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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】無人検査システム
(51)【国際特許分類】
   B64F 3/00 20060101AFI20240229BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20240229BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240229BHJP
   B64U 10/60 20230101ALI20240229BHJP
   B64U 20/75 20230101ALI20240229BHJP
【FI】
B64F3/00
B64C27/08
B64C39/02
B64U10/60
B64U20/75
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019218387
(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公開番号】P2021088232
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】519429989
【氏名又は名称】株式会社テクノコンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】100218280
【弁理士】
【氏名又は名称】安保 亜衣子
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100173864
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】大野 和則
(72)【発明者】
【氏名】岡田 佳都
(72)【発明者】
【氏名】伊東 修
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-052429(JP,A)
【文献】特開2017-071379(JP,A)
【文献】特開平05-008768(JP,A)
【文献】特開平09-256626(JP,A)
【文献】特開2018-095394(JP,A)
【文献】○藤浪拓海、岡田佳都、大野和則、田所諭(東北大),上方構造物の点検を目的とした受動回転球殻ヘリの改良,ロボティクスメカトロニクス講演会2018講演会論文集 2018 JSME Conference on Robotics and Mechatronics ,一般社団法人日本機械学会,2018年06月01日,1P1-B09(1)-(3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 3/00
B64C 27/08
B64C 39/02
B64U 10/60
B64U 20/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検対象を点検する点検器具、該点検器具を搭載して上昇、降下、前進、後進、
左移動、右移動、左旋回、右旋回を含む全方位に無人で浮遊移動する搬送機構、前記点検器具及び前記搬送機構の周辺に配置された保護殻を有した検査ユニットと、
第1及び第2の端部を有する可撓性を有する支援綱と、
前記第1の端部と前記検査ユニットの間に設けられ、前記支援綱の延長方向に定義されるヨー軸に関して、前記検査ユニットの回転を支援する頂部ジョイントと、
前記点検対象の上端に設けられたレールの上に、前記左移動及び前記右移動を支援する水平移動可能にするように配置され、モータ出力で前記水平移動をし、且つ前記上端から下方に位置する前記検査ユニットを懸架する前記支援綱の張力で前記検査ユニットの自重を支えるように、前記支援綱の前記第2の端部を巻回し、前記支援綱が閾値を超える速度で送り出された場合に前記支援綱の送り出しをロックする位置制御支援機構と、
を備え、前記点検対象が抉れた形状であっても、前記検査ユニットが前記抉れた形状の段差を乗り越えて点検可能であることを特徴とする無人検査システム。
【請求項2】
前記保護殻は、前記点検器具及び前記搬送機構の全体を覆う空隙を有するフレームであることを特徴とする請求項1に記載の無人検査システム。
【請求項3】
前記支援綱は、前記搬送機構に給電する電力送電の機能を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の無人検査システム。
【請求項4】
前記頂部ジョイントと前記検査ユニットの間に設けられ、前記ヨー軸に直交する方向に定義されるロール軸に関し、前記検査ユニットのロール軸回転を支援する頂部リングと、
前記ヨー軸及び前記ロール軸のそれぞれに直交する方向に定義されるピッチ軸に関し、前記検査ユニットのピッチ軸回転を支援するように、前記保護殻の外側において、前記ピッチ軸に沿った前記保護殻の両端に設けられた第1及び第2水平ジョイントと、
前記保護殻の上半球側の周囲に沿って前記保護殻から離間して設けられた殻保持部であって、該殻保持部の両端部のそれぞれが前記第1及び第2水平ジョイントに接続され、前記保護殻の頂部の上方に位置する前記殻保持部の中央部が、前記頂部ジョイントに接続される殻保持部を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の無人検査システム。
【請求項5】
少なくとも前記殻保持部の前記第1及び第2水平ジョイントに接続される箇所が剛性部材で構成されることを特徴とする請求項4に記載の無人検査システム。
【請求項6】
前記位置制御支援機構を水平方向に移動をガイドするレールを更に備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の無人検査システム。
【請求項7】
前記保護殻は、前記ヨー軸に直交する方向に定義されるピッチ軸に沿って互いに平行に配置され、前記ピッチ軸に関して回転可能な2つの回転体であり、
前記点検器具及び前記搬送機構は、該2つの回転体の間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の無人検査システム。
【請求項8】
前記搬送機構に対する前記2つの回転体の回転を支援する第1及び第2水平ジョイントを前記ピッチ軸に沿って配置したことを特徴とする請求項7に記載の無人検査システム。
【請求項9】
前記位置制御支援機構は、前記支援綱の長さを調整することにより、前記点検対象の位置を制御する長さ制御部を有することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の無人検査システム。
【請求項10】
前記搬送機構は、点検作業中は動力を停止し、前記検査ユニットは前記支援綱の懸架により位置が固定されることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の無人検査システム。
【請求項11】
前記支援綱の長さ及び前記搬送機構の推力を調整することで、前記検査ユニットは前記点検対象の凹んだ場所にアクセス可能であることを特徴とする請求項9に記載の無人検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面等の点検対象の点検を行う無人検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
法面は、例えば、非特許文献1に示すように、5年に1度の点検が義務化されているが、点検を行う技術者の不足から遵守が困難なのが現状である。更に、法面の点検は、高所作業であり、危険も伴う。以上のことから、法面点検作業については、機械による代替を実現できることが望ましい。
【0003】
法面の点検を機械により行う例としては、非特許文献2に開示される技術が知られている。非特許文献2に記載された技術は、車輪型ロボットを法面上で移動させることにより、無人で法面を点検する点に特徴を有する。しかし、移動方式に車輪を用いているため、法面が法枠と呼ばれる段差を有している場合には、法枠を乗り越えることができず、法面全体の点検を行うことができない。また、法面が抉れている箇所を有する場合には、その抉れている箇所にロボットを移動させることができないため、その箇所の打音点検が行えない問題がある。
【0004】
非特許文献2に記載された技術の問題を解決し得る例として、非特許文献3に開示されるような、脚とクローラを移動機構に用いるロボットが知られている。しかし、非特許文献3に記載された技術は、非特許文献2に開示されるような車輪型ロボットに比べて、遥かに機構が複雑化、大型化、及び大重量化するため、コスト、携行性、及びメンテナンス性の面で問題がある。
【0005】
一方、近年、ドローンなどの無人飛行機(UAV)の高性能化及び低コスト化が進み、UAVを様々な分野で活用する試みがなされている。本発明者らの研究グループも、非特許文献4及び5に示すように、「受動回転球殻」と呼ぶ3自由度を持つ球状のプロペラガードに保護されたマルチコプタ(以下において、「球殻ヘリ」と称する。)の開発を行ってきた。
【0006】
非特許文献4及び5に記載された技術によれば、球殻ヘリを構成するマルチコプタのプロペラが受動回転球殻によって保護されるため、球殻ヘリが接触を恐れずに構造物への接近が可能となる。また、球殻ヘリが全方向からの力を受け流せるので受動回転球殻内の機体の姿勢が保たれ、球殻ヘリの機体の姿勢が水平に保たれるので不整地からの離着陸が可能となり、受動回転球殻を車輪のように使うことで構造物に沿った効率的な移動ができる。
【0007】
しかしながら、非特許文献4及び5に記載された球殻ヘリの場合は、抉れた法面や法面に法枠がある場合には法枠を乗り越えするのが困難である。又、球殻ヘリの落下により、点検作業自体を遂行できなくなる心配や、球殻ヘリの破壊の心配もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】“道路土構造物点検要領”、2017年、 国土交通省、p.7-9
【文献】辻健太郎、他1名,“法面点検作業の自動化支援を目指した牽引付き移動体の開発”、ロボティクス・メカトロニクス講演会、2019年、2P1-B01
【文献】土居隆宏,他5名,“4足歩行型法面作業ロボット TAITAN XI の開発:第10報:実際の法面での実証実験”,ロボティクス・メカトロニクス講演会 2018、2018年、2P1-B15
【文献】C.J.O.サラーン(Salaan)、 他6名, “受動回転球殻を備えたUAVを用いた近接した視覚的な橋梁の検査(Close visual bridge inspection using a UAV with a passive rotating spherical shell)”, ジャーナル・オブ・フィールド・ロボティクス(Journal of Field Robotics)、2018年、第335巻、第6号、p.850-867.
