(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】皮膚のバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240229BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240229BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20240229BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20240229BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240229BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20240229BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/50 P ZNA
G01N33/50 Q
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
G16H50/20
(21)【出願番号】P 2019534538
(86)(22)【出願日】2018-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2018028702
(87)【国際公開番号】W WO2019026918
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2017149487
(32)【優先日】2017-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業 ERATO「佐藤ライブ予測制御プロジェクト」委託研究(事業における呼称:協働研究)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】518269418
【氏名又は名称】Karydo TherapeutiX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 匠徳
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/057733(WO,A1)
【文献】特開2013-174608(JP,A)
【文献】河野 圭志 他,CKDと骨代謝異常とのクロストーク,最新医学,2016年12月,Vol.71/No.12,p.62-68
【文献】Nucleic Acids Research,2009年,Vol.37, No.3,p.866-876
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の手段を有する、被験体の腎疾患を予測するための装置:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーのタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーのmRNAの測定値を取得する取得手段であって、前記バイオマーカーがHamp2、Defb8、Cxcl13、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種である取得手段、並びに
前記取得手段が取得した測定値と所定の基準値とを比較し、以下の場合に、前記被験体は腎疾患であると決定する、決定手段:
(A)前記バイオマーカーがHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6e、Col5a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、又はActn3である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値を超える場合、
(B)前記バイオマーカーがDefb8、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、又はCol11a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値未満の場合。
【請求項2】
下記の手段を有する、被験体の腎疾患についてFGF23の関与を予測するための装置:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーのタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーのmRNAの測定値を取得する取得手段であって、前記バイオマーカーがHamp2、Defb8、Cxcl13、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種である取得手段、並びに
前記取得手段が取得した測定値と所定の基準値とを比較し、以下の場合に、前記腎疾患に、FGF23が関与していると決定する、決定手段:
(A’)前記バイオマーカーがHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Serpinb6e、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、又はActn3である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値を超える場合;又は前記バイオマーカーがDefb8、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、又はCol11a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値未満の場合、かつ
(B’)前記バイオマーカーがAldh1l2、又はCol5a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値以下の場合;又は前記バイオマーカーがC1qtnf6、Col1a1、又はCol3a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値以上の場合。
【請求項3】
コンピュータに実行させたときに、被験体の腎疾患を予測するための下記の処理を当該コンピュータに実施させるプログラム:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーのタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーのmRNAの測定値を取得する取得処理であって、前記バイオマーカーがHamp2、Defb8、Cxcl13、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種である取得処理、並びに
前記取得処理で取得された測定値と所定の基準値とを比較し、以下の場合に、前記被験体は腎疾患であると決定する、決定処理:
(A)前記バイオマーカーがHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6e、Col5a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、又はActn3である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値を超える場合、
(B)前記バイオマーカーがDefb8、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、又はCol11a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値未満の場合。
【請求項4】
コンピュータに実行させたときに、被験体の腎疾患についてFGF23の関与を予測するための下記の処理を当該コンピュータに実施させるプログラム:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーのタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーのmRNAの測定値を取得する取得処理であって、前記バイオマーカーがHamp2、Defb8、Cxcl13、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種である取得処理、並びに
前記取得処理で取得された測定値と所定の基準値とを比較し、以下の場合に、前記腎疾患に、FGF23が関与していると決定する、決定処理:
(A’)前記バイオマーカーがHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Serpinb6e、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、又はActn3である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値を超える場合;又は前記バイオマーカーがDefb8、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、又はCol11a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値未満の場合、かつ
(B’)前記バイオマーカーがAldh1l2、又はCol5a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値以下の場合;又は前記バイオマーカーがC1qtnf6、Col1a1、又はCol3a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値以上の場合。
【請求項5】
被験体の腎疾患を予測するための方法であって、
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーのタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーのmRNAの測定値を取得する取得工程であって、前記バイオマーカーがHamp2、Defb8、Cxcl13、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種であり、該測定値が以下の場合には、前記被験体は腎疾患であることを示唆する、取得工程
を含む、方法:
(A)前記バイオマーカーがHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6e、Col5a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、又はActn3である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が所定の基準値を超える場合、
(B)前記バイオマーカーがDefb8、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、又はCol11a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が所定の基準値未満の場合。
【請求項6】
被験体の腎疾患について、FGF23の関与を予測するための方法であって、
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーのタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーのmRNAの測定値を取得する取得工程であって、前記バイオマーカーがHamp2、Defb8、Cxcl13、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種であり、以下の場合に、前記腎疾患に、FGF23が関与していることを示唆する、取得工程
を含む、方法:
(A’)前記バイオマーカーがHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Serpinb6e、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、又はActn3である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が所定の基準値を超える場合;又は前記バイオマーカーがDefb8、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、又はCol11a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が所定の基準値未満の場合、かつ
(B’)前記バイオマーカーがAldh1l2、又はCol5a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が所定の基準値以下の場合;又は前記バイオマーカーがC1qtnf6、Col1a1、又はCol3a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が所定の基準値以上の場合。
【請求項7】
下記の手段を有する、被験体におけるリン代謝異常を予測するための装置:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーのタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーのmRNAの測定値を取得する取得手段であって、前記バイオマーカーがHamp2、Defb8、Cxcl13、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種である取得手段、並びに
前記取得手段が取得した測定値と所定の基準値とを比較し、以下の場合に、前記被験体にリン代謝異常があると決定する、決定手段:
(A)前記バイオマーカーがHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6e、Col5a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、又はActn3である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値を超える場合、
(B)前記バイオマーカーがDefb8、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、又はCol11a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値未満の場合。
【請求項8】
下記の手段を有する、被験体におけるリン代謝異常についてFGF23の関与を予測するための装置:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーのタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーのmRNAの測定値を取得する取得手段であって、前記バイオマーカーがHamp2、Defb8、Cxcl13、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種である取得手段、並びに
前記取得手段が取得した測定値と所定の基準値とを比較し、以下の場合に、前記リン代謝異常に、FGF23が関与していると決定する、決定手段:
(A’)前記バイオマーカーがHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Serpinb6e、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、又はActn3である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値を超える場合;又は前記バイオマーカーがDefb8、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、又はCol11a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値未満の場合、かつ
(B’)前記バイオマーカーがAldh1l2、又はCol5a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値以下の場合;又は前記バイオマーカーがC1qtnf6、Col1a1、又はCol3a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値以上の場合。
【請求項9】
コンピュータに実行させたときに、被験体におけるリン代謝異常を予測するための下記の処理を当該コンピュータに実施させるプログラム:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーのタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーのmRNAの測定値を取得する取得処理であって、前記バイオマーカーがHamp2、Defb8、Cxcl13、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種である取得処理、並びに
前記取得処理で取得された測定値と所定の基準値とを比較し、以下の場合に、前記被験体にリン代謝異常があると決定する、決定処理:
(A)前記バイオマーカーがHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6e、Col5a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、又はActn3である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値を超える場合、
(B)前記バイオマーカーがDefb8、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、又はCol11a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値未満の場合。
【請求項10】
コンピュータに実行させたときに、被験体におけるリン代謝異常についてFGF23の関与を予測するための下記の処理を当該コンピュータに実施させるプログラム:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーのタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーのmRNAの測定値を取得する取得処理であって、前記バイオマーカーがHamp2、Defb8、Cxcl13、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種である取得処理、並びに
前記取得処理において取得した測定値と所定の基準値とを比較し、以下の場合に、前記リン代謝異常に、FGF23が関与していると決定する、決定処理:
(A’)前記バイオマーカーがHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Serpinb6e、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、又はActn3である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値を超える場合;又は前記バイオマーカーがDefb8、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、又はCol11a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値未満の場合、かつ
(B’)前記バイオマーカーがAldh1l2、又はCol5a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値以下の場合;又は前記バイオマーカーがC1qtnf6、Col1a1、又はCol3a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値以上の場合。
【請求項11】
下記の工程を有する、被験体におけるリン代謝異常を予測するための方法:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーのタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーのmRNAの測定値を取得する取得工程であって、前記バイオマーカーがHamp2、Defb8、Cxcl13、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種であり、
該測定値が以下の場合には、前記被験体にリン代謝異常があることを示唆する、取得工程:
(A)前記バイオマーカーがHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6e、Col5a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、又はActn3である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が所定の基準値を超える場合、
(B)前記バイオマーカーがDefb8、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、又はCol11a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が所定の基準値未満の場合。
【請求項12】
下記の工程を有する、被験体におけるリン代謝異常についてFGF23の関与を予測するための方法:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーのタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーのmRNAの測定値を取得する取得工程であって、前記バイオマーカーがHamp2、Defb8、Cxcl13、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記取得
工程において取得した測定値が以下の場合に、前記リン代謝異常に、FGF23が関与していることを示唆する、取得工程:
(A’)前記バイオマーカーがHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Serpinb6e、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、又はActn3である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値を超える場合;又は前記バイオマーカーがDefb8、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、又はCol11a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値未満の場合、かつ
(B’)前記バイオマーカーがAldh1l2、又はCol5a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値以下の場合;又は前記バイオマーカーがC1qtnf6、Col1a1、又はCol3a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値以上の場合。
【請求項13】
下記の手段を有する、被験体におけるFGF23の活性化を予測する装置:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーのタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーのmRNAの測定値を取得する取得手段であって、前記バイオマーカーが、Hamp2、Defb8、Cxcl13、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種である取得手段、並びに
前記取得手段が取得した測定値と所定の基準値とを比較し、以下の場合に、前記被験体においてFGF23が活性化していると予測する、前記FGF23の活性化を予測する予測手段:
(A’)前記バイオマーカーがHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Serpinb6e、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、又はActn3である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値を超える場合;又は前記バイオマーカーがDefb8、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、又はCol11a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値未満の場合、かつ
(B’)前記バイオマーカーがAldh1l2、又はCol5a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値以下の場合;又は前記バイオマーカーがC1qtnf6、Col1a1、又はCol3a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値以上の場合。
【請求項14】
コンピュータに実行させたときに、被験体におけるFGF23の活性化を予測するための下記の処理を当該コンピュータに実施させるプログラム:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーのタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーのmRNAの測定値を取得する取得処理であって、前記バイオマーカーが、Hamp2、Defb8、Cxcl13、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種である取得処理、並びに
前記取得処理において取得した測定値と所定の基準値とを比較し、以下の場合に、前記被験体においてFGF23が活性化していると予測する、前記FGF23の活性化を予測する予測処理:
(A’)前記バイオマーカーがHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Serpinb6e、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、又はActn3である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値を超える場合;又は前記バイオマーカーがDefb8、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、又はCol11a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値未満の場合、かつ
(B’)前記バイオマーカーがAldh1l2、又はCol5a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値以下の場合;又は前記バイオマーカーがC1qtnf6、Col1a1、又はCol3a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が前記基準値以上の場合。
【請求項15】
下記の工程を有する、被験体におけるFGF23の活性化を予測するための方法:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーのタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーのmRNAの測定値を取得する取得工程であって、前記バイオマーカーが、Hamp2、Defb8、Cxcl13、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種であり、以下の場合に、前記被験体においてFGF23が活性化していることを示唆する、取得工程:
(A’)前記バイオマーカーがHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Serpinb6e、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、又はActn3である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が所定の基準値を超える場合;又は前記バイオマーカーがDefb8、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、又はCol11a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が所定の基準値未満の場合、かつ
(B’)前記バイオマーカーがAldh1l2、又はCol5a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が所定の基準値以下の場合;又は前記バイオマーカーがC1qtnf6、Col1a1、又はCol3a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が所定の基準値以上の場合。
【請求項16】
下記の手段を有する、FGF23の機能発現を抑制するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置:
高リン食を摂取し、被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一つの被験物質処理検体のバイオマーカーのタンパク質の測定値及び/又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得手段であって、前記バイオマーカーが、Hamp2、Defb8、Cxcl13、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Serpinb6d、Serpinb6e、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種である第1の測定値取得手段、
高リン食を摂取し、被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から前記採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一種の未処理検体中の前記バイオマーカーに対応するバイオマーカーのタンパク質の測定値及び/又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得手段、
前記第1の測定値取得手段が取得した測定値と第2の測定値取得手段が取得した測定値とを比較する比較手段、及び
下記(1)及び/又は(2)であって、かつ前記バイオマーカーがAldh1l2、又はCol5a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値以下の場合;又は前記バイオマーカーがC1qtnf6、Col1a1、又はCol3a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値以上の場合、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定手段:
(1)前記第1の測定値取得手段が取得したHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Serpinb6e、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が第2の測定値取得手段が取得した対応する測定値よりも高い場合、
(2)前記第1の測定値取得手段が取得したDefb8、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、Col11a1、及びCol15a1よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が第2の測定値取得手段が取得した対応する測定値よりも低い場合。
【請求項17】
コンピュータに実行させたときに、FGF23の機能発現を抑制するための有効成分の候補物質をスクリーニングするための下記の処理を当該コンピュータに実施させるスクリーニングプログラム:
高リン食を摂取し、被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一つの被験物質処理検体中のバイオマーカーのタンパク質の測定値及び/又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得処理であって、前記バイオマーカーが、Hamp2、Defb8、Cxcl13、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Serpinb6d、Serpinb6e、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種である第1の測定値取得処理、
高リン食を摂取し、被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から前記採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一種の未処理検体中の前記バイオマーカーに対応するバイオマーカーのタンパク質の測定値及び/又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得処理、
前記第1の測定値取得処理において取得した測定値と第2の測定値取得手段が取得した測定値とを比較する比較手段、及び
下記(1)及び/又は(2)であって、かつ前記バイオマーカーがAldh1l2、又はCol5a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値以下の場合;又は前記バイオマーカーがC1qtnf6、Col1a1、又はCol3a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値以上の場合、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定処理:
(1)前記第1の測定値取得手段が取得したHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Serpinb6e、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が第2の測定値取得手段が取得した対応する測定値よりも高い場合、
(2)前記第1の測定値取得手段が取得したDefb8、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、Col11a1、及びCol15a1よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が第2の測定値取得手段が取得した対応する測定値よりも低い場合。
【請求項18】
以下の工程を含む、FGF23の機能発現を抑制するための有効成分の候補物質のスクリーニング方法:
(I)高リン食を摂取し、被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一種の被験物質処理検体中のバイオマーカーのタンパク質の測定値及び/又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得工程であって、前記バイオマーカーが、Hamp2、Defb8、Cxcl13、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Serpinb6d、Serpinb6e、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種である第1の測定値取得工程、
(II)高リン食を摂取し、被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から前記採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一種の未処理検体中の前記バイオマーカーに対応するバイオマーカーのタンパク質の測定値及び/又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得工程、
(III)前記工程(I)で得られた測定値と、前記工程(II)で得られた測定値とを比較する比較工程、及び
(IV)下記(1)及び/又は(2)であって、
かつ前記バイオマーカーがAldh1l2、又はCol5a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が所定の基準値以下の場合;又は前記バイオマーカーがC1qtnf6、Col1a1、又はCol3a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が所定の基準値以上の場合、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する工程:
(1)前記第1の測定値取得手段が取得したHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Serpinb6e、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が第2の測定値取得手段が取得した対応する測定値よりも高い場合、
(2)前記第1の測定値取得手段が取得したDefb8、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、Col11a1、及びCol15a1よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が第2の測定値取得手段が取得した対応する測定値よりも低い場合。
【請求項19】
前記工程(I)の前に、
(i)被験体(ヒトを除く)、皮膚に由来する被験組織又は被験細胞を、被験物質で処理する工程、
(ii)前記工程(i)において被験物質で処理された前記被験体、被験組織又は被験細胞から検体を採取する工程、及び
(iii)前記工程(ii)で得られた検体からタンパク質及び/又はmRNAを回収する工程
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
下記の手段を有する、FGF23の機能を活性化するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置:
被験物質で処理された正常被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、又は皮膚に由来する被験組織若しくは皮膚に由来する被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)中のバイオマーカーのタンパク質の測定値及び/又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得手段であって、前記バイオマーカーが、Hamp2、Defb8、Cxcl13、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Serpinb6d、Serpinb6e、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種である第1の測定値取得手段、
