(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】設定支援方法、設定支援プログラム、設定支援装置
(51)【国際特許分類】
B25J 9/22 20060101AFI20240229BHJP
G05B 19/42 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B25J9/22 A
G05B19/42 J
(21)【出願番号】P 2020119004
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】若山 利宏
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/021130(WO,A1)
【文献】特開2007-242054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
G05B 19/18-19/416
G05B 19/42-19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面に産業用ロボットの動作ステップを規定するアイコン画像を表示し、当該産業用ロボットに複数の動作ステップを規定の順序で実行させる動作シーケンスをユーザによる前記アイコン画像の選択操作に基づいて設定する設定支援方法であって、
前記表示画面における仮想3次元空間に前記産業用ロボットを模した疑似画像を表示させる疑似画像表示ステップと、
前記産業用ロボットの動作軌道及び動作制御点の何れかを示すオブジェクト画像を前記仮想3次元空間に表示させるオブジェクト画像表示ステップと、
ユーザにより前記オブジェクト画像の何れかを指定する指定操作が行われた場合に、指定されたオブジェクト画像についてユーザが設定可能な前記動作ステップの候補を特定する候補特定ステップと、
前記候補特定ステップにて特定された前記動作ステップの候補に対応する前記アイコン画像を前記仮想3次元空間に表示させるアイコン画像表示ステップと
を有している設定支援方法。
【請求項2】
前記候補特定ステップにて特定された前記動作ステップの候補の一部を選定する選定ステップを有し、
前記アイコン画像表示ステップは、前記選定ステップにて選定された前記動作ステップを対応する前記アイコン画像を前記仮想3次元空間に表示させる請求項1に記載の設定支援方法。
【請求項3】
前記アイコン画像は、通常アイコン画像であり、
前記アイコン画像表示ステップは、前記選定ステップによる選定から外れた前記動作ステップに対応する複数の前記通常アイコン画像に代えて1の特殊アイコン画像を表示し、
ユーザにより前記特殊アイコン画像が選択された場合には、当該特殊アイコン画像に代えて前記選定から外れた前記動作ステップに対応する前記通常アイコン画像を表示するステップを有している請求項2に記載の設定支援方法。
【請求項4】
過去の選択操作に関する選択情報を記憶する記憶ステップを有し、
前記選定ステップは、記憶されている前記選択情報に基づいて前記選定を行う請求項2又は請求項3に記載の設定支援方法。
【請求項5】
前記アイコン画像表示ステップでは、前記アイコン画像をユーザにより指定された前記オブジェクト画像の近傍に表示し、
前記選択情報に基づいて前記アイコン画像表示ステップにより表示される前記アイコン画像の配列を決定するステップを有している請求項4に記載の設定支援方法。
【請求項6】
ユーザの選択操作によって新たに選択候補が生じる場合には、それら選択候補を示す前記アイコン画像を先の選択操作によって選択された前記アイコン画像に並べて表示する追加表示ステップを有している請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の設定支援方法。
【請求項7】
前記追加表示ステップにより、新たな選択候補を示す前記アイコン画像が追加表示される場合には、先の選択候補となっていた前記アイコン画像のうちユーザにより選択されなかったアイコン画像を非表示とする又はユーザにより選択されなかったアイコン画像の背後が視認容易となるように当該アイコン画像の表示状態を変更するステップを有している請求項6に記載の設定支援装置。
【請求項8】
前記追加表示ステップにて表示される複数の前記アイコン画像の配列方向は、前記アイコン画像表示ステップにより表示される複数の前記アイコン画像の配列方向と同じ方向となるように規定されている請求項6又は請求項7に記載の設定支援装置。
【請求項9】
前記配列方向と直交する方向において、表示されている前記アイコン画像の数が所定数を超えた場合には、表示されている前記アイコン画像のうち最も古いアイコン画像の列を非表示とするステップを有している請求項8に記載の設定支援方法。
【請求項10】
ユーザによる選択操作が完了した場合に前記仮想3次元空間に表示中の前記アイコン画像を非表示とし且つ当該選択操作によって設定された前記動作ステップにより前記産業用ロボットが移動する軌道を前記オブジェクト画像として表示するステップを有している請求項1乃至請求項9のいずれか1つに記載の設定支援方法。
【請求項11】
前記表示画面において前記疑似画像が表示されている前記仮想3次元空間の表示領域とは別の所定表示領域に、それまでの前記選択操作によって作成された制御プログラムを表示するプログラム表示ステップを有し、
前記プログラム表示ステップでは、前記選択操作に基づいて前記所定表示領域に表示されている制御プログラムを更新する請求項1乃至請求項10のいずれか1つに記載の設定支援方法。
【請求項12】
コンピュータにインストールされるプログラムであって、
当該コンピュータに、請求項1乃至請求項11のいずれか1つに記載の各ステップを実行させる設定支援プログラム。
【請求項13】
表示画面に産業用ロボットの動作ステップを規定するアイコン画像を表示し、当該産業用ロボットに複数の動作ステップを規定の順序で実行させる動作シーケンスをユーザによる前記アイコン画像の選択操作に基づいて設定する設定支援装置であって、
前記表示画面における仮想3次元空間に前記産業用ロボットを模した疑似画像を表示させる疑似画像表示手段と、
前記産業用ロボットの動作軌道及び動作制御点の何れかを示すオブジェクト画像を前記仮想3次元空間に表示させるオブジェクト画像表示手段と、
ユーザにより前記オブジェクト画像の何れかを指定する指定操作が行われた場合に、指定されたオブジェクト画像についてユーザが設定可能な前記動作ステップの候補を特定する候補特定手段と、
前記候補特定手段にて特定された前記動作ステップの候補に対応する前記アイコン画像を前記仮想3次元空間に表示させるアイコン画像表示手段と
