(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】乗り物用シート装置
(51)【国際特許分類】
B62J 1/12 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B62J1/12 B
(21)【出願番号】P 2021516106
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2020017084
(87)【国際公開番号】W WO2020218252
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2019081289
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】小川 達郎
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-088727(JP,A)
【文献】登録実用新案第3101384(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0200242(US,A1)
【文献】特開2015-033899(JP,A)
【文献】特開2013-006504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物の乗員が
跨るように着座する
鞍乗り型のシートと、
該シートの下方に取り付けられ、該シートの高さ位置を調整することが可能なシート高さ調整ユニットと、を備えた乗り物用シート装置であって、
該シート高さ調整ユニットは、
前記シートの高さ位置を調整するために、前記乗り物の本体に対して前記シートと一体的に回動する回動リンクと、
該回動リンクをシート前後方向及びシート幅方向の外側から覆う柔軟性を有するカバー部材と、を備え
、
前記カバー部材は、複数のシート材の端末同士を接合して構成される多面体であって、
前記端末同士を接合した部分が、前記カバー部材の稜線に位置していることを特徴とする乗り物用シート装置。
【請求項2】
乗り物の乗員が
跨るように着座する
鞍乗り型のシートと、
該シートの下方に取り付けられ、該シートの高さ位置を調整することが可能なシート高さ調整ユニットと、を備えた乗り物用シート装置であって、
該シート高さ調整ユニットは、
前記シートの高さ位置を調整するために、前記乗り物の本体に対して前記シートと一体的に回動する回動リンクと、
該回動リンクをシート前後方向及びシート幅方向の外側から覆う柔軟性を有するカバー部材と、を備え
、
前記シート高さ調整ユニットは、前記シートを通常位置と、該通常位置よりも上方に移動させた上方位置との間で移動させることが可能であって、
前記カバー部材は、
前記シートの移動動作に伴って形状変化し、前記シートが前記上方位置から前記通常位置へ移動したときに折り畳まれるように構成され、
前記カバー部材が折り畳まれたときに該カバー部材のうち、前記回動リンクに対応する側方部分が外側に張り出すようにカバー張り出し部を有していることを特徴とする乗り物用シート装置。
【請求項3】
前記シート高さ調整ユニットは、
前記シートと前記回動リンクの間に設けられ、前記回動リンクの上端部分が取り付けられる板状の上方リンク支持部材と、
前記回動リンクと前記乗り物の本体の間に設けられ、前記回動リンクの下端部分が取り付けられる下方リンク支持部材と、を備え、
前記回動リンクは、前記カバー部材、前記上方リンク支持部材及び前記下方リンク支持部材によって覆われていることを特徴とする請求項
1又は2に記載の乗り物用シート装置。
【請求項4】
前記カバー部材は、袋状からなり、前記回動リンク、前記上方リンク支持部材及び前記下方リンク支持部材を包むように構成されていることを特徴とする請求項
3に記載の乗り物用シート装置。
【請求項5】
前記カバー張り出し部は、
前記カバー部材の側方部の一部を外側に折り曲げて形成され、
前記カバー部材の側方部における複数の角部のうち、前記回動リンクが最も近接した位置にある角部の周辺位置に配置されていることを特徴とする請求項
2に記載の乗り物用シート装置。
【請求項6】
前記カバー張り出し部は、
前記折り曲げられた部分を接合することで形成され、
前記カバー部材の側方部において前記角部を規定する2つの稜線の間に配置されていることを特徴とする請求項
5に記載の乗り物用シート装置。
【請求項7】
前記回動リンクは、シート前後方向において異なる位置に配置される前方リンク及び後方リンクを有し、
前記カバー張り出し部は、
前記前方リンク及び前記後方リンクのうち、駆動リンクとなるリンクに対応する側方部分に配置されており、かつ、
前記カバー部材の側方部において前記駆動リンクが最も近接した位置にある前記角部を起点として、該角部を規定する2つの前記稜線の間の中央線に沿って延びていることを特徴とする請求項
6に記載の乗り物用シート装置。
【請求項8】
乗り物の乗員が
跨るように着座する
鞍乗り型のシートと、
該シートの下方に取り付けられ、該シートの高さ位置を調整することが可能なシート高さ調整ユニットと、を備えた乗り物用シート装置であって、
該シート高さ調整ユニットは、
前記シートの高さ位置を調整するために、前記乗り物の本体に対して前記シートと一体的に回動する回動リンクと、
該回動リンクをシート前後方向及びシート幅方向の外側から覆う柔軟性を有するカバー部材と、
前記シートと前記回動リンクの間に設けられ、前記回動リンクの上端部分が取り付けられる板状の上方リンク支持部材と、
前記回動リンクと前記乗り物の本体の間に設けられ、前記回動リンクの下端部分が取り付けられる下方リンク支持部材と、を備え、
前記回動リンクは、前記カバー部材、前記上方リンク支持部材及び前記下方リンク支持部材によって覆われており、
前記カバー部材の上面及び底面には、前記シート高さ調整ユニットの構成部品を取り入れ又は取り出しするための開口穴がそれぞれ形成され、
前記カバー部材の上面に形成された上方開口穴は、前記上方リンク支持部材の上面に対応する位置に配置され、
前記カバー部材の底面に形成された下方開口穴は、前記下方リンク支持部材の底面に対応する位置に配置されていることを特徴とする乗り物用シート装置。
【請求項9】
前記カバー部材の上面、底面それぞれには、前記開口穴として、前記カバー部材の上面及び底面における中央部分に設けられた中央穴部と、該中央穴部から放射状に延びているスリット状の複数のスリット穴部と、が形成され、
前記カバー部材の上面、底面それぞれには、前記上方リンク支持部材、前記下方リンク支持部材に取り付けるための上方カバー取り付け部、下方カバー取り付け部が形成され、
前記上方カバー取り付け部、前記下方カバー取り付け部は、それぞれ前記カバー部材の面のうち、隣り合うように形成された前記スリット穴部の間に配置されていることを特徴とする請求項
8に記載の乗り物用シート装置。
【請求項10】
乗り物の乗員が着座するシートと、
該シートの下方に取り付けられ、該シートの高さ位置を調整することが可能なシート高さ調整ユニットと、
前記シート高さ調整ユニットと前記乗り物の本体との上下方向の間に取り付けられ、前記乗り物の本体から前記シート高さ調整ユニットへ伝わる振動を抑制するための振動抑制部材と、を備えた乗り物用シート装置であって、
前記シート高さ調整ユニットは、
前記シートの高さ位置を調整するために、前記乗り物の本体に対して前記シートと一体的に回動する回動リンクと、
該回動リンクをシート前後方向及びシート幅方向の外側から覆う柔軟性を有するカバー部材と、を備え、
前記振動抑制部材は、シート前後方向及びシート幅方向に所定の間隔を空けて複数配置されており、
前記シート高さ調整ユニットは、前記乗り物の本体上に取り付けられる車体取り付けプレートを備え、
該車体取り付けプレートには、前記乗り物の本体に設けられた被組み付け部に上下方向から組み付けるための車体組み付け部が形成され、
前記振動抑制部材は、前記車体組み付け部又は前記被組み付け部に取り付けられていることを特徴とする乗り物用シート装置。
【請求項11】
前記車体取り付けプレートは、前記車体組み付け部となる車体組み付け穴と、前記被組み付け部となる組み付け穴とが連通した状態で組み付けボルトが組み付けられることで、前記乗り物の本体上に取り付けられ、
前記振動抑制部材は、前記車体組み付け穴に嵌め込まれて取り付けられ、
前記振動抑制部材は、前記組み付けボルトを貫通させるための貫通穴を有していることを特徴とする請求項
10に記載の乗り物用シート装置。
【請求項12】