被験物質で処理されていない正常被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から前記採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一種の未処理検体中の前記バイオマーカーに対応するバイオマーカーのタンパク質の測定値及び/又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得手段、
前記第1の測定値取得手段が取得した測定値と第2の測定値取得手段が取得した測定値とを比較する比較手段、及び
下記(1)及び/又は(2)であって、かつ前記バイオマーカーがAldh1l2、又はCol5a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値以下の場合;又は前記バイオマーカーがC1qtnf6、Col1a1、又はCol3a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値以上の場合、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定手段:
(1)前記第1の測定値取得手段が取得したHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Serpinb6e、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が第2の測定値取得手段が取得した対応する測定値よりも低い場合、
(2)前記第1の測定値取得手段が取得したDefb8、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、Col11a1、及びCol15a1よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が第2の測定値取得手段が取得した対応する測定値よりも高い場合。
【請求項21】
コンピュータに実行させたときに、FGF23の機能を活性化するための有効成分の候補物質をスクリーニングするための下記の処理を当該コンピュータに実施させるスクリーニングプログラム:
被験物質で処理された正常被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、又は皮膚に由来する被験組織若しくは皮膚に由来する被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)中のバイオマーカーのタンパク質の測定値及び/又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得処理であって、前記バイオマーカーが、Hamp2、Defb8、Cxcl13、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Serpinb6d、Serpinb6e、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種である第1の測定値取得処理、
被験物質で処理されていない正常被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から前記採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一種の未処理検体中の前記バイオマーカーに対応するバイオマーカーのタンパク質の測定値及び/又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得処理、
前記第1の測定値取得処理において取得した測定値と第2の測定値取得手段が取得した測定値とを比較する比較手段、及び
下記(1)及び/又は(2)であって、かつ前記バイオマーカーがAldh1l2、又はCol5a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値以下の場合;又は前記バイオマーカーがC1qtnf6、Col1a1、又はCol3a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値以上の場合、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定処理:
(1)前記第1の測定値取得手段が取得したHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Serpinb6e、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が第2の測定値取得手段が取得した対応する測定値よりも低い場合、
(2)前記第1の測定値取得手段が取得したDefb8、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、Col11a1、及びCol15a1よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が第2の測定値取得手段が取得した対応する測定値よりも高い場合。
【請求項22】
以下の工程を含む、FGF23の機能を活性化するための有効成分の候補物質のスクリーニング方法:
(I)被験物質で処理された正常被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一種の被験物質処理検体中のバイオマーカーのタンパク質の測定値及び/又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得工程であって、前記バイオマーカーが、Hamp2、Defb8、Cxcl13、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Serpinb6d、Serpinb6e、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種である第1の測定値取得工程、
(II)被験物質で処理されていない正常被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から前記採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一種の未処理検体中の前記バイオマーカーに対応するバイオマーカーのタンパク質の測定値及び/又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得工程、
(III)前記工程(I)で得られた測定値と、前記工程(II)で得られた測定値とを比較する比較工程、及び
(IV) 下記(1)及び/又は(2)であって、かつ前記バイオマーカーがAldh1l2、又はCol5a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値以下の場合;又は前記バイオマーカーがC1qtnf6、Col1a1、又はCol3a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値以上の場合、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する工程:
(1)前記第1の測定値取得手段が取得したHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Serpinb6e、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が第2の測定値取得手段が取得した対応する測定値よりも低い場合、
(2)前記第1の測定値取得手段が取得したDefb8、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、Col11a1、及びCol15a1よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が第2の測定値取得手段が取得した対応する測定値よりも高い場合。
【請求項23】
前記工程(I)の前に、
(i)被験体(ヒトを除く)、皮膚に由来する被験組織又は被験細胞を、被験物質で処理する工程、
(ii)前記工程(i)において被験物質で処理された前記被験体、被験組織又は被験細胞から検体を採取する工程、及び
(iii)前記工程(ii)で得られた検体からタンパク質及び/又はmRNAを回収する工程
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
下記の手段を有する、疾患におけるFGF23の関与を予測する予測装置:
疾患を有する被験体の皮膚から採取された検体中のバイオマーカーのタンパク質の測定値及び/又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得手段であって、前記バイオマーカーがHamp2、Defb8、Cxcl13、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種である取得手段、
前記疾患を有していない被験体の皮膚から採取された検体中の前記バイオマーカーに対応するバイオマーカーのタンパク質の測定値及び/又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得手段、
前記第1の測定値取得手段が取得した測定値と第2の測定値取得手段が取得した測定値とを比較する比較手段、及び
下記(1)及び/又は(2)であって、かつ前記バイオマーカーがAldh1l2、又はCol5a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値以下の場合;又は前記バイオマーカーがC1qtnf6、Col1a1、又はCol3a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値以上の場合、前記疾患にFGF23が関与していると決定する決定手段:
(1)前記第1の測定値取得手段が取得したHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Serpinb6e、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が第2の測定値取得手段が取得した対応する測定値よりも高い場合、
(2)前記第1の測定値取得手段が取得したDefb8、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、Col11a1、及びCol15a1よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が第2の測定値取得手段が取得した対応する測定値よりも低い場合。
【請求項25】
コンピュータに実行させたときに、疾患におけるFGF23の関与を予測するための下記の処理を当該コンピュータに実施させる予測プログラム:
疾患を有する被験体の皮膚から採取された検体中のバイオマーカーのタンパク質の測定値及び/又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得処理であって、前記バイオマーカーがHamp2、Defb8、Cxcl13、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種である第1の測定取得処理、
前記疾患を有していない被験体の皮膚から採取された検体中の前記バイオマーカーに対応するバイオマーカーのタンパク質の測定値及び/又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得処理、及び
前記第1の測定値取得処理と第2の測定値取得処理において取得した測定値とを比較する比較処理、及び
下記(1)及び/又は(2)であって、かつ前記バイオマーカーがAldh1l2、又はCol5a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値以下の場合;又は前記バイオマーカーがC1qtnf6、Col1a1、又はCol3a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値以上の場合、前記疾患にFGF23が関与していると決定する決定処理:
(1)前記第1の測定値取得手段が取得したHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Serpinb6e、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が第2の測定値取得手段が取得した対応する測定値よりも高い場合、
(2)前記第1の測定値取得手段が取得したDefb8、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、Col11a1、及びCol15a1よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が第2の測定値取得手段が取得した対応する測定値よりも低い場合。
【請求項26】
以下の工程を含む、疾患におけるFGF23の関与を予測するための方法:
疾患を有する被験体の皮膚から採取された検体中のバイオマーカーのタンパク質の測定値及び/又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得工程であって、前記バイオマーカーが、Hamp2、Defb8、Cxcl13、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種である第1の測定値取得工程、
前記疾患を有していない被験体の皮膚から採取された検体中の前記バイオマーカーに対応するバイオマーカーのタンパク質の測定値及び/又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得工程、
前記第1の測定値取得工程と第2の測定値取得工程において取得した測定値とを比較する比較工程、
下記(1)及び/又は(2)であって、かつ前記バイオマーカーがAldh1l2、又はCol5a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値以下の場合;又は前記バイオマーカーがC1qtnf6、Col1a1、又はCol3a1である時、前記バイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が
所定の基準値以上の場合、前記疾患に、FGF23が関与していることを示唆する、工程:
(1)前記第1の測定値取得手段が取得したHamp2、Cxcl13、Il22ra2、Serpinb6e、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が第2の測定値取得手段が取得した対応する測定値よりも高い場合、
(2)前記第1の測定値取得手段が取得したDefb8、Sparc、Clec11a、Serpinb6d、Col11a1、及びCol15a1よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーのタンパク質の測定値、又は前記バイオマーカーのmRNAの測定値が第2の測定値取得手段が取得した対応する測定値よりも低い場合。
【請求項27】
Hamp2、Defb8、Cxcl13、C1qtnf6、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Aldh1l2、Serpinb6d、Col1a1、Col3a1、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Col15a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種を含む、腎機能、又はリン代謝異常を予測するための皮膚のバイオマーカー。
【請求項28】
Hamp2、Defb8、Cxcl13、Sparc、Clec11a、Il22ra2、Serpinb6d、Serpinb6e、Col5a1、Col11a1、Asb11、Ptp4a3、Klhl38、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Rbfox1、Lrrc2、及びActn3よりなる群から選択される少なくとも一種を含む、腎疾患におけるFGF23の関与を予測するための皮膚のバイオマーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚由来検体を用いて腎疾患を予測すること、リンの代謝異常を予測すること、被験体におけるFGF23の活性化を予測すること、FGF23の機能発現を抑制するための有効成分の候補物質をスクリーニングすること、FGF23の機能を活性化するための有効成分の候補物質をスクリーニングすること、疾患におけるFGF23の関与を予測することに関する。
【背景技術】
【0002】
疾患には、可逆的に治療できる状態とそうでない状態(つまり不可逆的な状態)がある。可逆的な状態中に、異常をいち早く検出し治療する、あるいはそのような状態にすらならないように予防することが健康を維持することに不可欠である。また、可逆的な状態であっても、疾患の早期発見は、より軽度な治療方法、より短期の治療期間、またより良い予後の健康状態へ直結する。また、心臓疾患、脳疾患、がん、糖尿病に代表されるように、一つの器官や組織の異常が他の器官の疾患を招く(一般に合併症と呼ばれている)ことはよく知られており、そのような疾患においては、ひとつの器官・組織の異常から他の器官・組織の疾患が引き起こされるのを出来るだけ早い段階で防ぐことが必須となる。
【0003】
人をふくめた全ての動物において、個々の器官や組織は個別の部品ではなく、それぞれが機能的なネットワークを形成することにより、個体レベルでの品質管理がなされている。全身に張り巡らされている血管ネットワークによるホルモンなどの内分泌因子の運搬、神経ネットワークによる各器官機能の協調的な調整は「多器官連関システム」の代表的な例であり、生理学、内分泌学として体系づけられている。
【0004】
一方、透析や腎移植を必要とする末期腎不全患者(ESKD)は、世界的にも増加傾向にあり、1990~2000年の10年間で、ESKD患者数は、43万人から106.5万人に増加し、さらに2008年には、少なくとも165万人程度に増加している(非特許文献1)。慢性腎疾患(Chronic Kidney disease:CKD)は、ESKDの予備軍であるが、腎臓は、「沈黙の臓器」と呼ばれ、腎障害が起こってもその状態が臨床データ等に現れにくく、慢性腎疾患を来す前の腎機能低下は、早期発見が困難であるのが現状である。
【0005】
FGF23は、血中リン濃度を低下させるホルモンであり、腎近位尿細管におけるリンの再吸収、及び腸管からのリンの吸収を抑制することにより血中のリン濃度を低下させることが知られている。また、FGF23の濃度上昇は、慢性腎疾患に伴う骨-ミネラル代謝異常(CKD-MBD)を惹起することが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Lysaght MJ:J Am Soc Nephrol. 2002 Jan;13 Suppl 1;S37-40.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、皮膚由来検体を用いて腎疾患を予測することを一つの課題とする。本発明は、皮膚由来検体を用いてリンの代謝異常を予測することを一つの課題とする。本発明は、被験体におけるFGF23の活性化を予測することを一つの課題とする。本発明は、FGF23の機能発現を抑制するための有効成分の候補物質をスクリーニングすることを一つの課題とする。本発明は、FGF23の機能を活性化するための有効成分の候補物質をスクリーニングすることを一つの課題とする。本発明は、疾患におけるFGF23の関与を予測することを一つの課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究を重ねたところ、腎疾患動物モデルにおいて、ある種のバイオマーカーの発現が皮膚で病態に応じて変化することを見出した。また、これらのバイオマーカーでは、FGF23に関連するものと、関連しないものが存在することを見出した。
【0009】
本発明は、当該知見に基づいて完成されたものであり、以下の態様を含む。
項1.
下記の手段を有する、被験体の腎疾患を予測する装置:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値を取得する取得手段、並びに
前記取得手段が取得した測定値に基づいて、前記腎疾患を予測する予測手段。
項2.
前記バイオマーカーが、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種である、項1に記載の装置。
項3.
前記予測手段は、前記測定値と所定の基準値とを比較し、該測定値が前記基準値の範囲外である場合には、前記被験体は腎疾患であると決定する、項1又は2に記載の装置。
項4.
さらに、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Sparc、Col11a1、Clec11a、Serpinb6d、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲外である場合、及び/又は
Aldh1l2、Col5a1、Col3a1、C1qtnf6、及びCol1a1よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲内である場合
には、前記腎疾患に、FGF23が関与していると決定する、項3に記載の装置。
項5.
コンピュータに実行させたときに、被験体の腎疾患を予測するための下記の処理を当該コンピュータに実施させるプログラム:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値を取得する取得処理、並びに
前記取得処理で取得された測定値に基づいて、前記腎疾患を予測する予測処理。
項6.
前記バイオマーカーが、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種である、項5に記載のプログラム。
項7.
前記予測処理では、前記測定値と所定の基準値とを比較し、該測定値が前記基準値の範囲外である場合には、前記被験体は腎疾患であると決定する、項5又は6に記載のプログラム。
項8.
さらに、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Sparc、Col11a1、Clec11a、Serpinb6d、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲外である場合、及び/又は
Aldh1l2、Col5a1、Col3a1、C1qtnf6、及びCol1a1よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲内である場合
には、前記腎疾患に、FGF23が関与していると決定する、項7に記載のプログラム。
項9.
下記の工程を有する、被験体の腎疾患を予測する方法:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値を取得する取得工程、並びに
前記取得工程で取得された測定値に基づいて、前記腎疾患を予測する予測工程。
項10.
前記バイオマーカーが、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種である、項9に記載の方法。
項11.
前記予測工程は、前記測定値と所定の基準値とを比較し、該測定値が前記基準値の範囲外である場合には、前記被験体は腎疾患であると決定する、項9又は10に記載の方法。
項12.
さらに、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Sparc、Col11a1、Clec11a、Serpinb6d、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲外である場合、及び/又は
Aldh1l2、Col5a1、Col3a1、C1qtnf6、及びCol1a1よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲内である場合
には、前記腎疾患に、FGF23が関与していると決定する、項11に記載の方法。
項13.
下記の手段を有する、被験体におけるリン代謝異常を予測する装置:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値を取得する取得手段、並びに
前記取得手段が取得した測定値に基づいて、前記リン代謝異常を予測する予測手段。
項14.
前記バイオマーカーが、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種である、項13に記載の装置。
項15.
前記予測手段は、前記測定値と所定の基準値とを比較し、該測定値が前記基準値の範囲外である場合には、前記被験体にリン代謝異常があると予測する、項13又は14に記載の装置。
項16.
さらに、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Sparc、Col11a1、Clec11a、Serpinb6d、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲外である場合、及び/又は
Aldh1l2、Col5a1、Col3a1、C1qtnf6、及びCol1a1よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲内である場合
には、前記リン代謝異常に、FGF23が関与していると決定する、項15に記載の装置。
項17.
コンピュータに実行させたときに、被験体におけるリン代謝異常を予測するための下記の処理を当該コンピュータに実施させるプログラム:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値を取得する取得処理、並びに
前記取得処理で取得された測定値に基づいて、前記リン代謝異常を予測する予測処理。
項18.
前記バイオマーカーが、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種である、項17に記載のプログラム。
項19.
前記予測処理では、前記測定値と所定の基準値とを比較し、該測定値が前記基準値の範囲外である場合には、前記被験体にリン代謝異常があると予測する、項17又は18に記載のプログラム。
項20.
さらに、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Sparc、Col11a1、Clec11a、Serpinb6d、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲外である場合、及び/又は
Aldh1l2、Col5a1、Col3a1、C1qtnf6、及びCol1a1よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲内である場合
には、前記リン代謝異常に、FGF23が関与していると決定する、項19に記載のプログラム。
項21.
下記の工程を有する、被験体におけるリン代謝異常を予測する方法:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値を取得する取得工程、並びに
前記取得工程で取得された測定値に基づいて、前記リン代謝異常を予測する予測工程。
項22.
前記バイオマーカーが、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種である、項21に記載の方法。
項23.
前記予測工程は、前記測定値と所定の基準値とを比較し、該測定値が前記基準値の範囲外である場合には、前記被験体にリン代謝異常があると予測する、項21又は22に記載の方法。
項24.
さらに、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Sparc、Col11a1、Clec11a、Serpinb6d、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲外である場合、及び/又は
Aldh1l2、Col5a1、Col3a1、C1qtnf6、及びCol1a1よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲内である場合
には、前記リン代謝異常に、FGF23が関与していると決定する、項23に記載の方法。
項25.
下記の手段を有する、被験体におけるFGF23の活性化を予測する装置:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値を取得する取得手段、並びに
前記取得手段が取得した測定値に基づいて、前記FGF23の活性化を予測する予測手段。
項26.
前記バイオマーカーが、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種である、項25に記載の装置。
項27.
前記予測手段は、前記測定値と所定の基準値とを比較し、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Sparc、Col11a1、Clec11a、Serpinb6d、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲外である場合、及び/又は
Aldh1l2、Col5a1、Col3a1、C1qtnf6、及びCol1a1よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーが基準値の範囲内である場合には、前記被験体においてFGF23が活性化していると予測する、項25又は26に記載の装置。
項28.
コンピュータに実行させたときに、被験体におけるFGF23の活性化を予測するための下記の処理を当該コンピュータに実施させるプログラム:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値を取得する取得処理、並びに
前記取得処理で取得された測定値に基づいて、前記FGF23の活性化を予測する予測処理。
項29.
前記バイオマーカーが、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種である、項28に記載のプログラム。
項30.
前記予測処理では、前記測定値と所定の基準値とを比較し、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Sparc、Col11a1、Clec11a、Serpinb6d、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲外である場合、及び/又は
Aldh1l2、Col5a1、Col3a1、C1qtnf6、及びCol1a1よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーが基準値の範囲内である場合には、前記被験体においてFGF23が活性化していると予測する、項28又は29に記載のプログラム。
項31.
下記の工程を有する、被験体におけるFGF23の活性化を予測する方法:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値を取得する取得工程、並びに
前記取得工程で取得された測定値に基づいて、前記FGF23の活性化を予測する予測工程。
項32.
前記バイオマーカーが、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種である、項31に記載の方法。
項33.
前記予測工程は、前記測定値と所定の基準値とを比較し、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Sparc、Col11a1、Clec11a、Serpinb6d、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲外である場合、及び/又は
Aldh1l2、Col5a1、Col3a1、C1qtnf6、及びCol1a1よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカーが基準値の範囲内である場合には、前記被験体においてFGF23が活性化していると予測する、項31又は32に記載の方法。
項34.
下記の手段を有する、FGF23の機能発現を抑制するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置:
被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一つの被験物質処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得手段、及び
前記第1の測定値取得手段が取得した測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定手段。
項35.
被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一種の未処理検体中の対応するバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得手段、及び
被験物質処理検体の前記測定値及び未処理検体の前記測定値を比較する測定値比較手段、
をさらに有し、
前記決定手段は、前記測定値比較手段の比較結果に基づいて前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する、項34に記載の装置。
項36.
前記バイオマーカーが、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種である、項35に記載の装置。
項37.
コンピュータに実行させたときに、FGF23の機能発現を抑制するための有効成分の候補物質をスクリーニングするための下記の処理を当該コンピュータに実施させるスクリーニングプログラム:
被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一つの被験物質処理検体中のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得処理、及び
前記第1の測定値取得処理で取得された測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定処理。
項38.
さらに、被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一種の未処理検体の対応するバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得処理、及び
被験物質処理検体の前記測定値及び未処理検体の前記測定値を比較する測定値比較処理、
を前記コンピュータに実施させ、
前記決定処理では、前記測定値比較処理の比較結果に基づいて前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する、項37に記載のプログラム。
項39.
前記バイオマーカーが、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種である、項37又は38に記載のプログラム。
項40.
以下の工程を含む、FGF23の機能発現を抑制するための有効成分の候補物質のスクリーニング方法:
(I)被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一種の被験物質処理検体中のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する工程、
(II)前記工程(I)で得られた測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する工程。
項41.
前記工程(I)と(II)の間に、前記工程(I)で取得された被験物質処理検体の測定値と、被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一種の未処理検体中の対応するバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値とを比較する工程をさらに含み、
工程(II)が、前記比較結果に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する工程である、
をさらに含む、項40に記載の方法。
項42.
前記工程(I)の前に、
(i)被験体(ヒトを除く)、皮膚に由来する被験組織又は被験細胞を、被験物質で処理する工程、
(ii)前記工程(i)において被験物質で処理された前記被験体、被験組織又は被験細胞から検体を採取する工程、及び
(iii)前記工程(ii)で得られた検体からタンパク質及び/又はmRNAを回収する工程
を含む、項40又は41に記載の方法。
項43.
前記バイオマーカーが、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種である、項40~42のいずれか一項に記載の方法。
項44.
下記の手段を有する、FGF23の機能を活性化するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置:
被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、又は皮膚に由来する被験組織若しくは皮膚に由来する被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)中のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得手段、及び
前記第1の測定値取得手段が取得した測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定手段。
項45.
被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、又は皮膚に由来する被験組織若しくは皮膚に由来する被験細胞から採取された検体(未処理検体)のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得手段、及び
被験物質処理検体の前記測定値及び未処理検体の前記測定値を比較する測定値比較手段、
をさらに有し、
前記決定手段は、前記測定値比較手段の比較結果に基づいて前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する、項44に記載のスクリーニング装置。
項46.
前記バイオマーカーが、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種である、項45に記載の装置。
項47.
コンピュータに実行させたときに、FGF23の機能を活性化するための有効成分の候補物質をスクリーニングするための下記の処理を当該コンピュータに実施させるスクリーニングプログラム:
被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、又は皮膚に由来する被験組織若しくは皮膚に由来する被験細胞から採取された検体(被験物質処理検体)中のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得処理、及び
前記第1の測定値取得処理で取得された測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定処理。
項48.
さらに、被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、又は皮膚に由来する被験組織若しくは皮膚に由来する被験細胞から採取された検体(未処理検体)のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得処理、及び
被験物質処理検体の前記測定値及び未処理検体の前記測定値を比較する測定値比較処理、
を前記コンピュータに実施させ、
前記決定処理では、前記測定値比較処理の比較結果に基づいて前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する、項47に記載のプログラム。
項49.
