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特許7445248バイオガス資材の評価値演算装置、及び当該評価値演算装置に用いるプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】バイオガス資材の評価値演算装置、及び当該評価値演算装置に用いるプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240229BHJP
   B09B 3/00 20220101ALI20240229BHJP
   B09B 3/65 20220101ALI20240229BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20240229BHJP
【FI】
G06Q50/10
B09B3/00 ZAB
B09B3/65
G06N20/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023509518
(86)(22)【出願日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2023004304
【審査請求日】2023-02-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599135695
【氏名又は名称】株式会社ティービーエム
(74)【代理人】
【識別番号】100167818
【弁理士】
【氏名又は名称】蓑和田 登
(72)【発明者】
【氏名】佐原 邦宏
(72)【発明者】
【氏名】佐原 広基
【審査官】塩田 徳彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-223386(JP,A)
【文献】特開2019-131631(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167743(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/230035(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
B09B 3/00
B09B 3/65
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオガス資材の資源化に関する評価値を演算する評価値演算装置であって、
バイオガス資材に関する機械学習ライブラリ又はバイオガス資材の特性データの入力を受け付ける入力部と、
前記入力部から前記機械学習ライブラリ又はバイオガス資材の特性データが入力される機械学習モデルと、
前記機械学習ライブラリに基づいて、前記機械学習モデルにおける設定値を学習する処理を実行する学習処理実行部と、
前記機械学習モデルを用いて、前記特性データに基づいて推算処理を実行することでバイオガス資材の資源化に関する評価値の推算を実行する評価値演算実行部と、を備え、
前記特性データには、バイオガス資材の種類、回収場所、性状、及び分量の少なくとも1つの情報が含まれる、ことを特徴とするバイオガス資材の評価値演算装置。
【請求項2】
前記入力部には、さらに、バイオガスプラントの運用状況に関するデータが入力され、
前記機械学習モデルには、さらに、バイオガスプラントの運用状況に関するデータが入力され、
前記評価値演算実行部は、前記機械学習モデルを用いて、前記特性データ及びバイオガスプラントの運用状況データに基づいて推算処理を実行することでバイオガス資材の資源化に関する評価値の推算を実行し、
前記バイオガスプラントの運用状況に関するデータには、プラントで使用されているバイオガス資材の種類、発酵方式、凝集剤などの添加物の有無とその分量、メタン発酵槽1m3におけるVS容積負荷、メタン発酵槽における有機物分解率、ガスホルダにおけるメタンガス発生量、及び実測メタン収率(BMP)の少なくとも1つの情報が含まれる、ことを特徴とする請求項1記載のバイオガス資材の評価値演算装置。
【請求項3】
前記評価値演算実行部において推算される評価値には、個別バイオガス資材又は複数の個別バイオガス資材を混合した混合バイオガス資材の(a) 炭素濃度と窒素濃度の比率であるC/N比、(b) 脂質濃度と有機物濃度(VS:Volatile Solids)濃度の比率である脂質/VS比、(c) 脂質/炭水化物比、(d) タンパク質/炭水化物比、(e) 鉄 (mg/kg-COD原料)、コバルト (mg/g-COD原料)、ニッケル(mg/g-COD原料)の微量栄養素の濃度、(f) Na濃度、及び(g) 理論的メタン収率(ThBMP: ml/g-VS)の少なくとも1つが含まれる、ことを特徴とする請求項1又は2記載のバイオガス資材の評価値演算装置。
【請求項4】
前記評価値演算実行部は、混合バイオガス資材の場合には、さらに
(a) C/N比が、25以上であるか否か
(b) 脂質/VS比が、35以下であるか否か
(c) 脂質/炭水化物比が、13以上であるか否か
(d) タンパク質/炭水化物比が、26以上であるか否か
(e) 微量栄養素のうち、鉄が165 (mg/kg-COD原料)以上、コバルトが14 (mg/g-COD原料)以上、ニッケルが5 (mg/g-COD原料)以上であるか否か
(f) Na濃度が、5.6 g/L 未満であるか否か
(g)混合発酵時のメタン収率、の少なくとも1つを推算する、ことを特徴とする請求項3記載のバイオガス資材の評価値演算装置。
【請求項5】
前記評価値演算実行部は、前記a~fの条件を満たし、且つ前記gのメタン収率が大きいほど、混合バイオガス資材のより良い混合発酵の相性と判断する、ことを特徴とする請求項4記載のバイオガス資材の評価値演算装置。
【請求項6】
前記評価値演算実行部は、前記メタン収率が、100mL/g-VS未満である場合には、バイオガス資材同士の混合発酵処理には不向きな組み合わせと判断する、ことを特徴とする請求項4記載のバイオガス資材の評価値演算装置。
【請求項7】
前記評価値演算実行部は、さらに、
(a) C/N比が、25以上27以下である
(d) タンパク質/炭水化物比が、26以上である
(b) 脂質/VS比が35以下、且つ (c) 脂質/炭水化物比が、13以上であるか否かを判定する、ことを特徴とする請求項4記載のバイオガス資材の評価値演算装置。
【請求項8】
前記評価値演算実行部は、さらに、適切なガス化促進剤、栄養補助剤、補助原料等の種類及びその添加量を予測・分析する、ことを特徴とする請求項3記載のバイオガス資材の評価値演算装置。
【請求項9】
前記評価値演算実行部は、前記評価値として、さらに、各種のバイオガス資材の前処理の必要性の有無、各メタン資材の有機物の組成式、発酵温度、発酵日数、各メタン資材の有機物濃度(VS)、固形物量(TS)、有機物比率(VS/TS)、灰分濃度、化学的酸素要求量(COD)、理論的酸素要求量(ThOD)、COD/VS値、各メタン資材の有機物構成元素の濃度(=炭素(C:%VS)、窒素(N:%VS)、酸素(O:%VS)、水素(H:%VS)の含有量)、各メタン資材のヘミセルロース・セルロース・リグニン濃度(%VS)を推算する、ことを特徴とする請求項3記載のバイオガス資材の評価値演算装置。
【請求項10】
前記機械学習ライブラリには、個別バイオガス資材及び混合バイオガス資材における前処理の必要性の有無、各メタン資材の有機物の組成式、発酵温度、発酵日数、各メタン資材の有機物濃度(VS)、固形物量(TS)、有機物比率(VS/TS)、灰分濃度、化学的酸素要求量(COD)、理論的酸素要求量(ThOD)、COD/VS値、各メタン資材の有機物構成元素の濃度(=炭素(C:%VS)、窒素(N:%VS)、酸素(O:%VS)、水素(H:%VS)の含有量)、各メタン資材の炭水化物・脂質・タンパク質・灰分など栄養素の濃度、各メタン資材のヘミセルロース・セルロース・リグニン濃度(%VS)、 C/N比(各メタン資材の炭素濃度と窒素濃度の比率)、脂質/VS比(各メタン資材の脂質濃度とVS濃度の比率)、Na濃度、鉄 (mg/kg-COD原料)、コバルト (mg/g-COD原料)、ニッケル(mg/g-COD原料)の各メタン資材の微量栄養素の濃度、理論的メタン収率(ThBMP: ml/g-VS)、実測メタン収率(BMP: ml/g-VS)予測値、生分解率、VS分解率、及びエネルギー収率の少なくとも1つが含まれる、ことを特徴とする請求項1記載のバイオガス資材の評価値演算装置。
【請求項11】
さらに、通信網への通信接続を実現する通信部を備え、
当該通信部を介して前記機械学習ライブラリ、前記評価値演算実行部において推算された前記バイオガス資材の資源化に関する評価値を送信する、ことを特徴とする請求項1記載のバイオガス資材の評価値演算装置。
【請求項12】
バイオガス資材の資源化に関する評価値を演算する評価値演算装置に用いるプログラムであって、
バイオガス資材に関する機械学習ライブラリ又はバイオガス資材の特性データの入力を受け付けて、機械学習モデルに前記機械学習ライブラリ又はバイオガス資材の特性データを入力する入力ステップと、
前記機械学習ライブラリに基づいて、前記機械学習モデルにおける設定値を学習する処理を実行する学習処理実行ステップと、
前記機械学習モデルを用いて、前記特性データに基づいて推算処理を実行することでバイオガス資材の資源化に関する評価値の推算を実行する評価値演算実行ステップと、を含み、
前記特性データには、バイオガス資材の種類、回収場所、性状、及び分量の少なくとも1つの情報が含まれる、ことを特徴とするプログラム。
【請求項13】
前記入力ステップにおいては、さらに、バイオガスプラントの運用状況に関するデータが入力され、
前記機械学習モデルには、さらに、バイオガスプラントの運用状況に関するデータが入力され、
前記評価値演算実行ステップにおいては、前記機械学習モデルを用いて、前記特性データ及びバイオガスプラントの運用状況データに基づいて推算処理を実行することでバイオガス資材の資源化に関する評価値の推算を実行し、
前記バイオガスプラントの運用状況に関するデータには、プラントで使用されているバイオガス資材の種類、発酵方式、凝集剤などの添加物の有無とその分量、メタン発酵槽1m3におけるVS容積負荷、メタン発酵槽における有機物分解率、ガスホルダにおけるメタンガス発生量、及び実測メタン収率(BMP)の少なくとも1つの情報が含まれる、ことを特徴とする請求項12記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、飲食店舗や食品工場など食品廃棄物(バイオガス資材)の排出元と、当該バイオガス資材を利用してメタン発酵・メタンガス化を行うバイオガスプラントと、をマッチングするメタン資源化マッチングシステムに用いるバイオガス資材の評価値演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の問題が深刻化しており、炭酸ガスやメタンガスのような温室効果ガスの削減が図られ、環境省では、脱炭素社会に向けて、2050年までにCO2(二酸化炭素)の排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現を目標としている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
CO2削減のための方法は種々あり、例えば、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギー設備の導入、ヒートポンプなどの省エネルギー製品の導入、森林経営活動など各種あるが、その内の一つにバイオマスの利活用(食品廃棄物の再利用)がある。
【0004】
食品廃棄物の排出元は、市民や事業者である。事業者から排出される食品廃棄物は、事業系廃棄物とされ、産業廃棄物として処理される。事業系食品廃棄物は、図25に示すように、油1001、残渣汚泥1002及び食品ロス1003に分類され、この内、飲食店や食品工場等から排出されるバイオマス資源である「油1001(廃水油脂)」は、日本全国で年間30万トン以上もの量になり、全世界を勘案するとさらに膨大な量となる。近年、このような汚泥として産廃処分されるしかなかった廃水油脂から、独自のバイオマス燃料を製造し、ディーゼル発電機でバイオマス発電を行うシステムが開発されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。このバイオマス発電システムを提供することでCO2削減、リサイクル、水質浄化をもたらすことができる。
