IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和ハウス工業株式会社の特許一覧 ▶ 宇都宮工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-建物保護装置 図1
  • 特許-建物保護装置 図2
  • 特許-建物保護装置 図3
  • 特許-建物保護装置 図4
  • 特許-建物保護装置 図5
  • 特許-建物保護装置 図6
  • 特許-建物保護装置 図7
  • 特許-建物保護装置 図8
  • 特許-建物保護装置 図9
  • 特許-建物保護装置 図10
  • 特許-建物保護装置 図11
  • 特許-建物保護装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】建物保護装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20240229BHJP
   E06B 9/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E06B9/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020033871
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021134628
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596066530
【氏名又は名称】宇都宮工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】町田 眞
(72)【発明者】
【氏名】土井 昌司
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0045243(US,A1)
【文献】特開2015-086657(JP,A)
【文献】特開2006-027874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00- 9/16
E06B 9/00
E06B 5/00 - 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出水が予想されるときに建物を覆って配置され、出水時に前記建物に水圧で密着して前記建物を浸水から保護する保護シートと、
通常時に前記保護シートを巻いた状態で、出水が予想されるときには前記保護シートの中心軸周りに回転させて前記保護シートを繰り出し自在に格納する筐体と、
を備え、
前記筐体が前記建物に隣接して配置され、前記筐体は全高を調整できることを特徴とする建物保護装置。
【請求項2】
前記保護シートは前記中心軸を鉛直方向に略平行にした状態で、前記筐体に支持されることを特徴とする請求項1に記載の建物保護装置。
【請求項3】
前記筐体は円筒状の芯材に巻かれた状態の前記保護シートを回転自在に支持することを特徴とする請求項1または2に記載の建物保護装置。
【請求項4】
前記筐体は、本体と扉を含み、
前記本体は前記保護シートを格納する上下方向に長い四角柱形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の建物保護装置。
【請求項5】
前記筐体は、脚を介して犬走り上に配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の建物保護装置。
【請求項6】
前記保護シートは巻いた状態で支持盤の上面に載置されており、前記支持盤の下面にはベアリングが配置されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の建物保護装置。
【請求項7】
前記筐体は前記建物に隣接して複数配置され、
