(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ビバリウム装飾品
(51)【国際特許分類】
A01K 63/00 20170101AFI20240229BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240229BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20240229BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20240229BHJP
【FI】
A01K63/00 B
C08L75/04
C08G18/00 J
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2020015846
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-10-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504424454
【氏名又は名称】アップコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【氏名又は名称】辻田 幸史
(72)【発明者】
【氏名】松藤 展和
(72)【発明者】
【氏名】川口 宏二
(72)【発明者】
【氏名】吉村 曜人
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-241079(JP,A)
【文献】実開昭48-047739(JP,U)
【文献】特開2006-321905(JP,A)
【文献】特開2001-064351(JP,A)
【文献】特開平10-251371(JP,A)
【文献】特開平11-140156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 63/00-63/10
C08L 75/00-75/16
C08G 18/00-18/87
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩肌の色や石肌の色とするための着色剤を添加して発泡させた
、密度が30~60kg/m
3
である連続気泡のポリウレタンフォームを、
カッターナイフや彫刻刀を用いて加工して
岩や石のように造形することによる、ビバリウム装飾品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビバリウム装飾品に関する。より詳細には、着色剤を添加して発泡させた連続気泡のポリウレタンフォームを用いたビバリウム装飾品に関する。
【背景技術】
【0002】
観賞のために、昆虫や魚やサンゴなどを飼育したり、木や植物や球根を栽培したりする設備の中でも、とりわけ、飼育対象や栽培対象の生息環境を再現したものの総称を、ビバリウム(vivalium)と呼び、近年、室内インテリアなどとして楽しむ愛好家が増えている。ビバリウムは、水中の動植物を飼育したり栽培したりするアクアリウム、陸上の生き物を飼育したり栽培したりするテラリウム、両者を混在させたアクアテラリウムに大別されるが、いずれも、室内インテリアなどとして楽しむ場合、ガラスやアクリルなどの透明素材でできた筐体(水槽など)の中に、飼育対象や栽培対象の生息環境を人工的に形成するのが一般的である。例えば、水辺の動植物の生息環境を再現したアクアテラリウムを作製する場合、水槽の中に、岩や石を配置したり砂利を敷設したりし、木や植物を植え付け、適量の水を入れてそこに魚を放流し、限られた空間内において自然環境に似通った雰囲気作りをする(例えば特許文献1)。
【0003】
水槽の中に配置する岩や石は、趣向性を高めるために重要な役目を担うことから、自然のものや、合成樹脂製の成形品(擬岩石)などが用いられるが、観賞者にとって好む大きさや形状のものを入手することは必ずしも容易ではない。また、生きた木や植物や球根をこれらに固定して栽培することは、容易でない或いはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、大きさや形状や色を自在に生み出すことができるとともに、生きた木や植物や球根を固定して栽培することができるビバリウム装飾品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の点に鑑みてなされた本発明は、請求項1記載の通り、岩肌の色や石肌の色とするための着色剤を添加して発泡させた、密度が30~60kg/m
3
である連続気泡のポリウレタンフォームを、カッターナイフや彫刻刀を用いて加工して岩や石のように造形することによる、ビバリウム装飾品の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のビバリウム装飾品は、着色剤を添加して発泡させた加工が容易なポリウレタンフォームを用いたものであるので、大きさや形状や色を自在に生み出すことができる。また、連続気泡体であることから、吸水性に優れるとともに、生きた木や植物や球根の根をフォームの内部に伸長させることができるので、これらを固定して栽培することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のビバリウム装飾品を用いたアクアテラリウムの一例の部分拡大写真(その1)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のビバリウム装飾品は、着色剤を添加して発泡させた連続気泡のポリウレタンフォームを用いたものである。
【0010】
