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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】植物栽培用容器及び植物の栽培方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20180101AFI20240229BHJP
   A01G 27/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A01G9/02 F
A01G9/02 103G
A01G27/02 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020201790
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089413
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000201641
【氏名又は名称】全国農業協同組合連合会
(73)【特許権者】
【識別番号】000140074
【氏名又は名称】株式会社羽根
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】塚田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】山田 圭太
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正徳
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 成二
(72)【発明者】
【氏名】石井 正幸
(72)【発明者】
【氏名】高永 優衣
(72)【発明者】
【氏名】山中 弘則
(72)【発明者】
【氏名】野上 洋輝
(72)【発明者】
【氏名】羽根 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】森 健剛
(72)【発明者】
【氏名】横山 宣志
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-166146(JP,A)
【文献】特開2005-237308(JP,A)
【文献】特開2011-041543(JP,A)
【文献】特開2020-099298(JP,A)
【文献】実開昭57-125248(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/02
A01G 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で対向する長辺及び短辺を有する植物栽培用容器であって、
上面に開口部を有する容器本体と、前記開口部を塞ぐように前記容器本体に嵌合する、定植穴が形成された蓋体からなり、
前記容器本体の底面に、前記対向する長辺間にわたる第1切欠部、及び前記対向する短辺間にわたる第2切欠部を有し、
前記第1切欠部の両側部にある壁部の底面に、長手方向に離間する、短手方向の第1係合凹部を有するとともに、
前記第2切欠部の両側部にある壁部の底面に、短手方向に離間する、長手方向の第2係合凹部を有することを特徴とする、
植物栽培用容器
【請求項2】
前記容器本体は、
下側の養液槽と上側の栽培槽からなり、
前記養液槽は、
前記第1切欠部及び前記第2切欠部の上側に位置する第1底板、及び前記第1底板の端縁から立起する4側壁、並びに前記4側壁から離間して前記第1底板から立起する突条部からなり、
前記突条部の上面には、長手方向の端部から中央部へ行くにしたがって下降する傾斜面、及び前記傾斜面の外周を囲むように立起する縁部が設けられ、
前記突条部の中央部には、第1上下貫通穴が設けられ、
前記栽培槽は、
第2底板、及び前記第2底板の端縁から立起する4側壁からなり、
前記第2底板には、
前記突条部の上面の前記縁部に囲まれた領域の上方に位置する第2上下貫通穴、
前記突条部の外方領域の上方に位置する第3上下貫通穴、及び、
短手側の側壁の内面に沿う第4上下貫通穴が設けられ、
前記第2底板の上面には、前記第2上下貫通穴に向かって傾斜する傾斜面が設けられる、
請求項1に記載の植物栽培用容器。
【請求項3】
前記容器本体及び前記蓋体は発泡合成樹脂製である、
請求項1又は2に記載の植物栽培用容器。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の植物栽培用容器を複数用い、
前記容器本体に培養液を収容し、
