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特許7445237複合成形体、構造体、および複合成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】複合成形体、構造体、および複合成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/04 20060101AFI20240229BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240229BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20240229BHJP
   A47G 21/00 20060101ALI20240229BHJP
   C08G 18/64 20060101ALI20240229BHJP
   B09B 101/70 20220101ALN20240229BHJP
【FI】
B32B15/04 Z
A23L5/00 A
B29C65/02
A47G21/00
C08G18/64 084
C08G18/64 092
B09B101:70
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022157965
(22)【出願日】2022-09-30
【審査請求日】2022-10-17
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522346969
【氏名又は名称】fabula株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512174446
【氏名又は名称】株式会社MURONE
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】室根 貴之
(72)【発明者】
【氏名】松野 元樹
(72)【発明者】
【氏名】南部 元洋
(72)【発明者】
【氏名】ラー・ティ・ホア
(72)【発明者】
【氏名】町田 紘太
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-044958(JP,A)
【文献】特開2014-019034(JP,A)
【文献】特表平08-500547(JP,A)
【文献】特開2017-081036(JP,A)
【文献】特開平04-114609(JP,A)
【文献】特開平09-241396(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0394994(US,A1)
【文献】町田 紘太ほか,可食性の材料を用いた新建設材料の開発,日本材料学会学術講演会講演論文集,日本材料学会,2021年05月29日,223
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 43/00-43/58
B29C 63/00-63/48、65/00-65/82
A23L 5/00- 5/30、29/00-29/10
B27N 1/00- 9/00
A47G 21/00-23/16
C08H 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料と、前記金属材料に接合された天然有機材料とを含む複合成形体であって、
前記天然有機材料は、糖、リグニン、セルロース、ヘミセルロース、およびタンパク質からなる群より選択される1以上を含み、
前記天然有機材料は、熱圧縮された形態であり、
前記天然有機材料は、セロリ、酒粕、コーヒー、およびささみからなる群より選択された1以上である
複合成形体(ただし、前記金属材料が前記複合成形体の表面に設けられた金属箔または金属薄片であるもの、前記天然有機材料がオイルパームの樹皮からなるオイルパーム薄板であって前記金属材料がオイルパーム薄板間に配設されてオイルパーム薄板と一体に接合された網であるもの、および、前記天然有機材料がデンプン発泡体であるものを除く)。
【請求項2】
金属材料と、前記金属材料に接合された天然有機材料とを含む、食卓器具用の複合成形体であって、
前記天然有機材料は、糖、リグニン、セルロース、ヘミセルロース、およびタンパク質からなる群より選択される1以上を含み、
前記天然有機材料は、熱圧縮された形態であり、
前記天然有機材料は、食品廃棄物を含む
合成形体(ただし、前記金属材料が前記複合成形体の表面に設けられた金属箔または金属薄片であるもの、前記天然有機材料がオイルパームの樹皮からなるオイルパーム薄板であって前記金属材料がオイルパーム薄板間に配設されてオイルパーム薄板と一体に接合された網であるもの、および、前記天然有機材料がデンプン発泡体であるものを除く)
【請求項3】
前記天然有機材料を含む有機材料部と、
前記金属材料を含み、前記有機材料部と接触している金属材料部と、
を有する、
請求項1または2に記載の複合成形体。
【請求項4】
前記複合成形体の全体の平均密度が5g/cm以下であり、
3点曲げ強度が3MPa以上である、
請求項1または2に記載の複合成形体。
【請求項5】
請求項1または2に記載の複合成形体を含む構造体。
【請求項6】
天然有機材料および金属材料から複合成形体(ただし、前記金属材料が前記複合成形体の表面に設けられた金属箔または金属薄片であるもの、前記天然有機材料がオイルパームの樹皮からなるオイルパーム薄板であって前記金属材料がオイルパーム薄板間に配設されてオイルパーム薄板と一体に接合された網であるもの、および、前記天然有機材料がデンプン発泡体であるものを除く)を製造する方法であって、
前記天然有機材料を加熱しながらまたは加熱した状態で加圧する熱圧縮ステップと、
前記天然有機材料を前記金属材料に接合する接合ステップと、
を含み、
前記天然有機材料は、糖、リグニン、セルロース、ヘミセルロース、およびタンパク質からなる群より選択される1以上を含み、
前記天然有機材料は、セロリ、酒粕、コーヒー、およびささみからなる群より選択された1以上である
複合成形体の製造方法。
【請求項7】
天然有機材料および金属材料から食卓器具用の複合成形体(ただし、前記金属材料が前記複合成形体の表面に設けられた金属箔または金属薄片であるもの、前記天然有機材料がオイルパームの樹皮からなるオイルパーム薄板であって前記金属材料がオイルパーム薄板間に配設されてオイルパーム薄板と一体に接合された網であるもの、および、前記天然有機材料がデンプン発泡体であるものを除く)を製造する方法であって、
前記天然有機材料を加熱しながらまたは加熱した状態で加圧する熱圧縮ステップと、
前記天然有機材料を前記金属材料に接合する接合ステップと、
を含み、
前記天然有機材料は、糖、リグニン、セルロース、ヘミセルロース、およびタンパク質からなる群より選択される1以上を含み、
