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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】カロテノイド含有食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20240229BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20240229BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20240229BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240229BHJP
【FI】
A23L5/00 K
A23L29/00
A23L27/00 Z
A23L33/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019225466
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2021093918
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛之
(72)【発明者】
【氏名】洲嵜 真一
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-198007(JP,A)
【文献】特開2008-074717(JP,A)
【文献】特開2015-228805(JP,A)
【文献】Amazon [オンライン], 2018.07.25 [検索日 2023.09.19], インターネット:<URL:https://amzn.asia/d/i1yb4CI>
【文献】@COSME [オンライン], 2017.06.01 [検索日 2023.09.19], インターネット:<URL:https://www.cosme.net/variations/990587/>
【文献】日本食品科学工学会誌,2019年03月,Vol.66, No.3,pp.100-107
【文献】@COSME [オンライン], 2017.02.25 [検索日 2023.09.19], インターネット:<URL:https://www.cosme.net/products/10125295/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00
A23L 29/00
A23L 27/00
A23L 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
β-カロテン(パイナップル由来を除く)、パイナップル抽出物、ビタミンEを含有し、β-カロテン(パイナップル由来を除く)とパイナップル抽出物の重量比が1:1.5~1:24、かつβ-カロテン(パイナップル由来を除く)とビタミンEの重量比が1:2.5~1:80であることを特徴とする食品。
【請求項2】
固形製剤である、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
顆粒剤または錠剤である、請求項2に記載の食品。
【請求項4】
β-カロテン(パイナップル由来を除く)とパイナップル抽出物の重量比が1:1.5~1:24となるようにパイナップル抽出物を含有し、かつβ-カロテン(パイナップル由来を除く)とビタミンEの重量比が1:2.5~1:80となるようにビタミンEを含有することを特徴とする、β-カロテンを含有する食品の香味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カロテノイド、パイナップル抽出物、ビタミンEを含有することを特徴とする食品に関する。
【背景技術】
【0002】
カロテノイドは植物、藻類、及び光合成バクテリアによって合成されるテルペノイドの総称であり、カロテン類とキサントフィル類に大別される。カロテノイドは様々な生理活性を示すことが知られており、抗酸化作用、糖尿病性腎症抑制作用、保湿作用、メラニン生成抑制作用、加齢性黄色斑症抑制作用、眼精疲労抑制作用、肥満抑制作用が報告されている(非特許文献1)。このような背景のもと、カロテノイドは食品、化粧品、医薬品等の用途で使用されている。
【0003】
