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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ブラスト加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24C 9/00 20060101AFI20240229BHJP
   B24C 7/00 20060101ALI20240229BHJP
   B24C 5/04 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B24C9/00 H
B24C9/00 G
B24C9/00 D
B24C7/00 A
B24C5/04 Z
B24C9/00 Z
B24C9/00 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023162464
(22)【出願日】2023-09-26
【審査請求日】2023-12-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523339403
【氏名又は名称】株式会社リブラ
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(72)【発明者】
【氏名】仁川 幸男
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/281763(WO,A1)
【文献】特開2014-046392(JP,A)
【文献】特開2020-049598(JP,A)
【文献】中国実用新案第211639529(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 9/00
B24C 7/00
B24C 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体状の作業室内で噴射ノズルから圧縮空気とともに研磨材を噴射して被加工物の表面をブラスト加工するブラスト加工装置であって、
前記作業室内及び前記噴射ノズルに圧縮空気を送給する圧縮空気送給手段と、
作業者が前記作業室内に腕を挿入して前記被加工物及び前記噴射ノズルを把持可能に前記作業室に開口された挿入口と、
前記作業室の上面に内部が連通して接続され、前記作業室内で前記噴射ノズルから前記被加工物表面に噴射される前記研磨材、及び、前記研磨材の噴射による前記被加工物表面が研磨されて生じる粉塵の混合物から、前記圧縮空気送給手段による圧縮空気によって吹き飛ばされる主として前記粉塵を吸引して回収する回収手段と、
前記作業室の下部に接続され前記噴射ノズルから前記被加工物に噴射されたあとに落下する前記研磨材を収容する研磨材タンクと、
前記研磨材タンク内の下部であって前記圧縮空気送給手段から前記噴射ノズルまでの圧縮空気の流通パイプの途中に設けられ、前記研磨材タンク内に収容された前記研磨材を前記流通パイプ内に供給して混合する混合手段とを備え、
前記混合手段は、
前記流通パイプの一部を包被して配置され内面と前記流通パイプの外面との間に空間を有し、前記研磨材タンクとの連通部を介して前記研磨材タンク内の前記研磨材が前記空間に落下して溜まる包被体と、
前記包被体内部において、前記流通パイプ内部と前記包被体内部の前記空間とを連通すべく前記流通パイプに透設された透孔とを有し、
前記圧縮空気送給手段からの圧縮空気の送給により前記流通パイプ内に生じる負圧によって、前記包被体の前記空間内に溜まった前記研磨材が前記透孔を介して前記流通パイプ内に吸引され、前記研磨材と圧縮空気とが混合された状態で前記噴射ノズルに供給される
ことを特徴とするブラスト加工装置。
【請求項2】
前記混合手段の前記透孔は、前記流通パイプに着脱自在に螺合されるボルトに透設されて成り、
径の異なる前記透孔が透設された複数種類の前記ボルトが交換用に準備されている
ことを特徴とする請求項1に記載のブラスト加工装置。
【請求項3】
前記作業室内部と前記研磨材タンク内部とを連結する連結部と、
