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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】流体殺菌装置、および流体殺菌システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20240229BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20240229BHJP
【FI】
A61L2/10
C02F1/32
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020045009
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021145690
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】飯田 誠也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛雄
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 公人
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-022943(JP,A)
【文献】特開2018-069166(JP,A)
【文献】特開2017-147432(JP,A)
【文献】特表2020-521556(JP,A)
【文献】国際公開第2018/213936(WO,A1)
【文献】特開2013-026605(JP,A)
【文献】特開2013-056159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/10
C02F 1/32
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状を呈し、両側の端部が開口している筒部と;
前記筒部の一方の前記端部に設けられた供給ヘッドと;
前記筒部の他方の前記端部に設けられ、一方の開口が前記筒部の内部空間とつながっている孔を有する排出ヘッドと;
前記排出ヘッドに設けられたホルダと;
前記排出ヘッドに設けられ、一方の面が、前記排出ヘッドに設けられた前記孔に露出する窓と;
前記ホルダの、前記窓側の面に設けられた基板と;
前記基板に設けられ、前記窓に向けて紫外線を照射可能な発光素子と;
前記排出ヘッドと前記ホルダとの間に設けられ、前記ホルダの熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する断熱部と;
を具備し
前記排出ヘッドと前記ホルダとは、直接接触していない流体殺菌装置。
【請求項2】
筒状を呈し、両側の端部が開口している筒部と;
前記筒部の一方の前記端部に設けられた供給ヘッドと;
前記筒部の他方の前記端部に設けられ、一方の開口が前記筒部の内部空間とつながっている孔を有する排出ヘッドと;
前記排出ヘッドに設けられたホルダと;
前記排出ヘッドに設けられ、一方の面が、前記排出ヘッドに設けられた前記孔に露出する窓と;
前記ホルダの、前記窓側の面に設けられた基板と;
前記基板に設けられ、前記窓に向けて紫外線を照射可能な発光素子と;
前記排出ヘッド、および前記ホルダの少なくともいずれかに設けられ、前記排出ヘッドと、前記ホルダとの間に空間を形成する複数の突起と;
を具備した流体殺菌装置。
【請求項3】
前記突起の軸方向に直交する方向において、前記突起の先端側の断面積は、前記突起の根元側の断面積よりも小さい請求項2記載の流体殺菌装置。
【請求項4】
前記ホルダは、前記排出ヘッドに着脱自在に設けられている請求項1~3のいずれか1つに記載の流体殺菌装置。
【請求項5】
前記窓と、前記発光素子との間には空間が設けられ、
前記断熱部、または、前記排出ヘッドと、前記ホルダとの間の前記空間は、空気を含んでいる請求項1~4のいずれか1つに記載の流体殺菌装置。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1つに記載の流体殺菌装置と;
前記流体殺菌装置の供給ヘッドに、常温よりも高い温度の流体を供給可能な流体供給部と;