各筐体から繰り出された保護シート同士が貼り合わせられて、前記建物を覆って配置されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の建物保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、河川の氾濫等により出水が発生したとき、建物を浸水から保護するための建物保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、出水が予想されるときに建物を覆って配置され、出水時に建物に水圧で密着して建物を浸水から保護するための保護シートが提案されている(特許文献1参照)。この保護シートは、通常時に芯材に巻かれた状態であり、出水が予想されるときに保護シートを繰り出して建物を覆って配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-151853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、出水が予想されるときに保護シートを繰り出して使用するとしても、保護シートは全長が例えば100m以上にもなるため、繰り出して建物を覆って配置する作業が困難になる。
本発明の目的は、出水が予想されるときに保護シートを容易に繰り出して使用することができる建物保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、建物保護装置であって、出水が予想されるときに建物を覆って配置され、出水時に前記建物に水圧で密着して前記建物を浸水から保護する保護シートと、通常時に前記保護シートを巻いた状態で、出水が予想されるときには前記保護シートの中心軸周りに回転させて前記保護シートを繰り出し自在に格納する筐体と、を備え、前記筐体が前記建物に隣接して配置され、前記筐体は全高を調整できることを特徴とする。
【0006】
本発明は、上記建物保護装置において、前記保護シートは前記中心軸を鉛直方向に略平行にした状態で、前記筐体に支持されることを特徴とする。
【0007】
本発明は、上記建物保護装置において、前記筐体は円筒状の芯材に巻かれた状態の前記保護シートを回転自在に支持することを特徴とする。
【0008】
本発明は、上記建物保護装置において、前記筐体は、本体と扉を含み、前記本体は前記保護シートを格納する上下方向に長い四角柱形状に形成されている。
【0009】
本発明は、上記建物保護装置において、前記筐体は、脚を介して犬走り上に配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明は、上記建物保護装置において、前記保護シートは巻いた状態で支持盤の上面に載置されており、前記支持盤の下面にはベアリングが配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、上記建物保護装置において、前記筐体は全高を調整できることを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記建物保護装置において、前記筐体は前記建物に隣接して複数配置され、各筐体から繰り出された保護シート同士が貼り合わせられて、前記建物を覆って配置される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、出水が予想されるときに保護シートを容易に繰り出して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】建物を示す斜視図である。
図2】保護シートを取り付けた建物を示す斜視図である。
図3】建物の1階部分の外周形状を示す平面図である。
図4】筐体を示す斜視図である。
図5】(a),(b)は筐体の別実施形態を示す正面図である。
図6】保護シートを取り付けた状態を示す建物の側面断面図である。
図7】出水時の保護シートの状態を示す建物の側面断面図である。
図8】(a),(b)は吊り具の別実施形態を示す図である。
図9】溝部の構成を示す断面図である。
図10】(a),(b)は出水時の溝部の状態を示す断面図である。
図11】(a),(b)は溝部の別実施形態を示す断面図である。
図12】(a),(b)は溝部の別実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
<全体の構成>
図1において、1は建物を示す。建物1は建物の一例を示すものであり、例えば、居住用の家屋である。建物1は基礎2と、基礎2上に立設される図示しない骨組と、骨組みに取り付けられて建物1の外側部分を形成する外壁4と、を備える。なお、骨組みは、柱、梁などにより構成され、骨組み上には図示しない屋根が設けられる。
建物1の外周部には、コンクリート製の犬走り3が敷設される。犬走り3はコンクリート製に限らず、砂利を敷き詰めたものもある。犬走り3は基礎2の外周に沿って形成される。
【0016】