前記連結部の前記研磨材タンク側出口を開閉自在に閉塞する閉塞体と、
前記作業室内、外で操作可能に設けられ、閉塞状態の前記閉塞体を下動させて前記連結部の前記研磨材タンク側出口を開放する操作手段と、
前記研磨材タンク内部を目視可能に前記研磨材タンクに設けられ、ガラス窓を有する取り外し可能な閉鎖蓋により閉塞された覗き窓部と
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブラスト加工装置。
【請求項4】
前記閉塞体は、前記操作手段で接続された索状体の下端に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載のブラスト加工装置。
【請求項5】
前記作業室の外面であって前記挿入口近辺に、前記圧縮空気送給手段による圧縮空気の圧力メータ及び圧力調整用絞り弁が配設されている
ことを特徴とする請求項4に記載のブラスト加工装置。
【請求項6】
前記挿入口には、前記作業室内の前記研磨材や前記粉塵の外部への漏れを防止する可撓性カバー部材が設けられ、
前記作業者は前記カバー部材を通して前記作業室内に腕を挿入することを特徴とする請求項5に記載のブラスト加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体状の作業室内で噴射ノズルから圧縮空気とともに研磨材を噴射して被加工物の表面をブラスト加工するブラスト加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス製品や金属製品などの被加工物の表面をブラスト加工する装置として、例えば特許文献1に記載のものがある。この装置は、筐体状の本体内のテーブル上に載置された被加工物に、本体内に導入された噴射ノズルから圧縮空気とともに研磨材を噴射し、被加工物表面を研磨してブラスト加工するようになっている。
【0003】
このとき、研磨材は本体内上部の貯留部から噴射ノズルに供給されて圧縮空気と混合されて噴射され、噴射ノズルから被加工物に噴射されたあとの圧縮空気と研磨材は、テーブルに形成された多数の貫通孔を介して落下して本体下部の回収部に集められ、ある程度溜まった研磨材は回収部下面の蓋を開くことで回収される一方、圧縮空気は回収部の側面に接続された戻り配管を経て本体上部の貯留部に戻されて本体に設けられたフィルタを経て外部に排気される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-223165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来装置では、噴射された圧縮空気は本体の外部に排気されるため、ロスが大きく圧縮空気用のコンプレッサーとして大出力のものが必要になりコストがかかるという問題がある。
【0006】
また、圧縮空気が本体の外部に排気される構成であるため、排気による作業環境の悪化を招くおそれがある。
【0007】
さらに、被加工物表面を研磨して発生する粉塵が、研磨材とともに本体下部の回収部に落下するため、回収部に溜まった研磨材を再利用することができず、新たな研磨材を準備する必要が生じてコスト上昇を招き、回収部に溜まった研磨材をそのまま循環させることによってコストの低下を図れるようにすることが望まれている。
【0008】
この発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、作業環境の悪化を招くことがなく、コストの低減を図ることが可能なブラスト加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明に係るブラスト加工装置は、筐体状の作業室内で噴射ノズルから圧縮空気とともに研磨材を噴射して被加工物の表面をブラスト加工するブラスト加工装置であって、前記作業室内及び前記噴射ノズルに圧縮空気を送給する圧縮空気送給手段と、作業者が前記作業室内に腕を挿入して前記被加工物及び前記噴射ノズルを把持可能に前記作業室に開口された挿入口と、前記作業室の上面に内部が連通して接続され、前記作業室内で前記噴射ノズルから前記被加工物表面に噴射される前記研磨材、及び