(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ジカルバゾリル類化合物及び有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
C07D 209/88 20060101AFI20240229BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20240229BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20240229BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20240229BHJP
H10K 50/11 20230101ALI20240229BHJP
H10K 59/00 20230101ALI20240229BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240229BHJP
H10K 50/12 20230101ALN20240229BHJP
H10K 50/15 20230101ALN20240229BHJP
H10K 50/17 20230101ALN20240229BHJP
H10K 50/18 20230101ALN20240229BHJP
【FI】
C07D209/88 CSP
C07D401/14
C07D487/04 137
C09K11/06 690
H10K50/11
H10K59/00
H10K85/60
H10K50/12
H10K50/15
H10K50/17
H10K50/18
(21)【出願番号】P 2023562803
(86)(22)【出願日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2023009107
(87)【国際公開番号】W WO2023171761
(87)【国際公開日】2023-09-14
【審査請求日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2022/010682
(32)【優先日】2022-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】522126305
【氏名又は名称】株式会社TSK
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】中村 正治
(72)【発明者】
【氏名】松田 博
(72)【発明者】
【氏名】アベナ ラモン フランシスコ ベルナルディノ
(72)【発明者】
【氏名】奥本 健二
(72)【発明者】
【氏名】ソン ウンチョル
(72)【発明者】
【氏名】松浦 良介
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0210700(US,A1)
【文献】国際公開第2011/049325(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0054483(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0141337(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
H10K
C09K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個のカルバゾリル基が結合したジカルバゾリル基を基本骨格として有するジカルバゾリル類化合物であって、
前記基本骨格に含まれるN原子に対し、1個又は2個のフェニル基を媒介基として結合した官能基を有し
、
前記媒介基をINTと表し、前記官能基をFGと表すとき、下記の構造式で示され、且つ前記媒介基に対して前記官能基中のNが結合し
、
【化1】
(ただし、INTはフェニル基であり、mは1又は2である。)
前記官能基は2個のフェニル基を置換基として有する置換ジカルバゾリル基であり、以下の構造式に示される構造を有する、ジカルバゾリル類化合物。
【化2】
【請求項2】
2個のカルバゾリル基が結合したジカルバゾリル基を基本骨格として有するジカルバゾリル類化合物であって、
前記基本骨格に含まれるN原子に対し、1個又は2個のフェニル基を媒介基として結合した官能基を有し、
前記媒介基をINTと表し、前記官能基をFGと表すとき、下記の構造式で示され、且つ前記媒介基に対して前記官能基中のNが結合し、
【化3】
(ただし、INTはフェニル基であり、mは1又は2である。)
前記官能基はカルバゾール環とインドール環との縮合構造を含み且つインドール環のNにフェニル基が結合した置換窒素含有芳香族複素環基であり、以下の構造式に示される構造を有する、ジカルバゾリル類化合物。
【化4】
【請求項3】
2個のカルバゾリル基が結合したジカルバゾリル基を基本骨格として有するジカルバゾリル類化合物であって、
前記基本骨格に含まれるN原子に対し、1個又は2個のフェニル基を媒介基として結合した官能基を有し、
前記媒介基をINTと表し、前記官能基をFGと表すとき、下記の構造式で示され、且つ前記媒介基に対して前記官能基中のNが結合し、
【化5】
(ただし、INTはフェニル基であり、mは1又は2である。)
前記官能基は4個のフェニル基を有する
ジアリールアミン基であり、以下の構造式に示される構造を有する、ジカルバゾリル類化合物。
【化6】
【請求項4】
2個のカルバゾリル基が結合したジカルバゾリル基を基本骨格として有するジカルバゾリル類化合物であって、
前記基本骨格に含まれるN原子に対し、1個又は2個のフェニル基を媒介基として結合した官能基を有し、
前記媒介基をINTと表し、前記官能基をFGと表すとき、下記の構造式で示され、且つ前記媒介基に対して前記官能基中のNが結合し、
【化7】
(ただし、INTはフェニル基であり、mは1又は2である。)
前記官能基は2個のナフチル基を有する
ジアリールアミン基であり、以下の構造式に示される構造を有する、ジカルバゾリル類化合物。
【化8】
【請求項5】
2個のカルバゾリル基が結合したジカルバゾリル基に対して4個のフェニル基が結合した置換ジカルバゾリル基を基本骨格として有するジカルバゾリル類化合物であって、
前記基本骨格に含まれるN原子に対し、1個のフェニル基を媒介基として結合した官能基を有し、
前記官能基は、フェニル基又はピリジン基であり、
前記媒介基をINTと表し、前記官能基をFGと表すとき、下記の構造式で示され、且つ前記媒介基に対して前記官能基中のCが結合した、ジカルバゾリル類化合物。
【化9】
【請求項6】
請求項
5記載のジカルバゾリル類化合物において、前記官能基はフェニル基であり、以下の構造式に示される構造を有する、ジカルバゾリル類化合物。
【化10】
【請求項7】
請求項
5記載のジカルバゾリル類化合物において、前記官能基はピリジン基であり、以下の構造式に示される構造を有する、ジカルバゾリル類化合物。
【化11】
【請求項8】
請求項1
~7のいずれか1項に記載されたジカルバゾリル類化合物を含む層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジカルバゾリル類化合物及び有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子においては、アノードとカソードとの間に、電子輸送層、発光層及び正孔輸送層が挟まれる。このように構成される有機EL素子は、長寿命化であることが望ましい。この観点から、電子輸送層、発光層又は正孔輸送層の素材として適切な有機物が求められている。この要請に対応するため、例えば、特開2021-172592号公報において、窒素を有する複素環を含んだ化合物が提案されている。特開2021-172592号公報では、前記化合物は、電子輸送層、発光層又は正孔輸送層の素材として用いられている。
【発明の概要】
【0003】
有機ELのさらなる長寿命化が要請されている。
【0004】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【0005】
本発明の一実施形態によれば、2個のカルバゾリル基が結合したジカルバゾリル基か、又は、ジカルバゾリル基に対して1個以上の置換基が結合した置換ジカルバゾリル基を基本骨格として有するジカルバゾリル類化合物であって、
前記基本骨格に含まれるN原子に対して直接結合するか、又は、前記N原子に対して媒介基を介して間接的に結合した官能基を有し、
前記官能基は、アリール基、置換窒素含有芳香族複素環基又は無置換窒素含有芳香族複素環基の少なくともいずれか1個を有し、
前記媒介基をINTと表し、前記官能基をFGと表すとき、下記の構造式で示される、ジカルバゾリル類化合物が提供される。
【0006】
【0007】
ここで、上記構造式中のR2~R5は、カルバゾリル基を構成するベンゼン環の任意の位置に結合した置換基を表す。R2~R5は、水素であってもよい。また、mは0又は1である。
【0008】
なお、各化合物中の水素が重水素に置換されていてもよい。本明細書における「水素」には「重水素」が含まれる。重水素化率は高くてもよい。例えば、重水素化率は80%程度であってもよい。
【0009】
本発明の別の一実施形態によれば、上記したジカルバゾリル類化合物を含む層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0010】
上記の化合物では、第一励起三重項状態(T1)のエネルギが高い。また、上記の化合物における最高占有準位(HOMO)及び最低非占有準位(LUMO)は、特に青色発光材料を発光層に含む場合の電荷輸送材として用いるに当たって、適切な範囲内である。また、この化合物においては、分子内で電荷が移動することが容易であるために電荷が非局在化し難い。従って、分子構造が安定する。さらに、分子の構造に基づいて分子内回転が抑制されるので、熱安定性が良好である。