を具備した流体殺菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、流体殺菌装置、および流体殺菌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水などの流体に紫外線を照射して、流体を殺菌する流体殺菌装置がある。流体殺菌装置に設けられる光源としては、紫外線発光ダイオード(Ultraviolet LED)が用いられるようになってきている。
【0003】
ここで、発光ダイオードには、温度特性がある。例えば、発光ダイオードの温度が最大ジャンクション温度(最大接合部温度)を越えると、光束の低下や不灯などが生じたり、発光ダイオードの寿命が短くなったりするおそれがある。そのため、発光ダイオードが実装された基板を取り付けるブロックを水冷する技術が提案されている。
【0004】
ところが、流体殺菌装置が温度の高い流体の殺菌を行う場合には、流体の熱が、発光ダイオードが実装された基板を取り付けるブロックに伝わり、発光ダイオードの温度が高くなる場合がある。この場合、冷却装置の能力を高くすると、流体殺菌装置の大型化や高コスト化を招くことになる。
そこで、簡易な構成で光源の温度上昇を抑制することができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-69166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、簡易な構成で光源の温度上昇を抑制することができる流体殺菌装置、および流体殺菌システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る流体殺菌装置は、筒状を呈し、両側の端部が開口している筒部と;前記筒部の一方の前記端部に設けられた供給ヘッドと;前記筒部の他方の前記端部に設けられ、一方の開口が前記筒部の内部空間とつながっている孔を有する排出ヘッドと;前記排出ヘッドに設けられたホルダと;前記排出ヘッドに設けられ、一方の面が、前記排出ヘッドに設けられた前記孔に露出する窓と;前記ホルダの、前記窓側の面に設けられた基板と;前記基板に設けられ、前記窓に向けて紫外線を照射可能な発光素子と;前記排出ヘッドと前記ホルダとの間に設けられ、前記ホルダの熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する断熱部と;を具備している。前記排出ヘッドと前記ホルダとは、直接接触していない。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、簡易な構成で光源の温度上昇を抑制することができる流体殺菌装置、および流体殺菌システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る流体殺菌装置を例示するための模式断面図である。
図2】(a)~(c)は、他の実施形態に係る断熱部を例示するための模式図である。
図3】断熱部の効果を例示するための表である。
図4】本実施の形態に係る流体殺菌システムを例示するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
(流体殺菌装置1)
本実施の形態に係る流体殺菌装置1は、例えば、常温より高い温度の流体(例えば、40℃以上の水や空気など)を殺菌する際に用いることができる。ただし、流体殺菌装置1は、常温以下の流体(例えば、25℃以下の水や空気など)を殺菌する際にも用いることができる。以下においては、一例として、流体殺菌装置1が、40℃以上の液体を殺菌するのに用いられる場合を説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る流体殺菌装置1を例示するための模式断面図である。
図1に示すように、流体殺菌装置1には、筒部2、反射部3、供給ヘッド4、排出ヘッド5、光源6、窓7、冷却部8、カバー9、および、断熱部10を設けることができる。
【0013】
筒部2は、筒状を呈し、両側の端部が開口している。筒部2は、例えば、円筒管とすることができる。筒部2の材料は、紫外線および殺菌を行う流体301aに対する耐性があれば特に限定はない。筒部2の材料は、例えば、石英や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂とすることができる。
【0014】
