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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】車両の無線認証システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/24 20130101AFI20240229BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20240229BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20240229BHJP
   B60R 25/01 20130101ALI20240229BHJP
   B60R 25/022 20130101ALI20240229BHJP
【FI】
B60R25/24
E05B49/00 J
F02D29/02 321Z
B60R25/01
B60R25/022
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020087544
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021181270
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】橋本 茂喜
(72)【発明者】
【氏名】川上 博之
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-103651(JP,A)
【文献】特開2013-083096(JP,A)
【文献】特開2019-127761(JP,A)
【文献】特開2005-262915(JP,A)
【文献】特開2012-175518(JP,A)
【文献】特開2003-003710(JP,A)
【文献】特開2015-048609(JP,A)
【文献】特開2017-203314(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0024427(US,A1)
【文献】特開2013-164726(JP,A)
【文献】特開2014-136948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/24
E05B 77/00 - 85/28
E05B 49/00 - 49/04
F02D 29/00 - 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭乗者が携帯可能とされ、車両固有の認証コードに関わる信号を無線で送受信可能な携帯機側アンテナを有する携帯機と、
車両に搭載され、前記携帯機の携帯機側アンテナとの間で前記信号を無線で送受信可能な車両側アンテナを有する車載ユニットと、
前記車両側アンテナで受信した前記認証コードが正規の認証コードか否か判定し得る判定手段と、
前記判定手段により前記認証コードが正規の認証コードであると判定された場合に、車両の走行を規制するロック手段によるロックを解除し得るロック制御手段と、
を具備した車両の無線認証システムであって
前記携帯機側アンテナと車両側アンテナとの間の送信及び受信がそれぞれRF波のみにて行われるものとされ、
前記携帯機は、
内蔵された電池と、
前記電池からの電力供給により前記携帯機側アンテナによる前記車両側アンテナとの間の送受信を制御する通信制御部と、
操作により前記電池から前記通信制御部に電力供給させて前記携帯機側アンテナによる前記車両側アンテナとの間の送受信を可能とする操作部と、
を具備し、車両の駆動源が停止した状態で前記電池から前記通信制御部に対する電力供給が行われずオフ状態とされるとともに、前記操作部が操作されたことを条件として、前記通信制御部に電力供給し、且つ、前記携帯機側アンテナから始動信号を送信することにより、前記携帯機側アンテナによる前記車両側アンテナとの間の送受信を可能な状態とするとともに、車両の駆動源を停止させる操作を条件として、前記車両側アンテナから前記携帯機側アンテナに停止信号を送信し、前記通信制御部に対する電力供給を停止してオフ状態とすることを特徴とする車両の無線認証システム。
【請求項2】
前記ロック手段は、車両のイグニッションスイッチの操作をロックするためのアクチュエータから成ることを特徴とする請求項1記載の車両の無線認証システム
【請求項3】
前記ロック手段は、車両のステアリングロックの操作をロックするためのアクチュエータから成ることを特徴とする請求項1記載の車両の無線認証システム
【請求項4】
