(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ドア開閉システムおよびドア開閉システムを備えたロードポート
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2022166715
(22)【出願日】2022-10-18
(62)【分割の表示】P 2021034534の分割
【原出願日】2016-07-12
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2015154594
(32)【優先日】2015-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】河合 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】谷山 育志
(72)【発明者】
【氏名】小宮 宗一
(72)【発明者】
【氏名】重田 貴司
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-074033(JP,A)
【文献】特開平06-275698(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0317214(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被収容物が収容される容器を開閉するロードポートを備え、前記被収容物を搬送するための搬送空間を有するEFEMであって、
前記ロードポートは、
前記搬送空間と外部空間を隔てる壁の一部を構成するベース部と、
前記ベース部に設けられた開口部と、
前記開口部の開閉と、前記容器に対する蓋体の固定及び固定の解除を行って前記容器から前記蓋体の取り外し及び取付けとが可能なドアと、
前記容器と前記ドアとの間をシールするように設けられるシール部材と、
前記容器と前記ドアとが前記シール部材と接触している間、少なくとも前記シール部材と前記容器と前記ドアとによって区画される密閉空間と、
前記密閉空間内に不活性ガスを注入するように構成された第1のガス注入部と、
酸素、水分、および/または粒子を含むガスを前記密閉空間から排出するように構成された第1のガス排出部と、
前記密閉空間と前記搬送空間とを連通させることで均圧にする均圧部を備えることを特徴とするEFEM。
【請求項2】
制御部を備え、
前記均圧部は、前記密閉空間と前記搬送空間とを連通させる流路に設けられた均圧バルブを有
し、
前記制御部は、前記均圧バルブを開放した後で、閉止されている前記開口部を前記ドアに開けさせることを特徴とする請求項1に記載のEFEM。
【請求項3】
前記第1のガス排出部は、
前記不活性ガスが前記第1のガス注入部から前記密閉空間内に注入されているときに前記密閉空間から前記酸素、水分、および/または粒子を含むガスを排出
可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のEFEM。
【請求項4】
前記シール部材は、前記ベース
部と前記容器との間に設けられる第1シール部材と、前記ベース
部と前記ドアとの間に設けられる第2シール部材を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のEFEM。
【請求項5】
前記容器が前記開口部に取り付けられている間、前記容器を前記ドアに対して押圧するように構成されているクランプユニットを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のEFEM。
【請求項6】
前記クランプユニットは、前記開口部の端部に回転
可能に設けられた棒状の回転部材と、
前記回転部材から突出する押圧片と、を含み、
回転動作により移動する前記押圧片は、前記押圧片が前記容器の鍔部に当接して前記容器を前記ドアに押し付ける押圧位置と、前記容器の押圧を解除する押圧解除位置との間を移動
し、
前記押圧位置は、前記押圧解除位置よりも前記ベース部に近い位置であることを特徴とする請求項5に記載のEFEM。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送中のウェーハを外気に晒すことのないよう、ウェーハ搬送室内のガスを循環させることのできるドア開閉システムおよびドア開閉システムを備えたロードポートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板としてのウェーハに対し種々の処理工程が施されることにより半導体の製造がなされてきている。近年では素子の高集積化や回路の微細化がますます進められており、ウェーハ表面へのパーティクルや水分の付着が生じないように、ウェーハ周辺を高いクリーン度に維持することが求められている。さらに、ウェーハ表面が酸化するなど表面の性状が変化することがないよう、ウェーハ周辺を不活性ガスである窒素雰囲気としたり、真空状態としたりすることも行われている。
【0003】
こうしたウェーハ周辺の雰囲気を適切に維持するために、ウェーハは、FOUP(Front-Opening Unified Pod)と呼ばれる密閉式の格納ポッドの内部に入れて管理され、この内部には窒素が充填される。さらに、ウェーハに処理を行う処理装置と、FOUPとの間でウェーハの受け渡しを行うために、EFEM(Equipment Front End Module)が利用されている。EFEMは、筐体の内部で略閉止されたウェーハ搬送室を構成するとともに、その対向壁面の一方にFOUPとの間でのインターフェース部として機能するロードポート(Load Port)を備えるとともに、他方に処理装置の一部であるロードロック室が接続される。ウェーハ搬送室内には、ウェーハを搬送するためのウェーハ搬送装置が設けられており、このウェーハ搬送装置を用いて、ロードポートに接続されるFOUPとロードロック室との間でウェーハの出し入れが行われる。ウェーハ搬送室は、通常、搬送室上部に配置したファンフィルタユニットから清浄な大気であるダウンフローを常時流している。
【0004】
さらに、近年では、ウェーハの最先端プロセスにおいては、ダウンフローとして用いられる清浄な大気に含まれる酸素、水分などですら、ウェーハの性状を変化させるおそれがある。このため特許文献1のように、不活性ガスをEFEM内に循環させる技術の実用化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014—112631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の開閉システムでは、依然としてシール部材、蓋体およびドア部の間で密閉された空間に大気やパーティクルが残存してしまう。この結果、より低酸素濃度、低湿度が求められるEFEMにおいては、これらの残存する大気やパーティクルがFOUP内やウェーハ搬送室に混入していまい、ウェーハの性状が変化してしまう恐れがあるという問題がある。
【0007】
そこで、この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、FOUPとEFEMとを連通する際、FOUPおよびEFEM内に大気が侵入するのを防止するドア開閉システムおよびドア開閉システムを備えたロードポートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るドア開閉システムは、
搬送空間を外部空間から隔離する壁の一部を構成するベースと、
前記ベースに設けられた開口部と、
前記開口部の開閉と、収容物を収容した容器に対する蓋体の固定及び固定の解除が可能なドアと、
前記ベースと前記容器との間をシールする第1シール部材と、
前記ベースと前記ドアとの間をシールする第2シール部材と、
前記第1シール部材を介して前記容器が前記開口部と当接する状態にあるとき、少なくとも前記第1シール部材、前記第2シール部材、前記蓋体、および前記ドアによって構成された密閉空間と、
前記密閉空間にガスを注入する第1ガス注入部と、
前記密閉空間を排気する第2ガス排出部と、
を備えた。
【0009】
このドア開閉システムでは、第1シール部材を介して容器が開口部と当接する状態にあ
るとき、すなわち容器が開口部に取付けられた際に、容器とドアとの間の密閉空間にガスを注入する第1ガス注入部と、密閉空間のガスを排出する第1ガス排出部と、を備えた。これにより、容器が開口部に取付けられた状態で、容器とドアとの間の大気を除去して窒素ガスを充填(パージ)できる。従って、容器とドアとの間に存在してウェーハを酸化させるなど、ウェーハの性状を変化させる恐れのある酸素、水分、パーティクルなどを含む大気が、ドアを開放した際に搬送空間および容器の内部に流入するのを防止できる。言い換えれば、容器の蓋体を開放して密閉空間が開放される前に、密閉空間の酸素、水分、パーティクルを排除できる。これにより、蓋体の開放時に酸素などが容器内や搬送空間に漏れ出すことなく、容器内および搬送空間を所期の環境条件に維持できる。
【0010】