建物1の1階部分には、玄関5、窓4aが設けられている。玄関5は階段5bに接続して設けられたアプローチ部5cの奥に、外壁4より内側に入り込んだ形で設けられている。窓4aは建物1の骨組みに取り付けられた窓枠にガラスなどをはめ込んで設けられる。
また、外壁4の外側に、エアコンの室外機6が配置される。室外機6は外壁4を通る配管によって図示しないエアコンの室内機に接続される。室外機6は外壁4から所定の距離をおいて配置される。
【0017】
建物1には、建物保護装置8が設けられる。
建物保護装置8は、図2に示すように、洪水などで、出水が予想されるときに建物1を覆って配置され、出水時に建物1に水圧で密着して建物1を浸水から保護する保護シート11と、保護シート11の上縁部と建物1とを連結して、建物1に保護シート11を吊下げる吊り具12とを備える。
【0018】
保護シート11は樹脂製の膜により構成される。保護シート11は、防水性を備え、破れにくいものが用いられる。例えば、厚みが150μmから300μmのエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(以下、EVA樹脂)の膜を用いることができる。特に、EVA樹脂は伸長性があり、EVA樹脂の膜が水圧を受けた場合、EVA樹脂の膜が伸びて建物1の形状に沿うことで、建物1で水圧が受け止められる。
【0019】
建物保護装置8は筐体10を含む。筐体10は保護シート11を格納し、図3に示すように、建物1の平面視において外壁4が外側に凸に形成された部分である隅部4bに隣接して配置される。また、筐体10は犬走り3の上に固定される。
【0020】
建物1の外壁4には、図2に示すように、取付具7が設けられる。取付具7は、出水時に保護シート11を取り付けるためのものである。取付具7は、保護シート11の上縁部111を外壁4に沿って配置するために地面から所定の高さに設けられており、建物1の周囲に渡り、所定間隔を開けて設けられている。保護シート11の下縁部112は、建物1の外周部の外側に設けた溝部9に取り付けられ、止水されている。
【0021】
建物1を保護シート11で覆う場合、玄関5には入口カバー5aが配置される。これによって、出水時に保護シート11がアプローチ部5cから玄関5に入り込み難くしている。室外機6は室外機カバー6aで覆われる。室外機6を室外機カバー6aで覆うことによって、出水時に室外機6に水圧がかかることが抑制され、室外機6にかかる負荷を抑制できる。さらに、窓4aと保護シート11との間には、窓4aを補強する板が配置される。これにより、窓4aを保護してもよい。
【0022】
また、筐体10は建物1に隣接して複数配置されてもよい。複数の筐体10を配置して各々の筐体10に保護シート11を格納してもよい。この場合、各筐体10から繰り出された保護シート11同士が貼り合わせられて、建物1を覆って配置される。各々の筐体10は、建物1の各隅部4bに配置することができる。筐体10を各隅部4bに配置することによって、繰り出された保護シート11が隅部4bを通る際に損傷する可能性を低減できる。また、各筐体10に格納される保護シート11の長さを短くすることができ、1つの筐体10から保護シート11を繰り出す労力を軽減することがきる。
【0023】
<筐体の構成>
図4に示すように、筐体10は、下端部が防錆可能な程度の高さとなるように犬走り3上に配置される。出水が予想されない通常時に、筐体10には、保護シート11が円筒状の芯材110aにロール状に巻かれた状態で格納される。保護シート11は、筐体10から外に繰り出し自在に設けられている。110は、保護シート11が巻かれた状態の保護シートロールである。なお、芯材110aは「中心軸」の一例に対応する。
筐体10は、本体101、扉102を含み、さらに、上支持部材103、及び下支持部材104を備える。本体101は、保護シートロール110を格納する上下方向に長い四角柱形状に形成されている。本体101は中空に形成されている。本体101は4つの脚10cを介して、犬走り3上に配置されている。本体101の側部には開口101aが形成され、開口101aには扉102が開閉自在に設けられている。扉102の裏面には、後述する吊り具12や、チューブ14や、取扱説明書15などが配置されている。
【0024】
上支持部材103は、筐体10の天面に下向きに取り付けられ、保護シートロール110の芯材110aに挿入される。これによって、上支持部材103は、格納された保護シートロール110の上端部を回転自在に支持する。上支持部材103は、上端部を中心に下端部が所定角の範囲で回動可能である。