反射部3は、筒部2の外側面に設けることができる。筒部2が、石英などのように紫外線を透過する材料から形成される場合がある。光源6から照射された紫外線の一部が筒部2を透過して外部に漏れると、流体殺菌装置1の処理能力が低下する。筒部2の外側面に反射部3が設けられていれば、筒部2の外部に向かう紫外線を筒部2の内部に向けて反射させることができる。そのため、光源6から照射された紫外線の利用効率を向上させることができるので、発光素子61の数を少なくすることが可能となる。発光素子61の数が少なくなれば、光源6の小型化や低コスト化を図ることができる。
【0015】
反射部3は、紫外線の反射率が高い材料から形成することができる。反射部3の材料は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、二酸化ケイ素などとすることができる。反射部3は、板状を呈し、筒部2の外側面に取り付けることができる。また、スパッタリング法や蒸着法などの成膜法を用いて、筒部2の外側面に膜状の反射部3を形成することもできる。
【0016】
また、反射部3が筒部2の外側面に設けられる場合を例示したが、反射部3が筒部2の内側面に設けられていてもよい。ただし、反射部3と殺菌前の流体301a(例えば、水)が接触することで腐食などが生じたり、反射部3の材料が溶け出したりする場合には、筒部2の外側面に反射部3を設けることが好ましい。
【0017】
また、反射部3は省くこともできる。例えば、筒部2が、紫外線を反射する材料(例えば、白色の無機材料や白色の樹脂)から形成される場合には、反射部3を省くことができる。
【0018】
供給ヘッド4は、筒部2の一方の端部に設けられている。供給ヘッド4は、例えば、円柱状を呈し、一方の端面と他方の端面との間を貫通する孔4aを有する。孔4aの一方の開口は、筒部2の内部空間とつながっている。孔4aの他方の開口は、供給口4a1となる。供給口4a1には、配管4bを介して、例えば、常温(25℃)よりも高い温度の流体301aを供給可能な流体供給部(例えば、タンク101、ヒータ102、ポンプ103、および流量制御弁104)を接続することができる(図4を参照)。
【0019】
また、孔4aの内壁には、Oリングなどのシール部材4cを設けることができる。シール部材4cは、供給ヘッド4と筒部2との間が液密となるように封止する。また、フィルタや整流板などを孔4aの内部に設けることもできる。
【0020】
供給ヘッド4の材料は、流体301aと紫外線に対する耐性があれば特に限定がない。供給ヘッド4の材料は、例えば、ステンレスなどの金属とすることができる。
【0021】
排出ヘッド5は、筒部2の他方の端部に設けられている。排出ヘッド5は、例えば、円柱状を呈し、孔5aおよび孔5dを有する。孔5aの一方の開口は、筒部2の内部空間とつながっている。孔5aの他方の開口は、排出ヘッド5の側面に設けられた排出口5a1となる。排出口5a1には、配管5bを介して、タンク105や洗浄装置などを接続することができる(図4を参照)。
【0022】
また、孔5aの内壁には、Oリングなどのシール部材5cを設けることができる。シール部材5cは、排出ヘッド5と筒部2との間が液密となるように封止する。
排出ヘッド5の材料は、殺菌済みの流体301bと紫外線に対する耐性があれば特に限定がない。排出ヘッド5の材料は、例えば、ステンレスなどの金属とすることができる。
【0023】
図1に示すように、孔5aは屈曲した流路となっている。孔5aは、排出ヘッド5の筒部2側の端面に略平行な流路5a2と、排出ヘッド5の軸方向に延びる流路5a3とを有する。
【0024】
流路5a2は、排出ヘッド5の筒部2側の端面に開口している。また、流路5a2の内壁には、窓7が露出している。流路5a2は、例えば、円板状の空間とすることができる。
流路5a3の一方の端部は、流路5a2の周縁近傍に接続されている。流路5a3の他方の端部には、排出口5a1が接続されている。流路5a3は、例えば、円筒状の空間とすることができる。
【0025】
図1に示すように、供給ヘッド4を介して、筒部2の内部に供給された流体301aは、流路5a2の内部に供給される。流路5a2の内部に供給された流体301aは、窓7に当たり、窓7の面に沿って、窓7の周縁側に流れる。この際、窓7を介して照射された紫外線により、流体301aが殺菌される。殺菌済みの流体301bは、流路5a3を介して排出口5a1から排出される。
【0026】
孔5aがこの様に屈曲した流路となっていれば、流路5a2の内部を流れる流体301aの流速を遅くすることができる。そのため、窓7が露出する領域における流体301aの滞留時間を長くすることができるので、殺菌効果の向上を図ることができる。
【0027】
