(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】塗料組成物および塗膜
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240229BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240229BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240229BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/65
C09D5/02
(21)【出願番号】P 2022157406
(22)【出願日】2022-09-30
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】本部 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】大山 充史
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-038275(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00287386(EP,A2)
【文献】特開2017-119862(JP,A)
【文献】特開2021-130764(JP,A)
【文献】特開2003-275674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子(A)と、透明ビーズ(B)と、前記樹脂粒子(A)および前記透明ビーズ(B)を分散させる分散媒(C)とを含む塗料組成物であり、
前記樹脂粒子(A)は、水性塗料を含む液滴と、前記液滴の表面を覆うゲル化膜とを含み、
前記水性塗料は、水性媒体と、水性樹脂(D)と、前記水性媒体に分散する
光輝性を有する顔料(E)とを含み、
前記顔料(E)の含有量は、前記水性樹脂(D)100質量%に対し、14質量%以上であり、
前記分散媒(C)は、水性媒体と、水性樹脂(F)とを含み、
前記透明ビーズ(B)の含有量は、前記水性樹脂(F)100質量%に対し、20~135質量%であり、
前記透明ビーズ(B)の平均粒子径は、10μm以上であることを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
前記顔料(E)が扁平粒子である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の塗料組成物から形成された塗膜。
【請求項4】
前記透明ビーズ(B)の平均粒子径(μm)を前記塗膜の平均膜厚(μm)で除した値が0.1以上である、請求項3に記載の塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物および塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの建築材の表面には、保護および装飾の目的で塗装が施される。
近年、より高級感のある意匠性が求められるようになっており、キラキラとした輝度感のある意匠を付与できるメタリック塗料が特に好まれている。
【0003】
特許文献1には、樹脂粒子と、前記樹脂粒子を分散させる分散媒とを有し、前記樹脂粒子が、エマルション塗料を含む液滴と、前記液滴の表面を覆うゲル化膜とを有し、前記エマルション塗料が、樹脂エマルションと、前記樹脂エマルションの中に分散する顔料とを有し、前記分散媒が、主成分として水を含み、前記顔料の比重が2.5以上である塗料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の塗料組成物によれば、ニッケル、ステンレス、MIOといった比重が大きい顔料を含有しても、顔料が沈降しにくく、塗工時に良好な外観を実現でき、これにより輝度感のある塗膜を形成できる。しかし、より高輝度の塗膜外観が求められることがある。
【0006】
本発明者は、特許文献1の塗料組成物の樹脂粒子に含まれるメタリック顔料の量を増やすことで、より高輝度な塗膜外観を得ようとした。結果、より高輝度な塗膜外観が得られたものの、一方で、フリップフロップ性が悪くなることがわかった。
ここで、本発明におけるフリップフロップ性とは、観察角度により塗膜の明度が変化する特性を指す。この明度変化が小さいものほど、塗膜の観察角度を変えても、感知できる反射光の量(輝度感)が変わらない塗膜であること意味し、フリップフロップ性が良好であることを意味する。
【0007】
本発明者は、樹脂粒子中のメタリック顔料の含有量を増やしたことで、成膜前の塗膜中のメタリック顔料が、乾燥とともに基材に対して平行に配向しやすくなったため、フリップフロップ性が悪くなったと考えた。