【文献】C.J.O.サラーン(Salaan)、他5名, “複雑な環境における物理的相互作用及び電力供給のための2つの受動回転半球殻を有するUAV(UAV with two passive rotating hemispherical shells for physical interaction and power tethering in a complex environment)”,2017年ロボティクスと自動化に関するIEEE国際会議(2017 IEEE International Conference on Robotics and Automation (ICRA)), 2017年、p.3305-3312
【文献】藤浪拓海、他3名、“上方構造物の点検を目的とした受動回転球殻ヘリの改良:推進機器の下部配置による点検用カメラ視界確保と球殻の回転を阻害しない3自由度テザー”,ロボティクス・メカトロニクス講演会2018、2018年、1P1-B09
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、点検対象に凹凸がある場合でも、凹凸の段差を乗り越えて効率良く全方位移動可能であり、安全性、安定性及び信頼性が高い無人検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の態様は、(a)点検対象を点検する点検器具、この点検器具を搭載して無人で浮遊移動する搬送機構、点検器具及び搬送機構の周辺に配置された保護殻を有した検査ユニットと、(b)第1及び第2の端部を有する可撓性を有する支援綱と、(c)第1の端部と検査ユニットの間に設けられ、支援綱の延長方向に定義されるヨー軸に関して、検査ユニットの回転を支援する頂部ジョイントと、(d)点検対象の上端に水平移動可能に配置され、支援綱の第2の端部を巻回し、支援綱が閾値を超える速度で送り出された場合に支援綱の送り出しをロックする位置制御支援機構を備える無人検査システムであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の例によれば、点検対象に凹凸がある場合でも、凹凸の段差を乗り越えて効率良く全方位移動可能であり、安全性、安定性及び信頼性が高い無人検査システムを提供とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る無人検査システムの概要を示す図である。
図2図1の無人検査システムを詳細に示す図である。
図3】第1実施形態に係る無人検査システムの懸架ケーブルと保護殻の固定に関する第1の例を示す図である。
図4図3の剛性部材と保護殻の固定の様子を示す図である。
図5】第1実施形態に係る無人検査システムにおいて、懸架ケーブルを保護殻に接続して検査ユニットを自在に回転する殻保持部の構造の例を示す図である。
図6図6(a)は、第1実施形態に係る無人検査システムの検査ユニット3の保護殻がラグビーボール型である例を示し、図6(b)は、保護殻が一部平坦型である例を示す。
図7図7(a)は、第1実施形態に係る無人検査システムに用いる搬送機構のプロペラ数が4の場合の保護殻の例を示し、図7(b)は、プロペラ数が3の場合の保護殻の例を示し、図7(c)は、プロペラ数が1の場合の保護殻の例を示す図である。
図8】第1実施形態に係る無人検査システムに用いる搬送機構がトライコプターである場合の構造を説明する図である。
図9】抉れた形状の点検対象を点検する場合について説明する図である。
図10】第1実施形態に係る無人検査システムの点検対象としての法面の上端に移動用レールを設けた構造例を示す図である。
図11】第1実施形態の第1変形例に係る無人検査システムにおける2本の懸架ケーブルと検査ユニットの関係を示す図である。
図12】第1実施形態の第1変形例に係る無人検査システムの点検対象としての法面の上端に移動用レールを設けた模式的な構造例を示す図である。
図13】第1実施形態の第1変形例に係る無人検査システムの2本の懸架ケーブルと殻保持部の関係を説明する図である。
図14】第1実施形態の第1変形例に係る無人検査システムの2本の懸架ケーブルと殻保持部の関係を説明する他の例を示す図である。
図15】第1実施形態の第1変形例に係る無人検査システムの検査ユニットが多面体からなる法面を横方向に移動して点検する様子を示す図である。
図16】第1実施形態の第2変形例に係る無人検査ステムの3本の懸架ケーブルと検査ユニットの関係を示す図である。
図17】第1実施形態の第2変形例に係る無人検査ステムの点検対象である法面の上端及び下端に移動用レールを設けた模式的な構造例を示す図である。
図18】第1実施形態の第2変形例に係る無人検査ステムの点検対象である法面の上端に移動用レールを設けた模式的な構造例を示す図である。
図19】第1実施形態の第2変形例に係る無人検査ステムの点検対象である法面の下端に移動用レールを設けた模式的な構造例を示す図である。
図20】第1実施形態の第2変形例に係る無人検査ステムの3本の懸架ケーブルと殻保持部の関係を説明する図である。
図21】第1実施形態の第2変形例に係る無人検査ステムの3本の懸架ケーブルと殻保持部の関係を説明する他の例を示す図である。
図22】第1実施形態の第3変形例に係る無人検査ステムの4本の懸架ケーブルと検査ユニットの関係を説明する図である。
図23】第1実施形態の第3変形例に係る無人検査ステムの点検対象としての法面の上端及び下端に移動用レールを設けた模式的な構造例を示す図である。
図24】第1実施形態の第3変形例に係る無人検査ステムおいて、4本懸架ケーブルと殻保持部の関係を説明する図である。
図25】第1実施形態の第3変形例に係る無人検査ステムおいて、4本懸架ケーブルと殻保持部の関係を説明する他の例を示す図である。
図26】本発明の第2実施形態に係る無人検査システムの概要を示す図である。
図27図27(a)は、第2実施形態に係る無人検査システムの車輪を説明する側面図であり、図27(b)は、図27(a)に対応する上面図である。
図28図28(a)は、第2実施形態の第1変型例に係る無人検査システムの車輪を説明する側面図であり、図28(b)は、図28(a)に対応する上面図である。
図29図29(a)は、第2実施形態の第2変型例に係る無人検査システムの車輪を説明する側面図であり、図29(b)は、図29(a)に対応する上面図である。
図30図30(a)は、第2実施形態の第3変型例に係る無人検査システムのクローラを説明する側面図であり、図30(b)は、図30(a)に対応する上面図である。
図31図31(a)は、第2実施形態の第4変型例に係る無人検査システムの車輪を説明する側面図であり、図31(b)は、図31(a)に対応する上面図である。
図32図32(a)は、第2実施形態の第5変型例に係る無人検査システムの車輪を説明する側面図であり、図32(b)は、図32(a)に対応する上面図である。
図33】本発明の第3実施形態に係る無人検査ステムの検査ユニットの要部を説明する模式図である。
図34】第3実施形態の第1変型例に係る無人検査ステムの検査ユニットの要部を説明する模式図である。
図35】第3実施形態の第2変型例に係る無人検査ステムの検査ユニットの要部を説明する模式図である。
図36】第3実施形態の第3変型例に係る無人検査ステムの検査ユニットの要部を説明する模式図である。
図37】本発明の第4実施形態に係る無人検査ステムの懸架ケーブルと検査ユニットの関係を説明する模式図である。
図38】第4実施形態の第1変型例に係る無人検査ステムの懸架ケーブルと検査ユニットの関係を説明する模式図である。
図39】第4実施形態の第2変型例に係る無人検査ステムの懸架ケーブルと検査ユニットの関係を説明する模式図である。
図40】本発明のその他の実施形態に係る無人検査ステムの検査ユニットの要部を説明する模式図である。
図41】本発明の更に他の実施形態に係る無人検査ステムの検査ユニットの要部を説明する模式図である。
図42】本発明の更に他の実施形態に係る無人検査ステムの検査ユニットの要部を説明する模式図である。
図43】本発明の更に他の実施形態に係る無人検査ステムにおいて、法面の上端から1本の懸架ケーブルで検査ユニットを支え、かつ法面の下端から1本の牽引ケーブルで検査ユニットを支える場合の構成を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、図面を参照して、本発明の第1~第4実施形態に係る無人検査システムを例示的に説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部材の大きさの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な厚み、寸法、大きさ等は以下の説明から理解できる技術的思想の趣旨を参酌してより多様に判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
又、以下に示す第1~第4実施形態に係る無人検査システムは、本発明の技術的思想を具体化するための方法及びその方法に用いる装置等を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等、方法の手順等を下記のものに特定するものではない。特に以下の第1~第4実施形態に係る無人検査システムでは点検対象が法面である場合を例示するが、第1~第4実施形態に係る無人検査システムの点検対象は法面に限定するものではなく、ビルの内壁若しくは外壁、橋桁等の建造物等、種々の物体が点検対象である。或いは、ボイラー内壁や外壁、工場設備の内側や外側、地下構造物の内壁、水中構造物の内側や外側等も点検対象として例示的に挙げることができるが、点検対象はこれらの例示に限定されるものではない。本発明の技術的思想は、第1~第4実施形態に係る無人検査システムで記載された内容に限定されず、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る無人検査システムは、図1に示すように、点検対象の一例をなす法面1を点検する無人の検査ユニット3を、点検対象の広い面積に対し、自在に移動して点検・検査をするものであり、無人の検査ユニット3が支援綱(懸架ケーブル)4で吊り下げられた構造をなしている。図2に示すように、法面1を点検する点検器具21が搬送機構10に搭載されて検査ユニット3の一部を構成している。ここで、「搭載」とは単に下部の部材の上に他の部材が乗るような構造を意味する場合に限定されるものではなく、点検器具21が搬送機構10の本体等に内蔵されるような態様や、点検器具21が搬送機構10の本体と一体不可分に構成される場合も含み得ることに留意されたい。
【0016】
第1実施形態に係る無人検査システムにおいては、図2に示すように、点検器具を搭載した搬送機構10の全体を覆う保護殻9によって、検査ユニット3が構成されている。図3の詳細図には、点検器具21と、点検器具21を搭載する搬送機構10が示され、点検器具21を搭載した搬送機構10の全体を覆う保護殻9によって、検査ユニット3が構成されていることが分かる。第1実施形態に係る無人検査システムでは、空隙を有するフレームで構成された保護殻9が点検器具21と搬送機構10を保護しているので、無人の検査ユニット3が他の物体に衝突した場合等において、検査ユニット3の主要部が破損されないように構成されている。搬送機構10は、プロペラにより推力を発生するドローンなどのマルチコプタである。搬送機構10は、スクリューで水中を潜水移動するような無人浮遊移動体でも構わない。
【0017】
第1実施形態に係る無人検査システムの搬送機構10に用いるマルチコプタは図2に示すような4つのプロペラを有するクアッドコプターの他、図8に示すような3つのプロペラP1,P2,P3を有するトライコプターでも構わない。図8に示す搬送機構10は、上下方向の推力を主に発生するプロペラP1,P2に加えて、スラスト方向(水平方向)の推力を発生する補助プロペラP3を有する。補助プロペラP3は、保護殻(図8では省略)を法面1に押し付けることで、搬送機構10を法面1に近接させることができる。第1実施形態に係る無人検査システムに用いるマルチコプタは、6つのプロペラを有するヘキサコプターや、8つのプロペラを有するオクトコプターでも構わない。保護殻9は、搬送機構10の周囲を囲むように空隙を有するフレームとして取り付けられ、搬送機構10と法面1との接触を防止する。
