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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ウェーハストッカ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20240229BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20240229BHJP
   B65G 1/04 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H01L21/68 T
B65G1/00 521D
B65G1/04 561
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020557711
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2019046033
(87)【国際公開番号】W WO2020111013
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2018222883
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】谷山 育志
(72)【発明者】
【氏名】河合 俊宏
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/157462(WO,A1)
【文献】特開2004-303835(JP,A)
【文献】特開平4-186861(JP,A)
【文献】特表2009-545141(JP,A)
【文献】特開2008-100805(JP,A)
【文献】特開2017-121987(JP,A)
【文献】国際公開第2018/150698(WO,A1)
【文献】特開2011-241020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
B65G 1/00
B65G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の前面に設けられた、複数のウェーハを収容可能な搬送容器が載置されるローディング装置と、
前記筐体内に配置された、前記複数のウェーハを多段式に収納可能な複数のウェーハカセットを多段式に格納可能なウェーハカセット棚と、
前記ローディング装置に載置され且つ前記筐体の外側に配置された前記搬送容器の内部空間と、前記筐体の内部空間とが連通した状態で、前記搬送容器と前記ウェーハカセット棚に格納されたウェーハカセットとの間でウェーハを出し入れするウェーハ搬送ロボットと、
前記ウェーハカセット棚の前記複数の段のうち所定の段に格納された前記ウェーハカセットを少なくとも前記所定の段とは異なる高さの段に移動させるウェーハカセット移載装置と、
前記筐体内の、前記ウェーハ搬送ロボットが配置されたウェーハ搬送空間及び前記ウェーハカセット移載装置が配置されたウェーハカセット搬送空間に層流を発生させるファンフィルタユニットと、を備えることを特徴とするウェーハストッカ。
【請求項2】
前記ウェーハ搬送ロボットは、
前記ローディング装置に載置された前記搬送容器と、前記ウェーハカセット棚の前記複数の段のうち前記搬送容器と前後方向において向かい合う高さの段に配置された前記ウェーハカセットと、の間でウェーハを受け渡しすることを特徴とする請求項1に記載のウェーハストッカ。
【請求項3】
前記筐体内に、前記ウェーハ搬送空間及び前記ウェーハカセット搬送空間を含む、気体を循環させるための循環経路が形成され
前記循環経路は、前記気体の流れる方向において前記ウェーハ搬送空間及び前記ウェーハカセット搬送空間の下流側且つ前記ファンフィルタユニットの上流側に配置されたリターン空間を含み、
前記筐体の内部において、前記筐体の前記前面側から順に、前記ウェーハ搬送空間、前記ウェーハカセット搬送空間及び前記リターン空間が並べて配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のウェーハストッカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを一時的に保管するウェーハストッカに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、歩留まりや品質の向上のため、クリーンルーム内でウェーハの処理がなされる。ウェーハ周辺の雰囲気を適切に維持するために、FOUP(Front-Opening Unified Pod)と呼ばれる格納ポッド(搬送容器)が用いられる。このようなFOUPをクリーンルーム内において一時的に保管するFOUPストッカが、従来から知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
FOUPストッカは、高さ方向に多段状に配置された複数の棚を備え、処理前のウェーハが内部に収容されたFOUPや、処理済みのウェーハが内部に収容されたFOUPを棚に載置可能に構成されている。言い換えれば、FOUPストッカは、FOUPごと(ウェーハが収容されたFOUP全体を)ストッカ内の棚に載置して保管するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2009-541599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体デバイスのさらなる微細化に伴い、ストッカの内部空間においても、ウェーハの周辺の雰囲気をさらに改善することが求められうる。ここで、クリーンルーム内にもわずかながら粉塵が存在するため、FOUPの表面に粉塵が付着しうる。また、一般的に、FOUPは吸水性のある樹脂材料で形成されているので、クリーンルーム内の大気中の水分がFOUPに取り込まれうる。このようなFOUPが特許文献1に記載のFOUPストッカ内に代わる代わる持ち込まれると、FOUPから放出される粉塵或いは水分によって、FOUPストッカ内の雰囲気を良好に維持することが困難になるおそれがある。このため、特許文献1に記載のようにFOUPごとストッカ内に保管する構成では、ストッカ内に例えば窒素或いはドライエアを充填したとしても、ウェーハの周辺の雰囲気を改善することが阻害されうる。
【0006】
