(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】支持システム及び支持方法
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20240229BHJP
F16F 15/023 20060101ALI20240229BHJP
F16F 9/08 20060101ALI20240229BHJP
F16F 7/01 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F16F15/02 J
F16F15/023 Z
F16F9/08
F16F7/01
(21)【出願番号】P 2020022097
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000145954
【氏名又は名称】株式会社昭電
(73)【特許権者】
【識別番号】520052042
【氏名又は名称】株式会社ナウエストテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 正人
(72)【発明者】
【氏名】村井 和男
(72)【発明者】
【氏名】今西 圭一
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-035772(JP,B1)
【文献】特開2009-254530(JP,A)
【文献】特開2001-231665(JP,A)
【文献】特開2016-007350(JP,A)
【文献】中国特許第108378623(CN,B)
【文献】特開2011-161051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
F16F 15/023
F16F 9/08
F16F 7/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動材料を収容可能な容器であって、前記流動材料の上面のうち当該上面の外縁から離れている対象領域の上に対象物が置かれる容器と、
前記流動材料の上面において前記対象領域をその周囲の領域よりも沈ませる沈降装置と、
を有しており、
前記容器は、前記流動材料の上面を覆い、前記対象物が載置される可撓性の上面シートを有している
支持システム。
【請求項2】
前記上面シートは伸縮性を有している
請求項1に記載の支持システム。
【請求項3】
流動材料を収容可能な容器であって、前記流動材料の上面のうち当該上面の外縁から離れている対象領域の上に対象物が置かれる容器と、
前記流動材料の上面において前記対象領域をその周囲の領域よりも沈ませる沈降装置と、
を有しており、
前記沈降装置は、前記容器のうち前記流動材料の上面よりも下方の部分の容積を大きくし、このとき、前記対象領域下の容積の、前記対象領域の単位面積当たりの増加量を、前記周囲の領域下の容積の、前記周囲の領域の単位面積当たりの増加量よりも大きくする
支持システム。
【請求項4】
流動材料を収容可能な容器であって、前記流動材料の上面のうち当該上面の外縁から離れている対象領域の上に対象物が置かれる容器と、
前記流動材料の上面において前記対象領域をその周囲の領域よりも沈ませる沈降装置と、
を有しており、
前記容器は、当該容器の底部のうち前記対象領域の直下にて上下に開口している開口を有しており、
前記沈降装置は、前記開口に挿通されており、上下に移動可能な進退部材を有している
支持システム。
【請求項5】
前記容器は、前記進退部材と前記流動材料との間に介在するとともに前記開口を塞いでいる、伸縮性の下面シートを有している
請求項4に記載の支持システム。
【請求項6】
流動材料を収容可能な容器であって、前記流動材料の上面のうち当該上面の外縁から離れている対象領域の上に対象物が置かれる容器と、
前記流動材料の上面において前記対象領域をその周囲の領域よりも沈ませる沈降装置と、
を有しており、
前記容器は、当該容器の底部のうち少なくとも前記対象領域の直下の領域を構成している可撓性の下面シートを有しており、
前記沈降装置は、前記下面シートのうちの一部である所定部位を所定高さにおいて支持して前記下面シートの撓みを規制している状態と、前記所定部位を前記所定高さよりも下降させた状態との間で遷移可能な規制部材を有している
支持システム。
【請求項7】
前記所定部位に固定されている錘を更に有しており、
前記規制部材は、前記錘を支持している状態と、前記錘を支持していない状態との間で遷移する
請求項6に記載の支持システム。
【請求項8】
流動材料を収容可能な容器であって、前記流動材料の上面のうち当該上面の外縁から離れている対象領域の上に対象物が置かれる容器と、
前記流動材料の上面において前記対象領域をその周囲の領域よりも沈ませる沈降装置と、
を有しており、
前記容器は、前記対象領域の直下の領域を構成している可撓性の下面シートを有しており、
前記沈降装置は、前記下面シートを第1面積に亘って支持する第1位置と、前記第1位置から水平方向において前記下面シートの外側へ移動して前記下面シートを前記第1面積よりも小さい第2面積で支持する第2位置との間で移動可能なスライダを有している
支持システム。
【請求項9】
前記下面シートが伸縮性を有している
請求項6~8のいずれか1項に記載の支持システム。
【請求項10】
流動材料を収容可能な容器であって、前記流動材料の上面のうち当該上面の外縁から離れている対象領域の上に対象物が置かれる容器と、
前記流動材料の上面において前記対象領域をその周囲の領域よりも沈ませる沈降装置と、
を有しており、
前記沈降装置は、前記流動材料の一部を前記容器の外部へ排出させる
支持システム。
【請求項11】
流動材料を収容可能な容器であって、前記流動材料の上面のうち当該上面の外縁から離れている対象領域の上に対象物が置かれる容器と、
前記流動材料の上面において前記対象領域をその周囲の領域よりも沈ませる沈降装置と、
を有しており、
前記沈降装置は、所定の規定部材の移動を規制することによって前記対象領域がその周囲の領域に対して沈むことを規制しているとともに、前記容器の振動に伴って生じる力を利用して前記規制を解除する作動装置を有している
支持システム。
【請求項12】
前記沈降装置は、電力が供給されることによって、前記対象領域をその周囲の領域よりも沈ませる動作の規制及び実行の少なくとも一方を行う駆動部を有している
請求項1~10のいずれか1項に記載の支持システム。
【請求項13】
流動材料を収容可能な容器と、
前記容器のうち所定高さ以下の部分の容積を大きくする沈降装置と、
を有しており、
前記沈降装置は、前記容器の前記所定高さにおける水平な断面のうち当該断面の外縁から離れている一部を対象領域としたときに、前記対象領域下の容積の、前記対象領域の単位面積当たりの増加量を、前記対象領域の周囲の領域下の容積の、前記周囲の領域の単位面積当たりの増加量よりも大きくする
支持システム。
【請求項14】
前記流動材料が複数の粒状固体を有している
請求項1~13のいずれか1項に記載の支持システム。
【請求項15】
容器に収容されている流動材料の上面のうち当該上面の外縁から離れている対象領域の上に対象物を置くステップと、
前記容器のうち前記流動材料の上面よりも下方の部分の容積を大きくし、このとき、前記対象領域下の容積の、前記対象領域の単位面積当たりの増加量を、前記
対象領域の周囲の領域下の容積の、前記周囲の領域の単位面積当たりの増加量よりも大きくして、前記対象物を前記流動材料に沈ませる、又は前記流動材料の一部を前記容器の外部へ排出させ、前記対象物を前記流動材料に沈ませるステップと、
を有している支持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象物が載置される支持システム及び対象物を載置するための支持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を振動から保護するシステムが知られている(例えば特許文献1)。例えば、地震が生じたときに建築物内の種々の物品が損傷する蓋然性を低減するためのシステムが知られている。特許文献1では、対象物(例えば什器)をキャスターによって支持することによって免震効果を得ている。また、特許文献1では、対象物と支持構造物(例えば建築物)とに連結され、両者の間の相対変位を抑制する減衰力を生じる摩擦機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象物を振動から保護できる支持システム及び支持方法が提供されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る支持システムは、流動材料を収容可能な容器であって、前記流動材料の上面のうち当該上面の外縁から離れている対象領域の上に対象物が置かれる容器と、前記流動材料の上面において前記対象領域をその周囲の領域よりも沈ませる沈降装置と、を有している。
【0006】
一例において、前記支持システムは、前記流動材料が複数の粒状固体を有している。
【0007】
一例において、前記容器は、前記流動材料の上面を覆い、前記対象物が載置される可撓性の上面シートを有している。
【0008】
一例において、前記上面シートは伸縮性を有している。
【0009】
一例において、前記沈降装置は、前記容器のうち前記流動材料の上面よりも下方の部分の容積を大きくする。
【0010】
一例において、前記沈降装置は、前記対象領域下の容積の、前記対象領域の単位面積当たりの増加量を、前記周囲の領域下の容積の、前記周囲の領域の単位面積当たりの増加量よりも大きくする。
【0011】
一例において、前記容器は、当該容器の底部のうち前記対象領域の直下にて上下に開口している開口を有しており、前記沈降装置は、前記開口に挿通されており、上下に移動可能な進退部材を有している。
【0012】
一例において、前記容器は、前記進退部材と前記流動材料との間に介在するとともに前記開口を塞いでいる、伸縮性の下面シートを有している。
【0013】
一例において、前記容器は、当該容器の底部のうち少なくとも前記対象領域の直下の領域を構成している可撓性の下面シートを有しており、前記沈降装置は、前記下面シートのうちの一部である所定部位を所定高さにおいて支持して前記下面シートの撓みを規制している状態と、前記所定部位を前記所定高さよりも下降させた状態との間で遷移可能な規制部材を有している。
【0014】
一例において、前記支持システムは、前記所定部位に固定されている錘を更に有しており、前記規制部材は、前記錘を支持している状態と、前記錘を支持していない状態との間で遷移する。
【0015】