前記シート高さ調整ユニットは、前記回動リンクと前記車体取り付けプレートの間に設けられ、前記回動リンクの下端部分が取り付けられる下方リンク支持部材を備え、
前記車体取り付けプレートには、前記下方リンク支持部材に設けられた被取り付け部に上下方向から取り付けるための取り付け部が形成され、
前記振動抑制部材は、前記車体組み付け部又は前記被組み付け部に取り付けられる第1振動抑制部材と、前記取り付け部又は前記被取り付け部に取り付けられる第2振動抑制部材と、を有し、
前記第1振動抑制部材は、シート前後方向及びシート幅方向において前記第2振動抑制部材を挟むように複数配置されていることを特徴とする請求項
10又は11に記載の乗り物用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物用シート装置に係り、特に、乗員が跨るように着座する鞍乗り型のシートを備えた乗り物用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オートバイ、雪上バイク、水上バイク等に使用される鞍乗り型のシートと、シートの高さ位置を調整することが可能なシート高さ調整ユニットと、を備えた乗り物用シート装置が知られており、当該シート高さ調整ユニットをコンパクトに配置するための技術、効率良く動作させるための技術が種々提案されているところである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の乗り物用シート装置では、シート高さ調整ユニットが、シートを下方から支持するシート支持プレートと、シートの位置を調整する際に支持プレートと一体的に回動する回動リンクと、回動リンクの1つが駆動リンクとなって駆動リンクを動作させるためのモータ装置と、を備えており、回動リンクは、シート前後方向において異なる位置に設けられた前側リンク及び後側リンクを有している。そして、前側リンク及び後側リンクが、シート支持プレートのうち、シートに乗員が着座したときに乗員の臀部の直下に位置する部分に取り付けられている。
上記構成により、シートの高さ位置を調整するときに、乗員の臀部が乗ったシート部分を各回動リンクの回動動作によって効率良く動かすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような乗り物用シート装置では、シート高さ調整ユニットが、シートの高さ位置を調整するための回動リンク(駆動リンク)やモータ装置を備えているところ、これら回動リンクやモータ装置を好適に動作させるためには、当該動作部分において塵や埃等の異物が外部から極力入り込まないように工夫することが求められていた。
特に、オートバイ等の鞍乗り型シートにおいてシートの高さ位置を調整可能なシートにおいては、直接風雨に曝されるため、より一層異物から保護することが求められていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シートの高さ位置を調整可能なシート高さ調整ユニットの構成部品を外部から好適に保護することが可能な乗り物用シート装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の乗り物用シート装置によれば、乗り物の乗員が跨るように着座する鞍乗り型のシートと、該シートの下方に取り付けられ、該シートの高さ位置を調整することが可能なシート高さ調整ユニットと、を備えた乗り物用シート装置であって、該シート高さ調整ユニットは、前記シートの高さ位置を調整するために、前記乗り物の本体に対して前記シートと一体的に回動する回動リンクと、該回動リンクをシート前後方向及びシート幅方向の外側から覆う柔軟性を有するカバー部材と、を備え、前記カバー部材は、複数のシート材の端末同士を接合して構成される多面体であって、前記端末同士を接合した部分が、前記カバー部材の稜線に位置していること、により解決される。
上記構成により、シートの高さ位置を調整するために動作する構成部品(回動リンク)を外部から好適に保護することが可能な乗り物用シート装置を実現することができる。
詳しく述べると、柔軟性を有するカバー部材によって回動リンクを覆っているため、シートが高さ方向において上下移動した場合であっても、シートの上下移動に追従してカバー部材が形状変化することができ、回動リンクを塵や埃等の異物から常に保護することができる。
また上記構成により、多面体からなるカバー部材を容易に製造することができる。
【0008】
また前記課題は、本発明の乗り物用シート装置によれば、乗り物の乗員が跨るように着座する鞍乗り型のシートと、該シートの下方に取り付けられ、該シートの高さ位置を調整することが可能なシート高さ調整ユニットと、を備えた乗り物用シート装置であって、該シート高さ調整ユニットは、前記シートの高さ位置を調整するために、前記乗り物の本体に対して前記シートと一体的に回動する回動リンクと、該回動リンクをシート前後方向及びシート幅方向の外側から覆う柔軟性を有するカバー部材と、を備え、前記シート高さ調整ユニットは、前記シートを通常位置と、該通常位置よりも上方に移動させた上方位置との間で移動させることが可能であって、前記カバー部材は、前記シートの移動動作に伴って形状変化し、前記シートが前記上方位置から前記通常位置へ移動したときに折り畳まれるように構成され、前記カバー部材が折り畳まれたときに該カバー部材のうち、前記回動リンクに対応する側方部分が外側に張り出すようにカバー張り出し部を有していること、により解決される。
上記構成により、シートと一体的に移動する回動リンクが上方位置から通常位置へ移動して、カバー部材が折り畳まれたときに、回動リンクとカバー部材の側方部分とのクリアランスを確保することができる。そのため、カバー部材の側方部分が、回動リンクとリンク支持部材によって挟まれてしまうことを抑制できる。
【0009】
このとき、前記シート高さ調整ユニットは、前記シートと前記回動リンクの間に設けられ、前記回動リンクの上端部分が取り付けられる板状の上方リンク支持部材と、前記回動リンクと前記乗り物の本体の間に設けられ、前記回動リンクの下端部分が取り付けられる下方リンク支持部材と、を備え、前記回動リンクは、前記カバー部材、前記上方リンク支持部材及び前記下方リンク支持部材によって覆われていると良い。
また、前記カバー部材は、袋状からなり、前記回動リンク、前記上方リンク支持部材及び前記下方リンク支持部材を包むように構成されていると良い。
上記構成により、直接風雨に曝されるようなオートバイ等の鞍乗り型シートにおいて、回動リンクを外部から好適に保護することができる。
また、回動リンクは、カバー部材、上方リンク支持部材及び下方リンク支持部材によって覆われているため、回動リンクをシート前後方向及びシート幅方向の外側からだけでなく、シート上下方向の外側からも保護することができる。
また上記構成により、シート高さ調整ユニット(回動リンク)の動作部分及びその周辺部分において塵や埃、水等の異物が外部から極力入り込まないように保護することができる。
【0012】
このとき、前記カバー張り出し部は、前記カバー部材の側方部の一部を外側に折り曲げて形成され、前記カバー部材の側方部における複数の角部のうち、前記回動リンクが最も近接した位置にある角部の周辺位置に配置されていると良い。
また、前記カバー張り出し部は、前記折り曲げられた部分を接合することで形成され、前記カバー部材の側方部において前記角部を規定する2つの稜線の間に配置されていると良い。
上記構成により、カバー部材が折り畳まれたときに、カバー部材の側方部分が、回動リンクとリンク支持部材によって挟まれてしまうことを一層抑制できる。その結果、シート高さ調整ユニットをより滑らかに動作させることができる。
【0013】
このとき、前記回動リンクは、シート前後方向において異なる位置に配置される前方リンク及び後方リンクを有し、前記カバー張り出し部は、前記前方リンク及び前記後方リンクのうち、駆動リンクとなるリンクに対応する側方部分に配置されており、かつ、前記カバー部材の側方部において前記駆動リンクが最も近接した位置にある前記角部を起点として、該角部を規定する2つの前記稜線の間の中央線に沿って延びていると良い。
上記構成により、前後の回動リンクのうち、特に駆動リンクとなるリンクを外部から好適に保護しているため、シート高さ調整ユニットをより滑らかに動作させることができる。
【0014】