本発明の目的は、ウェーハの周囲の雰囲気をより改善可能なウェーハストッカを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係るウェーハストッカは、筐体と、前記筐体の前面に設けられた、複数のウェーハを収容可能な搬送容器が載置されるローディング装置と、前記筐体内に配置された、前記複数のウェーハを多段式に収納可能な複数のウェーハカセットを多段式に格納可能なウェーハカセット棚と、前記ローディング装置に載置された前記搬送容器と前記ウェーハカセット棚に格納されたウェーハカセットとの間でウェーハを出し入れするウェーハ搬送ロボットと、前記ウェーハカセット棚の前記複数の段のうち所定の段に格納された前記ウェーハカセットを少なくとも前記所定の段とは異なる高さの段に移動させるウェーハカセット移載装置と、前記筐体内の、前記ウェーハ搬送ロボットが配置されたウェーハ搬送空間及び前記ウェーハカセット移載装置が配置されたウェーハカセット搬送空間に層流を発生させるファンフィルタユニットと、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るウェーハストッカは、ウェーハを多段状に収容可能なウェーハカセット単位で保管する構成である。このため、FOUP等の搬送容器ごとストッカ内に収容する従来のストッカと比較して、搬送容器の外表面に付着した粉塵が筐体内に混入して飛散・蓄積する事態を防止・抑制することができる。
【0009】
加えて、本発明に係るウェーハストッカは、一般的に搬送容器よりも小さいウェーハカセットを用いてウェーハを保管する構成である。このため、搬送容器ごとストッカ内に収容する従来のストッカと比較して、ストッカ全体の小型化や収容枚数増、及びフットスタンプの狭小化を図ることができる。さらに、本発明に係るウェーハストッカであれば、筐体内でウェーハカセットを移載する構成であるため、ウェーハを異なる段に移動させる際、ウェーハを1枚ずつ移動させる場合と比べて搬送効率を向上させることができる。
【0010】
さらに、本発明に係るウェーハストッカでは、ファンフィルタユニットによって、ウェーハ搬送空間及びウェーハカセット搬送空間において層流が生成される。このため、ウェーハ搬送ロボットの動作時又はウェーハカセット移載装置の動作時に発生する粉塵の飛散を抑制できる。
【0011】
また、本発明に係るウェーハストッカにおいて、前記ウェーハ搬送ロボットは、前記ローディング装置に載置された前記搬送容器と、前記ウェーハカセット棚の前記複数の段のうち前記搬送容器と前後方向において向かい合う高さの段に配置された前記ウェーハカセットと、の間でウェーハを受け渡しすると良い。
【0012】
このようにすることで、搬送容器とウェーハカセットとの間でウェーハを受け渡すためにかかる時間を必要最小限に抑えることができ、タクトタイムを短縮できる。
【0013】
また、本発明に係るウェーハストッカにおいて、前記筐体内に、前記ウェーハ搬送空間及び前記ウェーハカセット搬送空間を含む、気体を循環させるための循環経路が形成されていると良い。
【0014】
このようにすることで、例えば、気体を筐体内に供給して筐体から全て排出する構成と比べて、気体の供給量を減らすことができ、ランニングコストを削減できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ウェーハの周囲の雰囲気をより改善可能なウェーハストッカを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るウェーハストッカの全体模式図。
図2図1に示すウェーハストッカの分解図。
図3図1の一部を拡大して示す図。
図4】同実施形態におけるローディング装置の動作フローを示す側面模式図。
図5】同実施形態のガス循環経路を示すウェーハストッカの側面模式図。
図6】同実施形態に係るウェーハストッカの動作フローを図1に対応して示す図。
図7】同実施形態に係るウェーハストッカの動作フローを図1に対応して示す図。
図8】同実施形態に係るウェーハストッカの動作フローを図1に対応して示す図。
図9】同実施形態に係るウェーハストッカの動作フローを図1に対応して示す図。
図10】変形例に係るウェーハストッカの分解図。
図11】別の変形例に係るウェーハストッカの分解図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係るウェーハストッカX(図1参照)は、半導体の製造工程において使用されるクリーンルーム内に設けられている。ウェーハストッカXは、ウェーハを収容可能な搬送容器から取り出されたウェーハを、高い清浄度に維持された筐体1の内部に一時的に保管可能なものである。
【0019】
本実施形態では、搬送容器としてFOUP10が用いられる。FOUP10は、図4に示すように、開口部である搬出入口Y1を通じて内部空間YSを開放可能なFOUP本体Y3(搬送容器本体)と、搬出入口Y1を開閉可能なFOUPドアY2(搬送容器ドア)とを備える。FOUP10は、内部に複数枚のウェーハを高さ方向Hに多段状に収容し、搬出入口Y1を介してこれらウェーハが出し入れされることが可能に構成されている。なお、図4は、後述するように、同図(a)(b)(c)(d)の順を辿るFOUP10に関する動作フローを示す模式図である。
【0020】
FOUP本体Y3は、内部空間YSにウェーハを所定ピッチで複数段載せることが可能な棚部(ウェーハ載置棚)を備える。FOUP本体Y3の底壁には、図4(a)に示すように、ポートY4が所定箇所に設けられている。ポートY4は、例えば、FOUP本体Y3の底壁に形成したポート取付用貫通孔に嵌め込まれた中空筒状のグロメットシールを有し、チェック弁によって開閉可能に構成されている。FOUP本体Y3の上壁における上向面の中央部には、OHT等の容器搬送装置に把持されるフランジ部が設けられている。
【0021】
FOUPドアY2は、略板状の部材である。FOUPドアY2は、ローディング装置2の載置台21(後述)に載置された状態において、ローディング装置2のローディング装置ドア23と対面するように配置される。FOUPドアY2には、このFOUPドアY2をFOUP本体Y3にロックするためのラッチキー(図示省略)が設けられている。FOUPドアY2のうち、搬出入口Y1をFOUPドアY2で閉止した状態においてFOUP本体Y3に接触または近接する所定の部分には、ガスケットY5が設けられている。FOUPドアY2は、ガスケットY5をFOUP本体Y3に接触させて弾性変形させることで、FOUP10の内部空間YSを密閉できるように構成されている(図4(a)、(c)参照)。
【0022】
ここで、FOUP10全体を保管する従来のストッカにおいては、FOUP10が保管される空間の雰囲気を窒素或いはドライエア等で充填し、より高い清浄度を実現しようとしても、クリーンルーム内でFOUP10の表面に付着した粉塵等がストッカ内に持ち込まれて蓄積されるおそれがある。また、一般的に、FOUP10は、吸水性のある樹脂材料(例えばポリカーボネート)によって形成されている。このため、従来のストッカの内部空間が仮に窒素或いはドライエア等で充填されていても、クリーンルーム内でFOUP10に取り込まれた水分がストッカ内で拡散されることにより、ストッカの内部空間の湿度を低く維持制御することが困難になる。このように、FOUPごとストッカ内に保管する構成では、ウェーハの周辺の雰囲気をより改善することが阻害されうる。そこで、本実施形態のウェーハストッカXは、ウェーハの周辺の雰囲気をより改善可能にするため、具体的に以下のように構成されている。