前記天然有機材料は、食品廃棄物を含み、
前記熱圧縮ステップにおいて、前記天然有機材料は、前記天然有機材料の特性温度以上の所定温度に加熱され、
前記特性温度は、
(1)前記天然有機材料が糖を含む場合には、前記糖のガラス転移点であり、
(2)前記天然有機材料がリグニン、セルロース、およびヘミセルロースの1以上を含む場合には、リグニン、セルロース、またはヘミセルロースが流動化する最小の温度であり、
(3)前記天然有機材料がタンパク質を含む場合には、前記タンパク質の変性温度であり、
(4)前記(1)~(3)の2以上に該当する場合には、(1)~(3)に規定される温度のうち最小の温度である
合成形体の製造方法。
【請求項8】
前記熱圧縮ステップにおいて、前記天然有機材料は、50℃以上300℃以下の温度に加熱される、
請求項6または7に記載の複合成形体の製造方法。
【請求項9】
前記接合ステップにおいて、前記天然有機材料は、前記金属材料に対して圧着、圧接、接着、篏合、係合、締結、結束、溶接、融着、溶着、またはろう付けによって接合される、
請求項6または7に記載の複合成形体の製造方法。
【請求項10】
前記天然有機材料を含む乾燥材料を調製するステップをさらに含む、
請求項6または7に記載の複合成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複合成形体、構造体、および複合成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料は、一般に高い強度および加工性を有するが、軽元素を使用した材料に比べると軽量性が十分でない場合がある。そこで、金属材料と軽元素材料とを組み合わせた複合材料が開発されている(特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-050630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、十分な軽量性と強度特性とを両立させることには依然として課題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、軽量性および強度を両立させることができる複合成形体、構造体、および複合成形体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を含み得る。
[1]金属材料と、前記金属材料に接合された天然有機材料とを含む複合成形体。
[2]前記天然有機材料は、糖、リグニン、セルロース、ヘミセルロース、およびタンパク質からなる群より選択される1以上を含む、[1]に記載の複合成形体。
[3]前記天然有機材料は、少なくとも部分的に食品廃棄物を原料とする、[1]または[2]に記載の複合成形体。
[4]前記複合成形体中の前記天然有機材料は、圧縮された形態である、[1]または[2]に記載の複合成形体。
[5]前記天然有機材料を含む有機材料部と、前記金属材料を含み、前記有機材料部と接触している金属材料部と、
を有する、[1]~[4]のいずれか一項に記載の複合成形体。
[6]前記複合成形体の全体の平均密度が5g/cm以下であり、3点曲げ強度が3MPa以上である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の複合成形体。
[7][1]~[6]のいずれか一項に記載の複合成形体を含む構造体。
[8]天然有機材料および金属材料から複合成形体を製造する方法であって、前記天然有機材料を加熱しながらまたは加熱した状態で加圧する熱圧縮ステップと、前記天然有機材料を前記金属材料に接合する接合ステップと、を含む、複合成形体の製造方法。
[9]前記天然有機材料は、糖、リグニン、セルロース、ヘミセルロース、およびタンパク質からなる群より選択される1以上を含む、[8]に記載の複合成形体の製造方法。
[10]前記熱圧縮ステップにおいて、前記天然有機材料は、前記天然有機材料の特性温度以上の所定温度に加熱され、前記特性温度は、(1)前記天然有機材料が糖を含む場合には、前記糖のガラス転移点であり、(2)前記天然有機材料がリグニン、セルロース、およびヘミセルロースの1以上を含む場合には、リグニン、セルロース、またはヘミセルロースが流動化する最小の温度であり、(3)前記天然有機材料がタンパク質を含む場合には、前記タンパク質の変性温度であり、(4)前記(1)~(3)の2以上に該当する場合には、(1)~(3)に規定される温度のうち最小の温度である、[9]に記載の複合成形体の製造方法。
[11]前記熱圧縮ステップにおいて、前記天然有機材料は、50℃以上300℃以下の温度に加熱される、[8]~[10]のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
[12]前記接合ステップにおいて、前記天然有機材料は、前記金属材料に対して圧着、圧接、接着、篏合、係合、締結、結束、溶接、融着、溶着、またはろう付けによって接合される、[8]~[11]のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
[13]前記天然有機材料を含む乾燥材料を調製するステップをさらに含む、[8]~[12]のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軽量性および強度を両立させることができる複合成形体、構造体、および複合成形体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1構造を有する複合成形体の斜視図である。
図2】第2構造を有する複合成形体の斜視図である。
図3】第3構造を有する複合成形体の斜視図である。
図4】第4構造を有する複合成形体の斜視図である。
図5】第4構造を有する複合成形体を図4の線V-Vで切断した断面図である。
図6】第5構造を有する複合成形体の斜視図である。
図7】第5構造を有する複合成形体の上面図である。
図8】第5構造を有する複合成形体を図7の線VIII-VIIIで切断した断面図である。
図9】各実施例の曲げ強度を示すグラフである。
図10】各実施例の単位質量当たりの曲げ強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の複合成形体、構造体、および複合成形体の製造方法について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、実施形態の各構成および各特徴は、任意に組み合わせることが可能である。
【0010】
[1.複合成形体]
一実施形態によれば、金属材料と、金属材料に接合された天然有機材料とを含む複合成形体が提供される。
