外機1bの温度センサ16を用いても、外気温度を正確に検出することができる。夜間の外気導入に限定されることなく、昼間でも、外気を導入する運転を行うことは可能である。
【0053】
図6は、空調機1の運転中に外気導入を行う場合に、換気装置2の制御部26が実行するフローチャートの第4例である。これはシンプルな制御の一例である。
外気導入を行う設定がリモコン13により行われている場合であって、空調機1の運転時には、図6のフローチャートの処理が開始される。なお、外気導入を行う前、換気装置2は停止しているが、制御部26は機能しており、外気導入を行うかどうかを判断する。
【0054】
まず、制御部26は、空調機1が運転中か否かを判定する(ステップST1)。空調機1が運転中でなければ、例えば図3の処理を行えばよい。空調機1が運転中であれば、制御部26は外気温度を検出する(ステップST2)。外気温度は、室外機1bの温度センサ16が検出している。制御部26は、室外機1bの制御部18から外気温度の情報を取得することにより外気温度を検出する。
【0055】
次に、制御部26は、室内温度を検出する(ステップST3)。室内温度は、室内機1aの温度センサ12が検出している。制御部26は、室内機1aの制御部11から室内温度の情報を取得することにより室内温度を検出する。
【0056】
ここで制御部26は、外気温度は室内温度より低いか否かを判定する(ステップST4)。この判定が「NO」の場合は、制御部26は、外気導入ができる状態ではないと判定して外気導入を回避する(ステップST7)。その後、制御部26は一定時間待機し(ステップST8)、一定時間経過後に再びステップST1から実行する。
【0057】
ステップST4において外気温度が室内温度より低いときは、制御部26は、空調機1の運転を停止させ(ステップST5)、外気導入を実行する(ステップST6)。
【0058】
以後しばらく、制御部26は、ステップST1~ST6を繰り返す。繰り返しに特に高速性は要求されないので、適当な時間待ちのステップを挿入してもよい。そして、ステップST4において外気温度が室内温度以上になると、制御部26は、外気導入を終了する(ステップST7)。その後、制御部26は一定時間待機し(ステップST8)、一定時間経過後に再びステップST1から実行する。
【0059】
なお、空調機運転中の場合も、図4のフローチャートと同様に、温度差Δtに基づく判断を組み込んだ処理を行ってもよい。
【0060】
《その他の換気装置》
図7は、天井に嵌め込むようにして比較的簡単に取り付けられるカセット型の換気装置2Cの外観を示す図であり、(a)は側面、(b)は換気装置2Cを下から見た図である。このような換気装置2Cは、図示しない換気ダクトを接続することにより使用することができる。室内側の給気SA、還気RAの開口部2C1は、室内Rの対象空間S(図1)に面しているので、室内温度を検出する温度センサ25Cを、ここに取り付ければ、サンプリング運転をしなくても、温度センサ25Cにより、室内温度を検出することができる。
【0061】
《開示のまとめ》
以上の開示のまとめとして、以下のように一般化して表現することができる。
【0062】
この空調システム100は、室内Rに外気を強制的に導入する第1機能(例えば外気導入)を有する空調システム100であって、室内機及び室外機を有し、室内Rの空調を行う空調機1と、室内Rに連通して設けられ、ファン22,23による室内Rへの外気の導入を行う換気装置2と、室内Rの室内温度を検出する第1の温度センサ12と、室外機1bに設けられ、外気温度を検出する第2の温度センサ16と、換気装置2の運転を制御する制御部26と、を備え、制御部26は、換気装置2の停止中に、第1の温度センサ12から室内温度を取得し、第2の温度センサ16から外気温度を取得し、室内温度及び外気温度に基づいて所定の条件が成り立つとき、第1機能を起動する、空調システムである。
【0063】
このように構成された空調システム100では、運転停止中の室外機1bに設けられている第2の温度センサ16により、制御部26は、外気温度を知ることができる。そして、制御部26は、換気装置2の停止中に、所定の条件が成り立つとき、換気装置2を運転させ外気導入を実行することができる。このようにして外気導入を実行すれば、換気装置2のサンプリング(若しくはセンシング)運転は必須ではなくなり、サンプリング運転のためだけに消費する電力を抑制することができる。
