IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本坩堝株式会社の特許一覧 ▶ カナエハイテック合同会社の特許一覧 ▶ 市川 央の特許一覧

特許7445247不純物除去ユニット、及び、不純物除去ユニットを備えた溶融金属の溶解炉、保持炉又は移送樋
<>
  • 特許-不純物除去ユニット、及び、不純物除去ユニットを備えた溶融金属の溶解炉、保持炉又は移送樋 図1
  • 特許-不純物除去ユニット、及び、不純物除去ユニットを備えた溶融金属の溶解炉、保持炉又は移送樋 図2
  • 特許-不純物除去ユニット、及び、不純物除去ユニットを備えた溶融金属の溶解炉、保持炉又は移送樋 図3
  • 特許-不純物除去ユニット、及び、不純物除去ユニットを備えた溶融金属の溶解炉、保持炉又は移送樋 図4
  • 特許-不純物除去ユニット、及び、不純物除去ユニットを備えた溶融金属の溶解炉、保持炉又は移送樋 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】不純物除去ユニット、及び、不純物除去ユニットを備えた溶融金属の溶解炉、保持炉又は移送樋
(51)【国際特許分類】
   B22D 1/00 20060101AFI20240229BHJP
   B22D 45/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B22D1/00 L
B22D1/00 K
B22D45/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023183417
(22)【出願日】2023-10-25
【審査請求日】2023-10-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592134871
【氏名又は名称】日本坩堝株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521307303
【氏名又は名称】カナエハイテック合同会社
(73)【特許権者】
【識別番号】523404675
【氏名又は名称】市川 央
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 央
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-035272(JP,A)
【文献】特開平07-144261(JP,A)
【文献】特開2005-000957(JP,A)
【文献】特開昭64-075153(JP,A)
【文献】特開平05-169207(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0135298(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 1/00-47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁に囲まれかつアルミニウム及び/又はアルミニウム合金が溶解した溶融金属が上方を一方向に向かって移動し得る底壁上に設置される不純物除去ユニットであって、
前記溶融金属の移動方向に沿って間隔を開けて配置される少なくとも二つの障壁であって、前記溶融金属の移動を遮る少なくとも二つの障壁を含み、
前記少なくとも二つの障壁の間の上部は開口しており、
前記少なくとも二つの障壁のうち、前記溶融金属の移動方向の最も上流側に位置する第一の障壁の下部に、前記溶融金属が通り抜ける第一流通孔が形成されており、他の少なくとも一つの第二の障壁の上部に、前記溶融金属が通り抜ける第二流通孔が形成されており、
前記第一流通孔の下端の位置は、前記底壁の上面の位置から上方に離れており、
前記第二流通孔は、前記第二の障壁の高さの1/2よりも上側の部分に形成され、かつ、前記第二流通孔の上端の位置は、前記第二の障壁の上端の位置から下方に離れている、不純物除去ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の不純物ユニットであって、
前記底壁上に載置されるベースであって、前記少なくとも二つの障壁が立ち上がるベースと、
前記ベースから立ち上がり、かつ、前記少なくとも二つの障壁を両側から挟む一対のガイドと、をさらに含み、
前記ベース、前記少なくとも二つの障壁及び前記一対のガイドが一体化されている、不純物ユニット。
【請求項3】
前記一対のガイドの少なくとも一方、及び/又は、前記ベースには、ヒーターを埋め込むための埋め込み部が形成されている、請求項2に記載の不純物ユニット。
【請求項4】
不溶性ガスが導入されるガス導入管及び前記不溶性ガスの気泡を生成する気泡生成体を含む脱ガス処理器を備え、
前記ガス導入管が前記一対のガイドの一方に沿って延び、前記気泡生成体が前記ベースの上方に気泡を放出するように前記ベースに取り付けられる、請求項2に記載の不純物ユニット。
【請求項5】
溶融金属を保持する保持室と、前記保持室から流入する前記溶融金属を汲み出す汲出し室とを少なくとも備えた保持炉であって、