一例において、前記容器は、前記対象領域の直下の領域を構成している可撓性の下面シートを有しており、前記沈降装置は、前記下面シートを第1面積に亘って支持する第1位置と、前記第1位置から水平方向において前記下面シートの外側へ移動して前記下面シートを前記第1面積よりも小さい第2面積で支持する第2位置との間で移動可能なスライダを有している。
【0016】
一例において、前記下面シートが伸縮性を有している。
【0017】
一例において、前記沈降装置は、前記流動材料の一部を前記容器の外部へ排出させる。
【0018】
一例において、前記沈降装置は、所定の規定部材の移動を規制することによって前記対象領域がその周囲の領域に対して沈むことを規制しているとともに、前記容器の振動に伴って生じる力を利用して前記規制を解除する作動装置を有している。
【0019】
一例において、前記沈降装置は、電力が供給されることによって、前記対象領域をその周囲の領域よりも沈ませる動作の規制及び実行の少なくとも一方を行う駆動部を有している。
【0020】
本開示に係る別の観点の支持システムは、流動材料を収容可能な容器と、前記容器のうち所定高さ以下の部分の容積を大きくする沈降装置と、を有しており、前記沈降装置は、前記容器の前記所定高さにおける水平な断面のうち当該断面の外縁から離れている一部を対象領域としたときに、前記対象領域下の容積の、前記対象領域の単位面積当たりの増加量を、前記対象領域の周囲の領域下の容積の、前記周囲の領域の単位面積当たりの増加量よりも大きくする。
【0021】
本開示に係る支持方法は、容器に収容されている流動材料の上面のうち当該上面の外縁から離れている対象領域の上に対象物を置くステップと、前記容器のうち前記流動材料の上面よりも下方の部分の容積を大きくし、前記対象物を前記流動材料に沈ませる、又は前記流動材料の一部を前記容器の外部へ排出させ、前記対象物を前記流動材料に沈ませるステップと、を有している。
【発明の効果】
【0022】
上記の構成又は手順によれば、対象物を振動から保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る支持システムの外観を示す模式的な斜視図。
【
図5】
図5(a)~
図5(c)は作動装置の変形例を示す模式図。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は第2実施形態に係る支持システムの構成を示す模式的な断面図。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は第3実施形態に係る支持システムの構成を示す模式的な断面図。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は第4実施形態に係る支持システムの構成を示す模式的な断面図。
【
図9】
図9(a)及び
図9(b)は第5実施形態に係る支持システムの構成を示す模式的な断面図。
【
図10】
図10(a)及び
図10(b)は第6実施形態に係る支持システムの構成を示す模式的な断面図。
【
図11】
図11(a)及び
図11(b)は第7実施形態に係る支持システムの構成を示す模式的な断面図。
【
図12】
図11(a)及び
図11(b)は第8実施形態に係る支持システムの構成を示す模式的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態に係る支持システムについて、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。また、細部は省略されることがある。
【0025】
第2実施形態以降の説明においては、基本的に先に説明された構成との相違点についてのみ述べる。特に言及が無い事項については、先に説明された構成と同様とされたり、先に説明された構成から類推されたりしてよい。複数の実施形態において互いに対応する構成については、具体的な構成が異なる場合においても、同じ符号を付すことがある。
【0026】
<第1実施形態>
(支持システムの概要)
図1は、第1実施形態に係る支持システム1の構成を示す斜視図である。
図2(a)、
図2(b)、
図3(a)及び
図3(b)は、
図1のII-II線における断面図である。これらの図において、紙面上方は、鉛直上方である。
図1及び
図2(a)は、振動(例えば地震)が生じていない状態を示している。
図2(b)は、振動が生じ始めたときの状態を示している。
図3(a)は、振動が生じているときの状態を示している。
図3(b)は、振動が終わり、
図2(a)の状態に復帰する途中の状態を示している。
【0027】
支持システム1は、支持体101(
図2(a)に模式的に示す)に支持されるとともに、対象物103を支持している。支持体101及び対象物103は任意のものとされてよい。例えば、支持体101は、家屋又は博物館等の建築物とされてもよいし、建築物の床面等に設置された展示用のテーブルであってもよい。また、例えば、対象物103は、陶器、ガラス器、彫刻、食器、工芸品又は美術品とされてよい。実施形態の図面では、花瓶が例示されている。支持システム1は、地震等によって支持体101に振動が生じたときに、対象物103が支持体101に直接に載置されていた場合等に比較して、対象物103が損傷する蓋然性を低減することに寄与する。
【0028】
より具体的には、支持システム1は、
図2(a)~
図3(b)に示すように、流動材料3と、流動材料3を収容している容器5と、容器5のうち流動材料3の上面(例えば振動前の
図2(a)の状態における上面)よりも下方における部分(容積可変部S)の容積を大きくする沈降装置7とを有している。流動材料3は、図示の例では、複数の粒状固体9(
図4(a)参照)によって構成されているか、比較的粘度が高い流体によって構成されている。沈降装置7は、図示の例では、容器5の底部5aから容器5内に突出している進退部材17を下降させることによって容積可変部Sの容積を大きくする。この他、支持システム1は、容器5及び沈降装置7を保持する保持部11を有していてもよい。
【0029】
図2(a)に示すように、通常(振動が生じていないとき)、対象物103は、流動材料3の上面のうちの一部(対象領域3a)の上に置かれている。対象領域3aは、流動材料3の上面の外縁(別の観点では容器5の内周面)から離れている。
図2(b)及び
図3(a)に示すように、支持体101に振動が生じると、沈降装置7は、進退部材17を下降させて、流動材料3の上面よりも下方において容器5の容積を大きくする。その結果、流動材料3の上面においては、流動材料3の重さ及び/又は対象物103の重さによって、対象領域3aは、その周囲の領域よりも沈む。ひいては、対象物103は、流動材料3内に沈み込む。
【0030】
対象物103は、例えば、流動材料3内に沈み込みつつ、流動材料3にもたれ掛かるように傾斜する。別の観点では、対象物103は、ソフトに転倒して安定な状態となる。その結果、例えば、通常の展示用のテーブルに対象物103が載置されている場合等に比較して、対象物103の転倒に伴う損傷が生じる蓋然性を低減することができる。また、対象物103の転倒後の移動は、流動材料3によって規制されるから、対象物103がテーブル上を移動して損傷したり、移動に伴って周囲の物品と衝突して損傷したりする蓋然性も低減される。
【0031】
振動が終わった後は、
図3(b)に示すように、支持システム1は、
図2(a)の状態に復帰される。例えば、一旦、対象物103を支持システム1から取り出し、進退部材17を元の位置に戻す。これに伴って、流動材料3の上面は元の平らな状態に近づく、若しくは戻る。進退部材17を元の位置に戻してから流動材料3の上面を平らに成形する作業が適宜に行われてもよい。その後、対象物103が流動材料3の上に載置される。
【0032】
以下、支持システム1の各部の詳細について述べる。
【0033】
(保持部の構成及び支持システムの設置)
保持部11の構成は任意である。例えば、保持部11は、筐体状とされていてもよいし、骨組状とされていてもよい。図示の例では、保持部11は、筐体状とされており、支持体101に載置される板状の底部13と、底部13から立ち上がる板状の壁部15とを有している。壁部15のうち上方側の部分は、容器5の壁部5bを構成している。底部13及び壁部15によって囲まれる空間のうち下方側の部分は、沈降装置7のうち少なくとも一部を収容している。
【0034】
図示の例では、容器5及び沈降装置7は、保持部11によって共に保持されているから、共に運搬されて設置される。図示の例とは異なり、容器5及び沈降装置7は、別個に支持体101に設置される態様であっても構わない。図示の例では、支持システム1は、支持体101の上面に載置されて下方から支持されている。図示の例とは異なり、支持システム1は、壁部15が建築物の壁面に固定されることなどによって、側方から支持されていても構わない。また、支持システム1は、免震支承を介して支持体101に支持されていても構わない。
【0035】
支持システム1において、保持部11等の実用上剛体と捉えられる部材の材料は、任意の材料とされてよい。例えば、剛体としての材料は、金属、硬質の樹脂、繊維強化プラスチック若しくは木材又はこれらの組み合わせとされてよい。また、そのような剛体の部材は、対象物103と当接したときに対象物103を保護する等の目的で、弾性材料が表面の一部又は全部に配置されてもよい。例えば、容器5の壁部5bの上端及び進退部材17の上面等に弾性材料が配置されてもよい。以下の説明では、実用上剛体として扱われている部材(進退部材17等)の材料について、説明を省略することがある。
【0036】
(流動材料)
図4(a)は、
図2(a)の領域IVaの拡大図である。
【0037】
流動材料3は、流れ動くことが可能な材料である。換言すれば、流動材料3は、一定の体積(ただし、圧縮可能であってもよい)を有するが、一定の形状を有さない材料である。そのような材料としては、例えば、複数の粒状固体からなるもの、液体及び気体を挙げることができる。なお、流動材料のうち、液体及び気体を流体ということがある。流動材料3の流動性(例えば粘度)は、適宜に設定されてよい。ただし、実施形態の説明では、流動材料3が複数の粒状固体からなる態様、及び/又は流動材料3の粘度が比較的高い態様を想定した説明がなされることがある。
【0038】
図4(a)の例では、流動材料3は、複数の粒状固体9を含んで構成されている。複数の粒状固体9の材料、形状及び径は適宜に設定されてよい。具体例を挙げると、複数の粒状固体9として、いわゆるビーズクッションに用いられているビーズが用いられてもよい。また、複数の粒状固体9として、発泡プラスチックからなり、梱包材に用いられている粒状固体又はこれを更に細かくしたものが用いられてもよい。また、複数の粒状固体9として、自然の又は人工の砂が用いられてもよい。
