IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社MiChSの特許一覧

特許7445297フロー式光反応リアクター及びフロー式光反応装置
<>
  • 特許-フロー式光反応リアクター及びフロー式光反応装置 図1
  • 特許-フロー式光反応リアクター及びフロー式光反応装置 図2
  • 特許-フロー式光反応リアクター及びフロー式光反応装置 図3
  • 特許-フロー式光反応リアクター及びフロー式光反応装置 図4
  • 特許-フロー式光反応リアクター及びフロー式光反応装置 図5
  • 特許-フロー式光反応リアクター及びフロー式光反応装置 図6
  • 特許-フロー式光反応リアクター及びフロー式光反応装置 図7
  • 特許-フロー式光反応リアクター及びフロー式光反応装置 図8
  • 特許-フロー式光反応リアクター及びフロー式光反応装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-28
(45)【発行日】2024-03-07
(54)【発明の名称】フロー式光反応リアクター及びフロー式光反応装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/12 20060101AFI20240229BHJP
   B01J 19/24 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B01J19/12 C
B01J19/24 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020081609
(22)【出願日】2020-05-02
(65)【公開番号】P2021175567
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】512235460
【氏名又は名称】株式会社MiChS
(74)【代理人】
【識別番号】100161942
【弁理士】
【氏名又は名称】鴨 みどり
(72)【発明者】
【氏名】笠門崇好
(72)【発明者】
【氏名】柳日馨
(72)【発明者】
【氏名】佐藤正明
(72)【発明者】
【氏名】福山高英
(72)【発明者】
【氏名】三井均
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/235582(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/224376(WO,A1)
【文献】特開2008-086993(JP,A)
【文献】特開2010-023023(JP,A)
【文献】特開2011-092829(JP,A)
【文献】特開2018-167195(JP,A)
【文献】国際公開第2013/069779(WO,A1)
【文献】特開2007-105668(JP,A)
【文献】特開2009-073837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00-12/02,14/00-19/32
C07D 317/00-325/00
B01F 21/00-25/90
B01F 35/00-35/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と気体を供給しながら光反応を実施する反応ケースを備え、
該反応ケースの内部に、該液体を上流から下流方向に流通させるための流路溝を少なくとも1つ以上有する液体流通部と、該気体を流通させる気体流通部とを有し、
該液体流通部の上流端部の底部に、該流路溝に該液体を供給する液体供給口と、該液体流通部の下流端部の底部に、該液体を排出するための液体排出口とを有し、
上記液体供給口の上流端よりも上流側の該反応ケースの内部に設置された気体貯蔵部Aを有し、
該気体貯蔵部Aの上部に、該気体を供給するための気体供給口と、該気体流通部の下流端部の上部に、該気体を排出するための気体排出口とを有し、
該反応ケースの上面及び/または下面に、該液体流通部と該気体流通部に光を照射して光反応を実施するための光を透過する光照射部を有し、
さらに、該反応ケースの傾きを自由に調整することができ、該液体供給口から該流路溝に供給された該液体が、自重で該反応ケースの上流から下流方向に流れるように設計された、該反応ケースを支持する反応ケース支持台を備えていることを特徴とする、
フロー式光反応リアクター。
【請求項2】
前記反応ケースが、基板、該基板を覆う蓋体、及び該基板と該蓋体を囲んで上から把持する上部保持枠ならびに下から把持する下部保持枠から構成され、
前記光照射部が、該蓋体により構成され、
前記流路溝が、該基板の上面または該蓋体の上面に形成され、
該下部保持枠の前記上流から下流方向に平行な側面に、前記反応ケースの温度を測定するための温度センサーを設置する温度センサー設置口を有することを特徴とする、
請求項1に記載のフロー式光反応リアクター。
【請求項3】
前記液体供給口が、前記流路溝毎に設置されていることを特徴とする、
請求項1または請求項2に記載のフロー式光反応リアクター。
【請求項4】
前記液体流通部が、前記気体供給口を有する前記気体貯蔵部Aよりも下流方向に設置されていることを特徴とする、
請求項1~3のいずれか1項に記載のフロー式光反応リアクター。
【請求項5】
前記流路溝が、1本であるか、または横手方向に複数本に分離されていることを特徴とする、
請求項1~4のいずれか1項に記載のフロー式光反応リアクター。
【請求項6】
前記光照射部の内、光が照射されていない部分を、光反射板を用いて覆うことを特徴とする、
請求項1~5のいずれか1項に記載のフロー式光反応リアクター。
【請求項7】
前記光照射部の内、光が照射されていない部分に、光反射板と断熱材とを設置することを特徴とする、
請求項1~5のいずれか1項に記載のフロー式光反応リアクター。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のフロー式光反応リアクター、
光源、
前記フロー式光反応リアクターの前記反応ケースの上面に有する前記光照射部の上部ならびに/若しくは前記反応ケースの下面に有する前記光照射部の下部に、該光源を設置する光源支持台、及び
前記液体排出口から排出された液体組成物ならびに前記気体排出口から排出された気体組成物を貯蔵する貯槽
を備え、
前記反応ケースが、さらに、前記反応ケースの温度を制御するための媒体を流通させる媒体流通部を有することを特徴とする、
フロー式光反応装置。
【請求項9】
前記光源支持台が、前記光照射部の光が照射される平面に対して、垂直方向および平行方向に移動でき、前記光源の照射角度を変えることができることを特徴とする、
請求項8に記載のフロー式光反応装置。
【請求項10】
前記媒体流通部の下流端部に連結されており、前記媒体流通部に前記媒体を供給する媒体供給口と、
前記媒体流通部の上流端部に連結されており、前記媒体流通部を流れてきた前記媒体を排出する媒体排出口とを有することを特徴とする、
請求項8または9に記載のフロー式光反応装置。
【請求項11】
前記貯槽が、上部付近に、貯槽液体供給口と、貯槽気体供給口と、貯槽気体抜出口と、下部に貯槽液体抜出口を有し、
該貯槽気体抜出口には、前記反応ケース内を加圧可能にして光反応を常圧系または加圧系で実施するための加圧装置と、前記気体組成物を処理するための気体処理装置が接続されていることを特徴とする、
請求項8~10のいずれか1項に記載のフロー式光反応装置。
【請求項12】
前記フロー式光反応リアクターと前記貯槽との間に、前記フロー式光反応リアクターと同様の構造を有する第二フロー式光反応リアクターが設置されており、
前記フロー式光反応リアクターと前記光源とを使用して、光反応を実施し得られた前記液体組成物と前記気体組成物を、該第二フロー式光反応リアクターに供給し、該第二フロー式光反応リアクターに設置した第二光源を使用して、第二光反応を常圧系または加圧系で実施するように、
該第二フロー式光反応リアクターの気体供給口が、前記フロー式光反応リアクターの前記気体排出口と連結されており、
該第二フロー式光反応リアクターの液体供給口が、前記フロー式光反応リアクターの前記液体排出口と連結されていることを特徴とする、
請求項8~11のいずれか1項に記載のフロー式光反応装置。
【請求項13】
液体と気体を供給しながら光反応を実施する反応ケースを備え、
該反応ケースの内部に、該液体を上流から下流方向に流通させるための液体流通部と、該気体を流通させる気体流通部とを有し、
該気体流通部の上流端部に、該気体を供給するための気体供給口と、該気体流通部の下流端部に、該気体を排出するための気体排出口とを有し、