前記車載ユニットは、前記携帯機にアクセス信号を送信可能なアクセススイッチを有するとともに、前記車両側アンテナが前記始動信号を受信し、且つ、前記アクセススイッチが操作されたことを条件として、前記認証コードに関わる信号を送受信して前記判定手段による判定が行われることを特徴とする請求項記載の車両の無線認証システム。
【請求項5】
前記操作部が操作されて前記携帯機側アンテナから前記始動信号が送信された後、前記車載ユニットに対する操作が行われず自動的に、当該携帯機側アンテナと車両側アンテナとの間で前記認証コードに関わる信号を送受信して前記判定手段による判定が行われることを特徴とする請求項記載の車両の無線認証システム。
【請求項6】
前記操作部が操作されて前記車両側アンテナが前記始動信号を受信したことを条件として、車両が具備するフラッシャランプを点滅させることを特徴とする請求項~5の何れか1つに記載の車両の無線認証システム。
【請求項7】
前記車両側アンテナは、前記携帯機側アンテナに信号を送信する第1車両側アンテナと、前記携帯機側アンテナから信号を受信する第2車両側アンテナとを有して構成され、前記第2車両側アンテナの方が前記第1車両側アンテナより大きく形成されて感度が大きく設定されたことを特徴とする請求項1~6の何れか1つに記載の車両の無線認証システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認証コードが正規の認証コードであると判定された場合に、車両の走行を規制するロック手段によるロックを解除し得る車両の無線認証システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
搭乗者が携帯するとともに車両固有の認証コードを電波にて送信し得る携帯機と、認証コードが正規の認証コードか否か判定し得る判定手段とを具備し、携帯機から無線送信された認証コードが正規の認証コードである場合に限り、車両の各種ロックの解除、及び駆動源の始動を許可し得る車両の無線認証システム(所謂、スマートキーシステム)が普及している。このような車両の無線認証システムは、車両側に配設されたアクセスボタンを押圧操作すると、アクセス信号が低周波(LF波)にて無線送信され、そのアクセス信号を受信した携帯機が高周波(RF波)にて認証コードを無線送信するとともに、当該認証コードが車両側にて受信されると、当該認証コードが正規の認証コードであるか否か判定し得るよう構成されている。
【0003】
従来、例えばイグニッションスイッチの操作をロックし得るロック手段を具備するとともに、判定手段により正規の認証コードであると判定された場合、当該ロック手段によるロックを解除することができるものが提案されている(特許文献1参照)。かかるロック手段は、ソレノイドから成り、判定手段により認証コードが正規の認証コードであると判定されることを条件として通電され、プランジャが作動することによりロックが解除される。そして、ロックが解除されると、イグニッションスイッチを操作可能とされるので、ステアリングロックの解除や車両のエンジン始動を可能とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-153259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の車両の無線認証システムにおいては、車両側に配設されたアクセスボタンを押圧操作することによりアクセス信号が低周波(LF波)にて無線送信され、そのアクセス信号を携帯機が受信して認証コードを送信するので、LF波を送受信するための高価なアンテナが必要とされ、システムの製造コストが嵩んでしまうという不具合があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、LF波を送受信するための高価なアンテナを不要としてシステムの製造コストを低減させることができる車両の無線認証システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、搭乗者が携帯可能とされ、車両固有の認証コードに関わる信号を無線で送受信可能な携帯機側アンテナを有する携帯機と、車両に搭載され、前記携帯機の携帯機側アンテナとの間で前記信号を無線で送受信可能な車両側アンテナを有する車載ユニットと、前記車両側アンテナで受信した前記認証コードが正規の認証コードか否か判定し得る判定手段と、前記判定手段により前記認証コードが正規の認証コードであると判定された場合に、車両の走行を規制するロック手段によるロックを解除し得るロック制御手段とを具備した車両の無線認証システムであって、前記携帯機側アンテナと車両側アンテナとの間の送信及び受信がそれぞれRF波のみにて行われるものとされ、前記携帯機は、内蔵された電池と、前記電池からの電力供給により前記携帯機側アンテナによる前記車両側アンテナとの間の送受信を制御する通信制御部と、操作により前