【0039】
粒状固体9の材料の密度(各粒状固体9の密度)は、対象物103として想定されている物の密度と比較して、低くてもよいし、同等でもよいし、高くてもよい。ただし、粒状固体9の材料の密度が低い方が、対象物103を沈み込ませることが容易である。また、粒状固体9の硬度は、対象物103として想定されている物の材料の硬度と比較して、低くてもよいし、同等でもよいし、高くてもよい。粒状固体9の材料としては、例えば、樹脂を挙げることができる。樹脂は、既述のように、体積の90%以上に空気を含む発泡性のものであってもよい。
【0040】
粒状固体9の形状は、球形であってもよいし、球形でなくてもよい。後者としては、扁平な形状(例えば円盤状)、所定方向に長い形状(例えば長球状又は円柱状)、角部を有する形状、及び平面を有する形状を挙げることができる。また、粒状固体9は、中空状であってもよいし、空洞を有さない中実状であってもよい。中空状の場合、その内部は、密閉されていてもよいし、密閉されていなくてもよい。
【0041】
粒状固体9の径は、上記の砂の例から理解されるように比較的小さくてもよい。また、粒状固体9の径は、上記のビーズ又は梱包材の例から理解されるように、比較的大きくてもよい。また、粒状固体9の径は、対象物103として想定されている物の大きさと、上述した対象物103を沈み込ませる作用とを考慮して適宜に設定されてよい。例えば、対象物103が比較的大きい場合においては、粒状固体9の径が比較的大きくても、対象物103を沈み込ませる作用が得られる。一例を挙げると、粒状固体9の径(球形でない場合は例えば最大径)は、50μm以上、100μm以上、1mm以上又は5mm以上とされてよく、また、10cm以下、5cm以下、1cm以下、5mm以下又は1mm以下とされてよく、前記の下限と上限とは、矛盾しない限り、適宜に組み合わされてよい。これまでの説明からも理解されるように、ここでの粒状は、粉状も含む広義の意味であり、また、粒状固体は粒子と言い換えることができる。
【0042】
特に図示しないが、流動材料3は、既述のように、流体(液体又は気体)であってもよい。流体の粘度、密度及びその他の性質は任意である。液体としては、例えば、水及び溶液を挙げることができる。気体としては、例えば、空気及び窒素を挙げることができる。流体は、例えば、粘度が比較的高くされたものとされてよい。例えば、保冷剤のように、増粘剤(例えば高吸水性高分子)が添加された水によって流動材料3が構成されていてもよい。また、流動材料3は、複数の粒状固体9に加えて液体を含んだものとされてもよい。例えば、流動材料3は、粒状固体9同士の摩擦抵抗を低減する、又は増加させる目的の液体を含んでいてもよい。また、例えば、流動材料3は、砂と、振動に伴って砂を液状化させる液体とを含んでいてもよい。流動材料3は、繰り返し使用されるものであってもよいし(本実施形態の例)、使い捨てにされるものであってもよい。
【0043】
(容器)
容器5の形状及び大きさは任意である。
図1では、容器5が直方体状である態様が例示されている。図示の例とは異なり、容器5は、例えば、平面視において円形であってもよいし、矩形以外の多角形であってもよい。また、容器5の壁面は、鉛直な平面状でなくてもよく、例えば、容器5の上方側又は下方側が拡径する向きに傾斜していてもよい。容器5の底面も、水平な平面状に限らず、水平面に傾斜していたり、曲面であったりしてよい。容器5は、平面視において縦横の長さが同等であってもよいし、所定方向に長くてもよい。容器5の径(水平方向)と深さとの関係も任意であり、いずれが他方よりも大きくてもよい。容器5の形状と、対象物103として想定されている物の形状との対応関係も任意である。図示の例では、容器5の上端に流動材料3の上面(振動前)が位置している。図示の例とは異なり、容器5の上端は、流動材料3の上面よりも上方に位置していてもよい。
【0044】
容器5の内壁面の上端側部分が成す開口(別の観点では流動材料3の上面)の大きさは、対象物103として想定されている物の少なくとも下方側部分を沈み込ませることが可能な大きさとされている。別の観点では、容器5の大きさは、対象物103として想定されている物の大きさに応じて適宜に設定されてよい。例えば、容器5の上方側部分の開口は、少なくとも振動前の状態における対象物103の下方への投影面積よりもいずれの方向へも広くされている。また、例えば、容器5の上方側部分の開口は、想定される量で対象物103が流動材料3に沈み込みつつ傾いたとき、対象物103と容器5とが当接しないように比較的広くされてもよい。
【0045】
図2(a)~
図3(b)に示すように、容器5は、例えば、底部5aと、底部5aから立ち上がる壁部5b(壁部13の一部)とを有している。底部5aには、沈降装置7の進退部材17が挿通される開口5hが形成されている。図示の例とは異なり、容器5は、下方側ほど縮径する曲面状とされることによって、壁部5bと底部5aとの境界が不明瞭であってもよい。また、容器5は、進退部材17が挿通されている開口5hまで壁部5bが縮径する形状とされていてもよい。この場合は、容器5の下方側部分のうちの開口5hの周囲部分が底部5aと概念されてよい。底部5a及び壁部5bは、実用上剛体とみなせる材料によって構成されている。なお、進退部材17を容器5の一部と捉えることも可能である。
【0046】
(容器の上面シート)
図4(a)に示すように、容器5は、流動材料3の上面を覆う可撓性の上面シート19を有していてもよい。上面シート19が配置されることによって、例えば、流動材料3が容器5の外部へ飛び出る蓋然性を低減したり、流動材料3の対象物103に対する接触に起因する損傷若しくは汚れが生じる蓋然性を低減したり、及び/又は流動材料3に要求される粘性を低下させたりできる。図示の例とは異なり、容器5は、上面シート19を有さなくてもよい。
【0047】
念のために記載すると、可撓性(フレキシビリティ)は、例えば、殆ど力を要せずに折り曲げ等が可能な柔軟な性質のことである。上面シート19が設けられている場合、対象物103は、直接的には流動材料3内に沈み込まない。ただし、本開示においては、特に断りが無い限り、上面シート19が対象物103と流動材料3との間に介在していても、対象物103が流動材料3に沈み込むと表現するものとする。
【0048】
上面シート19の構成及び/又は取付けは、流動材料3の上面が沈むことに伴って下方へ撓むことが可能又は容易なものとされている。例えば、上面シート19は、その一部又は全部が伸縮性を有する材料によって構成されてよい。また、例えば、上面シート19は、その外周側部分が弾性部材を介して容器5の壁部5bの上端に固定されてよい。また、例えば、上面シート19は、容器5の壁部5bの上端開口よりも広い面積を有しており、
図2(a)の状態では、適宜な位置に皺を有してよい。また、例えば、上面シート19は、その外周側部分が容器5の壁部5bに固定されておらず、単に流動材料3の上面に載置されているだけであってもよい。
【0049】
上面シート19の材料は、可撓性を有する適宜なものとされてよい。例えば、可撓性を有する材料としては、軟質の樹脂又は布(織布又は不織布)を挙げることができる。なお、上面シート19は、一部に可撓性を有さない部分を含んでいてもよい。ただし、この場合は、上面シート19として把握される部材の範囲の定義の問題に過ぎないと考えてもよい。上面シート19の可撓性の程度及び厚さ等は適宜に設定されてよい。
【0050】
上面シート19がその一部又は全部に伸縮性を有する場合、当該伸縮性は、材料自体によって実現されてもよいし、構造によって実現されてもよいし、両者の組み合わせによって実現されてもよい。例えば、伸縮性を実現する材料としては、弾性材料を挙げることができる。弾性材料は、例えば、熱硬化性エラストマー(いわゆるゴム)又は熱可塑性エラストマー(狭義のエラストマー)である。熱硬化性エラストマーは、例えば、加硫ゴム(狭義のゴム)又は熱硬化性樹脂系エラストマーである。伸縮性を実現する構造としては、例えば、伸縮可能な衣類(例えばストッキング)に利用されているような繊維の編み方に係る構造を挙げることができる。
【0051】
上面シート19の可撓性(及び伸縮性)以外の性質は、上面シート19の用途及び流動材料3の具体的な種類等に応じて適宜に設定されてよい。例えば、上面シート19は、水若しくは気体に対する遮蔽性を有していてもよいし、有していなくてもよい。液体若しくは気体に対する遮蔽性を有さない態様としては、例えば、上面シート19が布(織布又は不織布)である態様、及び網状である態様を挙げることができる。網状の網目は、例えば、複数の粒状固体9の最大径又は平均径よりも小さくされる。
【0052】
上面シート19(例えばその外周側部分)が容器5の剛体部分(例えば壁部5b)に対して固定される場合において、その固定の態様は、上面シートの19の用途及び流動材料3の具体的な種類等に応じて適宜に設定されてよい。例えば、上面シート19は、容器5の壁部5bが構成する開口の周方向に沿って配列された複数の固定具(例えばねじ)によって、壁部5bに対して離散的に固定されてよい。また、例えば、壁部5bに対して全周に亘って配置された接着剤、若しくは壁部5bの外周面を囲むように配置された締結具(例えば紐若しくは雌ねじを有するリング)によって、壁部5bに対して連続的に固定されてもよい。固定の態様は、流動材料3又は液体若しくは気体に対する密閉性を保つようなものであってもよいし、密閉性を保たないものであってもよい。
【0053】
(容器の底部)
図4(b)は、
図3(a)の領域IVbの拡大図である。
【0054】
既述のように、容器5の底部5aには、沈降装置7の進退部材17が挿通される開口5hが形成されている。この開口5hは、その一部又は全部に伸縮性を有する可撓性の下面シート21によって塞がれていてもよい。下面シート21が設けられることによって、例えば、流動材料3が容器5の開口5hと進退部材17との隙間から落下する蓋然性を低減したり、及び/又は流動材料3が開口5hと進退部材17との隙間に詰まって進退部材17の動作性が低下する蓋然性を低減したりできる。図示の例とは異なり、容器5は、下面シート21を有さなくてもよい。
【0055】
なお、下面シート21は、底部5aの一部として捉えられてもよい。この場合、底部5aのうち開口5hを有する剛体からなる部分を底部本体5aaと概念してもよい。下面シート21が設けられている場合、進退部材17は、直接的に流動材料3内に入り込まない。ただし、本開示においては、特に断りが無い限り、進退部材17と流動材料3との間に下面シート21が介在する場合においても、進退部材17が流動材料3内に入り込むと表現するものとする。