該液体流通部の上流端部に、該液体を供給するための液体供給口と、該液体流通部の下流端部に、該液体を排出するための液体排出口とを有し、
該反応ケースの上面及び/または下面及び/または側面に、該液体流通部と該気体流通部に光を照射して光反応を実施するための光を透過する光照射部を有し、
さらに、該反応ケースの傾きを自由に調整することができ、該液体供給口から該液体流通部に供給された該液体が、自重で該反応ケースの上流から下流方向に流れるように設計された、該反応ケースを支持する反応ケース支持台を備えている単管式のフロー式光反応リアクターが、前記フロー式光反応リアクターと前記貯槽との間に設置されており、
前記フロー式光反応リアクターと前記光源とを使用して、光反応を実施し得られた前記液体組成物と前記気体組成物を、該単管式のフロー式光反応リアクターに供給し、該単管式のフロー式光反応リアクターに設置した別の光源を使用して、さらなる光反応を常圧系または加圧系で実施するように、
該単管式のフロー式光反応リアクターの気体供給口が、前記フロー式光反応リアクターの前記気体排出口と連結されており、
該単管式のフロー式光反応リアクターの液体供給口が、前記フロー式光反応リアクターの前記液体排出口と連結されていることを特徴とする、
請求項8~11のいずれか1項に記載のフロー式光反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路に液体と気体を流しながら光反応させるフロー式光反応リアクター及びフロー式光反応装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機光化学反応は、有機合成の有用な手段の一つであり、光を利用した新規な反応が開発され、さらに大規模な工業的生産にも応用されている。例えば、分子状酸素を用いた閉環反応や芳香環上メチル基のカルボン酸への変換反応などが開発され、また、工業的生産の例として、塩化ニトロシルを用いたシクロヘキサンのニトロソ化からε-カプロラクタムの製造などがあり、また、様々な光反応装置が開発されている。
特許文献1には、光発光体を保持する光プレートと内部空間を有する枠状フレームとの組み合わせを構成単位として、1個乃至複数個の構成単位を結合した光反応装置が開示されている。
特許文献2には、化学反応を進行させる反応流路と、該反応流路の一端に連結している反応流路に、反応させる液体を供給するための供給流路と、該反応流路の他端に連結している反応流路から、反応した生成物を排出するための排出流路が、形成された無機透明基板を有し、無機透明基板が弧状に湾曲した形状を有する小型反応器が開示されている。
特許文献3には、液体を流しながら反応させる反応ケースと、液体が自重で流れるように、反応ケースを傾斜させて支持する支持体を備えており、反応ケース内に液体を流すための流路溝を有する液体流通部と、流路溝に接するように気体を流通させるための気体流通部を備え、液体供給部に液体を貯留しオーバーフローさせながら供給する、マルチチャンネル型フローリアクターが開示されている。
【0003】
特許文献1の方法は、光プレートと枠状フレームとの組み合わせた構成単位は、分解が可能であるため内部洗浄が容易であること、枠状フレームの内部空間には伝熱媒体を流す蛇管が設置されているので熱交換量の変更が容易であること、さらに同じ形状の部品で構成されているため製造費、保守用部品費用の低減が可能であるとしている。しかし、気体―液体の反応には適さない。
特許文献2の方法は、小型反応器及び反応装置で、光反応を安定して効率よく行うことができるとしているが、気体を用いる場合は、反応液が、気体によって反応器の系外に押し出され反応器内の滞留時間が短くなるため、十分に反応は進行しない。
特許文献3の方法は、気体―液体の光反応を実施するために、液体流通部と気体流通部の間に空間を確保して、液体が、気体によって反応器の系外に押し出されないように改良した光反応装置であるが、液体貯蔵部からオーバーフローによって液体を流し、液体流通部の上部に気体供給口を備えた構造になっているので、液体流通部を流れる液体が、気体によって流れが乱されるため、液体が一定に流れない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭59-146583号公報
【文献】特開2016-068018号公報
【文献】特開2019-209302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、気体―液体の反応(特には光反応)に適しており、十分に反応が進行し、液体流通部を流れる液体が、気体によって流れが乱されることが抑制された、液体と気体を流しながら反応させる反応ケースと、液体が自重で流れるように上記反応ケースを傾斜させて支持する支持体と、上記反応ケースの上面に光を照射するための光照射部と、上記反応ケースの温度を制御するための温度制御装置を備えている、フロー式光反応リアクター及びフロー式光反応装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、上記の課題を達成するために鋭意検討した結果、以下の手段を採用することによって、上記の課題が解決できることを見出した。
【0007】
本願発明者らは、上記の目的を達成するために、鋭意検討した結果、以下の手段を採用することによって、上記の課題を解決できることを見出した。
第一の手段は、液体と気体を供給しながら、光反応を実施する反応ケースを備え、
該反応ケースの内部に、該液体を上流から下流方向に流通させるための流路溝を少なくとも1つ以上有する液体流通部と、該気体を流通させる気体流通部とを有し、
該液体流通部の上流端部の底部に、該流路溝に該液体を供給する液体供給口と、該液体流通部の下流端部の底部に、該液体を排出するための液体排出口とを有し、
上記液体供給口の上流端よりも上流側の該反応ケースの内部に設置された気体貯蔵部Aを有し、
該気体貯蔵部Aの上部に、該気体を供給するための気体供給口と、該気体流通部の下流端部の上部に、該気体を排出するための気体排出口とを有し、
該反応ケースの上面及び/または下面に、該液体流通部と該気体流通部に光を照射して光反応を実施するための光を透過する光照射部を有し、
さらに、該反応ケースの傾きを自由に調整することができ、該液体供給口から該流路溝に供給された該液体が、自重で該反応ケースの上流から下流方向に流れるように設計された、該反応ケースを支持する反応ケース支持台を備えている、フロー式光反応リアクターを提供することにより、上記の目的を達成したものである。
第二の手段は、上記反応ケースが、基板、該基板を覆う蓋体、及び該基板と該蓋体を囲んで上から把持する上部保持枠ならびに下から把持する下部保持枠から構成され、
上記光照射部が、該蓋体により構成され、
上記流路溝が、該基板の上面または該蓋体の上面に形成され、
該下部保持枠の上記上流から下流方向に平行な側面に、上記反応ケースの温度を測定するための温度センサーを設置する温度センサー設置口を有する、第一の手段に記載のフロー式光反応リアクターを提供することにより、上記の目的を達成したものである。
第三の手段は、上記液体供給口が、上記流路溝毎に設置されている、第一の手段または第二の手段に記載のフロー式光反応リアクターを提供することにより、上記の目的を達成したものである。
第四の手段は、上記液体流通部が、上記気体供給口を有する上記気体貯蔵部Aよりも下流方向に設置されている、第一の手段~第三の手段のいずれかに記載のフロー式光反応リアクターを提供することにより、上記の目的を達成したものである。
第五の手段は、上記流路溝が、1本であるか、または横手方向に複数本に分離されている、第一の手段~第四の手段のいずれかに記載のフロー式光反応リアクターを提供することにより、上記の目的を達成したものである。
第六の手段は、上記光照射部の内、光が照射されていない部分を、光反射板を用いて覆う、第一の手段~第五の手段のいずれかに記載のフロー式光反応リアクターを提供することにより、上記の目的を達成したものである。
第七の手段は、上記光照射部の内、光が照射されていない部分に、光反射板と断熱材とを設置する、第一の手段~第五の手段のいずれかに記載のフロー式光反応リアクターを提供することにより、上記の目的を達成したものである。
第八の手段は、第一の手段~第七の手段のいずれかに記載のフロー式光反応リアクター、光源、上記フロー式光反応リアクターの上記反応ケースの上面に有する上記光照射部の上部ならびに/若しくは上記反応ケースの下面に有する上記光照射部の下部に、該光源を設置する光源支持台、及び上記液体排出口から排出された液体組成物ならびに上記気体排出口から排出された気体組成物を貯蔵する貯槽を備え、上記反応ケースが、さらに、上記反応ケースの温度を制御するための媒体を流通させる媒体流通部を有するフロー式光反応装置を提供することにより、上記の目的を達成したものである。
