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  • 特許-エレベータの巻上機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】エレベータの巻上機
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/08 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B66B11/08 J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023129176
(22)【出願日】2023-08-08
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田平 尚己
(72)【発明者】
【氏名】阪東 和輝
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-056120(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016072(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用のロープを介して乗りかごを昇降させるエレベータの巻上機であって、
前記ロープを支持する綱車と、
前記綱車を制動するブレーキと、
前記綱車及び前記ブレーキを覆い、前記ロープが通過するロープ通過開口部が設けられるとともに、内部に空気を取り入れる吸気部を有するカバーと、を備え、
前記吸気部は、前記カバー内に送風する送風装置と、前記カバー内に導入される気流が通るフィルタと、を備える、エレベータの巻上機。
【請求項2】
前記カバーにおいて、前記ロープ通過開口部と前記吸気部とは、前記綱車及び前記ブレーキを挟んで反対側に位置する、請求項1に記載のエレベータの巻上機。
【請求項3】
前記カバー内の空間は、二つの空間に分かれており、
前記二つの空間には、それぞれ、前記ロープ通過開口部と前記吸気部とが配置されており、
前記ロープが前記カバーに入る側の前記ロープ通過開口部に対応した前記吸気部の吸気量の方が、前記ロープが前記カバーから出る側の前記ロープ通過開口部に対応した前記吸気部の吸気量よりも多い、請求項1又は請求項2に記載のエレベータの巻上機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキが設けられたエレベータの巻上機に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの巻上機は、例えば、図4に示すように、かごや釣合い錘を吊り下げるロープを支持する綱車902を備える(特許文献1)。また、綱車902には、モータが収容されたモータ筐体903、及び、ブレーキ(ディスクブレーキ等)を内部に収容したブレーキ筐体904a、904b等が設けられている。ここで、特許文献1には、綱車902から飛散する油がブレーキの制動面に付着して、巻上機901の性能低下をまねくことのないように油避けの庇板905a、905bを設けた構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-157662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、巻上機は、昇降路内に設置されることが多いため粉塵にさらされることがある。また、上記巻上機では、綱車やブレーキ部品(ブレーキディスク等)は、露出した状態となっているため、これらに粉塵が付着するおそれがある。これに対して、綱車及びブレーキ部品をカバーで覆うことが考えられる。しかし、カバーを備えた構成であってもこのカバー内にロープを通すために、カバーのうちロープが通る部分には開口部を設けておく必要があり、この開口部から粉塵がカバー内に入り込む可能性がある。
【0005】
本発明は、ロープが通る部分に開口が設けられたカバーを用いた場合であっても、カバー内部に粉塵が入り込むことを抑制できるエレベータの巻上機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエレベータの巻上機は、
駆動用のロープを介して乗りかごを昇降させるエレベータの巻上機であって、
前記ロープを支持する綱車と、
前記綱車を制動するブレーキと、