【0005】
一方、事業系食品廃棄物の内、「残渣汚泥1002」及び「食品ロス1003」の資源化促進には、残された課題がある。この残渣汚泥・食品ロスは、図26の表1100に示すように、現在、日本全体で年間約300万トンが未利用の状態にあるが、これらを例えばメタン発電に活用することで、年間6億kWhもの電力を創出するポテンシャルがある。マクドナルド(登録商標)やケンタッキー・フライド・チキン(登録商標)といった大手飲食チェーンに於いても、これら食品廃棄物は現状産廃処分されており未活用の状態にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-217804号公報
【文献】特許第5452814号公報
【文献】実用新案登録第3216173号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】“2050年カーボンニュートラルの実現に向けて”[令和4年5月25日検索]、<URL:https://www.env.go.jp/earth/2050carbon_neutral.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように未活用となっている残渣汚泥及び食品ロスの資源化の第一歩は、メタン発酵を行うバイオガスプラントにおけるバイオガス化1004(メタン発電、グリーン水素)である。特に、メタン発電において、事業系食品廃棄物(残渣汚泥、食品ロスを含む)は、従来のメタンガス生産の主原料である家畜糞尿や下水汚泥に比べて、原料1トン当たりのバイオガス量が5~10倍大きいという利点がある。そのため、食品残渣のメタン処理や家畜糞尿等との混合処理に基づくメタン発電が推奨されている。
【0009】
しかしながら、食品廃棄物は性状が不安定であることから、バイオガスプラント設備における実際の設備稼働率が38~49%と低いのが現状である。以下、食品廃棄物に資源化ニーズはあるが、メタン利用が進まない主要な原因を説明する。
【0010】
(A)第一に、バイオガスプラントで運用する前に性状が不安定な食品廃棄物を事前診断することは重要だが、現状、ガス発生量を評価するサービスは1検体あたり20~50万円と非常に高額であり、季節により頻繁に排出される食品廃棄物が変動し、かつ小ロットの食品廃棄物を事前診断することは極めて難しい。この結果、バイオガスプラントはガス発生量を予測できない。このため、発酵不良を避け、安定運転の維持を最優先として、新たな原料の受入は容易にせず、限られた原料のみを使用するために設備利用率が低くなっている。
【0011】
(B)第二に、バイオガスプラントにおいて家畜糞尿など既存の主要原料と、新たに事業系食品廃棄物を受け入れ混合した場合(混合バイオガス資材)のガス発生量や運転挙動を事前評価できれば、より適切な運転管理が可能である。しかしながら、現状の混合バイオガス資材の事前評価の精度は低く、残渣汚泥及び食品ロスの資源化が進まない要因となっている。
【0012】
(C)第三に、メタン菌が発酵する上で必要となる栄養素(硫黄、窒素、油分など)に過不足があったり、セルロース系の分解を促進するリパーゼが不足していると、十分な発酵がされず、想定よりもガス発生量が少なくなる。現状では、バイオガスプラントにおいてこのようなガス発生量を改善させる最適なガス化促進方法の判定とガス化促進剤の種類や量を適切に判断して投入する機能がないため、ガス発生量が少なくなり、その結果、設備利用率の低さに繋がっている。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、これまで食品廃棄物などをバイオガス資材として受け入れる際に障害となってきた(A)バイオガス資材の事前診断と、(B),(C)バイオガス資材導入時の安定した発電プラント運転のための評価値の不在を解消し、具体的に各種評価値を提示することで、より積極的なバイオガス資源の利用促進を図るためのバイオガス資材の評価値演算装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、バイオガス資材の資源化に関する評価値を演算する評価値演算装置であって、バイオガス資材に関する機械学習ライブラリ又はバイオガス資材の特性データの入力を受け付ける入力部と、前記入力部から前記機械学習ライブラリ又はバイオガス資材の特性データが入力される機械学習モデルと、前記機械学習ライブラリに基づいて、前記機械学習モデルにおける設定値を学習する処理を実行する学習処理実行部と、前記機械学習モデルを用いて、前記特性データに基づいて推算処理を実行することでバイオガス資材の資源化に関する評価値の推算を実行する評価値演算実行部と、を備え、前記特性データには、バイオガス資材の種類、回収場所、性状、及び分量の少なくとも1つの情報が含まれることを特徴とする。
【0015】
このバイオガス資材の評価値演算装置において、前記入力部には、さらに、バイオガスプラントの運用状況に関するデータが入力され、前記機械学習モデルには、さらに、バイオガスプラントの運用状況に関するデータが入力され、前記評価値演算実行部は、前記機械学習モデルを用いて、前記特性データ及びバイオガスプラントの運用状況データに基づいて推算処理を実行することでバイオガス資材の資源化に関する評価値の推算を実行し、前記バイオガスプラントの運用状況に関するデータには、プラントで使用されているバイオガス資材の種類、発酵方式、凝集剤などの添加物の有無とその分量、メタン発酵槽1m3におけるVS容積負荷、メタン発酵槽における有機物分解率、ガスホルダにおけるメタンガス発生量、及び実測メタン収率(BMP)の少なくとも1つの情報が含まれることが好ましい。
【0016】
このバイオガス資材の評価値演算装置において、前記評価値演算実行部において推算される評価値には、個別バイオガス資材又は複数の個別バイオガス資材を混合した混合バイオガス資材の(a) 炭素濃度と窒素濃度の比率であるC/N比、(b) 脂質濃度と有機物濃度(VS:Volatile Solids)濃度の比率である脂質/VS比、(c) 脂質/炭水化物比、(d) タンパク質/炭水化物比、(e) 鉄 (mg/kg-COD原料)、コバルト (mg/g-COD原料)、ニッケル(mg/g-COD原料)の微量栄養素の濃度、(f) Na濃度、及び(g) 理論的メタン収率(ThBMP: ml/g-VS)の少なくとも1つが含まれることが好ましい。
【0017】
このバイオガス資材の評価値演算装置において、前記評価値演算実行部は、混合バイオガス資材の場合には、さらに、(a) C/N比が、25以上であるか否か、(b) 脂質/VS比が、35以下であるか否か、(c) 脂質/炭水化物比が、13以上であるか否か、(d) タンパク質/炭水化物比が、26以上であるか否か、(e) 微量栄養素のうち、鉄が165 (mg/kg-COD原料)以上、コバルトが14 (mg/g-COD原料)以上、ニッケルが5 (mg/g-COD原料)以上であるか否か、(f) Na濃度が、5.6 g/L 未満であるか否か、(g)混合発酵時のメタン収率、の少なくとも1つを推算することが好ましい。
【0018】
このバイオガス資材の評価値演算装置において、前記評価値演算実行部は、前記a~fの条件を満たし、且つ前記gのメタン収率が大きいほど、混合バイオガス資材のより良い混合発酵の相性と判断することが好ましい。
【0019】
このバイオガス資材の評価値演算装置において、前記評価値演算実行部は、前記メタン収率が、100mL/g-VS未満である場合には、バイオガス資材同士の混合発酵処理には不向きな組み合わせと判断することが好ましい。
【0020】
このバイオガス資材の評価値演算装置において、前記評価値演算実行部は、さらに、(a) C/N比が、25以上27以下である、(d) タンパク質/炭水化物比が、26以上である、(b) 脂質/VS比が35以下、且つ (c) 脂質/炭水化物比が、13以上であるか否かを判定することが好ましい。
【0021】
このバイオガス資材の評価値演算装置において、前記評価値演算実行部は、さらに、適切なガス化促進剤、栄養補助剤、補助原料等の種類及びその添加量を予測・分析することが好ましい。
【0022】
このバイオガス資材の評価値演算装置において、前記評価値演算実行部は、前記評価値として、さらに、各種のバイオガス資材の前処理の必要性の有無、各メタン資材の有機物の組成式、発酵温度、発酵日数、各メタン資材の有機物濃度(VS)、固形物量(TS)、有機物比率(VS/TS)、灰分濃度、化学的酸素要求量(COD)、理論的酸素要求量(ThOD)、COD/VS値、各メタン資材の有機物構成元素の濃度(=炭素(C:%VS)、窒素(N:%VS)、酸素(O:%VS)、水素(H:%VS)の含有量)、各メタン資材のヘミセルロース・セルロース・リグニン濃度(%VS)を推算することが好ましい。
【0023】
このバイオガス資材の評価値演算装置において、前記機械学習ライブラリには、個別バイオガス資材及び混合バイオガス資材における前処理の必要性の有無、各メタン資材の有機物の組成式、発酵温度、発酵日数、各メタン資材の有機物濃度(VS)、固形物量(TS)、有機物比率(VS/TS)、灰分濃度、化学的酸素要求量(COD)、理論的酸素要求量(ThOD)、COD/VS値、各メタン資材の有機物構成元素の濃度(=炭素(C:%VS)、窒素(N:%VS)、酸素(O:%VS)、水素(H:%VS)の含有量)、各メタン資材の炭水化物・脂質・タンパク質・灰分など栄養素の濃度、各メタン資材のヘミセルロース・セルロース・リグニン濃度(%VS)、 C/N比(各メタン資材の炭素濃度と窒素濃度の比率)、脂質/VS比(各メタン資材の脂質濃度とVS濃度の比率)、Na濃度、鉄 (mg/kg-COD原料)、コバルト (mg/g-COD原料)、ニッケル(mg/g-COD原料)の各メタン資材の微量栄養素の濃度、理論的メタン収率(ThBMP: ml/g-VS)、実測メタン収率(BMP: ml/g-VS)予測値、生分解率、VS分解率、及びエネルギー収率の少なくとも1つが含まれることが好ましい。
【0024】
このバイオガス資材の評価値演算装置において、さらに、通信網への通信接続を実現する通信部を備え、当該通信部を介して前記機械学習ライブラリ、前記評価値演算実行部において推算された前記バイオガス資材の資源化に関する評価値を送信することが好ましい。
【0025】
上記課題を解決するために、バイオガス資材の資源化に関する評価値を演算する評価値演算装置に用いるプログラムであって、バイオガス資材に関する機械学習ライブラリ又はバイオガス資材の特性データの入力を受け付けて、機械学習モデルに前記機械学習ライブラリ又はバイオガス資材の特性データを入力する入力ステップと、前記機械学習ライブラリに基づいて、前記機械学習モデルにおける設定値を学習する処理を実行する学習処理実行ステップと、前記機械学習モデルを用いて、前記特性データに基づいて推算処理を実行することでバイオガス資材の資源化に関する評価値の推算を実行する評価値演算実行ステップと、を含み、前記特性データには、バイオガス資材の種類、回収場所、性状、及び分量の少なくとも1つの情報が含まれることを特徴とする。
【0026】