前記汲出し室の底壁上もしくは前記保持室の底壁上に設置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の不純物除去ユニットを備える、保持炉。
【請求項6】
金属を溶解する溶解室を備えた溶解炉であって、
前記溶解室の底壁上に設置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の不純物除去ユニットを備える、溶解炉。
【請求項7】
溶融金属を移送する移送樋であって、
前記移送樋の底壁上に設置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の不純物除去ユニットを備える、移送樋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物除去ユニット、及び、不純物除去ユニットを備えた溶融金属の溶解炉、保持炉又は移送樋に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば溶解保持炉は、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属を溶解する溶解室と、溶解した溶融金属(いわゆる「溶湯」)を溶解室から受け入れて高温で保持する保持室と、溶融金属を汲み出す汲出し室とを備えている。保持室と汲出し室は、隣接して配置され、仕切壁によって仕切られることで分離されており、仕切壁の下方であり底壁の上方の連通部を通って、溶融金属が保持室から汲出し室へ移動可能である。汲出し室から汲み出された溶融金属は、鋳造などに使用される。
【0003】
保持室内の溶融金属には、例えば、酸化物や、ハードスポットなどの異物が不純物として存在している。不純物が溶融金属とともに保持室から汲出し室に移動すると、汲出し室から汲み出される溶融金属に不純物が混入し、不純物が混入した溶融金属が鋳造などに使用されると、不良製品の原因となる。このように、溶融金属の品質が鋳物などの良否に重要な影響を及ぼすため、不純物が溶融金属とともに保持室から汲出し室に移動しないような措置が必要となる。
【0004】
特許文献1には、仕切壁の下方の汲出し室側底壁と保持室側底壁の接続部分に、保持室側底壁よりも上方に突出する段部が形成され、連通部が段部の上方において開口するように構成された溶解保持炉が開示されている。特許文献1の溶解保持炉では、保持室内の溶融金属が汲出し室へ移動する際に、溶融金属とともに保持室内の沈殿物が汲出し室に移動しても、保持室及び汲出し室の間の段部において沈殿物の移動が止められて、汲出し室への移動が規制される。これにより、特許文献1の溶解保持炉では、汲出し室内の溶融金属に不純物が混入するのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-109024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
保持室内に存在する不純物には、底壁に沈んでたまる沈殿物の他に、溶融金属の液面に浮遊する浮遊物が存在する。特許文献1の溶解保持炉では、保持室内の沈殿物については汲出し室への移動を十分に規制できるものの、浮遊物についての移動は十分に規制できない。例えば、フラックス処理のために保持室内の溶融金属を攪拌した際に溶融金属の液面に浮遊する浮遊物が仕切壁の下方まで移動して連通部から汲出し室へ移動するおそれがある。又は、汲出し室内の溶融金属が汲み出された際に保持室内の溶融金属の液面が下降するが、この際に溶融金属の液面に浮遊する浮遊物が仕切壁の下方まで移動して連通部から汲出し室へ移動するおそれがある。
【0007】
このように特許文献1の溶解保持炉では、汲出し室内の溶融金属に不純物が混入するのを十分に抑制できないとの課題がある。この課題は、溶解室を備えない保持炉においても同様である。
【0008】
本発明は、上記課題を解決することに着目してなされたものであり、溶融金属に不純物が混入するのを抑制できる不純物除去ユニットの提供を目的とする。また、本発明は、汲出し室内の溶融金属に不純物が混入するのを抑制するために不純物除去ユニットを備えた溶解保持炉又は保持炉(以下、本開示では、溶解保持炉も保持炉に含めて単に「保持炉」という。)の提供を目的とする。また、本発明は、溶解炉から流出させる溶融金属に不純物が混入するのを抑制するために不純物除去ユニットを備えた溶解炉の提供を目的とする。また、本発明は、溶解炉などから各種の供給先に配湯する溶融金属に混入した不純物を除去するために不純物除去ユニットを備えた移送樋の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の項1に記載の不純物除去ユニットを主題とする。
【0010】
項1.側壁に囲まれかつ上方を溶融金属が一方向に向かって移動し得る底壁上に設置される不純物除去ユニットであって、
前記溶融金属の移動方向に沿って間隔を開けて配置される少なくとも二つの障壁であって、前記溶融金属の移動を遮る少なくとも二つの障壁を含み、
前記少なくとも二つの障壁のうち、前記溶融金属の移動方向の最も上流側に位置する障壁の下部に、前記溶融金属が通り抜ける第一流通孔が形成されており、他の少なくとも一つの障壁の上部に、前記溶融金属が通り抜ける第二流通孔が形成されている、不純物除去ユニット。