【0025】
下支持部材104は、保護シートロール110の下端部を回転自在に支持する。下支持部材104は本体101の内側の底面上に設けられる。下支持部材104は円盤状の支持盤104bと、支持盤104bの上面の中心に支持軸104aと、を備える。支持盤104bと本体101との間には、図示しないベアリングが配置されている。保護シートロール110は、上端に上支持部材103が挿入され、下端に支持軸104aが挿入された状態で、支持盤104b上に容易に回転可能に載置される。平面視において、支持軸104aの回転中心が上支持部材103と略一致するため、保護シートロール110が中心軸を鉛直方向に略平行にした状態で、筐体10に支持される。なお、ベアリングとしては、転がり軸受、滑り軸受等を用いることができる。
【0026】
保護シートロール110を筐体10に格納する場合、扉102を開け、開口101aから挿入される。まず、芯材110aの下端に支持軸104aを挿入し、保護シートロール110を斜めに維持して、上支持部材103を押し退けて筐体10内に押し込むと、上支持部材103が芯材110aに挿入される。
保護シートロール110は芯材110aの周りを回転自在であり、保護シート11は筐体10から繰り出し自在となる。なお、保護シートロール110の支持部材は、上記のものに限定されず、保護シート11を繰り出し自在とするものであればよい。
保護シートロール110に芯材110aを用いずに、保護シート11を巻いて中心に中空の部分を持つ筒状に形成している場合には、保護シートロール110の中空の部分が保護シートロール110の中心軸となる。上支持部材103及び支持軸104aは保護シートロール110の中空の部分に挿入される。
【0027】
<筐体の別実施形態>
図5は、筐体の別実施形態を示す。
図5(a),(b)に示すように、筐体200は全高を2段階に調整できる。洪水などで、出水が予想されるとき、浸水高さは未然に予測できる。大量の出水が予想されるとき、図5(a)に示すように、保護シート11は高さを高くする必要があり、少ない出水量の予想であれば、図5(b)に示すように、保護シート11は高さが低くてよい。
【0028】
筐体200は、上部箱体201と、下部箱体202とを備える。上部箱体201は上面201aに下方に延出された上部支持部材211を備える。下部箱体202は下面202aに上方に延出された下部支持部材210を備える。下部箱体202は脚202cにより犬走り3の上に支持されている。上部箱体201は内面を、下部箱体202の外面に接触させた状態で、下部箱体202に装着される。
【0029】
筐体200の全高を高くするとき、図5(a)に示すように、上部箱体201を上方に引き上げ、上部箱体201の穴と、下部箱体202の穴とが一致する締結部203に、ネジなどの締結部材を挿入して、上部箱体201と下部箱体202を固定する。筐体200の全高を低くするときには、図5(b)に示すように、上部箱体201を下方に引き下げ、上部箱体201の穴と、下部箱体202の穴とが一致する締結部204に、ネジなどの締結部材を挿入して、上部箱体201と下部箱体202を固定する。
【0030】
この実施形態では、大量の出水が予想されるとき、筐体200の全高を高くして、高さの高い保護シートロール110を格納して準備し、少ない出水量の予想であれば、筐体200の全高を低くして、高さの低い保護シートロール110を格納して準備することができる。いずれの高さの保護シートロール110であっても、筐体200に繰り出し自在に格納できるので、保護シート11の繰り出し作業が容易になる。
【0031】
<吊り具の構成>
図6図7を参照して、吊り具12を説明する。
吊り具12は、図6図7に示すように、建物1の外壁4の取付具7に引掛けられる係合部23と、伸長部21と、伸長部21の下端に設けられた支持部材22とを備える。伸長部21は伸縮性がある部材であり、荷重に応じて伸長される。伸長部21としては、例えば、伸縮性がある材質で構成された丸紐状や平紐状のゴム紐、ゴムベルトや、形状により伸縮性があるツル巻バネ等を用いることができる。
【0032】
支持部材22は、保護シート11の上縁部111を押圧状態で挟んで支持する。支持部材22は、上部に把持部22a、把持部22b、中央部に回動軸22c、下部に一対の挟持部22d、22d、及び図示しない付勢部材を備える。付勢部材は、例えば、回動軸22cを挿嵌して端部で把持部22a、22b各々を付勢するツル巻きバネを用いることができる。伸長部21の下端は把持部22bに取り付けられる。