【0023】
本実施形態に係るウェーハストッカXは、図1及び図2に示すように、筐体1と、ローディング装置2と、ウェーハカセット棚3と、ウェーハ搬送ロボット4と、ウェーハカセット移載装置5とを備える。ローディング装置2は、筐体1の前面壁11の一部を形成するように筐体1の前面壁11に密着した状態に配置されている。ローディング装置2は、ウェーハを載置可能な載置台21を有する。ウェーハカセット棚3は、筐体1内において筐体1の前面壁11から所定距離後方に離間した位置に設けられ、FOUP10よりも小さい複数のウェーハカセットCを多段式に(言い換えると、高さ方向Hに並べて)格納する。ウェーハ搬送ロボット4は、ローディング装置2の載置台21上のFOUP10に対するウェーハ出し入れ処理を行う。ウェーハカセット移載装置5は、ウェーハカセット棚3に格納されているウェーハカセットCを異なる高さの段に移動させる(つまり、ウェーハカセットCを高さ方向Hに移動させる)。ウェーハカセットCは、複数枚のウェーハを多段式に(高さ方向Hに並べて)収納可能な周知のオープンカセットである。
【0024】
筐体1は、中空直方体状をなすものであり、前面壁11と、背面壁12と、天井壁13と、床ベース14と、背面壁12の左右両側縁近傍からそれぞれ前方に延出する左右一対の側壁(図示省略)とを備える。筐体1は、内部空間1Sを略密閉状態として陽圧に維持可能なものである(詳細については後述)。前面壁11の所定高さ位置には、前後方向Dに貫通する筐体窓部(図示省略)が形成されている。この筐体窓部を通じて、ウェーハの出し入れ処理を行うことが可能となっている。本実施形態では、幅方向Wに沿って所定ピッチで複数(図示例では3つ)の筐体窓部が前面壁11に形成されている。前面壁11には、図2及び図3に示すように、緊急遮断(EMO: Emergency off)ボタン11b及びモニター11cが設けられている。
【0025】
ローディング装置2は、図3及び図4等に示すように、起立姿勢で配置される板状の起立ベース22と、起立ベース22に形成した開口部22aを開閉するローディング装置ドア23と、起立ベース22に略水平姿勢で設けられた載置台21とを備えている。ローディング装置2は、筐体1の前面に設けられている。すなわち、ローディング装置2は、筐体1の前面壁11に対し起立ベース22を筐体1の前面側から密着させるように配置されている。この配置状態において、起立ベース22に形成された開口部22aと筐体1の前面壁11に形成された筐体窓部とが前後方向Dに重なっている(連通している)。
【0026】
載置台21は、起立ベース22のうち高さ方向Hにおける中央よりもやや上方の位置に略水平姿勢で配置された水平基台24(支持台)の上部に設けられている。載置台21は、上述したFOUPドアY2をローディング装置ドア23に対向させる向きでFOUP10を載置可能なものである。また、載置台21は、起立ベース22に対して進退移動可能に構成されている。具体的には、載置台21は、FOUPドアY2が起立ベース22の開口部22aに接近する所定のドッキング位置(図4(c)参照)と、FOUPドアY2をドッキング位置よりも起立ベース22から所定距離離間した位置(図4(a)、(b)参照)との間で進退可能である。載置台21は、上向きに突出した図示しない複数の突起(ピン)を有する。これらの突起をFOUP10の底面に形成された穴(図示省略)に係合させることで、載置台21上でFOUP10が位置決めされる。また、載置台21には、FOUP10を固定するためのロック爪(図示省略)が設けられている。このロック爪をFOUP10の底面に設けた被ロック部(図示省略)に引っ掛けて固定したロック状態にすることで、位置決め用の突起と協働して、FOUP10を載置台21上における適正な位置に案内して固定することができる。また、FOUP10の底面に設けた被ロック部に対するロック爪のロック状態を解除することで、FOUP10を載置台21から離間可能な状態にすることができる。
【0027】
ローディング装置ドア23は、ローディング装置ドア23とFOUPドアY2とを連結するための連結機構26を備え、連結機構26によってFOUPドアY2を保持したまま所定の移動経路に沿って移動可能に構成されている。連結機構26は、ローディング装置ドア23とFOUPドアY2とを連結している蓋連結状態と、ローディング装置ドア23とFOUPドアY2との連結を解除している蓋連結解除状態との間で状態を切換可能である。蓋連結状態においては、FOUPドアY2をFOUP本体Y3から取り外すことが可能である。蓋連結解除状態においては、FOUPドアY2はFOUP本体Y3に取り付けられている。ローディング装置ドア23は、少なくとも、図4(a)等に示す全閉位置(C)と、開放位置(図示省略)との間で移動可能に構成されている。全閉位置(C)は、FOUPドアY2によってFOUP本体Y3の内部空間YSが密閉されているときのローディング装置ドア23の位置である。開放位置は、FOUPドアY2がFOUP本体Y3から離間しており、FOUP本体Y3の内部空間YSが筐体1の内部空間1Sに向かって開放されているときのローディング装置ドア23の位置である。ローディング装置2は、ローディング装置ドア23の起立姿勢を維持したまま、ローディング装置ドア23を全閉位置から開放位置まで移動させ、さらに、開放位置から図4(d)に示す全開位置(O)まで起立姿勢を維持したまま下方向に移動させることが可能である。このようなローディング装置ドア23の移動は、ローディング装置2に設けられたドア移動機構27によって実現される。また、ローディング装置2は、ドッキング位置に位置付けられた載置台21上のFOUP10が起立ベース22から離間する方向に移動することを規制する移動規制部(図示省略)を備えている。
【0028】
ローディング装置2は、パージ装置Pを備えている(図4参照)。パージ装置Pは、窒素ガス等の不活性ガス或いはドライエア等のパージ用気体をFOUP10の内部空間YSに注入し、FOUP10の内部空間YSの雰囲気をパージ用気体に置換するように構成されている。パージ装置Pは、後述するガス導入装置6から筐体1の内部空間1Sに供給される不活性ガスと同じ種類の不活性ガスでFOUP10の内部空間YSの雰囲気を置換する。パージ装置Pは、載置台21上に上端部を露出可能な状態で所定箇所に配置された複数のパージノズル2N(気体給排装置)を備える。これら複数のパージノズル2Nは、FOUP10の底面に設けられたポートY4の位置に応じて載置台21上の適宜位置に取り付けられ、ポートY4に接続可能なものである。このようなパージ装置Pを用いて、以下のようなボトムパージ処理が行われる。まず、パージ装置Pは、複数のポートY4のうち一部のポートを「供給ポート」として機能させ、供給ポートに接続されたパージノズル2Nを通じてFOUP10内に窒素ガス、不活性ガス又はドライエア等の適宜選択されたパージ用気体を注入する。それとともに、パージ装置Pは、残りのポートY4を「排気ポート」として機能させ、排気ポートに接続されたパージノズル2Nを通じてFOUP10内の気体を排出する。これにより、FOUP10内にパージ用気体が充満させられる。