、前記研磨材の噴射による前記被加工物表面が研磨されて生じる粉塵の混合物から、前記圧縮空気送給手段による圧縮空気によって吹き飛ばされる主として前記粉塵を吸引して回収する回収手段と、前記作業室の下部に接続され前記噴射ノズルから前記被加工物に噴射されたあとに落下する前記研磨材を収容する研磨材タンクと、前記研磨材タンク内の下部であって前記圧縮空気送給手段から前記噴射ノズルまでの圧縮空気の流通パイプの途中に設けられ、前記研磨材タンク内に収容された前記研磨材を前記流通パイプ内に供給して混合する混合手段とを備え、前記混合手段は、前記流通パイプの一部を包被して配置され内面と前記流通パイプの外面との間に空間を有し、前記研磨材タンクとの連通部を介して前記研磨材タンク内の前記研磨材が前記空間に落下して溜まる包被体と、前記包被体内部において、前記流通パイプ内部と前記包被体内部の前記空間とを連通すべく前記流通パイプに透設された透孔とを有し、前記圧縮空気送給手段からの圧縮空気の送給により前記流通パイプ内に生じる負圧によって、前記包被体の前記空間内に溜まった前記研磨材が前記透孔を介して前記流通パイプ内に吸引され、前記研磨材と圧縮空気とが混合された状態で前記噴射ノズルに供給されることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、圧縮空気送給手段からの圧縮空気の送給により流通パイプ内に負圧が生じ、混合手段の包被体の空間内に溜まった研磨材タンクからの研磨材が、流通パイプの透孔を介して流通パイプ内に吸引され、研磨材と圧縮空気とが流通パイプ内で混合された状態で噴射ノズルに供給されて被加工物に噴射され、被加工物表面が研磨され、被加工物表面に所定の文字や図柄等のデザインの彫刻や、不要な付着物の除去などのブラスト加工が施される。
【0011】
このとき、ブラスト加工により生じる被加工物の粉塵は、一般的に研磨材よりも粒子が細かく軽いことから、圧縮空気により粉塵のみが吹き飛ばされて回収手段により吸引等により回収される一方、研磨材は、被加工物の粉塵が除去されたあと研磨材タンクに収容されて混合手段により圧縮空気と混合され、噴射ノズルから被加工物に噴射されるという循環経路を辿る。
【0012】
そのため、圧縮空気が作業室や研磨材タンクの外部に排出されることはなく、粉塵により作業環境の悪化を招くことを防止できる。また、圧縮空気送給手段用のコンプレッサーは、従来のような大出力ではなく小さい出力のもので済み、しかも研磨材を循環させることからブラスト加工に使用する研磨材として従来のように新たなものを準備する必要がなく、コストの低減を図ることができる。
【0013】
また、前記混合手段の前記透孔は、前記流通パイプに着脱自在に螺合されるボルトに透設されて成り、径の異なる前記透孔が透設された複数種類の前記ボルトが交換用に準備されているとよい。
【0014】
こうすると、研磨材の種類や粗さが変更された場合に、径の異なる透孔のボルトに交換することで、研磨材の変更に簡単に対応することができる。しかも、最適な径の透孔を有するボルトを選定することで温度や湿度などの作業環境条件の変化に容易に対応することができる。また、ボルトの透孔に目詰まりが生じても、透孔を外部から掃除するかボルトごと新しいものに交換することで目詰まりを容易に解消することができる。
【0015】
また、前記作業室内部と前記研磨材タンク内部とを連結する連結部と、前記連結部の前記研磨材タンク側出口を開閉自在に閉塞する閉塞体と、前記作業室内、外で操作可能に設けられ、閉塞状態の前記閉塞体を下動させて前記連結部の前記研磨材タンク側出口を開放する操作手段と、前記研磨材タンク内部を目視可能に前記研磨材タンクに設けられ、ガラス窓を有する取り外し可能な閉鎖蓋により閉塞された覗き窓部とを備えるのが望ましい。
【0016】
このような構成によれば、研磨材タンクに設けた覗き窓部のガラス窓を介して、研磨材タンク内の研磨材の量を目視できるため、作業者が研磨材タンク内の研磨材が少ないと判断した場合には、操作手段を操作して閉塞体を下動させることにより、連結部の研磨材タンク側出口を開放して作業室内に溜まった研磨材を研磨材タンクに落下させることができる。このとき、操作手段が作業室内、外で操作可能に設けられているため、作業者は作業室内、外の操作し易い方で操作手段を操作すればよく、作業効率が低下することを防止できる。