【0056】
下面シート21の伸縮性(可撓性を含む)は、上面シート19の伸縮性と同様に、適宜に実現されてよい。例えば、伸縮性は、材料自体によって実現されてもよいし、構造によって実現されてもよいし、両者の組み合わせによって実現されてもよい。これらの具体例については、上面シート19の説明で述べたとおりである。
【0057】
下面シート21の伸縮性以外の性質は、下面シート21の用途及び流動材料3の具体的な種類等に応じて適宜に設定されてよい。例えば、下面シート21は、上面シート19と同様に、水若しくは気体に対する遮蔽性を有していてもよいし、有していなくてもよい。液体若しくは気体に対する遮蔽性を有さないシートの例は、上面シート19の説明で述べたとおりである。また、下面シート21の素材(材料及び構造の組み合わせ)は、上面シート19の素材と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0058】
下面シート21は、一部又は全部に可撓性及び/又は伸縮性を有さない部分を含んでいてもよい。例えば、進退部材17の上面に当接する部分は、板(剛体とみなせる材料)によって構成されていてもよい。ただし、この場合は、上面シート19と同様に、下面シート21として把握される部材の範囲の定義の問題に過ぎないと考えてもよい。
【0059】
下面シート21(例えばその外周側部分)の、容器5の剛体部分(例えば底部本体5aa)に対する固定の態様は、下面シート21の用途及び流動材料3の具体的な種類等に応じて適宜に設定されてよい。例えば、下面シート21は、開口5hを容器5の内部側から塞ぐように固定されてもよいし(図示の例)、開口5hを外部側から塞ぐように固定されてもよい。この他、上面シート19の固定の態様で述べた説明が適宜に援用されてよい。例えば、下面シート21は、開口5hの周方向に沿って配列された複数の固定具(例えばねじ)によって、底部本体5aaに対して離散的に固定されてよい。また、例えば、下面シート21は、開口5hの全周に亘って配置された接着剤、若しくは壁部5bの外周面を囲むように配置された締結具によって、底部本体5aaに対して連続的に固定されてもよい。固定の態様は、流動材料3又は液体若しくは気体に対する密閉性を保つようなものであってもよいし、密閉性を保たないものであってもよい。
【0060】
(沈降装置)
図2(a)~
図3(b)に示すように、沈降装置7は、既述の進退部材17と、進退部材17を移動させる作動装置23とを有している。
【0061】
(進退部材)
進退部材17が挿通される開口5hは、容器5の底部5aにて上下に開口している。進退部材17は、開口5hに挿通されており、上下方向に移動可能である。進退部材17のうち、少なくも振動前(
図2(a))において容器5内に位置する部分を本体17aというものとする。本体17aの水平な横断面の形状及び大きさは、例えば、開口5hの形状及び大きさと概略同様とされてよい。本体17aの横断面の形状及び大きさの説明と、開口5hの形状及び大きさの説明とは、適宜に相互に援用されてよい。
【0062】
流動材料3の上面を平面透視したとき、進退部材17の本体17aは、流動材料3の上面の対象領域3a(別の観点では対象物103)に重なっている。換言すれば、本体17aは、流動材料3の上面全体に重なっていない。なお、ここでの説明とは異なり、流動材料3の上面(若しくは容器5の壁部5bによって構成される開口面)のうち、平面透視において本体17aに重なる領域を対象領域3aと定義してもよい。
【0063】
進退部材17の形状及び大きさは、容器5の形状及び大きさ、並びに対象物103として想定されている物の形状及び大きさ等に応じて適宜に設定されてよい。図示の例では、進退部材17の本体17aは、移動方向(ここでは上下方向)を軸方向とする概略直柱状とされている。すなわち、移動方向に直交する横断面の形状及び大きさは、移動方向の位置によらずに一定である。また、本体17aは、平面状の上面を有している。本体17aの横断面(上面)の形状は、円形、楕円形又は多角形(例えば矩形)等の適宜な形状とされてよい。
図4(b)に示すように、進退部材17の上面側の角部は平面又は曲面によって面取りされていてもよい。これにより、例えば、進退部材17の表面と下面シート21との摺動性が向上する。
【0064】
図示の例とは異なり、進退部材17の本体17aは、直柱状でなくてもよいし、平面状の上面を有していなくてもよい。例えば、本体17aのうち進退部材17が下限に位置する状態でも容器5内に位置している部分は、先端側ほど細くなるドーム状又は錐体状とされてもよい。
【0065】
進退部材17を下方へ移動させたときの容器5の体積の増加量は、進退部材17の本体17aの水平な横断面の面積と進退部材17の移動量(
図2(a)に示す上限から
図3(a)に示す下限の位置までの距離)とによって規定される。この体積は、例えば、対象物103として想定されている物を流動材料3に沈み込ませたい体積に対して、概略同等か、若干大きくされてよい。また、別の観点では、例えば、本体17aの横断面の面積及び移動量それぞれは、対象物103として想定されている物の横断面の面積及び沈み込ませたい深さそれぞれに対して、概略同等か、若干大きくされてよい。
【0066】
進退部材17において、下降開始前の位置(
図2(a)、上昇限)及び下降完了時の位置(
図3(a)、下降限)は、適宜に設定されてよい。図示の例では、上昇限及び下降限のいずれも、進退部材17の上面が開口5hよりも上方に位置する位置である。図示の例とは異なり、上昇限及び下降限の双方、又は下降限は、進退部材17の上面が開口5hよりも下方に位置する位置であってもよい。図示の例では、進退部材17が上昇限にあるとき、進退部材17の上面は、流動材料3の上面(別の観点では上面シート19)よりも下方に位置している。従って、進退部材17の上面と、対象物103との間には流動材料3が介在している。
【0067】
(作動装置)
作動装置23は、外部からの操作を受けずに、容器5のうち流動材料3の上面よりも下方の部分(容積可変部S)の容積を大きくする動作を開始するように構成されている。すなわち、作動装置23は、パッシブ制御を行う。例えば、作動装置23は、進退部材17の容器5から退避する方向(ここでは下方)への移動を規制可能であり、また、振動に伴って生じる力を利用して前記の規制を解除する。また、例えば、作動装置23は、進退部材17を下方へ移動させる力として、重力を利用している。具体的は、以下のとおりである。
【0068】
作動装置23は、例えば、支持スライダ25と、支持スライダ25に支持されるとともに、進退部材17を支持可能な柱27とを有している。支持スライダ25は、例えば、保持部11の底部13によって、底部13に対して(別の観点では容器5及び進退部材17に対して)水平方向に移動可能に支持されている。底部13と支持スライダ25との間には、適宜な支承機構が介在してよい。支持スライダ25と柱27とは、両者の相対移動を完全に規制するような固定はなされていない。同様に、柱27と進退部材17とは、両者の相対移動を完全に規制するような固定はなされていない。
【0069】
図2(a)に示すように、振動前において、柱27は、その下面を支持スライダ25の上面に重ねることによって自立している。また、進退部材17は、その下面を柱27の上面に重ねることによって柱27に支持されている。これにより、進退部材17は、自重等による下方への移動(落下)が規制されている。そして、
図2(b)及び
図3(a)に示すように、振動が生じて支持スライダ25が揺動し、その揺動の変位(別の観点では揺動させる力)が所定の大きさを超えると、柱27が倒れ、進退部材17の下降の規制が解除される。その結果、進退部材17が下降して容器5の容積が大きくされる。
【0070】
進退部材17は、比較的遅い速度で下降してもよいし、比較的速い速度で下降してもよい。比較的遅い速度で下降する場合においては、例えば、対象物103の沈降に伴う衝撃を緩和することが容易である。比較的速い速度で下降させる場合においては、対象物103が沈降前に転倒する蓋然性を低減できる。下降の速度は、例えば、進退部材17の自重等によって調整できる。また、特に図示しないが、速度を遅くしたい場合においては、進退部材17にダンパーを連結してもよい。逆に、速度を速くしたい場合においては、進退部材17を容器5から退避させる方向に付勢する付勢部(例えば弾性部材)が設けられてもよい。
【0071】
柱27が倒れやすくなるように、作動装置23は、支持スライダ25を水平な所定方向に付勢する付勢部29を有していてもよい。
図2(a)~
図3(b)では、付勢部29として、支持スライダ25を紙面右側へ付勢する圧縮ばねが模式的に図示されている。この他、後述する
図9(a)等から理解されるように、自重を支持スライダ25に伝える錘をワイヤー及び滑車を介して支持スライダ25に連結することによって付勢部29を構成することも可能である。
【0072】
振動前の状態(
図2(a))に復帰させる動作は、例えば、以下のように実現される。作動装置23は、進退部材17に固定されるとともに筐体状の保持部11の外部へ延び出ている操作部材31を有している。また、柱27は、その中心軸に沿って柱27を貫通している不図示の貫通孔を有しており、作動装置23は、上記貫通孔に挿通されている長尺部材33(
図2(b)等)を有している。長尺部材33は、一端が進退部材17の下面に固定され、他端が支持スライダ25の上面に固定されている。長尺部材33は、伸縮性を有していてもよい。
【0073】
図3(b)に示すように、操作部材31は作業者によって持ち上げられる。これにより、進退部材17は、上方へ移動して元の位置へ復帰する。また、進退部材17の上方への移動に伴って長尺部材33の一端が引っ張られ、長尺部材33は、進退部材17から鉛直方向へ垂下された状態へ遷移する。このときの長尺部材33からの力を受けて、柱27は立ち上り、また、支持スライダ25は、紙面左側(元の位置)へ向かって移動する。そして、
図3(a)の状態に復帰する。図示の例とは異なり、長尺部材33等を設けずに、単純に、作業者が柱27及び支持スライダ25を掴んで元の位置に復帰させてもよい。
【0074】
なお、このようなパッシブ制御を行う作動装置23が設けられる場合、基本的に、地震等の振動の発生以後に容器5の容積拡張が開始される。ただし、パッシブ制御を行う作動装置23が設けられていても、予測可能な振動に対する備えとして、振動が生じる前に予め人力等によって柱27を倒して対象物103を流動材料3に沈ませておいてもよい。すなわち、容積が大きくされる時期は、振動が発生するときとは限らない。
【0075】
(変形例)
図5(a)~
図5(c)は、作動装置23の変形例を示す模式図である。
