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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】エレベータのかご及びエレベータ
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B66B5/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023007319
(22)【出願日】2023-01-20
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】武田 佳祐
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-153540(JP,A)
【文献】特開2005-67881(JP,A)
【文献】特開平6-100257(JP,A)
【文献】国際公開第2018/100888(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/35174(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご室を構成する壁に形成される非常口と、
非常口の下縁部に水平軸回りに回転自在に取り付けられ、立てて閉じた状態と、倒して開いた状態とに回転可能な踏板と、
踏板を閉じた状態で固定するためのロック機構部とを備え、
ロック機構部は、
非常口の下縁部側の構成として、踏板の回転軸又はこれと平行な線のいずれかと直交する中心線を有する孔又はピンの一方で構成される被係合部を備え、
踏板側の構成として、踏板の回転軸又はこれと平行な線のいずれかと直交する中心線を有する孔又はピンの他方で構成される係合部を備え、
係合部は、この中心線に沿って被係合部側に移動して被係合部との凹凸係合が可能となる第1状態と、逆方向に移動して被係合部との凹凸係合が解除可能となる第2状態とにスライド可能であり、しかも、踏板を閉じた状態で第2状態から第1状態に切り替わるように構成される
エレベータのかご。
【請求項2】
踏板を閉じた状態以外で踏板の回転に伴って係合部の先端部を摺接させる外面を有して係合部の移動を制御する制御部を備える
請求項1に記載のエレベータのかご。
【請求項3】
制御部の外面は、踏板の回転軸と一致する中心線を有する円弧面である
請求項2に記載のエレベータのかご。
【請求項4】
係合部は、被係合部側に移動する方向に付勢される
請求項1に記載のエレベータのかご。
【請求項5】
被係合部は、鉛直方向に中心線を有する
請求項1に記載のエレベータのかご。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のかごを備える
エレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常口装置を備えるエレベータのかご及びエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
1つの昇降路内に複数台のかごが横並びに設置されるエレベータでは、隣り合うかごの対向する側壁に非常口が形成され、いずれかのかごが昇降路の途中で動かなくなった場合、隣のかごを救出かごとして不具合かごの側方に停止させ、各かごの扉を開いて非常口を開放するとともに、各非常口の下縁部の踏板を開いて通路を形成した後、不具合かご内の乗客を救出かごへ乗り移らせて救出する、という救出作業が行われる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-123315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された非常口装置において、踏板は、支柱に水平軸回りに回転自在に取り付けられる。また、踏板の先端部側は、踏板支え部材を介して支柱の上端部に連結される。踏板支え部材を屈曲又は伸長させることにより、踏板を立てて閉じた状態と、倒して開いた状態とに切り替えることができる。
【0005】
また、踏板にはロック機構部が設けられる。ロック機構部は、スライド自在な操作棒を備える。踏板を閉じた状態で操作棒をスライドさせて操作棒の先端部を支柱に形成された孔に挿入させることにより、踏板をロックすることができ、逆に、操作棒をスライドさせて操作棒の先端部を支柱の孔から抜くことにより、ロックを解除して踏板を開くことができる。