本明細書において、「接合」とは、物理的、機械的、または化学的に2以上の対象物を繋ぎ合わせることを意味し、圧着、圧接、接着、篏合、係合、締結、結束、溶接、融着、溶着、ろう付けなどを含む。「接合」には、接着剤、粘着剤といった天然有機材料および金属材料とは別の任意の結合手段が天然有機材料と金属材料との間に介在する方法や、ねじ、ヘリサート、釘、バンドなど任意の固定手段を使用して行われる方法も含まれる。
【0011】
<1-1.複合成形体の形態>
(1-1-1.複合成形体の例)
以下、図1図8を参照して、複合成形体の例を説明するが、複合成形体の形態は特に限定されず、任意の形状、構造、模様、色彩などを有し得る。
【0012】
(1-1-1-1.第1構造を有する複合成形体)
図1を参照して、第1構造を有する複合成形体1について説明する。
図1は、第1構造を有する複合成形体1の斜視図である。
【0013】
図1に示すように、第1構造を有する複合成形体1は、板状に成形される。複合成形体1は、第1構造として、有機材料部10の内部に板状の金属材料部20(図中に破線で示す)が内蔵された構造を有する。有機材料部10は、金属材料部20に接触している。具体的には、金属材料部20の全体が有機材料部10によって包まれるように、金属材料部20の全面が有機材料部10に覆われている。すなわち、複合成形体1は、コア部として金属材料部20を含み、シェル部として有機材料部10を含む。第1構造では、金属材料部20の形状は、複合成形体1の全体形状を略縮小した形状に対応する。このような形状により、複合成形体1全体の強度を向上させることができる。
【0014】
有機材料部10は、天然有機材料を含み、好ましくは天然有機材料のみからなる。好ましくは、有機材料部10は、圧縮された形態の天然有機材料を含む。金属材料部20は、金属材料を含み、好ましくは金属材料のみからなる。このように、天然有機材料を含む有機材料部10と、金属材料を含み、有機材料部10と接触している金属材料部20と、を含むことにより、複合成形体1は、軽量性と強度特性とを両立させることができる。このような板状の複合成形体1は、たとえば、建設物、家具、雑貨などの材料として使用可能である。
【0015】
(1-1-1-2.第2構造を有する複合成形体)
図2を参照して、第2構造を有する複合成形体2について説明する。
図2は、第2構造を有する複合成形体2の斜視図である。
【0016】
図2に示すように、第2構造を有する複合成形体2は、板状に成形される。複合成形体2は、第2構造として、有機材料部10の内部に格子状の金属材料部20(図中に破線で示す)が内蔵された構造を有する。格子状の金属材料部20は、8本の金属製の棒状部材が組み合わされて形成される。第2構造では、金属材料部20は、板状の有機材料部10を補強する骨材として機能する。このような形状により、複合成形体2全体の強度を向上させることができる。上記の点を除き、複合成形体2は、図1に示す複合成形体1と同様である。
【0017】
(1-1-1-3.第3構造を有する複合成形体)
図3を参照して、第3構造を有する複合成形体3について説明する。
図3は、第3構造を有する複合成形体3の斜視図である。
【0018】
図3に示すように、第3構造を有する複合成形体3は、板状に成形される。複合成形体3は、第3構造として、有機材料部10の内部に棒状の金属材料部20(図中に破線で示す)が内蔵された構造を有する。金属材料部20は、4本の金属製の棒状部材から構成される。第3構造では、金属材料部20は、板状の有機材料部10を補強する骨材として機能する。このような形状により、複合成形体3全体の強度を向上させることができる。金属材料部20を形成する棒状部材の太さは、特に限定されないが、たとえば、0.1mm以上10cm以下、0.5mm以上5cm以下、または1mm以上1cm以下である。上記の点を除き、複合成形体3は、図2に示す複合成形体2と同様である。
【0019】
以上説明した第1構造、第2構造、および第3構造は、いずれも複合成形体が板状を有するものであるが、他の任意の構造においても上記のような有機材料と金属材料との配置関係が適用可能である。複合成形体の形状の例として、板状の他、棒状、箱状、球状、枠状、これらを組み合わせた形状などが挙げられる。こうした種々の形状において、金属材料部20が、有機材料部10の内部に、有機材料部10よりも一回り小さい形状を有して設けられてもよく、有機材料部10を支持する骨材やフレーム構造として設けられてもよい。逆に、有機材料部10が金属材料部20の内部に設けられてもよい。この場合、複合成形体の外面に金属材料部20が露出する。
【0020】
なお、有機材料部10と金属材料部20との配置関係は、一方が他方の内部に位置するものには限定されない。たとえば、有機材料部10と金属材料部20とが隣接するように接合されてもよく、有機材料部10と金属材料部20とが層状に配置されてもよく、その他の任意の配置関係を取ってもよい。以下、第4構造および第5構造を参照して、複合成形体の構造例をさらに説明する。
【0021】
(1-1-1-4.第4構造を有する複合成形体)
図4および図5を参照して、第4構造を有する複合成形体4について説明する。
図4は、第4構造を有する複合成形体4の斜視図である。
図5は、第4構造を有する複合成形体4を図4の線V-Vで切断した断面図である。
【0022】
図4に示すように、第4構造を有する複合成形体4は、一対の箸として成形される。図4および図5に示すように、複合成形体5は、分離不能に構成された持ち手部40および先端部42を含む。図6に示すように、持ち手部40は、内部に芯材240が金属材料部20として設けられ、芯材240を取り囲む外殻140が有機材料部10として設けられる。先端部42は、全体が金属材料部20として設けられる。天然有機材料で構成される外殻140の内部に、金属材料を含む芯材240を設けることによって、芯材240は、持ち手部40を補強する骨材として機能する。これにより、複合成形体4は、衝撃や曲げる力に強くなる。さらに、力がかかりやすい先端部42を金属材料部20として成形することにより、箸としての強度特性および機能性を損なうことなく、複合成形体4を軽量化することができる。
【0023】
複合成形体4の製造方法は、特に限定されない。たとえば、先端部42および芯材240を一体の金属材料部20として成形した後、芯材240の周りに有機材料部10として外殻140を形成してもよい。先端部42と芯材240とを別部材としてそれぞれ成形し、芯材240の周りに外殻140を形成することによって持ち手部40を成形した後、持ち手部40と先端部42とを接合してもよい。その他、任意の製造方法が使用可能である。
【0024】
(1-1-1-5.第5構造を有する複合成形体)
図6図8を参照して、第5構造を有する複合成形体5について説明する。
図6は、第5構造を有する複合成形体5の斜視図である。
図7は、第5構造を有する複合成形体5の上面図である。
図8は、第5構造を有する複合成形体5を図7の線VIII-VIIIで切断した断面図である。
【0025】