【0018】
点検器具21の内容は限定されるものではなく、例えば、法面1に対し超音波や電磁波等を出射する発信器と、法面1から反射してきた超音波や電磁波等を受信する受信機を備える構成が一つの態様である。法面1に出射される電磁波にはマイクロ波、テラヘルツ波、赤外線等が含まれる。或いは、点検器具21として、法面1を撮影するカメラなどの撮影装置や法面1を叩くハンマーなどの打音装置とが含まれている態様でもよい。更に、点検器具21には、受信した情報や撮像した情報を送信する通信器具や、点検器具21に対し、検査の命令を指示する情報を受信する通信器具が含まれていてもよい。搬送機構10は、空中を自由に移動し、かつ空中の同じ位置にとどまることが可能である。図示の明示はないが、図2に示した搬送機構10には、プロペラのそれぞれを回転さるための複数のモータ等の駆動動力系が備えられている。更に、駆動動力系に命令を送信する指令部、フライトコントローラ(FC)及び複数のエレクトロニックスピードコントローラ(ESC)等を更に備えることは勿論である。
【0019】
搬送機構10の指令部は、搬送機構10の飛行動作(浮遊移動動作)を示す指令信号をFCに出力する回路である。浮遊移動動作は、上昇、降下、前進、後進、左移動、右移動、左旋回、右旋回等を含む。指令部は、例えば、ユーザの操作に応じて指令信号を無線送信する送信機から指令信号を受信する受信機であり得る。指令部又はFCは、複数の航法衛星から受信した信号に基づいて、緯度、経度及び高度を示す位置情報を取得する全地球航法測位システム(GNSS)受信機を備えてもよい。FCは、例えばセンサ部及び制御回路を備える。センサ部は、例えば、加速度センサ、角速度センサ、方位センサ、高度センサ、及び障害物センサ等を備える。制御回路は、指令部から入力された指令信号及びセンサ部により検出された浮遊移動状態に応じて、ESCを制御する浮遊移動制御部及びライン制御部を機能的又は物理的なハードウェア資源として備える。
【0020】
搬送機構10の制御系を構成する指令部、FC及び複数のESC等の回路は、点検器具21を構成する発信器、受信機、撮影装置等の回路と同一半導体チップにモノリシックに集積化されていてもよく、モジュール等の態様でハイブリッドに集積化されていてもよい。よって、本発明の「点検器具21を搬送機構10に搭載」という意味は、点検器具21を構成する回路と搬送機構10の一部をなす回路とが、モノリシック又はハイブリッドに集積化される構成を含み得るものである。第1実施形態に係る無人検査システムは、搬送機構10を用いて検査ユニット3を自在に移動可能であるため、効率良く所望の位置に移動して検査や点検をすることが可能である。この結果、第1実施形態に係る無人検査システムによれば、図9に示すような抉れた法面1でも点検可能であり、法枠2の段差を乗り越え可能であるという効果を奏することが可能である。
【0021】
即ち、第1実施形態に係る無人検査システムの搬送機構10は、プロペラを回転させ、周囲の空気を押し下げる反動で推力を発生させる方式であるため、点検対象として例示した法面1の形状と無関係に安定して移動に必要な力を生み出すことができる。点検器具21を搬送機構10に搭載することにより、搬送機構10は、空中を移動するものであるから、図9に示すような法面1等の点検対象の形状にかかわらず、人と同速以上で移動し、かつ点検ができるというメリットもある。
【0022】
点検器具21は、発信器、受信機、撮像装置や打音装置などを備えるので、点検器具21の重量も必然的に大きくなる。従って、何らかの原因により搬送機構10が落下したときのことを想定し、その場合に、民家や高速道路などの構造物、更には人体に被害を及ぼさないための安全対策が必要となる。そこで、第1実施形態に係る無人検査システムでは点検器具21を搭載した搬送機構10を懸架ケーブルで吊り下げている。搬送機構10を懸架ケーブルで吊り下げる構成とすることにより、万が一、搬送機構10が落下したとしても、懸架ケーブルが搬送機構10の落下を途中で止めることができる。よって、第1実施形態に係る無人検査システムは、検査ユニット3を落下させないようにできるという効果を奏することが可能である。
【0023】
尚、法面1は、幅が数キロメートルにわたるなど、広大な面である場合があり、その場合、法面1の点検に際して、搬送機構10を長時間にわたり駆動しなければならない。搬送機構10を長時間にわたり駆動する場合に、搬送機構10のバッテリー切れを防止するために、懸架ケーブル4に電力送電の機能を持たせることにより、懸架ケーブル4を経由して搬送機構10に連続又は断続的に給電を行うことが可能である。懸架ケーブル4に電力送電の機能を持たせることにより、搬送機構10の頻繁なバッテリー交換が不要となり、法面1の点検効率の向上が図れるというメリットもある。懸架ケーブル4に電力送電の機能を持たせるには、絶縁性の懸架ケーブル4の内部に同軸ケーブルのように、送電ケーブルを組み込んでもよく、送電ケーブルそのものを、懸架ケーブル4に用いてもよい。なお、第1実施形態に係る無人検査システムが水中構造物の内側や外側等を点検対象とする場合であれば、同軸ケーブルのような構造で電力送電の機能を持たせることが好ましい。無人検査システムが水中を浮遊動作(潜水動作)とする場合は、懸架ケーブル4に通信機能を持たせてもよい。懸架ケーブル4が通信機能も有すれば、検査ユニット3に対するリール5側からの命令や、検査ユニット3からの情報を有線通信によってリール5側で受信してもよい。懸架ケーブル4に通信機能を持たせる場合は、懸架ケーブル4の内部に光ファイバ等を組み込んでもよく、通常の同軸ケーブルのような通信用配線でもよい。
【0024】
図2で示すように、第1実施形態に係る無人検査システムにおいては、点検器具21を搭載した搬送機構10が空隙を有するフレームである保護殻9で保護されている。搬送機構10を用いて法面1の点検を行う場合、搬送機構10を空中から法面1に近づけなければならない。点検器具21を搭載した搬送機構10をフレーム状の保護殻9で保護することにより、搬送機構10が法面1に衝突したとしても、点検器具21や搬送機構10が保護され、検査ユニット3の主要部が破壊されないという効果を奏することができる。特に、保護殻9は、搬送機構10のプロペラを保護し、かつ衝突による搬送機構10の姿勢の崩れも最小限に抑えることもできる。第1実施形態に係る無人検査システムによれば、点検器具21や搬送機構10が壊れてしまって、点検作業自体を遂行できなくなるという不都合を回避できる。
【0025】
第1実施形態に係る無人検査システムの検査ユニット3の一部を構成する保護殻9は、自由度3の回転が可能である。即ち、図2に例示したように、保護殻9は頂部ジョイント6A,第1水平ジョイント6B1、第2水平ジョイント6B2及び頂部リング7、並びに殻保持部8によって、自由度3の回転が可能な球状体となっている。このため、保護殻9は点検対象である法面1上を転がるように効率よく移動できる。自由度3の回転が可能なので、保護殻9は、頂部ジョイント6Aの回転により懸架ケーブル4の延長方向をヨー軸としてヨー軸回転が可能である。また、保護殻9は、殻保持部8が頂部リング7の内部を摺動して移動することで、ヨー軸に直交する方向に定義されるロール軸を中心にロール軸回転することが可能である。図2の場合であれば、ロール軸は図2の紙面に垂直な方向に定義される。このように、第1実施形態に係る無人検査システムでは、懸架ケーブル4の第1の端部と検査ユニット3の間に、検査ユニット3のロール軸回転を支援する頂部リング7及び検査ユニット3のヨー軸回転を支援する頂部ジョイント6Aの連結体が挿入されている。更に、保護殻9は、第1水平ジョイント6B1及び第2水平ジョイント6B2の回転により、図中の一点鎖線で示すピッチ軸を軸としてピッチ軸回転が可能である。ピッチ軸は、ヨー軸とロール軸のそれぞれに直交する方向に定義される。図2に示す保護殻9の上半球、殻保持部8、第1水平ジョイント6B1、第2水平ジョイント6B2、並びに頂部リング7と頂部ジョイント6Aの連結体とで、検査ユニット3を自由度3で回転させる結合部3coupを構成している。
【0026】
殻保持部8が、互いに直交するヨー軸、ロール軸及びピッチ軸に関して自在に回転可能な自由度が3を有しているため、球状体の保護殻9は、法面1の主面に沿って自由に回転可能な回転体としての機能を有する。従って、第1実施形態に係る無人検査システムによれば、全方位移動可能であるという効果を奏することができる。また、球状のフレームとして構成された保護殻9は、法面1上を効率良く移動可能であると共に、その半径を法枠2の段差よりも十分に大きくすることで、法枠2の段差を容易に乗り越えられるというメリットも有する。また、保護殻9は、図6(a)に示すように、ラグビーボール型でもよいし、図6(b)に示すように、一部平坦型でもよい。いずれの場合にも、保護殻9は、一点鎖線で示したピッチ軸を中心に回転可能な回転体として機能する、空隙を有するフレーム構造であることが望ましい。
【0027】
懸架ケーブル4を保護殻9に固定するに際し、最も考慮しなければならない事項は、懸架ケーブル(支援綱)4が保護殻9に絡まり、保護殻9の回転の自由度を阻害することがないようにする殻保持部8の構造である。例えば、3自由度を有する保護殻9に懸架ケーブル4の先端を単純に括り付けてしまうと、当然に保護殻9が回転できなくなり、墜落、又は移動効率の低下の原因となる。墜落等の不都合を防ぐため、非特許文献6に開示されるように、3自由度を持たせた逸走防止用の懸架ケーブル4が提案されている。しかし、単に、非特許文献6に記載の技術を適用し、保護殻9を懸架ケーブル4で上から吊るしたとすると、法面1の点検時に保護殻9が回転することで、懸架ケーブル4が保護殻9に引っ掛かり、点検対象の主面に沿った昇降動作に必要なピッチ軸の自由度が失われることが判明した。
【0028】
そこで、本発明者らは、かかる問題を解決するため、殻保持部8を用いて保護殻9と懸架ケーブル4を離すことで、懸架ケーブル4の引っ掛かりを解消し、ピッチ軸の自由度が確保している。具体的には、図3に示すような殻保持部8rを用い、保護殻9に触れることが多い殻保持部8rの端部を第1剛性部材16a及び第2剛性部材16bで補強している。U字型をなす殻保持部8rの両端部に位置する第1剛性部材16a及び第2剛性部材16bは、表1に例示するような繊維強化プラスチック(FRP)や高比張力な金属などの軽量で高剛性の材料が好適である。図3では、I型の第1剛性部材16a及び第2剛性部材16bを示しているが例示であり、図3に示す形状に限定されるものではない。例えば、第1剛性部材16a及び第2剛性部材16bは、後述する図14(b)と同様に湾曲部を有する形状であっても構わない。
【表1】
【0029】
図4において、第1剛性部材16a及び第2剛性部材16bを、殻保持部8の一部であると解釈すれば、殻保持部8の第1水平ジョイント6B1、第2水平ジョイント6B2に接続される箇所が選択的に剛性部材で構成された構造と捉えることが可能である。図4に示す殻保持部8は、図3に示す殻保持部8rに対応する。ただし、懸架ケーブル4に電力送電の機能を持たせ、殻保持部8を経由して搬送機構10に給電する場合は、第1剛性部材16a及び第2剛性部材16bは導電性の金属材料が好ましい。懸架ケーブル4に電力送電の機能を持たせる場合であっても、殻保持部8を経由せずに別配線で搬送機構10に給電するのであれば、第1剛性部材16a及び第2剛性部材16bは絶縁性の材料でも構わない。
【0030】
