(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】試験監視システム、及び、試験監視方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/20 20120101AFI20240229BHJP
G06T 7/20 20170101ALI20240229BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240229BHJP
G06V 20/52 20220101ALI20240229BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G06Q50/20
G06T7/20 300B
G06T7/20 300Z
G06T7/00 660A
G06T7/00 660Z
G06V20/52
H04N7/18 D
(21)【出願番号】P 2023073687
(22)【出願日】2023-04-27
【審査請求日】2023-04-28
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515297076
【氏名又は名称】アースアイズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】522000728
【氏名又は名称】Sabマネージメント有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165238
【氏名又は名称】中西 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】山内 三郎
【審査官】関 博文
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113657300(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109816951(CN,A)
【文献】特開2022-029113(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2023-0017454(KR,A)
【文献】特開2023-036273(JP,A)
【文献】特開2014-064186(JP,A)
【文献】特許第6807128(JP,B1)
【文献】川又 泰介 ,e-Learning受講者の登録顔情報による認証のための各種逐次更新法の検討 ,電子情報通信学会技術研究報告 ,日本,一般社団法人電子情報通信学会 ,2015年11月13日,第115巻, 第319号,pp.35-40
【文献】佐藤 直人,AI・IoT導入によるメリット AIで本人認証、自動監視、解析し、厳正厳格な試験を実現,月刊自動認識 ,日本,日本工業出版株式会社,2021年05月10日,第34巻 , 第6号 ,pp.7-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H04N 7/18
G06T 7/20
G06T 7/00
G06V 20/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験会場における受験者の不正行為を検出するための試験監視システムであって、
受験者を撮影する撮影部と、
前記撮影部が撮影した監視画像から、前記受験者の上肢の動作を認識する、動作認識部と、
前記監視画像から、前記受験者の視線の動きを検知する、視線検知部と、
前記受験者の不正行為を検知する、不正行為検知部と、
前記監視画像から、前記受験者の周辺に存在する持込禁止物を検知する、持込禁止物検知部と、
前記不正行為検知部が不正行為を検知したとき、
及び、前記持込禁止物検知部が前記持込禁止物を検知したときに、監視情報を試験監視者が認識可能な形式で出力する、監視情報出力部と、を備え、
前記撮影部が、個々の前記受験者が回答作業を行う受験者用座席毎に個別に設置されていて個々の前記受験者の上半身を正面から撮影可能な卓上設置カメラと、個々の前記受験者
について、上方から、
前記卓上設置カメラの死角となる受験者用作業卓の下方範囲を撮影可能な
位置に設置されている天井カメラと、を含んで構成されていて、
前記不正行為検知部は、前記上肢の動作及び前記視線の動きの組合せからなる情報を入力値とし、この入力値と不正行為判定用の閾値との比較により、前記受験者の不正行為を検知する、
試験監視システム。
【請求項2】
前記天井カメラが、必要に応じて設置位置及び撮影領域を変動させることができるパン・チルド・ズーム機能付きのカメラであって、必要に応じて任意の受験者用座席の周辺にズームインさせることができ、尚且つ、不正行為の発生に係る情報が検知された前記受験者の前記受験者用座席に対して自動的にズームインする自動ズーム制御機能を備える、
請求項1に記載の試験監視システム。
【請求項3】
前記監視画像から、前記受験者の心拍数を検知する心拍数検知部を更に備え、
前記不正行為検知部は、前記上肢の動作、前記視線の動き、及び、前記心拍数の組合せからなる情報を入力値とし、この入力値と前記閾値との比較により、前記受験者の不正行為を検知する、
請求項1又は2に記載の試験監視システム。
【請求項4】
前記監視画像から、前記受験者の離席行為及び着席行為を検知する離着席行為検証部を更に備え、
前記離着席行為検証部は、受験者用座席からの前記受験者の離席行為の画像である特定離席画像、及び、前記受験者用座席への前記離席行為の後の最初の着席行為の画像である特定着席画像との組合せからなる、離着席行為検証用画像を生成し、
前記監視情報出力部が、前記離着席行為検証用画像を出力する、
請求項1又は2に記載の試験監視システム。
【請求項5】
前記監視画像から、前記受験者の固有の顔認証情報を取得する顔認証情報取得部を、更に備え、
前記離着席行為検証用画像における離席者と着席者との顔認証情報とが一致しない場合には、前記監視情報出力部が、不正行為の発生を示す通知を出力する、
請求項
4に記載の試験監視システム。
【請求項6】
前記卓上設置カメラが、個々の前記受験者が回答作業を行う受験者用座席毎に個別に設置されている受験者用のパーソナルコンピュータに内臓されているPC内臓カメラである、
請求項
5に記載の試験監視システム。
【請求項7】
試験会場における受験者の不正行為を検出するための試験監視方法であって、