図5(a)は、
図2(a)に示した振動前の状態に対応している。
図5(b)は、
図2(b)又は
図3(a)に示した振動中の状態に対応している。
図5(c)は、
図3(b)に示した振動後の状態に対応している。
【0076】
この変形例では、柱27に代えて、柱27をその長手方向に複数(ここでは4つ)に分割したブロック35が設けられている。各ブロック35は、その中心軸に沿って貫通する不図示の貫通孔を有している。その貫通孔には、
図2(b)等においても示した長尺部材33が挿通されている。
【0077】
図5(a)に示すように、振動前においては、複数のブロック35は、積み上げられて柱状となっている。これにより、
図2(a)と同様に、進退部材17の下降が規制されている。そして、
図5(b)に示すように、振動が生じると、複数のブロック35が崩れ、進退部材17の下降の規制が解除される。その結果、
図2(b)及び
図3(a)と同様に、容器5の容積が大きくされる。振動が終わると、
図5(c)に示すように、人力等によって操作部材31を持ち上げる。進退部材17の上昇に伴って、長尺部材33は鉛直方向に延びる状態に遷移する。このときの長尺部材33からの力によって複数のブロック35は積み上げられ、
図5(a)の状態に復帰する。
【0078】
このような変形例では、例えば、柱27を倒れさせる力(加速度)よりも小さい力で複数のブロック35を崩れさせることができる。その結果、作動装置23のパッシブ制御の感度を向上させることができる。
図5(a)~
図5(c)では、付勢部29が図示されていないが、
図2(a)と同様に付勢部29が設けられても構わない。
【0079】
以上のとおり、本実施形態では、支持システム1は、容器5と、沈降装置7とを有している。容器5は、流動材料3を収容可能であり、流動材料3の上面のうち当該上面の外縁から離れている対象領域3aの上に対象物103が置かれる。沈降装置7は、容器5のうち流動材料3の上面よりも下方の部分の容積を大きくし、これにより流動材料3の上面において対象領域3aをその周囲の領域よりも沈ませることが可能である。
【0080】
別の観点では、本実施形態では、支持方法は、容器5に収容されている流動材料3の上面のうち当該上面の外縁から離れている対象領域3aの上に対象物を置くステップ(
図2(a))と、容器5のうち流動材料3の上面よりも下方の部分の容積を大きくし、対象物103を流動材料3に沈ませるステップ(
図2(b)及び
図3(a))と、を有している。
【0081】
従って、既述のように、対象物103を流動材料3に沈み込ませることができる。その結果、例えば、対象物103をソフトに倒れさせ(転倒の衝撃を低減し)、対象物103を安定した状態にすることができる。ひいては、転倒による対象物103の損傷の蓋然性が低減され、また、転倒後の対象物103の移動による損傷の蓋然性も低減される。
【0082】
対象物の変位を抑制する減衰機構によって対象物の保護を図ろうとする場合においては、想定を超える強い振動が生じたときに、対象物の損傷の蓋然性が高くなる。一方、本実施形態では、強い振動が生じると、弱い振動が生じたときよりも、対象物103の自重によって対象物103の流動材料3に対する沈降が進む。すなわち、対象物103は、より安定な状態となる。その結果、対象物の損傷の蓋然性の上昇を抑制することができる。
【0083】
また、例えば、対象物103は、剛体の部材(例えば進退部材17)の上に直接に置かれるのではなく、流動材料3の上に置かれているから、上下方向の振動が生じたときに、対象物103に加えられる衝撃を流動材料3の流動性によって緩和することができる。
【0084】
また、本実施形態では、支持システム1は、流動材料3としての複数の粒状固体9を有していてもよい。
【0085】
この場合、例えば、流動材料3は、ダイラタンシーのような性質を有することになる。その結果、例えば、流動材料3は、振動前においては、流動性が低く、安定して対象物103を支持することができる。一方で、容器5の容積が大きくされたときは、流動性を発揮して迅速に対象物103を沈み込ませることができる。
【0086】
また、本実施形態では、容器5は、流動材料3の上面を覆っており、対象物103が載置される可撓性の上面シート19を有していてもよい。
【0087】
この場合、例えば、既述のように、上面シート19の構成にもよるが、流動材料3が容器5の外部へ飛び出る蓋然性を低減することができる。その結果、例えば、地震後の原状復帰(掃除等)が容易化される。また、例えば、既述のように、上面シート19の構成にもよるが、流動材料3が対象物103に直接に接触することによる損傷又は汚れが生じる蓋然性を低減したり、流動材料3に要求される粘度を低下させたりすることができる。その結果、例えば、流動材料3の材料の選択の自由度を向上させることができる。
【0088】
また、本実施形態では、上面シート19は伸縮性を有していてもよい。
【0089】
上面シート19を設けると、流動材料3の上面に直接に対象物103を載置する態様に比較すると、対象物103の流動材料3に対する沈み込みやすさは低下する。しかし、上面シート19が伸縮性を有していることによって、そのような不都合を低減することができる。また、例えば、柔らかい上面シート19が対象物103に接触することになるから、上面シート19と対象物103との摩擦によって対象物103に疵が付く蓋然性が低減される。
【0090】
また、本実施形態では、沈降装置7は、対象領域3a下においてのみ容器5の容積を大きくする。換言すれば、沈降装置7は、対象領域3a下の容積の、対象領域3aの単位面積当たりの増加量を、その周囲の領域下の容積の、周囲の領域の単位面積当たりの増加量よりも大きくする。ただし、本実施形態では、周囲の領域下の容積の増加量は0である。
【0091】
この場合、例えば、対象領域3a以外の領域下で容積を大きくする態様(このような態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して、対象領域3aをその周囲よりも沈ませることが容易であり、ひいては、対象物103を流動材料3に沈ませることが容易である。なお、上記以外の態様で、流動材料3の上面よりも下方の容積が大きくされた場合も、例えば、流動材料3のうち対象物103の直下の部分が対象物103の荷重を受けて容積が拡大された部分に流れ込むことが可能である。ひいては、対象物103を流動材料3に沈ませることが可能である。
【0092】
また、本実施形態では、容器5は、容器5の底部5aのうち対象領域3aの直下にて上下に開口している開口5hを有している。沈降装置7は、開口5hに挿通されており、上下に移動可能な進退部材17を有している。
【0093】
この場合、例えば、後述する他の態様(例えば
図6(a))に比較して、対象領域3aの面積と進退部材17の寸法との対応関係、及び/又は容器5の容積の増加量と進退部材17の寸法及び移動量との対応関係が明確である。従って、設計が容易である。また、例えば、後述する他の態様(例えば
図8(a))に比較して、流動材料3の上面の下降速度を進退部材17の移動速度によって制御することが容易である。
【0094】
また、本実施形態では、容器5は、伸縮性の下面シート21を有していてもよい。下面シート21は、進退部材17と流動材料3との間に介在するとともに容器5の開口5hを塞いでいる。
【0095】
この場合、例えば、既述のように、流動材料3が開口5hと進退部材17との隙間から落下する蓋然性を低減できる。その結果、例えば、流動材料3として相対的に径が小さい粒状固体9を用いることができるなど、流動材料3の設計の自由度が向上する。粒状固体9の径が小さいことによって、例えば、流動材料3の表面の形状が対象物103の形状に追従しやすくなる。その結果、例えば、対象物103の表面に付与される接触圧を低減し、対象物103の保護を強化することができる。
【0096】
また、本実施形態では、沈降装置7は、作動装置23を有している。作動装置23は、所定の高さ以下における容積可変部Sの容積を規定している規定部材(本実施形態では進退部材17)、又は当該規定部材に連結されている部材(本実施形態では前者)の、容積可変部Sを拡張する方向の移動(本実施形態では下降)を規制している。別の観点では、作動装置23は、規定部材(進退部材17)の移動を規制することによって対象領域3aがその周囲の領域に対して沈むことを規制している。また、作動装置23は、容器5の振動に伴って生じる力を利用して前記規制を解除する。
【0097】
この場合、例えば、地震に伴って停電が生じたような場合においても、地震に応じて容積可変部Sを拡張できる。その結果、より確実に対象物103が保護される。
【0098】
なお、本実施形態に係る支持システム1は、別の観点では、流動材料3を収容可能な容器5と、容器5のうち所定高さ(
図2(a)における流動材料3の上面の高さを参照)以下の部分の容積を大きくする沈降装置7と、を有している。容器5の前記の所定高さにおける水平な断面(
図2(a)における流動材料3の上面を参照)のうち当該断面の外縁から離れている一部を対象領域(3a参照)とする。このとき、沈降装置7は、対象領域下の、対象領域の単位面積当たりの増加量を、対象領域の周囲の領域下の容積の、周囲の領域の単位面積当たりの増加量よりも大きくする。
【0099】
この観点では、例えば、流動材料3が上記の所定の高さ付近まで容器5内に配置され、その上に対象物103が置かれることによって、上述の種々の効果が得られる。また、この観点では、例えば、進退部材17の上面を流動材料3の上面付近に位置させ、対象物103を進退部材17の上面上に載置してもよい。すなわち、対象物103は、流動材料3の上面に載置されなくてもよい。
【0100】
<第2実施形態>
図6(a)及び
図6(b)は第2実施形態に係る支持システム201の構成を示す模式的な断面図である。
図6(a)は第1実施形態の
図2(a)(振動前の状態)に対応している。
図6(b)は第1実施形態の
図3(a)(振動中の状態)に対応している。
【0101】
支持システム201においては、容器5の底部5aは、下面シート21のみによって構成されている。すなわち、容器5は、第1実施形態の底部本体5aaを有さず、下面シート21は、壁部5bの下端側部分によって構成されている開口を塞ぐように壁部5bに固定されている。ただし、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、下面シート21は、底部本体5aaに形成された開口5hを塞いでいてもよい。
【0102】
下面シート21は、