記電池から前記通信制御部に電力供給させて前記携帯機側アンテナによる前記車両側アンテナとの間の送受信を可能とする操作部とを具備し、車両の駆動源が停止した状態で前記電池から前記通信制御部に対する電力供給が行われずオフ状態とされるとともに、前記操作部が操作されたことを条件として、前記通信制御部に電力供給し、且つ、前記携帯機側アンテナから始動信号を送信することにより、前記携帯機側アンテナによる前記車両側アンテナとの間の送受信を可能な状態とするとともに、車両の駆動源を停止させる操作を条件として、前記車両側アンテナから前記携帯機側アンテナに停止信号を送信し、前記通信制御部に対する電力供給を停止してオフ状態とすることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両の無線認証システムにおいて、前記ロック手段は、車両のイグニッションスイッチの操作をロックするためのアクチュエータから成ることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項記載の車両の無線認証システムにおいて、前記ロック手段は、車両のステアリングロックの操作をロックするためのアクチュエータから成ることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項記載の車両の無線認証システムにおいて、前記車載ユニットは、前記携帯機にアクセス信号を送信可能なアクセススイッチを有するとともに、前記車両側アンテナが前記始動信号を受信し、且つ、前記アクセススイッチが操作されたことを条件として、前記認証コードに関わる信号を送受信して前記判定手段による判定が行われることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項記載の車両の無線認証システムにおいて、前記操作部が操作されて前記携帯機側アンテナから前記始動信号が送信された後、前記車載ユニットに対する操作が行われず自動的に、当該携帯機側アンテナと車両側アンテナとの間で前記認証コードに関わる信号を送受信して前記判定手段による判定が行われることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項~5の何れか1つに記載の車両の無線認証システムにおいて、前記操作部が操作されて前記車両側アンテナが前記始動信号を受信したことを条件として、車両が具備するフラッシャランプを点滅させることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1~6の何れか1つに記載の車両の無線認証システムにおいて、前記車両側アンテナは、前記携帯機側アンテナに信号を送信する第1車両側アンテナと、前記携帯機側アンテナから信号を受信する第2車両側アンテナとを有して構成され、前記第2車両側アンテナの方が前記第1車両側アンテナより大きく形成されて感度が大きく設定されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、携帯機側アンテナと車両側アンテナとの間の送信及び受信がそれぞれRF波のみにて行われるので、LF波を送受信するための高価なアンテナを不要としてシステムの製造コストを低減させることができる。
【0015】
また、車両の駆動源が停止した状態で電池から通信制御部に対する電力供給が行われずオフ状態とされるとともに、操作部が操作されたことを条件として、通信制御部に電力供給し、且つ、携帯機側アンテナから始動信号を送信することにより、携帯機側アンテナによる車両側アンテナとの間の送受信を可能な状態とするので、リレーアタックのような第三者による不正行為を防止することができ、防犯性を向上させることができる。
【0016】
さらに、車両の駆動源を停止させる操作を条件として、車両側アンテナから携帯機側アンテナに停止信号を送信し、通信制御部に対する電力供給を停止してオフ状態とするので、車両の駆動源が停止した状態で携帯機の電源を確実にオフ状態とすることができ、防犯性をより一層向上させることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、車両側アンテナが始動信号を受信し、且つ、アクセススイッチが操作されたことを条件として、認証コードに関わる信号を送受信して判定手段による判定が行われるので、携帯機の操作部を操作した後は、既存の車両の無線認証システムと同様の操作手順とすることができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、操作部が操作されて携帯機側アンテナから始動信号が送信された後、車載ユニットに対する操作が行われず自動的に、当該携帯機側アンテナと車両側アンテナとの間で認証コードに関わる信号を送受信して判定手段による判定が行われるので、操作部の操作とは異なる別個の操作を不要として認証を行わせることができ、操作性を向上させることができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、操作部が操作されて車両側アンテナが始動信号を受信したことを条件として、車両が具備するフラッシャランプを点滅させるので、操作部の操作を容易に確認することができる。