挟持部22d、22d間に保護シート11が挟まれて支持される。挟持部22dは保護シート11を付勢部材により、所定の力で挟むものであり、保護シート11に過剰な荷重がかかる場合には、挟持部22dと保護シート11とがずれて、挟持部22dに挟まれる保護シート11に局所的に過剰な力がかかることを抑制できる。なお、出水時に、挟持部22dと保護シート11とがずれた場合、伸長部21の伸び量は、そのずれた寸法の分だけ減少することは言うまでもない。
【0033】
挟持部22d、22dには、緩やかな湾曲形状の支持面22eが形成される。したがって、挟持部22d、22d間で保護シート11を挟持することによって、挟持部22d、22dは保護シート11と面状に接触する。挟持部22dとしては、支持面22eをゴム等の保護シート11との摩擦が大きい材質により形成してもよい。
また、支持面22eを平坦な面に形成して、保護シート11との接触面積を大きくして、保護シート11を支持してもよい。これにより、吊り具12を用いて、保護シート11を容易に支持できる。また、保護シート11への支持部材22の取り付け作業を、容易に行える。保護シート11の上縁部111に加工を施すことなく、保護シート11を支持できる。このため、上縁部111に加工を施す場合と比べて、保護シートロール110の外径を小さくできる。
【0034】
係合部23は一端をフック形状に構成されており、他端は伸長部21の上端に取り付けられている。係合部23のフック形状の一端が取付具7の孔7aに挿入される。吊り具12が建物1に連結され、支持部材22が上縁部111を挟んで支持することによって、建物1に保護シート11が吊下げられる。
【0035】
<吊り具の別実施形態>
図8を参照して、吊り具の別実施形態を説明する。
図8(a)に示すように、吊り具12bは一対のダブル構造である。一対の吊り具12bは、図8(b)に示すように、それぞれが、伸長部31と、伸長部31の下端に設けられた支持部材33と、伸長部31と支持部材33とを繋ぐ取付フック部材32と、チューブ34とを備える。伸長部31はゴム部材をリング状に形成したものであり、建物1に取り付けられた、フック形状の取付具7bに引掛けられる。
【0036】
支持部材33は、プレートを屈曲させて、中央部に直線状の溝部33aを形成している。溝部33aにはチューブ34が、チューブ34と溝部33aの間に保護シート11の上縁部111を挟んだ状態で、押し込まれる。溝部33aに押し込まれたチューブ34は弾性変形した状態で押し込まれており、上縁部111を支持部材33に押し付ける。保護シート11が吊り具12bに取り付けられ、吊り具12bが取付具7bに掛けられることによって、保護シート11が建物1に吊下げられる。
【0037】
別実施形態では、支持部材33と、保護シート11の上縁部111との結合が、上縁部111の上からチューブ34を押し込むだけであるため、作業性がよくなり、連結作業の簡易化を図ることができる。
【0038】
<建物を囲む溝部の構成>
図6図8に示すように、建物1の犬走り3の外側の地面GLには、犬走り3の外縁に沿って、建物1を囲むように溝部9が設けられ、溝部9には、保護シート11の下縁部112が取り付けられる。
【0039】
図9図10に示すように、溝部9は、犬走り3よりも一段低い位置に設けられる。溝部9は、延出方向と直交する断面において断面形状が略U字状に形成され、内側に略鉛直に形成された溝壁91、92を備える。溝壁91、92は互いに平行に形成される。保護シート11の下縁部112は、チューブ14により溝部9に取り付けられる。
チューブ14はゴムなどの弾性部材により構成されるとともに、チューブ14の外径は溝壁91、92間の距離よりも若干大きく形成されている。
【0040】
保護シート11の下縁部112を、溝部9に取り付ける場合、溝部9内に下縁部112が入れられる。下縁部112は対向する溝壁91、92を覆って配置された状態で、下縁部112の上からチューブ14が溝部9にはめ込まれる。
チューブ14は復元力により溝壁91、92の各々に下縁部112を押圧する。これにより、下縁部112が溝部9に取り付けられる。チューブ14の外周には、チューブ14の延出方向に沿って溝が形成されており、チューブ14と保護シート11との間の摩擦力が大きくなるように構成されている。
【0041】
<溝部の別実施形態>
図11図12を参照して、溝部の別実施形態を説明する。