連続気泡のポリウレタンフォームは、公知の方法で得られる公知のものであってよく、例えば、地球温暖化を引き起こすことなく環境に優しいノンフロン系のもの、具体的には、フロンガスを発生することなく反応して発泡ウレタンとなる、ポリオールとイソシアネートからなるものが挙げられる(日本パフテム株式会社のノンフロンポリオールFF5020-UCと同社のイソシアネートNP-90の組み合わせなど)。ポリオールとイソシアネートは、例えば1:0.8~1.5の重量割合で20~70℃にて混合して用いる。連続気泡のポリウレタンフォームは、ポリオールとイソシアネートからなるものの他、水とイソシアネートとの反応で炭酸ガス発泡するもの、液化炭酸ガスを利用して発泡させるもの、発泡特性を有する炭化水素系のものなどであってもよい。
【0011】
連続気泡のポリウレタンフォームを所望する色、例えば、岩肌の色や石肌の色とするための着色剤(公知の無毒な染料などであってよい)は、ポリオールおよび/またはイソシアネートに添加される。適切な着色剤を選択することで、コンクリートブロックなどの人工物に模すこともできる。着色剤を添加したポリオールとイソシアネートを反応させることで得られる連続気泡のポリウレタンフォームは、どこをどのように加工しても、その表面は所望する色であり、再加工してもその表面は所望する色のままである。連続気泡のポリウレタンフォームの表面を所望する色の塗料で塗布する方法では、加工の都度、また、再加工の都度、塗装が必要になることに加え、表面に塗布した塗料が連続気泡の目詰まりを引き起こすといった問題を生じさせる。
【0012】
連続気泡のポリウレタンフォームは、硬質フォームであっても軟質フォームであってもよいが、例えば密度が30~60kg/m3程度である硬質フォームが望ましい。密度がこの程度である連続気泡の硬質フォームは、適度の圧縮強さ(50~300kPa程度)を有することから、カッターナイフや彫刻刀などを用いた造形がしやすく、かつ、生きた木や植物や球根にとって根を内部に伸長させやすい硬さであり、これらをたくさん固定しても型崩れを起こしにくい。また、吸水性に優れるので(水の中に入れて24時間後の吸水量が30~70g/100cm2程度)、その高さの半分程度の高さまでの水の中では重しで押さえつけたり接着剤で筐体の底面に固定したりしなくても浮き上がることがなく、アクアリウム装飾品やアクラテラリウム装飾品としての使用に適している。
【0013】
所定の色の本発明のビバリウム装飾品は、観賞者が好む大きさや形状に加工してから市場に供することができる他、加工する前の例えば一辺が20~60cmの直方体の形状で市場に供することもできる。市場に供された直方体の形状のフォームは、造形業者によって観賞者の要望に応えた大きさや形状に加工された後、観賞者に引き渡されることができる他、観賞者自らが趣味や嗜好の一環で加工して楽しむことや、学校教育における工作材料などとして利用することもできる。また、硬質フォームの場合、発泡時の自己接着力を活かし、筐体の内部で発泡させてから加工してもよい(必要に応じて表面のスキン層を除去して連続気泡を表面に露出させる)。
【0014】
本発明のビバリウム装飾品への生きた木や植物や球根の固定は、木や植物の場合、連続気泡のポリウレタンフォームに、これらを差し込むための切り込みや孔を設け、そこに差し込んで行えばよい。球根の場合、その形状に適応した窪みをフォームに設け、そこに嵌め込んで行えばよい。いずれにおいても、生きた木や植物や球根は、根をフォームの内部に伸長させるので、これらをフォームに固定して栽培することができる。
【0015】
図1~5は、本発明のビバリウム装飾品を用いたアクアテラリウムの一例の部分拡大写真である。このビバリウム装飾品は、岩肌の色となるように着色剤を添加して発泡させた密度が47kg/m
3である連続気泡のポリウレタンフォーム(日本パフテム株式会社のノンフロンポリオールFF5020-UC10と同社のイソシアネートNP-90の組み合わせからなる硬質フォーム、独立気泡は1%)を、カッターナイフや彫刻刀などを用いて岩のように造形したものであり、
図1~5は、フォームに設けた切り込みや孔に植物を差し込んだりしてから約8カ月後の状況である。連続気泡のフォームが植物を育成し得るに足る水を含むことで、植物は根をフォームの内部に伸長させてしっかり根を張り、生き生きとしていることがわかる。なお、
図1~5に示した連続気泡のフォームは、圧縮強さが90kPa(JIS K 7220に基づく試験による)であり、加工が容易であった。また、水の中に入れて24時間後の吸水量は40g/100cm
2(JIS A 9521に基づく試験による)であり、その高さの半分程度の高さまでの水の中では重しで押さえつけたり接着剤で水槽の底面に固定したりしなくても浮き上がらなかった。
【0016】
ノンフロンポリオールFF5020-UC10に含まれる発泡剤(水)の量を変化させて、様々な密度を有する連続気泡のポリウレタンフォームを得、加工のしやすさや、生きた木や植物や球根の栽培のしやすさ、吸水性などを調べたところ、フォームの密度が30kg/m3を下回ると、圧縮強さが低下して弾力性が上昇することで、即ち、軟らかすぎることで、加工しにくくなることや、生きた木や植物や球根をたくさん固定すると型崩れを起こしやすくなることが確認された。一方、フォームの密度が60kg/m3を上回ると、硬すぎて、加工しにくくなること、生きた木や植物や球根の根が内部に伸長しにくくなること、吸水量が少なくなることで水の中に入れると浮き上がりやすくなることが確認された。しかしながら、フォームの密度が15kg/m3程度、あるいは、90kg/m3程度であっても、上記のような不都合は生じるものの、ビバリウム装飾品としての使用ができないわけではないことも確認された。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、大きさや形状や色を自在に生み出すことができるとともに、生きた木や植物や球根を固定して栽培することができるビバリウム装飾品を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。