第九の手段は、上記光源支持台が、上記光照射部の光が照射される平面に対して、垂直方向および平行方向に移動でき、上記光源の照射角度を変えることができる、第八の手段に記載のフロー式光反応装置を提供することにより、上記の目的を達成したものである。
第十の手段は、上記媒体流通部の下流端部に連結されており、上記媒体流通部に上記媒体を供給する媒体供給口と、上記媒体流通部の上流端部に連結されており、上記媒体流通部を流れてきた上記媒体を排出する媒体排出口とを有する、第八の手段または第九の手段に記載のフロー式光反応装置を提供することにより、上記の目的を達成したものである。
第十一の手段は、上記貯槽が、上部付近に、貯槽液体供給口と、貯槽気体供給口と、貯槽気体抜出口と、下部に貯槽液体抜出口を有し、
該貯槽気体抜出口には、上記反応ケース内を加圧可能にして光反応を常圧系または加圧系で実施するための加圧装置と、上記気体組成物を処理するための気体処理装置が接続されている、第八の手段~第十の手段のいずれかに記載のフロー式光反応装置を提供することにより、上記の目的を達成したものである。
第十二の手段は、上記フロー式光反応リアクターと上記貯槽との間に、上記フロー式光反応リアクターと同様の構造を有する第二フロー式光反応リアクターが設置されており、
上記フロー式光反応リアクターと上記光源とを使用して、光反応を実施し得られた上記液体組成物と上記気体組成物を、該第二フロー式光反応リアクターに供給し、該第二フロー式光反応リアクターに設置した第二光源を使用して、第二光反応を常圧系あるいは加圧系で実施するように、
該第二フロー式光反応リアクターの気体供給口が、上記フロー式光反応リアクターの上記気体排出口と連結されており、
該第二フロー式光反応リアクターの液体供給口が、上記フロー式光反応リアクターの上記液体排出口と連結されている、第八の手段~第十一の手段のいずれかに記載のフロー式光反応装置を提供することにより、上記の目的を達成したものである。
第十三の手段は、液体と気体を供給しながら光反応を実施する反応ケースを備え、
該反応ケースの内部に、該液体を上流から下流方向に流通させるための液体流通部と、該気体を流通させる気体流通部とを有し、
該気体流通部の上流端部に、該気体を供給するための気体供給口と、該気体流通部の下流端部に、該気体を排出するための気体排出口とを有し、
該液体流通部の上流端部に、該液体を供給するための液体供給口と、該液体流通部の下流端部に、該液体を排出するための液体排出口とを有し、
該反応ケースの上面及び/または下面及び/または側面に、該液体流通部と該気体流通部に光を照射して光反応を実施するための光を透過する光照射部を有し、
さらに、該反応ケースの傾きを自由に調整することができ、該液体供給口から該液体流通部に供給された該液体が、自重で該反応ケースの上流から下流方向に流れるように設計された、該反応ケースを支持する反応ケース支持台を備えている単管式のフロー式光反応リアクターが、上記フロー式光反応リアクターと前記貯槽との間に設置されており、
上記フロー式光反応リアクターと上記光源とを使用して、光反応を実施し得られた上記液体組成物と上記気体組成物を、該単管式のフロー式光反応リアクターに供給し、該単管式のフロー式光反応リアクターに設置した別の光源を使用して、さらなる光反応を常圧系または加圧系で実施するように、
該単管式のフロー式光反応リアクターの気体供給口が、上記フロー式光反応リアクターの上記気体排出口と連結されており、
該単管式のフロー式光反応リアクターの液体供給口が、上記フロー式光反応リアクターの上記液体排出口と連結されていることを特徴とする、第八の手段~第十一の手段のいずれかに記載のフロー式光反応装置を提供することにより、上記の目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、気体―液体の反応(特には光反応)に適しており、十分に反応が進行し、液体流通部を流れる液体が、気体によって流れが乱されることが抑制された、液体と気体を流しながら反応させる反応ケースと、液体が自重で流れるように上記反応ケースを傾斜させて支持する支持体と、上記反応ケースの上面に光を照射するための光照射部と、上記反応ケースの温度を制御するための温度制御装置を備えている、フロー式光反応リアクター及びフロー式光反応装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1はフロー式光反応リアクターの一実施形態を示す概略図である。
図2図2は流路溝を有する液体流通部の一実施形態を示す概略図である。
図3図3は光源とフロー式光反応リアクターの一実施形態を示す概略図である。
図4図4は反応ケースの一実施形態を示す概略図である。
図5図5は、従来例のオーバーフロー式光反応リアクターの反応ケースの断面を示す概略図である。
図6図6はフロー式光反応リアクターと光源の一実施形態を示す概略図である。
図7図7はフロー式光反応装置を含む反応システムの一実施形態を示す模式図である。
図8図8は媒体流通部の一実施形態を示す概略図である。
図9図9は2台のフロー式光反応リアクターを含む反応システムの一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
第一の手段について、図1に示すフロー式光反応リアクター100の一実施形態について、具体的に説明する。液体200と気体201を流しながら反応させる反応ケース101は、上面に光を照射して光反応を実施するための光を透過する光照射部102を有する。光源302から照射された光は、上記光照射部102を通して、上記液体200と上記気体201に照射される。上記光照射部102を、反応ケース101の下面に有しても良い。
【0011】
上記反応ケース101の内部には、上記液体200を流す液体流通部104と、上記気体201を流通させる気体流通部105を備える。図2に示すように、上記液体流通部104は流路溝103を有し、上記流路溝103に上記液体200が流通する。上記流路溝103は、少なくとも1本あれば良い。
【0012】
図1に示すように、上記反応ケース101は、上記液体流通部104の上流端部の下方(底部)から上記流路溝103に上記液体200を供給する液体供給口109を有し、上記液体流通部の下流端部の下部(底部)から、液体組成物202を排出するための液体排出口110を有する。上記液体供給口109の上流端よりも上流側に気体貯蔵部106A、上記液体流通部104の下流端よりも下流側に気体貯蔵部106Bを有し、気体貯蔵部106Aの上方に上記気体201を供給するための気体供給口107と、気体貯蔵部106Bの上方に気体組成物203を排出する気体排出口108を有する。上記液体流通部104は、上記気体供給口107を有する上記気体貯蔵部106Aよりも下流に設置されている。
また、上記気体201は、上記気体排出口108から供給し、上記気体供給口107から排出しても良い。
【0013】
上記反応ケース101の下部には、好ましくは、上記反応ケース101の温度を制御するための媒体204を流通させる媒体流通部304が設けられ、上記媒体流通部304の下流端部に連結されており、上記媒体流通部304に上記媒体204を供給する媒体供給口307と、該媒体流通部の上流端部に連結されており、上記媒体流通部を流れてきた上記媒体204を排出する媒体排出口308が設けられる。
【0014】
上記反応ケース101は、反応ケース支持台111で傾斜させて支持されている。なお、上記反応ケース101において、「上流」とは、上記反応ケース支持台111により傾斜させた上記反応ケース101の高さが高い方を指す。そして、「下流」とは、上記反応ケース支持台111により傾斜させた上記反応ケース101の高さが低い方を指す。
【0015】
図3に、光源302とフロー式光反応リアクター100を概略的に示す。図3に示すように、上記反応ケース101の傾斜角度は、上記反応ケース支持台111の高さを調整することにより、自由に変えることができる。なお、図3において、右側が「上流」であり、左側が「下流」である。上記反応ケース支持台111は、上記反応ケース101の上流端部を支持する上流縦フレーム122と、上記反応ケース101の下流端部を支持する下流縦フレーム123とを有する。
上記上流縦フレーム122は、多数の貫通孔124を上端から縦方向に並んで有している。これにより、上記反応ケース支持台111は、高い位置の貫通孔124を利用して上記反応ケース101を固定することにより、上記反応ケース101の傾斜角度を大きくでき、低い位置の貫通孔124を利用して上記反応ケース101を固定することにより、上記反応ケース101の傾斜角度を小さくできる。