育苗した苗を前記蓋体の定植穴から定植し、
前記第1係合凹部に一対の平行な水平支持杆体を係合させて前記植物栽培用容器を保持し、前記第1切欠部内、又は前記第1切欠部の下方に樋を設置する第1形態と、
前記第2係合凹部に一対の平行な水平支持杆体を係合させて前記植物栽培用容器を保持し、前記第2切欠部内、又は前記第2切欠部の下方に樋を設置する第2形態と
のどちらかを選択するとともに、
隣り合う前記植物栽培用容器間の間隔の有無を選択し、
前記間隔を設ける場合には、前記間隔の大きさを選択し、
前記苗を生育することを特徴とする植物の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培用容器及びこの容器を用いて行う植物の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物栽培用容器として、平面視矩形状の底板4及び底板4の端縁から立起する4側壁5A,5B,6A,6Bにより構成される、上面を開口した容器本体2、並びに、前記開口を塞ぐように容器本体2に嵌合する、定植穴Aが形成された平面視矩形状の蓋体3からなる、発泡合成樹脂製の植物栽培用容器1がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の植物栽培用容器1を用いる植物の栽培方法は、容器本体2の底板4上に培養液を保持する土壌改良材Eを充填し、土壌改良材E上に培養土Cを充填・鎮圧し、培養土C全体に灌水した後に蓋体3により容器本体2の前記開口を被い、育苗した苗を蓋体3の定植穴Aから定植し、定植穴A内に挿入されるポットP内、給液用切欠き12内又は給液用穴13から培養液を給液し、排液穴10A,10Bから培養液を回収する。
【0004】
養液栽培装置として、発泡スチロールベット1の底部に形成した排水溝部4に孔あき排水パネル7を載置し、排水パネル7上に親水性不織布8を敷き、親水性不織布8の上に防根シート9を介して栽培する植物の播種された育苗ポット10を載置し、親水性不織布8によって保持される培養液を毛細管作用により育苗ポット10に供給されるように構成したものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2の養液栽培装置を用いる植物の栽培方法は、灌水パイプ12から上向きに培養液を供給して親水性不織布8に降り注ぎ、親水性不織布8に保持する。親水性不織布8の毛細管作用によって、培養液が防根シート9を通して育苗ポット10の下面から均一に供給され、育苗ポット10内の発芽した幼植物Aを育成する。その際、過剰な培養液は、排水パネル7の排水孔6を通して下の排水溝部4に落ち、排水溝4を長手方向に流下し、親水性不織布8には常に適量の培養液が常に保持される。
【0006】
毛管水耕プラントとして、成型ベット17に、養液を保持すると共に、親水性不織布15の一端が浸る養液供給槽と、水量を親水性不織布15の一定レベル以下に抑える養液排水槽とを備え、親水性不織布15の一端を前記養液供給槽へ垂らし、親水性不織布15の他端を前記養液排水槽へ垂らすように親水性不織布15を支持する中板16を具備し、親水性不織布15の上に遮根シート14を敷き、苗10を保持するロックウール育苗ポット11を定植パネル12の穴に固定した状態で遮根シート14上に載置するものがある(例えば、特許文献3参照)。定植パネル12、中板16、成型ベット17の材料の例として、発泡スチロールが挙げられている(特許文献3の[0029])。
【0007】
特許文献3の毛管水耕プラントによる植物の栽培方法において、親水性不織布15の一端は前記養液供給槽内の養液に浸っており、親水性不織布15の他端は空中に垂れ下がっている。親水性不織布15の一端から吸い上げられた養液は、親水性不織布15中を拡散していき、親水性不織布15の空中に垂れ下がった他端側の方まで来ると、サイフォンの原理によって吸い下げられる。それにより、不織布15中を養液が素早く移動するので、灌水チューブを用いた養液の噴霧に頼ることなく、長期間に渡って毛管水耕栽培を行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6094264号公報
【文献】登録実用新案第3001784号公報
【文献】特開平5-308864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のような従来の植物栽培用容器等を用いて行う植物の栽培方法では、発泡合成樹脂製の容器や蓋等を用いることにより、発泡合成樹脂の断熱性により植物や土が環境変化による影響を受けにくいこと、軽量で取り扱いが簡単であるため設置が容易であること、イニシャルコスト及びランニングコストが低く抑えられるため収益性が高いこと、等の利点がある。