【0011】
また本発明の不純物除去ユニットは、上記項1に記載の不純物除去ユニットの好ましい態様として、以下の項2に記載の不純物除去ユニットを包含する。
【0012】
項2.項1に記載の不純物ユニットであって、
前記底壁上に載置されるベースであって、前記少なくとも二つの障壁が立ち上がるベースと、
前記ベースから立ち上がり、かつ、前記少なくとも二つの障壁を両側から挟む一対のガイドと、をさらに含み、
前記ベース、前記少なくとも二つの障壁及び前記一対のガイドが一体化されている、不純物ユニット。
【0013】
また本発明の不純物ユニットは、上記項2に記載の不純物除去ユニットの好ましい態様として、以下の項3に記載の不純物除去ユニットを包含する。
【0014】
項3.前記一対のガイドの少なくとも一方、及び/又は、前記ベースには、ヒーターを埋め込むための埋め込み部が形成されている、項2に記載の不純物ユニット。
【0015】
また本発明の不純物除去ユニットは、上記項2又は項3に記載の不純物除去ユニットの好ましい態様として、以下の項4に記載の不純物除去ユニットを包含する。
【0016】
項4.不溶性ガスが導入されるガス導入管及び前記不溶性ガスの気泡を生成する気泡生成体を含む脱ガス処理器を備え、
前記ガス導入管が前記一対のガイドの一方に沿って延び、前記気泡生成体が前記ベースの上方に気泡を放出するように前記ベースに取り付けられる、項2又は項3に記載の不純物ユニット。
【0017】
また本発明は、上記課題を解決するため、以下の項5に記載の保持炉を主題とする。
【0018】
項5.溶融金属を保持する保持室と、前記保持室から流入する前記溶融金属を汲み出す汲出し室とを少なくとも備えた保持炉であって、
前記汲出し室の底壁上又は前記保持室の底壁上に設置される、項1から4のいずれか一項に記載の不純物除去ユニットを備える、保持炉。
【0019】
項5に記載の保持炉において、前記不純物除去ユニットは、前記汲出し室の底壁又は前記保持室の底壁に取り外し可能に設置されることが好ましいが、前記汲出し室の底壁又は前記保持室の底壁と一体化されていてもよい。
【0020】
また本発明は、上記課題を解決するため、以下の項6に記載の溶解炉を主題とする。
【0021】
項6.金属を溶解する溶解室を備えた溶解炉であって、
前記溶解室の底壁上に設置される、項1から4のいずれか一項に記載の不純物除去ユニットを備える、溶解炉。
【0022】
項6に記載の溶解炉において、前記不純物除去ユニットは、前記溶解室の底壁に取り外し可能に設置されることが好ましいが、前記溶解室の底壁と一体化されていてもよい。
【0023】
また本発明は、上記課題を解決するため、以下の項7に記載の移送樋を主題とする。
【0024】
項7.溶融金属を移送する移送樋であって、
前記移送樋の底壁上に設置される、項1から4のいずれか一項に記載の不純物除去ユニットを備える、移送樋。
【0025】
項7に記載の移送樋において、前記不純物除去ユニットは、前記移送樋の底壁に取り外し可能に設置されることが好ましいが、前記移送樋の底壁と一体化されていてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の不純物除去ユニットによれば、溶融金属に混在する沈殿物や浮遊物の不純物を効果的に除去できる。そのため、例えば、不純物除去ユニットを備えた保持炉においては、汲出し室内の溶融金属に不純物が混入するのを抑制でき、不純物除去ユニットを備えた溶解炉においては、溶解炉から流出させる溶融金属に不純物が混入するのを抑制でき、不純物除去ユニットを備えた移送樋においては、溶解炉などから各種の供給先に配湯する溶融金属に不純物が混入するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は保持炉の概略構成を示す。
図2図2は不純物除去ユニットの斜視図を示す。
図3図3は不純物除去ユニットの平面図を示す。
図4図4図3のA-A断面斜視図を示す。
図5図5図3のB-B断面斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の不純物除去ユニットは、溶融金属に混入する不純物を溶融金属から除去するためのものである。不純物には、溶融金属の下部に沈む沈殿物の他、溶融金属の液面に浮かぶ浮遊物を含む。つまり、本発明の不純物除去ユニットは、溶融金属の下部に沈む沈殿物、及び、溶融金属の液面に浮かぶ浮遊物を溶融金属から効果的に除去できる。
【0029】
本発明の不純物除去ユニットは、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属を溶解する溶解炉、溶解した金属である溶融金属を高温で保持する保持炉(溶解保持炉も含む)、溶解炉などから溶融金属を各種の供給先に配湯する移送樋に適用できる。溶解炉では、溶解炉内から出湯口を通って溶解炉外に流出する溶融金属に不純物が混入するのを抑制できる。保持炉では、保持室から汲出し室に流入して汲み出される溶融金属に不純物が混入するのを抑制できる。移送樋では、溶解炉などから各種の供給先に配湯される溶融金属に不純物が混入するのを抑制できる。なお、本発明の不純物除去ユニットは、底壁上の側壁により囲まれた凹所に溶融金属が存在し、溶融金属が底壁の上方を一方向に向かって移動し得る各種の機械、器械、器具、道具などに適用できる。