図4では、殻保持部8に接続される第1剛性部材16a及び第2剛性部材16bの構造を拡大して示すものであるが、第1剛性部材16a及び第2剛性部材16bを、包括的に符号16で示している。即ち、図4では、第1剛性部材16a及び第2剛性部材16bが剛性部材16として包括的に示されている。一点鎖線で示したピッチ軸に沿って剛性部材16の下部を貫通する回転軸62が、保護殻9の一部にピッチ軸に沿って長手方向が設けられた円筒状の収納台座部9jの凹部まで貫通して、水平ジョイント(62,9j,61a,61b,61c)を構成している。水平ジョイント(62,9j,61a,61b,61c)の模式図は、図3に示す第1水平ジョイント6B1及び第2水平ジョイント6B2の部分のいずれかに対応するが、図4に例示した構造に限定されるものではない。剛性部材16の中心を貫通する回転軸62は、ピッチ軸を回転の中心軸とする。収納台座部9jと回転軸62との間は転がり軸受61a,61bで回転自在になっている。剛性部材16と回転軸62との間は転がり軸受61cで回転自在になっている。保護殻9と殻保持部8とのクリアランスを確保するため、図4に示すように、剛性部材16を用いて、一点鎖線で示したピッチ軸と殻保持部8との間の角度θを調整する検証した。図4の構成において、ピッチ軸と殻保持部8との間の角度θが90°以上であれば、殻保持部8と保護殻9との接触がほとんど発生しないことが確認されている。
【0031】
第1実施形態に係る無人検査システムにおいては、図3及び図4に示すような直型(I型)の第1剛性部材16a及び第2剛性部材16bを、互いに平行に2枚用いる構造の他、図5に示すように、U型の剛性部材16を1個用いる構造とすることもできる。U型の剛性部材16を用いる場合には、殻保持部8を省略することもでき、剛性部材16を殻保持部8として用いることもできる。或いは、剛性部材16を殻保持部8と共に用いることもできる。第1実施形態に係る無人検査システムの殻保持部8は、図4に示すように第1水平ジョイント6B1、第2水平ジョイント6B2に接続される箇所が選択的に剛性部材で構成されていても、図5に示すように殻保持部8の全体が剛性部材で構成されていてもよい。即ち、第1実施形態に係る無人検査システムにおいては、後述する図14(b)に示すような態様を含めて、殻保持部8の少なくとも第1水平ジョイント6B1及び第2水平ジョイント6B2に接続される一部の箇所が剛性部材で構成されていればよい。
【0032】
第1実施形態に係る無人検査システムの検査ユニット3の一部を構成する保護殻9は、図7(a)、(b)、及び(c)に示すように、搬送機構10,10q及び10rを構成するプロペラを個別に覆う構造であってもよい。図7(a)の場合、搬送機構10のプロペラ数Pが4台のクアッドコプターであるため、クアッドコプターを構成する各プロペラP1,P2,p3及びp4に、それぞれ球状の保護殻9p1,9p2,9p3及び9p4が個別に付加される。点検器具21として打音装置を搬送機構10に搭載する場合は、打音装置の取り付けや動作の観点から、搬送機構10と法面1との間に保護殻9p1,9p2,9p3及び9p4が存在しない部分がある図7(a)に示すような構造を採用することが望ましい。図7(b)の場合、搬送機構10qのプロペラ数Pが3台のトライコプターであるため、トライコプターを構成する各プロペラP1,P2及びp3に、それぞれ球状の保護殻9q1,9q2及び9q3が個別に付加される。図7(a)に示す構造と同様に、点検器具21として打音装置を搬送機構10qに搭載する場合は、打音装置の動作等の観点から、搬送機構10qと法面1との間に9q1,9q2及び9q3が存在しない部分がある図7(b)に示すような構造が望ましい。図7(c)の場合、搬送機構10rを構成するプロペラ数PがプロペラPrの1個であるため、例えば、図2に示す3自由度を有する保護殻9rをそのまま利用できる。
【0033】
懸架ケーブル4及び殻保持部8は、検査ユニット3と位置制御支援機構(以下において、便宜上、単に「リール」と略記するが、本発明の「位置制御支援機構」はリールに限定されるものではない。)5を接続する。図2に示した懸架ケーブル4の一端(第1の端部)は、殻保持部8を介して、保護殻9を囲むように取り付けられる。また、懸架ケーブル4の他端(第2の端部)は、リール5に巻回される懸架ケーブル4の長さが調整され、リール5と検査ユニット3との間の距離が変更される。懸架ケーブル4、殻保持部8、及びリール5は、搬送機構10の動きをサポート(支援)する。
【0034】
リール5は、法面1の上端に配置される。リール5は、法面1の点検中、即ち、搬送機構10が飛行(浮遊移動)中に、常に、懸架ケーブル4を巻き戻す方向に一定の力を発生している。懸架ケーブル4を巻き戻すことにより、搬送機構10の浮遊移動機能が阻害されない範囲において、懸架ケーブル4の張力を確保し、懸架ケーブル4が緩んで保護殻9に絡み付く事態を回避する。また、搬送機構10の自重の一部又は全部を支えることもできる。例えば、リール5は、懸架ケーブル4の長さを調整する「長さ制御部(図示省略)」を有し、長さ制御部によって、検査ユニット3の自重の全部を支えるようにして、検査ユニット3を点検箇所にとどまらすことができる。或いは、図8に示すような3つのプロペラP1,P2,P3を有するトライコプターにおいて、上下方向の推力を主に発生するプロペラP1,P2を停止して、スラスト方向(水平方向)の推力を発生する補助プロペラP3によって、法面1に押し付けることで、図9に示すような抉れた法面1の凹部や凹んだ場所にアクセスすることが可能になる。検査ユニット3の自重の全部が支えられているときは、検作業中は搬送機構10の特定のプロペラ又はすべてのプロペラ等の動力を停止し、電力消費を抑制することが可能である。図9に示すような抉れた法面1の場合は、搬送機構10の指令部は、検査ユニット3が所望の点検箇所に到達した信号を受信して、特定のプロペラ等を回転さるための駆動動力系に選択的な命令を発信して停止させることができる。このため、第1実施形態に係る無人検査システムの中央制御装置(図示省略)は、検査ユニット3が所望の点検箇所に到達した場合、搬送機構10の指令部に、駆動動力系の全停止や一部停止の命令を送信するようにできる。或いは搬送機構10の指令部が、位置センサの信号を受信する深層学習等のAI機能を備え、検査ユニット3が所望の点検箇所に到達したことを自ら検知して、特定の駆動動力系やすべての駆動動力系を停止するように制御してもよい。
【0035】
また、リール5は、懸架ケーブル4を巻回するドラムに回転速度センサや加速度センサを備えており、懸架ケーブル4が閾値を超える速度でリール5から送り出された場合に、懸架ケーブル4の送り出しをロックするロック機構を備えている。リール5のロック機構は、例えば、ベルブロックにより実現できる。ロック機構を備えることにより、搬送機構10が何らかの原因により落下したとしても、懸架ケーブル4のリール5からの送り出しがロックされるため、搬送機構10が法面1の下にある民家や高速道路などの構造物、更には人体に当たり、第三者被害を出すといった事態を回避できる。尚、懸架ケーブル4及びリール5は、搬送機構10の落下時に、検査ユニット3の全重量を支えるに十分な性能及び強度を有する。
【0036】
第1実施形態に係る無人検査システムでは、図3に示すように、検査ユニット3は、1本の懸架ケーブル4により、法面1の上端に配置された1つのリール5に接続される。即ち、懸架ケーブル4の一端(第1の端部)は、検査ユニット3の側に取り付けられ、他端(第2の端部)は、リール5に巻回される。リール5は、懸架ケーブル4を送り出し、又は巻き戻すことで、懸架ケーブル4の長さが調節され、法面1に対する検査ユニット3の相対的位置制御支援がされる。そして、リール5は、懸架ケーブル4が送り出される速度が閾値を超える場合に、懸架ケーブル4の送り出しをロックすることで、検査ユニット3の落下を防止する。
【0037】
具体的には、第1実施形態に係る無人検査システムにおいては、図10に示すように、予め、リール5を水平方向に移動のガイドをするレール11を法面1の上端に敷いておく。レール11を法面1の上端に敷いておくことにより、水平方向における法面1のサイズが大きな場合でも、リール5を水平方向に移動させることで、法面1の全ての点検領域をカバーするように、法面1に対する検査ユニット3の相対的位置制御支援をすることが可能である。第1実施形態に係る無人検査システムによれば、点検対象に凹凸がある場合でも、凹凸の段差を乗り越えて効率良く全方位移動可能であり、安全性、安定性及び信頼性が高い無人検査システムを提供とすることができる。特に、第1実施形態に係る無人検査システムにおいて、懸架ケーブル4に電力送電の機能を持たせ、懸架ケーブル4を経由して搬送機構10に連続又は断続的に給電を行えば、連続して長時間点検できるので作業効率が高くなる。
【0038】
(第1実施形態の第1変形例)
図1図10に例示した第1実施形態に係る無人検査システムは、無人の検査ユニット3に1本の「懸架ケーブル4」を構成する懸架ケーブル4と1つの位置制御支援機構(リール)5を接続する基本構成を示すものである。本発明の無人検査システムは、懸架ケーブル(支援綱)と位置制御支援機構(リール)の組(セット)の数は1に限定されるものではなく、懸架ケーブル4と位置制御支援機構)のセットの数は複数であってもよい。第1実施形態の第1変形例に係る無人検査システムそでは、図11に示すように、懸架ケーブル4と位置制御支援機構)のセットの数が2の場合について説明する。
【0039】
図12に示すように、第1実施形態の第1変形例に係る無人検査システムの検査ユニット3は、第1支援綱(第1懸架ケーブル)4A及び第2支援綱(第2懸架ケーブル)4Bにより懸架されている。そして、第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bの長さが、法面1の上端に配置された第1位置制御支援機構(第1リール)5A及び第2位置制御支援機構(第2リール)5Bによって調整され、検査ユニット3の法面1に対する相対的位置の制御支援がされる。即ち、第1懸架ケーブル4Aの一端(第1の端部)は、検査ユニット3の一部を構成する保護殻9の左上部側に取り付けられ、他端(第2の端部)は、第1リール5Aに巻回され長さが調整される。また、第2懸架ケーブル4Bの一端(第3の端部)は、検査ユニット3の一部を構成する保護殻9の右上部側に取り付けられ、他端(第4の端部)は、第2リール5Bに巻回され長さが調整される。
【0040】
第1リール5A及び第2リール5Bは、検査ユニット3の法面1に対する相対位置に応じて、それぞれ独立に、第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bを送り出し、又は巻き戻すことで、第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bの長さを調節する。また、第1リール5Aは、第1懸架ケーブル4Aが送り出される速度が閾値を超える場合に、第1懸架ケーブル4Aの送り出しをロックすることで、検査ユニット3の落下を防止する。同様に、第2リール5Bは、第2懸架ケーブル4Bが送り出される速度が閾値を超える場合に、第2懸架ケーブル4Bの送り出しをロックすることで、検査ユニット3の落下を防止する。第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bは、搬送機構10の自重の一部又は全部を支えることもできる。例えば、第1リール5A及び第2リール5Bは、第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bの長さをそれぞれ調整する「長さ制御部(図示省略)」を有し、長さ制御部によって、検査ユニット3の自重の全部を支えるようにして、検査ユニット3を点検箇所にとどまらすことができる。検査ユニット3の自重の全部が支えられているときは、検作業中は搬送機構10のプロペラ等の動力を停止し、電力消費を抑制することが可能である。この場合、上下方向の推力を主に発生するプロペラを停止して、スラスト方向(水平方向)の推力を発生する補助プロペラによって、法面1に押し付けることで、図9に示すような抉れた法面1の凹部や凹んだ場所にアクセスすることが可能になる。このため、搬送機構10の指令部は、検査ユニット3が所望の点検箇所に到達した信号を受信して、特定のプロペラのみを回転させ、他のプロペラを停止させるための複数のモータ等の駆動動力系の命令制御をすることができる。第1変形例に係る無人検査システムの中央制御装置(図示省略)は、検査ユニット3が所望の点検箇所に到達した場合、搬送機構10の指令部に特定のプロペラを停止させる命令を送信するようにできる。或いは搬送機構10の指令部が、位置センサの信号を受信する深層学習等のAI機能を備え、検査ユニット3が所望の点検箇所に到達したことを自ら検知して、特定又はすべての駆動動力系を停止してもよい。