【0010】
植物の栽培において、栽培する植物の種類や生育状況により最適な栽植密度がある。しかしながら、従来の植物栽培用容器等を用いて行う植物の栽培方法では、栽培する植物の種類や生育状況に合わせて栽植密度を変更し難い。したがって、前記最適な栽植密度にした状態で植物を栽培して収量を上げるという観点で見ると、従来の植物栽培用容器等を用いて行う植物の栽培方法には改良の余地がある。
【0011】
本発明は、栽培する植物の種類や生育状況に合わせて栽植密度を容易に変更できる植物栽培用容器及び植物の栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の要旨は以下のとおりである。
【0013】
〔1〕
平面視で対向する長辺及び短辺を有する植物栽培用容器であって、
上面に開口部を有する容器本体と、前記開口部を塞ぐように前記容器本体に嵌合する、定植穴が形成された蓋体からなり、
前記容器本体の底面に、前記対向する長辺間にわたる第1切欠部、及び前記対向する短辺間にわたる第2切欠部を有し、
前記第1切欠部の両側部にある壁部の底面に、長手方向に離間する、短手方向の第1係合凹部を有するとともに、
前記第2切欠部の両側部にある壁部の底面に、短手方向に離間する、長手方向の第2係合凹部を有することを特徴とする、
植物栽培用容器。
【0014】
〔2〕
前記容器本体は、
下側の養液槽と上側の栽培槽からなり、
前記養液槽は、
前記第1切欠部及び前記第2切欠部の上側に位置する第1底板、及び前記第1底板の端縁から立起する4側壁、並びに前記4側壁から離間して前記第1底板から立起する突条部からなり、
前記突条部の上面には、長手方向の端部から中央部へ行くにしたがって下降する傾斜面、及び前記傾斜面の外周を囲むように立起する縁部が設けられ、
前記突条部の中央部には、第1上下貫通穴が設けられ、
前記栽培槽は、
第2底板、及び前記第2底板の端縁から立起する4側壁からなり、
前記第2底板には、
前記突条部の上面の前記縁部に囲まれた領域の上方に位置する第2上下貫通穴、
前記突条部の外方領域の上方に位置する第3上下貫通穴、及び、
短手側の側壁の内面に沿う第4上下貫通穴が設けられ、
前記第2底板の上面には、前記第2上下貫通穴に向かって傾斜する傾斜面が設けられる、
〔1〕に記載の植物栽培用容器。
【0015】
〔3〕
前記容器本体及び前記蓋体は発泡合成樹脂製である、
〔1〕又は〔2〕に記載の植物栽培用容器。
【0016】
〔4〕
〔1〕~〔3〕の何れかに記載の植物栽培用容器を複数用い、
前記容器本体に培養液を収容し、
育苗した苗を前記蓋体の定植穴から定植し、
前記第1係合凹部に一対の平行な水平支持杆体を係合させて前記植物栽培用容器を保持し、前記第1切欠部内、又は前記第1切欠部の下方に樋を設置する第1形態と、
前記第2係合凹部に一対の平行な水平支持杆体を係合させて前記植物栽培用容器を保持し、前記第2切欠部内、又は前記第2切欠部の下方に樋を設置する第2形態と
のどちらかを選択するとともに、
隣り合う前記植物栽培用容器間の間隔の有無を選択し、
前記間隔を設ける場合には、前記間隔の大きさを選択し、
前記苗を生育することを特徴とする植物の栽培方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の植物栽培用容器は、容器本体の底面に、対向する長辺間にわたる第1切欠部、及び対向する短辺間にわたる第2切欠部を有し、前記第1切欠部の両側部にある壁部の底面に、長手方向に離間する、短手方向の第1係合凹部を有するとともに、前記第2切欠部の両側部にある壁部の底面に、短手方向に離間する、長手方向の第2係合凹部を有する。
【0018】
それにより、前記第1係合凹部に一対の平行な水平支持杆体を係合させて植物栽培用容器を保持し、前記第1切欠部内、又は前記第1切欠部の下方に樋を設置する第1形態と、前記第2係合凹部に一対の平行な水平支持杆体を係合させて植物栽培用容器を保持し、前記第2切欠部内、又は前記第2切欠部の下方に樋を設置する第2形態とのどちらかを選択できる。そして、隣り合う植物栽培用容器間の間隔の有無を選択し、前記間隔を設ける場合には、前記間隔の大きさを選択し、そのように選択した植物栽培用容器の配置を容易に行うことができる。このように植物栽培用容器の配置を容易に変更できるので、植栽密度を変更する作業が容易になる。したがって、栽培する植物の種類や生育状況による最適な栽植密度を選択しながら植物の栽培を行うことにより植物の収量を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態に係る植物栽培用容器の斜視図である。