【0011】
以上のような理由から、上記の化合物を含む層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子では、寿命が長期化する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、有機EL素子の模式的側面図である。
【
図2】
図2は、ジカルバゾリル類化合物の諸物性を示す図表である。
【
図3】
図3は、
図2とは別のジカルバゾリル類化合物の諸物性を示す図表である。
【
図4】
図4は、有機物を含んだ発光層を有する有機EL素子の諸特性を示す図表である。
【
図5】
図5は、有機物を含んだ層を有する有機EL素子の諸特性を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子10の模式的側面図である。有機EL素子10は、ガラス基板12と、アノード14と、正孔輸送層16と、発光層18と、電子輸送層20と、カソード22とを備える。ガラス基板12、アノード14及びカソード22の素材としては、公知の素材を採用することができる。
【0014】
正孔輸送層16、発光層18又は電子輸送層20の少なくとも1つは、ジカルバゾリル類化合物を含む。本実施形態において、ジカルバゾリル類化合物とは、2個のカルバゾリル基が結合したジカルバゾリル基を基本骨格として含む化合物を指す。又は、ジカルバゾリル類化合物とは、ジカルバゾリル基に1個以上の置換基が結合した置換ジカルバゾリル基を基本骨格として含む化合物を指す。いずれの化合物においても、基本骨格中のN原子に対して官能基が結合する。
【0015】
官能基は、基本骨格中のN原子に対し、例えば、直接結合する。基本骨格と官能基との間に、置換基(媒介基)が介在してもよい。この場合、官能基は、基本骨格中のN原子に対し、媒介基を介して間接的に結合する。従って、媒介基をINTと表し、且つ官能基をFGと表すとき、本実施形態に係るジカルバゾリル類化合物の構造式は、以下のように表される。
【0016】
【0017】
上記構造式中のR2~R5は、水素か、又は、カルバゾリル基を構成するベンゼン環の任意の位置に結合した置換基を表す。また、mは0又は1である。mが0であるとき、官能基が基本骨格中のN原子に対して直接結合していることを意味する。mが1であるとき、官能基が基本骨格中のN原子に対して媒介基を介して間接的に結合していることを意味する。
【0018】
媒介基は、例えば、フェニル基又はトリアジン基である。媒介基がフェニル基である場合、ジカルバゾリル類化合物の構造式の典型例を以下に示す。
【0019】
【0020】
官能基は、アリール基か、置換窒素含有芳香族複素環基又は無置換窒素含有芳香族複素環基の少なくともいずれか1個である。官能基がアリール基である場合、官能基(アリール基)は、例えば、下記の構造式に示される構造(基)を有する。
【0021】
【0022】
上記構造式におけるR6及びR7は、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。代替的に、R6及びR7は、置換もしくは無置換の窒素含有芳香族複素環基であってもよい。窒素含有芳香族複素環基の代表例としては、窒素含有5員環基、窒素含有6員環基、窒素含有芳香族縮合2環又は窒素含有芳香族縮合3環等が挙げられる。窒素含有5員環基の具体例としてはピロリル基等が挙げられ、窒素含有6員環基の具体例としてはピリジニル基又はピリミジル基等が挙げられる。窒素含有芳香族縮合2環の具体例としてはインドリル基又はキノリル基等が挙げられ、窒素含有芳香族縮合3環の具体例としては、カルバゾリル基又はフェナントロリル基等が挙げられる。窒素含有芳香族複素環基は、上記した置換基に特に限定されない。
【0023】
又は、官能基は、下記の構造式に示される構造(基)を有する。
【0024】
【0025】
上記構造式におけるR8は、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。代替的に、R8は、置換もしくは無置換の窒素含有芳香族複素環基であってもよい。
【0026】
又は、官能基は、下記の構造式に示される構造(基)を有する。
【0027】
【0028】
上記構造式中のR11及びR12は、例えば、水素である。R11及びR12は、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基であってもよい。
【0029】
官能基が置換窒素含有芳香族複素環基又は無置換窒素含有芳香族複素環基である場合、官能基(置換窒素含有芳香族複素環基又は無置換窒素含有芳香族複素環基)は、例えば、下記構造式に示される構造(基)を有する。
【0030】
【0031】
上記構造式におけるR9及びR10は、例えば、水素である。代替的に、R9及びR10は、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基であってもよい。
【0032】
R2~R5の全てが水素であってもよい。以下、この場合における官能基の具体例を示す。なお、基本骨格と官能基との間にフェニル基が介在する場合、フェニル基に対して2個以上の官能基が結合してもよい。
【0033】
[1 1個の官能基がフェニル基のメタ位(m-位)に結合する場合の官能基の例]
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
[2 2個の同一の官能基がフェニル基の2-位及び4-位に結合する場合の官能基の例]
【0040】
【0041】
[3 1個の官能基がフェニル基の4-位に結合する場合の官能基の例]
【0042】
【0043】
[4 1個の官能基がフェニル基のパラ位(p-位)に結合する場合の官能基の例]
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
なお、Meはメチル基を表す。
【0066】
ジカルバゾリル類化合物は、官能基としてジカルバゾリル基又は置換ジカルバゾリル基を有していてもよい。この場合、ジカルバゾリル類化合物は、基本骨格にジカルバゾリル基又は置換ジカルバゾリル基を有すると同時に、官能基にジカルバゾリル基又は置換ジカルバゾリル基を有する。
【0067】
この場合において、基本骨格と官能基とは、フェニル基を媒介基として結合することが好ましい。さらに、フェニル基に対し、カルバゾリル基又は置換カルバゾリル基が第2の官能基として結合することが好ましい。この化合物の構造式を以下に例示する。なお、この構造式では、ベンゼン環に対し、2個のジカルバゾリル基と、1個のカルバゾリル基とが結合した化合物を例示している。すなわち、この化合物において、ジカルバゾリル基及びカルバゾリル基に含まれる水素は、置換基に置換されていない。
【0068】
【0069】
又は、基本骨格と官能基とがフェニル基においてオルト位(o-位)の位置関係にあることが好ましい。この化合物の構造式を以下に例示する。なお、上記と同様に、基本骨格及び官能基(いずれもジカルバゾリル基)に含まれる水素は官能基に置換されていない。また、基本骨格及び官能基は、フェニル基においてo-位となる位置関係である。
【0070】
【0071】
媒介基であるフェニル基に対し、フェニル基を有するジカルバゾリル基が結合してもよい。この場合、ジカルバゾリル類化合物は、2個のジカルバゾリルベンゼンが互いに結合した化合物となる。ここで、1個のジカルバゾリルベンゼンは、ジカルバゾリル基又は置換ジカルバゾリル基がベンゼン環に結合した化合物である。従って、この場合のジカルバゾリル類化合物は、ジカルバゾリルベンゼンに対し、フェニル基を含む官能基が結合した形態となる。フェニル基を含む官能基とは、ジカルバゾリル基又は置換ジカルバゾリル基がフェニル基に結合した官能基を指す。ジカルバゾリルベンゼンにおけるジカルバゾリル基又は置換ジカルバゾリル基と、フェニル基を含む官能基とは、ジカルバゾリルベンゼンを構成するフェニル基においてo-位の位置関係であることが好ましい。
【0072】
この化合物の構造式を以下に例示する。なお、この構造式では、2個のジカルバゾリルベンゼンが互いに結合した化合物を例示している。すなわち、この化合物において、ジカルバゾリル基に含まれる水素は官能基に置換されていない。また、基本骨格であるジカルバゾリル基と、フェニル基を含む官能基とは、媒介基であるフェニル基(ジカルバゾリルベンゼンを構成するフェニル基)においてo-位となる位置関係である。
【0073】
【0074】
R2~R5は、1価の芳香族炭化水素基であってもよい。この場合、官能基は、1価の置換芳香族炭化水素基もしくは1価の無置換芳香族炭化水素基である。官能基は、1価の置換芳香族複素環基もしくは1価の無置換芳香族複素環基であってもよい。
【0075】
以上のような構造を有するジカルバゾリル類化合物を素材として含む正孔輸送層16、発光層18又は電子輸送層20を形成した場合、該層を有する有機EL素子10では、従来技術に係る有機EL素子よりも寿命が長期化することが認められる。
【0076】
このように寿命が長期化する理由は、以下のようであると考えられる。第1に、これらの化合物では、第一励起三重項状態(T1)のエネルギが高く、且つ最高占有準位(HOMO)及び最低非占有準位(LUMO)が適切である。第2に、構造式によれば、分子内で電荷が移動することが容易であり、電荷が非局在化し難いために分子構造が安定する。第3に、分子の構造に基づいて分子内回転が抑制されるので、熱安定性が良好となりホストとして適切である。
【0077】
さらに、基本骨格と官能基とが、媒介基であるフェニル基においてo-位の位置関係となるとき、分子が立体的に捻れた構造となる。このためにπ共役の延びが限定される。その結果として、エネルギにワイドギャップが生じ易くなる。このような化合物は、青色発光用の素材として一層適切であると考えられる。