上記液体供給口109から上記流路溝103に供給された上記液体200は、自重で上記反応ケース101の上流から下流方向に流れる。
図3において、303は光源支持台、306は固定金具である。これらについては、後で説明する。
【0016】
上記反応ケースの傾斜角度は、水平面に対して、1~70度が好ましく、2~50度がより好ましく、3~30度が特に好ましい。上記反応ケースの傾斜角度が70度よりも大きいと、上記液体流通部を流動する上記液体の滞留時間が極端に短くなるため、光反応の収率低下の原因となる恐れがあり好ましくない。また、上記反応ケースの傾斜角度が1度よりも小さいと、上記液体供給口から上記流路溝に導入された上記液体の下流方向への移動速度が遅くなるため、上記液体供給口よりも上流方向に流動し、上記気体貯蔵部Aに溜まる恐れがあり好ましくない。
【0017】
上記液体200は、上記液体流通部104を流れ、上記気体201は、上記気体流通部105を流れ、上記光照射部102を通して光源302から照射された光によって、上記液体200と上記気体201の間で光反応が進行し、上記液体組成物202と上記気体組成物203が得られる。
【0018】
上記気体貯蔵部106Aの上部に上記気体201を上記気体貯蔵部106Aに供給するための上記気体供給口107が設置されている。上記気体供給口107が、上記気体流通部105の上流端部の上記気体貯蔵部106Aに連結されていると、上記気体供給口107から供給された上記気体201が好ましくは図1に矢印で示すように上記気体貯蔵部106Aの底にあたり、導入圧力が分散される。ここで、上記気体供給口107から供給された上記気体201は、上記気体貯蔵部106Aで導入圧力が分散された状態で上記液体200と接すればよく、上記気体供給口107から供給された上記気体201は上記気体貯蔵部106Aの側面や上部にあたるように構成されていても良い。
【0019】
上記フロー式光塩素化装置100では、上記気体流通部105に設置された上記気体貯蔵部106Aで、上記気体供給口107から吹き込まれた上記気体201の吹き込み圧力を緩和するため、上記気体201の吹き込み圧力を高く設定しても、下流側に設けられた上記液体流通部104を流れる上記液体200の流れの乱れが抑制される。このため、安定した反応を行うことができる。
上記気体供給口から上記気体流通部に供給される気体の流速としては、例えば0.3~60.0cm/秒とすることができ、好ましくは10.0~60.0cm/秒とすることができる。
【0020】
気体貯蔵部Bは任意であるが、下流の気体貯蔵部Bを設けない場合、気体排出口の近傍に液体排出口があるが、供給された気体の圧力のため、液体排出口から液体と気体が押し出され、貯槽に排出される場合がある。好ましくは気体貯蔵部Bを設置して、供給された気体の圧力を下げることによって、液体と気体の貯槽への排出速度を下げ、反応をより効果的に実施することができる。図1に示すように、気体貯蔵部B(106B)を設ける場合、気体排出口108は、該気体貯蔵部B(106B)の上部に設けることが好ましい。
【0021】
フロー式リアクターを用いた反応について、従来例では、液体と気体を上流から同時に流し、操作的にも簡単になる。しかし、上流では液体と気体の接触時間が短いため、気体がまだ液体に溶解していないので反応が遅くなる場合がある。また、液体中の原料と気体の濃度が高いため、副反応が起こる場合もある。特に塩素化反応のような逐次反応では、1クロロ体、1クロロ体が反応して2クロロ体、3クロロ体などが副生する。
この副反応については、液体を上流から、気体を下流から流すときは、光は下流から上流に向かって照射することが好ましい。液体上に気体が流れているため、液体が下流に流れながら気体を吸収した状態で光が照射されるので、反応が早くなる場合があり、反応が早いので副反応も抑制できる場合がある。
【0022】
第二の手段について、図4を用いて説明する。
反応ケース101は、基板112と、上記基板112を覆う蓋体113と、上記基板112と上記蓋体113を上から囲んで把持する上部保持枠114と、下から囲んで把持する下部保持枠115から構成されている。上記基板112の上面には、液体200を流すための液体流通部104として、少なくとも1つ以上の流路溝103が形成されている。上記蓋体113は光照射部102となる。
上記基板112と上記蓋体113とは、両者の間に空間が十分に確保された状態で密閉されており、上記液体200が上記気体201の圧力によって、上記反応ケース101から押し出されない構造になっている。
【0023】
上記基板112と上記蓋体113は、反応で使用される上記液体200と上記気体201に耐性がありかつ不活性な材料が好ましい。
上記基板112は、上記流路溝103を成形加工できる強度が必要であり、ガラス、テンパックス(登録商標)ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ネオセラム(登録商標)ガラス、石英ガラス、フッ素樹脂、ステンレス鋼、ハステロイ(登録商標)鋼などを採用することができるが、特にパイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス、ステンレス鋼、ハステロイ(登録商標)鋼が好ましい。
上記蓋体113は、光を透過する材料が使用することができ、ガラス、テンパックス(登録商標)ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、ネオセラム(登録商標)ガラス、石英ガラス、フッ素樹脂などを採用することができるが、特にパイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラスが好ましい。
【0024】
上記基板112と上記蓋体113の接触面から液体と気体が漏れないようにするため、上記基板112と上記蓋体113を研磨して平面平滑性を確保して重ねる方法、上記基板112と上記蓋体113の間に柔軟性を有するパッキンを挟む方法、さらには、上記基板112と上記蓋体113に溝を成形して、その溝にOリングをはめる方法などを採用することができる。上記上部保持枠114と上記蓋体113の接する面には、上記蓋体113が割れないように、柔軟性のあるパッキンを挟み込むことが好ましい。
パッキン及びOリングは、液体や気体に耐性があり不活性な材質が好ましく、シリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、四フッ化エチレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、パーフルオロエラストマーなどを使用することができ、使用する上記液体200や上記気体201の性質から適宜選択すればよい。
【0025】
保持枠は、上記上部保持枠114と上記下部保持枠115から構成されており、上記下部保持枠115は、上記基板112と上記蓋体113を収納し、上部保持枠114が上記蓋体113を上部から抑えて、上記反応ケース101から上記液体200と上記気体201が漏れない役目を果たす。
上記下部保持枠115の上記上流から下流方向に平行な側面には、温度センサーを挿入できる複数の温度センサー設置口116を有しており、上記反応ケース101の温度や反応熱による温度上昇などを測定することができる。
保持枠の材質は特に限定されないが、上記基板112と上記蓋体113を保持するための強度を有する材料が好ましく、特に、金属(鉄鋼、ステンレス、アルミニウム)や樹脂などを採用することができる。
【0026】
上記反応ケース101に備えた上記光照射部102において、長手方向寸法は、1~300cmが好ましく、5~150cmがより好ましく、10~100cmが特に好ましい。また、横手方向寸法は、10~70cmが好ましく、15~30cmがより好ましく、15~20cmが特に好ましい。光照射部102の長手方向寸法が1cm未満、また横手方向寸法が10cm未満だと、上記反応ケース101を流動する液体200と気体201に対する光照射時間が短くなり収率低下の原因となる。
なお、本明細書では、上流から下流に向けた上記液体200の流動方向を「長手方向」と称し、長手方向に対して直交する方向を「横手方向」と称する。
【0027】
上記反応ケース内の上記液体流通部にある上記流路溝の数は、1~50本が好ましく、1~20本がより好ましく、1~10本が特に好ましい。各流路溝の幅は、1~50mmが好ましく、5~30mmがより好ましく、10~15mmが特に好ましい。また、各流路溝の深さは、0.1~30mmが好ましく、0.5~10mmがより好ましく、1~5mmが特に好ましい。各流路溝の幅が50mmより大きく、また各流路溝深さが30mmより深いと、上記流路溝を流動する上記液体が上記気体と接触できず、上記液体が未反応のまま上記反応ケース外に排出される場合があり、収率低下の原因となる場合がある。