図6に示すように、第5構造を有する複合成形体5は、湯飲み、お猪口、茶碗などとして使用可能な食卓容器として成形される。図6に示すように、複合成形体5は、分離不能に構成された本体上部50、本体下部52、および脚部54を含む。複合成形体5は、複合成形体1~4と同様に、天然有機材料を含む有機材料部10と、金属材料を含む金属材料部20と、を有する。図6図8に示すように、本体上部50は、金属材料部20として設けられ、本体下部52は、有機材料部10および金属材料部20の2層構造として設けられ、脚部54は、有機材料部10として設けられる。図8に示すように、食卓容器の内面を構成する内側面250および内底面252は、金属材料部20によって形成される。このように飲食品に直接接触する部分を金属材料で形成することにより、軽量化のための天然有機材料として、水に弱い材料でも使用することができる。
【0026】
本体下部52を形成する金属材料部20の外側面には、3本の環状の溝254が形成される。溝254は、本体下部52を形成する金属材料部20の外側面上の円周全体に沿って設けられる。複合成形体5の製造においては、まず金属材料部20を成形した後、複合成形体5の陰型に金属材料部20および天然有機材料を投入して、熱圧縮成形を行うことができる。これにより、天然有機材料が溝254内に入り込んだ状態で成形が行われる。この場合、単に両材料が面接触した状態で成形する場合に比べて、有機材料部10と金属材料部20とを強固に接合することができる。
【0027】
(1-1-1-6.その他の構造を有する複合成形体)
複合成形体の構造は、上記の第1構造~第5構造に限定されない。たとえば、有機材料部10と金属材料部20とが別々に成形された後、任意の接合方法によって互いに接合されてもよい。有機材料部10と金属材料部20とは互いに接触していてもよく、有機材料部10と金属材料部20との間に別の物質(たとえば、接着剤、粘着剤など)が介在してもよい。有機材料部10と金属材料部20とが、ねじなど別途の固定手段によって互いに接合されてもよい。有機材料部10と金属材料部20とを互いに対応する形状(たとえば、篏合可能な凹形状および凸形状、螺合可能な雄ねじ形状および雌ねじ形状など)に成形し、有機材料部10と金属材料部20とを互いに結合してもよい。その他、任意の構造が採用可能である。
【0028】
なお、複合成形体は、有機材料部10と金属材料部20とが区別可能に形成されているものに限定されない。たとえば、天然有機材料の粉末と金属材料の粉末との混合粉末が、所定の形状に圧縮成形されてもよい。
【0029】
(1-1-2.有機材料部と金属材料部との接合部)
複合成形体が有機材料部10および金属材料部20を有する場合における、有機材料部10と金属材料部20との接合部について説明する。
【0030】
好ましくは、接合部は、天然有機材料と金属材料とを強く接合するために、一定の凹凸形状を有する。すなわち、有機材料部10および金属材料部20は、互いに対応する凹凸形状を有することが好ましい。このような凹凸形状が噛み合うことによって、有機材料部10および金属材料部20が互いに強く接合され得る。
【0031】
たとえば、有機材料部10と金属材料部20とが互いに接触している界面のJIS B 0601:2013に準拠して測定した算術平均粗さRaは、1.6μm以上であってよい。本発明者らは、後述の実験例を含む検討により、界面の算術平均粗さRaが1.6μm以上である場合には有機材料部10と金属材料部20との接合が十分に強化されることを見出した。たとえば、金属材料部20の表面を、算術平均粗さRaが1.6μ以上となるようにわざと粗く仕上げることにより、有機材料部10と金属材料部20とが強固に接合される。
【0032】
上記の凹凸形状は、ランダムな表面粗さによるものであってもよく、規則的なパターンであってもよく、これらの両方であってもよい。凹凸形状の具体的な形態は特に限定されないが、有機材料部10と金属材料部20とが単に平面的に接触するのではなく、少なくとも部分的に3次元的に接触するような形態であることが好ましい。
【0033】
たとえば、金属材料部20の接合面に、上記のような表面粗さの代わりに、または表面粗さに加えて、窪み、突起、打痕、溝(たとえば、上記第5構造の溝254)などが設けられ得る。この場合、金属材料部20と接合される有機材料部10の接合面には、金属材料部20の凹凸形状に対応する凸凹形状が形成され得る。これにより、有機材料部10と金属材料部20との接合を強化して、有機材料部10と金属材料部20とが分離するのを抑制することができる。
【0034】
(1-1-3.複合成形体の用途)
複合成形体の用途は特に限定されない。たとえば、複合成形体は、建材、建築物、食卓器具、家具、敷物、容器、インテリア雑貨、装飾品などとして使用され得る。これらの建材等は、熱成形体のみから成るものに限定されず、熱成形体に加えて別の部品や部材を含んでもよい。複合成形体の使用後、複合成形体の有機材料部10は、肥料などとして再利用されてよい。複合成形体の金属材料部20は、金属材料として再利用されてよい。
【0035】
<1-2.複合成形体の材料>
(1-2-1.天然有機材料)
本明細書において、「天然有機材料」とは、天然に存在する有機化合物またはその誘導体を意味する。
【0036】
複合成形体に含まれる天然有機材料の種類は特に限定されない。天然有機材料の例として、糖、リグニン、セルロース、ヘミセルロース、タンパク質(たとえば、変性したタンパク質)などが挙げられる。これらが任意に組み合わされて使用されてもよい。 複合成形体の原料となる天然有機材料は、熱圧縮によって複合成形体の強度を向上させる機能を有し得る。
【0037】
本発明を理論により拘束するものではないが、本発明において糖を含む天然有機材料の熱圧縮成形によって高い強度が得られるメカニズムとして、以下が考えられる。すなわち、糖のガラス転移点以上の成形温度で熱圧縮成形を行うことにより、材料中の糖が融解して接着剤のように機能し、成形体の形状を維持するとともに強度を向上させ得る。また、糖が融解した状態で材料が圧縮されるので、有機材料部の内部および有機材料部と金属材料部との界面に空隙が少ない複合成形体が形成され得る。
【0038】
本発明を理論により拘束するものではないが、本発明において、リグニン、セルロース、またはヘミセルロースを含む天然有機材料の熱圧縮成形によって高い強度が得られるメカニズムとして、以下が考えられる。すなわち、リグニン、セルロース、またはヘミセルロースは、高温で流動化して、糖と同様に接着剤のように機能し、成形体の形状を維持するとともに強度を向上させ得る。また、リグニン、セルロース、またはヘミセルロースが流動化した状態で材料が圧縮されるので、糖と同様に、有機材料部の内部および有機材料部と金属材料部との界面に空隙が少ない複合成形体が形成され得る。
【0039】