個々の前記受験者が回答作業を行う受験者用座席毎に受験者用作業卓の卓上に個別に設置されていて個々の前記受験者の上半身を正面から撮影可能な卓上設置カメラと、個々の前記受験者について、上方から、前記卓上設置カメラの死角となる受験者用作業卓の下方範囲を撮影可能な位置に設置されている天井カメラと、を含んで構成されている、撮影部が、個々の前記受験者の上半身の正面からの撮影
を前記卓上設置カメラで行い、個々の前記受験者の上方からの撮影を
前記天井カメラで行う、監視画像撮影ステップと、
動作認識部が、前記監視画像撮影ステップにおいて撮影された、個々の前記受験者の正面からの監視画像及び個々の前記受験者の上方からの監視画像から、前記受験者の上肢の動作を認識する、動作認識ステップと、
視線検知部が、前記受験者の正面からの監視画像から、前記受験者の視線の動きを検知する、視線検知ステップと、
不正行為検知部が、前記受験者の不正行為を検知する、不正行為検知ステップと、
持込禁止物検知部が、前記監視画像から、前記受験者の周辺に存在する持込禁止物を検知する、持込禁止物検知ステップと、
監視情報出力部が、前記不正行為
及び前記持込禁止物に係る監視情報を試験監視者が認識可能な形式で出力する、監視情報出力ステップと、を備え、
前記不正行為検知ステップにおいては、前記上肢の動作及び前記視線の動きの組合せからなる情報を入力値とし、この入力値と不正行為判定用の閾値との比較により、前記不正行為が検知される、
試験監視方法。
【請求項8】
心拍数検知部が、前記監視画像から、前記受験者の心拍数を検知する、心拍数検知ステップを更に備え、
前記不正行為検知ステップにおいては、前記上肢の動作、前記視線の動き、及び、前記心拍数の組合せからなる情報を入力値とし、この入力値と不正行為判定用の閾値との比較により、前記不正行為が検知される、
請求項
7に記載の試験監視方法。
【請求項9】
離着席行為検証部が、前記監視画像から、前記受験者の離席行為及び着席行為を検知する、離着席行為検証ステップを更に備え、
前記離着席行為検証ステップにおいては、受験者用座席からの前記受験者の離席行為の画像である特定離席画像、及び、前記受験者用座席への前記離席行為の後の最初の着席行為の画像である特定着席画像との組合せからなる、離着席行為検証用画像が生成され、
監視情報出力ステップにおいては、前記離着席行為検証用画像が出力される、
請求項
7又は
8に記載の試験監視方法。
【請求項10】
顔認証情報取得部が、前記監視画像から、前記受験者の固有の顔認証情報を取得する、顔認証情報取得ステップを、更に備え、
前記離着席行為検証用画像における離席者と着席者との顔認証情報とが一致しない場合には、前記監視情報出力ステップにおいて、不正行為の発生を示す通知が出力される、
請求項
9に記載の試験監視方法。
【請求項11】
前記撮影部が、個々の前記受験者が回答作業を行う受験者用座席毎に個別に設置されていて個々の前記受験者の上半身を正面から撮影可能な卓上設置カメラと、試験会場の監視領域全体を俯瞰して撮影可能な天井カメラと、を含んで構成されていて、
前記監視画像撮影ステップにおいては、前記卓上設置カメラが前記受験者の顔及び上半身を撮影する、
請求項
7又は
8に記載の試験監視方法。
【請求項12】
前記卓上設置カメラが、個々の前記受験者が回答作業を行う受験者用座席毎に個別に設置されている受験者用のパーソナルコンピュータに内臓されているPC内臓カメラである、
請求項
11に記載の試験監視方法。
【請求項13】
請求項
7に記載の試験監視方法において、前記動作認識ステップ、前記視線検知ステップ、前記不正行為検知ステップ、
持込禁止物検知ステップ、及び、前記監視情報出力ステップを、情報処理装置に実行させる、
試験会場における受験者の不正行為を検出するための試験監視用のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験監視システム、及び、試験監視方法に関する。詳しくは、本発明は、多数の受験者が一堂に会して試験を受ける試験会場における受験者の不正行為(カンニング)を検出して、試験監視者の試験監視業務を補助する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、各種の資格試験や入学試験等、多数の受験者が一堂に会して試験を受ける試験会場においては、試験監視者によって、各受験者が不正行為(カンニング等)を行っていないかを目視により監視する試験監視業務が行われている。このような試験監視業務において一般的に想定されている不正行為の類型としては、持込禁止物を試験監視者に見つからないようにして持ち込む行為、手のひらや腕等に試験の解答に係る情報を書き込んでおく行為を挙げることができる。
【0003】
一定人数以上の受験者が一堂に会して試験が行われる試験会場においては、これらの不正行為を未然に検知して防止するための試験監視業務、即ち、全受験者を目視で完全に監視することを、一人の試験監視者が行うことは困難となり、従って、監視業務を確実に遂行するためには、試験監視者の増員が必要となる。
【0004】
試験会場における、試験監視者による試験監視業務の負担を軽減する技術の一例として、受験者の動きを受験者に着用させるウエアラブルセンサー等によって自動的に感知して、受験者の不正行為を検知する不正行為検知手段(特許文献1参照)の開発も進められている。
【0005】
上述の方法のように、センシング技術によって不正行為を正確に検出することができれば、試験監視業務に係る作業負担は大幅に軽減することができる。しかしながら、受験者の動作のパターンは複雑であり、その中から、上記において例示したような不正行為に係る動きだけを、自動的に、且つ、正確に抽出することは依然として容易ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記状況に鑑み、多数の受験者が一堂に会して試験を受ける試験会場における試験監視者の作業負担を軽減しながら、或いは、試験監視者の人数を抑えながら、高い検知精度で不正行為を自動的に検出することができる試験監視手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、受験者の様々の挙動のうち、特に上肢の動作及び視線の動きに着目して、これらを監視画像から抽出して解析することにより、受験者の不正行為を、効率良く高い検知精度で自動的に検出し得ることに想到し、本発明を完成するに至った。本発明は、具体的に、以下の試験監視手段を提供する。
【0009】