本発明に係るドア開閉システムは、
前記第1ガス注入部により、前記容器と前記ドアとの間にガスを注入するガス注入動作と、前記第1ガス排出部により、前記容器と前記ドアとの間のガスを排出する排出動作とが繰り返される。
【0011】
このドア開閉システムでは、第1ガス注入部によるガス注入動作と、第1ガス排出部によるガス排出動作とが繰り返されるので、容器とドアとの間に存在する大気を確実に除去しガスを充填できる。
【0012】
本発明に係るドア開閉システムは、
前記容器内の圧力をP1、前記密閉空間の圧力をP2としたとき、圧力P1と圧力P2とを調整する圧力調整手段を備え、
前記圧力調整手段は、P1とP2とが近づくように制御する。
【0013】
このドア開閉システムでは、容器に対する蓋体の固定を解除すると、容器の内部空間と密閉空間とが連通する場合がある。このとき、P1とP2との圧力差が大きいと、容器と密閉空間との間を移動する気体の流量が大きくなるので、容器底部に堆積しているパーティクルを舞い上げ、収容物を汚染するおそれがある。そこで、P1とP2とが近づくように制御することで容器と密閉空間との間で移動する気体の量を減らし、パーティクルの飛散を抑えることで収容物の汚染を防止できる。
【0014】
本発明に係るドア開閉システムは、
前記搬送空間を形成する前記ベースを包含する搬送室を有し、
前記搬送空間内の圧力をP3としたとき、
前記圧力調整手段が更に圧力P3を調整し、P1とP2とP3とが近づくように制御する。
【0015】
このドア開閉システムでは、ドアが開口部を開放すると、容器内の空間と密閉空間と搬送空間とが連通する。このとき、仮に各空間の圧力差が大きいと、各空間の間を移動する気体の流量が大きくなるので、各空間に存在するパーティクルを舞い上げるおそれがある。そこで、P1とP2とP3とが近づくように制御することで容器と密閉空間と搬送空間との間で移動する気体の量を減らし、パーティクルの飛散を抑えることで各空間の汚染を防止できる。
【0016】
本発明に係るドア開閉システムは、
前記搬送空間を形成する前記ベースを包含する搬送室を有し、
前記容器内の圧力をP1、前記密閉空間の圧力をP2、前記搬送空間内の圧力をP3としたとき、圧力P1と圧力P2と圧力P3とを調整する圧力調整手段を備え、
前記圧力調整手段は、P1、P2、P3が順に高くなるように制御する。
【0017】
このドア開閉システムでは、圧力P1,P2,P3が順に高くなるように制御することで、容器内の空間と密閉空間と搬送空間とのうち、隣り合う空間の圧力差が小さくなる。これにより、ドアが開口部を開放して各空間が連通したときに、隣り合う空間の圧力差が大きくなる場合と比べて各空間の間を移動する気体の流量を小さくできる。従って、容器と密閉空間と搬送空間との間で移動する気体の量を減らし、パーティクルの飛散を抑えることで各空間の汚染を防止できる。
【0018】
本発明に係るドアロードポートは、
上記ドア開閉システムを備え、
前記開口部の開放および前記蓋体の取り外しと、前記開口部の閉止および前記蓋体の取付けとをそれぞれ同時に行う。
【0019】
このロードポートでは、開口部を開放した際に容器の蓋体を確実に取り外すと共に、開口部を閉止した際に蓋体を取り付けるので、各操作を迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、第1シール部材を介して容器が開口部と当接する状態にあるとき、すなわち容器が開口部に取付けられた際に、容器とドアとの間の密閉空間にガスを注入する第1ガス注入部と、密閉空間のガスを排出する第1ガス排出部と、を備えた。これにより、容器が開口部に取付けられた状態で、容器とドアとの間の大気を除去して窒素ガスを充填(パージ)できる。従って、容器とドアとの間に存在してウェーハを酸化させるなど、ウェーハの性状を変化させる恐れのある酸素、水分、パーティクルなどを含む大気が、ドアを開放した際に搬送空間および容器の内部に流入するのを防止できる。言い換えれば、容器の蓋体を開放して密閉空間が開放される前に、密閉空間の酸素、水分、パーティクルを排除できる。これにより、蓋体の開放時に酸素などが容器内や搬送空間に漏れ出すことなく、容器内および搬送空間を所期の環境条件に維持できる。
【0021】
本発明では、第1ガス注入部によるガス注入動作と、第1ガス排出部によるガス排出動作とが繰り返されるので、容器とドアとの間に存在する大気を確実に除去しガスを充填できる。
【0022】
本発明では、容器に対する蓋体の固定を解除すると、容器の内部空間と密閉空間とが連通する場合がある。このとき、P1とP2との圧力差が大きいと、容器と密閉空間との間を移動する気体の流量が大きくなるので、容器底部に堆積しているパーティクルを舞い上げ、収容物を汚染するおそれがある。そこで、P1とP2とが近づくように制御することで容器と密閉空間との間で移動する気体の量を減らし、パーティクルの飛散を抑えることで収容物の汚染を防止できる。
【0023】
本発明では、ドアが開口部を開放すると、容器内の空間と密閉空間と搬送空間とが連通する。このとき、仮に各空間の圧力差が大きいと、各空間の間を移動する気体の流量が大きくなるので、各空間に存在するパーティクルを舞い上げるおそれがある。そこで、P1とP2とP3とが近づくように制御することで容器と密閉空間と搬送空間との間で移動する気体の量を減らし、パーティクルの飛散を抑えることで各空間の汚染を防止できる。
【0024】
本発明では、ドアが開口部を開放すると、容器内の空間と密閉空間と搬送空間とが連通する。このとき、仮に各空間の圧力差が大きいと、各空間の間を移動する気体の流量が大きくなるので、各空間に存在するパーティクルを舞い上げるおそれがある。そこで、P1とP2とP3とが近づくように制御することで容器と密閉空間と搬送空間との間で移動する気体の量を減らし、パーティクルの飛散を抑えることで各空間の汚染を防止できる。
【0025】
本発明では、開口部を開放した際に容器の蓋体を確実に取り外すと共に、開口部を閉止した際に蓋体を取り付けるので、各操作を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係るEFEMと処理装置との関係を模式的に示す平面図。
【
図2】EFEMの側面壁を取り外した状態を示す側面図。
【
図4】EFEMの循環路におけるガスの流れを示す模式図。
【
図9】ドア部と第1シール部材との関係を示す部分拡大断面図。
【
図10】
図8の状態よりFOUPを筐体側に移動させた状態を示す側断面図。
【
図11】シール部材により密閉された密閉空間を示す部分拡大断面図。
【
図12】クランプすることによりFOUPをドア部に近づけた状態を示す部分拡大断面図。
【
図13】
図10の状態よりFOUPの蓋体と共にドア部を開口部から離間させた状態を示す側断面図。
【
図14】
図13の状態よりFOUPの蓋体と共にドア部を下方に移動させた状態を示す側断面図。
【
図15】EFEMを構成するウインドウユニットとドア部を拡大して示す要部拡大斜視図。
【
図17】ウインドウユニットに設けたクランプを示す要部拡大正面図。
【
図18】制御部と各圧力計および各バルブとの接続状態を示すブロック図。
【
図19】FOUPをEFEMに接続して連通する手順を示すフローチャート。
【
図20】(a)はクランプユニットの変形例を示す断面図、(b)は(a)のクランプ状態を示す正面図。
【
図21】(a)は
図20のクランプを解除した状態を示す断面図、(b)は(a)の支持片を示す拡大断面図。
【
図22】(a)はクランプを解除した状態を示す拡大平面図、(b)は動作途中のクランプを示す拡大平面図、(c)はクランプをした状態を示す拡大平面図。
【
図23】(a)は搬送空間側に凹む陥凹部を有する変形例のドア部を示す断面図、(b)は搬送空間側に弓状に凹む湾曲面を有する変形例のドア部を示す断面図。
【
図24】(a)は搬送空間側に凹む陥凹部を有する更なる変形例のドア部を示す断面図、(b)は搬送空間側に弓状に凹む湾曲面を有する更なる変形例のドア部を示す断面図。
【
図25】圧力P1がP2よりも高い場合に変形例に係るガスの流路を示す図。
【
図26】圧力P1がP2よりも低い場合に変形例に係るガスの流路を示す図。
【
図27】制御部と各圧力計および各バルブとの変形例の接続状態を示すブロック図。
【
図28】
図11の状態からFOUPの蓋体に向かってドア部を前進させた変形例を示す部分拡大断面図。
【
図29】2つのOリングを一体とした変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係るEFEM1と、これと接続する処理装置6の天板等を取り除くことで内部が見えるようにし、これらEFEM1と処理装置6との関係を模式的に示した平面図である。また、
図2は、EFEM1の側面の壁を取り除くことで内部が見
えるようにした側面図である。これら
図1及び2に示すように、EFEM1は、所定の受け渡し位置間でウェーハWの搬送を行うウェーハ搬送装置2と、このウェーハ搬送装置2を囲むように設けられた箱型の筐体3と、筐体3の前面側の壁(前面壁31)の外側に接続される複数(図中では3つ)のロードポート4と、制御手段5とから構成されている。