なお、流路5a2に照射された紫外線の一部は、筒部2の内部空間に照射される。また、筒部2の内部空間に照射された紫外線の一部は、反射部3により反射される。そのため、筒部2の内部空間においても流体301aの殺菌が行われる。
【0028】
孔5dは、排出ヘッド5の、筒部2側とは反対側の端面と、流路5a2とに開口している。
【0029】
光源6は、排出ヘッド5に着脱自在に設けられている。
光源6は、例えば、発光素子61、基板62、およびホルダ63を有する。
発光素子61は、基板62に設けられ、窓7に向けて紫外線を照射することができる。発光素子61は、少なくとも1つ設けることができる。発光素子61が複数設けられる場合には、複数の発光素子61を直列接続することができる。発光素子61は、紫外線を発生させる素子であれば特に限定はない。発光素子61は、例えば、発光ダイオードやレーザダイオードなどとすることができる。
【0030】
発光素子61から照射される紫外線のピーク波長は、殺菌効果があれば特に限定はない。ただし、ピーク波長が260nm~280nmであれば、殺菌効果を向上させることができる。そのため、ピーク波長が260nm~280nmの紫外線を照射可能な発光素子61とすることが好ましい。
【0031】
基板62は、板状を呈し、ホルダ63の窓7側の面に設けられている。基板62の一方の面には、配線パターンを設けることができる。基板62の材料は、紫外線に対する耐性を有するものとすることが好ましい。基板62の材料は、例えば、酸化アルミニウムなどのセラミックスとすることができる。基板62は、金属板の表面を無機材料で覆ったもの(メタルコア基板)とすることもできる。基板62の材料がセラミックスなどであったり、基板62がメタルコア基板であったりすれば、紫外線に対する耐性と高い放熱性を得ることができる。
【0032】
ホルダ63は、排出ヘッド5に着脱自在に設けることができる。発光素子61は放電ランプなどに比べて長寿命ではあるが、点灯時間が長くなれば発光効率が低下する。また、発光素子61が故障して不灯になることも考えられる。ホルダ63が排出ヘッド5に着脱自在に設けられていれば、発光素子61の交換を容易とすることができる。
【0033】
ホルダ63は、例えば、フランジ63aと凸部63bを有することができる。フランジ63aと凸部63bは一体に形成することができる。
フランジ63aは、板状を呈し、排出ヘッド5の筒部2側とは反対側の端面に取り付けることができる。フランジ63aは、例えば、ネジなどの締結部材を用いて排出ヘッド5に取り付けることができる。
【0034】
凸部63bは、フランジ63aの、筒部2側の面に設けられている。凸部63bの、筒部2側の端面には、発光素子61が実装された基板62を設けることができる。凸部63bは、排出ヘッド5に対する発光素子61の位置を決める機能を有する。例えば、凸部63bの側面を、断熱部10を介して、排出ヘッド5の孔5dの内壁に接触させることができる。この様にすれば、排出ヘッド5に対する発光素子61の位置を決めることができる。
【0035】
また、排出ヘッド5の孔5dと流路5a2は、窓7により仕切られているので、流路5a2に流体301aがある状態でも、光源6の着脱が可能となる。そのため、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0036】
また、ホルダ63は、発光素子61において発生した熱を外部に放出する機能を有することができる。そのため、ホルダ63は、熱伝導率の高い材料から形成することが好ましい。ホルダ63は、例えば、アルミニウム、銅、ステンレスなどの金属から形成することができる。また、ホルダ63の、発光素子61側とは反対側の端面や、側面などに放熱フィンを設けることもできる。
【0037】
窓7は、板状を呈し、排出ヘッド5の孔5dの内壁に液密となるように設けられている。すなわち、窓7は、排出ヘッド5設けられ、一方の面が、排出ヘッド5に設けられた流路5a2に露出している。窓7と発光素子61との間には空間5d1を設けることができる。窓7は、紫外線を透過させることができ、且つ、紫外線と流体301aに対する耐性を有する材料から形成することができる。窓7は、例えば、石英や、紫外線を透過するフッ素樹脂などから形成することができる。
【0038】
また、窓7の、発光素子61側の面には、反射防止膜を設けることもできる。反射防止膜が設けられていれば、発光素子61から照射された紫外線が窓7により反射されて、流体301aに照射され難くなるのを抑制することができる。すなわち、発光素子61から照射された紫外線の利用効率を向上させることができる。