前記バイオマーカーが、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種である、項47又は48に記載のプログラム。
項50.
以下の工程を含む、FGF23の機能を活性化するための有効成分の候補物質のスクリーニング方法:
(I)被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一種の被験物質処理検体中のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する工程、
(II)前記工程(I)で得られた測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する工程。
項51.
前記工程(I)と(II)の間に、前記工程(I)で取得された被験物質処理検体の測定値と、被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一種の未処理検体中の対応するバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値とを比較する工程をさらに含み、
工程(II)が、前記比較結果に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する工程である、
項50に記載の方法。
項52.
前記工程(I)の前に、
(i)被験体(ヒトを除く)、皮膚に由来する被験組織又は被験細胞を、被験物質で処理する工程、
(ii)前記工程(i)において被験物質で処理された前記被験体、被験組織又は被験細胞から検体を採取する工程、及び
(iii)前記工程(ii)で得られた検体からタンパク質及び/又はmRNAを回収する工程
を含む、項50又は51に記載の方法。
項53.
前記バイオマーカーが、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種である、項40~42のいずれか一項に記載の方法。
項54.
下記の手段を有する、疾患におけるFGF23の関与を予測する予測装置:
疾患を有する被験体の皮膚から採取された検体中のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得手段、及び 前記第1の測定値取得手段が取得した測定値に基づいて、前記疾患にFGF23が関与していると決定する決定手段。
項55.
前記疾患を有していない被験体の皮膚から採取された検体中のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得手段、及び
前記第1の測定値取得手段が取得した測定値及び前記第2の測定値取得手段が取得した測定値を比較する測定値比較手段、
をさらに有し、
前記決定手段は、前記比較の結果に基づいて前記疾患にFGF23が関与していると決定する、項54に記載の装置。
項56.
前記バイオマーカーが、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種である、項55に記載の装置。
項57.
コンピュータに実行させたときに、疾患におけるFGF23の関与を予測するための下記の処理を当該コンピュータに実施させる予測プログラム:
疾患を有する被験体の皮膚から採取された検体中のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得処理、及び 前記第1の測定値取得処理で取得された測定値に基づいて、前記疾患にFGF23が関与していると決定する決定処理。
項58.
さらに、前記疾患を有していない被験体の皮膚から採取された検体中のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第2の測定値取得処理、及び
第1の測定値取得処理で取得された測定値及び第2の測定値取得処理で取得された測定値を比較する測定値比較処理、
を前記コンピュータに実施させ、
前記決定処理では、前記比較の結果に基づいて前記疾患にFGF23が関与していると決定する、項57に記載のプログラム。
項59.
前記バイオマーカーが、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種である、項57又は58に記載のプログラム。
項60.
以下の工程を含む、疾患におけるFGF23の関与を予測する予測方法:
(I)疾患を有する被験体の皮膚から採取された検体中のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する工程、
(II)前記工程(I)で得られた測定値に基づいて、前記疾患にFGF23が関与していると決定する工程。
項61.
前記工程(I)と(II)の間に、前記工程(I)で取得された測定値と、前記疾患を有していない被験体の皮膚から採取された検体中のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値とを比較する工程
をさらに含み、
工程(II)が、前記比較の結果に基づいて、前記疾患にFGF23が関与していると決定する工程である、
項60に記載の方法。
項62.
前記バイオマーカーが、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種である、項60~61のいずれか一項に記載の方法。
項63.
Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種を含む、腎機能、リン代謝異常、又はFGF23の関与を予測するための皮膚のバイオマーカー。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一つの効果として、皮膚由来検体を用いて腎機能の低下を発見することができる。本発明は、一つの効果として、皮膚由来検体を用いてリンの代謝異常を予測することができる。本発明は、一つの効果として、皮膚由来検体を用いて被験体におけるFGF23の活性化を予測することができる。本発明は、一つの効果として、皮膚由来検体を用いてFGF23の機能発現を抑制するための有効成分の候補物質をスクリーニングすることができる。本発明は、一つの効果として、皮膚由来検体を用いてFGF23の機能を活性化するための有効成分の候補物質をスクリーニングすることができる。本発明は、一つの効果として、皮膚由来検体を用いて疾患におけるFGF23の関与を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1~第3の実施態様に係るシステム100の概観図である。
【
図2】本発明の第1~第3の実施態様に係るシステム100のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】本発明の本発明の第1~第3の実施態様に係る演算装置1~3の機能を説明するためのブロック図である。
【
図4】本発明の第1の態様に係る演算装置1の動作を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第2の態様に係る演算装置2の動作を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第3の態様に係る演算装置3の動作を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第4、第5の実施態様に係るシステム200の概観図である。
【
図8】本発明の第4、第5の実施態様に係るシステム200のハードウェア構成を示す図である。
【
図9】本発明の本発明の第4、第5の実施態様に係るスクリーニング装置4、5の機能を説明するためのブロック図である。
【
図10】本発明の第4の態様に係るスクリーニング装置4の動作を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の第5の態様に係るスクリーニング装置5の動作を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の第6の実施態様に係るシステム300の概観図である。
【
図13】本発明の第6の実施態様に係るシステム300のハードウェア構成を示す図である。
【
図14】本発明の本発明の第6の実施態様に係る演算装置6の機能を説明するためのブロック図である。
【
図15】本発明の第6の態様に係る演算装置6の動作を示すフローチャートである。
【
図18】UNx/HPi、WT3W/HP1W、WT3W/LP1W、WT3W/ND1Wマウスモデルの皮膚におけるバイオマーカーの発現を示す。
【
図19】E-/M-/L-UNx/HPi、及びWT3W/HP1W、WT3W/LP1W、WT3W/ND1Wの頭蓋骨においけるFgf23の発現を示す図である。
【
図20】各モデルマウスの血中無機リン濃度を示す。
【
図21】Fgf23遺伝子変異マウスとWT3W/HP1W、WT3W/LP1W、WT3W/ND1Wにおけるバイオマーカーの発現の比較結果を示す。
【
図22】Fgf23遺伝子機能発現に依存又は非依存性の4タイプのモデルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、皮膚由来検体を用いて腎疾患を予測するという課題を解決するための第1の実施態様を含む。本発明は、皮膚由来検体を用いてリンの代謝異常を予測するという課題を解決するための第2の実施態様を含む。本発明は、被験体におけるFGF23の活性化を予測するという課題を解決するための第3の実施態様を含む。本発明は、FGF23の機能発現を抑制するための有効成分の候補物質をスクリーニングするという課題を解決するための第4の実施態様を含む。本発明は、FGF23の機能を活性化するための有効成分の候補物質をスクリーニングするという課題を解決するための第5の実施態様を含む。本発明は、疾患におけるFGF23の関与を予測するという課題を解決するための第6の実施態様を含む。本発明は、検査試薬及び検査キットに係る第7の実施態様を含む。本発明は皮膚のバイオマーカーに係る第8の実施態様を含む。
【0013】
I.第1から第3の実施態様
1.用語の説明
はじめに、第1から第3の実施態様において、本明細書、請求の範囲、要約で使用される用語について説明する。特に記載がない限り、第1から第3の実施態様に関して本明細書、請求の範囲、要約で使用されている用語は、本項の規定に従う。但し、第4から第8の実施態様の説明においても、本項の説明が援用される場合がある。
【0014】
本明細書において「腎疾患」とは、腎機能低下を来す腎臓の何らかの異常又は疾患であり、腎臓に何らかの機能的、又は物理的な障害がある状態である限り特に制限されない。具体的には、急性腎不全、急性腎盂腎炎、急性糸球体腎炎(溶血連鎖球菌感染症に付随して起こる糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎等)、心疾患に付随する腎疾患のうち急性の疾患(タイプ1心腎症候群等)等の急性腎疾患;慢性腎盂腎炎、逆流性腎症、間質性腎炎、多発性嚢胞腎、慢性糸球体腎炎(IgA腎症、全身性エリテマトーデス糸球体腎炎(ループス腎炎)等)、心疾患に付随する腎疾患のうち慢性の疾患(タイプ2心腎症候群等)、糖尿病性腎症、腎糸球体線維沈着症等の慢性腎炎;ネフローゼ症候群;腎腫瘍等の慢性腎疾患等が挙げられる。好ましくは、急性腎疾患である。また、別の態様として、好ましくは虚血性心疾患に付随する腎疾患であり、特に虚血性心疾患に付随する急性腎疾患(タイプ1心腎症候群等)である。
【0015】
本明細書において、「腎機能低下」とは、例えばヒトの場合、一般的に臨床検査で測定されている下記表1-1から表1-4に示す少なくとも一種の腎疾患マーカー(好ましくは尿タンパク質以外)が基準値範囲外となる状態をいう。腎疾患マーカーとして、より好ましくは、血清尿素窒素、血清クレアチニン、血清無機リン、尿中フィブリノーゲン、クレアチニンクリアランス、24時間クレアチニンクリアランス推定糸球体ろ過量(eGFR)、尿素クリアランス、イヌリンクリアランス、チオ硫酸ナトリウムクリアランス、腎血漿流量、ろ過率、ナトリウム排泄率、リチウム排泄率、フェノールスルホンフタレイン試験、濃縮試験、希釈試験、自由水クリアランス、自由水再吸収、尿細管排泄極量、尿細管再吸収極量、リン酸再吸収率、β2-ミクログロブリン、及びα1-ミクログロブリンからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
上記腎疾患マーカーは、臨床検査法提要改訂第32版(金井正光編集 金原出版株式会社)等に掲載の公知の方法によって測定することができる。
【0021】
本明細書において、「急性腎不全」とは、急激に腎機能が低下する疾患であり、たとえば、血清クレアチニン値が2.0~2.5mg/dl以上へ急速に増加したもの(基礎に腎機能低下がある場合には血清クレアチニン値が前値に対して50%以上増加したもの)、又は血清クレアチニン値が0.5mg/dl/day以上,尿素窒素が10mg/dl/day以上の速度で増加するものをいう。急性腎不全には、(1)腎血流量の減少が原因となる腎前性急性腎不全、(2)腎実質に障害がある腎性急性腎不全、(3)腎以降の尿流障害による腎後性急性腎不全が含まれるが、本発明の適用対象として好ましい急性腎不全は、腎前性急性腎不全及び腎性急性腎不全であり、好ましくは腎前性急性腎不全である。
【0022】
心疾患に付随する腎疾患は、心腎症候群とも呼ばれる。心腎症候群は、急性及び慢性の病態を含み、複数のタイプに分類されている。このうち心疾患がきっかけで発症するのは、タイプ1とタイプ2であり、タイプ1は急性心腎症候群、タイプ2は慢性心腎症候群である。タイプ1は虚血性心疾患等が引き金となって発症することがある。
【0023】
タイプ1心腎症候群は、何らかの心疾患により、以下の病期1~3のいずれかの病期に該当するようになった状態をいう:
病期1:血清クレアチニン値が基準値の1.5~1.9倍程度に増加するか、又は同一個体において血清クレアチニン値が前値に対して0.3mg/dl以上増加し、かつ尿量が6時間~12時間にわたって0.5mL/kg/時程度である
病期2:血清クレアチニン値が基準値の2.0~2.9倍程度に増加し、かつ12時間以上尿量が0.5mL/kg/時未満の状態が続く
病期3:血清クレアチニン値が基準値の3倍程度まで増加するか、同一個体において血清クレアチニン値が前値に対して4.0mg/dL以上増加するか、腎代替療法が開始されるか、又は18歳未満の患者の場合eGFRが35mL/min/1.73m2未満に低下した場合であり、前記4つのいずれかの状態に加え、尿量が24時間以上0.3mL/kg/時未満である状態が続いているか、又は12時間以上無尿の状態が続いている場合。
【0024】
本明細書において、「慢性腎疾患」とは、被験体がヒトである場合、「CKD診断ガイド2012(日本腎臓学会編)に従い、腎臓の障害(微量アルブミン尿を含む蛋白尿などの尿異常、尿沈渣の異常、片腎や多発性のう胞腎などの画像異常、血清クレアチニン値上昇などの腎機能低下、尿細管障害による低カリウム血症などの電解質異常、腎生検などで病理組織検査の異常等)、もしくは推定GFR(糸球体濾過量)60mL/分/1.73m2未満の腎機能低下が3カ月以上持続する状態をいう。
【0025】
ここで、推算GFR(eGFR)は、下記表2に示す血清クレアチニン値からの推算式(eGFRcreat)で算出ことができる。また、下肢切断者等の筋肉量の極端に少ない者に対しいては、血清シスタチンCの推算式(eGFRcys)を適用することができる。
【0026】
【0027】
例えば、タンパクを指標とする場合、3カ月以上前と最近の尿検査で尿蛋白0.15g/gCr以上が続いている場合を、慢性腎疾患であると診断することができる。また、糖尿病で3カ月以上前と最近のアルブミン尿検査で30mg/gCr以上が続いている場合を、慢性腎疾患であると診断することができる。
【0028】
小児に関しては、日本人小児の酵素法による血清クレアチニン(Cr)の基準値が作成され,これを使用して腎機能異常者の評価を行うことができる。例えば、%表示のeGFRは、2歳以上11歳以下の小児については、下記式1で表すことができる。
[数式1]
eGFR(%)=(0.3×身長(m)/被験体の血清Cr値)×100
【0029】
また、ネコ、イヌ等のヒト以外の哺乳動物の場合、1日平均引水量、又は尿比重等から慢性腎疾患であることを予測することができる。
【0030】
慢性腎疾患の重症度は、例えば、ヒトの場合、下記表3に基づいて決定することができる(表3は、「CKD診断ガイド2012」の表2)。
【0031】
【0032】
FGF23が関連する疾患としては、FGF23の過剰発現に伴って発症する疾患である限り、制限されない。低リン血症性くる病/骨軟化症、常染色体性優性低リン血症性くる病/骨軟化症、常染色体性劣性低リン血症性くる病/骨軟化症、X染色体性優性低リン血症性くる病/骨軟化症、腫瘍性くる病/骨軟化症、二次性副甲状腺機能亢進症、急性腎疾患又は慢性腎疾患におけるリン代謝異常、骨-ミネラル代謝異常(CKD-MBD)等を挙げることができる。
【0033】
本発明において、「個体」は、特に制限されないが、個体にはヒト及びヒト以外の哺乳動物が含まれる。ヒト以外の哺乳動物としては、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、サル等が挙げられる。好ましくは、ヒト、ネコ、イヌである。また、個体の年齢、性別は問わない。
【0034】
また、「被験体」は、腎機能低下やその他の腎疾患の既往を有している個体であっても、有していない個体であってもよい。また、被験体は、多尿、喉の渇き、飲水量の増加、胃液過多、嘔吐、血尿、及び全身倦怠感等の症状がある個体であってもよく、また無症状の個体であってもよい。さらに、被験体には、医療面接、尿検査、血液の生化学的検査、腎像画像診断、腎生検等の公知の診断方法に従って、腎障害や慢性腎疾患が疑われた被験体も含まれる。
【0035】
本発明において、「皮膚由来検体」は、生体の皮膚に由来する限り制限されない。また、皮膚由来検体には、汗、皮膚からの分泌液等が含まれる。皮膚の採取方法も制限されず、生検材料、ピアスの穴を空けた際に穿孔針に付着する皮膚、皮膚表面の擦過物等を挙げることができる。
【0036】
さらに、検体は、新鮮なものであっても、保存されていたものであってもよい。検体を保存する場合には、室温環境、冷蔵環境又は冷凍環境において保存することができるが、好ましくは冷凍保存である。
【0037】
本発明の「バイオマーカー」には、表4に示されるHamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種及びこれらのバリアント、オーソログ等が含まれる。
【0038】
【0039】
ここで、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Sparc、Col11a1、Clec11a、Serpinb6d、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種のバイオマーカー(1群と呼ぶ)については、FGF23の制御を受ける可能性が高い。したがって、1群のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲外である場合には、例えば、腎疾患その他の疾患、又はリン代謝異常において、FGF23が関与していると予測することができる。
【0040】
一方、Aldh1l2、Col5a1、Col3a1、C1qtnf6、及びCol1a1よりなる群から選択される少なくとも一種バイオマーカー(2群と呼ぶ)はFGF23の制御を受けない可能性が高い。したがって、1群のバイオマーカーが基準値の範囲外となっており、かつ2群のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲内である場合には、例えば、腎疾患その他の疾患、又はリン代謝異常において、FGF23が関与していることをより確実に予測することができる。
【0041】
FGF23が関与しているか否かは、1群のバイオマーカーの測定値と2群のバイオマーカーの測定値の双方を考慮して決定することが好ましい。
【0042】
「バイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値」とは、バイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の量又は濃度を反映した値をいう。当該測定値を「量」で標記する場合には、モルであっても質量であってもよいが、質量で標記することが好ましい。また、値を「濃度」で表記する場合には、モル濃度であっても検体の一定容量あたりの質量の割合(質量/容量)であってもよいが、好ましくは質量/容量である。量又は濃度を反映する値としては、上記の他に、蛍光や発光などのシグナルの強度であってもよい。
【0043】
「バイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値」とは、一定量の検体中に存在するバイオマーカー mRNAのコピー数(絶対量)で表されてもよく、又は、β2-ミクログロブリンmRNA、GAPDH mRNA、Maea mRNA及びβ-アクチン mRNA等のハウスキーピング遺伝子の発現量に対する相対発現量を反映した値であってもよい。また、蛍光や発光などのシグナルの強度で表されてもよい。
【0044】
バイオマーカータンパク質の測定値の「所定の基準値」は、腎機能低下を来した個体の検体中のバイオマーカータンパク質の測定値、及び/又は健常個体の検体中のバイオマーカータンパク質の測定値に基づいて決定される基準値をいう。具体的には、被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値(被験測定値ともいう)と、被験測定値に対応する健常個体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値(健常測定値ともいう)と、に基づいて、基準値は公知の方法により決定される。ここで「対応する」とは、同種のバイオマーカーであることを意図する。
【0045】
たとえば、腎機能低下を来した複数の個体の検体を用いて測定したバイオマーカータンパク質の測定値と、複数の健常個体の検体を用いて測定したバイオマーカータンパク質の測定値とを取得する。これらの複数の値に基づいて腎機能低下の有無を最も精度よく判定できる値を「基準値」とすることができる。ここで、「最も精度よく判定できる値」は、検査の目的によってROC曲線から求められる感度及び/又は特異度、陽性的中率、陰性的中率、四分位範囲の第1四分位、第2四分位(中央値)、第3四分位などの指標に基づいて適宜設定することができる。