【0029】
ここで、本願においては筐体3より見てロードポート4が接続される側の向きを前方、前面壁31と対向する背面壁32側の向きを後方と定義し、さらに、前後方向及び垂直方向に直交する方向を側方と定義する。すなわち、3つのロードポート4は側方に並んで配置されている。
【0030】
また、EFEM1は、
図1に示すように、背面壁32の外側に隣接して、処理装置6の一部を構成するロードロック室61が接続できるようになっている。EFEM1とロードロック室61との間に設けられた扉1aを開放することで、EFEM1内とロードロック室61とを連通した状態とすることが可能となっている。処理装置6としては種々様々なものを使用できるが、一般には、ロードロック室61と隣接して搬送室62が設けられ、さらに搬送室62と隣接して、ウェーハWに処理を行う複数(図中では3つ)の処理ユニット63~63が設けられる構成となっている。搬送室62と、ロードロック室61や処理ユニット63~63との間には、それぞれ扉62a,63a~63aが設けられており、これを開放することで各々の間を連通させることができる。また、搬送室62内に設けられた搬送ロボット64を用いてロードロック室61及び処理ユニット63~63の間でウェーハWを移動させることが可能となっている。
【0031】
ウェーハ搬送装置2は、
図2に示すように、ウェーハWを載置して搬送するピックを備えたアーム部2aとこのアーム部2aを下方より支持し、アーム部を動作させるための駆動機構及び昇降機構を有するベース部2bとから構成されている。ベース部2bは、筐体3の前面壁31に支持部21及びガイドレール22を介して支持されている。そして、ウェーハ搬送装置2は筐体3内の幅方向に延在するガイドレール22に沿って移動できるようになっている。制御手段5がウェーハ搬送装置2の動作を制御することによって、側方に並んだ各ロードポート4に載置されたFOUP(容器)7に収容されているウェーハ(収容物)Wをロードロック室61へ搬送すること及び、各処理ユニット63~63にて処理が行われた後のウェーハWをFOUP7内へ再び搬送することが可能となっている。
【0032】
筐体3は、ウェーハ搬送装置2の四方を囲む前面壁31、背面壁32、側面壁33,34と、天井壁35、底壁36、さらに上記の筐体壁31~35を支える支柱37a~37dとを含んで構成されている。前面壁31に設けられた開口部92にロードポート4が取り付けられる。背面壁32に設けられた矩形状の開口32aにロードロック室61が接続される。筐体3は、搬送空間9と後述するガス帰還路10とを有し、これらを包含する略閉止空間CS(
図4参照)が形成されている。なお、上述した各部材は、部材間に内部のガスが流出する隙間を生じないよう精密に取り付けられているが、部材間にシール部材を設け、さらに筐体3内の気密性を高めるように構成してもよい。また、背面壁32に設けられた開口32aは、駆動機構1bを有し、上下に駆動する一般にゲートバルブと称される扉1a(
図3参照)によって閉止することが可能となっている。なお、図示及び説明を省略するが、側面壁33,34にも開口が設けられており、一方はウェーハWの位置調整に利用されるアライナが接続されるものとなっており、他方は通常時は閉じられたメンテナンス用の開口となっている。
【0033】
ロードポート4はドア部81を備えており、このドア部81がFOUP7に設けられた蓋体72と連結してともに移動することで、FOUP7が略閉止空間CSに対して開放されるようになっている。FOUP7内には載置部が上下方向に多数設けられており、これによって多数のウェーハWを収容することができる。また、FOUP7内には通常窒素が
充填されるとともに、制御手段5の制御によってロードポート4を介してFOUP7内の雰囲気を窒素置換することも可能となっている。
【0034】
制御手段5は、筐体3の天井壁35より上方の、天板38との間に位置する上部空間USに設けられたコントローラユニットとして構成されている。また制御手段5は、ウェーハ搬送装置2の駆動制御、ロードポート4によるFOUP7の窒素置換制御、扉1a,ドア部81の開閉制御及び、筐体3内における窒素循環制御等を行っている。制御手段5は、CPU、メモリ及びインターフェースを備えた通常のマイクロプロセッサ等により構成されるもので、メモリには予め処理に必要なプログラムが格納してあり、CPUは逐次必要なプログラムを取り出して実行し、周辺ハードリソースと協働して所期の機能を実現するものとなっている。なお、窒素循環制御については後述する。
【0035】
略閉止空間CSは、
図4に示すように仕切り部材8によってウェーハ搬送装置2が駆動する空間である搬送空間9と、ガス帰還路10とに仕切られている。搬送空間9とガス帰還路10とは、搬送空間9の上部に幅方向に延在して設けられたガス送出口11と搬送空間9の下部に幅方向に延在して設けられたガス吸引口12とにおいてのみ連通している。そして、ガス送出口11とガス吸引口12とが搬送空間9内に下降気流を生じさせ、ガス帰還路10内に上昇気流を生じさせることで、略閉止空間CS内に
図4に矢印で示す循環路Ciを形成し、ガスが循環するようになっている。なお、本実施形態においては、この略閉止空間CSに不活性ガスである窒素を循環させることとするが、循環させるガスはこれに限られるものではなく、他のガスを用いることもできる。
【0036】
次に、ガス帰還路10の構成を詳細に説明する。
図4に示すように、ガス帰還路10は底壁36、背面壁32、天井壁35及び仕切り部材8によって閉止された空間である。またガス帰還路10は、搬送空間9の下部においてガス吸引口12から吸引されたガスを、搬送空間9上部のガス送出口11へ帰還させるために設けられる。
【0037】
帰還路10の背面側上部には略閉止空間CS内に窒素を導入するガス供給手段(第3ガス注入部)16が接続されている。ガス供給手段16は、制御手段5からの命令に基づいて窒素の供給と供給の停止を制御することが可能となっている。そのため、窒素の一部が略閉止空間CSの外部に流出した場合には、ガス供給手段16が流出分の窒素を供給することによって、略閉止空間CS中の窒素雰囲気を一定に保つことができる。また、背面側下部には略閉止空間CS中のガスを排出するガス排出手段(第3ガス排出部)17が接続されている。ガス排出手段17は、制御手段5からの命令に基づいて動作して、図示しないシャッタを開放することによって略閉止空間CSの内部と外部に設けられたガス排出先とを連通させることが可能となっている。そして、上述したガス供給手段16による窒素の供給と併用することにより、略閉止空間CSを窒素雰囲気に置換することが可能となっている。なお、本実施形態においては、循環路Ciを循環させるガスを窒素とするため、ガス供給手段16は窒素を供給するが、他のガスを循環させる場合は、ガス供給手段16はその循環させるガスを供給する。
【0038】
また、ガス送出口11には第1の送風手段としてのファン13aとフィルタ13bとから構成されるファンフィルタユニット13(FFU13)が設けられている。ファンフィルタユニット13は、略閉止空間CS内を循環するガス内に含まれるパーティクルを除去するとともに、搬送空間9内へ下方に向けて送風することによって搬送空間9内に下降気流を生じさせている。なお、FFU13は、仕切り部材8に連結され水平方向に延びる支持部材18によって支持されている。
【0039】
一方、ガス吸引口12にはケミカルフィルタ14が接続されており、搬送空間9内のガスはケミカルフィルタ14を介してガス帰還路10に流入するようになっている。上述し
たように、ウェーハ搬送装置2(
図2参照)を筐体3の前面壁31に、支持部21及びガイドレール22を介して支持されるようにしている。このため、ガス吸引口12は、ウェーハ搬送装置2と干渉することなく、大きく上方に向かって開口したものすることが可能となっている。また、上述したように、ガス吸引口12は幅方向に延在して設けられているため、同様に幅方向に延在して設けられたガイドレール22よりウェーハ搬送装置2の駆動時にパーティクルが生じたとしても、このパーティクルを効果的に吸引させることが可能となっている。そして、ガス吸引口12にケミカルフィルタ14を設けることによって、処理装置6(
図1参照)における処理等で生じ、搬送空間9内に流入した分子状汚染物質を除去することを可能としている。さらに、ガス帰還路10内のケミカルフィルタ14よりも背面側には、第2の送風手段としてのファン15が幅方向に亘って設けられている(
図4参照)。当該ファン15がガス帰還路10の下流側、すなわち
図4の上方へ向けて送風を行うことによって、ガス吸引口12におけるガスの吸引力を生じさせるとともに、ケミカルフィルタ14を通過したガスを上方へ送出し、ガス帰還路10内に上昇気流を生じさせている。
【0040】