【0017】
また、前記閉塞体は、前記操作手段に接続された索状体の下端に着脱自在に取り付けられているとよい。
【0018】
こうすることにより、閉塞体が研磨材により削れる等によって連結部を閉塞できなくなる等の異常が生じたときに、作業者は覗き窓部を介して閉塞体の異常を目視により確認できるため、覗き窓部の閉鎖蓋を取り外すことにより、研磨材タンク内の閉塞体のみを、索状体から取り外して簡単に交換することができる。ここで、索状体は、例えば鎖やチェーンのほか、硬質の紐であるとよい。
【0019】
また、前記作業室の外面であって前記挿入口近辺に、前記圧縮空気送給手段による圧縮空気の圧力メータ及び圧力調整用絞り弁が配設されているのが望ましい。
【0020】
これにより、作業者は作業室外面の圧力メータの表示を見ることで圧縮空気の圧力が最適状態かどうかを容易に確認することができ、圧力調理用絞り弁も作業室外面に配設されていることから、圧力調整の必要があると判断したときには、圧力調理用絞り弁を容易に操作して圧力調整を行うことができる。
【0021】
また、前記挿入口には、前記作業室内の前記研磨材や前記粉塵の外部への漏れを防止する可撓性カバー部材が設けられ、前記作業者は前記カバー部材を通して前記作業室内に腕を挿入するようにするとよい。
【0022】
この場合、カバー部材により作業室内の前記研磨材や粉塵の外部への漏れを防止することができ、作業環境の悪化を防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、圧縮空気が作業室や研磨材タンクの外部に排出されることがなく、ブラスト加工による被加工物の粉塵が圧縮空気とともに排出されることによる作業環境の悪化を防止することができる。また、圧縮空気送給手段用のコンプレッサーは、従来のような大出力ではなく小さい出力のもので済み、しかも研磨材を循環させるため、従来のように研磨材を補充用に準備しておく必要がなく、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係るブラスト加工装置の一実施形態の斜視図である。
図2図1の主要部の外観を示す正面図である。
図3図1の概略構成を示す正面図である。
図4】操作手段の斜視図である。
図5】研磨材タンクの斜視図である。
図6】研磨材タンクの正面図である。
図7】研磨材タンクの側面図である。
図8】混合手段の平面図である。
図9】混合手段の正面図である。
図10】混合手段の切断側面図である。
図11】混合手段に使用される径の異なる透孔を有するボルトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のブラスト加工装置の一実施形態について図1ないし図11を参照して説明する。
【0026】
(装置構成)
図1ないし図3はブラスト加工装置1を示し、4個の脚部材2aを有する台座2と、台座2上に固定して取り付けられた筐体状の作業室3と、作業室3の中央下部に接続された研磨材タンク4と、作業室3内及び噴射ノズル(以下、単に「ノズル」ともいう)5に圧縮空気を送給する圧縮空気送給手段6と、ブラスト加工により生じる被加工物の粉塵を回収する回収手段7とを備える。
【0027】
作業室3の左右の両側面は、後端部の一対ずつの蝶番9により開閉可能な扉10により構成され、作業室3の前面上半部には、作業者が内部を目視できるように透明な作業窓11が開閉可能に設けられている。
【0028】
さらに、作業室3の作業窓11の下方には、2個の円形の挿入口12が開口して形成され、作業者は両挿入口12を介して両腕それぞれを作業室3内に挿入し、作業室3内において、被加工物及び挿入口12から挿入されたノズル5を把持しつつ作業を行えるようになっている。ここで、両挿入口12にはゴム材などの可撓性を有する先端が開放したアームカバーのようなカバー部材(図示省略)が取り付けられ、作業者がカバー部材に腕を通すと手を作業室3内に露出することができるので、作業者が作業室3内に手を露出した状態で作業を行っても、カバー部材により、作業室3内の研磨材や粉塵(後に詳述)が外部に漏れるのを防止できる。