図2】同じく分解斜視図である。
図3】裏返した状態の養液槽の斜視図である。
図4】裏返した状態の栽培槽の斜視図である。
図5】栽培槽の平面図である。
図6A図5の矢視矢視X-X断面図である。
図6B図5の矢視矢視Y-Y断面図である。
図7】裏返した状態の蓋体の斜視図である。
図8】本発明の実施の形態に係る植物栽培用容器の定植穴から苗を定植した状態を示す斜視図である。
図9】前記植物栽培用容器を用いて植物を生育している状態を示す縦断面正面図である。
図10A】第1形態で隣り合う植物栽培用容器間の間隔を無くした状態を示す平面図である。
図10B】第2形態で隣り合う植物栽培用容器間の間隔を無くした状態を示す平面図である。
図10C】第1形態で隣り合う植物栽培用容器間に間隔を設けた状態を示す平面図である。
図10D】第2形態で隣り合う植物栽培用容器間に間隔を設けた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
本明細書において、平面視で対向する長辺L,L及び短辺S,Sを有する植物栽培用容器1において、長辺Lに沿う水平方向に平行な方向を「長手方向」(図中矢印C参照)、短辺Sに沿う水平方向に平行な方向を「短手方向」(図中矢印D参照)という。また、植物栽培用容器1の使用状態において、長辺Lに向かって水平方向から見た図を正面図とする。
【0022】
<植物栽培用容器>
図1の斜視図、及び図2の分解斜視図に示すように、本発明の実施の形態に係る植物栽培用容器1は、上面に開口部2Aを有する容器本体2と、開口部2Aを塞ぐように容器本体2に嵌合する、定植穴15が形成された蓋体3とからなり、平面視で対向する長辺L,L及び短辺S,Sを有する。短辺Sの長さに対する長辺Lの長さの比は、例えば1.5~2程度である。容器本体2は、下側の養液槽4と上側の栽培槽5からなる。
【0023】
図1の斜視図、及び図3の養液槽4を裏返した状態の斜視図に示すように、容器本体2(養液槽4)の底面に、対向する長辺L,L間にわたる第1切欠部A1、及び対向する短辺S,S間にわたる第2切欠部A2を有する。第1切欠部A1の両側部にある壁部6A,6Bの底面に、長手方向Cに離間する、短手方向Dの第1係合凹部B1,B1を有する。第2切欠部A2の両側部にある壁部7A,7Bの底面に、短手方向Dに離間する、長手方向Cの第2係合凹部B2,B2を有する。
【0024】
図2の分解斜視図、及び図3の裏返した状態の斜視図に示すように、養液槽4は、第1切欠部A1及び第2切欠部A2の上側に位置する第1底板8、及び第1底板8の端縁から立起する4側壁9A,9B,10A,10B、並びに4側壁9A,9B,10A,10Bから離間して第1底板8から立起する、長手方向Cに長い突条部11からなる。
【0025】
突条部11の上面11Aには、長手方向Cの端部から中央部へ行くにしたがって下降する傾斜面11B,11B、及び傾斜面11B,11Bの外周を囲むように立起する縁部11Cが設けられ、突条部11の中央部には、第1上下貫通穴11Dが設けられる。
【0026】
図2の分解斜視図、図4の裏返した状態の斜視図、及び図5の平面図に示すように、栽培槽5は、第2底板12、第2底板12の端縁から立起する4側壁13A,13B,14A,14Bからなる。
【0027】
第2底板12には、第2上下貫通穴12B、第3上下貫通穴12C、及び第4上下貫通穴12Dが設けられる。
【0028】
第2上下貫通穴12Bは、長手方向Cに並んでおり、個数は例えば3個であり、突条部11の上面11Aの縁部11Cに囲まれた領域R1(図2)の上方に位置する。
【0029】
第3上下貫通穴12Cは、側壁の内面側から第2上下貫通穴12Bに向かう長穴であり、個数は例えば8個であり、突条部11の外方領域R2(図2)の上方に位置する。第3上下貫通穴12Cは、必ずしも長穴でなくてもよく、例えば複数の丸穴等としてもよい。
【0030】
第4上下貫通穴12Dは、短手側の側壁14A,14Bの内面に沿うものであり、短手側の側壁14Aの内面に沿う長穴と短手側の側壁14Bの内面に沿う長穴である。第4上下貫通穴12Dは、図9の縦断面図に示す親水性布状物16を用いずに複数の親水性紐状物を用いる場合は、長穴ではなく、当該紐状物を挿通できる複数の丸穴であってもよい。
【0031】
図6A図5の矢視矢視X-X断面図、及び図6B図5の矢視矢視Y-Y断面図に示すように、第2底板12の上面12Aには、第2上下貫通穴12Bに向かって傾斜する傾斜面12E,12Fが設けられる。
【0032】