【0030】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。以下の実施形態では、保持炉に本発明の不純物除去ユニットを適用した例を示す。
【0031】
図1は、本実施形態の不純物除去ユニット10を備えた保持炉1の概略構成を示す。保持炉1は、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属を溶解した溶融金属を高温で保持する保持室2と、溶融金属を汲み出す汲出し室3とを少なくとも備える。溶融金属は、例えば溶解炉から移送樋などを介して供給される。あるいは、保持炉1が金属を溶解する溶解室をさらに備える溶解保持炉である場合、溶融金属は、溶解室から保持室2に供給される。
【0032】
保持室2は、上部に開口を有する容器形状であり、底壁20及び側壁21を備える。保持室2は、溶融金属を底壁20上の側壁21で囲まれた空間において保持する。保持室2の上部には蓋体22が着脱可能に設けられている。保持室2の上部開口は、蓋体22により開閉自在に塞がれる。蓋体22には、バーナーやヒーターなどの加熱器4が取り付けられている。保持室2内の溶融金属は、加熱器4により加熱され、金属の溶解温度よりも高い温度で保持される。
【0033】
汲出し室3は、保持室2に隣接して配置されている。汲出し室3は、上部に開口を有する容器形状であり、底壁30及び側壁31を備える。なお、本実施形態では、保持室2の底壁20と汲出し室3の底壁30は一体物であり、保持室2の側壁21と汲出し室3の側壁31は一体物である。保持室2と汲出し室3とは仕切壁5によって仕切られることで分離されている。仕切壁5の下方であり、底壁20,30の上方には、溶融金属の連通部50が形成されており、保持室2内の溶融金属は、底壁20上を仕切壁5の下方の連通部50を通って保持室2から汲出し室3の方向(図1の矢印Xの方向)に移動可能である。保持室2内の溶融金属は、汲出し室3に溶融金属が貯留された状態では、汲出し室3内の溶融金属が汲み出されて溶融金属の液面が低下すると、汲出し室3に移動する。
【0034】
保持室2及び汲出室3(さらに溶解室)は、例えば、鋼鉄などの金属により形成されたケーシングに耐火材を内張りして形成される。なお、ケーシングと耐火材との間に、必要に応じて断熱材を介在させてもよい。
【0035】
図1に示すように、保持炉1は、保持室2から汲出し室3に流入して汲出し室3から汲み出される溶融金属に不純物が混入するのを抑制することを目的に、不純物除去ユニット10を備える。不純物除去ユニット10は、保持室2の底壁20上に設置できる。これにより、保持室2から仕切壁5の下方の連通部50を通って汲出し室3に流入する前に、保持室2内で溶融金属が2壁20の上方を一方向(汲出し室3の方向)に移動した際に、溶融金属に混在した不純物が不純物除去ユニット10により溶融金属から除去される。
【0036】
不純物除去ユニット10が保持室2の底壁20上に設置される場合は、不純物除去ユニット10が仕切壁5に密接して配置されることが好ましい。仕切壁5の下方の連通部50が保持室2における溶融金属の出口であるため、不純物除去ユニット10が仕切壁5に密接して配置されていると、保持室2から汲出し室3に流入する溶融金属から不純物を最も効果的に除去できる。なお、不純物除去ユニット10は仕切壁5に近接していればよく、仕切壁5のすぐ近くに配置されていてもよい。
【0037】
あるいは、不純物除去ユニット10は、汲出し室3の底壁30上に設置できる。これにより、溶融金属が保持室2から仕切壁5の下方の連通部50を通って汲出し室3に流入した後、汲出し室3内で溶融金属が底壁30の上方を一方向(保持室2とは反対側の方向)に移動した際に、溶融金属に混在した不純物が不純物除去ユニット10により溶融金属から除去される。
【0038】
不純物除去ユニット10は、保持室2の底壁20又は汲出し室3の底壁30に取り外し可能に設置できるものであってもよいし、保持室2の底壁20又は汲出し室3の底壁30と一体化されていてもよい。本実施形態では、不純物除去ユニット10は、保持室2の底壁20又は汲出し室3の底壁30に対して取り外し可能である。不純物除去ユニット10が取り外し可能であると、例えば保持炉1の清掃時に保持室2及び汲出室3を容易に清掃できるうえ、不純物除去ユニット10も容易に清掃して再度使用できるため、好ましい。
【0039】
図1から図5に示すように、不純物除去ユニット10は、溶融金属の移動方向に沿って間隔を開けて配置される少なくとも二つの障壁11を含む。本実施形態では、不純物除去ユニット10は、二つの障壁11を含む。ここで、溶融金属の移動方向とは、保持炉1においては、保持室2から汲出し室3に溶融金属が移動することから、保持室2と汲出し室3が並ぶ方向(図1の矢印Xの方向)である。
【0040】