【0029】
作業室3の下部には、図2図3に示すような逆円錐状のホッパー3aが一体に設けられ、ホッパー3aの下端には、研磨材タンク4の上端が取り外し可能に取り付けられている。このとき、ホッパー3aの下端が研磨材タンク4の上部に連結されており、ホッパー3aの下端には、円筒体から成る連結部14が接続され(図2参照)、連結部14が研磨材タンク4内の上部に配置されることにより、ホッパー3a内部と研磨材タンク4内部とが連結され、ブラスト加工に使用された研磨材は、ホッパー3aに溜まり連結部14を通って研磨材タンク4内に落下するようになっている。
【0030】
ところで、連結部14の研磨材タンク4側出口である下面を開閉自在に閉塞する球状の閉塞体15が設けられており、操作手段16を作業者が操作することにより閉塞体15が移動して連結部14の下面を開閉できるようになっている。
【0031】
すなわち、操作手段16は、図2及び図4に示すように、ホッパー3aの上端部を左右に貫通し左端部がホッパー3aの外部に露出した状態で回動可能にホッパー3aに支持された回動バー16aと、回動バー16aのほぼ中央部に取り付けられ後述する索状体が巻き付けられた環体16bと、環体16bに上端部が固定された状態で巻き付けられ環体16bから下方に延びた下端部の先端に閉塞体15が着脱自在に取り付けられた鎖から成る索状体16cと、ホッパー3aから露出した回動バー16aの左端に取り付けられリンク部16dと、作業室3内に配置され左端部が作業室3の外部に露出されてリンク部16dの上端に連結された内部操作レバー16eと、作業室3の外部に配置され内部操作レバー16eに連動すべくリンク部16dの後述する第3リンク部材の前端に接続された外部操作レバー16fとを備える。なお、外部操作レバー16fは、後述するリンク部16dの第2リンク部材の前端に接続されて回動バー16aの左端に連結されていてもよい。また、索状体16cは、鎖のほか、チェーンや硬質の紐等、摩耗しにくい材質のものであるとよく、チェーンの場合、環体16bはチェーンに噛合するギヤ状であるとよい。
【0032】
ここで、リンク部16dは、図4に示すように、上下に長尺の第1リンク部材16d1と、この第1リンク部材16d1の下端部に後端が回転自在に連結されホッパー3aの外部に露出した回動バー16aの左端に前端が固定された第2リンク部材16d2と、第1リンク部材16d1の上端部に後端が回転自在に連結され内部操作レバー16eの左端及び外部操作レバー16fの右端に前端が固定された第3リンク部材16d3とを備える。
【0033】
そして、操作手段16を操作しない状態では、図4に図示しない付勢手段により、リンク部16dの第1リンク部材16d1は図4中の矢印方向と反対方向への付勢力がかかり、閉塞体15が連結部14の下面を閉塞した状態に保持されるよう構成されている。この付勢手段は、ばね力により付勢するものや、環体16bの上半部に巻回された索状体16cの閉塞体15側と反対側に閉塞体15よりも重い錘を取り付けその重みにより閉塞体15を上方向に引っ張るようにして付勢するものであってもよい。
【0034】
また、内部操作レバー16eまたは外部操作レバー16fを、リンク部16dの第1リンク部材16d1を付勢手段に抗して図4中の矢印方向である手前に引くことにより、回動バー16aが図4中の矢印方向に回動して環体16bも同方向に回動し、索状体16cに取り付けられた閉塞体15が下動するため、連結部14の下面を閉塞していた閉塞体15が図4中の矢印方向(下方向)に下動することによって、連結部14の下面が開放され、ホッパー3aに溜まっていた研磨材が連結部14を介して研磨材タンク4内に落下する。
【0035】
研磨材タンク4の前面側には、ガラス窓を有する取り外し可能な閉鎖蓋18aにより閉塞された覗き窓部18が設けられており、研磨材タンク4の内部の研磨材の量や、閉塞体15の異常の有無などを作業者が外部から目視できるようになっている。
【0036】