そこで、メタリック顔料が基材に対してランダムに配向するよう、樹脂粒子に含まれる樹脂エマルションの粘度や塗料組成物の粘度を高くしたところ、フリップフロップ性は良化するものの、レベリング性が悪くなった。結果、塗膜表面が平滑ではなくなり、『平滑でキラキラとした金属のような意匠』ではなくなってしまう結果となった。塗料組成物を凹凸のある基材に塗装した場合でも、フリップフロップ性は良化するものの、凹凸のある塗膜となり、『平滑でキラキラとした金属のような意匠』ではなくなってしまう結果となった。
【0008】
本発明は、輝度感、フリップフロップ性および表面平滑性に優れた塗膜を形成できる塗料組成物、ならびに輝度感、フリップフロップ性および表面平滑性に優れた塗膜の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]樹脂粒子(A)と、透明ビーズ(B)と、前記樹脂粒子(A)および前記透明ビーズ(B)を分散させる分散媒(C)とを含む塗料組成物であり、
前記樹脂粒子(A)は、水性塗料を含む液滴と、前記液滴の表面を覆うゲル化膜とを含み、
前記水性塗料は、水性媒体と、水性樹脂(D)と、前記水性媒体に分散する顔料(E)とを含み、
前記顔料(E)の含有量は、前記水性樹脂(D)100質量%に対し、14質量%以上であり、
前記分散媒(C)は、水性媒体と、水性樹脂(F)とを含み、
前記透明ビーズ(B)の含有量は、前記水性樹脂(F)100質量%に対し、20~135質量%であり、
前記透明ビーズ(B)の平均粒子径は、10μm以上であることを特徴とする塗料組成物。
[2]前記顔料(E)が扁平粒子である、前記[1]に記載の塗料組成物。
[3]前記[1]または[2]に記載の塗料組成物から形成された塗膜。
[4]前記透明ビーズ(B)の平均粒子径(μm)を前記塗膜の平均膜厚(μm)で除した値が0.1以上である、[3]に記載の塗膜。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、輝度感、フリップフロップ性および表面平滑性に優れた塗膜を形成できる塗料組成物、ならびに輝度感、フリップフロップ性および表面平滑性に優れた塗膜を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る塗料組成物を説明する模式図である。
【
図2】
図1に示す樹脂粒子(A)を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1~2を参照しながら、本発明の一実施形態に係る塗料組成物について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0013】
[塗料組成物]
図1は、本発明の一実施形態に係る塗料組成物1を説明する模式図である。
図1に示すように、塗料組成物1は、樹脂粒子(A)10と、透明ビーズ(B)20と、樹脂粒子(A)10および透明ビーズ(B)20を分散させる分散媒(C)30とを有する。
【0014】
<樹脂粒子(A)>
図2は、樹脂粒子(A)10を説明する模式図である。
図2に示すように、樹脂粒子(A)10は、液滴11と、液滴11の表面を覆うゲル化膜12とを含む。
塗料組成物1中の樹脂粒子(A)は1種でもよく2種以上でもよい。例えば、色調等が互いに異なる2種以上の樹脂粒子(A)を含むことができる。
【0015】
樹脂粒子(A)の平均粒子径は、0.1mm~5cmであることが好ましく、0.1mm~3cmであることがより好ましく、0.1mm~2cmであることが特に好ましい。樹脂粒子(A)の平均粒子径が前記範囲内であれば、形成される塗膜の意匠性に優れる。また、エアーガンを用いた塗装の作業性も良好である。
樹脂粒子(A)の平均粒子径は、無作為に選択される20個の樹脂粒子(A)の長径をノギスで測定し、各測定値を算術平均した値である。
【0016】
(液滴)
液滴11は、水性塗料を含む。
水性塗料は、水性媒体と、水性樹脂(D)と、水性媒体に分散する顔料(E)とを含む。
【0017】
『水性媒体』
水性媒体は、水のみの媒体、又は水に水と相溶性のある溶剤を加えた媒体である。水性媒体の総質量に対する水の割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
水としては、イオン交換水、水道水等を使用できる。
水と相溶性のある溶剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール、エチレングリコール等が挙げられる。これらの溶剤は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0018】
『水性樹脂(D)』
水性樹脂(D)は、水性媒体に溶解又は分散可能な樹脂である。水性樹脂(D)としては、水性媒体に分散可能な樹脂(水分散性樹脂)が好ましい。
水性樹脂(D)の種類に特に制限は無く、塗料組成物に要求される性能に応じて適宜選択できる。水性樹脂(D)としては、塗膜の耐水性、耐候性が良好になるものが好ましい。