そして、上述したFFU13のファン13a及びファン15とによって、略閉止空間CS内のガスは搬送空間9内を下降し、ガス帰還路10内を上昇することで循環するようになっている。ガス送出口11は下方に向かって開口されていることから、FFU13によってガスが下方に向かって送り出される。ガス吸引口12は上方に向かって開口されていることから、FFU13によって生じさせた下降気流を乱すことなくそのまま下方に向かってガスを吸引させることができ、これらによって円滑なガスの流れを作り出すことができる。なお、搬送空間9内に下降気流が生じていることで、ウェーハW上部に付着したパーティクルを除去するとともに、搬送空間9内にパーティクルが浮遊することを防止している。
【0041】
次に、上記のように構成したEFEM1内において、窒素を循環させる窒素循環制御の動作を、
図4を用いて説明する。
【0042】
まず、初期段階として、制御手段5がガス排出手段17にガスを排出させつつ、ガス供給手段16に略閉止空間CS内に窒素を供給させることによって、大気雰囲気にあるEFEM1の略閉止空間CSを窒素雰囲気にパージする。この段階以降、制御手段5は循環路Ci内の窒素が外部へ漏れた場合、その漏れ量に応じてガス供給手段16に窒素の供給を行わせる。
【0043】
そして、このようにして窒素雰囲気になった略閉止空間CSにおいて、制御手段5がFFU13のファン13a及びファン15を駆動させることによって、循環路Ci内にガスの循環を生じさせる。この時、FFU13のフィルタ13b及びケミカルフィルタ14が循環するガス中のパーティクル及び分子状汚染物質を除去するため、搬送空間9内は常に清浄な窒素の下降気流が生じている状態となる。
【0044】
このような状態となったEFEM1においては、ロードポート4に載置され窒素雰囲気にパージされたFOUP7と搬送空間9とを連通させ、ウェーハWの出し入れを行う。このとき、搬送空間9とFOUP7はともに同じ窒素雰囲気であり、搬送空間9内の窒素も清浄に維持されている。従って、FOUP7内にパーティクルや分子状汚染物質が入らないようFOUP7内を搬送空間9内に対して陽圧にする必要がなく、FOUP7内にパージする窒素の消費量を抑えることができる。
【0045】
図5,6,7はそれぞれ、ロードポート4の斜視図、前方より見た場合の正面図、後方より見た場合の背面図を示すものとなっている。以下、これらの図面を用いて、ロードポート4の構成を説明する。なお、これらの図面は、載置台44の下方に位置する外部カバ
ー42(
図3参照)を取外し、内部構造の一部を露出させた状態を示している。
【0046】
ロードポート4は、キャスタ及び設置脚の取り付けられる脚部45の後方よりベース41を垂直に起立させ、このベース41の約60%程度の高さ位置より前方に向けて水平基部43が設けられている。さらに、この水平基部43の上部には、FOUP7(
図2参照)を載置するための載置台44が設けられている。
【0047】
FOUP7は、
図8に模式的に示すように、ウェーハW(
図2参照)を収容するための内部空間Sfを備えた本体71と、ウェーハWの搬出入口となるべく本体71の一面に設けられた開口71aを開閉する蓋体72とから構成されている。FOUP7は、載置台44に正しく載置された場合には蓋体72がベース41と対向するようになっている。蓋体72の内部には、蓋体72を開閉する後述する連結手段82(
図7参照)などを収納するために、空間Scが形成されている(
図11参照)。
【0048】
図5~7に戻って、載置台44上には、FOUP7の位置決めを行うための位置決めピン44aが設けられるとともに、載置台44に対してFOUP7の固定を行うためのロック爪44bが設けられている。ロック爪44bはロック動作を行うことで、位置決めピン44aと協働してFOUP7を適正な位置に案内しながら固定することができ、アンロック動作を行うことでFOUP7を載置台44より離間可能な状態とすることができる。なお、載置台44はFOUP7を載置した状態で、載置台駆動部(図示せず)により前後方向に移動することが可能となっている。
【0049】
また、載置台44には、FOUP7内にガスを供給する第2ガス注入ノズル(第2ガス注入部)44cと、FOUP7内よりガスを排出する第2ガス排出ノズル(第2ガス排出部)44dがそれぞれ2箇所に設けられている。第2ガス注入ノズル44cと、第2ガス排出ノズル44dとは、通常は載置台44の上面より下方に位置し、使用の際に上方に進出してFOUP7の備えるガス供給弁73とガス排出弁74(
図8参照)にそれぞれ連結するようになっている。
【0050】
使用時には、第2ガス注入ノズル44cの一端がFOUP7の内部に連通し、他端には第2ガス注入バルブ44eが配設されている。同様に、第2ガス排出ノズル44dの一端がFOUP7の内部に連通し、他端には第2ガス排出バルブ44fが配設されている。そして、ガス供給弁73を介して第2ガス注入ノズル44cよりFOUP7の内部空間Sfに乾燥窒素ガス等のガスを供給し、ガス排出弁74を介して第2ガス排出ノズル44dより内部空間Sfのガスを排出することで、ガスパージを行うことが可能となっている。また、ガス供給量をガス排出量よりも多くすることで、外部や筐体3の内部空間Se(
図2参照)の圧力に対して内部空間Sfの圧力を高めた陽圧設定とすることもできる。FOUP7内(内部空間Sf)の圧力を高めることで、
図11に示すように、蓋体72の表面が当接面71bよりもドア部81に向かって膨出している。
【0051】
ロードポート4を構成するベース41は、搬送空間9を外部空間から隔離する前面壁31の一部を構成している。
図5に示すようにベース41は、両側方に起立させた支柱41a,41aと、これらにより支持されたベース本体41bと、このベース本体41bに略矩形状に開放された窓部41cに取り付けられたウインドウユニット90とから構成されている。ここで、本願でいう略矩形とは、四辺を備える長方形を基本形状としながら四隅を円弧によって滑らかにつないだ形状をいう。ベース本体41bの後面の外周近傍には、矩形枠状に形成された弾性材としてのガスケット47(
図7参照)が設けられている。ガスケット47は、ガスの透過の少ないゴム材料によって形成されている。
【0052】
ウインドウユニット90は、上述したFOUP7の蓋体72(
図8参照)と対向する位
置に設けられている。ウインドウユニット90は、後に詳述するように略矩形状の開口部92(
図15参照)が設けられていることから、この開口部92を介して筐体3の内部空間Seを開放することができる。そして、ロードポート4は、FOUP7を取り付け可能に構成されたウインドウユニット90を開閉するための開閉機構80を備えている。
【0053】
図6に示すように開閉機構80は、開口部92を開閉するためのドア部81と、これを支持するための支持フレーム83と、この支持フレーム83をスライド支持手段84を介して前後方向に移動可能に支持する可動ブロック85と、この可動ブロック85をベース本体41bに対して上下方向に移動可能に支持するスライドレール86を備えている。
【0054】
支持フレーム83は、
図8に示すようにドア部81の後部下方を支持するものであり、下方に向かって延在した後に、ベース本体41bに設けられたスリット状の挿通孔41dを通過してベース本体41bの前方に向かって張り出した略クランプ状の形状をしている。そして、この支持フレーム83を支持するためのスライド支持手段84、可動ブロック85及びスライドレール86はベース本体41bの前方に設けられている。すなわち、ドア部81を移動させるための駆動箇所が筐体3の外側にあり、万が一これらの部分でパーティクルが発生した場合でも、挿通孔41dをスリット状として小さくしていることにより、パーティクルの筐体3内への進入を抑制することが可能となっている。
【0055】
以下、開閉機構80のドア部81について詳述する。
図8に示すようにドア部81には、FOUP7がウインドウユニット90に取付けられた際に、FOUP7とドア部81との間にガスを注入する第1ガス注入ノズル(第1ガス注入部)87と、FOUP7とドア部81との間のガスを排出する第1ガス排出ノズル(第1ガス排出部)88とが設けられている。第1ガス注入ノズル87の一端がドア部81の外表面まで延び、他端部には第1ガス注入バルブ87aが配設されている。同様に、第1ガス排出ノズル88の一端がドア部81の外表面まで延び、他端部には第1ガス排出バルブ88aが配設されている。これにより、後述するようにドア部81と蓋体72とをクランプ操作により一体にした状態で、第1ガス注入ノズル87が密閉空間Sd(
図11参照)に連通して乾燥窒素ガス等のガスを供給し、第1ガス排出ノズル88が密閉空間Sdに連通してガスを排出することで、ガスパージを行うことが可能となっている。なお、第1ガス排出ノズル88は途中で分岐して均圧バルブ89が配設され、密閉空間Sdと搬送空間9とを均圧する均圧用のノズルとしても使用される。
【0056】
図9は、ドア部81とOリング(第1シール部材)94との関係を示す
図8の部分拡大断面図である。
図9に示すように、ドア部81のFOUP7側の端面81cが、Oリング94のFOUP7側端部より所望の寸法L2だけ搬送空間9側にある。このように、ドア部81のFOUP7側の端面81cの全てが、Oリング94のFOUP7側端部より搬送空間9側に位置する。従って、蓋体72とドア部81との接触を確実に防止して、Oリング96によるベース41とドア部81との間のシールを維持できる。なお図中、Oリング94のFOUP7側端部の位置を仮想線L1で示している。寸法L2は例えば0.1mm以上で3mm以下である。