【0006】
このように、特許文献1に記載された非常口装置においては、踏板を開くときは、ロック機構部の操作棒をスライドさせてロックを解除する操作が必要となり、踏板を閉じるときは、踏板の両側の踏板支え部材を屈曲させる操作と、ロック機構部の操作棒をスライドさせてロックをする操作とが必要となる。これらの操作は、救出かごから対向する不具合かごの踏板に対して行うときは、特に操作性が悪くなるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、非常口装置において踏板の開閉操作の操作性を向上することができるエレベータのかご及びエレベータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエレベータのかごは、
かご室を構成する壁に形成される非常口と、
非常口の下縁部に水平軸回りに回転自在に取り付けられ、立てて閉じた状態と、倒して開いた状態とに回転可能な踏板と、
踏板を閉じた状態で固定するためのロック機構部とを備え、
ロック機構部は、
非常口の下縁部側の構成として、踏板の回転軸又はこれと平行な線のいずれかと直交する中心線を有する孔又はピンの一方で構成される被係合部を備え、
踏板側の構成として、踏板の回転軸又はこれと平行な線のいずれかと直交する中心線を有する孔又はピンの他方で構成される係合部を備え、
係合部は、この中心線に沿って被係合部側に移動して被係合部との凹凸係合が可能となる第1状態と、逆方向に移動して被係合部との凹凸係合が解除可能となる第2状態とにスライド可能であり、しかも、踏板を閉じた状態で第2状態から第1状態に切り替わるように構成される
エレベータのかごである。
【0009】
ここで、本発明に係るエレベータのかごの一態様として、
踏板を閉じた状態以外で踏板の回転に伴って係合部の先端部を摺接させる外面を有して係合部の移動を制御する制御部を備える
との構成を採用することができる。
【0010】
また、この場合、
制御部の外面は、踏板の回転軸と一致する中心線を有する円弧面である
との構成を採用することができる。
【0011】
また、本発明に係るエレベータのかごの他態様として、
係合部は、被係合部側に移動する方向に付勢される
との構成を採用することができる。
【0012】
また、本発明に係るエレベータのかごの別の態様として、
被係合部は、鉛直方向に中心線を有する
との構成を採用することができる。
【0013】
また、本発明に係るエレベータは、
上記いずれかのかごを備える
エレベータである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、踏板を開くときは、係合部を第1状態から第2状態にスライドさせる操作を行うだけでよく、踏板を閉じるときは、操作が不要である。このため、本発明によれば、踏板の開閉操作の操作性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(a)は、本実施形態に係るエレベータの水平断面図である。図1(b)は、救出作業時におけるエレベータの水平断面図である。
図2図2は、本実施形態に係る非常口装置を備えるエレベータのかごであって、かご室内から見たかごの要部の斜視図である。
図3図3は、かご室外から見たかごの要部の斜視図である。
図4図4は、非常口の下縁部に設けられる踏板部であって、踏板を立てて閉じた状態の踏板部の斜視図である。
図5図5(a)は、踏板を立てて閉じた状態の踏板部の縦断面図である。図5(b)は、図5(a)のA部拡大図である。
図6図6(a)は、踏板を開く途中の状態の踏板部の縦断面図である。図6(b)は、図6(a)のB部拡大図である。
図7図7(a)は、踏板を倒して開いた状態の踏板部の縦断面図である。図7(b)は、図7(a)のC部拡大図である。
図8図8は、踏板を倒して開いた状態の踏板部の斜視図である。
図9図9(a)は、他実施形態に係る踏板部であって、踏板を立てて閉じた状態の踏板部の縦断面図である。図9(b)は、図9(a)のD部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態に係る非常口装置をかごに備えるエレベータについて説明する。
【0017】
図1(a)に示すように、エレベータ1は、昇降路2と、かご3とを備える。昇降路2は、階層を有する建物内において上下方向に延びる。かご3は、駆動機構(図示しない)の駆動により、昇降路2内を昇降し、駆動機構の駆動停止により、指定された階床に停止する。