【0029】
本実施形態のローディング装置2は、FOUP10内におけるウェーハの有無や収納姿勢を検出可能なマッピング部(図示省略)を備えている。
【0030】
このようなローディング装置2が、筐体1の前面側において筐体1の幅方向Wに複数台(図示例では3台)並べて配置されている。
【0031】
ウェーハカセット棚3は、図1及び図2に示すように、ウェーハカセット棚ベース31と、ウェーハカセット棚ベース31に支持された棚本体32とを備える。棚本体32は、段状に配置された複数の棚板(図示省略)と、各棚板の両端を支持可能な側壁を有する棚フレームとが一体的に組付けられたものである。本実施形態のウェーハカセット棚3は、ウェーハカセットCを高さ方向Hに10段格納可能である。最下段のウェーハカセットCの載置スペース(1段目の載置スペース)は、ウェーハカセット棚ベース31の上面31aに設定され、下から2段目以上のウェーハカセットCは、それぞれ棚板に載置可能に設定されている。なお、本実施形態では、ウェーハカセット棚ベース31の上面31aと、ローディング装置2の載置台21の上面とが略同じ高さ位置に設定されている。
【0032】
ウェーハカセット棚3に複数多段式に格納されるウェーハカセットCの高さ方向Hにおける離間ピッチは、等間隔であってもよい。或いは、棚板同士の離間ピッチは、例えばウェーハカセット棚3を構成するパーツ(例えば図示しない梁等)の配置箇所を考慮して、適宜変更されてもよい。本実施形態のウェーハストッカXにおいては、ローディング装置2の台数と同数列のウェーハカセットCをウェーハカセット棚3に載置できるように設定されている。すなわち、本実施形態では、ウェーハカセットCを幅方向Wに3列並べて載置可能なウェーハカセット棚3が適用されている。
【0033】
ウェーハ搬送ロボット4は、筐体1の前面壁11とウェーハカセット棚3との間に設けられている。ウェーハ搬送ロボット4は、ローディング装置2の載置台21上のFOUP10からウェーハを取り出して、ウェーハカセット棚3に格納されているウェーハカセットCに移載する処理を実行可能である。また、ウェーハ搬送ロボット4は、ウェーハカセット棚3のウェーハカセットCからウェーハを取り出して、FOUP10に入れ戻す処理を実行可能である。ウェーハ搬送ロボット4は、図2に示すように、例えば相互に水平旋回可能に連結された複数のリンク要素の先端部にウェーハ把持部(ハンド)が設けられたアーム機構42と、アーム機構42を支持する基台部43とを備える。ウェーハ搬送ロボット4は、アーム機構42のアーム長が最小になる折畳状態と、アーム長が折畳状態時よりも長くなる伸長状態との間で形状が変わるリンク構造(多関節構造)を有する。アーム機構42の先端には、個別に制御可能な複数のウェーハ把持部が高さ方向Hに多段状に設けられていても良い。
【0034】
筐体1の内部空間1Sのうちウェーハ搬送ロボット4が設けられた空間は、図5に示すように、前後方向Dにおいてウェーハカセット棚3よりも前方の空間であり、ウェーハ搬送室4Sとして機能する空間(ウェーハ搬送空間)である。本実施形態では、図1等に示すように、ウェーハ搬送室4Sに1台のウェーハ搬送ロボット4と、1台のウェーハアライナAが設けられている。
【0035】
ウェーハ搬送ロボット4は、基台部43の内部空間に連通する排気ボックス44を備える。基台部43内に設けた駆動機構(アーム機構42の駆動機構)等から生じる粉塵は、陰圧に設定された排気ボックス44内に強制的に収集される(図5参照)。
【0036】
ウェーハカセット移載装置5は、図1及び図2に示すように、ウェーハカセット棚3に格納されているウェーハカセットCを少なくともウェーハカセット棚3における異なる高さの段に移動させるものである。ウェーハカセット移載装置5は、前後方向D及び高さ方向Hに移動可能なウェーハカセット搬送アーム51と、ウェーハカセット搬送アーム51を支持するウェーハカセット移載装置フレーム52とを備える。本実施形態では、ウェーハカセット搬送アーム51は、先端部分が二股状のハンドを有するが、これには限られない。また、ウェーハカセット移載装置フレーム52は、外略直方体状をなし、内部にウェーハカセット搬送アーム51を上下移動・進退移動させる駆動機構を有する。ウェーハカセット移載装置5においては、図2に示すように、ウェーハカセット棚3に載置可能なウェーハカセットCの列数(本実施形態では3列)と同数のウェーハカセット搬送アーム51が、幅方向Wに並べて配置されている。また、ウェーハカセット移載装置5は、各ウェーハカセット搬送アーム51と前方正面に向かい合う列のウェーハカセットCを、同じ列内で高さ方向Hに移載するように構成されている。ウェーハカセット移載装置フレーム52とウェーハカセット棚3との間には、図5に示すように、ウェーハカセットCの高さ方向Hへの移動を許容するウェーハカセット搬送室5Sとして機能する空間(ウェーハカセット搬送空間)が形成されている。
【0037】
ウェーハストッカXは、図1図2及び図5に示すように、ガス導入装置6と、排気装置7と、ファンフィルタユニット(FFU)8とを備えている。ガス導入装置6は、筐体1内へ不活性ガスを供給する。排気装置7は、筐体1の内部空間1Sの気体を排気する。ファンフィルタユニット8は、ガス導入装置6から供給される不活性ガスを通過させて、ウェーハカセット移載装置5から筐体1の前面壁11に亘る空間(ウェーハカセット搬送室5S及びウェーハ搬送室4Sを含む空間)に下降気流(層流)を生じさせる。
【0038】
ガス導入装置6は、マスフローコントローラ61(MFC)と、ガス導入用配管62とを備えている(図5参照)。マスフローコントローラ61は、筐体1のうちウェーハカセット移載装置5よりも後方の所定箇所に設けられ、流体の質量流量を計測しながら流量制御を行う。ガス導入用配管62は、マスフローコントローラ61を通じて不活性ガス(本実施形態では窒素ガス)を筐体1の内部空間1Sに供給するための配管である。ガス導入用配管62は、ガス導入用始端配管63と、ガス導入用縦配管64と、ガス導入用横配管65とを備える。ガス導入用始端配管63は、筐体1の後端部に設けられ、マスフローコントローラ61のバルブ61vに連通する管である。ガス導入用縦配管64は、ガス導入用始端配管63の前端(先端)から、筐体1の背面壁12の内向き面に沿って筐体1の天井壁13近傍まで延伸している。ガス導入用横配管65は、ガス導入用縦配管64の上端から筐体1の天井壁13に沿って筐体1の前面壁11近傍まで延伸している。ガス導入用横配管65には、下方に開口する孔(下向き孔)が前後方向に所定ピッチで形成されている。これにより、マスフローコントローラ61のバルブ61vからガス導入用始端配管63及びガス導入用縦配管64を経てガス導入用横配管65に到達した不活性ガスは、ガス導入用横配管65の下向き孔から筐体1の内部空間1Sに供給される(図5参照)。