【0057】
さらに、ドア部81の前後方向への移動及び上下方向への移動を行わせるためのアクチュエータ(図示せず)が、各方向毎に設けられており、これらに制御部Cpからの駆動指令を与えることで、ドア部81を前後方向及び上下方向に移動させることができるようになっている。
【0058】
また、ベース本体41bの前方には、水平基部43の直下より下側に向かって延在するカバー46(
図8参照)が設けられており、このカバー46の内部で支持フレーム83、スライド支持手段84、可動ブロック85及びスライドレール86を覆い、密閉状態とす
るようにしている。そのため、ベース本体41bには挿通孔41dが形成されているものの、この部分を通して、筐体3(
図3参照)内のガスが外側に流出しないようにされている。カバー46の内側には、第1ガス注入ノズル87の下端、第1ガス注入バルブ87a、第1ガス排出ノズル88および第1ガス排出バルブ88aが設けられている。
【0059】
ドア部81は、FOUP7の蓋体72を吸着する吸着部79(
図6参照)と、FOUP7の蓋体72を開閉するためのラッチ操作や、蓋体72の保持を行うための連結手段82(
図7参照)を備えている。ドア部81は蓋体72の固定および固定の解除を行って、FOUP7から蓋体72の取り外し、および取り付けが可能となっている。連結手段82では、蓋体72のアンラッチ動作を行うことで蓋体72を開放可能な状態とするとともに、蓋体72をドア部81に連結して一体化した状態とすることができる。また、これとは逆に、蓋体72とドア部81との連結を解除するとともに、蓋体72を本体71に取付けて閉止状態とすることもできる。
【0060】
ここで、
図15を用いて、前述したウインドウユニット90の詳細な構成について説明を行う。ウインドウユニット90は、窓枠部91と、これに取り付けられる弾性材としてのOリング94,96と、Oリング94を介してFOUP7を窓枠部91に対して密着させるための引き込み手段としてのクランプユニット50とから構成されている。
【0061】
窓枠部91は、内側に略矩形状の開口部92が形成された枠形状をなしている。窓枠部91は、ウインドウユニット90の構成要素として上述したベース41(
図5参照)の一部を構成するものであることから、開口部92は筐体3の壁面としての前面壁31を開放するものということができる。窓枠部91の前面には、開口部92の周縁近傍を周回するようにOリング94が配設されている。窓枠部91の後面には、開口部92の周縁近傍を周回するようにOリング96が配設されている。
【0062】
開口部92はFOUP7の蓋体72(
図8参照)の外周よりも僅かに大きく、この開口部92を通って蓋体72は移動可能となっている。また、FOUP7を載置台44に載置させた状態において、蓋体72の周囲をなす本体71の前面は当接面71bとして、Oリング94を介して窓枠部91の前面に当接する。これにより、FOUP7がウインドウユニット90に取付けられた際に、Oリング94は開口部92(ベース41)の周縁とFOUP7との間をシールする(
図16参照)。
【0063】
また、窓枠部91の後面には、上述したドア部81がOリング(第2シール部材)96を介して当接するようになっている。これにより、Oリング96が開口部92の周縁とドア部81との間をシールする。具体的には、ドア部81の外周に鍔状に設けられた薄肉部81aが当接する。この際、薄肉部81aの内側に形成された厚肉部81bは、開口部92よりも小さく形成されていることで、開口部92を通じ前方に向かって張り出すようになっている。
【0064】
図15に戻って、クランプユニット50は、窓枠部91の両側部において上下方向に離間して配された合計4箇所に設けられている。各クランプユニット50は、概ね係合片51とこれを動作させるシリンダ52とから構成され、FOUP7がウインドウユニット90に取付けられた状態で、FOUP7をベース41側に押圧する。
【0065】
クランプユニット50を構成するシリンダ52は窓枠部91の後方に取り付けられ、窓枠部91に設けられた孔部を通じて前方に向かって進退可能とされたシャフト53を備えている。シャフト53の先端には係合片51の基端51aが取り付けられ、この基端51aよりシャフト53の外周方向に向かって先端51bが延在するようになっている。また、シャフト53の外周には、軸方向に沿って90°位相がねじれたガイド溝53aが形成
され、その内部には窓枠部91側に固定されたガイドピン54が半径方向より挿入されている。そのため、シリンダ52による進退動作に伴ってガイドピン54によりガイド溝53aが案内され、シャフト53は軸中心回りに90°回動する。
【0066】
そして、
図17に示すように、係合片51がシャフト53とともに前方に飛び出した場合には先端51bが上方向を向き、後方に引き込まれた状態となった場合には先端51bが内側のFOUP7に向かう方向となる。クランプ操作により、係合片51は先端51bが内側を向くことで、FOUP7より側方に張り出した鍔部71cに係合することが可能となっている。このように係合した状態を保ちながら、シャフト53がシリンダ52によって更に引き込まれる。これにより、FOUP7の当接面71bをOリング94に対して一層強く密着させたクランプ状態とすることが可能となっている。このようなクランプユニット50が4箇所で働くことによって、Oリング94の変形量を均一にしてよりシール性を高めることができる。クランプ状態においても、FOUP7の当接面71bによりベース41側に押圧されたOリング94のFOUP7側端部より、ドア部81のFOUP7側の端面81cが搬送空間9側に位置している。
【0067】
また、係合片51を前方に移動した場合には、先端51bが上側を向くことで、正面より見て鍔部71cと干渉しない位置になる。こうすることで、FOUP7を載置台44とともに移動させることができる。なお、先端51bを前方に移動させた場合には、単に鍔部71cと干渉しないようにできればよく、先端51bは上方向に限らず下方向や外側方向になるように設定してもよい。
【0068】
上記のように構成したロードポート4は、
図5に示す制御部Cpによって、各部に駆動指令が与えられることで動作するようになっている。また
図18に示すように、制御部Ctの入力側は、密閉空間Sdの圧力を計測する圧力計と、FOUP7の内部空間Sfの圧力を計測する圧力計と、筐体3の内部空間Seの圧力を計測する圧力計とに接続されている。同様に制御部Ctの入力側は、密閉空間Sdの湿度を計測する湿度計と、FOUP7の内部空間Sfの湿度を計測する湿度計と、筐体3の内部空間Seの湿度を計測する湿度計とに接続されている。酸素濃度を計測するため制御部Ctの入力側は、密閉空間Sdの酸素濃度を計測する酸素(濃度)計と、FOUP7の内部空間Sfの酸素濃度を計測する酸素(濃度)計と、筐体3の内部空間Seの酸素濃度を計測する酸素(濃度)計とに接続されている。流量に関して制御部Ctの入力側は、第1ガス注入ノズル87の流量を計測する流量計と、第2ガス注入ノズル44cの流量を計測する流量計と、第3ガス注入部16の流量を計測する流量計とに接続されている。
【0069】
制御部Ctの出力側は、流量制御部Cfを介して第1ガス注入バルブ87a、第1ガス排出バルブ88a、第2ガス注入バルブ44e、第2ガス排出バルブ44f、第3ガス注入バルブ、第3ガス排出バルブ、ガス供給手段16、ガス排出手段17および均圧バルブ89に接続され、駆動制御部Cdを介してクランプユニット50、連結手段82および吸着部79に接続されている。制御部CtはEFEM1に設置され、各種メモリや、ユーザによる操作入力を受け付けるコントローラが内蔵されている。流量制御部Cf、駆動制御部CdはEFEM1のコントローラ内に設けられている。
【0070】
以下、本実施形態のロードポート4を用いた場合の動作例を、
図8~12を用いて説明する。なお、初期状態では各バルブが閉じられている。
【0071】
図8は、載置台44上にFOUP7を載置させ、ベース41より離間させた状態を示している。この状態において、ウインドウユニット90を構成する窓枠部91(
図15参照)の後面にOリング96を介してドア部81が当接していることから、窓枠部91とドア部81との間には隙間が生じることがなく、高いシール性を得ることができる。そのため
、筐体3の内部空間Seを窒素ガス等で満たした状態としていても、外部へのガスの流出や、外部から内部空間Seへのガスの流入を抑制することができる。
【0072】
図19に示すようにステップS1では、FOUP7が、ロック爪44b(
図5参照)によるロック動作と、位置決めピン44aとの位置決め作用によって、載置台44に対して適切な位置とされて固定される。
【0073】