を有している設定支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設定支援方法、設定支援プログラム、設定支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットの動作シーケンスを設定する方法の1つとして、ロボットの動作を規定したアイコン画像をユーザが選択することで動作シーケンスを設定可能としたもの(制御プログラムを作成可能としたもの)がある(例えば特許文献1参照)。このような方法(所謂ビジュアルプログラミング)によれば、プログラミング言語の知識が乏しいユーザであっても簡易に動作シーケンスを設定することができる。これは、ロボットシステムの普及を図る上で好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、設定ミス(プログラムミス)によって産業用ロボットの動きが意図から外れたものとなることは、産業用ロボットの故障等を招き、ロボットシステムに対する信頼性を低下させる要因となる。表示画面の仮想3次元空間に産業用ロボットの3Dモデルを表示し、動作シーケンス実行時の産業用ロボットの軌道等を当該仮想3次元空間に表示する構成とすれば、実際のロボットの動きを明確にイメージしながら動作シーケンスを設定できる。これは、上述した設定ミスの発生を抑制する上で有利である。しかしながら、仮想3次元空間に産業用ロボットの3Dモデルや軌道等を表示する構成とした場合であっても、動作シーケンスの設定に係る構成には、上述した設定ミスの抑制及び作業効率の向上を図る上で未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、産業用ロボットの動作シーケンスを設定する際の設定ミスを抑制し且つ作業効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段について記載する。
【0007】
第1の手段.表示画面(ディスプレイ41)に産業用ロボット(ロボット20)の動作ステップを規定するアイコン画像を表示し、当該産業用ロボットに複数の動作ステップを規定の順序で実行させる動作シーケンスをユーザによる前記アイコン画像の選択操作に基づいて設定する設定支援方法であって、
前記表示画面における仮想3次元空間に前記産業用ロボットを模した疑似画像(ロボット画像71)を表示させる疑似画像表示ステップと、
前記産業用ロボットの動作軌道及び動作制御点の何れかを示すオブジェクト画像(制御点73及び軌道74)を前記仮想3次元空間に表示させるオブジェクト画像表示ステップと、
ユーザにより前記オブジェクト画像の何れかを指定する指定操作が行われた場合に、指定されたオブジェクト画像についてユーザが設定可能な前記動作ステップの候補を特定する候補特定ステップと、
前記候補特定ステップにて特定された前記動作ステップの候補に対応する前記アイコン画像(操作アイコン80)を前記仮想3次元空間に表示させるアイコン画像表示ステップと
を有している設定支援方法。
【0008】
第1の手段によれば、ユーザが仮想3次元空間に表示されたオブジェクト画像(動作軌道や動作制御点)の何れかを指定した場合には、当該仮想3次元空間にユーザが選択可能となるアイコン画像が表示されることとなる。ユーザは表示されたアイコン画像から次の動作ステップを選択することができるため、仮想3次元空間における疑似画像(3Dモデル)等を見ながら動作シーケンスを設定することができる。このようにしてユーザを支援することにより、産業用ロボットの動作シーケンスを設定する際の設定ミス(プログラムミス)を抑制し且つ作業効率を向上させることができる。
【0009】
なお、本手段に示す構成を「表示画面に産業用ロボットの動作ステップを規定するアイコン画像を表示し、当該産業用ロボットに複数の動作ステップを規定の順序で実行させる動作シーケンスをユーザによる前記アイコン画像の選択操作に基づいて設定する設定支援方法であって、前記表示画面に前記産業用ロボットを模した疑似画像を表示させる疑似画像表示ステップと、前記産業用ロボットの動作軌道及び動作制御点の何れかを示すオブジェクト画像を前記表示画面に表示させるオブジェクト画像表示ステップと、ユーザにより前記オブジェクト画像の何れかを指定する指定操作が行われた場合に、指定されたオブジェクト画像についてユーザが設定可能な前記動作ステップの候補を特定する候補特定ステップと、前記候補特定ステップにて特定された前記動作ステップの候補に対応する前記アイコン画像を前記表示画面に表示させるアイコン画像表示ステップと
を有している設定支援方法。」とすることも可能である。
【0010】
第2の手段.前記候補特定ステップにて特定された前記動作ステップの候補の一部を選定する選定ステップを有し、
前記アイコン画像表示ステップは、前記選定ステップにて選定された前記動作ステップを対応する前記アイコン画像を前記仮想3次元空間に表示させる。
【0011】
仮想3次元空間には、産業用ロボットの疑似画像や軌道等のオブジェクト画像が表示される。この場合、表示されるアイコン画像の数が多くなれば疑似画像やオブジェクト画像の視認性が低下し、上記プログラムミスを抑制する効果が上手く発揮されなくなると懸念される。この点、本手段に示すように、動作ステップの候補の一部を選定し、選定した動作ステップに対応するアイコン画像を表示することにより、過度に多くのアイコン画像が表示されることを抑制し、上述した視認性の低下を抑制できる。
【0012】
第3の手段.前記アイコン画像は、通常アイコン画像であり、
前記アイコン画像表示ステップは、前記選定ステップによる選定から外れた前記動作ステップに対応する複数の前記通常アイコン画像に代えて1の特殊アイコン画像(例えば特殊アイコン80c)を表示し、
ユーザにより前記特殊アイコン画像が選択された場合には、当該特殊アイコン画像に代えて前記選定から外れた前記動作ステップに対応する前記通常アイコン画像を表示するステップを有している。
【0013】
選定外となった動作ステップがある場合には、選定外となった動作ステップに対応する複数の通常アイコン画像に代えて1の特殊アイコン画像が表示される。このため、選定外となった動作ステップが存在することを簡潔に表示することができる。そして、ユーザがこの特殊アイコン画像を選択した場合には選定外となった動作ステップに対応するアイコン画像(通常アイコン画像)が表示される。このような構成とすれば、選定外となった動作ステップを選択して設定することができるため、ユーザの選択肢が狭くなって利便性が低下することを抑制できる。
【0014】
第4の手段.過去の選択操作に関する選択情報を記憶する記憶ステップを有し、
前記選定ステップは、記憶されている前記選択情報に基づいて前記選定を行う。
【0015】
第4の手段に示すように、過去の操作を踏まえて選定を行う構成とすれば、選定結果の確からしさを好適に向上させることができる。
【0016】
第5の手段.前記アイコン画像表示ステップでは、前記アイコン画像をユーザにより指定された前記オブジェクト画像の近傍に表示し、
前記選択情報に基づいて前記アイコン画像表示ステップにより表示される前記アイコン画像の配列を決定するステップを有している。
【0017】
アイコン画像をユーザにより指定されたオブジェクト画像の近傍に表示することで、オブジェクト画像を視界に収めつつ選択操作が可能となる。これは、上記プログラムミスを抑制する上で好ましい。また、過去の操作を踏まえてアイコン画像の配列を決定することにより、配列がランダムとなる構成と比較して利便性の向上が期待できる。
【0018】
例えば、選択情報に基づいて、選択される可能性が高いと判定されたものほど指定されたオブジェクト画像に近くなるような配列とするとよい。