そのため、作業者が目視して研磨材タンク4内の研磨材が少ないと判断した場合には、操作手段16を操作して閉塞体15を下動させることにより、連結部14の傘状体14bの下面を開放して作業室3のホッパー3a内に溜まった研磨材を研磨材タンク4に落下させて研磨材タンク4内に研磨材を補充できる。また、索状体16cの切断や閉塞体15が研磨材により削れる等によって連結部14の下面を閉塞できなくなる異常が生じたときに、作業者は覗き窓部18を介してこれらの異常を目視できるため、覗き窓部18の閉鎖蓋18aを取り外すことにより、研磨材タンク4内の索状体16cを接続で修理したり、或いは閉塞体15を索状体16cから取り外して交換することができる。
【0037】
圧縮空気送給手段6は、コンプレッサー、圧力調整器及び電磁弁等を備える一般的な構成を有し、作業室3内及びノズル5に圧縮空気を送給するようになっている。そして、作業室3の前面の両挿入口12の下方位置に表示盤19が配置され、この表示盤19には、圧縮空気送給手段6による圧縮空気の圧力表示を行う圧力メータのほか圧力調整用絞り弁などが配置されている。このとき、作業室3内及びノズル5に圧縮空気の圧力が別々に調整可能に構成されているとよい。また、圧縮空気の送給の開始・停止を行う電源スイッチとして、足で操作できるフットスイッチを採用するのが望ましい。
【0038】
回収手段7は、作業室3の上面に内部が連通して設けられ、作業室3内でブラスト加工により生じたガラスや金属等の被加工物の粉塵を回収する。ブラスト加工により生じる被加工物の粉塵は、一般的に研磨材よりも粒子が細かく軽く、圧縮空気送給手段6による圧縮空気により粉塵のみが吹き飛ばされるため、回収手段7により粉塵を吸引して回収するようになっている。なお、図2図3に示すように、吸引口にはダンパ20が設けられ、その開度によって適正な吸引力に調整することが可能であり、吸引し過ぎる場合のように研磨材まで吸引してしまうことを未然に防止している。
【0039】
ところで、研磨材タンク4内の下部であって圧縮空気送給手段6からノズル5までの圧縮空気の流通パイプ21(図3参照)の途中には、研磨材タンク4内に収容された研磨材を流通パイプ21内に供給して研磨材と圧縮空気とを混合する混合手段22が設けられている。この混合手段22は、図8ないし図10に示すように、流通パイプ21の一部を包被して配置され内面と流通パイプ21の外面との間に空間23aを有する包被体23と、包被体23の内部において、流通パイプ21内部と包被体23の内部の空間23aとを連通すべく流通パイプ21に形成された透孔24とを有する。
【0040】
包被体23は中空の円柱状を有し、流通パイプ21が包被体23の左右の閉塞面を貫通している。また、図10に示すように、包被体23の中央上部には、包被体23の内部の空間23aと研磨材タンク4の内部とを連通した円筒状の連通部25が取り付けられ、研磨材タンク4との連通部25を介して研磨材タンク4内の研磨材が空間23aに落下して空間23aに研磨材が溜まるようになっている。
【0041】
さらに、透孔24は、流通パイプ21の下面側に着脱自在に螺合されるボルト26の中央に上下方向に透設されたものであり、流通パイプ21の下面に形成された雌ねじに、上下方向の透孔24を有するボルト26が螺合されることにより、流通パイプ21内部と包被体23内部の空間23aとが連通される。
【0042】
また、図9図10に示すように、包被体23の中央下部にはボルト26を包被体23内に挿入する円筒状の挿入部27が設けられ、この挿入部27の下面は開閉可能な蓋28により密閉されている。
【0043】
そして、混合手段22の流通パイプ21に、圧縮空気送給手段6からの圧縮空気が送給されると、圧縮空気の送給により流通パイプ21内に負圧が生じ、混合手段22の包被体23の空間23a内に溜まった研磨材タンク4からの研磨材が、流通パイプ21に螺合されたボルト26の透孔24を介して流通パイプ21内に負圧によって吸引され、研磨材と圧縮空気とが流通パイプ21内で混合された状態でノズル5に供給され、被加工物に噴射されて被加工物表面が研磨される。
【0044】