そして、載置台44が備える第2ガス注入ノズル44cと第2ガス排出ノズル44dとが上方に突出し、FOUP7が備えるガス供給弁73とガス排出弁74にそれぞれ接続される。その後、ステップS2で、第2ガス注入バルブ44eを開くことで第2ガス注入ノズル44cよりガス供給弁73を通じてフレッシュな乾燥窒素ガスが供給される。同時に第2ガス排出バルブ44fを開くことで、それまで内部空間Sfに留まっていたガスをガス排出弁74を通じて第2ガス排出ノズル44dより排出する。このようにガスパージを行うことで、内部空間Sfを窒素ガスで満たすとともに、筐体3の内部空間Seよりも圧力を高い状態とする。なお、FOUP7内への窒素ガスの充填は、このフローが終了するまで継続される。
【0074】
次にステップS3では、
図10に示すように、載置台44を後方に向かって移動させ、FOUP7の当接面71bを窓枠部91に当接させる。このとき、ドア部81の端面81cがOリング94のFOUP7側端部よりも所定の寸法L2だけ、搬送空間9側に位置している。従って、FOUP7の蓋体72がドア部81側に膨出していても、FOUP7をウインドウユニット90に接近させると、FOUP7の当接面71bがOリング94と当接し、蓋体72がドア部81の端面81cに接触することはない(
図11参照)。従って、Oリング96とドア部81との間のシールが確実に維持される。このように、当接面71bをOリング94を介して窓枠部91と当接させ、ドア部81がOリング96を介して窓枠部91と当接するので、密閉空間Sdが形成される。密閉空間Sdを形成するベース41、Oリング94,96、蓋体72およびドア部81に、開口部92、第1ガス注入ノズル87および第1ガス排出ノズル88を加えてドア開閉システムを構成している。
【0075】
載置台44を移動させる場合には、予めクランプユニット50を構成するシリンダ52により係合片51(
図15参照)を前方に向かって突出させ、先端51bが上方向を向いた状態としてFOUP7に干渉しないようにしておく。
【0076】
この後、ステップS4では、FOUP7をクランプしてウインドゥユニット90に固定する。これにより、ドア部81と蓋体72とが離隔した状態からドア部81に向かってFOUP7を近づけることで、Oリング94が押圧されて弾性変形し、FOUP7とベース41との間のシール性を向上できる(
図12参照)。更に、クランプユニット50によってFOUP7をドア部81に向かって近づけた後のドア部81と蓋体72との距離が、上述のラッチ操作やアンラッチ動作を行うことができる距離に設定しておくことが好ましい。
【0077】
具体的には、クランプユニット50を構成するシリンダ52により係合片51を後方に向かって引き込み、先端51bが内側を向いた状態としてFOUP7の鍔部71cに係合させる。更に先端51bを引き込むことでFOUP7の当接面71bをよりOリング94に密着させ、シール性を高めた状態とする。これら一連の動作をクランプ操作という。このとき、
図11に示すように、蓋体72とドア部81との間には空間Sgが形成され、連結手段82を装着する装着孔75を介して蓋体の内部空間Scと連通している。この空間Sgと空間Scとが、FOUP7とドア部81との間でシールされた密閉空間Sdを形成している。
【0078】
ステップS5では、ドア部81に設けられた連結手段82(
図7参照)を動作させることで、蓋体72をアンラッチ状態として本体71より取り外し可能とするとともに、吸着部79を介してドア部81が蓋体72を一体的に保持する状態とする。
【0079】
ステップS6では、第1ガス注入バルブ87aを開くことで、第1ガス注入ノズル87より窒素ガスが密閉空間Sdに供給される。同時に、第1ガス排出バルブ88aを開くことで、それまで密閉空間Sdに留まっていたガス(大気)を第1ガス排出ノズル88より排出する。そして所定時間の経過後、第1ガス注入バルブ87aと第1ガス排出バルブ88aとを閉じることで、密閉空間Sdへのガスの充填を終了する。なお、第1ガス注入ノズル87により、密閉空間Sdにガスを注入するガス注入動作と、第1ガス排出ノズル88により、密閉空間Sdにガスを排出する排出動作とを繰り返してもよい。ここで、大気とは、ウェーハWを酸化させるなど、ウェーハWの性状を変化させる恐れのある酸素、水分、パーティクルなどを包含する。また密閉空間Sdに留まっていたガス(大気)を排出するとは、FOUP7とドア部81との間に存在する大気だけではなく、蓋体72の内部に存在する大気を排出し、ガスを充填できることを意味する。
【0080】
ステップS7では、FOUP7の内部空間Sfと密閉空間Sdとを均圧にする。具体的には、クランプ操作後の内部空間Sfの圧力をP1、密閉空間Sdの圧力をP2としたときに、P1とP2とが近づくように制御する。
【0081】
この圧力調整は、密閉空間SdおよびFOUP7の圧力計で検知する圧力により、第1ガス注入ノズル87と第1ガス排出ノズル88との流量を調整することで行われる。ただし圧力調整は圧力計を用いずに行ってもよい。具体的には、第1ガス注入ノズル87および第1ガス排出ノズル88の流量と、第2ガス注入ノズル44cおよび第2ガス排出ノズル44dの流量とから圧力を推定して、この推定圧力に基づいて圧力調整を行ってもよい。この場合は圧力計を用いなくても圧力調整ができるため、コストを削減できる。圧力を推定する際、酸素濃度計による到達酸素濃度もしくは湿度計による到達湿度も考慮して推定しても良い。
【0082】
圧力の調整は、種々の方法でなされる。使用するFOUPが予め決まっておれば、使用するFOUP7の内部空間SfやFOUP7の蓋体体積が決まるので、密閉空間Sdの体積がおよそ推定できる。そこで、密閉空間Sdを所定時間、所定流量のガスを充填することで、密閉空間Sdの圧力P2を、所定の圧力に圧力調整することも可能である。この場合、圧力調整のために圧力計、酸素濃度計、湿度計を用いなくとも良い。
【0083】
ここでは圧力P2の調整方法を述べたが、これらは圧力P1およびP3を調整するために用いることもできる。また、圧力調整は流量の調整だけではなく均圧バルブによる調整、および流量と均圧バルブとの組み合わせで行ってもよい。これらの圧力調整に用いる機構をまとめて圧力調整手段という。
【0084】
ステップS8では
図13に示すように、支持フレーム83とともにドア部81および蓋体72を後方に向かって移動させる。こうすることで、FOUP7の蓋体72を本体71より離間させて内部空間Sfを開放すると共に、ドア部81を開口部92から離間させて筐体3(内部空間Se)を開放する。この際、FOUP7の当接面71bがOリング94を介してウインドウユニット90に密着していることから、筐体3及びFOUP7と外部との間でのガスの流出や流入を抑制することが可能となっている。
【0085】
また、FOUP7の圧力が高くされていることから、FOUP7の内部空間Sfから筐体3内に向かってガスの流れが生ずる。そのため、FOUP7内への筐体3からのパーティクル等の進入を抑制して、FOUP7内を清浄に保つことが可能となっている。なお、
第2ガス注入ノズル44cを介して低流量のガスを継続的に供給することも、パーティクルの進入防止のためには好適である。この後、圧力調整を終了する。
【0086】
次にステップS9では
図14に示すように、支持フレーム83とともにドア部81および蓋体72を下方に移動させる。こうすることで、FOUP7の搬出入口としての開口71aの後方を大きく開放することができ、FOUP7とEFEM1との間でウェーハWの移動を行うことが可能となる。このようにドア部81を移動させるための機構が、全てカバー46によって覆われていることから、筐体3内のガスの外部への漏出を抑制することが可能となっている。
【0087】
以上のように、FOUP7の開口71aを開放する際の動作を説明したが、FOUP7の開口71aを閉止する際には、上記と逆の動作を行わせればよい。ただし、ドア開閉システムの運用上、FOUP7の開口71aを閉止する際において内部空間Sf内の圧力や酸素濃度、湿度濃度等が問題ないレベルである場合、S6やS7のステップを省略することができる。
【0088】
こうした動作を繰り返し行うことで、Oリング94,96は蓋体72またはドア部81との間で弾接が繰り返され、新たなパーティクルが発生する場合もある。こうしたパーティクルは、蓋体72またはドア部81を開放した際に、筐体3の内部で形成されたダウンフローによって下方に移動される。そのため、ウェーハW表面に付着することなく、ウェーハW表面を清浄な状態に維持することが可能となっている。
【0089】
[本実施形態のロードポートの特徴]
本実施形態のロードポート4には以下の特徴がある。
【0090】
本実施形態のロードポート4では、仮にFOUP7の蓋体72がベース41側に膨張していたとしても、FOUP7を開口部92に取り付けた際に、ドア部81のFOUP7側の端面が第1シール部材94のFOUP7側の端部よりも搬送空間9側に位置するので、蓋体72とドア部81とが接触しない。これにより、蓋体72がドア部81に接触して破片が飛散するのを防止し、ロードポート4の周辺空間を清浄に保つことができる。また、ドア部81に予め付着しているゴミが接触の衝撃で舞い上がったり、接触の衝撃でFOUP7が揺れて、FOUP7底部のゴミが飛散したり収容物の位置がずれることを低減できる。