図2の分解斜視図、及び図7の裏返した状態の斜視図に示すように、蓋体3には、丸穴15A及び丸穴15Aの周壁の一部を平面視円弧状に切り欠いた給液用切欠き15Bにより形成される瓢箪状をなす、2個の定植穴15,15が形成される。
【0033】
図1の斜視図のように、養液槽4、栽培槽5、蓋体3を組み付けた状態では、養液槽4の上端外周部の凸部4A(図2)に、栽培槽5の下端外周部の凹部5B(図6A及び図6B)が嵌合し、栽培槽5の下上外周部の段部5A(図2図6A及び図6B)に、蓋体3の段部3A(図7)が嵌合する。この状態では、養液槽4の突条部11の上部の縁部11C(図2)の外方に、栽培槽5の段部12G(図4)が嵌合する。
【0034】
容器本体2を構成する養液槽4及び栽培槽5、並びに蓋体3は、軽量であるとともに断熱性に優れた発泡合成樹脂製とするのが好ましい実施態様である。発泡合成樹脂としては、例えば、発泡ポリスチレン系樹脂、発泡ポリエチレン系樹脂、発泡ポリプロピレン系樹脂等の発泡ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン変性発泡ポリエチレン等のポリスチレン変性発泡ポリオレフィン系樹脂、硬質発泡ウレタン系樹脂等を用いることができるが、中でも発泡ポリスチレンが強度やコスト等の点から好ましい。
【0035】
<植物の栽培方法>
先ず、図8の斜視図、及び図9の縦断面正面図により、植物栽培用容器1を用いた植物PLの栽培例について説明する
【0036】
養液槽4のみの状態で、図9に示す培養液Fを養液槽4に収容した後、養液槽4上に栽培槽5を嵌合して固定する。
【0037】
次に、栽培槽5の第2底板12の第4上下貫通穴12D,12D間にわたって親水性布状物16を載せ、親水性布状物16の端部16A,16Bを第4上下貫通穴12D,12Dから培養液F内に垂らす。親水性布状物16は、例えば、親水性がある織布又は不織布である。親水性布状物布16を用いずに複数の親水性紐状物を用いる場合は、栽培槽5の第2底板12の第4上下貫通穴12D,12D間にわたって複数の親水性紐状物を載せ、複数の親水性紐状物の端部を第4上下貫通穴12D,12Dから培養液F内に垂らす。親水性紐状物は、例えば、親水性がある合成繊維又は天然繊維を束ねて細長くしたものである。親水性紐状物の本数を変更することにより、毛細管現象により吸い上げる培養液の量を容易に変更できる。
【0038】
次に、親水性布状物16上に防根シート17を載置し、防根シート17上に培養土18を充填する。
【0039】
次に、栽培槽5の上端部に蓋体3を嵌合して固定し、蓋体3により容器本体2の開口部2Aを被う。
【0040】
次に、育苗ポットPで育苗した苗(植物PL)を、育苗ポットPとともに蓋体3の定植穴15,15から定植する。なお、定植穴15,15に育苗ポットPとともに定植する例を示したが、必ずしもそのように定植する必要はなく、育苗ポットPなしの苗、あるいは育苗ポットPを除いた苗を定植してもよい。
【0041】
培養液Fは、親水性布状物16の毛細管現象により吸い上げられ、水を通す防根シート17を介して培養土18を潤す。したがって、植物PLの根が培養液Fを吸う。
【0042】
また、定植穴15の丸穴15A内に挿入される育苗ポットP内、又は給液用切欠き15B内から、給液チューブT等により培養液Fを給液する。
【0043】
給液チューブT等により給液した培養液Fが多い場合、当該培養液Fは、第3上下貫通穴12C(図4及び図5、並びに図6A及び図6B)から養液槽4内に落ちるとともに、余剰な培養液Fは、栽培槽5の第2底板12の上面12Aの傾斜面12E,12F(図6A及び図6B、並びに図9)に沿って第2上下貫通穴12Bに入る。第2上下貫通穴12Bに入った培養液Fは、養液槽4の突条部11の傾斜面11B(図2及び図9)に沿って第1上下貫通穴11Dに入る。したがって、第1上下貫通穴11Dの下方に位置する樋20により余剰な培養液Fを回収できるので、培養液Fが無駄にならない。
【0044】
植物栽培用容器1の容器本体2は、下側の養液槽4と上側の栽培槽5からなり、それらの結合・分離が容易である。それにより、養液槽4への培養液Fの供給が容易であること、植物の栽培をした後に、清掃が容易であること、栽培槽5のみの廃棄や、栽培槽5内の培養土18の廃棄が容易であること等の特徴がある。
【0045】
植物栽培用容器1の支持は、図8及び図9に示すように、例えばパイプである一対の平行な水平支持杆体19A,19Bにより行う。図8の斜視図、図9の縦断面正面図、及び図10Aの平面図の例は、一対の平行な水平支持杆体19A,19Bを、容器本体2(養液槽4)の底面の第1係合凹部B1,B1に係合させた第1形態E1である。第1形態E1では、容器本体2(養液槽4)の底面の第1切欠部A1内に樋20を設置する。第1切欠部A1内に樋20を設置するのが好ましい実施態様であるが、第1切欠部A1の下方に樋20を設置してもよい。