前記綱車及び前記ブレーキを覆い、前記ロープが通過するロープ通過開口部が設けられるとともに、内部に空気を取り入れる吸気部を有するカバーと、を備え、
前記吸気部は、前記カバー内に送風する送風装置と、前記カバー内に導入される気流が通るフィルタと、を備える。
【0007】
かかる構成によれば、吸気部からカバー内に空気を取り入れる際に、フィルタにより粉塵を除去することができ、ロープ通過開口部からはカバー内の空気が排出される。このように、粉塵が除去された空気を吸気部から導入してロープ通過開口部から排出するため、ロープ通過開口部からカバー内部に粉塵が入り込むことを抑制できる。
【0008】
前記エレベータの巻上機では、
前記カバーにおいて、前記ロープ通過開口部と前記吸気部とは、前記綱車及び前記ブレーキを挟んで反対側に位置してもよい。
【0009】
かかる構成によれば、粉塵が除去された空気を吸気部から導入してロープ通過開口部から排出する経路に、綱車及びブレーキが位置しているため、粉塵が綱車及びブレーキに付着することを抑制できる。
【0010】
前記エレベータの巻上機では、
前記カバー内の空間は、二つの空間に分かれており、
前記二つの空間には、それぞれ、前記ロープ通過開口部と前記吸気部とが配置されており、
前記ロープが前記カバーに入る側の前記ロープ通過開口部に対応した前記吸気部の吸気量の方が、前記ロープが前記カバーから出る側の前記ロープ通過開口部に対応した前記吸気部の吸気量よりも多くてもよい。
【0011】
かかる構成によれば、ロープの動く向き(乗りかごの上昇又は下降)に応じて、ロープがカバーに入る側のロープ通過開口部からより多くの空気を排出させることで、ロープの導入の影響によりロープ通過開口部からカバー内部に粉塵が入り込むことを抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上より、本発明によれば、ロープが通る部分に開口が設けられたカバーを用いた場合であっても、カバー内部に粉塵が入り込むことを抑制できるエレベータの巻上機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るエレベータの模式的な斜視図である。
図2図2は、前記エレベータの巻上機及びブレーキの模式的な正面図である。
図3図3は、変形例に係るエレベータの巻上機及びブレーキの模式的な正面図である。
図4図4は、従来のエレベータの巻上機及びブレーキの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図1図2を参照しつつ説明する。まず、本発明の一実施形態に係る巻上機を備えたエレベータを説明した後、巻上機の具体的な構成について説明する。
【0015】
図1に示すように、エレベータ1は、昇降路2に沿って移動可能な乗りかごCと、乗りかごCに接続されたロープ3と、ロープ3を駆動する巻上機4と、釣合い錘(カウンターウェイト)Wと、を備える。また、エレベータ1は、乗りかごCの運行等を制御する制御部5も備える。本実施形態では、巻上機4は、昇降路2の下部に配置されているが、昇降路2の上部等の別の箇所に配置されていてもよい。
【0016】
ロープ3は、乗りかごCと釣合い錘Wとを吊り下げるロープである。
【0017】
巻上機4は、駆動用のロープ3を介して乗りかごCを昇降させるエレベータの巻上機である。また、図2に示すように、巻上機4は、ロープ3を支持する綱車6と、綱車6を制動するブレーキ7と、を備える。さらに、巻上機4は、綱車6及びブレーキ7を覆うカバー8を備える。巻上機4は、綱車6を駆動するモータ、及び、綱車6が支持される支持部も備える。
【0018】
綱車6は、モータの回転子に接続されている。また、綱車6は、後述のブレーキディスク70にも接続されている。さらに、綱車6は、軸受を介して巻上機4の回動可能に支持されている。
【0019】
ブレーキ7は、例えば、ディスクブレーキである。本実施形態では、ブレーキ7は、綱車6とともに回転する円盤状のブレーキディスク70と、複数のクランパ71と、を備える。クランパ71は、三つ設けられているが、二つ、乃至、四つ以上の複数設けられてもよい。また、ブレーキ7は、綱車6の下方に配置されているが、別の位置(綱車6の上方等)に配置されていてもよい。
【0020】
カバー8は、綱車6及びブレーキ7を収容するカバー筐体80を有する。また、カバー8は、ロープ3が通過するロープ通過開口部81が設けられるとともに、内部に空気を取り入れる吸気部82を有する。