【0091】
本実施形態のロードポート4では、クランプされ、ベース41側に押圧された第1シール部材94のFOUP7側の端部より、ドア部81のFOUP7側の端面の少なくとも一部が搬送空間9側に位置する。従って、FOUP7を開口部に取り付けた状態で、蓋体72とドア部81との接触を確実に防止できる。
【0092】
本実施形態のロードポート4では、仮にFOUP7の蓋体72がベース41側に膨張していたとしても、蓋体72とドア部81との接触を確実に防止できる。
【0093】
[本実施形態のドア開閉システムの特徴]
本実施形態のドア開閉システムには以下の特徴がある。
【0094】
本実施形態のドア開閉システムまたはロードポート4では、第1シール部材94を介してFOUP7が開口部92と当接する状態にあるとき、すなわちFOUP7が開口部92に取付けられた際に、FOUP7とドア部81との間の密閉空間Sdにガスを注入する第1ガス注入ノズル87と、密閉空間Sdのガスを排出する第1ガス排出ノズル88と、を備えた。これにより、FOUP7が開口部92に取付けられた状態で、FOUP7とドア
部81との間の大気を除去して窒素ガスを充填(パージ)できる。従って、FOUP7とドア部81との間に存在してウェーハWを酸化させるなど、ウェーハの性状を変化させる恐れのある酸素、水分、パーティクルなどを含む大気が、ドア部81を開放した際に搬送空間9およびFOUP7の内部に流入するのを防止できる。言い換えれば、FOUP7の蓋体72を開放して密閉空間Sdが開放される前に、密閉空間Sdの酸素、水分、パーティクルを排除できる。これにより、蓋体72の開放時に酸素などがFOUP7内や搬送空間9に漏れ出すことなく、FOUP7内および搬送空間Sdの清浄度を維持できる。
【0095】
本実施形態のドア開閉システムでは、第1ガス注入ノズル87によるガス注入動作と、第1ガス排出ノズル88によるガス排出動作とが繰り返されるので、FOUP7とドア部81との間に存在する大気を確実に除去しガスを充填できる。
【0096】
本実施形態のドア開閉システムでは、FOUP7をベース41にクランプする際、ドア部81と蓋体72とが離隔した状態から、ドア部81に向かってFOUP7を近づける。これにより、Oリング94を介するFOUP7とベース41との間のシール性が向上する。
【0097】
本実施形態のドア開閉システムでは、FOUP7に対する蓋体72の固定を解除すると、FOUP7の内部空間Sfと密閉空間Sdとが連通する場合がある。このとき、P1とP2との圧力差が大きいと、FOUP7と密閉空間Sdとの間を移動する気体の流量が大きくなるので、FOUP7底部に堆積しているパーティクルを舞い上げ、ウェーハWを汚染するおそれがある。そこで、P1とP2とが近づくように制御することでFOUP7と密閉空間Sdとの間で移動する気体の量を減らし、パーティクルの飛散を抑えることでウェーハWの汚染を防止できる。
【0098】
本実施形態のドア開閉システムを備えたロードポート4では、開口部92を開放した際にFOUP7の蓋体72を確実に取り外すと共に、開口部92を閉止した際に蓋体72を取り付けるので、各操作を迅速に行うことができる。
【0099】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0100】
前記実施形態では
図19のステップS6で、第1ガス注入ノズル87が密閉空間Sdに窒素ガスを供給し、第1ガス排出ノズル88が密閉空間Sdからガスを排出することで、ガスパージを行っていた。しかしこれに限定されず、第1ガス排出ノズル88が負圧排気を行ってもよい。具体的には、第1ガス排出ノズル88により密閉空間Sdに存在する大気を吸引して負圧にした後、第1ガス注入ノズル87が窒素ガスを供給する。これにより、効率的に密閉空間Sdにガスを充填できる。
【0101】
前記実施形態では、制御部Ct、流量制御部Cf、駆動制御部CdをEFEM1に設置した。しかしこれに限定されず、制御部Ct、流量制御部Cf、駆動制御部Cdの一部またはすべてをロードポート4に設置してもよい。このときロードポート4には、EFEM1のコントローラなどの上位コンピュータからの信号を受信する受信部が設けられる。各制御部がロードポート4に設置された場合には、
図27に示すように、制御部Ctの入力側は、密閉空間SdおよびFOUP7の内部空間Sfの圧力計、湿度計、酸素計に接続されると共に、第1ガス注入ノズルおよび第2ガス注入ノズルの流量計に接続されている。
【0102】
前記実施形態では
図19のステップ7で、内部空間Sfの圧力P1と密閉空間Sdの圧
力P2とを近づけた。しかしこれに限定されず、搬送空間9内の圧力をP3として、P1とP2とP3とが近づくように制御してもよい。具体的には、P1、P2、P3のうちいずれか1つに合わせて、残り2つの圧力を調整しても良い。この場合、密閉空間Sd、FOUP内部空間Sf、筐体内部空間Seのうち、体積が最も大きい筐体内部空間Seの圧力P1に、P2、P3の圧力が近づくように調整すれば、圧力調整時間を短くできる。またP1、P2,P3を所定の圧力値に近づくように制御してもよい。ドア部81が開口部92を開放すると、FOUP7内の空間Sfと密閉空間Sdと搬送空間9とが連通する。このとき、仮に各空間の圧力差が大きいと、各空間の間を移動する気体の流量が大きくなるので、各空間に存在するパーティクルを舞い上げるおそれがある。そこで、P1とP2とP3とが近づくように制御することでFOUP7と密閉空間Sdと搬送空間9との間で移動する気体の量を減らし、パーティクルの飛散を抑えることで各空間の汚染を防止できる。
【0103】
また、ステップS7でP1とP2とを近づけずに、P1、P2、P3が順に高くなるように制御してもよい。圧力P1,P2,P3が順に高くなるように制御することで、FOUP7内の空間Sfと密閉空間Sdと搬送空間9とのうち、隣り合う空間の圧力差が小さくなる。これにより、ドア部81が開口部92を開放して各空間が連通したときに、隣り合う空間の圧力差が大きくなる場合と比べて各空間の間を移動する気体の流量を小さくできる。従って、FOUP7と密閉空間Sdと搬送空間9との間で移動する気体の量を減らし、パーティクルの飛散を抑えることで各空間の汚染を防止できる。
【0104】
前記実施形態では、容器としてウェーハ搬送に用いられるFOUP7を採用した。しかしウェーハ収容容器としてはこれに限定されず、MAC(MultiApplication Carrier)、H-MAC(Horizontal-MAC)、FOSB(Front Open Shipping Box)などを採用してもよい。また、容器はウェーハ収容容器に限定されず、不活性ガスを充填した状態で搬送される電子部品のような収容物を収容する密閉容器にも適用できる。
【0105】
前記実施形態では、ロードポートはEFEMに取付けられていた。しかし、ロードポートに載置された容器内の収容物の並べ替えや他のロードポートに載置された容器の収容物とを交換するための搬送室を備えるソータや、プロセス装置自体を搬送室として、プロセス装置自体にロードポートが取付けられる装置にも適用できる。
【0106】
前記実施形態ではシリンダ52を有するクランプユニット50を採用したが、これに限定されない。
図20(a)に示すように、窓枠部91に設置されたクランプユニット100は、支持片101と、支持片101に回転可能に支持された棒状の回転体103と、回転体103を駆動するモータ106とを有する。支持片101は窓枠部91から前方に向かって延び、その中空部102で回転体103を回動可能に支持している(
図21(b)参照)。回転体103は、上端部および軸方向の中央部から突出する押圧片107を有している(
図20(b)参照)。押圧片107の先端には押圧突起108(
図22参照)が形成され、この押圧突起108を介してFOUP7の鍔部71cをクランプする。水平基部43に埋設されたモータ106は回転体103の下端部と連結し、回転体103を軸周りに回転する。
【0107】
図21(a)に示すように、クランプを解除した状態では、押圧片107が窓枠部91と垂直に水平方向前方に向かって延びている(併せて
図22(a)参照)。この状態からモータ106が回転体103を回転駆動させることで、
図22(b)に示すように、押圧片107が回転体103の軸周りに回転する。更に回転体103を回転させることで、押圧片107が押圧突起108を介して鍔部71cを押圧してFOUP7をクランプする(併せて
図20(b)参照)。なお、回転体103を回転させる駆動部としてモータ106に代えて、エア駆動式のカムなどを使用しても良い。
【0108】
上記構成のクランプユニット100を採用することで、クランプユニット100の前後方向の厚さを薄くするとともに、クランプユニット100を外部空間側に配置できるので、搬送空間9内で稼働するウェーハ搬送装置2との干渉を防止できる。
【0109】
前記実施形態では、ドア部81のFOUP7側の端面81cの全体が、Oリング94のFOUP7側端部より搬送空間9側に位置している。しかし、ドア部81のFOUP7側の端面81cの少なくとも一部が、Oリング94のFOUP7側端部より搬送空間9側に位置していればよい。