【0041】
また、図12に示すように、予め、第1リール5A及び第2リール5Bを水平方向に移動させるレール11を法面1の上端に敷いておけば、水平方向における法面1のサイズが大きな場合でも、第1リール5A及び第2リール5Bを移動させることで、法面1の全ての点検領域をカバーできる。第1実施形態の第1変形例に係る無人検査システムでは、2本の第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bにより検査ユニット3を支えることで、仮に、そのうちの1本が切れたとしても、残りの1本で検査ユニット3を支えることができるため、検査ユニット3の落下を確実に防止できる。
【0042】
第1実施形態の第1変形例に係る無人検査システムの場合は、図13に示すように、第1懸架ケーブル4Aを、保護殻9の左上部側に位置する第1頂部ジョイント6A1及び第1頂部リング7Aを介してU型の剛性部材16に接続する。同様に、第2懸架ケーブル4Bを、保護殻9の右上部側に位置する第2頂部ジョイント6A2及び第2頂部リング7Bを介してU型の剛性部材16に接続する。図13に示す第1変形例に係る無人検査システムの構造の場合、保護殻9は、2本の第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bを軸として回転可能となると共に(ヨー軸回転)、第1剛性部材16a及び第2剛性部材16bが第1頂部リング7A及び第2頂部リング7Bを通過する方向(ロール軸回転)、及び図13中一点鎖線を軸とする方向(ピッチ軸回転)にも回転可能となる。
【0043】
或いは、図14(a)に示すように、2本の第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bを互いに結合し、その結合箇所に頂部ジョイント6A及び頂部リング7を介して殻保持部8rを接続することも可能である。図14(a)に示す第1実施形態の第1変形例に係る無人検査システムの構造は、殻保持部8rの端部をI型の第1剛性部材16a及び第2剛性部材16bで補強した場合の例示的な模式図である。例示であるので、図14(b)に示すように、一部に湾曲部を有する擬U型の第1剛性部材16p及び第2剛性部材16qでU字型の殻保持部8sの端部を補強し、殻保持部8sの中央に頂部リング7を結合してもよい。
【0044】
また、図15に示すように、左側の法面1aと右側の法面1bが互いに所定の角度で交わる多面体で近似する場合であっても、第1リール5A1,5A2,5A3及び第2リール5B1,5B2,5B3の位置を時系列に従い、順に右方向に移動することで、左側の法面1aと右側の法面1bがなす多面体の面の点検作業が容易化することができる利点も有する。図15の左側に示すように、第1実施形態の第1変形例に係る無人検査システムの検査ユニット3は、第1懸架ケーブル4A1及び第2懸架ケーブル4B1により懸架されて、左側の法面1aの位置にいる。そして、第1懸架ケーブル4A1及び第2懸架ケーブル4B1の長さが、左側の法面1aの上端に配置された第1位置制御支援機構(第1リール)5A及び第2位置制御支援機構(第2リール)5B1によって調整され、左側の法面1aに対する検査ユニット3の相対的位置の制御支援がされる。
【0045】
一定時間が経過した後は、図15の中央に示すように、第1実施形態の第1変形例に係る無人検査システムの検査ユニット3は、第1懸架ケーブル4A2及び第2懸架ケーブル4B2により懸架されて、折れ曲がった多面体をなす左側の法面1aと右側の法面1bの境界の位置に移動している。この場合、第1懸架ケーブル4A2の長さは、左側の法面1aの上端に配置された第1リール5A2によって調整される。一方、第2懸架ケーブル4B2の長さは、右側の法面1bの上端に配置された第2リール5B2によって調整されるので、左側の法面1aと右側の法面1bの境界の位置近傍における、検査ユニット3の相対的位置の制御支援がされる。
【0046】
更に一定時間が経過した後は、図15の右側に示すように、第1実施形態の第1変形例に係る無人検査システムの検査ユニット3は、第1懸架ケーブル4A3及び第2懸架ケーブル4B3により懸架されて、折れ曲がった多面体をなす右側の法面1bの位置に移動している。図15の右側に示す位置においては、第1懸架ケーブル4A3及び第2懸架ケーブル4B3の長さが、右側の法面1bの上端に配置された第1リール5A3及び第2リール5B3によって調整され、右側の法面1bに対する検査ユニット3の相対的位置の制御支援がされる。
【0047】
第1実施形態の第1変形例に係る無人検査システムによれば、法面等の点検対象の全域を2本の第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bを用いて効率良く移動可能であり、点検対象の主面に抉れた箇所があっても、自在に点検可能である。第1変形例に係る無人検査システムによれば、点検対象に法枠等の段差部があっても、段差部を乗り越え、全方位移動可能である。更に2本の第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bで懸架しているので、検査ユニット3の主要部が壊れて、点検作業が中断される不都合もなく、安全性が高い。
【0048】
即ち、第1変形例に係る無人検査システムによれば、点検対象の下に民家や高速道路などの構造物が存在する場合であっても、検査ユニット3を落下させて第三者被害を出さないという絶対的な安全性、安定性及び信頼性が確保できる。第1変形例に係る無人検査システムでは、第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bの少なくともいずれかに電力送電の機能を持たせれば、送電ケーブルを経由して搬送機構10に給電を行うことが可能なので、点検対象を長時間連続して点検作業ができ、作業効率が高い。
【0049】
(第1実施形態の第2変形例)
図16に示すように、第1実施形態の第2変形例に係る無人検査システムの無人の検査ユニット3は、第1支援綱(第1懸架ケーブル)4A及び第2支援綱(第2懸架ケーブル)4Bにより、法面1の上端に配置された2つの第1位置制御支援機構(第1リール)5A及び第2位置制御支援機構(第2リール)5Bに接続される。また、検査ユニット3は、1本の第3支援綱(牽引ケーブル)4Cにより、法面1の下端に配置された1つの位置制御支援機構(第3の位置制御支援機構)5Cに接続される。
【0050】
即ち、第2変形例に係る無人検査システムにおいては、第1懸架ケーブル4Aの一端(第1の端部)は、検査ユニット3の一部を構成する保護殻9の左上部側に取り付けられ、他端(第2の端部)は、第1リール5Aに巻回され長さが調整される。また、第2懸架ケーブル4Bの一端(第3の端部)は、検査ユニット3の一部を構成する保護殻9の右上部側に取り付けられ、他端(第4の端部)は、第2リール5Bに巻回され長さが調整される。更に、牽引ケーブル4Cの一端(第5の端部)は、検査ユニット3の一部を構成する保護殻9の下部側に取り付けられ、他端(第6の端部)は、リール5Cに巻回され長さが調整される。
【0051】
第1リール5A、第2リール5B及び第3リール5Cは、検査ユニット3の法面1に対する相対位置に応じて、それぞれ独立に、第1懸架ケーブル4A、第2懸架ケーブル4B及び牽引ケーブル4Cを送り出し、又は巻き戻すことで、第1懸架ケーブル4A、第2懸架ケーブル4B及び牽引ケーブル4Cの長さを調節する。また、第1リール5A及び第2リール5Bは、それぞれ、第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bが送り出される速度が閾値を超える場合に、第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bの送り出しをロックすることで、検査ユニット3の落下を防止する。
【0052】
また、図17に示すように、予め、第1リール5A及び第2リール5Bを水平方向に移動させるレール11Aを法面1の上端に敷き、かつリール5Cを水平方向に移動させるレール11Bを法面1の下端に敷いておけば、法面1の全ての点検領域をカバーできる。尚、図18に示すように、法面1の上端のみにレール11Aを敷いておいてもよいし、図19に示すように、法面1の下端のみにレール11Bを敷いておいてもよい。
【0053】
第1実施形態の第2変形例に係る無人検査システムでは、図20に示すように、第1懸架ケーブル4Aを、保護殻9の左上部側に配置された第1頂部ジョイント6A1及び第1頂部リング7Aを介して、上側にあるU型の剛性部材16に接続する。同様に、第2懸架ケーブル4Bを、保護殻9の右上部側に配置された第2頂部ジョイント6A2及び第2頂部リング7Bを介して、上側にあるU型の剛性部材16に接続する。更に、牽引ケーブル4Cを、保護殻9の底部側に配置された底部ジョイント6A3及び底部リング7Cを介して、底部側にある補助殻保持部8’に接続する。
【0054】
図20に示す第2変形例に係る無人検査システムの構造の場合、保護殻9は、3本の第1懸架ケーブル4A、第2懸架ケーブル4B及び牽引ケーブル4Cを軸として回転可能となると共に(ヨー軸回転)、第1剛性部材16a及び第2剛性部材16b又は殻保持部8が第1頂部リング7A、第2頂部リング7B及び底部リング7Cを通過する方向(ロール軸回転)、及び図20中一点鎖線を軸とする方向(ピッチ軸回転)にも回転可能となる。
【0055】
また、図21に示すように、2本の第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bを互いに結合し、その結合箇所に頂部ジョイント6A及びリング7を介して、上側にある殻保持部8を接続し、かつ1本の牽引ケーブル4Cに底部ジョイント6A3及び底部リング7Cを介して、底部側にある補助殻保持部8’を接続してもよい。図21に示す第2変形例に係る無人検査システムの構造の場合、殻保持部8の両端部をI型の第1剛性部材16a及び第2剛性部材16bで補強することが望ましい。
【0056】
第1実施形態の第2変形例に係る無人検査システムでは、法面1の上端から2本の第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bで検査ユニット3を支え、かつ法面1の下端から1本の牽引ケーブル4Cで検査ユニット3を支えている。このため、第2変形例に係る無人検査システムによれば、上下方向や横方向からの強風に対しても、検査ユニット3が流されず、安定して検査を行うことができる。第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bにより、検査ユニット3の自重の全部を支え、牽引ケーブル4Cで更に安定させることもできる。例えば、第1リール5A、第2リール5B及び第3リール5Cは、第1懸架ケーブル4A、第2懸架ケーブル4B及び牽引ケーブル4Cの長さをそれぞれ調整する「長さ制御部(図示省略)」を有し、長さ制御部によって、検査ユニット3を点検箇所にとどまらすことができる。検査ユニット3の自重の全部が支えられているときは、検作業中は搬送機構10のプロペラ等の動力を停止し、電力消費を抑制することが可能である。この際、搬送機構10の指令部は、検査ユニット3が所望の点検箇所に到達した信号を受信して、プロペラ等を回転さる複数のモータ等の駆動動力系に停止させることができる。このため、第2変形例に係る無人検査システムの中央制御装置(図示省略)は、検査ユニット3が所望の点検箇所に到達した場合、搬送機構10の指令部に停止の命令を送信するようにできる。或いは搬送機構10の指令部が、位置センサの信号を受信する深層学習等のAI機能を備え、検査ユニット3が所望の点検箇所に到達したことを自ら検知して、駆動動力系を停止してもよい。或いは、搬送機構10の複数のプロペラの内、上下方向の推力を主に発生するプロペラを停止して、スラスト方向(水平方向)の推力を発生する補助プロペラによって、法面1に押し付けることで、図9に示すような抉れた法面1の凹部や凹んだ場所にアクセスすることが可能になる。第2変形例に係る無人検査システムの中央制御装置(図示省略)は、検査ユニット3が所望の点検箇所に到達した場合、搬送機構10の指令部に特定のプロペラを停止させる命令を送信するようにできる。或いは搬送機構10の指令部が、位置センサの信号を受信する深層学習等のAI機能を備え、検査ユニット3が所望の点検箇所に到達したことを自ら検知して、特定又はすべての駆動動力系を停止してもよい。