【0020】
請求項7の発明によれば、車両側アンテナは、携帯機側アンテナに信号を送信する第1車両側アンテナと、携帯機側アンテナから信号を受信する第2車両側アンテナとを有して構成され、第2車両側アンテナの方が第1車両側アンテナより大きく形成されて感度が大きく設定されたので、車両から遠く離れた位置から車両を探す所謂アンサーバック機能を実現しつつ、第三者による不正な認証が行われてしまうのを回避することができ、防犯性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る車両の無線認証システムを示すブロック図
図2】(a)携帯機に配設された携帯機側アンテナ、(b)車載ユニットに配設された第1車両側アンテナ及び第2車両側アンテナ、(c)車載ユニットに配設された単一の車両側アンテナ、を示す模式図
図3】同車載ユニットを示す斜視図
図4】同車載ユニットを示す縦断面図
図5】本発明の実施形態に係る車両の無線認証システムにおける制御内容を示すフローチャート
図6】本発明の他の実施形態に係る車両の無線認証システムにおける制御内容を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る車両の無線認証システムは、認証コードが正規の認証コードであると判定された場合に、車両の走行を規制するロック手段によるロックを解除し得る所謂スマートキーシステムを構成するもので、図1に示すように、搭乗者が携帯可能とされた携帯機A(電子キー)と、二輪車等の車両に搭載された車載ユニットBとを有して構成されている。
【0023】
携帯機Aは、運転者等の搭乗者が携帯可能とされたもので、車両固有の認証コードに関わる信号を無線で送受信可能な携帯機側アンテナ1と、携帯機側アンテナ1による通信を制御する通信制御部2と、認証コードに関わる情報を記憶する記憶部3と、通信制御部2等に電力を供給可能な電池4と、操作者が任意に操作可能な操作ボタン等から成る操作部5とを有して構成されている。
【0024】
携帯機側アンテナ1は、図2(a)に示すように、携帯機Aに配設された基板14に印刷にて形成(プリント)された無線通信可能なアンテナから成るもので、車載ユニットBが有する車両側アンテナ6との間で433MHz程度のRF波(Radio Frequency)による送受信が可能とされている。なお、基板14は、携帯機側アンテナ1の他、通信制御部2及び記憶部3等、種々の電子部品が形成されている。
【0025】
本実施形態に係る車載ユニットBは、イグニッションスイッチから成るメインスイッチ12と連結されるとともに、車両の左右に取り付けられたフラッシャランプ13(ウィンカランプ)及び車両に搭載されたバッテリbとそれぞれ電気的に接続されている。そして、左右のフラッシャランプ13を同時に点滅させることにより、アンサーバックが可能とされている。
【0026】
操作部5は、搭乗者等の操作者が操作することにより電池4から通信制御部2に電力供給させることにより、携帯機Aの電源をオンし得るもので、これにより、携帯機側アンテナ1による車両側アンテナ6との間の送受信を可能とされている。本実施形態においては、車両の駆動源が停止した状態で電池4から通信制御部2に対する電力供給が行われずオフ状態とされるとともに、操作部5が操作されたことを条件として、通信制御部2に電力供給し、且つ、携帯機側アンテナ1から始動信号を送信することにより、携帯機側アンテナ1による車両側アンテナ6との間の送受信を可能な状態とするようになっている。
【0027】
車載ユニットBは、車両(本実施形態においては二輪車の車体)に搭載されるもので、携帯機Aの携帯機側アンテナ1との間で信号を無線で送受信可能な車両側アンテナ6と、車両側アンテナ6による通信を制御する通信制御部7と、車両側アンテナ6で受信した認証コードが正規の認証コードか否か判定し得る判定手段8と、判定手段8により認証コードが正規の認証コードであると判定された場合に、車両の走行を規制するロック手段10によるロックを解除し得るロック制御手段9と、ロック手段10と、アクセススイッチ11とを有して構成されている。
【0028】
車両側アンテナ6は、図2(b)に示すように、車載ユニットBに配設された基板15に印刷にて形成(プリント)された無線通信可能なアンテナから成るもので、携帯機Aが有する携帯機側アンテナ1との間で433MHz程度のRF波(Radio Frequency)による送受信が可能とされている。なお、基板15は、車両側アンテナ6の他、通信制御部7、判定手段8及びロック制御手段9等、種々の電子部品が形成されている。