一方、カロテノイドには苦味を特徴とする独特の異味・異臭があり、飲食物等の形態で提供される場合にその異味・異臭が問題となる。この異味・異臭をマスキングする方法としては、豆乳を用いる方法(特許文献1)が提案されているが、固形製剤への適用ができない点で改善の余地が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-228805号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】『カロテノイドの多様な生理活性』食品・臨床栄養2、3-14、2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、独特の異味を有するカロテノイドについては、経口での摂取においてその異味がしばしば問題となる。特に日常的に多量に摂取する場合、カロテノイド由来の独特の異味をマスキングする必要があり、カロテノイドに由来する異味がマスキングされた食品の開発が求められている。
【0007】
本発明の課題は、カロテノイド由来の異味がマスキングされた食品を提供すること、並びにカロテノイド由来の異味をマスキングする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、パイナップル抽出物、ビタミンEを配合することによって、カロテノイド由来の異味を効果的にマスキングできることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、カロテノイド由来の異味がマスキングされた食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるカロテノイドとは、植物、藻類、及び光合成バクテリアによって合成されるテルペノイドの総称で、カロテン類とキサントフィル類に大別され、様々な生理活性を有するものである。具体的には、α-カロテン、β-カロテン、リコピン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン等があげられる。天然品、合成品のいずれも使用可能であり、これらを単独または2種類以上からなる混合物として使用することができる。また、カロテノイドを油脂等でコーティングした製剤を使用することもできる。カロテノイドを含む市販品としては、例えばベータカロチン10%DC(BASFジャパン株式会社製)、β-カロテン15%LCS(DSM株式会社製)、ルテマックス2020(ユニキス株式会社製)、マリーゴールド色素オイル201(BGG JAPAN株式会社製)、ルテイン水溶化粉末0.45%(横浜油脂工業株式会社製)等があげられる。
【0011】
本発明におけるカロテノイドの含有量は特に限定されず、使用目的及び用途によって選択されるものであるが、カロテノイドの含有量としては0.025~1重量%であることが好ましく、0.025~0.6重量%であることがより好ましく、0.025~0.4重量%であることがさらに好ましい。カロテノイドの含有量が0.025重量%未満だとカロテノイド由来の異味を感じない場合がある。また、一般的な食品中にカロテノイドが1重量%含有されていれば、栄養学上カロテノイドの摂取量としては十分である。
【0012】
本発明におけるパイナップル抽出物とは、パイナップルの可食部(果肉、果芯部等)の抽出物である。パイナップル抽出物を含む市販品としては、例えば、ブライトニングパイン(登録商標)粉末、パインセラ(登録商標)粉末(いずれも丸善製薬株式会社製)等があげられる。
【0013】
上記抽出物に用いられるパイナップルとは、パイナップル科アナナス属に属する多年生の植物で、中国では鳳梨とも呼ばれている。パイナップルの産地は、米国、フィリピン、マレーシア、ブラジル、オーストラリア等が主であるが、本発明に用いられる抽出物を得るにあたり、その種類や産地に特に制限はない。
【0014】
上記抽出物の抽出溶媒は特に限定されず、使用目的及び用途によって選択されるものであるが、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等の親水性有機溶媒、当該親水性有機溶媒と水との混合溶媒等があげられる。
【0015】
上記抽出物は、必要に応じて、濃縮、希釈、濾過、活性炭処理等による脱色、脱臭等の処理をして用いてもよい。更には、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いてもよい。
【0016】
本発明におけるカロテノイド1重量部に対するパイナップル抽出物の重量比は1.5~24であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。1.5未満であるとカロテノイド由来の異味を十分にマスキングできない場合があり、24を超えると製剤の吸湿性が高まり、製造性や食感に悪影響を及ぼす場合がある。
【0017】