(1) 試験会場における受験者の不正行為を検出するための試験監視システムであって、受験者を撮影する撮影部と、前記撮影部が撮影した監視画像から、前記受験者の上肢の動作を認識する、動作認識部と、前記監視画像から、前記受験者の視線の動きを検知する、視線検知部と、前記受験者の不正行為を検知する、不正行為検知部と、前記不正行為に係る監視情報を試験監視者が認識可能な形式で出力する、監視情報出力部と、を備え、前記不正行為検知部は、前記上肢の動作及び前記視線の動きの組合せからなる情報を入力値とし、この入力値と不正行為判定用の閾値との比較により、前記受験者の不正行為を検知する、試験監視システム。
【0010】
(1)の試験監視システムによれば、多数の受験者が一堂に会して試験を受ける試験会場における試験監視者の作業負担を軽減しながら、或いは、試験監視者の人数を抑えながら、高い検知精度で不正行為を自動的に検出することができる。
【0011】
(2) 前記監視画像から、前記受験者の心拍数を検知する心拍数検知部を更に備え、前記不正行為検知部は、前記上肢の動作、前記視線の動き、及び、前記心拍数の組合せからなる情報を入力値とし、この入力値と前記閾値との比較により、前記受験者の不正行為を検知する、(1)に記載の試験監視システム。
【0012】
(2)の試験監視システムによれば、不正行為を行う受験者において特有の変動を示す傾向がある生態情報を、不正行為検出のための情報として用いることによって、(1)の試験監視システムにおける不正行為の検知の精度を更に高めることができる。
【0013】
(3) 前記監視画像から、前記受験者の周辺に存在する持込禁止物を検知する、持込禁止物検知部を更に備え、前記持込禁止物が検知された場合には、前記監視情報出力部が、不正行為の発生を示す通知を出力する、(1)又は(2)に記載の試験監視システム。
【0014】
(3)の試験監視システムによれば、多数の受験者が一堂に会して試験を受ける試験会場における不正行為のうちでも特に頻繁に行われる行為である持込禁止物を試験監視者に見つからないようにして持ち込む行為を、自動的に速やかに検知することができる。
【0015】
(4) 前記監視画像から、前記受験者の離席行為及び着席行為を検知する離着席行為検証部を更に備え、前記離着席行為検証部は、受験者用座席からの前記受験者の離席行為の画像である特定離席画像、及び、前記座席への前記離席行為の後の最初の着席行為の画像である特定着席画像との組合せからなる、離着席行為検証用画像を生成し、前記監視情報出力部が、前記離着席行為検証用画像を出力する、(1)又は(2)に記載の試験監視システム。
【0016】
(4)の試験監視システムによれば、多数の受験者が一堂に会して試験を受ける試験会場における不正行為のうちでも特に悪質な不正行為の一類型である受験者の不正な入れ替わりによる、所謂、替玉受験行為を、試験監視者が、より高い確率で検知することができるようになる。
【0017】
(5) 前記監視画像から、前記受験者の固有の顔認証情報を取得する顔認証情報取得部を、更に備え、前記離着席行為検証用画像における離席者と着席者との顔認証情報とが一致しない場合には、前記監視情報出力部が、不正行為の発生を示す通知を出力する、(4)に記載の試験監視システム。
【0018】
(5)の試験監視システムによれば、(4)に記載の試験監視システムにおいて、上記の替玉受験行為を、より高い検知精度で自動的に検出することができる。
【0019】
(6) 前記撮影部が、個々の前記受験者が回答作業を行う座席毎に個別に設置されていて個々の前記受験者の上半身を正面から撮影可能な卓上設置カメラと、試験会場の監視領域全体を俯瞰して撮影可能な天井カメラと、を含んで構成される、(1)又は(2)に記載の試験監視システム。
【0020】
(6)の試験監視システムによれば、(1)又は(2)の試験監視システムにおいて、監視画像を撮影する撮影部を、個々の受験者について正面から上肢や顔等の上半身の動きを撮影する複数のカメラと、全ての受験者を上方から撮影することができるカメラとを組合せて構成することにより、監視画像の死角の存在に起因する不正行為の検知漏れリスクを軽減して、更に高い検知精度で不正行為を検出することができる。
【0021】
(7) 前記卓上設置カメラが、個々の前記受験者が回答作業を行う座席毎に個別に設置されている受験者用のパーソナルコンピュータに内臓されているPC内臓カメラである(6)に記載の試験監視システム。
【0022】
(7)の試験監視システムによれば、受験者が解答専用のパーソナルコンピュータで回答作業を行う形式の試験において、専用の監視用カメラを別途設置する費用負担を不要としながら、受験者の顔及び上肢の動きを確実に撮影して、(6)に記載の試験監視システムの奏する上記効果を高い精度で発現させることができる。
【0023】
(8) 試験会場における受験者の不正行為を検出するための試験監視方法であって、撮影部が、前記受験者を撮影する、監視画像撮影ステップと、動作認識部が、前記監視画像撮影ステップにおいて撮影された監視画像から、前記受験者の上肢の動作を認識する、動作認識ステップと、視線検知部が、前記監視画像から、前記受験者の視線の動きを検知する、視線検知ステップと、不正行為検知部が、前記受験者の不正行為を検知する、不正行為検知ステップと、監視情報出力部が、前記不正行為に係る監視情報を試験監視者が認識可能な形式で出力する、監視情報出力ステップと、を備え、前記不正行為検知ステップにおいては、前記上肢の動作及び前記視線の動きの組合せからなる情報を入力値とし、この入力値と不正行為判定用の閾値との比較により、前記不正行為が検知される、試験監視方法。
【0024】
(8)の試験監視方法によれば、多数の受験者が一堂に会して試験を受ける試験会場における試験監視者の作業負担を軽減しながら、高い検知精度で不正行為を自動的に検出することができる。
【0025】
(9) 心拍数検知部が、前記監視画像から、前記受験者の心拍数を検知する、心拍数検知ステップを更に備え、前記不正行為検知ステップにおいては、前記上肢の動作、前記視線の動き、及び、前記心拍数の組合せからなる情報を入力値とし、この入力値と不正行為判定用の閾値との比較により、前記不正行為が検知される、(8)に記載の試験監視方法。
【0026】
(9)の試験監視方法によれば、不正行為を行う受験者において特有の変動を示す傾向がある生態情報を、不正行為検出のための情報として用いることによって、(8)の試験監視方法における不正行為の検知の精度を更に高めることができる。
【0027】
(10) 持込禁止物検知部が、前記監視画像から、前記受験者の周辺に存在する持込禁止物を検知する、持込禁止物検知ステップを更に備え、前記持込禁止物が検知された場合には、前記監視情報出力ステップにおいて、不正行為の発生を示す通知が出力される、(8)又は(9)に記載の試験監視方法。
【0028】