【0029】
また、本実施形態に係る車両側アンテナ6は、図2(b)に示すように、携帯機側アンテナ1に信号を送信する第1車両側アンテナ6aと、携帯機側アンテナ1から信号を受信する第2車両側アンテナ6bとを有して構成され、第2車両側アンテナ6bの方が第1車両側アンテナ6aより大きく形成されて感度が大きく設定されている。なお、アンサーバック機能が不要であれば、車両側アンテナ6は、図2(c)に示すように、基板15に形成された単一のアンテナから成るものとし、その単一のアンテナ(車両側アンテナ6)にて送信及び受信を行うようにしてもよい。この場合、車載ユニットBの小型化を図ることができる。
【0030】
ここで、本実施形態に係る車載ユニットBは、図3、4に示すように、運転者等の搭乗者が任意に操作可能な操作ノブNを具備しており、操作ノブNの押圧操作によってアクセススイッチ11がオンし得るよう構成されている。そして、操作ノブNが押圧操作されて操作部Naがアクセススイッチ11を操作してスイッチオンすると、車両側アンテナ6からアクセス信号(RF信号)が発信されるとともに、携帯機Aからの認証コードに関わる信号(RF信号)を受信し、その受信した認証コードが車両固有の正規の認証コードであるか否か判定手段8にて判定されることにより認証が行われる。
【0031】
さらに、本実施形態に係る車載ユニットBには、ソレノイドから成るロック手段10と、ステアリングロックバーRと、操作ノブNの回転操作により回転するロータn1とを有して構成されている。そして、操作ノブNをON位置まで回転操作すると、ロータn1が追従して回転することにより、エンジンを始動可能とするイグニッションスイッチから成るメインスイッチ12(図1参照)をオンして車両のエンジンを始動可能とされている。
【0032】
ステアリングロックバーRは、車両のハンドルバーに形成されたロック孔(不図示)に挿入して当該ハンドルバーをロックするロック位置と、当該ロック孔から後退してハンドルバーのロックを解除するアンロック位置との間を移動可能とされている。そして、操作ノブNをLOCK位置まで回転操作すると、ロータn1と共にカム部材が回転し、ステアリングロックバーRをロック位置とアンロック位置との間で移動可能とされている。
【0033】
ロック手段10は、車両の走行を規制するもので、図4に示すように、プランジャ10aを有したソレノイドにて構成されている。かかるプランジャ10aは、ロータnに形成された係止部n2に係止した係止位置(同図で示される位置)と、係止部n2から離間した非係止位置との間を移動可能とされており、ロック制御手段9による制御によって車両に搭載されたバッテリbと電気的に接続可能とされている。
【0034】
これにより、ロック手段10、そのプランジャ10aが係止位置にあるとき、ロータn1の回転を規制して操作ノブNの回転操作をロックし、ステアリングロックバーRのアンロック位置への操作及びメインスイッチ12のオン操作を規制することができる。すなわち、ロック手段10は、車両のイグニッションスイッチ及びステアリングロックの操作をロックするためのアクチュエータから成るので、ロック手段10によるロックを解除することにより、車両のエンジン始動を可能とすることができるとともに、ステアリングロックの解除を可能とすることができる。
【0035】
したがって、エンジンが停止した状態のとき、ロック手段10にて操作ノブNの回転操作をロックした状態とされるとともに、携帯機Aと車載ユニットBの間で行われた認証により、携帯機Aから送信された認証コードが正規の認証コードであると判定されると、ロック手段10によるロックが解除され、操作ノブNの回転操作が許容されるので、車両のエンジン始動を可能とすることができる。
【0036】
上記したように、本実施形態に係る車両の無線認証システムは、携帯機側アンテナ1と車両側アンテナ6(第1車両側アンテナ6a及び第2車両側アンテナ6b)との間の送信及び受信がそれぞれRF波のみにて行われる(専らRF波で行われる)ようになっている。これにより、LF波(125kHz程度のLF波(Low Frequency))を送受信するための高価なアンテナを不要としてシステムの製造コストを低減させることができる。また、LF波を送受信するためのアンテナは、比較的大型のものであるため、かかるLF波のアンテナを不要とすることにより、車載ユニットBの小型化を図ることができる。さらに、LF波を送信する際、RF波に比べて大きな電力が必要とされるため、そのようなLF波の送信をなくすことにより、車両のバッテリbの電力低下を防ぐことができる。
【0037】