【0039】
また、窓7の、筒部2側の面には、防汚膜を設けることもできる。流体301aには不純物が含まれている場合がある。不純物が窓7に付着すると、発光素子61から照射された紫外線が窓7を透過し難くなる。防汚膜が設けられていれば、不純物が窓7に付着するのを抑制することができる。そのため、紫外線が、経時的に、流体301aに照射され難くなるのを抑制することができる。
【0040】
冷却部8は、例えば、ホルダ63の、発光素子61側とは反対側に設けることができる。冷却部8は、例えば、ホルダ63に空気を供給するファンなどとすることができる。また、ホルダ63に放熱フィンが設けられる場合には、冷却部8は、放熱フィンに空気を供給するファンとすることができる。また、冷却部8は、例えば、ホルダ63に設けられた流路に液体を供給するものとしてもよい。すなわち、冷却部8は、空冷式であってもよいし、液冷式であってもよい。
【0041】
なお、発光素子61の数や発熱量、流体301aの温度や流量などによっては冷却部8を省くこともできる。ただし、冷却部8が設けられていれば、発光素子61の数や印加電力などを増加させても、発光素子61の温度が最大ジャンクション温度(最大接合部温度)を越え難くなる。
【0042】
また、冷却部8が設けられていれば、流体301aの温度が高くなったり、温度の高い流体301aの流量が増加したりしても、発光素子61の温度が最大ジャンクション温度を越え難くなる。そのため、対応可能な流体301aの範囲を広げることができる。
【0043】
カバー9は、筒状を呈し、内部の空間に、筒部2および反射部3を収納することができる。カバー9の材料は、ある程度の剛性を有するものであれば特に限定はない。カバー9の材料は、例えば、ステンレスなどの金属とすることができる。カバー9は、例えば、供給ヘッド4と排出ヘッド5に固定することができる。カバー9の固定方法には特に限定がない。例えば、カバー9の一方の端部を供給ヘッド4に設けられた溝の内部に設け、カバー9の他方の端部を排出ヘッド5に設けられた溝の内部に設けることができる。また、例えば、カバー9の両側の端部のそれぞれにフランジを設け、一方のフランジを供給ヘッド4にネジなどで固定し、他方のフランジを排出ヘッド5にネジなどで固定してもよい。
【0044】
後述するように、温度の高い流体301a(例えば、温度が40℃~90℃程度の流体301a)が、流体殺菌装置1に供給される場合がある。流体301aの熱は、窓7を介して発光素子61に伝わる。前述したように、窓7と発光素子61との間には空間があるので、窓7を介した伝熱を抑制することができる。
【0045】
ところが、流体301aの熱は、排出ヘッド5、ホルダ63、および基板62を介して発光素子61に伝わる。排出ヘッド5およびホルダ63は、金属などから形成されているため熱を伝えやすい。また、基板62はセラミックスなどから形成されたり、メタルコア基板などであったりするため、熱を伝えやすい。そのため、流体301aの熱が、排出ヘッド5、ホルダ63、および基板62を介して発光素子61に伝わり易くなり、発光素子61の温度が最大ジャンクション温度を越えるおそれがある。発光素子61の温度が最大ジャンクション温度を越えると、光束の低下や不灯などが生じたり、発光ダイオードの寿命が短くなったりするおそれがある。
【0046】
この場合、冷却部8の能力を高くすると、流体殺菌装置1の大型化や高コスト化を招くことになる。
そこで、本実施の形態に係る流体殺菌装置1には断熱部10が設けられている。
【0047】
断熱部10は、排出ヘッド5とホルダ63との間に設けることができる。断熱部10は、ホルダ63の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する。断熱部10は、例えば、フェノール樹脂やフッ素樹脂などの樹脂から形成することができる。断熱部10の厚み(排出ヘッド5とホルダ63との間の距離)は、1mm~3mm程度とすることができる。また、断熱部10に孔や溝などを設けることができる。断熱部10に孔や溝などを設ければ、樹脂よりも熱伝導率が低い空気が満たされた領域を形成することができる。すなわち、断熱部10は、空気を含むことができる。そのため、断熱部10が有する総合的な熱伝導率を低下させることができる。
断熱部10が設けられていれば、流体301aの熱が、排出ヘッド5からホルダ63に伝わるのを抑制することができるので、発光素子61の温度上昇を抑制することができる。
【0048】