【0021】
カバー筐体80は、例えば、箱状の部材である。具体的には、カバー筐体80は、綱車6及びブレーキ7を正面、上方、下方、側方からそれぞれ覆う正面部800、上面部801、下面部802、及び、一対の側面部803、804を有する(図1及び図2参照)。正面部800、上面部801、下面部802、及び、一対の側面部803、804は、それぞれ、略矩形板状である。なお、カバー筐体80は、正面部800、上面部801、下面部802、及び、一対の側面部803、804に加えて、綱車6及びブレーキ7の背面を覆う背面部を有してもよい。また、カバー筐体80の形状は、他の形状(円筒部と円筒部の一方の開口部を塞ぐ円板部とを組み合わせた形状等)であってもよい。カバー筐体80は、金属板により形成されている。
【0022】
本実施形態のカバー筐体80では、図2に示すように、綱車6を覆う部分とブレーキ7を覆う部分とが一体となっているが、別部材であってもよい。なお、綱車6を覆う部材とブレーキ7を覆う部材とが別部材である場合、これらの部材の間にシールを設けて、これらの部材の隙間から粉塵がカバー筐体80の内部に入り込むことを抑えてもよい。
【0023】
ロープ通過開口部81は、カバー筐体80に形成された開口部である。
【0024】
吸気部82は、カバー8内に導入される気流が通るフィルタ83と、カバー8内に送風する送風装置84と、を備える。本実施形態では、フィルタ83及び送風装置84は、隣接して配置されている。また、フィルタ83及び送風装置84は、カバー筐体80に形成された開口部(吸気口)に配置されている。
【0025】
フィルタ83は、粉塵を除去するフィルタである。送風装置84は、フィルタ83の内側に設けられている。なお、送風装置84は、フィルタ83の外側に設けられていてもよい。また、送風装置84は、例えば、ファンであるが、カバー8の外部から内部に送風可能な装置であれば構成は問わない。
【0026】
かかる構成によれば、吸気部82からカバー8内に空気を取り入れる際に、フィルタ83により粉塵を除去することができ、ロープ通過開口部81からはカバー8内の空気が排出される。このように、粉塵が除去された空気を吸気部82から導入してロープ通過開口部81から排出するため、ロープ通過開口部81からカバー8内部に粉塵が入り込み軸受やブレーキ7の制動面に付着することを抑制できる。
【0027】
本実施形態では、ロープ通過開口部81は、カバー筐体80のロープ3がカバー8に入る側、ロープ3がカバー8から出る側で二つ設けられている。また、二つのロープ通過開口部81は、カバー筐体80の上面部801に形成されている。なお、巻上機4が昇降路2の上部に配置される場合、ロープ通過開口部81は、カバー筐体80の下面部802に配置される。
【0028】
本実施形態では、吸気部82は、カバー筐体80に一つ設けられている。具体的には、吸気部82は、カバー筐体80の一方の側面部803の下部に設けられている。このように、吸気部82が、カバー筐体80の側面部803や側面部804に設けられている場合、吸気部82のメンテナンスを、カバー8の側方から容易に行うことができる。
【0029】
本実施形態のカバー8において、ロープ通過開口部81と吸気部82とは、綱車6及びブレーキ7を挟んで反対側に位置する。具体的には、ロープ通過開口部81は、カバー8の上面部801に設けられ、吸気部82はカバー8の側面部803の下端部に設けられ、綱車6及びブレーキ7は、カバー8の上面部801と側面部803の下端部との間に配置されている。
【0030】
かかる構成によれば、粉塵が除去された空気を吸気部82から導入してロープ通過開口部81から排出する経路に、綱車6及びブレーキ7が位置しているため、粉塵が綱車6及びブレーキ7に付着することを抑制できる。
【0031】
また、カバー8のロープ通過開口部81は、ロープ3が通過可能な寸法よりも大きいサイズで形成することが好ましい。これは、例えば、巻上機4の据え付け後に綱車6が摩耗することで、据え付け時と比べて、乗りかごCの昇降の際にロープ3が揺れやすくなる(振動しやすくなる)可能性があるためである。なお、ロープ通過開口部81に、ロープ3とカバー筐体80との隙間を埋めるようなブラシやグラスウールを設けてもよい。
【0032】