【0018】
かご3は、かご室30と、出入口36と、扉37とを備える。かご室30は、床31、壁32(前壁33、側壁34及び後壁35)及び天井(図示しない)により構成される。床31、壁32及び天井は、1枚又は複数枚に分割されたパネルにより構成される。出入口36は、前壁33に形成される。扉37は、横方向にスライドして出入口36を開閉する。扉37は、両開き式又は片開き式である。
【0019】
かご3は、非常口装置4を備える。非常口装置4は、非常口40と、扉50とを備える。非常口40は、かご3の側壁34に形成される。より詳しくは、非常口40は、1つの昇降路2内に複数台のかご3,…が横並びに設置されるエレベータ1において、隣り合うかご3,3の対向する側壁34,34に形成される。扉50は、一側端部を中心に回転して非常口40を開閉する。扉50は、片開き式であり、かつ、かご室30内に扉50が開く内開き式である。作業者が、かご室30内から扉50の他側端部を引く、又は、かご室30外からかご室30内へ扉50の他側端部を押すと、扉50が一側端部を中心にして開かれ、非常口40が開放される。
【0020】
非常口装置4は、故障等の何らかの原因で複数台の中のいずれかのかご3が昇降路2の途中で動かなくなった場合、図1(b)に示すように、隣のかご3を救出かご3Aとして不具合かご3Bの側方に停止させ、各かご3A,3Bの扉50を開いて非常口40を開放し、2つの非常口40,40の下縁部間に足場板90を掛け渡すとともに、2つの非常口40,40の縦縁部間に手すりロープを掛け渡した後、不具合かご3B内の乗客を救出かご3Aへ乗り移らせて救出する、という救出作業を可能にするためのものである。
【0021】
図2及び図3に示すように、非常口40(ハッチングを付した部分)は、枠41内に形成される。枠41は、左右の縦枠42,42と、上枠43と、下枠44とを備え、非常口40の縦縁部、上縁部及び下縁部の4辺を縁取る枠である。扉50は、ヒンジ51を介して上枠43の一端部及び下枠44の一端部に回転自在に取り付けられる。これにより、扉50の一側端部50aは固定端となり、扉50の他側端部50bは自由端となる。
【0022】
非常口装置4は、2つのロック機構部60,60(上部ロック機構部60A、下部ロック機構部60B)と、ロック解除操作部65とを備える。2つのロック機構部60,60は、扉50の上下2箇所に設けられ、扉50の上下2箇所にて扉50を枠41に固定(ロック)するためのものである。ロック解除操作部65は、2つのロック機構部60,60間の扉50の所定高さ位置にて2つのロック機構部60,60のロック解除操作を行うためのものである。
【0023】
ロック解除操作部65は、所定高さ位置にて扉50の内面側に開口孔66を備え、2つのロック機構部60,60と作動的に接続される。これにより、ロック解除操作部65は、開口孔66を介してかご室30内から2つのロック機構部60,60のロック解除操作を行うことができる。また、ロック解除操作部65は、扉50のかご室30外に操作レバーを備え、かご室30外からも2つのロック機構部60,60のロック解除操作を行うことができる。
【0024】
下枠44には、踏板部70が設けられる。踏板部70は、踏板71を備える。踏板71は、回転自在に取り付けられ、常時は扉50に沿うように立てて閉じられるが、救出作業にあたって倒して開かれ、この上に足場板90の端部が取り付けられる。
【0025】
より詳しくは、図4に示すように、踏板部70は、踏板71と、架台72とを備える。踏板71は、基端部を固定端、先端部を自由端として、1対のヒンジ73,73を介して架台72の上部に水平軸回りに回転自在に取り付けられ、立てて閉じた状態と、倒して開いた状態とに回転可能である。踏板71は、矩形状であり、側縁に沿って左右箇所に補強用としてリブ71a,71aを備える。踏板71は、帯状のリブ71a,71aの基端部にてヒンジ73,73に軸支される。架台72は、下枠44に取り付けられる。架台72は、側縁に沿って左右箇所に補強用としてリブ72a,72aを備える。ヒンジ73,73は、架台72の上部に取り付けられる。
【0026】
架台72の上部には、検出スイッチ74のプランジャが突出して設けられる。踏板71を倒して開いた状態では、踏板71の裏面の一部(検出片)がプランジャを押圧し、検出スイッチ74がONになる。検出スイッチ74は、インターロック回路の一部を構成し、検出スイッチ74がONになると、インターロックが作動し、かご3が運転不能となる。これにより、踏板71の閉じ忘れを防止することができる。