【0019】
第6の手段.ユーザの選択操作によって新たに選択候補が生じる場合には、それら選択候補を示す前記アイコン画像を先の選択操作によって選択された前記アイコン画像に並べて表示する追加表示ステップを有している。
【0020】
選択操作によって新たな(次の)選択肢が発生する場合に、次の選択候補となるアイコン画像を表示する構成によれば、先に表示されていた各アイコン画像から展開される全ての選択肢を予め表示させておく構成と比べて、仮想3次元空間におけるアイコン画像の占有領域の広がりを抑制できる。また、先の選択操作によって選択されたアイコン画像に並べて次の選択候補となるアイコン画像が表示される構成とすることは、ユーザの利便性の向上を図る上で好ましい。
【0021】
第7の手段.前記追加表示ステップにより、新たな選択候補を示す前記アイコン画像が追加表示される場合には、先の選択候補となっていた前記アイコン画像のうちユーザにより選択されなかったアイコン画像を非表示とする又はユーザにより選択されなかったアイコン画像の背後が視認容易となるように当該アイコン画像の表示状態を変更するステップを有している。
【0022】
既に選択候補から外れたアイコン画像を非表示としたり表示状態を変更したりして疑似画像やオブジェクト画像の視認性の低下を抑えることは、上述したプログラムミスを抑制する上で有利である。
【0023】
第8の手段.前記追加表示ステップにて表示される複数の前記アイコン画像の配列方向は、前記アイコン画像表示ステップにより表示される複数の前記アイコン画像の配列方向と同じ方向となるように規定されている。
【0024】
選択操作によってアイコン画像の数が段階的に増える構成においては、アイコン画像の配列方向を揃える構成として、アイコン画像の表示領域をまとめることにより、ユーザにアイコン画像の存在が煩わしいとの印象を与えることを抑制できる。
【0025】
第9の手段.前記配列方向と直交する方向において、表示されている前記アイコン画像の数が所定数を超えた場合には、表示されている前記アイコン画像のうち最も古いアイコン画像の列を非表示とするステップを有している。
【0026】
第8の手段に示したように段階的にアイコン画像の列が増える構成においては、列の数が所定数に達した場合に古いアイコン画像の列を非表示とすることにより、仮想3次元空間にて疑似画像やオブジェクト画像とアイコン画像とを好適に共存させることができる。
【0027】
第10の手段.ユーザによる選択操作が完了した場合に前記仮想3次元空間に表示中の前記アイコン画像を非表示とし且つ当該選択操作によって設定された前記動作ステップにより前記産業用ロボットが移動する軌道を前記オブジェクト画像として表示するステップを有している。
【0028】
第10の手段に示すように、選択完了となった場合にはアイコン画像が非表示とされ且つオブジェクト画像が表示される構成とすることにより、ユーザは動作シーケンスがどのように進むかをオブジェクト画像から容易に把握でき、アイコン画像が非表示となることで制御プログラムの作成状況が不明になることを抑制できる。
【0029】
第11の手段.前記表示画面において前記疑似画像が表示されている前記仮想3次元空間の表示領域とは別の所定表示領域に、それまでの前記選択操作によって作成された制御プログラムを表示するプログラム表示ステップを有し、
前記プログラム表示ステップでは、前記選択操作に基づいて前記所定表示領域に表示されている制御プログラムを更新する。
【0030】
第11の手段に示すように、アイコン画像の選択操作によって作成された制御プログラムが所定表示領域に表示され、この制御プログラムの選択操作によって都度更新される構成とすれば、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0031】
第12の手段.コンピュータにインストールされるプログラムであって、
当該コンピュータに、前記各ステップを実行させる設定支援プログラム。
【0032】
第12の手段に示す設定支援プログラムを用いて動作シーケンスを設定する構成とすれば、産業用ロボットの動作シーケンスを設定する際のプログラムミスを抑制し且つ作業効率を向上させることができる。
【0033】
第13の手段.表示画面に産業用ロボットの動作ステップを規定するアイコン画像を表示し、当該産業用ロボットに複数の動作ステップを規定の順序で実行させる動作シーケンスをユーザによる前記アイコン画像の選択操作に基づいて設定する設定支援装置であって、
前記表示画面における仮想3次元空間に前記産業用ロボットを模した疑似画像を表示させる疑似画像表示手段と、
前記産業用ロボットの動作軌道及び動作制御点の何れかを示すオブジェクト画像を前記仮想3次元空間に表示させるオブジェクト画像表示手段と、
ユーザにより前記オブジェクト画像の何れかを指定する指定操作が行われた場合に、指定されたオブジェクト画像についてユーザが設定可能な前記動作ステップの候補を特定する候補特定手段と、
前記候補特定手段にて特定された前記動作ステップの候補に対応する前記アイコン画像を前記仮想3次元空間に表示させるアイコン画像表示手段と
を有している設定支援装置。
【0034】
第13の手段に示す設定支援装置によれば、産業用ロボットの動作シーケンスを設定する際のプログラムミスを抑制し且つ作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】一実施形態におけるロボットシステムを示す概略図。
【
図4】動作シーケンス設定処理を示すフローチャート。
【
図7】(a)候補の絞り込み処理を示すフローチャート、(b)候補の絞り込みの概要を示す概略図。
【
図8】選択対象と表示される候補との関係を例示した概略図。
【
図9】選択対象と表示される候補との関係を例示した概略図。
【
図12】2Dフローの自動更新の流れを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、機械組立工場などで用いられるロボットシステムに具現化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0037】
図1に示すように、ロボットシステム10は、垂直多関節型の産業用ロボットであるロボット20と、当該ロボット20を制御するコントローラ30とを備え、それらロボット20とコントローラ30とが通信可能となるように接続されてなる。
【0038】
ロボット20は、ロボット本体と当該ロボット本体に付属するサーボアンプとで構成されている。ロボット本体は、台座プレートに固定されるベース21と、ベース21に取り付けられた6軸のアーム22と、アーム22の先端に設けられたハンド23(ツール)とを有している。アーム22は6つの可動部が連結されてなり、関節部毎にそれら可動部を駆動させるモータと、各モータの回転角度を検出するエンコーダとが配設されている。また、アーム22には、ハンド23の開閉用(ツール駆動用)のモータと、当該モータの回転角度を検出するエンコーダとが配設されている。サーボアンプには、コントローラ30と通信を行う通信部と、コントローラ30からの指令やエンコーダにより検出された回転角度等に基づいて各関節用のモータ及びハンド23用のモータの駆動制御等を行う制御部が設けられている。