本発明を理論により拘束するものではないが、本発明において、タンパク質を含む天然有機材料の熱圧縮成形によって高い強度が得られるメカニズムとして、以下が考えられる。すなわち、加熱された天然有機材料中のタンパク質が、変性温度以上の温度で変性し、硬化することにより、最終的な複合成形体全体の強度が向上し得る。また、熱圧縮成形では、タンパク質が圧縮された状態で変性によって硬化するので、内部の空隙が少ない成形体が形成され得る。
【0040】
たとえば、天然有機材料は、少なくとも部分的に食品廃棄物を原料とする。本明細書において「食品廃棄物」とは、食品が食用に供された後に廃棄されたもの、若しくは食用に供されなかったもの、又は食品の製造、加工若しくは調理の過程において副次的に得られた物品のうち食用に供することができないものを意味する。好ましくは、天然有機材料は、糖、リグニン、セルロース、ヘミセルロース、および/またはタンパク質を含む食品廃棄物を少なくとも部分的に原料とする。
【0041】
廃棄材料に含まれる食品廃棄物は、例えば、食品の不可食部である。本明細書において「不可食部」とは、食品の製造、加工又は調理の過程において副次的に得られた物品のうち食用に供することができないものを意味する。不可食部の例として、野菜や果物の皮、種、芯、肉や魚の骨、鱗などが挙げられるが、容器包装など本質的に食品に由来しないものは含まれない。
【0042】
食品の例として、植物性食品、動物性食品などが挙げられる。植物性食品の例として、野菜、果物、穀物、芋類、茸類、可食性の海藻などが挙げられる。野菜の例として、セロリ、カボチャ、キャベツ、レタス、玉ねぎ、人参、大根、ゴボウ、白菜、ブロッコリー、カリフラワー、ほうれん草、小松菜、チンゲン菜、トマト、スイカ、メロン、ピーマン、パプリカ、キュウリ、タケノコ、茶葉などが挙げられる。果物の例として、レモン、オレンジ、蜜柑、伊予柑、イチゴ、バナナ、カシス、林檎、柿、梨、サクランボ、パイナップル、ブドウ、ブルーベリー、桃などが挙げられる。穀物の例として、米、麦、コーヒー豆、酒粕、トウモロコシ、キビ、アワ、ヒエ、枝豆、大豆、小豆、エンドウ豆などが挙げられる。芋類の例として、ジャガイモ、サツマイモ、むらさき芋、サトイモ、長芋、山芋などが挙げられる。茸類の例として、椎茸、舞茸、エノキ茸、シメジ、ナメコ、マッシュルームなどが挙げられる。可食性の海藻として、アオサ、ワカメ、コンブ、メカブ、ヒジキ、ノリなどが挙げられる。動物性食品の例として、肉、卵、乳製品、魚介類などが挙げられる。肉の例として、牛肉、豚肉、鶏肉、鹿肉、馬肉などが挙げられる。卵の例として、鶏卵が挙げられる。乳製品の例として、チーズ、バター、ヨーグルトなどが挙げられる。魚介類の例として、魚、貝、エビ、カニ、タコ、イカなどが挙げられる。成形体の材料として食材を使用することにより、材料に応じた質感、色合い、香りなどを有する様々な成形体を用途に応じて提供することができる。
【0043】
食品の不可食部の例として、野菜、果物、芋類であれば皮、種、茎など、穀物であれば殻、皮など、茸類であれば茎、菌床、石づきなど、肉であれば骨など、卵であれば殻など、魚介類の骨や鱗、甲殻など(例えば、魚の皮、エビやカニの殻、貝殻)が挙げられる。
【0044】
天然有機材料は、リグニン、セルロース、またはヘミセルロースを含む木材、木くず、草、繊維材料、紙、布などであってもよく、これらを原料とするものであってもよい。これらが任意に組み合わされて使用されてもよい。
【0045】
複合成形体における天然有機材料の含有量は、たとえば、1質量%以上99質量%以下である。天然有機材料の含有量が1質量%未満である場合、十分な軽量化効果が得られない可能性がある。天然有機材料の含有量が99質量%を超える場合、十分な強度が得られない可能性がある。たとえば、天然有機材料の含有量は、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、または90質量%以上であってよい。また、天然有機材料の含有量は、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下60質量%以下、または50質量%以下であってよい。
【0046】
(1-2-2.金属材料)
本明細書において、「金属材料」とは、伝導体と価電子帯との間にバンドギャップを有しない任意の材料を意味する。
【0047】
複合成形体に含まれる金属材料の種類は特に限定されない。金属材料の例として、SS材、S-C材、H鋼、SK材、SUS材、SUH材などの鉄鋼材料の他、アルミニウムおよびアルミニウム合金、銅および銅合金、チタンおよびチタン合金、マグネシウムおよびマグネシウム合金、ニッケルおよびニッケル合金、亜鉛および亜鉛合金、スズおよびスズ合金などが挙げられる。これらが任意に組み合わされて使用されてもよい。
【0048】
複合成形体における金属材料の含有量は、たとえば、1質量%以上99質量%以下である。金属材料の含有量が1質量%未満である場合、十分な強度が得られない可能性がある。金属材料の含有量が99質量%を超える場合、十分な軽量化効果が得られない可能性がある。たとえば、金属材料の含有量は、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、または30質量%以上であってよい。また、金属材料の含有量は、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、または10質量%以下であってよい。
【0049】
(1-2-3.その他の材料)
複合成形体は、天然有機材料および金属材料以外に、任意の追加の材料を含んでもよい。追加の材料の例としては、プラスチック材料、セラミックス材料、ガラス、砂、土、粘土、砂利、石、セメント、コンクリートなどが挙げられる。プラスチック材料の例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
【0050】
複合成形体は、天然有機材料および金属材料以外に、任意の添加剤を含んでもよい。添加剤の例としては、補強材、接着剤、凝固剤、酸化防止剤、難燃剤、塗料、着色料、付香剤などが挙げられる。その他、複合成形体に求められる特性に応じて、任意の材料を添加することができる。
【0051】
<1-3.複合成形体の特性および機能>
次いで、複合成形体の特性および機能について説明する。
【0052】
複合成形体は、天然有機材料の軽量性と、金属材料の強度とを併せ持つ。天然有機材料が加熱によって成形体の強度を向上させる機能を有することにより、成形体を軽量化しつつ必要な強度を維持することができる。加熱によって強度を向上させる天然有機材料の例としては、高温で流動化して接着性材料として作用する糖、リグニン、セルロース、またはヘミセルロース、高温で変性して硬質化するタンパク質などが挙げられる。
【0053】
上記のように、圧縮された形態の有機材料部は、天然有機材料の熱圧縮によって、高い圧縮強度を有する。複合成形体は、圧縮強度に優れる有機材料部と、引張強度および弾性に優れる金属材料部とを併せ持つことにより、様々な力学的作用に対して高い抵抗性を有することができる。