(10)の試験監視方法によれば、多数の受験者が一堂に会して試験を受ける試験会場における不正行為のうちでも特に頻繁に行われる行為である持込禁止物品の持ち込みを、自動的に速やかに検知することができる。
【0029】
(11) 離着席行為検証部が、前記監視画像から、前記受験者の離席行為及び着席行為を検知する、離着席行為検証ステップを更に備え、前記離着席行為検証ステップにおいては、受験者用座席からの前記受験者の離席行為の画像である特定離席画像、及び、前記座席への前記離席行為の後の最初の着席行為の画像である特定着席画像との組合せからなる、離着席行為検証用画像が生成され、監視情報出力ステップにおいては、前記離着席行為検証用画像が出力される、(8)又は(9)に記載の試験監視方法。
【0030】
(11)の試験監視方法によれば、多数の受験者が一堂に会して試験を受ける試験会場における不正行為のうちでも特に悪質な不正行為の一類型である受験者の不正な入れ替わりによる、所謂、替玉受験行為を、試験監視者が、より高い確率で検知することができるようになる。
【0031】
(12) 顔認証情報取得部が、前記監視画像から、前記受験者の固有の顔認証情報を取得する、顔認証情報取得ステップを、更に備え、前記離着席行為検証用画像における離席者と着席者との顔認証情報とが一致しない場合には、前記監視情報出力ステップにおいて、不正行為の発生を示す通知が出力される、(11)に記載の試験監視方法。
【0032】
(12)の試験監視方法によれば、(11)に記載の試験監視システムにおいて、上記の替玉受験行為を、より高い検知精度で自動的に検出することができる。
【0033】
(13) 前記撮影部が、個々の前記受験者が回答作業を行う座席毎に個別に設置されていて個々の前記受験者の上半身を正面から撮影可能な卓上設置カメラと、試験会場の監視領域全体を俯瞰して撮影可能な天井カメラと、を含んで構成されていて、前記監視画像撮影ステップにおいては、前記卓上設置カメラが前記受験者の顔及び上半身を撮影する、(8)又は(9)に記載の試験監視方法。
【0034】
(13)の試験監視方法によれば、(8)又は(9)の試験監視方法において、監視画像を撮影する撮影部を、個々の受験者について正面から上肢や顔等の上半身の動きを撮影する複数のカメラと、全ての受験者を上方から撮影することができるカメラとを組合せて構成することにより、監視画像の死角の存在に起因する不正行為の検知漏れリスクを軽減して、更に高い検知精度で不正行為を検出することができる。
【0035】
(14) 前記卓上設置カメラが、個々の前記受験者が回答作業を行う座席毎に個別に設置されている受験者用のパーソナルコンピュータに内臓されているPC内臓カメラである、(13)に記載の試験監視方法。
【0036】
(14)の試験監視方法によれば、受験者が解答専用のパーソナルコンピュータで回答作業を行う形式の試験において、専用の監視用カメラを別途設置する費用負担を不要としながら、受験者の顔及び上肢の動きを確実に撮影して、(13)に記載の試験監視方法の奏する上記効果を高い精度で発現させることができる。
【0037】
(15) (8)に記載の試験監視方法において、前記動作認識ステップ、前記視線検知ステップ、前記不正行為検知ステップ、及び、前記監視情報出力ステップを、情報処理装置に実行させる、試験会場における受験者の不正行為を検出するための試験監視用のプログラム。
【0038】
(15)の試験監視用のプログラムによれば、多数の受験者が一堂に会して試験を受ける試験会場における試験監視者の作業負担を軽減しながら、高い検知精度で不正行為を自動的に検出することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、多数の受験者が一堂に会して試験を受ける試験会場における試験監視者の作業負担を軽減しながら、或いは、試験監視者の人数を抑えながら、高い検知精度で不正行為を自動的に検出することができる試験監視手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の試験監視システムの基本構成の説明に供するブロック図である。
【
図2】本発明の試験監視方法の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図3】本発明の試験監視システムが設置されている試験会場の様子を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の試験監視システムにおける監視画像の一例を模式的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための最良の形態について適宜図面等を参照しながら説明する。
【0042】
<試験監視システム>
本発明の「試験監視システム」は、試験会場における受験者の不正行為(カンニング)を監視画像から自動的に検知することができるシステムである。
【0043】
[全体構成]
図1に示す通り、試験監視システム1は、受験者3(3A、3B、3C、・・・3Z)を撮影して監視画像110を作成する撮影部11、監視画像110を解析することによって受験者3(3A、3B、3C、・・・3Z)の不正行為を検知するための演算処理を行う演算処理部12、及び、演算処理部12において検知された不正行為に係る監視情報を、試験監視者5が認識可能な形式で出力する、監視情報出力部13によって構成される。
【0044】
そして、試験監視システム1を構成する上記の演算処理部12は、少なくとも、動作認識部121、視線検知部122、不正行為検知部127を備える。又、演算処理部12は、上記の3つの構成に加えて、更に、心拍数検知部123、持込禁止物検知部124、離着席行為検証部125、及び、顔認証情報取得部126を備えるものとすることがより好ましい。
【0045】
[撮影部]
撮影部11は、監視対象とする受験者3を撮影する、所謂、監視カメラである。撮影部11は、監視対象とする受験者3を連続的に撮影することができる従来公知の各種の監視用カメラで構成することができる。尚、撮影部11は、撮影された監視画像110を、演算処理部12で演算処理することができるようにデジタル形式の画像データとして出力する機能を有するものであれば、既存の各種のデジタルカメラを特に制限なく用いることができる。
【0046】
図3に示すように、個々の受験者3(3A、3B、3C、・・・3Z)が解答作業を行う場所である複数の受験者用座席4(4A、4B、4C、・・・4Z)が配置されている試験会場2において試験監視システム1を構成する場合、撮影部11は、同図に示すように、個々の受験者3(3A、3B、3C、・・・3Z)について、少なくとも、その上肢31の動作及び視線32の動きを撮影することができるような位置に設置される。