図11(a)に示すように、犬走り3の上面3aに溝部9aを設けて、溝部9aに保護シート11の下縁部112を取り付けてもよい。これにより、溝部9aの付設が容易であり、溝部9aに砂や泥などが入ることを抑制できる。
図11(b)に示すように、犬走り3の外周部の地面GLから立ち上がる垂直面3bに溝部9bを設けて、溝部9に保護シート11の下縁部112を取り付けてもよい。これにより、溝部9bに砂や泥など溜まることを抑制できる。
【0042】
図12(a)に示すように、一枚の板体9cを折り曲げて、略U字状に曲げた部分に溝部9を形成してもよい。溝部9が地面GLに敷設される場合に、板体9cが地面GLに沿うように敷設される。溝部9の両側に板体9cを設けることによって、敷設時の溝部9の接地する面積が大きくなり、溝部9の地面に対する沈み込みを抑制することができ、溝部9の形状が維持される。
図12(b)に示すように、溝部9の溝壁に弾性体9eを取り付けてもよい。弾性体9eは溝部9の内側の溝壁に沿って取り付けられており、弾性体9eにより保護シート11を取り付ける溝が形成される。保護シート11を取り付ける場合に、弾性体9eとチューブ14とが変形するため、保護シート11を容易に取り付けることができる。弾性体9eとしては、ゴムや、発泡ゴムなどを用いてもよい。
【0043】
<実施形態の作用>
保護シート11は、出水が予想されるときに、図1図3に示すように、筐体10から繰り出されて建物1を覆って配置される。繰り出す場合には、図4に示すように、筐体10の扉102が開かれ、開口101aを通して、保護シート11の一端が本体101の外側に取り出される。建物1を覆って配置した後に、図3に示すように、建物1の外周を巻く方向において、保護シート11の端部11cと端部11dとが重ねられ、端部11cと端部11dとが、例えば、防水テープなどを用いて、貼り合わせられる。
この際、図4に示すように、保護シートロール110の荷重は支持盤104bに支持されており、支持盤104bが回転自在に設けられるため、保護シート11の取り出しによって保護シートロール110が回転する。これにより、保護シート11を本体101から容易に繰り出すことができる。
保護シート11は、図6に示すように、上縁部111が吊り具12に支持されて、下縁部112が溝部9に取り付けられる。
【0044】
出水時に浸水が進むと、建物1の外周の低い部分で浸水が始まる。すなわち、図10(a)に示すように、犬走り3の上面3aよりも一段低く設けられた溝部9の内部への浸水が始まる。図10(a)において、11aは保護シート11の表面であり、11bは同裏面である。溝部9と裏面11bの間は、溝壁91、92とチューブ14によって閉じられる。このため、溝部9に流入した水は保護シート11と建物1の間に流入することが抑制される。水位が上がるにつれて、図10(b)に示すように、保護シート11が、水圧により溝壁92と犬走り3の端面とに段違いで押し付けられる。
段違いで押し付けられるため、保護シート11の下縁部112が、溝壁92と犬走り3の端面とに密着し、止水性が向上する。
【0045】
水位の上昇にともなって、図7に示すように、保護シート11が、下縁部112から建物1に押し付けられる。これによって、保護シート11の裏面11bと建物1の外壁4の壁面とが密着して、建物1への浸水が抑制される。
【0046】
保護シート11は、図6に示すように、たるんだ状態で建物1の外壁4に吊下げられているため、水位の上昇の過程では、保護シート11の下側から上側に向けて徐々に密着していく。したがって、水位の上昇過程で、保護シート11が建物1に密着することによって、保護シート11の上縁部111の沈み込みが発生する。
【0047】
本実施形態では、図7に示すように、吊り具12の伸長部21が、保護シート11が沈み込む寸法分dLを伸長する構成となっている。
したがって、吊り具12の伸長部21の伸長により、吊り具12と連結される建物1の取付具7に過度の荷重がかかることが抑制される。
これにより、建物1に密着する保護シート11の挙動が阻害されず、保護シート11が隙間なく建物1に密着しやすくなる。また、保護シート11が建物1に密着することによって、水圧を建物1が支えるため、保護シート11に過度の荷重がかかることを抑制して、保護シート11が破れることを抑制できる。
【0048】