【0039】
コントローラ30は、ロボット20の動作シーケンスを設定するための設定支援プログラム(設定支援アプリケーション)がインストールされた設定装置40(「設定支援装置」に相当)と通信可能となっている。設定装置40は、ディスプレイ41、キーボード42、マウス43を有するコンピュータであり、ユーザによるキーボード42及びマウス43の操作に基づいて動作シーケンスを設定する。設定された動作シーケンスは設定装置40からコントローラ30に送信され、コントローラ30は受信した動作シーケンスに従ってロボット20を制御する。
【0040】
以下、設定支援プログラムを利用した動作シーケンスの設定に係る構成について説明する。
【0041】
設定装置40においては、上記設定支援プログラムの起動操作に基づいて、ディスプレイ41に設定支援用の画面が表示されることとなる(「表示画面」に相当)。この画面は、
図2に示すように左右に分割されており、画面の左側部分は2D表示領域60、画面の右側部分は3D表示領域70となっている。
【0042】
2D表示領域60は、ロボット20の動作ステップを規定する制御ブロック、プログラム作成補助用の補助ブロック、ブロック操作用の操作ボタン、プログラム操作用の操作ボタン等の各種アイコンがリストアップされたブロックパレット61と、ロボット20の制御プログラムを作成するためのスクリプトエリア62(作成領域)とで構成されている。本実施形態では、2D表示領域60のスクリプトエリア62が「所定表示領域」に相当する。
【0043】
ユーザは、上記マウス43に連動するカーソルCを操作してブロックパレット61に表示されているブロックを選択し、選択したブロックをスクリプトエリア62へドラッグ&ドロップさせることで当該スクリプトエリア62に配置し、配置したブロックをスクリプトエリア62にて所定方向に並ぶようにして配列することによりロボット20の動作シーケンスを設定する。つまり、ロボット20の動作シーケンスは、スクリプトエリア62に配置されたブロックの種類や配列等によって規定される。言い換えれば、スクリプトエリア62に配置されたブロックの種類や配列等によってロボット20の制御プログラムが構築される。このような方法(所謂ビジュアルプログラミング)によれば、プログラミング言語の知識が乏しいユーザであっても簡易に動作シーケンスを設定することができる。
【0044】
なお、設定装置40によってユーザによる制御プログラムの作成を支援する点に鑑みれば当該設定装置40を制御プログラムの作成を支援する「作成支援装置」、設定支援プログラムを作成支援プログラム(作成支援アプリケーション)ということもできる。
【0045】
ここで、2D表示領域60において動作シーケンスの設定(プログラミング)に使用される主たるアイコンの機能(役割り)について補足説明する。
【0046】
移動制御ブロック65は、ロボット20のアーム22の移動を規定する制御ブロックである。ユーザは、移動制御ブロック65をスクリプトエリア62に配置した後、当該移動制御ブロック65の詳細設定メニュー(プロパティ)から目標位置、移動速度、軌道等の各種情報を個別に指定可能となっている。
【0047】
ハンド制御ブロック66は、ロボット20のハンド23の動作を規定する制御ブロックである。ユーザは、ハンド制御ブロック66をスクリプトエリア62に配置した後、当該ハンド制御ブロック66の詳細設定メニュー(プロパティ)からハンド23の開/閉を指定可能となっている。
【0048】
分岐形成ブロック67は、動作シーケンスの分岐を規定する制御ブロックである。ユーザは、分岐形成ブロック67をスクリプトエリア62に配置した後、当該分岐形成ブロック67の詳細設定メニュー(プロパティ)から分岐条件を指定可能となっている。
【0049】
なお、スクリプトエリア62においては、これらの制御ブロックが連結された状態で上下に並べて配置されることにより、上側の制御ブロックから下側の制御ブロックへ順に動作ステップが進むように動作シーケンスが設定される構成となっている。
【0050】
実行ボタン68は、CPU45にユーザが作成した制御プログラム(動作シーケンス)のコンパイル処理を実行させるための操作ボタンである。ここで、3D表示領域70について補足説明する。
図2に示すように、3D表示領域70には仮想3次元空間75を示すグリッド線が表示されており、この仮想3次元空間75にはロボット20を模した3Dモデルであるロボット画像71(「疑似画像」に相当)と、ワークを模した3Dモデルであるワーク画像72と、ロボット20の動作制御点や動作軌道等を示す制御点73及び軌道74等のオブジェクト画像とが表示される。仮想3次元空間75に表示されるロボット画像71等の向きや大きさについてはユーザの表示変更操作によって任意に変更可能となっている。上記コンパイル処理が完了することにより、当該動作シーケンスに基づいて3D表示領域70のロボット画像71を動画表示(動作シミュレーション表示)させたり、ロボット20を動作させたりすることが可能となる。
【0051】
ここで、動作シーケンスの設定ミス(ユーザのプログラムミス)によってロボット20の動きがユーザの意図から外れたものとなることは、ロボット20の故障等を招き、ロボットシステム10に対する信頼性を低下させる要因となり得る。この点、制御ブロックを配列することで動作シーケンスを設定可能な2D表示領域60と、ロボット画像71やワーク画像72が表示される3D表示領域70とを併用し、動作シーケンス実行時の産業用ロボットの軌道等を当該仮想3次元空間75に表示する構成とすれば、ロボット20の実際の動きを明確にイメージしながら動作シーケンスを設定できる。これは、上述した設定ミスの発生を抑制する上で有利である。他方で、2D表示領域60と3D表示領域70とで可能な作業に大きな違いが生じることは、ユーザの目線の移動量が増える等して設定装置40の利便性の向上を図る上で妨げになると想定される。本実施形態では、3D表示領域70を併用する上で、上述した設定ミスの抑制及び作業効率の向上を実現するための工夫がされていることを特徴の1つとしている。以下、
図3~
図6を参照して、当該工夫について説明する。
図3~
図6は、設定装置40のCPU45により定期処理の一環として実行される設定支援用処理の一部を示すフローチャートである。
【0052】
図3に示すように、設定支援用処理に、2D表示領域60及び3D表示領域70においてロボット20の制御点73を作成(準備)するための制御点作成用処理(ステップS101)と、上述したビジュアルプログラミングによりロボット20の動作シーケンスを設定する動作シーケンス設定処理(ステップS102)と、設定した動作シーケンスによるロボット20の動作を確認する動作確認処理(ステップS103)とを有している。
【0053】
動作シーケンス設定処理については、上記動作確認処理による動作確認中ではない場合(ステップS201:NO)に実行される処理であり、2D表示領域60におけるユーザの操作(制御ブロックの配列操作等)に基づいて動作シーケンスの各動作ステップを設定する2D用設定処理(ステップS202)と、3D表示領域70におけるユーザの操作に基づいて動作シーケンスの各動作ステップを設定する3D用設定処理(ステップS203)とに大別される。