また前記課題は、本発明の乗り物用シート装置によれば、乗り物の乗員が跨るように着座する鞍乗り型のシートと、該シートの下方に取り付けられ、該シートの高さ位置を調整することが可能なシート高さ調整ユニットと、を備えた乗り物用シート装置であって、該シート高さ調整ユニットは、前記シートの高さ位置を調整するために、前記乗り物の本体に対して前記シートと一体的に回動する回動リンクと、該回動リンクをシート前後方向及びシート幅方向の外側から覆う柔軟性を有するカバー部材と、前記シートと前記回動リンクの間に設けられ、前記回動リンクの上端部分が取り付けられる板状の上方リンク支持部材と、前記回動リンクと前記乗り物の本体の間に設けられ、前記回動リンクの下端部分が取り付けられる下方リンク支持部材と、を備え、前記回動リンクは、前記カバー部材、前記上方リンク支持部材及び前記下方リンク支持部材によって覆われており、前記カバー部材の上面及び底面には、前記シート高さ調整ユニットの構成部品を取り入れ又は取り出しするための開口穴がそれぞれ形成され、前記カバー部材の上面に形成された上方開口穴は、前記上方リンク支持部材の上面に対応する位置に配置され、前記カバー部材の底面に形成された下方開口穴は、前記下方リンク支持部材の底面に対応する位置に配置されていること、により解決される。
上記構成により、シート高さ調整ユニットの構成部品となる回動リンク、上方リンク支持部材及び下方リンク支持部材をカバー部材の内部に取り入れることや、カバー部材の内部から取り出すことが容易になる。
また、カバー部材がこれら構成部品を略全体的に外部から覆っているため、カバー部材による保護機能が向上する。
【0015】
このとき、前記カバー部材の上面、底面それぞれには、前記開口穴として、前記カバー部材の上面及び底面における中央部分に設けられた中央穴部と、該中央穴部から放射状に延びているスリット状の複数のスリット穴部と、が形成され、前記カバー部材の上面、底面それぞれには、前記上方リンク支持部材、前記下方リンク支持部材に取り付けるための上方カバー取り付け部、下方カバー取り付け部が形成され、前記上方カバー取り付け部、前記下方カバー取り付け部は、それぞれ前記カバー部材の面のうち、隣り合うように形成された前記スリット穴部の間に配置されていると良い。
上記構成により、カバー部材の上面、底面それぞれにおいて開口穴と、カバー取り付け部との干渉を避けた配置にすることができる。そのため、カバー部材に対するシート高さ調整ユニットの構成部品の出し入れを容易にできる。さらに、カバー部材と上下のリンク支持部材との取り付け剛性を高めることもできる。
【0016】
また前記課題は、本発明の乗り物用シート装置によれば、乗り物の乗員が着座するシートと、該シートの下方に取り付けられ、該シートの高さ位置を調整することが可能なシート高さ調整ユニットと、前記シート高さ調整ユニットと前記乗り物の本体との上下方向の間に取り付けられ、前記乗り物の本体から前記シート高さ調整ユニットへ伝わる振動を抑制するための振動抑制部材と、を備えた乗り物用シート装置であって、前記シート高さ調整ユニットは、前記シートの高さ位置を調整するために、前記乗り物の本体に対して前記シートと一体的に回動する回動リンクと、該回動リンクをシート前後方向及びシート幅方向の外側から覆う柔軟性を有するカバー部材と、を備え、前記振動抑制部材は、シート前後方向及びシート幅方向に所定の間隔を空けて複数配置されており、前記シート高さ調整ユニットは、前記乗り物の本体上に取り付けられる車体取り付けプレートを備え、該車体取り付けプレートには、前記乗り物の本体に設けられた被組み付け部に上下方向から組み付けるための車体組み付け部が形成され、前記振動抑制部材は、前記車体組み付け部又は前記被組み付け部に取り付けられていること、により解決される。
上記構成により、乗り物の本体からシート高さ調整ユニットへ伝わる振動を効率良く抑制することができ、シート高さ調整ユニットの構成部品を保護することができる。
また上記構成により、乗物の本体上にシート高さ調整ユニット及び振動抑制部材を効率良く取り付けることができる。
【0018】
このとき、前記車体取り付けプレートは、前記車体組み付け部となる車体組み付け穴と、前記被組み付け部となる組み付け穴とが連通した状態で組み付けボルトが組み付けられることで、前記乗り物の本体上に取り付けられ、前記振動抑制部材は、前記車体組み付け穴に嵌め込まれて取り付けられ、前記振動抑制部材は、前記組み付けボルトを貫通させるための貫通穴を有していると良い。
上記構成により、振動抑制部材を容易に取り付けることができ、かつ、振動抑制部材を取り付けた後は振動抑制部材が外れ難い構造となる。
【0019】
このとき、前記シート高さ調整ユニットは、前記回動リンクと前記車体取り付けプレートの間に設けられ、前記回動リンクの下端部分が取り付けられる下方リンク支持部材を備え、前記車体取り付けプレートには、前記下方リンク支持部材に設けられた被取り付け部に上下方向から取り付けるための取り付け部が形成され、前記振動抑制部材は、前記車体組み付け部又は前記被組み付け部に取り付けられる第1振動抑制部材と、前記取り付け部又は前記被取り付け部に取り付けられる第2振動抑制部材と、を有し、前記第1振動抑制部材は、シート前後方向及びシート幅方向において前記第2振動抑制部材を挟むように複数配置されていると良い。
上記のように、第1振動抑制部材及び第2振動抑制部材の配置パターンを工夫することで、乗り物の本体からシート高さ調整ユニットへ伝わる振動を一層効率良く抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、シートの高さ位置を調整するために動作する構成部品(回動リンク)を外部から好適に保護することが可能な乗り物用シート装置を実現できる。
また本発明によれば、直接風雨に曝されるようなオートバイ等の鞍乗り型シートにおいて、回動リンクを外部から好適に保護することができる。また、回動リンクをシート前後方向及びシート幅方向の外側からだけでなく、シート上下方向の外側からも保護できる。
また発明によれば、シート高さ調整ユニット(回動リンク)の動作部分において塵や埃、水等の異物が外部から極力入り込まないように保護できる。
また発明によれば、多面体からなるカバー部材を容易に製造することができる。
また発明によれば、カバー部材の側方部分が、回動リンクとリンク支持部材によって挟まれてしまうことを抑制できる。
また発明によれば、シート高さ調整ユニットをより滑らかに動作させることができる。
また発明によれば、シート高さ調整ユニットの構成部品となる回動リンク、上方リンク支持部材及び下方リンク支持部材をカバー部材の内部に取り入れることや、カバー部材の内部から取り出すことが容易になる。また、カバー部材による保護機能が向上する。
また発明によれば、カバー部材に対するシート高さ調整ユニットの構成部品の出し入れを容易にできる。さらに、カバー部材と上下のリンク支持部材との取り付け剛性を高めることもできる。
【0021】
また発明によれば、乗り物の本体からシート高さ調整ユニットへ伝わる振動を効率良く抑制することができ、シート高さ調整ユニットの構成部品を保護することができる。
また発明によれば、乗物の本体上にシート高さ調整ユニット及び振動抑制部材を効率良く取り付けることができる。
また発明によれば、振動抑制部材を容易に取り付けることができ、かつ、振動抑制部材を取り付けた後は振動抑制部材が外れ難い構造となる。
また発明によれば、乗り物の本体からシート高さ調整ユニットへ伝わる振動を一層効率良く抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態の乗り物用シート装置を搭載した自動二輪車を示す図である。
【
図2】シート、シート高さ調整ユニット及び車体の分解斜視図である。
【
図3】シート高さ調整ユニットの分解斜視図である。
【
図4】シート高さ調整ユニットの分解斜視図であって、回動リンクを示す図である。
【
図5A】シート高さ調整ユニットが通常位置にいるときの側面図である。
【
図5B】シート高さ調整ユニットが上方位置にいるときの側面図である。
【
図6】シート高さ調整ユニットの制御機構を示すブロック図である。
【
図7】シート高さ調整ユニットのカバー部材を示す図である。
【
図8】カバー付きシート高さ調整ユニットの斜視図である。
【
図9】カバー付きシート高さ調整ユニットの底面図である。
【
図10A】上方位置にいるカバー付きシート高さ調整ユニットを斜め後ろから見たときの斜視図である。
【
図10B】通常位置にいるカバー付きシート高さ調整ユニットを斜め後ろから見たときの斜視図である。
【
図11A】上方位置にいるカバー付きシート高さ調整ユニットを正面から見たときの斜視図である。
【
図11B】通常位置にいるカバー付きシート高さ調整ユニットを正面から見たときの斜視図である。