【0057】
第1実施形態の第2変形例に係る無人検査システムによれば、法面等の点検対象の全域を2本の第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bと1本の牽引ケーブル4Cで検査ユニット3を支えて、効率良く移動可能であり、点検対象の主面に抉れた箇所があっても、自在に点検可能である。第2変形例に係る無人検査システムによれば、点検対象に法枠等の段差部があっても、段差部を乗り越え、全方位移動可能である。
【0058】
更に2本の第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bと1本の牽引ケーブル4Cで検査ユニット3を支えているので、強風等の悪条件の下でも、墜落や衝突等の心配がなく、検査ユニット3の主要部が壊れて、点検作業が中断される不都合もなく、安全性、安定性及び信頼性が極めて高い。特に、第1実施形態に係る無人検査システムにおいて、第1懸架ケーブル4A、第2懸架ケーブル4B又は牽引ケーブル4Cの少なくとも1本に電力送電の機能を持たせ、送電ケーブルを経由して搬送機構10に連続又は断続的に給電を行えば、連続して長時間点検できるので作業効率が高くなる。
【0059】
(第1実施形態の第3変形例)
図22に示すように、第1実施形態の第3変形例に係る無人検査システムの無人の検査ユニット3は、2本の第1支援綱(第1懸架ケーブル)4A及び第2支援綱(第2懸架ケーブル)4Bにより、法面1の上端に配置された2つの第1位置制御支援機構(第1リール)5A及び第2位置制御支援機構(第2リール)5Bに接続される。更に、第3変形例に係る無人検査システムの検査ユニット3は、2本の第3支援綱(第1牽引ケーブル)4C及び第4支援綱(第2牽引ケーブル)4Dにより、法面1の下端に配置された2つの位置制御支援機構(第3及び第4の位置制御支援機構)5C,5Dに接続される。
【0060】
即ち、第1懸架ケーブル4Aの一端(第1の端部)は、検査ユニット3の一部を構成する保護殻9の左上部側に取り付けられ、他端(第2の端部)は、第1リール5Aに巻回され長さが調整される。また、第2懸架ケーブル4Bの一端(第3の端部)は、検査ユニット3の一部を構成する保護殻9の左上部側に取り付けられ、他端(第4の端部)は、第2リール5Bに巻回され長さが調整される。更に、第1牽引ケーブル4Cの一端(第5の端部)は、検査ユニット3の一部を構成する保護殻9の左下部側に取り付けられ、他端(第6の端部)は、リール5Cに巻回され長さが調整される。更に、第2牽引ケーブル4Dの一端(第7の端部)は、検査ユニット3の一部を構成する保護殻9の右下部側に取り付けられ、他端(第8の端部)は、リール5Dに巻回され長さが調整される。
【0061】
第1リール5A、第2リール5B、第3リール5C及び第4リール5Dは、検査ユニット3の法面1に対する相対位置に応じて、それぞれ独立に、第1懸架ケーブル4A、第2懸架ケーブル4B、第1牽引ケーブル4C及び第2牽引ケーブル4Dを送り出し、又は巻き戻すことで、第1懸架ケーブル4A、第2懸架ケーブル4B、第1牽引ケーブル4C及び第2牽引ケーブル4Dの長さを調節する。また、第1リール5Aは、第1懸架ケーブル4Aが送り出される速度が閾値を超える場合に、第1懸架ケーブル4Aの送り出しをロックすることで、検査ユニット3の落下を防止する。同様に、第2リール5Bは、第2懸架ケーブル4Bが送り出される速度が閾値を超える場合に、第2懸架ケーブル4Bの送り出しをロックすることで、検査ユニット3の落下を防止する。
【0062】
また、図23に示すように、予め、第1リール5A及び第2リール5Bを水平方向に移動させるレール11Aを法面1の上端に敷き、かつ第3リール5C及び第4リール5Dを水平方向に移動させるレール11Bを法面1の下端に敷いておけば、法面1の全ての点検領域をカバーできる。尚、法面1の上端のレール11A、及び法面1の下端のレール11Bのうちの1つを省略してもよい。
【0063】
第1実施形態の第3変形例に係る無人検査システムにおいては、図24に示すように、第1懸架ケーブル4Aを、保護殻9の左上部に配置された第1頂部ジョイント6A1及び第1頂部リング7Aを介して、リング型の剛性部材16の上部に接続する。同様に、第2懸架ケーブル4Bを、保護殻9の右上部に配置された第2頂部ジョイント6A2及び第2頂部リング7Bを介して、リング型の剛性部材16の上部に接続する。更に、第1牽引ケーブル4Cを、保護殻9の右下部に配置された第1底部ジョイント6A3及び第1底部リング7Cを介して、リング型の剛性部材16に接続する。同様に、第2牽引ケーブル4Dを、保護殻9の左下部に配置された第2底部ジョイント6A4及び第2底部リング7Dを介して、リング型の剛性部材16に接続する。
【0064】
図24に示す第3変形例に係る無人検査システムの構造の場合、保護殻9は、4本の第1懸架ケーブル4A、第2懸架ケーブル4B、第1牽引ケーブル4C及び第2牽引ケーブル4Dを軸として回転可能となると共に(ヨー軸回転)、第1剛性部材16a及び第2剛性部材16bが第1頂部リング7A、第2頂部リング7B,第1底部リング7C及び第2底部リング7Dを通過する方向(ロール軸回転)、及び図中一点鎖線を軸とする方向(ピッチ軸回転)にも回転可能となる。
【0065】
また、図25に示すように、2本の第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bを互いに結合し、その結合箇所に頂部ジョイント6A及び頂部リング7を介して、上側にある殻保持部8を接続し、かつ2本の第1牽引ケーブル4C及び第2牽引ケーブル4Dに底部ジョイント6A’及び底部リング7’を介して、底部側にある補助殻保持部8’を接続してもよい。図25に示す構造の場合、殻保持部8及び補助殻保持部8’のそれぞれの両端部をI型の第1剛性部材16a及び第2剛性部材16bで補強することが望ましい。
【0066】
第1実施形態の第3変形例に係る無人検査システムでは、法面1の上端から2本の第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4Bで検査ユニット3を支え、かつ法面1の下端から2本の第1牽引ケーブル4C及び第2牽引ケーブル4Dで検査ユニット3を支えているので、上下方向や横方向からの強風に対する検査ユニット3のブレを防止できる。また、第1リール5A、第2リール5B、第3リール5C及び第4リール5Dと4つの位置制御支援機構を備えているので、位置制御支援機構の1台当たりに要求されるモータ出力を小さくできる。モータ出力が小さくなることは、第1リール5A、第2リール5B、第3リール5C及び第4リール5Dのサイズや重量を小さくできることを意味する。即ち、第3変形例に係る無人検査システムによれば、法面1の点検を行うに際し、第1リール5A、第2リール5B、第3リール5C及び第4リール5Dの運び込みや設置が楽になる。
【0067】
第1実施形態の第3変形例に係る無人検査システムによれば、法面等の点検対象の全域を2本の第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4B並びに2本の第1牽引ケーブル4C及び第2牽引ケーブル4Dで検査ユニット3を支えて効率良く移動可能であり、点検対象の主面に抉れた箇所があっても、自在に点検可能である。第2変形例に係る無人検査システムによれば、点検対象に法枠等の段差部があっても、段差部を乗り越え、全方位移動可能である。
【0068】
更に2本の第1懸架ケーブル4A及び第2懸架ケーブル4B並びに2本の第1牽引ケーブル4C及び第2牽引ケーブル4Dで検査ユニット3を支えているので、強風等の悪条件の下でも、墜落や衝突等の心配がなく、検査ユニット3の主要部が壊れて、点検作業が中断される不都合もなく、安全性、安定性及び信頼性が極めて高い。特に、第1実施形態に係る無人検査システムにおいて、第1懸架ケーブル4A、第2懸架ケーブル4B、第1牽引ケーブル4C又は第2牽引ケーブル4Dの少なくともいずれか1本に電力送電の機能を持たせれば、送電ケーブルを経由して搬送機構10に給電を行うことができるので、連続した長時間の点検でき、作業効率が高くなる。
【0069】
(第2実施形態)
第1実施形態に係る無人検査システムでは図2に示したような搬送機構10を保護する保護殻9として球状体を例示したが、無人の検査ユニット3の一部を構成する保護殻9の形状は球状体に限られることはない。本発明の第2実施形態に係る無人検査システムでは、点検器具21が搭載された搬送機構10を保護する保護殻9として、図26に示すような6面体の構造物を用いる場合を例示する。図26に示す第2実施形態に係る無人検査システムでは、6面体構造の保護殻9の一面に4つの車輪12A,12B,12C,12Dが設けられている。4つの車輪12A,12B,12C,12Dの形状は、図26に示すような形状に限定されるものではなく、法面1の主面に沿って自由に回転可能なように、3自由度を有する球状体であって、保護殻9の側面に付加されることが望ましい。
【0070】
例えば、図27に示すように、4つの車輪12La,12Lb,12Lc,12Ldを、いずれも図1に例示したような法枠2の段差を乗り越えるのに十分な大きさに構成してもよい。図27の車輪12La,12Lb,12Lc,12Ldは、例えば、法枠2の段差よりも大きい半径を有するように設定される。
【0071】
第2実施形態に係る無人検査システムによれば、図26に示すような車輪12A~12D,或いは図27に示すような車輪12La~12Ldを備えているので、検査ユニット3が効率良く移動可能であり、点検対象の主面に抉れた箇所があっても、自在に乗り越えて移動し、点検することが可能である。第2実施形態に係る無人検査システムは車輪12A~12D;12La~12Ldを備えているので、点検対象に法枠等の段差部があっても、段差部を乗り越え、全方位移動可能である。更に4本の保持ケーブル8A,8B,8C,8Dが頂部ジョイント6Aを介して懸架ケーブル4で支えられているので、検査ユニット3の墜落や衝突等の心配がない。よって、第2実施形態に係る無人検査システムによれば、検査ユニット3の主要部が壊れて、点検作業が中断される不都合もなく、安全性、安定性及び信頼性が極めて高い。特に、第1実施形態に係る無人検査システムと同様に懸架ケーブル4に電力送電の機能を持たせ、懸架ケーブル4を経由して搬送機構10に給電を行えば、連続して長時間点検できるので作業効率が高くなる。
【0072】
図28に示す第2実施形態の第1変型例に係る無人検査システムでは、保護殻9の6面体の一面には、大きな2つの大きな車輪12La,12Lcと小さな2つの車輪12Sb,12Sdを有する。図28に示すような第2実施形態に係る無人検査システムの場合は、2つの大きな車輪12La,12Lc側に検査ユニット3を移動させることで、検査ユニット3が法枠2の段差を乗り越えて、検査ユニット3による法面1の点検が可能となる。第2実施形態の第1変型例に係る無人検査システムによれば、大きな車輪12La,12Lcと小さな車輪12Sb,12Sdを備えているので、効率良く検査ユニット3が移動可能であり、抉れた法面1等の点検対象でも点検可能となる。又、第2実施形態の第4変型例に係る無人検査システムによれば、大きな車輪12La,12Lcと小さな車輪12Sb,12Sdを備えているので、法枠2等の段差を乗り越え可能である。図示を省略しているが、図26に示したのと同様な6面体で検査ユニット3が構成されて、懸架ケーブル4で支えられているので落下の心配もなく、検査ユニット3の主要部である点検器具21や搬送機構10が破壊されない。