【0046】
例えば一態様として複数の健常個体から得られたそれぞれの検体中のバイオマーカータンパク質の測定値の中で、最も高い測定値を基準値としてもよい。
【0047】
また、別の態様として、腎機能低下を来した個体の検体中のバイオマーカータンパク質の測定値に基づいて基準値を決定する場合には、腎機能低下を来した複数の個体の検体中のバイオマーカータンパク質の測定値の中から、最も低い測定値を閾値と決定することができる。
【0048】
また別の態様として、基準値は、健常個体の検体中のバイオマーカータンパク質の測定値そのもの、又は健常個体の複数のバイオマーカータンパク質の測定値の平均値、中央値又は最頻値とすることもできる。
【0049】
またさらに、基準値として、同一被験体であって当該被験体が健常な状態である時に取得された過去のバイオマーカータンパク質の測定値(一つの値でもよいし、複数の値の平均値、中央値、最頻値などであってもよい)を使用することもできる。
【0050】
バイオマーカー mRNAの測定値の「基準値」についても、上記バイオマーカータンパク質の測定値の「基準値」と同様に、バイオマーカータンパク質の測定値に代えてバイオマーカー mRNAの測定値を使用して決定することができる。
【0051】
ここで「基準値の範囲」とは、バイオマーカータンパク質が腎機能の低下に伴って発現や活性が上昇する性質のものであれば、基準範囲は基準値以下である。バイオマーカータンパク質が腎機能の低下に伴って発現や活性が低下する性質のものであれば、基準範囲は基準値以上である。例えば、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、及びCol5a1は、腎機能低下に伴って発現が上昇する。C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8は、腎機能低下に伴って発現が低下する。
【0052】
「健常個体」とは、特に制限されない。好ましくは「個体」の項に記載されたヒト又はヒト以外の哺乳動物であって、生化学的検査、血液検査、尿検査、血清検査、生理学的検査等において異常データを示さない個体をいう。健常個体の年齢、性別は特に制限されない。
【0053】
「複数の検体」とは、2以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上の検体である。これらは、異なる個体から採取された検体であってもよいし、採取時が異なる同一個体の複数の検体であってもよい。
【0054】
「複数の値」とは、2以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上のバイオマーカータンパク質の測定値及びバイオマーカー mRNAの測定値である。
【0055】
「複数の個体」とは、2以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上の個体である。
【0056】
基準値を決定するためにバイオマーカータンパク質の測定値及びバイオマーカー mRNAの測定値を取得する個体と、被験体の種、年齢、性別等を必ずしも同じくする必要はないが、好ましくは同種である。また、前記個体は被験体と同年代及び/又は同一性別であることが好ましい。
【0057】
「抗バイオマーカー抗体」は、上述したバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質と特異的に結合する限り制限はなく、バイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質又はその一部を抗原としてヒト以外の動物に免疫して得られたポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、及びそれらの断片(例えば、Fab、F(ab)2等)のいずれも用いることができる。また、免疫グロブリンのクラス及びサブクラスは特に制限されない。また、キメラ抗体であってもよい。さらに、scFv等であってもよい。
【0058】
抗バイオマーカー抗体を作製するために用いられる、抗原となるバイオマーカータンパク質としては、上述したバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の全体、又は一部を挙げることができる。
【0059】
本発明における「バイオマーカー mRNA検出核酸」は、上述したバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNA、又は当該mRNAの逆転写産物と特異的にハイブリダイズする配列を含む限り制限されない。検出核酸は、DNAであっても、RNAであってもよく、また、検出核酸に含まれるヌクレオチドは、天然のヌクレオチドであっても人工的に合成されたヌクレオチドであってもよい。
【0060】
検出核酸の長さは、特に制限されない。検出核酸が、マイクロアレイ等においてキャプチャープローブとして使用されるものであれば、標的核酸とハイブリダイズする配列が、好ましくは100 mer程度であり、より好ましくは60 mer程度であり、さらに好ましくは、20~30 mer程度である。キャプチャープローブは、公知のオリゴヌクレオチド合成機等を使用して製造することができる。キャプチャープローブには、標的核酸とハイブリダイズしない配列が含まれていてもよい。
【0061】
検出核酸が、PCR反応に使用されるプライマーであれば、標的核酸とハイブリダイズする配列が、好ましくは50 mer程度であり、より好ましくは30 mer程度であり、さらに好ましくは、15~25 mer程度である。プライマーは、公知のオリゴヌクレオチド合成機等を使用して製造することができる。プライマーには、標的核酸とハイブリダイズしない配列が含まれていてもよい。また、プライマーは、蛍光色素等で標識されていてもよい。
【0062】
また、RT-PCRには、プライマーの他にPCR産物のリアルタイムの定量のために使用される、PCR反応中に分解される定量用プローブを使用することもできる。定量用プローブも標的核酸とハイブリダイズする限り、制限されない。定量用プローブは、標的核酸とハイブリダイズする配列を含む、5~20 mer程度の核酸であることが好ましい。さらに定量用プローブの一端には、蛍光色素が標識され、定量用プローブのもう一端には、当該蛍光色素のクエンチャーが標識されていることが好ましい。
【0063】
2.各測定値の取得方法
本発明におけるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、及びバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値の取得方法は、それぞれの測定値が取得できる限り制限されない。例えば、以下に述べる方法に従って取得することができる。
【0064】
2-1.バイオマーカーのタンパク質の測定値の取得
バイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値(以下、本明細書において「バイオマーカータンパク質の測定値」と略記することもある)を取得する場合、本工程では、当該測定値を取得するために、上記「1.用語の説明」で述べた抗バイオマーカー抗体を用いることが可能である。また、後述する抗バイオマーカー抗体を含む検査試薬を使用してもよい。
【0065】
バイオマーカータンパク質の測定値を取得する方法としては、公知のELISA法等を使用して行うことができる。
【0066】
本実施態様では、あらかじめ抗原捕捉用の抗バイオマーカー抗体をマイクロプレート等の固相上に固定化し、固定化された抗バイオマーカー抗体と検体中のバイオマーカータンパク質の複合体を形成させることができる。固相上に固定化された当該複合体又は固相上で形成された複合体を、当該技術において公知の方法で検出することにより、検体に含まれるバイオマーカータンパク質の量又は濃度を測定することができる。
【0067】
抗原捕捉用の抗バイオマーカー抗体の固相への固定の方法は、特に限定されない。公知の方法を使用して、直接的に、又は別の物質を介して間接的に行うことができる。直接の結合としては、例えば、物理的吸着などが挙げられる。好ましくは、イムノプレート等を使用して、直接抗バイオマーカー抗体をマイクロプレートに物理的に結合させることができる。
【0068】
固相の素材は特に限定されず、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。固相の形状は特に限定されず、例えば、マイクロプレート、マイクロチューブ、試験管などが挙げられる。
【0069】
本方法においては、前記複合体の形成に続いて、固相を洗浄する操作を含んでもよい。洗浄する場合には、界面活性剤等を含むPBS等を使用することができる。
【0070】
本方法において、前記複合体の検出は、標識物質で標識された検出用抗バイオマーカー抗体を使用して行うか、未標識の抗バイオマーカー抗体と当該未標識の抗バイオマーカー抗体と結合することができる標識物質で標識された抗イムノグロブリン抗体等を使用して行うことができるが、標識された検出用抗バイオマーカー抗体を使用することが好ましい。また、検出用抗バイオマーカー抗体のバイオマーカータンパク質におけるエピトープと抗原捕捉用抗バイオマーカー抗体のバイオマーカータンパク質におけるエピトープとは異なることが好ましい。
【0071】
検出用抗バイオマーカー抗体又は標識抗イムノグロブリン抗体に用いられる標識物質は、検出可能なシグナルが生じるかぎり、特に限定されない。例えば、蛍光物質、放射性同位元素、及び酵素等が挙げられる。酵素としては、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ等が挙げられる。蛍光物質としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、Alexa Fluor(登録商標)などの蛍光色素、GFPなどの蛍光タンパク質などが挙げられる。放射性同位元素としては、125I、14C、32Pなどが挙げられる。それらの中でも、標識物質として、アルカリホスファターゼ、又はペルオキシダーゼが好ましい。
【0072】
検出用抗バイオマーカー抗体は、当該技術において公知の標識方法により、抗バイオマーカー抗体を上記の標識物質で標識して得られる。また、市販のラベリングキットなどを用いて標識してもよい。また、標識イムノグロブリン抗体は、抗バイオマーカー抗体の標識と同じ手法を用いてもよいし、市販のものを使用してもよい。
【0073】
本実施態様では、複合体に含まれる標識抗バイオマーカー抗体の標識物質により生じるシグナルを検出することにより、検体に含まれるバイオマーカーの測定値を取得できる。ここで、「シグナルを検出する」とは、シグナルの有無を定性的に検出すること、シグナル強度を定量すること、及び、シグナルの強度を半定量的に検出することを含む。半定量的な検出とは、シグナルの強度を、「シグナル発生せず」、「弱」、「中」、「強」などのように段階的に示すことをいう。本工程では、シグナルの強度を定量的又は半定量的に検出することが好ましい。
【0074】
シグナルを検出する方法は、公知の方法を使用することができる。本方法では、上記の標識物質に由来するシグナルの種類に応じた測定方法を適宜選択することができる。例えば、標識物質が酵素である場合、該酵素に対する基質を反応させることによって発生する光、色などのシグナルを、ルミノメーター、分光光度計などの公知の装置を用いて測定することにより行うことができる。
【0075】
酵素の基質は、該酵素の種類に応じて公知の基質から適宜選択できる。例えば、酵素としてアルカリホスファターゼを用いる場合、基質としては、CDP-Star(登録商標)(4-クロロ-3-(メトキシスピロ[1, 2-ジオキセタン-3, 2’-(5’-クロロ)トリクシロ[3. 3. 1. 13, 7]デカン]-4-イル)フェニルリン酸2ナトリウム)等の化学発光基質、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸(BCIP)、5-ブロモ-6-クロロ-インドリルリン酸2ナトリウム、p-ニトロフェニルリン酸等の発色基質が挙げられる。標識物質がペルオキシダーゼである場合には、テトラメチルベンジジン(TMB)等を挙げることができる。
【0076】
標識物質が放射性同位体である場合は、シグナルとしての放射線を、シンチレーションカウンターなどの公知の装置を用いて測定できる。また、標識物質が蛍光物質である場合は、シグナルとしての蛍光を、蛍光マイクロプレートリーダーなどの公知の装置を用いて測定できる。なお、励起波長及び蛍光波長は、用いた蛍光物質の種類に応じて適宜決定できる。
【0077】
シグナルの検出結果は、バイオマーカータンパク質の測定値として用いることができる。例えば、シグナルの強度を定量的に検出する場合は、シグナル強度の測定値自体又は該シグナル強度の測定値から算出される値を、バイオマーカーのタンパク質の測定値として用いることができる。
【0078】
2-2.バイオマーカー遺伝子の測定値の取得
バイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値(以下、本明細書において「バイオマーカー mRNAの測定値」と略記することもある)を取得するために、マイクロアレイ法、RNA-seq解析法、定量的RT-PCR法等公知の方法を使用することができる。マイクロアレイ法に使用するプローブは、自ら選択したプローブ又は公知のプローブを合成して使用してもよく、また市販のマイクロアレイチップを使用してもよい。
【0079】
ここで、本方法においては、検体から抽出したtotal RNA及びmRNAのいずれを用いてもよい。total RNA及びmRNA抽出に用いる検体は、個体から採取されてすぐにRNA抽出に供されるか、個体から採取されてすぐに凍結(好ましくは、-196℃以下の雰囲気下(液体窒素中で急冷)して、RNA抽出まで-80℃以下で保存されることが好ましい。
【0080】
検体からのtotal RNA及びmRNAの抽出方法は特に制限されず、公知の抽出方法を使用することができる。
【0081】
マイクロアレイ法による定量は、公知の方法に従って行うことができ、バイオマーカー mRNAの発現量は、ハウスキーピング遺伝子の発現量に対する相対発現量として表してもよく、蛍光色素等のシグナル強度の測定値として表すことができる。
【0082】
RT-PCRによる定量は、検体から抽出したtotal RNA又はmRNAを鋳型として逆転写反応を行い、得られたcDNAを鋳型としてバイオマーカー mRNAの特異的なプライマーを使用してリアルタイムPCR法等で解析することにより行うことができる。また、この場合、バイオマーカー mRNAの発現量は、ハウスキーピング遺伝子の発現量に対する相対発現量として表してもよく、蛍光色素等のシグナルの強度の測定値として表してもよい。
【0083】
また、RNA-seq解析法は、検体から抽出したmRNAを断片化し、これを鋳型として逆転写反応によるcDNAの合成とライブラリ作成を行う。各ライブラリに含まれる断片について次世代シークエンサーによる塩基配列を決定し、その情報をリファレンス遺伝子配列へマッピングし、mRNAの発現量をRPKM(Reads Per Killobases per Million)として表す。RPKMは、ヒートマップ等のシグナルの強度として表してもよい。
【0084】
上記シグナルの検出結果は、バイオマーカー mRNAの発現量として用いることができる。例えば、シグナルの強度を定量的に検出する場合は、シグナル強度の測定値自体又は該シグナル強度の測定値から算出される値を、バイオマーカー mRNAの発現量として用いることができる。
【0085】
上記シグナル強度の測定値から算出される値としては、例えば、該シグナル強度の測定値から陰性対照試料のシグナル強度の測定値を差し引いた値、該シグナル強度の測定値を陽性対照試料のシグナル強度の測定値で除した値、及びそれらの組み合わせなどが挙げられる。陰性対照試料としては、健常者の検体等が挙げられる。陽性対照試料としては、バイオマーカー mRNAを所定の発現量で含む検体が挙げられる。
【0086】
ここで、前記バイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値は、各バイオマーカーの機能を反映する測定値として取得されてもよい。
【0087】
3.ハードウェアの構成
第1から第3の実施態様で使用されるハードウェアの構成を
図1及び
図2を用いて説明する。
【0088】
図1は、本発明の第1~第3の実施態様に係るシステム100の概観図であり、
図2は、システム100のハードウェア構成を示すブロック図である。システム100は、演算装置(以下では、同様のハードウェア構成を有し、後に説明するような異なる機能構成を有する演算装置に言及することになるため、これら異なる機能構成を有する演算装置を総称するために、「演算装置1,2,3」と表記する)と、入力部8と、表示部9と、測定装置5aと、測定装置5bと、を備える。
【0089】
演算装置1,2,3は、例えば汎用のパーソナルコンピュータで構成されており、後述するデータ処理を行うCPU101と、データ処理の作業領域に使用するメモリ102と、処理データを記録する記録部103と、各部の間でデータを伝送するバス104と、外部機器とのデータの入出力を行うインタフェース部105(以下、I/F部と記す)とを備えている。入力部8及び表示部9は、演算装置1,2,3に接続されており、入力部8は、キーボード等で構成され、表示部9は、液晶ディスプレイ等で構成されている。入力部8と表示部9とは、一体化されてタッチパネル付き表示装置として実現されてもよい。なお、演算装置1,2,3は一体の装置である必要はなく、CPU101、メモリ102、記録部103等が別所に配置され、これらがネットワークで接続されていてもよい。また、入力部8や表示部9を省略した操作者を必要としない装置であってもよい。
【0090】
また、演算装置1,2,3と、測定装置5aと、測定装置5bとについても、一カ所に配置される必要は必ずしもなく、別所に設けられた装置間をネットワークで通信可能に接続したシステムを構成でもよい。
【0091】
以下の説明においては、特に断らない限り演算装置1,2,3が行う処理は、記録部103又はメモリ102に格納されたプログラムに基づいて、実際には演算装置1,2,3のCPU101が行う処理を意味する。CPU101はメモリ102を作業領域として必要なデータ(処理途中の中間データ等)を一時記憶し、記録部103に演算結果等の長期保存するデータを適宜記録する。
【0092】
測定装置5aは、タンパク質を測定するための装置であり、試料置き場51と、反応部52と、検出部53とを備える。試料置き場51にセットされた被験体から採取された検体は、反応部52に設置された抗体捕捉用抗バイオマーカー抗体が固相されたマイクロプレートに分注されインキュベーションされる。必要に応じて未反応の抗原を除去した後、検出抗体がマイクロプレートに分注され、インキュベーションされる。必要に応じて未反応の抗原を除去した後、検出用抗体を検出するための基質がマイクロプレートに分注され、マイクロプレートが検出部53に移動され、基質が反応して発生したシグナルが測定される。また、測定装置5aの別態様は、マイクロアレイ解析によるmRNAの測定値の測定するための装置であり、試料置き場51にセットされた逆転写反応物を反応部52にセットされたマイクロアレイチップ上に分注し、ハイブリダイゼーションを行い、洗浄した後、検出部53に移動させシグナルを検出する。
【0093】
さらに、測定装置5aの別態様は、RT-PCRによるmRNAの測定値の測定するための装置であり、試料置き場51にセットされた逆転写反応物を反応部52にセットされたマイクロチューブ内に分注し、続いて定量的PCR用試薬をマイクロチューブ内に分注する。反応部52でPCR反応を行いながら、検出部53でチューブ内のシグナルを検出する。
【0094】
測定装置5bは、mRNAを測定するための装置であり、配列解析部54を備える。RNA-Seq用の反応を行ったサンプルを配列解析部54にセットし、配列解析部54内で、塩基配列の解析をおこなう。
【0095】
測定装置5a,5bは、有線又は無線によって演算装置1,2,3に接続されている。測定装置5aは、タンパク質の測定値をA/D変換して、デジタルデータとして演算装置1,2,3に送信する。同様に、測定装置5bは、mRNAの測定値をA/D変換して、デジタルデータとして演算装置1,2,3に送信する。これにより、演算装置1,2,3は、タンパク質の測定値及びmRNAの測定値を、演算処理可能なデジタルデータとして取得することができる。なお、腎疾患マーカーの測定値は、例えば医療機関(図示せず)からインターネットを介してデジタルデータとして送信される。これにより、演算装置1,2,3は、腎疾患マーカーの測定値を、デジタルデータとして取得することができる。
【0096】
4.腎疾患の予測
4-1.概要
第1の実施態様においては、上記「2.各測定値の取得方法」の方法を実施することによって取得される測定値を用いて、被験体の腎疾患を予測する。
【0097】
より具体的には、本実施態様における被験体の腎疾患を予測する方法は、被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値を取得する取得工程と、前記取得工程で取得された測定値に基づいて、前記腎疾患を予測する予測工程とを含む。
【0098】
本実施態様は、具体的には、上記「2.各測定値の取得方法」によって取得された前記測定値を、測定値それぞれのバイオマーカーに対応する所定の基準値と比較し、該測定値が前記基準値範囲外である場合には、前記被験体が腎疾患であると決定することができる。
【0099】
また、1群のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲外である場合には、前記腎疾患に、FGF23が関与していると決定してもよい。また、2群のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲内である場合、前記腎疾患に、FGF23が関与していると決定してもよい。より好ましくは、1群のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲外であり、2群のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲内である場合に、前記腎疾患に、FGF23が関与していると決定してもよい。
【0100】
前記工程は、後述するCPU101が行ってもよいが、検査者が行ってもよい。
【0101】