【0064】
以下、オプションとしての構成である。
【0065】
第2の温度センサ16は、空調機1の制御のために設けられているものであり、制御部26は、空調機1の運転停止中の第2の温度センサ16を利用することができる。
この場合、室外機1bに元々設けられている第2の温度センサ16を利用することができるので、外気温度を検出する温度センサを別途設置しなくてもよい。
【0066】
制御部26は、空調機1の運転停止から所定時間が経過するまでは、第2の温度センサ16が検出する外気温度に基づく条件の成否判定を回避してもよい。
空調機1の運転停止直後は、室外機1bの熱交換器14の影響により第2の温度センサ16が検出する外気温度が正確でない場合があるが、時間の経過とともに、熱交換器14自体が外気温度になじんでくる。そこで、運転停止から所定時間が経過するまでは、第2の温度センサ16が検出する外気温度に基づく外気導入の条件の成否判定を回避し、所定時間の経過後に第2の温度センサ16が検出する外気温度に基づく条件の成否判定を行うことで、適切な判定を行うことができる。
【0067】
制御部26は、所定時間の経過後、定期的に、条件の成否判定を行うようにしてもよい。
温度は急激に変化するものではないので、時間間隔を空けて定期的に条件の成否判定を行うことで、適切な頻度で判定を行うことができる。
【0068】
室外機1bの内部にある熱交換器14に、第3の温度センサ17が設けられ、上記の所定時間とは、第3の温度センサ17の検出する温度と、外気温度とが互いに等しくなるまでの時間であるとしてもよい。
この場合、第3の温度センサ17が検出する熱交換器14の温度が、第2の温度センサ16に影響を与えないようになった適切な時期以後に、条件の成否判定を行うことができる。
【0069】
換気装置2には、外気の導入に基づく給気温度を検出する第4の温度センサ24が設けられ、制御部26は、上記の所定時間が経過するまでの時間帯においては、第4の温度センサ24が検出する給気温度を外気温度として、当該外気温度に基づく条件の成否判定を行うようにしてもよい。
この場合、換気装置2により外気を導入して第4の温度センサ24により外気温度を検出すれば、所定時間が経過する前であっても、条件の成否判定を行うことができる。但し、この場合は、特定の時間帯という限定付きではあるが、換気装置2のサンプリング運転が必要である。
【0070】
第1の温度センサ12は、空調機1の室内機1a又は、空調機1の操作用のリモコン13に設けられていてもよい。
この場合、室内機1a又はリモコン13に設けられている温度センサを、第1の温度センサ12として利用することができる。
【0071】
換気装置2Cは天井埋め込みタイプであり、第1の温度センサ25Cは、当該換気装置に設けられていてもよい。
天井埋め込み型の換気装置2Cは室内に近い位置にあるので、換気装置2Cに設けられた第1の温度センサ25Cであっても、換気運転せずに、室内温度を検出することができる。
【0072】
外気導入を実行する条件には、図4のフローチャートに示したように、外気温度と室内温度との温度差が所定値以上であることも含めることができる。この場合、外気導入による室内冷却の効果を高めることができる。
【0073】
なお、上述の実施形態における各例示については、その少なくとも一部を、相互に任意に組み合わせてもよい。
【0074】
以上、実施形態について説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0075】
1:空調機、1a:室内機、1b:室外機、2:換気装置、2C:換気装置、2C1:開口、3:冷媒配管、4:冷媒配管、11:制御部、12:温度センサ、13:リモコン、14:熱交換器、15:ファン、16:温度センサ、17:温度センサ、18:制御部、21:全熱交換器、21a:仕切板、21b:間隔板、22:給気ファン、23:排気ファン、24:温度センサ、25:温度センサ、25C:温度センサ、26:制御部、51:通信線、52:通信線、100:空調システム、R:室内、R1:天井、S:対象空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7