【
図12】第2実施形態のシート高さ調整ユニットを示す側面図である。
【
図13】第3実施形態のシート高さ調整ユニットを示す側面図である。
【
図14】以下、第4実施形態のシート高さ調整ユニット及び車体の分解斜視図である。
【
図15A】組み付けボルト、保持部材及び振動抑制部材の分解斜視図である。
【
図16】
図14のA-A断面であって、振動抑制部材の組み付け構造を示す図である。
【
図17】
図14のB-B断面であって、振動抑制部材の組み付け構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る乗り物用シート装置について、
図1-
図17を参照しながら説明する。
本実施形態は、乗員が跨るように着座する鞍乗り型のシートと、シートの下方に取り付けられ、シートの高さ位置を調整することが可能なシート高さ調整ユニットとを備えた乗り物用シート装置であって、シート高さ調整ユニットが、シートの高さ位置を調整するために、乗り物の本体に対してシートと一体的に回動する回動リンクと、シートと回動リンクの間に設けられ、回動リンクの上端部分が取り付けられる上方リンク支持部材と、回動リンクと乗り物の本体の間に設けられ、回動リンクの下端部分が取り付けられる下方リンク支持部材と、回動リンクをシート前後方向及びシート幅方向の外側から覆う柔軟性を有するカバー部材と、を備えていることを主な特徴とする乗り物用シート装置の発明に関するものである。
【0024】
本実施形態のシート装置Sは、
図1、
図2に示すように、自動二輪車の乗員が着座するシート1と、シート1の下方に取り付けられ、シート1の高さ位置を調整することが可能なシート高さ調整ユニット10と、を備えた乗り物用のシート装置であって、車体B上にセットされて取り付けられる。
このとき、シート高さ調整ユニット10は、車体Bの内部に取り付けられ、上下方向においてシート1と車体Bの間に配置されることになる。
【0025】
シート1は、
図1、
図2に示すように、自動二輪車の着座部を構成する部材であって、ベース基板となるボトムプレート1aと、ボトムプレート1a上に載置されるクッション材1bと、ボトムプレート1a及びクッション材1bを被覆する表皮材1cと、から主に構成されている。
なお、シート1は、タッカー針等の取り付け部材を用いて、表皮材1cの端末となる表皮端末部をボトムプレート1aの裏面に取り付ける表皮端末処理が行われている。
ボトムプレート1aは、ポリプロピレン、ポリエチレン等を原材料とする板状の合成樹脂成形品からなり、クッション材1bは、発泡ウレタン等を用いた弾性部材からなる。
表皮材1cは、ポリ塩化ビニル系レザー等を用いた被覆材からなり、直接風雨に曝される自動二輪車用の表皮材として好適なものとなっている。
【0026】
シート1は、
図2に示すように、車体B及びシート支持プレート20によって下方から支持されており、シート支持プレート20上に着脱可能となるように取り付けられている。
また、シート1は、乗員による操作ボタンの操作によってシート高さ調整ユニット10を動作させることで、車体Bに対して上下方向に移動することができる。
そのため、乗員の体格や乗員の好みに応じてシート高さを調整することや、自動二輪車の走行速度に応じてシート高さを調整することが可能となる。
【0027】
シート高さ調整ユニット10は、
図2-
図4に示すように、シート1を通常位置と、通常位置よりも上方に移動させた上方位置との間で移動させることが可能なユニットであって、シート1を下方から支持するシート支持プレート20と、車体B上に取り付けられる車体取り付けプレート30と、シート支持プレート20及び車体取り付けプレート30の上下方向の間においてシート支持プレート20側に取り付けられる上方リンク支持部材40と、車体取り付けプレート30側に取り付けられる下方リンク支持部材50と、上方リンク支持部材40及び下方リンク支持部材50を連結する回動リンク60と、回動リンク60を回動させるためのモータ装置70と、モータ装置70を制御するECU80と、から主に構成されている。
また、シート高さ調整ユニット10は、
図7に示すように、上方リンク支持部材40、下方リンク支持部材50、回動リンク60及びモータ装置70を外側から覆う柔軟性(可撓性)を有するカバー部材90をさらに備えている。
【0028】
シート支持プレート20は、略T字形状体からなる金属製の板状プレートであって、シート1(ボトムプレート1a)の底面に一体的に取り付けられるプレート前方部20a及びプレート後方部20bと、プレート前方部20a及びプレート後方部20bの間に配置され、上方リンク支持部材40上に一体的に取り付けられるプレート中央部20cと、から主に構成されている。
プレート中央部20cは、乗員がシート1に着座したときに乗員の臀部の直下に位置する部分であって、乗員からの着座荷重を受ける部分に相当する。
プレート中央部20cの上面には、上方リンク支持部材40を取り付けるための複数の取り付け穴21と、取り付け穴21とは異なる位置において上方に出っ張るように設けられ、後述のクリップ部材45との干渉を抑制するための逃がし凸部22と、がそれぞれ形成されている。
【0029】
取り付け穴21は、略円形状の貫通穴であって、プレート中央部20cの前方部分及び後方部分においてシート幅方向に間隔を空けて2カ所形成され、計4カ所となるように形成されている。
逃がし凸部22は、略円形状の出っ張り部であって、取り付け穴21に隣接した位置にそれぞれ形成され、取り付け穴21を囲むようにして計6カ所形成されている。
なお、プレート中央部20cのシート前後方向の中央部分には、シート前後方向に延びる補強ビード23がシート幅方向に間隔を空けて2カ所形成されている。
【0030】
車体取り付けプレート30は、
図2、
図3に示すように、金属製の板状プレートを略箱形状に加工した部材であって、車体B上にシート高さ調整ユニット10を取り付けるための機能と、シート高さ調整ユニット10の構成部品をシート支持プレート20とで挟み込むように保持する機能とを有している。
車体取り付けプレート30のうち、シート幅方向の中央部分において回動リンク60やモータ装置70の取り付け位置に対応する部分には、下方リンク支持部材50を取り付けるための複数の取り付け穴31が形成されている。また、取り付け穴31と異なる位置には、
図8に示すハーネス75を挿通させるためのハーネス通し穴32が形成されている。
取り付け穴31は、略円形状の貫通穴であって、シート前後方向及びシート幅方向に間隔を空けて計4カ所となるように形成されている。
なお、車体取り付けプレート30のうち、取り付け穴31に隣接した位置には、下方に出っ張るように設けられ、不図示のクリップ部材との干渉を抑制するための不図示の逃がし凸部が複数形成されている。
【0031】
上方リンク支持部材40は、
図3、
図4に示すように、縦断面略逆U字形状からなる金属製の板状部材であって、回動リンク60及びモータ装置70を上方及び側方から覆うように配置されている。
上方リンク支持部材40は、シート前後方向に延びる上壁部40aと、上壁部40aのシート幅方向の両端部からそれぞれ連続して下方に延びている左右の側壁部40bと、上壁部40aの後端部から連続して下方に延びており、左右の側壁部40bに連結されている後壁部40cと、から主に構成されている。
【0032】
上壁部40aには、シート支持プレート20に取り付けるために、各取り付け穴21に対応する位置において取り付け穴41がそれぞれ形成されている。
また、上壁部40aには、
図8に示すように、取り付け穴41とは異なる位置において、カバー部材90を取り付けるためのカバー取り付け穴42が複数形成されている。
カバー取り付け穴42は、略円形状の貫通穴であって、取り付け穴41に隣接した位置にそれぞれ形成され、各取り付け穴21を囲むようにして計6カ所形成されている。
【0033】
側壁部40bの前方部分には、前方リンク61の上端部分が上方リンク回動軸43を介して回動可能となるように取り付けられている。
また、側壁部40bの後方部分には、後方リンク62の上端部分が上方リンク回動軸44を介して回動可能に取り付けられている。
【0034】
上記構成において、
図3、
図4に示すように、各カバー取り付け穴42は、上下方向においてシート支持プレート20の各逃がし凸部22と対向する位置に配置されている。
そのため、
図7に示すように、カバー取り付け穴42にクリップ部材45が取り付けられたときに、クリップ部材45の頭部と、シート支持プレート20とが干渉することがなく、各構成部品をコンパクトに配置することができる。