【0039】
ファンフィルタユニット8は、ファン及びフィルタがユニット化された、空気清浄機能を発揮するものである。本実施形態のウェーハストッカXにおいては、ウェーハカセット移載装置5の上端(ウェーハカセット移載装置フレーム52の上端)から筐体1の前面壁11の内向き面に亘る領域にファンフィルタユニット8が配置されている。ガス導入装置6によって筐体1の内部空間1Sに供給された不活性ガスは、ファンフィルタユニット8によって、ウェーハカセット搬送室5S及びウェーハ搬送室4Sに、清浄度の高い下降気流(層流)として送られる。
【0040】
排気装置7は、図5に示すように、自動圧力制御機71(APC:オートプレッシャコントローラ)と、自動圧力制御機71のバルブ71vに連通する排気口72とを備える。自動圧力制御機71は、筐体1のうちウェーハカセット移載装置5よりも後側且つガス導入装置6のマスフローコントローラ61よりも下側に設けられている。ファンフィルタユニット8によって生成される下降気流に乗って、気体は、ウェーハカセット移載装置5と筐体1の前面壁11との空間を通って筐体1の床ベース14近傍まで到達し、排気口72に向かって流れる。所定量の気体が、排気口72及び自動圧力制御機71のバルブ71vを通じて筐体1外に排出される。本実施形態では、ウェーハカセット棚3の下端部分及びウェーハカセット移載装置5の下端部分に、排気装置7に向かって流れる気流が通過可能な通過路3T,5Tがそれぞれ設けられている(図2及び図5参照)。また、排気装置7は、上述のウェーハ搬送ロボット4の排気ボックス44から排気口72に向かって延出する排気用横配管73を備える。ウェーハ搬送ロボット4の排気ボックス44内に収集された粉塵等は、排気用横配管73及び排気口72を通じて筐体1の外部に排出される。
【0041】
本実施形態のウェーハストッカXでは、排気装置7に向かって流れる気体の一部が排出され、残りの大部分の気体が筐体1の背面壁12に沿って上昇するように設定されている。具体的には、図1図2及び図5に示すように、筐体1内に左右一対の仕切壁15が立設されている。この仕切り壁と、ウェーハカセット移載装置5の後壁と筐体1の背面壁12とによって、筒状の空間が形成されている。また、ウェーハカセット移載装置5と筐体1の背面壁12との間であって且つ排気装置7の排気口72よりも高い位置に送風機9が設けられている。この送風機9によって、上述した筒状の空間内に上昇気流が生成される。筐体1内において、送風機9による上昇気流に乗った気体は、筐体1の天井壁13付近まで到達すると、筐体1の前面壁11に向かって流れる気流に合流する。そして、気体は、ガス導入装置6のガス導入用横配管65から下方に向かって供給される不活性ガスと共にファンフィルタユニット8を通り、下方に向かって流れる気流に沿って流れる。このように、筐体1内には、ガス導入装置6から供給される不活性ガスの大部分を循環させるガス循環経路が形成されている。
【0042】
このような構成を有するウェーハストッカXは、筐体1内に不活性ガスを循環させて筐体1の内部空間1Sを陽圧に維持することで、筐体1外の大気が筐体1内に侵入する事態を防止できる。具体的には、自動圧力制御機71によって、ガス循環経路全体の圧力が、筐体1外の大気に対して陽圧になるように制御される。より詳しくは、ウェーハカセットCが格納される空間(保管エリア)の圧力は、例えば10~300Pa(ゲージ圧)になるように制御される。さらに好ましくは、保管エリア内の圧力は、例えば10~100Pa(ゲージ圧)と、低い陽圧(微陽圧)に制御される。これにより、多数のウェーハカセットCが格納される空間及びウェーハが搬送される空間を清浄度の高い空間に保ち、低酸素濃度(例えば10~100ppm)・低湿度(例えば露点温度が-50℃以下)の雰囲気によって、ウェーハの特性を維持することができる。
【0043】
次に、本実施形態に係るウェーハストッカXの動作フローを図4図6図9を参照して説明する。なお、図6図9では、説明の便宜上、筐体1の前面壁11及び仕切壁15を省略している。
【0044】
先ず、OHT等の容器搬送装置によって、FOUP10がローディング装置2の載置台21上に載置される(図4(a)参照)。この際、例えば載置台21に設けられた位置決め用突起がFOUP10の位置決め用凹部に嵌まり、載置台21上のロック爪をロック状態にする(ロック処理)。本実施形態では、幅方向Wに3台並べて配置されたローディング装置2の載置台21にそれぞれFOUP10を載置することができる。また、FOUP10が載置台21上に所定の位置に載置されているか否かを検出する着座センサ(図示省略)により、FOUP10が載置台21上の正規位置に載置されたことを検出するように構成することもできる。
【0045】
本実施形態のローディング装置2では、載置台21上の所定の正規位置にFOUP10が載置された時点で、載置台21に設けられた例えば加圧センサの被押圧部をFOUP10の底面部が押圧したことを検出する。これをきっかけに、載置台21に設けられた全てのパージノズル2Nが、載置台21の上面よりも上方へ進出してFOUP10の各ポートY4に連結される。これにより、各ポートY4は閉止状態から開放状態に切り替わる。そして、ローディング装置2は、パージ装置Pにより、FOUP10の内部空間YSに不活性ガスである窒素ガスを供給して、FOUP10の内部空間YSを窒素ガスに置換する処理(ボトムパージ処理)を行う(図4(b)参照)。ボトムパージ処理時に、FOUP10内の気体は、排気ポートとして機能するポートY4に接続されているパージノズル2Nを通って、FOUP10外に排出される。図4(b)にボトムパージ処理時の窒素ガスの供給方向及びFOUP10内の気体の排出方向を矢印で模式的に示す。ローディング装置2は、このようなボトムパージ処理によって、FOUP10内の水分濃度及び酸素濃度をそれぞれ所定値以下に低下させて、FOUP10内におけるウェーハの周囲環境を低湿度環境及び低酸素環境にする。
【0046】