障壁11は、厚みを有する板状であり、例えばレンガやセメントなどの耐火材により形成できる。障壁11は、本実施形態では長方形状である。障壁11の高さは、障壁11が保持室2の底壁20上又は汲出し室3の底壁30上に設置された際に、溶融金属の最高液面高さよりも高い、つまり、溶融金属の液面から常に障壁11の上端が突き出るように設計される。障壁11の長さは、障壁11が保持室2の底壁20上又は汲出し室3の底壁30上に設置された際に、障壁11の長さ方向の両端と保持室2の側壁21又は汲出し室3の側壁31との間に隙間が生じないように設計される。障壁11の高さ及び長さが上述したように設計されることで、障壁11は、溶融金属の移動を基本的には遮る、つまりは、後述する第一流通孔12及び第二流通孔13以外の部分において溶融金属の移動を遮るように、保持室2の底壁20上又は汲出し室3の底壁30上に設置される。障壁11の厚みは、障壁11が保持室2の底壁20上又は汲出し室3の底壁30上に設置された際に、溶融金属の移動により容易に障壁11が破損や変形などしない強度を有するように設計される。
【0041】
少なくとも二つの障壁11のうち、溶融金属の移動方向の最も上流側に位置する障壁11Aには、その下部に、第一流通孔12が形成されている。障壁11Aの下部とは、障壁11Aの高さの1/2よりも下側の部分である。第一流通孔12は、不純物除去ユニット10が設置される保持炉1の保持室2や汲出し室3、その他に例えば溶解炉の溶解室や移送樋などに溜まる溶融金属が最も減少すると想定されるときの液面(以下、「溶融金属の最低液面」という)の位置よりも大きく下方に離れた位置にある。第一流通孔12は、該障壁11Aを厚み方向に貫通しており、該障壁11Aの一方側から他方側に溶融金属が移動することを許容する。第一流通孔12の形状及び大きさは、特に限定されず、溶融金属をスムーズに移動できる適当な形状及び大きさに設計できる。例えば、第一流通孔12の形状は横断面視で横長の長方形状とすることができ、第一流通孔12の大きさは縦50mmかつ横100mmとすることができる。
【0042】
第一流通孔12が障壁11Aの下部に形成されることで、溶融金属が第一流通孔12を通って障壁11Aを通り抜けても、溶融金属の液面に浮遊する浮遊物Fは障壁11Aに突き当たって障壁11Aを通り抜けることできず、浮遊物Fが溶融金属とともに移動するのが阻止される。これにより、溶融金属に混在する不純物のうち、浮遊物Fが保持室2から汲出し室3に移動して汲出し室3内の溶融金属に存在することを極力回避できる。よって、汲出し室3から汲み出される溶融金属に浮遊物Fが混入することを抑制できる。
【0043】
第一流通孔12の上端の位置は、溶融金属の最低液面の位置よりも下方に50mm以上200mm以下離れることが好ましい。これにより、溶融金属の液面に浮遊する浮遊物Fが溶融金属の移動に伴って障壁11Aに沿って多少下方に移動した場合でも、浮遊物Fが第一流通孔12から障壁11Aを通り抜けるのを効果的に抑制できる。また、第一流通孔12の下端の位置は、不純物除去ユニット10が設置される、例えば保持炉1の底壁20,30の上面、その他に例えば溶解炉の溶解室や移送樋の底壁(以下、「不純物除去ユニット10が設置される底壁」という)の上面の位置から上方に50mm以上100mm以下離れることが好ましい。これにより、溶融金属の下部に沈殿する沈殿物Pが溶融金属の移動に伴って第一流通孔12から障壁11Aを通り抜けることも低減できる。
【0044】
少なくとも二つの障壁11のうち、他の少なくとも一つの障壁11Bには、その上部に、第二流通孔13が形成されている。障壁11Bの上部とは、障壁11Bの高さの1/2よりも上側の部分である。第二流通孔13は、第一流通孔12よりも上方に位置し、不純物除去ユニット10が設置される底壁の上面、あるいは、不純物除去ユニット10がベース14を含む場合はベース14の上面の位置よりも大きく上方に離れた位置にある。第二流通孔13は、該障壁11Bを厚み方向に貫通しており、該障壁11Bの一方側から他方側に溶融金属が移動することを許容する。第二流通孔13の形状及び大きさは、特に限定されず、溶融金属をスムーズに移動できる適当な形状及び大きさに設計できる。例えば、第二流通孔13の形状は横断面視で横長の長方形状とすることができ、第二流通孔13の大きさは縦50mmかつ横100mmとすることができる。
【0045】
第二流通孔13が障壁11Bの上部に形成されることで、溶融金属が第二流通孔13を通って障壁11Aを通り抜けても、溶融金属の下部(底壁20,30付近)に沈殿する沈殿物Pは障壁11Bに突き当たって障壁11Bを通り抜けることできず、沈殿物Pが溶融金属とともに移動するのが阻止される。これにより、溶融金属に混在する不純物のうち、沈殿物Pが保持室2から汲出し室3に移動して汲出し室3内の溶融金属に存在することを極力回避できる。よって、汲出し室3から汲み出される溶融金属に沈殿物Pが混入することを抑制できる。
【0046】
第二流通孔13の下端の位置は、不純物除去ユニット10が設置される底壁の上面又はベース14の上面の位置の位置よりも上方に200mm以上600mm以下離れることが好ましい。これにより、溶融金属の下部に沈殿する沈殿物Pが溶融金属の移動に伴って障壁11Bに沿って多少上方に移動した場合でも、第二流通孔13から障壁11Bを通り抜けることを効果的に抑制できる。なお、第二流通孔13形成された障壁11Bが仕切壁5に密接して配置される場合、第二流通孔13は、仕切壁5の下端よりも下方に形成される。また、第二流通孔13の上端の位置は、溶融金属の最低液面の位置よりも下方に50mm以上100mm以下離れることが好ましい。これにより、万が一、障壁11Aを通り抜けた溶融金属に浮遊物Fが混入していた場合でも、溶融金属の液面に浮遊する浮遊物Fが溶融金属の移動に伴って第二流通孔13から障壁11Bを通り抜けることを抑制できる。