【0035】
下方リンク支持部材50は、
図3、
図4に示すように、金属製の板状プレートを略箱形状に加工した部材であって、回動リンク60及びモータ装置70を下方及び側方から覆うように収納して配置されている。
下方リンク支持部材50は、シート前後方向に延びる底壁部50aと、底壁部50aのシート幅方向の両端部からそれぞれ連続して上方に延びている左右の側壁部50bと、底壁部50aのシート前後方向の両端部からそれぞれ連続して上方に延びている前壁部50c及び後壁部50dと、から主に構成されている。
【0036】
底壁部50aには、車体取り付けプレート30に取り付けるための複数の取り付け穴51と、取り付け穴51とは異なる位置において、カバー部材90を取り付けるための複数のカバー取り付け穴52と、が形成されている。
また、底壁部50aの上面には、モータ装置70を取り付けるためのモータ取り付けブラケット70aが取り付けられており、底壁部50aのうち、モータ装置70が取り付けられた部分と異なる位置には、
図7-
図9に示すハーネス75を挿通させるためのハーネス通し穴53がさらに形成されている。
【0037】
側壁部50bの前方部分には、前方リンク61の下端部分が下方リンク回動軸54を介して回動可能となるように取り付けられている。
また、側壁部50bの後方部分には、後方リンク62の下端部分が下方リンク回動軸55を介して回動可能に取り付けられている。
側壁部50bのうち、下方リンク回動軸54、55の間の部分には、回動リンク60及びモータ装置70の組付け状態を確認するための確認用穴56が形成されている。
【0038】
回動リンク60は、
図3-
図5A、Bに示すように、シート1の高さ位置を調整するために、車体B側にある下方リンク支持部材50に対してシート1側にある上方リンク支持部材40を上下方向に移動させるように回動する部材である。
回動リンク60は、シート前後方向において異なる位置に配置される前方リンク61及び後方リンク62からなり、後方リンク62が駆動リンクとなって、
図5Aに示す通常位置と、
図5Bに示す上方位置との間で回動するように構成されている。
詳しく述べると、後方リンク62の外周部分の一部には、歯車としてセクターギア部64が形成されており、モータ装置70の側方部分から外側に突出するように設けられたピニオンギア73と噛み合わされている。
モータ装置70が動作すると、モータ本体71の回転動作に伴ってピニオンギア73が回転し、ピニオンギア73とセクターギア部64の噛み合い位置が変化する。そして、セクターギア部64が形成された後方リンク62が回転し、後方リンク62に従動して、前方リンク61も回転する。その結果、シート1が昇降し、シート高さが調整されることになる。
【0039】
前方リンク61は、
図4に示すように、シート幅方向に間隔を空けて配置された左右のリンク部61aと、左右のリンク部61aの上端部を連結するリンク連結部61bと、から構成されている。
リンク部61aは、シート前後方向に長尺な略楕円形状の板部材からなり、その前端部分が上方リンク支持部材40に回動可能に取り付けられ、その後方部分が下方リンク支持部材50に取り付けられている。
リンク連結部61bは、モータ装置70との干渉を避けるために、リンク部61aの前端部から後端部に向かうにしたがって上方傾斜した形状となっている。
【0040】
後方リンク62は、前方リンク61とは異なる形状を有しており、左右のリンク部62aと、左右のリンク部62aの中央部を連結するリンク連結部62bと、から構成されている。
リンク部62aは、シート前後方向に長尺な略V字形状(略ブーメラン形状)の板部材からなり、その前端部分が上方リンク支持部材40に回動可能に取り付けられ、その後方部分が下方リンク支持部材50に取り付けられている。
左右のリンク部62aの上端における外周部分には、下方に向かって湾曲したリンク湾曲部63が形成されている。
また、左右のリンク部62aは、互いに異なる形状を有しており、左右のリンク部62aのうち、一方のリンク部62aの前端における外周部分には、セクターギア部64が形成されている。セクターギア部64は、ピニオンギア73と噛み合わされている。
【0041】
上記構成において回動リンク60は、
図5Aに示す通常位置と、
図5Bに示す上方位置との間で回転移動する。
回動リンク60が
図5Aに示す通常位置にいるときに、シート側方から見て上方リンク支持部材と下方リンク支持部材の上下方向の間には隙間Gが形成されている。
そのため、上方リンク支持部材40と下方リンク支持部材50によって異物が挟まれることや、組み付け作業者の手が誤って挟まれることがなくなる。
また、回動リンク60が
図5Aに示す通常位置にいるときに、シート側方から見て後方リンク62のリンク湾曲部63の外周部分(上端部分)と、下方リンク支持部材50の外周部分(上端部分)とが重なる位置に配置されている。
そのため、上方リンク支持部材40と回動リンク60(後方リンク62)によって異物等が挟まれることがなくなる。
【0042】
また上記構成において、
図4に示すように、前方リンク61のリンク部61aにおいて上方リンク回動軸43と下方リンク回動軸54のシート前後方向の距離(直線距離)D1は、後方リンク62のリンク部62aにおいて上方リンク回動軸44と下方リンク回動軸55のシート前後方向の距離D3と等しくなっている。
また、前方リンク61において左右のリンク部61aのシート幅方向の距離(直線距離)D2と、後方リンク62において左右のリンク部62aのシート幅方向の距離D4とが等しくなっている。
そのため、回動リンク60が滑らかに動作することになる。
なお、距離D1と距離D2が異なっていても良く、また距離D3と距離D4が異なっていても良い。
【0043】
モータ装置70は、
図4に示すように、回動リンク60を回動させるための駆動装置であって、モータ取り付けブラケット70aを介して下方リンク支持部材50に水平位置となるように取り付けられている。
モータ装置70は、シート前後方向に長尺なモータ本体71と、モータ本体71の後端部に取り付けられ、モータ本体71の回転エネルギーを伝達するための伝達部材72と、伝達部材72の回転に伴って回転するピニオンギア73と、伝達部材72及びモータ取り付けブラケット70aを連結する連結ロッド74と、から主に構成されている。
また、モータ装置70は、
図5Aに示すように、モータ本体71とECU80を接続するためのハーネス75をさらに備えている。
モータ本体71の上端部には、ハーネス75の一端部を接続させるためのハーネス接続部71aが設けられており、ハーネス接続部71aに接続されたハーネス75は、下方リンク支持部材50に形成されたハーネス通し穴を通過して下方に延びて、車体Bの所定位置に設けられたECU80及び不図示のバッテリーと接続されることになる。
なお、バッテリーは、モータ本体71に電力を供給するための蓄電池である。
【0044】
ECU80は、
図6に示すように、モータ装置70を制御する電子制御装置(Electronic Control Unit)であって、乗員による操作ボタン81の操作に伴ってモータ装置70の制御を実行し、所定の条件を満たしたときに、モータ装置70を駆動させるための信号をモータ装置70に向けて送信する。
上記構成において、ECU80は、自動二輪車の走行速度に応じてモータ装置70を制御する。これにより、回動リンク60の回転向き及び回転量が制御され、シート1の高さ位置が走行速度に応じた位置に調整される。
【0045】
詳しく述べると、ECU80は、自動二輪車の走行速度検知用のセンサ82を備えており、走行速度をモニタリングしている。すなわち、センサ82は、走行速度を検知すると、その検知結果に応じた信号を出力するセンサであって、ECU80は、センサ82からの出力信号を受信することで、走行速度を特定する。
走行速度の特定後、ECU80は、特定した走行速度と、予め記憶された所定の閾値とを比較し、シート1の高さ調整を実行するか否かを判定する。
所定の閾値は2種類あって、一つは、シート1を通常位置から上方位置へ移動させるか否かを判断するための「走行時用閾値」であって、もう一つは、シート1を上方位置から通常位置へ移動させるか否かを判断するための「減速時用閾値」である。
例えば、特定された走行速度が「走行時用閾値」以上となった場合には、ECU80がシート1を上昇動作させるようにモータ装置70を制御する。その後、特定された走行速度が「減速時用閾値」以下となった場合には、ECU80がシート1を下降動作させるようにモータ装置70を制御する。
【0046】
カバー部材90は、
図7-