本実施形態のローディング装置2は、ロック処理後に、図4(b)に示す位置にある載置台21を図4(c)に示すドッキング位置まで移動させる(ドッキング処理)。次に、ローディング装置2は、移動規制部を用いてFOUP10の少なくとも両サイドを保持して固定する処理(クランプ処理)を行い、連結機構26を蓋連結状態に切り替える(蓋連結処理)。さらに、ローディング装置2は、FOUPドアY2をローディング装置ドア23とともに移動させて、起立ベース22の開口部22a及びFOUP10の搬出入口Y1を開放して、FOUP10内の密閉状態を解除する処理(密閉解除処理)を実行する(図4(d)参照)。なお、ローディング装置2は、ローディング装置ドア23を開放位置から全開位置(O)に移動させる処理中に、マッピング部によるマッピング処理を実施するように設定されていても良い。これにより、FOUP10内において高さ方向Hに並んで収納されているウェーハの有無及び収納姿勢を順次検出することができる。
【0047】
密閉解除処理を実行することによって、FOUP本体Y3の内部空間YSと筐体1の内部空間1Sとが連通した状態になる。その後、マッピング処理で検出された情報(ウェーハ位置)に基づいて、ウェーハ搬送ロボット4が以下のようなウェーハ搬送処理を実施する。すなわち、ウェーハ搬送ロボット4は、FOUP10内のウェーハをウェーハカセット棚3に格納されているウェーハカセットCに移載したり、ウェーハカセットC内のウェーハをFOUP10内に収納したりする。
【0048】
ウェーハストッカXにおいては、ウェーハカセット棚3のうち1段目の載置スペース(具体的にはウェーハカセット棚ベース31の上面31a)が、ウェーハ搬送ロボット4によるウェーハカセットCに対するウェーハの受け渡し位置に設定されている。したがって、ウェーハ搬送処理(FOUP10内のウェーハをウェーハカセットCに入れる処理)よりも前の時点で、ウェーハストッカXは以下のような処理を行う。まず、例えば、図6に示すように、前方から見たときに、ウェーハカセット棚3の左側の列の1段目には、ウェーハカセットCが載置されていない(アイドル状態)。この状態において、ウェーハストッカXは、ウェーハカセット棚3の1段目に、同じ列の2段目よりも上の段(図示例では3段目)に格納されているウェーハカセットCをウェーハカセット移載装置5によって移載する(ウェーハカセット移載処理、図7参照)。
【0049】
なお、図6では、ウェーハカセット搬送アーム51によるウェーハカセットCの搬送経路を矢印で模式的に示している。
【0050】
ウェーハストッカXは、図7に示すように、ウェーハカセット棚3の1段目にセットされたウェーハカセットCとFOUP10との間でウェーハを受け渡しするウェーハ搬送処理中に、以下のような「次位使用ウェーハカセット移載処理」を行う。すなわち、ウェーハストッカXは、ウェーハカセット棚3の1段目の載置スペースのうちアイドル状態のスペースに、次にウェーハ処理時に使用されるウェーハカセットCをウェーハカセット移載装置5によって移載する。図7では、ウェーハカセット棚3の中央の列の2段目よりも上の段(図示例では3段目)に格納されているウェーハカセットCを「次位使用ウェーハカセット」としてウェーハカセット棚3の1段目中央の載置スペースに移載する様子を示す。なお、図7図9では、ウェーハカセット搬送アーム51によるウェーハカセットCの搬送経路を相対的に太い矢印で模式的に示し、ウェーハ搬送ロボット4によるウェーハの搬送経路を相対的に細い矢印で模式的に示す。ウェーハ搬送ロボット4は、ローディング装置2に載置されたFOUP10と、ウェーハカセット棚3の複数の段のうち搬送容器と前後方向において向かい合う高さの段に配置されたウェーハカセットCと、の間でウェーハを受け渡しする。
【0051】
ウェーハストッカXは、ウェーハ搬送処理が完了したFOUP10に対して、以下のような密閉処理を行う。まず、ウェーハストッカXは、ローディング装置2のドア移動機構27によりローディング装置ドア23を全閉位置(C)に移動させて、起立ベース22の開口部22a及びFOUP10の搬出入口Y1を閉止する。続いて、ローディング装置2は、連結機構26を蓋連結状態から蓋連結解除状態に切り替える処理(蓋連結解除処理)を実行する。この処理により、FOUP10の内部空間YSは密閉状態になる。
【0052】
続いて、ローディング装置2は、移動規制部によるFOUP10の固定状態(クランプ状態)を解除するクランプ解除処理を行う。次いで、ローディング装置2は、載置台21を起立ベース22から離間する方向に移動させる処理(ドッキング解除処理)を実行した後、載置台21上のロック爪でFOUP10をロックしている状態を解除する(ロック解除処理)。これにより、FOUP10は、各ローディング装置2の載置台21上から容器搬送装置に引き渡され、例えばEFEM(Equipment Front End Module)を構成するロードポートの載置台へと運び出される。
【0053】
一方、ウェーハ搬送処理が終わったウェーハカセットCは、ローディング装置2による密閉処理以降の適宜のタイミングで、ウェーハカセット棚3の1段目の載置スペースから元の段の載置スペースにウェーハカセット移載装置5によって移載される(ウェーハカセット戻し処理)。図8に示すように、ウェーハカセット戻し処理は、ウェーハカセット戻し処理対象とは異なる他のウェーハカセットCを使用したウェーハ搬送処理中に実行することができる。
【0054】
ウェーハストッカXは、上述のように、ウェーハが多段状に収容された状態のウェーハカセットC、またはウェーハが収容されていない状態のウェーハカセットCを筐体1内に多数格納した状態で、ウェーハ搬送処理を必要に応じて繰り返し行うことができる。図8に示す状態からローディング装置2上のFOUP10が次工程に運び出され、且つウェーハ搬送処理が終わったウェーハカセットCがウェーハカセット棚3の1段目の載置スペースから元の段の載置スペースに戻された状態を図9に示す。
【0055】
なお、ウェーハ搬送ロボット4を用いたウェーハ搬送処理は、FOUP10内のウェーハをウェーハカセット棚3のウェーハカセットCに移載する処理、またはウェーハカセットCに格納されたウェーハをFOUP10内に移載する処理の何れかである。何れの処理を行うかは適宜選択することができる。また、ウェーハ搬送室4Sに設けたウェーハアライナAを経由してFOUP10内のウェーハをウェーハカセットCに移載したり、ウェーハアライナAを経由してウェーハカセットCのウェーハをFOUP10内に移載することもできる(図7及び図8参照)。なお、ウェーハストッカXの作動は、図示しないコントローラによって制御される。
【0056】
このように、本実施形態に係るウェーハストッカXによれば、ガス導入装置6によって筐体1内に不活性ガスを供給し、酸素濃度及び水分濃度を低減した高い清浄度に保たれた陽圧の筐体1内に複数のウェーハカセットCを多段状に格納できる。これにより、外からの大気侵入を防止するとともに、半導体処理工程後にウェーハから発生しているアウトガス等をファンフィルタユニット8によるダウンフローで吹き下ろし、排気装置7によって筐体1外に排出することができる。特に、ウェーハストッカXは、大量のウェーハを保管可能なものであるため、ラミナーフローを形成するために、外部から不活性ガスの全量の供給を行うことは困難である。したがって、筐体1の内部空間1Sに不活性ガスの循環経路が形成されていることは、ランニングコストの増大を抑制するために有効である。