【0047】
より具体的には、撮影部11は、個々の受験者用座席4毎に個別に設置されている卓上設置カメラ111と、試験会場2における監視領域全体(全ての受験者3(3A、3B、3C、・・・3Z)の着席範囲全体)を、俯瞰して撮影可能な天井カメラ112とを組合せて構成することが好ましい。
【0048】
卓上設置カメラ111については、個々の受験者3(3A、3B、3C、・・・3Z)が回答作業を行う受験者用座席4毎に個別に設置し、これにより、個々の受験者3(3A、3B、3C、・・・3Z)の顔と上肢を含む部分(上半身)を、正面から撮影することができるようにする(
図4(A)参照)。
【0049】
又、受験者用座席4(4A、4B、4C、・・・4Z)毎に個別にラップトップ型のパーソナルコンピュータ等からなる受験者用の情報処理端末が予め配置されている場合には、当該情報処理端末に、情報表示画面の前方を撮影可能に内臓されているPC内臓カメラを卓上設置カメラ111として機能させることが好ましい。
【0050】
天井カメラ112については、試験会場2内において監視対象領域として設定する空間全体を俯瞰映像として撮影可能な固定位置に設置したカメラによって構成する。天井カメラ112は、監視対象領域の全域を撮影範囲としてカバーするために、複数台のカメラによって構成してもよい。
【0051】
又、天井カメラ112は、必要に応じて設置位置及び撮影領域を変動させることができるパン・チルド・ズーム機能付きのカメラ(PTZカメラ)であることがより好ましい。天井カメラ112を、PTZカメラによって構成する場合には、必要に応じて任意の受験者用座席4の周辺にズームインさせることができ、尚且つ、不正行為の発生に係る情報が検知された受験者3(例えば3A)の受験者用座席4(例えば4A)に対して自動的にズームインするような自動ズーム制御態様とすることがより好ましい。
【0052】
このように、受験者用座席4に着席している個々の受験者3の上半身の正面に近接して配置されている卓上設置カメラ111と、試験会場2の天井側、即ち、受験者3の上方に離間して配置されている天井カメラ112とを組合せて撮影部11を構成することによって、前者の卓上設置カメラ111によって、不正行為の判定材料として重要な受験者3の上肢31の動作や視線32の動きを詳細に撮影することができる(
図4(A)参照)。又、一方で卓上設置カメラ111の死角となる範囲に存在する持込禁止物33や受験者用座席4から離席した受験者3の移動経路等の方向等については、後者の天井カメラ112による俯瞰映像として漏れなく撮影することができる(
図4(B)参照)。
【0053】
[演算処理部]
演算処理部12は、撮影部11から送信された監視画像110の画像データを解析することによって受験者3(3A、3B、3C、・・・3Z)の不正行為を検知するための演算処理を行う情報処理装置によって構成される。演算処理部12は、例えば、汎用コンピュータ、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等の各種の情報処理装置、及び、これらを作動させるプログラムを利用して構成することができる。或いは、演算処理部12は、試験監視動作に特化した専用の情報処理装置によって構成することもできる。これらの何れの構成においても、演算処理部12は、CPU、メモリ、通信手段等のハードウェアを備えている。そして、このような構成からなる演算処理部12は、コンピュータプログラム(本発明の試験監視用のプログラム等)を実行することにより、以下に説明する試験監視システムの各種動作、及び、試験監視方法を具体的に実行することができる。
【0054】
演算処理部12は、具体的には、上述した通り、動作認識部121、視線検知部122、不正行為検知部127を少なくとも備え、又、好ましくは、更に、心拍数検知部123、持込禁止物検知部124、離着席行為検証部125、及び、顔認証情報取得部126を備える。又、演算処理部12は、通信ネットワークを介して撮影部11及び監視情報出力部13と相互にデータの送受信が行えるように接続されている。
【0055】
尚、演算処理部12として機能させる情報処理装置は、試験会場2やその近接域に配置してもよいし、或いは、演算処理部12は、上記のデータの送受信が可能なネットワークを介して、試験会場2から離れた遠隔地にある管理用の設備内等に配置することもできる。或いは、クラウド上に分散して存在する各種の情報処理装置の機能を、演算処理部12として統合的に利用することによって、試験監視システム1を構成することもできる。
【0056】
又、試験監視システム1の全体構成は、各構成部分が全体として試験監視システム1としての機能を発揮し得る構成である限り、上記の各部(撮影部11、演算処理部12、及び、監視情報出力部13)を、それぞれ個別の機器として配置した構成には限定されない。例えば、演算処理部12の一部を撮影部11内に搭載した構成とすることもできるし、或いは、演算処理部12と監視情報出力部13とを一体化した情報処理装置として試験監視システム1を構成することもできる。
【0057】
(動作認識部)
動作認識部121は、監視画像110中の受験者3の動作、特には、上肢31の動作を画像解析処理によって認識する。このような動作の認識は、従来公知の様々な画像解析方法によることができるが、動作認識部121による画像解析処理は、一例として、ニューラルネットワークを有する各種の機械学習型の画像解析装置(所謂「ディープラーニング技術を用いた画像認識装置」)を用いて構成することができる。尚、ディープランニングを用いた画像認識技術の具体例については、下記に公開されている。
「ディープラーニングと画像認識、オペレーションズ・リサーチ」
(http://www.orsj.o.jp/archive2/or60-4/or60_4_198.pdf)
【0058】
又、動作認識部121において、監視画像110から受験者3の動作、特には、上肢31の動作の詳細を自動的に認識するために、一例として、「OpenPose」と称される公知の画像解析技術を用いることもできる。本願発明者が特許第6534499号公報において開示しているように、「OpenPose」を用いることにより、監視画像110から受験者3の骨格情報を抽出し、骨格を構成する各特徴点の位置や速度を解析することによって、受験者3の上肢31の動作を詳細に認識することができる。
【0059】