図11A、Bに示すように、袋状からなり、上方リンク支持部材40、下方リンク支持部材50、回動リンク60及びモータ装置70を包むように構成されている柔軟性を有するレザーカバー(合成皮革のカバー)である。
カバー部材90の樹脂材料としては、特に塩化ビニルレザー(PVCレザー)であることが好ましい。
カバー部材90は、複数のシート材の端末同士を接合して構成される略六面体からなり、シート材の端末同士を接合した部分が、カバー部材の稜線に位置している。
なお、シート材の端末同士を接合する接合方法としては、シート材の端末同士を重ね合わせた上で溶着(ウェルダー溶着)する方法が用いられると良いが、特に限定されることなく、縫製や接着等の一般的な接合方法が用いられても良い。
【0047】
カバー部材90は、シート1(回動リンク60)の移動動作に伴って形状変化し、シート1(回動リンク60)が上方位置から通常位置へ移動したときに、
図10Aから
図10Bへ折り畳まれるように構成されている。
カバー部材90が折り畳まれたときに、カバー部材90のうち、回動リンク60(後方リンク62)に対応する側方部分が外側に張り出すようにカバー張り出し部91が形成されている。
【0048】
カバー張り出し部91は、
図8、
図10Aに示すように、カバー部材90の側方部90bの一部を外側に折り曲げて形成されており、カバー部材90の側方部90bにおける複数の角部のうち、後方リンク62が最も近接した位置にある角部90baの周辺位置に配置されている。
詳しく述べると、カバー張り出し部91は、折り曲げられた部分を溶着することで形成されており、カバー部材90の側方部90bにおいて角部90baを規定する2つの稜線90bb,90bcの間に配置されている。
より詳しく述べると、カバー張り出し部91は、カバー部材90の側方部90bにおいて駆動リンクとなる後方リンク62が最も近接した位置にある角部90baを起点として、角部90baを規定する2つの稜線90bb,90bcの間の中央線に沿って延びている。
【0049】
カバー部材90の上面(上方部90d)には、
図8に示すように、シート高さ調整ユニット10の構成部品を取り入れ又は取り出しするための上方開口穴92と、上方開口穴92とは異なる位置に設けられ、上方リンク支持部材40に取り付けるための上方カバー取り付け部93と、がそれぞれ形成されている。
【0050】
上方開口穴92は、カバー部材90の上面における中央部分に設けられ、シート前後方向に長尺な中央穴部92aと、中央穴部92aの長尺方向の両端部から放射状に延びているスリット状の複数のスリット穴部92bと、から構成されている。
上方カバー取り付け部93は、略円形状の貫通穴であって、カバー部材90のうち、隣り合うように配置されたスリット穴部92bの間に配置されている。
また、上方カバー取り付け部93は、上方リンク支持部材40の上面のうち、カバー取り付け穴42に対向する位置に配置されており、計6個形成されている。
上記構成において、上方カバー取り付け部93及びカバー取り付け穴42が連通した状態で上方からクリップ部材45を留め付けることで、カバー部材90が上方リンク支持部材40に取り付けられる。
なお、各クリップ部材45が、シート前方部分及びシート後方部分それぞれにおいて三角形状を成すように留め付けられるため、比較的強固に留め付けることができる。
【0051】
カバー部材90の底面(下方部90e)には、
図9に示すように、シート高さ調整ユニット10の構成部品を出し入れするほか、ハーネス75を通すための下方開口穴94と、下方開口穴94とは異なる位置に設けられ、下方リンク支持部材50に取り付けるための下方カバー取り付け部95と、がそれぞれ形成されている。
【0052】
下方開口穴94は、カバー部材90の底面における中央部分に設けられ、略矩形状の中央穴部94aと、中央穴部94aのシート前後方向の両端部から放射状に延びているスリット状の複数のスリット穴部94bと、から構成されている。
下方カバー取り付け部95は、略円形状の貫通穴であって、カバー部材90のうち、隣り合うように配置されたスリット穴部94bの間に配置されている。
また、下方カバー取り付け部95は、下方リンク支持部材50の底面のうち、カバー取り付け穴52に対向する位置に配置されており、計6個形成されている。
上記構成において、下方カバー取り付け部95及びカバー取り付け穴52が連通した状態で下方からクリップ部材57を留め付けることで、カバー部材90が下方リンク支持部材50に取り付けられる。
また上記構成において、下方開口穴94とハーネス通し穴53が連通している。そのため、モータ装置70に一端部が接続されたハーネスの他端部が、カバー部材90から露出するように延びて、車体B上に設けられたECU80と接続することができる。
【0053】
上記構成において、
図7に示すように、カバー部材90にシート高さ調整ユニット10の構成部品を取り入れる方法としては、以下の通りである。
まず、上方リンク支持部材40、下方リンク支持部材50、回動リンク60及びモータ装置70が一体化した構成部品を通常位置にコンパクト化した状態で、当該構成部品をカバー部材90の内部に挿入する。具体的には、カバー部材90の上方開口穴92を利用して、当該構成部品をカバー部材90の内部に挿入する。
このとき、当該構成部品からハーネス75がカバー部材90の下方開口穴94を通過して外部に露出している状態となる。
【0054】
そして、カバー部材90の内部に挿入された当該構成部品を通常位置から上方位置へ一度展開させた後、カバー部材90の上面にある上方カバー取り付け部93と、上方リンク支持部材40のカバー取り付け穴42とを上下で重ね合わせてクリップ部材45で留め付ける。
同様にして、カバー部材90の底面にある下方カバー取り付け部95と、下方リンク支持部材50のカバー取り付け穴52とを上下で重ね合わせてクリップ部材57で留め付ける。
そして、カバー部材90付きの当該構成部品の上面にシート支持プレート20をさらに取り付けるとともに、当該構成部品の底面に車体取り付けプレート30を取り付ける。
上記取り付け方法によって、カバー部材90付きのシート高さ調整ユニット10が完成する。
【0055】
また上記構成において、カバー部材90は、シート1が上方位置から通常位置へ下方移動したときに、
図10Aから
図10Bへ折り畳まれるように構成されている。
カバー部材90が折り畳まれると、カバー部材90のうち、側方部90bの上方部分(上端部分)には、シート幅方向の外側に突出する側方凸部96が形成される。
側方凸部96は、カバー張り出し部91を起点としてシート前方に向かって形成される膨出部分である。
また、カバー部材90が折り畳まれると、側方部90bの中央部分には、シート幅方向の内側に窪む側方凹部97が形成される。
側方凹部97は、側方凸部96の直下に位置し、シート前後方向に延びて形成される窪み部分である。
これら、側方凸部96及び側方凹部97が形成されるため、折り畳まれたカバー部材90に加わる応力をバランスよく吸収することができる。
【0056】
また上記構成において、
図10A、
図10Bに示すように、カバー部材90が折り畳まれると、カバー部材90のうち、後方部90cの上方部分(上端部分)には、シート前後方向の内側に窪む後方凹部98が形成される。
後方凹部98はシート幅方向に延びて形成される窪み部分であって、後方凹部98が形成されることで、折り畳まれたカバー部材90に加わる応力をバランスよく吸収できる。また、カバー部材90の角部90baをコンパクトに折り畳むことができる。
なお、カバー部材90の角部90baは、シート側方から見たときに鋭角(60度以下)となるように形成されていると良い。そうすれば、カバー部材90の角部90baを一層コンパクトに折り畳むことができる。
なお、角部90baは、カバー部材90の側方部90bにおける複数の角部のうち、折り畳まれたカバー部材90が展開される方向(シート上斜め後ろ方向)に位置する角部となる。
【0057】
また上記構成において、
図10Aに示すようにカバー部材90が展開されているとき、カバー部材90のうち、上方部90dの最上面(最上端)が、後方部90cの最上端(稜線)よりも高い位置に配置されている。
そうすると、カバー部材90のうち、上方部90d及び後方部90cの連結部分の周辺部分において皺や弛みが発生することを抑制でき、カバー部材90と回動リンク60(後方リンク62)の干渉を抑制できるため、回動リンク60の回動動作を滑らかにすることができる。
【0058】
また上記構成において、
図11A、
図11Bに示すように、カバー部材90が折り畳まれると、カバー部材90のうち、前方部90a及び上方部90dの連結部分には、下方に窪む前方凹部99が形成される。