水性樹脂(D)の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリルスチレン樹脂、アクリロニトリル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ベオバ(分岐脂肪酸ビニルエステル)、天然ゴム、合成ゴムや、これらの共重合体等が挙げられる。これらの水性樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、耐水性、耐候性に優れる点で、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂等の合成樹脂が好ましい。
【0019】
『顔料(E)』
顔料(E)は、液滴の中に分散している。
顔料(E)としては、金属光沢のような光輝性を有する顔料が好ましい。光輝性を有する顔料としては、例えば、ニッケル、ステンレス、アルミニウム等のフレーク状の金属顔料;焼成マイカ;ガラス、マイカ等に、酸化鉄、酸化チタン、ジルコニア等の金属酸化物や、銀、金等の金属を被覆したフレーク状顔料が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
顔料(E)の平均粒子径は、高輝度な塗膜を形成できる点で、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。顔料(E)の平均粒子径の上限は、樹脂粒子(A)の中に収まればよく、樹脂粒子(A)よりも小さければよい。例として、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。
顔料(E)の平均粒子径は、体積基準のメジアン径(D50)のことであり、具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した値である。
【0021】
顔料(E)は、球状粒子、扁平粒子など種々の粒子形状を採用し得るが、扁平粒子であることが好ましい。顔料(E)が扁平粒子であると、塗料組成物を塗布した際、顔料(E)が光を反射しやすく、塗料組成物を塗布する対象物に金属光沢を付与しやすい。
なお、本明細書において「扁平粒子」とは、平均アスペクト比が5以上の粒子のことを意味する。
アスペクト比は、扁平粒子の長径と、扁平粒子の短径の比から求める。扁平粒子の長径および短径は、電子顕微鏡写真から求める。電子顕微鏡写真に写る扁平粒子に外接する矩形のうち最小のものを想定したとき、当該矩形の長辺を扁平粒子の長径、矩形の短辺を短径とする。
平均アスペクト比は、上述の電子顕微鏡写真の一視野に映る20個の扁平粒子のアスペクト比をそれぞれ求め、求められたアスペクト比を算術平均した値を指す。
【0022】
『コロイド形成物質』
水性塗料は、典型的には、コロイド形成物質を含む。
コロイド形成物質は、ゲル化剤と反応し、ゲル化膜12を形成可能な物質である。ゲル化剤については後述する。
【0023】
コロイド形成物質としては、例えば、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、グアーガム、グアーガム誘導体、フェヌグリークガム、タラガム、ローカストビーンガム、カシアガム等のガラクトマンナン、ウェランガム、ジェランガム、キサンタンガム等のバイオガム、アルギン酸、アルギン酸誘導体、デンプン等の多糖類;ポリビニルアルコール、グリセリン、エチレングリコール等のアルコール類;水性ウレタン;ポリエチレンイミン誘導体;ポリビニルビニリドン;ポリアクリル酸誘導体;カゼイン等が挙げられる。これらのコロイド形成物質は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。コロイド形成物質としては、グアーガム、グアーガム誘導体が好ましい。
コロイド形成物質は、典型的には、水溶液の形態で用いられる。コロイド形成物質水溶液の濃度は、例えば0.1質量%以上10質量%以下である。
【0024】
(ゲル化膜)
ゲル化膜12は、液滴11の表面を覆い、樹脂粒子(A)の輪郭を形成している。
ゲル化膜12は、典型的には、水性塗料に含まれるコロイド形成物質と、ゲル化剤とが反応し架橋することで形成された三次元的網状組織を含む。ゲル化膜12は、水性塗料よりも流動性が低下しており、液滴11を内部に包含している。
【0025】
ゲル化剤としては、例えば、マグネシウムモンモリロナイト粘土、ナトリウムペンタクロロフェノール、ホウ酸塩、アルミニウム塩、バリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、タンニン酸、乳酸チタン、塩化カルシウム等が挙げられる。中でもホウ酸塩の水溶液が好ましい。ゲル化剤は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0026】
(任意成分)
樹脂粒子(A)は、塗膜外観や性能に問題がない範囲で、体質顔料を含んでいてもよい。