さらに、前記腎疾患の予測方法において、腎疾患であると予測された場合には、腎疾患を改善するための治療(例えば、低リン食等の食事療法)を行う工程を、含めてもよい。
【0102】
4-2.腎機能を予測する装置
第1の実施態様は、CPU101が後述するプログラムにしたがって下記の演算手段を実行することによって制御される、被験体の腎疾患を予測する装置を含む:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値を取得する取得手段、並びに
前記取得手段が取得した測定値に基づいて、前記腎疾患を予測する予測手段。
【0103】
本実施態様では、上記装置として演算装置1を備えたシステム100(
図1及び
図2)によって、腎疾患の予測を行うことができる。
【0104】
図3は、第1の実施態様に係る演算装置1の機能を説明するためのブロック図である。演算装置1は、測定値取得部11と、基準値取得部12と、測定値比較部13と、予測部14とを備える。これらの機能ブロックは、本発明に係るプログラムを例えば演算装置1の記録部103又はメモリ102にインストールし、このプログラムをCPU101が実行することにより実現される。なお、特許請求の範囲に記載の取得手段、予測手段が、
図3に示す測定値取得部11、予測部14にそれぞれ対応する。基準値取得部12と、測定値比較部13とは、任意の構成であり得る。
【0105】
本実施態様では、バイオマーカータンパク質の測定値M11は、測定装置5aから演算装置1に取り込まれ、バイオマーカーmRNAの測定値M21は、測定装置5bから演算装置1に取り込まれる。バイオマーカータンパク質の基準値R12、バイオマーカーmRNAの基準値R22は、演算装置1の外部に記録されており、例えばインターネットを介して演算装置1に取り込まれる。
【0106】
なお、バイオマーカータンパク質の測定値M11、バイオマーカーmRNAの測定値M21は、ネットワークを介して医療機関(図示せず)から取り込まれてもよい。また、バイオマーカータンパク質の基準値R12、バイオマーカーmRNAの基準値R22は、演算装置1の記録部103又はメモリ102に予め記録されていてもよい。
【0107】
また、測定値取得部11と、基準値取得部12と、測定値比較部13と、予測部14の各機能ブロックは、単一のCPUで実行されることは必ずしも必要なく、複数のCPUで分散して処理されてもよい。たとえば、測定値取得部11と、基準値取得部12と、測定値比較部13の機能は第1のコンピュータのCPUにより実行され、予測部14の機能は別の第2のコンピュータのCPUにより実行される、というような構成であってもよい。
【0108】
また、演算装置1は、以下の
図4で説明するステップS11~S17の処理を行うために、本発明に係るプログラムを、例えば実行形式(例えばプログラミング言語からコンパイラにより変換されて生成される)で記録部103に予め記録しており、演算装置1は、記録部103に記録したプログラムを使用して処理を行う。なお、上記プログラムは、CD-ROM等の、コンピュータ読み取り可能であって一時的でない有形の記録媒体109から、演算装置1にインストールしてもよいし、演算装置1をインターネット(図示せず)と接続し、インターネットを介してプログラムのプログラムコードをダウンロードしてもよい。
【0109】
なお、本項で使用される用語の説明は、上記I.4-1.の説明を援用する。
【0110】
4-3.演算装置の動作とプログラム
第1の実施態様における腎疾患の予測方法は、第1の実施態様に係る演算装置1が、下記プログラムによって、本発明の下記の腎疾患の予測方法を実行してもよい。
【0111】
図4は、本発明の第1の態様に係る演算装置1が動作を示すフローチャートである。なお、
図3に示す測定値取得部11により
図4のステップS11が、基準値取得部12により
図4のステップS12が、測定値比較部13により
図4のステップS13が、予測部14により
図4に示すステップS15及びS16の処理がそれぞれ実行される。
【0112】
ステップS11では、初めに、検査者からのバイオマーカータンパク質の測定値M11又はバイオマーカーmRNAの測定値M21の取得開始の入力を入力部8から受け付けることにより、又は測定装置5a又は5bからの測定開始の指令を受け付けることにより、測定値取得部11は、前記測定値の取得を開始する。ステップS11は、特許請求の範囲に記載の取得処理に相当する。
【0113】
次に、ステップS12では、基準値取得部12は、検査者による入力部8からの測定値の取得開始の入力又は比較開始の入力に応じて、あるいは測定値取得部11による前記測定値の取得に応じて、バイオマーカータンパク質の基準値R12、バイオマーカーmRNAの基準値R22を取得する。
【0114】
次に、ステップS13では、測定値比較部13が、バイオマーカータンパク質の測定値M11又はバイオマーカーmRNAの測定値M21と、各バイオマーカーの測定値に対応するバイオマーカータンパク質の基準値R12、又はバイオマーカーmRNAの基準値R22とを比較する。
【0115】
次に、ステップS14において、予測部14は、ステップS13で比較した結果が、各バイオマーカーの基準値の範囲内である場合には、被験者が腎疾患ではないと予測する(ステップS15)。また、予測部14は、ステップS13で比較した結果が、各バイオマーカーの基準値の範囲外である場合には、被験者が腎疾患であると予測する(ステップS16)。ステップS14、ステップS15、ステップS16は、特許請求の範囲に記載の予測処理に相当する。
【0116】
得られた予測結果は、演算装置1の表示部9に表示されるか(ステップS17)、演算装置1内の記録部103に記録される。もしくは、インターネットを介して接続された、演算装置1の外部の例えば医療機関におけるコンピュータ端末の表示部に表示されてもよい。
【0117】
第1の実施態様に係る、腎疾患を予測するためのコンピュータプログラムは、演算装置1のCPU101に、前記ステップS11~S17を実行させるプログラムを含む。前記コンピュータプログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、光ディスク等の記録媒体に記憶されていてもよい。前記記録媒体へのプログラムの記憶形式は、前記演算装置が前記プログラムを読み取り可能である限り制限されない。
【0118】
なお、本項で使用される用語の説明は、上記I.4-1.の説明を援用する。
【0119】
5.リン代謝異常の予測
5-1.概要
第2の実施態様においては、上記「2.各測定値の取得方法」の方法を実施することによって取得される測定値を用いて、被験体におけるリン代謝異常を予測する。
【0120】
より具体的には、本実施態様における被験体のリン代謝異常を予測する方法は、被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値を取得する取得工程と、前記取得工程で取得された測定値に基づいて、前記リン代謝異常を予測する予測工程とを含む。
【0121】
本実施態様は、具体的には、上記「2.各測定値の取得方法」によって取得された前記測定値を、測定値それぞれに対応する所定の基準値と比較し、該測定値が前記基準値範囲外である場合には、前記被験体がリン代謝異常であると決定することができる。
【0122】
また、1群のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲外である場合には、前記リン代謝異常に、FGF23が関与していると決定してもよい。また、2群のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲内である場合、前記リン代謝異常に、FGF23が関与していると決定してもよい。より好ましくは、1群のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲外であり、2群のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲内である場合に、前記リン代謝異常に、FGF23が関与していると決定してもよい。
【0123】
前記工程は、後述するCPU101が行ってもよいが、検査者が行ってもよい。
【0124】
さらに、前記リン代謝異常の予測方法において、リン代謝異常であると予測された場合には、リン代謝異常を改善するための治療(例えば、低リン食等の食事療法)を行う工程を、含めてもよい。
【0125】
5-2.リン代謝異常を予測する装置
第2の実施態様は、CPU101が、後述するプログラムによって下記の演算機能を実行することによって制御される、被験体のリン代謝異常を予測する装置を含む:
前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値を取得する取得手段、並びに
前記取得手段が取得した測定値に基づいて、前記リン代謝異常を予測する予測手段。
【0126】
本実施態様では、上記装置として演算装置1を備えたシステム100(
図1及び
図2)によって、リン代謝異常の予測を行うことができる。
【0127】
第2の実施態様に係る演算装置2の機能を説明するためのブロック図を
図3に示す。演算装置2の構成は、上記4-2.で述べた演算装置1と同様である。
【0128】
なお、本項で使用される用語の説明は、上記I.5-1.の説明を援用する。
【0129】
5-3.演算装置の動作とプログラム
第2の実施態様におけるリン代謝異常の予測方法は、第2の実施態様に係る演算装置2が、下記プログラムによって、本発明の下記のリン代謝異常の予測方法を実行してもよい。
【0130】
図5は、本発明の第2の態様に係る演算装置2の動作を示すフローチャートである。なお、
図3に示す測定値取得部11により
図5のステップS21が、基準値取得部12により
図5のステップS22が、測定値比較部13により
図5のステップS23が、予測部14により
図5に示すステップS25及びS26の処理がそれぞれ実行される。
【0131】
ステップS21では、初めに、検査者からのバイオマーカータンパク質の測定値M11又はバイオマーカーmRNAの測定値M21の取得開始の入力を入力部8から受け付けることにより、又は測定装置5a又は5bからの測定開始の指令を受け付けることにより、測定値取得部11は、前記測定値の取得を開始する。ステップS21は、特許請求の範囲に記載の取得処理に相当する。
【0132】
次に、ステップS22では、基準値取得部12は、検査者による入力部8からの測定値の取得開始の入力又は比較開始の入力に応じて、あるいは測定値取得部11による前記測定値の取得に応じて、バイオマーカータンパク質の基準値R12、バイオマーカーmRNAの基準値R22を取得する。
【0133】
次に、ステップS23では、測定値比較部13が、バイオマーカータンパク質の測定値M11又はバイオマーカーmRNAの測定値M21と、各バイオマーカーの測定値に対応するバイオマーカータンパク質の基準値R12、又はバイオマーカーmRNAの基準値R22とを比較する。
【0134】
次に、ステップS24において、予測部14は、ステップS23で比較した結果が、各バイオマーカーの基準値の範囲内である場合には、被験者がリン代謝異常ではないと予測する(ステップS25)。また、予測部14は、ステップS23で比較した結果が、各バイオマーカーの基準値の範囲外である場合には、被験者がリン代謝異常であると予測する(ステップS26)。ステップS24、ステップS25、ステップS26は、特許請求の範囲に記載の予測処理に相当する。
【0135】
得られた予測結果は、演算装置2の表示部9に表示されるか(ステップS27)、演算装置2内の記録部103に記録される。もしくは、インターネットを介して接続された、演算装置2の外部の例えば医療機関におけるコンピュータ端末の表示部に表示されてもよい。
【0136】
第2の実施態様に係る、リン代謝異常を予測するためのコンピュータプログラムは、演算装置2のCPU101に、前記ステップS21~S27を実行させるプログラムを含む。前記コンピュータプログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、光ディスク等の記録媒体に記憶されていてもよい。前記記録媒体へのプログラムの記憶形式は、前記演算装置が前記プログラムを読み取り可能である限り制限されない。
【0137】
なお、本項で使用される用語の説明は、上記I.5-1.の説明を援用する。
【0138】
6.FGF23の活性化の予測
6-1.概要
第3の実施態様においては、上記「2.各測定値の取得方法」の方法を実施することによって取得される測定値を用いて、被験体におけるFGF23の活性化を予測する。
【0139】
より具体的には、本実施態様における被験体のFGF23の活性化を予測する方法は、被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値を取得する取得工程と、前記取得工程で取得された測定値に基づいて、前記FGF23の活性化を予測する予測工程とを含む。
【0140】
本実施態様は、具体的には、上記「2.各測定値の取得方法」によって取得された前記測定値を、測定値それぞれに対応する所定の基準値と比較し、該測定値が前記基準値範囲外である場合には、前記被験体が腎疾患であると決定することができる。
【0141】
また、1群のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲外である場合には、前記被験体においてFGF23の活性化していると決定してもよい。また、2群のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲内である場合、前記被験体においてFGF23の活性化していると決定してもよい。より好ましくは、1群のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲外であり、2群のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲内である場合に、前記被験体においてFGF23の活性化していると決定してもよい。
【0142】
前記工程は、後述するCPU101が行ってもよいが、検査者が行ってもよい。
【0143】
さらに、前記FGF23の活性化の予測方法において、FGF23の活性化であると予測された場合には、FGF23の活性化を改善するための治療(例えば、抗FGF抗体の投与、高リン食等の食事療法)を行う工程を、含めてもよい。
【0144】
6-2.FGF23の活性化を予測する装置
第3の実施態様は、CPU101が、後述するプログラムによって下記の演算機能を実行することによって制御される、被験体のFGF23の活性化を予測する装置を含む: 前記被験体から採取された皮膚由来検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値、及び/又は、前記被験体から採取された検体中に含まれるバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値を取得する取得手段、並びに
前記取得手段が取得した測定値に基づいて、前記FGF23の活性化を予測する予測手段。
【0145】
本実施態様では、上記装置として演算装置1を備えたシステム100(
図1及び
図2)によって、FGF23の活性化の予測を行うことができる。
【0146】
第3の実施態様に係る演算装置3の機能を説明するためのブロック図を
図3に示す。演算装置3の構成は、上記4-2.で述べた演算装置1と同様である。
【0147】
なお、本項で使用される用語の説明は、上記I.6-1.の説明を援用する。
【0148】
6-3.演算装置の動作とプログラム
第3の実施態様におけるFGF23の活性化の予測方法は、第3の実施態様に係る演算装置3が、下記プログラムによって、本発明の下記のFGF23の活性化の予測方法を実行してもよい。
【0149】
図6は、本発明の第3の態様に係る演算装置3の動作を示すフローチャートである。なお、
図3に示す測定値取得部11により
図6のステップS31が、基準値取得部12により
図6のステップS32が、測定値比較部13により
図6のステップS33が、予測部14により
図6に示すステップS35及びS36の処理がそれぞれ実行される。
【0150】
ステップS31では、初めに、検査者からのバイオマーカータンパク質の測定値M11又はバイオマーカーmRNAの測定値M21の取得開始の入力を入力部8から受け付けることにより、又は測定装置5a又は5bからの測定開始の指令を受け付けることにより、測定値取得部11は、前記測定値の取得を開始する。ステップS31は、特許請求の範囲に記載の取得処理に相当する。
【0151】
次に、ステップS32では、基準値取得部12は、検査者による入力部8からの測定値の取得開始の入力又は比較開始の入力に応じて、あるいは測定値取得部11による前記測定値の取得に応じて、バイオマーカータンパク質の基準値R12、バイオマーカーmRNAの基準値R22を取得する。
【0152】
次に、ステップS33では、測定値比較部13が、バイオマーカータンパク質の測定値M11又はバイオマーカーmRNAの測定値M21と、各バイオマーカーの測定値に対応するバイオマーカータンパク質の基準値R12、又はバイオマーカーmRNAの基準値R22とを比較する。
【0153】
次に、ステップS34において、予測部14は、ステップS33で比較した結果が、各バイオマーカーの基準値の範囲内である場合には、被験者においてFGF23が活性化していないと予測する(ステップS35)。また、予測部14は、ステップS33で比較した結果が、各バイオマーカーの基準値の範囲外である場合には、被験者においてFGF23が活性化していると予測する(ステップS36)。ステップS34、ステップS35、ステップS36は、特許請求の範囲に記載の予測処理に相当する。
【0154】
得られた予測結果は、演算装置3の表示部9に表示されるか(ステップS37)、演算装置3内の記録部103に記録される。もしくは、インターネットを介して接続された、演算装置3の外部の例えば医療機関におけるコンピュータ端末の表示部に表示されてもよい。
【0155】
第3の実施態様に係る、FGF23の活性化を予測するためのコンピュータプログラムは、演算装置3のCPU101に、前記ステップS31~S37を実行させるプログラムを含む。前記コンピュータプログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、光ディスク等の記録媒体に記憶されていてもよい。前記記録媒体へのプログラムの記憶形式は、前記演算装置が前記プログラムを読み取り可能である限り制限されない。
【0156】
なお、本項で使用される用語の説明は、上記I.6-1.の説明を援用する。
【0157】
II.第4及び第5の実施態様
1.用語の説明
第4及び第5の実施態様の説明において、使用する用語について説明する。
【0158】
「被験体」は、被験物質を投与する対象となる個体であり、好ましくはヒトが除かれる。ヒト以外の哺乳動物としては、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、サル等が挙げられる。好ましくは、ヒト、ネコ、イヌである。また、個体の年齢、性別は問わない。
【0159】
被験体は、腎機能低下やその他の腎疾患の既往を有している個体であっても、有していない個体であってもよい。また、FGF23が関連する疾患を患っている被験体でも、患っていない被験体であってもよい。
【0160】
本実施態様において、検体には、皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一つが含まれる。また、前記皮膚から採取された検体は、生体の皮膚に由来する限り制限されない。また、皮膚由来検体には、汗、皮膚からの分泌液等が含まれる。皮膚の採取方法も制限されず、生検材料、ピアスの穴を空けた際に穿孔針に付着する皮膚、皮膚表面の擦過等を上げることができる。
【0161】
さらに、検体は、新鮮なものであっても、保存されていたものであってもよい。検体を保存する場合には、室温環境、冷蔵環境又は冷凍環境において保存することができるが、好ましくは冷凍保存である。
【0162】
本実施態様において、「被験組織」とは、被験物質を投与する対象となる組織であり、例えば、前記被験体となりうる個体から採取され、体外で培養される等して体外において生存している組織である。当該組織は、一器官全体であってもよく、一器官の一部であってもよい。
【0163】
本実施態様において、「被験細胞」とは、被験物質を投与する対象となる細胞であり、例えば、前記被験体となりうる個体から採取され、体外で培養される等して体外において生存している細胞である。当該細胞は、初代培養等の継代性が限られている細胞であってもよく、継代性が維持されている、いわゆる培養細胞であってもよい。また、これらは、遺伝子操作によって作成された細胞であってもよい。
【0164】
本明細書において、「被験物質」とは、有効成分の候補物質であるか否かを評価する対象となりうる物質であり、特に制限されない。例えば、化合物、タンパク質、ペプチド、核酸、脂質、糖質、糖脂質、糖タンパク、金属等を挙げることができる。被験物質の投与方法も特に制限されない。被験細胞や被験組織に被験物質を投与する場合には、例えばその培養培地に1pg/mlから1mg/mlとなるように被験物質を投与することができる。また、被験体個体の場合には、1日あたり1ng/kg~1g/kgとなるように被験物質を投与することができる。被験物質の投与から、検体の採取までの期間は、当該被験物質の効果が得られる限り、特に制限されない。
【0165】
さらに、被験物質で処理された被験体、被験組織又は被験細胞から採取された検体は、本明細書において、「被験物質処理検体」と呼ばれることもある。また、被験物質で処理されていない被験体、被験組織又は被験細胞から採取された検体は、本明細書において、「未処理検体」と呼ばれることもある。
【0166】
本実施態様において、「腎疾患」、「FGF23が関連する疾患」、「バイオマーカー」、「バイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値」、「バイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値」、「所定の基準値」、「健常個体」、「複数の検体」、「複数の値」、「抗バイオマーカー抗体」、「バイオマーカー mRNA検出核酸」の説明は、前記I.1.の用語の説明をここに援用する。また、「バイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値」、「バイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値」、の取得方法は、上記I.2.に準ずる。