【0057】
また、本実施形態に係るウェーハストッカXは、ウェーハを多段状に収容可能なウェーハカセットC単位で保管する構成である。このため、FOUP10ごとストッカ内に収容する従来のFOUPストッカと比較して、FOUP10の外表面に付着した粉塵や、FOUP外表面に取り込まれている水分などが、ストッカ内で放出されることを回避できる。したがって、ストッカ内の清浄度が低下することを抑制できる。また、このような構成により、半導体処理工程後にウェーハから発生しているアウトガス等がストッカ内に混入して飛散する事態を防止・抑制できる。これにより、ウェーハストッカXの筐体1内や、筐体1の内部空間1Sに連通した状態にあるFOUP10の内部空間YSでウェーハが汚染する事態を防止・抑制することが可能である。すなわち、本実施形態に係るウェーハストッカXによれば、ウェーハ周辺を常に高いクリーン度に維持して、ウェーハ表面へのパーティクルや水分の付着が生じる事態を防止・抑制することができる。したがって、ストッカ内のウェーハの周辺の雰囲気をより改善できる。
【0058】
また、本実施形態に係るウェーハストッカXによれば、一般的にFOUP10よりも小さいウェーハカセットCを用いてウェーハを保管する構成である。このため、FOUPごとストッカ内に収容する従来のストッカと比較して、ウェーハストッカX全体の小型化及びフットスタンプの狭小化を図ることができる。或いは、FOUPごとストッカ内に収容する従来のストッカと比較して、装置全体の大型化を抑制しつつ、ウェーハストッカX内に収容可能なウェーハの枚数を増やすことができる。さらに、本実施形態に係るウェーハストッカXは、筐体1内においてウェーハカセット棚3に格納するウェーハカセットCを移載する構成である。このため、筐体内においてFOUPごと移載する従来のストッカと比較して、筐体内における移載用スペースのコンパクト化も図ることができる。
【0059】
また、ウェーハストッカXは、ウェーハカセット棚3にウェーハカセットCを幅方向Wに沿って複数列に格納可能に構成し、この列数に応じた数のローディング装置2及びウェーハカセット搬送アーム51を備えている。このため、ウェーハカセットCの移載処理や、ウェーハ搬送処理を効率良く行うことができる。
【0060】
さらに、ウェーハカセット棚3に格納されるウェーハカセットCのうち、ローディング装置2の載置台21に載置されたFOUP10と前後方向Dにおいて正対する高さ位置のウェーハカセットC(具体的には1段目の載置スペースに載置したウェーハカセットC)が、ウェーハ搬送ロボット4によるウェーハ受け渡し対象のウェーハカセットCに設定されている。つまり、ウェーハ搬送ロボット4が、ローディング装置に載置されたFOUP10と、ウェーハカセット棚3の複数の段のうちFOUP10と前後方向において向かい合う高さの段に配置されたウェーハカセットCと、の間でウェーハを受け渡しする。このため、例えば、ウェーハカセット棚3に格納するウェーハカセットCのうちローディング装置2の載置台21に載置したFOUP10と前後方向Dにおいて正対しない高さ位置のウェーハカセットCに対してウェーハ搬送ロボット4でウェーハをFOUP10から受け渡す構成と比較して、ウェーハ搬送ロボット4によるウェーハ受け渡し位置の高さを所定範囲に限定することができる。したがって、FOUP10内とウェーハカセットCの間でウェーハを搬送するウェーハ搬送ロボット4のタクトタイムの短縮化を図ることができる。
【0061】
ウェーハストッカXのウェーハカセット棚3におけるウェーハカセットCの具体的な格納形態として、使用頻度の高いウェーハを収容したウェーハカセットCほど1段目の載置スペースに近い載置スペースに格納する形態を挙げることができる。これにより、優先的に使用されることが見込まれるウェーハに対するアクセスタイムの短縮化を図ることができる。また、相対的に汚染度の高いウェーハ(アウトガス発生量の多いウェーハ)は、相対的に汚染度の低いウェーハよりも下の段の載置スペースに格納されるように設定することで、汚染の広がりを抑制することができる。なお、筐体内における長期保管によって脱気したウェーハは上の段に移動させてもよい。
【0062】
本実施形態に係るウェーハストッカXによれば、ウェーハの種類や状態、ウェーハに施される半導体処理プロセス等によってウェーハカセット棚3における格納場所を区画することも可能である。ウェーハカセット棚3に適宜の仕切りを設けて区画範囲を規定してもよい。
【0063】
さらにまた、本実施形態では、ウェーハストッカXのローディング装置2として、EFEMを構成するロードポートと同じ構成または準じた構成のものを適用することで、新たなローディング装置を設計・製造する手間を省くことができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態の構成に限られるものではない。例えば、ウェーハカセット棚の段数(高さ方向におけるウェーハカセットの載置スペースの数)や列数(幅方向におけるウェーハカセットの載置スペースの数)は適宜変更することができる。
【0065】
ウェーハカセット移載装置として、昇降移動に加えて筐体の幅方向にも移動可能なウェーハカセット搬送アームを備えたものを適用することが可能である。このようなウェーハカセット移載装置であれば、ウェーハカセット棚に格納されているウェーハカセットをウェーハカセット搬送アームによって異なる列に移動させることもできる。
【0066】
また、ウェーハカセット棚として、水平面内で回転する回転式の棚を適用することができる。この場合、例えば高さ方向Hと直交する周方向に所定角度ピッチで複数(例えば90度ピッチで4つ)のウェーハカセット載置スペースが設けられていても良い。そして、各ウェーハカセット載置スペースに載置されたウェーハカセットが、それぞれウェーハ搬送ロボット又はウェーハカセット搬送アームと正対する回転角度姿勢をとれるように構成されていても良い。このようにして、ウェーハカセット載置スペースに対するウェーハ搬送ロボットやウェーハカセット搬送アームのアクセスを許容しても良い。このようにすることで、ウェーハ搬送処理やウェーハカセット移載処理を効率良く行うことができる。
【0067】
さらにはまた、ウェーハカセット棚に格納するウェーハカセットとして、幅方向Wにおける一方側・他方側及び前後方向Dにおける一方側・他方側の、計4方向からアクセス可能なウェーハカセットを適用することも可能である。
【0068】
ウェーハカセット移載装置がウェーハカセットを1列の高さ方向に沿って複数段状に格納可能なものであってもよい。
【0069】