体質顔料は、塗料に用いられる無彩色顔料の総称である。体質顔料としては、例えば、カオリン、硫酸バリウム、含水ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。体質顔料は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0027】
樹脂粒子(A)は、必要に応じて、公知の添加剤を含んでいてもよい。公知の添加剤としては、例えば、乳化剤、pH調整剤、消泡剤、粘度調整剤、造膜助剤、凍結抑止剤、分散剤、湿潤剤、浸透助剤、防腐剤、表面調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、遮熱剤等が挙げられる。
【0028】
樹脂粒子(A)中の固形分の含有量は、樹脂粒子(A)100質量%に対し、75質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、65質量%以下が特に好ましい。
樹脂粒子(A)中の固形分は、樹脂粒子(A)から水性媒体を除いた残部である。
【0029】
樹脂粒子(A)中の水性樹脂(D)の含有量は、樹脂粒子(A)100質量%に対し、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が特に好ましい。水性樹脂(D)の含有量が前記下限値以上であれば、液滴の安定性に優れる傾向がある。
樹脂粒子(A)中の水性樹脂(D)の含有量は、樹脂粒子(A)100質量%に対し、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下が特に好ましい。水性樹脂(D)の含有量が前記上限値以下であれば、流動性に優れる傾向がある。
前記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0030】
樹脂粒子(A)中の顔料(E)の含有量は、水性樹脂(D)100質量%に対し、14質量%以上であり、19質量%以上が好ましく、23質量%以上がより好ましく、28質量%以上がさらに好ましく、33質量%以上が特に好ましい。顔料(E)の含有量が前記下限値以上であれば、輝度の高い塗膜が得られる。
顔料(E)の含有量は、水性樹脂(D)100質量%に対し、300質量%以下が好ましく、200質量%以下がより好ましい。顔料(E)の含有量が前記上限値以下であれば、製造や塗装の際に、樹脂粒子(A)のカプセル構造が壊れにくく、かつ、塗膜性能に優れる。コストを抑える観点も考慮すると、該含有量は、100質量%以下がさらに好ましく、80質量%以下がよりさらに好ましく、60質量%以下が特に好ましい。
前記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0031】
樹脂粒子(A)中の樹脂固形分100体積%に対する顔料(E)の体積の比は、5体積%以上80体積%以下が好ましい。顔料(E)の体積の比が前記下限値以上であれば、輝度の高い塗膜が得られる。顔料(E)の体積の比が前記上限値以下であれば、製造や塗装の際に、樹脂粒子(A)のカプセル構造が壊れにくく、かつ、塗膜性能に優れる。
【0032】
樹脂粒子(A)中のコロイド形成物質の含有量は、水性樹脂(D)100質量部に対し、0.05~5質量部が好ましく、0.1~3.0質量部がより好ましい。コロイド形成物質の含有量を上記範囲内とすることにより、安定したゲル化膜が得られる。
【0033】
<透明ビーズ(B)>
透明ビーズ(B)は、光を透過可能であればよく、有機系のもの、無機系のもの、どちらも使用できる。有機系の透明ビーズ(B)としては、例えば、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコーン樹脂系、ポリスチレン樹脂系のものが挙げられる。無機系の透明ビーズ(B)としては、例えば、ガラス系のものが挙げられる。また、例えばガラスビーズを樹脂等で表面被覆したビーズを用いることもできる。これらの透明ビーズ(B)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
透明ビーズ(B)は、有色のもの、無色のものどちらも使用できるが、無色の方が好ましい。
【0034】
透明ビーズ(B)の屈折率は、1以上が好ましく、1.3以上がより好ましく、1.45以上がさらに好ましい。屈折率が1以上であることで、塗膜の輝度感およびフリップフロップ性がより優れる。
透明ビーズ(B)の屈折率は、2以下が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.6以下がさらに好ましい。屈折率が2以下であることで、塗膜の輝度感およびフリップフロップ性がより優れる。
前記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0035】