【0027】
踏板部70は、ロック機構部75を備える。ロック機構部75は、踏板71を閉じた状態で固定するためのものである。図5に示すように、ロック機構部75は、架台72側の構成として、プランジャブラケット76を備え、踏板71側の構成として、インデックスプランジャ83を備える。
【0028】
プランジャブラケット76は、円柱部材78を備える。円柱部材78は、この中心線と直交する中心線を有する孔78aを備える。孔78aは、直線状の真っすぐな孔であり、円柱部材78を貫通する孔である。円柱部材78は、基部77を介して架台72の上部に取り付けられる。より詳しくは、孔78aの下半分に雌ネジが形成されるとともに、架台72の上部及び基部77に孔が形成され、架台72の下側から孔に挿通されるボルトが孔78aの雌ネジに螺合することにより、円柱部材78は、架台72の上部に取り付けられる。そして、円柱部材78は、この中心線が踏板71の回転軸と一致するように架台72の上部に取り付けられる。これらにより、孔78aは、踏板71の回転軸と直交する鉛直方向に中心線を有する孔となり、円柱部材78の外面78bは、踏板71の回転軸と一致する中心線を有する円弧面となる。
【0029】
インデックスプランジャ83は、ピン85を備える。ピン85は、直線状の真っすぐな棒体である。ピン85は、基部84を介して踏板71の裏面(下面)側にスライド自在に取り付けられる。より詳しくは、基部84に形成された孔にピン85がスライド自在に挿通され、基部84が踏板71の裏面に取り付けられることにより、ピン85は、踏板71の裏面側にスライド自在に取り付けられる。そして、基部84は、この孔の中心線が踏板71の回転軸と直交するように踏板71の裏面に取り付けられる。これらにより、ピン85は、踏板71の回転軸と直交する中心線を有するピンとなる。
【0030】
ピン85と基部84の孔との間には、バネ86が介装される。これにより、ピン85は、円柱部材78の孔78a側に移動する方向に弾性付勢される。ピン85の先端部は、基部84の下端部から出退自在に設けられ、常時は弾性付勢により基部84の下端部から下方に突出している。
【0031】
ピン85の他端部は、基部84の上端部から出退自在に設けられ、常時は弾性付勢により退避している。ピン85の他端部には、把持部としてのリング87が取り付けられる。リング87を把持して上方に引っ張れば、ピン85が弾性付勢に抗して上方にスライドし、ピン85の先端部が退避するようになっている。
【0032】
ピン85は、踏板71を立てて閉じた状態でピン85の中心線が円柱部材78の孔78aの中心線と一致するように踏板71の裏面側に取り付けられる。また、ピン85は、円柱部材78の孔78aの直径よりも僅かに小さい直径を有する。これらにより、ピン85は、孔78aを被係合部、ピン85を係合部として、ピン85の中心線に沿って孔78a側に移動して孔78aとの凹凸係合が可能となる第1状態と、逆方向に移動して孔78aとの凹凸係合が解除可能となる第2状態とにスライド可能である。
【0033】
上述のとおり、踏板71は、かご3の運行に支障がないよう、常時は立てて閉じられる。踏板71を立てて閉じた状態では、ピン85が弾性付勢により下方に移動し、ピン85の先端部が円柱部材78の孔78a内に係入し、第1状態となる。これにより、踏板71は、ロック状態となり、閉じた状態で固定される。
【0034】
そして、救出作業にあたり、踏板71を開くには、リング87を把持して上方に引っ張り、ピン85を弾性付勢に抗して引き上げ、ピン85を第1状態から第2状態にスライドさせる操作を行う。これにより、踏板71は、ロック解除状態となり、図6ないし図8に示すように、開くことができる。
【0035】
ここで、踏板71を閉じた状態以外では、第2状態にあるピン85の先端部は、踏板71の回転に伴って円柱部材78の外面78b上を摺動する。この点で、円柱部材78は、踏板71を閉じた状態以外でピン85の移動を制御する制御部として機能する。これにより、踏板71を閉じるとき、ピン85は、円柱部材78の孔78aの入口手前位置に案内され、弾性付勢により自動的に第2状態から第1状態に切り替わる。
【0036】
以上のとおり、本実施形態に係る非常口装置4によれば、踏板71を開くときは、ピン85を第1状態から第2状態にスライドさせる操作を行うだけでよく、踏板71を閉じるときは、操作が不要である。このため、本実施形態に係る非常口装置4によれば、踏板71の開閉操作の操作性を向上することができる。特に、作業者が救出かご3Aから対向する不具合かご3Bの踏板71の開閉操作を行うときは、非常に優れた操作性を得ることができる。