加えて、車両の駆動源が停止した状態(メインスイッチ12がオフ状態)で電池4から通信制御部2に対する電力供給が行われずオフ状態とされるとともに、操作部5が操作されたことを条件として、通信制御部2に電力供給し、且つ、携帯機側アンテナ1から始動信号(RF波)を送信することにより、携帯機側アンテナ1による車両側アンテナ6(第1車両側アンテナ6a及び第2車両側アンテナ6b)との間の送受信を可能な状態とするよう構成されている。
【0038】
これにより、操作部5の操作が行われるまで携帯機Aの電源がオフ状態とされるので、リレーアタックのような第三者による不正行為を防止することができ、防犯性を向上させることができる。また、操作部5の操作が行われるまで携帯機Aの電源がオフ状態とされるので、従来のように車載ユニットBから送信されるアクセス信号を受信するために電力を消費するものに比べ、電池4の寿命をより延ばすことができる。
【0039】
さらに、本実施形態においては、車両の駆動源を停止させる操作(具体的には、メインスイッチ12をオフにする操作)を条件として、車両側アンテナ6(第1車両側アンテナ6a)から携帯機側アンテナ1に停止信号を送信し、通信制御部2に対する電力供給を停止してオフ状態とするよう構成されている。これにより、車両の駆動源が停止した状態(メインスイッチ12がオフ状態)で携帯機Aの電源を確実にオフ状態とすることができ、防犯性をより一層向上させることができる。
【0040】
またさらに、本実施形態に係る車両側アンテナ6は、図2(b)に示すように、携帯機側アンテナ1に信号を送信する第1車両側アンテナ6aと、携帯機側アンテナ1から信号を受信する第2車両側アンテナ6bとを有して構成され、第2車両側アンテナ6bの方が第1車両側アンテナ6aより大きく形成されて感度が大きく設定されているので、車両から遠く離れた位置から車両を探す所謂アンサーバック機能を実現しつつ、第三者による不正な認証が行われてしまうのを回避することができ、防犯性を向上させることができる。
【0041】
次に、本実施形態に係る車両の無線認証システムによる制御について、図5のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、携帯機Aは、電池4による電力供給が行われずオフ状態とされるとともに、車載ユニットBは、バッテリbからの電力供給によりポーリング状態(所定時間経過毎にオン・オフを繰り返した状態)とされる。
【0042】
そして、Sa1にて携帯機Aの操作部5が操作されると、Sa2にて電池4による電力供給が行われてオン状態となり、通信制御部2に電力供給が行われて携帯側アンテナ1から始動信号(RF波)が送信され、その後、ポーリング状態となる。一方、Sb1にて携帯側アンテナ1から送信された始動信号を車両側アンテナ6(本実施形態においては、第2車両側アンテナ6b)が受信すると、Sb2にてフラッシャランプ13を点滅させてアンサーバックを行わせる。
【0043】
車載ユニットBは、アンサーバックの後、待機状態となるとともに、Sb3にて操作ノブNを押圧操作することによりアクセススイッチ11がオンすると、車両側アンテナ6(本実施形態においては、第1車両側アンテナ6a)からアクセス信号(RF波)が送信される。かかるアクセス信号を携帯機Aの携帯機側アンテナ1が受信する(Sa3)と、携帯機Aと車載ユニットBとの間で車両固有の認証コードに関わる信号(RF波)が送受信され、携帯機A及び車載ユニットBによる認証(Sa4、Sb4)が行われる。
【0044】
その後、携帯機Aはポーリング状態となるとともに、認証の結果、判定手段8が正規の認証コードであると判定されると、車載ユニットBは、Sb5にてロック手段10によるロックを解除し、メインスイッチ12がオンしたことを確認する(Sb6)と、キーロスト制御(Sb7、Sa5)が行われる。かかるキーロスト制御は、所定時間経過毎に携帯機Aと車載ユニットBとの間で送受信することにより、携帯機Aの紛失を検出し得る制御である。
【0045】
その後、車載ユニットBにてメインスイッチ12がオフしたことが確認される(Sb8)と、車両側アンテナ6(第1車両側アンテナ6a)から停止信号(RF波)を送信し、車載ユニットBがポーリング状態となるとともに、停止信号が携帯機Aの携帯機側アンテナ1にて受信される(Sa6)と、電池4から通信制御部2に対する電力供給及び携帯機Aの他の電子部品に対する電力供給が停止され(Sa7)、その後、オフ状態が維持されることとなる。
【0046】