【0078】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【0079】
例えば、上記した有機化合物中の水素が重水素に置換されていてもよい。重水素化率は高くてもよく、例えば、80%程度であってもよい。
【0080】
また、ジカルバゾリル類化合物は、置換芳香族炭化水素基又は置換芳香族複素環基が結合することにより、様々な構造となり得る。
【実施例】
【0081】
[化合物の合成]
以下におけるAc、Bu、Et及びArは、それぞれ、アセチル基、ブチル基、エチル基及びアリール基を表す。また、t-Buは三級ブチル基を意味する。さらに、H、C及びNの「%」は質量%である。
【0082】
[実施例1]
5ミリリットルのメシチレンに対し、2ミリモルのジカルバゾールと、2ミリモルの9-(3-ブロモフェニル)-9H-カルバゾールと、0.04ミリモルのPd(OAc)2と、0.16ミリモルのt-Bu3Pと、3ミリモルのNaO(t-Bu)とを添加し、混合液を調製した。該混合液を、アルゴン雰囲気下で150℃に保持した状態で、4時間撹拌した。混合液に1モル/リットルのHClを3ミリリットル添加してクエンチを行い、EtOAcを用いて混合液から有機物を抽出した。飽和食塩水で有機物を洗浄した後、該有機物をMgSO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去して、粗生成物を得た。
【0083】
酢酸エチルを展開溶媒として粗生成物をフロリジルに通し、さらに、溶媒を減圧下で除去した2-プロパノールを用いた再結晶により、白茶色の有機物を得た。収量は1.13gであり、収率は98%であった。
【0084】
得られた有機物につき、有機微量元素分析装置を用いて分析を行った。分子中のC、H及びNは、それぞれ87.82%、5.07%及び約6.93%であった。また、核磁気共鳴(NMR)による分析結果は、下記のとおりであった。
1HNMR(DMSO-d6,392MHz);δ=6.64-6.71(m,3H)、6.80-6.92(m,4H)、7.00-7.03(m,2H)、7.13-7.25(m,5H)、7.33-7.52(m,7H)、7.59(d,J=7.6Hz,1H)、8.03(d,J=7.6Hz,1H)、8.12(d,J=7.6Hz,2H)、8.37(d,J=7.6Hz,1H)、8.5(d,J=7.6Hz,1H)。
【0085】
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC42H27N3であり、分子量は573.7であると判断された。
【0086】
この場合の化学反応式を、下記に示す。
【0087】
【0088】
以下、生成物である有機物をDCZ-1という。
【0089】
[実施例2]
2.7ミリリットルのメシチレンに対し、0.33gのジカルバゾールと、0.49gのAr-Br(臭化アリール)と、4.5mgのPd(OAc)2と、16.2mgのt-Bu3Pと、0.144gのNaO(t-Bu)とを添加し、混合液を調製した。該混合液を150℃に保持し、アルゴン雰囲気下で撹拌した。なお、用いた臭化アリールは9,9’-(5-ブロモ-1,3-フェニレン)ビス(9H-カルバゾール)であり、その構造式は以下のとおりである。
【0090】
【0091】
混合液に1モル/リットルのHClを1.5ミリリットル添加してクエンチを行い、EtOAcを用いて混合液から有機物を抽出した。飽和食塩水で有機物を洗浄した後、該有機物をMgSO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去して、粗生成物を得た。次に、酢酸エチルを展開溶媒として粗生成物につきシリカゲルカラム精製を行った。得られた精製物をエタノールで再沈殿させ、白色固体の有機物を得た。収量は0.66gであり、収率は89%であった。純水及び飽和食塩水で有機物を洗浄した後、該有機物をMgSO4で乾燥した。
【0092】
以降は実施例1と同様にして、得られた有機物につき分析を行った。分子中のC、H及びNは、それぞれ、87.63%、4.60%及び7.51%であった。また、NMRによる分析結果は下記のとおりである。
1HNMR(DMSO-d6,392MHz);δ=6.67-6.70(m,2H)、6.83-6.88(m,4H)、7.11-7.13(m,4H)、7.22-7.23(m,2H)、7.25-7.33(m,5H)、7.39-7.60(m,11H)、8.17-8.19(m,4H)、8.44-8.46(m,1H)、8.55-8.57(m,1H)。
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC54H34N4であり、分子量は738.89であると判断された。この場合の有機物の構造式を、下記に示す。
【0093】
【0094】
以下、この有機物をDCZ-2という。
【0095】
[実施例3]
構造式が下記に示される9-(3-ブロモフェニル)-3,6-ジフェニル-9H-カルバゾールを0.47g用い、ヘキサンとEtOAcを展開溶媒とした以外は実施例2と同様にして、白色固体の有機物を得た。収量は0.33gであり、収率は75%であった。
【0096】
【0097】
有機微量元素分析装置による分子中のC、H及びNは、それぞれ、89.20%、4.91%及び5.72%であった。また、NMRによる分析結果は下記のとおりである。
1HNMR(DMSO-d6,392MHz);δ=6.70-7.32(m,12H)、7.39-7.45(m,4H)、7.49-7.56(m,7H)、7.70-7.73(m,1H)、7.80-7.86(m,6H)、8.12-8.15(m,1H)、8.42-8.44(m,1H),8.54-8.56(m,1H)、8.65-8.66(m,2H)。
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC54H35N3であり、分子量は725.9であると判断された。この場合の有機物の構造式を、下記に示す。
【0098】
【0099】
以下、この有機物をDCZ-3という。
【0100】
[実施例4]
1,3-ジブロモベンゼンを0.66g用いた以外は実施例3と同様にして、白色固体の有機物を得た。なお、ジカルバゾール、Pd(OAc)2、t-Bu3P及びNaO(t-Bu)は、それぞれ、0.66g、9mg、32.4mg及び0.29gとし、メシチレンは4ミリリットルとした。また、抽出にはクロロホルムを用いた。展開溶媒もクロロホルムを用いた。収量は0.44gであり、収率は59%であった。
【0101】
有機微量元素分析装置による分子中のC、H及びNは、それぞれ、87.73%、4.76%及び7.58%であった。また、NMRによる分析結果は下記のとおりである。
1HNMR(CDCl3,392MHz);δ=5.86-5.87(m,1H)、6.34-6.38(m,3H)、6.50-6.62(m,6H)、6.74-6.78(m,4H)、6.90-7.00(m,6H)、7.19-7.32(m,4H)、7.48-7.60(m,6H),8.18-8.22(m,4H)。
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC54H34N4であり、分子量は738.89であると判断された。この場合の有機物の構造式を、下記に示す。
【0102】
【0103】
以下、この有機物をDCZ-4という。
【0104】
[実施例5]
構造式が下記に示される9-(3,5-ジブロモフェニル)-9H-カルバゾールを1ミリモル用いた以外は実施例1と同様にして、白色固体の有機物を得た。なお、ジカルバゾール、Pd(OAc)2、t-Bu3P及びNaO(t-Bu)は、それぞれ、2ミリモル、0.04ミリモル、0.16ミリモル、3ミリモルとし、メシチレンは5ミリリットルとした。収量は0.81gであり、収率は90%であった。
【0105】
【0106】
有機微量元素分析装置による分子中のC、H及びNは、それぞれ、87.98%、4.69%及び7.65%であった。また、NMRによる分析結果は下記のとおりである。
1HNMR(CDCl3,392MHz);δ=6.09(s,1H)、6.35(dd,J=7.2,7.2Hz,2H)、6.54-6.64(m,6H)、6.74-6.81(m,4H)、6.9(s,2H)、7.00-7.06(m,6H)、7.21-7.29(m,4H)、7.35-7.38(m,8H)、7.56(d,J=7.2Hz,2H)、8.05(d,J=7.2Hz,2H)、8.20-8.23(m,4H)。
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC66H41N5であり、分子量は904.09であると判断された。この場合の有機物の構造式を、下記に示す。
【0107】
【0108】
以下、この有機物をDCZ-6という。
【0109】
[実施例6]
構造式が下記に示されるN,N-ビス(4-ビフェニルイル)-N-(4-ブロモフェニル)アミンを1ミリモル用いた以外は実施例4と同様にして、白色固体の有機物を得た。なお、ジカルバゾール、Pd(OAc)2、t-Bu3P及びNaO(t-Bu)は、それぞれ、1ミリモル、0.02ミリモル、0.08ミリモル、1.5ミリモルとし、メシチレンは4ミリリットルとした。収量は0.46gであり、収率は63%であった。
【0110】
【0111】
有機微量元素分析装置による分子中のC、H及びNは、それぞれ、89.19%、5.20%及び5.56%であった。また、NMRによる分析結果は下記のとおりである。