【0167】
2.ハードウェアの構成
第4及び第5の実施態様で使用されるハードウェアの構成を
図7及び
図8を用いて説明する。
【0168】
図7は、本発明の第4及び第5の実施態様に係るシステム200の概観図であり、
図8は、システム200のハードウェア構成を示すブロック図である。システム200は、スクリーニング装置(以下では、同様のハードウェア構成を有し、後に説明するような異なる機能構成を有するスクリーニング装置に言及することになるため、これら異なる機能構成を有するスクリーニング装置を総称するために、「スクリーニング装置4,5」と表記する)と、入力部8と、表示部9と、測定装置5aと、測定装置5bと、を備える。
【0169】
スクリーニング装置4,5は、例えば汎用のパーソナルコンピュータで構成されており、後述するデータ処理を行うCPU101と、データ処理の作業領域に使用するメモリ102と、処理データを記録する記録部103と、各部の間でデータを伝送するバス104と、外部機器とのデータの入出力を行うインタフェース部105(以下、I/F部と記す)とを備えている。入力部8及び表示部9は、スクリーニング装置4,5に接続されており、入力部8は、キーボード等で構成され、表示部9は、液晶ディスプレイ等で構成されている。入力部8と表示部9とは、一体化されてタッチパネル付き表示装置として実現されてもよい。なお、スクリーニング装置4,5は一体の装置である必要はなく、CPU101、メモリ102、記録部103等が別所に配置され、これらがネットワークで接続されていてもよい。また、入力部8や表示部9を省略した操作者を必要としない装置であってもよい。
【0170】
また、スクリーニング装置4,5と、測定装置5aと、測定装置5bとについても、一カ所に配置される必要は必ずしもなく、別所に設けられた装置間をネットワークで通信可能に接続したシステムを構成でもよい。
【0171】
以下の説明においては、特に断らない限りスクリーニング装置4,5が行う処理は、記録部103又はメモリ102に格納されたプログラムに基づいて、実際にはスクリーニング装置4,5のCPU101が行う処理を意味する。CPU101はメモリ102を作業領域として必要なデータ(処理途中の中間データ等)を一時記憶し、記録部103に演算結果等の長期保存するデータを適宜記録する。
【0172】
測定装置5aは、タンパク質を測定するための装置であり、試料置き場51と、反応部52と、検出部53とを備える。試料置き場51にセットされた被験体から採取された検体は、反応部52に設置された抗体捕捉用抗バイオマーカー抗体が固相されたマイクロプレートに分注されインキュベーションされる。必要に応じて未反応の抗原を除去した後、検出抗体がマイクロプレートに分注され、インキュベーションされる。必要に応じて未反応の抗原を除去した後、検出用抗体を検出するための基質がマイクロプレートに分注され、マイクロプレートが検出部53に移動され、基質が反応して発生したシグナルが測定される。また、測定装置5aの別態様は、マイクロアレイ解析によるmRNAの測定値の測定するための装置であり、試料置き場51にセットされた逆転写反応物を反応部52にセットされたマイクロアレイチップ上に分注し、ハイブリダイゼーションを行い、洗浄した後、検出部53に移動させシグナルを検出する。
【0173】
さらに、測定装置5aの別態様は、RT-PCRによるmRNAの測定値の測定するための装置であり、試料置き場51にセットされた逆転写反応物を反応部52にセットされたマイクロチューブ内に分注し、続いて定量的PCR用試薬をマイクロチューブ内に分注する。反応部52でPCR反応を行いながら、検出部53でチューブ内のシグナルを検出する。
【0174】
測定装置5bは、mRNAを測定するための装置であり、配列解析部54を備える。RNA-Seq用の反応を行ったサンプルを配列解析部54にセットし、配列解析部54内で、塩基配列の解析をおこなう。
【0175】
測定装置5a,5bは、有線又は無線によってスクリーニング装置4,5に接続されている。測定装置5aは、タンパク質の測定値をA/D変換して、デジタルデータとしてスクリーニング装置4,5に送信する。同様に、測定装置5bは、mRNAの測定値をA/D変換して、デジタルデータとしてスクリーニング装置4,5に送信する。これにより、スクリーニング装置4,5は、タンパク質の測定値及びmRNAの測定値を、演算処理可能なデジタルデータとして取得することができる。なお、腎疾患マーカーの測定値は、例えば医療機関(図示せず)からインターネットを介してデジタルデータとして送信される。これにより、スクリーニング装置4,5は、腎疾患マーカーの測定値を、デジタルデータとして取得することができる。
【0176】
3.FGF23の機能発現を抑制するための有効成分の候補物質のスクリーニング
3-1.概要
第4の実施態様においては、上記「I.2.各測定値の取得方法」の方法を実施することによって取得される測定値を用いて、FGF23の機能発現を抑制するための有効成分の候補物質のスクリーニングを行う。
【0177】
より具体的には、本実施態様における被験体のFGF23の機能発現を抑制するための有効成分の候補物質のスクリーニングする方法は、被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一つの被験物質処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する取得工程と、第1の測定値取得手段が取得した測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する工程とを含む。
【0178】
本実施態様は、好ましくは、上記「I.2.各測定値の取得方法」によって、被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一種の未処理検体中の対応するバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する工程を含む。また、前記被験物質処理検体から取得された各バイオマーカーの測定値と、それぞれに対応する未検体処理中の測定値とを比較し、未処理検体のバイオマーカー測定値と比較して被験物質処理検体のバイオマーカーの測定値が変化していれば、前記被験物質がFGF23の機能発現を抑制する有効成分であると決定することができる。
【0179】
ここで、FGF23の機能発現とは、FGF23の本来の機能が発揮されることをいう。FGF23の機能発現の例は、例えば、血中の無機リン濃度を下げることである。また、FGF23の機能発現には、FGF23の発現が上昇することを含む。
【0180】
被験物質処理検体のバイオマーカーの測定値の変化が、正方向であるか負方向であるかは、バイオマーカーに依存する。
【0181】
例えば、上記I.1.で述べたバイオマーカーのうち、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、及びLrrc2よりなる群より選択される少なくとも一種(3群という)は、高リン食を摂取したマウスと比較してFGF23のノックアウトマウスで発現が上昇する。また、Col15a1、Sparc、Col11a1、Clec11a、Serpinb6d、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種(4群という)は、高リン食を摂取したマウスと比較してFGF23のノックアウトマウスで発現が減少する。さらに、Aldh1l2、Col5a1、Col3a1、C1qtnf6、及びCol1a1よりなる群から選択される少なくとも一種(上述の2群)は、FGF23のノックアウトマウスにおいても発現が変化しない。
【0182】
したがって、3群のバイオマーカーについては、例えば、高リン食を摂取したマウスを被験体として、未処理検体のバイオマーカー測定値と比較して被験物質処理検体のバイオマーカーの測定値が上昇していれば、当該被験物質は、FGF23の機能発現を抑制すると決定することができる。また、4群のバイオマーカーについては、高リン食を摂取したマウスを被験体として、未処理検体のバイオマーカー測定値と比較して被験物質処理検体のバイオマーカーの測定値が低下していれば、当該被験物質は、FGF23の機能発現を抑制すると決定することができる。さらに、これらのバイオマーカーの検討に加え、2群のバイオマーカーについても同様に検討した場合に、未処理検体のバイオマーカー測定値と被験物質処理検体のバイオマーカーの測定値に差がなければ、被験物質はFGF23の機能に特異的に作用していると決定することができる。
【0183】
被験物質処理検体中のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値が、未処理検体の対応するバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値よりも上昇しているか否かは、例えば、被験物質処理検体の測定値が未処理検体の測定値の例えば115%以上、好ましくは130%以上、より好ましくは150%以上になっている場合に、当該被験物質により、バイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値が上昇していると決定することがでる。
【0184】
被験物質処理検体中のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値が、未処理検体の対応するバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値よりも低下しているか否かは、例えば、被験物質処理検体の測定値が未処理検体の測定値の例えば85%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下になっている場合に、当該被験物質により、バイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値が低下していると決定することがでる。
【0185】
さらに、スクリーニングは、前記工程(I)の前に、(i)被験体、被験組織又は被験細胞に、被験物質を投与する投与工程、(ii)前記工程(i)で被験物質を投与された被験体、被験組織又は被験細胞から検体を採取する工程、及び(iii)前記工程(ii)で得られた検体からタンパク質及び/又はmRNAを回収する工程を含んでいてもよい。この場合にも、工程(ii)と工程(iii)は、必ずしも同一機関において連続して行われる必要はなく、例えば、工程(ii)で採取された検体を、第三者機関に送り工程(iii)以降を実施してもよい。また、工程(iii)と工程(I)も、必ずしも同一機関において連続して行われる必要はなく、例えば、工程(iii)で回収されたタンパク質及び/又はmRNAを、第三者機関に送り工程(iii)以降を実施してもよい。
【0186】
3-2.スクリーニング装置
第4の実施態様は、CPU101が、後述するプログラムによって下記の演算機能を実行することによって制御される、下記の演算手段を有する、FGF23の機能発現を抑制するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置4を含む:
被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一つの被験物質処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得手段、並びに
前記第1の測定値取得手段が取得した測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定手段。
【0187】
本実施態様では、上記装置としてスクリーニング装置4を備えたシステム200(
図7及び
図8)によって、スクリーニングを行うことができる。
【0188】
図9は、本実施態様に係るスクリーニング装置4の機能を説明するためのブロック図である。スクリーニング装置4は、第1の測定値取得部31と、第2の測定値取得部32と、測定値比較部33と、候補物質決定部34とを備える。第2の測定値取得部32は任意の構成である。これらの機能ブロックは、本発明に係るスクリーニングプログラムを、
図8に示すスクリーニング装置4の記録部103又はメモリ102にインストールし、このスクリーニングプログラムをCPU101が実行することにより実現される。特許請求の範囲に記載の第1の測定値取得手段、第2の測定値取得手段、測定値比較手段及び決定手段が、
図9に示す第1の測定値取得部31、第2の測定値取得部32、測定値比較部33及び候補物質決定部34にそれぞれ対応する。
【0189】
本実施態様では、被験物質処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値M31は、測定装置5aからスクリーニング装置4に取り込まれ、被験物質処理検体のバイオマーカーmRNAの測定値M41は、測定装置5bからスクリーニング装置4に取り込まれる。未処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値M32、未処理検体のバイオマーカーmRNAの測定値M42は、スクリーニング装置4の外部に記録されており、例えばインターネットを介してスクリーニング装置4に取り込まれる。
【0190】
なお、被験物質処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値M31、被験物質処理検体のバイオマーカーmRNAの測定値M41は、ネットワークを介して医療機関(図示せず)から取り込まれてもよい。また、未処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値M32、未処理検体のバイオマーカーmRNAの測定値M42は、クリーニング装置4の記録部103又はメモリ102に予め記録されていてもよい。
【0191】
また、第1の測定値取得部31と、第2の測定値取得部32と、測定値比較部33と、候補物質決定部34の各機能ブロックは、単一のCPUで実行されることは必ずしも必要なく、複数のCPUで分散して処理されてもよい。たとえば、第1の測定値取得部31と、第2の測定値取得部32と、測定値比較部33と、の機能は第1のコンピュータのCPUにより実行され、候補物質決定部34の機能は別の第2のコンピュータのCPUにより実行される、というような構成であってもよい。
【0192】
また、スクリーニング装置4は、以下の
図10で説明するステップS41~S47の処理を行うために、本発明に係るプログラムを、例えば実行形式(例えばプログラミング言語からコンパイラにより変換されて生成される)で記録部103に予め記録しており、スクリーニング装置4は、記録部103に記録したプログラムを使用して処理を行う。なお、上記プログラムは、CD-ROM等の、コンピュータ読み取り可能であって一時的でない有形の記録媒体109から、スクリーニング装置4にインストールしてもよいし、スクリーニング装置4をインターネット(図示せず)と接続し、インターネットを介してプログラムのプログラムコードをダウンロードしてもよい。
【0193】
3-3.スクリーニング装置の動作とプログラム
第4の実施態様におけるFGF23の機能発現を抑制するための有効成分の候補物質のスクリーニングは、第4の実施態様に係るスクリーニング装置4が、下記プログラムによって、本発明の下記のFGF23の機能発現を抑制するための有効成分の候補物質のスクリーニングを実行してもよい。
【0194】
図10は、本発明の第4の態様に係るスクリーニング装置4の動作を示すフローチャートである。なお、
図9に示す第1の測定値取得部11により
図10のステップS41が、第2の測定値取得部32により
図10のステップS42が、測定値比較部33により
図10のステップS43が、候補物質決定部34により
図10に示すステップS45及びS46の処理がそれぞれ実行される。
【0195】
ステップS41では、初めに、検査者からの被験物質処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値M31又は被験物質処理検体のバイオマーカーmRNAの測定値M41の取得開始の入力を入力部8から受け付けることにより、又は測定装置5a又は5bからの測定開始の指令を受け付けることにより、第1の測定値取得部31は、前記測定値の取得を開始する。ステップS41は、特許請求の範囲に記載の取得処理に相当する。
【0196】
次に、ステップS42では、第2の測定値取得部32は、未処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値M32、未処理検体のバイオマーカーmRNAの測定値M42を取得する。
【0197】
次に、ステップS43では、測定値比較部33が、被験物質処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値M31とそれぞれに対応する未処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値M32とを比較し、被験物質処理検体のバイオマーカーmRNAの測定値M41とそれぞれに対応する未処理検体のバイオマーカーmRNAの測定値M42とを比較する。
【0198】
次に、ステップS44において、候補物質決定部34は、ステップS43で比較した結果が、変化している場合には、被験物質が有効成分の候補物質であると決定する(ステップS45)。また、候補物質決定部34は、ステップS43で比較した結果が、変化していない場合には、被験物質が有効成分の候補物質ではないと決定する(ステップS46)。ステップS44、ステップS45、ステップS46は、特許請求の範囲に記載の予測処理に相当する。
【0199】
得られた決定結果は、スクリーニング装置4の表示部9に表示されるか(ステップS47)、スクリーニング装置4内の記録部103に記録される。もしくは、インターネットを介して接続された、スクリーニング装置4の外部の例えば医療機関におけるコンピュータ端末の表示部に表示されてもよい。
【0200】
第4の実施態様に係る、FGF23の機能発現を抑制するための有効成分の候補物質のスクリーニングのコンピュータプログラムは、スクリーニング装置4のCPU101に、前記ステップS41~S47を実行させるプログラムを含む。前記コンピュータプログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、光ディスク等の記録媒体に記憶されていてもよい。前記記録媒体へのプログラムの記憶形式は、前記スクリーニング装置が前記プログラムを読み取り可能である限り制限されない。
【0201】
4.FGF23の機能を活性化するための有効成分の候補物質のスクリーニング
4-1.概要
第5の実施態様においては、上記「I.2.各測定値の取得方法」の方法を実施することによって取得される測定値を用いて、FGF23の機能を活性化するための有効成分の候補物質のスクリーニングを行う。
【0202】
より具体的には、本実施態様における被験体のFGF23の機能を活性化するための有効成分の候補物質のスクリーニングする方法は、被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一つの被験物質処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する取得工程と、第1の測定値取得手段が取得した測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する工程とを含む。
【0203】
本実施態様は、好ましくは、上記「I.2.各測定値の取得方法」によって、被験物質で処理されていない被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一種の未処理検体中の対応するバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する工程を含む。また、前記被験物質処理検体から取得された各バイオマーカーの測定値と、それぞれに対応する未検体処理中の測定値とを比較し、未処理検体のバイオマーカー測定値と比較して被験物質処理検体のバイオマーカーの測定値が変化していれば、前記被験物質がFGF23の機能を活性化する有効成分であると決定することができる。
【0204】
ここで、FGF23の機能の活性化とは、FGF23の本来の機能が活性されることをいう。FGF23の機能の活性化の例は、例えば、血中の無機リン濃度を下げることである。また、FGF23の機能の活性化には、FGF23の発現が上昇することを含む。
【0205】
被験物質処理検体のバイオマーカーの測定値の変化が、正方向であるか負方向であるかは、バイオマーカーに依存する。
【0206】
例えば、上記II.4-1で述べた3群のバイオマーカーについては、例えば正常マウスを被験体として、未処理検体のバイオマーカー測定値と比較して被験物質処理検体のバイオマーカーの測定値が減少していれば、当該被験物質は、FGF23の機能を活性化していると決定することができる。また、4群のバイオマーカーについては、正常マウスを被験体として、未処理検体のバイオマーカー測定値と比較して被験物質処理検体のバイオマーカーの測定値が上昇していれば、当該被験物質は、FGF23の機能を活性化と決定することができる。さらに、これらのバイオマーカーの検討に加え、2群のバイオマーカーについても同様に検討した場合に、未処理検体のバイオマーカー測定値と被験物質処理検体のバイオマーカーの測定値に差がなければ、被験物質はFGF23の機能に特異的に作用していると決定することができる。
【0207】
被験物質処理検体中のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値が、未処理検体の対応するバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値よりも上昇しているか否かは、例えば、被験物質処理検体の測定値が未処理検体の測定値の例えば115%以上、好ましくは130%以上、より好ましくは150%以上になっている場合に、当該被験物質により、バイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値が上昇していると決定することがでる。
【0208】