上記反応ケース内の上記気体流通部の高さは、1~50mmが好ましく、1~20mmがより好ましく、1~10mmが特に好ましい。上記気体流通部の高さが50mmより大きいと、上記気体流通部の上部を流動する上記液体と上記気体が接触できず、上記気体が反応しないまま上記反応ケース外に排出される場合があり、経済的に不利である場合がある。
上記反応ケース内の上記気体貯蔵部A、Bの体積は、上記反応ケース内の全空間体積に対して、50%以下が好ましく、30%以下がより好ましい。上記気体貯蔵部A、Bの体積が、上記反応ケース内の全空間体積に対して50%より大きいと、上記液体流通部の長手方向寸法が短くなり、上記流路溝を流動する上記液体の滞留時間が短くなるため、上記液体が未反応のまま上記反応ケース外に排出される場合があり、収率低下の原因となる場合がある。ここで、上記気体貯蔵部Aと上記気体貯蔵部Bの寸法は、互いに同じでも、異なっていても良い。
【0028】
第三の手段について、図1図2及び図5を用いて説明する。
本願発明者らが出願した、特開2019-209302号公報に記載のフロー式光反応リアクター400では、図5に示すように、液体流通部401の上流端部に液体貯留部402が設けられ、上記液体貯留部402の下方に設置された液体供給口403から液体404を供給して、不図示の複数の流路溝の上端部に対して同時にオーバーフローさせて液体404を上記流路溝に供給し、上記液体流通部401の上方に設けられた気体供給口405から気体を供給して、光反応を実施する。
この方法では、気体の流量を増やすと、上記気体供給口405の真下の流路溝を流れる液体が、供給された気体の圧力によって押しのけられ、横手方向の流路溝に移動してしまい、液体が流路溝に均等に流れない現象が認められる場合がある。
図1に示すように、上記気体貯蔵部106Aの上方に設けられた上記気体供給口107から上記気体201を供給することにより、供給された上記気体201の圧力によって上記液体200が押しのけられることが抑制され、図2に示すように、上記流路溝103の下方に上記液体供給口109を設置することにより、上記流路溝103に流れる上記液体200を均等に流すことができる。
上記従来例のようなオーバーフローで液体を供給する形式の反応ケースは、加工が簡単で、製作コストは安くなるが、流路溝に液体を均等に流せないので、光反応を効率良く実施できなくなる恐れがある。好ましくは、上記流路溝103毎に上記液体供給口109を設置すると、上記反応ケース101の製作コストは高くなるが、安定的に光反応を実施することができるので好ましい。
【0029】
第四の手段について、図2を用いて説明する。
先に述べたように、上記気体201を上記流路溝103上に供給すると不具合が起こるので、図2のように、上記気体201を上記気体貯蔵部106Aに供給することによって、上記流路溝103を流れる上記液体200は、上記気体201の影響を受けず、上記流路溝103を均等に流れ、光反応を効率よく実施することができるので好ましい。
【0030】
第五の手段について、上記流路溝103が1本の場合、上記液体200と上記気体201が横手方向に拡散せず、少量の上記液体200と上記気体201で光反応を実施することができる。
上記流路溝103が、図2に示すように横手方向に複数本に分離されている場合、光反応生成物の製造量を増大することができる。
【0031】
第六の手段について、図6を用いて説明する。
図6に、第六の手段の一実施形態であるフロー式光反応リアクター100と光源302を示す。フロー式光反応リアクター100は、上記図1で説明した通りであるが、図6では、上記反応ケース支持台111、上記光照射部102と上記液体流通部104以外は省略している。
図6に示すように、上記光照射部102を、光反射板117で覆うことにより、光反応を効率よく実施することができる。
上記光反射板117を設置しない場合、上記光照射部102に照射した光が、上述の流路溝103を流れる上記液体200を透過し、好ましくは上記流路溝103に接地している金属ハウジング面で反射し、反射した光は上記光照射部102から上記反応ケース101の外部に逃げていく。
例えば、図6に示すように、上記光照射部102に、光を照射する場合、光が照射していない上記光照射部102を上記光反射板117で覆うことにより、上記光照射部102から透過した光は、上記流路溝103を流れる上記液体200を透過し、上記基板111に接地している金属ハウジング面等で反射し、反射した光は、上記光照射部102の上面に到達する。
上記反光照射部102の上面に到達した光は、設置した上記光反射板117に反射し、再び、上記流路溝103を流れる上記液体200を透過するため光効率が高くなり、光反応の効率を上げることができる
本発明に使用する光反射板の材質は、特に限定されないが、ガラス製鏡、塩化ビニル製反射板、エチレンカーボネート製反射板、アルミホイル、金属光沢を持つ金属薄膜(鉄、アルミニウム、スズ、銀箔)などが使用できる。
【0032】
第七の手段について、光反応の反応速度を速くするために、上記液体200を加熱して、常温以上の温度で実施する場合が多い。上記光照射部102の表面は常温の大気と接触しているので、上記光照射部102の表面からの放熱によって、上記反応ケース101の温度が下がってしまう場合がある。
図6に示すように、光が照射していない上記光照射部102の表面に、断熱材118を設置することにより、上記反応ケース101からの放熱を少なくできるので、温度低下を防止でき、光反応の反応温度を、より精密に制御することができる。また、上記断熱材118に上記光反射板117を張り付けて使用してもよい。
本発明に使用する断熱材の材質は、特に限定されないが、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバーなどの繊維系断熱材、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォーム、ウレタンフォームなどの発泡プラスチック系断熱材、木材などが使用でき、光反応の反応温度に耐性を持つ断熱材を適宜使用すればよい
【0033】
第八の手段について、図7に示すフロー式光反応装置301の一実施形態について、具体的に説明する。
上記フロー式光反応装置301は、上記フロー式光反応リアクター100と、上記光源302、上記光源302を設置する光源支持台303(不図示、図3参照)を有する。上記フロー式光反応リアクター100は上記反応ケース101を有し、上記反応ケース101の温度を調整するための媒体204を流通させるための媒体流通部304と、光反応によって生成した上記液体組成物202と上記気体組成物203を貯蔵する貯槽305を備える。
この反応システムにおいては、まず、液体容器121内の上記液体200がポンプ120によって上記液体供給口109から上記反応ケース101内に導入されるとともに、気体容器125内の上記気体201がフロートメーター119で計量されながら上記気体供給口107から上記反応ケース101内に導入される。一方、上記光源302から上記反応ケース101内の上記液体流通部(不図示)に向けて光が照射される。また、上記反応ケース101は、媒体循環機構によって内部を循環する上記媒体204によって温度調節される。上記媒体循環機構は、媒体容器126内の適宜の温度の上記媒体204(例えば、水)をポンプ127によって媒体供給口307から供給して、上記媒体流通部304内を上記媒体204が循環し、媒体排出口308から戻すようになっている。なお、温度は、適宜設けた不図示の測温点によってモニターできる。そして、上記反応ケース101内において、上記液体200と上記気体201とが、光反応である気-液反応を起こす。反応により生成した上記液体組成物202は、上記液体排出口110から排出されて、貯槽液体供給口310から上記貯槽305に貯められる。
【0034】
第九の手段について、図3を用いて説明する。
上記光源支持台303は、上記反応ケース101の上記上部保持枠114(不図示、図4参照)に固定金具306で固定され、上記固定金具306の位置が調整できる構造になっている。上記光源支持台303を上記反応ケース101の上記光照射部102(不図示、図4参照)の光が照射される平面(光照射面)に対して垂直方向に移動することによって、上記光源302からの光の強度を調整できる。また、上記光照射面に対して平行方向に移動することによって、上記光照射部102の最適な位置に上記光源302の光を照射できる。さらに、上記光照射部102に対する上記光源302の照射角度を変えることもできるので、効率よく光反応を実施することができる。
【0035】