【0054】
複合成形体は、用途に応じて、任意の大きさ、形状、構造、密度、および質量を有するように成形される。たとえば、複合成形体の大きさは、1mm以上、1cm以上、10cm以上、50cm以上、1m以上、又は10m以上であってよく、100m以下、50m以下、又は20m以下であってよい。
【0055】
たとえば、複合成形体の全体の平均密度は、0.5g/cm以上、1g/cm以上、1.5g/cm以上、2g/cm以上、2.5g/cm以上、または3g/cm以上であってよい。複合成形体の全体の平均密度は、たとえば、5g/cm以下、4.5g/cm以下、4g/cm以下、3.5g/cm以下、または3g/cm以下であってよい。
【0056】
複合成形体における有機材料部の体積Vと金属材料部の体積Vとの比V/Vは、特に限定されないが、たとえば、0.1以上10以下である。たとえば、V/Vは、0.2以上、0.3以上、0.5以上、0.7以上、または1以上であってよい。たとえば、V/Vは、7以下、5以下、2以下、または1以下であってよい。
【0057】
複合成形体における有機材料部の質量mと金属材料部の質量mとの比m/mは、特に限定されないが、たとえば、0.1以上10以下である。たとえば、m/mは、0.2以上、0.3以上、0.5以上、0.7以上、または1以上であってよい。たとえば、m/mは、7以下、5以下、2以下、または1以下であってよい。
【0058】
複合成形体の曲げ強度は、JIS A 1509-4:2014に準拠して3点曲げ試験によって測定され得る。複合成形体は、たとえば、JIS A 5371:2016に規定されるインターロッキングブロックの歩道用舗装の曲げ強度の基準である3MPa以上の3点曲げ強度を有する。複合成形体は、より好ましくは、JIS A 5371:2016に規定されるインターロッキングブロックの車道用舗装の曲げ強度の基準である5MPa以上の3点曲げ強度を有する。複合成形体は、好ましくは、JIS A 5371:2016に規定されるインターロッキングブロックの歩道用舗装の圧縮強度の基準である17MPa以上の圧縮強度を有する。複合成形体は、より好ましくは、JIS A 5371:2016に規定されるインターロッキングブロックの車道用舗装の圧縮強度の基準である32MPa以上の圧縮強度を有する。
【0059】
好ましくは、複合成形体は、複合成形体の全体の平均密度として5g/cm以下の密度を有するとともに、3MPa以上の曲げ強度を有する。天然有機材料および金属材料を併用することによって、このように一定の軽量性および強度を併せ持つ複合成形体が得られる。
【0060】
[2.複合成形体を含む構造体]
一実施形態によれば、上記の複合成形体を含む構造体が提供される。構造体は、上記の複合成形体を含むものであれば特に限定されない。構造体の例として、上記のとおり、建材、建築物、食卓器具、家具、敷物、容器、インテリア雑貨、装飾品などが挙げられる。構造体は、複合成形体以外に任意の材料を含んでよい。
【0061】
[3.複合成形体の製造方法]
一実施形態によれば、天然有機材料および金属材料から複合成形体を製造する方法であって、天然有機材料を加熱しながらまたは加熱した状態で加圧する熱圧縮ステップと、天然有機材料を金属材料に接合する接合ステップと、を含む方法が提供される。
【0062】
上記方法によれば、天然有機材料を金属材料とともに熱圧縮成形することにより、上記の複合成形体を得ることができる。
本明細書において「熱圧縮成形」とは、対象物を加熱しながらまたは加熱した状態で圧力を加えることにより所望の形状に成形することを意味する。「加熱しながらまたは加熱した状態で圧力を加える」とは、対象物の存在する環境の温度が周囲温度よりも高い状態で対象物に圧力を加えることを意味する。
【0063】
上記方法は、熱圧縮ステップの前に、天然有機材料を調製するステップと、金属材料を調製するステップと、をさらに含んでよい。なお、使用する天然有機材料および金属材料については、上記のとおりである。
【0064】
<3-1.天然有機材料の調製>
使用する天然有機材料は、既知の任意の方法で調製されてよい。天然有機材料の形態は、特に限定されないが、取扱い性および複合成形体の充填密度を向上させる観点では、乾燥材料(たとえば、乾燥粉末)の形態が好ましい。
【0065】
たとえば、上記方法は、天然有機材料を含む乾燥材料を調製するステップをさらに含んでよい。乾燥材料を調製するステップは、天然有機材料を乾燥させる乾燥ステップと、乾燥させた天然有機材料を粉砕して乾燥材料を調製する粉砕ステップと、を含んでよい。
【0066】
乾燥ステップでは、天然有機材料が任意の手段により乾燥させられる。例えば、乾燥ステップは、天然有機材料の減圧乾燥を行う工程を含んでもよく、天然有機材料の凍結乾燥を行う工程を含んでもよく、オーブンや温風装置などの加熱装置で加熱することにより天然有機材料の乾燥を行う工程を含んでもよく、これらの工程が組み合わされてもよい。
【0067】
粉砕ステップでは、乾燥した天然有機材料が、任意の手段により細かく(例えば粉末状に)粉砕される。例えば、粉砕ステップは、一般的なブレンダやミキサなどにより材料を粉砕する工程を含んでもよく、ディスクミル、ボールミル、ジェットミルなどの任意の粉砕機により材料を粉砕する工程を含んでもよい。
【0068】
<3-2.金属材料の調製>
金属材料は、上記のように成形体として調製されてもよく、粉末として調製されてもよい。金属材料の調製方法は、既知の任意の方法が使用可能である。
【0069】
金属材料を所定の形状を有する金属部材として調製する場合において、成形方法は特に限定されない。たとえば、原料の金属材料に対して切削加工など任意の加工を行うことによって所望の形状を有する金属材料部を成形してもよく、細かい金属くず、金属粉などを圧縮することによって金属材料部を成形してもよい。
【0070】
金属材料を所定の形状を有する金属部材として調製する場合には、金属部材の表面のうち少なくとも天然有機材料に接触させる部分のJIS B 0601:2013に準拠して測定した算術平均粗さRaは、1.6μm以上であることが好ましい。これにより、上記のとおり、有機材料部と金属材料部とを強く接合することができる。
【0071】
金属材料を所定の形状を有する金属部材として調製する場合には、上記方法は、金属部材の表面の少なくとも一部に凹凸を形成するステップをさらに含むことが好ましい。これは、金属材料の加工方法が多様であり、有機材料部に凹凸形状を形成するよりも金属材料部に凹凸形状を形成する方が一般的に容易なためである。たとえば、金属材料を所定の形状に成形した後、切削加工、研削加工などを行って、表面粗さを増加させたり、表面に窪み、溝などを形成したりすることができる。
【0072】
<3-3.天然有機材料の熱圧縮>