透明ビーズ(B)の平均粒子径は、10μm以上であり、15μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましく、40μm以上がさらに好ましく、80μm以上が特に好ましい。透明ビーズ(B)の平均粒子径が前記下限値以上であれば、塗膜のフリップフロップ性が優れる。
透明ビーズ(B)の平均粒子径は、400μm以下が好ましく、350μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましく、350μm以下がよりさらに好ましく、300μm以下が特に好ましい。透明ビーズ(B)の平均粒子径が前記上限値以下であれば、塗膜の表面平滑性がより優れる。
透明ビーズ(B)の平均粒子径は、体積基準のメジアン径(D50)のことであり、具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した値である。
【0036】
<分散媒(C)>
分散媒(C)は、水性媒体と、水性樹脂(F)とを含む。
【0037】
『水性媒体』
分散媒(C)における水性媒体としては、水性塗料における水性媒体と同様のものが挙げられる。分散媒(C)における水性媒体と、水性塗料における水性媒体とは同一でも異なっていてもよい。
【0038】
『水性樹脂(F)』
水性樹脂(F)としては、水性樹脂(D)と同様のものが挙げられる。
水性樹脂(F)と水性樹脂(D)は、形態及び種類が同じであることが好ましい。一例として、水性樹脂(F)と水性樹脂(D)が、共に、水性媒体に分散可能なアクリルシリコーン樹脂である例が挙げられる。
水性樹脂(F)と水性樹脂(D)とは、種類が異なっていてもよい。一例として、水性樹脂(F)がアクリルシリコーン樹脂であり、水性樹脂(D)がアクリル樹脂である例が挙げられる。
【0039】
『その他成分』
分散媒(C)は、典型的には、上述のゲル化剤を含む。
分散媒(C)は、上述のコロイド形成物質を含んでいてもよい。
分散媒(C)は、上述の顔料(E)を含んでいてもよい。
分散媒(C)は、必要に応じて、公知の添加剤を含んでいてもよい。公知の添加剤としては、上述のものが挙げられる。
【0040】
分散媒(C)中の水性樹脂(F)の含有量は、分散媒(C)100質量%に対し、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が特に好ましい。
分散媒(C)中の水性樹脂(F)の含有量は、分散媒(C)100質量%に対し、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が特に好ましい。
水性樹脂(F)の含有量が前記下限値以上であれば、耐水性等、塗膜性能に優れ、前記上限値以下であれば、塗料の保存安定性に優れる傾向がある。
前記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0041】
<各成分の含有量>
塗料組成物において、透明ビーズ(B)の含有量は、水性樹脂(F)100質量%に対し、20質量%以上であり、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上が特に好ましい。
透明ビーズ(B)の含有量は、水性樹脂(F)100質量%に対し、135質量%以下であり、130質量%以下が好ましく、125質量%以下がより好ましく、120質量%以下が特に好ましい。
透明ビーズ(B)の含有量が上記範囲内であることにより、平滑で、高輝度かつフリップフロップ性の良好な塗膜を形成できる。
前記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。例えば、透明ビーズ(B)の含有量は、水性樹脂(F)100質量%に対し、20~135質量%、25~130質量%、30~125質量%、または35~120質量%であってよい。
【0042】
塗料組成物中の樹脂粒子(A)の含有量は、樹脂粒子(A)と分散媒(C)との合計100質量%に対し、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましい。
樹脂粒子(A)の含有量は、樹脂粒子(A)と分散媒(C)との合計100質量%に対し、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が特に好ましい。
樹脂粒子(A)の含有量が上記範囲内であることにより、高輝度な塗膜を形成できる。
前記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。例えば、塗料組成物中の樹脂粒子(A)の含有量は、樹脂粒子(A)と分散媒(C)との合計100質量%に対し、10~95質量%、15~90質量%、または20~85質量%であってよい。
【0043】
塗料組成物中の分散媒(C)の含有量は、樹脂粒子(A)と分散媒(C)との合計100質量%に対し、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が特に好ましい。