【0054】
本実施形態においては、3D表示領域70においても動作シーケンスの設定が支援される構成となっているが、この支援に関しては過去に動作シーケンスを設定した際のユーザの操作実績が反映される構成となっている。具体的には、設定装置40のRAM47(詳しくはライブラリ)には、設定済みの動作シーケンスや過去に設定されていた動作シーケンスが記憶されており、それらの記憶は上記コンパイル処理を契機として実行される構成となっている。そこで以下、
図5を参照してステップS103の動作確認処理を説明した後に、
図6を参照して3D用設定処理について説明する。
【0055】
図5に示すように、動作確認処理においては先ず、ステップS301にて上述したロボット画像71の動画表示(動作シミュレーション表示)を行っている最中であるか否かを判定する。ステップS301にて否定判定をした場合にはステップS302に進む。ステップS302では、コンパイルを実行している最中であるか否かを判定する。ステップS302にて否定判定をした場合には、ステップS303に進む。ステップS303では、実行ボタン68が操作(実行操作)されたか否かを判定する。ステップS303にて否定判定をした場合にはそのまま本動作確認処理を終了する。ステップS303にて肯定判定をした場合には、ステップS304にてコンパイル処理を実行した後、本動作確認処理を終了する。
【0056】
ステップS302の説明に戻り、当該ステップS302にて肯定判定をした場合には、ステップS305に進む。ステップS305ではコンパイルが完了したか否かを判定する。ステップS305にて否定判定をした場合には、そのまま本動作確認処理を終了する。ステップS305にて肯定判定をした場合にはステップS306に進む。ステップS306では動画表示開始処理を実行する。これにより、仮想3次元空間75に表示されているロボット画像71の動画表示(動作シミュレーション表示)が開始されることとなる。
【0057】
続くステップS307では、動作シーケンスの設定情報蓄積処理を実行する。具体的には、今回コンパイルの対象となった動作シーケンス(制御プログラム)をRAM47のライブラリに記憶する処理を行う。
【0058】
ステップS301の説明に戻り、当該ステップS301にて肯定判定をした場合、すなわち動画表示中である場合にはステップS308に進む。ステップS308ではブロックパレット61に表示されている停止ボタンが操作(停止操作)されたか否かを判定する。ステップS308にて否定判定をした場合にはそのまま本動作確認処理を終了する。ステップS308にて肯定判定をした場合には、ステップS309にて動画表示終了処理を実行した後、本動作確認処理を終了する。動画表示終了処理が実行されることで、2D表示領域60及び3D表示領域70における動作シーケンスの設定操作の規制が解除されることとなる。
【0059】
次に、
図6を参照して3D用設定処理について説明する。3D用設定処理においては先ず、ステップS401にて3D表示領域70において動作シーケンスの設定操作が行われている最中であるか否か、すなわちユーザが3D表示領域70で作業中(3D編集中)であるか否かを判定する。ステップS401にて否定判定をした場合にはステップS402に進む。ステップS402では、仮想3次元空間75に表示されているオブジェクト画像(例えば制御点73、軌道74)の何れかを指定する指定操作が行われたか否かを判定する。
【0060】
具体的には、仮想3次元空間75にオブジェクト画像を表示する場合には、オブジェクト画像毎に指定操作用の判定エリアが設定されることとなる。例えば、制御点73については当該制御点73を含むようにして円状の判定エリア(
図8の判定エリアE2参照)が設定され、軌道74については当該軌道74を含むようにして円状の判定エリア(
図7の判定エリアE1参照)が設定される。このようにして設定されている判定エリアへカーソルCが移動することにより、当該判定エリアに対応するオブジェクト画像が指定されたと判定する。この指定操作が行われていないと判定した場合にはステップS402にて否定判定をしてそのまま本3D用設定処理を終了する。この指定操作が行われていると判定した場合にはステップS403に進む。
【0061】
ステップS403では、メニュー表示用の候補の絞り込み処理を行う。ここで、
図7を参照して当該絞り込み処理について説明する。
【0062】
図7(a)に示すように、絞り込み処理においては先ず、指定されたオブジェクトについてユーザが設定可能な動作ステップの候補を特定する(ステップS501)。つまり、ステップS501においては、操作が不可となるものについてはユーザに提示するメニュー表示の候補から除外する。ステップS501にて特定した候補の数nが基準数α(本実施形態では2)未満である場合には、ステップS502にて否定判定をしてそのまま本絞り込み処理を終了する。ステップS501にて特定した候補の数nが基準数α以上である場合には、ステップS502にて肯定判定をしてステップS503に進む。
【0063】
詳細については後述するが、本実施形態においては動作ステップに対応するアイコン画像であるメニューアイコン80の表示態様として、当該メニューアイコン80を仮想3次元空間75にそのまま表示する通常表示態様(通常表示)と、各種動作ステップに対応した複数のメニューアイコン80を1のメニューアイコン80(特殊アイコン又は集約アイコン)に集約して仮想3次元空間75に表示する特殊表示態様(特殊表示)とが設けられている。提示するメニューアイコン80が通常表示及び特殊表示の何れの対象となるかについては、RAM47のライブラリに記憶されている過去の実績(動作シーケンスやユーザの操作の実績)を参照して決定される構成となっている。
【0064】
具体的には、ステップS503において、RAM47のライブラリに記憶されている過去の実績の中から、同一又は類似となる動作シーケンスの情報や指定されたオブジェクトと同一又は類似となるオブジェクトが指定された際の情報を検索(抽出)する。ステップS503の検索により抽出されたサンプルの数mが所定数β(本実施形態では2)未満である場合、すなわちサンプルが十分に確保されていない場合には、ステップS504にて否定判定をしてステップS505に進む。本実施形態では各種動作ステップ(アイコン)の表示の優先順が予め定められており、ステップS505では当該優先順に従って通常表示の候補を選定する。この選定から外れたものについては上記特殊表示の対象となる。
【0065】
ステップS503の検索により抽出されたサンプルの数mが所定数β(本実施形態では2)以上である場合、すなわちサンプルが十分に確保されている場合には、ステップS504にて肯定判定をしてステップS506に進む。ステップS506では、ステップS503にて抽出されたサンプルを参照し、各候補についてユーザにより選択された回数を対比し、当該回数が多いものから順に2つの候補を通常表示の対象とする。この選定から外れたものについては上記特殊表示の対象となる。なお、上記回数が同一となっているものについては上記ステップS505と同様に、上記優先順に従って通常表示の候補を選定する。