【0037】
また、本実施形態に係る非常口装置4によれば、踏板71を閉じた状態以外でピン85の移動を制御する制御部として、円柱部材78の外面78bを備える。また、本実施形態に係る非常口装置4によれば、ピン85は、円柱部材78の孔78aと凹凸係合する方向に弾性付勢される。また、本実施形態に係る非常口装置4によれば、孔78aは、鉛直方向に中心線を有し、ピン85は、鉛直方向にスライドし、ピン85のスライドには、弾性付勢力に加え、重力が作用する。これらのため、本実施形態に係る非常口装置4によれば、踏板71を閉じた状態でピン85と孔78aとを確実に凹凸係合させることができ、踏板71を閉じるときの操作を確実に不要にすることができる。
【0038】
また、本実施形態に係る非常口装置4によれば、円柱部材78の外面78bは、踏板71の回転軸と一致する中心線を有する円弧面である。これにより、ピン85(係合部)は、踏板71が回転しても、スライドせず一定の位置を維持しつつ、踏板71の回転軸からの距離が一定でかつ凹凸が無い面を摺接する。このため、本実施形態に係る非常口装置4によれば、ピン85を円柱部材78の外面78b上を抵抗なく摺接させつつ移動させることができ、踏板71の開閉をスムーズに行うことができる。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0040】
上記実施形態においては、踏板71は、枠41の下枠44に取り付けられる架台72に取り付けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。架台は設けず、踏板は下枠に直接取り付けられるものであってもよい。
【0041】
また、上記実施形態においては、踏板71は、下枠44に直接又は間接的に設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。踏板は、下枠ではない箇所に設けられるものであってもよい。非常口の下縁部とは、このような箇所も含む概念である。
【0042】
また、上記実施形態においては、ロック機構部75は、非常口40の下縁部側の孔78aを被係合部とし、踏板71側のピン85を係合部とするものである。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。孔とピンは、逆に配置されるものであってもよい。たとえば図9に示すように、非常口の下縁部側(架台72側)の構成であるプランジャブラケット76は、被係合部としてのピン79を備え、踏板71側の構成であるインデックスプランジャ83は、係合部としての孔88aを中心に備えるスリーブ88を備える。そして、ピン79と孔88aとが凹凸係合するようになっている。また、円弧部材80及びこの外面80aは、上記円柱部材78及びこの外面78bと同じ機能を有するものとして設けられる。
【0043】
また、上記実施形態においては、ピン85は、バネ86により弾性付勢される。また、図9に示すスリーブ88も、同様に、バネ86により弾性付勢される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、バネがなく、ピンやスリープが自重により落下して第2状態から第1状態に切り替わるものであってもよい。
【0044】
また、上記実施形態においては、円柱部材78の外面78bは、踏板71の回転軸と一致する中心線を有する円弧面である。また、図9に示す円弧部材80の外面80aも、同様に、踏板71の回転軸と一致する中心線を有する円弧面である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。外面の中心線が踏板の回転軸と一致しない形態であってもよい。また、外面は、円弧面でなく、他の形状の曲面であってもよい。要は、外面は、踏板を閉じるときに係合部を被係合部の凹凸係合手前位置に案内するものであれば、任意の形状を選択することができる。
【0045】
また、上記実施形態においては、円柱部材78の孔78aは、鉛直方向に中心線を有する。また、図9に示すピン79も、同様に、鉛直方向に中心線を有する。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。孔やピンは、鉛直方向でなく、斜めに傾斜するように設けられるものであってもよい。
【0046】