【0073】
図29に示す第2実施形態の第2変型例に係る無人検査システムでは、2つの大きな車輪12La,12Lcと1つの小さな12Stを有する。図29に示す構造の場合も、2つの大きな車輪12La,12Lc側に第2実施形態に係る無人検査システムの検査ユニット3を移動させることで、法枠2の段差を乗り越えて、検査ユニット3による法面1の点検が可能となる。第2実施形態の第2変型例に係る無人検査システムによれば、大きな車輪12La,12Lcとの小さな12Stを有するので、効率良く検査ユニット3が移動可能であり、抉れた法面1等の点検対象でも点検可能となる。又、第2実施形態の第4変型例に係る無人検査システムによれば、大きな車輪12La,12Lcとの小さな12Stを有するので、法枠2等の段差を乗り越え可能である。図示を省略しているが、懸架ケーブル4で支えられているので、点検器具21を搭載した搬送機構10が破壊されず、落下もしない。
【0074】
図30に示す第2実施形態の第3変型例に係る無人検査システムでは、検査ユニット3を法面1上で移動させる手段としてクローラ13を使用する。クローラ13は、車輪に比べて、検査ユニット3が法枠2の段差を乗り越える機能に優れているため、クローラ13を使用することで、検査ユニット3が法枠2を確実に乗り越えることができる。図示を省略しているが、図26に示したのと同様な6面体で検査ユニット3が構成され、検査ユニット3が懸架ケーブル4で支えられている。このため、第2実施形態の第3変型例に係る無人検査システムにおいては、検査ユニット3の落下の心配もなく、検査ユニット3の主要部である点検器具21や搬送機構10が破壊されない。
【0075】
図31に示す第2実施形態の第4変型例に係る無人検査システムでは、検査ユニット3の移動手段として、ロッカーボギー機構を採用する。図31(a)において、車輪14dの紙面の裏に車輪14aが位置する。同様に車輪14eの紙面の裏に車輪14bが位置し、車輪14fの紙面の裏に車輪14cが位置する。紙面の表側のみに着目して説明すれば、車輪14eと車輪14fは、ほぼコの字型をなすボギーリンク72で接続されている。車輪14dとボギーリンク72は、腕の長さが異なるほぼコの字型をなすボロッカーリンク71で接続されている。ボギーリンク72とロッカーリンク71とは、ボギーリンク72の上辺側において、フリービボット74により回転自在に結合され、ボギーリンク72とロッカーリンク71の間の角度が自由に変化できる。ロッカーリンク71は保護殻9Rの中央で差動ジョイント73を用いて差動結合している。図示を省略した紙面の裏側も同様な構造である。図31に例示したようなロッカーボギー機構によれば、フリービボット74によりボギーリンク72とロッカーリンク71の間の角度が自由に変化できるので、6つの車輪14a~14fが小さくても、検査ユニット3が法枠2の段差を乗り越え易くなると共に、法枠2の抉れた部分にも第2実施形態に係る無人検査システムの検査ユニット3を移動させることができる。図示を省略しているが、図26に示したのと同様な6面体で検査ユニット3が構成され、検査ユニット3が懸架ケーブル4で支えられているので落下の心配がない。この結果、検査ユニット3の主要部である点検器具21や搬送機構10が破壊されない。
【0076】
図32に示すに示す第2実施形態の第5変型例に係る無人検査システムでは、検査ユニット3に対し、4つの全方位移動型車輪15a~14dを保護殻9Eの一面に使用する。図32に示す全方位移動型車輪15a~14dのそれぞれは、保護殻9に回転自在に連結されたシャフトを中心に回転する平行な2枚の回転面を近接して有する。それぞれの回転面の周辺には、回転面の回転方向と直交する方向に回転する3つの樽型のフリーローラと呼ばれる樽型車輪を有しており、1個の全方位移動型車輪は6個のフリーローラを有している。近接した2枚の回転面で1枚のホイールを構成し、ホイールの回転方向と,ホイールの回転方向と直交するフリーローラの回転方向へ自由に動くことができる。図32(a)に示す全方位移動型車輪15cは保護殻9Eから露出した下半分のホイールの構造を模式的に示し、紙面の表側の回転面の1個のフリーローラが一番下に、紙面の裏側の回転面の2個のフリーローラがその両側に見えている。図32(b)に示す全方位移動型車輪15aは、近接した2枚の回転面を上下方向に示す模式図で、6個のフリーローラの内4個のフリーローラが見えている。図32(b)に示す他の全方位移動型車輪15b~14dのそれぞれも、4個のフリーローラが見える場合を模式的に示している。図32に示す6個のフリーローラを有した全方位移動型車輪15a~14dは、最も単純な構造の例示であり、フリーローラの個数や配置方法等は多様に変更可能である。よって、全方位移動型車輪の構造は図32に例示した構造に限定されるものではない。図32に示すような4つの全方位移動型車輪15a~14dを、保護殻9Eの一面の各角部にそれぞれ用いれば、図2に示す3自由度を有する保護殻9と同様に、法面1上において第2実施形態に係る無人検査システムの検査ユニット3を自由に移動させることができる。このため、第2実施形態の第5変型例に係る無人検査システムによれば、効率良く検査ユニット3が移動可能であり、抉れた法面1等の点検対象でも点検可能となる。又、第2実施形態の第4変型例に係る無人検査システムによれば、法枠2等の段差を乗り越え可能であり、更に、点検器具21を搭載した搬送機構10が破壊されず、落下もしない。
【0077】
(第3実施形態)
第1実施形態に係る無人検査システムでは、無人の検査ユニット3の一部を構成する保護殻9として球状体の構造を例示したが、保護殻9の形状は一体の閉じた球状に限られるものではない。本発明の第3実施形態に係る無人検査システムでは、保護殻9として、図33に示すような2つの回転体である第1円盤9B1及び第2円盤9B2によって、搬送機構10を水平方向の両側から挟み込む分割型構造を採用している。回転体を構成する第1円盤9B1及び第2円盤9B2のそれぞれは、円形のリムを6本のスポークで車軸に位置するハブに結合した車輪の構造をなして、第八車型の構造を実現している。第1円盤9B1の中心に位置するハブと、第2円盤9B2の中心に位置するハブとを、図2の一点鎖線で示したピッチ軸に沿って一直線上に配置して第八車型の構造をなすことにより、第3実施形態に係る無人検査システムの検査ユニット3を自由に移動させることができる。
【0078】
第3実施形態に係る無人検査システムによれば、2つの回転体である第1円盤9B1及び第2円盤9B2によって、法面等の点検対象の全域を、検査ユニット3が効率良く移動可能であり、点検対象の主面に抉れた箇所があっても、検査ユニット3が自在に点検可能である。第3実施形態に係る無人検査システムによれば、点検対象に法枠等の段差部があっても、2つの回転体が段差部を乗り越え、全方位移動可能である。図33では図示を省略しているが、懸架ケーブル4によって、検査ユニット3が支えられているので、墜落や衝突等の心配がなく、検査ユニット3の主要部が壊れて、点検作業が中断される不都合もなく、安全性、安定性及び信頼性が極めて高い。特に、第1実施形態に係る無人検査システムと同様に懸架ケーブル4に電力送電の機能を持たせ、懸架ケーブル4を経由して搬送機構10に給電を行えば、連続して長時間点検できるので作業効率が高くなる。
【0079】
或いは、図34に示す第3実施形態の第1変型例に係る無人検査システムのように、それぞれ2つの円形リムを平行に配置した第1ルーンラート型円筒9C1及び第2ルーンラート型円筒9C2を分割型の保護殻9として採用することが可能である。第1ルーンラート型円筒9C1及び第2ルーンラート型円筒9C2のそれぞれにおいて、2つの円形リムの間には、一定ピッチで平行に横棒が配置されている。横棒が梯子状に配置され、2つの円形リムが互いに接続されて、フープ(操転器)の構造を構成している。図34に示すフープの構造においても、第1ルーンラート型円筒9C1を構成する2つの円形リムと、第1ルーンラート型円筒9C1の車軸に位置するハブの間には6本のスポークが配置され、耕運機の中耕車輪のような構成になっている。同様に、第2ルーンラート型円筒9C2を構成する2つの円形リムと、第2ルーンラート型円筒9C2の車軸に位置するハブの間には6本のスポークが配置され、耕運機の中耕車輪のような構成になっている。第1ルーンラート型円筒9C1の中心に位置するハブと、第2ルーンラート型円筒9C2の中心に位置するハブとを、図2の一点鎖線で示したピッチ軸に沿って一直線上に配置することにより、第3実施形態に係る無人検査システムの検査ユニット3を自由に移動させることができる。
【0080】
尚、図33に示した構造と図34に示した構造の相違点は、第1円盤9B1及び第2円盤9B2の線上の車輪の幅(太さ)と第1ルーンラート型円筒9C1及び第2ルーンラート型円筒9C2の帯状の車輪の幅が異なる点にある。図33に示した構造と図34に示した構造のどちらを選択するかは、点検の対象となる法面1の形状に基づき決定する。また、図35に示すように、搬送機構10を水平方向において挟み込む2つの第1半円球9E1及び第2半円球9E2の組み合わせであってもよい。
【0081】
図35に示す第3実施形態の第2変型例に係る無人検査システムの構造の場合にも、2つの第1半円球9E1及び第2半円球9E2は、一点鎖線で示したピッチ軸を中心に回転可能なように取り付けることが望ましい。第3実施形態の第2変型例に係る無人検査システムによれば、2つの回転体である第1半円球9E1及び第2半円球9E2によって、法面等の点検対象の全域を、検査ユニット3が効率良く移動可能であり、点検対象の主面に抉れた箇所があっても、検査ユニット3が自在に点検可能である。第3実施形態の第2変型例に係る無人検査システムによれば、点検対象に法枠等の段差部があっても、2つの回転体が段差部を乗り越え、全方位移動可能である。図35では図示を省略しているが、懸架ケーブル4によって、検査ユニット3が支えられているので、墜落や衝突等の心配がなく、検査ユニット3の主要部が壊れて、点検作業が中断される不都合もなく、安全性、安定性及び信頼性が極めて高い。特に、第1実施形態に係る無人検査システムと同様に、懸架ケーブル4に電力送電の機能を持たせ、懸架ケーブル4を経由して搬送機構10に給電を行えば、連続して長時間点検できるので作業効率が高くなる。
【0082】
また、無人の検査ユニット3の一部を構成する保護殻9は、図36の第3実施形態の第3変型例に係る無人検査システムに示すように、分割ラグビーボール型でもよい。図36に示す分割ラグビーボール型の場合にも、保護殻9は、一点鎖線で示したピッチ軸を中心に回転可能なように取り付けることが望ましい。点検器具21として打音装置を搬送機構10に搭載する場合は、打音装置の取り付けや動作の観点から、搬送機構10と法面1との間に障害物が存在しない図33~36に示すような分割型構造の保護殻9を採用することが望ましい。打音装置などの取り付けの観点からは、搬送機構10と法面1との間に保護殻9が存在しない部分がある図33及び図34に示した構造を採用することが望ましい。
【0083】
第3実施形態の第3変型例に係る無人検査システムによれば、効率良く検査ユニット3が移動可能であり、抉れた点検対象でも点検可能となる。又、第3実施形態の第3変型例に係る無人検査システムによれば、点検対象に存在する段差を乗り越え可能であり、且つ全方位移動可能であるという有利な弘果を奏することができる。更に、点検器具21を搭載した搬送機構10が破壊されず、落下もしない検査ユニットを用いた無人検査システムを実現できる。
【0084】
(第4実施形態)