前方凹部99はシート幅方向の中央部分に形成される窪み部分であって、前方凹部99が形成されることで、折り畳まれたカバー部材90に加わる応力をバランスよく吸収できる。
【0059】
<シート高さ調整ユニットの第2実施形態>
次に、第2実施形態となるシート高さ調整ユニット110について、
図12に基づいて説明する。なお、以下の説明において、シート高さ調整ユニット10と重複する内容は説明を省略する。
シート高さ調整ユニット110では、シート高さ調整ユニット10と比較して、上方リンク支持部材140の後壁部140cの下端部分において補助カバー140ca及び保持プレート140cbが取り付けられている点が主に異なっている。
【0060】
補助カバー140caは、後壁部140cの下端部分から垂れ下がるように延びて、回動リンク60及びモータ装置70を後方側から覆う柔軟性を有するレザーカバーである。
具体的には、補助カバー140caは、後壁部140cの壁面にそって下方に延びている第1延出部分と、当該第1延出部分から連続して下方リンク支持部材150の後壁部150dの壁面に沿って下方に延びている第2延出部分と、から構成されている。
保持プレート140cbは、シート幅方向に長尺な樹脂材料のプレートであって、補助カバー140caの第1延出部分の前面に取り付けられており、補助カバー140caの形状を保持する機能を有する。
なお、保持プレート140cbは、シート1が上方位置から通常位置へ下方移動したときに、回動リンク60(後方リンク62)と対向する位置に配置されることになる。
【0061】
上記構成により、カバー部材90が折り畳まれたときに、カバー部材90の後方部90cが内側に折り畳まれないように補助カバー140caが壁となって機能する。
そのため、回動リンク60が、カバー部材90と干渉することなく滑らかに動作することが可能になる。
【0062】
<シート高さ調整ユニットの第3実施形態>
次に、第3実施形態となるシート高さ調整ユニット210について、
図13に基づいて説明する。
シート高さ調整ユニット210では、シート高さ調整ユニット10と比較して、上方リンク支持部材240の後端部において、側壁部240b及び後壁部240cが下方に延びて延長壁部240caが形成されている点が主に異なっている。
【0063】
延長壁部240caは、側壁部240b及び後壁部240cの下端部分から連続して下方に延びて、回動リンク60及びモータ装置70の一部を後方側から覆う壁部である。
上記構成であっても、カバー部材90が折り畳まれたときに、カバー部材90の後方部90cが内側に折り畳まれないように延長壁部240caが壁となって機能する。
そのため、回動リンク60が、カバー部材90と干渉することなく滑らかに動作することが可能になる。
【0064】
<シート高さ調整ユニットの第4実施形態>
次に、第4実施形態となるシート装置S4及びシート高さ調整ユニット310について、
図14-
図17に基づいて説明する。
シート装置S4は、車体B4からシート高さ調整ユニット310へ伝わる振動を効率良く抑制することができ、シート高さ調整ユニット310の構成部品を好適に保護することが可能な乗り物用のシート装置を実現したものである。
シート装置S4は、シート装置Sと比較して、シート高さ調整ユニット310へ伝わる振動を抑制するための振動抑制ユニット390を備えている点が主に異なっている。
【0065】
シート装置S4は、
図1、
図14に示すように、シート301と、シート高さ調整ユニット310と、振動抑制ユニット390とを備えた乗り物用シート装置であって、車体B4上にセットされて取り付けられる。
振動抑制ユニット390は、車体Bの内部に取り付けられ、上下方向においてシート高さ調整ユニット310と車体B4の間に配置されている。
【0066】
シート高さ調整ユニット310は、
図14に示すように、シート支持プレート320と、車体取り付けプレート330と、上方リンク支持部材340と、下方リンク支持部材350と、回動リンク360と、モータ装置370と、ECU380と、不図示のカバー部材と、から主に構成されている。
なお、シート装置S4が、必ずしも上記カバー部材を備えていなくても良い。
【0067】
シート支持プレート320の上面には、上方リンク支持部材340を取り付けるための複数の取り付け穴321と、後述の振動抑制部材391との干渉を抑制するための複数の逃がし穴324と、がそれぞれ形成されている。
逃がし穴324は、略円形状の貫通穴であって、シート幅方向に所定の間隔を空けて配置されている。
【0068】
車体取り付けプレート330の上面には、下方リンク支持部材350を取り付けるための複数の取り付け穴331と、車体B4上に取り付けるための複数の車体組み付け穴333と、車体B4に設けられた車体補助プレートB4a上に取り付けるための複数の第2車体組み付け穴334と、がそれぞれ形成されている。
これら取り付け穴331、車体組み付け穴333及び第2車体組み付け穴334には、
図15A、Bに示すように、それぞれ振動抑制部材391が取り付けられている。
【0069】
振動抑制ユニット390は、
図14-
図17に示すように、車体B4からシート高さ調整ユニット310(モータ装置370)へ伝わる振動を抑制するものであって、弾性を有する振動抑制部材391と、振動抑制部材391を保持するためのスペーサー392と、から主に構成されている。
【0070】
振動抑制部材391は、中空円柱状の弾性部材であって、取り付け穴331、車体組み付け穴333及び第2車体組み付け穴334にそれぞれ嵌め込まれて取り付けられている。
振動抑制部材391は、リング状の本体部391aと、本体部391aの上面及び底面にそれぞれ設けられ、本体部391aよりも幅広となるように形成されたリング状の上フランジ部391b及び下フランジ部391cと、から主に構成されている。
振動抑制部材391の中心部には、上下方向に延びており、スペーサー392を貫通させるための貫通穴391dが形成されている。
また、上フランジ部391bの上面と、下フランジ部391cの底面とには、貫通穴391dから径方向に向かって放射状に延びている複数の溝391e、391fがそれぞれ形成されている。そのため、振動抑制部材391の撓み性が向上する。
【0071】
スペーサー392は、円筒状の樹脂部材であって、振動抑制部材391を位置決めするとともに、振動抑制部材391の形状を保持するものであって、上方から振動抑制部材391に嵌め込まれている。
詳しく述べると、スペーサー392は、振動抑制部材391の貫通穴391dに嵌め込まれる円筒状のスペーサー本体部392aと、スペーサー本体部392aの上面に設けられ、スペーサー本体部392aよりも幅広となるように形成され、振動抑制部材391の上面又は底面に当接するリング状のフランジ部392bと、から主に構成されている。
スペーサー392の中心部には、上下方向に延びており、組み付けボルト393を貫通させるための貫通穴392cが形成されている。
【0072】
上記構成において、
図15A,Bに示すように、振動抑制部材391が車体組み付け穴333に嵌め込まれたときに、上フランジ部391b及び下フランジ部391cが、上下方向において車体取り付けプレート330を挟むように配置されている。
なお、振動抑制部材391が、取り付け穴331、第2車体組み付け穴334に嵌め込まれたときにも同様の構成となっている。
そのため、振動抑制部材391を容易に位置決めすることができる。
【0073】
また上記構成において、
図16に示すように、車体取り付けプレート330は、車体組み付け穴333と組み付け穴B4bが互いに連通した状態で、組み付けボルト393が組み付けられることで、車体B4上に取り付けられている。
詳しく述べると、組み付けボルト393が上方からスペーサー392と、振動抑制部材391と、車体組み付け穴333と、車体B4の組み付け穴B4bとを貫通するように取り付けられている。
そのため、車体B4に対して車体取り付けプレート330及び振動抑制ユニット390を効率良く取り付けることができる。
【0074】
また上記構成において、
図14、
図16に示すように、振動抑制部材391は、車体組み付け穴333(第2車体組み付け穴334)に取り付けられる第1振動抑制部材391Aと、取り付け穴331に取り付けられる第2振動抑制部材391Bと、を有している。
第1振動抑制部材391Aは、モータ装置370及び第2振動抑制部材391Bを囲むように配置されている。