本発明で使用する上記光源302の光照射角度は、上記反応ケース101の長手方向の上流側に向けて、上記光照射部102の光照射面に対して、10~90度が好ましく、10~60度がより好ましく、10~30度が特に好ましい。
また、上記光源302の光照射方向は、上記反応ケース101の長手方向の下流側に向けてもよく、その場合の上記光源302の光照射角度は、上記光照射部102の光照射面に対して、10~90度が好ましく、10~60度がより好ましく、10~30度が特に好ましい。上記光源302の光照射角度が、上記光照射部102の光照射面に対して10度よりも小さいと、上記反応ケース101内を流動する上記液体200と上記気体201に光照射できなくなり、光反応の収率低下の恐れがあるので好ましくない。
【0036】
本発明で使用する光源は特に限定されないが、目的とする光反応に有効な波長を持つランプを適宜使用すれば良い。例えば、紫外線ランプ、可視光ランプ、赤外線ランプ、蛍光ランプ、ブラックライト、LEDライト、水銀ランプ、キセノンランプなどのランプが使用できる。
また、光源の点灯方式は、特に制限されないが、スターター型、ラビッドスタート型、インバータ型、光源電子安定器などが使用できる。
【0037】
第十の手段について、上記媒体流通部304の下流端部に位置する上記媒体204を供給する媒体供給口307と、上流端部に位置する、上記媒体流通部304を下流から上流方向に流れてきた上記媒体204を排出する媒体排出口308は連結されている(図7参照)。
図8に、媒体流通部304の別の1形態として、上記媒体流通部304の内部に媒体流通路309を有し、該媒体流通路309がU字等に折れ曲がった形態を示す。この場合には、媒体供給口307と媒体排出口308は、上記媒体流通部304の上流端部または下流端部のどちらか一方の下方(即ち、反応ケース101の下面)に設置できる。この場合には、上記媒体流通路309の長さを長くできるため、上記媒体204の熱をより効果的に利用できる。
このように、上記媒体流通部304に、温度を調整した上記媒体204を流すことによって、反応ケース101の温度を制御し、最適な反応温度で光反応を実施することができる。
【0038】
第十一の手段について、図7で説明する。
上記貯槽305の上部付近に、貯槽液体供給口310と貯槽気体供給口311と貯槽気体抜出口312を有し、上記貯槽305の下部に貯槽液体抜出口313を有し、上記フロー式光反応リアクター100の上記液体排出口110と上記気体排出口108が、貯槽液体供給口310と貯槽気体供給口311と、それぞれ連結されており、上記液体排出口110から排出された上記液体組成物202と、上記気体排出口108から排出された上記気体組成物203を、上記貯槽305に貯蔵することができる。
上記貯槽気体抜出口312には上記反応ケース101内に圧力をかけるための加圧装置としての背圧装置314を取り付けた配管が接続されており、上記貯槽305内の圧力が、上記背圧装置314で設定した圧力以上になると、上記気体組成物203は上記貯槽305から排出されるので、上記貯槽305内の圧力を設定された圧力に維持することができ、加圧系で光反応を実施することができる。排出された上記気体組成物203は気体処理装置315に送られて処理され、無毒化される。また、上記貯槽305に貯蔵された上記液体組成物202は、上記液体組成物抜出口313から抜き出すことができる。
このように、上記貯槽305に貯蔵された上記気体組成物203と上記液体組成物202は、上記貯槽305から、適宜抜き出しながら、連続的に光反応を実施することができる。
【0039】
第十二の手段について、図9で説明する。
上記フロー式光反応装置301と上記光源302を用いた光反応を実施する際に、上記フロー式光反応リアクター100と上記貯槽305の間に、上記フロー式光反応リアクター100と同様の構成と機能を有する第二フロー式光反応リアクター316を接続することによって、光反応の効率を上げることができる。
この反応システムにおいては、まず、上記液体容器121内の上記液体200が上記ポンプ120によって上記液体供給口109から上記反応ケース101内に導入されるとともに、上記気体容器125内の上記気体201が上記フロートメーター119で計量されながら上記気体供給口107から上記反応ケース101内に導入される。一方、上記光源302から上記反応ケース101内の上記液体流通部(不図示)に向けて光が照射される。また、上記反応ケース101は、上記媒体循環機構によって内部を循環する上記媒体204によって温度調節される。上記媒体循環機構は、上記媒体容器126内の適宜の温度の上記媒体204(例えば、水)を上記ポンプ127によって上記媒体供給口307から供給して、上記媒体流通部304内を媒体が循環し、上記媒体排出口308から戻すようになっている。なお、温度は、適宜設けた不図示の測温点によってモニターできる。そして、上記反応ケース101内において、上記液体200と上記気体201とが、光反応である気-液反応を起こす。反応により生成した上記液体組成物202は、上記液体排出口110から排出され、上記気体組成物203は、上記気体排出口108から排出される。
【0040】
上記フロー式光反応リアクター100の上記液体排出口110と上記気体排出口108と、上記第二フロー式光反応リアクター316の第二液体供給口317と第二気体供給口318を、それぞれ連結することによって、上記フロー式光反応リアクター100から排出された上記液体組成物202と上記気体組成物203を第二フロー式光反応リアクター316に供給することができる。
上記第二フロー式光反応リアクター316に供給された上記液体組成物202と上記気体組成物203は、上記第二フロー式光反応リアクター316内の第二液体流通部(不図示、図1の液体流通部104と同様)と第二気体流通部(不図示、図1の気体流通部105と同様)を流れ、上記第二フロー式光反応リアクター316の上記光照射部(不図示、図1の光照射部102と同様)に設置した第二光源321から照射された光によって、さらに光反応が進行することが期待できる。
上記第二フロー式光反応リアクター316は、第二媒体流路322を有し、第二媒体供給口323から供給された第二媒体324が、第二媒体流路322を下流から上流方向に流れ、第二媒体排出口325に流すことによって、第二フロー式光反応リアクター316を設定した温度に調整して、光反応を実施することができる。
【0041】
また、上記フロー式光反応リアクター100の上記媒体流路304と連結された上記媒体排出口308と上記第二フロー式光反応リアクター316の上記第二媒体供給口323を連結させて、上記媒体204を上記第二フロー式光反応リアクター316の上記第二媒体流通部322に流して、上記第二反応ケース326の温度を制御することもでき、図9では、この態様を示している。この場合、上記第二媒体排出口325と上記媒体供給口307を連結させ、これらの間に、上記媒体容器126に連結された上記ポンプ127を介在させる。
上記第二フロー式光反応リアクター316の第二液体排出口327と、第二気体排出口328が、上記貯槽305の上記貯槽液体供給口310と、上記貯槽気体供給口311と、それぞれ連結すれば、上記第二フロー式光反応リアクター316から排出される第二液体組成物205と、第二気体組成物206を、上記貯槽305に貯蔵することができる。
上記貯槽気体抜出口312には上記反応ケース101内と上記第二反応ケース326内に圧力をかけるための背圧装置314を取り付けた配管が接続されており、上記貯槽305内の圧力が、上記背圧装置314で設定した圧力以上になると、上記第二気体組成物206は上記貯槽305から排出されるので、上記貯槽305内の圧力を設置された圧力に維持することができる。排出された上記第二気体組成物206は気体処理装置315に送られて処理され、無毒化される。また、上記貯槽305に貯蔵された上記第二液体組成物205は、液体組成物抜出口313から抜き出すことができる。
このように、上記貯槽305に貯蔵された上記第二気体組成物206と上記第二液体組成物205を、上記貯槽305から、適宜抜き出しながら、連続的に光反応を実施することができる。
【0042】
第十二の手段では、上記のように、本発明のフロー式光反応リアクターを複数台直列に接続することにより、量的に満足できる工業生産を行うことができる。2台目の本発明のフロー式光反応リアクターに、1台目の本発明のフロー式光反応リアクターの反応後の気体組成物を導入する場合、例えば光塩素化反応を実施した場合には、Cl(塩素)の一方のClは塩素ラジカルになって原料を塩素化し、もう一方のClは原料から水素を奪って、塩化水素(HCl)になるため気体の体積は変化せず、2台目への気体の供給圧力は1台目と同じとなる。このため、2台目のフロー式光反応リアクターも気体貯蔵部を有することにより、より効率的に反応を行うことができる。