又、「OpenPose」等の画像解析技術を用いることにより、監視画像110から、受験者3の上肢31の動きと、別途に検出した「持込禁止物33」の動きとをそれぞれ独立した情報として監視画像110から認識することもできる。このような機能を利用して、これらの受験者3の上肢31の動きと「持込禁止物33」との、それぞれの動きや両者の動きの差分等を解析することによって、受験者3が、「持込禁止物33」を保持した状態の上肢31の動きと、「持込禁止物33」を保持していない状態の上肢31の動きを区別して自動的に検出することができる。「受験者3が「持込禁止物33」を保持していない上肢31を、動かす動作」について、「持込禁止物33」を保持している上肢31を、動かす動作とは区別して認識することで、不正行為の誤検知を減らすことができる。
【0060】
動作認識部121は、更には、監視画像110から、受験者3の上肢31の動作以外の様々な不審な動作も「不正予備動作」として検出できるものとすることがより好ましい。ここで、本明細書における上記の「不正予備動作」とは、受験者3が不正行為を行う場合に当該不正行為に先行して行われることが多い動作として、試験監視システム1を用いる監視主体によって予め設定される「特異的な動作」のことを言う。そのような「特異的な動作」の判別は、一例として、本願発明者が特許第6534499号公報において開示しているように、監視画像110内の受験者3を、複数の領域(頭部と胴体部と上肢)に区画して、それらの各領域毎に人の各部の位置変動に係る特徴量を抽出することによって行うことができる。受験者3による典型的な「不正予備動作」の一例として、「不正行為に先行して周囲を複数回見回す動作」を挙げることができる。
【0061】
(視線検知部)
視線検知部122は、監視画像110から、受験者3の視線の動きを検知する。視線検知部122は、具体的には、例えば、「特開2018-148402号公報」において公開されている技術的手段、即ち、受験者の画像から「人物の頭部全体」と「目や鼻の位置」を検知し、これらの「位置関係」から顔の向きを求め、これを視線の動きとする視線検知部等によることができる。又、これに限らず、従来の公知の各種の視線検知装置、視線検知アプリケーション用のプログラム等によって視線検知部122を構成することができる。
【0062】
又、試験監視システム1を構成する演算処理部12においては、動作認識部121と視線検知部122との動作を連動させることにより、例えば、受験者3が、受験者用座席4の作業卓より下方に手を下げている動作と、視線をその手の方向に向ける動作との組合せを、不正行為である可能性が高い動作として、認識することができる。
【0063】
(心拍数検知部)
心拍数検知部123は、監視画像110から、受験者3の心拍数を検知する。心拍数検知部123は、具体的には、公知の技術である、イメージング・フォトプレチスモグラフィ(iPPG:imaging Photoplethysmography)、リモート・フォトプレチスモグラフィ(rPPG:remote Photoplethysmography)等を用いた画像解析によることができる。これらの技術は、何れも、カメラで撮影した反射光の量と、RGB信号の変化を抽出して心拍数を推定する技術である。試験監視システム1においては、受験者3の上肢31の動作及び視線32の動きに、更に心拍数の変動を組合せて検知することによって、不正行為の検知精度を著しく向上させることができる。
【0064】
(持込禁止物検知部)
持込禁止物検知部124は、監視画像110から受験者3の周辺に存在する持込禁止物33を検知する。このような物体の検知も、上述の「ディープラーニング技術を用いた画像認識装置」を用いて行うことができる。持込禁止物検知部124は、上記同様に「ディープラーニング技術を用いた画像認識装置」を用いることにより、監視画像110から、予め特定されている持込禁止物33(例えば、スマートフォンや腕時計型の情報処理端末或いは、文字や記号がされている紙片等)を検知することができる。
【0065】
又、試験監視システム1を構成する演算処理部12においては、動作認識部121及び視線検知部122と、持込禁止物検知部124との動作を連動させることにより、持込禁止物検知部124によって検知した持込禁止物33に対する受験者3の動作(持込禁止物33を上肢31で保持していること、持込禁止物33に視線32を向けていること等)を詳細に認識することもできる。
【0066】
(離着席行為検証部)
多数の受験者が一堂に会して試験を受ける試験会場における受験者の不正行為として、上記のカンニング等の行為の他、更に悪質な不正行為として、試験中の受験者の離着席によって受験者が入れ替わる、所謂、替玉受験行為も発生している。離着席行為検証部125は、監視画像110から受験者3の離席行為及び着席行為を検知し、この離着席行為に伴う不正行為(替玉受験行為)の有無を検証するための「離着席行為検証用画像」を生成する。「離着席行為検証用画像」とは、受験者用座席4からの受験者3の離席行為の画像である「特定離席画像」、及び、受験者用座席4への離席行為の後の最初の着席行為の画像である「特定着席画像」との組合せからなる画像であり、試験監視者5が上記の離席者と着席者との同一性を視認可能な画像情報であればよく、画像形式は特に限定されない。
【0067】
離着席行為検証部125においても、監視画像110中の受験者3を認識してその離着席に係る動きを認識する処理が必要であるが、そのような処理を自動的に行うため技術的手段としても、上述のディープラーニングを用いた画像認識技術の利用が有効である。
【0068】
(顔認証情報取得部)
顔認証情報取得部126は、監視画像110から、受験者3の固有の顔認証情報35を取得する。顔認証情報取得部126は、従来の公知の各種の顔認証情報取得装置、顔認証アプリケーション用のプログラム等によって構成することができる。試験監視システム1を顔認証情報取得部126を備えるものとして、監視対象となる受験者3の固有の生体識別情報として顔認証情報を取得し、これを記憶手段に記憶しておくことにより、試験監視システム1の作動中に、受験者3の同一性の確認のために必要に応じて繰り返し参照することができる。これにより、受験者3の数が多数である場合であっても、各受験者3の識別を、誤認知の極めて少ない高い精度で行うことができるようになる。
【0069】
又、試験監視システム1を顔認証情報取得部126を更に備えるものとすることにより、「離着席行為検証用画像」における離席者と着席者との同一性の認定も高い精度で自動的に判定できるようになる。
【0070】
(不正行為検知部)