第1実施形態に係る無人検査システムでは、無人の検査ユニット3の一部を構成する保護殻9に支援綱(懸架ケーブル)4が接続される構造を例示したが、懸架ケーブル4が接続される対象は保護殻9に限られるものではなく、検査ユニット3の一部であればよい。図37に示す本発明の第4実施形態に係る無人検査システムの検査ユニットの場合は、懸架ケーブル4が頂部ジョイントを介して点検器具21に直接接続される。第1実施形態に係る無人検査システムと同様に、点検器具21は搬送機構10に搭載されているが、搭載とは単に下部の部材の上に他の部材が乗るような構造に限定されるものではなく、点検器具21が搬送機構10の本体等に内蔵されるような態様でもよい。よって、第4実施形態に係る無人検査システムで、懸架ケーブル4が頂部ジョイントを介して点検器具21に直接接続されるという技術内容には、懸架ケーブル4搬送機構10の本体に直接接続される場合も含みうる概念である。
【0085】
即ち、図37は例示的な模式図であり、図37に示したような接続態様に限定されるものではない。第4実施形態に係る無人検査システムにおいては、点検器具21が搬送機構10の本体と一体不可分に構成される場合も含み得るので、点検器具21と一体不可分に構成された搬送機構10の本体に懸架ケーブル4が頂部ジョイントを介して接続されていてもよい。図37に示す検査ユニットの保護殻は、第3実施形態で図33を用いて説明した第八車型の構造をなす検査ユニットの構造に対応する。即ち、図37に示すように、互いに対向する第1円盤9B1と第2円盤9B2を車輪として、第八車のように、点検器具21を水平方向の両側から挟み込む構造を採用している。
【0086】
第1円盤9B1及び第2円盤9B2のそれぞれは、円形のリムを6本のスポークで車軸に位置するハブに結合した車輪の構造をなして、第八車と類似の構造をなしている。第1円盤9B1の中心に位置するハブと、第2円盤9B2の中心に位置するハブとを、一直線上に配置して第八車の構造をなし、第4実施形態に係る無人検査システムの検査ユニットを自由に移動させることができる。図37に示すように、検査ユニットに直接懸架ケーブル4を接続される場合、2つの第1円盤9B1及び第2円盤9B2は、検査ユニットと共に、懸架ケーブル4を軸としてヨー軸回転可能となる。
【0087】
第4実施形態に係る無人検査システムによれば、法面等の点検対象の全域を検査ユニット3が懸架ケーブル4で支えられて、効率良く点検対象の主面に沿って移動可能である。第4実施形態に係る無人検査システムによれば、点検対象の主面に抉れた箇所があっても、点検対象に法枠等の段差部があっても、抉れた箇所や段差部を乗り越え、全方位移動可能である。更に懸架ケーブル4で検査ユニット3を支えているので、墜落や衝突等の心配がなく、検査ユニット3の主要部が壊れて、点検作業が中断される不都合もなく、安全性、安定性及び信頼性が極めて高い。特に、第1実施形態に係る無人検査システムと同様に懸架ケーブル4に電力送電の機能を持たせ、懸架ケーブル4を経由して搬送機構10に給電を行えば、連続して長時間点検できるので作業効率が高くなる。
【0088】
図38に示す第4実施形態の第1変型例に係る無人検査システムは、図34に示した2つの円形リムを平行に配置した第1ルーンラート型円筒9C1及び第2ルーンラート型円筒9C2を保護殻9として用いた耕運機型の構造に対応する。図38に示す本発明の第4実施形態の第1変型例に係る無人検査システムの検査ユニットの場合も、懸架ケーブル4が頂部ジョイントを介して搬送機構10に搭載された点検器具21に直接接続される。第1ルーンラート型円筒9C1及び第2ルーンラート型円筒9C2のそれぞれにおいて、2つの円形リムの間には、一定ピッチで平行に横棒が配置されている。
【0089】
図38に示す耕運機型の構造においても、第1ルーンラート型円筒9C1を構成する2つの円形リムと、第1ルーンラート型円筒9C1の車軸に位置するハブの間には6本のスポークが配置されている。同様に、第2ルーンラート型円筒9C2を構成する2つの円形リムと、第2ルーンラート型円筒9C2の車軸に位置するハブの間には6本のスポークが配置されている。第1ルーンラート型円筒9C1の中心に位置するハブと、第2ルーンラート型円筒9C2の中心に位置するハブとを一直線上に配置することにより、第4実施形態に係る無人検査システムの検査ユニットを自由に移動させることができる。図38に示すように、点検器具21に直接懸架ケーブル4が接続され、互いに対向する第1ルーンラート型円筒9C1と第2ルーンラート型円筒9C2は、懸架ケーブル4を軸としてヨー軸回転可能となる。
【0090】
図39に示す第4実施形態の第2変型例に係る無人検査システム半球型検査ユニットは、図35に示す半球型検査ユニットに対応する。図39では、懸架ケーブル4がジョイントを介して、2つの半円球(保護殻)9E1,9E2の隙間から直接点検器具21に接続される。図39に示す本発明の第4実施形態の第2変型例に係る無人検査システムの場合も、2つの第1半円球9E1及び第2半円球9E2は、検査ユニットと共に、懸架ケーブル4を軸としてヨー軸回転可能となる。
【0091】
第4実施形態の第2変型例に係る無人検査システムによれば、効率良く検査ユニットが移動可能であり、抉れた点検対象でも点検可能となる。又、第4実施形態の第2変型例に係る無人検査システムによれば、点検対象に存在する段差を乗り越え可能であり、且つ全方位移動可能であるという有利な弘果を奏することができる。更に、点検器具21を搭載した搬送機構10が破壊されず、落下もしない。
【0092】
(その他の実施形態)
本発明は第1~第4実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0093】
例えば図40に示すように、搬送機構10を保護する保護殻は、搬送機構10の全体を覆う幅の広いルーンラート型円筒9Dであってもよい。図40に示すルーンラート型円筒9Dの2つの円形リムの間には横棒が梯子状に配置され、2つの円形リムが互いに接続されて、フープの構造を構成している。図40に示すフープの構造においても、ルーンラート型円筒9Dの両端面を構成する2つの円形リムと、ルーンラート型円筒9Dの車軸に位置するハブの間には6本のスポークが配置され、耕運機の中耕車輪のような構成になっている。2つの円形リムの中心に位置するハブを、図2の一点鎖線で示したピッチ軸に沿って一直線上に配置することにより、ピッチ軸を中心に回転し、ルーンラート型円筒9Dを自由に移動させることができる。
【0094】
図41に示すルーンラート型円筒9Dでは、懸架ケーブル4がジョイントとU型の剛性部材16を介してルーンラート型円筒に接続される。図41に示す構造の場合、ルーンラート型円筒9Dは、懸架ケーブル4を軸としてヨー軸回転可能となる。
【0095】
図42に示す半球型検査ユニットは、図35に示す半球型検査ユニットに対応する。図42では、懸架ケーブル4がジョイントとU型の剛性部材16を介して、第1半円球9E1及び第2半円球9E2に接続される。図42に示す構造の場合、第1半円球9E1及び第2半円球9E2は、懸架ケーブル4を軸としてヨー軸回転可能となる。
【0096】
尚、第1~第4実施形態やその変型例で説明したそれぞれの技術的思想の一部を適宜、互いに組み合わせることも可能である。例えば、図43(a)に示すように、検査ユニット3を1本の上方支援綱(懸架ケーブル)4Vにより、法面1の上端に配置された1つの上部位置制御支援機構(上部リール)5に接続し、1本の下方支援綱(牽引ケーブル)4Cにより、法面1の下端に配置された1つの下部位置制御支援機構(下部リール)5Cに接続してもよい。即ち、図43(a)に示す更に他の実施形態に係る無人検査システムにおいては、懸架ケーブル4Vの一端(第1の端部)は、検査ユニット3の一部を構成する保護殻9の上部側に取り付けられ、他端(第2の端部)は、上部リール5に巻回され長さが調整される。また、牽引ケーブル4Cの一端(第3の端部)は、検査ユニット3の一部を構成する保護殻9の下部側に取り付けられ、他端(第4の端部)は、下部リール5Cに巻回され長さが調整される。
【0097】
上部リール5及び下部リール5Cは、検査ユニット3の法面1に対する相対位置に応じて、それぞれ独立に、懸架ケーブル4V及び牽引ケーブル4Cを送り出し、又は巻き戻すことで、懸架ケーブル4V及び牽引ケーブル4Cの長さを調節する。また、上部リール5は、懸架ケーブル4Vが送り出される速度が閾値を超える場合に、懸架ケーブル4Vの送り出しをロックすることで、検査ユニット3の落下を防止する。また、図43(b)に示すように、予め、上部リール5を水平方向に移動させる上部レール11を法面1の上端に敷き、かつ下部リール5Cを水平方向に移動させる下部レール11Bを法面1の下端に敷いておけば、法面1の全ての点検領域をカバーできる。尚、図43(a)に示すように、法面1の上端のみに上部レール11を敷いておいてもよいし、図19に示したのと同様に、法面1の下端のみに下部レール11Bを敷いておいてもよい。
【0098】
図43(a)及び(b)に示す更に他の実施形態に係る無人検査システムでは、法面1の上端から1本の懸架ケーブル4Vで検査ユニット3を支え、かつ法面1の下端から1本の牽引ケーブル4Cで検査ユニット3を支えている。このため、更に他の実施形態に係る無人検査システムによれば、上下方向や横方向からの強風に対しても、検査ユニット3が流されず、安定して検査を行うことができる。図43(a)及び(b)に示す更に他の実施形態に係る無人検査システムによれば、法面等の点検対象の全域を懸架ケーブル4Vと牽引ケーブル4Cで検査ユニット3を支えて、効率良く移動可能であり、点検対象の主面に抉れた箇所があっても、自在に点検可能である。更に他の実施形態に係る無人検査システムによれば、点検対象に法枠等の段差部があっても、段差部を乗り越え、全方位移動可能である。更に懸架ケーブル4Vと牽引ケーブル4Cで検査ユニット3を支えているので、強風等の悪条件の下でも、墜落や衝突等の心配がなく、検査ユニット3の主要部が壊れて、点検作業が中断される不都合もなく、安全性、安定性及び信頼性が極めて高い。
【0099】
特に、図43(a)及び(b)に示す更に他の実施形態に係る無人検査システムにおいて、懸架ケーブル4V又は牽引ケーブル4Cの少なくとも1本に電力送電の機能を持たせ、送電ケーブルを経由して搬送機構10に給電を行えば、連続して長時間点検できるので作業効率が高くなる。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当と解釈しうる、特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0100】
1,1a,1b…法面、 2…法枠、 3…検査ユニット、 4,4A,4V…第1懸架ケーブル、 4B…第2懸架ケーブル、 4C…牽引ケーブル(第1牽引ケーブル)、 4D…第2牽引ケーブル、 5…位置制御支援機構(リール)、 A…第1リール、 5B…第2リール、 5C…第3リール、 5D…第4リール、 6A…頂部ジョイント、 6A1…第1頂部ジョイント、 6A2…第2頂部ジョイント、 6A3…底部ジョイント(第1底部ジョイント)、 6A4…第2底部ジョイント、 6B1…第1水平ジョイント、6B2…第2水平ジョイント、 7…頂部リング、 7A…第1頂部リング、 7B…第2頂部リング、 7’,7C…底部リング(第1底部リング)、 7D…第2底部リング、 8…殻保持部、 8’…補助殻保持部、 9…保護殻, 9B1…第1円盤、 9B2…第2円盤、 9C1…第1ルーンラート型円筒、 9C2…第2ルーンラート型円筒、 9D…ルーンラート型円筒、 9E1…第1半円球、 9E2…第2半円球、 9p1,9p2,9p3,9r、9B1,9B2、9E、9R…保護殻、 10,10q,10r…搬送機構、 11,11A,11B…移動用レール、 12A,12B,12C,12D,12La,12Lb,12Lc,12Ld、12Sb,12Sd,14a~14f,15…車輪、 15a~14d…全方位移動型車輪、 13…クローラ、 16…剛性部材、 16a…第1剛性部材、 16b…第2剛性部材、 21…点検器具
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