本実施形態では、制御部5が、吸気部82の吸気量の制御を行う。また、吸気部82による吸気は、常時行われる。なお、吸気部82による吸気は、カバー8内の気流が維持される程度に間欠的に行われてもよい。また、吸気部82の吸気量は、一定であってもよいし、乗りかごCの昇降等に応じて変化させてもよい。
【0033】
この吸気部82の送風装置84は、綱車6を駆動するモータの電源により駆動されているが、別の電源装置(バッテリー)により駆動されてもよい。また、送風装置84の電流値をモニタリングし、この電流値が大きくなったときに吸気部82のフィルタ83を交換することとしてもよい。
【0034】
なお、本発明のエレベータの巻上機は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0035】
上記実施形態では、吸気部82は、カバー筐体80の一方の側面部803の下部に設けられていたが、吸気部82の位置は問わない。例えば、吸気部82は、カバー筐体80の下面部802に設けられていてもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、吸気部82は、カバー筐体80に一つ設けられていたが、図3に示すように複数(具体的には、二つ)設けられていてもよい。このカバー8では、カバー8内の空間は、二つの空間A1、A2に分かれている。具体的には、カバー8内の空間は、カバー筐体80の幅方向における中央に位置する壁部805により、空間A1、A2に分かれている。壁部805は、カバー本体80の正面部800の幅方向における中央からから裏面側に延びるとともに、上方から下方に延びている。また、綱車6は二つの空間A1、A2に跨って設けられている。
【0037】
二つの空間A1、A2には、それぞれ、ロープ通過開口部81と吸気部82とが配置されている。吸気部82は、カバー筐体80の一対の側面部803、804の下部にそれぞれ配置されている。さらに、ロープ3がカバー8に入る側のロープ通過開口部81に対応した吸気部82の吸気量の方が、ロープ3がカバー8から出る側のロープ通過開口部81に対応した吸気部82の吸気量よりも多く設定されている。
【0038】
かかる構成によれば、ロープ3の動く向き(乗りかごCの上昇又は下降)に応じて、ロープ3がカバー8に入る側のロープ通過開口部81からより多くの空気を排出させることで、ロープ3の導入の影響により(ロープ3につられて)ロープ通過開口部81からカバー8内部に粉塵が入り込むことを抑えることができる。また、ロープ3がカバー8から出る側のロープ通過開口部81に対応した吸気部82の吸気量を少なくすることで、吸気に要する電力を抑えることができる。
【0039】
上記実施形態では、フィルタ83及び送風装置84は、カバー筐体80に形成された開口部(吸気口)に隣接して配置されていたが、フィルタ83及び送風装置84は別の場所に配置されていてもよい。例えば、フィルタ83のみがカバー8内の下部に設けられた吸気口に配置され、送風装置84は、カバー8内の上部等に配置されていてもよい。
【0040】
上記実施形態では、ブレーキ7は、ディスクブレーキであったが、他のブレーキ(例えば、ドラム式ブレーキ等)であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…エレベータ、2…昇降路、3…ロープ、4…巻上機、5…制御部、6…綱車、7…ブレーキ、8…カバー、70…ブレーキディスク、71…クランパ、80…カバー筐体、81…ロープ通過開口部、82…吸気部、83…フィルタ、84…送風装置、800…正面部、801…上面部、802…下面部、803、804…側面部、805…壁部、901…巻上機、902…綱車、903…モータ筐体、904a、904b…ブレーキ筐体、905a、905b…庇板、A1、A2…空間、C…乗りかご、W…釣合い錘
【要約】
【課題】ロープが通る部分に開口が設けられたカバーを用いた場合であっても、カバー内部に粉塵が入り込むことを抑制できるエレベータの巻上機を提供する。
【解決手段】本発明は、駆動用のロープを介して乗りかごを昇降させるエレベータの巻上機であって、前記ロープを支持する綱車と、前記綱車を制動するブレーキと、前記綱車及び前記ブレーキを覆い、前記ロープが通過するロープ通過開口部が設けられるとともに、内部に空気を取り入れる吸気部を有するカバーと、を備え、前記吸気部は、前記カバー内に送風する送風装置と、前記カバー内に導入される気流が通るフィルタと、を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4