【0047】
不純物除去ユニット10は、少なくとも二つの障壁11に加えて、障壁11が立ち上がるベース14を含むことが好ましい。ベース14は、厚みを有する板状であり、例えばレンガやセメントなどの耐火材により形成できる。ベース14は少なくとも二つの障壁11と一体化されている。ベース14は、保持室2の底壁20上又は汲出し室3の底壁30上に載置される。これにより、少なくとも二つの障壁11を保持室2の底壁20上又は汲出し室3の底壁30上に容易に設置できる。
【0048】
ベース14は、本実施形態では長方形状である。ベース14の厚みは、容易にベース14が破損や変形などしない強度を有するように設計される。ベース14の長さは、ベース14が保持室2の底壁20上又は汲出し室3の底壁30上に設置された際に、ベース11の長さ方向の両端と保持室2の側壁21又は汲出し室3の側壁31との間に隙間が生じないように設計される。ベース14の横幅は、すべての障壁11をその上面において一体化できるように設計されている。
【0049】
不純物除去ユニット10は、少なくとも二つの障壁11に加えて、少なくとも二つの障壁11を両側から挟む一対のガイド15を含むことが好ましい。ガイド15は、厚みを有する板状であり、例えばレンガやセメントなどの耐火材により形成できる。一対のガイド15は少なくとも二つの障壁11と一体化されている。本実施形態では、一対のガイド15はベース14から立ち上がり、ベース14と一体化されている。
【0050】
一対のガイド15は、少なくとも二つの障壁11を保持室2の底壁20上又は汲出し室3の底壁30上に設置する際、保持室2の側壁21又は汲出し室3の側壁31と接触する。これにより、少なくとも二つの障壁11を保持室2内又は汲出し室3内に挿入して保持室2の底壁20上又は汲出し室3の底壁30上に設置する際、一対のガイド15が保持室2の側壁21又は汲出し室3の側壁31を摺動するので、少なくとも二つの障壁11を保持室2内又は汲出し室3内に容易に挿入できる。また、少なくとも二つの障壁11を保持室2の底壁20上又は汲出し室3の底壁30上に設置した際、一対のガイド15が保持室2の側壁21又は汲出し室3の側壁31と接触するので、障壁11の長さ方向の両端と保持室2の側壁21又は汲出し室3の側壁31との間に隙間を生じないようにできる。
【0051】
ガイド15は、本実施形態では平面視で長方形状である。ガイド15の厚みは、容易にガイド15が破損や変形などしない強度を有するように設計される。ベース15の横幅は、すべての障壁11を一体化できるように設計されている。ガイド15の高さは、障壁11が保持室2の底壁20上又は汲出し室3の底壁30上に設置された際に、溶融金属の最高液面高さよりも大きい、つまり、溶融金属の液面から常にガイド15の上端が突き出るように設計される。本実施形態では、ガイド15の高さと障壁11の高さが一致している。
【0052】
本実施形態の不純物除去ユニット10は、二つの障壁11と、ベース14と、一対のガイド15とを含んでおり、二つの障壁11が対向する前面及び後面、ベース14が底面、一対のガイド15が対向する一対の側面を構成する、上部が開口した箱型を呈している。これにより、不純物除去ユニット10を溶融金属に沈めることで、不純物除去ユニット10を保持室2の底壁20上又は汲出し室3の底壁30上に容易に設置できる。
【0053】
不純物除去ユニット10は、一対のガイド15の少なくとも一方、及び/又は、ベース14に、ヒーターを埋め込むための埋め込み部16が形成されることが好ましい。埋め込み部16は、ガイド15やベース14に形成された空洞であり、ヒーターを埋め込むことで、溶融金属を間接的に加熱できる。これにより、溶融金属の温度低下を抑制できるため、高い温度を維持した溶融金属を汲出し室3から汲み出すことができる。ヒーターは、埋め込み部16に埋め込むことができれば、特に限定されない。
【0054】
埋め込み部16は、一対のガイド15の少なくとも一方に形成されていて、埋め込み部16の上端はガイド15の上面において開口していることが好ましい。これにより、ヒーターを容易にガイド15に埋め込むことができる。また、埋め込み部16は、L字形状であり、ガイド15からベース14に延びていることが好ましい。これにより、ヒーターを容易にベース14に埋め込むことができる。
【0055】
不純物除去ユニット10は、脱ガス処理器17を備えることが好ましい。脱ガス処理器17は、不活性ガスが導入されるガス導入管18と、不活性ガスの気泡を生成する気泡生成体19とを含む。
【0056】
ガス導入管18は、両端に開口を有するパイプ状に形成され、一対のガイド15の一方に沿って上下に延びている。ガス導入管18の一方端は気泡生成体19に接続され、ガス導入管18の他方端は、ガイド15よりも上方に突き出て、不活性ガス供給源から延びるガス供給配管に接続される。不溶性ガスと、溶湯金属に溶解しないガスの他、溶湯金属に溶解しにくいガスを含む概念である。不溶性ガスは、例えば、アルゴンなどの不活性ガスや、窒素、塩素などのガスを使用できる。ガス導入管18は、例えば、鋼、ステンレス、鋳鉄などの金属製の管本体を多孔質性の耐火材で被覆したものである。