図2(a)~(c)は、他の実施形態に係る断熱部10aを例示するための模式図である。
図2(a)~(c)に示すように、断熱部10aは、排出ヘッド5とホルダ63との間に設けられた空間とすることができる。空間には、流体殺菌装置1が設けられた環境にある気体(例えば、空気)が満たされている。すなわち、断熱部10aは、空気を含むことができる。一般的に、気体の熱伝導率は、樹脂や金属などの固体の熱伝導率よりも低いので、流体301aの熱が、排出ヘッド5からホルダ63に伝わるのをさらに抑制することができる。
【0049】
例えば、図2(a)に示すように、ホルダ63に突起63cを設け、突起63cの先端を排出ヘッド5に接触させることができる。この様にすれば、排出ヘッド5とホルダ63との間に空間(断熱部10a)を設けることができる。
【0050】
突起63cは、排出ヘッド5とホルダ63との間の空間を維持し、排出ヘッド5に対するホルダ63(光源6)の位置を決めることができる。そのため、突起63cは、複数設けることができる。この場合、突起63cは、熱が伝わり易いので、突起63cの数を多くし過ぎると断熱効果が小さくなるおそれがある。そのため、突起63cの数や間隔は、排出ヘッド5やホルダ63の大きさ、流体301aの温度に応じて適宜変更することができる。
【0051】
また、突起63cの、排出ヘッド5と接触する部分の面積が小さくなる様にすることが好ましい。突起63cの、排出ヘッド5と接触する部分の面積が小さければ、突起63cを介した熱の伝搬を抑制することができる。例えば、図2(a)に示すように、半球状の突起63cとすれば、突起63cと排出ヘッド5とを点接触させることができるので、熱の伝搬を抑制することができる。
【0052】
また、突起の形状は、例えば、テーパ形状、段付き形状、片側の側面が傾斜した形状などとしてもよい。テーパ形状は、例えば、円錐、円錐台、角錐、角錐台などとすることができる。
すなわち、ホルダ63から排出ヘッド5に向かう方向(突起の軸方向)に直交する方向において、突起の先端側の断面積が突起の根元側の断面積よりも小さくなっていれば良い。
【0053】
図2(b)に示すように、排出ヘッド5に突起5eを設け、突起5eの先端をホルダ63に接触させることができる。この様にすれば、排出ヘッド5とホルダ63との間に空間(断熱部10a)を設けることができる。突起5eの作用効果、数、間隔、形状などは、前述した突起63cと同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0054】
また、図2(c)に示すように、ホルダ63に突起63cを設け、排出ヘッド5に突起5eを設けることもできる。この様にしても、排出ヘッド5とホルダ63との間に空間(断熱部10a)を設けることができる。突起63cの配設位置によっては突起63cの形成が難しくなる場合がある。突起5eの配設位置によっては突起5eの形成が難しくなる場合がある。この場合、形成の容易さなどに応じて、突起5eと突起63cを選択して設けるようにすればよい。
【0055】
図3は、断熱部10aの効果を例示するための表である。
流体301aの温度は60℃、流体301aの流量は2L/minとしている。1つの発光素子61への印加電力は2.1Wとしている。測定温度は、発光素子61と配線パターンとの半田付け部分の温度Tsとしている。また、冷却部8により、ホルダ63に空気を供給している。
【0056】
比較例は、断熱部10aが設けられていない場合、すなわち、ホルダ63が排出ヘッド5に接触している場合である。
実施例は、排出ヘッド5とホルダ63との間に空間(断熱部10a)が設けられている場合である。排出ヘッド5とホルダ63との間の距離は、2mmとしている。
【0057】
図3から分かるように、排出ヘッド5とホルダ63との間に空間(断熱部10a)を設ければ、半田付け部分の温度Tsを30%程度下げることができた。このことは、発光素子61の温度が最大ジャンクション温度を越えるのを抑制できることを意味する。
以上に説明した様に、本実施の形態に係る流体殺菌装置1とすれば、簡易な構成で光源6(発光素子61)の温度上昇を抑制することができる。
【0058】
そのため、本実施の形態に係る流体殺菌装置1とすれば、光束の低下や不灯などが生じたり、発光素子61の寿命が短くなったりするのを抑制することができる。また、断熱部10、10aは簡易な構成とすることができるので、流体殺菌装置1の大型化や高コスト化を招くこともない。
【0059】
(流体殺菌システム100)