図6(a)に示すように、振動前においては、流動材料3等の重みによって自然と撓んだ状態よりも、下面シート21の一部である所定部位21aが持ち上げられた状態とされている。すなわち、下面シート21の撓みは規制されている。所定部位21aは、例えば、対象物103(流動材料3の上面の対象領域3a)の直下の部位である。
【0103】
振動が生じると、
図6(b)に示すように、上記の規制を解除する。これにより、下面シート21は、流動材料3等の重みで撓む。ひいては、容器5のうちの所定の高さ以下(振動前の流動材料3の上面下)における部分(容積可変部S)の容積が大きくされる。このとき、より詳細には、対象領域3a下の容積の、対象領域3aの単位面積当たりの増加量は、対象領域3aの周囲の領域下の容積の、周囲の領域の単位面積当たりの増加量(第1実施形態とは異なり、0とは限らない。)よりも大きい。
【0104】
支持システム201は、下面シート21の所定部位21aに、錘217を有していてもよい。錘217は、例えば、流動材料3の密度よりも高い密度を有する材料によって構成されている。例えば、流動材料3が樹脂からなる粒状固体9によって構成されている場合に、錘217は金属によって構成されてよい。もちろん、そのような錘217を設けないようにすることも可能である。錘217の形状及び大きさは任意である。例えば、錘217は、球形であってもよいし(図示の例)、円柱状又は多面体等の他の形状であってもよい。また、錘217の下面シート21に対する取付け態様も任意である。例えば、錘217は、下面シート21の上面に固定されていてもよいし、下面シート21の下面に固定されていてもよいし、下面シート21に形成された開口に配置されて当該開口の縁部に固定されていてもよい。
【0105】
支持システム201の沈降装置207は、例えば、第1実施形態と同様に、パッシブ制御によって容器5の容積を大きくする作動装置223を有している。作動装置223は、例えば、第1実施形態と同様の支持スライダ25と、支持スライダ25に固定されている支持テーブル227とを有している。支持システム201は、支持スライダ25を水平方向に付勢する付勢部29を有していてもよい。付勢部29は、第1実施形態とは異なり、例えば、支持スライダ25を原点復帰させることに寄与する。
【0106】
図6(a)に示すように、振動前においては、錘217が支持テーブル227の上に載置されている。ひいては、下面シート21の所定部位21aが所定高さに支持されて、下面シート21の撓みが規制される。
図6(b)に示すように、振動が生じると、錘217が支持テーブル227から落下する。これにより、所定部位21aの下降の規制(下面シート21の撓みの規制)が解除され、ひいては、容器5の容積が大きくされる。そして、流動材料3の対象領域3aが沈み込む。下面シート21が伸縮性を有している場合においては、伸縮性は、容器5の容積を効果的に大きくすることに寄与する。振動が終わると、支持スライダ25は、例えば、付勢部29の付勢力によって元の位置(
図6(a))に戻る。また、錘217は、例えば、作業者によって掴まれて支持テーブル227の上に戻される。
【0107】
図示の例とは異なり、第1実施形態と同様に、柱27又は複数のブロック35によって下面シート21の所定部位21aを支持してもよい。この場合、錘217は設けられていなくてもよい(設けられていてもよい。)。また、支持スライダ25を設けずに、支持テーブル227を保持部11(容器5)に対して固定的とすることも可能である。付勢部29を設けずに、人力によって支持スライダ25を元の位置に戻してもよい。
【0108】
以上のとおり、本実施形態の支持システム201においても、沈降装置207は、容器5のうち流動材料3の上面下における部分(容積可変部S)の容積を大きくし、流動材料3の上面の対象領域3aをその周囲の領域よりも沈ませることが可能である。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、対象物103をソフトに倒れさせて安定な状態にし、対象物103の損傷の蓋然性を低減できる。
【0109】
本実施形態では、容器5の底部5aのうち、少なくとも対象領域3aの直下の領域は可撓性の下面シート21によって構成されている。沈降装置207は、下面シート21の一部である所定部位21aを所定高さにおいて支持して下面シート21の撓みを規制している状態と、所定部位21aを所定高さよりも下降させた状態との間で遷移可能な規制部材(例えば支持テーブル227)を有している。
【0110】
この場合、例えば、対象物103の種類及び対象物103を支持システムに置く目的等によっては、振動前の対象物103の載置が好ましいものとなる。具体的には、以下のとおりである。これまでの説明では、振動前において、流動材料3の上面(上面シート19)は、理想的に平面状であるものとした。ただし、実際には、流動材料3の流動性によって、対象物103は少し沈んだ状態である場合がある。本実施形態では、下面シート21は、その一部である所定部位21aの下降が規制されているものの、他の部位の変形がある程度許容されている。ひいては、第1実施形態に比較すると、流動材料3が流動しやすくなっている。従って、例えば、振動前において、対象物103を流動材料3の上面にある程度沈ませて斜めに置いておくことが容易化される。例えば、対象物103を支持システムに載置する目的が展示ではない場合(例えば支持システムを薬品棚に適用する場合)においては、当初から対象物103を流動材料3に沈ませておいた方が転倒による損傷の蓋然性が低減されるから、本実施形態が有効である。
【0111】
また、本実施形態では、支持システム201は、所定部位21aに固定されている錘217を更に有している。規制部材(支持テーブル227)は、錘217を支持している状態と、錘217を支持していない状態(落下させた状態)との間で遷移する。
【0112】
この場合、例えば、錘217によって、伸縮性の下面シート21を伸長させて、容器5の容積の増加量を大きくすることができる。また、支持テーブル227を倒さなくても(下面シート21の一部が支持テーブル227に支持された状態でも)、容器5の容積を大きくすることが容易であり、作動装置223の構成が簡素化される。
【0113】
<第3実施形態>
図7(a)及び
図7(b)は第3実施形態に係る支持システム301の構成を示す模式的な断面図である。
図7(a)は第1実施形態の
図2(a)(振動前の状態)に対応している。
図7(b)は第1実施形態の
図3(a)(振動中の状態)に対応している。
【0114】
第3実施形態は、容器5の容積を大きくする沈降装置の構成が第1実施形態と相違する。具体的には、第1実施形態に係る沈降装置7の作動装置23は、パッシブ制御を行うものであったのに対して、第3実施形態に係る沈降装置307の作動装置323は、アクティブ制御を行うように構成されている。すなわち、作動装置323は、外部から電力(別の観点では信号)が入力されることによって容積を大きくする制御を行う。作動装置323の構成は、例えば、以下のとおりである。
【0115】
作動装置323は、例えば、進退部材17を支持可能なリンク機構325を有している。リンク機構325は、進退部材17の下降に伴って複数のリンク(符号省略)が折り畳まれる(リンク機構325が上下方向において収縮する)ように構成されている。また、リンク機構325は、リンクに連結された制御部材327の移動(例えば紙面左側への移動)を規制することによって、複数のリンクの折り畳み動作を規制可能に構成されている。作動装置323は、制御部材327の移動を規制する構成として、例えば、電磁石329を有している。電磁石329は、例えば、電力が供給されることによって、制御部材327の端部に設けられた被吸着部330を吸着し、制御部材327の紙面左側への移動を規制可能である。被吸着部330は、例えば、強磁性体(軟磁性体、硬磁性体又は磁石)によって構成されている。
【0116】
図7(a)に示すように、振動前においては、進退部材17は、上昇限に位置しており、リンク機構325は上下方向において伸長した状態とされている。また、被吸着部330が電磁石329に吸着され、リンク機構325の上下方向における収縮、すなわち、進退部材17の下降は規制されている。
図7(b)に示すように、振動が生じるときには、電磁石329への電力供給が停止され、電磁石329による被吸着部330の吸着が解除される。吸着解除を行うための電力が電磁石329に供給されてもよい。吸着の解除によって、進退部材17の下降が許容され、容器5の容積が大きくされる。振動が終わると、進退部材17は、例えば、操作部材31を人力で持ち上げることによって上昇する。これに伴い、リンク機構325は上下方向において伸長し、また、被吸着部330は、電磁石329によって吸着可能な位置に戻る。
【0117】
特に図示しないが、電磁石329への電力の供給及びその停止(電磁石329のON及びOFF、別の観点では容積の増加等の制御)は、例えば、支持システム301に設けられた不図示の操作部(スイッチ等)に対する作業者の操作によって実行されてもよいし、支持システム301に設けられた不図示の制御部に所定の信号が入力され、この信号に基づいて制御部によって実行されてもよい。制御部に入力される信号は、例えば、振動を検知するセンサからの検出信号であってもよいし、通信端末等から制御部へ無線通信又は有線通信によって入力される信号であってもよい。通信によって入力される信号は、電磁石329への電力の供給及びその停止を直接的に支持する制御信号であってもよいし、緊急地震速報等の振動に関する情報を含む信号であってもよい。また、容積の増加等に係る制御は、上記の種々の態様の2以上が組み合わされて実行されてもよい。
【0118】
以上のとおり、本実施形態では、沈降装置307は、電力が供給されることによって容器5の容積を大きくする動作(別の観点では対象領域3aをその周囲の領域よりも沈ませる動作)の規制及び実行の少なくとも一方(本実施形態では前者)を行う駆動部(電磁石329)を有している。すなわち、アクティブ制御を行う。
【0119】
従って、例えば、支持システム301に振動が生じたときだけでなく、緊急地震速報を受信したときに容器5の容積の増加を開始することができる。その結果、例えば、地震の振動が震源地から支持システム301が配置されている地域へ到達する前に、対象物103を流動材料3に沈ませることができる。ひいては、より確実に対象物103を保護することができる。また、本実施形態の作動装置323の構成は、電磁石329に対する電力供給が停止されたときに、重力(弾性部材等の付勢部が用いられてもよい。)を利用して容積を大きくするものであることから、フェールセーフが実現される。
【0120】
<第4実施形態>
図8(a)及び
図8(b)は第4実施形態に係る支持システム401の構成を示す模式的な断面図である。