1HNMR(CDCl3,392MHz);δ=6.30(d,J=8.5Hz,2H)、6.58(d,J=8.5Hz,2H)、6.84(d,J=8.5Hz,4H)、7.04(d,J=8.5Hz,2H)、7.11(d,J=8.5Hz,1H)、7.20-7.24(m,2H)、7.25-7.50(m,16H)、7.59(d,J=7.2Hz,4H)、8.08(d,J=7.6Hz,2H)、8.22(d,J=7.6Hz,1H)、8.32(d,J=7.2Hz,1H)。
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC54H37N3であり、分子量は727.91であると判断された。この場合の有機物の構造式を、下記に示す。
【0112】
【0113】
以下、この有機物をDCZ-9という。
【0114】
[実施例7]
構造式が下記に示される4’-ブロモトリ(4-ビフェニルイル)アミンを用いた以外は実施例5と同様にして、白色固体の有機物を得た。ジカルバゾール、4’-ブロモトリ(4-ビフェニルイル)アミン、Pd(OAc)2、t-Bu3P及びNaO(t-Bu)のモル比は実施例5と同様である。なお、メシチレンは2.5ミリリットルとした。収量は0.72gであり、収率は89%であった。
【0115】
【0116】
有機微量元素分析装置による分子中のH、C及びNは、それぞれ、5.27%、89.67%及び5.43%であった。また、NMRによる分析結果は下記のとおりである。
1HNMR(CDCl3,392MHz);δ=6.51(s,4H)、7.01(d,J=8.1Hz,2H)、7.06-7.23(m,8H)、7.26-7.37(m,8H),7.42-7.63(m,15H)、7.77(d,J=7.6Hz,2H),8.23(d,J=7.2Hz,1H)、8.34(d,J=8.1Hz,1H)。
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC60H41N3であり、分子量は804.01であると判断された。この場合の有機物の構造式を、下記に示す。
【0117】
【0118】
以下、この有機物をDCZ-10という。
【0119】
[実施例8]
構造式が下記に示されるN-(4-ブロモフェニル)-N-(ナフタレン-2-イル)ナフタレン-2-アミンを1ミリモル用いた以外は実施例2と同様にして、白色固体の有機物を得た。なお、エチレンは2.7ミリリットルとした。収量は0.60gであり、収率は88%であった。
【0120】
【0121】
有機微量元素分析装置による分子中のH、C及びNは、それぞれ、89.03%、4.96%及び6.05%であった。また、NMRによる分析結果は下記のとおりである。
1HNMR(CDCl3,392MHz);δ=6.25-6.29(m,2H),6.53-6.57(m,2H)、7.03-7.06(m,4H)、7.10-7.50(m,15H)、7.60-7.63(m,2H)、7.76-7.81(m,4H)、8.12-8.14(m,2H)、8.22-8.24(m,1H)、8.32-8.34(m,1H)。
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC50H35N3であり、分子量は675.84であると判断された。この場合の有機物の構造式を、下記に示す。
【0122】
【0123】
以下、この有機物をDCZ-11という。
【0124】
[実施例9]
構造式が下記に示されるN-(4’-ブロモ-[1、1’-ビフェニル]-4-イル)-N-(ナフタレン-2-イル)-ナフタレン-2-アミンを1ミリモル用いた以外は、メシチレンの量も含めて実施例8と同様にして、白色固体の有機物を得た。収量は0.65gであり、収率は87%であった。
【0125】
【0126】
有機微量元素分析装置による分子中のC、H及びNは、それぞれ、89.54%、5.04%及び5.29%であった。また、NMRによる分析結果は下記のとおりである。
1HNMR(CDCl3,392MHz);δ=6.52-6.53(m,4H)、6.99-7.02(m,2H)、7.08-7.19(m,8H)、7.25-7.58(m,13H)、7.64-7.66(m,2H)、7.77-7.83(m,6H)、8.22-8.24(m,1H)、8.33-8.36(m,1H)。
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC56H37N3であり、分子量は751.93であると判断された。この場合の有機物の構造式を、下記に示す。
【0127】
【0128】
以下、この有機物をDCZ-12という。
【0129】
[実施例10]
臭化アリールとして、構造式が下記に示される9-(4-ブロモフェニル)-3,6-ジフェニル-9H-カルバゾールを、1ミリモルに相当する0.474g用いた以外は、メシチレンの量も含めて実施例9と同様にして、白色固体の有機物を得た。収量は0.52gであり、収率は71%であった。
【0130】
【0131】
有機微量元素分析装置による分子中のC、H及びNは、それぞれ、89.43%、4.98%及び5.87%であった。また、NMRによる分析結果は下記のとおりである。
1HNMR(CDCl3,392MHz);δ=6.78-6.80(m,2H)、6.94-6.96(m,2H)、7.12-7.62(m,19H)、7.71-7.77(m,6H)、7.95-7.97(m,2H)、8.28-8.39(m,4H)。
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC54H35N3であり、分子量は725.9であると判断された。この場合の有機物の構造式を、下記に示す。
【0132】
【0133】
以下、この有機物をDCZ-13という。
【0134】
[実施例11]
構造式が下記に示される9-(4’-ブロモ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-3,6-ジフェニル-9H-カルバゾールを1ミリモル用い、且つエチレンを5ミリリットルとした以外は実施例10と同様にして、白色固体の有機物を得た。収量は0.70gであり、収率は88%であった。
【0135】
【0136】
有機微量元素分析装置による分子中のC、H及びNは、それぞれ、89.93%、4.99%及び5.03%であった。また、NMRによる分析結果は下記のとおりである。
1HNMR(CDCl3,392MHz);δ=6.61-6.66(m,4H)、7.04-7.21(m,4H)、7.31-7.86(m,27H)、8.25-8.44(m,4H)。
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC60H39N3であり、分子量は801.99であると判断された。この場合の有機物の構造式を、下記に示す。
【0137】
【0138】
以下、この有機物をDCZ-14いう。
【0139】
[実施例12]
ジカルバゾール化合物として、構造式が下記に示される3,3’,6,6’-テトラフェニル-9H-1,9’-ビカルバゾールを、1ミリモルに相当する0.64g用いた。
【0140】
【0141】
また、臭化アリールとして、構造式が下記に示される4-ブロモビフェニルを1ミリモルに相当する0.233g用いた。
【0142】
【0143】
その後、エチレンを2.5ミリリットルとした以外は実施例11と同様にして、白色固体の有機物を得た。収量は0.48gであり、収率は61%であった。
【0144】
有機微量元素分析装置による分子中のC、H及びNは、それぞれ、91.19%、5.16%及び3.49%であった。また、NMRによる分析結果は下記のとおりである。
1HNMR(CDCl3,392MHz);δ=6.62-6.67(m,4H)、7.14-7.64(m,27H)、7.73-7.75(m,2H)、7.83-7.85(m,2H)、7.92-7.93(m,1H),8.01-8.02(m,2H)、8.50-8.51(m,1H)、8.65-8.66(m,1H)。
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC60H40N2であり、分子量は788.99であると判断された。この場合の有機物の構造式を、下記に示す。
【0145】
【0146】
以下、この有機物をDCZ-15という。
【0147】
[実施例13]
不活性雰囲気下で、2.5ミリリットルのメシチレンに対し、1ミリモルのフェニル-ジカルバゾールと、1ミリモルの2-(4-ブロモフェニル)ピリジンと、0.02ミリモルのPd(OAc)2と、0.08ミリモルのt-ブロモPと、1.5ミリモルのNaO(t-Bu)とを添加し、混合物を調製した。該混合液を150℃に保持した状態で、4時間撹拌した。混合液に1モル/リットルのHClを添加してクエンチを行い、CHCl3で抽出した。
【0148】
有機層をブラインで洗浄した後、該有機層をMgSO4で乾燥して粗生成物を得た。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。このとき、トルエン/ヘキサンが1:2の割合で混合された混合物を用いた。
【0149】
生成物をトルエン及びEtOHから再結晶化して、白色固体の有機物を得た。収量は0.47gであり、収率は59%であった。該有機物につき、有機微量元素分析装置を用いて分析を行ったところ、分子中のC、H及びNは、それぞれ、89.66%、5.10%及び5.14%であった。また、NMRによる分析結果は、下記のとおりである。
1HNMR(CDCl3,392MHz);6.66-6.69(m,2H)、7.03-7.05(m,2H)、7.13-7.70(m,25H)、7.73-7.75(m,2H)、7.83-7.85(m,2H)、7.94-7.96(m,3H)、8.49-8.50(m,1H)、8.62-8.65(m,2H)。
【0150】
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC59H39N3であり、分子量は790と判断された。この場合の化学反応式を、以下に示す。