本発明におけるビタミンEとは、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノール等があげられる。天然品、合成品のいずれも使用可能であり、これらを単独または2種類以上からなる混合物として使用することができる。また、ビタミンEをオクテニルコハク酸デンプンナトリウムやベタイン等の乳化剤と混合した製剤でもよい。具体的には理研ドライEミックス50α(理研ビタミン株式会社製)、抽出α-E末(三菱ケミカルフーズ株式会社製)、ビタコートE-70α(横浜油脂工業株式会社製)等を使用することができる。
【0018】
本発明におけるカロテノイド1重量部に対するビタミンEの重量比は2.5~80であることが好ましく、5~24であることがより好ましい。2.5未満であるとカロテノイド由来の異味のマスキング効果を持続させることができない傾向があり、80を超えると製剤の吸湿性が高まり、製造性や食感に悪影響を及ぼす場合がある。
【0019】
本発明における食品の剤型は特に限定されないが、好ましくは顆粒、錠剤、タブレット等の固形製剤である。
【0020】
本発明の食品には必要に応じて他の成分を配合できる。例えば、ショ糖、ブドウ糖、麦芽糖、乳糖、果糖及びオリゴ糖等の糖類、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、スクラロース、ステビア、アドバンテーム及びネオテーム等の高甘味度甘味料、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール及びキシリトール等の糖アルコール、オレンジ、イチゴ、及びリンゴ等の果汁、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、及びグルコン酸等の酸味料、アロエ、エキナセアプルプレア、カミツレ、月桃葉、グァバ葉、サンザシ、ショウガ、ノブドウ、ハトムギ、ヨモギ及びローズマリー等の植物由来の抽出物、イチゴ、ザクロ、パパイヤ、マンゴー及びレモン等の植物を乾燥し粉砕した粉末、アミノ酸、ペプチド、コエンザイムQ10、L-カルニチン、DHA、EPA、α-リポ酸、N-アセチルグルコサミン、グルコサミン、エラグ酸、ローヤルゼリー、プロポリス、アスタキサンチン、セラミド、エラスチン、プラセンタ、乳酸菌、ビフィズス菌、ラクトフェリン、ビタミン、ミネラル、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、食物繊維、β-グルカン、ヒアルロン酸、コンドロイチン、プロテオグリカン、及びフラボノイド等の生理活性物質、並びに色素等である。
【0021】
本発明の食品の製造方法については特に限定されず、一般に流通している食品と同様の方法で製造できる。また、充填する容器についても特に限定されず、一般に流通している食品と同様の容器に充填して使用することができる。
【実施例
【0022】
以下に実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、これにより発明の範囲が限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)
ベータカロチン10%DC(BASFジャパン株式会社製、β-カロテン含有量10%)0.25重量%、ブライトニングパイン粉末(丸善製薬株式会社製、パイナップル抽出物含有量20%)3重量%、理研ドライEミックス50α(理研ビタミン株式会社製、ビタミンE含有量50%)2.4重量%、及びマルチトール94.35重量%を混合し、水で噴霧造粒した後、1gずつアルミスティックパウチに充填し実施例1の食品を得た。
【0024】
(実施例2~10)
実施例1と同様に、含有成分及び含有量が表1となるように実施例2~10の食品を調製し、これらのβ-カロテン含有量(重量%)、パイナップル抽出物含有量(重量%)、ビタミンE含有量(重量%)、β-カロテン1重量部に対するパイナップル抽出物の量(重量部)、β-カロテン1重量部に対するビタミンEの量(重量部)を下段に示した。さらにその下段にβ-カロテン由来の異味のマスキング効果、経時的なマスキング効果の持続性、耐湿性に関する評価結果を示した。なお、表上段の含有量の単位は重量%である。
【0025】
【表1】
【0026】
[β-カロテン由来の異味のマスキング効果の評価基準]
パイナップル抽出物、ビタミンEを含有しない食品と比較し、β-カロテン由来の異味がどの程度マスキングされているかに関する専門パネル9人の評価を下記の通り得点化した。
3点:β-カロテン由来の異味が効果的にマスキングされている。
2点:β-カロテン由来の異味がどちらかというとマスキングされている。
1点:β-カロテン由来の異味がどちらかというとマスキングされていない。
0点:β-カロテン由来の異味が全くマスキングされていない。
続いて9人の得点の平均に応じて下記の評価を与えた。
◎:9人の得点の平均が2.5以上。
〇:9人の得点の平均が2.0以上2.5未満。