塗料組成物中の分散媒(C)の含有量は、樹脂粒子(A)と分散媒(C)との合計100質量%に対し、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が特に好ましい。
塗料組成物中の分散媒(C)の割合が上記範囲内であることにより、高輝度な塗膜を形成できる。
前記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0044】
<塗料組成物の製造方法>
上述した塗料組成物は、例えば、樹脂粒子(A)が水性媒体に分散した分散液(以下、樹脂粒子(A)分散液とも記す。)、透明ビーズ(B)、水性樹脂(F)、必要に応じてさらなる水性媒体、その他成分等を混合することにより製造できる。
【0045】
樹脂粒子(A)分散液は、例えば以下の製造方法で製造できる。
まず、水性樹脂(D)と、水性媒体と、コロイド形成物質の水溶液とを混合して混合液(d)を調製する。
別途、顔料(E)と、必要に応じて水性媒体、分散剤等の添加剤とを混合して混合液(e)を調製する。
次いで、混合液(d)と混合液(e)とを混合して水性塗料(c)を調製する。
別途、ゲル化剤と、水性媒体と、必要に応じてコロイド形成物質や添加剤とを混合して水溶液(f)を調製する。
次いで、水溶液(f)を分散機で撹拌しながら、水溶液(f)に水性塗料(c)を添加する。
水性塗料(c)を水溶液(f)中で撹拌すると、水性塗料(c)の液滴が形成されるとともに、この液滴に含まれるコロイド形成物質と、水溶液(f)に含まれるゲル化剤とが反応し、架橋することで三次元的網状組織(ゲル化膜)が形成される。また、水性塗料(c)は、ゲル化剤との反応によって凝集しながら、撹拌により細分化される。細分化の過程においても、継続的にコロイド形成物質とゲル化剤とが反応し、三次元的網状組織(ゲル化膜)が形成される。これにより、水性塗料(c)の液滴がゲル化膜で被覆された樹脂粒子(A)が得られる。
このように、コロイド形成物質とゲル化剤とが反応しながら、水性塗料(c)の凝集体が細分化されることにより、水溶液(f)に樹脂粒子(A)が分散した樹脂粒子(A)分散液が得られる。
樹脂粒子(A)の色調等が互いに異なる二種類以上の樹脂粒子(A)分散液を調製し、それらを混合してもよい。
【0046】
<塗装方法>
本実施形態に係る塗料組成物を基材上に塗布し、乾燥することで、塗膜が形成される。
【0047】
基材としては、特に制限はなく、窯業系サイディングボード、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグバーライト板、木片セメント板、石綿セメント板、パルプセメント板、プレキャストコンクリート板、軽量気泡コンクリート(ALC)板、石膏ボード等の窯業建材板や、アルミニウム、鉄及びステンレス等の金属建材板、モルタル、プラスチック、木材、紙など、種々の対象物に塗布することが可能である。また、これらの表面にシーラーやプライマー等による下地処理が施されているものであってもよい。
【0048】
塗料組成物の塗布方法に特に制限はなく、刷毛、こて、ローラー、スプレーコーティング、ロールコーティング、フローコーティング等の公知の塗布方法で塗布することができる。
塗料組成物の塗布量は、形成しようとする塗膜の平均膜厚に応じて適宜選定できるが、乾燥前(wet)の単位面積当たりの質量として、50~1000g/m2が好ましく、100~800g/m2がより好ましい。塗布量が前記下限値以上であれば、耐水性等の塗膜性能、輝度感、フリップフロップ性に優れる傾向がある。塗布量が前記上限値以下であれば、乾燥時に塗膜割れ等の不具合が発生しにくい傾向がある。前記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
乾燥は、水性媒体を除去できればよく、常温乾燥でも加熱乾燥でもよい。乾燥温度は、例えば5~90℃である。乾燥時間は、乾燥温度によっても異なるが、例えば5分間~48時間である。
乾燥後、形成された塗膜の上に、さらに上塗り塗料を塗布してトップコートを施してもよい。
【0049】
<塗膜>
本実施形態に係る塗料組成物から形成される塗膜の平均膜厚は、100μm以上が好ましく、120μm以上がより好ましく、140μm以上が特に好ましい。塗膜の平均膜厚が前記下限値以上であれば、耐水性等の塗膜性能、輝度感、フリップフロップ性に優れる傾向がある。
塗膜の平均膜厚は、600μm以下が好ましく、550μm以下がより好ましく、500μm以下が特に好ましい。塗膜の平均膜厚が前記上限値以下であれば、乾燥時に塗膜割れ等の不具合が発生しにくい傾向がある。
ここで、塗膜の平均膜厚は、乾燥後の値であり、塗膜の無作為に選択された20箇所の膜厚の平均値である。
前記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0050】