【0046】
植物栽培用容器1の容器本体2(養液槽4)の底面は、前記のとおり、図3の裏返した状態の養液槽4の斜視図に示すように、第1切欠部A1とともに第2切欠部A2を有し、第1係合凹部B1,B1とともに第2係合凹部B2,B2を有する。
【0047】
したがって、第1形態E1から、一対の平行な水平支持杆体19A,19Bを、容器本体2(養液槽4)の底面の第2係合凹部B2,B2(図3)に係合させた図10Bの平面図のような第2形態E2に容易に変更することができる。第2形態E2では、第2切欠部A2内、又は第2切欠部A2の下方に樋20を設置する。
【0048】
あるいは、第2形態E2から第1形態E1への変更も容易である。なお、第1形態E1から第2形態E2に変更する際には、水平支持杆体19A,19Bの間隔を狭くし、第2形態E2から第1形態E1に変更する際には、水平支持杆体19A,19Bの間隔を広げる。
【0049】
図10Aの平面図に示す第1形態E1の配置、及び図10Bの平面図に示す第2形態E2の配置を比較すると、植物栽培用容器1は、平面視で対向する長辺L,L及び短辺S,S(例えば図1)を有し、短辺Sの長さに対する長辺Lの長さの比が、例えば1.5~2程度であること、及び、蓋体3に2個の定植穴15,15を有することから、栽植密度が異なる。
【0050】
第1係合凹部B1,B1に一対の平行な水平支持杆体19A,19Bを係合させて植物栽培用容器1を保持した第1形態E1において、隣り合う植物栽培用容器1,1間の間隔を無くし、隣り合う植物栽培用容器1,1同士を接触させた図10Aの平面図に示す植物栽培用容器1,1,…の配置、及び隣り合う植物栽培用容器1,1間に間隔Gを設けて当該間隔Gの大きさを選択した図10Cの平面図に示す植物栽培用容器1,1,…の配置において、それらの変更は、水平支持杆体19A,19Bに沿って植物栽培用容器1,1,…をスライドさせることにより、非常に容易に行うことができる。
【0051】
また、第2係合凹部B2,B2に一対の平行な水平支持杆体19A,19Bを係合させて植物栽培用容器1を保持した第2形態E2において、隣り合う植物栽培用容器1,1間の間隔を無くし、隣り合う植物栽培用容器1,1同士を接触させた図10Bの平面図に示す植物栽培用容器1,1,…の配置、及び隣り合う植物栽培用容器1,1間に間隔Gを設けて当該間隔Gの大きさを選択した図10Dの平面図に示す植物栽培用容器1,1,…の配置において、それらの変更は、水平支持杆体19A,19Bに沿って植物栽培用容器1,1,…をスライドさせることにより容易に行うことができる。
【0052】
このように、第1形態E1と第2形態とのどちらかを選択することができ、さらに隣り合う植物栽培用容器1,1間の間隔Gの有無を選択し、間隔Gを設ける場合には、間隔Gの大きさを選択して、植物栽培用容器1,1,…を配置することが容易である。
【0053】
このように植物栽培用容器1,1,…の配置を容易に変更できるので、植栽密度を変更する作業が容易になる。したがって、栽培する植物の種類や生育状況による最適な栽植密度を選択しながら植物の栽培を行うことにより植物の収量を上げることができる。
【0054】
以上の実施の形態の記載はすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0055】
1 植物栽培用容器 2 容器本体
2A 開口部 3 蓋体
3A 段部 4 養液槽
4A 凸部 5 栽培槽
5A 段部 5B 凹部
6A,6B 第1切欠部の両側部にある壁部
7A,7B 第2切欠部の両側部にある壁部
8 第1底板 8A 上面
9A,9B,10A,10B 側壁 11 突条部
11A 上面 11B 傾斜面
11C 縁部 11D 第1上下貫通穴
12 第2底板 12A 上面
12B 第2上下貫通穴 12C 第3上下貫通穴
12D 第4上下貫通穴 12E,12F 傾斜面
12G 段部 13A,13B,14A,14B 側壁
15 定植穴 15A 丸穴
15B 給液用切欠き 16 親水性布状物
16A,16B 端部 17 防根シート
18 培養土 19A,19B 水平支持杆体
20 樋
A1 第1切欠部 A2 第2切欠部
B1 第1係合凹部 B2 第2係合凹部
C 長手方向 D 短手方向
E1 第1形態 E2 第2形態
F 培養液 G 間隔
L 長辺 P 育苗ポット
PL 植物 R1 縁部に囲まれた領域
R2 突条部の外方領域 S 短辺
T 給液チューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D