【0151】
【0152】
以下、この有機物をDCZ-16という。
【0153】
[実施例14]
不活性雰囲気下で、4ミリリットルのBu2Oに4.1ミリモルのジカルバゾールを添加して撹拌した。その後、Bu2Oに4.1ミリモルのBuMgBrを添加し、混合物を室温で30分間撹拌した。その結果、白色沈殿物の生成が観察された。
【0154】
Bu2Oに2ミリモルの塩化シアヌルをさらに添加し、混合物を130℃で18時間撹拌した。室温にてNH4Cl溶液で反応物をクエンチした後、有機成分をクロロホルムで抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、その後、MgSO4で乾燥した。溶媒を真空中で除去し、粗生成物を得た。
【0155】
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。このとき、トルエン/ヘキサンが1:1の割合で混合された混合物を用いた。これにより、中間体である9,9’-(6-クロロ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-1,9’-ビカルバゾール)を淡黄色固体として得た。以上の化学反応式を、以下に示す。
【0156】
【0157】
また、NMRによる9,9’-(6-クロロ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-1,9’-ビカルバゾール)の分析結果は、下記のとおりである。
1HNMR(392MHz,CDCl3);6.91(s,ブロードピーク,5H)、7.32-7.72(m,15H)、7.76-7.86(m,3H)、7.92-7.99(m,2H)、8.038.17(m,4H)、8.29-8.36(m,1H)。
【0158】
1.05ミリモルの9,9’-(6-クロロ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(9H-1,9’-ビカルバゾール)、1.575ミリモルのフェニルボロン酸、0.021ミリモルのPd(PPh3)4、2.1ミリモルのK2CO3、3ミリリットルのジオキサン、1ミリリットルのトルエン、及び1ミリリットルの水の混合物を調製し、該混合物を、不活性雰囲気下で110℃で8時間撹拌した。
【0159】
反応物を室温にて水でクエンチした後、有機成分をクロロホルムで抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、その後、MgSO4で乾燥した。さらに、溶媒を真空中で除去し、粗生成物を得た。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。このとき、トルエン/ヘキサンが1:1の割合で混合された混合物を用いた。生成物をトルエンから再結晶させ、白色固体の有機物を得た。収量は0.55gであり、収率は67%であった。該有機物につき、有機微量元素分析装置を用いて分析を行ったところ、分子中のC、H及びNは、それぞれ、83.96%、4.41%及び11.94%であった。また、NMRによる分析結果は、下記のとおりである。
1HNMR(392MHz,CDCl3);6.27(s,ブロードピーク,2H)、6.51(s,ブロードピーク,4H)、6.70(s,ブロードピーク,6H)、7.21-7.23(m,2H)、7.30-7.46(m,6H)、7.43-7.50(m,2H)、7.51-7.66(m,5H)、7.79-7.86(m,2H)、7.96(dd,J=7.2,1.7Hz,2H)、8.08-8.15(m,4H)。
【0160】
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC57H35N7であり、分子量は818と判断された。この場合の化学反応式を、以下に示す。
【0161】
【0162】
以下、生成物である有機物をDCZ-17という。
【0163】
[実施例15]
20ミリリットルのメシチレンに5ミリモルの4-ブロモ-N,N-ビス(4-クロロフェニル)アニリン、5ミリモルのジカルバゾール、0.1ミリモルのPd(OAc)2、0.4ミリモルのt-Bu3P、7.5ミリモルのNaO(t-Bu)を添加して混合物を得た。この混合物を、不活性雰囲気下で135℃で5時間撹拌した。
【0164】
反応物を室温にて水でクエンチした後、有機成分を酢酸エチルで抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、その後、MgSO4で乾燥した。溶媒を真空中で除去し、粗生成物を得た。
【0165】
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。このとき、トルエン/ヘキサンが5:1の割合で混合された混合物を用いた。さらに、生成物を80℃でエタノール中で撹拌し、白色沈殿物を得た。この液を冷却した後に濾過した。これにより、中間体であるN-(4-(9H-[1,9’-ビカルバゾール]-9-イル)フェニル)-4-クロロ-N-(4-クロロフェニル)アニリンを白色固体として得た。収量は2.67gであり、収率は79%であった。以上の化学反応式を、以下に示す。
【0166】
【0167】
また、NMRによるN-(4-(9H-[1,9’-ビカルバゾール]-9-イル)フェニル)-4-クロロ-N-(4-クロロフェニル)アニリンの分析結果は、下記のとおりである。
1HNMR(392MHz,DMSO-D6);5.90-6.13(m,2H)、6.66(dt,J=55.6,11.1Hz,5H)、6.86-7.09(m,3H)、7.097.63(m,13H)、8.068.57(m,4H)。
【0168】
8ミリリットルの1-ブタノールに1.5ミリモルのN-(4-(9H-[1,9’-ビカルバゾール]-9-イル)フェニル)-4-クロロ-N-(4-クロロフェニル)アニリン、4.5ミリモルの4-ピリジニルボロン酸、0.03ミリモルPd2(dba)3、0.12ミリモルのXphos、6ミリモルのK3PO4を添加し、混合物を得た。該混合物を、不活性雰囲気下で120℃で24時間撹拌した。
【0169】
反応物を室温にて水でクエンチし、有機成分をクロロホルムで抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、その後、MgSO4で乾燥した。さらに、溶媒を真空中で除去し、粗生成物を得た。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。このとき、2%のトリエチルアミンを含むクロロホルム混合物を用いた。さらに、生成物を80℃で酢酸エチル中で撹拌し、白色沈殿物を得た。この液を冷却した後に濾過した。これにより、白色固体の有機物を得た。収量は700mg、収率は64%であった。該有機物につき、有機微量元素分析装置を用いて分析を行ったところ、分子中のC、H及びNは、それぞれ、81.41%、4.85%及び9.49%であった。また、NMRによる分析結果は、下記のとおりである。
1HNMR(392MHz,CDCl3);6.29-6.37(m,2H)、6.61-6.70(m,2H)、6.92-7.00(m,4H)、7.09(dd,J=18.1,8.0Hz,3H)、7.18-7.60(m,16H)、8.08(d,J=7.6Hz,2H)、8.21-8.28(m,1H)、8.34(dd,J=6.3,2.7Hz,1H)、8.63-8.70(m,4H)。
【0170】
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC52H35N5であり、分子量は730と判断された。この場合の化学反応式を、以下に示す。
【0171】
【0172】
以下、生成物である有機物をDCZ-18という。
【0173】
[実施例16]
4.5ミリリットルのメシチレンに対し、2ミリモルのジカルバゾール、1ミリモルの4,4’-スルホニルビス(ブロモベンゼン)0.04ミリモルのPd(OAc)2、0.16ミリモルのt-Bu3P、3ミリモルのNaO(t-Bu)を添加して混合物を得た。この混合物を、不活性雰囲気下で150℃で6時間撹拌した。
【0174】
反応物を室温にて水でクエンチした後、有機成分をクロロホルムで抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、その後、MgSO4で乾燥した。溶媒を真空中で除去し、粗生成物を得た。
【0175】
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。このとき、ヘキサン/ジクロロメタンが1:1の割合で混合された混合物を用いた。さらに、生成物を110℃でトルエン中で撹拌し、白色沈殿物を得た。この液を冷却した後に濾過し、白色固体の有機物を得た。収量は810mg、収率は92%であった。該有機物につき、有機微量元素分析装置を用いて分析を行ったところ、分子中のC、H及びNは、それぞれ、81.75%、4.35%及び6.29%であった。また、NMRによる分析結果は、下記のとおりである。
1HNMR(392MHz,CDCl3);6.67(s,4H)、7.12-7.30(m,7H)、7.33-7.43(m,5H)、7.40-7.46(m,1H)、7.43-7.49(m,1H)、7.60(dd,J=8.5,1.8Hz,2H)、7.66(dd,J=8.5,1.8Hz,1H)、7.83(dt,J=8.0,2.1Hz,2H)、7.91(d,J=1.8Hz,1H)、8.03(dd,J=6.3,1.8Hz,3H)、8.11(dt,J=8.0,1.8Hz,1H)、8.52(d,J=1.7Hz,1H)、8.57-8.71(m,5H)、8.85(d,J=2.7Hz,2H)、9.01(d,J=2.4Hz,1H)、9.11(d,J=2.3Hz,1H)。