図8(a)は第1実施形態の
図2(a)(振動前の状態)に対応している。
図8(b)は第1実施形態の
図3(a)(振動中の状態)に対応している。
【0121】
支持システム401において、容器5の底部5aは、第1実施形態と同様に、剛体とみなせる底部本体5aaと、底部本体5aaに形成された開口5hを塞ぐように設けられた下面シート21とを有している。また、支持システム401は、下面シート21の下方に位置して下面シート21の一部又は全部を支持可能なスライダ417を有している。スライダ417は、水平方向において移動可能とされている。なお、開口5hの形状及び大きさについては、進退部材17が挿通される第1実施形態の開口5hの説明が適宜に援用されて構わない。例えば、開口5hは、紙面左右方向だけでなく、紙面貫通方向においても容器5の底部5aの一部のみを占める。
【0122】
図8(a)に示すように、振動前においては、下面シート21の一部又は全部の撓みは、スライダ417によって規制されている。そして、
図8(b)に示すように、振動中においては、スライダ417は下面シート21の外側へ移動する。これにより、下面シート21の撓みの規制が一部又は全部において解除される。ひいては、流動材料3は、自重等によって下方へ移動し、容器5のうち流動材料3の上面よりも下方の部分(容積可変部S)の容積が大きくなる。なお、このように、沈降装置が容積可変部Sの容積を拡張するとき、その拡張のための力は、流動材料3及び対象物103の自重のみによって得られてもよい。
【0123】
図8(b)の状態から
図8(a)の状態に復帰させるときは、例えば、人力で操作部材31を紙面左側へ移動させる。スライダ417は、例えば、紙面左側にテーパ面を有しており、流動材料3を押し上げながら進行する。スライダ417の進行方向には、流動材料3の紙面左側への移動を規制する壁部5eが設けられていてもよい。
【0124】
スライダ417の形状及び寸法は適宜に設定されてよい。図示の例では、スライダ417は、断面視において、上記のテーパ面と、テーパ面の上端と交差する水平面とを有しており、これらの面は、振動前に開口5hの直下に位置する。スライダ417の上面視における形状は、例えば、矩形である。
【0125】
支持システム401は、スライダ417による規制が解除された後に下面シート21の撓みを規制する規制板435を有していてもよい。この規制板435は、スライダ417を水平方向に移動可能に支持したり、スライダ417を水平方向のうちの一方向(紙面左右方向)に案内したりすることに寄与してもよい。
【0126】
スライダ417を水平方向に移動させる力は適宜な方法によって得られてよい。図示の例では、スライダ417は、付勢部29によって付勢されている。付勢部29は、例えば、弾性部材によって構成されており、
図8(a)及び
図8(b)では、一端がスライダ417に固定され、他端が保持部11に固定され、スライダ417を紙面右側へ付勢する引張ばねが例示されている。この他、例えば、流動材料3及び対象物103の重みによってスライダ417を紙面右側へ移動させることも不可能ではない。
【0127】
沈降装置407の作動装置423は、例えば、第3実施形態と同様に、アクティブ制御を行うものとされている。具体的には、例えば、作動装置423は、スライダ417が
図8(a)の位置(振動前の位置、前進限)に位置したときにスライダ417に設けられた被吸着部330に吸着する電磁石329を有している。なお、スライダ417において、規制板435よりも上方側の部分と、規制板435よりも下方側の部分とは、例えば、規制板435に設けられた不図示のスリットを介して互いに固定されている。電磁石329が被吸着部330を吸着する力は、付勢部29がスライダ417を駆動する力よりも大きくされている。電磁石329の動作については、第3実施形態と同様である。例えば、支持システム401の不図示の制御部は、地震速報等の情報を含む信号が入力されたときに、容器5の容積を大きくするための電磁石329の制御を実行する。
【0128】
特に図示しないが、電磁石329に代えて、磁石を配置してもよい。この場合は、付勢部29の付勢力と、振動に起因して生じる磁石と被吸着部330とを引き離す方向の力との合計が吸着力を超えるとスライダ417が紙面右側へ移動する。すなわち、パッシブ制御が実現される。また、振動の並進運動を回転運動に変換する機構と、この機構から回転が伝達される円盤とを設け、円盤にスライダ417を単数又は複数設けてもよい。
【0129】
以上のとおり、本実施形態では、容器5は、対象領域3aの直下の領域を構成している可撓性の下面シート21を有している。沈降装置407は、下面シート21を第1面積に亘って支持する第1位置(
図8(a)の位置)と、第1位置から水平方向において下面シート21の外側へ移動して下面シート21を第1面積よりも小さい第2面積で支持する第2位置(
図8(b)の位置)との間で移動可能なスライダ417を有している。
【0130】
このような構成においても、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、例えば、対象物103をソフトに倒れさせて安定な状態にし、対象物103の損傷の蓋然性を低減できる。また、対象物103が置かれる対象領域3aの周囲の領域の直下にスライダ417が退避するスペースを確保できる。従って、容器5の形状及び大きさ、並びに対象領域3aを沈ませる量等にもよるが、進退部材17を上下に移動させる態様に比較して、小型化できる場合がある。
【0131】
<第5実施形態>
図9(a)及び
図9(b)は第5実施形態に係る支持システム501の構成を示す模式的な断面図である。
図9(a)は第1実施形態の
図2(a)(振動前の状態)に対応している。
図9(b)は第1実施形態の
図3(a)(振動中の状態)に対応している。
【0132】
第5実施形態は、パッシブ制御が行われるように構成されている点が第4実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
【0133】
沈降装置507の作動装置523は、錘217と、ワイヤー527と、1以上の滑車529とを有している。ワイヤー527は、滑車529を経由して錘217からスライダ417に延びており、一端が錘217に連結され、他端がスライダ417に連結されている。滑車529は、保持部11によって回転可能に支持されている。ワイヤー527及び滑車529は、錘217の重みによってワイヤー527に生じる張力が、スライダ417を紙面右側に移動させる力に変換されるように配置されている。また、作動装置523は、保持部11に固定的であり、錘217が載置される載置部531を有している。
【0134】
図9(a)に示すように、振動前においては、錘217は、載置部531上に置かれている。このとき、ワイヤー527に弛みは殆どない。そして、
図9(b)に示すように、振動が生じると、錘217が載置部531から落下する。錘部525の落下に伴って、スライダ417は、ワイヤー527によって引っ張られて紙面右側へ移動する。
図9(a)の状態に復帰させるときは、例えば、人力で操作部材31を紙面左側へ移動させる。スライダ417の紙面左側への移動に伴って、錘217は、ワイヤー527に引っ張られて上昇し、載置部531上へ置かれる。なお、錘217、ワイヤー527及び滑車529の組み合わせは、所望の部材を付勢する付勢部として捉えられてよい。
【0135】
<第6実施形態>
図10(a)及び
図10(b)は第6実施形態に係る支持システム601の構成を示す模式的な断面図である。
図10(a)は第1実施形態の
図2(a)(振動前の状態)に対応している。
図10(b)は第1実施形態の
図3(a)(振動中の状態)に対応している。
【0136】
第6実施形態は、アクティブ制御とパッシブ制御との双方が行われるように構成されている。具体的には、以下のとおりである。
【0137】
沈降装置607の作動装置623は、変位によらずに、概略一定の力を上方へ付与可能な定荷重ばねシステム625を有している。定荷重ばねシステム625の構成は、公知の構成も含め、種々の構成とされてよい。定荷重ばねシステム625が生じる概略一定の力は、例えば、可動部材629に対して付与されている。可動部材629には、進退部材17が固定されている。また、作動装置623は、自重によって定荷重ばねシステム625に下方への力を付与する錘217を有している。可動部材629には、例えば、落下した錘217を受ける受け皿631が設けられている。受け皿631の上面には弾性部材が配置されていてもよい。
【0138】
振動前においては、
図10(a)に示すように、錘217は、受け皿631よりも上方に位置しており、自重による下方への力を可動部材629に付与していない。このとき、定荷重ばねシステム625の上方への力は、進退部材17及び可動部材629等の荷重を上回っており、進退部材17は、定荷重ばねシステム625によって上方に付勢され、上昇限に位置している。
図10(b)に示すように、振動が生じると、錘217は、受け皿631に落下する。このとき、錘217、進退部材17及び可動部材629等の荷重は、定荷重ばねシステム625の上方への力を上回る。これにより、進退部材17が下方へ移動する。
【0139】
振動前において、錘217は、受け皿631よりも上方の適宜な位置に保持される。例えば、錘217は、強磁性体によって構成されており、作動装置623は、錘217を吸着する電磁石329を有している。電磁石329は、例えば、保持部11に固定されている。電磁石329の制御が第3実施形態の電磁石329と同様に行われることによってアクティブ制御が実現される。例えば、地震速報等の情報を含む信号が支持システム601の不図示の制御部に入力されたときに、容器5の容積を大きくするための電磁石329の制御が実行される。また、振動が大きくなり、錘217を電磁石329から引き離そうとする力が吸着力を上回ると、錘217は落下する。すなわち、パッシブ制御が実現される。
【0140】
電磁石329よりも下方側には、下方側ほど拡径する凹部を有する案内部材627が設けられていてもよい。案内部材627は、例えば、錘217の水平方向の移動を下方への移動に変換し、錘217の電磁石329から離反を容易化したり、錘217が受け皿631の外方に落下する蓋然性を低減したりすることに寄与する。
【0141】
図10(a)の状態に復帰させるときは、例えば、錘217から保持部11の外部へ延び出ているワイヤー527を引っ張る。錘217は、ワイヤー527によって引き上げられ、電磁石329に吸着される。また、進退部材17は、定荷重ばねシステム625の付勢力によって上方へ移動し、上昇限に戻る。
【0142】