言い換えれば、第1振動抑制部材391Aは、シート前後方向及びシート幅方向において、モータ装置370及び第2振動抑制部材391Bを挟むように配置されている。
また、第1振動抑制部材391Aは、車体組み付け穴333(第2車体組み付け穴334)に嵌め込まれた状態で、車体B4(車体補助プレートB4a)の上面に当接している。
そのため、
図16、
図17に示すように、シート高さ調整ユニット310が、振動抑制ユニット390を介して車体B4上に間接的に取り付けられることになる。その結果、車体B4からシート高さ調整ユニット310へ伝わる振動を効率良く抑制することができる。
【0075】
また上記構成において、
図16に示すように、第2振動抑制部材391Bは、シート前後方向及びシート幅方向に間隔を空けて配置されており、取り付け穴331に嵌め込まれた状態で、下方リンク支持部材350の底面に当接している。
そのため、シート高さ調整ユニット310(モータ装置370)が、振動抑制ユニット390を介して車体取り付けプレート330上に間接的に取り付けられることになる。
その結果、車体B4からシート高さ調整ユニット310へ伝わる振動を一層効率良く抑制することができる。
【0076】
<その他の実施形態>
上記実施形態において、カバー部材90は、柔軟性を有するカバーとして構成されているところ、望ましくは、柔軟性を有し、かつ、伸縮性を有するカバー部材として構成されていると良い。
【0077】
上記実施形態において、
図7、
図8に示すように、カバー部材90は、袋状からなり、上方リンク支持部材40、下方リンク支持部材50、回動リンク60及びモータ装置70を包むように構成されているが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、カバー部材90が、少なくとも回動リンク60をシート前後方向及びシート幅方向の外側から覆う柔軟性を有するカバー部材なっていれば良い。
上記カバー部材の構成であっても、回動リンク60を滑らかに動作させるべく、当該動作部分に対して塵や埃等の異物が外部から入り込まないように保護することができる。
また例えば、カバー部材90が、回動リンク60をシート幅方向の外側のみから覆う柔軟性を有するカバー部材となっていても良い。当該構成であっても、従来と比較して回動リンク60の動作を確保することができる。
【0078】
上記実施形態において、
図7、
図8に示すように、カバー部材90は、前方リンク61及び後方リンク62を包むように覆って構成されているが、特に限定されることはなく変更可能である。
例えば、カバー部材90は、前方リンク61及び後方リンク62のうち、駆動リンク(本実施形態では後方リンク62)のみを覆うように構成されていても良い。
また例えば、カバー部材90は、駆動リンクとなる後方リンク62のうち、セクターギア部64が形成された一方側のリンク部62aのみを覆うように構成されていても良い。
【0079】
上記実施形態において、
図8に示すように、カバー張り出し部91は、カバー部材90の側方部の一部を外側に折り曲げて形成され、さらに折り曲げられた部分を接合することで形成されているが、特に限定されることはない。
例えば、
図10A、
図10Bに示すように、回動リンク60が上方位置から通常位置へ移動することでカバー部材90が折り畳まれるときに、カバー部材90のうち、回動リンク60(後方リンク62)に対応する側方部分が外側に張り出すように形成されていれば良い。
すなわち、カバー張り出し部91は、カバー部材90の側方部の一部を外側に折り目作ることでシンプルに形成されていても良い。
【0080】
上記実施形態において、
図7、
図8に示すように、カバー張り出し部91は、駆動リンクとなる後方リンク62のうち、左右のリンク部62aに対応する側方部分に一対となって配置されているが、特に限定されることはない。
例えば、カバー張り出し部91は、前方リンク61及び後方リンク62に対応するそれぞれの側方部分に配置されていても良い。
また例えば、カバー張り出し部91は、後方リンク62の左右のリンク部62aのうち、セクターギア部64が形成された一方のリンク部62aに対応する側方部分のみに配置されていても良い。
【0081】
上記実施形態において、
図15A,Bに示すように、振動抑制部材391は、弾性を有する弾性部材(弾性ゴム部材)として構成されているが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、振動抑制部材391が、弾性を有する弾性バネ部材であっても良いし、伸縮性を有する伸縮部材であっても良い。その他の公知な振動抑制部材であっても良い。
【0082】
上記実施形態において、
図16に示すように、振動抑制部材391は、車体取り付けプレート(車体組み付け穴333、取り付け穴351)に取り付けられているが、特に限定されることなく、車体B4(組み付け穴B4b)や下方リンク支持部材350(取り付け穴351)に取り付けられていても良い。
【0083】
上記実施形態において、
図1に示すように、シート装置Sは、日射に直接曝されたり、風雨又は雪に直接曝されたりする自動二輪車用のシート装置を具体例として説明したが、特に限定されることなく、例えば、雪上バイク、水上の水上バイク等の屋外で使用される鞍乗り型の乗り物用シート装置としても利用することができる。
また、鞍乗り型の乗り物用シート装置のほか、自動車、電車、バス等の車両用シート装置、飛行機、船等の乗り物用シート装置としても利用することができる。
【0084】
本実施形態では、主として本発明に係る乗り物用シート装置に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
特に、カバー部材90の形状、配置及び構成について、上記の実施形態にて説明したものは、あくまで一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0085】
B,B4 車体(乗り物の本体)
B4a 車体補助プレート
B4b,B4c 組み付け穴(組み付け部)
S,S4 シート装置(乗り物用シート装置)
1,301 シート
1a ボトムプレート
1b クッション材
1c 表皮材
10,110,210,310 シート高さ調整ユニット
20,320 シート支持プレート
20a プレート前方部
20b プレート後方部
20c プレート中央部
21,321 取り付け穴
22 逃がし凸部
23 補強ビード
324 逃がし穴
30,330 車体取り付けプレート
31,331 取り付け穴(取り付け部)
32 ハーネス通し穴
333 車体組み付け穴(車体組み付け部)
334 第2車体組み付け穴(車体組み付け部)
40,140,240,340 上方リンク支持部材
40a 上壁部
40b,240b 側壁部
40c,140c,240c 後壁部
140ca 補助カバー
140cb 保持プレート
240ca 延長壁部
41 取り付け穴
42 カバー取り付け穴
43,44 上方リンク回動軸
45 クリップ部材
50,150,350 下方リンク支持部材
50a 底壁部
50b 側壁部
50c 前壁部
50d,150d 後壁部
51,351 取り付け穴(取り付け部)
52 カバー取り付け穴
53 ハーネス通し穴
54,55 下方リンク回動軸
56 確認用穴
57 クリップ部材
60,360 回動リンク
61 前方リンク
61a,62a リンク部
61b,62b リンク連結部
62 後方リンク(駆動リンク)
63 リンク湾曲部
64 セクターギア部
70,370 モータ装置
70a モータ取り付けブラケット
71 モータ本体
72 伝達部材
73 ピニオンギア
74 連結ロッド
75 ハーネス
75a ハーネス接続部
80,380 ECU
81 操作ボタン
82 センサ
90 カバー部材
90a 前方部
90b 側方部
90ba 角部
90bb,90bc 稜線
90c 後方部
90d 上方部
90e 下方部
91 カバー張り出し部
92 上方開口穴
92a 中央部
92b スリット穴部
93 上方カバー取り付け部
94 下方開口穴
94a 中央部
94b スリット穴部
95 下方カバー取り付け部
96 側方凸部
97 側方 凹部
98 後方凹部
99 前方凹部
390 振動抑制ユニット
391 振動抑制部材
391A 第1振動抑制部材
391B 第2振動抑制部材
391a 本体部
391b 上フランジ部
391c 下フランジ部
391d 貫通穴
391e,391f 溝
392 スペーサー
392a スペーサー本体部
392b フランジ部
392c 貫通穴
393 組み付けボルト
G 隙間
D1,D2,D3,D4 距離