このプログラムの前記入力ステップにおいては、さらに、バイオガスプラントの運用状況に関するデータが入力され、前記機械学習モデルには、さらに、バイオガスプラントの運用状況に関するデータが入力され、前記評価値演算実行ステップにおいては、前記機械学習モデルを用いて、前記特性データ及びバイオガスプラントの運用状況データに基づいて推算処理を実行することでバイオガス資材の資源化に関する評価値の推算を実行し、前記バイオガスプラントの運用状況に関するデータには、プラントで使用されているバイオガス資材の種類、発酵方式、凝集剤などの添加物の有無とその分量、メタン発酵槽1m3におけるVS容積負荷、メタン発酵槽における有機物分解率、ガスホルダにおけるメタンガス発生量、及び実測メタン収率(BMP)の少なくとも1つの情報が含まれることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明はバイオガス資材の評価値演算装置であって、バイオガス資材に関する機械学習ライブラリ又はバイオガス資材の特性データの入力を受け付ける入力部と、入力部から機械学習ライブラリ又はバイオガス資材の特性データが入力される機械学習モデルと、機械学習ライブラリに基づいて機械学習モデルにおける設定値を学習する処理を実行する学習処理実行部と、機械学習モデルを用いて特性データに基づいて推算処理を実行することでバイオガス資材の資源化に関する評価値の推算を実行する評価値演算実行部と、を備える。上記特性データには、バイオガス資材の種類、回収場所、性状、及び分量の少なくとも1の情報が含まれる。この構成により、本発明に係るバイオガス資材の評価値演算装置では、推算された評価値に基づいて、残渣汚泥や食品ロスなどの食品廃棄物の排出元、及び食品廃棄物を利用してメタンガス化を行うバイオガスプラントを最適にマッチングし、バイオガスプラントの稼働率向上を図り、ひいては脱炭素化社会の実現に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施の形態に係るバイオガス資材の評価値演算装置を備えるメタン資源化マッチングシステムの基幹システムの全体工程図である。
図2】同上メタン資源化マッチングシステムの全体構成図である。
図3】同上メタン資源化マッチングシステムに用いるプログラムの説明図である。
図4】ガス化促進剤のバイオガス化促進の実際例を示す図である。
図5】同上評価値演算装置に用いるプログラム全体の流れを示すフローチャートである。
図6】同上メタン資源化マッチングシステム及び同上評価値演算装置の流れを説明する図である。
図7】同上評価値演算装置に用いるAIメタン資源化プログラムのうちのメタン資源化評価AIの全体の流れを説明する図である。
図8】同上評価値演算装置に用いるAIメタン資源化プログラムのうちのメタン資源化評価AIの全体の流れを説明する図である。
図9】同上評価値演算装置に用いるAIガス化促進プログラムのうちのメタン収率促進予測AIの全体の流れを説明する図である。
図10】同上評価値演算装置の構成を示す機能ブロック図である。
図11】同上評価値演算装置の機能ブロック図である。
図12】同上評価値演算装置の学習動作時の動作手順を示すフローチャートである。
図13】同上評価値演算装置の推算動作時の動作手順を示すフローチャートである。
図14】本発明の実験例に係る機械学習ライブラリを示す図である。
図15】同上実験例に係る機械学習ライブラリを示す図である。
図16】同上実験例の個別バイオガス資材における機械学習モデルを用いた際の評価値の推算結果を示す図である。
図17】同上評価値の推算結果を示す図である。
図18】(a)同上評価値の推算結果を示す図、(b)同上評価値の実測値を示す図である。
図19】同上実験例の混合バイオガス資材における機械学習モデルを用いた際の評価値の推算結果を示す図である。
図20】同上評価値の推算結果を示す図である。
図21】同上評価値の推算結果を示す図である。
図22】同上実験例の混合バイオガス資材及び補助剤を用いた場合における機械学習モデルを用いた際の評価値の推算結果を示す図である。
図23】同上評価値の推算結果を示す図である。
図24】同上評価値の推算結果を示す図である。
図25】事業系食品廃棄物の分類を示す図である。
図26】現状の残渣汚泥及び食品ロスの抱える問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(実施の形態)
最初に、本実施の形態に係る評価値演算装置を備えた食品廃棄物を利用したメタン資源化マッチングシステムについて図面を参照しながら説明する。このメタン資源化マッチングシステムは、バイオガスプラント事業者の運転状況に応じて、食品廃棄物などバイオガス資材の排出元である飲食チェーンなどから最適なバイオガス資材を供給するための脱炭素資源化サービスの一環である。なお、本実施の形態の説明において、バイオガス資材とは食品廃棄物(油脂廃棄物を含む)、残渣汚泥(精製汚泥を含む)、食品ロス、家畜排泄物などを意味する。また、バイオガス資材の排出元とは、例えば、飲食チェーン、食品工場、商業施設、スーパー、コンビニ、ホテル、学校・病院、社員食堂などである。
【0032】
<全体工程図>
最初に、メタン資源化マッチングシステム(以下、マッチングシステムと記す)を含むメタン資源化サービスの全体工程の概要に関して図1を参照して説明する。図1に示すように、メタン資源化サービスにおいては、主としてメタン資材回収工程、マッチング工程、及びメタンガス生産・使用工程を含む。
【0033】
最初に、メタン資材回収工程では、飲食店や食品工場など食品廃棄物の排出元から排出されるバイオマスのうちから、残渣汚泥(沈殿残渣)、食品ロス、食品廃棄物(油脂廃棄物を含む)、精製汚泥などを回収する。なお、バイオマスとは「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」を呼ぶ。バイオマスの内の廃棄物系バイオマスは、廃棄される紙、家畜排せつ物、食品廃棄物、下水汚泥などがあげられる。バイオマスを燃焼することなどにより放出されるCO2は、生物の成長過程で光合成により大気中から吸収したCO2であり、化石資源由来のエネルギーや製品をバイオマスで代替することにより、地球温暖化を引き起こす温室効果ガスのひとつであるCO2の排出削減に大きく貢献することができる。
【0034】
一般に、飲食店、ファーストフード店、レストラン、ホテル、食品加工場など食品廃棄物の排出元から多くの食品ロス(売残り、期限切れ、材料残り他)が日々発生しており、これをメタン資源として回収する。また、食品廃棄物排出元からの廃水には、様々な水質汚濁物質が含まれている。このような廃水を何ら処理することなく排水すると、廃水中の油分などが排水管に付着して固まり、詰まらせるだけでなく、合併処理槽や下水処理場での水の浄化処理を困難にし、また、環境に悪影響を及ぼす。
【0035】
そこで、油分や沈殿物、浮遊物などの固形分を含む廃水を排出する事業所では事業所単位で処理装置(グリストラップ(Grease trap:グリース阻集器)や油水分離槽、原水槽)を備えて、廃水を一時的にプールし、残渣汚泥となる固形分を沈降させたり、油分を浮上分離させたりし、定期的にこれらを引き抜き処理する等により物理的に除去する。
【0036】
メタン資材回収工程において、例えば作業会社であるフィールド代理店は、飲食店などのグリストラップ清掃管理を行い、且つグリストラップから廃水油脂及び残渣汚泥を回収する。なお、グリストラップからバイオマスを回収する技術には、例えば、出願人の有する特許技術である特許 4401007 号に示される装置や、特許 4420750 号に示される装置、さらに実用新案3216173号に示される装置を利用できる。
【0037】
他のフィールド代理店は、例えば弁当、冷凍食品、肉製品を生産する食品工場の油水分離槽を管理する代理店であり、油水分離槽からバイオマスを回収する。具体的には、食品工場の油水分離槽から得られる油泥を、油泥分離装置を用いて油分と水分と汚泥分とに分離し、その内の汚泥分(残渣汚泥)を回収する。フィールド代理店は、油泥分離装置の管理も行う。
【0038】
次に、マッチング工程では、上記メタン資材回収工程において飲食店舗や食品工場などから回収される食品廃棄物(食品ロスなどのバイオマス資源)、及びこの食品廃棄物を用いてメタンガス化を行うバイオガスプラントを、IoT(Internet of Things)やAI(Artificial Intelligence)を利用して最適に結び付けて、バイオガスプラントにおける設備稼働率の向上や生産性向上を図る。
【0039】
このマッチング工程では、例えば、これまで廃棄物として処理されていた食品廃棄物を、バイオマスプラントからのリクエストや運用状況(例えば、使用しているメタン資源や発電状況)などの条件に応じて、適切なメタン資源となる食品廃棄物の種類・混合割合、分量を提示し、回収・供給を行うサービスを展開する。これにより、食品関連事業者へ廃棄物削減、脱炭素、処理コスト低減など様々な価値を提供する。また、個別のバイオガスプラントに最適なメタン資材を供給することで、ガス量や発酵の安定、運営コスト低減などの価値を創出し、ガス生産量の増加に比例して発電量も増加し、脱炭素に貢献する。
【0040】
次に、メタンガス生産・使用工程では、上記マッチング工程後にバイオガスプラントに搬入されたバイオマス(家畜糞尿、食品廃棄物、残渣汚泥(精製汚泥を含む)、食品ロスなど)からバイオガスプラント事業者がバイオガス(メタンガス)を製造する。バイオガスは、家畜糞尿、食品ロス、残渣汚泥を発酵槽で発酵させて発生させ、一般にガスホルダに貯蔵され、その後発電などに利用される。将来的には、このメタンガスを改質して、非化石燃料由来のグリーン水素として利用できる。
【0041】
なお、食品廃棄物から製造されたバイオ燃料(メタンガス)の導入事業者、すなわち食品廃棄物の排出元及びバイオガスプラントは、カーボンクレジットの付与対象となる。導入事業者にCO2削減目標がある場合、削減目標以上に削減できた分がカーボンクレジットになる。導入事業者であって、CO2削減目標がない小規模事業者は全量をカーボンクレジットとして貯めることができる。カーボンクレジットは、例えば日本国においてはJ-クレジット制度で販売することができ、海外においては各国が制定するカーボンクレジット取引制度を利用して販売することができる。
【0042】
<全体システム図>
次に、本実施の形態に係るマッチングシステムSの全体システムに関して図2を参照して説明する。マッチングシステムSは、総括本部が操作する管理サーバ50、バイオガスプラントにおける端末装置(第二端末装置)20、飲食チェーンや食品工場、ホテル、商業施設など食品廃棄物の排出元における端末装置(第一端末装置)30、資源調査サポート会社における端末装置(第三端末装置)40を備え、これらがインターネットなどの広域ネットワークを介して接続されて構成されている。
【0043】
端末装置20は、食品廃棄物を用いてバイオガス化(メタンガス化、メタン資源化とも呼ぶ)を行うバイオガスプラントが操作するパーソナルコンピュータやスマートフォンなどの端末である。端末装置20は、例えばメタン資源化のマッチング基礎データを入力する現場調査及びマッチング用の専用アプリケーションをインストールして実行し、その結果を画面に表示する。また、端末装置20は、所定プロトコルに基づいて、主として管理サーバ50との通信セッションを確立して、バイオガスプラントでのメタン資材の管理、メタンガス生成量やメタン発電に関するデータやファイルの送受信を行う。また、例えばHttpのリクエスト形式で管理サーバ50に所望のメタン資材のリクエストを送信する。
【0044】
端末装置30は、食品廃棄物の排出元の現場や排出元の本社が操作し、排出される食品廃棄物に関する情報を入力するスマートフォンなどの端末である。端末装置30は、例えばメタン資源化のマッチング基礎データを入力する現場調査及びマッチング用の専用アプリケーションをインストールして実行し、その結果を画面に表示する。この専用アプリケーションは、排出される食品廃棄物の回収の作業管理用の可視化ウェブアプリを備えてもよい。端末装置30は、所定プロトコルに基づいて、サポート会社の端末装置40や管理サーバ50との通信セッションを確立して、食品廃棄物の写真、食品廃棄物及び廃水油脂の管理に関するデータやファイルの送受信を行う。
【0045】
端末装置40は、食品廃棄物を調査・回収するサポート会社が操作し、食品廃棄物の排出元の食品廃棄物に関する情報及びバイオガスプラントの使用原料や運転状況を入力するスマートフォンやパーソナルコンピュータなどの端末であり、専用アプリケーションを実行し、その結果を画面に表示する。端末装置40は、所定プロトコルに基づいて、他の端末装置20,30や管理サーバ50との間で、データやファイルの送受信を行う。また、例えばHttpのリクエスト形式で端末装置30から新たに排出される食品廃棄物に関する情報や端末装置20からバイオガスプラントの所望する情報を取得して、最適なメタン化資材のマッチングに基づき、食品廃棄物の排出元とバイオガスプラントとのマッチングを効率的に実行する。