また、ウェーハカセット棚の1段目以外の段の載置スペースに載置されているウェーハカセットが、ローディング装置に載置された搬送容器と前後方向において正対する高さ位置となるように構成されていても良い。このような構成において、当該高さ位置のウェーハカセットを、「ウェーハ搬送ロボットによるウェーハ受け渡し対象のウェーハカセット」に設定することも可能である。すなわち、本発明のウェーハストッカは、2段目以上の段に載置したウェーハカセットを、「ウェーハ搬送ロボットによるウェーハ受け渡し対象のウェーハカセット」に設定した構成も包含する。
【0070】
上述の実施形態では、搬送容器としてFOUPが採用されている。しかし本発明では、FOUP以外の搬送容器、例えば、MAC(Multi Application Carrier)、H-MAC(Horizontal-MAC)、FOSB(Front Open Shipping Box)などを用いることも可能である。
【0071】
また、容器搬送装置として、OHT以外の適宜の搬送装置を用いても構わない。OHS(Over Head Shuttle:天井走行式シャトル)、RGV(Rail Guided Vehicle:有軌道式無人搬送車)、AGV(Automated Guided Vehicle:無人搬送車)等を適用することもできる。RGV及びAGVは、工場内の床面側を走行する容器搬送装置である。容器搬送装置がRGVの場合は、レール(軌道)は工場の床等に設置される。
【0072】
また、ウェーハ搬送ロボットが、筐体の幅方向(ローディング装置の並列方向)に走行可能な走行軸を有するものであってよい。例えば、筐体の幅方向に並ぶローディング装置の列数が多い場合には、筐体の幅方向に延伸する走行軸を有するウェーハ搬送ロボットを用いることが好ましい。
【0073】
上述の実施形態では筐体の内部に供給する不活性ガスとして窒素ガスを例にしたが、これに限定されず、乾燥ガス、アルゴンガス等を用いることができる。ボトムパージ処理に用いる不活性ガスも同様に窒素ガスに限定されない。或いは、筐体の内部に供給されるガスは、必ずしも不活性ガスでなくても良く、例えばドライエアでも良い。これによれば、低酸素濃度の環境ではないものの、低湿度の環境を実現できる。
【0074】
また、容器ドア(FOUPドア)が、全閉位置から全開位置に移動する過程で一時的に傾斜姿勢となる(部分円弧状の軌跡を描くような動作を伴う)ものであっても構わない。
【0075】
ウェーハのアライメント処理を省略してもよい場合には、ウェーハ搬送空間にウェーハアライナを設けない構成にすることで、コストの削減を図ることができる。
【0076】
また、ガス導入装置を、流体の質量流量を計測しながら流量制御を行うマスフローコントローラ(MFC)以外の適宜の機器を用いて構成しても良い。また、ガス排気装置を、排気の量で内部の陽圧を保つ自動圧力制御機器(APC)以外の適宜の機器を用いて構成しても良い。例えば、ガス循環経路を形成するリターンダクトで不活性ガスを入れる構成にしてもよい。なお、リターンダクトで不活性ガスを入れると、流量が多い場合、筐体内で逆流が生じ得るおそれがある。そこで、ファンフィルタユニットよりも高い位置から筐体内に不活性ガスを導入することで、逆流の問題にも対処することができる。さらに、ファンフィルタユニットよりも高い位置から筐体内に不活性ガスを導入することで、ファンフィルタユニットよりも高い位置で局所的に気圧が高くなってラミナーフローが乱れないようになる。
【0077】
筐体内には、必ずしもガス循環経路が形成されていなくても良い。すなわち、ウェーハストッカは、気体を循環させず、ガス導入装置によって筐体内に供給された気体を排気装置によって全て排出するように構成されていても良い。
【0078】
ウェーハカセット1つあたりのウェーハ収容枚数は、例えば25枚であるが、25枚以外の枚数を多段状に収容可能なウェーハカセットを適用することも可能である。
【0079】
リターンダクトや送風機周辺にケミカルフィルタが設けられていてもよい。また、リターンダクトが筐体の側面に設けられていても良い。
【0080】
ウェーハストッカにおいて、ファンフィルタユニットが層流として下降気流を生成するものとしたが、これには限られない。ウェーハストッカは、例えば、ウェーハ搬送空間及びウェーハカセット搬送空間において水平方向に流れる層流を生成するように構成されていても良い。
【0081】
ローディング装置として、EFEMで用いるロードポートとは異なる専用のローディング装置を適用してもよい。
【0082】
また、本発明に係るウェーハストッカをソータとして使用することも可能である。この場合、ウェーハ搬送空間にウェーハアライナと共にウェーハ表裏反転機を設けることが好ましい。
【0083】
ウェーハカセットを用いずにウェーハを筐体内に保管する構成でもよく、ウェーハ搬送装置のハンドが複数枚同時にウェーハを保持して搬送できるように構成してもよい。また、ウェーハ搬送ロボットに上下移動機構を持たせることで、各棚にアクセスさせてウェーハを入れ替えるように構成することもできる。具体的には、図10に示すように、搬送システム1aが移動機構80を有していても良い。例えば、移動機構80は、ウェーハカセット棚3の前側且つ左右両側に立設された一対の柱状部材81と、略水平に配置され且つ柱状部材81に沿って不図示のモータ等によって上下移動可能な床部材82と、を有していても良い。床部材82の上には、上述したウェーハ搬送ロボット4及びウェーハアライナAと、複数のウェーハを一時的に貯蔵可能なバッファストッカ83とが配置されていても良い。ウェーハ搬送ロボット4は、FOUP10とバッファストッカ83との間でウェーハを移動させ、さらに、バッファストッカ83とウェーハカセット棚3との間でウェーハを移動させても良い。搬送システム1aは、ウェーハカセット移載装置5(図2参照)を備えていなくても良く、代わりに、気体が通過可能な通過路92が形成された垂直板91を備えていても良い。なお、床部材82には、ダウンフロー(層流)を生成するファンフィルタユニット84が取り付けられていても良い。これにより、例えば床部材82の上下移動に伴って発生する粉塵が飛び散ることを抑制できる。
【0084】
また、搬送システム1aのさらなる変形例として、図11に示すように、搬送システム1bにおいて、ウェーハ搬送ロボット4及び移動機構80等が、ウェーハカセット棚3の後側にも追加で設けられていても良い。
【0085】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 筐体
2 ローディング装置
3 ウェーハカセット棚
4 ウェーハ搬送ロボット
4S ウェーハ搬送室(ウェーハ搬送空間)
5 ウェーハカセット移載装置
5S ウェーハカセット搬送室(ウェーハカセット搬送空間)
8 ファンフィルタユニット
10 FOUP(搬送容器)
X ウェーハストッカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11