【0176】
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC60H38N4SO2であり、分子量は879と判断された。この場合の化学反応式を、以下に示す。
【0177】
【0178】
以下、生成物である有機物をDCZ-19という。
【0179】
[実施例17]
9-(3-ブロモフェニル)-9H-カルバゾールに代替して1ミリモルの3、3’-ジブロモビフェニルを用いた以外は実施例1と同様にして混合液を調製した。該混合液を、アルゴン雰囲気下で150℃に保持した状態で、4時間撹拌した。混合液に1モル/リットルのHClを添加してクエンチを行い、クロロホルムで抽出した。有機層を水で洗浄した後、該有機層を飽和食塩水で洗浄した。その後、有機物をMgSO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去して、粗生成物を得た。
【0180】
ヘキサン/酢酸エチルの5:1混合液を展開溶媒として粗生成物のシリカゲルカラム精製を行い、白色固体の有機物を得た。収量は0.55gであり、収率は68%であった。
【0181】
得られた有機物についてのNMRによる分析結果は、下記のとおりであった。
1HNMR(DMSO-d6,392MHz);δ=4.67(s,2H)、5.05(t,J=7.3Hz,2H)、5.64(t,J=7.6Hz,2H)、6.59-6.90(m,12H)、7.07-7.23(m,6H)、7.45-7.59(m,10H)、8.55-8.66(m,4H)。
【0182】
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC60H38N4であり、分子量は815であると判断された。
【0183】
この場合の化学反応式を、下記に示す。
【0184】
【0185】
以下、生成物である有機物をDCZ-20という。
【0186】
[実施例18]
2ミリリットルのメシチレンに対し、0.8ミリモルのt-Bu-ジカルバゾール、0.8ミリモルのN,N-ビス(4-ビフェニル)-N-(4-ブロモフェニル)アミン、0.016ミリモルのPd(OAc)2、0.064ミリモルのt-Bu3P、1.2ミリモルのNaO(t-Bu)を添加して混合物を得た。この混合物を、不活性雰囲気下で150℃で4時間撹拌した。
【0187】
反応物を室温にて1モル/リットルのHClでクエンチした後、有機成分をCHCl3で抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、その後、MgSO4で乾燥して粗生成物を得た。
【0188】
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。このとき、CHCl3を用いた。さらに、生成物をトルエン及びEtOHから再結晶化し、淡黄色固体を得た。収量は0.53g、収率は70%であった。該有機物につき、有機微量元素分析装置を用いて分析を行ったところ、分子中のC、H及びNは、それぞれ、88.38%、7.45%及び4.35%であった。また、NMRによる分析結果は、下記のとおりである。
1HNMR(CdCl3,3392MHz);1.37(s,18H)、1.49(s,18H)、6.23(d,J=8.5Hz,2H)、6.51(d,J=8.5Hz,2H)、6.95-7.07(m,8H)、7.29-7.62(m,15H)、8.07(d,J=1.8Hz,2H)、8.07(d,J=1.8Hz,2H)、8.21(d,J=1.8Hz,1H)、8.28(d,J=1.8Hz,1H)。
【0189】
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC70H69N3であり、分子量は925であると判断された。この場合の化学反応式を、下記に示す。
【0190】
【0191】
以下、生成物である有機物をDCZ-21という。
【0192】
[実施例19]
2ミリリットルのメシチレンに対し、0.64ミリモルの9-(4-ブロモフェニル)-9H-1,9’-ビカルバゾール、0.64ミリモルのN,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン、0.013ミリモルのPd(OAc)2、0.051ミリモルのt-Bu3P、0.96ミリモルのNaO(t-Bu)を添加して混合物を得た。この混合物を、不活性雰囲気下で150℃で4時間撹拌した。
【0193】
反応物を室温にて1モル/リットルのHClでクエンチした後、有機成分をCHCl3で抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、その後、MgSO4で乾燥して粗生成物を得た。
【0194】
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。このとき、トルエン/ヘキサンの1:1混合物を用いた。さらに、生成物をEtOHから再結晶化し、白色固体の有機物を得た。収量は0.24g、収率は51%であった。該有機物につき、有機微量元素分析装置を用いて分析を行ったところ、分子中のC、H及びNは、それぞれ、87.48%、5.06%及び7.19%であった。また、NMRによる分析結果は、下記のとおりである。
1HNMR(DMSO-d6,392MHz);5.98(d,J=8.5Hz,2H)、6.49(d,J=8.5Hz,2H)、6.82(d,J=7.2Hz,2H)、6.95-7.05(m,5H)、7.15-7.74(m,19H)、7.89-7.90(m,1H)、8.21-8.26(m,3H)、8.36-8.37(m,1H)、8.49-8.50(m,1H)。
【0195】
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC54H36N4であり、分子量は741であると判断された。この場合の化学反応式を、下記に示す。
【0196】
【0197】
以下、生成物である有機物をDCZ-22という。
【0198】
[実施例20]
2.5ミリリットルのメシチレンに対し、1ミリモルの9-(4-ブロモフェニル)-9H-1,9’-ビカルバゾール、1ミリモルのN,9-ジフェニルカルバゾール-2-アミン、0.02ミリモルのPd(OAc)2、0.08ミリモルのt-Bu3P、1.5ミリモルのNaO(t-Bu)を添加して混合物を得た。この混合物を、不活性雰囲気下で150℃で8時間撹拌した。
【0199】
反応物を室温にて1モル/リットルのHClでクエンチした後、有機成分をCHCl3で抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、その後、MgSO4で乾燥して粗生成物を得た。
【0200】
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。このとき、ヘキサン/酢酸エチルの50:1混合物を用いた。さらに、生成物を酢酸エチル及びEtOHから再結晶化し、白色固体の有機物を得た。収量は0.24g、収率は51%であった。該有機物につき、有機微量元素分析装置を用いて分析を行ったところ、分子中のC、H及びNは、それぞれ、87.40%、5.00%及び7.30%であった。また、NMRによる分析結果は、下記のとおりである。
1HNMR(DMSO-d6,392MHz);6.03-6.05(m,2H)、6.50-6.52(m,2H)、6.73-7.79(m,26H)、8.08-8.09(m,2H)、8.19-8.21(m,2H)、8.36-8.38(m,1H)、8.49-8.52(m,1H)。
【0201】
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC54H36N4であり、分子量は741であると判断された。この場合の化学反応式を、下記に示す。
【0202】
【0203】
以下、生成物である有機物をDCZ-23という。
【0204】
[実施例21]
2.5ミリリットルのメシチレンに対し、1ミリモルの9-(4-ブロモフェニル)-9H-1,9’-ビカルバゾール、1ミリモルのビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミン、0.02ミリモルのPd(OAc)2、0.08ミリモルのt-Bu3P、1.5ミリモルのNaO(t-Bu)を添加して混合物を得た。この混合物を、不活性雰囲気下で150℃で5.5時間撹拌した。
【0205】
反応物を室温にて1モル/リットルのHClでクエンチした後、有機成分をCHCl3で抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、その後、MgSO4で乾燥して粗生成物を得た。
【0206】
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。このとき、ヘキサン/酢酸エチルの50:1混合物を用いた。さらに、生成物をEtOHから再結晶化し、白色固体の有機物を得た。収量は0.38g、収率は47%であった。該有機物につき、有機微量元素分析装置を用いて分析を行ったところ、分子中のC、H及びNは、それぞれ、88.50%、5.70%及び4.98%であった。また、NMRによる分析結果は、下記のとおりである。
1HNMR(DMSO-d6,392MHz);1.31(s,12H)、6.14(d,J=8.5Hz,2H)、6.59(d,J=9.0Hz,2H)、6.70(dd,J=8.1及び2.2Hz,2H)、6.99(d,J=7.6Hz,2H)、7.06-7.08(m,3H)、7.24-7.53(m,14H)、7.81-7.85(m,4H)、8.27(d,J=7.2Hz,2H)、8.38(d,J=7.6Hz,1H)、8.49-8.52(m,1H)。