【0110】
図23(a)に示すように、ドア部81のFOUP7側(前方側)の端面110に、搬送空間9側に凹む陥凹部111が形成されている。この陥凹部111の底面112が、Oリング94のFOUP7側端部の位置を示す仮想線L1よりも搬送空間9側に位置している。言い換えれば、ドア部81のFOUP7側の端面110の少なくとも一部(底面112)が、第1シール部材94のFOUP7側の端部より搬送空間9側に位置している。これにより、前記実施形態と同様の効果を得ることができる。端面110の少なくとも一部とは、主にドア部81の中央部近傍や中央部周辺領域を指す。また、端面110の概念には、FOUP7に対する蓋体72の固定および固定の解除を行うラッチ機構、蓋体72とドア部81とを固定する吸着部79や蓋体72をドア部81に位置決めするためのレジストレーションピン(不図示)を包含しない。他方、端面110の外周に形成された外周面113は、FOUP7および蓋体72の種類や製造時の精度誤差により仮想線L1よりもFOUP7側に位置している。なお、FOUP7の当接面71bが蓋体72よりも搬送空間9側に位置しているので、当接面71bがOリング94と当接して密閉空間Sdを形成できる。
【0111】
図23(b)に示すように、ドア部81のFOUP7側(前方側)の端面116に、搬送空間9側に凹む湾曲面117が形成されている。この湾曲面117が、Oリング94のFOUP7側端部の位置を示す仮想線L1よりも搬送空間9側に位置している。言い換えれば、ドア部81のFOUP7側の端面116の大部分が、第1シール部材94のFOUP7側の端部より搬送空間9側に位置している。これにより、前記実施形態と同様の効果を得ることができる。他方、端面116の外周に形成された外周面113は、製造時の精度誤差により仮想線L1よりもFOUP7側に位置している。なお、FOUP7の一部(蓋体72)が搬送空間9側に向かって湾曲している。また、FOUP7の当接面71bが蓋体72の外周部よりも搬送空間9側に位置しているので、当接面71bがOリング94と当接して密閉空間Sdを形成できる。このように、湾曲面117の形状が、FOUP7内の圧力を高めることで膨張した膨張面118に対応することで、仮にFOUP7が種々の形状で膨張していたとしても、FOUP7とドア部81との接触を確実に防止できる。
【0112】
図23(a)の変形例として
図24(a)に示すように、ドア部81の端面110に陥凹部111が形成される一方、外周面113は仮想線L2よりも搬送空間9側に位置する構成を採用してもよい。すなわち本変形例は、ドア部81の端面110の全てが、第1シール部材94のFOUP7側の端部より搬送空間9側に位置している。これにより、蓋体72が搬送空間9側に突出していても、蓋体72とドア部81との干渉を防止し、且つ当接面71bがシール部材94と当接できる。
【0113】
図23(b)の変形例として
図24(b)に示すように、ドア部81に湾曲面117が形成される一方、外周面113は仮想線L2よりも搬送空間9側に位置する構成を採用してもよい。すなわち本変形例は、ドア部81の端面110の全てが、第1シール部材94のFOUP7側の端部より搬送空間9側に位置している。これにより、膨張面118を有する蓋体72が搬送空間9側に突出していても、蓋体72とドア部81との干渉を防止し
、且つ当接面71bがシール部材94と当接できる。
【0114】
ドア部81により、FOUP7から膨張した蓋体72を取り外した後、蓋体72の膨張が元の状態に戻る場合がある。このとき、
図24(a)および
図24(b)のようにドア部81の端面110の全てが第1シール部材94よりも搬送空間9に位置していると、ラッチ機構や吸着部の種類によっては、FOUP7に対する蓋体72の固定およびFOUP7への蓋体72の取付けを適切に行なうことができない場合がある。このため、上記動作を行なう位置を、FOUP7に対する蓋体72の固定の解除およびFOUP7から蓋体72を取外す位置よりも、所定距離だけFOUP7側の位置で行なっても良い。この所定距離は、蓋体72の膨張率や、ラッチ機構や吸着部の種類によって適宜、設定される。
【0115】
前記実施形態では、それぞれ独立した第1ガス注入ノズル87、第2ガス排出ノズル88、第2ガス注入ノズル44cおよび第2ガス排出ノズル44dを用いて圧力調整を行ったが、これに限定されない。
【0116】
図25および
図26に示すように、ガスを供給する第1供給ノズル120が第2ガス注入ノズル44cに合流している。第2ガス排出ノズル44dと第1ガス注入ノズル87とを中間ノズル121を介して連結している。また第2ガス注入ノズル44cと第2ガス排出ノズル88とを接続ノズル122を介して連結している。中間ノズル121は途中で第2供給ノズル123と合流している。
【0117】
図25に示すように圧力P1がP2より高いとき、第1バルブ125と第2バルブ126とを開放し、第3バルブ127から第6バルブ130までを閉止している。従って、第1供給ノズル120から供給されたガスが第2ガス注入ノズル44cを介してFOUP7に流入する。FOUP7から排出されたガスは第2ガス排出ノズル44dから第2バルブ126を介して中間ノズル121内を流動する。そして、第1ガス注入ノズル87を介して密閉空間Sdに供給されたガスは、第2ガス排出ノズル88から排出されて、接続ノズル122、第2ガス注入ノズル44cの順に流動する。第2ガス注入ノズル44cでは第1供給ノズル120から新たに供給されたガスと合流する。ガスが上記流路を流動することで、FOUP7内の圧力P1と密閉空間Sd内の圧力P2が近づく。
【0118】
図26に示すように圧力P1がP2より低いとき、第4バルブ128と第5バルブ129とを開放し、第1バルブ125から第3バルブ127まで、および第6バルブ130を閉止している。従って、第4バルブ128を介して第2供給ノズル123から供給されたガスが中間ノズル121および第1ガス注入ノズル87を介して密閉空間Sdに流入する。密閉空間Sdから排出されたガスは第2ガス排出ノズル88、接続ノズル122を順に流動し、第2ガス注入ノズル44cを介してFOUP7に流入する。FOUP7から排出されたガスは第2ガス排出ノズル44dから第5バルブ129を介して外部に吐出される。ガスが上記流路を流動することで、FOUP7内の圧力P1と密閉空間Sd内の圧力P2が近づく。なお、圧力P1とP3とを調整する場合、搬送空間9に配設された第3バルブ127だけを開放する。これにより、第2ガス注入ノズル44cと接続ノズル122とを介してFOUP7および搬送空間9を連通して均圧にすることができる。
【0119】
前記実施形態では不活性ガスとして窒素を例にしたが、これに限定されず、乾燥ガス、アルゴンガスなど所望のガスを用いることができる。
【0120】
前記実施形態では第1シール部材94、第2シール部材96として、Oリングを例にしたが、これらに限定されず、シール性(密閉性)を担保する部材であれば良い。
【0121】
また、シール部材としてOリングに代えて、流体の導入或いは排出によって膨張或いは
収縮する中空シール部材を配置しても良い。この中空シール部材を第1シール部材94に使用した場合、FOUP7をベース41に当接させた後、中空シール部材を膨張させることでFOUP7とベース41との密着性を得ることができる。さらに、中空シール部材の膨張は、より密着性を高めるため、クランプユニット50によるクランプ後に行なうことが好ましい。このとき、クランプにより作用する力と、中空シール部材の膨張により作用する力とによって中空シール部材が押しつぶされ、シール性を高めることができる。
【0122】
前記実施形態のステップS4では、FOUP7をベース41にクランプする際、ドア部81に向かってFOUP7を近づけた。しかしこれに代えて、密閉空間Sdが形成された後、ドア部81と蓋体72とが離隔した状態から、蓋体72に向かってドア部81を前進させても良い(
図28参照)。なお、この前進はドア部81と蓋体72とを近づけ、蓋体72をアンラッチ状態とするために行われる。従って、ドア部81と蓋体72との間に隙間が生じる程度に前進させても良いし、ドア部81を蓋体72と接触するまで前進させても良い。蓋体72に向かってドア部81を前進させると、Oリング96が押圧されて弾性変形しつつ、密閉空間Sdの密閉状態を維持する。
【0123】
前記実施形態では、ベース41とOリング94,95と蓋体72とドア部81とによって密閉空間Sdが形成された。しかし、2つのOリング94,95を一体としたOリング97(
図29参照)を採用することで、Oリング97と蓋体72とドア部81とによって密閉空間Sdを形成しても良い。
【符号の説明】
【0124】
3 筐体
7 FOUP(容器)
9 搬送空間
41 ベース
50 クランプユニット(クランプ)
72 蓋体
81 ドア部(ドア)
87 第1ガス注入ノズル(第1ガス注入部)
88 第1ガス排出ノズル(第1ガス排出部)
92 開口部
94 Oリング(第1シール部材)
96 Oリング(第2シール部材)
Sd 密閉空間