【0066】
以上詳述した絞り込み処理によれば、
図7(b)に示すように、各種候補(例えばV1~V10)の中からユーザに指定されたオブジェクトについて選択可能な候補(V1,V2,V5,V9,V10)が特定され、それら候補の中から通常表示となる候補(V1,V5)と特殊表示となる候補(V2,V9,V10)が決定される。これにより、通常表示によりユーザに提示される候補(選択肢)が絞り込まれることとなる。
【0067】
続くステップS404では、ステップS403にて選定された動作ステップに対応するメニューアイコン80の表示の並び順(優先順)を決定する。本実施形態では、メニューアイコン80がユーザにより指定されたオブジェクト画像の近傍に並べて表示される。この際、RAM47のライブラリに記憶されている過去の実績(動作シーケンスやユーザの操作の実績)を参照して決定される構成となっている。より詳しくは、ステップS403の処理と同様に、類似又は同一となる動作シーケンスの情報や同一又は類似となるオブジェクトが指定された際の情報を検索(抽出)し、抽出したサンプルにおいてユーザにより各候補が選択された回数を対比し、当該回数が多いものほど指定されたオブジェクト画像の近くに表示されるようにして並び順が決定される。なお、当該回数が同一であったり、サンプルが不足したりしている場合には、上記優先順を参照し当該優先順が高いものほど指定されたオブジェクト画像の近くに表示されるようにして並び順が決定される。
【0068】
その後は、ステップS405にてメニューアイコン80の表示処理を実行した後、本3D用設定処理を終了する。当該表示処理が実行されることにより、選定されたメニューアイコン80が上記優先順となるようにして並べられた状態で仮想3次元空間75に表示(ポップアップ表示)される。
【0069】
ここで、
図8及び
図9を参照して、メニューアイコン80の表示の具体例について説明する。
【0070】
図8には、制御点P1と制御点P2とを結ぶ軌道L1が指定された場合を例示している。この軌道L1についてユーザが設定可能な動作ステップとして、種々の動作ステップの中から「移動速度の変更」、「ハンドの開閉」、「制御点の追加」、「目標位置の変更」の4つが特定される。この際、「分岐の形成」等の一部の動作ステップについては操作不可となるため、候補から除外される。
【0071】
過去の実績を参照した場合には、類似又は同一となる動作シーケンスにおいて始点又は終点の一方が同一座標となる軌道が指定された場合の動作ステップとしては、「目標位置の変更」<「制御点の追加」<「アームの開閉」<「移動速度の変更」の順に選択された回数が多くなっている。この実績に基づいて、「アームの開閉」及び「移動速度の変更」が選定されている。この選定結果に基づいて、「移動速度の変更」に対応するメニューアイコン80aと、「アームの開閉」に対応するメニューアイコン80bとが表示対象となり、選定外となった「目標位置の変更」及び「制御点の追加」についてはそれらの代わりに1の特殊アイコン80cが表示対象となる。また、その並び順は、軌道L1に近い側からメニューアイコン80a、メニューアイコン80b、特殊アイコン80cとなる。なお、特殊アイコン80cに集約された「目標位置の変更」に対応するメニューアイコンや「制御点の追加」に対応するメニューアイコンについては、当該特殊アイコン80cが選択されることで追加表示されることとなる。
【0072】
図9には、ユーザによって制御点P1が指定された場合を例示している。この制御点P1についてユーザが設定可能な動作ステップとして、種々の動作ステップの中から「分岐の形成」、「ループの設定」、「移動」、「ハンドの開閉」の4つが特定される。この際、「移動速度の変更」等の一部の動作ステップについては操作不可となるため、候補から除外される。
【0073】
過去の実績を参照した場合には、類似又は同一となる動作シーケンスにおいて同一座標となる制御点が指定された場合の動作ステップとしては、「移動」<「ハンドの開閉」<「ループの設定」<「分岐の形成」の順に選択された回数が多くなっている。この実績に基づいて、「分岐の形成」及び「ループの設定」が選定されている。この選定結果に基づいて、「分岐の形成」に対応するメニューアイコン80dと、「ループの設定」に対応するメニューアイコン80eとが表示対象となり、選定外となった「ハンドの開閉」及び「移動」についてはそれらの代わりに1の特殊アイコン80cが表示対象となる。また、その並び順は、制御点P1に近い側からメニューアイコン80d、メニューアイコン80e、特殊アイコン80cとなる。なお、特殊アイコン80cに集約された「ハンドの開閉」に対応するメニューアイコンや「移動」に対応するメニューアイコンについては、当該特殊アイコン80cが選択されることで追加表示されることとなる。
【0074】
図6の3D用設定処理の説明に戻り、ステップS401にて肯定判定をした場合、すなわち3D表示領域70において動作シーケンスの設定操作が行われている最中(3D編集中)である場合には、ステップS406に進む。ステップS406では、ユーザによる3D編集のキャンセル操作が行われたか否かを判定する。ステップS406にて否定判定をした場合には、ステップS407に進む。ステップS407ではメニューアイコンの選択操作が行われたか否かを判定する。ステップS407にて肯定判定をした場合には、ステップS5408に進み、詳細設定用アイコンの表示処理を実行する。これにより、ユーザは動作ステップの詳細を設定可能となる。続くステップS409では、選択対象外となったメニューアイコンを非表示とする処理を実行する。その後は、ステップS410にてスクリプトエリア62に表示されている制御ブロック群(2Dフロー)の更新処理を実行した後、本3D用設定処理を終了する。詳細については後述するが、本実施形態では、3D表示領域70における操作内容は自動的に2D表示領域60のスクリプトエリア62に反映される。なお、2D表示領域60における操作内容についても同様に、3D表示領域70の仮想3次元空間75に制御点73や軌道74として反映される構成となっている。
【0075】
ステップS407の説明に戻り、当該ステップS407にて否定判定をした場合、すなわちこのタイミングでメニューの選択操作が行われていない場合には、ステップS411に進む。ステップS411ではユーザにより詳細設定操作が行われたか否かを判定する。詳細設定操作によって追加設定可能となる要素がある場合には、ステップS412にて肯定判定をしてステップS413に進み、詳細設定用アイコン90について通常表示の候補の選定及び表示の並びの優先順を決定する処理を行う。ステップS413の処理については基本的に上記ステップS403,S404の処理と同様である。すなわち、過去の実績や予め設定されている優先順に従って候補の絞り込みを行い、過去の実績や予め設定されている優先順に従って表示順を決定する。
【0076】
ステップS413の処理を実行した後は、ステップS414にて詳細設定用アイコン90の追加処理を実行する。これにより、メインメニューの下側に詳細設定用アイコン90が表示されることとなる。なお、詳細設定用アイコン90についてはそれら詳細設定用アイコン90の並び方向がメニューアイコン80の並び方向と同じ方向(左右方向)となるように規定されている。