【0043】
第十三の手段では、上記第十二の手段と同様に、図9に示す上記フロー式光反応装置301と上記光源302を用いた光反応を実施するが、上記フロー式光反応リアクター100と上記貯槽305の間に、単管式のフロー式光反応リアクターを接続する。この場合にも、光反応の効率を上げることができる。
【0044】
上記単管式のフロー式光反応リアクターは、液体と気体を供給しながら光反応を実施する反応ケースを備え、該反応ケースの内部に、該液体を上流から下流方向に流通させるための液体流通部と、該気体を流通させる気体流通部とを有する。そして、該気体流通部の上流端部に、該気体を供給するための気体供給口と、該気体流通部の下流端部に、該気体を排出するための気体排出口とを有し、該液体流通部の上流端部に、該液体を供給するための液体供給口と、該液体流通部の下流端部に、該液体を排出するための液体排出口とを有する。該反応ケースの上面及び/または下面及び/または側面には、該液体流通部と該気体流通部に光を照射して光反応を実施するための光を透過する光照射部を有する。
さらに、該反応ケースの傾きを自由に調整することができ、該液体供給口から該液体流通部に供給された該液体が、自重で該反応ケースの上流から下流方向に流れるように設計された、該反応ケースを支持する反応ケース支持台を備えている。
【0045】
第十三の手段では、上記フロー式光反応リアクター100の上記液体排出口110と上記気体排出口108と、上記単管式のフロー式光反応リアクターの上記液体供給口と上記気体供給口を、それぞれ連結することによって、上記フロー式光反応リアクター100から排出された上記液体組成物202と上記気体組成物203を上記単管式のフロー式光反応リアクターに供給する。
上記単管式のフロー式光反応リアクターに供給された上記液体組成物202と上記気体組成物203は、上記単管式のフロー式光反応リアクター内の上記液体流通部と上記気体流通部を流れ、上記単管式のフロー式光反応リアクターの上記光照射部に設置した上記光源から照射された光によって、さらに光反応が進行することが期待できる。
上記単管式のフロー式光反応リアクターは、上記反応ケースの上記液体流通部と上記気体流路部の温度を設定した温度に調整するための媒体流路を有することが好ましい。上記媒体流路には、媒体供給口と媒体排出口が設けられることが好ましい。上記媒体供給口から供給された媒体が、上記媒体流路を下流から上流方向に流れ、上記媒体排出口に流すことによって、上記単管式のフロー式光反応リアクターを設定した温度に調整して、光反応を実施することが好ましい。
【0046】
また、上記フロー式光反応リアクター100の上記媒体流路304と連結された上記媒体排出口308と上記単管式のフロー式光反応リアクターの媒体供給口を連結させて、上記媒体204を上記単管式のフロー式光反応リアクターの媒体流通部に流して、上記反応ケースの温度を制御することもできる。この場合、上記単管式のフロー式光反応リアクターの媒体排出口と上記媒体供給口307を連結させ、これらの間に、媒体容器126に連結されたポンプ127(図9参照)を介在させることが好ましい。
【0047】
上記単管式のフロー式光反応リアクターの液体排出口と気体排出口から排出される液体組成物と気体組成物を貯槽に貯蔵する方法ならびにその後の処理については、第十二の手段で説明したのと同様の方法が適用できる。また、第十三の手段において、反応圧力を調整する方法及び手段についても、第十二の手段で説明したのと同様の方法及び手段が適用できる。
このように、上記貯槽305に貯蔵された上記第二気体組成物206と上記第二液体組成物205を、上記貯槽305から、適宜抜き出しながら、連続的に光反応を実施することができる。
【0048】
第十三の手段では、単管式のフロー式光反応リアクターを用いることにより、低コストに2段反応を実施できる。単管式のフロー式光反応リアクターでは、流路は1本しかないので、気体貯蔵部を有しなくても液体が他の流路に追い出されることがない。また、先に本発明のフロー式光反応リアクターを通した液体には、気体の混入が多いため、単管式のフロー式光反応リアクターを用いても、反応を促進できる。
【実施例
【0049】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0050】
5本の流路溝を持つフロー式光反応リアクターとLED-UVランプ(波長=365nm、出力=300W)を使用して、エチレンカーボネートの塩素ガスによる光反応を常圧で実施した。
水平面に対して、反応ケースの角度が5度に傾斜するように支持台の角度を調整し、また、反応ケースの下面に備えた媒体流通部に90℃の水を循環し、保持枠の温度センサー設置口に熱電対温度計を設置して、反応ケースの温度を測定した。
反応ケースの長手方向の長さは64cm、横手方向の長さは10cm、光照射部及び気体流通部の長手方向の長さは62cm、横手方向の長さは8cm、液体流通部の長手方向の長さは60cm、横手方向の長さは8cm、基板と蓋体が作る空間の長さは0.5cmであった。
液体流通部の上流側に気体貯蔵部A、液体流通部の下流側に気体貯蔵部Bを設置した。気体貯蔵部の合計体積は、反応ケース内の全空間体積に対して、5.5体積%であった。
反応ケースの上面に設置した光照射部の、反応ケースの上流端から1/3の長さの箇所を中心にして、光照射面に対して、上方5.0cmの高さから、下流方向に20度の傾きで光を照射して、フロー式光反応を行った。
反応ケースの温度が85℃に達したら、ダイアフラムポンプを用いて液体供給口から60℃に加熱したエチレンカーボネートを10.4g(118ミリモル)/分の速度で連続的に供給した。
エチレンカーボネートの滞留時間(液体供給口から液体排出口に到達する時間)は約20秒であった。
供給を開始してから5分後、エチレンカーボネートの流量が安定した後、気体貯蔵部に設置した気体供給口から塩素ガスを10.3g(145ミリモル)/分の速度で反応ケース内部に連続的に導入した。気体流通部を流れる塩素ガスの流速は13.5cm/秒であり、エチレンカーボネートに対する塩素ガスの流量は、1.23モル等量であった。
フロー式光反応で得られた液体組成物と気体組成物を貯槽に貯蔵した。なお、貯槽内の気体組成物は、貯槽上部の貯槽気体排出口から排出され、水酸化ナトリウム水溶液に吸収させて処理を行った。
光照射を開始してから約10分後、貯槽の下部に設置した液体組成物抜出口から、液体組成物を約1分間採取した。採取した液体組成物は、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて分析した。エチレンカーボネートの転化率が53.7%であり、モノクロロエチレンカーボネートとジクロロエチレンカーボネートの生成比率は、83.3%:16.7%であった。ここでの%は、GC面積百分率により算出した。また、塩素ガスの消費率は、43.5%であった。なお、塩素ガスの消費率は、(エチレンカーボネートの転化量 mol/塩素ガス導入量 mol)×100の式に従って算出した。
【参考例1】
【0051】
1本の流路溝を持つ単管式のパイレックス(登録商標)ガラス製フロー式光反応リアクターとLED-UVランプ(波長=365nm 出力=42W)を使用して、エチレンカーボネートの塩素ガスによる光反応を常圧で実施した。
水平面に対して、反応ケースの角度が20度に傾斜するように支持台の角度を調整し、また、反応ケースに備えた媒体流通部に、90℃の水を循環することによって、反応ケースの温度を80℃に調整した。
反応ケースは二重管になっており、内管は液体と気体が流通する流通部、外管は媒体流通部である。流通部の長手方向の長さは60cm、内径は1cmであり、長手方向の上流端に設けた液体供給口から液体を供給し、長手方向の上流端部の上方に設けた気体供給口から気体を供給し、長手方向の下流端に設けた液体排出口から液体を排出し、長手方向の下流端部の上方に設けた気体排出口から気体を排出した。光照射部及び液体流通部の長手方向の長さは60cm、気体の流通部の長さは50cmであった。
反応ケースの下部の光照射部の全面に、光照射部から下方に1cm離れたところから、光照射部に対して、垂直に光を照射して光反応を行った。
ダイアフラムポンプを用いて液体供給口から60℃に加熱したエチレンカーボネートを0.13g(1.48ミリモル)/分の速度で連続的に供給した。エチレンカーボネートの滞留時間(液体供給口から液体排出口に到達する時間)は約10秒であった。
供給を開始してから5分後、エチレンカーボネートの流量が安定した後、気体貯蔵部に設置した気体供給口から塩素ガスを0.11g(1.54ミリモル)/分の速度で反応ケース内部に連続的に導入した。気体流通部を流れる塩素ガスの流速は1.5cm/秒であり、エチレンカーボネートに対する塩素ガスの流量は、1.04モル等量であった。