透明ビーズ(B)の平均粒子径(μm)を塗膜の平均膜厚(μm)で除した値(以下、「平均粒子径/塗膜の平均膜厚」と記す)は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。透明ビーズ(B)の平均粒子径/塗膜の平均膜厚は、3以下が好ましく、2以下がより好ましい。
透明ビーズ(B)の平均粒子径/塗膜の平均膜厚を前記記載範囲にすると、より高輝度な塗膜を得ることができる。
より高輝度な塗膜を得られる理由としては、透明ビーズ(B)の平均粒子径/塗膜の平均膜厚の値を上記範囲にすると、塗膜表面に当たった光が、塗膜表面および塗膜内部で乱反射しにくく、塗膜内部の顔料(E)からの反射光を感知しやすくなるためと考える。
【0051】
<作用効果>
以上説明した塗料組成物によれば、高輝度で、フリップフロップ性および表面平滑性に優れた塗膜を形成できる。
塗膜がフリップフロップ性に優れる理由としては、塗料組成物中に透明ビーズ(B)を含むことで、塗膜にしたときに、顔料(E)が基材に対してランダムに配向することが考えらえる。顔料(E)がランダムに配向することで、顔料(E)の表面に当たり反射した光の向きがランダムになり、結果、観察角度を変えても反射光を感知できるようになると考えられる。そしてこのように、より多くの反射光を感知できるようになったことで、従来製品塗膜よりも、より高輝度に見えるようになったと考えられる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
「部」は「質量部」を意味する。「%」は、特に記載がない限り、「質量%」を意味する。
【0053】
<使用材料>
樹脂エマルション:アクリル樹脂エマルション、プライマルAC38、ダウ・ケミカル社製、固形分50%。
コロイド形成物質:非イオン性グアルゴム誘導体の4%水溶液、MEYPRO HPG 8111、デュポン社製。
顔料1:FANTASPEARL 1060YR、マイカパール顔料、日本光研工業(株)製、平均粒子径:23μm。
顔料2:メタシャイン1030PS、ガラスフレーク顔料、日本板硝子(株)製、平均粒子径25μm。
顔料3:メタシャイン2080GP、ガラスフレーク顔料、日本板硝子(株)製、平均粒子径80μm。
顔料4:メタシャイン5230PS、ガラスフレーク顔料、日本板硝子(株)製、平均粒子径230μm。
顔料5:メタシャイン5480PS、ガラスフレーク顔料、日本板硝子(株)製、平均粒子径480μm。
分散剤:オロタン731、アニオン性高分子分散剤、ダウ・ケミカル社製。
ゲル化剤:重ホウ酸アンモニウムの5%水溶液、米山化学工業社製。
体質顔料:含水ケイ酸マグネシウムの4%水分散液、タルクSSS、日本タルク社製。
CMC-Na:ナトリウムカルボキシメチルセルロースの1%水溶液、CMC-1170、ダイセル化学工業社製。
【0054】
透明ビーズ1:アクリルビーズ、GB-05S、アイカ工業社製、平均粒子径5μm。
透明ビーズ2:アクリルビーズ、GR-400T、根上工業社製、平均粒子径15μm。
透明ビーズ3:アクリルビーズ、GM-2801、アイカ工業社製、平均粒子径28μm。
透明ビーズ4:アクリルビーズ、GM-4003、アイカ工業社製、平均粒子径40μm。
透明ビーズ5:アクリルビーズ、GM-9005、アイカ工業社製、平均粒子径85μm。
透明ビーズ6:アクリルビーズ、SE-090T、根上工業社製、平均粒子径110μm。
透明ビーズ7:アクリルビーズ、MR-260IBS、綜研化学社製、平均粒子径260μm。
防藻剤:HF-260K、ナガセケムテックス社製、有効成分30%。
防カビ剤:ACTICIDE OTW、THOR JAPAN社製、有効成分30%。
紫外線吸収剤:Tinuvin 400DW、BASF JAPAN社製、有効成分40%。
増粘剤:アルカリ可溶型増粘剤、SNシックナー636、サンノプコ社製、有効成分30%。
【0055】
<樹脂粒子(A)分散液A-1~A-12の製造>
表1に示す配合に従って、樹脂エマルション及び親水性コロイド溶液を混合して混合液(d)を得た。また、表1に示す配合に従って、水、顔料及び分散剤を混合して混合液(e)を得た。次いで、混合液(d)と混合液(e)とを混合して水性塗料(c)を得た。
別途、表1に示す配合に従って、ゲル化剤、水、体質顔料及びCMC-Naを混合して水溶液(f)を得た。
次いで、水溶液(f)をディゾルバ(株式会社日本精機製作所製、回転数1000rpm)で撹拌しながら、水性塗料(c)を加えた。撹拌により細分化された水性塗料(c)の平均粒子径が0.5mm~1cmになるまで撹拌し、樹脂粒子(A)の分散液を得た。
樹脂粒子(A)の平均粒子径は、分散液から無作為に樹脂粒子(A)を20個取り出し、長径をノギスで測定し、各測定値を算術平均することで求めた。