熱圧縮ステップでは、材料を型枠内に投入し、加熱しながらまたは加熱した状態で圧縮することにより、所望の形状に成形する。たとえば、天然有機材料のみを型枠内に投入して、有機材料部の熱圧縮成形を行ってもよく、天然有機材料と金属材料とを一緒に型枠内に投入して、熱圧縮成形を行ってもよい。
【0073】
天然有機材料と金属材料とを一緒に型枠内に投入して熱圧縮成形を行う場合には、天然有機材料および金属材料は、製造予定の複合成形体における有機材料部および金属材料部の配置に応じて、型枠内の適切な位置に配置される。たとえば、有機材料部が金属材料部の全面を覆うように金属材料を取り囲む構造の複合成形体を製造する場合には、まず天然有機材料の一部を型枠内に敷き詰め、その上に金属材料を載せ、さらに金属材料の上に残りの天然有機材料を投入する。
【0074】
この場合、有機材料部および金属材料部の成形の順序は特に限定されない。たとえば、まず金属材料部を成形した後、金属材料部の周りに有機材料部を成形してもよい。逆に、まず有機材料部を成形した後、有機材料部の周りに金属材料部を成形してもよい。あるいは、有機材料部と金属材料部とを一度に成形してもよい。
【0075】
金属材料部に凹凸形状が形成されている場合には、天然有機材料が凹部内に侵入した状態で熱圧縮成形が行われることにより、金属材料部の凹凸形状に対応する凹凸形状を有するように有機材料部が成形され得る。
【0076】
成形温度は、使用する材料、複合成形体の用途などに応じて適宜決定され得る。好ましくは、成形温度は、天然有機材料の特性温度以上の温度である。
【0077】
天然有機材料の特性温度は、天然有機材料が糖を含む場合には、糖のガラス転移点である。この場合、成形温度は、糖の燃焼温度未満または糖の熱分解温度未満であることが好ましい。
【0078】
天然有機材料の特性温度は、天然有機材料がリグニン、セルロース、およびヘミセルロースの1以上を含む場合には、リグニン、セルロース、またはヘミセルロースが流動化する最小の温度である。この場合、成形温度は、リグニン、セルロース、もしくはヘミセルロースの燃焼温度未満またはリグニン、セルロース、もしくはヘミセルロースの熱分解温度未満であることが好ましい。
【0079】
天然有機材料の特性温度は、天然有機材料がタンパク質を含む場合には、タンパク質の変性温度である。この場合、成形温度は、タンパク質の燃焼温度未満またはタンパク質の熱分解温度未満であることが好ましい。
【0080】
天然有機材料が(1)糖、(2)リグニン、セルロース、またはヘミセルロース、および(3)タンパク質の2以上を含む場合には、天然有機材料の特性温度は、(1)~(3)の各々について説明した上記特性温度のうち最小の温度である。
【0081】
具体的には、成形温度は、たとえば、50℃以上300℃以下である。成形温度は、たとえば、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、または100℃以上である。成形温度は、例えば、300℃以下、250℃以下、200℃以下、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、または150℃以下である。
【0082】
成形圧力は、用途に応じて適宜決定され得る。成形圧力は、たとえば、0.5kPa以上、1kPa以上、10kPa以上、0.1MPa以上、1MPa以上、2MPa以上、3MPa以上、4MPa以上、5MPa以上、10MPa以上、15MPa以上、または20MPa以上である。成形圧力は、たとえば、100MPa以下、90MPa以下、80MPa以下、70MPa以下、60MPa以下、50MPa以下、40MPa以下、または30MPa以下である。成形圧力は、たとえば、1MPa以上100MPa以下であり、好ましくは2MPa以上30MPa以下である。
【0083】
成形時間は、成形体の大きさや用途に応じて適宜決定され得る。成形時間は、たとえば、10秒以上、20秒以上、30秒以上、40秒以上、50秒以上、1分以上、2分以上、3分以上、4分以上、5分以上、または10分以上である。成形時間は、たとえば、6時間以下、3時間以下、2時間以下、1時間以下、50分以下、40分以下、30分以下、25分以下、または20分以下である。
【0084】
<3-4.天然有機材料と金属材料との接合>
天然有機材料と金属材料との接合方法は、特に限定されず、任意の方法が使用可能である。たとえば、上記のように、天然有機材料と金属材料とを一緒に型枠内に投入して熱圧縮成形を行うことにより、熱圧縮に伴って天然有機材料と金属材料とを接合することができる。この場合、熱圧縮ステップは、天然有機材料が金属材料に接触している状態で行われ得る。このように、天然有機材料が金属材料に接触している状態で熱圧縮ステップを行うことにより、接合ステップが行われ得る。この場合には、熱圧縮ステップを行うことによって自ずと接合ステップも行われるので、熱圧縮ステップと接合ステップとを同時に行ったことになる。
【0085】
成形前の天然有機材料を金属材料に対して圧接または圧着させてもよく、一旦天然有機材料の熱圧縮成形を行った後、成形後の天然有機材料を金属材料に対して接合してもよい。逆に、天然有機材料を金属材料に対して接合させた後、天然有機材料の熱圧縮を行ってもよい。接合方法としては、圧着、圧接、接着、篏合、係合、締結、結束、溶接、融着、溶着、ろう付けなど、既知の任意の手法が使用可能である。
【0086】
上記の熱圧縮ステップと接合ステップとは、一方が他方に先行してもよく、両者が同時にまたは並行して行われてもよい。熱圧縮ステップおよび/または接合ステップが複数回行われてもよい。
【0087】
以上のような複合成形体、構造体、および複合成形体の製造方法によれば、天然有機材料および金属材料を含むことにより、成形体における軽量性および強度を両立させることができる。
【0088】
プラスチックなどの人工有機材料ではなく天然有機材料を使用することにより、複合成形体の再利用も容易であり、地球環境への悪影響を低減することができる。原料として食品廃棄物を使用すれば、廃棄予定の資源を有効に利用することができる。また、外観において天然素材の質感および色合いを持つ複合成形体を製造することにより、高い審美性を実現できる。
【実施例
【0089】
以下、実験例により本発明を説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。以下の実験例では、5種類の原料(レモン、酒粕、セロリ、コーヒー、およびささみ)それぞれについて、金属材料部の形態として4種類のバリエーション(板状、φ1.5mm棒状部材、φ1mm棒状部材、および金属部無し)を検討した。すなわち、全20種類のサンプルを作製し、体積、質量、密度、および曲げ強度を測定した。さらに、上記の第4構造および第5構造の複合成形体の作製を試みた。
【0090】
<実験例1>