△:9人の得点の平均が1.0以上2.0未満。
×:9人の得点の平均が1.0未満。
【0027】
[経時的なマスキング効果の持続性の評価基準]
40℃及び4℃で2ヶ月間保管した同処方の食品を比較し、β-カロテン由来の異味のマスキング効果の持続性に関する専門パネル9人の評価を下記の通り得点化した。
3点:40℃保管品は4℃保管品と大差ない。
2点:40℃保管品は4℃保管品よりβ-カロテン由来の異味をやや感じる。
1点:40℃保管品は4℃保管品よりβ-カロテン由来の異味を感じる。
0点:40℃保管品は4℃保管品よりβ-カロテン由来の異味を強く感じる。
続いて9人の得点の平均に応じて下記の評価を与えた。
◎:9人の得点の平均が2.5以上。
〇:9人の得点の平均が2.0以上2.5未満。
△:9人の得点の平均が1.0以上2.0未満。
×:9人の得点の平均が1.0未満。
【0028】
[耐湿性の評価基準]
顆粒1gを直径3cmのシャーレに薄く広げ、20℃、60%RHの環境に5分間放置した。その際の固結の程度、流動性に関し下記の基準で評価した。
◎:顆粒が非常に固結しにくく、流動性を保つことができる。
〇:顆粒がやや固結しにくく、流動性を保つことができる。
△:顆粒がやや固結しやすく、流動性を保ちにくい。
×:顆粒が非常に固結しやすく、流動性を保つことができない。
【0029】
上記表1において、実施例1~10の本発明のカロテノイド含有食品は、β-カロテン由来の異味がマスキングされており、経時的なマスキング効果の持続性も高く、耐湿性に優れていた。
【0030】
(比較例1~6)
実施例1と同様に含有成分及び含有量が表2となるように比較例1~6の食品を調製し、これらについての評価結果を表2の下段に示した。なお、表上段の含有量の単位は重量%である。
【0031】
【表2】
【0032】
上記表2において、β-カロテン1重量部に対するパイナップル抽出物の重量比が1.5未満の場合(比較例1~3)は、β-カロテン由来の異味のマスキング効果が不十分であった。β-カロテン1重量部に対するビタミンEの重量比が2.5未満の場合(比較例4)は、β-カロテン由来の異味のマスキング効果が経時的に持続しなかった。β-カロテン1重量部に対するパイナップル抽出物の重量比が24を超える場合、β-カロテン1重量部に対するビタミンEの重量比が80を超える場合(比較例5、6)は耐湿性が著しく低下した。
【0033】
(実施例11)
(顆粒剤)
(成分) (重量%)
1.マルチトール 38.0
2.アスコルビン酸ナトリウム 20.0
3.ルテイン水溶化粉末0.45% 18.5
(ルテイン含有量0.45%、ゼアキサンチン含有量0.09%)
4.アスコルビン酸 15.0
5.ブライトニングパイン粉末 3.0
(パイナップル抽出物含有量20%)
6.理研ドライEミックス50α 2.4
(ビタミンE含有量50%)
7.デキストリン 1.8
8.プルラン 0.5
9.香料 0.5
10.アセスルファムカリウム 0.15
11.ノブドウエキス 0.1
12.スクラロース 0.03
13.ビタミンB2 0.02
(製造方法)
成分1~7と成分10~13を混合した後、成分8の水溶液を噴霧液として流動層にて造粒した。続いて造粒物を冷却した後、成分9を添加し、混合してできた顆粒剤をアルミスティックパウチに1gずつ分包した。
【0034】
(実施例12)
(錠剤)
(成分) (重量%)
1.マルチトール 86.0
2.抽出α-E末 6.0
(ビタミンE含有量20%)
3.ブライトニングパイン 3.0
(パイナップル抽出物含有量20%)
4.デキストリン 2.5
5.グリセリン脂肪酸エステル 2.0
6.β-カロテン15%LCS 0.35
(β-カロテン含有量15%)
7.ショウガエキス 0.1
8.クチナシ黄色素 0.03
9.リボフラビン 0.02
(製造方法)
成分1~4と成分6~9を混合した後、成分5の水溶液を噴霧液として流動層にて造粒した。続いて造粒物を冷却した後、1gずつ15mmφの臼杵を用いて打錠圧1tにて打錠し、打錠成型物をアルミスティックパウチに1粒ずつ分包した。
【0035】
実施例11及び12に示す食品を評価したところ、カロテノイド由来の異味がマスキングされており、経時的なマスキング効果の持続性、耐湿性に優れたものであった。
【0036】
以上のように、本発明に係るパイナップル抽出物及びビタミンEはカロテノイド由来の異味をマスキングすることにより、香味に優れた食品を提供することができるものであることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、カロテノイド由来の異味がマスキングされた食品を提供するものである。本発明を用いれば、カロテノイドを高含有するにも関わらず、その異味がマスキングされた食品を開発することができる。