被験物質処理検体中のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値が、未処理検体の対応するバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値よりも低下しているか否かは、例えば、被験物質処理検体の測定値が未処理検体の測定値の例えば85%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下になっている場合に、当該被験物質により、バイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値が低下していると決定することがでる。
【0209】
さらに、スクリーニングは、前記工程(I)の前に、(i)被験体、被験組織又は被験細胞に、被験物質を投与する投与工程、(ii)前記工程(i)で被験物質を投与された被験体、被験組織又は被験細胞から検体を採取する工程、及び(iii)前記工程(ii)で得られた検体からタンパク質及び/又はmRNAを回収する工程を含んでいてもよい。この場合にも、工程(ii)と工程(iii)は、必ずしも同一機関において連続して行われる必要はなく、例えば、工程(ii)で採取された検体を、第三者機関に送り工程(iii)以降を実施してもよい。また、工程(iii)と工程(I)も、必ずしも同一機関において連続して行われる必要はなく、例えば、工程(iii)で回収されたタンパク質及び/又はmRNAを、第三者機関に送り工程(iii)以降を実施してもよい。
【0210】
4-2.スクリーニング装置
第5の実施態様は、CPU101が、後述するプログラムによって下記の演算機能を実行することによって制御される、下記の演算手段を有する、FGF23の機能を活性化するための有効成分の候補物質のスクリーニング装置5を含む:
被験物質で処理された被験体(ヒトを除く)の皮膚から採取された検体、皮膚に由来する被験組織から採取された検体、及び皮膚に由来する被験細胞から採取された検体よりなる群から選択される少なくとも一つの被験物質処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得手段、並びに
前記第1の測定値取得手段が取得した測定値に基づいて、前記被験物質が有効成分の候補物質であると決定する決定手段。
【0211】
本実施態様では、上記装置としてスクリーニング装置5を備えたシステム200(
図7及び
図8)によって、スクリーニングを行うことができる。
【0212】
本実施態様に係るスクリーニング装置5の機能を説明するためのブロック図を
図9に示す。スクリーニング装置5の構成は、上記II.3-2で述べたスクリーニング装置4と同様である。
【0213】
4-3.スクリーニング装置の動作とプログラム
第5の実施態様におけるFGF23の機能を活性化するための有効成分の候補物質のスクリーニングは、第5の実施態様に係るスクリーニング装置5が、下記プログラムによって、本発明の下記のFGF23の機能を活性化するための有効成分の候補物質のスクリーニングを実行してもよい。
【0214】
図11は、本発明の第5の実施態様に係るスクリーニング装置5の動作を示すフローチャートである。なお、
図9に示す第1の測定値取得部31により
図11のステップS51が、第2の測定値取得部32により
図11のステップS52が、測定値比較部33により
図11のステップS53が、候補物質決定部34により
図11に示すステップS55及びS56の処理がそれぞれ実行される。
【0215】
ステップS51では、初めに、検査者からの被験物質処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値M31又は被験物質処理検体のバイオマーカーmRNAの測定値M41の取得開始の入力を入力部8から受け付けることにより、又は測定装置5a又は5bからの測定開始の指令を受け付けることにより、第1の測定値取得部31は、前記測定値の取得を開始する。ステップS51は、特許請求の範囲に記載の取得処理に相当する。
【0216】
次に、ステップS52では、第2の測定値取得部32は、未処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値M32、未処理検体のバイオマーカーmRNAの測定値M42を取得する。
【0217】
次に、ステップS53では、測定値比較部33が、被験物質処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値M31とそれぞれに対応する未処理検体のバイオマーカータンパク質の測定値M32とを比較し、被験物質処理検体のバイオマーカーmRNAの測定値M41とそれぞれに対応する未処理検体のバイオマーカーmRNAの測定値M42とを比較する。
【0218】
次に、ステップS54において、候補物質決定部34は、ステップS53で比較した結果が、変化している場合には、被験物質が有効成分の候補物質であると決定する(ステップS55)。また、候補物質決定部34は、ステップS53で比較した結果が、変化していない場合には、被験物質が有効成分の候補物質ではないと決定する(ステップS56)。ステップS54、ステップS55、ステップS56は、特許請求の範囲に記載の予測処理に相当する。
【0219】
得られた決定結果は、スクリーニング装置4の表示部9に表示されるか(ステップS57)、スクリーニング装置4内の記録部103に記録される。もしくは、インターネットを介して接続された、スクリーニング装置4の外部の例えば医療機関におけるコンピュータ端末の表示部に表示されてもよい。
【0220】
第4の実施態様に係る、FGF23の機能発現を抑制するための有効成分の候補物質のスクリーニングのコンピュータプログラムは、スクリーニング装置4のCPU101に、前記ステップS51~S57を実行させるプログラムを含む。前記コンピュータプログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、光ディスク等の記録媒体に記憶されていてもよい。前記記録媒体へのプログラムの記憶形式は、前記スクリーニング装置が前記プログラムを読み取り可能である限り制限されない。
【0221】
III.第6の実施態様
1.用語の説明
第6の実施態様の説明において、使用する用語について説明する。
【0222】
本実施態様において使用される用語の説明は、上記I.1.の記載をここに援用する。また、「バイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のタンパク質の測定値」、「バイオマーカーからなる群から選択される少なくとも一種のmRNAの測定値」、の取得方法は、上記I.2.に準ずる。
【0223】
本実施態様において、「疾患」は制限されない。例えば、前記疾患は、前記個体の各器官で発症しうるあらゆる疾患、異常を含みうる。また、当該疾患に至る前に起こる当該特定疾患特有の異常(「前病変」ともいう)を含む。疾患として、好ましくは、血栓症、塞栓症、狭窄症等の虚血性疾患(特に心臓、脳、肺、大腸等);動脈瘤、静脈瘤、うっ血、出血等の循環障害(大動脈、静脈、肺、肝臓、脾臓、網膜等);アレルギー性気管支炎、糸球体腎炎等のアレルギー性疾患;認知症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症、等の変性疾患(神経、骨格筋等);腫瘍(良性上皮性腫瘍、良性非上皮性腫瘍、悪性上皮性腫瘍、悪性非上皮性腫瘍);代謝性疾患(糖質代謝異常、脂質代謝異常、電解質異常);感染症(細菌、ウイルス、リケッチア、クラミジア、真菌等、原虫、寄生虫等)等が挙げられる。また、前記疾患には、全身症状を引き起こす疾患を含む。全身症状を引き起こす疾患としては、例えば、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症等の自己免疫疾患;遺伝性ムコ多糖症等の代謝異常等を挙げることができる。
【0224】
2.ハードウェアの構成
第6の実施態様で使用されるハードウェアの構成を
図12及び
図13を用いて説明する。
【0225】
図12は、本発明の第6の実施態様に係るシステム300の概観図である。システム300は、演算装置(以下では、同様のハードウェア構成を有し、後に説明するような異なる機能構成を有する演算装置に言及することになるため、これら異なる機能構成を有する演算装置を総称するために、「演算装置6」と表記する)と、入力部8と、表示部9と、測定装置5aと、測定装置5bと、を備える。
【0226】
演算装置6は、例えば汎用のパーソナルコンピュータで構成されており、後述するデータ処理を行うCPU101と、データ処理の作業領域に使用するメモリ102と、処理データを記録する記録部103と、各部の間でデータを伝送するバス104と、外部機器とのデータの入出力を行うインタフェース部105(以下、I/F部と記す)とを備えている。入力部8及び表示部9は、演算装置6に接続されており、入力部8は、キーボード等で構成され、表示部9は、液晶ディスプレイ等で構成されている。入力部8と表示部9とは、一体化されてタッチパネル付き表示装置として実現されてもよい。なお、演算装置6は一体の装置である必要はなく、CPU101、メモリ102、記録部103等が別所に配置され、これらがネットワークで接続されていてもよい。また、入力部8や表示部9を省略した操作者を必要としない装置であってもよい。
【0227】
また、演算装置6と、測定装置5aと、測定装置5bとについても、一カ所に配置される必要は必ずしもなく、別所に設けられた装置間をネットワークで通信可能に接続したシステムを構成でもよい。
【0228】
以下の説明においては、特に断らない限り演算装置6が行う処理は、記録部103又はメモリ102に格納されたプログラムに基づいて、実際には演算装置6のCPU101が行う処理を意味する。CPU101はメモリ102を作業領域として必要なデータ(処理途中の中間データ等)を一時記憶し、記録部103に演算結果等の長期保存するデータを適宜記録する。
【0229】
測定装置5aは、タンパク質を測定するための装置であり、試料置き場51と、反応部52と、検出部53とを備える。試料置き場51にセットされた被験体から採取された検体は、反応部52に設置された抗体捕捉用抗バイオマーカー抗体が固相されたマイクロプレートに分注されインキュベーションされる。必要に応じて未反応の抗原を除去した後、検出抗体がマイクロプレートに分注され、インキュベーションされる。必要に応じて未反応の抗原を除去した後、検出用抗体を検出するための基質がマイクロプレートに分注され、マイクロプレートが検出部53に移動され、基質が反応して発生したシグナルが測定される。また、測定装置5aの別態様は、マイクロアレイ解析によるmRNAの測定値の測定するための装置であり、試料置き場51にセットされた逆転写反応物を反応部52にセットされたマイクロアレイチップ上に分注し、ハイブリダイゼーションを行い、洗浄した後、検出部53に移動させシグナルを検出する。
【0230】
さらに、測定装置5aの別態様は、RT-PCRによるmRNAの測定値の測定するための装置であり、試料置き場51にセットされた逆転写反応物を反応部52にセットされたマイクロチューブ内に分注し、続いて定量的PCR用試薬をマイクロチューブ内に分注する。反応部52でPCR反応を行いながら、検出部53でチューブ内のシグナルを検出する。
【0231】
測定装置5bは、mRNAを測定するための装置であり、配列解析部54を備える。RNA-Seq用の反応を行ったサンプルを配列解析部54にセットし、配列解析部54内で、塩基配列の解析をおこなう。
【0232】
測定装置5a,5bは、有線又は無線によって演算装置6に接続されている。測定装置5aは、タンパク質の測定値をA/D変換して、デジタルデータとして演算装置6に送信する。同様に、測定装置5bは、mRNAの測定値をA/D変換して、デジタルデータとして演算装置6に送信する。これにより、演算装置6は、タンパク質の測定値及びmRNAの測定値を、演算処理可能なデジタルデータとして取得することができる。なお、腎疾患マーカーの測定値は、例えば医療機関(図示せず)からインターネットを介してデジタルデータとして送信される。これにより、演算装置6は、腎疾患マーカーの測定値を、デジタルデータとして取得することができる。
【0233】
3.疾患におけるFGF23の関与を予測する方法
3-1.概要
第6の実施態様においては、上記「I.2.各測定値の取得方法」の方法を実施することによって取得される測定値を用いて、被験体が有する疾患においてFGF23が関与しているか否かを予測する。
【0234】
より具体的には、疾患を有する被験体の皮膚から採取された検体中のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する工程と、前記取得工程で取得された測定値に基づいて、前記疾患にFGF23が関与していると決定する工程とを含む。
【0235】
本実施態様は、具体的には、上記「I.2.各測定値の取得方法」によって取得された前記測定値を、測定値それぞれに対応する所定の基準値と比較し、該測定値が前記基準値範囲外である場合には、前記疾患にFGF23が関与していると決定することができる。
【0236】
また、1群のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲外である場合には、前記疾患にFGF23が関与していると決定してもよい。さらに、2群のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲内である場合、前記疾患にFGF23が関与していると決定してもよい。より好ましくは、1群のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲外であり、2群のバイオマーカーの測定値が基準値の範囲内である場合に、前記リン代謝異常に、前記疾患にFGF23が関与していると決定してもよい。
【0237】
例えば、上記II.3-1.述べた3群のバイオマーカーは、高リン食を接種したマウスと比較してFGF23のノックアウトマウスで発現が上昇する。また、4群のバイオマーカーは、高リン食を接種したマウスと比較してFGF23のノックアウトマウスで発現が減少する。さらに、Aldh1l2、Col5a1、Col3a1、C1qtnf6、及びCol1a1よりなる群から選択される少なくとも一種(上述の2群)は、FGF23のノックアウトマウスにおいても発現が変化しない。
【0238】
したがって、3群のバイオマーカーについては、例えば、疾患を有する被験体においてそれぞれのバイオマーカーの基準値と比較して測定値が上昇していれば、当該疾患において、FGF23の機能発現が抑制されていると決定することができる。また、4群のバイオマーカーについては、疾患を有する被験体において、それぞれのバイオマーカーの基準値と比較して測定値が低下していれば、当該疾患において、FGF23の機能発現が抑制されていると決定することができる。さらに、これらのバイオマーカーの検討に加え、2群のバイオマーカーについても同様に検討した場合に、前記被験体において測定値が基準値と比較して変化がなければ、前記疾患においてFGF23の機能が特異的に作用していると決定することができる。
【0239】
前記工程は、後述するCPU101が行ってもよいが、検査者が行ってもよい。
【0240】
さらに、前記疾患にFGF23が関与しているか否かの予測方法において、疾患にFGF23が関与していると予測された場合には、FGF23の機能発現を改善するための治療(例えば、低リン食等の食事療法)を行う工程を、含めてもよい。
【0241】
3-2.疾患にFGF23が関与しているか否かを予測する装置
第6の実施態様は、CPU101が、後述するプログラムによって下記の演算機能を実行することによって下記手段が制御される、疾患におけるFGF23の関与を予測する予測装置を含む:
疾患を有する被験体の皮膚から採取された検体中のバイオマーカータンパク質の測定値及び/又は前記タンパク質のmRNAの測定値を取得する第1の測定値取得手段、並びに 前記第1の測定値取得手段が取得した測定値に基づいて、前記疾患にFGF23が関与していると決定する決定手段。
【0242】
本実施態様では、上記装置として演算装置6を備えたシステム300(
図12及び
図13)によって、疾患におけるFGF23の関与を予測することができる。
【0243】
図14は、第6の実施態様に係る演算装置6の機能を説明するためのブロック図である。演算装置6の構成は、上記I.4-2.で述べた演算装置1と同様である。
【0244】
3-3.演算装置の動作とプログラム
第6の実施態様における疾患におけるFGF23の関与を予測する方法は、第6の実施態様に係る演算装置6が、下記プログラムによって、本発明の下記の疾患にFGF23が関与しているか否かの予測方法を実行してもよい。
【0245】
図15は、本発明の第6の態様に係る演算装置6が動作を示すフローチャートである。なお、
図14に示す測定値取得部11により
図15のステップS61が、基準値取得部12により
図15のステップS62が、測定値比較部13により
図15のステップS63が、予測部14により
図15に示すステップS65及びS66の処理がそれぞれ実行される。
【0246】
ステップS61では、初めに、検査者からのバイオマーカータンパク質の測定値M11又はバイオマーカーmRNAの測定値M21の取得開始の入力を入力部8から受け付けることにより、又は測定装置5a又は5bからの測定開始の指令を受け付けることにより、測定値取得部11は、前記測定値の取得を開始する。ステップS61は、特許請求の範囲に記載の取得処理に相当する。
【0247】
次に、ステップS62では、基準値取得部12は、検査者による入力部8からの測定値の取得開始の入力又は比較開始の入力に応じて、あるいは測定値取得部11による前記測定値の取得に応じて、バイオマーカータンパク質の基準値R12、バイオマーカーmRNAの基準値R22を取得する。
【0248】
次に、ステップS63では、測定値比較部13が、バイオマーカータンパク質の測定値M11又はバイオマーカーmRNAの測定値M21と、各バイオマーカーの測定値に対応するバイオマーカータンパク質の基準値R12、又はバイオマーカーmRNAの基準値R22とを比較する。
【0249】
次に、ステップS64において、予測部14は、ステップS63で比較した結果が、各バイオマーカーの基準値の範囲内である場合には、疾患においてFGF23が関与していないと予測する(ステップS65)。また、予測部14は、ステップS63で比較した結果が、各バイオマーカーの基準値の範囲外である場合には、疾患においてFGF23が関与していると予測する(ステップS66)。ステップS64、ステップS65、ステップS66は、特許請求の範囲に記載の予測処理に相当する。
【0250】
得られた予測結果は、演算装置6の表示部9に表示されるか(ステップS67)、演算装置6内の記録部103に記録される。もしくは、インターネットを介して接続された、演算装置6の外部の例えば医療機関におけるコンピュータ端末の表示部に表示されてもよい。
【0251】
第6の実施態様に係る、疾患にFGF23が関与しているか否かを予測するためのコンピュータプログラムは、演算装置6のCPU101に、前記ステップS61~S67を実行させるプログラムを含む。前記コンピュータプログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、光ディスク等の記録媒体に記憶されていてもよい。前記記録媒体へのプログラムの記憶形式は、前記演算装置が前記プログラムを読み取り可能である限り制限されない。
【0252】
なお、本項で使用される用語の説明は、上記III.3-1.の説明を援用する。
【0253】
IV.検査試薬及び検査キット
本発明の第7の実施態様の一例は、上記「I.2.測定値の取得方法」に使用される抗バイオマーカー抗体を含む、検査試薬に関する。
【0254】
抗バイオマーカー抗体は、上記「I.1.用語の説明」に記載したものを使用することができる。
【0255】
本実施態様の検査試薬には、少なくとも抗バイオマーカー抗体が1種以上含まれていればよい。抗バイオマーカー抗体がポリクローナル抗体である場合には、1種の抗原で免役して得られたポリクローナル抗体であってもよく、また2種以上の抗原で並行して同一個体に免役して得られたポリクローナル抗体であってもよい。さらに、2種以上の抗原をそれぞれ別の動物に接種して得られたそれぞれのポリクローナル抗体を混合してもよい。抗バイオマーカー抗体がモノクローナル抗体である場合には、1種のハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体であってもよいが、2種以上のハイブリドーマから産生されたモノクローナル抗体であって、それぞれのモノクローナル抗体が同一又は異なるエピトープを認識する複数のモノクローナル抗体が2種以上含まれていてもよい。また、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体を1種以上ずつ混合して含んでいてもよい。
【0256】
当該検査試薬に含まれる抗バイオマーカー抗体の形態は、特に制限されず、抗バイオマーカー抗体を含む抗血清若しくは腹水等の乾燥状態又は液体状態であってもよい。また、抗バイオマーカー抗体の形態は、精製抗バイオマーカー抗体、抗バイオマーカー抗体を含む免疫グロブリン画分若しくは抗バイオマーカー抗体を含むIgG画分の乾燥状態又は水溶液であってもよい。
【0257】
前記形態が、抗バイオマーカー抗体を含む抗血清若しくは腹水の乾燥状態又は液体状態である場合、さらにβ-メルカプトエタノール、DTT等の安定化剤;アルブミン等の保護剤;ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル等の界面活性剤、アジ化ナトリウム等の防腐剤等の少なくとも一つを含んでいてもよい。また、抗バイオマーカー抗体の形態が、精製抗バイオマーカー抗体、抗バイオマーカー抗体を含む免疫グロブリン画分若しくは抗バイオマーカー抗体を含むIgG画分の乾燥状態又は水溶液である場合、さらに、リン酸緩衝液等のバッファー成分;β-メルカプトエタノール、DTT等の安定化剤;アルブミン等の保護剤;塩化ナトリウム等の塩;ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル等の界面活性剤等、アジ化ナトリウム等の防腐剤の少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0258】
本発明においては、当該抗バイオマーカー抗体は未標識であっても、上述の標識物質で標識されていてもよいが、上述の標識物質で標識されていることが好ましい。標識物質は、上記「I.2.測定値の取得方法」の項に例示されたものを使用することができる。また、本発明においては、抗原捕捉用の抗バイオマーカー抗体が、固相表面等に固定化された状態で提供されるものであってもよい。固相及び固定化については、上記「I.2.測定値の取得方法」の項で例示したとおりである。固相として好ましくは、マイクロプレートである。