【0046】
管理サーバ50は、食品廃棄物のバイオガス化を統括する統括本部が操作し、食品廃棄物の排出元及びバイオガスプラントにおける食品廃棄物のバイオガス化を管理する。具体的には、端末装置20又は端末装置30からバイオガスプラントの使用原料や運転状況、端末装置30又は端末装置40から排出される食品廃棄物に関する情報を取得して、メタン資源化を効率的に実行する。この際、主として図3に示す4つのプログラム401~404を実行することによって、初期マッチングサービス、資源化サービス、CO2削減管理サービスの提供を一元的に管理する。
【0047】
(1)IoT現場調査プログラム
IoT現場調査プログラム401は、スマホアプリなどを介して端末装置30又は端末装置40から送信される食品廃棄物に関する入力データや現場写真に基づき、食品廃棄物排出元が抱えているメタン資材の種類・量・性状を把握する。また、バイオガスプラントの端末装置20又は端末装置30から送信されるガス生成量又は発電状況やリクエストに基づいて、メタンガスプラントが必要とするメタン資材の種類・量を把握する。すなわち、管理サーバ50は、IoT現場調査プログラム401を用いることで、端末装置20,30,40から現場調査やバイオガスプラントのガス生成量又は発電に関するデータを取得して、従来はバラバラに点在していた食品工場など食品廃棄物排出元における食品廃棄物のデータ及びバイオガスプラントのガス生成量又は発電状況を、一元的に管理して、メタンガス生成又はメタン発電の効率化・生産性の向上を図る。
【0048】
具体例として、食品廃棄物排出元はスマートフォンなどの携帯端末(端末装置30)を活用し、あるいはバイオガスプラントはスマートフォンなどの携帯端末(端末装置20)を活用し、さらにサポート会社はスマートフォンなどの携帯端末(端末装置40)を活用し、出張不要及びデータをクラウドに即時アップロードする(ビックデータ化による情報活用も可能)。そして、管理サーバ50は、IoT現場調査プログラム401に基づいて、食品廃棄物排出元、及びバイオガスプラントの状況を把握する。この結果、現場調査関連のデータ処理時間に従来30分/1現場要していたものを、本プログラム使用後1分/1現場に短縮できる。
【0049】
(2)AIメタン資源化プログラム
管理サーバ50などは、AIメタン資源化プログラム402を用いて、これまでの研究データ及び新規の分析データ、実運用データ等を基に、個別資材ごとのメタン収率予測、及び既存原料ほか複数資材を混合した混合資材の場合のシナジー予測&阻害診断を行う。ここで、メタン収率とは、原料たる食品廃棄物の分解VS(有機分)あたりのメタン生成量推測値である。また、シナジー予測とは、種類の異なるメタン資材を混合した場合のメタン収率の相乗的な効果を予測することである。
【0050】
管理サーバ50は、AIメタン資源化プログラム402を用いて、高精度の予測モデルを構築して、これら個別資材の高い精度のメタン収率推算式を適用する。また、新たな分析法、栄養素、油脂に起因する阻害、原料混合によるシナジーも含めた推算式を構築して適用する。このことで、総括本部の管理サーバ50において、エネルギー変換設備やメタン発酵原料の評価を一元的に管理できる。
【0051】
具体的には、個別資材判断においては、食品廃棄物(油脂廃棄物を含む)、残渣汚泥(精製汚泥を含む)、食品ロス、家畜排泄物などのメタン発酵原料ごとに、メタン収率ほかの基礎データ(実際のデータ)を学習用データベースに収納し、数理計算や実測値修正による機械学習を行うと共にビックデータ化を図る。このAIメタン資源化プログラム402の実現により、個別資材毎や混合資材のメタン資源化可能性を高い精度で推論可能となり、従来はメタン資源化の可能性の基本判定に180日/1原料要していたのが、AIメタン資源化プログラム402を用いた後には2秒/1原料で完了する。なお、AIメタン資源化プログラム402の詳細に関しては後述する。
【0052】
(3)AIガス化促進プログラム
管理サーバ50は、AIガス化促進プログラム403を用いて、予測された阻害要因の解決や低メタン収率資材活用のため、最適なガス化促進方法の判定、窒素・硫黄・油脂やリパーゼといったガス化促進剤の最適投入量及び効果を予測する。
【0053】
具体的には、AIガス化促進プログラム403を用いて、食品廃棄物の種類・量・性状に応じた最適なガス化促進方法を判定し、原料混合割合の算定や促進剤の最適投与計算(精製汚泥、グリセリン、ルーメン菌などの活用)を行い、混合割合ごとの試験データと、ガス化促進の候補剤ごとの基礎データ及び投与試験による追加データをAI学習用データベースに収納する。そして、数理計算や実測値修正による機械学習及びディープラーニングを行うと共にビックデータ化を図る。この結果、ガス化促進原料に対する最適なガス化促進方法の判定と原料混合割合の計算、ガス化促進剤ごとの最適投与量計算を高い精度で実現でき、従来180日要していたのが、AI開発後10秒/原料にまで短縮可能である。
【0054】
ここで、ガス化促進剤は、主として補助原料、栄養補助剤、及び促進剤がある。この内、補助原料は、他の原料の分解を促進するわけではない。単位重量当たりのメタン収率が高いので、他の原料と混合することで、投入した原料あたりのメタン収率が見かけ上大きくなる。一方で、単独の原料としてメタン発酵することが難しい原料である。補助原料の例としては、グリストラップ油脂精製汚泥、BDF残渣グリセリンである。食品廃棄物との混合設計をうまく行うことができればメタンガス化を促進できる。
【0055】
栄養補助剤は、メタン生成菌の代謝にはNi、Co、Feが重要であるが、ほとんどの原料には十分に含有されていない。これを添加することで栄養素が充足され、発酵速度が上昇する。特に食品系ごみで有効である。例えば、NiCl2 6H2O、CoCl2 6H2O、FeCl2 4H2O等であり、既に栄養素溶液は商品化している。最適な添加量はケースバイケースで、現状では有効に利用できていない。
【0056】
促進剤は、セルロースの分解には効果あるという報告は一部にある。稲わら、籾殻、デントコーンなどの資源作物のようにセルロースが豊富な農業残渣のメタン収率を増大させる可能性はある。食品系ごみのガスは増大させないであろう。また、酵素反応を数時間~1日程度行うための反応タンク設備を別途用意する必要がある。例えば、セルラーゼ酵素、ルーメン液である。
【0057】
そして、ガス化促進剤のバイオガス化促進の実際として図4(a)の表400に示すように、補助原料(ここでは精製汚泥)を添加した場合、栄養補助剤(ここではNi、Co、Fe)を添加した場合において、ガス収率を向上できたことが分かる。また、図4(b)の表401に示すように、ガス化促進材を加えることで、バイオガス発生量が増加したことが分かる。AIガス化促進プログラム403では機械学習後に、食品廃棄物の種類・量・性状に応じて最適なガス化促進方法の判定、原料混合割合、ガス化促進剤の種類・最適投入量を自動決定する。
【0058】
(4)CO2削減 IT演算プログラム
管理サーバ50は、CO2削減 IT演算プログラム404を用いることで、メタンガス生成量及びCO2削減量を推算し、さらにバイオガスプラントにおける実際のバイオガスの活用結果に基づき、CO2削減量の算出及びカーボンクレジットへの変換可能量を算出する。ここでは、管理サーバ50が、排出元からの「残渣汚泥(精製汚泥を含む)」及び「食品ロス」の回収量、これを原料としたメタンガス生成量、メタンガスによる発電量とCO2削減量、又はグリーン水素製造量とCO2削減量を一元管理する(クラウド)。なお、一連のIoT現場調査プログラム401~CO2削減 IT演算プログラム404までをメタン資源化予測システム400と称して、スマートフォンのアプリケーションとしてGUI化することでより利便性を向上できる。
【0059】
未活用となっている残渣汚泥&食品ロスの資源化の第一歩は、バイオガス化である。未活用の残渣汚泥や食品ロスのバイオガス化において、最適なエネルギー変換設備の選定と高い利用率を具体化するためには、メタン発酵原料の高精度なメタン収率予測や阻害&シナジー予測が必要である。従って、このメタン資源化診断予測システム400では、AI&IoTの先端技術を用いて、個別に存在する諸データを科学的且つ合理的に集約し、ディープラーニングすることで、AI予測精度を高めていくことができる。この結果、この領域の資源化デジタルトランスフォーメーションサービスとしてのメタン資源化診断予測システム400は、食品廃棄物の排出元とバイオガスプラントに新たな価値を提供することになる。また、食品廃棄物の脱炭素に向けた最大資源化が具体化でき、国内外における2050年カーボンニュートラル実現に貢献する。
【0060】
次に、本実施の形態に係るバイオガス資材の評価値演算装置において実行される「AIメタン資源化プログラム402」及び「AIガス化促進プログラム403」のより具体的な詳細に関して図5及び図6を参照して説明する。
【0061】
AIメタン資源化プログラム402は、食品廃棄物の排出元(=商業施設、レストラン、ホテル、食品工場など)とバイオガス(メタンガス)プラントの運営元を、前者より<排出されるバイオガス資材(=食品廃棄物)>と<プラントで実際に使用されているバイオガス資材(食品廃棄物/油脂/汚泥/家畜排泄物など)>の混合発酵の相性に関する分析結果を通じて結びつけることで、より効率の良いバイオガス発電(或いはクリーン水素生成)の実現、ひいては食品系廃棄物のリサイクル率の向上を実現することを目的とする。
【0062】
AIガス化促進プログラム403は、AIメタン資源化プログラムによる各バイオガス資材の混合発酵の相性に関する分析・評価データに基づき、適切なガス化促進剤、栄養補助剤、補助原料等の種類及びその添加量を予測・分析することで、在庫する1つ以上のバイオガス資材を混合発酵する際により良い発酵条件を整えることを目的とする。
【0063】
次に、AIメタン資源化プログラム402及びAIガス化促進プログラム403の想定される機能に関して説明する。AIメタン資源化プログラム402は、図5に示す個別資材に関するメタン資源化評価AI402a、混合資材に関するメタン資源化評価AI402bの2つのAIから構成される。各AIの基本的な機能は次の通りである。
【0064】
個別資材に関するメタン資源化評価AI402a: 各排出元から回収されたバイオガス資材及び各プラントにて現状使用されている資材に関して、資材ごとの成分性質、メタン収率(メタンガスの発生量)、エネルギー収率などの資材ごとのバイオガス資材としての価値の分析を行う。
【0065】
混合資材に関するメタン資源化評価AI402b: 各排出元から回収されたバイオガス資材と各プラントで使用されている資材について、最も効率の良いメタン収率、エネルギー収率となるような混合発酵の組み合わせの予測・分析を行う。
【0066】
また、AIガス化促進プログラム403は、図5に示すメタン収率促進予測AI403aから構成され、次の基本的機能を担う。
メタン収率促進予測AI403a: 上記2つのAI402a,402bにより予測・分析される各資材(及びその組み合わせ)のバイオガス資材としての価値を測るための分析項目の数値指標に関して、過不足のある項目を正常値範囲内に調整するようなガス化促進剤(補助原料(油脂精製汚泥、BDF残渣グリセリン)、促進剤(セルラーゼ酵素、ルーメン液、バイオ炭)、栄養補助剤(NiCl2 6H2O、CoCl2 6H2O、FeCl2 4H2O)など)の種類及びその添加量を予測・分析する。
【0067】
これら3つのAI402a,402b,403aはいずれも上述の「メタン資源化マッチングシステムS」を構成する各装置に搭載可能であり、資源化に関する専門的なデータが、排出元及びプラント運営者が分かりやすく、且つ使いやすい情報の順番、優先度、表示形式(メタン収率・エネルギー収率・CO2排出削減量・資材費順、グラフ表示など)で提示される(例えば図6参照)。これにより、これまで食品廃棄物をメタン原料として受け入れる際に障害となってきた資材の事前診断と資材導入時の安定したプラント運転のための成分指標データの不在を解消し、食品廃棄物のバイオガス資源化の促進を図ることが可能となる。
【0068】