【0207】
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC60H45N3であり、分子量は808であると判断された。この場合の化学反応式を、下記に示す。
【0208】
【0209】
以下、生成物である有機物をDCZ-24という。
【0210】
[実施例22]
2.5ミリリットルのメシチレンに対し、1ミリモルのジカルバゾール、1ミリモルのN-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-(3-ブロモフェニル)-[1,1’-ビフェニル]-4-アミン、0.02ミリモルのPd(OAc)2、0.08ミリモルのt-Bu3P、1.5ミリモルのNaO(t-Bu)を添加して混合物を得た。この混合物を、不活性雰囲気下で150℃で6時間撹拌した。
【0211】
反応物を室温にて1モル/リットルのHClでクエンチした後、有機成分をCHCl3で抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、その後、MgSO4で乾燥した。
【0212】
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。このとき、ヘキサン/酢酸エチルの25:1混合物を用いた。さらに、生成物をEtOHから再結晶化し、白色固体の有機物を得た。収量は0.60g、収率は82%であった。該有機物につき、有機微量元素分析装置を用いて分析を行ったところ、分子中のC、H及びNは、それぞれ、89.36%、5.14%及び5.43%であった。また、NMRによる分析結果は、下記のとおりである。
1HNMR(DMSO-d6,392MHz);δ6.32-6.38(m,3H),6.50-6.52(m,1H),6.77-6.83(m,4H),7.02-7.04(m,1H),7.14-7.53(m,16H),7.61-7.68(m,8H),8.17-8.22(m,2H),8.34-8.36(m,1H),8.47-8.49(m,1H)。
【0213】
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC54H37N3であり、分子量は728であると判断された。この場合の化学反応式を、下記に示す。
【0214】
【0215】
以下、生成物である有機物をDCZ-25という。
【0216】
[実施例23]
3ミリリットルのメシチレンに対し、1.1ミリモルのジカルバゾール、1.1ミリモルのN-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-(4-ブロモフェニル)ナフタレン-2-アミン、0.022ミリモルのPd(OAc)2、0.088ミリモルのt-Bu3P、1.65ミリモルのNaO(t-Bu)を添加して混合物を得た。この混合物を、不活性雰囲気下で150℃で6時間撹拌した。
【0217】
反応物を室温にて1規定のHClでクエンチした後、有機成分をクロロホルムで抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、その後、MgSO4で乾燥した。さらに、溶媒を真空中で除去して粗生成物を得た。
【0218】
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。このとき、クロロホルムを用いた。さらに、生成物をトルエンから再結晶化し、白色固体の有機物を得た。収量は0.67g、収率は87%であった。該有機物につき、有機微量元素分析装置を用いて分析を行ったところ、分子中のC、H及びNは、それぞれ、89.15%、5.02%及び5.92%であった。また、NMRによる分析結果は、下記のとおりである。
1HNMR(392MHz,CDCl3);6.25-6.32(m,2H)、6.52-6.59(m,2H)、6.81(dd,J=8.3,2.0Hz,1H)、6.91(d,J=8.5Hz,2H)、7.04(d,J=8.3Hz,3H)、7.11(d,J=8.2 Hz,1H)、7.15-7.53(m,15H)、7.58-7.70(m,5H)、8.068.13(m,2H)、8.22(d,J=7.7Hz,1H)、8.32(dd,J=7.2,1.8Hz,1H)。
【0219】
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC52H35N3であり、分子量は702であると判断された。この場合の化学反応式を、下記に示す。
【0220】
【0221】
以下、生成物である有機物をDCZ-26という。
【0222】
[実施例24]
3.5ミリリットルのメシチレンに対し、1.33ミリモルのジカルバゾール、1.33ミリモルのN-(4-ブロモフェニル)-N-フェニルナフタレン-1-アミン、0.0266ミリモルのPd(OAc)2、0.106ミリモルのt-Bu3P、2ミリモルのNaO(t-Bu)を添加して混合物を得た。この混合物を、不活性雰囲気下で150℃で6時間撹拌した。
【0223】
反応物を室温にて1規定のHClでクエンチした後、有機成分をクロロホルムで抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、その後、MgSO4で乾燥した。さらに、溶媒を真空中で除去して粗生成物を得た。
【0224】
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。このとき、クロロホルムを用いた。さらに、生成物をトルエンから再結晶化し、白色固体の有機物を得た。収量は0.78g、収率は94%であった。該有機物につき、有機微量元素分析装置を用いて分析を行ったところ、分子中のC、H及びNは、それぞれ、88.54%、4.98%及び6.88%であった。また、NMRによる分析結果は、下記のとおりである。
1HNMR(392MHz,CDCl3);6.12(d,J=8.6Hz,2H)、6.45(d,J=8.9Hz,2H)、6.76(d,J=7.8Hz,2H)、6.88-6.96(m,1H)、6.96-7.07(m,3H)、7.12-7.56(m,14H)、7.76(dd,J=16.8,8.3Hz,2H)、7.87(d,J=8.1Hz,1H)、8.05(dd,J=7.5,1.2Hz,2H)、8.21(d,J=7.7Hz,1H)、8.31(dd,J=7.4,1.5Hz,1H)。
【0225】
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC46H31N3であり、分子量は626であると判断された。この場合の化学反応式を、下記に示す。
【0226】
【0227】
以下、生成物である有機物をDCZ-27という。
【0228】
[実施例25]
3.5ミリリットルのメシチレンに対し、1.33ミリモルのジカルバゾール、1.33ミリモルのN-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-N-(4-ブロモフェニル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン、0.0266ミリモルのPd(OAc)2、0.106ミリモルのt-Bu3P、2ミリモルのNaO(t-Bu)を添加して混合物を得た。この混合物を、不活性雰囲気下で150℃で6時間撹拌した。
【0229】
反応物を室温にて1規定のHClでクエンチした後、有機成分を酢酸エチルで抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、その後、MgSO4で乾燥した。さらに、溶媒を真空中で除去して粗生成物を得た。
【0230】
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。このとき、ヘキサン/トルエンの2:1混合物を用いた。さらに、生成物を80℃にてエタノール中で撹拌し、白色沈殿物を得た。この液を冷却して濾過し、白色沈殿物(有機物)をエタノールから分離した。収量は990mg、収率は97%であった。該有機物につき、有機微量元素分析装置を用いて分析を行ったところ、分子中のC、H及びNは、それぞれ、89.33%、5.42%及び5.56%であった。また、NMRによる分析結果は、下記のとおりである。
1HNMR(392MHz,CDCl3);1.41(s,6H)、6.26-6.33(m,2H)、6.53-6.60(m,2H)、6.82(dd,J=8.3,2.0Hz,1H)、6.92(d,J=8.5Hz,2H)、7.05(d,J=8.3Hz,3H)、7.12(d,J=8.2Hz,1H)、7.16-7.54(m,16H)、7.59-7.71(m,4H)、8.078.14(m,2H)、8.24(d,J=7.7Hz,1H)、8.33(dd,J=7.2,1.8Hz,1H)。
【0231】
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC57H41N3であり、分子量は768であると判断された。この場合の化学反応式を、下記に示す。
【0232】
【0233】
以下、生成物である有機物をDCZ-28という。
【0234】
[実施例26]
2.5ミリリットルのメシチレンに対し、1ミリモルの9-(4-ブロモフェニル)-9H-1,9’-ビカルバゾール、1ミリモルの5,7-ジヒドロ-5-フェニル-インドロ[2,3-b]カルバゾール、0.02ミリモルのPd(OAc)2、0.08ミリモルのt-Bu3P、1.5ミリモルのNaO(t-Bu)を添加して混合物を得た。この混合物を、不活性雰囲気下で150℃で7時間撹拌した。
【0235】
反応物を室温にて1モル/リットルのHClでクエンチした後、有機成分をCH3Clで抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、その後、MgSO4で乾燥して粗生成物を得た。