不正行為検知部127は、監視画像110から受験者3の行動の不正行為を検知する。試験監視システム1を構成する演算処理部12が、動作認識部121、視線検知部122、不正行為検知部127からなる最小限の構成である場合、不正行為検知部127は、受験者3の上肢31の動作及び視線32の動きの組合せからなる情報を入力値とし、この入力値と予め設定されている不正行為判定用の閾値との比較により、受験者3の不正行為を検知する。
【0071】
試験監視システム1を構成する演算処理部12が、更に、心拍数検知部123、持込禁止物検知部124、離着席行為検証部125を備える場合には、これらの各部が検知する受験者3に係る情報を入力値とし、これらの入力値と既定の閾値との比較により、受験者3の行動の不適切度を判定する。このような動作を行う不正行為検知部127は、情報のマッチング解析とその結果の出力が可能な各種の情報処理装置により構成することができる。
【0072】
[監視情報出力部]
監視情報出力部13は、演算処理部12によって検知された不正行為に係る監視情報を試験監視者5が認識可能な形式で出力する装置である。試験監視システム1を構成する監視情報出力部13は、試験会場2内における試験監視者5の試験監視者用座席6に卓上型のパーソナルコンピュータとして配置することもできるし、或いは、試験監視者5が携帯する小型の情報処理端末を、監視情報出力部13として使用できるようにすることもできる。
【0073】
<試験監視方法>
本発明の「試験監視方法」は、試験会場における受験者の不正行為を検出するための試験監視方法であって、上述の試験監視システム1を用いて行うことができるプロセスである。
【0074】
図2は、試験監視システム1を用いて実行することができる本発明の試験監視方法の流れの一例を示すフローチャートである。本発明の試験監視方法は、少なくとも、監視画像撮影ステップst1、動作認識ステップst2、視線検知ステップst4、不正行為検知ステップst8、及び、監視情報出力ステップst9を含んで構成されるプロセスである。持込禁止物検知ステップst3、心拍数検知ステップst5、離着席行為検証ステップst6、及び、顔認証情報取得ステップst7は、必ずしも必須の構成要件ではないが、これらの任意の構成要件を含むプロセスとすることによって、より好ましい実施態様とすることができる。
【0075】
又、
図2のプロセスフローは、本発明の試験監視方法の流れの一例であり、試験監視システム1の各機能を発揮させて、不正行為を検知することができる流れである限りにおいては、各ステップの実行順序を入れ替えることもできるし、例えば、動作認識ステップst2、持込禁止物検知ステップst3、視線検知ステップst4、心拍数検知ステップst5については、各処理を同時に並行して行い、全ての検知結果を不正行為検知ステップst8に入力する流れとすること等もできる。
【0076】
以下、本発明の試験監視方法について、監視画像110を解析することによって受験者3の不正行為を検知するための演算処理を行う演算処理部12が、動作認識部121、視線検知部122、心拍数検知部123、持込禁止物検知部124、離着席行為検証部125、顔認証情報取得部126、及び、不正行為検知部127を含んで構成される、試験監視システム1を用いて行う場合、即ち、監視画像撮影ステップst1、動作認識ステップst2、持込禁止物検知ステップst3、視線検知ステップst4、心拍数検知ステップst5、離着席行為検証ステップst6、顔認証情報取得ステップst7、不正行為検知ステップst8、及び、監視情報出力ステップst9を含んで構成されるプロセスとして実施する場合の実施態様について、その詳細を説明する。
【0077】
(監視画像撮影ステップ)
監視画像撮影ステップst1では、撮影部11によって、受験者3が撮影される(
図4(A)、(B)参照)。
図4(A)は、撮影部11を構成する卓上設置カメラ111によって撮影された監視画像110Aの一例を模式的に示す図であり、個々の受験者3の顔と上肢31を含む部分(上半身)が、正面から撮影されている。一方、
図4(B)は、同じく、撮影部11を構成する天井カメラ112によって撮影された監視画像110Bの一例を模式的に示す図であり、俯瞰画像によって、卓上設置カメラ111の死角となる範囲に存在する持込禁止物33が撮影されている。
【0078】
監視画像撮影ステップst1において撮影された監視画像110(110A、110B)は、デジタル形式の画像データとして出力され演算処理部12に入力されて所定の演算処理に処される。
【0079】
(動作認識ステップ)
動作認識ステップst2では、動作認識部121が、監視画像撮影ステップst1において撮影された監視画像110から受験者3の上肢31の動作を認識する画像解析処理が行われる。この動作認識は、上述した通り、公知の各種の画像解析方法によることができる。
【0080】
尚、動作認識ステップst2においては、監視画像110から、受験者3の上肢31の動作以外の不審な動作(一例として、頻繁な首振り等)を、不正予備動作として検出して、不正行為であるか否かの判定にこの検出結果を寄与させてもよい。
【0081】
又、動作認識ステップst2においては、受験者3の上肢31の動作の認識に加えて、受験者3が離席する行為を行った場合には、これを検出する処理も行う。動作認識ステップst2において、受験者3が離席する行為が検出された場合(離席行為、YES)には、離着席行為検証ステップst6に進む。受験者3が離席する行為が検出されない場合は、(離席行為、NO)、持込禁止物検知ステップst3に進む。
【0082】
(持込禁止物検知ステップ)
持込禁止物検知ステップst3においては、持込禁止物検知部124が、監視画像110から、受験者3の周辺に存在する持込禁止物33を検知する。持込禁止物検知ステップst3において、持込禁止物33が検知された場合(不正持込、YES)には、監視情報出力ステップst9において、監視情報出力部13により、直ちに、不正行為(不正持込)の発生を示す通知を出力するようにすることが好ましい。持込禁止物33が検知されない場合(不正持込、NO)には、視線検知ステップst4に進む。
【0083】
(視線検知ステップ)
視線検知ステップst4においては、視線検知部122が、監視画像110から、受験者3の視線の動きを検知する。視線の動きの変動の検知に際しては、視線の動きの変動角度や単位時間内の変動回数の組合せ等により検知すべき最小限の視線の動きの変動の閾値を予め規定しておき、この閾値を上回って視線の動きが変動した場合のみに視線の動きを検知するようにしてもよい。
【0084】
(心拍数検知ステップ)