【0259】
さらに、当該検査試薬は、キットとして提供されてもよい。
【0260】
抗原捕捉用抗バイオマーカー抗体が予めマイクロプレート等の固相に結合している場合は、本実施態様の検査キットは、抗原捕捉用抗バイオマーカー抗体を固定化した固相と、検出用抗バイオマーカー抗体とを含むことができる。さらに、標識物質が酵素である場合、その基質液を含んでいてもよい。
【0261】
上述の検査キットは、例えば、
図16に示されるようなキットである。検査キット9は、外装箱94と、抗原捕捉用抗体を固相したマイクロプレート92と、標識物質で標識された検出用抗バイオマーカー抗体を含む第1容器91aと、酵素と反応する基質液を含む第2容器91bと、検査キットの添付文書93とを含む。添付文書93には、検査キットの取り扱い方法、保管条件等を記載しておくことができる。洗浄用の水性媒体を含む容器などを外装箱94に同梱してもよい。
【0262】
第7の実施態様の別の例は、上記「I.2.測定値の取得方法」に使用されるバイオマーカーmRNA検出核酸を含む検査試薬に関する。
【0263】
バイオマーカーmRNA検出核酸は、上記「I.1.用語の説明」に記載したものを使用することができる。
【0264】
マイクロアレイに用いられるバイオマーカーmRNA検出核酸を含む検査試薬は、凍結乾燥状態、又はTris-HCl等のバッファー、EDTA、塩等が含まれる溶液に溶解した状態であってもよい。標的となるバイオマーカーmRNAが複数ある時は、それぞれの検出核酸を別の容器に入れることが好ましい。また、バイオマーカーmRNA検出核酸を基板上に固定して、マイクロアレイチップとして提供してもよい。マイクロアレイの基板は、検出核酸を固相化できるものであれば特に制限はないが、例えばガラス、ポリプロピレン等のポリマー、ナイロン膜等である。検出核酸を基板上に固定する方法も、公知の方法にしたがって行うことができ、例えば検出核酸を固定するための反応性基を含むスペーサーやクロスリンカーを使用することができる。
【0265】
さらに、バイオマーカーmRNA検出核酸を含む検査試薬は、当該試薬の他、当該核酸の情報、又はこれらの情報にアクセスするための情報を記録した紙、コンパクトディスク等の媒体と共に、キットとして提供されてもよい。
【0266】
RT-PCRに用いられるバイオマーカーmRNA検出核酸を含む検査試薬は、凍結乾燥状態、又はTris-HCl等のバッファー、EDTA、塩等が含まれる溶液に溶解した状態であってもよい。またプライマーは、フォワードプライマー及びリバースプライマーが別々の容器に入れられた状態で提供されてもよく、混合した状態で提供されてもよい。さらに定量プローブを含む場合でも、定量プローブは、各プライマーと別の容器に入れられた状態で提供されてもよく、また、各プライマーと定量プローブは全て混合された状態で提供されてもよい。
【0267】
さらにバイオマーカーmRNA検出核酸を含む検査試薬は、フォワードプライマー及びリバースプライマーを含む、又はフォワードプライマー、リバースプライマー及び定量用プローブ、必要に応じて添付書類を含む、キットの形態で提供されてもよい。さらにキットには、定量的PCR用の試薬を同梱してもよい。
【0268】
バイオマーカーmRNA検出核酸を含む検査試薬はキットとして提供されてもよい。
【0269】
第7の実施態様に係る検査試薬及び検査キットは、第1~第6の実施態様において各測定値を取得するために使用することができる。
【0270】
V.バイオマーカー
本発明の第8の実施態様は、Hamp2、Actn3、Asb11、Cxcl13、Ptp4a3、Klhl38、Serpinb6e、Atp2a1、Myot、Nrap、Pde4dip、Il22ra2、Rbfox1、Lrrc2、Col15a1、Aldh1l2、Col5a1、C1qtnf6、Sparc、Col11a1、Clec11a、Col3a1、Serpinb6d、Col1a1、及びDefb8よりなる群から選択される少なくとも一種を含む、腎機能、リン代謝異常、又はFGF23の関与を予測するための皮膚のバイオマーカーとして使用する方法に関する。
【0271】
これらのバイオマーカーは、各検体に含まれる。
【実施例】
【0272】
以下に実施例を示して本発明の概要をより詳しく説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されるものではない
【0273】
実験例I.Fgf23遺伝子変異マウスの作製
I-1.gRNA及びCas9発現ベクターの構築
Optimized CRISPR design tool [Massachusetts Institute of Technology, Zhang LabのHP (http://crispr.mit.edu/) において公開] を用いて、gRNA配列 (Fgf23g-RNA1, Fgf23-gRNA2)を設計し、gRNA配列をコードするオリゴDNAを合成した。これらの配列に含まれるFgf23遺伝子標的配列は、Fgf23-gRNA1がGCACGCCCACCAGGAGTCTA(配列番号1)及びFgf23-gRNA2がGCCCACCAGGAGTCTAAGGC(配列番号2)に示される配列であり、Fgf23遺伝子のエクソン1に存在する配列である。これらを、Cas9発現ベクターであるpX330-U6-Chimeric_BB-CBh-hSpCas9に挿入した(pX330-Fgf23-gRNA1, pX330-Fgf23-gRNA2) 。得られたベクターについて、gRNA挿入部位の塩基配列を決定し、設計通りにgRNAが挿入されたことを確認した。また、それぞれのFgf23遺伝子標的配列をはさむようにsingle-stranded oligodeoxynuleotides (ssODNs) を合成した。ドナーオリゴDNAは、Fgf23-gRNA1及びFgf23-gRNA2切断予定部位のLeucineコード配列直下に終止コドンを置くデザインとした(
図17A)。ssODNs for Fgf23-gRNA1, 2:
CGGATAGGCTCTAGCAGTGCCCAAGCTGCAGACAGTGCAGAGCACGCCCACCAGGAGTCTcctcagaagaactcgtcaagaagCTAAAGGCAGGTCCCTAGCATTGCACAGCACTGAGTGGCTAATGCTGAGTTTGAAATCTGACA(配列番号3)
【0274】
I-2.Fgf23遺伝子変異マウスの作製
pX330-Fgf23-gRNA1とpX330-Fgf23-gRNA2を対応するssODNsと共にC57BL/6N Slc受精卵にそれぞれインジェクションした。インジェクションした受精卵は、偽妊娠ICRメスマウスの卵管に注入した。F0マウスをPCRとダイレクトシークェンス(プライマーは表5参照)でジェノタイプを確認した。F1ヘテロ接合体マウスをF0マウスと野生型マウスの交配により作製した。得られたF1ヘテロ接合体マウスオスと野生型マウスメスの体外受精により、F2ヘテロ接合体マウスを作製し、得られたF2ヘテロ接合体マウスメスとF1ヘテロ接合体マウスオスの体外受精により、F3マウスを作製した。また、F3ホモ接合体マウスメス及びF3ヘテロ接合体マウスメスとF1ヘテロ接合体マウスオスの体外受精により、F4マウスを作製した。実験には、F3世代以降のホモ接合体を用いた。
【0275】
それぞれのマウスのジェノタイプは、ダイレクトシークェンスで決定した。
【0276】
得られた変異マウスのジェノタイプの配列を
図17Bに示す。
【0277】
実験例II.疾患モデルマウスの作製
II-1.UNx/HPiモデルマウスの作成と組織の摘出
UNx/HPiマウス(片腎切除-高リン食マウス)は、片腎摘出後に高リン食で飼育して作製した。対照として、偽手術後に低リン食で飼育したマウスを作成した。
【0278】
1-1.片腎摘出
マウス(C57BL/6J、8週齢オス)を、Avertin (250 mg/kg)の腹腔内投与で麻酔後、背部より皮膚を切開、右腎動静脈と尿管を結紮した。結紮部より遠位側で切断し、右腎を摘出した後閉腹した。対照については、偽手術を施した。偽手術においては、右腎動静脈と尿管を露出した後、結紮せずにそのまま閉腹した。手術侵襲から完全に回復するのを待つ意味で、0.54%無機リン含有普通食 (CE-2, 日本クレア)で4週間飼育した。
【0279】
1-2.リン負荷と組織の摘出
手術終了4週間後(12週齢)から、片腎摘出したマウスには2%無機リン含有高リン食(TD.10662, オリエンタルバイオサービス)を与えた(以下、腎疾患群ともいう)。偽手術したマウスには0.35%無機リン含有低リン食(TD.10662変型, オリエンタルバイオサービス)を与えた(以下、Sham群ともいう)。
【0280】
この慢性腎疾患モデルは、Hu MC et al.(J Am Soc Nephrol 22, 124-136, 2011)に記載の方法の変法である。Hu MC et al.は、上記(1)の片腎摘出時、残存腎(左腎)に虚血再灌流障害を加えるが、今回の変法では、虚血再灌流は行わなかった。
高リン食開始後(Sham群においては低リン食)、1週間後(E)、4週間後(M)及び8週間後(L)に組織を摘出した。
【0281】
組織を摘出する動物は、Avertin (250 mg/kg) 腹腔内投与による麻酔下で、眼窩よりEDTA添加チューブへの採血を行い、頸椎脱臼して安楽死させ、器官、及び組織(骨髄、脳、皮膚、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、骨格筋、脾臓、精巣、胸腺、脂肪、大腸、胃、副腎、大動脈、目、回腸、空腸、下垂体、頭蓋骨、唾液腺及び甲状腺)を摘出した。摘出した器官、及び組織は湿重量を測定した後、液体窒素で速やかに凍結後-80℃にて保存した。採取した血液は、室温にて10分間1200gで遠心した。遠心後に上清の血漿を回収し、-80℃にて保存した。
【0282】
II-2. リン負荷マウスモデルの作成と組織の摘出
Fgf23遺伝子変異マウスはFgf23機能の喪失により、生後から高リン状態をきたし、早期に死亡する。今回、4週齢のFgf23遺伝子変異マウス(オス及びメス)を実験に用いて、この対象群としてリン負荷マウスモデルを、WTマウス(C57BL/6N、3週齢オス)に高リン食を1週間与えて作成した。
【0283】
2-1.リン負荷
WTマウス (C57BL/6N、2週齢オス)を授乳メスマウスとともに1週間飼育した後に離乳して、特別リン含有食として2%無機リン含有高リン食(TD.10662, オリエンタルバイオサービス) 又は、0.35%無機リン含有低リン食 (TD.10662変型, オリエンタルバイオサービス) 又は、0.54%無機リン含有普通食 (CE-2, 日本クレア)を1週間与えた。上記の各モデルを以下、WT3W/HP1W, WT3W/LP1W, WT3W/ND1Wとする
【0284】
2-2.組織の摘出
WTマウスへの特別リン含有食の開始後1週間 (4週齢)に頭蓋骨と皮膚を摘出した。Fgf23遺伝子変異マウス(オス及びメス)は4週齢で、頭蓋骨と皮膚を摘出した。組織を摘出する動物は、Avertin (250 mg/kg) の腹腔内投与で麻酔後、眼窩よりEDTA添加チューブへの採血を行い、頸椎脱臼による安楽死の後に、頭蓋骨と皮膚を摘出した。摘出した組織は重量を測定した後、液体窒素で速やかに凍結後、-80℃にて保存した。採取した血液は、室温にて10分間1200gで遠心した。遠心後に上清の血漿を回収し、-80℃にて保存した。
【0285】
実験例III:血漿中の無機リン測定
E-/M-/L-UNx/HPi, E-/M-/L-Sham, 4週齢のFgf23遺伝子変異マウス, WT3W/HP1W, WT3W/LP1W, WT3W/ND1Wの各マウスで、凍結保存していた血漿サンプルを各々100μlずつ用いて血漿中無機リン値を、酵素法により測定した。
【0286】
実験例IV.各組織における遺伝子発現解析
IV-1.各組織からのRNA抽出
凍結保存された各組織を、TRIzol Reagent (Thermo Fisher Scientific, MA, USA)中で、PT10-35 GT Polytron homogenizer (KINEMATICA, Luzern, Switzerland) で15,000 rpm で10秒間ホモジナイズするか、乳鉢と乳棒を使い液体窒素中で粉砕、乾燥させた後、TRIzol Reagent中で、PT10-35 GT Polytron homogenizerで15,000 rpm で10秒間ホモジナイズするか、Cell Destroyer PS1000又はPS2000 (Bio Medical Science Inc., Tokyo, Japan) で異なるサイズのジルコニアビーズ(1.5 mm diameter × 50, 3 mm diameter ×5, 5 mm diameter× 2)を用いて4,260 rpmで45秒間、4℃でホモジナイズした。その後タンパク質を分離するため室温にて5分インキュベート後、1 ml のTRIzolに対して0.2mlのクロロホルムを加え、チューブの蓋をした後に15秒間激しくボルテックスした。撹拌後3分室温でインキュベートし、4℃で15分間12,000 gで遠心し、RNAを含む水相を新しいチューブに回収した。回収した水相に等量の70%エタノールを加え撹拌後、RNeasy mini column (Qiagen)に700μlずつアプライしRNeasy mini kit(Qiagen)標準プロトコルに従って精製RNAを回収した。回収したRNAはNanodrop (Thermo Fisher Scientific, MA, USA)にて品質及び濃度の確認を行った。
【0287】
IV-2.RNAの発現解析(RNASeq)
(1)RNAseqデータの取得
上記試料を使用してRNAseqのデータを以下の手順で取得した。
a.品質検査
下記項目にて、受入サンプルの品質検定を行った。
・Nanodrop(分光光度計)を用いた濃度測定
・Agilent 2100 Bioanalyzerによる濃度測定・品質の確認
b.サンプル調製
SureSelect Strand-Specific RNA ライブラリ調製キットを用いて次世代シークエンサー HiSeq 用ライブラリを以下の工程に従い調製した。
i. Total RNA から、オリゴ(dT)磁性ビーズを用いて、poly (A)+RNA (mRNA) を回収
ii. RNA の断片化
iii. cDNA 合成
iv. 2 本鎖 cDNA 合成
v. 末端修復、リン酸化、A テイル付加
vi. インデックス付アダプターのライゲーション
vii. 13 サイクルPCR
viii. 磁性ビーズによる精製
c.次世代シーケンサによるデータ取得
次世代シーケンサHiSeq 2500又は4000 (illumina 社)を使用し、以下の工程に従いシーケンスを行った。
i. シーケンス試薬の添加
試薬:TruSeq PE Cluster Kit v3 - cBot - HS (1 flowcell) <PE-401-3001> (illumina 社)
試薬:TruSeq SBS Kit v3 - HS (200 cycle) <FC-401-3001> (illumina 社)
ii. 1塩基伸長反応
iii. 未反応塩基の除去
iv. 蛍光シグナルの取り込み
v. 保護基と蛍光の除去
2Cycle…3Cycle…とサイクルを繰り返し、100 cycle まで実施。
vi. 逆鎖(Read2)について、i~viを100 cycle まで実施
【0288】
(2)RNAseqデータの解析
(2)-1.次世代シーケンサ出力データの解析
上記出力データについて、下記に挙げる情報処理を実施した。
i. ベースコール:出力された解析生データ(画像データ)より、塩基配列のテキストデータを取得した。
ii.フィルタリング:所定のフィルタリングによるリードデータの選別を行った。 iii.Index配列による振り分け:Index情報による各サンプルデータの振り分けを行った。
【0289】
(2)-2.出力されたデータの2次解析
Illumina Hiseq2500又は4000にて得られたデータファイル(Fastq形式)をローカルサーバーにダウンロードしたGalaxy (https://usegalaxy.org/) 上にアップロードした。その後マウスゲノムマップ情報mm10に各配列をマッピングするためにBowtie2(http://bowtie-bio.sourceforge.net/bowtie2/index.shtml) を用いて解析した。Bowtie2で得られたBAMファイルをCufflinks (http://cole-trapnell-lab.github.io/cufflinks/) にて解析することで遺伝子のFPKM(RPKM)を算出した。すなわちこの解析では、各組織に発現している全てのRNAを解析対象とした。
【0290】
IV-3.qRT-PCR
頭蓋骨及び皮膚から得られたTotal RNA 0.5~1 μgをcDNA合成のテンプレートとしOligo dT20プライマーを用いてSuperscrtipt III First-Strand Synthesis Supermix (Thermo Fisher Scientific, MA, USA) の標準プロトコルに従いcDNAを合成した。合成されたcDNAをTEバッファー(10mM Tris-HCl pH8.0、0.1 mM EDTA)にて20倍希釈した後、LightCycler 480 SYBR Green I Master (Roche, Basel, Switzerland)の標準プロトコルに従い、LightCycler480II (Roche)にてリアルタイムPCRを行いCp値を測定した。各遺伝子で得られたCp値はreference geneとしてMaeaのCp値と比較することでreference geneに対する各遺伝子の相対的発現量を定量した。リアルタイムPCRで使用したプライマーペアは表5の通りである。全てのプライマーはPrimer-BLAST(NCBI)で設計した。
【0291】
【0292】
IV-4.発現差のある遺伝子の解析
発現差のある遺伝子を抽出するため、Bowtie2によってマッピングされた配列データについてHTSeq-count(パラメーターは -rがpos、及び -sがno)を使用してそれぞれの転写物のアノテーションリードナンバーをカウントした。得られた結果は、DESeq2(Love, M. I., Huber, W. & Anders, S.; Genome biology 15, 550, doi:10.1186/s13059-014-0550-8 (2014))解析により、デフォルト設定で行った。発現差は、E-UNx/HPi vs. E-/M-/L-Sham (n=3)、M-UNx/HPi vs. E-/M-/L-Sham (n=3)、L-UNx/HPi vs. E-/M-/L-Sham (n=3)で比較した。
【0293】
IV-5.統計解析
統計解析は、ステューデントのt検定を行い、有意差を求めた。そしてp値が0.05より小さい場合に有意差有りと定義した。
【0294】
IV-6.結果
E-UNx/HPi vs. E-/M-/L-Sham (n=3) の比較で、皮膚において発現差がある遺伝子リスト(|log
2 (fold-change)| > 1, p-value < 0.05)がDESeq2解析により得られた。UNx/HPi及びWT3W/HP1W, WT3W/LP1W, WT3W/ND1Wマウスモデルの皮膚における、これらの遺伝子の発現をqRT-PCRにより検証し(n=6-9)、
図18-1~
図18-7及び表6に示す25遺伝子で発現に差がある事が示された。WT3W/HP1Wについては発現差をWT3W/LP1Wと比較した。
【0295】
この25遺伝子について、Fgf23遺伝子の機能発現との関連を評価するために、4週齢のFgf23遺伝子変異マウス(オス及びメス)の皮膚における発現をqRT-PCRで検証した(n=7)。尚、E-/M-/L-UNx/HPi, WT3W/HP1Wの骨 (頭蓋骨) において、Fgf23の発現が上昇している事は、qRT-PCRにより確認しており(
図19A及びB)、またFgf23遺伝子変異マウスでは、
図20に示すように、血中無機リン濃度が上昇しているため、Fgf23遺伝子変異マウスの対照は、同週齢(4週齢)の高リン負荷マウス(WT3W/HP1W, n=3)とした。
【0296】
Fgf23遺伝子変異マウスとWT3W/HP1Wの比較においては、
図21-1~
図21-7及び表6に示すようにいくつかの遺伝子において、統計学的に有意な発現の上昇及び低下が認められた。Fgf23遺伝子変異マウスでは、性差による発現の差も認められた。以上より、高リン状態の皮膚で発現変動する遺伝子は、
図22に示すFgf23遺伝子機能発現に依存又は非依存性の、4タイプのモデルに分別できる事が示された。
【0297】
具体的には、4タイプは以下の様に説明される。
モデルIのメカニズムにより発現が制御されている遺伝子群:
腎疾患及び/又は高リン状態により皮膚において発現が上昇する。これらの遺伝子の発現は、腎疾患及び/又は 高リン状態により骨におけるFGF23の発現上昇により抑制される経路と、FGF23の発現上昇に影響を受けない二つの経路がある。
【0298】
モデルIIのメカニズムにより発現が制御されている遺伝子群:
腎疾患及び/又は 高リン状態により皮膚において発現が抑制される。これらの遺伝子の発現抑制は、腎疾患及び/又は高リン状態により骨におけるFGF23の発現上昇により抑制される経路と、FGF23の発現上昇に影響を受けない二つの経路がある。
【0299】
モデルIIIのメカニズムにより発現が制御されている遺伝子群:
腎疾患及び/又は高リン状態により皮膚において発現が抑制される。これらの遺伝子の発現は、腎疾患及び/又は 高リン状態により骨におけるFGF23の発現上昇により抑制される。
【0300】
モデルIVのメカニズムにより発現が制御されている遺伝子群:
腎疾患及び/又は高リン状態により皮膚において発現が抑制される。これらの遺伝子の発現は、腎疾患及び/又は高リン状態により骨におけるFGF23の発現上昇には影響されない。
【0301】
【符号の説明】
【0302】
1 演算装置1
2 演算装置2
3 演算装置3
4 スクリーニング装置4
5 スクリーニング装置5
6 演算装置6
11 測定値取得部
12 基準値取得部
13 測定値比較部
14 予測部
31 第1の測定値取得部
32 第2の測定値取得部
33 測定値比較部
34 候補物質決定部
【配列表】