【0236】
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。このとき、ヘキサン/酢酸エチルの10:1混合物を用いた。さらに、生成物をEtOHから再結晶させ、白色固体の有機物を得た。収量は0.33g、収率は45%であった。該有機物につき、有機微量元素分析装置を用いて分析を行ったところ、分子中のC、H及びNは、それぞれ、87.64%、4.67%及び7.39%であった。また、NMRによる分析結果は、下記のとおりである。
1HNMR(CDCl3,392MHz);6.73-6.75(m,2H)、6.84-6.86(m,2H)、7.02-7.12(m,7H)、7.22-7.59(m,16H)、7.79-7.81(m,2H)、8.21-8.28(m,3H)、8.35-8.37(m,1H)、8.78(s,1H)。
【0237】
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC54H34N4であり、分子量は739であると判断された。この場合の化学反応式を、下記に示す。
【0238】
【0239】
以下、生成物である有機物をDCZ-29という。
【0240】
[実施例27]
2.5ミリリットルのメシチレンに対し、1ミリモルのジカルバゾール、1ミリモルの2-ブロモ-9,9-ジフェニルフルオレン、0.02ミリモルのPd(OAc)2、0.08ミリモルのt-Bu3P、1.5ミリモルのNaO(t-Bu)を添加して混合物を得た。この混合物を、不活性雰囲気下で150℃で4時間撹拌した。
【0241】
反応物を室温にて1モル/リットルのHClでクエンチした後、有機成分を酢酸エチルで抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、その後、MgSO4で乾燥して粗生成物を得た。
【0242】
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。このとき、ヘキサン/酢酸エチルの10:1混合物を用いた。さらに、生成物をトルエン及びEtOHから再結晶させ、白色固体の有機物を得た。収量は0.55g、収率は85%であった。該有機物につき、有機微量元素分析装置を用いて分析を行ったところ、分子中のC、H及びNは、それぞれ、90.92%、5.02%及び4.47%であった。また、NMRによる分析結果は、下記のとおりである。
1HNMR(DMSO-d6,392MHz);6.48-6.61(m,3H)、6.69-6.94(m,7H)、7.18-7.34(m,13H)、7.46-7.56(m,5H)、7.84(d,J=7.6Hz,1H)、8.12(d,J=7.6Hz,1H)、8.35(d,J=7.6Hz,1H)、8.48-8.50(m,1H)。
【0243】
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC49H32N2であり、分子量は849であると判断された。この場合の化学反応式を、下記に示す。
【0244】
【0245】
以下、生成物である有機物をDCZ-30という。
【0246】
[実施例28]
2ミリリットルのメシチレンに対し、0.75ミリモルのフェニル-ジカルバゾール、0.75ミリモルの2-ブロモ-9,9-ジフェニルフルオレン、0.015ミリモルのPd(OAc)2、0.06ミリモルのt-Bu3P、1.13ミリモルのNaO(t-Bu)を添加して混合物を得た。この混合物を、不活性雰囲気下で150℃で4時間撹拌した。
【0247】
反応物を室温にて1モル/リットルのHClでクエンチした後、有機成分を酢酸エチルで抽出した。抽出物をブラインで洗浄し、その後、MgSO4で乾燥して粗生成物を得た。
【0248】
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。このとき、ヘキサン/酢酸エチルの10:1混合物を用いた。さらに、生成物をトルエン及びEtOHから再結晶させ、白色固体の有機物を得た。収量は0.51g、収率は81%であった。該有機物につき、有機微量元素分析装置を用いて分析を行ったところ、分子中のC、H及びNは、それぞれ、90.99%、5.35%及び3.40%であった。また、NMRによる分析結果は、下記のとおりである。
1HNMR(DMSO-d6,392MHz);0.59(s,3H)、1.16(s,3H)、6.86-6.87(m,1H)、7.00-7.05(m,1H)、7.20-7.94(m,32H)、8.26-8.35(m,2H)、8.92-8.93(m,1H)、9.08-9.09(m,1H)。
【0249】
以上の結果から、得られた有機物の示性式はC63H44N2であり、分子量は829であると判断された。この場合の化学反応式を、下記に示す。
【0250】
【0251】
以下、生成物である有機物をDCZ-31という。
【0252】
[有機物(ジカルバゾリル類化合物)の物性評価]
DCZ-1、DCZ-2、DCZ-3、DCZ-4、DCZ-9、DCZ-10、DCZ-11、DCZ-12、DCZ-13、DCZ-14及びDCZ-15につき、ガラス転移温度(Tg)、HOMO、LUMO、S1、T1、吸収端、蛍光極大波長、量子収率及び酸化電位を求めた。結果を、
図2に一括して示す。上記の化合物のガラス転移温度は、全て100℃以上である。従って、これらの化合物は、有機EL素子の各層の素材として好適である。
【0253】
DCZ-16~DCZ-31についても同様に、ガラス転移温度(Tg)、HOMO、LUMO、S1、T1、吸収端及び酸化電位を求めた。結果を、
図3に一括して示す。DCZ-16~DCZ-31もまた、100℃以上のガラス転移温度を有する。従って、DCZ-16~DCZ-31も、有機EL素子の各層の素材として好適である。
【0254】
図2及び
図3から、各化合物の第一励起三重項状態(T1)のエネルギが高いことが分かる。また、各化合物におけるHOMOエネルギ(EHOMO)及び最低非占有準位エネルギ(ELUMO)は、特に青色発光材料を発光層に含む場合の電荷輸送材として用いるに当たって、適切な範囲内である。
【0255】
[素子の評価その1]
DCZ-9又はDCZ-10をホスト材料として含む発光層を備え、
図1に示される構造を有する有機EL素子をそれぞれ作製した。比較のため、URP又は3,3’-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)-1,1’-ビフェニルをホスト材料として含む発光層を備え、
図1に示される構造を有する有機EL素子をそれぞれ作製した。以下、3,3’-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)-1,1’-ビフェニルをm-CBPと表記する。
【0256】
各有機EL素子に蛍光、燐光又は熱活性化遅延蛍光(TADF)を発光させて寿命を評価した。なお、寿命は、発光強度が初期特性の90%に低下するまでの時間である。結果を、
図4に併せて示す。この
図4から、DCZ-9又はDCZ-10を発光層のホスト材料とする有機EL素子の寿命が、URP又はm-CBPを発光層のホスト材料とする有機EL素子の寿命に比べて優れていることが分かる。
【0257】
また、
図4には特に示していないが、蛍光を発光させた場合では、DCZ-9又はDCZ-10を発光層のホスト材料とする有機EL素子は、URPを発光層のホスト材料とする有機EL素子よりも優れた効率を示した。
【0258】
[素子の評価その2]
正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、電子ブロック層(EBL)及び正孔ブロック層(HBL)を有する9種類の有機EL素子を作製した。以下、9種類の有機EL素子を、それぞれ、評価素子1~評価素子9と表記する。評価素子1~評価素子9におけるHIL、HTL、EBL及びHBLに含まれる有機化合物として、
図5に示す物質を用いた。
図5に示すように、評価素子1~評価素子9においては、HIL、HTL、EBL又はHBLの少なくともいずれかの層にDCZ-9又はDCZ-10が含まれている。
【0259】
なお、評価素子2のHTLと、評価素子5のHILとにそれぞれ含まれているOPDA-10とは、化学構造式が以下のように示される有機化合物である。
【0260】
【0261】
これら評価素子1~評価素子9につき、電圧(V)と、効率と、発光強度が初期特性の90%に低下するまでの時間(寿命)と、発光強度が初期特性の90%に低下するまでの電圧の変化(ΔV)とを評価した。結果を、
図5に併せて示す。
【0262】
比較のため、DCZ-1等の有機化合物を含んだ層を全く有しない2種類の有機EL素子を作製した。以下、2種類の有機EL素子を、それぞれ、対照素子1及び対照素子2と表記する。なお、対照素子1及び対照素子2におけるHIL、HTL、EBL及びHBLに含まれる有機化合物は、
図5に示されている。
【0263】
対照素子1及び対照素子2についても、電圧(V)、効率、寿命及び電圧の変化(ΔV)を評価した。結果を、
図5に併せて示す。
【0264】
図5から、DCZ-9又はDCZ-10を含む層を有する評価素子1~評価素子9が、DCZ-9又はDCZ-10を含む層を有しない対照素子1及び対照素子2よりも優れた寿命を示すことが分かる。また、評価素子1~評価素子9の効率は、対照素子1及び対照素子2と略同等であるか、又は上回っている。以上のように、DCZ-9又はDCZ-10を含む層を有する有機EL素子(評価素子1~評価素子9)は、従来技術に係る有機EL素子(対照素子1及び対照素子2)と同等の効率を示し、且つ優れた寿命を示す。
【符号の説明】
【0265】
10…有機EL素子 12…ガラス基板
14…アノード 16…正孔輸送層
18…発光層 20…電子輸送層
22…カソード