【0057】
気泡生成体19は、中空の箱状であり、例えば本実施形態では平面視で長方形状である。気泡生成体19は、ベース14の上方に気泡を放出するようにベース14に取り付けられる。気泡生成体19は、例えば内部空間を有しかつガス導入管18と同じ金属製の本体部を多孔質性の耐火材で被覆したものである。気泡発生体19の一方側の端には、ガス導入管18の一方端が接続されており、不溶性ガスが気泡発生体19の内部に導入される。
【0058】
気泡発生体19の他方側の端には、気泡発生体19の内部に導入された不溶性ガスを気泡にしてベース14の上方に放出させる放出部190が形成されている。放出部190は、例えば気泡生成体19を構成する金属製の本体部の上面に形成された複数のガス流通孔と、多孔質性の耐火材が有する多数の細孔により構成される。気泡発生体19の内部に導入された不溶性ガスは、ガス流通孔から多孔質性の耐火材の細孔を通過し、その際に細分化されることで細かい気泡となり、ベース14の上方に放出される。溶湯金属中に溶解している水素などのガスは、溶融金属中を上昇する不溶性ガスの細かい気泡に捕捉され、溶湯金属から外部に放出される。
【0059】
気泡発生体19は、ベース14に埋め込まれているが、ベース14上に設置されていてもよい。ガス導入管18は、ガイド15の内側に設置されているが、その一部又は全部がガイド15に埋め込まれていてもよい。
【0060】
脱ガス処理器17は、上述した本実施形態の構成のものに限定されず、公知の脱ガス処理器を使用できる。
【0061】
以上に説明した本実施形態の不純物除去ユニット10は、溶融金属の移動方向に沿って間隔を開けて配置される少なくとも二つの障壁11であって、溶融金属の移動を遮る少なくとも二つの障壁11を含み、少なくとも二つの障壁11のうち、溶融金属の移動方向の最も上流側に位置する障壁11Aの下部に、溶融金属が通り抜ける第一流通孔12が形成されており、他の少なくとも一つの障壁11Bの上部に、溶融金属が通り抜ける第二流通孔13が形成されている。これにより、本実施形態の不純物除去ユニット10によれば、溶融金属に不純物として沈殿物P及び浮遊物Fが混在していても、溶融金属が障壁11Aの下部の第一流通孔12を通り抜ける際には、浮遊物Fが溶融金属とともに移動することが障壁11Aによって規制され、溶融金属が障壁11Bの上部の第二流通孔13を通り抜ける際には、沈殿物Pが溶融金属とともに移動することが障壁11Bによって規制されるため、溶融金属の移動により溶融金属から不純物が効果的に除去される。
【0062】
よって、不純物除去ユニット10を保持炉1に適用することで、保持室2から汲出し室3に流入して汲出し室3から汲み出される溶融金属に、沈殿物Pが混入することを抑制できるので、不純物の混入がない又は極めて少ないクリーンな(高品質な)溶融金属を鋳造などに使用できる。
【0063】
また、本実施形態の不純物除去ユニット10は、少なくとも二つの障壁22と、ベース14と、一対のガイド15とが一体化された箱型を呈する。よって、本実施形態の不純物除去ユニット10によれば、保持炉1に容易に不純物除去ユニット10を設置できる。さらに、保持炉1に容易に不純物除去ユニット10を取り外すことができ、保持炉1や不純物除去ユニット10の清掃などを容易に行えるうえ、再度、不純物除去ユニット10を使用できる。
【0064】
また、本実施形態の不純物除去ユニット10は、一対のガイド15の少なくとも一方、及び/又は、ベース14に、ヒーターを埋め込むための埋め込み部17が形成されている。よって、本実施形態の不純物除去ユニット10によれば、溶融金属の温度低下を抑制できる。
【0065】
また、本実施形態の不純物除去ユニット10は、不溶性ガスが導入されるガス導入管18及び不溶性ガスの気泡を生成する気泡生成体19を含む脱ガス処理器17を備え、ガス導入管18が一対のガイド15の一方に沿って延び、気泡生成体19がベース14の上方に気泡を放出するようにベース14に取り付けられる。よって、本実施形態の不純物除去ユニット10によれば、溶湯金属中に溶解している水素などのガスを気泡により溶湯金属から除去できる。
【0066】
以上、本発明の一つの実施形態について説明したが、上述した実施形態は、あくまでも例示であって制限的なものではない。そのため、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0067】
例えば上述した実施形態では、不純物除去ユニット10は二つの障壁11を含んでいる。これに対して変形例として、不純物除去ユニット10は、三つ以上の障壁11を含んでいてもよい。不純物除去ユニット10が三つ以上の障壁11を含む場合、三つ目以降の障壁は、第一流通孔12及び第二流通孔13のどちらか一方が形成される。例えば不純物除去ユニット10が四つの障壁11を含む場合、溶融金属の移動方向の最も上流側の障壁11Aは第一流通孔12が形成され、一つ下流側の障壁11Bは第二流通孔13が形成され、さらに一つ下流側の障壁11は第一流通孔12が形成され、さらに一つ下流側の障壁11は第二流通孔13が形成される。このように、溶融金属の移動方向の上流側から下流側に沿って並ぶ複数の障壁11について、交互に第一流通孔12及び第二流通孔13を形成することで、溶融金属に浮遊物F及び沈殿物Pの不純物が混入することを効果的に抑制できる。なお、複数の障壁11に対して、第一流通孔12及び第二流通孔13を交互に形成する必要は必ずしもなく、溶融金属の移動方向の最も上流側に位置する障壁11Aに第一流通孔12を形成し、他の少なくとも一つの障壁11Bに第二流通孔13が形成されれば、あとは自由に第一流通孔12又は第二流通孔13を形成できる。