また、上記実施形態においては、円柱部材78の孔78aは、踏板71の回転軸と直交する中心線を有する。また、図9に示すピン79も、同様に、踏板71の回転軸と直交する中心線を有する。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。孔やピンは、踏板の回転軸と平行な線と直交する中心線を有するものであってもよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、インテックスプランジャ83の把持部は、リング87である。また、図9に示すインデックスプランジャ83の把持部も、同様に、リング87である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。把持部は、リング式でなく、ノブ式、ボタン式、レバー式、プッシュ式等、公知となっている各種の把持部の形態を採用することができる。ただし、把持部が作業者から離れた箇所に位置するとき(主として、対向する不具合かご3Bのロック機構部75の把持部である場合)、作業棒をリング87内に挿入し、作業棒を使えば、ピン85を第1状態から第2状態にスライドさせる操作を簡単に行うことができるという点で、リング式であるメリットは大きい。
【0048】
また、上記実施形態においては、対向する救出かご3A及び不具合かご3Bの両踏板71,71に足場板90が掛け渡される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。足場板は用いず、特許文献1と同様、両踏板で通路を形成するようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、かご3は2機であり、非常口装置4は各かご3に1台ずつ設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。かごは3機以上であってもよく、この場合、両隣りにかごが配置されるその間のかごについては、左右の側壁にそれぞれ非常口装置を設けるようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、非常口装置4は、かご3の側壁34に設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。非常口装置は、かごの後壁に設けられるものであってもよい。
【0051】
また、「矩形状」、「直線」、「中心」、「端部」、「一致」、「同じ」、「平行」、「直交」、「水平」、「鉛直」、といった形状、部位、状態又は方向を特定する用語は、本発明において、そのもののほか、それに近いないし類するという意味の「略」の概念も含むものである。
【符号の説明】
【0052】
1…エレベータ、2…昇降路、3…かご、3A…救出かご、3B…不具合かご、30…かご室、31…床、32…壁、33…前壁、34…側壁、35…後壁、36…出入口、37…扉、4…非常口装置、40…非常口、41…枠、42…縦枠、43…上枠、44…下枠、50…扉、50a…一側端部、50b…他側端部、51…ヒンジ、60…ロック機構部、60A…上部ロック機構部、60B…下部ロック機構部、65…ロック解除操作部、66…開口孔、70…踏板部、71…踏板、71a…リブ、72…架台、72a…リブ、73…ヒンジ、74…検出スイッチ、75…ロック機構部、76…プランジャブラケット、77…基部、78…円柱部材(制御部)、78a…孔(被係合部)、78b…外面、79…ピン(被係合部)、80…円弧部材(制御部)、80a…外面、83…インデックスプランジャ、84…基部、85…ピン(係合部)、86…バネ、87…リング(把持部)、88…スリーブ、88a…孔(係合部)、90…足場板
【要約】
【課題】非常口装置において踏板の開閉操作の操作性を向上することができるエレベータのかご及びエレベータを提供する。
【解決手段】踏板71を閉じた状態で固定するためのロック機構部75は、非常口の下縁部側の構成として、孔又はピンの一方で構成される被係合部78aを備え、踏板71側の構成として、孔又はピンの他方で構成される係合部85を備える。係合部85は、この中心線に沿って被係合部78a側に移動して被係合部78aとの凹凸係合が可能となる第1状態と、逆方向に移動して被係合部78aとの凹凸係合が解除可能となる第2状態とにスライド可能であり、しかも、踏板71を閉じた状態で第2状態から第1状態に切り替わるように構成される。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9