<第7実施形態>
図11(a)及び
図11(b)は第7実施形態に係る支持システム701の構成を示す模式的な断面図である。
図11(a)は第1実施形態の
図2(a)(振動前の状態)に対応している。
図11(b)は第1実施形態の
図3(a)(振動中の状態)に対応している。
【0143】
第7実施形態では、アクティブ制御のための駆動部が、電磁石329ではなく、電動機729とされている。電動機729は、回転式のものであってもよいし、リニアモータであってもよく、ここでは回転式のものが図示されている。電動機729の回転は、例えば、並進運動に変換されて進退部材17に伝達される。このような回転運動を並進運動に変換する伝達機構731は、公知の構成も含め、種々のものとされてよく、ここでは、ねじ機構が例示されている。例えば、伝達機構731は、鉛直方向に延び、電動機729によって回転されるねじ軸731aと、ねじ軸731aに螺合されているとともに進退部材17に固定されているナット731bとを有している。
【0144】
電動機729は、例えば、進退部材17の下降及び上昇の双方において駆動力を生じる。進退部材17を下降させるとき、電動機729は、電力が供給されることによって容積を大きくする動作を実行する駆動部の一例である。進退部材17の下降は、例えば、ねじ機構(伝達機構731)による抵抗力によって規制されてもよいし、電動機729の駆動力によって規制されてもよい。
【0145】
アクティブ制御のための駆動部が電磁石329である場合と同様に、電動機729による容積の増加は、例えば、操作部に対する作業者の操作によって実行されてもよいし、制御部に所定の信号が入力され、この信号に基づいて制御部によって実行されてもよい。ここでは、その双方が可能な態様が示されている。
【0146】
具体的には、支持システム701は、制御装置733を有している。制御装置733は、振動を検知可能なセンサ735(例えば加速度センサ)と、センサ735からの信号が入力される制御部737と、操作部(符号省略)とを有している。このような制御装置733は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)によって構成された加速度センサを有するスマートデバイス(例えばスマートフォン)と同様の構成とされてよい。制御装置733と電動機725(厳密にはそのドライバ)とは、無線又は有線によって接続されている。
【0147】
制御部737は、例えば、センサ735の検出する加速度(別の観点では振動)が所定の閾値を超えると、容器5の容積が大きくなるように電動機725を制御する。及び/又は、制御部737は、地震速報等の情報を含む信号を受信すると、容器5の容積が大きくなるように電動機725を制御する。その一方で、制御部737は、操作部に対する操作に応じて、容器5の容積が大きくなるように電動機725を制御する。
【0148】
<第8実施形態>
図12(a)及び
図12(b)は第8実施形態に係る支持システム801の構成を示す模式的な断面図である。
図12(a)は第1実施形態の
図2(a)(振動前の状態)に対応している。
図12(b)は第1実施形態の
図3(a)(振動中の状態)に対応している。
【0149】
これまでの実施形態では、流動材料3の上面において、対象物103が載置される対象領域3aをその周囲の領域よりも沈ませる方法として、流動材料3を収容している容器3の容積を拡大する方法を例示した。しかし、それ以外の方法も可能であり、本実施形態では、その一例を示す。
【0150】
図12(a)及び
図12(b)に示す例では、沈降装置807が便宜的にバルブの記号によって模式的に示されていることから理解されるように、容器805の開口805hが開放されて、流動材料3の一部が容器805から排出される。これにより、対象領域3aがその周囲の領域よりも沈み、ひいては、対象物103が流動材料3に沈む。振動中(別の観点では流動材料3がある程度の量で排出された後)、開口805hは、沈降装置807によって閉塞されてもよいし、開放されたままとされてもよい。振動後の復帰作業においては、例えば、流動材料3を容器5に補充する。この補充に利用される開口は、開口805hであってもよいし、異なる開口であってもよい。
【0151】
なお、第1実施形態等の容器5の容積を大きくする方法、及び本実施形態のように流動材料の一部を排出させる方法について、その上位概念を考えると、いずれも対象物103の直下における流動材料が振動前の位置から他の位置へ流れることを許容する方法ということができる。あるいは、容器の容積に対する容器内の流動材料の体積の比率を振動が生じたときに小さくする方法ということができる。
【0152】
開口805hの位置及び径は適宜に設定されてよい。図示の例では、開口805hは、第1実施形態の開口5h等と同様に、対象領域3aの直下に位置している。また、図示の例では、開口805hの面積は、第1実施形態の開口5hの面積及び対象領域3aの面積に比較して小さくされている。ただし、開口805hの面積は、開口5hの面積及び/又は対象領域3aの面積に対して同等とされてもよいし、これらよりも大きくされてもよい。
【0153】
沈降装置807の構成、すなわち、流動材料3の容器805からの排出を規制及び許容する構成は適宜な構成とされてよい。例えば、沈降装置807は、開口805hの開口方向に移動して開口805hを開閉する閉塞部材(規定部材)を有するものであってもよいし、開口805hの開口方向に交差(例えば直交)する方向にスライドして開口805hを開閉する閉塞部材を有するものであってもよいし、開口805hの開口方向に直交する軸回りに回転して開口805hを開閉する閉塞部材を有するものであってもよい。流動材料3が水又は気体である態様のように、流動材料3の流動性が高い場合においては、開口805hに接続された配管と、当該配管に接続された一般的なバルブとによって沈降装置807が構成されてもよい。
【0154】
また、沈降装置807の制御は、パッシブ制御によってなされてもよいし、アクティブ制御によってなされてもよい。また、当該制御には、第1~第7実施形態に示した作動装置の原理が適宜に応用されてよい。例えば、地震速報等の情報を含む信号の入力に応じて、駆動部(例えば電磁石又は電動機)によって開口503hを閉塞する閉塞部材(規定部材)を開位置へ移動させるアクティブ制御がなされてよい。
【0155】
本開示に係る技術は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0156】
例えば、上述した実施形態及び変形例は、その一部同士が適宜に組み合わされてよい。例えば、実施形態において進退部材17(
図2(a)等)を駆動する作動装置(例えば
図11の作動装置707)は、スライダ417(
図8(a)等)の駆動に利用されてもよい。また、例えば、第7実施形態(
図11(a))で示した制御装置733(スマートデバイス等)によるアクティブ制御は、他のアクティブ制御可能な駆動部(例えば電磁石)に適用されても構わない。
【0157】
流動材料の上面において対象物が配置される対象領域をその周囲の領域よりも沈ませる方法は、実施形態の方法以外にも種々可能である。例えば、理論上は、振動が生じたときに流動材料(流体)を容器内に配置された吸収体に吸収させたり、2種以上の流動材料の混合若しくは反応によって流動材料の体積を減少させたりする方法が考えられる。
【0158】
実施形態では、1つの支持システムに1つの対象物のみが載置された。これとは異なり、1つの支持システムに複数の対象物が載置されてもよい。また、実施形態では、1つの容器に収容されている流動材料の上面のうち1つの対象領域3aの真下においてのみ、容器の容積が大きくされたり、流動材料が排出されたりした。これとは異なり、複数の対象領域3aそれぞれの真下において容積が大きくされたり、流動材料が排出されたりしてもよい。例えば、1つの容器に対して複数の進退部材17及び/又は複数のスライダ417(規定部材)を設けたりしてもよい。
【0159】
上記のように、複数の規定部材(進退部材17等)が設けられる場合、複数の規定部材は、互いに連結されていてもよいし、互いに別個に移動可能であってもよい。また、後者の場合において、作動装置は、複数の規定部材に対して互いに独立に設けられていてもよいし、一部が共用されていてもよい。例えば、
図2(a)の支持スライダ25が共用されたり、
図11の制御装置735が共用されたりしてよい。
【0160】
1つの支持体101(例えば1つの建築物又は1つのテーブル)に対して複数の支持システムが設けられてよいことは明らかである。この場合において、例えば、アクティブ制御が可能な複数の支持システムに対して、有線通信又は無線通信によって同時に制御信号を送信するための制御装置が設けられてもよい。また、パッシブ制御又はアクティブ制御を行う複数の支持システム(互いに別個の容器を有するもの)において、作動装置の一部が共用化されてもよい。
【0161】
本実施形態では、対象物を流動材料に沈ませた後、流動材料の上面を元の状態に復帰させる方法として、操作部材を人力で操作する方法を例示した。この方法からは、対象物が比較的小さいものが想起されるが、もちろん、対象物の大きさはそのような人力で持ち上げることができるものに限定されない。流動材料を元の状態に戻すために電動機又は油圧機器等の適宜な機器が利用されてよい。
【0162】
実施形態では、容器の容積を拡張するための、又は流動材料を排出するための開口は、対象物(別の観点では対象物が載置される対象領域)の直下に位置した。この場合、例えば、流動材料が複数の粒状固体からなる態様、及び/又は流動材料の粘度が比較的高い態様において、対象領域をその周囲の領域よりも沈ませることが容易である。ただし、当該開口は、例えば、容器の底面の外縁側(別の観点では対象領域の直下の外側)に位置していてもよいし、容器の側面に位置していてもよい。この場合であっても、例えば、第1実施形態の説明でも触れたように、対象物(対象領域)は、自重によって沈むことが可能である。また、流動材料が気体である態様及び流動材料が水である態様のように、流動材料の流動性が高い態様においては、開口が流動材料の液面下にある限り、開口をいずれの位置に設けても、対象物の沈降に関して同程度の作用を得ることができる。
【0163】
第1実施形態の説明で述べたように、上面シート19は設けられなくてもよい。また、第1実施形態の説明において、流動材料として、気体を例示したり、液体としての水を例示したりしたように、流動材料の流動性は高くてもよい。この場合においては、基本的に、上面シート19が設けられてよい。
【符号の説明】
【0164】
1…支持システム、3…流動材料、3a…対象領域、5…容器、7…沈降装置、103…対象物。