【0077】
その後は、ステップS415に進み、今回の操作を2D表示領域60に反映すべく、スクリプトエリア62に表示されている制御ブロック群(2Dフロー)の更新処理を実行する。そして、ステップS416にて操作情報の蓄積処理を実行した後、本3D用設定処理を終了する。
【0078】
この蓄積処理では、3D編集が途中でキャンセルとなる場合も含めて今回の3D編集における詳細設定の操作の概要がRAM47のライブラリに記憶されることとなる。このように、ライブラリに蓄積される情報を増やすことにより、ユーザに提示する選択肢の精度を向上させている。
【0079】
ステップS411又はステップS412にて否定判定をした場合には、ステップS417に進む。ステップS417では詳細設定操作が完了したか否かを判定する。ステップS417にて否定判定をした場合には、そのまま本3D設定用処理を終了する。ステップS417にて肯定判定をした場合には、ステップS418に進む。ステップS418では、オブジェクト画像の更新処理を行う。これにより、今回の詳細設定の結果が制御点73や軌道74として仮想3次元空間75に追加されることとなる。ステップS418の処理を実行した後、又はステップS406にて肯定判定をした場合には、ステップS419にてメニューアイコン80及び詳細設定用アイコン90の非表示処理を実行し、ステップS415~S416の各処理を実行した後、本3D設定用処理を終了する。
【0080】
ここで、
図10~
図12を参照して、上述した3D編集の流れについて例示する。
【0081】
図10には、仮想3次元空間75に配置されたオブジェクト画像(制御点73及び軌道74)を例示している。この例では、3D編集前の動作シーケンスは、ロボット20が制御点P1→制御点P2の順に移動し、制御点P2にて制御点P3を経て制御点P5に至るルートと、制御点P4を経て制御点P5に至るルートとに分岐するように設定されている(
図10(a)参照)。今回の編集においては、この動作シーケンスに新たな分岐が追加されている。具体的には、制御点P1から制御点P6に移動するルートが新たに追加され、当該制御点P1にて分岐が生じている(
図10(b)参照)。
【0082】
このような3D編集は以下の手順で実行される。ユーザがマウス43を操作して制御点P1にカーソルCを近づけることにより、
図11(a)に示すように、当該制御点P1の近傍にメニューアイコン80が表示される。具体的には、「分岐の形成」に対応するメニューアイコン80dと、「ループの設定」に対応するメニューアイコン80eと、特殊アイコン80cとが横並びとなるようにして表示される。
【0083】
図11(b)に示すように、ユーザがメニューアイコン80dをクリックして「分岐の形成」を選択することにより、詳細設定用アイコン90が追加表示される。詳しくは、「条件入力」に対応した詳細設定用アイコン90a,90b及び「条件追加」に対応した詳細設定用アイコン90cが横並びとなるようにして表示される。また、選択対象から外れたメニューアイコン80e及び特殊アイコン80cについては、詳細設定用アイコン90の追加表示に合わせて非表示となる。これにより、アイコン画像の占有領域が大きくなることが抑制される。
【0084】
また、メニューアイコン80dが選択されたことにより、スクリプトエリア62に表示されている制御ブロック群に分岐形成ブロック67Bが追加表示される。具体的には、制御点P1への移動を規定する移動制御ブロック65Aと、制御点P2への移動を規定する移動制御ブロック65Bとの間に分岐形成ブロック67Bが挿入される(
図12(a)→
図12(b)参照)。
【0085】
図11(c)においては、「条件入力」に対応した詳細設定用アイコン90aが操作され、当該詳細設定用アイコン90aに分岐条件を示す条件式が入力されている。条件式の入力を行うことにより、新たに選択可能となる詳細設定用アイコン90d,90e,90fが追加表示されている(
図11(c)→
図11(d)参照)。具体的には、「移動」に対応した詳細設定用アイコン90d、「ハンドの開閉」に対応した詳細設定用アイコン90e、その他の動作ステップが集約された特殊アイコン90fが横並びとなるように表示されている。詳細設定用アイコン90aに条件式が入力されることで、スクリプトエリア62に追加表示された分岐形成ブロック67B(詳しくは条件ブロック67Ba)にも当該条件式が自動的に適用される。
【0086】
図11(d)に示すように、ユーザが詳細設定用アイコン90dをクリックして「移動」を選択することにより、新たに選択可能となる詳細設定用アイコン90g,90h,90iが追加表示されている(
図11(d)→
図11(e)参照)。具体的には、目標位置として「制御点P6」を示す詳細設定用アイコン90g、目標位置として「制御点P4」を示す詳細設定用アイコン90h、その他の目標位置や「座標の手動入力」の動作ステップが集約された特殊アイコン90iが横並びとなるように表示されている。なお、この時点では選択対象から外れた詳細設定用アイコン90e及び特殊アイコン90fは一時的に非表示となる。また、「制御点P6」が選択されることで、スクリプトエリア62の分岐形成ブロック67B(詳しくは条件ブロック67Ba)に移動制御アイコン65Gが追加される。
【0087】
図11(e)に示すように、ユーザが詳細設定用アイコン90gをクリックして「制御点P6」を選択することにより、選択対象から外れた詳細設定用アイコン90h及び特殊アイコン90iが非表示となる(
図11(e)→
図11(f)参照)。これに合せて、スクリプトエリア62の移動制御アイコン65Gに目標位置(制御点P6)が適用される。目標位置の設定が完了することで、上記詳細設定用アイコン90e及び特殊アイコン90fが再表示され、他方の分岐について動作ステップの設定が開始される。
【0088】
3D編集が完了することで、制御点P1と制御点P6とを結ぶ軌道が仮想3次元空間75に追加されるとともに表示中のメニューアイコン80や詳細設定用アイコン90が全て非表示となる。なお、これに合せてスクリプトエリア62の制御ブロック群も更新されることとなる(
図12(c)参照)。
【0089】
以上詳述した実施形態によれば、以下の優れた効果を奏する。
【0090】
ユーザが仮想3次元空間75に表示されたオブジェクト画像(制御点73や軌道74)の何れかを指定した場合には、当該仮想3次元空間75にユーザが選択可能となるメニューアイコン80が表示されることとなる。ユーザは表示されたメニューアイコン80から次の動作ステップを選択することができるため、仮想3次元空間75におけるロボット画像71等を見ながら動作シーケンスを設定すること(制御プログラムを作成すること)ができる。このようにしてユーザを支援することにより、ロボット20の動作シーケンスを設定する際の設定ミス(プログラムミス)を抑制し且つ作業効率を向上させることができる。
【0091】