以上説明したように、本発明の実施形態においては、出水が予想されるときに建物1を覆って配置され、出水時に建物1に水圧で密着して建物1を浸水から保護する保護シート11と、通常時に保護シート11を巻いた状態で、出水が予想されるときには保護シート11の中心軸である芯材110aの周りに回転させて保護シート11を繰り出し自在に格納する筐体10と、を備え、筐体10が建物1に隣接して配置される。
これによれば、出水が予想されるときに保護シート11を容易に繰り出して使用することができる。また、筐体10が建物1に隣接して配置されるため、保護シート11を建物1に取り付ける作業にかかる時間を低減することができる。
【0049】
本発明の実施形態においては、保護シート11は芯材110aを鉛直方向に略平行にした状態で、筐体10に支持される。
これによれば、筐体10から保護シート11を略水平方向に繰り出して、保護シート11によって建物1の周囲を容易に覆うことができる。
【0050】
本発明の実施形態においては、筐体10は円筒状の芯材110aに巻かれた状態の保護シート11を回転自在に支持する。
これによれば、筐体10から保護シート11を繰り出す場合に、筐体10により芯材110aを支持することで、保護シート11にかかる負荷を低減することができる。
保護シート11が芯材110aに巻かれることにより、保護シート11が巻かれた状態から型崩れすることを抑制することができる。
【0051】
本発明の実施形態においては、筐体10は、本体101と扉102を含み、本体101は保護シート11を格納する上下方向に長い四角柱形状に形成されている。
これによれば、筐体10の設置に必要となる面積を少なくすることができる。
【0052】
本発明の実施形態においては、筐体10は、脚10cを介して犬走り3上に配置されている。これによれば、筐体10が雨水に浸り劣化する可能性を低減できる。筐体10内への水の侵入を抑制することができ、筐体10に格納される保護シート11が劣化することを抑制することができる。
【0053】
本発明の実施形態においては、保護シート11は巻いた状態で支持盤104bの上面に載置されており、支持盤104bの下面にはベアリングが配置されている。
これによれば、巻かれた状態の保護シート11を容易に回転させて、保護シート11を筐体10から容易に繰り出すことができる。
【0054】
本発明の実施形態においては、筐体200は全高を調整できる。
これによれば、大量の出水が予想されるとき、筐体200の全高を高くして、高さの高い保護シートロール110を格納して準備し、少ない出水量の予想であれば、筐体200の全高を低くして、高さの低い保護シートロール110を格納して準備することができる。いずれの高さの保護シートロール110であっても、筐体200に繰り出し自在に格納できるので、保護シート11の繰り出し作業が容易になる。
【0055】
本発明の実施形態においては、筐体10は建物1に隣接して複数配置され、各筐体10から繰り出された保護シート11同士が貼り合わせられて、建物1を覆って配置される。
これによれば、各筐体10に格納される保護シート11の長さを短くすることができ、1つの筐体10から保護シート11を繰り出す労力を軽減することがきる。
【0056】
上述の各実施形態は、本発明の一実施の態様であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
例えば、建物1が傾斜地に建っている場合には、建物1の周囲を保護シート11で囲む必要はなく、建物1の低い部分を覆うように保護シート11を配置してもよい。
また、上述の実施形態において、建物1の1階部分を覆う構成を示したが、建物1の2階部分に保護シート11を吊下げ、建物1の1階部分と2階部分を保護してもよい。
【0057】
また、上述の実施形態において、溝部9に蓋を取り付けて、溝部9内への砂などの侵入を抑制してもよい。
また、保護シート11の上縁部111を支持する支持部材22の構造としては、ペーパークリップなどの公知の構造を用いることができる。
また、溝部9にはめ込まれるチューブ14は、一連のものとして収納し易くしたり、一定の長さに分割して持ち運び易くしたりしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 建物
3 犬走り
8 建物保護装置
10,200 筐体
11 保護シート
101 本体
102 扉
104b 支持盤
110a 芯材(中心軸)
110 保護シートロール(保護シートを巻いた状態)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12