表1に、分散液に含まれる樹脂粒子(A)の含有量(部)、樹脂粒子(A)の固形分(部)、樹脂粒子(A)中の水性樹脂(D)の含有量(部)、分散液100%中の樹脂粒子(A)の割合(%)、分散液100%中の樹脂粒子(A)の固形分の割合(%)、樹脂粒子(A)100%中の水性樹脂(D)の割合(%)、樹脂粒子(A)中の樹脂固形分100%に対する顔料(E)の含有量(%)を示した。ここで、樹脂粒子(A)の含有量は、水性塗料(c)と、ゲル化剤の固形分との合計量である。樹脂粒子(A)中の水性樹脂(D)は、樹脂エマルションの固形分である。
【0056】
【0057】
<実施例1~19、比較例1~7>
(塗料組成物の製造)
表2~4に示す配合に従って、樹脂粒子(A)分散液、樹脂エマルション、透明ビーズ、防藻剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、増粘剤、25%アンモニア水及び水を混合して塗料組成物を得た。
表2~4に、分散媒(C)中の樹脂固形分(部)、水性樹脂(F)100%に対する透明ビーズ(B)の割合(%)、樹脂粒子(A)と分散媒(C)との合計100%に対する樹脂粒子(A)の割合(%)を示した。ここで、分散媒(C)は、樹脂粒子(A)と透明ビーズを除いた残部である。水性樹脂(F)は、塗料組成物の製造において配合した樹脂エマルションの固形分である。
【0058】
(塗装板の作製)
得られた塗料組成物を、グレー色の下塗りが塗装されたスレート板の表面に、塗布量が400g/m2になるようスプレーにより塗布し、常温乾燥させて、表面に塗膜を有する塗装板を得た。
形成された塗膜について、無作為に選択された10箇所の塗膜の断面を、デジタルマイクロスコープ(VHX-8000、キーエンス社製)で観察して膜厚を測定し、各測定値を算術平均することで平均膜厚を求めた。また、透明ビーズ(B)の平均粒子径/塗膜の平均膜厚の値を算出した。結果を表2~4に示す。
【0059】
(評価)
作製した塗装板の塗膜を目視で観察し、以下の基準で輝度感、フリップフロップ性、表面平滑性を評価した。結果を表2~4に示す。
【0060】
・輝度感
1:塗膜の輝度感(輝き)が非常に強い。
2:塗膜の輝度感(輝き)が強い。
3:塗膜に輝度感(輝き)を感じられ、良好。
4:塗膜の輝度感(輝き)を感じる。
5:塗膜の輝度感(輝き)が弱く、輝度が感じられない。
【0061】
・フリップフロップ性
1:観察角度を変えても、塗膜の輝度感は変わらずとても良好。
2:観察角度を変えても、塗膜の輝度感はあまり変わらず良好。
3:観察角度を変えると、塗膜の輝度感が強いときと弱いときがあるが、その差は小さい。
4:観察角度を変えると、塗膜の輝度感が強いときと弱いときがあり、その差がとても大きい。
【0062】
・表面平滑性
〇:平滑で塗膜外観が良好。
△:遠目では平滑な塗膜外観だが、近くでみると凹凸を感じられる。
×:凹凸があり塗膜外観が劣る。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
実施例1~19の塗料組成物の塗膜は、輝度感、フリップフロップ性および表面平滑性に優れていた。
一方、比較例1の塗料組成物の塗膜は、顔料(E)の含有量が、樹脂粒子(A)中の樹脂固形分100質量%に対して14質量%未満であり、透明ビーズ(B)を含まないため、輝度感に劣っていた。
比較例2~3の塗料組成物の塗膜は、透明ビーズ(B)を含まないため、輝度感又はフリップフロップ性に劣っていた。
比較例4の塗料組成物の塗膜は、顔料(E)の含有量が、樹脂粒子(A)中の樹脂固形分100質量%に対して14質量%未満であるため、輝度感に劣っていた。
比較例5の塗料組成物の塗膜は、透明ビーズ(B)の平均粒子径が10μm未満であるため、輝度感およびフリップフロップ性に劣っていた。
比較例6の塗料組成物の塗膜は、透明ビーズ(B)の含有量が分散媒(C)中の樹脂固形分100質量%に対して20質量%未満であるため、フリップフロップ性に劣っていた。
比較例7の塗料組成物の塗膜は、透明ビーズ(B)の含有量が分散媒(C)中の樹脂固形分100質量%に対して135質量%超であるため、表面平滑性に劣っていた。
【符号の説明】
【0067】
1 塗料組成物、10 樹脂粒子(A)、11 液滴、12 ゲル化膜、13 顔料(E)、20 透明ビーズ(B)、30 分散媒(C)
【要約】
【課題】輝度感、フリップフロップ性および表面平滑性に優れた塗膜を形成できる塗料組成物の提供。
【解決手段】樹脂粒子(A)と、透明ビーズ(B)と、前記樹脂粒子(A)および前記透明ビーズ(B)を分散させる分散媒(C)とを含み、前記樹脂粒子(A)は、水性塗料を含む液滴と、前記液滴の表面を覆うゲル化膜とを含み、前記水性塗料は、水性媒体と、水性樹脂(D)と、前記水性媒体に分散する顔料(E)とを含み、前記顔料(E)の含有量は、前記水性樹脂(D)100質量%に対し、14質量%以上であり、前記分散媒(C)は、水性媒体と、水性樹脂(F)とを含み、前記透明ビーズ(B)の含有量は、前記水性樹脂(F)100質量%に対し、20~135質量%であり、前記透明ビーズ(B)の平均粒子径は、10μm以上である塗料組成物。
【選択図】
図1