(2-1)個別資材に関するメタン資源化評価AI402aの詳細
個別資材に関するメタン資源化評価AI402aは、上述のようにAIメタン資源化プログラム402を構成するAIのひとつである。
食品廃棄物の排出元(=商業施設、レストラン、ホテル、食品工場など)から回収されたバイオガス資材(=食品廃棄物)及び、各バイオガスプラントにおいて現状使用されているバイオガス資材(食品廃棄物/油脂/汚泥/家畜排泄物など)に関して、資材ごとのメタン資材としての価値を、図7に示すような成分指標マスタデータに照らして、予測・分析する。この予測・分析の結果は、メタン資源化マッチングシステムにおいて、各資材の排出元及びバイオガスプラント運用者に提示されるのみならず、後述する「(2-2)混合資材に関するメタン資源化評価AI」及び「(3-1)メタン収率促進予測AI」にインポートされ、各バイオガス資材の混合発酵に関する相性分析、並びにシナジー性(或いは阻害性)の予測・分析のための参照データのひとつとなる。
【0069】
個別資材に関するメタン資源化評価AI402aにおいて想定される機能(フロー)を、図7を参照しながら説明する。
(A)各排出元から回収されたバイオガス資材(食品廃棄物)及びバイオガスプラントにて現状使用されているバイオガス資材(食品廃棄物/油脂/汚泥/家畜排泄物など)に関するデータ、バイオガスプラントの運用状況に関するデータのAIメタン資源化プログラム402への登録・承認をする。
【0070】
回収された食品廃棄物及び現状プラントにおいて使用されているバイオガス資材に関するデータの具体例としては、各バイオガス資材の「回収場所」、「種類」、「性状(液体、固体、気体、加工の有無など)」、「分量」などのバイオガス資材の特性、及び在庫に関するデータなどが挙げられる。これらのデータは、例えばブロックチェーンなどにより、リアルタイム在庫管理される。
【0071】
また、バイオガスプラントの運用状況に関するデータとしては、例えば、各プラントで使用されているバイオガス資材の種類をはじめ、凝集剤などの添加物の有無とその分量、原料貯蔵槽の温度、メタン発酵槽の必要加温熱量/発酵槽加温/熱損率、メタン発酵槽1m3における有機物最大負荷、余剰熱量、温水回収熱量及び回収効率、メタン発酵槽における有機物分解率、ガスホルダにおけるメタンガス発生量、実測メタン収率(BMP)、(ガス発電の場合)発電電力量、発電効率、熱量換算値、施設内消費電力及び(発電量に対する)消費割合、などのデータが含まれる。これらのデータに関しても、在庫する各資材に関するデータと同様に、ブロックチェーンなどにより、リアルタイム在庫管理される。
【0072】
(B)AIメタン資源化プログラム402に登録・承認された各バイオガス資材に関するデータに基づき、個別資材に関するメタン資源化評価AI402aにより、資材ごとにメタン資材としての価値を、成分指標マスタデータに照らして、予測・分析する。
【0073】
ここでの、各資材のメタン資材としての価値を予測・分析する際の検証項目としては、例えば、以下の項目を想定している。
各メタン資材の前処理の必要性の有無、各メタン資材の有機物の組成式、発酵温度、発酵日数、各メタン資材の有機物濃度(VS)、固形物量(TS)、有機物比率(VS/TS)、灰分濃度、化学的酸素要求量(COD)、理論的酸素要求量(ThOD)、COD/VS値、各メタン資材の有機物構成元素の濃度(=炭素(C:%VS)、窒素(N:%VS)、酸素(O:%VS)、水素(H:%VS)などの含有量)、各メタン資材の炭水化物・脂質・タンパク質・灰分など栄養素の濃度、各メタン資材のヘミセルロース・セルロース・リグニン濃度(%VS)、 C/N比(各メタン資材の炭素濃度と窒素濃度の比率)、脂質/VS比(各メタン資材の脂質濃度とVS濃度の比率)、Na濃度、鉄 (mg/kg-COD原料)、コバルト (mg/g-COD原料)、ニッケル(mg/g-COD原料)など各メタン資材の微量栄養素の濃度、理論的メタン収率(ThBMP: ml/g-VS)、実測メタン収率(BMP: ml/g-VS)予測値、生分解率、VS分解率、エネルギー収率など。
【0074】
尚、理論的メタン収率の推算には、従来より知られている組成式ベース(元素収支)、化学的酸素要求量(COD)ベース(CODCr、CODMnを含む)、(繊維を含めた)栄養素ベースなど複数の計算方法を適用する。予測・分析値には、実際のバイオガスプラントの運用状況に関するデータも反映することで、より精度の高いものとする。
【0075】
例えば、組成式ベース(元素収支)を用いた理論的メタン収率の推算を説明すると、バイオマスのメタン発酵によるメタンへの変換は、以下のような[数1]で表すことができる。
[数1]
【0076】
ここで、CaHbOcNdは原料の有機分の組成式で、実務上有機分は一般的な指標である強熱減量(VS)と等価であると見なされる。強熱減量は、発酵原料の蒸発残留物を600℃程度の温度で加熱した際に揮散される物質を指す。下付きのa~dには原料に固有の数値が入る。組成式が未知の原料は、CHNコーダー法などを使って実験的に決定した式(実験式)を使用する必要がある。例えば生ごみはC17H29O10NあるいはC13H21O7N、紙ごみはC266H434O210N、し尿汚泥はC7H12O4N、乳牛排泄物はC22H31O11N、下水汚泥はC10H19O3Nなどの実験式がこれまでに報告されている。このような組成式を用いて、理論的メタン収率(Theoretical Biochemical Methane Potential, ThBMP)は、次の[数2]のように算出される。
[数2]
【0077】
ここで、fDは補正係数で、分解可能な有機物の割合、すなわち発酵による分解率となる。この分解率も、未知である場合には実験的に特定する必要がある。例えば、生ごみ・食品残渣は0.75~0.85、豚排泄物は0.45~0.55、乳牛排泄物は0.25~0.35、新聞紙は0.34、草本は0.55、剪定枝は0.25、下水汚泥は0.50などが報告されている。この計算結果ThBMPは、原料のVS1 gあたりから発生するメタンガスのmlを示している。この予測法を用いる際には原料のVSと、組成式が未知の場合には原料の元素組成(CHON)の分析が必要である。fDに係る分解率はさまざまな論文等で原料ごとに明らかにされているが、未知の場合には原料とメタン発酵菌を用いた培養実験を行うことでVSの分解率を測定する必要がある。
【0078】
また、栄養素ベースを用いた理論的メタン収率の推算を説明すると、炭水化物、タンパク質、脂質は食品の三大栄養素として周知されている。これらの栄養素はメタン発酵でメタンへと変換可能である。それぞれの平均的な組成式であるC6H10O5(炭水化物)、C5H7O2N(タンパク質)、C57H104O6(脂質)に基づいて上記[数2]のThBMP算出式から計算されたメタン収率(それぞれ415、496、1014 ml/g VS)と、VSを1としてVS中に占めるそれぞれの栄養素の重量比を用いて、理論的メタン収率は次の[数3]で算出できる。
[数3]
この予測法を用いる場合には原料のVSと三大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質)の重量比を知る必要がある。三大栄養素については、単一の食品が原料であれば食品標準成分表から数値を得ることが可能だが、そうでなければ分析によって炭水化物、タンパク質、脂質の比率を明らかにする必要がある。fDは組織式を利用した予測法と同様で論文等の文献値か培養実験で特定する。
【0079】
また、予測・分析のために「個別資材に関するメタン資源化評価AI402a」が学習・参照する成分指標マスタデータには、サンプルとなる各種メタン資材(食品廃棄物/油脂/汚泥/家畜排泄物/動物・草木系残渣/混合有機ごみなど)を対象とした、次の各項目の分析結果を採用する。
各メタン資材の前処理の必要性の有無、各メタン資材の有機物の組成式、発酵温度、発酵日数、各メタン資材の有機物濃度(VS)、固形物量(TS)、有機物比率(VS/TS)、灰分濃度、化学的酸素要求量(COD)、理論的酸素要求量(ThOD)、COD/VS値、各メタン資材の有機物構成元素の濃度(=炭素(C:%VS)、窒素(N:%VS)、酸素(O:%VS)、水素(H:%VS)などの含有量)、各メタン資材の炭水化物・脂質・タンパク質・灰分など栄養素の濃度、各メタン資材のヘミセルロース・セルロース・リグニン濃度(%VS)、 C/N比(各メタン資材の炭素濃度と窒素濃度の比率)、脂質/VS比(各メタン資材の脂質濃度とVS濃度の比率)、Na濃度、鉄 (mg/kg-COD原料)、コバルト (mg/g-COD原料)、ニッケル(mg/g-COD原料)など各メタン資材の微量栄養素の濃度、理論的メタン収率(ThBMP: ml/g-VS)、実測メタン収率(BMP: ml/g-VS )、生分解率、VS分解率、エネルギー収率など。
【0080】
これらの各項目の分析結果に加えて、各バイオガスプラントにおける実際の運用状況に関するデータも、使用されているメタン資材別にサンプリングし、個別資材に関するメタン資源化評価AI402aの学習データとする。
【0081】
(C)次に、個別資材に関するメタン資源化評価AI402aにより実施された予測・分析結果(データ)を、メタン資源化マッチングシステムにおいて、各資材の排出元及びバイオガスプラント運用者に提示する。同時に、これら予測・分析データは、後工程の「混合資材に関するメタン資源化評価AI402b」及び「AIガス化促進プログラム403」にインポートされ、各バイオガス資材の混合発酵に関する相性分析、並びにシナジー性(あるいは阻害性)の予測・分析のための参照データのひとつとなる。
【0082】
(2-2)混合資材に関するメタン資源化評価AI402bの詳細
混合資材に関するメタン資源化評価AI402bは、「AIメタン資源化プログラム402」を構成するAIのひとつである。前述の「個別資材に関するメタン資源化評価AI402a」により出力された各排出元(=商業施設、レストラン、ホテル、食品工場など)から回収されたバイオガス資材(=食品廃棄物)及びバイオガスプラントにて現状使用されているバイオガス資材(食品廃棄物/油脂/汚泥/家畜排泄物など)を対象としたメタン資源化に関する評価予測・分析データに基づき、図8に示す混合指標マスタデータに照らして、在庫する1つ以上のバイオガス資材を混合発酵した場合の相性分析・評価を行う。
【0083】
またこれと同時に、「混合資材に関するメタン資源化評価AI402b」は、各バイオガスプラントの運用状況に関するデータも併せて参照することで、各バイオガスプラントにとって、最良の混合発酵の相性となるバイオガス資材、ひいては、最良の混合発酵用バイオガス資材を提供し得る排出元を、リアルタイムで分析、特定する。なお、各バイオバス資材に関するデータとその回収元である排出元、バイオガスプラントとそこで現状使用されているバイオガス資材に関するデータは、常に結びついている。
【0084】
次に、混合資材に関するメタン資源化評価AI402bにおいて想定される機能(フロー)を、図8を参照しながら説明する。
(D)個別資材に関するメタン資源化評価AI402aにより出力された各排出元から回収されたバイオガス資材(=食品廃棄物)及びバイオガスプラントにて現状使用されているバイオガス資材(食品廃棄物/油脂/汚泥/家畜排泄物など)を対象としたメタン資源化に関する評価予測・分析データが、システム連携により、混合資材に関するメタン資源化評価AI402bにインポートされる。
【0085】
(E) 次に、インポートされた個別資材に関するメタン資源化評価AI402aによる各バイオガス資材の予測・分析結果に基づき、混合資材に関するメタン資源化評価AI402bは、各バイオガス資材を混合発酵した際のメタン発酵の相性を、混合指標マスタデータに照らして、予測・分析する。
【0086】
在庫する各バイオガス資材を混合発酵した際の相性に関する予測・分析項目としては、例えば、以下の項目を想定している。