ところで、ボルト26は、例えば図11(a)、(b)に示すように、径の異なる透孔24が透設された複数種類のものを交換用に予め準備しておくのが望ましく、研磨材の種類や粗さが変更された場合に、蓋28を開けて径の異なる透孔24のボルト26に交換することで、研磨材の変更に簡単に対応することができ、しかも最適な径の透孔24を有するボルト26を選定することで温度や湿度などの作業環境条件の変化に対応できる。また、ボルト26の透孔24に目詰まりが生じても、蓋28を開けて千枚通しのような細い鋭利な工具で透孔24を掃除したり、新たなボルト26に交換することで目詰まりを解消できる。
【0045】
(ブラスト加工の動作)
被加工物であるガラス瓶やガラスコップの表面に、ブラスト加工により名前等の所定の文字や図柄等のデザインを彫刻する場合、被加工物の表面にブラスト加工により削り取る部分以外を包被するマスクを被せた状態で、作業室3の側面の扉10を開けて被加工物を作業室3内に配置し、作業者が挿入口12からノズル5とともに腕を作業室3内に挿入して被加工物を把持してフットスイッチから成る電源スイッチをオンすると、圧縮空気送給手段6からの圧縮空気がノズル5に送給され、混合手段22により混合された研磨材が圧縮空気の圧力により被加工物に噴射され、被加工物表面がマスクにより覆われた領域以外が研磨され、所定の文字や図柄等のデザインが被加工物表面に彫刻される。
【0046】
ブラスト加工により生じた被加工物の粉塵であるガラス粉塵は、圧縮空気により吹き飛ばされて研磨材と分離され、回収手段7により吸引回収される一方、研磨材は落下してホッパー3a内に溜まる。
【0047】
作業者は、研磨材タンク4の覗き窓部18から研磨材タンク4の内部の研磨材の量を目視できるので、研磨材タンク4内の研磨材の量が少なくなってきたと判断すると、操作手段16の外部操作レバー16fを操作するか、或いは、作業室3内で内部操作レバー16eを操作し、付勢手段の付勢に抗して閉塞体15を下動させて連結部14の下面を開放し、ホッパー3aに溜まった研磨材を研磨材タンク4に落下させればよい。
【0048】
また、閉塞体15に異常が発生して交換する必要が生じた場合には、覗き窓部18の閉鎖蓋18aを開け、研磨材タンク4内の索状体16cを接続で修理するか、または閉塞体15を索状体16cから取り外して新しいものに交換し、閉鎖蓋18aにより覗き窓部18を再び閉塞することで、ブラスト加工作業を引き続いて行うことができる。
【0049】
なお、ブラスト加工により、被加工物である金属製のカップなどの金属製品の表面にデザインを施す場合にも、所定の文字や図柄等のデザインが書き込まれた種々の色付きフィルム状のマスクを被加工物表面全体に貼り付けて覆い、マスクのデザイン画に沿ってノズル5からの研磨材を噴射し、マスクのデザイン画部分のみを削り取ることにより、金属製品である被加工物表面に所定のデザインを施すことができる。また、金属製品の不要なバリ取りを行うこともできる。
【0050】
したがって、上記した実施形態によれば、圧縮空気送給手段6からの圧縮空気の送給により流通パイプ21内に負圧が生じ、混合手段22の包被体23の空間23a内に溜まった研磨材タンク4からの研磨材が、流通パイプ21の透孔24を介して流通パイプ21内に負圧によって吸引され、研磨材と圧縮空気とが流通パイプ21内で混合された状態でノズル5に供給され、被加工物に噴射されて被加工物表面が研磨され、ブラスト加工により、被加工物表面に所定の文字や図柄等のデザインが施されるため、圧縮空気が作業室3や研磨材タンク4の外部に排出されることがなく、粉塵により作業環境の悪化を招くのを防止することができる。
【0051】
また、圧縮空気が作業室3や研磨材タンク4の外部に排出されないことから、圧縮空気送給手段6用のコンプレッサーは、従来のような大出力ではなく小さい出力のもので済み、しかも研磨材を循環させることから、ブラスト加工に使用する研磨材として従来のように新たなものを準備する必要がなく、コストの大幅な低減を図ることができる。
【0052】