仮想3次元空間75には、ロボット20の疑似画像であるロボット画像71や制御点73等のオブジェクト画像が表示される。この場合、仮想3次元空間75に表示されるアイコンの数が多くなればロボット画像71等の視認性が低下し、上記プログラムミスを抑制する効果が上手く発揮されなくなると懸念される。この点、本実施形態に示したように、動作ステップの候補の一部を選定し、選定した動作ステップに対応するメニューアイコンと選定外となった各種動作ステップに対応する特殊アイコンを表示とを表示することにより、過度に多くのメニューアイコンが表示されることを抑制し、上述した視認性の低下を抑制できる。
【0092】
選定外となった動作ステップがある場合には、選定外となった動作ステップに対応する複数のメニューアイコンに代えて1の特殊アイコンが表示される。このため、選定外となった動作ステップが存在することを簡潔に表示することができる。そして、ユーザがこの特殊アイコンを選択した場合には選定外となった動作ステップに対応するメニューアイコンが表示される。このような構成とすれば、選定外となった動作ステップを選択して設定することができるため、ユーザの選択肢が狭くなって利便性が低下することを抑制できる。
【0093】
メニューアイコン等をユーザにより指定されたオブジェクト画像の近傍に表示することで、オブジェクト画像を視界に収めつつ選択操作が可能となる。これは、上記プログラムミスを抑制する上で好ましい。また、過去の操作を踏まえてアイコン画像の配列を決定することにより、配列がランダムとなる構成と比較して利便性の向上が期待できる。
【0094】
選択操作によって新たな(次の)選択肢が発生する場合に、次の選択候補となる詳細設定用アイコンを表示する構成によれば、先に表示されていたアイコンから展開される全ての選択肢を予め表示させておく構成と比べて、仮想3次元空間75におけるアイコンの占有領域の広がりを抑制できる。また、先の選択操作によって選択されたアイコンに並べて次の選択候補となるアイコンが表示される構成とすることは、ユーザの利便性の向上を図る上で好ましい。
【0095】
選択操作によってアイコンの数が段階的に増える構成においては、アイコンの配列方向を揃える構成として、アイコンの表示領域をまとめることにより、ユーザにアイコンの存在が煩わしいとの印象を与えることを抑制できる。
【0096】
3D編集完了となった場合にはアイコンが非表示とされ且つオブジェクト画像が表示される構成とすることにより、ユーザは動作シーケンスがどのように進むかをオブジェクト画像から容易に把握でき、アイコンが非表示となることで制御プログラムの作成状況が分かりづらくなることを抑制できる。
【0097】
<その他の実施形態>
なお、上述した実施形態の記載内容に限定されず例えば次のように実施してもよい。ちなみに、以下の各構成を個別に上記実施形態に対して適用してもよく、一部又は全部を組み合わせて上記各実施形態に対して適用してもよい。
【0098】
・上記実施形態では、2D表示領域60(詳しくはスクリプトエリア62)におけるビジュアルプログラミングと、3D表示領域70におけるビジュアルプログラミングとを併用する構成について例示したが、これに限定されるものではない。3D表示領域70におけるビジュアルプログラミングによって動作シーケンスの設定を完結できるのであれば2D表示領域60(詳しくはスクリプトエリア62)におけるビジュアルプログラミングの機能については省略してもよい。
【0099】
・上記実施形態では、メニューアイコンや詳細設定用アイコンのうちユーザの選択対象から外れたアイコンについては非表示とする構成としたが、これに限定されるものではない。ロボット画像71、ワーク画像72、制御点73、軌道74等の視認性の低下を抑制する上では、選択対象から外れたアイコンを透明又は半透明として、当該アイコンの背後を視認可能とする構成としてもよい。
【0100】
・上記実施形態では、ユーザにより特殊アイコンが選択された場合には当該特殊アイコンに集約されたメニューアイコンや詳細設定用アイコンが当該特殊アイコンに代えて表示される構成とした。特殊アイコンが操作された場合には、選定されたメニューアイコンがユーザの選択候補から外れることを意味する。そこで、これらのメニューアイコンについても特殊アイコンが選択された場合には表示とする構成としてもよい。
【0101】
・上記実施形態では、過去の実績を蓄積して、その蓄積された多数の情報に基づいて表示するアイコンを選定する構成としたが、これに限定されるものではない。同種又は同一のオブジェクト画像が指定された場合の直前の選択操作を記憶し、この選択操作に基づいて上記選定を行う構成とすることも可能である。
【0102】
・上記実施形態では、コンパイルに成功した場合に動作シーケンスを記憶する構成としたが、これに加えて、コンパイルに失敗した場合(すなわち設定された動作シーケンスによってロボット20が正常に動作しない場合)にも動作シーケンスを記憶する構成としてもよい。コンパイル失敗時の動作シーケンスから失敗の要因を抽出し、その抽出結果を用いて選択肢の絞り込み(選択肢の減縮)を行うことにより、支援時に仮想3次元空間75に表示されるアイコンの数を減らしたり、提示する選択肢の確からしさを向上させたりすることができる。なお、例えばユーザによるコンパイルの実行操作に関係なくテストコンパイルをバックグラウンドで随時(例えば定期的に)実行させる構成とすることにより、コンパイルの機会を増やして蓄積できる情報量を好適に増やすことができる。
【0103】
・上記実施形態では、仮想3次元空間75に表示されているオブジェクト画像毎に判定エリアを設定し、この判定エリアへカーソルCが移動した場合に、当該オブジェクト画像が指定されたと判定する構成としたが、これに限定されるものではない。ユーザがオブジェクト画像にカーソルCを合わせた状態でクリック操作を行うことで当該オブジェクト画像が指定されたと判定する構成としてもよい。
【0104】
・同時に表示可能なアイコン(メニューアイコン及び詳細設定用アイコン)の列の数に上限を設けてもよい。例えば、選択操作が進むことで詳細設定用アイコンの列が増加した場合に、当該列の数が所定数(例えば4つ)に達することで最上段の列を非表示とする構成とするとよい。
【0105】
・上記実施形態では、動作シーケンス設定用プログラム(設定支援プログラム)がインターネットを通じてユーザに提供される場合について例示したが、これに限定されるものではない。例えば、動作シーケンス設定用プログラムが記憶されたCD-ROMやUSBメモリ等の記憶媒体(メディア)がユーザに提供される仕組みとしてもよい。また、動作シーケンス設定用プログラムをインストール済みの設定装置40がユーザに提供される仕組みとしてもよい。
【0106】
・ロボット用の動作シーケンスを設定する設定装置40の具体的構成については任意である。例えば、タブレットやスマートフォン等の携帯端末(ティーチングペンダントを含む)であってもよい。
【符号の説明】
【0107】
10…ロボットシステム、20…ロボット、30…コントローラ、40…支援装置、41…ディスプレイ、45…CPU、46…ROM、47…RAM、60…2D表示領域、61…ブロックパレット、62…スクリプトエリア、70…3D表示領域、71…ロボット画像、72…ワーク画像、73…制御点、74…軌道、75…仮想3次元空間、80…メニューアイコン、90…詳細設定用アイコン。