本実施形態によれば、車載ユニットBは、携帯機Aにアクセス信号を送信可能なアクセススイッチ11を有するとともに、車両側アンテナ6が始動信号を受信し、且つ、アクセススイッチ11が操作されたことを条件として、認証コードに関わる信号を送受信して判定手段8による判定(認証)が行われるので、携帯機Aの操作部5を操作した後は、既存の車両の無線認証システムと同様の操作手順とすることができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、操作部5が操作されて車両側アンテナ6が始動信号を受信したことを条件として、車両が具備するフラッシャランプを点滅させてアンサーバックする(Sb2)ので、操作部5の操作を容易に確認することができる。なお、アンサーバックに代えて、操作部5の操作を容易に認識することができる他の動作を車両にて行わせるようにしてもよい。
【0048】
次に、本発明の他の実施形態に係る車両の無線認証システムによる制御について、図6のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、携帯機Aは、電池4による電力供給が行われずオフ状態とされるとともに、車載ユニットBは、バッテリbからの電力供給によりポーリング状態(所定時間経過毎にオン・オフを繰り返した状態)とされる。
【0049】
そして、Sa1にて携帯機Aの操作部5が操作されると、Sa2にて電池4による電力供給が行われてオン状態となり、通信制御部2に電力供給が行われて携帯側アンテナ1から始動信号(RF波)が送信される。かかる始動信号を携帯機Aの携帯機側アンテナ1が受信する(Sb1)と、携帯機Aと車載ユニットBとの間で車両固有の認証コードに関わる信号(RF波)が送受信され、携帯機A及び車載ユニットBによる認証(Sa3、Sb2)が行われる。
【0050】
その後、携帯機Aはポーリング状態となるとともに、認証の結果、判定手段8が正規の認証コードであると判定されると、車載ユニットBは、Sb3にてロック手段10によるロックを解除し、メインスイッチ12がオンしたことを確認する(Sb4)と、キーロスト制御(Sb5、Sa4)が行われる。かかるキーロスト制御は、所定時間経過毎に携帯機Aと車載ユニットBとの間で送受信することにより、携帯機Aの紛失を検出し得る制御である。
【0051】
その後、車載ユニットBにてメインスイッチ12がオフしたことが確認される(Sb6)と、車両側アンテナ6(第1車両側アンテナ6a)から停止信号(RF波)を送信し、車載ユニットBがポーリング状態となるとともに、停止信号が携帯機Aの携帯機側アンテナ1にて受信される(Sa5)と、電池4から通信制御部2に対する電力供給及び携帯機Aの他の電子部品に対する電力供給が停止され(Sa6)、その後、オフ状態が維持されることとなる。
【0052】
本実施形態によれば、操作部5が操作されて携帯機側アンテナ1から始動信号が送信された後、車載ユニットBに対する操作が行われず自動的に、当該携帯機側アンテナ1と車両側アンテナ6との間で認証コードに関わる信号を送受信して判定手段8による判定が行われるので、操作部5の操作とは異なる別個の操作を不要として認証を行わせることができ、操作性を向上させることができる。
【0053】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばロック手段は、ソレノイドに限定されず、車両の走行を規制する他の形態のアクチュエータ(モータ等)であってもよい。また、本実施形態に係るロック手段10は、車両のステアリングロック又はイグニッションスイッチの操作をロックするためのアクチュエータとされているが、車両の走行を規制する他の操作をロックするものであってもよい。
【0054】
さらに、本実施形態に係る車載ユニットBは、イグニッションスイッチが一体的に設けられたものとされているが、イグニッションスイッチを別個に形成して車両の別個の位置に設けるようにしてもよい。またさらに、アクセススイッチ11を車載ユニットBとは別個のものとし、例えば車両のハンドルグリップの近傍等に設けるようにしてもよい。なお、本実施形態においては、二輪車に適用されているが、ATV、スノーモービル、建機若しくは農機、さらには自動車等、他の車両に適用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
携帯機側アンテナと車両側アンテナとの間の送信及び受信がそれぞれRF波のみにて行われる車両の無線認証システムであれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 携帯機側アンテナ
2 通信制御部
3 記憶部
4 電池
5 操作部
6 車両側アンテナ
6a 第1車両側アンテナ
6b 第2車両側アンテナ
7 通信制御部
8 判定手段
9 ロック制御手段
10 ロック手段
11 アクセススイッチ
12 メインスイッチ
13 フラッシャランプ
14 基板
15 基板
b バッテリ
A 携帯機
B 車載ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6