各バイオガス資材を混合発酵する場合の、原料の前処理の必要性の有無、メタン資材ごとの有機物の組成式、発酵温度、発酵日数、有機物濃度(VS)、固形物量(TS)、有機物比率(VS/TS)、灰分濃度、化学的酸素要求量(COD)、理論的酸素要求量(ThOD)、COD/VS値、各メタン資材の有機物構成元素の濃度(=炭素(C:%VS)、窒素(N:%VS)、酸素(O:%VS)、水素(H:%VS)などの含有量)、各メタン資材の炭水化物・脂質・タンパク質・灰分など栄養素の濃度、各メタン資材のヘミセルロース・セルロース・リグニン濃度(%VS)、 C/N比(各メタン資材の炭素濃度と窒素濃度の比率)、脂質/VS比(各メタン資材の脂質濃度とVS濃度の比率)、Na濃度、鉄 (mg/kg-COD原料)、コバルト (mg/g-COD原料)、ニッケル(mg/g-COD原料)など資材混合時の微量栄養素の濃度、理論的メタン収率(ThBMP: ml/g-VS)、実測メタン収率(BMP: ml/g-VS)予測値、生分解率、VS分解率、エネルギー収率など。
【0087】
尚、理論的メタン収率の算出には、組成式ベース(元素収支)、化学的酸素要求量(COD)ベース(CODCr、CODMnを含む)、(繊維を含めた)栄養素ベースなど複数の計算方法を適用する。また、予測・分析値には、実際のバイオガスプラントの運用状況に関するデータも反映することで、より精度の高いものとする。
【0088】
予測・分析のために「混合資材に関するメタン資源化評価AI402b」が学習・参照する混合指標マスタデータには、サンプルとなる各種メタン資材(食品廃棄物/油脂/汚泥/家畜排泄物/動物・草木系残渣/混合有機ごみなど)を対象とした「各メタン資材の前処理の必要性の有無、メタン資材ごとの有機物の組成式、発酵温度、発酵日数、各メタン資材の有機物濃度(VS)、固形物量(TS)、有機物比率(VS/TS)、灰分濃度、化学的酸素要求量(COD)、理論的酸素要求量(ThOD)、COD/VS値、各メタン資材の有機物構成元素の濃度(=炭素(C:%VS)、窒素(N:%VS)、酸素(O:%VS)、水素(H:%VS)などの含有量)、各メタン資材の炭水化物・脂質・タンパク質・灰分など栄養素の濃度、各メタン資材のヘミセルロース・セルロース・リグニン濃度(%VS)、 C/N比(各メタン資材の炭素濃度と窒素濃度の比率)、脂質/VS比(各メタン資材の脂質濃度とVS濃度の比率)、Na濃度、鉄 (mg/kg-COD原料)、コバルト (mg/g-COD原料)、ニッケル(mg/g-COD原料)など各メタン資材の微量栄養素の濃度、理論的メタン収率(ThBMP: ml/g-VS)、実測メタン収率(BMP: ml/g-VS )、生分解率、VS分解率、エネルギー収率等など」の各項目の分析結果を採用する。さらに、各バイオガスプラントにおける実際の運用状況に関するデータも、使用されているメタン資材別にサンプリングし、AIの学習データとする。
【0089】
本実施の形態に係る評価値演算装置においては、在庫する各バイオガス資材を混合発酵した際の相性を判断するための指標(及び論理)を用いており、例えば、以下の項目(及び順序a~g)を想定している。
(a) C/N比: 原料の炭素濃度と窒素濃度の比率が、25以上(25未満であれば阻害のリスク有り)であるか否か
(b) 脂質/VS比: 原料の脂質濃度とVS濃度の比率が、35以下(35以上であれば阻害のリスク有り)であるか否か
(c) 脂質/炭水化物比:原料の脂質濃度と炭水化物濃度の比率が、13以上であるか否か
(d) タンパク質/炭水化物比:原料のタンパク質濃度と炭水化物濃度の比率が、26以上であるか否か
(e) 微量栄養素:例えば、原料中の鉄が165 (mg/kg-COD原料)以上、コバルトが14 (mg/g-COD原料)以上、ニッケルが5 (mg/g-COD原料)以上であるか否か
(f) Na濃度:原料のナトリウム濃度が、5.6 g/L 未満であるか否か
(g) 上記a~f(※判別の順序は順不同、但しa, b, e, f は必須条件)の条件を満たした上で、混合発酵時のメタン収率(=原料のVS1gあたりからのメタン生成量(単位:mL/g-VS))が、大きいほどより良い混合発酵の相性と判断される。尚、メタン収率が、100mL/g-VS未満である場合には、経済的な観点から、バイオガス資材同士の単純な混合発酵処理には不向きな組み合わせと判断される。
【0090】
(F)次に、混合資材に関するメタン資源化評価AI402bにより実施された予測・分析の結果(データ)を、メタン資源化マッチングシステムSにおいて、各資材の排出元及びバイオガスプラント運用者に提示する。同時に、これら予測・分析結果(データ)は、後工程の「AIガス化促進プログラム403」にインポートされ、各バイオガス資材の混合発酵時のシナジー性(及び阻害性)に関する予測・分析のための参照データのひとつとなる。
【0091】
(3)AIガス化促進プログラムの詳細
AIガス化促進プログラム403は、メタン収率促進予測AI403aからなるプログラムであり、前述のAIメタン資源化プログラム402と併せて、メタン資源化マッチングシステムSを構成する。
【0092】
メタン収率促進予測AI403aは、前述の「個別資材に関するメタン資源化評価AI402a」により出力された各排出元(=商業施設、レストラン、ホテル、食品工場など)から回収されたバイオガス資材(=食品廃棄物)及びバイオガスプラントにて現状使用されているバイオガス資材(食品廃棄物/油脂/汚泥/家畜排泄物など)を対象としたメタン資源化に関する評価予測・分析データ、「混合資材に関するメタン資源化評価AI402b」により出力された在庫するバイオガス資材の混合発酵の相性に関する分析・評価データに基づき、これらを図9に示すバイオガス化促進指標マスターデータに照らして、在庫する1つ以上のバイオガス資材を混合発酵する際により良い発酵条件を整えるのに必要となる適切な「ガス化促進剤」「栄養補助剤」「補助原料」の種類及び添加量を予測・分析する。
【0093】
前述の混合発酵の相性を判断するための指標に掲げられたaからgの条件をはじめ、メタンガス生成にとって好ましいとされる各分析項目の数値指標のうち、過不足のある項目について、正常値範囲内に調整するようなガス化促進剤等の種類及び添加量を予測・分析する。
【0094】
例えば、ガス化促進剤等の添加を必要としていない(=バイオガスガス生成のための全ての数値指標を満たしている)資材の組み合わせについても、資材の混合に伴うシナジー性の有無を、図9に示すようなバイオガス化促進指標マスターデータに照らして、予測・分析する。「混合資材に関するメタン資源化評価AI402b」の予測・分析結果により、混合発酵後のメタン収率が100mL/g-VS未満であると推計された資材の組み合わせについても、 「ガス化促進剤」「栄養補助剤」「補助原料」などの添加により、メタンガス生成に好ましい条件を満たす可能性もある。
【0095】
次に、メタン収率促進予測AI403aにおいて想定される機能(フロー)を、図9に示すフローを参照しながら説明する。
【0096】
(G)最初に、「個別資材に関するメタン資源化評価AI402a」及び「混合資材に関するメタン資源化評価AI402b 」による評価予測・分析データが、システム連携により、 AIガス化促進プログラム403(メタン収率促進予測AI403a)にインポートされる。
【0097】
(H)次に、インポートされた「個別資材に関するメタン資源化評価AI402a」及び「混合資材に関するメタン資源化評価AI402b」による予測・分析データに基づき、「メタン収率促進予測AI403a」は、各バイオガス資材を個別発酵する際により良い発酵条件を整えるのに必要な「ガス化促進剤」「栄養補助剤」「補助原料」の種類及びその添加量を、バイオガス化促進指標マスターデータに照らして、予測・分析する。また、「混合資材に関するメタン資源化評価AI402b」よりインポートされた在庫する1つ以上のバイオガス資材を混合発酵するための各組み合わせについて、より良い発酵条件を整えるのに必要な「ガス化促進剤」「栄養補助剤」「補助原料」の種類及びその添加量を、バイオガス化促進指標マスターデータに照らして、予測・分析する。
【0098】
ここで「ガス化促進剤」「栄養補助剤」「補助原料」の種類としては、例えば、次のものを想定している。
・ガス化促進剤:セルラーゼ酵素、ルーメン液、バイオ炭など
・栄養補助剤:NiCl2 6H2O、CoCl2 6H2O、FeCl2 4H2Oなど
・補助原料:油脂精製汚泥、BDF残渣グリセリンなど
【0099】
メタン収率促進予測AI403aは、例えば、各バイオガス資材を個別発酵(及び混合発酵)する際に、下記の各分析項目の数値が、より良い発酵条件と判断されるに足る数値範囲に収まるために必要となる「ガス化促進剤」「栄養補助剤」「補助原料」の種類及びその添加量を予測・分析する。
原料の前処理の必要性の有無、メタン資材ごとの有機物の組成式、発酵温度、発酵日数、有機物濃度(VS)、固形物量(TS)、有機物比率(VS/TS)、灰分濃度、化学的酸素要求量(COD)、理論的酸素要求量(ThOD)、COD/VS値、各メタン資材の有機物構成元素の濃度(=炭素(C:%VS)、窒素(N:%VS)、酸素(O:%VS)、水素(H:%VS)などの含有量)、各メタン資材の炭水化物・脂質・タンパク質・灰分など栄養素の濃度、各メタン資材のヘミセルロース・セルロース・リグニン濃度(%VS)、 C/N比(各メタン資材の炭素濃度と窒素濃度の比率)、脂質/VS比(各メタン資材の脂質濃度とVS濃度の比率)、Na濃度、鉄 (mg/kg-COD原料)、コバルト (mg/g-COD原料)、ニッケル(mg/g-COD原料)など資材混合時の微量栄養素の濃度、理論的メタン収率(ThBMP: ml/g-VS)、実測メタン収率(BMP: ml/g-VS)予測値、生分解率、VS分解率、エネルギー収率など。
【0100】
各分析項目の数値指標としては、例えば、以下の項目がある。
a) C/N比: 原料の炭素濃度と窒素濃度の比率が、25以上(25未満であれば阻害のリスク有り)であるか否か
b) 脂質/VS比: 原料の脂質濃度とVS濃度の比率が、35以下(35以上であれば阻害のリスク有り)であるか否か
c) 脂質/炭水化物比:原料の脂質濃度と炭水化物濃度の比率が、13以上であるか否か
d) タンパク質/炭水化物比:原料のタンパク質濃度と炭水化物濃度の比率が、26以上であるか否か
e) 微量栄養素:例えば、原料中の鉄が165 (mg/kg-COD原料)以上、コバルトが14 (mg/g-COD原料)以上、ニッケルが5 (mg/g-COD原料)以上であるか否か
f) Na濃度:原料のナトリウム濃度が、5.6 g/L 未満であるか否か
g) 上記a~fの条件を満たした上で、個別発酵(或いは混合発酵)時のメタン収率(=原料のVS1gあたりからのメタン生成量(単位:mL/g-VS))が、100mL/g-VS以上であるか否か
【0101】
さらに、シナジー性を判断するための分析項目及び数値指標としては、例えば、以下のものがある。
a) C/N比(=原料の炭素濃度と窒素濃度の比率)が、25以上27以下である
b) タンパク質/炭水化物比(=原料のタンパク質濃度と炭水化物濃度の比率)が、26以上である
c) 脂質/VS比(=原料の脂質濃度とVS濃度の比率)が35以下、且つ脂質/炭水化物比(=原料の脂質濃度と炭水化物濃度の比率)が、13以上であるか。
【0102】
個別資材(個別資材に関するメタン資源化評価AI402aからのデータ)に関しては、当該する個別資材と 「ガス化促進剤」などとの混合によるシナジー性を予測・分析する。混合資材(混合資材に関するメタン資源化評価AI402bからのデータ)に関しては、 「ガス化促進剤」などの添加の有無にかかわらず、資材同士の単純な混合によるシナジー性についても予測・分析する。
【0103】
(I)最後に、メタン収率促進予測AI403aにより実施された予測・分析の結果(データ)を、 メタン資源化マッチングシステムSにおいては、各バイオガス資材の排出元及びバイオガスプラント運用者に提示する。
【0104】
<バイオガス資材の評価値演算装置の具体的構成>
次に、本実施の形態に係るバイオガス資材の評価値演算装置1に備わる各処理部に関して図10を参照しながら説明する。評価値演算装置1は、バイオガス資材の学習用ライブラリデータに基づいて機械学習モデルにおける設定値を学習する学習装置、及び機械学習モデルを用いて対象バイオガス資材(個別資材、混合資材)を利用したメタン発酵・メタンガス化(資源化)に関する評価値の推算を実行する推算装置の少なくとも一方としての機能を発揮する。
【0105】