【0068】
例えば上述した実施形態では、不純物除去ユニット10は一対のガイド15を含んでいる。これに対して変形例として、不純物除去ユニット10は、一対のガイド15を含んでおらず、ベース14に少なくとも二つの障壁11が一体化された形態のものであってもよい。
【0069】
例えば上述した実施形態では、不純物除去ユニット10はベース14を含んでいる。これに対して変形例として、不純物除去ユニット10は、ベース14を含んでおらず、一対のガイド15に少なくとも二つの障壁11が一体化された形態のものであってもよい。
【0070】
例えば上述した実施形態では、不純物除去ユニット10はベース14及び一対のガイド15を含んでいる。これに対して変形例として、不純物除去ユニット10は、ベース14及び一対のガイド15を含んでおらず、少なくとも二つの障壁11だけで構成されていてもよい。この場合、不純物除去ユニット10(少なくとも二つの障壁11)は、保持室2の底壁20又は汲出し室3の底壁30に一体化される。
【0071】
例えば上述した実施形態では、不純物除去ユニット10のガイド15やベース14にヒーターを埋め込むための埋め込み部16が形成されている。これに対して変形例として、不純物除去ユニット10のガイド15やベース14に埋め込み部16を形成することなく、例えば浸漬ヒーターや投げ込みヒーターを溶融金属に浸漬させることで、溶融金属を直接に加熱してもよい。あるいは、不純物除去ユニット10においてヒーターなどで溶融金属を加熱しなくてもよい。
【0072】
例えば上述した実施形態では、不純物除去ユニット10が脱ガス処理器17を備えている。これに対して変形例として、不純物除去ユニット10が脱ガス処理器17を備えることなく、不純物除去ユニット10において溶融金属に含まれる水素などのガスを除去しなくてもよい。
【0073】
例えば上述した実施形態では、不純物除去ユニット10が保持炉1に適用されている。これに対して変形例として、不純物除去ユニット10が溶解炉に適用されてもよい。溶解炉は金属を溶解する溶解室を少なくとも備え、溶解室において金属の溶解により生成される溶融金属を出湯口から外部に流出する。溶解室の底壁上に不純物除去ユニット10を設置することで、溶融金属が出湯口まで移動する間に不純物除去ユニット10によって溶融金属に混在する沈殿物P及び浮遊物Fの不純物が除去される。よって、溶解炉から流出させる溶融金属に不純物が混入するのを抑制できる。不純物除去ユニット10は、溶解室の底壁上において出湯口に近接する位置に設置されることが好ましい。
【0074】
なお、溶解室は、金属を溶解する溶解部と、出湯口を備えかつ溶解部から溶融金属を受け入れて溶融金属を一旦、保持してから出湯口から流出させる出湯部とを備えた構造のものであってもよい。この場合、不純物除去ユニット10は、溶解室の出湯部における底壁上において出湯口に近接する位置に設置されることが好ましい。
【0075】
他の変形例として、不純物除去ユニット10が移送樋に適用されてもよい。移送樋は、横断面視で凹状に形成されており、例えば溶解炉から流出した溶融金属を移送して各種の供給先に配湯する。移送樋の底壁上に不純物除去ユニット10を設置することで、溶融金属が各種の供給先まで移動する間に不純物除去ユニット10によって溶融金属に混在する沈殿物P及び浮遊物Fの不純物が除去される。よって、溶解炉などから各種の供給先に配湯する溶融金属に不純物が混入するのを抑制できる。
【符号の説明】
【0076】
1 保持炉
2 処理槽
3 電気分解装置
10 不純物除去ユニット
11 障壁
11A 少なくとも二つの障壁の溶融金属の移動方向の最も上流側に位置する障壁
11B 少なくとも二つの障壁の他の少なくとも一つの障壁
12 第一流通孔
13 第二流通孔
14 ベース
15 ガイド
16 埋め込み部
17 脱ガス処理器
【要約】
【課題】溶融金属に不純物が混入するのを抑制できる不純物除去ユニットの提供を目的とする。
【解決手段】不純物除去ユニット10は、側壁21,31に囲まれかつ上方を溶融金属が一方向に向かって移動し得る底壁20,30上に設置される。不純物除去ユニット10は、溶融金属の移動方向に沿って間隔を開けて配置される少なくとも二つの障壁11であって、溶融金属の移動を遮る少なくとも二つの障壁11を含み、少なくとも二つの障壁11のうち、溶融金属の移動方向の最も上流側に位置する障壁11Aの下部に、溶融金属が通り抜ける第一流通孔12が形成されており、他の少なくとも一つの障壁11Bの上部に、溶融金属が通り抜ける第二流通孔13が形成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5