心拍数検知ステップst5においては、心拍数検知部123が、監視画像110から、受験者3の心拍数を検知する。心拍数の検知に際しては、心拍数の変動量や単位時間内の変動回数の組合せ等により検知すべき最小限の心拍数の変動量の閾値を予め規定しておき、この閾値を上回って心拍数が変動した場合のみに心拍数の動きを検知するようにしてもよい。
【0085】
(離着席行為検証ステップ)
離着席行為検証ステップst6においては、離着席行為検証部125が、受験者3の離席行為及び着席行為について、不正行為(替玉受験行為)であるか否かを検証するために、監視画像110から、当該離着席行為(受験者3の離席行為及び着席行為)を検知する。このステップでは具体的には、受験者用座席4(例えば4A)からの受験者3Aの離席行為の画像である「特定離席画像」、及び、受験者用座席4Aへの上記の離席行為の後の最初の着席行為の画像である「特定着席画像」との組合せからなる、「離着席行為検証用画像」が生成される。「離着席行為検証用画像」は、直ちに、監視情報出力部13から出力して、試験監視者5が目視において当該離着席行為に関して不正行為が発生しているか否かを確認できるようにしてもよいが、顔認証情報取得ステップst7において、離席者と着席者の同一性を自動的に判断する手順を経るようにすることにより、試験監視者5の監視作業負担を更に軽減することができる。
【0086】
(顔認証情報取得ステップ)
顔認証情報取得ステップst7においては、顔認証情報取得部126が、監視画像110から、受験者3の固有の顔認証情報を取得する。そして、上述の「離着席行為検証用画像」における離席者と着席者との顔認証情報とが一致しない場合には、監視情報出力ステップst9において、監視情報出力部13により、直ちに、不正行為(替玉受験行為)の発生を示す通知を出力するようにすることが好ましい。
【0087】
顔認証情報取得ステップst7においては、顔認証情報取得部126によって、各受験者の固有の顔認証情報として取得された顔認証情報は、個々の受験者(試験解答者)の識別情報として演算処理部12内の記憶手段に登録し、試験監視方法の実行中に、離着席行為の検証に限らず、個々の受験者の同一性の確認のために必要に応じて繰り返し参照することができるようにすることが好ましい。
【0088】
(不正行為検知ステップ)
不正行為検知ステップst8においては、不正行為検知部127が、受験者3の不正行為を検知する。不正行為の検知は、動作認識ステップst2において認識された「受験者3の上肢31の動作」、視線検知ステップst4において検知された「受験者3の視線32の動き」及び、心拍数検知ステップst5において検知された「受験者3の心拍数の変動量」の組合せからなる情報(以下、「受験者の動作等に関する情報」と言う)を入力値とし、この入力値と不正行為判定用の閾値との比較により、受験者3の不正行為が検知される。
【0089】
不正行為検知部127は、上述の「受験者の動作等に関する情報」について、予め、記憶手段に登録されている「不正行為判断基準(閾値)」と照合することによって、不正行為の発生の有無を判定する。不正行為検知部127は、このような「不正行為判断基準(閾値)」を記憶しておく記憶手段と、簡単な情報のマッチング解析が可能な各種の情報処理装置やプログラム等により構成することができる。尚、下記表1は、「不正行為判断基準(閾値)」の一部の具体例である。
【0090】
【0091】
上記のようにして、受験者3の様々な行動について、不正行為検知ステップst8において、不正行為検知部127が、不正行為を検知した場合(不正行為?YES)には、監視情報出力ステップst9へ進む。一方、不正行為が検知されない場合(不正行為?NO)には、監視画像撮影ステップst1へ戻り、以後の監視処理を繰り返す。
【0092】
(監視情報出力ステップ)
監視情報出力ステップst9では、監視情報を監視情報出力部13に出力する。ここで、監視情報とは、特定の受験者が不正行為を行っていること、或いは、不正行為が行われている可能性が一定以上の確率であること、或いは、不正行為が行われそうな状況であることを、示す情報であり、この監視情報の形式は、試験監視者5がどの監視対象者に対して対応が必要であるのかを識別できる形式であれば特定の形式に限定されない。監視対象者を他の対象から区別する特定の色の囲み枠線、動作の状態を認識可能な当該監視対象者の骨格情報、不正行為の発生が疑われる状況であることを示すサイン(光の点滅や警告音等)等が試験監視者5の保持する、監視情報出力部13から出力されることが好ましい。
【0093】
尚、監視情報出力ステップst9では、演算処理部12が、監視を終了するか否かを判断する。監視終了は、例えば、監視終了の命令が入力された場合に終了と判断される。終了する場合(S18、YES)には、監視動作を終了し、それ以外の場合(S18、NO)には、監視画像撮影ステップst1へ戻り、監視を継続する。
【符号の説明】
【0094】
1 試験監視システム
11 撮影部
111 卓上設置カメラ
112 天井カメラ
110(110A、110B) 監視画像
12 演算処理部
121 動作認識部
122 視線検知部
123 心拍数検知部
124 持込禁止物検知部
125 離着席行為検証部
126 顔認証情報取得部
127 不正行為検知部
13 監視情報出力部
2 試験会場
3(3A、3B、3C、・・・3Z) 受験者
31 上肢
32 視線
33 持込禁止物
4(4A、4B、4C、・・・4Z) 受験者用座席
5 試験監視者
6 試験監視者用座席
st1 監視画像撮影ステップ
st2 動作認識ステップ
st3 持込禁止物検知ステップ
st4 視線検知ステップ
st5 心拍数検知ステップ
st6 離着席行為検証ステップ
st7 顔認証情報取得ステップ
st8 不正行為検知ステップ
st9 監視情報出力ステップ
【要約】
【課題】多数の受験者が一堂に会して試験を受ける試験会場における試験監視者の作業負担を軽減しながら、高い検知精度で不正行為を自動的に検出することができる試験監視手段を提供すること。
【解決手段】受験者3を撮影する撮影部11と、撮影部11が撮影した監視画像110から受験者3の上肢31の動作を認識する、動作認識部121と、監視画像110から受験者3の視線32の動きを検知する、視線検知部122と、受験者3の不正行為を検知する、不正行為検知部127と、不正行為検知部127が不正行為を検知したときに、監視情報を試験監視者が認識可能な形式で出力する、監視情報出力部13と、を備え、不正行為検知部127は、上肢31の動作及び視線32の動きの組合せからなる情報を入力値とし、この入力値と不正行為判定用の閾値との比較により、受験者3の不正行為を検知する、試験監視システム1とする。
【選択図】
図1