最初に、メタン資源化処理装置1に備わる各処理部に関して図10を参照しながら説明する。メタン資源化処理装置1は、図10に示すように、制御部10、評価値演算部11、記憶部12、通信部13、表示部14、操作部15及び読取部16を備える。なお、評価値演算装置1における動作について以下では、1台のサーバコンピュータとして説明するが、複数のコンピュータによって処理を分散するようにして構成されてもよいし、クラウド化されていてもよい。
【0106】
制御部10は、CPUなどのプロセッサやメモリを用いて、装置の構成部を制御して各種機能を実現する。
【0107】
評価値演算部11は、プロセッサ及びメモリを用い、制御部10からの制御指示に応じて対象バイオガス資材の資源化に関する評価値の推算を実行する。なお、制御部10及び評価値演算部11は、CPU等のプロセッサ、メモリ、さらには記憶部12及び通信部13を集積した1つのハードウェア(SoC:System on a Chip)として構成されていてもよい。
【0108】
記憶部12は、ハードディスクやフラッシュメモリを用いる。記憶部12には、評価値演算プログラム1P、機械学習モデルとしての機能を発揮させる機械学習ライブラリ1Lが記憶されている。また、記憶部12には、機械学習モデルを定義する定義データ、学習済み機械学習モデルにおける設定値等を含むパラメータなどが記憶される。なお、評価値演算プログラム1Pに記憶されるプログラムは、具体的には上述したAIメタン資源化プログラム402及びAIガス化促進プログラム403である。
【0109】
通信部13は、インターネット等の通信網への通信接続を実現する通信モジュールであって、後述するバイオガス資材関連情報(機械学習ライブラリ、バイオガス資材の資源化に関する評価値など)を他の端末装置に送信可能である。通信部13は、ネットワークカード、無線通信デバイス又はキャリア通信用モジュールを用いる。
【0110】
表示部14は、液晶パネル等を用いる。操作部15は、キーボード又はマウス等のユーザインタフェースを含む。操作部15は、ユーザによる操作情報を制御部10へ通知する。このユーザによる操作情報は、例えば、バイオガス資材(個別資材、混合資材)の種類、回収場所、性状、分量などの特性データやバイオガスプラントの運用状況データである。
【0111】
読取部16は、例えばディスクドライブを用い、光ディスク等を用いた記録媒体2に記憶してある最適化演算プログラム、及び機械学習ライブラリを読み取ることが可能である。記憶部12に記憶してある評価値演算プログラム1P及び機械学習ライブラリ1Lは、記録媒体2から読取部16が読み取った評価値演算プログラム2P及び機械学習ライブラリ3Lを制御部10が記憶部12に複製したものであってもよい。
【0112】
次に、評価値演算装置1の機能に関して図11を参照しながら説明する。評価値演算装置1の制御部10はAI(Artificial Intelligence)を活用した学習処理実行部101及び評価値演算実行部102を備える。
【0113】
学習処理実行部101は、記憶部12に記憶してある機械学習ライブラリ1L、定義データ、パラメータ情報に基づき機械学習モデル(機械学習エンジン)として機能する。すなわち、学習処理実行部101は、学習対象の機械学習モデルを用いて、学習用教師データに基づいて、学習対象の機械学習モデルにおける設定値(パラメータ等)を自動学習する処理を実行する。
【0114】
この学習の際には、機械学習ライブラリを用いて、各種のバイオガス資材の前処理の必要性の有無、各メタン資材の有機物の組成式、発酵温度、発酵日数、各メタン資材の有機物濃度(VS:Volatile Solids の略)、固形物量(TS: Total Solids)、有機物比率(VS/TS)、灰分濃度、化学的酸素要求量(COD)、理論的酸素要求量(ThOD)、COD/VS値、各メタン資材の有機物構成元素の濃度(=炭素(C:%VS)、窒素(N:%VS)、酸素(O:%VS)、水素(H:%VS)などの含有量)、各メタン資材の炭水化物・脂質・タンパク質・灰分など栄養素の濃度、各メタン資材のヘミセルロース・セルロース・リグニン濃度(%VS)、 C/N比(各メタン資材の炭素濃度と窒素濃度の比率)、脂質/VS比(各メタン資材の脂質濃度とVS濃度の比率)、Na濃度、鉄 (mg/kg-COD原料)、コバルト (mg/g-COD原料)、ニッケル(mg/g-COD原料)など各メタン資材の微量栄養素の濃度、理論的メタン収率(ThBMP: ml/g-VS)、実測メタン収率(BMP: ml/g-VS)予測値、生分解率、VS分解率、エネルギー収率などが付与される。
【0115】
一例としては、学習処理実行部101は、学習データを機械学習モデル112の全体に入力して得られる出力データと、既知の学習用データとの誤差を最小にする処理を実行し、パラメータ(重み)を更新できる。この学習処理により得られるパラメータは記憶部12に記憶される。
【0116】
評価値演算実行部102は、記憶部12に記憶してある評価値演算プログラム1Pに基づき、評価値の推算を行う。すなわち、評価値演算実行部102は、機械学習モデルを用いて、入力されるバイオガス資材(個別資材、混合資材)に対する評価値の推算を実行する。また、評価値演算実行部102は、ユーザの操作部15を用いた操作に基づき、入力データであるバイオガス資材関連データ(ここではすなわち機械学習用ライブラリ、バイオマス資材の種類、回収場所、性状、分量などを含む特性データやバイオガスプラントの運用状況データ)を入力部111に入力する機能を発揮する。
【0117】
なお、このバイオガスプラントの運用状況データは、上述のように、プラントで使用されているバイオガス資材の種類、発酵方式、凝集剤などの添加物の有無とその分量、メタン発酵槽1m3におけるVS容積負荷、メタン発酵槽における有機物分解率、ガスホルダにおけるメタンガス発生量や実測メタン収率(BMP)などの情報である。
【0118】
評価値演算部11の入力部111はバイオガス資材に関する機械学習ライブラリ又はバイオガス資材関連データの入力を受け付ける。学習処理実行部101は、機械学習ライブラリを機械学習モデル112に出力する。また、評価値演算実行部102は、評価値の推算対象となるバイオガス資材の特性データやバイオガスプラントの運用状況データを機械学習モデル112に出力する。これら機械学習ライブラリ又は評価値の推算対象となるバイオガス資材の特性データやバイオガスプラントの運用状況データなどを含むバイオガス資材関連データの種類は、例えばヘッダ部の情報や識別子を読み込むことにより判定できる。
【0119】
機械学習モデル112の開発プログラムとしては、例えば、各種データファイルの読み込み、ディープラーニング、データ解析、モデル式の構築、プログラム化などを行う際に広く汎用されているPythonやMATLAB(登録商標)を想定する。また、機械学習モデル112は、推論時に入力の特徴を抽出する畳み込み層及びプーリング層を複数回使用した畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)となる場合には、定義データにより定義される複数段の畳み込み層及びプーリング層と、全結合層とを含んでもよく、入力データの特徴量を取り出し、取り出された特徴量に基づいて推算処理を行っても良い。
【0120】
機械学習モデル112は、学習済みモデル使用時にはそれぞれ既に学習済のパラメータに基づいて、バイオガス資材の資源化に関する評価値の推算を行う。具体的にはバイオガス資材(個別資材、混合資材)の種類、回収場所、性状、分量などの特性データやバイオガスプラントの運用状況データに基づいて、「前処理の必要性の有無、各メタン資材の有機物の組成式、発酵温度、発酵日数、各メタン資材の有機物濃度(VS)、固形物量(TS)、有機物比率(VS/TS)、灰分濃度、化学的酸素要求量(COD)、理論的酸素要求量(ThOD)、COD/VS値、各メタン資材の有機物構成元素の濃度(=炭素(C:%VS)、窒素(N:%VS)、酸素(O:%VS)、水素(H:%VS)などの含有量)、各メタン資材の炭水化物・脂質・タンパク質・灰分など栄養素の濃度、各メタン資材のヘミセルロース・セルロース・リグニン濃度(%VS)、 C/N比(各メタン資材の炭素濃度と窒素濃度の比率)、脂質/VS比(各メタン資材の脂質濃度とVS濃度の比率)、Na濃度、鉄 (mg/kg-COD原料)、コバルト (mg/g-COD原料)、ニッケル(mg/g-COD原料)など各メタン資材の微量栄養素の濃度、理論的メタン収率(ThBMP: ml/g-VS)、実測メタン収率(BMP: ml/g-VS)予測値、生分解率、VS分解率、エネルギー収率など」の評価値の推算を行う。
【0121】
そして、特に、混合資材の評価値を推算する場合には、以下の項目を評価する。
(a) C/N比: 原料の炭素濃度と窒素濃度の比率が、25以上(25未満であれば阻害のリスク有り)であるか否か
(b) 脂質/VS比: 原料の脂質濃度とVS濃度の比率が、35以下(35以上であれば阻害のリスク有り)であるか否か
(c) 脂質/炭水化物比:原料の脂質濃度と炭水化物濃度の比率が、13以上であるか否か
(d) タンパク質/炭水化物比:原料のタンパク質濃度と炭水化物濃度の比率が、26以上であるか否か
(e) 微量栄養素:例えば、原料中の鉄が165 (mg/kg-COD原料)以上、コバルトが14 (mg/g-COD原料)以上、ニッケルが5 (mg/g-COD原料)以上であるか否か
(f) Na濃度:原料のナトリウム濃度が、5.6 g/L 未満であるか否か
(g) 上記a~f(※判別の順序は順不同、但しa, b, e, f は必須条件)の条件を満たした上で、混合発酵時のメタン収率(=原料のVS1gあたりからのメタン生成量(単位:mL/g-VS))が、大きいほどより良い混合発酵の相性と判断される。尚、メタン収率が、100mL/g-VS未満である場合には、経済的な観点から、資材同士の単純な混合発酵処理には不向きな組み合わせと判断される。
【0122】
なお、機械学習モデル112は、各バイオガス資材の混合発酵の評価値に基づき、適切なガス化促進剤、栄養補助剤、補助原料等の種類及びその添加量を評価することで、在庫する1つ以上のバイオガス資材を混合発酵する際に、より良い発酵条件を整えることも考え得る。
【0123】
この際の「ガス化促進剤」「栄養補助剤」「補助原料」とのシナジー性を判断するための評価値としては、例えば、以下のものがある。
a) C/N比(=原料の炭素濃度と窒素濃度の比率)が、25以上27以下である
b) タンパク質/炭水化物比(=原料のタンパク質濃度と炭水化物濃度の比率)が、26以上である
c) 脂質/VS比(=原料の脂質濃度とVS濃度の比率)が35以下、且つ脂質/炭水化物比(=原料の脂質濃度と炭水化物濃度の比率)が、13以上である
【0124】
そして、機械学習モデル112で処理された評価値は出力部113に入力されて、バイオガス資材関連データとして記憶部12に出力できる。
【0125】
このように、評価値演算装置1は、バイオガス資材の排出元(=商業施設、レストラン、ホテル、食品工場など)から排出されるバイオガス資材と、バイオガスプラントで実際に使用されているバイオガス資材とを、評価値を介して結びつけることで、より効率の良くバイオガス生成のための機械学習モデルを用意する。この結果、評価値演算装置1では、AIに基づく機械学習モデル112を用いてバイオガス資材の資源化に関する評価値の学習・推算を行なうことができ、メタンガス資材の的確な配合を行い、カーボンニュートラルに貢献できる。
【0126】
次に、本実施の形態に係る評価値演算装置1が学習装置として動作する際の動作手順に関して図12を参照しながら説明する。最初に、入力部111において機械学習ライブラリ1Lの入力がある場合(S1201でYes)、入力部111は、機械学習モデル112に出力する(S1202)。次に、機械学習モデル112では、機械学習ライブラリ1Lに基づいて、パラメータ更新処理(設定値の更新処理)を行う(S1203)。この設定値の更新は、ニューラルネットワークを用いる機械学習においては例えばパラメータをミニバッチ勾配降下法で更新するなど入力データと解答データとの差分を最小化する処理である。次に、更新された設定値を記憶部12に格納する(S1204)。
【0127】