また、流通パイプ21に着脱自在に螺合されるボルト26に透孔24を透設するため、径の異なる透孔24が透設された複数種類のボルト26を交換用に予め準備しておくことにより、研磨材の種類や粗さが変更された場合に、径の異なる透孔24のボルト26に交換することにより、研磨材の変更に簡単に対応することが可能になる。しかも、最適な径の透孔24を有するボルト26を選定することにより、温度や湿度などの作業環境条件の変化に容易に対応することが可能になり、ボルト26の透孔24に目詰まりが生じても、蓋28を開けて千枚通しのような細い鋭利な工具で透孔24を掃除したり、新たなボルト26に交換することで目詰まりを容易に解消することができる。
【0053】
また、研磨材タンク4に設けた覗き窓部18のガラス窓を介して、研磨材タンク4内の研磨材の量を目視できるため、作業者が研磨材タンク4内の研磨材が少ないと判断した場合には、操作手段16を操作して閉塞体15を下動させることにより、連結部14の研磨材タンク側出口である下面を開放して作業室3内に溜まった研磨材を研磨材タンク4に落下させることができる。
【0054】
また、連結部14の傘状体14bの下面を開放する際、作業者は作業室3の内、外の操作し易い方で操作手段16の内部操作レバー16eまたは外部操作レバー16fを操作すればよく、作業効率が低下することを防止できる。
【0055】
また、閉塞体15が研磨材により削れる等によって連結部14を閉塞できなくなる等の異常が生じたときに、作業者は覗き窓部18を介して閉塞体15の異常の有無を目視で確認できるため、覗き窓部18の閉鎖蓋18aを取り外すことにより、索状体16cを接続で修理するか、または研磨材タンク4内の閉塞体15のみを索状体16cから取り外して簡単に交換することができる。
【0056】
また、作業室3の外面である挿入口12近辺に、圧縮空気送給手段6よる圧縮空気の圧力メータ及び圧力調整用絞り弁等が配設された表示盤19を設けたため、作業者は作業室3外面の圧力メータの表示を見ることで圧縮空気の圧力が最適状態かどうかを容易に確認することができ、圧力調整の必要がある場合には、圧力調理用絞り弁を容易に操作して圧力調整を行うことが可能になり作業効率の向上を図ることができる。
【0057】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0058】
例えば、上記した実施形態では、被加工物をガラス製品や金属製品とした例を挙げたが、被加工物はこれらに限るものではなく、ブラスト加工が可能なものに対して本発明を適用することができる。
【0059】
また、作業室3の形状や、研磨材タンク4の形状は上記したものに限定されないの言うまでもない。
【0060】
また、上記した実施形態では、閉塞体15を球状とした場合について説明したが、閉塞体15は連結部14の下面を閉塞できる形状であれば、球体状であっても傘状のものであってもよい。
【0061】
そして、筐体状の作業室内で噴射ノズルから圧縮空気とともに研磨材を噴射して被加工物の表面をブラスト加工するブラスト加工装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 …ブラスト加工装置
3 …作業室
4 …研磨材タンク
5 …噴射ノズル
6 …圧縮空気送給手段
7 …回収手段
12 …挿入口
14 …連結部
15 …閉塞体
16 …操作手段
18 …覗き窓部
18a…閉鎖蓋
20 …表示盤
21 流通パイプ
22 …混合手段
23 …包被体
24 …透孔
26 …ボルト
【要約】
【課題】作業環境の悪化を招くことがなく、コストの低減を図ることが可能なブラスト加工装置を提供する。
【解決手段】圧縮空気送給手段6からの圧縮空気の送給により流通パイプ21内に負圧が生じ、混合手段の包被体の空間内に溜まった研磨材タンク4からの研磨材が、流通パイプ21の透孔を介して流通パイプ21内に吸引され、研磨材と圧縮空気とが流通パイプ21内で混合された状態で噴射ノズル5に供給され、作業室3内において被加工物に噴射されて被加工物表面が研磨され、ブラスト加工により、被加工物表面に所定の文字や図柄等のデザインが施される。このとき、圧縮空気が作業室3や研磨材タンク4の外部に排出されることがない。
【選択図】図3
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