フロー式光反応で得られた液体組成物と気体組成物をパイレックス(登録商標)ガラス製の貯槽に貯蔵した。なお、貯槽内の気体組成物は、貯槽上部の貯槽気体排出口から排出され、水酸化ナトリウム水溶液に吸収させて処理を行った。
光照射を開始してから約10分後、貯槽の下部に設置した液体組成物抜出口から、液体組成物を約1分間採取した。採取した液体組成物は、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて分析した。
エチレンカーボネートの転化率は、45.3%であり、モノクロロエチレンカーボネートとジクロロエチレンカーボネートの生成比率は、92%:8%であり、塩素ガスの消費率は、43.3%であった。
【実施例2】
【0052】
貯槽上部に圧力計を設置し、貯槽気体排出口からの配管に背圧弁を設置して、反応ケース内の圧力を0.2MPa(ケージ圧)にした以外は実施例1と同じ装置を用いて光反応を実施した。
液体供給口からエチレンカーボネートを9.9g(0.113ミリモル)/分で送液し、気体供給口から塩素ガスを7.1g(0.100ミリモル)/分で供給した以外は、実施例1と同様の方法で光反応を実施した。
エチレンカーボネートの転化率は、47.8%であり、モノクロロエチレンカーボネートとジクロロエチレンカーボネートの生成比率は、84.5%:7.2%であった。
【実施例3】
【0053】
光が照射していない光照射部に、ポリカーボネート製の光反射板で覆った以外は、実施例1と同様の方法で光反応を実施した。
エチレンカーボネートの転化率は、59.5%であり、モノクロロエチレンカーボネートとジクロロエチレンカーボネートの生成比率は、83.7%:16.3%であった。
【実施例4】
【0054】
光が照射していない光照射部に、断熱材としてのポリウレタンフォームに張り付けたポリカーボネート製の光反射板で覆った以外は、実施例1と同様の方法で光反応を実施した。エチレンカーボネートの転化率は、64.7%であり、モノクロロエチレンカーボネートとジクロロエチレンカーボネートの生成比率は、86.1%:13.9%であった。
【実施例5】
【0055】
実施例1で使用したフロー式光反応リアクター(リアクター1)とLED-UVランプ(波長=365nm、出力=300W)と、参考例1で使用したパイレックス(登録商標)ガラス製フロー式光反応リアクター(リアクター2)と、LED-UVランプ(波長=365nm 出力=42W)を使用して、エチレンカーボネートの塩素ガスによる光反応を常圧で実施した。
リアクター1の液体排出口とリアクター2の液体供給口、リアクター1の気体排出口とリアクター2の気体排出口、リアクター1の媒体排出口とリアクター2の媒体供給口を、それぞれ連結し、リアクター2の液体排出口と貯槽液体供給口、リアクター2の気体排出口と貯槽気体供給口を、それぞれ連結した。
水平面に対して、リアクター1の反応ケースの角度が5度に、リアクター2の反応ケースの角度が17.5度に傾斜するように支持台の角度を調整し、また、リアクター1の反応ケースの下面に備えた媒体流通部に87℃の水を循環し、循環した水は、リアクター2の媒体流通部に循環し、保持枠の温度センサー設置口に熱電対温度計を設置して、反応ケースの温度を測定した。
リアクター1の反応ケースの上面に設置した光照射部の、リアクター1の反応ケースの下流端から1/3の長さの箇所を中心にして、光照射面に対して、上方5cmの高さから、上流方向に20度の傾きで、LED-UVランプ(波長=365nm、出力=300W)を使用して、光を照射し、リアクター2の反応ケースの下部の光照射部の全面に、光照射部から下方に1cm、光照射部に対して、垂直にLED-UVランプ(波長=365nm 出力=42W)を使用して、光を照射して光反応を行った。
リアクター1と2の反応ケースの温度が80℃に達したら、ダイアフラムポンプを用いて液体供給口から80℃に加熱したエチレンカーボネートを6.6g(75ミリモル)/分の速度で連続的に供給した。供給を開始してから5分後、エチレンカーボネートの流量が安定した後、リアクター1の気体貯蔵部に設置したリアクター1の気体供給口から塩素ガスを5.4g(76ミリモル)/分の速度でリアクター1の反応ケース内部に連続的に導入した。
リアクター1のフロー式光反応で得られた液体組成物と気体組成物は、リアクター2の液体供給口とリアクター2の気体供給口からリアクター2の反応ケースに供給され、LED-UVランプ(波長=365nm 出力=42W)を使用して、光を照射して光反応を行い、リアクター2の液体組成物とリアクター2の気体組成物は貯槽に貯蔵した。なお、貯槽内の気体組成物は、貯槽上部の貯槽気体排出口から排出され、水酸化ナトリウム水溶液に吸収させて処理を行った。
光照射を開始してから約10分後、貯槽の下部に設置した液体組成物抜出口から、リアクター2の液体組成物を約1分間採取した。採取した液体組成物は、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて分析した。エチレンカーボネートの転化率が58.3%であり、モノクロロエチレンカーボネートとジクロロエチレンカーボネートの生成比率は、86.8%:12.9%であった。また、塩素ガスの消費率は、46.0%であった。
【比較例1】
【0056】
パイレックス(登録商標)ガラス製の基板と蓋体とSUS304製の保持枠からなるフロー式光反応リアクターと、LED-UVランプ(波長=365nm、出力=42W)を使用して、エチレンカーボネートの塩素ガスによる光反応を常圧で実施した。
上記フロー式光反応リアクターは、液体供給口と液体排出口を有し、上面に長さ=11.5cm、幅=7.8cmの光照射部を有し、上記基板の寸法は、長さ=14cm、幅=9cmであり、幅2mm、深さ1mm、全長300cmの1本の流路溝を有していた。
液体供給口の入口直前に、PCTFE製のミキサーを取り付け、エチレンカーボネートと塩素ガスをミキサーで混合してから、上記フロー式光反応リアクター内に供給した。
上記フロー式光反応リアクターをホットプレート上に設置して、上記基板の温度を65℃まで加熱し、上記光照射部の全面を覆うように上記LED-UVランプを設置し、光を照射した。
ダイアフラムポンプを用いて、60℃に加熱したエチレンカーボネートを0.066g(0.75ミリモル)/分の速度で供給し、コフロック製の流量計を用いて、塩素ガスを15ml(0.77ミリモル)/分の速度で供給し、エチレンカーボネートに対する塩素ガスの流量は、1.03モル等量であった。
供給を開始してから5分後、液体排出口から排出された液体組成物を約1分間採取した。採取した液体組成物は、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて分析した。エチレンカーボネートの転化率が27.1%であり、モノクロロエチレンカーボネートとジクロロエチレンカーボネートの生成比率は、82.8%:17.2%であった。
【符号の説明】
【0057】
100 フロー式光反応リアクター;101 反応ケース;102 光照射部;103 流路溝;104 液体流通部;105 気体流通部;106A、106B 気体貯蔵部;107 気体供給口;108 気体排出口;109 液体供給口;110 液体排出口;111 反応ケース支持台;112 基板;113 蓋体;114 上部保持枠;115 下部保持枠;116 温度センサー設置口;117 光反射板;118 断熱材;119 フロートメーター;120 ポンプ;121 液体容器;122 上流縦フレーム;123 下流縦フレーム;124 貫通孔;125 気体容器;126 媒体容器;127 ポンプ
200 液体;201 気体;202 液体組成物;203 気体組成物;204 媒体;205 第二液体組成物;206 第二気体組成物
301 フロー式光反応装置;302 光源;303 光源支持台;304 媒体流通部;305 貯槽;306 固定金具;307 媒体供給口;308 媒体排出口;309 媒体流通路;310 貯槽液体供給部;311 貯槽気体供給部;312 貯槽気体抜出口;313 貯槽液体抜出口;314 背圧装置;315 気体処理装置;316 第二フロー式光反応リアクター;317 第二液体供給口;318 第二気体供給口;321 第二光源;322 第二媒体流通部;323 第二媒体供給口;324 第二媒体;325 第二媒体排出口;326 第二反応ケース;327 第二液体排出口;328 第二気体排出口
400 従来例のフロー式光反応リアクター;401 液体流通部;402 液体貯留部;403 液体供給口;404 液体;405 気体供給口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9