次に、本実施の形態に係る評価値演算装置1が推論装置として動作する際の動作手順に関して図13を参照しながら説明する。最初に、入力部111においてバイオガス資材の種類、回収場所、性状、分量の特性データなどの入力がある場合(S1301でYes)、入力部111は、当該特性データを機械学習モデル112に出力する(S1302)。次に、機械学習モデル112は、入力された特性データに基づいて推論処理を行い、推論データ(例えば上述した評価値やa~gの判定)を生成する(S1303)。そして、推論結果である評価値を記憶部12に格納する(S1304)。
【0128】
<実験例>
次に、本実施の形態に係るメタン資材の評価値演算装置1における機械学習の実験例に関して図14図23を参照しながら説明する。本実験の目的は、食品廃棄物等のバイオガス資材を主原料としたバイオガス燃料の製造を最適化するための評価値を提示可能なAIモデルを開発することである。
【0129】
本実験で作成するAIモデルは、バイオガス資材におけるメタン収率などの評価値を予測するものである。なお、本実験では、数式処理が可能であり、かつAIモデルの開発プログラムとして最新のニューラルネットワークや統合された幅広い機械学習機能を有し、膨大な学習データや煩雑なプログラムが必要としない「MATLAB(登録商標)」(Mathworks社製)を選択した。その他「Python」や「Mathematica」(WOLFRAM社製)などを用いてもよい。
【0130】
次に、本実験において開発する具体的なAIモデルに関して説明する。このAIモデルで用いる機械学習ライブラリの例を図14及び図15のテーブル140,150に示す(図14及び図15は実際には横並びのテーブルである)。この機械学習ライブラリには、テーブル140,150に示すように、各種論文などを通じて既に一般に広く公開されている「バイオガス資材の各種の原料種類、当該原料種類に対応するバイオマス種、各原料の前処理の必要性の有無、メタンガス発酵方式、発酵温度、発酵日数又はその停止の目安、各メタン資材の有機物濃度(VS)、固形物量(TS)、有機物比率(VS/TS)、灰分濃度(Ash/TS)、化学的酸素要求量(COD)、化学的酸素要求量COD/VS値、各メタン資材の有機物構成元素の濃度(=炭素(C:%VS)、窒素(N:%VS)、酸素(O:%VS)、水素(H:%VS)などの含有量)、各メタン資材の炭水化物・脂質・タンパク質・灰分など栄養素の濃度、各メタン資材のヘミセルロース・セルロース・リグニン濃度(%VS)、 C/N比(各メタン資材の炭素濃度と窒素濃度の比率)、脂質/VS比(各メタン資材の脂質濃度とVS濃度の比率)、Na濃度、鉄 (mg/kg-COD原料)、コバルト (mg/g-COD原料)、ニッケル(mg/g-COD原料)など各メタン資材の微量栄養素の濃度、理論的メタン収率(ThBMP: ml/g-VS)、実測メタン収率(BMP: ml/g-VS)、生分解率、VS分解率」などが記載されている。
【0131】
また、AIモデルとしては、高次元データ集合に対して多変量正規分布として訓練する機械学習モデル、深層学習の1つであるオートエンコーダ(自己符号化器:Autoencoder)を用いた深層学習モデル、などが考え得るが、その他の学習モデルを使用しても良い。
【0132】
次に、本実験例における資源化に関する評価値の推算結果に関して図16図24を参照して説明する。上記のように作成された機械学習モデルを用いて、最初に、個別バイオガス資材の回収場所、原料種類などの特性データから資源化の評価値を推算した。この際に得られた評価値の推算結果を図16乃至図18のテーブル160,170,180に示す(図16図18は実際には横並びのテーブルである)。
【0133】
なお、図18(b)のテーブル181には推算ではなく実測された実測メタン収率、VS分解率などが測定されているが、理論的メタン収率などの推算精度を向上させるためには、推算後データと比較できる実測値データ数を増やして学習モデルの機械学習ライブラリに採用することが重要となる。また、追加の実測値を訓練データ(ライブラリデータ)として学習モデルに反映するプログラムの作成、容易な学習モデル作成において利便性の高いインターフェイスの採用等、運用を考慮した改良が必要となることは言うまでもない。
【0134】
そして、作成された機械学習モデルを用いて、推算された個別バイオガス資材に含まれる1の資材(ここではPotato waste161)を、図16乃至図18において推算された残りの全ての個別バイオガス資材(図16のBoiled rice以下全ての資材)に対して50:50で混合した場合の各混合バイオガス資材の評価値を推算し、得られた評価値の推算結果を図19乃至図21のテーブル190,200,210に示す(図19図21は実際には横並びのテーブルである)。
【0135】
この際、上記a~fの内、最低限の必須条件であるa, b, e, fの各条件を満たした混合バイオガス資材を破線より上に示し、且つメタン収率が大きい組み合わせを表の上から順番に並べた。破線191より下の資材のリストは、たとえメタン収率が高くなっていても、必須条件a, b, e, fの何れかの要件を満たしていないために適切な混合でないことが推算された。すなわち、図21に示すように本実験例の個別バイオガス資材(Potato waste)に対しては上記a~fを満たす原料はメタン収率が高いものから順番にrice stalk-BP、wheat stalk-BP、rape stalk-BP、maize stalk-BP、Wheat Straw 5.0cm、Barley Straw 5.0cm、cotton stalk-BP、Maize stalks 2.0cm、Rice Straw 5.0cmの9種であって、これらのうちでも特にrice stalk-BPとのバイオガス生成の資源化の相性が良いことが予測された。
【0136】
なお、上記a~fを全て満たしていなくても、「ガス化促進剤」「栄養補助剤」「補助原料」などの補助剤を加えれば上記a~fを全て満たすようになる原料もある。そこで、上記の図19~21の混合バイオガス資材の評価値の推算結果に、さらに、補助原料としてガス化促進剤(ここではバイオ灰、添加量2kg/原料100kg)を添加した場合の上記各種の評価値を推算した。この際、得られた評価値の推算結果を図22乃至図24のテーブル220,230,240に示す(図22図24は実際には横並びのテーブルである)。
【0137】
この際、上記a~fを全て満たした混合バイオガス資材を破線より上に示し、且つメタン収率が大きい組み合わせを表の上から順番に並べた。破線221より下の資材のリストは、たとえメタン収率が高くなっていても、a~fの何れかの要件を満たしていないために適切な混合でないことが推算された。すなわち、図24に示すように本実験例の個別バイオガス資材(Potato waste)及びガス化促進剤(バイオ灰、添加量2kg/原料100kg)に対しては上記a~fを全て満たす原料はrice stalk-BP、wheat stalk-BP、rape stalk-BP、maize stalk-BP、Wheat Straw 5.0cm、Barley Straw 5.0cm、cotton stalk-BP、Maize stalks 2.0cmの8種であって、これらのうちでも特にrice stalk-BPとのバイオガス生成の資源化の相性が良いことが予測された。さらに、メタン収率が、ガス化促進剤を加えていないときの推算値より大きくなること(ガス化促進剤を加えていない場合:420.33、ガス化促進剤を加えた場合:622.17)が推算された。この結果、個別バイオガス資材Potato wasteに対しては、rice stalk-BPとの混合、且つガス化促進剤の添加がさらにバイオガス生成時には最適であることが推算された。
【0138】
以上の説明のように、本発明は少なくとも1種類以上のバイオガス資材を用いてバイオガスを製造する際、その資源化に関する評価値を演算するバイオガス資材の評価値演算装置1であって、バイオガス資材に関する機械学習ライブラリ1L又はバイオガス資材の特性データの入力又はバイオガスプラントの運用状況に関するデータを受け付ける入力部111と、入力部111から機械学習ライブラリ1L又はバイオガス資材の特性データ又はバイオガスプラントの運用状況に関するデータが入力される機械学習モデル112と、機械学習ライブラリ1Lに基づいて機械学習モデル112における設定値を学習する処理を実行する学習処理実行部101と、機械学習モデル112を用いて特性データ及びバイオガスプラントの運用状況に関するデータに基づいて推算処理を実行することでバイオガス資材の資源化に関する評価値の推算を実行する評価値演算実行部102と、を備える。特性データには、バイオガス資材の種類、回収場所、性状、及び分量の情報の少なくとも1つが含まれる。評価値には、個別バイオガス資材又は複数の個別資材を混合した混合バイオガス資材における(a) 炭素濃度と窒素濃度の比率であるC/N比、(b) 脂質濃度とVS濃度の比率である脂質/VS比、(c) 脂質/炭水化物比、(d) タンパク質/炭水化物比、(e) 鉄 (mg/kg-COD原料)、コバルト (mg/g-COD原料)、ニッケル(mg/g-COD原料)の微量栄養素の濃度、(f) Na濃度、及び(g) 理論的メタン収率(ThBMP: ml/g-VS)の少なくとも1つが含まれる。
【0139】
この構成により、バイオガス資材の評価値演算装置1では、これまで食品廃棄物などをバイオガス資材として受け入れる際に障害となってきたバイオガス資材の事前診断と、バイオガス資材導入時の安定したバイオガスプラントの運転のための評価値の不在を解消し、食品廃棄物などのバイオガス資源化の促進を図ることができる。また、推算された評価値に基づいて、残渣汚泥や食品ロスなどの食品廃棄物の排出元、及び食品廃棄物を利用してメタンガス化を行うバイオガスプラントを、インターネットを介したメタン資源化マッチングシステムを用いて最適にマッチングし、バイオガスプラントの稼働率向上を図り、ひいては脱炭素化社会の実現に貢献できる。
【0140】
なお、本発明は、このような評価値演算装置として実現することができるだけでなく、このような評価値演算装置が備える特徴的な手段をステップとする評価値演算方法として実現したり、それらのステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現することができる。そして、そのようなプログラムは、USBなどの記録媒体やインターネット等の伝送媒体を介して配信することができるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0141】
1 評価値演算装置
1P 評価値演算プログラム
1L 機械学習ライブラリ
10 制御部
11 評価値演算部
12 記憶部
13 通信部
101 学習処理実行部
102 評価値演算実行部
111 入力部
112 機械学習モデル
113 出力部
【要約】
本発明はバイオガス資材の評価値演算装置1であって、バイオガス資材に関する機械学習ライブラリ1L又はバイオガス資材の特性データ又はバイオガスプラントの運用状況に関するデータの入力を受け付ける入力部111と、入力部111から機械学習ライブラリ1L又はバイオガス資材の特性データ又はバイオガスプラントの運用状況に関するデータが入力される機械学習モデル112と、機械学習ライブラリ1Lに基づいて機械学習モデル112における設定値を学習する処理を実行する学習処理実行部101と、機械学習モデル112を用いて特性データ及びバイオガスプラントの運用状況データに対して推算処理を実行することでバイオガス資材の資源化に関する評価値の推算を実行する評価値演算実行部102と、を備える。この構成により、本発明では、推算された評価値に基づいて、残渣汚泥や食品ロスなどの食品廃棄物の排出元、及び食品廃棄物を利用してメタンガス化を行うバイオガスプラントを最適にマッチングし、バイオガスプラントの稼働率向上を図ることができる。
【選択図】図11
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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図26