本実験例では、図1に示すような複合成形体を製造した。まず、金属材料部として、ステンレス鋼SUS304製の板状部材を用意した。板状部材は、JIS B 0601:2013に準拠して測定した表面の算術平均粗さRaが1.6μm以上となるように設計した。また、板状部材は、図1に示すように、作製予定の複合成形体の大きさより一回り小さくなるように設計した。
【0091】
次いで、市販のレモンの不可食部である皮部分をできるだけ細かく切り、野菜乾燥機で乾燥させた。乾燥させた原料に対して真空乾燥機による凍結乾燥を行った後、ディスクミルで粉砕した。
【0092】
次いで、熱圧縮成形機(H300-15、アズワン社製)を用いて、粉砕した原料の乾燥粉末を上記の板状部材とともに熱圧縮することにより、複合成形体を成形した。具体的には、ホットプレート上に成形用型枠を載せて100℃まで加熱した後、乾燥粉末および上記の板状部材を型枠内に投入した。上記の板状部材の全面が乾燥粉末に覆われるように、乾燥粉末および板状部材を型枠内に配置した。型枠内の乾燥粉末および板状部材に対して50MPaの圧力を10分間印加し、熱圧縮成形を行った。10分後、圧力を開放し、成形体を型枠から脱型した。これにより、レモンの皮部分を原料とする、板状の金属材料部を含む複合成形体を得た。
【0093】
得られた複合成形体の体積および質量を測定し、複合成形体全体の平均密度を計算した。また、得られた複合成形体に対して、JIS A 1509-4:2014に準拠して3点曲げ試験を行い、複合成形体の曲げ強度を求めた。
【0094】
<実験例2>
本実験例では、図3に示すような複合成形体を製造した。まず、金属材料部として、4本のステンレス鋼SUS304製の棒状部材を用意した。各棒状部材は、JIS B 0601:2013に準拠して測定した表面の算術平均粗さRaが1.6μm以上となるように設計した。各棒状部材の直径は1.5mmに設定した。型枠への投入時には、棒状部材が乾燥粉末中で互いに平行に配置されるとともに各棒状部材の全面が乾燥粉末に覆われるように、乾燥粉末および各棒状部材を型枠内に配置した。上記の点以外は実験例1と同様にして、4本の棒状の金属材料部を含む複合成形体を得た。
【0095】
<実験例3>
各棒状部材の直径を1mmに設定した点を除き、実験例2と同様にして、4本の棒状の金属材料部を含む複合成形体を得た。
【0096】
<実験例4>
金属材料部を使用せずにレモンの不可食部のみで成形体を製造した点を除き、実験例1と同様にして、金属材料部を含まない成形体を得た。
【0097】
<実験例5~8>
レモンの不可食部の乾燥粉末に代えて、市販の酒粕を乾燥させて細かく粉砕した粉末を原料として使用した点を除き、実験例1~4と同様にして、板状の金属材料部を含む複合成形体(実験例5)、個々の棒状部材の太さが1.5mmである4本の棒状の金属材料部を含む複合成形体(実験例6)、個々の棒状部材の太さが1mmである4本の棒状の金属材料部を含む複合成形体(実験例7)、および金属材料部を含まない成形体(実験例8)を得た。
【0098】
<実験例9~12>
レモンの不可食部の乾燥粉末に代えて、市販のセロリを細かく刻み、乾燥させて細かく粉砕した粉末を原料として使用した点を除き、実験例1~4と同様にして、板状の金属材料部を含む複合成形体(実験例9)、個々の棒状部材の太さが1.5mmである4本の棒状の金属材料部を含む複合成形体(実験例10)、個々の棒状部材の太さが1mmである4本の棒状の金属材料部を含む複合成形体(実験例11)、および金属材料部を含まない成形体(実験例12)を得た。
【0099】
<実験例13~16>
レモンの不可食部の乾燥粉末に代えて、市販のコーヒー豆の殻を乾燥させて細かく粉砕した粉末を原料として使用した点を除き、実験例1~4と同様にして、板状の金属材料部を含む複合成形体(実験例13)、個々の棒状部材の太さが1.5mmである4本の棒状の金属材料部を含む複合成形体(実験例14)、個々の棒状部材の太さが1mmである4本の棒状の金属材料部を含む複合成形体(実験例15)、および金属材料部を含まない成形体(実験例16)を得た。
【0100】
<実験例17~20>
レモンの不可食部の乾燥粉末に代えて、市販のささみパウダーを乾燥させて細かく粉砕した粉末を原料として使用した点を除き、実験例1~4と同様にして、板状の金属材料部を含む複合成形体(実験例17)、個々の棒状部材の太さが1.5mmである4本の棒状の金属材料部を含む複合成形体(実験例18)、個々の棒状部材の太さが1mmである4本の棒状の金属材料部を含む複合成形体(実験例19)、および金属材料部を含まない成形体(実験例20)を得た。
【0101】
表1に、実験例1~20の各成形体の原料、金属材料部の形態、体積、質量、密度、および曲げ強度を示す。
【表1】
【0102】
図9は、各実験例の曲げ強度を示すグラフである。金属材料部を多く含むほど、曲げ強度が増加することがわかる。金属材料部として板状部材を使用した実験例1、5、9、13、および17では、他の場合に比べて曲げ強度が非常に大きかった。ただし、金属材料部としてφ1mm棒状部材を使用した場合でも、曲げ強度は14MPaを超えており、種々の用途において実用上十分な圧縮強度が得られた。
【0103】
金属の含有量が増えると、複合成形体の質量も大きくなり、軽量化の効果が十分ではなくなる。そこで、図10に示すように、単位質量(1g)当たりの曲げ強度を計算した。図10は、各実施例の単位質量当たりの曲げ強度を示すグラフである。図10によれば、単位質量当たりで見ると、金属材料部としてφ1.5mm棒状部材を使用したサンプルでも、板状部材を使用したサンプルの50%~80%程度の曲げ強度が得られた。このように、用途に応じて金属材料部の含有量を設定することにより、複合成形体において軽量性と強度特性との最適なバランスを実現することができる。
【0104】
<実験例21>
図4および図5に示すような第4構造の複合成形体を作製した。箸としての機能性、軽量性、および強度特性の観点から、十分に実用可能であることを確認した。
【0105】
<実験例22>
図6図8に示すような第5構造の複合成形体を作製した。食卓容器としての機能性、軽量性、および強度特性の観点から、十分に実用可能であることを確認した。
【符号の説明】
【0106】
1、2、3、4、5…複合成形体
10…有機材料部
20…金属材料部
40…持ち手部
42…先端部
140…外殻
240…芯材
50…本体上部
52…本体下部
54…脚部
250…内側面
252…内底面
254…溝
【要約】
【課題】軽量性および強度を両立させることができる複合成形体、構造体、および複合成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態による複合成形体は、金属材料と、金属材料に接合された天然有機材料とを含む。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9
図10