図4は、本実施の形態に係る流体殺菌システム100を例示するための模式図である。 図4に示すように、流体殺菌システム100は、流体殺菌装置1、タンク101、ヒータ102、ポンプ103、流量制御弁104、タンク105、電源106、およびコントローラ107を有することができる。
【0060】
タンク101は、殺菌前の流体301aを収納することができる。タンク101の排出口と流体殺菌装置1の供給口4a1は、例えば、配管を介して接続することができる。
ヒータ102は、タンク101に設けることができる。なお、ヒータ102は、タンク101と流体殺菌装置1との間の配管に設けることもできる。ヒータ102は、流体301aを加熱することができるものであれば特に限定はない。ヒータ102は、例えば、ジュール熱や燃焼による熱を利用することができる。ヒータ102は、温度コントローラ102bに電気的に接続されている。温度コントローラ102bは、例えば、流体301aの温度を測定する温度センサ102aからの信号に基づいて、ヒータ102を制御することができる。温度コントローラ102bは、例えば、流体301aの温度が40℃~90℃程度になるようにヒータ102を制御することができる。
【0061】
ポンプ103は、タンク102と流体殺菌装置1の間の配管に設けることができる。ポンプ103は、タンクに101に収納されている流体301aを流体殺菌装置1に供給する。なお、タンク101、ヒータ102、およびポンプ103が設けられる場合を例示したが、例えば、流体殺菌装置1が、温度の高い流体301aを供給する工場配管などに接続されるようにしてもよい。すなわち、常温(25℃)よりも高い温度の流体301a(例えば、40℃以上の温度の流体301a)を、流体殺菌装置1に供給する流体供給部が設けられていればよい。
【0062】
流量制御弁104は、ポンプ103と流体殺菌装置1の間の配管に設けることができる。流量制御弁104は、流体殺菌装置1に供給する流体301aの流量を制御する。また、流量制御弁104は、流体301aの供給の開始と供給の停止を行うこともできる。
また、流体殺菌装置1の供給ヘッド4や、供給口4a1に接続された配管には、フィルタなどを適宜設けることもできる。
【0063】
タンク105は、配管を介して流体殺菌装置1の排出口5a1に接続することができる。タンク105は、殺菌後の流体301b(例えば、水)を収納することができる。なお、殺菌後の流体301bがタンク105に収納される場合を例示したが、流体殺菌装置1の排出口5a1が洗浄装置などの流体301bを用いる装置に接続されてもよい。また、流体殺菌装置1の排出口5a1から排出された流体301bが基板などの対象物にかけ流されるようにしてもよい。
【0064】
電源106は、流体殺菌装置1の光源6(発光素子61)に電気的に接続されている。電源106は、光源6(発光素子61)に所定の電力を供給する。電源106は、例えば、直流電源とすることができる。直流電源には、整流回路、コンバータ、およびスイッチなどを設けることができる。整流回路は、交流電源と電気的に接続される。整流回路は、例えば、交流電源により印加された交流電圧を全波整流することができる。整流回路は、例えば、ダイオードブリッジなどを有することができる。コンバータは、整流回路により全波整流された電圧を、所定の直流電圧に変換する。コンバータは、例えば、スイッチング回路を有することができる。スイッチは、光源6(発光素子61)への電力の印加と、電力の印加の停止とを切り替える。
【0065】
コントローラ107は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算素子と、半導体メモリなどの記憶素子を有することができる。コントローラ107は、例えば、コンピュータとすることができる。記憶素子には、流体殺菌システム100に設けられた各要素の動作を制御する制御プログラムを格納することができる。演算素子は、記憶素子に格納されている制御プログラム、操作者により入力されたデータなどを用いて、流体殺菌システム100に設けられた各要素の動作を制御する。
【0066】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 流体殺菌装置、2 筒部、4 供給ヘッド、5 排出ヘッド、5a2 流路、5d1 空間、5e 突起、6 光源、7 窓、8 冷却部、10 断熱部、10a 断熱部、61 発光素子、62 基板、63 ホルダ、63c 突起、100 流体殺菌システム、301a 流体、301b 流体
図1
図2
図3
図4